以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下において同一又は類似の部材については同一又は類似の符号を付している。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
(浄水処理方法)
本発明の実施の形態に係る浄水処理方法は、凝集沈殿処理により原水を濁質除去する処理に関するものであり、例えば、図1に示すように、原水に無機凝集剤を注入して原水中の濁質を凝結させる凝結処理S1と、凝結処理S1後の原水に対して高分子凝集剤の存在下で凝集フロックを形成させる凝集処理S21、及び、凝集処理S21で得られる凝集フロックを固液分離し、凝集沈殿汚泥又は汚泥スラリを得る固液分離処理S22を含む凝集沈殿処理S2と、凝集沈殿汚泥の少なくとも一部を分離汚泥として凝集処理S21へ返送するか、又は汚泥スラリを凝集処理S21へ返送する返送処理S3と、返送処理S3に高分子凝集剤を添加する処理と、凝集処理S21に返送する分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥重量と、予め設定した高分子凝集剤添加率とに基づいて、高分子凝集剤の添加量を決定する高分子凝集剤添加量制御処理S4とを含む。
本実施形態において「分離汚泥」とは、沈殿池31や固液分離部211の装置外に引き抜かれる凝集沈殿汚泥であって、その少なくとも一部に高分子凝集剤を添加し、凝集処理S21に返送される汚泥を指す。本実施形態では、凝集沈殿処理S2の系外に引き抜かれる凝集沈殿汚泥の少なくとも一部である分離汚泥、又は、凝集沈殿処理S2の系内で発生する汚泥スラリの汚泥重量を基準にして、高分子凝集剤が添加されて、凝集処理S21に返送される。
また、本実施形態において分離汚泥の返送処理S3とは、凝集沈殿処理S2の固液分離処理S22から系外に引き抜かれた凝集沈殿汚泥の一部に対して高分子凝集剤を添加した分離汚泥が、返送手段5を経由して凝集処理S21に返送されることを意味する。汚泥スラリの返送処理S3とは、凝集沈殿処理S2の系外に引き抜かれずに、凝集沈殿処理S2の系内において高分子凝集剤が添加された汚泥スラリが、固液分離処理S22から凝集処理S21に内部循環されることを意味する。
凝集処理S21では、凝結処理S1において無機凝集剤を注入した後の原水に対して、高分子凝集剤を利用して凝集処理を行う。即ち、凝結処理S1において無機凝集剤を注入した後の原水に対し、凝集処理S21において、返送処理S3によって返送される高分子凝集剤が添加された分離汚泥又は汚泥スラリ中の汚泥に、凝結した原水中の濁質が取り込まれ、それらが凝集して、沈降性の良い凝集フロックを形成させることを意味する。これにより、凝集フロックを十分に粗大化させ、凝集フロックの沈降性を高めることができる。
返送処理S3では、分離汚泥又は汚泥スラリを凝集処理S21に返送する。分離汚泥は返送ポンプと配管等で構成される返送手段3を介して凝集処理S21に返送する。汚泥スラリは、後述するスラリ循環型高速凝集沈殿処理装置(図5参照)の内部の撹拌装置等の返送手段3を介して、内部循環により凝集処理S21に返送する。凝集沈殿処理S2によって汚泥濃度が原水よりも濃縮された分離汚泥又は汚泥スラリに対して高分子凝集剤を添加することにより、凝結処理後の原水に対して高分子凝集剤を添加する場合に比べて、高分子凝集剤の凝集沈殿処理効果を向上させることができる。特に濁度10度以下の低濁度原水の凝集沈殿処理で高分子凝集剤の凝集沈殿効果を向上させることができる。
高分子凝集剤の添加量の決定に際しては、凝集処理S21に返送する分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥濃度を検出し、凝集処理S21に返送する分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥流量を検出し、汚泥濃度及び汚泥流量の検出結果に基づいて、汚泥重量を算出し、汚泥重量の算出結果に基づいて、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を決定することが好ましい。検出した分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥重量に対して高分子凝集剤の添加量が決定されることにより、原水が低濁度な場合であっても、より精度良く効率的に高分子凝集剤による凝集沈殿処理効果を得ることができる。
