JP2021187747A - TGF−β抑制用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なTGF−β抑制用組成物を提供すること。【解決手段】本発明のTGF−β抑制用組成物は、小麦蛋白質の加水分解物を含有する。小麦蛋白質の加水分解物として、グルタミン含有ペプチドを65〜90質量%含み、前記ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合が30〜60質量%である加水分解物を用いることが好ましい。前記小麦蛋白質の加水分解物が、分子量5000以上のペプチドを30〜70質量%含むことも好ましい。【選択図】なし

Description

トランスフォーミング増殖因子-β(Transforming Growth Factor-β:TGF-β)はサイトカインの一種であり、当初、線維芽細胞の形質転換を促進する因子として見出されたが、その後の研究により、様々な細胞種の増殖、運動性、分化などを調節することで多彩な生命現象に関与していることが明らかになった。また、TGF−βシグナル伝達調節の破綻が疾病につながる例(癌、免疫異常、線維症、骨軟骨疾患、血管病変など)も多く知られており、TGF−βの作用を抑制する薬剤の開発も盛んである(非特許文献1)。
また、日常の生活活動や運動といった身体活動は,健康づくりに欠かすことができない生活習慣である。身体活動の不足は,肥満や生活習慣病の発症,高齢者の自立度低下や虚弱などの危険因子であるといわれており,一定時間の運動を行い、適切な生活活動及び運動習慣を確立することが重要である。ここで運動を行なう際に肉体的限界に至るはるか以前に感じる“中枢性疲労”は、TGF−βが引き起こしていることが知られている。例えば非特許文献2では、運動後のラットの脳の脊髄液を投与されたマウスにおいて自発的な運動行動の停止が引き起こされたこと、マウスの運動停止を引き起こす活性物質が脳の脊髄液中のTGF−βであったことが報告されている。脳の脊髄液はその総量の80%が血清・血漿由来であることから、血清・血漿の組成と非常に類似性が高い(非特許文献3)。また血漿中のTGF−βが、運動負荷時に増大することも知られている(非特許文献4)。これらのことから、運動時における血漿中のTGF−βの増加を抑制することで、中枢性疲労を改善又は予防することが期待できると考えられている。
例えば、特許文献1には、テアニンを有効成分として含有するTGF−β抑制剤が示されている。特許文献2には、乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. cremoris H-61)を有効成分として含有するTGF−β2抑制剤が示されている。
従来技術では、TGF−βを抑制するための組成物が例示されているが、小麦蛋白質の加水分解物によるTGF−β抑制作用は明らかにされていなかった。
グルタミン含有ペプチドの作用として,長距離走,サッカー,投擲などの競技者に対する運動負荷後の遅発性筋損傷軽減作用(非特許文献5〜7)が報告されている。また、運動習慣のない健常成人に対するNK細胞活性の上昇(非特許文献8)や自体重エクササイズとの併用による中高齢者の筋量維持(非特許文献9)などが報告されている。しかしながら、TGF−β抑制作用は明らかにされていなかった。
また特許文献3には小麦由来のグルタミン含有ペプチドの作用として,運動翌日の疲労感や運動3日後の筋肉痛の改善が報告されている。
しかしながら特許文献3は運動中に感じる中枢性疲労の軽減に関するものではなく、ましてTGF−β抑制作用は記載も示唆もされていない。
特許2006−63003号公報 特許2015−145356号公報 特開2005−97162号公報
「TGF−βシグナル伝達研究の新展開」宮澤恵二、医学のあゆみ、Vol.234(No.10),p885-889,2010 「運動・栄養と中枢性疲労発生機構−TGF−βによる中枢性疲労発生と代謝調節−」井上和生ほか,体力科学,55(2),p279-286,2006 「脳脊髄液のオミックス」石原誠人、Fluid Management Renaissance、2015年7月号(Vol.5 No.3)p68-75 「運動に伴う消化器・免疫病態の解析と予防飲料水の開発」井上正康ら、デサントスポーツ科学、Vol.25、p88-93 Koikawa N et al.Delayed-onset muscle injury and its modification by wheat gluten hydrolysate.Nutrition 2009;25:p493-498. Aoki K,et al.Post-training consumption of wheat gluten hydrolysate suppresses the delayed onset of muscle injury in soccer players.Experimental and Therapeutic Medicine 2012;3:p969-972. 高梨雄太ほか.小麦グルテン加水分解物(WGH)は投擲競技者のウエイトトレーニングにおける筋損傷を軽減するか?日本臨床スポーツ医学会誌 2012;20(1):66-71. Horiguchi N,et al.Effect of Wheat Gluten Hydrolysate on the Immune System in Healthy Human Subjects.Biosci Biotechnol Biochem. 2005;69(12):p2445-2449. 新村由紀ほか.自体重エクササイズと小麦グルテン加水分解物配合サプリメント併用が中高齢者の下肢筋力と筋量に及ぼす効果.体力科学 2012;61(6):636(42-2-C-3,p188).
