JP2021194374A - 空間浄化抗菌材及びそれを用いた空間浄化抗菌用品 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、気体又は蒸気として空間に放散され、空気を浄化する抗菌成分を含有する物質を備えた抗菌材及び抗菌用品において、抗菌材及び抗菌用品の使用前には、抗菌成分を含有する物質の安定した保持及び保管が可能であり、使用時には、抗菌成分の十分な透過が可能である抗菌材、及び、その抗菌材を用いた抗菌用品を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されていることを特徴とする抗菌材であり、この抗菌材に、抗菌成分の放散を促進するための加熱手段、及び、ウェアラブルであるための取付け手段を備えた抗菌用品である。本発明により、身辺に漂う真菌、細菌、及び、ウィルス等の微生物等と身体との接触を遮断し防止する効果を奏することが期待される。【選択図】図8

Description

本発明は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する布によって包有された、空間を浄化する抗菌材、すなわち、空間浄化抗菌材、及び、それを用いた抗菌用品に関する。特に、透湿防水機能を有する布が特殊な不織布及び織布であることを特徴とする抗菌材及びそれを用いた抗菌用品に関する。
なお、本明細書においては、滅菌、殺菌、消毒、静菌、制菌、除菌、防腐、防菌、及び、サニタイズ等の微生物を制御することができる効果を総称として、「抗菌」という業界的用語を使用する。また、微生物は、細菌、菌類、ウィルス、微細藻類、及び、原生動物等の総称として使用する。なお、このような「抗菌」性を有する物質は、微生物の付着及び増殖を抑制できるため、微生物の腐敗臭を低減する消臭効果を合わせもつことが多い。
先進国においては、人々の物質的欲求が満足されると、清潔で健康的な生活環境、すなわち、目に見えない菌、カビ、悪臭等のない生活環境が要求されるようになり、1900年代に入ると、家庭・台所用品、食品容器・包材、衣料品、文具・おもちゃ、電気・電子製品、住宅・建材等、抗菌加工処理を謳った抗菌加工製品を数多く手にするようになり、現在では抗菌加工製品ではないものを見つけるのが難しい状況である。また、抗菌性を有する電解水や消毒液が、病院、学校等の公共施設のみならず、一般事業所等の出入り口でも認められるのが一般的である。
更に、人間が直接手に触れるものに加えて、人間を毎日取り巻く住空間、並びに、人間が集う病院、学校、工場、及び、劇場等の公共空間の浄化が、心身の安定、並びに、空間を媒体として広がる、特に、インフルエンザ、SARS、エボラ出血熱等のウィルスによる感染症の防止等の観点から、毎日の暮らしに重要な役割を果たすものであるという認識が常識的になってきた。
このような空間浄化には、芳香、消臭、集塵、湿度制御、及び、音等の様々な観点からのアプローチがあるが、抗菌や消臭を行う空気清浄という意味においては、空間に放散される抗菌成分を含有する物質の利用が種々検討されてきた。
特に、抗菌効果が認められている次亜塩素酸及び二酸化塩素に的を絞り空間浄化抗菌技術の変遷を眺めると、多岐に亘る技術改良が施され、多種多様な空間浄化抗菌方法が提案されてきている中において、据置型の空間浄化抗菌方法から携帯型の空間浄化抗菌方法への変容という一つの方向性が認められると概括することができる(特許文献1〜14並びに非特許文献1〜3)。
次亜塩素酸を抗菌成分とする空間浄化抗菌装置については、例えば、2002年に公開された特許文献1に、殺菌液である次亜塩素酸水を生成する電解槽、殺菌液を貯留する液留め部、殺菌液を空間に放散する霧化手段を備えた、防臭・殺菌・除菌・防黴装置が開示されている。その後、このような据置型の空間浄化抗菌装置は、様々な改良が加えられ、2017年に公開された特許文献2に至っては、電気分解された殺菌液である次亜塩素酸濃度測定とpH測定を同時に行うことができる装置を備え、殺菌液として最適な次亜塩素酸水による空間浄化が可能な装置にまで進化している。
しかし、2009年に登録された特許文献3に記載されているように、ヒーター及びファン等を必要としないので、消費電力が少なく、容量が小さなものに適している卓上型超音波加湿器が、その部品を耐次亜塩素酸水材料に置換することによって空間浄化抗菌装置に転用されており、空間浄化抗菌装置の小型化も進められてきたものと考えられる。
更に、2010年に登録された特許文献4では、次亜塩素酸水が充填されたスプレー缶が開発され、手足等の身体局部に集中的な噴霧が行えると共に、持ち運びが自由な携帯型空間浄化抗菌装置として利用できることを示唆している。このような装置は、日常の生活用具といえるもので、空間浄化抗菌用品と呼称する方が相応しいと思われる。
また、2017年に公開された特許文献5には、吸水性ポリマー及びベントナイトを含む次亜塩素酸水が塗着された織物が開示されている。このような織物の通気孔を通る気体に働く流通抵抗は、次亜塩素酸の抗菌機能及び消臭機能を高めるため、シーツ、マット、蒲団、及び、ベッドの敷布等への利用が推奨されているが、これも、マスクやガーゼ等の携帯型の空気浄化抗菌用品、カーテンや間仕切りとして、持ち運びが自由な携帯型の空間浄化抗菌用品として応用できることを示唆している。
一方、二酸化塩素を抗菌成分として用いる空間浄化抗菌装置については、例えば、2007年に公開された特許文献6には、二酸化塩素溶液の収容タンク、二酸化塩素溶液を吸上げるポンプ、二酸化塩素溶液を気体にする気化器、気化された二酸化塩素の吹出菅、吹出された二酸化塩素を空間に送出するファンとから構成される据置型の空間浄化抗菌装置が開示されている。
しかし、2011年に公開された特許文献7に記載されているように、携帯可能な二酸化塩素発生装置を目的として、亜塩素酸塩封入体と酸性物質を含有する徐放剤とが可撓性容器に内包された二酸化塩素発生装置が開発されている。これは、可撓性容器を折り曲げることによって、亜塩素酸塩封入体が破壊されて酸性物質と接触して生成される二酸化塩素が、通気性・非透水性シートを通過して空間に放散され、空間を浄化するものであり、装置というよりも、携帯型の空間浄化抗菌用品の範疇に入る。
