JP2021187135A - 吸音複合積層体及び吸音複合積層体の製造方法 - Google Patents

吸音複合積層体及び吸音複合積層体の製造方法 Download PDF

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裕二 田中
Yuji Tanaka
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Abstract

【課題】優れた剛性及び吸音特性を有する吸音複合積層体、及びその製造方法の提供。【解決手段】不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含む不織布繊維強化樹脂層と、熱可塑性発泡樹脂層とを有し、不織布繊維強化樹脂層の空隙率が30%以上である吸音複合積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、吸音複合積層体及び吸音複合積層体の製造方法に関する。
繊維で強化された繊維強化合成樹脂(FRP)等の複合材料は、軽量でかつ高い機械的強度を有していることから、近年、自動車分野、船舶分野、航空分野、医療分野等の軽量性及び高い機械的強度が求められている分野において、使用が拡大されている。例えば、繊維強化合成樹脂(FRP)を車両又は建築用吸音材に使用する用途に着目した技術として、特許文献1及び2が挙げられる。
当該特許文献1は、強化用繊維及び熱可塑性樹脂からなる主原料を抄造して得られるウェブから製造する成形吸音材に関する技術を開示している。より詳細には、特許文献1に記載の成形吸音材は、強化用繊維が分散された熱可塑性樹脂の発泡成形体である。そして、このような強化繊維同士を接点において強固につなぎ止められた構造を形成することにより、高強度、軽量であってしかも基材単体でも吸音性能に優れていると特許文献1に開示されている。
また、当該特許文献2には、通気度の範囲を低通気層と高通気層の2つに分けて、かつそれぞれ2層を交互に重ねた計4層の積層体が開示されている。特許文献2は、吸音層として機能する低通気層(例えば、メルトブローン不織布とポリプロピレンとの複合材料)が、積層体内の層厚方向に2箇所存在するため、定常波の節及び腹の位置がそれぞれの低通気層と重なる周波数近辺の音に対しても吸音率が得られると開示している。
特開平10−100317号公報 国際公開第2018/182001号公報
上記特許文献1の技術は、発泡体内に強化繊維が分散されているため、吸音材に要求される剛性などの機械的特性は満たすと考えられる。しかし、吸音性能は、発泡体が有する連通気泡構造によって、気泡構造内部の空気振動を吸収することにより発現されるものである。そのため、強化繊維同士を接点において強固につなぎ止められた構造では、連通気泡構造を形成し難く、所望の吸音性能は得られない。また、特許文献2の技術は、積層体内の通気率を分画することにより、広い周波数領域における吸音特性は向上すると考えられるが、吸音性能に寄与する連通空隙率自体及び吸音体に要求される剛性について検討されていない。
そこで、本発明は、優れた剛性及び吸音特性を有する吸音複合積層体、及び当該吸音複合積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、不織布繊維及び熱可塑性樹脂を含む層と、熱可塑性発泡樹脂を含む層とを有し、かつ不織布繊維強化樹脂層の空隙率が特定の範囲であると、上記課題を解決しうることを見出し、本発明の吸音複合積層体、及び当該吸音複合積層体の製造方法を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]本発明は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含む不織布繊維強化樹脂層と、
前記不織布繊維強化樹脂層が少なくとも一方の面に接着された熱可塑性発泡樹脂層と、を有し、
前記不織布繊維強化樹脂層の空隙率が30%以上であることを特徴とする、吸音複合積層体である。
[2]本発明において、前記不織布繊維及び前記第1熱可塑性樹脂を含む不織布繊維強化樹脂層と、
前記不織布繊維強化樹脂層が少なくとも一方の面に接着された熱可塑性発泡樹脂層と、
を有し、
前記不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、前記第1熱可塑性樹脂の厚み方向への線膨張係数αよりも大きいことが好ましい。
[3]本発明において、前記不織布繊維強化樹脂層の全体積に対して、前記不織布繊維は、10〜70体積%含有し、前記第1熱可塑性樹脂は、30〜90%含有することが好ましい。
[4]本発明において、前記不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、以下の式(1):
α≧30×{α+α(1−V)} 式(1)
(上記式(1)中、αは不織布繊維の線膨張係数(1/K)を表し、Vは不織布繊維強化樹脂層全体に占める不織布繊維の体積分率を表し、αは第1熱可塑性樹脂の線膨張係数(1/K)を表す。)
で表わされる、ことが好ましい。
[5]本発明に係る吸音複合積層体の曲げ弾性率は、1GPa以上であることが好ましい。
[6]本発明において、前記不織布繊維強化樹脂層の曲げ弾性率は、5GPa以上であることが好ましい。
[7]本発明において、前記不織布繊維強化樹脂層の1000Hzにおける透過損失は、10db以下かつ2000Hzにおける透過損失は、15db以下であることが好ましい。
[8]本発明において、1000Hzにおける吸音率は10%以上であり、かつ2000Hzにおける吸音率が40%以上であることが好ましい。
[9]本発明において、前記不織布繊維は、炭素繊維であることが好ましい。
[10]本発明において、前記熱可塑性発泡樹脂層の発泡形態は、連続気泡状態であることが好ましい。
[11]本発明において、前記熱可塑性発泡樹脂層に含まれる第2熱可塑性樹脂と、前記第1熱可塑性樹脂の融点差は、50℃以下であることが好ましい。
[12]本発明において、前記熱可塑性発泡樹脂層の一方の面に前記不織布繊維強化樹脂層が、接着され、かつ密度が0.94g/cm以上の反射層が、前記熱可塑性発泡樹脂層の他方の面に接着されていることが好ましい。
[13]本発明に係る吸音複合積層体の製造方法の第1実施形態は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)並びに第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体を準備する工程(I)と、
前記プリプレグ(A)を前記第1熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する工程(II)と、
前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、加熱した前記プリプレグ(A)を当接させる工程(III)と、
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂の融点以下に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程(IIV)と、を有し、
前記工程(II)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10%以上大きいことを特徴とする。
[14]本発明に係る吸音複合積層体の製造方法の第2実施形態は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)並びに第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体を準備する工程(I)と、
前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、前記プリプレグ(A)を当接させる工程(V)と、
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程(VI)と、を有し、
前記工程(III)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10%以上大きいことを特徴とする。
本発明は、優れた剛性及び吸音特性を有する吸音複合積層体、及び当該吸音複合積層体の製造方法を提供するものである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細
に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の
実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することがで
きる。なお、本実施形態において、A(数値)〜B(数値)は、A以上B以下を意味する。
「吸音複合積層体」
本実施形態に係る吸音複合積層体は、熱可塑性発泡樹脂層と、当該熱可塑性発泡樹脂層の少なくとも一方の面に接着された不織布繊維強化樹脂層とを有する。そして、前記不織布繊維強化樹脂層は、不織布繊維と第1熱可塑性樹脂とを含有する。前記熱可塑性発泡樹脂層は、第2熱可塑性樹脂を発泡体として含有する。前記不織布繊維強化樹脂層の空隙率は30%以上である。
本実施形態の吸音複合積層体は、不織布繊維を有する不織布繊維強化樹脂層及び熱可塑性発泡樹脂層を含むことにより、剛性に優れ、設計自由度の高いものとなる。また、不織布繊維強化樹脂層は30%以上の空隙率を有することから、不織布繊維強化樹脂層側から入射した入射音が、当該不織布繊維強化樹脂層により反射されることを抑制でき、入射音を熱可塑性発泡樹脂層へ透過しやすくなるため、優れた吸音性能を発揮する。
したがって、本実施形態により、所定の弾性率及び所定の空隙を備えた不織布繊維強化樹脂層を、熱可塑性発泡樹脂層の表面に設けることにより、熱可塑性発泡樹脂層の吸音性能を保持しながら剛性に優れた吸音複合積層体を提供できる。
本実施形態に係る吸音複合積層体は、熱可塑性発泡樹脂層と、当該熱可塑性発泡樹脂層の片面又は両面に接着された不織布繊維強化樹脂層とを有してもよい。熱可塑性発泡樹脂層の両面に不織布繊維強化樹脂層を接着する場合、一対の不織布繊維強化樹脂層の組成はそれぞれ同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