本発明の課題は、小麦蛋白質の加水分解物を有効成分とする新規なTGF−β抑制用組成物を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決するため検討した結果、小麦蛋白質の加水分解物にTGF−β抑制作用を有することを見出し、本発明の完成に至った。
詳細には、小麦蛋白質の加水分解物、好ましくはグルタミン含有ペプチドを含み、特に好ましくは前記グルタミン含有ペプチドの含有量が65〜90質量%であり、前記ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合が30〜60質量%であり、小麦蛋白質の加水分解物が分子量5000以上のペプチドを30〜70質量%含む、TGF−β抑制用組成物を提供する。また本発明は、前記の組成物を含有するTGF−β抑制用食品を提供する。
本発明の組成物は、運動負荷時の血中TGF−βを減少させる効果を有する。本発明の組成物は運動に伴う中枢性疲労に対してTGF−β抑制作用に基づく予防又は改善を図ることができる。また、TGF−βに起因する種々の疾患(免疫異常、線維症、骨軟骨疾患、血管病変など)についてTGF−β抑制作用に基づく予防又は治療効果が期待できる。
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明する。
本発明で使用される小麦蛋白質の加水分解物は、高分子の小麦由来の蛋白質を、加水分解することによって比較的分子量の小さいペプチドとすることにより、高いTGF−β抑制作用を獲得させたものである。例えば、運動前又は運動中に本発明の組成物を摂取することで、主観的な運動負荷強度の軽減が期待できる。
小麦としては、入手可能な小麦であればいずれのものも用いることができる。好適な例として、イネ科コムギ属のパンコムギ、デュラムコムギ、クラブコムギ、スペルトコムギ、エンマコムギ等や、イネ科エギロプス属のタルホコムギ、クサビコムギ等が挙げられる。
加水分解に用いられる小麦蛋白質は、主として小麦由来のグルテン(小麦グルテン)をさすが、その他にアルブミン、グロブリン、グルテニン、グリアジン等の小麦中に含まれていることが知られている他の蛋白質を含有していてもよく、さらに澱粉質や繊維質等の不純物を不可避的に含有していてもよい。
また、本発明では、小麦蛋白質として、小麦由来のグルテンに予め化学的処理や酵素等による生物的処理を施して、分子量を低下させたものや、プロテアーゼとの親和性等を高めたものも使用できる。さらに、未精製の小麦蛋白質、未精製の小麦グルテン等も使用することができる。小麦から澱粉を精製する際に副生物として小麦蛋白質が得られるが、これをそのまま利用してもよく、そうすることで従来使用されなかった副生物の小麦蛋白質を有効利用することができる。
小麦蛋白質の加水分解物としては、前記の小麦蛋白質を加水分解したものであればいずれのものでもよく、加水分解は、適宜公知の方法、例えば、酸を用いて加水分解する方法や、蛋白質加水分解酵素(プロテアーゼ)を用いて加水分解する方法等を適用して実施することができる。
酸を用いて小麦蛋白質を加水分解する方法としては、慣用の方法が採用できる。例えば、酸としては、鉱酸である硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、亜硫酸;有機酸であるシュウ酸、クエン酸、酢酸、ギ酸等が使用できる。このような酸を用いて小麦蛋白質を加水分解する手順としては、小麦蛋白質を含有する水性媒体に、酸規定度0.01〜2規定の範囲になるように酸を加え、水性媒体の温度を50〜100℃にして10分〜6時間加水分解させる手順が挙げられる。加水分解を停止させたい場合には、塩基を加えて中和することで停止させることができる。
酸を用いて加水分解する場合、水性媒体中における小麦蛋白質の濃度は、酸の種類や規定度により適宜調節する必要があるが、通常、1.0〜80質量%の範囲に調節して処理するのがよい。
蛋白質加水分解酵素を用いて小麦蛋白質を加水分解する方法としては、例えば、小麦グルテンを、プロテアーゼ、又はプロテアーゼとアミラーゼを用いて加水分解する方法が挙げられる(特許第2019439号公報及び特許第2985193号公報参照)。その際のプロテアーゼとしては、例えば、ペプシン、ヒイロタケ起源の酸性プロテアーゼ、アスペルギルス起源の酸性プロテアーゼ、パパイン、ブロメライン、サーモリシン、トリプシン、キモトリプシン、プロナーゼ、サチライシン、エスペラーゼ等のような種々のプロテアーゼを用いることができる。プロテアーゼは、単一のものを用いてもよいし、複数種を組み合わせて、例えば、酸性プロテアーゼと中性プロテアーゼを組み合わせて用いてもよいし、複数回処理を行ってもよい。
小麦グルテンをプロテアーゼで加水分解する際に、アミラーゼを併用すると、小麦グルテンに含まれている澱粉質や繊維質等の不純物が分解除去されて、ペプチド成分を高純度で含む加水分解物を高収率で得ることができる(特許第2985193号公報を参照)。小麦グルテンは水に不溶で且つ水に対する分散性に劣るが、小麦グルテンの加水分解物は、低分子化しているために水に対する分散性に優れている。
こうして得られる小麦蛋白質の加水分解物をそのまま本発明における有効成分として用いてもよい。したがって、本発明で用いられる小麦蛋白質の加水分解物には、ペプチド成分に加えて、製造工程上不可避的に含まれる小麦蛋白質や小麦グルテン由来のその他の成分や酵素類が含まれていてもよい。