返送処理S3における分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥流量の制御に際しては、原水の濁度及び無機凝集剤の注入率に基づいて、凝結処理S1により、原水から発生する原水中の濁度又は無機凝集剤由来の発生汚泥重量を推定し、凝集処理の設定汚泥濃度及び原水の流量に基づいて、凝集処理に必要な必要汚泥重量を決定し、この必要汚泥重量と発生汚泥重量とに基づいて、凝集処理へ返送する分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥重量を決定し、汚泥重量に基づいて、凝集処理へ返送する分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥流量を制御するように構成されることもまた好ましい。
近年の河川水に見られる濁度10度以下の低濁度の原水に対しては、無機凝集剤又は高分子凝集剤を最適注入率で注入しても凝集反応が起こりにくい場合がある。一方、本実施形態に係る浄水処理方法によれば、凝集剤の添加効果を最大限に発揮させながら、高い凝集沈殿効果を安定して継続的に得ることが可能となる。
一般的に、原水の水温が低くなる冬期には凝集反応が進みにくいため、沈降性の悪いフロックが形成されて固液分離処理の効率が低下する。そのため、従来の凝集剤の注入方法のように原水の流量を基準とした高分子凝集剤の注入方法では、良好な凝集反応及び良好な沈降性が得られない場合がある。
本発明の実施の形態に係る浄水処理方法によれば、凝集処理S21に返送される分離汚泥又は汚泥スラリの汚泥重量を基準として、分離汚泥又は汚泥スラリに添加する高分子凝集剤の添加量が決定される。分離汚泥及び汚泥スラリの汚泥濃度は、原水の濁度や無機凝集剤由来の発生汚泥濃度と比べて高濃度となるため、凝集処理S21における汚泥濃度は分離汚泥及び汚泥スラリの汚泥濃度が支配的となる。
そのため、分離汚泥及び汚泥スラリの汚泥重量を基準として高分子凝集剤の添加量を決定することにより、従来の原水の流量を基準とした高分子凝集剤の注入率設定方法に比べて、原水の性状及び原水の浄水処理状況に関わらず、常に最適な添加量で高分子凝集剤を添加することが可能となる。これにより、高分子凝集剤の使用量を最適化して効率的な処理を行いながら、高い凝集沈殿処理効果を安定して継続的に得ることが可能となる。
凝集沈殿処理S2は、凝集処理S21と固液分離処理S22とを別々の処理槽を用いて順々に処理しても良いし、凝集処理S21と固液分離処理S22とを同一の処理槽で構成される凝集沈殿処理装置を用いて連続的に処理してもよい。以下に示す第1の実施の形態では、凝集処理S21と固液分離処理S22とを、別々の処理槽を用いて処理する横流式凝集沈殿処理方式を用いた例を説明する。第2の実施の形態では、凝集処理S21と固液分離処理S22とを同一処理槽を用いて連続的に処理するスラリ循環型高速凝集沈殿処理方式を用いた例を説明する。
図1において凝集沈殿処理S2により得られた処理水は、例えば、急速ろ過処理を行うことにより水道水に好適なろ過水が得られる。ろ過水に対しては必要に応じて殺菌処理や消毒処理等を施してもよい。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る浄水処理装置は、図2に示すように、原水に無機凝集剤を注入して原水中の濁質を凝結させる凝結処理S1(図1参照)を行う凝結手段1と、凝結処理S1後の原水に対して高分子凝集剤の存在下で凝集フロックを形成させるための凝集処理S21(図1参照)を行うフロック形成池21と、凝集フロックを固液分離し、凝集沈殿汚泥と処理水とを得る固液分離処理S22(図1参照)を行う沈殿池31を備える凝集沈殿手段2と、沈殿池31で発生する凝集沈殿汚泥の少なくとも一部を分離汚泥としてフロック形成池21へ返送する返送手段5と、分離汚泥に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加手段4と、制御手段7とを備える。図2の例では、凝結手段1として混和池10及び混和池10に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入手段6を備える。
