図1〜図5を用いて本発明の実施の形態に係る駆動制御装置について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図4を用いて第1実施形態について説明する。
本実施の形態に係る駆動制御装置1は、駆動力が入力され回転可能に配置された入力部材としてのデフケース203と、デフケース203に支承されて自転可能であると共にデフケース203の回転によって公転する差動部材としてのピニオン205と、ピニオン205と噛み合って相対回転可能であると共にそれぞれが駆動力を出力可能な一対の出力部材としてのサイドギヤ207,209とを有する差動機構215と、差動機構215の差動をロック可能な差動ロック機構211と、差動機構215の差動を制限する差動制限機構213とを備えたデファレンシャル装置201に用いられる。
また、駆動制御装置1は、車両301の状況に基づいて差動ロック機構211を自動で作動制御するオートモードを備えた制御部3を有する。
そして、制御部3は、車両301の走行状態を検知し、差動制限機構213の駆動特性の設定された閾値によってオートモードの作動制御を行う。
なお、本発明における「検知」とは、後述するように各種センサからECUへ入力される情報を、直接的に入力されて「検出」することや、各種センサからECUへ入力される情報に基づき、その一つ又は複数のセンサ情報を用いて「算出」或いは「演算」することを含むものと定義される。
また、差動ロック機構211は、差動機構215の差動機能を機械的にON−OFF可能な機構を備え、オートモードは、その機構を用いてON−OFFの作動制御を行う。
さらに、閾値は、車両301の走行中に検知される情報としてのグリップ限界、左右輪の差回転、入力駆動トルクの大きさ、車両301の横傾斜、車両301の横加速度の少なくともいずれかによって決定された値である。
まず、図1を用いて本発明の実施の形態に係る駆動制御装置が適用される車両の動力系の一例について説明する。
図1に示すように、車両301の動力系は、エンジンや電動モータなどの駆動源303と、駆動源303からの駆動力を前輪側と後輪側とに伝達するトランスファ305と、後輪側プロペラシャフト307と、後輪側の左右輪の差動を許容するリヤデフとしてのデファレンシャル装置201と、後車軸309,309と、後輪311,311と、前輪側プロペラシャフト313と、前輪側の左右輪の差動を許容するフロントデフ315と、前車軸317,317と、前輪319,319などを備えている。
この車両301の動力系では、駆動源303からトランスミッション304を介して入力される駆動力がトランスファ305に伝達され、常時、後輪側プロペラシャフト307を介してデファレンシャル装置201に伝達され、後車軸309,309を介して後輪311,311に駆動力が配分される。
一方、トランスファ305に伝達された駆動力は、トランスファ305側の断続機構(不図示)と組み合わされ、前輪側プロペラシャフト313を介してフロントデフ315に伝達され、フロントデフ315に適用された動力伝達を断続する断続機構(不図示、一般的にアクスルディスコネクト機構、或いはフリーランニング機構と称される)が接続状態であると、前車軸317,317を介して前輪319,319に駆動力が配分され、車両301が前後輪駆動の4輪駆動状態となる。
これに対して、フロントデフ315に適用された断続機構が接続解除状態であると、前輪側プロペラシャフト313からフロントデフ315への動力伝達が遮断され、前輪319,319側に駆動力が伝達されず、車両301が後輪駆動の2輪駆動状態となる。
なお、車両301の動力系では、主として後輪側に駆動力が伝達されるFRベースの車両となっているが、これに限らず、主として前輪側に駆動力が伝達されるFFベースの車両にも、本発明の駆動制御装置を適用することができる。
この場合には、駆動源303からの駆動力が、常時、フロントデフとしての差動装置315に伝達され、リヤデフに適用された断続機構が接続状態であると、車両が前後輪駆動の4輪駆動状態となり、断続機構が接続解除状態であると、車両が前輪駆動の2輪駆動状態となる。
なお、FRベース車両におけるフロントデフ315側、或いはFFベース車両におけるリヤデフとしてのデファレンシャル装置201側への駆動力の断続は、トランスファ305に適用された動力伝達を断続する断続機構の断続のみによって行ってもよい。
次に、図2を用いて、車両301に搭載され、駆動制御装置によって作動が制御されるデファレンシャル装置201について説明する。
図2に示すように、デファレンシャル装置201は、差動機構215と、差動ロック機構211と、差動制限機構213とを備えている。