また、本実施形態の吸音複合積層体において、上記不織布繊維強化樹脂層及び熱可塑性発泡樹脂層以外の層を有してもよい。例えば、本実施形態の吸音複合積層体は、熱可塑性樹脂発泡樹脂層の一方の面に不織布繊維強化樹脂層を接着し、かつ密度0.94g/cm以上の反射層を、前記熱可塑性樹脂発泡樹脂層の他方の面に設けた構成であってもよい。より詳細には、本実施形態の好ましい吸音複合積層体は、熱可塑性発泡樹脂層と、当該熱可塑性発泡樹脂層の一方の面に設けられた不織布繊維強化樹脂層と、当該熱可塑性発泡樹脂層の他方の面に設けられた密度0.94g/cm以上の反射層と、を有する。
本実施形態の吸音複合積層体において、優れた吸音性能を有する熱可塑性発泡樹脂層が、不織布繊維強化樹脂層と密度0.94g/cm以上の反射層とに挟持されたいわゆるサンドイッチ構造を形成することにより、不織布繊維強化樹脂層側から入射した音が、不織布繊維強化樹脂層と熱可塑性発泡樹脂層とを通過した後、密度0.94g/cmの反射層で反射されるため、再度、反射された音が熱可塑性発泡樹脂層、及び不織布繊維強化樹脂層の順で通過する。そのため、入射音が2回以上熱可塑性発泡樹脂層を透過することにより、実際の使用環境下では吸音性能がより向上される。
なお、熱可塑性発泡樹脂層の両面に不織布繊維強化樹脂層を接着する場合、入射音側の不織布繊維強化樹脂層の空隙率は30%以上であり、かつ他方の不織布繊維強化樹脂層の空隙率は、30%未満、例えば10%未満であってもよい。
本実施形態の吸音複合積層体の曲げ弾性率は、1GPa以上であることが好ましく、1〜10GPaであることがより好ましく、1.5〜10GPaであることがさらに好ましい。曲げ弾性率は、1GPa以上であると、吸音体に要求される剛性をより確保しやすくなる。なお、本明細書における曲げ弾性率の測定方法は、後述する実施例記載の方法によって算出する。
本実施形態に係る吸音複合積層体の1000Hzにおける吸音率は、1000Hzにおける吸音率は10%以上であり、かつ2000Hzにおける吸音率が25%以上であることが好ましく、1000Hzにおける吸音率は10%以上であり、かつ2000Hzにおける吸音率が40%以上であることがより好ましい。
本実施形態に係る吸音複合積層体において、1000Hzにおける吸音率が10%以上、且つ2000Hzにおける吸音率が40%以上であると、自動車のエンジン音、ロードノイズ、ギア音の周波数帯である1000〜2000Hzの騒音を低減するという効果を奏する、エンジンカバー、フロアパネル、サイドパネル、フード、ルーフ、バックドアといった用途に使用できる。なお、本明細書における吸音率の測定は、後述する実施例記載の方法によって算出する。
本実施形態において、吸音複合積層体の平均厚みは、2〜50mmであることが好ましく、2〜50mmであることがより好ましい。吸音複合積層体の平均厚みが上記範囲であることにより、耐衝撃性及び剛性に優れ、吸音性の高い積層体を得ることができる。
なお、吸音複合積層体の平均厚みの測定方法は、マイクロメーターにより測定しうる。また、各層の厚みについては吸音複合積層体の断面を光学顕微鏡又はマイクロスコープで撮影後、画像処理することで測定する。本明細書では、後述の実施例の欄に記載の方法により、吸音複合積層体及び各層の平均厚みを測定する。
本実施形態に係る吸音複合積層体において、各層の平均厚みの比率は、例えば、不織布繊維強化樹脂層が1に対して、熱可塑性発泡樹脂層が10〜50、任意層である反射層が1〜10であることが好ましく、熱可塑性発泡樹脂層が10〜30、任意層である反射層が1〜5であることがより好ましい。
本発明に係る吸音複合積層体は、不織布繊維及び前記第1熱可塑性樹脂を含む不織布繊維強化樹脂層と、前記不織布繊維強化樹脂層が少なくとも一方の面に接着された熱可塑性発泡樹脂層と、を有し、前記不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、前記第1熱可塑性樹脂の厚み方向への線膨張係数αよりも大きいことが好ましい。
これにより、より優れた剛性及び吸音特性を有する吸音複合積層体を提供できる。不織布繊維強化樹脂層全体の線膨張係数αが、不織布繊維強化樹脂層中に含まれる第1熱可塑性樹脂の線膨張係数αより大きいことから、不織布繊維強化樹脂層中に含まれる不織布繊維によるスプリングバック現象が生じやすい不織布繊維強化樹脂層を形成しうる。そしてこれにより、30%以上の空隙率を有する不織布繊維強化樹脂層を形成しやすくなる。
以下、本発明の吸音複合積層体の構成要素である、不織布繊維強化樹脂層、熱可塑性発泡樹脂層、及び任意に設けられる反射層について説明する。
<不織布繊維強化樹脂層>
本実施形態の不織布繊維強化樹脂層は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含有する。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層に含まれる不織布繊維を含有させることにより強度を高めることができる。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層の空隙率は、30%以上であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましく、35〜65%であることがさらに好ましく、40〜60%であることがよりさらに好ましい。
不織布繊維強化樹脂層の空隙率が30%以上であると、不織布繊維強化樹脂層側から入射した入射音が、当該不織布繊維強化樹脂層により反射されることを抑制でき、入射音を熱可塑性発泡樹脂層へ透過しやすくなるため、優れた吸音性能を発揮する。一方、空隙率が40%以下であると、耐衝撃性及び剛性に優れる。
本明細書における「空隙率(%)」とは、不織布繊維強化樹脂層における空隙体積(体積%)の割合である。より詳細にはJIS K7075(燃焼法)に準拠した方法で測定する。当該燃焼法は、第1熱可塑性樹脂、不織布繊維及び不織布繊維強化樹脂層の密度の値と不織布繊維強化樹脂層中の不織布繊維の質量とから不織布繊維の体積分率及び空隙率を計算によって求める方法である。当該燃焼法による空隙率の測定を、同一の不織布繊維強化樹脂層から10サンプル切り出して行い、10回の平均値を空隙率としている。
本発明に係る吸音複合積層体における不織布繊維強化樹脂層の空隙率を30%以上にする方法の一例としては、熱処理による不織布繊維のスプリングバック現象を用いることが好ましい。すなわち、いわゆる繊維強化樹脂層に不織布繊維を使用することにより、いわゆるランダムコイル状に不織布繊維が配向するため、不織布繊維の長手方向の成分が、平面方向だけでなく厚み方向にも向きやすくなる。このような厚み方向にも長手方向の成分を有する(=長手方向に配向した)不織布繊維を、第1熱可塑性樹脂で拘束した不織布繊維強化樹脂層の前駆体(後述のプリプレグ(A))に対して、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点以上の温度で加熱すると、第1熱可塑性樹脂が軟化して、第1熱可塑性樹脂の拘束力が低下する。それにより、不織布繊維は残有応力を無くすように厚み方向に拡がって、得られる不織布繊維強化樹脂層内に空隙が形成される。
本実施形態の不織布繊維強化樹脂層の曲げ弾性率は、5GPa以上であることが好ましく、5〜10GPaであることがより好ましく、7〜10GPaであることがさらに好ましい。曲げ弾性率は、5GPa以上であると、吸音体に要求される剛性をより確保しやすくなる。
なお、本明細書における曲げ弾性率の測定方法は、後述する実施例記載の方法によって算出する。
使用する不織布繊維の種類、配合量、太さ、及び方向性等、並びに第1熱可塑性樹脂の種類及び配合量等を目的に応じて選択することにより、不織布繊維強化樹脂層の強度及び弾性等を調整することができる。
例えば、本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層の総量100体積%に対して、不織布繊維は10〜70体積%であることが好ましく、20〜70体積%であることがより好ましく、30〜70体積%であることがさらに好ましい。
例えば、本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層の総量100体積%に対して、第1熱可塑性樹脂は30〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層の平均厚みは、0.3〜4.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0mmである。不織布繊維強化樹脂層の平均厚みが上記範囲であることにより、耐衝撃性、弾性率、及び吸音複合積層体となったときの吸音性に優れる。なお、本明細書における不織布繊維強化樹脂層の平均厚みの測定方法は、吸音複合積層体の断面を光学顕微鏡又はマイクロスコープで撮影後、画像処理することで測定する。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、以下の式(1):
α≧30×{α+α(1−V)} 式(1)
(上記式(1)中、αは不織布繊維の線膨張係数(1/K)を表し、Vは不織布繊維強化樹脂層全体に占める不織布繊維の体積分率を表し、αは第1熱可塑性樹脂の線膨張係数(1/K)を表す。)で表わされることが好ましい。
これにより、不織布繊維強化樹脂層中に含まれる不織布繊維によるスプリングバック現象が生じやすい不織布繊維強化樹脂層を形成しうる。そして、上記不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αが、上記式(1)を満たすことにより、30%以上の空隙率を有する不織布繊維強化樹脂層を形成しやすくなる。
すなわち、不織布繊維と第1熱可塑性樹脂との2つの材料を有する複合材料の線膨張係数αは、一般的には以下の式(2)で表される。
α=α+α(1−V) 式(2)
(上記式(2)中、α、V、α、及びVは、上記式(1)と同義である。)
しかし、本発明に係る不織布繊維強化樹脂層では、当該不織布繊維強化樹脂層中の不織布繊維のスプリングバック現象により、不織布繊維強化樹脂層の見かけ上の体積が増大していると考えられる。そのため、不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、一般的な式(2)で表される線膨張係数αより30倍以上大きくなりうる。
例えば、不織布繊維強化樹脂層としてガラスプリプレグを使用する場合、不織布繊維強化樹脂層と熱可塑性樹脂層との界面又は不織布繊維と第1熱可塑性樹脂との界面における剥がれ、反りが発生することにより、素材の線膨張係数以上に不織布繊維強化樹脂層が膨張することが確認された。
本発明における不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、上記式(2)で表される線膨張係数αの30倍以上であることが好ましく、30倍以上100倍以下であることがより好ましい。