原水としては浄水処理に利用可能な原水であれば特に限定されない。例えば、水道原水として利用される河川水、湖沼水、貯留池水、雨水、伏流水、地下水、井戸などが本実施形態に係る原水として好適に利用可能である。以下に限定されるものではないが、例えば原水濁度が典型的には数100度以下、更に典型的には10度以下、より更に典型的には2〜10度の原水が利用できる。
凝結手段1としては、原水に無機凝集剤を注入して混合することにより原水中の濁質を凝結させる混和池10と、混和池10に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入手段6を備えることができる。混和池10内には、原水を撹拌するための撹拌手段(不図示)を内部に備えることができる。混和池10内部水流による撹拌でもよい。混和池10には混和池10内に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入手段6が接続されており、原水の濁度に応じた注入率で無機凝集剤が注入される。
無機凝集剤としては、例えば、アルミニウム系凝集剤又は鉄系凝集剤が使用できる。アルミニウム系凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や硫酸アルミニウム(硫酸バンド)が利用できる。鉄系凝集剤としては、硫酸第二鉄(ポリ鉄)や塩化第二鉄が利用できる。
無機凝集剤は酸性であるため、原水に無機凝集剤を注入すると混和池10内の最適凝集pH範囲を外れる場合がある。そのような場合は、アルカリ剤である消石灰や苛性ソーダを添加することにより混和池10内を最適凝集pHに調整することが好ましい。無機凝集剤の注入率は、ジャーテスト等により、原水の流量に関係する滞留時間及び濁度に応じて最適な注入率となるように調整されることが望ましい。
混和池10で凝結処理された原水はフロック形成池21へ供給される。フロック形成池21では、混和池10から流出する原水を、フロック形成池21の後段に接続された沈殿池31から返送される高分子凝集剤を含む分離汚泥と混合し、高分子凝集剤の作用により凝集フロックを成長させる。フロック形成池21も混和池10と同様に原水を撹拌するための撹拌手段(不図示)を内部に備えることができる。
図2の例では図示を省略しているが、後述する高分子凝集剤添加手段4が、フロック形成池21にも接続され、原水の濁度が高い場合等には、高分子凝集剤を含む分離汚泥をフロック形成池21に返送し、必要に応じて、高分子凝集剤をフロック形成池21に更に直接、追加で添加するように構成してもよい。
フロック形成池21の汚泥濃度が20mg/L未満では、沈殿池31での固液分離が難しくなる。一方、フロック形成池21の汚泥濃度が200mg/Lを超えると、沈殿池31へ流入する流入水の汚泥負荷が高まるため、沈殿池31での固液分離が難しくなる。フロック形成池21の汚泥濃度は20〜200mg/L、更に好ましくは50〜200mg/Lとなるように、原水の濁度及び流量と無機凝集剤の注入により発生する汚泥濃度を考慮して、沈殿池31から返送させる分離汚泥の汚泥流量を調整して返送することが好ましい。
なお、原水濁度が10度程度と低く、フロック形成池21での汚泥濃度を200mg/L程度と高く設定する場合には、原水濁度と無機凝集剤由来に起因する汚泥量が無視できるため、フロック形成池21で発生する汚泥の全量を、沈殿池31から返送される分離汚泥で賄うように、フロック形成池21での汚泥濃度の設定値に見合う分離汚泥をフロック形成池21に返送する。フロック形成池21に返送する分離汚泥の汚泥重量は、分離汚泥の汚泥濃度と分離汚泥の汚泥流量から計算する。
沈殿池31は、フロック形成池21で処理された凝集フロックを含む原水を、沈降分離により、凝集沈殿汚泥と処理水とに固液分離する。沈殿池31としては、浄水処理場に一般的に用いられる横流式沈殿池を用いることができる。沈殿池31で固液分離された凝集沈殿汚泥は、沈殿池31外へ引き抜かれる。引き抜かれた凝集沈殿汚泥の少なくとも一部に高分子凝集剤を添加し、高分子凝集剤が添加された分離汚泥が、返送手段5を介してフロック形成池21へ返送される。フロック形成池21へ返送された分離汚泥以外の凝集沈殿汚泥は、上水汚泥として汚泥処理工程へ送られる。