特に二酸化塩素を抗菌成分に利用する場合、据置型よりもむしろ携帯型の空間浄化用品に適用する場合が多く見受けられ、二酸化塩素を抗菌成分として利用する携帯型の空間浄化用品の開発は古くまで遡る。1994年には、既に、多孔性無機質担体に二酸化塩素ガスが吸着保持された殺菌消毒剤が通気性樹脂膜で被覆された筒状容器に収容された、タンス、ロッカー、及び、米びつ等に入れる空間浄化抗菌用品が提案されている。これは、上記特許文献7とは異なる二酸化塩素の空間への放散プロセスで、多孔性無機質担体に吸着保持されていた二酸化塩素が通気性樹脂膜を通過して徐放されるもので、空間に放散される二酸化塩素の量が極めて少ないものと推測される。逆に、特許文献7の場合、酸性物質は徐放剤に混入されているとはいえ、二酸化塩素の生成速度及び生成量を制御することは極めて困難であると考えられる。
このように、二酸化塩素を抗菌成分とする携帯型の空間浄化抗菌用品の場合、二酸化塩素の生成速度及び生成量等を制御することが困難であるため、様々な二酸化塩素発生剤が検討されてきた。
特許文献9には、乾燥した金属亜塩素酸塩を、水または水蒸気が存在しない場合には二酸化塩素が発生しない乾燥した多孔質固体親水性材料と合体した、二酸化塩素発生剤が開示されている。この二酸化塩素発生剤は、空気中の水分と接触することによって二酸化塩素を生成し、長期間に亘り適度な二酸化塩素を空間に放散するものである。
また、特許文献10は、固形の亜塩素酸塩、固形の酸、及び、保持した水分を徐放可能な固形剤を含む二酸化塩素発生剤であり、特許文献9同様、二酸化塩素の効果が長期間に亘り持続可能となることを目的としている。ただし、空気中の水分だけでは不足する二酸化塩素の生成量を、水分が徐放される固形剤で補うと共に、空気の湿度の影響を受けることなく二酸化塩素を生成できるように改良されており、高濃度の二酸化塩素ガスを長期間に亘り持続して生成することが可能となることが記載されている。
このような亜塩素酸塩と水分との接触により二酸化塩素を生成する二酸化塩素発生剤は、その生成速度及び生成量を制御するために、数多くの改良、例えば、亜塩素酸塩と炭酸金属塩とを含有する二酸化塩素発生剤(特許文献11)、並びに、金属亜塩素酸塩、水分との反応を促進させる活性化剤、及び、吸湿性を制御する二酸化ケイ素とを含有する二酸化塩素発生剤(特許文献12)等が提案されている。
一方、特許文献13には、二酸化塩素、亜塩素酸塩、及び、pH調整剤としてのリン酸を構成成分とする二酸化塩素水溶液を高吸水性樹脂に含有させたゲル状組成物が提案されている。このようなゲル状組成物は、二酸化塩素を徐放しつつ、ゲル状組成物中の二酸化塩素濃度を長期間に亘り一定範囲内に保持することができる液状の二酸化塩素発生剤、すなわち、二酸化塩素の空間への放散を長期間に亘り一定に保持できる液状の二酸化塩素発生剤を提供するものである。これは、水に溶解した二酸化塩素を長期間に亘り保持させる技術であり、身近な現象としては、炭酸水から炭酸が抜けることを妨げる技術であると考えられる。
このように、二酸化塩素発生剤自体の二酸化塩素生成速度及び生成量を制御する技術が数多く開発されているが、二酸化塩素発生剤を携帯型の空間浄化抗菌用品として使用するためには、二酸化塩素発生剤が、何らかの素材及び方法によって包有又は収容される必要がある。そして、二酸化塩素発生剤を包有又は収容する素材及び方法は、抗菌成分として放散される二酸化塩素の効果を低下させるような二酸化塩素の透過を妨げてはならず、人体に悪影響を及ぼすような二酸化塩素発生剤の脱落や二酸化塩素の過剰な透過があってはならない。
このような観点から、特許文献14には、二酸化塩素発生剤が、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリ乳酸系樹脂と、炭酸カルシウムとを含有する樹脂組成物から成形される多孔質樹脂フィルム内に収容されることを特徴とする二酸化塩素発生剤が提案されている。
しかしながら、二酸化塩素は、パルプ等の漂白剤として利用されるように、強い酸化作用があり、鉄、銅、アルミニウム、並びに、フェライト系及びマルテンサイト系ステンレス等の金属を腐食し、ポリエチレン、ゴム、及び、ポリウレタン等の樹脂を劣化させるため、上記多孔質樹脂フィルムに二酸化塩素発生剤を包有又は収容することは、多孔質樹脂フィルムの崩壊による二酸化塩素発生剤の脱落の可能性があり、人体に化学熱傷等を引き起こす原因となるため、人体と接触する可能性がある携帯型の空間浄化抗菌用品に適用することは危険である(非特許文献4及び5)。特に、上記多孔質樹脂フィルムは、二軸延伸されており、高分子が二方向に配向されているが、一軸延伸される繊維等と比較すると結晶化度が低く、耐薬品性が十分であるとは言えないためである。
また、次亜塩素酸水も、酸化性水溶液であるため、金属を腐食し、樹脂を劣化させるため、次亜塩素酸水を樹脂フィルムに包有又は収容することは、二酸化塩素発生剤同様、人体と接触する可能性がある携帯型の空間浄化抗菌用品に適用することは危険である(非特許文献4及び5)。
多孔質樹脂フィルムが不織布や織布に積層された透湿防水素材に、二酸化塩素発生剤及び次亜塩素酸水を包有又は収容する場合もあるが、これについては、これらを積層するための接着剤が存在するため、多孔質樹脂フィルム担体よりも劣化する危険性が極めて高い。これは、接着剤は無定形高分子であり、耐薬品性に乏しいためである。
特開2002−95728号公報 特開2017−120246号公報 実用新案登録第3154192号公報 実用新案登録第3165375号公報 特開2017−141535号公報 特開2007−145654号公報 特開2010−230956号公報 特開平6−233985号公報 特許第4014230号公報 特開2007−217239号公報 特開2017−214267号公報 特許第6586652号公報 特許第5593423号公報 特許第6443625号公報
社団法人日本二酸化塩素工業会,"二酸化塩素とは?",[online],[2020年6月1日検索],インターネット,<URL:http://chlorinedioxide.or.jp/clo2> 一般財団法人機能水研究振興財団,"機能水とは",[online],[2020年5月29日検索],インターネット,<URL:http://www.fwf.or.jp/kinousui.html> 吉田真司,村松隆,福崎智司:日本防菌防黴学会誌,Vol.44,No.3,pp.113-118(2016) 青山敏貞,"新しい漂白剤としての二酸化塩素と亜塩素酸ナトリウムについて(II)",高分子,7巻,7号,pp.379-381(1958) 株式会社リンクス,"二酸化塩素による金属等の腐食テスト",[online],[2020年6月13日検索],インターネット,<URL:http://www.links-aqua.com/image/C6F3BBC0B2BDB1F6C1C7A4CBA4E8A4EBB6E2C2B0C5F9A4CEC9E5BFA9A5C6A5B9A5C8.pdf> 人見潤,"アルコールと殺菌の話",[online],[2020年4月29日検索],インターネット,<https://www.kao.co.jp/pro/hospital/pdf/08/08_05.pdf> 伊藤浩三,"フラッシュ紡糸不織布",繊維学会誌(繊維と工業),Vol.49,No.2,pp.50-55(1993) 関谷佳房,"新しいスポーツ素材−マイクロフト(登録商標)レクタス(登録商標),ウェルキィ−(登録商標)」,繊維学会誌(繊維と工業),Vol.49,No.3,pp.140-142(1989)