上記式(1)中、不織布繊維強化樹脂層全体に占める不織布繊維の体積分率Vは、上述の通り、0.1〜0.7であることが好ましく、0.2〜0.7であることがより好ましく、0.3〜0.7であることがさらに好ましい。なお、本明細書における線膨張係数(1/K)の測定方法は、後述の実施例に記載の方法を使用した。
本実施形態において、前記不織布繊維強化樹脂層の1000Hzにおける透過損失は、20db以下であり、かつ2000Hzにおける透過損失は、20db以下であることが好ましく、前記不織布繊維強化樹脂層の1000Hzにおける透過損失は、15db以下であり、かつ2000Hzにおける透過損失は、15db以下であることがより好ましく、前記不織布繊維強化樹脂層の1000Hzにおける透過損失は、5〜10dbであり、かつ2000Hzにおける透過損失は、5〜13dbであることが好ましい。
不織布繊維強化樹脂層の透過損失が上記範囲であると、より優れた吸音特性示す。
なお、本明細書における透過損失の測定は、後述する実施例記載の方法によって算出する。
−不織布繊維−
本実施形態における不織布繊維は、織らない布状体をいい、繊維シート、ウェブ、又は特定の方向に配向若しくはランダムに配向し、交流、融着、及び接着等により互いに連結された繊維をいい、織物は含まれない。当該不織布繊維には、マイクロ繊維、サブマイクロメートル繊維、及びこれらを組み合わせた繊維を含む。また、本実施形態における不織布繊維は、メルトブロー繊維、溶融紡糸繊維、エアレイド繊維、カーディング繊維、及びこれらを組み合わせた繊維を含む。さらには、当該不織布繊維に使用する繊維は、天然繊維、合成繊維、及びこれらの組み合わせた繊維を含む。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層に含まれる不織布繊維としては、通常の繊維強化複合材料として使用されるものを用いることができる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、ポリエステル繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリブテン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエチレン−co−ビニルアセテート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、(環状)ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー繊維、セルロース繊維、酢酸セルロース繊維、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
なかでも、本実施形態における不織布繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、及びセラミックス繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。耐衝撃性を向上させる観点からはガラス繊維が特に好ましい。一方、剛性を向上させる観点からは炭素繊維が特に好ましい。上記不織布繊維は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
上記不織布繊維としてガラス繊維を選択した場合、不織布繊維強化樹脂層に集束剤をさらに含有してもよい。当該集束剤としては、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤などが挙げられる。
上記ガラス繊維及びガラス繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。また、上記不織布繊維として炭素繊維を選択した場合も同様に、集束剤を用いてもよい。当該集東剤としては、潤滑剤及び結束剤などが挙げられる。炭素繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。
その他の不織布繊維を用いる場合においても、不織布繊維の特性に応じて、ガラス繊維、炭素繊維に用いることが可能な集束剤の種類、付与量を適宜選択して用いることができ、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。本実施形態の不織布繊維強化樹脂層における集束剤の含有量は、例えば、不織布繊維強化樹脂層全体(100質量%)に対して、0.005〜7質量%としてよい。上記不織布繊維は、単糸又は撚糸から形成されてもよく、あるいは2種以上の繊維からなる複合糸であってもよい。また、上記不織布繊維は、糸のままであってもよいし、紐状、組紐状、シート状等にしたものであってもよい。中でも、取扱性及び設計自由度の観点から、シート状であることが好ましい。
本実施形態において、不織布繊維は、不連続繊維であることが好ましい。当該不織布繊維の平均繊維長は、3〜200mmであることが好ましく、より好ましくは10〜150mmである。なお、不織布繊維の平均繊維長は、積層体を焼却したのちに残存する強化繊維の長さの平均値である。
上記不織布の単糸数は、取扱い性の観点から、30〜15,000本であることが好ましい。また、上記不連続繊維の繊度は、取扱い性の観点から、1,000〜30,000dtexであることが好ましい。上記不織布繊維の断面形状は、特に限定されず、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状等)、及び中空状等のいずれであってもよい。
上記不織布繊維の平均断面径は、長期特性の観点から、3〜25μmであることが好ましい。なお、不織布繊維の平均断面径は、光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープや走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定することができる。
−第1熱可塑性樹脂−
本実施形態における不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であっても非晶性樹脂であってもよい。なお、結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物を用いる場合、第1熱可塑性樹脂に含まれる結晶性樹脂の融点及び非晶性樹脂のガラス転移点のうち、最も高い温度が要件を満たすことが好ましい。使用する第1熱可塑性樹脂の種類及び配合量等を目的に応じて選択することにより、不織布繊維強化樹脂層の強度、弾性率等を調整することができる。
上記第1熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアミドイミド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性、強度、及び弾性率の観点から、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンが好ましく、価格、入手性、及び加工性の観点から、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。上記第1熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
(ポリアミド系樹脂)
上記ポリアミド系樹脂とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他の上記のラクタム、ジアミン(単量体)、ジカルボン酸(単量体)の詳細に関しては、適宜特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。
上記ポリアミド系樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカブロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物等が挙げられる。
(ポリオレフィン系樹脂)
上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒又はメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリエチレン系樹脂が挙げられる。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、融点が100〜400℃であることが好ましく、150〜300℃であることがより好ましい。また、不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合、ガラス転移点が0〜200℃であることが好ましい。
本実施形態において、不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂は、その融点又は融点を有しない場合(非結晶性樹脂の場合)はガラス転移点であるTと、後述する第2熱可塑性樹脂の融点又は融点を有しない場合(非結晶性樹脂の場合)は、ガラス転移点であるTとの差が、50℃以下であることが好ましい。当該差が50℃以下であると、不織布繊維強化樹脂層と熱可塑性発泡樹脂層とを容易に溶着することができる。
また、不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂は、TがTと同じであるか又はそれより低いことが好ましい。これにより、吸音複合積層体を製造する際に、T以上かつT以下に成形温度を設定することで、第1熱可塑性樹脂は溶融し易く、熱可塑性発泡樹脂層に含まれる第2熱可塑性樹脂は溶融し難い状態とすることができる。
不織布繊維強化樹脂層の製造に用いられる第1熱可塑性樹脂の形状としては、特に限定されず、繊維状、紐状、シート状(織物、編物、フィルム、不織布等)、ペレット状等が挙げられる。中でも、取扱性及び設計自由度の観点から、シート状であることが好まし
い。
−添加剤−
本実施形態の不織布繊維強化樹脂層には、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。本実施形態の積層体は、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等を配合することができる。
本実施形態の不織布繊維強化樹脂層における添加剤の含有量は、特に限定されることなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することができる。例えば、任意成分である添加剤の合計含有量は、不織布繊維強化樹脂層の総量100質量%に対して、0.01〜7質量%としてよい。