高分子凝集剤が添加された分離汚泥の返送場所は、フロック形成池21の流入配管部でも、流入部でもよい。フロック形成池21へ返送される前に予め分離汚泥が高分子凝集剤で凝集され、さらに粘性のある高分子凝集剤溶解液が分離汚泥で希釈されることで、フロック形成池21での高分子凝集剤の分散性が向上する。また、高分子凝集剤で既に凝集した分離汚泥がフロック形成池21に流入することで、凝集した分離汚泥が凝集処理の核となり、凝集時間が短縮できる。
その結果、フロック形成池21での短時間で高い凝集効果が得られ、沈殿池31での固液分離が効果的に行われる。つまり、沈殿池31の処理水の濁度の低減と、沈殿池31から引き抜かれる凝集沈殿汚泥の高濃度化が可能となる。高濃度の凝集沈殿汚泥によって、その一部である分離汚泥の汚泥流量の低減化と、分離汚泥として利用されない上水汚泥の汚泥処理における濃縮や脱水もより効果的に行える。高分子凝集剤が添加された分離汚泥のフロック形成池21への返送場所は、フロック形成池21の前段でも中段部でもよい。
本発明でのフロック形成池21の滞留時間は5〜30分間であり、より好ましくは10〜20分間である。既設の装置を利用する場合、浄水量を下げない限り、フロック形成池21の滞留時間が容易に変更できない場合がある。ここで、本発明のフロック形成池21の滞留時間とは、フロック形成池に高分子凝集剤が添加された分離汚泥を返送した場所からその下流のフロック形成池21にまで滞留する原水の滞留時間を意味する。
最適な滞留時間は、浄水場の運転条件で異なるが、本発明では、上記の最適な滞留時間になるように、高分子凝集剤が添加された分離汚泥のフロック形成池21への返送場所を任意に設定できる。
また、高分子凝集剤が添加された分離汚泥のフロック形成池21への返送方法は、フロック形成池21を複数分割して返送してもよい。具体的には、フロック形成池21の流入配管部、フロック形成池21の滞留時間で3分割した前段部、中段部、後段部に対して返送する方法が利用できる。
返送手段5は、図示しない分離汚泥を返送する返送ポンプ及び配管を備えている。ここでは、沈殿池31から返送手段5を介して、フロック形成池21に返送される分離汚泥に対して予め設定された添加率で高分子凝集剤を添加した後、これをフロック形成池21に返送する。高分子凝集剤添加手段4は、高分子凝集剤供給設備、高分子凝集剤溶解設備、高分子凝集剤溶解液貯留設備、高分子凝集剤溶解液の薬注ポンプ等で構成することができる。
高分子凝集剤添加手段4による高分子凝集剤溶解液としての高分子凝集剤の添加は、返送ポンプの吸込み部や吐出部、返送ポンプとフロック形成池21への分離汚泥流入部の間で、返送配管の途中に設けたラインミキサーに添加してもよいし、撹拌機構を有するフロック形成池21とは別の混合槽を設け、混合槽内の余剰汚泥に添加しても良い。
沈殿池31から引き抜かれる凝集沈殿汚泥は、沈殿池31で濃縮されるため高濃度になっている。そのため、例えば、原水の濁度が非常に低く、フロック形成池21に高分子凝集剤を直接添加しても高分子凝集剤の効果が十分に得られない場合には、沈殿池31で得られる高濃度の凝集沈殿汚泥に高分子凝集剤を添加し、高分子凝集剤が添加された分離汚泥をフロック形成池21に返送することで、凝集沈殿処理における高分子凝集剤の添加量を少なく抑えながら、沈殿池31で沈降する凝集フロックの沈降性を高めて固液分離性能を向上できる。これにより、原水の性状変動に関わらず、安定した水質の処理水を得ることができる。
冬期の原水の低水温時には、固液分離性を向上させるために、無機凝集剤の過剰添加になる傾向にある。本発明によれば、無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用することにより固液分離性を向上させることができる、低水温時には、無機凝集剤の過剰分を削減することで、無機凝集剤の注入率が削減できる。さらに無機凝集剤由来の発生汚泥量分が削減できて排水処理への負荷低減になる。