気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質、特に、次亜塩素酸水及び二酸化塩素発生剤を、人体と接触する可能性がある携帯型の空間浄化抗菌材として使用するため、従来、このような抗菌成分を含有する物質は、多孔質樹脂フィルム及び不織布や織物に積層された多孔質樹脂フィルム等の透湿防水素材によって包有又は収容される場合が多く見受けられる。しかし、このような透湿防水素材は、抗菌成分を透過することが可能であっても、抗菌成分による劣化が生じて崩壊し、抗菌成分を含有する物質が脱落することによって人体に化学熱傷等を引き起こす可能性が高いため、人体と接触する可能性がある携帯型の空間浄化抗菌用品に適用することは危険であるという問題がある。また、水又は水蒸気の透過量が過剰に多く、包有又は収容されている抗菌成分を含有する物質の抗菌成分生成速度及び生成量制御が困難であり、抗菌成分を空間に放散できる持続期間が短いという問題もある。
従って、本発明は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質によって劣化することなく、その抗菌成分が十分透過すると共に、水又は水蒸気が透過することなく抗菌成分を含有する物質を保護し、過剰な抗菌成分の生成を抑制することが可能な透湿防水機能を有する布によって包有される、空間を浄化する抗菌材、すなわち、空間浄化抗菌材、及び、それを用いた抗菌用品を提供することを目的としている。
本発明者らは、各種透湿防水素材を検討した結果、高密度ポリエチレンのフラッシュスパン紡糸した連続性極細長繊維の熱圧着不織布、及び、ポリエステル極細繊維の特殊嵩高性糸の高密度製織布を用いて、次亜塩素酸水及び二酸化塩素発生剤を包有した抗菌材が、これらの抗菌成分による透湿防水素材の劣化がなく、抗菌成分を十分透過すると共に、水又は水蒸気が透過することなく抗菌成分を含有する物質を保護し、過剰な抗菌成分の生成を抑制することが可能であることを見出し、更に、各種透湿防水素材を検討して本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されていることを特徴とする抗菌材である。
特に、透湿防水機能を有する不織布としては、高密度ポリエチレン繊維の熱融着した不織布であることが好ましく、透湿防水機能を有する織布としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、及び、綿繊維から撚られるいずれか一つ以上の糸から構成される織布であることが好ましい。
このような透湿防水機能を有する不織布の具体例としては、デュポン社製タイベック(登録商標)のハウスラップ(ソフト及びハード)、1073B、1059B、及び、2FS等を挙げることができる。また、透湿防水機能を有する織布の具体例としては、旭化成社製ストローム(登録商標)、大和紡績社製ベンタイル(登録商標)、ベンタイルピュア(登録商標)、ベンタイルゼロ(登録商標)、ベンタイルエクストラ(登録商標)、ベンタイルギア(登録商標)、及び、ベントーネ(登録商標)、並びに、シキボウ社製アゼック等を挙げることができる。
透湿防水素材が、このような高密度ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、及び、ポリエステル繊維である合成繊維から製造された不織布及び織布であることが好ましい理由は、合成繊維が一軸延伸され、高度に配向した結晶化度の高い、そして、耐薬品性に優れた高次構造の樹脂となっていることにあると考えられる。更に詳しくは、高密度ポリエチレンが、側鎖のない最も高密度に配向するポリエチレンであること、また、ナイロン及びポリエステルは、アミド結合及びエステル結合に基づく水素結合により極めて強固な分子間相互作用を形成していることによって結晶化度が高く、耐薬品性に優れた高次構造を形成していることに起因している。一方、綿繊維の場合は、高度に配向したセルロース繊維であるため、耐薬品性及び耐熱性に優れていることに起因しているものと考えられる。従って、抗菌成分、特に、強い酸化性を有する次亜塩素酸水及び二酸化塩素発生剤から放散される次亜塩素酸及び二酸化塩素と接触しても劣化して崩壊することなく、次亜塩素酸水及び二酸化塩素発生剤を保護することが可能となる。
従来、この分野では、次亜塩素酸水及び二酸化塩素発生剤を包有又は収容する素材として、又、これらの抗菌成分を透過する素材として、樹脂の二軸延伸で製造された多孔質樹脂フィルム及びこの多孔質樹脂フィルムを通気性が高く防水性ではない不織布や織布に積層した透湿防水素材が使用されている。しかし、ポリエチレンの多孔質樹脂フィルムは、ポリエチレンが低密度又は直鎖状低密度ポリエチレンの二軸延伸であることが多く、結晶化度が低く耐薬品性に乏しい。また、ポリエチレン、ポリウレタン、フッ素樹脂の多孔質樹脂フィルムを不織布や織布に積層した透湿素材は、ポリエチレン、ポリウレタン自体の耐薬品性が乏しく、これらを積層するための接着剤の耐薬品性が乏しいため、次亜塩素酸や二酸化塩素等の抗菌成分との接触により劣化して崩壊する危険性が高い。
更に、本発明の不織布及び織布は、抗菌成分の透過を損なうことなく、水を遮断するために、JIS L 1096に従ったガーレ通気度が、0.1〜300secであること、JIS L 1096に従ったフラジール通気度が、0.05〜120cc/cm/secであること、及び、JIS L 1099のA法に従った透湿度が、25〜10,000g/cm/hrであることの少なくともいずれか一つ以上を満足することが好ましい。これらの範囲内にあることにより、抗菌成分の透過と水の遮断の双方を満足することができる。
次いで、本発明の、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されている抗菌材は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質として、電解水、低級アルコール水溶液、又は、二酸化塩素発生剤を使用することが好ましい。