差動機構215は、デフケース203と、ピニオンシャフト217と、ピニオン205と、一対のサイドギヤ207,209とを備えている。
デフケース203は、軸方向両側に形成されたボス部219,221のそれぞれの外周でベアリング(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回転可能に支持されている。
このデフケース203には、リングギヤ(不図示)が固定されるフランジ部223が形成されている。
このフランジ部223に固定されたリングギヤは、例えば、駆動源303(図1参照)から駆動力を伝達する後輪側プロペラシャフト307(図1参照)と一体回転可能に設けられた動力伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、駆動力が入力されてデフケース203を回転駆動させる。
このようなデフケース203には、ピニオンシャフト217と、ピニオン205と、一対のサイドギヤ207,209などが収容されている。
ピニオンシャフト217は、両端部がデフケース203に形成された孔部に係合され、一方の端部がピンで抜け止めされデフケース203と一体に回転駆動される。
このピニオンシャフト217の両端側には、ピニオン205がそれぞれ支承されている。
ピニオン205は、デフケース203の周方向等間隔に複数(ここでは2つ)配置され、それぞれピニオンシャフト217の端部側に支承されてデフケース203の回転によって公転する。
このピニオン205は、噛み合っている一対のサイドギヤ207,209に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト217に自転可能に支持されている。
このようなピニオン205は、デフケース203に入力された駆動力を一対のサイドギヤ207,209に伝達する。
一対のサイドギヤ207,209は、デフケース203内に相対回転可能に収容され、それぞれ第1出力部材225と、第2出力部材227とからなる。
第1出力部材225は、環状に形成され、外周側にピニオン205のギヤ部と噛み合うギヤ部229が形成されている。
第2出力部材227は、第1出力部材225と軸方向に近接して配置可能なように、第1出力部材225を収容可能な凹状の収容部を有して環状に形成されている。
この第2出力部材227の内周側には、一対のサイドギヤ207,209に伝達された駆動力を出力する出力部231が設けられている。
また、第2出力部材227の外周側には、差動制限機構213のテーパリング273と摩擦摺動する摺動部233が設けられている。
このような第2出力部材227と第1出力部材225との間には、カム部235が設けられて互いに一体回転可能に連結されている。
カム部235は、第1出力部材225の内周側に設けられ回転方向前後に傾斜した係合面を有する複数の凹凸部と、第2出力部材227の出力部231の外周側に設けられ回転方向前後に傾斜した係合面を有する複数の凹凸部とからなる。
このカム部235は、第1出力部材225と第2出力部材227との互いの複数の凹凸部が回転方向に係合することにより、互いに連結する凹凸部が第1出力部材225と第2出力部材227とを一体回転可能とさせる。
このようなカム部235における複数の凹凸部の回転方向の係合面は、所定角度傾斜され相互に当接するカム面が形成されているが、カム面の形態に関しては、回転方向に連結し回転軸方向にスラスト力を発生させる構造であれば、他の形状も適宜採り得る。
このカム部235におけるカム面は、一対のサイドギヤ207,209の回転により、ピニオン205のギヤ部から伝達された駆動トルクによって第1出力部材225,225を介して第2出力部材227,227を軸方向外側にそのカムスラスト力で移動させる。
ピニオン205から伝達される駆動トルクが作用するカムスラスト力に応じて、この第2出力部材227,227の軸方向移動により、一対のサイドギヤ207,209の摺動部233,233とテーパリング273,273との摺動摩擦が強化され、差動制限機構213における差動制限力を強化することができる。
このような一対のサイドギヤ207,209の出力部231,231には、例えば、後車軸309,309(図1参照)に連結された駆動軸が一体回転可能に連結され、デフケース203に入力された駆動力が一対のサイドギヤ207,209から後輪311,311(図1参照)側に分配して出力される。
このような差動機構215は、その差動が差動ロック機構211によって断続される。
差動ロック機構211は、クラッチ部材237と、断続部239と、アクチュエータ241とを備えている。