<熱可塑性発泡樹脂層>
本実施形態における熱可塑性発泡樹脂層は、第2熱可塑性発泡樹脂を含有する。
本実施形態において、熱可塑性発泡樹脂層の平均厚み及び積層体全体における層比は、特に限定されることなく、求められる剛性、熱伝導率、吸音率等に合わせて適宜調整してよい。なお、本明細書における熱可塑性発泡樹脂層の平均厚みの測定方法は、吸音複合積層体の断面を光学顕微鏡又はマイクロスコープで撮影後、画像処理することにより測定する。
本実施形態の熱可塑性発泡樹脂層の発泡倍率は、吸音性の観点から、3倍以上が好ましく、5倍以上であればより好ましい。また、圧縮時の弾性反発力を維持できる観点から30倍未満であることが好ましく、15倍以下であることがより好ましい。ここで、発泡倍率とは、体積が、基材樹脂の状態から、発泡剤の含有(含浸)、予備発泡、及び最終段階の発泡を経て、どの程度膨張したかを意味する。
熱可塑性発泡樹脂層における第2熱可塑性樹脂の発泡倍率が上記範囲であることにより、断熱性能、吸音性能と剛性に優れた積層体を得ることができる。
本実施形態の熱可塑性発泡樹脂層の発泡倍率は、当該熱可塑性発泡樹脂層を構成する基材樹脂(出発材料)の密度を、熱可塑性発泡樹脂層部分の見掛け密度で除することによって算出すればよい。あるいは、基材樹脂の密度を、中間製品である熱可塑性発泡樹脂層の見掛け密度で除することによって算出してもよい。
本実施形態における熱可塑性発泡樹脂層の発泡形態は、連続気泡状態であることが好ましい。これにより、吸音性能がより向上する。
具体的には、本実施形態の熱可塑性発泡樹脂層は、内部に連続した気泡部を有し、その連通気泡率は10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。連通気泡率が上記範囲であると、より優れた吸音特性を発揮できる。
上記連通気泡率は、以下の式より算出することができる。
熱可塑性発泡樹脂層の連通気泡率(%)=[(B−C)/B]×100 (3)
但し、上記式(3)中、B:熱可塑性発泡樹脂層の見掛け体積(cm)、C:熱可塑性発泡樹脂層の真の体積(cm)である。見掛け体積Bは熱可塑性発泡樹脂層の外形寸法から算出される体積であり、真の体積Cは熱可塑性発泡樹脂層の連通気泡部を除いた実体積をそれぞれ意味する。なお、本明細書における真の体積Cの測定は、JIS K7138を準拠し、エアピクノメータ(東京サイエンス株式会社製 空気比較式比重計モデル1000)を用いて、測定することにより得られる。
本実施形態の熱可塑性発泡樹脂層の比容は、吸音性能及び剛性の観点から、2.6〜15.8cm/gが好ましく、4.3〜15.8cm/gであればより好ましい。
なお、本明細書における熱可塑性発泡樹脂層の比容は、熱可塑性発泡樹脂層を所定の直方体に切り出したのち、質量W(g)を測定した後、その3辺の長さから体積V(cm)を算出し、V/W(cm/g)を比容とした。
−第2熱可塑性樹脂−
本実施形態の熱可塑性発泡樹脂層に含まれる第2熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であっても非晶性樹脂であってもよい。
なお、結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物を用いる場合、熱可塑性樹脂に含まれる結晶性樹脂の融点及び非晶性樹脂のガラス転移点のうち、最も高い温度が要件を満たすことが好ましい。使用する熱可塑性樹脂の種類及び配合量等を目的に応じて選択することにより、熱可塑性発泡樹脂層の強度、剛性、断熱性、及び吸音性等を調整することができる。
熱可塑性発泡樹脂層に含まれる第2熱可塑性樹脂としては、上述の第1熱可塑性樹脂と同様の樹脂が挙げられ、耐熱性、強度、及び弾性率に優れることから、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。上記第2熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
また、上述したように、第2熱可塑性樹脂の融点あるいは第2熱可塑性樹脂のガラス転移点であるT(第2熱可塑性樹脂が融点を有しない場合(非結晶性樹脂の場合))と、不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂の融点あるいは第1熱可塑性樹脂のガラス転移点であるT(第1熱可塑性樹脂が融点を有しない場合(非結晶性樹脂の場合))と、の差が、50℃以下であることが好ましい。融点又はガラス転移温度の差が50℃以下であると、不織布繊維強化樹脂層と熱可塑性発泡樹脂層とを容易に溶着することができる。
本実施形態の熱可塑性発泡樹脂層は、上述した添加剤を含んでもよい。当該熱可塑性発泡樹脂層が添加剤を含有する場合、当該添加剤の含有量は、特に限定されることなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することができる。例えば、任意成分である添加剤の合計含有量は、熱可塑性発泡樹脂層の総量100質量%に対して、0.01〜7質量%としてよい。
<反射層>
本実施形態にかかる吸音複合積層体は、必要により、密度0.94g/cm以上の反射層を有してもよい。
本実施形態における反射層は、密度0.94g/cm以上であることが好ましい。
密度が0.94g/cm以上であると、不織布繊維強化樹脂層側から入射した音が効率よく反射層で反射されるため、入射音が2回以上熱可塑性発泡樹脂層を通過することにより、吸音性能がより向上される。
本明細書における反射層の平均厚みの測定方法は、吸音複合積層体の断面を光学顕微鏡又はマイクロスコープを用いて撮影後、画像処理することで測定する。
本実施形態の吸音複合積層体に反射層を設ける場合、当該反射層は、密度0.94g/cm以上であれば特に制限されることはない。
例えば、本実施形態に使用可能な反射層としては、上述した不織布繊維強化樹脂層、強化繊維及び第3熱可塑性樹脂を含有する繊維強化熱可塑性樹脂、公知の繊維強化合成樹脂(FRP)、アルミニウム板、一般鋼板、又は高張力鋼板等が挙げられる。また、反射層に非鉄金属又は鉄を含む場合、熱可塑性樹脂との接合強度を向上させるために、非鉄金属あるいは鉄の表面に対して化学処理(脱脂、ブラスト処理を含む。)又はレーザー処理しておくことが好ましい。
本実施形態において、反射層として、不織布繊維強化樹脂層を使用する場合は、上述した不織布繊維強化樹脂層と同様の形態を適用できる。
また、本実施形態において、反射層として、強化繊維及び第3熱可塑性樹脂を含有する繊維強化熱可塑性樹脂を使用する場合の形態について以下説明する。
−繊維強化熱可塑性樹脂層−
当該反射層に含まれる繊維強化熱可塑性樹脂は、強化繊維を含有させることにより強度を高めた熱可塑性樹脂である。
本実施形態の反射層に含まれる第3熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であっても非晶性樹脂であってもよい。なお、結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物を用いる場合、熱可塑性樹脂に含まれる結晶性樹脂の融点及び非晶性樹脂のガラス転移点のうち、最も高い温度が要件を満たすことが好ましい。使用する強化繊維の種類、配合量、太さ、及び方向性等、並びに第3熱可塑性樹脂の種類及び配合量等を目的に応じて選択することにより、反射層の密度、強度及び弾性等を調整することができる。
−−強化繊維−−
反射層に含まれる強化繊維としては、不連続繊維又は連続繊維が挙げられ、密度の観点から連続繊維が好ましい。当該強化繊維としては、ガラス繊維若しくは金属繊維(ステンレス繊維)などの無機繊維、又は炭素繊維若しくは芳香族ポリアミド繊維等の有機繊維などが挙げられる。
本実施形態において、強化繊維の具体例としては、ガラスファイバー、カーボンファイバー、メタルファイバー、アスベスト、ロックウール、セラミックファイバー、スラグファイバー、チタン酸カリウムウィスカー、ボロンウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、ワラストナイト、ゾノトライト、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、及びセピオライトなどの繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維及びポリベンズチアゾール繊維などの有機繊維、並びにこれらの繊維に対して例えば金属や金属酸化物などの異種材料を表面被覆した繊維などが挙げられる。
上記強化繊維の中でも、特にはガラスファイバー、炭素繊維から選ばれる1種であることが好ましい。上記強化繊維は、1種単独で使用してもよく、あるいは複数種を混合して使用してもよい。
上記強化繊維の単糸数は、取扱い性の観点から、30〜15000本であることが好ましい。また、上記強化繊維の繊度は、取扱い性の観点から、1,000〜30,000dtexであることが好ましい。
本実施形態において、強化繊維は、一方向性シート、織物、編物、組紐などのさまざまな形態で使用することができる。
−−第3熱可塑性樹脂−−
本実施形態において、反射層に含有する熱可塑性樹脂は、上述の不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂と同様の樹脂が挙げられ、第3熱可塑性樹脂は、不織布繊維強化樹脂層に含まれる第1熱可塑性樹脂と同じであって異なっていてもよい。第3熱可塑性樹脂としては、耐熱性、強度、及び弾性率に優れることから、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。上記第3熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
このように、本実施形態の吸音複合積層体における、不織布繊維強化樹脂層、熱可塑性発泡樹脂層、及び反射層が、全て樹脂を含む形態であると、熱硬化性発泡樹脂を含む積層体とは異なり、溶融して樹脂を回収・再利用することができるため、リサイクル性に優れている。また、不織布繊維強化樹脂層、熱可塑性発泡樹脂層、及び反射層が、全てポリアミド系樹脂を含有する場合、層間の接着性が向上し、かつ回収効率が上がり、更にリサイクル性が向上する。
上記第3熱可塑性樹脂は、その融点又は融点を有しない場合(非結晶性樹脂の場合)はガラス転移点であるTと、上記Tとの差が、50℃以下であることが好ましい。当該ガラス転移温度あるいは融点の差が50℃以下であると、第2熱可塑性樹脂と第3熱可塑性樹脂とを容易に溶着することができる。