電解水は、0.2%以下の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を陽極と陰極が隔膜で仕切られた二室型又は三室型の電解槽内で電解し、陽極側において生じる次亜塩素酸を主成分とするpH2.7以下、有効塩素濃度20〜60ppmの強酸性電解水(強酸性次亜塩素酸水)、陽極と陰極が隔膜で仕切られていない一室型電解装置で、2〜6%塩酸水又は塩酸と塩化ナトリウム水溶液の混合液を電解することによって生成されるpH5〜6.5、有効塩素濃度10〜80ppmの微酸性電解水(次亜塩素酸水)、0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を陽極と陰極が隔膜で仕切られた二室型あるいは三室型電解槽内で電解し、陽極電解水と陰極電解水が装置内で混合されて生成されるpH2.7〜5.0、有効塩素10〜60ppmの弱酸性電解水(弱酸性次亜塩素水)、水道水を一室型無隔膜電解槽で電解することによって生成されるpH6.5〜7.5、有効塩素濃度数ppmの中性電解水、及び、陽極と陰極が隔膜で仕切られていない一室型電解槽で0.2%以下のNaCl水を電解することによって生成されるpH7.5、有効塩素濃度30〜200ppmのアルカリ性である電解次亜水の次亜塩素酸水を用いることができる(非特許文献2)。特に、安全性という観点から、食品添加物に指定されている強酸性電解水、微酸性電解水、及び、弱酸性電解水がより好ましい。
低級アルコール水溶液は、抗菌性という観点からは、炭素数が多いアルコールが好ましいが、放散性及び安全性ということを考慮すると、エタノール又はプロパノール水溶液が好ましい(非特許文献6)。
二酸化塩素発生剤は、特に限定されないが、多孔性無機質担体に二酸化塩素ガスが吸着保持された二酸化塩素発生剤、亜塩素酸塩と固体酸とを含有する二酸化塩素発生剤、亜塩素酸塩と多孔質固体親水性材料とを含有する二酸化塩素発生剤、亜塩素酸塩、固体酸、及び、保持した水分を徐放可能な固体を含有する二酸化塩素発生剤、亜塩素酸塩と炭酸金属塩とを含有する二酸化塩素発生剤、亜塩素酸塩、水分との反応を促進させる活性化剤、及び、吸湿性を制御する二酸化ケイ素を含有する二酸化塩素発生剤、ゼオライト等の多孔質体に亜塩素酸塩を保持した二酸化塩素発生剤、並びに、二酸化塩素、亜塩素酸塩、及び、pH調整剤としてのリン酸を構成成分とする二酸化塩素水溶液を高吸水性樹脂に含有させたゲル状組成物等の従来技術を用いることができる。
更に、本発明の抗菌材は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分の放散速度及び放散量を高めるため、抗菌成分の放散を促進する機構、すなわち、放散促進機構が備えられていることが好ましい。
気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、電解水又は低級アルコール水溶液の場合は、放散促進機構として、抗菌成分の放散を促進する羊毛フエルト、通気性及び透水性を有する不織布、繊維を束ねた中綿、繊維を成形加工したファイバーロッド、発泡された樹脂であるスポンジ、ポリオレフィン樹脂等のビーズの金型成形体である樹脂焼結体、並びに、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアミン系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、及び、ポリグリコール系等の高吸水性樹脂等の保水材を利用することができる。保水材は、電解水や低級アルコールを吸収して透湿防水機能を有する不織布又は織布に包有するだけでよく、電解水や低級アルコール等の液体と空気との接触面積が大きくなり、放散速度及び放散量が向上する。
また、加熱手段は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、液体、固体、及び、ゲル状等の性状にかかわらず放散促進機構として効果を奏することができる。加熱手段は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布で包有された抗菌材と接触するように備えることが好ましい。
この加熱手段は、ヒーター等の電気的な方法を用いても問題ないが、金属、水、塩類等の活性化剤、無機多孔質体、及び、保水剤等の混合物の酸化反応熱、より具体的には、鉄粉、水、塩化ナトリウム、活性炭、バーミュライト、及び、吸水性樹脂等が通気性の高い不織布に包有されたカイロの酸化反応熱を利用することが、大きさや形状の自由度という観点から、携帯型の空間浄化抗菌材に相応しい。また、金属、水、酸化剤、無機多孔質体、及び、保水剤等の混合物の包装方法は、従来のカイロに利用されている技術をそのまま転用することができるので、本発明の抗菌材の形態に応じて構成されることが好ましい。
このように、本発明の、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されている抗菌材は、このまま空間浄化抗菌材として使用できるが、水蒸気を透過するため、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質の劣化が進み、長期間保存することは困難である。そのため、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されている抗菌材は、外気と遮断される保護フィルムで密封されることが好ましい。
密封方法は、少なくとも、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されている抗菌材だけを保護フィルムで密封する方法、又は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質だけを保護フィルムで密封する方法が好ましい。
後者の方法の場合、使用する際に保護フィルムを開封するため、この保護フィルムを開封する穿孔手段が備えられる必要がある上、放散促進機構として酸化反応熱を利用する場合、放散促進機構も外気と遮断される保護フィルムで密封しておかなければならず、複雑な構成となる。
しかし、前者の方法の場合、放散促進機構として酸化反応熱を利用すれば、後者同様、放散促進機構も外気と遮断される保護フィルムで密封しておかなければならないが、放散促進機構も含めて密封すれば、この必要がない上、穿孔手段も不要な簡単な構成となり好ましい。