特に、濁度10度以下、更には濁度2度以下の低濃度原水に対しては、従来一般的なフロック形成池21への高分子凝集剤の直接添加によっても、適切な粒径の凝集フロックが有意に生成されず、高分子凝集剤による凝集効果が十分に得られない場合がある。第1の実施の形態に係る浄水処理装置によれば、返送手段5を介して、原水の濁度や無機凝集剤由来の発生汚泥濃度よりも汚泥濃度の高い凝集沈殿汚泥の一部に対して高分子凝集剤を添加し、これをフロック形成池21へ返送することで、高い凝集沈殿効果を安定して継続的に得ることが可能となる。
例えば、フロック形成池21の汚泥濃度が20〜200mg/Lとなるようにフロック形成池21に返送される分離汚泥の汚泥濃度及び汚泥流量を調整し、その汚泥濃度及び汚泥流量から算出される汚泥重量に基づいて、高分子凝集剤の添加率が最適な添加率となるように高分子凝集剤を分離汚泥に添加してフロック形成池21に返送することで、高分子凝集剤を過不足無く添加でき、高い凝集沈殿効果を安定して継続的に得ることが可能となる。
分離汚泥に対する高分子凝集剤の添加率は、以下に限定されるものではないが、分離汚泥の汚泥重量に対して浮遊物質量(SS)ベースで0.005〜3.0wt%対SSとすることができ、0.01〜2.0wt%対SS、更には0.01〜1.0wt%対SSとすることがより好ましい。高分子凝集剤の添加率が0.005wt%対SS未満では、高分子凝集剤が不足し、凝集効果が得られない。高分子凝集剤の添加率が3.0wt%対SSを超えると、分離汚泥に対して、高分子凝集剤が過剰で、粘性の高い凝集フロックが生成し、フロック形成池21で、その粘性の高い凝集フロックの分散性が悪く、原水等に由来する濁質等が取り込めずに、凝集沈殿処理効果が得られない。
高分子凝集剤の添加率は、分離汚泥のSSに代えて全蒸発残留物(TS)ベースで定めても良く、例えば、分離汚泥の汚泥重量に対して0.005〜3.0wt%対TSとすることができ、0.01〜2.0wt%対TS、更には0.01〜1.0wt%対TSとすることがより好ましい。
高分子凝集剤添加手段4は、フロック形成池21内へ返送される分離汚泥に高分子凝集剤を添加する場合は、高分子凝集剤を一旦、溶媒へ溶解して高分子凝集剤溶液とし、これを添加することができる。分離汚泥に高分子凝集剤溶液を添加することにより、結果的に粘性の高い高分子凝集剤溶液が分離汚泥で希釈されるため、フロック形成池21へ高分子凝集剤を直接添加する場合に比べて高分子凝集剤の分散性を良好にでき、凝集反応時間である緩速撹拌時間の短縮が図られ、凝集反応を早めて凝集フロックを生成しやすくすることができる。また、従来のように、フロック形成池21へ高分子凝集剤を直接添加する場合より、沈殿池31での凝集フロックの濃縮性が高まり、分離汚泥濃度が高濃度になる。そのために分離汚泥の汚泥流量が少なくてよく、分離汚泥を返送する返送配管や返送ポンプの小型化ができる。
高分子凝集剤の溶解濃度は例えば、0.1〜0.3wt%とすることができる。高濃度で高分子凝集剤溶解液を保存できるので、高分子凝集剤の劣化も遅くできるため、高分子凝集剤溶解液の保存性も良好とすることができる。高分子凝集剤の溶解装置、注入装置及び溶解液の貯槽もコンパクトにできる。高分子凝集剤としては、市販品の水道用高分子凝集剤が利用でき、例えば、アクリルアミドとアクリル酸の共重合物またはアクリル酸重合物が好適に利用できる。
返送手段5は、分離汚泥の汚泥濃度を検出する汚泥濃度検出手段25及び分離汚泥の汚泥流量を検出する汚泥流量検出手段26を備える。汚泥濃度検出手段25としては、近赤外光式汚泥濃度計、レーザー光式汚泥濃度計、マイクロ波汚泥濃度計などの市販の汚泥濃度計が使用できる。
汚泥流量検出手段26としては、市販の電磁流量計、超音波流量計等が使用できる。返送手段5の分離汚泥の返送には市販のポンプが使用できる。中でも汚泥を定量的に移送できるポンプ、例えば、ギアポンプ又は回転容積式一軸偏心ねじポンプ(モーノポンプ)などを使用し、回転数制御で設定流量を調整してもよい。その場合、ポンプの回転数等の流量に関する信号は、制御手段7に出力される。
制御手段7は、フロック形成池21に返送される分離汚泥の汚泥重量に基づいて、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を制御する。例えば、制御手段7は、フロック形成池21における凝集処理に返送される分離汚泥の汚泥濃度及び汚泥流量を検出する。制御手段7は、分離汚泥の汚泥濃度と汚泥流量とを乗算して分離汚泥の汚泥重量を算出し、汚泥重量の算出結果に基づいて、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を決定する。