クラッチ部材237は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部243がデフケース203の壁部245とサイドギヤ207のギヤ部229の背面側との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。
このクラッチ部材237のデフケース203の壁部245側には、デフケース203と一体回転可能に係合する係合部247が設けられ、クラッチ部材237のサイドギヤ207のギヤ部229の背面側には、断続部239が設けられている。
係合部247は、クラッチ部材237の基部243に周方向等間隔に設けられた複数の凸部249と、デフケース203の壁部245に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔251とからなる。
この凸部249と孔251とが回転方向に係合することにより、クラッチ部材237がデフケース203に回り止めされ、クラッチ部材237とデフケース203とが一体回転可能となる。
この係合部247としての凸部249と孔251との周方向両側の対向面には、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成されている。
このカム面は、クラッチ部材237が断続部239の接続方向に移動され、断続部239に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、デフケース203の回転によってそれぞれのカム面が係合する。
このそれぞれのカム面の係合により、クラッチ部材237をさらに断続部239の噛み合い方向に移動させ、断続部239の接続を強化させる。
断続部239は、クラッチ部材237の基部243の係合部247と軸方向反対側の側面で、クラッチ部材237とサイドギヤ207のギヤ部229の背面側との軸方向間に設けられている。
この断続部239は、クラッチ部材237とサイドギヤ207の第2出力部材227とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
このような断続部239は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、クラッチ部材237とサイドギヤ207とが一体回転可能に接続、すなわちデフケース203とサイドギヤ207とが一体回転可能に接続され、差動機構215の差動がロック状態となる。
この差動機構215のロック状態では、デフケース203に入力され、一対のサイドギヤ207,209に伝達された駆動力が、例えば、左右の後輪311,311(図1参照)側に均一に出力される。
一方、クラッチ部材237とサイドギヤ207のギヤ部229の背面側との軸方向間で断続部239の径方向内側には、付勢部材253が配置されている。
この付勢部材253は、クラッチ部材237を、常時、断続部239の接続解除方向に付勢している。
このような付勢部材253によって、クラッチ部材237が断続部239の接続解除方向に移動され、断続部239の接続が解除され、差動機構215の差動がアンロック状態となる。
このような断続部239の断続状態は、アクチュエータ241によって制御される。
アクチュエータ241は、可動部材255と、電磁石257とを備えている。
可動部材255は、電磁石257の内径側でデフケース203のボス部219の外周に軸方向移動可能に配置され、環状のプランジャ259と、リング部材261とを備えている。
プランジャ259は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石257の内径側に配置されている。
リング部材261は、非磁性材料から形成され、プランジャ259の内径側に一体に固定され、プランジャ259の内周側からデフケース203側へ磁束が漏れることを防止している。
このリング部材261は、デフケース203のボス部219の外周に軸方向移動可能に配置され、デフケース203のボス部219の外周に圧入固定された非磁性材料からなる規制部材263によって軸方向外側への移動規制がなされている。
このようなリング部材261は、クラッチ部材237側の軸方向の端面に、クラッチ部材237の凸部249と当接可能な押圧部265が設けられている。
この押圧部265は、電磁石257によって可動部材255がクラッチ部材237側に移動されたときに、その軸方向の移動操作力をクラッチ部材237に伝達し、クラッチ部材237を断続部239の接続方向に押圧操作する。
電磁石257は、デフケース203のボス部219の外周側でデフケース203の壁部245に対して軸方向に隣接配置されている。
この電磁石257は、回り止め部(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材に回り止めされ、電磁コイル267と、コア269とを備えている。