「吸音複合積層体の製造方法」
本発明に係る吸音複合積層体の製造方法の第1実施形態は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)並びに第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体を準備する工程(I)と、前記プリプレグ(A)を前記第1熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する工程(II)と、前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、加熱した前記プリプレグ(A)を当接させる工程(III)と、前記第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の融点以下に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程(IV)と、を有する。
そして、前記工程(II)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10%以上大きいことを特徴とする。
第1実施形態の吸音複合積層体の製造方法は、加圧機構により加圧する前に、第1熱可塑性樹脂の融点以上の温度にプリプレグ(A)を加熱した後、熱可塑性発泡樹脂体と加熱したプリプレグ(A)とを面同士接触させて、両者を加圧することにより前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる方法である。そして、前記プリプレグ(A)の加熱前と加熱後では、前記プリプレグ(A)の平均厚みが、10%以上大きくなることを特徴とする。
また、本明細書において、プリプレグ(A)は、本発明の製造方法を経て得られる吸音複合積層体の不織布繊維強化樹脂層に対応し、いわゆる不織布繊維強化樹脂層の前駆体に相当する。そして、熱可塑性発泡樹脂体は、本発明の製造方法を経て得られる吸音複合積層体の熱可塑性発泡樹脂層に対応し、いわゆる熱可塑性発泡樹脂層の前駆体に相当する。
本実施形態では、織物ではなく不織布繊維を使用しているため、加熱前のプリプレグ(A)中の不織布繊維の長手方向は、厚み方向にも配向した状態で第1熱可塑性樹脂に拘束されている(工程(I))。そして、工程(II)により前記第1熱可塑性樹脂の融点以上の温度でプリプレグ(A)を加熱すると、前記第1熱可塑性樹脂の拘束力が低下し、残有応力を無くすために、不織布繊維が厚み方向に拡張して、プリプレグ(A)の平均厚みが増加する。これにより、不織布繊維強化樹脂層の空隙率も増加するため、不織布繊維強化樹脂層から熱可塑性発泡樹脂層への音が伝搬しやすくなる。
前記工程(II)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10〜200%大きいことが好ましく、30〜100%大きいことがより好ましい。
本発明に係る吸音複合積層体の製造方法の第2実施形態は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)並びに第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体を準備する工程(I)と、前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、前記プリプレグ(A)を当接させる工程(V)と、前記第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程(VI)と、を有する。そして、前記工程(VI)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10%以上大きいことを特徴とする。
第2実施形態の吸音複合積層体の製造方法は、加圧する際に第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂のそれぞれの融点のうち高い方の温度(以下、T)以上で両樹脂を同時に加熱する点が第1実施形態と異なる。より詳細には、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の融点のうち高い温度で、加熱しながら加圧機構により加圧する、いわゆるホットプレス法により、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを接着(又は融着)している。
前記工程(VI)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10〜200%大きいことが好ましく、30〜100%大きいことがより好ましい。
以下、各工程(I)〜(V)について説明する。
<工程(I)>
本実施形態において、工程(I)は、不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)と、第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体とを準備する工程である。また、必要により密度0.94g/cm以上の反射層の前駆体をさらに準備してもよい。
また、本明細書において、反射層の前駆体は、本発明の製造方法を経て得られる吸音複合積層体の反射層に対応する。
−プリプレグ(A)の製造方法−
プリプレグ(A)は、原料として、上述した第1熱可塑性樹脂及び不織布繊維とから製造する。上記プリプレグ(A)を製造する方法としては、例えば、フィルム状の第1熱可塑性樹脂とシート状の不織布との積層体を加熱・加圧処理する方法、繊維状の第1熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂繊維)と不織布繊維とからなるシートを加熱・加圧処理する方法等により、製造することができる。
上記第1熱可塑性樹脂繊維と不織布繊維とからなるシートは、熱可塑性樹脂繊維と不織布繊維との混繊糸、コーティング糸、又は含浸糸等を用いて作製してもよい。
不織布繊維は、使用する繊維の材質などに応じて、乾式又は湿式法により製造することができる。例えば、炭素繊維を使用する場合、公知の乾式法(カーディング法、エアレイド法、メルトブロー法、フラッシュスパン法)によりウェブを形成後にニードルパンチ、ウォーターパンチ、カレンダー方式によりウェブを接着することでシート状の不織繊維を製造することが好ましい。
加熱・加圧処理としては、例えば、原料を金型に設置し、金型を加熱して金型温度を第1熱可塑性樹脂の融点又はT(℃)〜当該融点又はTプラス50℃としたのち、型締め力1〜100MPaで型締めして圧縮成形を行う。成形時間は、第1熱可塑性樹脂の融点又はTに達してから1〜30分とし、金型を第1熱可塑性樹脂の融点又はTマイナス200℃〜Tマイナス10℃まで冷却したのち開放して、プリプレグ(A)を得る。
プリプレグ(A)のサイズ及び形状は、所望される吸音複合積層体のサイズ及び形状に依存して種々のサイズとすることができる。
−第2熱可塑性樹脂発泡体の製造方法−
第2熱可塑性樹脂発泡体の製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。中でも、成形性、経済性の観点から、発泡性を備える第2熱可塑性樹脂を含有する樹脂粒子を型内に充填し、水蒸気等で加熱し、当該樹脂粒子を発泡させると同時に樹脂粒子同士を熱融着させることによって、吸音複合積層体の第2熱可塑性樹脂発泡層となる熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法(型内発泡成形法)が好ましい。
上記型内発泡成形法で用いられる樹脂粒子としては、例えば、予備発泡粒子等が挙げられる。例えば、第2熱可塑性樹脂発泡体としてポリアミド系樹脂発泡体を製造する際には、ポリアミド系予備発泡粒子を用いることができる。
なお、本明細書において、予備発泡粒子とは、最終段階の発泡を行っていない発泡性を備えた樹脂粒子(ビーズ等)を指す。
上記予備発泡粒子は、上記発泡樹脂の原料となる第2熱可塑性樹脂に発泡剤を含有(含浸)させて、発泡を生じさせることによって得ることができる。例えば、第2熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を使用する場合、当該ポリアミド系樹脂に発泡剤を含有(含浸)させる方法としては、特に限定されることなく、一般的に用いられている方法としてよい。中でも、高発泡倍率を達成しやすく、予備発泡粒子内の気泡サイズが均一になりやすいことから、ガスを臨界圧力未満の雰囲気とし気相状態にして、樹脂に接触させる方法(気相含浸法)が好ましい。
気相含浸法に用いられる第2熱可塑性樹脂の形状としては、特に限定されることなく、例えば、ビーズ状、ペレット状、球体、不定形の粉砕物等が挙げられ、その大きさは、発泡後の予備発泡粒子の大きさを適度なものとし、予備発泡粒子の取り扱いやすさを高め、成形時の充填をより密にする観点から、平均径が0.2〜3mmであることが好ましい。
気相含浸法の条件としては、特には限定されることなく、例えば、ガスの樹脂への溶解をより効率的に進める観点から、雰囲気圧力としては、0.5〜6.0MPaであることが好ましく、雰囲気温度としては、5〜30℃であることが好ましい。
ここで、上記予備発泡粒子を製造する際に使用される発泡剤としては、特に限定されないが、樹脂への溶解性、取り扱いの容易性の観点から、空気や二酸化炭素ガス(炭酸ガス)等が特に好ましい。上記発泡剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡剤を含有(含浸)させた第2熱可塑性樹脂(発泡剤含浸樹脂)に発泡を生じさせる方法としては、特に限定されないが、成形性、経済性の観点から、圧力蒸気等を用いて加熱することによって、発泡剤含浸樹脂中のガスを膨張させて、発泡を生じさせる方法が好ましい。
予備発泡粒子を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填し、加熱することによって、発泡を生じさせると同時に予備発泡粒子同士を熱融着させた後、冷却により生成物を固化し、成形することができる。予備発泡粒子の充填方法は、特には限定されず、公知の製造方法を用いることができる。
予備発泡粒子の気泡に一定のガス圧力を付与して、粒子内部の気泡の大きさ(セルサイズ)を均一にする観点から、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填する前に、予備発泡粒子に対してガスによる加圧処理を行うことが好ましい。加圧処理に用いるガスとしては、特には限定されないが、取り扱い容易性及び経済性の観点から、空気や炭酸ガスが好ましい。加圧処理の方法としては、特には限定されないが、予備発泡粒子を加圧タンク内に充填し、該タンク内にガスを供給する手法等が挙げられる。