図2に示すように、原水の流量を検出する原水流量検出手段36及び原水の濁度を検出する原水濃度検出手段35を更に備えていてもよく、原水流量検出手段36及び原水濃度検出手段35の検出結果が制御手段7へ出力されるように構成されていてもよい。原水濃度検出手段35及び原水流量検出手段36を備えることにより、原水の濁度及び流量を測定することができ、原水の濁度に由来する発生汚泥重量を考慮にいれることでより好適な浄水処理が行える。
従来のように、フロック形成池21に高分子凝集剤を添加する場合は、原水流量に対する高分子凝集剤の重量(mg/L−原水)で高分子凝集剤の注入率を制御していた。しかしながら、フロック形成池21に直接、高分子凝集剤をその注入率で添加しても、特に低濁度の原水ではフロック形成池21で十分な大きさの凝集フロックにならず、固液分離が難しかった。また、フロック形成池21に分離汚泥を返送せずに、フロック形成池21に直接、高分子凝集剤を添加しても、高分子凝集剤溶解液の粘度が高いためにフロック形成池21で高分子凝集剤が分散不足となっていた。
また、フロック形成池21に高分子凝集剤を添加しない分離汚泥が返送されるとすると、原水の濁度や無機凝集剤に由来する発生汚泥濃度より、分離汚泥の汚泥濃度が高いために、フロック形成池21の汚泥濃度が、フロック形成池21に返送される分離汚泥の汚泥濃度に支配される。このために、分離汚泥でなく、フロック形成池21に直接、高分子凝集剤を原水量に対する高分子凝集剤の重量(mg/L−原水)で注入しても、フロック形成池21の汚泥濃度に対して、分離汚泥分に対する高分子凝集剤の注入量分が不足することになる。また、フロック形成池21に直接、高分子凝集剤をその溶解液で注入しても、高分子凝集剤溶解液の粘度が高いためにフロック形成池21で高分子凝集剤が分散不足となるので、安定した凝集処理を継続的に行うことが困難になる。
第1の実施の形態に係る浄水処理装置によれば、制御手段7により、分離汚泥の汚泥濃度と汚泥流量とから得られる分離汚泥の汚泥重量を算出し、汚泥重量の算出結果に基づいて、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量で制御することができるため、原水の濁度が非常に低い場合であっても安定して凝集沈殿効果を得ることができ、安定した水質の処理水を得ることができる。
(浄水処理方法)
図2に示す浄水処理装置を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る浄水処理方法を実施することができる。即ち、本発明の第1の実施の形態に係る浄水処理方法は、凝結処理S1、凝集沈殿処理S2、返送処理S3及び高分子凝集剤添加量制御処理S4を含み、凝集沈殿処理S2が、図2に示すフロック形成池21内において凝集フロックを形成させ、凝集フロックを含む原水を、図2に示す沈殿池31において沈降分離することにより、凝集沈殿汚泥と処理水とを得て、沈殿池31から引き抜いた凝集沈殿汚泥の少なくとも一部に、高分子凝集剤を添加した後、返送手段5を介してフロック形成池21へと返送する横流式凝集沈殿処理を含む。
第1の実施の形態に係る浄水処理方法によれば、既存の浄水処理装置を利用しながら、高分子凝集剤の添加量を最適化して効率的な処理を行いながら、高い凝集沈殿処理効果を安定して継続的に得ることが可能となる。
(制御方法)
本発明の第1の実施の形態に係る浄水処理方法は、原水の濁度及び無機凝集剤の注入率に基づいて、凝結処理により原水から発生する発生汚泥重量を推定し、凝集処理の設定汚泥濃度及び原水の流量に基づいて、凝集処理に必要な必要汚泥重量を決定し、必要汚泥重量と発生汚泥重量とに基づいて、凝集処理へ返送する分離汚泥の汚泥重量を決定し、汚泥重量に基づいて、凝集処理へ返送する分離汚泥の汚泥流量を制御することを含む。ここでは、図3に示すフローチャートに従って、高分子凝集剤の添加量及び分離汚泥の汚泥流量を制御する方法について説明する。