抗菌成分を含有する物質の保護の強化を図るならば、これらの密封方法を併用することも好ましい方法である。
保護フィルムは、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂及びその共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル系樹脂フィルム、これらのアルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム箔、並びに、これらの積層フィルムを、熱溶融シール等の方法で包装して用いることが好ましい。
穿孔手段は、特に限定されないが、保護フィルムを簡単に突き破ることができることができる突起を設ける方法、保護フィルムにミシン目のような貫通していないが裂け易い部分を設ける方法等を用いることができる。
以上、本発明の、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布又は織布によって包有されている空間浄化抗菌材には、種々の形態があり、そのまま、机、タンス、ロッカー、及び、押入れ等に置くだけで利用することができる。ただし、保護フィルムが設けられている場合には、それを開封して利用することができる。
しかし、本発明の種々の形態の抗菌材は、薄く、小さくできるため、ウェアラブル(身に付けることができる)な抗菌材として利用することも可能である。従って、本発明は、上記空間浄化抗菌材を身体に取付ける機構が備えられていることを特徴とする抗菌用品も提供するものである。
空間浄化抗菌材を身体に取り付ける機構は、特に限定されないが、粘着剤で衣服又は身体に貼付する方法、カードケースのような容器に装入し、ストラップで身に付ける方法、リストバンドに取り付ける方法、及び、帽子等に装着する方法等が好ましく用いられる。
空間浄化抗菌材にこのような取付け機構を設けた空間浄化抗菌用品場合には、空間浄化抗菌用品全体だけを外気と遮断される保護フィルムで密封することが好ましい。空間浄化抗菌材及び酸化反応熱を利用する加熱手段を保護する必要がなく、穿孔手段を設ける必要もないので、最も簡単に空間浄化抗菌材を外気から保護し、長期間保管することができる。
本発明によれば、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質、特に、次亜塩素酸水及び二酸化塩素発生剤を、人体と接触する可能性がある携帯型の空間浄化抗菌材として使用するため、このような抗菌成分を含有する物質を包有又は収容していた多孔質樹脂フィルム及び不織布や織物に積層された多孔質樹脂フィルム等の透湿防水素材の抗菌成分による劣化の問題を解決することができる。従って、抗菌成分による劣化が生じて崩壊し、抗菌成分を含有する物質が脱落することによって人体に化学熱傷等を引き起こすことを防止することができる。
また、本発明によれば、上記多孔質樹脂フィルム及び不織布や織物に積層された多孔質樹脂フィルム等の透湿防水素材では、水又は水蒸気の透過量が過剰に多く、包有又は収容されている抗菌成分を含有する物質の抗菌成分生成速度及び生成量制御が困難であり、抗菌成分を空間に放散できる持続期間が短いという問題も解決することができる。
従って、本発明は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質によって劣化することなく、その抗菌成分が十分透過すると共に、水又は水蒸気が透過することなく抗菌成分を含有する物質を保護し、過剰な抗菌成分の生成を抑制することが可能な透湿防水機能を有する布によって包有される、空間を浄化する抗菌材、すなわち、空間浄化抗菌材、及び、それを用いた抗菌用品を提供することができる。
本発明の、気体又は蒸気として空間中に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布によって包有されることを特徴とする抗菌材において、その不織布の一実施形態として使用した、高密度ポリエチレンのフラッシュスパン紡糸した連続性極細長繊維の熱圧着不織布であるタイベック(登録商標)の表面(a)及び断面(b)の電子顕微鏡写真である(非特許文献7)。 本発明の、気体又は蒸気として空間中に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する織布によって包有されることを特徴とする抗菌材において、その織布の一実施形態として使用した、ポリエステル極細繊維の特殊嵩高性糸の高密度製織布に撥水加工したマイクロフト(登録商標)レクタス(登録商標)の断面から表面に至る部分の電子顕微鏡写真である(非特許文献8)。 図3は、本発明の一実施形態に係る、気体又は蒸気として空間中に放散される抗菌成分を含有する物質である微酸性電解水を、透湿防水機能を有する不織布であるタイベック(登録商標)によって包有されていることを特徴とする抗菌材の断面模式図である。 図4は、抗菌材に含有される抗菌成分の放散を促進する機構を備えていることを特徴とする本発明の抗菌材の一実施形態である。(a)は、微酸性電解水の抗菌成分の放散を促進する機構が保水材であって、保水材が微酸性電解水を保持できるように透湿防水機能を有する不織布内に装入されていることを特徴とする抗菌材の断面模式図である。(b)は、二酸化塩素発生剤の抗菌成分の放散を促進する機構が鉄の酸化反応熱を利用する加熱手段であって、透湿防水機能を有する不織布で包有される二酸化塩素発生剤を昇温できるように加熱手段が配備されていることを特徴とする抗菌材の断面模式図である。 図5(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る、図3の抗菌剤、及び、加熱手段の保護フィルムを取り除いた図4(b)の抗菌材が、それぞれ、外気と遮断される保護フィルムで外装及び密封されていることを特徴とする抗菌材の断面模式図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る、抗菌成分を含有する物質が外気と遮断される保護フィルムで密封される抗菌材と、この保護フィルムを開封することができる穿孔治具とが、透湿防水機能を有する不織布によって包有されていることを特徴とする抗菌剤の断面模式図である。(a)は、図3に示す抗菌材の微酸性電解水が保護フィルムで内装及び密閉される場合である。(b)は、図4(b)に示す抗菌材の二酸化塩素発生剤が保護フィルムで内装及び密閉される場合である。 図7は、本発明の一実施形態に係る、抗菌成分を含有する物質が透湿防水機能を有する不織布で包有されている抗菌材に、ウェアラブルであるための取付け機構として粘着剤が備えられていることを特徴とする抗菌用品の断面模式図である。