予備発泡粒子を成形する際に用いられる熱媒体は、汎用の熱媒体としてよく、発泡樹脂の酸化劣化を抑制する観点から、飽和水蒸気や過熱水蒸気であることが好ましく、発泡樹脂に対して均一な加熱を可能にする観点から、飽和水蒸気が更に好ましい。
上記発泡樹脂の製造方法は、例えば、予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填する充填工程と、キャビティ内に予備発泡粒子の熱融着温度以下の水蒸気を5〜30秒間供給して、上記予備発泡粒子を予備的に加熱する予熱工程と、キャビティ内に予備発泡粒子の熱融着温度以上の水蒸気を20〜120秒間供給して、予備発泡粒子を発泡させ、かつ熱融着させることによって、発泡樹脂を得る融着工程と、を有する方法が好ましい。
予備発泡粒子を加熱する際の温度としては、前述の通り、予備発泡粒子の熱融着温度近傍であることが望ましい。
なお、本明細書において、熱融着温度とは、予備発泡粒子を飽和水蒸気内において加熱し、予備発泡粒子同士が融着する温度を指す。
第2熱可塑性樹脂発泡体の構造は、所望される部品によって連続気泡、独立気泡を選択することにより、断熱性及び吸音性を調整することが出来る。
また、第2熱可塑性樹脂発泡体のサイズ及び形状は、所望される積層体のサイズ及び形状に依存して種々のサイズとすることができる。
−反射層の前駆体−
本実施形態に係る吸音複合積層体として、密度0.94g/cm以上の反射層を有する場合は、工程(I)において、当該反射層となりうる反射層の前駆体を準備してもよい。
密度0.94g/cm以上の反射層の前駆体としては、公知の繊維強化合成樹脂(FRP)、アルミニウム板、一般鋼板、又は高張力鋼板等、上記プリプレグ(A)、強化繊維及び第3熱可塑性樹脂を含有する繊維強化熱可塑性樹脂(以下、プリプレグ(C)と称する。が好ましい。
以下、プリプレグ(C)の製造方法について説明する。
上記プリプレグ(C)を製造する方法としては、例えば、フィルム状の第3熱可塑性樹脂とシート状(織物、編物、一方向配列シート、多軸織物、不織布等)の強化繊維との積層体を加熱・加圧処理する方法、繊維状の第3熱可塑性樹脂(第3熱可塑性樹脂繊維)と強化繊維とからなるシート(織物、編物、一方向配列シート、多軸織物、不織布等)を加熱・加圧処理する方法等により、製造することができる。第3熱可塑性樹脂繊維と強化繊維とからなるシートは、熱可塑性樹脂繊維と強化繊維との混繊糸、コーティング糸、又は含浸糸等を用いて作製してもよい。
上記第3熱可塑性樹脂繊維と不織布繊維とからなるシートは、熱可塑性樹脂繊維と不織布繊維との混繊糸、コーティング糸、又は含浸糸等を用いて作製してもよい。
上記加熱・加圧処理としては、プリプレグ(A)の条件と同様のため省略する。
<工程(II)、工程(III)>
本実施形態において、工程(II)は、プリプレグ(A)を前記第1熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する工程である。
また、本実施形態に係る吸音複合積層体として、密度0.94g/cm以上の反射層を有し、かつ当該反射層として、プリプレグ(C)を使用する場合において、工程(II)は、前記プリプレグ(A)を前記第1熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、かつ前記プリプレグ(C)を前記第3熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する工程であることが好ましい。
上記プリプレグ(A)又は上記プリプレグ(C)を融点以上に加熱する方法は特に制限されることはなく、公知の加熱機構(赤外線ヒーター、電熱ヒーター、又はバッチ式ホットプレス装置など)を使用することができる。
本実施形態において、工程(III)は、前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、加熱した前記プリプレグ(A)を当接させる工程である。
また、本実施形態に係る吸音複合積層体として、密度0.94g/cm以上の反射層を有し、かつ当該反射層として、プリプレグ(C)を使用する場合において、工程(III)は、前記熱可塑性発泡樹脂体の一方の面に、加熱した前記プリプレグ(A)を当接させ、他方の面に加熱したプリプレグ(C)を当接させることが好ましい。
上記各材料同士を当接させる方法としては、後述の加圧方法に使用する金型内に加熱したプリプレグ(A)又はプリプレグ(C)、熱可塑性発泡樹脂体、及び加熱したプリプレグ(A)又はプリプレグ(C)の順に重ねる方法、又は冶具など公知の方法を使用できる。
<工程(IV)>
本実施形態において、工程(IV)は、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂の融点以下に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程である。
また、本実施形態に係る吸音複合積層体として、密度0.94g/cm以上の反射層を有し、かつ当該反射層として、プリプレグ(C)を使用する場合において、工程(IV)は、前記第1熱可塑性樹脂、前記第2熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂の融点以下に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体と前記プリプレグ(C)とを融着させる工程であることが好ましい。
上記加圧機構としては、特に制限されることはなく、プレス機、ロールプレス、後述の成形機、金型によるプレスなど公知の方法を使用できる。加圧機構による加圧方法としては、例えば、以下の加圧方法が挙げられる。
(加圧方法):成形機、及び上記T以上Tプラス50℃以下に加熱したインロー構造の平板用金型を準備する。そして、プリプレグ(A)と、熱可塑性樹脂発泡体と、必要によりプリプレグ(C)を準備し、この順に金型内に積層する(工程(III))。当該金型内の構成材料にかかる圧力が0.1〜10MPaとなるように型締めし、1〜30分間保持した後、金型をTマイナス200℃以上Tマイナス10℃以下まで冷却し、離型することで、各構成材料間が融着した吸音複合積層体を得る(工程(IV))。
また、上記の加圧方法において、プリプレグ(C)の代わりにプリプレグ(A)を使用して、プリプレグ(A)−熱可塑性樹脂発泡体−プリプレグ(A)の順に金型内に積層してもよい。
<工程V>
本実施形態において、工程(V)は、前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、前記プリプレグ(A)を当接させる工程である。
また、本実施形態に係る吸音複合積層体として、密度0.94g/cm以上の反射層を有し、かつ当該反射層として、プリプレグ(C)を使用する場合において、工程(V)は、前記熱可塑性発泡樹脂体の一方の面に、前記プリプレグ(A)を当接させ、他方の面にプリプレグ(C)を当接させることが好ましい。
上記当接させる方法としては、上述の加圧方法に使用する金型内にプリプレグ(A)又はプリプレグ(C)、熱可塑性発泡樹脂体、及びプリプレグ(A)又はプリプレグ(C)の順に重ねる方法、又は冶具など公知の方法を使用できる。
<工程(VI)>
本実施形態において、工程(V)は、前記第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程である。
また、本実施形態に係る吸音複合積層体として、密度0.94g/cm以上の反射層を有し、かつ当該反射層として、プリプレグ(C)を使用する場合において、工程(VI)は、前記第1熱可塑性樹脂、前記第2熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂層とプリプレグ(C)とを融着させる工程であることが好ましい。
なお、前記第1熱可塑性樹脂、前記第2熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂の融点以上とは、これら3つの樹脂のなかで最も高い融点温度以上をいう。
以上の温度で加圧機構による加圧する熱加圧方法としては、特に制限されることはなく、ホットプレス機、ホットロールプレス、後述の成形機、金型によるプレスなど公知の方法を使用できる。融点以上に温度調節した加圧機構による加圧方法としては、例えば、以下の熱加圧方法が挙げられる。
(熱加圧方法):積層体用金型を準備する。短波長赤外線ヒーターを用いて積層体前駆体をT以上の温度に予め加熱する。プリプレグ(A)と、第2熱可塑性樹脂発泡体と、必要によりプリプレグ(C)とを準備し、この順に加熱した金型内に積層する(工程(V))。当該金型内の構成材料にかかる圧力が1〜10MPaとして1〜30分間型締めした後、金型をTマイナス200℃以上Tマイナス10℃以下まで冷却し、離型することで、各構成材料間が融着した積層体を得る(工程(V))。
また、上記の熱加圧方法において、プリプレグ(C)の代わりにプリプレグ(A)を使用して、プリプレグ(A)−第2熱可塑性樹脂発泡体−プリプレグ(A)の順に金型内に積層してもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定される
ものではない。
1.測定方法
実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下のとおりである。
(1)空隙率の測定方法
実施例の吸音複合積層体及び比較例の吸音体(以下、積層体等と称する。)から表層(=不織布繊維強化樹脂層)のサンプルを採取し、体積を測定したのちにJIS K 7075に従い、燃焼法によってプリプレグの繊維重量含有率を求め、比重を算出して積層体等の空隙率を求めた。
(2)曲げ弾性率の測定方法
実施例及び比較例で得られた積層体等について、ISO178に基づき、曲げ弾性率(GPa)を以下の条件にて測定した。3箇所の測定値の平均値を測定結果とした。なお、積層構成が表と裏で異なる積層体については表を向けて設置した場合と裏を向けて設置した場合のそれぞれで曲げ試験を実施し、より弾性率の高い値を表中に記入した。
・曲げ弾性率:接線法
・試験環境:23℃、50RH%
・試験片:長さ200mm×幅10mm×各実施例及び比較例の厚みの短冊状
・試験速度:歪速度が1%/min.となるように各厚みで変更
・スパン間:試験片の厚み×16mm
・使用機器:インストロン50kN(インストロン社製)