しかしながら、取り扱いの容易性、保存性等を考慮すると、この加水分解物から不溶物を除去し、さらに水分を除去して固体状の形態とすることが好ましい。この不溶物の除去や水分除去は、得られた加水分解物が変性や熱分解を起こさない条件下であれば、どのような方法でもよく、例えば、ろ過、遠心分離、遠心ろ過、スプレードライ、スプレークール、ドラムドライ、真空乾燥、凍結乾燥等のいずれの方法も使用できる。又は、水溶性成分を適当な担体に結合又は担持させた後、前記のような方法により溶媒を除去することで、固形物として得ることもできる。
本発明で用いる小麦蛋白質の加水分解物は、市販されているもの(例えば、日清ファルマ株式会社製の「グルタミンペプチドGP-1」、「グルタミンペプチドGP-2」、「グルタミンペプチドGP-1N」等)をそのまま用いてもよいし、また場合によりこれを原料としてさらに加水分解、分画等の処理を施して用いてもよい。
本発明で用いる小麦蛋白質の加水分解物の好ましい一態様として、グルタミン含有ペプチドを65〜90質量%含み、前記ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合が30〜60質量%であるものが挙げられる。
小麦蛋白質の加水分解物中のグルタミン含有ペプチドの量とは、18種類(Arg,Lys,His,Phe,Tyr,Leu,Ile,Met,Val,Ala,Gly,Pro,Glu+Gln,Ser,Thr,Asp+Asn,Trp,Cys)のL−アミノ酸の総量を指す。小麦蛋白質の加水分解物中のグルタミン含有ペプチドが65質量%以上であることで、ペプチド成分を相対的に高含有化でき、TGF−β抑制作用を得るために少量摂取で効果が得られる利点がある。小麦蛋白質の加水分解物中のグルタミン含有ペプチドの割合は、90質量%以下であることが吸湿による褐変などの抑制などの安定性や、服用性(グルタミン含有ペプチドを高含有量とすることによる味の劣化の抑制)の点で好ましい。したがって、小麦蛋白質の加水分解物中のグルタミン含有ペプチド含有量は、好ましくは65〜90質量%、より好ましくは70〜88質量%であり、特に好ましくは70〜85質量%である。小麦蛋白質の加水分解物中のグルタミン含有ペプチドの割合は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
なお、小麦蛋白質の加水分解物中、グルタミン含有ペプチドを除く残部としては炭水化物、灰分、遊離アミノ酸などが挙げられる。
グルタミン含有ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合とは前述したアミノ酸18種類の総量に占めるGlu+Glnの割合を指す。グルタミン含有ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合が30質量%以上であると、相対的にグルタミン及びグルタミン酸の比率が高まり、グルタミン及びグルタミン酸による効果が得られやすい利点がある。前記ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合が60質量%以下であれば相対的にペプチド成分を構成するアミノ酸の種類が増え、ペプチド成分による効果が得られやすい利点がある。さらに、グルタミン及びグルタミン酸の高含有化は製造の収率低下を招くため、製造が容易になる利点がある。したがって、前記ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合は、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは32〜55質量%、特に好ましくは35〜50質量%である。グルタミン含有ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の合計の割合は、後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
小麦蛋白質の加水分解物は分子量5000以上のペプチドを30〜70質量%含むことが好ましい。小麦蛋白質の加水分解物における分子量5000以上のペプチドの割合は、30質量%以上であることでアミノ酸個々の集合物としての効果ではなく、ペプチド成分としての効果が得られやすい利点がある。小麦蛋白質の加水分解物における分子量5000以上のペプチドの割合は、70質量%以下であることで蛋白質としての効果ではなく、ペプチド成分としての効果が得られやすい利点がある。従って、小麦蛋白質の加水分解物における分子量5000以上のペプチドの割合は好ましくは30〜70質量%、より好ましくは30〜65質量%、特に好ましくは30〜60質量%である。小麦蛋白質の加水分解物に占める分子量5000以上のペプチドの割合は、後述する実施例に記載の方法にて測定できる。なお後述する実施例に記載の方法にて測定される小麦蛋白質の加水分解物における分子量5000以上のペプチドの割合は、グルタミン含有ペプチドにおける分子量5000以上のペプチドの割合とみなすことができる。
なお、小麦蛋白質の加水分解物の平均分子量は200〜100000であることが小麦蛋白質の加水分解物の製造容易性の点で好ましく、500〜20000であることがより好ましい。平均分子量は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