(a)は、図3に示す抗菌材において、取付け機構として粘着剤を適用した抗菌用品である。(b)は、図4(b)に示す抗菌材の抗菌成分を含有する物質を微酸性電解水に置換えた抗菌材において、取付け機構として粘着剤を適用した抗菌用品である。 図8(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る、図7(a)及び(b)に示す抗菌用品が、それぞれ、外気と遮断される保護フィルムで外装及び密封されていることを特徴とする抗菌用品の断面模式図である。 図9は、本発明の一実施形態に係る、図3に示す抗菌成分を含有する物質が透湿防水機能を有する不織布で包有されている抗菌材に、ウェアラブルであるための取付け機構としてネックストラップが備えられていることを特徴とする抗菌用品の正面模式図である。 (a)は、図3に示す抗菌成分を含有する物質が透湿防水機能を有する不織布で包有されている抗菌材を、ネックストラップで身に着けるための収容ケースに装入する過程における断面模式図である。(b)は、図7(b)に示す抗菌材の取付け機構として粘着剤が備えられている抗菌用品の粘着剤の代わりに、ネックストラップで身に着けるための収容ケースが用いられ、その収容ケースに抗菌材が装入されている抗菌用品の断面模式図である。 微酸性電解水の抗菌成分の放散を促進することができるように、透湿防水機能を有する不織布で包有される微酸性電解水を昇温するための鉄の酸化反応熱を利用する加熱手段が配備されている抗菌材が、外気と遮断される保護フィルムで外装及び密封されている抗菌材の断面模式図である。 図11のように保管されている抗菌材が、保護フィルムから取り出され、ネックストラップで身に着けるための収容ケースに装入される工程を示す断面模式図である。
以下、本発明を、実施形態を用いてより具体的に説明するが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
本発明は、気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、多孔質樹脂フィルムや通気性が高く防水性のない不織布や織布に積層された多孔質樹脂フィルムで包有又は収容される抗菌材における、包有材又は収容材の抗菌成分による劣化、及び、水及び水蒸気の過剰な透過による抗菌成分を含有する物質の劣化の問題を、透湿防水機能を有する不織布又は織布を包有材として適用することによって解決したものである。
そこで、まず、本発明の一実施形態に係る透湿防水機能を有する不織布及び織布の一例を図1及び図2に示す。
図1は、透湿防水機能を有する不織布の代表例である、高密度ポリエチレンのフラッシュスパン紡糸した連続性極細長繊維の熱圧着不織布であるタイベック(登録商標)の表面(a)及び断面(b)の電子顕微鏡写真であり、非特許文献7より引用した。外観だけからこの機能を理解できるものではないが、従来の不織布と比較して、極めて細い繊維が緻密に積層されており、優れた透湿防水機能を推量させる。
図2は、透湿防水機能を有する織布の代表例である、ポリエステル極細繊維の特殊嵩高性糸の高密度製織布に撥水加工したマイクロフト(登録商標)レクタス(登録商標)の断面から表面に至る部分の電子顕微鏡写真であり、非特許文献8より引用した。この織布は、その表面の激しい凹凸に特徴があり、水をはじいて水滴を造る超撥水性の蓮の葉に類似した、バイオミメティックな織布である。
このような透湿防水性不織布又は織布を用いたことに本発明の大きな特徴を有し、図1及び2に示す素材に限定されるものではないが、以下の実施形態では、透湿防水性不織布であるタイベック(登録商標)ハウスラップ(ハード)を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る、気体又は蒸気として空間中に放散される抗菌成分を含有する物質である微酸性電解水111を、透湿防水機能を有する不織布であるタイベック(登録商標)112によって包有されていることを特徴とする抗菌材110の断面模式図である。本発明の基本となる、最も簡単な構造の抗菌材である。この袋状への成形加工は、品質上及び生産上、レーザー加工を用いることが好ましいが、カッター、熱融着等の方法でも行うことができる。ただし、接合部113は、抗菌成分による劣化の原因となる接着剤を用いて形成されるものではない。なお、抗菌成分を含有する液体の代表例として、ここでは電解水の一例である微酸性電解水を使用しているが、これに限定されるものではない。
図4は、図3に示す抗菌材110に含有される抗菌成分の放散を促進する機構を備えていることを特徴とする本発明の抗菌材の一実施形態である。図4(a)は、微酸性電解水211の抗菌成分の放散を促進する機構が保水材214であって、保水材214が微酸性電解水211を保持できるように透湿防水機能を有する不織布212内に装入されていることを特徴とする抗菌材210の断面模式図である。図4(b)は、二酸化塩素発生剤311の抗菌成分の放散を促進する機構が、鉄の酸化反応熱を利用する加熱手段320であって、二酸化塩素発生剤311が透湿防水性不織布312で包有される抗菌材310を昇温できるように加熱手段320が配備されていることを特徴とする抗菌材300(加熱機構付設二酸化塩素発生剤含有抗菌材)の断面模式図である。
鉄の酸化反応熱を生成する材料は、カイロに使用されている、鉄粉、水、塩化ナトリウム、活性炭、バーミュライト、及び、吸水性樹脂等の加熱剤321で、ポリエチレンフィルム322と多孔質ポリエチレン323で包有され、多孔質ポリエチレン323に通気性が高い不織布324が被覆され、更に、不織布324が、外気と遮断するポリエチレンと/KOP(ポリ塩化ビニリデンコート二軸延伸ポリプロピレン)ラミネートフィルム325で被覆されている。このラミネートフィルムは、使用する直前に容易に剥がれるようにイージーピールのヒートシールが施されている。また、この抗菌材310と加熱手段320とは、ポリエチレンフィルム322で加熱接着することが好ましい。
図4では、抗菌成分の放散を促進する機構を備えた抗菌材の一実施形態を示したが、これに限定されず、保水材214と加熱手段320を併用することもできる。