電磁コイル267は、環状に所定巻き数巻回されて樹脂でモールド成形されている。
この電磁コイル267には、外部に引き出されるリード線(不図示)が接続され、このリード線を介して通電を制御する駆動制御装置1に電気的に接続されている。
コア269は、電磁コイル267への通電により磁界が形成されるように磁性材料から形成され、所定の磁路断面積を有している。
このコア269は、電磁コイル267の内外周面及び電磁コイル267のデフケース203の壁部245と反対側に位置する軸方向一側端面を環状に覆っている。
このようなコア269の外径側には、デフケース203の壁部245から軸方向に延設された延設部271が磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって覆うように配置されている。
この延設部271は、軸方向の端面がコア269に設けられた径方向外側に向けて突出する凸部と当接することによって、電磁石257の軸方向内側への位置決めがなされている。
一方、コア269の軸方向外側の端面は、可動部材255の軸方向外側への移動を規制する規制部材263によって、可動部材255と共に電磁石257の軸方向外側への位置決めがなされている。
このような差動ロック機構211は、電磁石257の励磁によりコア269とプランジャ259とデフケース203の壁部245とを透過する磁束によって、最短の磁束ループを形成する。
この磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ259がクラッチ部材237側に移動操作され、リング部材261が押圧部265を介してクラッチ部材237を押圧する。
この可動部材255によるクラッチ部材237の押圧操作により、クラッチ部材237が付勢部材253の付勢力に抗して断続部239の接続方向に移動され、断続部239が接続される。
この断続部239の接続により、サイドギヤ207とクラッチ部材237とが一体回転可能に接続され、サイドギヤ207とデフケース203とが接続されて差動機構215がロック状態となる。
一方、断続部239の接続解除では、電磁石257への通電を停止することにより、クラッチ部材237が付勢部材253の付勢力によって断続部239の接続解除方向に移動され、断続部239の接続が解除される。
この断続部239の接続解除により、サイドギヤ207とクラッチ部材237とが相対回転可能となり、サイドギヤ207とデフケース203とが相対回転可能となって差動機構215のロック状態が解除される。
なお、アクチュエータは、上述したように電磁石を作動源として如何なる手段かを用いてクラッチ部材を操作して断続部を接続又は接続解除するものであってもよい。
例えば、電磁石以外の作動源として、流体圧作動シリンダとピストンを用いた構成、或いは電動モータと減速機構やカム機構を組み合わせた構成など、適宜採用することができる。
ここで、例えば、クラッチ部材237には、クラッチ部材237と一体に軸方向移動され、デフケース203の外部に配置される検知部材(不図示)が設けられている。
この検知部材は、キャリアなどの静止系部材に固定され、駆動制御装置1に電気的に接続されたポジションスイッチ(不図示)と対向して配置される。
このポジションスイッチは、検知部材の軸方向位置を検出し、一体移動するクラッチ部材237の軸方向位置を検出する。
このようにポジションスイッチによってクラッチ部材237の軸方向位置を判定することにより、断続部239が接続状態であるか否かを判断することができ、差動ロック機構211がロック状態であるか否かを判断することができる。
なお、ポジションスイッチは、検知部材と接触することによってON−OFFされる接触型センサ、或いは検知部材と非接触に近接して配置され検知部材の位置を判定する非接触型センサなどを用いることができる。
差動制限機構213は、一対のサイドギヤ207,209とデフケース203との間に配置された一対のテーパリング273,273を備えている。
一対のテーパリング273,273は、それぞれ環状部275,275を備え、回転軸方向一端側から回転軸方向他端側に向けて所定角度をもって縮径するように形成されている。
このテーパリング273の環状部の内周面は、サイドギヤ207,209に所定角度をもって形成された摺動部233と摺動する摺動面が設けられている。
また、環状部275の外周面は、デフケース203に所定角度をもって形成されたテーパ面に相対回転不能かつ相対移動不能に当接されている。
このようなテーパリング273には、デフケース203に設けられた内部に部材を収容するための孔部(不図示)に回転方向に係合する係合部(不図示)が設けられ、孔部に係合部を係合させることにより、テーパリング273がデフケース203と一体回転可能に配置される。