本発明で用いる小麦蛋白質の加水分解物は、食経験のある小麦に由来し、天然の蛋白質を構成するL−アミノ酸からなるために、ヒトや動物に対する安全性の点で優れているうえ、入手及び調製の容易性、経済性等の点からも好ましい。また、本発明で用いる小麦蛋白質の加水分解物は、保存性が良好で、溶解性が優れているため、食品、飼料、医薬品等の様々な形態にして摂取することができる。
本発明のTGF−β抑制用組成物は、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量を基準として、成人1日当たり0.5〜15g、好ましくは1〜10gの範囲で投与される。特に本発明においてはTGF−β抑制作用を高める点から、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量は、成人1日当たり3.5g以上であることが好ましく、4.5g以上であることがより好ましく、6.0g以上であることが特に好ましい。
本発明のTGF−β抑制用組成物のグルタミン含有ペプチドの摂取量としては、成人一人当たり0.33〜13.5gであることが好ましく、0.7〜9gであることがより好ましい。特に本発明においてはTGF−β抑制作用を高める点から、グルタミン含有ペプチドが、成人1日当たり2.3g以上であることが好ましく、4.0g以上であることが更に好ましく、4.2g以上であることが特に好ましい。
本発明のTGF−β抑制用組成物は前記の量を数日間、例えば2〜10日間連続して摂取してもよいし、一時的に例えば一日のみ摂取してもよい。
本発明のTGF−β抑制用組成物は、安全な小麦を原料とし、過度の精製操作を行っていないため、安全性が高く、そのままでも充分に経口摂取することが可能であり、長期間の継続的摂取が可能である。また保存性が良好で、溶解性が優れていることから、様々な食品、飼料、医薬品等の組成物の形態とすることが容易である。
その際、前記の工程によって得られた小麦蛋白質の加水分解物をそのまま単独で用いることもできるが、本発明の効果を阻害しない限り、他のTGF−β抑制作用を示す成分を併用することができる。他のTGF−β抑制作用を示す成分としては、例えば、テアニン;乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. cremoris H-61);抗TGF−β抗体;ロイシン、フェニルアラニン、α−アミノイソ酪酸 、N−メチルアラニン、N−メチルイソロイシンからなるペプチド;イミド/アミドエーテル化合物、並びにフェニルアセテート及びその誘導体等が挙げられる。これら他のTGF−β抑制作用を示す成分を併用する場合は、小麦蛋白質の加水分解物100質量部に対し、合計で100質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることが特に好ましい。
本発明者は、本発明のTGF−β抑制用組成物がクエン酸カリウムを含有することが、呈味性が大幅に向上し、経口摂取しやすくなることを知見した。例えば本発明においてはTGF−β抑制作用を高めるために、比較的多量(例えば一日成人当たり3.5g以上)の小麦蛋白質の加水分解物を用いることが好ましいところ、クエン酸カリウムを含有すると、小麦蛋白質の加水分解物と配合した場合の呈味性が向上し、前記の量がより飲みやすくなる。クエン酸カリウムとしては経口用として、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウムが知られているが、本発明ではクエン酸三カリウムを用いることが好ましい。
本発明のTGF−β抑制用組成物がクエン酸カリウムを含有する場合、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量100質量部に対しクエン酸カリウムの量は、2質量部以上であることが前記呈味性の向上の点で好ましく、20質量部以下であることが前記呈味性の向上の点で好ましい。この観点から、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量100質量部に対しクエン酸カリウムの量は2〜20質量部であることが好ましく、5〜17質量部であることがより好ましく、8〜14質量部であることが特に好ましい。
また本発明では、クエン酸カリウムを含有する場合、クエン酸ナトリウムと組み合わせることが呈味性の点でさらに好ましい。クエン酸ナトリウムとして経口用として、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが知られているが、本発明ではクエン酸三ナトリウムを用いることが好ましい。本発明のTGF−β抑制用組成物がクエン酸カリウムに加えてクエン酸ナトリウムを含有する場合、クエン酸カリウム100質量部に対しクエン酸ナトリウムの量は、75質量部以上であることが前記呈味性の向上の点で好ましく、250質量部以下であることが前記呈味性の向上の点で好ましい。この観点から、クエン酸カリウム100質量部に対しクエン酸ナトリウムの量は75〜250質量部であることが好ましく、100〜225質量部であることがより好ましく、125〜200質量部であることが特に好ましい。
なお、本発明において、クエン酸やクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムの量はこれらが水和物である場合、水和水を除いた量を指す。