図5(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る、図3の抗菌材110、及び、加熱手段320の保護フィルムであるポリエチレン/KOPラミネートフィルム325を取り除いた加熱手段520と図4(b)の二酸化塩素発生剤311が透湿防水性不織布312で包有された抗菌材310とを接着した抗菌材(310/520)が、それぞれ、外気と遮断される保護フィルム410で外装及び密封されていることを特徴とする抗菌材400(外気遮断構造体外装型電解水含有抗菌材)及び500(外気遮断構造体外装型電解水含有抗菌材)の断面模式図である。密封部412は、保護フィルムも加工できるレーザー加工で形成されることが好ましいが、ヒートシールでもよい。この方法による外気との遮断は、加熱手段520の保護フィルム325を削除でき、簡略化することができる。
図6は、本発明の一実施形態に係る、抗菌成分を含有する物質が外気と遮断される保護フィルムで密封される抗菌材と、この保護フィルムを開封することができる穿孔治具とが、透湿防水性不織布によって包有されていることを特徴とする抗菌材600(外気遮断構造体内装型電解水含有抗菌材)及び700(外気遮断構造体内装型加熱機構付設二酸化塩素発生剤含有抗菌材)の断面模式図である。図6(a)は、図3に示す抗菌材110の微酸性電解水111に相当する微酸性電解水612が保護フィルム612で内装され、密封部613で密封される場合で、穿孔治具614を備える必要がある。図6(b)は、図4(b)に示す抗菌材310の相当する二酸化塩素発生剤311に相当する二酸化塩素発生剤711が保護フィルム712で内装され、密封部713で密封される場合で、穿孔治具714を備える必要がある。この場合、加熱手段は、図4と全く同様の、鉄系加熱剤321を保護するフィルム325を必要とする加熱手段320でなければならない。
図7は、本発明の一実施形態に係る、抗菌成分を含有する物質が透湿防水機能を有する不織布で包有されている抗菌材に、ウェアラブルであるための取付け機構として粘着剤が備えられていることを特徴とする抗菌用品の断面模式図である。図7(a)は、図3に示す抗菌材110において、取付け機構として粘着剤811と剥離フィルム812を適用した抗菌用品800(接着式電解水含有抗菌用品)である。粘着剤は、特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及び、シリコン系粘着剤等を使用することができ、離型フィルムも、基材及び離型剤共に、特に限定されるものではない。図7(a)のように、例えば、ストライプ状又はパターン状にパートコートすることが、衣服又は身体に貼付した際に、体温が抗菌材110に伝達して、抗菌成分の放散を促進することができ好ましい。また、転写法で粘着剤を透湿防水性不織布112に形成することが好ましい。図7(b)は、図4(b)に示す抗菌材300(加熱機構付設二酸化塩素発生剤含有抗菌材)から、鉄系加熱剤321を外気と遮断する保護フィルム325を取り除いた図5に示す加熱手段520と、抗菌成分を含有する物質である二酸化塩素発生剤311を微酸性電解水911に置換えた抗菌材910と接着した抗菌材(910/520)において、取付け機構として粘着剤931、離型フィルム932、及び、密封用粘着剤933を適用した抗菌用品900(接着式加熱機構付設電解水含有抗菌用品)である。粘着剤931、離型フィルム932、及び、密封用粘着剤933は、図7(a)と同様であるが、密封用粘着剤は、外気との遮断性を考慮して、ガラス転移温度の高い粘着剤、無機充填剤を混合した粘着剤であることが好ましい。
図8(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る、図7(a)の抗菌用品800(接着式電解水含有抗菌用品)、及び、図7(b)に示す抗菌用品900(接着式加熱機構付設電解水含有抗菌用品)の密封用粘着剤933を取り除いた抗菌用品(910/520/810)が、それぞれ、外気と遮断される保護フィルム411を用いた外装密封構造410で保護されていることを特徴とする抗菌用品1000(外気遮断構造体外装型接着式電解水含有抗菌用品)及び1100(外気遮断構造体外装型接着式加熱機構付設電解水含有抗菌用品)の断面模式図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る、図3に示す微酸性電解水111が透湿防水性不織布112で包有されている抗菌材110に、ウェアラブルであるための取付け機構がネックストラップ式であることを特徴とする抗菌用品の正面模式図である。(図示されていない)抗菌材110は、通気孔1204、ネックストラップホール1205、及び、ヒンジ1206が形成された抗菌剤ケース1203に収容され、ネックストラップ1201のネックストラップフック1202をネックストラップホール1205に挿入して、ネックストラップ1201で首に掛ける構成となっている。
図10(a)は、図3に示す微酸性電解水111が透湿防水性不織布112で包有されている抗菌材110を、ネックストラップ1201で身に着けるための抗菌材ケース1203に装入する過程における断面模式図で、ネックストラップ1201は省略してある。ヒンジ1206で開閉自在になっており、閉じることによって最終的な抗菌用品1200(ネックストラップ式電解水含有抗菌用品)として使用できる。図10(b)は、図7(b)に示す抗菌材の取付け機構として粘着剤による取付け密封機構930が備えられている抗菌用品の取付け密封機構930の代わりに、ネックストラップ式で身に着けるためのネックストラップ式抗菌材収容ケース1210が用いられ、その抗菌材ケース1203に抗菌材(910/520)が装入されている抗菌用品1300(ネックストラップ式加熱機構付設電解水含有抗菌用品)の断面模式図で、ネクストラップ1201は省略してあるが、この状態で使用することができる。
図11は、微酸性電解水911の抗菌成分の放散を促進することができるように、透湿防水機性不織布912で包有される微酸性電解水911を昇温するための鉄の酸化反応熱を利用する加熱手段520が配備されている抗菌材(910/520)が、外気と遮断される保護フィルム411を用いた外装密封構造410で保護されている抗菌材1400(外気遮断構造体外装型加熱機構付設電解水含有抗菌材)の断面模式図である。
図12は、図11のように保管されている抗菌材1400(外気遮断構造体外装型加熱機構付設電解水含有抗菌材)が、外気と遮断される保護フィルム411を用いた保護フィルム410から取り出され、ネックストラップ式抗菌材収容ケース1210に装入され、使用されるまでの工程を示す断面模式図で、ネックストラップ1201は省略してある。図12(a)は、抗菌剤ケース1203のヒンジ1206用いて、抗菌剤ケース1203を開いて、抗菌材(910/520)を挿入した後、抗菌剤ケース1203を閉じようとする状態の抗菌用品1500(外気遮断構造体外装型ネックストラップ式加熱機構付設電解水含有抗菌用品)の断面模式図である。図12(b)は、抗菌材(910/520)が、ネックストラップ式抗菌材収容ケース1210に装入が完了し、使用することができる状態の抗菌用品(外気遮断構造体外装型ネックストラップ式加熱機構付設電解水含有抗菌用品)の断面模式図である。