まず、原水流量検出手段36が原水の流量を検出し、原水濃度検出手段35が、原水の濁度を検出し、検出結果を制御手段7へ出力する。原水の流量及び濁度は管理値を利用してもよい。ステップS102において、制御手段7が、無機凝集剤の注入率を入力するか、予め規定された無機凝集剤の注入率の運転管理値を抽出する。ステップS103において、制御手段7が、原水流量と、原水の濁度と無機凝集剤の注入率から、混和池10で発生する発生汚泥重量、即ち、原水由来の汚泥発生量と無機凝集剤由来の汚泥発生量の合計を推定する。
即ち、ステップS103において、混和池10で発生する汚泥濃度は、原水の濁度に起因するSS濃度と無機凝集剤由来のSS濃度の合計となるため、例えば、以下の推定式(1)から計算できる。ここでは無機凝集剤として浄水場での使用実績が多いPACの例を示すが、液体硫酸バンド(8重量%)の換算係数K2は0.08である。
混和池10で発生する汚泥濃度(mg/L)=a×K1+b×K2 ・・・(1)
ここで、a:原水の濁度(度)、
b:無機凝集剤(PAC)注入率(mg/L)
K1:濁度からSSへの換算係数(0.7〜1.2(経験値))
K2:無機凝集剤(PAC)から水酸化アルミニウムへの換算係数(0.1)
を示す。
ステップS104において、制御手段7が、フロック形成池21の設定汚泥濃度と、原水流量の積から、フロック形成池21の必要汚泥重量を計算し、決定する。ステップS105において、フロック形成池21の不足汚泥重量を決定する。不足汚泥重量は、フロック形成池21の設定汚泥重量から、混和池10で発生する汚泥濃度と原水の流量の積を減算することにより決定できる。
ステップS106において、ステップS105で決定された不足汚泥重量に対して、予め設定した高分子凝集剤添加率から分離汚泥に添加すべき高分子凝集剤の添加量を決定する。具体的には、高分子凝集剤添加重量と高分子凝集剤溶解液の高分子凝集剤濃度から、分離汚泥に添加すべき高分子凝集剤溶解液の添加液量、流量を決定する。ステップS107において、ステップS106で決定された高分子凝集剤溶解液の添加液量、流量に基づいて、ステップS107において、分離汚泥に対して所定の添加量で高分子凝集剤溶解液を添加する。ステップS108において、浄水処理を継続しない場合は、作業を終了する。浄水処理を継続する場合において高分子凝集剤添加率の設定値変更やフロック形成池21の設定SSを変更する場合には、ステップS1012へ進む。
一方、ステップS105でフロック形成池21の不足汚泥重量が決定されると、ステップS206において、制御手段7が、分離汚泥の汚泥濃度からフロック形成池21での不足汚泥重量に見合う、フロック形成池21へ返送する分離汚泥の汚泥流量を決定する。
フロック形成池21へ返送する分離汚泥の汚泥流量Qrは、以下の推定式(2)から計算できる。
Qr={Q×SS−Q×(a×K1+b×K2)}÷(SSr−SS)・・・(2)
ここで、Q:原水流量(m3/時)
Qr:分離汚泥の汚泥流量(m3/時)
a:原水の濁度(度)
b:無機凝集剤(PAC)注入率(mg/L)
K1:濁度からSSへの換算係数(0.7〜1.2(経験値))
K2:無機凝集剤(PAC)から水酸化アルミニウムへの換算係数(0.1)
SS:フロック形成池の汚泥濃度(設定値)(mg/L)
SSr:分離汚泥の汚泥濃度(mg/L)
を示す。なお、(2)式において原水流量や分離汚泥の返送流量の単位はm3/時に限定されない。
ステップS206で決定されたフロック形成池21へ返送する分離汚泥の汚泥流量に基づいて、ステップS207において、沈殿池31から引き抜かれた分離汚泥の少なくとも一部がフロック形成池21へと返送される。ステップS208において、分離汚泥の汚泥流量を確認し、ステップS108へ進む。
本発明の第1の実施の形態に係る水処理装置及び水処理方法によれば、沈殿池31から返送される分離汚泥の汚泥重量を基準として、予め設定した高分子凝集剤添加率から決定した添加量で、高分子凝集剤を注入する高分子凝集剤添加手段4を備えることにより、低濁度又は高濁度の原水が供給される場合、或いは、濁度以外の水温やアルカリ度などの原水の急激な性状変動があっても、高分子凝集剤の過剰な添加を抑制しながら、効率良く安定的な浄水処理効果を得ることが可能となる。