(3)垂直入射吸音率の測定方法
実施例及び比較例で得られた積層体等について、JIS A1405−2に基づき、周波数160〜5000Hzにおける垂直入射吸音率(%)を20℃において測定した。各積層体等から試験片(直径41.5mmの円盤状)を準備し、垂直入射吸音率測定システム(日本音響エンジニアリング社製「WinZacMTX型」)を用いて測定した。試験片は、表層である不織布繊維強化樹脂層側から音が入射されるように配置した。測定結果として、1/3オクターブ帯の平均垂直入射吸音率(%)を示す。
(4)透過損失の測定方法
実施例及び比較例で得られた積層体等について、ASTM E2611に基づき、周波数160〜5000Hzにおける透過損失(db)を20℃において測定した。各積層体等から試験片(直径41.5mmの円盤状)を準備し、垂直入射透過損失システム(日本音響エンジニアリング社製「WinZacMTX型」)を用いて測定した。試験片は、表層である不織布繊維強化樹脂層側から音が入射されるように配置して測定した。
(5)線膨張係数の測定方法
実施例及び比較例で得られる不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA及び連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグCについて、JIS K 7197に基づき、50℃から150℃における平均線膨張係数を測定した。
なお、プリプレグの線膨張係数は、各積層体等とする前の各プリプレグで測定可能であるが、各積層体等とした後でも、各積層体等から各プリプレグを切り出して融点以上の金型で十分に加圧された各プリプレグを用いることで同様に線膨張係数を測定することが出来る。
また、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA及び連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグCにおける熱可塑性樹脂、不織布の体積分率は、JIS K7075(燃焼法)に準拠した方法から算出した。
2.原材料
実施例及び比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
<<熱可塑性樹脂>>
・ポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製「UBESTA3014U」、融点175℃、線膨張係数13×10−5/K)
・ポリアミド12樹脂繊維(単繊維繊度:1.7dtex、捲縮数:12山/25mm、捲縮度:13%、カット長:51mm、融点175℃)
・ポリアミド6樹脂(融点225℃)
<<強化繊維>>
・炭素繊維(東レ(株)製「T−300」、エポキシ樹脂系サイジング剤の付着量:1.0〜1.2質量%、線膨張係数1×10−5/K)
・ガラス繊維(繊度:11500dtex、単糸数:2000本、線膨張係数0.5×10−5/K)
<<集束剤>>
・ガラス繊維集束剤(脱イオン水で調製することにより、ガラス繊維集束剤として、以下の組成を有する水溶液を作製した。)
・シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBE−903」)0.5質量%)
・潤滑剤(ワックス((株)加藤洋行製「カルナウバワックス」)1質量%)
・ポリウレタン樹脂((株)ADEKA製「Y65−55」):2質量%)
・結束剤(無水マレイン酸(40質量%)、アクリル酸メチル(50質量%)、及びメタクリル酸メチル(10質量%)の共重合体(重量平均分子量:20000)を3質量%)
実施例及び比較例で製造したプリプレグの材料は以下のとおりである。
<<樹脂フィルム>>
・ポリアミド12樹脂フィルム:ポリアミド12樹脂を用いて、Tダイ押出成形機((株)創研製)により、樹脂フィルム(厚み150μm、目付170g/m)を作製した。
<<不織布繊維(1)>>
炭素繊維のチョップド繊維(平均繊維長50mm)50質量%とポリアミド12短繊維50質量%との混綿を、オプナー、ローラーカード、クロスレイアー、ローラーカード、及びニードルパンチングの各工程に通し、不連続炭素繊維とポリアミド12短繊維との不織布(目付400g/m)を作製した。
<<不織布繊維(2):ガラスクロス>>
ガラス繊維集束剤0.45質量%を付着させたガラス繊維を作製した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。得られたガラス繊維を経糸及び緯糸として用い、レピア織機(織幅2m)により製織することでガラスクロス(平織、織密度6.5本/25mm、目付600g/m)を作製した。
3.積層体等の製造
上記の原材料を用いて、以下の実施例1〜4及び比較例1〜3の積層体等を作製し、上記の1.測定方法の欄に従い、空隙率、曲げ弾性率、垂直入射吸音率及び透過損失を測定した。当該測定結果を表1−1及び表1−2に示す。
[実施例1:吸音複合積層体(1)]
吸音複合積層体の製造に使用するための不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA(=プリプレグ(A)に対応する。)、及びポリアミド発泡体B(=熱可塑性発泡樹脂体に対応する。)を以下の方法で製造した。
<不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAの製造>
成形機(最大型締め力300トンの東芝機械(株)製「S100V−8A」)及びインロー構造の平板(縦500mm×横500mm×厚み0.3mm)用金型を準備した。不織布を金型形状に合わせて切断し、不織布1枚をポリアミド12とともに金型内に設置した。金型を加熱して金型温度を200℃とし、次いで型締め力5MPaで型締めして、圧縮成形を行った。成形時間は、ポリアミド12の融点である175℃に達してから15分とし、金型を100℃まで冷却したのちに開放して、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA(縦500mm×横500mm×厚み0.3mm、体積分率(樹脂/強化繊維)40/60、密度1.4g/cm)を得た。
<ポリアミド発泡体Bの製造>
ポリアミド6樹脂を単軸押出機にて加熱条件下で溶融混練し、その後ストランド状に押出し、冷水槽で水冷し、カッティングを行い、ペレット形状の基材樹脂を得た。これに、特開2011−105879号公報の実施例に記載の方法に準じて、基材樹脂に発泡剤としての炭酸ガスを含有させ、炭酸ガスを含有した基材樹脂を加熱することにより発泡を生じさせて、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなるまで、圧縮空気を導入し、その後、当該圧力を24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
型内発泡成形機に取り付けた金型を型締めした後、加圧処理した予備発泡粒子を充填し、その後、キャビティ内に135℃の飽和水蒸気を10秒間供給し(一段階目の加熱)、更に、キャビティ内に144℃の飽和水蒸気を30秒間供給して(二段階目の加熱)、予備発泡粒子を発泡させ、かつ熱融着させることによって、ポリアミド発泡体B(厚み10mm、密度:228kg/m、発泡倍率:5倍)を得た。
上記で得られた不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA、及びポリアミド発泡体Bを用いて、以下の方法で積層体等を製造した。
<吸音複合積層体(1)の製造>
(加圧法):成形機(最大型締め力300トンの東芝機械(株)製「S100V−8A」)、及びポリアミド12の融点以下の150℃に加熱したインロー構造の平板用金型(縦500mm×横500mm)を準備した。不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを1枚と、ポリアミド発泡体Bを1枚と、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAとを1枚準備した。そして、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA−ポリアミド発泡体B−不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAの順で重ねた積層体前駆体を、短波長赤外線ヒーター(へレウス社製)を用いて、当該不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAの両層が200℃になるまで積層体前駆体を予め加熱し、構成材料にかかる圧力が0.1MPaとなるように型締めし、1分間保持した後、金型を100℃まで冷却し、離型することで、各構成材料間が融着した吸音複合積層体(1)を得た。
[実施例2:吸音複合積層体(2)]
加圧法において積層体前駆体を予め加熱せず、金型温度を変更した以外は、実施例1と同様にして吸音複合積層体(2)を製造した。
<吸音複合積層体(2)の製造>
(熱加圧法):成形機(最大型締め力300トンの東芝機械(株)製「S100V−8A」)、及びポリアミド12の融点以上の200℃に加熱したインロー構造の平板用金型(縦500mm×横500mm)を準備した。不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを1枚と、ポリアミド発泡体Bを1枚と、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを1枚とを準備し、この順に前記金型内に積層した。構成材料にかかる圧力が0.1MPaとなるように型締めし、1分間保持した後、金型を100℃まで冷却し、離型することで、各構成材料間が融着した吸音複合積層体(2)を得た。
[実施例3:吸音複合積層体(3)]
熱加圧法において、一方の表層に使用する不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAの代わりに、使用する材料を連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグCと変更した以外は、実施例1と同様にして吸音複合積層体(3)を製造した。
<連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグC(=プリプレグ(C)に対応する。)の製造>