本発明の空間浄化抗菌材及びそれを用いた抗菌用品の技術的特徴は、優れた耐薬品性、並びに、水の遮断性を有する透湿防水機能を有する不織布又は織布を、強い酸化作用を有する抗菌成分が放散される物質の包有材として使用できることを見出したことにあり、本明細書では、強い酸化力を有する抗菌成分を放散する物質の携帯型抗菌用品の包有材への応用を記載しているが、大型の据置型空間浄化抗菌装置における抗菌成分の放散速度及び放散量を制御するフィルターとしても利用できる可能性が高い。
110 電解水含有抗菌材
111 微酸性電解水
112 透湿防水性不織布
113 接合部
210 電解水保持体含有抗菌材
211 微酸性電解水
212 透湿防水織布
213 接合部
214 保水材
300 加熱機構付設二酸化塩素発生剤含有抗菌材
310 二酸化塩素発生剤含有抗菌材
311 二酸化塩素発生剤
312 透湿防水性不織布
313 接合部
320 加熱手段(1)
321 鉄系加熱剤
322 ポリエチレン/KOPラミネートフィルム
323 多孔質ポリエチレンフィルム
324 通気性不織布
325 ポリエチレン/KOPラミネートフィルム
400 外気遮断構造体外装型電解水含有抗菌材
410 外装型外気遮断構造体
411 外気遮断フィルム
412 密閉部
500 外気遮断構造体外装型加熱機構付設二酸化塩素発生剤含有抗菌材
520 加熱手段(2)
521 鉄系加熱剤
522 ポリエチレン/KOPラミネートフィルム
523 多孔質ポリエチレンフィルム
524 通気性不織布
600 外気遮断構造体内装型電解水含有抗菌材
610 内装型外気遮断構造体
611 微酸性電解水
612 外気遮断フィルム
613 密封部
614 穿孔治具
700 外気遮断構造体内装型加熱機構付設二酸化塩素発生剤含有抗菌材
711 二酸化塩素発生剤
712 外気遮断フィルム
713 密封部
714 穿孔治具
800 接着式電解水含有抗菌用品
810 取付け機構
811 粘着剤
812 離型フィルム
900 接着式加熱機構付設電解水含有抗菌用品
910 電解水含有抗菌材
911 微酸性電解水
912 透湿防水性不織布
913 接合部
930 取付け密封機構
931 粘着剤
932 離型フィルム
933 密封用粘着剤
1000 外気遮断構造体外装型接着式電解水含有抗菌用品
1100 外気遮断構造体外装型接着式加熱機構付設電解水含有抗菌用品
1200 ネックストラップ式電解水含有抗菌用品
1210 ネックストラップ式抗菌材収容ケース
1201 ネックストラップ
1202 ネックストラップフック
1203 抗菌材ケース
1204 通気孔
1205 ネックストラップホール
1206 ヒンジ
1300 ネックストラップ式加熱機構付設電解水含有抗菌用品
1400 外気遮断構造体外装型加熱機構付設電解水含有抗菌材
1500 外気遮断構造体外装型ネックストラップ式加熱機構付設電解水含有抗菌用品

Claims (16)

  1. 気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する不織布によって包有されていることを特徴とする抗菌材。
  2. 気体又は蒸気として空間に放散される抗菌成分を含有する物質が、透湿防水機能を有する織布によって包有されていることを特徴とする抗菌材。
  3. 前記不織布が、高密度ポリエチレン繊維の熱融着した不織布であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌材。
  4. 前記織布が、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、及び、綿繊維から撚られるいずれか一つ以上の糸から構成される織布であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌材。
  5. 前記不織布及び前記織布のガーレ通気度が、0.1〜300secであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌材。
  6. 前記不織布及び前記織布のフラジール通気度が、0.05〜120cc/cm/secであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌材。
  7. 前記不織布及び前記織布の透湿度が、25〜10,000g/cm/hrであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌材。
  8. 前記抗菌成分を含有する物質が、電解水又は低級アルコール水溶液のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗菌材。
  9. 前記抗菌成分を含有する物質が、二酸化塩素発生剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗菌材。
  10. 前記抗菌成分の放散を促進する機構が備えられていることを特徴とする請求項8又は9に記載の抗菌材。
  11. 前記放散を促進する機構が、保水材であることを特徴とする請求項10に記載の抗菌材。
  12. 前記放散を促進する機構が、加熱手段であることを特徴とする請求項10に記載の抗菌材。
  13. 外気と遮断される保護フィルムで密封される前記抗菌成分を含有する物質と、前記保護フィルムを開封する穿孔手段とが、前記不織布又は前記織布によって包有されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗菌材。
  14. 外気と遮断される保護フィルムで外装及び密封されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗菌材。
  15. ウェアラブルである(身に付けることができる)ための取付け機構が備えられていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗菌用品。
  16. 外気と遮断される保護フィルムで密封されていることを特徴とする請求項15に記載の抗菌用品。

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