本発明の組成物は、クエン酸、マグネシウム、カルシウム及びカリウムから選ばれる少なくとも一種を含有することが、本発明の組成物を運動前又は運動中に摂取した場合に、TGF−β抑制作用とともに熱中症への耐性を高め、運動時間の延長に一層寄与できる点で好ましく、特にクエン酸と、マグネシウム、カルシウム及びカリウムから選ばれる少なくとも一種とを併せて含有することが好ましく、とりわけクエン酸と、マグネシウム及び/又はカルシウムを含有することが好ましく、中でも、クエン酸、マグネシウム、カルシウム及びカリウムを含有することが好ましい。クエン酸は、クエン酸塩の形態であってもよい。クエン酸塩としては、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸カルシウムなどが挙げられる。マグネシウム、カルシウム及びカリウムはそれぞれ当該金属を含む化合物の形態であってよい。マグネシウム化合物としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられ、呈味性などから硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウムが好ましい。カルシウム化合物としては、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられ、呈味性などから乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウムが好ましい。カリウム化合物としては、塩化カリウム、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、アセスルファムカリウムなどが挙げられ、呈味性などからクエン酸カリウム、アセスルファムカリウム、塩化カリウムが好ましい。小麦蛋白質の加水分解物との組み合わせで熱中症を予防して運動時間延長の効果を高める点から、小麦蛋白質の加水分解物100質量部に対しクエン酸量(クエン酸塩の場合はクエン酸イオン基準の量)は、10質量部以上100質量部以下が好ましく、15質量部以上75質量部以下がより好ましい。同様の観点から、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量100質量部に対しマグネシウム量(金属基準の量)は、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましい。同様の観点から、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量100質量部に対しカルシウム量(金属基準の量)は0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましい。同様の観点から、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量100質量部に対しカリウム量(金属基準の量)は0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
本発明の組成物は、糖類を含有することができる。糖類は、1つのカルボニル基(アルデヒド基またはケトン基)を有する多価アルコールの総称である。糖類には、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、および多糖が包含される。単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、およびフルクトースなどのヘキソース、アラビノースなどのペントースなどが挙げられ、二糖としては、マルトース、トレハロース、ラクトース、およびスクロースなどが挙げられ、オリゴ糖としては、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などが挙げられ、糖アルコールとしては、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられ、多糖としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、プルラン、およびデキストリンなどが挙げられる。呈味性の点から二糖又は糖アルコールが好ましく、マルトース、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。本発明の組成物において糖類を含有する場合、その量に特に限定はないが、呈味性の点から、小麦蛋白質の加水分解物の乾燥質量100質量部に対し、例えば1質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下がより好ましい。
本発明の組成物における小麦蛋白質の加水分解物の含有量は、その剤形により異なるが、本発明に係る組成物が食品である場合も、食品以外、例えば医薬である場合も、組成物の乾燥質量を基準として、好ましくは10〜75質量%、より好ましくは15〜70質量%、特に好ましくは20〜65質量%の範囲である。上述した成人1日当たりの摂取量を摂取できるよう、1日当たりの投与量が管理できる形にすることが望ましい。