なお、上述したように、テーパリング273は、環状部275がデフケース203のテーパ面とサイドギヤ207,209の摺動部233との間に保持されており、回転軸方向に対しても適切に位置決めされている。
このテーパリング273は、環状部275が、差動機構215へ入力される駆動トルクに基づき、前述したようにカム部235に生じるカムスラスト力に応じて、軸方向外側に移動された一対のサイドギヤ207,209の摺動部233と摺動することにより、差動機構215の差動を制限する。
このようなテーパリング273の環状部275と一対のサイドギヤ207,209の摺動部233とは、デフケース203に入力する駆動トルクの大きさに応じて摩擦トルクを生じるトルク感応型の差動制限機構を備えており、その詳細の分別としてコーンクラッチ機構に分類される。
このような差動制限機構213は、デファレンシャル装置201において、差動ロック機構211がロック解除状態(OFF状態)であるときに、例えば、一方の後輪311(図1参照)にスリップが生じた場合などのような差動機構215の駆動回転の状況に応じた差動制限力を発生させる。
この差動制限力の発生により、差動機構215の差動が制限され、車両301(図1参照)の悪路に対する走破性を向上することができる。
このようにデファレンシャル装置201は、差動機構215の駆動回転の状況に応じた差動制限力を発生する自己制御型の差動制限機構213による差動制限機能と、断続部239の接続によって差動機構215をロック状態とさせる差動ロック機構211によるデフロック機能とを有するデファレンシャル装置となっている
このようなデファレンシャル装置201において、差動ロック機構211は、ロックのON−OFF(ロック状態−ロック解除状態)の切り換えが、駆動制御装置1によって制御されている。
図1〜図4に示すように、駆動制御装置1は、制御部3としてのメインECU5と、デフロックECU7とを備えている。
メインECU5およびデフロックECU7は、例えば、車両301の走行状態で検出されるグリップ限界センサ、左右輪の差回転を検出する左右輪差回転センサ、駆動源303から入力される駆動力の大きさを検出する駆動力センサ、車両301の横傾斜状況を検出する横傾斜センサ、車両301の横加速度を検出する横加速度センサ、車速センサ、ドライバの選択した操作状況などを検出するドライバセンサなどの各種センサの情報が直接又はメインECUを介してデフロックECU7が間接的に受信可能となっている。
なお、車速センサから直接車速を検知してもよいが、前後左右車輪に設けられた回転センサが検知した回転に基づいて車速を演算してもよい。
また、メインECU5は、上述した各種センサの他に、アクセル角センサなどからなる加減速フィールセンサ、操舵角センサ、駆動源303としてのエンジンの起動・停止、燃料・エア供給量などを制御するエンジン制御指令、ブレーキセンサ、スロットル開度センサ、前後輪差回転センサ、ヨーモーメントセンサ、油温センサ、外気温センサなどの各種センサの情報が入力され、デフロックECU7は必要に応じてメインECUからそれらの入力情報が受信可能である。
このような各種センサの情報を受信可能であるメインECU5およびデフロックECU7は、必要なセンサ情報を選択して算出、演算又は記録チャートとの対比が可能であり、車両301に搭載された各機構に制御情報を出力して各機構の作動を制御する。
デフロックECU7は、メインECU5との間で各種センサなどの情報が送受信可能となっており、差動ロック機構211のアクチュエータ241である電磁石257と電気的に接続され、受信された情報に基づき、電磁石257への通電を制御する。
ここで、駆動制御装置1は、差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFの切り換えにおいて、ドライバなどの操作者によって任意に選択できるマニュアルモードと、デフロックECU7が自動的に選択するオートモードとを有する。
なお、デファレンシャル装置201は、自己制御型の差動制限機構213を有するので、差動ロック機構211による差動機構215のロックがOFF(ロック解除状態)である場合、差動制限機構213が自己制御で差動機構215の差動を制限する(図4ではLSDと示す)。
マニュアルモードでは、ドライバなどの操作者が、例えば、車室内に設けられたモードスイッチ(図3のモードSW)をマニュアルモードとし、そのマニュアルスイッチをON−OFF操作することにより、差動ロック機構211による差動機構215のロックをON(ロック状態:図4のDIFF.LOCK)とする、或いは差動ロック機構211による差動機構215のロックをOFF(ロック解除状態:図4のLSD)とすることを任意に選択することができる。