成形機(最大型締め力300トンの東芝機械(株)製「S100V−8A」)及びインロー構造の平板(縦500mm×横500mm×厚み0.4mm)用金型を準備した。ポリアミド12樹脂フィルム及びガラスクロスを金型形状に合わせて切断し、ポリアミド12樹脂フィルム1枚と、ガラスクロス1枚と、ポリアミド12樹脂フィルム1枚との順で積層し、金型内に設置した。金型を加熱して金型温度を150℃とし、次いで型締め力5MPaで型締めして、圧縮成形を行った。成形時間は、ポリアミド12の融点である175℃に達してから15分とし、金型を100℃まで冷却したのちに開放して、連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグC(縦500mm×横500mm×厚み0.4mm、体積分率(樹脂/強化繊維)58/42、密度1.73g/cm)を得た。
<吸音複合積層体の製造(3)>
(加圧法):成形機(最大型締め力300トンの東芝機械(株)製「S100V−8A」)、及びポリアミド12の融点以下の150℃に加熱したインロー構造の平板用金型(縦500mm×横500mm)を準備した。不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを1枚と、ポリアミド発泡体Bを1枚と、連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグCを1枚準備し、短波長赤外線ヒーター(へレウス社製)を用いて、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA及び連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグCが200℃になるまで積層体前駆体を予め加熱し、構成材料にかかる圧力が0.1MPaとなるように型締めし、1分間保持した後、金型を100℃まで冷却し、離型することで、各構成材料間が融着した吸音複合積層体(3)を得た。
[実施例4:吸音複合積層体(4)]
加圧法において圧力を1.0MPaとした以外は実施例1と同様にして吸音複合積層体(4)を製造した。
<吸音複合積層体(4)の製造>
(溶着):成形機(最大型締め力300トンの東芝機械(株)製「S100V−8A」)、及びポリアミド12の融点以上の200℃に加熱したインロー構造の平板用金型(縦500mm×横500mm)を準備した。不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを1枚と、ポリアミド発泡体Bを1枚と、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAとを1枚準備し、この順に金型内に積層した。構成材料にかかる圧力が1.0MPaとなるように型締めし、1分間保持した後、金型を100℃まで冷却し、離型することで、各構成材料間が融着した吸音複合積層体(4)を得た。
[実施例5:吸音複合積層体(5)]
不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA(0.6mm)を実施例1に記載の方法で準備した。そして、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA(0.6mm)を1枚と、ポリアミド発泡体Bを1枚準備した。そして、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA−ポリアミド発泡体Bの順で重ねた以外は、実施例1と同様にして吸音複合積層体(5)を製造した。
[実施例6:吸音複合積層体(6)]
粒径200〜250umの砥粒で両面をブラスト加工した、めっき処理がされていないSPCC鋼板(0.6mm)を準備した。そして、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを1枚と、ポリアミド発泡体Bを1枚と、SPCC鋼板を1枚準備した。そして、不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグA−ポリアミド発泡体B−SPCC鋼板の順で重ねた以外は、実施例1と同様にして吸音複合積層体(6)を製造した。
[比較例1:積層体(1)]
溶着工程において表層1及び2に使用する材料を連続ガラス繊維強化ポリアミドプリプレグCとした以外は、実施例1と同様にして積層体(a)を製造した。
[比較例2:積層体(2)]
溶着工程において不連続炭素繊維強化ポリアミドプリプレグAを16枚重ねて成形した以外は、実施例2と同様にして積層体(b)を製造した。
[比較例3:吸音体(1)]
ポリアミド発泡体B自体を吸音体として使用した。
上記の実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた積層体等に対して、上述した1.測定方法を行った実験結果を、以下の表1−1、表1−2及び表2に示す。
Figure 2021187135
Figure 2021187135
Figure 2021187135
上記表1−1、表1−2及び表2の実験結果から、実施例1〜6の吸音複合積層体は、比較例に比べて優れた吸音性能及び剛性を示すことが確認された。
本発明の吸音複合積層体は、優れた吸音性能及び剛性を示すため、各種自動車部品及び建築用部品などとして好適に利用できる。

Claims (14)

  1. 不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含む不織布繊維強化樹脂層と、
    前記不織布繊維強化樹脂層が少なくとも一方の面に接着された熱可塑性発泡樹脂層と、を有し、
    前記不織布繊維強化樹脂層の空隙率が30%以上であることを特徴とする、吸音複合積層体。
  2. 前記不織布繊維及び前記第1熱可塑性樹脂を含む不織布繊維強化樹脂層と、
    前記不織布繊維強化樹脂層が少なくとも一方の面に接着された熱可塑性発泡樹脂層と、
    を有し、
    前記不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、前記第1熱可塑性樹脂の厚み方向への線膨張係数αよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の吸音複合積層体。
  3. 前記不織布繊維強化樹脂層の全体積に対して、前記不織布繊維は、10〜70体積%含有し、前記第1熱可塑性樹脂は、30〜90%含有する、請求項1又は2に記載の吸音複合積層体。
  4. 前記不織布繊維強化樹脂層の厚み方向への線膨張係数αは、以下の式(1):
    α≧30×{α+α(1−V)} 式(1)
    (上記式(1)中、αは不織布繊維の線膨張係数(1/K)を表し、Vは不織布繊維強化樹脂層全体に占める不織布繊維の体積分率を表し、αは第1熱可塑性樹脂の線膨張係数(1/K)を表す。)
    で表わされる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  5. 曲げ弾性率は、1GPa以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  6. 前記不織布繊維強化樹脂層の曲げ弾性率は、5GPa以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  7. 前記不織布繊維強化樹脂層の1000Hzにおける透過損失は、10db以下かつ2000Hzにおける透過損失は、15db以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  8. 1000Hzにおける吸音率は10%以上であり、かつ2000Hzにおける吸音率が20%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  9. 前記不織布繊維は、炭素繊維である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  10. 前記熱可塑性発泡樹脂層の発泡形態は、連続気泡状態である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  11. 前記熱可塑性発泡樹脂層に含まれる第2熱可塑性樹脂と、前記第1熱可塑性樹脂の融点差は、50℃以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  12. 前記熱可塑性発泡樹脂層の一方の面に前記不織布繊維強化樹脂層が、接着され、かつ密度が0.94g/cm以上の反射層が、前記熱可塑性発泡樹脂層の他方の面に接着されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の吸音複合積層体。
  13. 不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)並びに第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体を準備する工程(I)と、
    前記プリプレグ(A)を前記第1熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する工程(II)と、
    前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、加熱した前記プリプレグ(A)を当接させる工程(III)と、
    前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂の融点以下に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程(IIV)と、を有し、
    前記工程(II)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10%以上大きいことを特徴とする、吸音複合積層体の製造方法。
  14. 不織布繊維及び第1熱可塑性樹脂を含むプリプレグ(A)並びに第2熱可塑性樹脂を含む熱可塑性発泡樹脂体を準備する工程(I)と、
    前記熱可塑性発泡樹脂体の少なくとも一方の面に、前記プリプレグ(A)を当接させる工程(V)と、
    前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節した加圧機構により加圧して、前記プリプレグ(A)と前記熱可塑性発泡樹脂体とを融着させる工程(VI)と、を有し、
    前記工程(III)後の前記プリプレグ(A)の平均厚みは、前記工程(I)の前記プリプレグ(A)の平均厚みよりも10%以上大きいことを特徴とする、吸音複合積層体の製造方法。
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