本発明のTGF−β抑制用組成物は、TGF−β抑制用食品とすることができる。TGF−β抑制用食品は、上記で挙げた小麦蛋白質の加水分解物や必要に応じて含有されるクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、その他クエン酸含有化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、糖類のほか、他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば、呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。TGF−β抑制用食品には、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品等の他、小麦蛋白質の加水分解物を配合できる全ての食品が含まれる。本発明のTGF−β抑制用組成物及びTGF−β抑制用食品は、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤、経管経腸栄養剤等の流動食等の各種製剤形態とすることができる。製剤形態の食品は、後述する医薬と同様に製造することができる。
例えば、通常食されている食品に小麦蛋白質の加水分解物を配合することにより、本発明に係るTGF−β抑制用食品を製造できる。例えば本発明に係るTGF−β抑制用食品には飲料も包含される。さらに本発明に係るTGF−β抑制用食品は、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等として調製してもよい。
本発明に係るTGF−β抑制用食品には、人用の食品のみならず、家畜、競走馬等の飼料、ペットフード等も包含する。飼料は、対象が動物である以外は食品とほぼ等しいことから、本明細書におけるTGF−β抑制用食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
本発明の組成物が医薬である場合、その剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤、吸入剤、坐剤等の経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等の皮膚外用剤、点滴剤、注射剤等が挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。
本発明に係る組成物が医薬である場合、有効成分である小麦蛋白質の加水分解物に、慣用される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を剤型に応じて配合し、常法に従って製剤化することができる。なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
後述する実施例に示す通り、本発明のTGF−β抑制用組成物及びTGF−β抑制用食品は、これを摂取することで血液中、特に血漿中のTGF−β濃度を低減することができる。この作用により、TGF−β抑制活性に基づく具体的な効果として、例えば慢性糸球体腎炎、腎臓間質性線維症、糖尿病性腎症、肝線維症、肝硬変、肺繊維症、ケロイド、強皮症、動脈硬化、後部心筋梗塞、心臓性線維症、血管形成後再狭窄、急性巨核芽球性白血病、成人T細胞白血病等の予防又は治療作用が期待できる。また本発明のTGF−β抑制用組成物及びTGF−β抑制用食品は、これを摂取することで、運動負荷時に感じる主観的な運動負荷強度を軽減できる。このため本発明のTGF−β抑制用組成物及びTGF−β抑制用食品を摂取することで負担感を軽減しながら運動でき、運動時間の延長など、運動習慣を改善できる。本発明のTGF−β抑制用組成物及びTGF−β抑制用食品は、運動前、運動中又は運動後のいずれに摂取してもよいが、運動前に摂取することがより効果的であり、運動前日に、又は運動の前日及びそれ以前の数日間に亘って経口摂取することがより好ましい。
また、本発明のTGF−β抑制用組成物及びTGF−β抑制用食品は後述する実施例に示す通り、特にクエン酸カリウムを含む場合に顕著に呈味性に優れ、呈味性とTGF−β抑制能と安全性を兼ね備え、熱中症予防にも効果のあるものとなる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
小麦グルテン加水分解物(日清ファルマ製「GP-1N」)28.00kg、トレハロース(林原製)6.85kg、無水クエン酸(昭和化工製)10.50kg、クエン酸三ナトリウム二水和物(昭和化工製)6.24kg、クエン酸三カリウム(昭和化工製)3.50kg、硫酸マグネシウム七水和物(富田製薬製)1.17kg、乳酸カルシウム五水和物(太平化学産業製)2.33kgを混合し、流動層造粒機(パウレック製)を使用して造粒することで、造粒末69.59kgを得た。造粒のバインダーは、精製水に小麦グルテン加水分解物(日清ファルマ製「GP-1N」)7.00kg、プルラン(林原製)0.99kg、アセスルファムカリウム(MCフード製)0.70kgを溶解させ、全量を噴霧した。造粒末に消泡剤1.51kg、香料0.80kgを混合した。
以上の工程により、1日用量12gに小麦グルテン加水分解物6gを含有する組成物を得た。
下記の方法による分析の結果、小麦グルテン加水分解物中のグルタミン含有ペプチドの割合は70質量%(1日の用量12g中4.2g)であり、グルタミン含有ペプチドの構成アミノ酸中、グルタミン及びグルタミン酸の割合は40質量%であった。また、小麦グルテン加水分解物が分子量5000以上のペプチドを32質量%含むこと、平均分子量が4700であることを確認した。実施例1で得られた組成物の1日用量12g中に、クエン酸カリウムは0.6g、クエン酸ナトリウムは0.94gであった。また実施例1で得られた組成物の1日用量12g中に、クエン酸量は2.7g、マグネシウム28.0mg(金属基準の量),カルシウム56.0mg(金属基準の量),カリウム(金属基準の量)260mgであることを確認した。