オートモードでは、ドライバなどの操作者が、例えば、車室内に設けられたモードスイッチ(図3のモードSW)をオートモード(図4のAUTO)とし、デフロックECU7が、差動ロック機構211による差動機構215のロックをON(ロック状態:図4のDIFF.LOCK)とする、或いは差動ロック機構211による差動機構215のロックをOFF(ロック解除状態:図4のLSD)とすることを自動的に切り換える。
ここで、デファレンシャル装置201は、自己制御で差動機構215の差動を制限する差動制限機構213を有しており、差動ロック機構211による差動機構215のロックがOFF状態であるときには、差動機構215の差動が差動制限機構213によって制限されている。
従来の駆動制御装置では、差動制限機構213のような差動制限機構を有していないデファレンシャル装置において、差動ロック機構211の作動制御を行っていた。
このため、差動制限機構213を有するデファレンシャル装置201の差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFのオートモードにおける作動制御に、従来の駆動制御装置の設定を適用してしまうと、例えば、差動制限機構213によって差動機構215の差動を制限することが可能であるにも関わらず、差動ロック機構211による差動機構215のロックをON(ロック状態:図4のDIFF.LOCK)としてしまうなど、差動制限機構213の差動制限機能を十分に発揮させることができなかった。
そこで、制御部3は、車両301の走行状態を検知し、差動制限機構213の駆動特性の設定された閾値によってオートモードの作動制御を行う。
この閾値は、車両301の走行状態で検知されるグリップ限界、左右輪の差回転、入力駆動力の大きさ、車両301の横傾斜、車両301の横加速度の少なくともいずれかの入力によって決定された値となっている。
このような制御部3は、オートモードにおいて、デフロックECU7が車両301の走行状態を検知する。
この検出結果のうち上述した差動制限機構213の設定された閾値を超えるいずれかの値が入力されたとき、差動制限機構213では差動機構215の差動を制限することができないと判断する。
そして、デフロックECU7は、差動ロック機構211による差動機構215のロックをONとし、差動機構215の差動をロック状態とさせる。
このように差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFの切換タイミングを、差動制限機構213で設定された所定の閾値に合わせて設定することにより、差動制限機構213の差動制限機能を最大限発揮させ、的確なタイミングで差動ロック機構211を作動制御することができ、車両301の操安性を向上して、走破性を向上することができる。
ここで、車両301は、後輪駆動の2輪駆動状態(図4の2WD)と、前後輪駆動の4輪駆動状態との駆動方式を有し、4輪駆動状態は、車速が所定速度以上で駆動トルクが所定トルク以下の第1の4輪駆動状態(図4の4H)と、車速が所定速度以下で駆動トルクが所定トルク以上の第2の4輪駆動状態(図4の4L)との駆動方式を有する。
この各駆動方式は、ドライバなどの操作者が、例えば、車室内に設けられた選択スイッチを切り替えることによって、任意に選択することができるが、車両の走行状況に応じて、デフロックECU7が、自動的に駆動方式を切り換えるようにしてもよい。
従来の駆動制御装置では、例えば、車速が所定速度以下で駆動トルクが所定トルク以上の第2の4輪駆動状態(図4の4L)の駆動方式でのみ、オートモードで差動ロック機構211による差動機構215のロックをON−OFFしていた。
このため、従来の駆動制御装置では、2輪駆動状態(図4の2WD)や第1の4輪駆動状態(図4の4H)の駆動方式において、オートモードで差動ロック機構211による差動機構215のロックをON−OFFすることができなかった。
そこで、制御部3は、車両301の前後のうち少なくとも一方のみ(ここでは後輪側)が駆動される2輪駆動状態(図4の2WD)と、車両301の前後両方が駆動される第1の4輪駆動状態(図4の2H)とで、オートモードの切り換えタイミングが異なる第1と第2の切換タイミングを備えている。
また、制御部3は、駆動トルクが増大可能な第2の4輪駆動状態(図4の4L)に対応した第3の切換タイミングを備えている。
この制御部3のオートモードにおける第1と第2と第3との切換タイミングは、各駆動方式において、差動制限機構213に設定された所定の閾値が異なるように設定されている。