なお、クエン酸の量は高速液体クロマトグラフ法により測定した。サンプル調製は、試料を適量採取し、5 %(v/v)過塩素酸と水を添加してホモジナイズまたは振とうにより抽出した。さらに水を加えて定容し、ろ過してHPLCシステムで分析した。
マグネシウム、カルシウムの量はICP発光分析法により測定した。サンプル調製は、乾式灰化して塩酸により抽出し、ろ過した後に適宜定容した。
カリウム量は原子吸光光度法により測定した。サンプル調製は、希塩酸を添加して振とうにより抽出し、ろ過した塩酸抽出法または乾式灰化法により調製した。
(小麦蛋白質加水分解物中のグルタミン含有ペプチドの量)
(グルタミン含有ペプチド中のグルタミン及びグルタミン酸の量)
小麦グルテン加水分解物中のグルタミン含有ペプチドは,アミノ酸(18種類;Arg,Lys,His,Phe,Tyr,Leu,Ile,Met,Val,Ala,Gly,Pro,Glu+Gln,Ser,Thr,Asp+Asn,Trp,Cys)の総量として定量した。具体的には、以下のように測定した。
以下の方法で調製したサンプルをアミノ酸自動分析機(日本電子社製JLC−500/VまたはJLC−500/V2)、高速液体クロマトグラフ(島津製作所社製LC−20AD)により18種類(Arg,Lys,His,Phe,Tyr,Leu,Ile,Met,Val,Ala,Gly,Pro,Glu+Gln,Ser,Thr,Asp+Asn,Trp,Cys)のアミノ酸量を求めた。カラムは日本電子社製LCR−6(直径4mm×長さ120mm)、大阪ソーダ社製CAPCELL PAK C18 AQ(直径4.6mm×長さ250mm)を用いた。移動相としては、日本電子社製の「クエン酸ナトリウム緩衝液(H−01〜H−04)」または「クエン酸リチウム緩衝液(P−21)」、20mmol/L 過塩素酸及びメタノールの混液(体積比80:20)を用いた。アミノ酸自動分析の反応液としては富士フイルム和光純薬社製の「日本電子用ニンヒドリン発色溶液キット−II」を用いた。
サンプルは、以下の方法で調製した。
試料0.2〜1.5gを封菅用試験管に正確にはかりとり、6mol/L塩酸(0.04%(v/v)メルカプトエタノール含有)20mLを加えた。2.0kPa以下の減圧下で15分間脱気後、封菅し、110℃で24時間加水分解を行った。加水分解後、冷却、開菅し、加水分解液を容量100mL全量フラスコに移し水で定容して濃度調整した。定容した加水分解液を3mol/L水酸化ナトリウム溶液でpH2.2に調整し、0.067mol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)で定容して0.45μmフィルターでろ過した。
前記で得られた18種のアミノ酸の合計量をグルタミン含有ペプチドの割合とした。さらに、前記で得られたGlu+Glnの量から、グルタミン含有ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合を算出した。
分母となる小麦グルテン加水分解物の量は、精密天秤を用いて測定した質量とした。
(小麦蛋白質の加水分解物中の分子量5000以上のペプチドの割合)
HPLC法による分子量分布の測定により求めた。
下記のペプチド用ゲルろ過カラムを用いたHPLCシステムを組み、分子量マーカーとなる既知のペプチドをチャージし、分子量と保持時間の関係において検量線を求めた。サンプル調製は、試料約0.02gを採取し、水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸の混液(体積比55:45:0.1)10mLを加え、室温で一晩放置した後、0.45μmフィルターでろ過した。サンプル液20μLをHPLCにアプライした。小麦蛋白質の加水分解物中の分子量5000以上のペプチド画分の割合(%)は、全体の吸光度のチャート面積に対する、分子量5000以上の範囲(時間範囲)の面積の割合によって求めた。また分子量200〜100000の範囲における重量平均分子量を平均分子量とした。
カラムとしては、東ソー社製TSKgel G2500PWXL(直径7.8mm×長さ300mm)を用いた。
移動相としては、水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸の混液(体積比55:45:0.1)を用いた。
カラム温度は40℃、流速0.5ml/min、検出波長220nmとした。
分子量マーカーとしては以下のものを用いた
Cytochrome C(分子量12327)
Aprotinin(分子量6512)
Bacitracin(分子量1450)
AngiotensinII(分子量1046)
Gly−Gly−Tyr−Arg(分子量451)
Gly−Gly−Gly(分子量189)
(比較例1)
対照組成物は,小麦グルテン加水分解物の代わりに賦形剤(デキストリン)を配合したプラセボとし,小麦グルテン加水分解物以外の原材料及び製造方法が実施例1で製造した組成物と同一の組成物(比較例1)とした。両組成物は外観,風味,性状に区別がつかないことを確認し,盲検化して試験に用いた。
(血漿中TGF−β濃度)
20歳以上65歳未満で健康な日本人男女18名(男性14名、女性4名)を対象に、プラセボ対照ランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。18名の被験者は、層別ランダム化法による割付を行い、2群に分けた(A群:9名、B群:9名)。