つまり、制御部3のオートモードでは、差動制限機構213に設定された所定の閾値が異なるように設定された第1と第2と第3との切換タイミングを有しているので、各駆動方式における差動制限機構213の設定された閾値を超えたときに、各駆動方式に応じた的確なタイミングで差動ロック機構211による差動機構215のロックをONとし、差動機構215の差動をロック状態とさせる。
このため、車両301の駆動方式に応じて、差動制限機構213の差動制限機能を最大限発揮させつつ、差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFを的確に制御することができ、各駆動方式における車両301の走破性を向上することができる。
このような駆動制御装置1の制御を、図3,図4を用いて説明する。
図3,図4に示すように、駆動制御装置1は、まず、ドライバなどの操作者が、選択スイッチによって、車両301の各駆動方式において、いずれの駆動方式を選択したのかを確認し(S1)、選択された車両301の駆動方式を確定する(S2)。
なお、車両301の駆動方式については、車両301の走行状態に合わせて、デフロックECU7が自動的に各駆動方式を選択してもよく、この場合には、自動的に選択された車両301の駆動方式を確定する。
次に、駆動制御装置1は、ドライバなどの操作者が、モードスイッチによって、マニュアルモードとオートモードとのいずれかのモードを選択したのかを確認する(S3)。なお、マニュアルモードを設けずに、オートモードのみの設定であればステップS3は省略することができる。
次に、駆動制御装置1は、確定された駆動方式と、選択されたモードに合わせて差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFの作動制御に移行する(S4)。
このとき、駆動制御装置1は、選択されたモードがマニュアルモードである場合、各駆動方式において、ドライバなどの操作者によるマニュアルスイッチの操作に合わせて、差動ロック機構211による差動機構215のロックをON(ロック状態:図4のDIFF.LOCK)とする、或いは差動ロック機構211による差動機構215のロックをOFF(ロック解除状態:図4のLSD)とする。
一方、駆動制御装置1は、選択されたモードがオートモード(図4のAUTO)である場合、確定された駆動方式に合わせて、デフロックECU7が、差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFの切換タイミングの条件(差動制限機構213の設定された閾値に対する値)を取得する(S5)。
そして、駆動制御装置1は、各駆動方式(図4の2WD,4H,4L)におけるオートモード(図4のAUTO)において、デフロックECU7が、直接又はメインECU5を介して取得した条件に基づき、差動ロック機構211による差動機構215のロックをON(ロック状態:図4のDIFF.LOCK)とする、或いは差動ロック機構211による差動機構215のロックをOFF(ロック解除状態:図4のLSD)とすることを自動的に切り換える(S6)。
このような駆動制御装置1では、制御部3が、車両301の走行状態を検出し、差動制限機構213の駆動特性の設定された閾値によってオートモードの作動制御を行うので、差動制限機構213の特性を考慮した上で、オートモードによって、差動ロック機構211を自動で作動制御することができる。
従って、このような駆動制御装置1では、差動ロック機構211と差動制限機構213のそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
また、差動ロック機構211は、差動機構215の差動機能を機械的にON−OFF可能な機構を備え、オートモードは、ON−OFFの作動制御を行うので、差動制限機構213の差動制限機能を最大限発揮させつつ、差動ロック機構211による差動機構215のロックのON−OFFの切換タイミングを的確に制御することができる。
さらに、閾値は、車両301の走行状態から検知されるグリップ限界、左右輪の差回転、入力駆動力の大きさ、車両301の横傾斜、車両301の横加速度の少なくともいずれかの入力によって決定された値であるので、差動制限機構213の差動制限機能を十分に発揮させることができる。
(第2実施形態)
図5を用いて第2実施形態について説明する。
本実施の形態に係る駆動制御装置101は、差動ロック機構211が、一対のサイドギヤ207,209の回転を制動するためにそれぞれの出力軸としての後車軸309,309側に設けられたブレーキ277,277である。
そして、オートモードは、ブレーキ277,277のうち少なくとも一方のブレーキ277の作動制御を行う。
なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
図5に示すように、ブレーキ277は、一対のサイドギヤ207,209(図2参照)に連結された後車軸309,309と後輪311,311との間にそれぞれ設けられている。
このブレーキ277,277は、アクチュエータ(不図示)が駆動制御装置101のデフロックECU7に電気的に接続され、デフロックECU7の制御によって作動され、一対のサイドギヤ207,209からの回転を制動し、差動機構215(図2参照)の差動を疑似的にロック状態とさせることができる。
なお、ブレーキ277,277は、差動機構215をロック状態とさせるタイミングで、少なくともいずれか一方のブレーキ277を作動させて、差動機構215を疑似的にロック状態とさせればよい。
ここで、本実施形態におけるデファレンシャル装置201は、ブレーキ277が差動機構215の差動を疑似的にロック状態とさせることができるので、クラッチ部材237を有する差動ロック機構211(図2参照)を有していない。
すなわち、本実施形態においては、ブレーキ277が、差動機構215の差動を疑似的にロック状態、或いはロック解除状態とさせる差動ロック機構211として機能する。
このようなブレーキ277は、マニュアルモードである場合、ドライバなどの操作者によるマニュアルスイッチの操作に合わせて、差動機構215を疑似的にロック状態とする、或いは差動機構215をロック解除状態とする。
一方、ブレーキ277は、オートモードである場合、デフロックECU7が、差動機構215を疑似的にロック状態とする、或いは差動機構215をロック解除状態とすることを自動的に切り換える。
このような差動ロック機構211として機能するブレーキ277を有するデファレンシャル装置201に適用される駆動制御装置101は、制御部3が、オートモードにおいて、差動制限機構213(図2参照)の設定された閾値に合わせたブレーキ277のON−OFFを切り換える切換タイミングを備えている。
なお、差動制限機構213の設定された閾値は、駆動制御装置1と同様に、車両301の走行状態の検出されるグリップ限界、左右輪の差回転、入力駆動力の大きさ、車両301の横傾斜、車両301の横加速度の少なくともいずれかの入力によって決定された値となっている。
このように制御部3が、オートモードにおいて、差動制限機構213の設定された閾値に合わせたブレーキ277のON−OFFを切り換える切換タイミングを備えることにより、差動制限機構213の差動制限機能を最大限発揮させ、的確なタイミングでブレーキ277を作動制御することができ、車両301の操安性を向上させ、走破性を向上することができる。
この制御部3のブレーキ277のON−OFFを切り換える切換タイミングは、駆動制御装置1と同様に、車両301の各駆動方式に応じて、第1と第2と第3の切換タイミングを備えている。
このように制御部3が、車両301の各駆動方式に応じたブレーキ277の作動を制御する第1と第2と第3の切換タイミングを備えることにより、車両301の駆動方式に応じて、ブレーキ277の作動を的確に制御することができ、各駆動方式における車両301の操安性を向上させ、走破性を向上することができる。
このような駆動制御装置101では、オートモードが、ブレーキ277,277のうち少なくとも一方のブレーキ277の作動制御を行うので、差動制限機構213の差動制限機能を最大限発揮させつつ、ブレーキ277の作動を的確に制御することができる。
上述した第の実施形態によれば、制御部3はデフロックECU7に設けられていたが、ブレーキECU又はトラクションコントロールECUなどのブレーキ系ECUに加入することもできる。
なお、本実施の形態に係る駆動制御装置では、差動ロック機構が、クラッチ部材を軸方向に移動操作し、噛み合い歯からなる断続部を断続する構造となっているが、これに限らず、差動ロック機構としては、例えば、押圧部材を軸方向に移動操作し、多板クラッチからなる断続部を断続する構造となっていてもよい。
このような差動ロック機構は、多板クラッチの締結状態によって、中間制御可能な構造となっており、中間制御においては差動機構の差動を制限する差動制限機構と機能し、完全に締結された状態においては差動機構の差動をロックする差動ロック機構として機能する。
このような差動ロック機構においては、駆動制御装置が、オートモードにおいて、差動制限機構として機能する多板クラッチの中間制御における駆動特性の設定された閾値によって、差動ロック機構として機能する多板クラッチの完全締結状態の作動制御を行うようにしてもよい。
また、差動制限機構213は、自己制御型のうちの駆動トルク感応型の説明をしたが、これに限らずに自己制御型であって回転差感応型の差動制限機構を用いることもできる。