A群は、実施例1の組成物を8日間、1日12gを毎日水500mLに溶かして経口摂取させた後、休止期間2週間を置き、その後、比較例1の組成物を8日間、1日12gを毎日水500mLに溶かして経口摂取させた。
B群は、比較例1の組成物を8日間、1日12gを毎日水500mLに溶かして経口摂取させた後、休止期間2週間を置き、その後、実施例1の組成物を8日間、1日12gを毎日水500mLに溶かして経口摂取させた。
A群及びB群のいずれにおいても、8日間+2週間+8日間の試験期間中については、30分以上の運動を週に2回以上しないようにさせた。
8日間の摂取期間開始日(摂取前)と、摂取期間終了日(摂取後)で自転車エルゴメーター(エアロバイク(登録商標)75XLIII((株)コナミスポーツライフ))による運動負荷を60分間かけ、運動負荷終了直後の血漿中総TGF−βの濃度を下記方法で測定した。血漿中TGF−β濃度はELISA法により測定した。結果を表1に示す。
Figure 2021187747
実施例1の組成物の摂取により,摂取前と比較して,血漿中のTGF−β濃度が有意に減少した。群間の比較では,摂取後において,実施例1の組成物の摂取群は比較例1の組成物摂取群と比較して,血漿中TGF−β濃度が有意な低値を示した(P=0.027)。
(主観的運動強度)
前記(血漿中TGF−β濃度)試験において、男性14名(1回目のA群6名、B群8名)を対象に、前記の摂取前及び前記の摂取後における運動負荷直前,直後に主観的運動強度を評価させた。主観的運動強度として、6から20までの15段階の等級(6:安静の状態,7:非常に楽である,9:かなり楽である,11:楽である,13:ややきつい,15:きつい,17:かなりきつい,19:非常にきつい)に対して運動時の状態がどの等級に相当するかを回答させ,記録した。実施例1の組成物摂取群及び比較例1の組成物摂取群のそれぞれのスコアの平均値を表2に示す。
Figure 2021187747
実施例1の組成物の摂取により,摂取前と比較して,運動負荷直後の主観的運動強度のスコアが有意に低下した(P=0.0203)。群間の比較では,摂取後において,実施例1の組成物の摂取群は比較例1の組成物摂取群と比較して,運動負荷直後のスコアが有意な低値を示した(P=0.0481)。
(実施例2)
実施例1において、クエン酸カリウムを全量無水クエン酸に変更した。その点以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成物を製造した。
(実施例3)
実施例1において、クエン酸カリウムを全量クエン酸ナトリウムに変更した。その点以外は実施例1と同様にして、実施例3の組成物を製造した。
(実施例4)
実施例1において、クエン酸カリウムを全量塩化カリウムに変更した。その点以外は実施例1と同様にして、実施例4の組成物を製造した。
(実施例5)
実施例1において、クエン酸カリウムをトレハロースに変更した。
その点以外は実施例1と同様にして、実施例5の組成物を製造した。
(呈味性)
呈味性は、20歳以上65歳未満で健康な日本人5名(男性3名、女性2名)のパネラーによる官能評価によって評価した。官能評価は、以下の基準で点数付けし、5名の平均値を算出した。結果を表3に示す。一人のパネラーの各サンプルの摂取量は、水500mLあたりに実施例1〜5の組成物が12g含まれるように溶かし、50〜200mLを経口摂取させた。
5:小麦蛋白質の加水分解物由来の味、酸味、甘味のバランスが非常に良い。
4:小麦蛋白質の加水分解物由来の味、酸味、甘味のバランスが良い。
3:小麦蛋白質の加水分解物由来の味、酸味、甘味のバランスは普通である。
2:小麦蛋白質の加水分解物由来の味、酸味、甘味のバランスが悪い。
1:小麦蛋白質の加水分解物由来の味、酸味、甘味のバランスが非常に悪い。
Figure 2021187747

Claims (7)

  1. 小麦蛋白質の加水分解物を含有するTGF−β抑制用組成物。
  2. 小麦蛋白質の加水分解物として、グルタミン含有ペプチドを65〜90質量%含み、前記ペプチドに占めるグルタミン及びグルタミン酸の割合が30〜60質量%である加水分解物を用いる、請求項1に記載のTGF−β抑制用組成物。
  3. 前記小麦蛋白質の加水分解物が、分子量5000以上のペプチドを30〜70質量%含む、請求項1又は2に記載のTGF−β抑制用組成物。
  4. クエン酸カリウムを含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載のTGF−β抑制用組成物。
  5. クエン酸ナトリウムを更に含有する、請求項4に記載のTGF−β抑制用組成物。
  6. クエン酸、マグネシウム、カルシウム及びカリウムから選択される1種以上を含有する、請求項1〜5の何れか1項に記載のTGF−β抑制用組成物。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物を含有する、TGF−β抑制用食品。
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順天堂医学, vol. 58, JPN6023035064, 2012, pages 161 - 167, ISSN: 0005138500 *

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