なお、図2の装置構成例では、原水の急激な性状変動を想定し、原水濁度及び原水流量を検出するための原水濃度検出手段35及び原水流量検出手段36を設ける例について説明したが、原水の濁度が比較的安定している場合、或いは原水の濁度が比較的容易に予測できる場合には、原水濃度検出手段35を適宜省略することもできる。また、原水流量が比較的安定している場合、或いは原水流量が比較的容易に予測できる場合には、原水流量検出手段36を適宜省略することもできる。これにより、装置をより簡略化し、小型化に対応したシステムを提供できる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る浄水処理装置は、図4に示すように、原水が流入する着水井11と、着水井11から流出する原水に無機凝集剤を注入して原水中の濁質を凝結させるとともに、無機凝集剤を注入した原水に対して高分子凝集剤の存在下で凝集沈殿処理を行い、固液分離して凝集沈殿汚泥及び汚泥スラリを得る高速凝集沈殿処理装置22を備える。第2の実施の形態では、無機凝集剤注入手段6により、高速凝集沈殿処理装置22内の原水に無機凝集剤が注入される点、及び、凝集処理を行う凝集部、固液分離処理を行う固液分離部、固液分離部で発生する汚泥スラリを内部循環により返送する循環部を全て高速凝集沈殿処理装置22内に含み、連続的に処理される点が、第1の実施の形態に係る浄水処理装置と異なる。
高速凝集沈殿処理装置22としては、凝集フロックを形成させる凝集部と、凝集部で形成された凝集フロックを含む原水を固液分離して凝集沈殿汚泥及び汚泥スラリと処理水とを得る固液分離部と、汚泥スラリを凝集部へ返送して内部循環させる循環部とを備え、凝集処理、固液分離処理及び汚泥スラリの内部循環を連続的に行う高速凝集沈殿処理を行うための装置であれば、その具体的構成は特に限定されない。
高速凝集沈殿処理装置22は、凝集部にあたる第1及び第2撹拌室と、汚泥スラリの固液分離部と、固液分離されて高速凝集沈殿処理装置22外に引き抜かれた凝集沈殿汚泥を一時的に貯蔵し、高速凝集沈殿処理装置22の装置と一体化した構造を有する汚泥ピットを備えることができる。
第2の実施の形態における「分離汚泥」とは、濃縮部の凝集沈殿汚泥の一部または汚泥ピットの凝集沈殿汚泥の一部を装置外に引き抜き、高分子凝集剤を添加して凝集部に返送するための汚泥を指す。「汚泥スラリ」は高速凝集沈殿処理装置22内で固液分離処理された後の凝集沈殿汚泥であって高速凝集沈殿処理装置22の系外へ引き抜かれずに凝集部へ内部循環により返送される汚泥を指す。
返送手段5は、返送ポンプ、返送配管などの分離汚泥の返送設備、或いは、高速凝集沈殿処理装置22の汚泥ピットから引き抜かれた凝集沈殿汚泥の一部である分離汚泥の汚泥濃度を検出する汚泥濃度検出手段25及び分離汚泥の汚泥流量を検出する汚泥流量検出手段26を備える。
制御手段7は、高速凝集沈殿処理装置22の凝集部に返送される分離汚泥の汚泥重量に基づいて、高分子凝集剤添加手段4で、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を制御する。例えば、制御手段7は、凝集部に返送される分離汚泥の汚泥濃度及びその返送流量を検出する。制御手段7は、分離汚泥の汚泥濃度と返送流量とを乗算して分離汚泥の汚泥重量を算出し、汚泥重量の算出結果に基づいて、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を決定する。
図4に示すように、原水の濁度を検出する原水濃度検出手段35及び原水の流量を検出する原水流量検出手段36を更に備えていてもよく、原水流量検出手段36及び原水濃度検出手段35の検出結果が制御手段7へ出力されるように構成されていてもよい。原水濃度検出手段35及び原水流量検出手段36を備えることにより、原水の濁度及び流量を測定することができ、原水の濁度由来する発生汚泥重量を考慮にいれたより好適な浄水処理が行える。
高速凝集沈殿処理装置22の装置外に引き抜かれた凝集沈殿汚泥の一部である分離汚泥は、図4の制御手段7と高分子凝集剤添加手段4により、その分離汚泥に高分子凝集剤が添加されて、図4の返送手段5によって高速凝集沈殿処理装置22の凝集部に返送される。返送に使われなかった凝集沈殿汚泥は上水汚泥として汚泥処理される。
図5は、高速凝集沈殿処理装置22の具体的構成例を示す。高速凝集沈殿処理装置22は、装置中央部に配置された撹拌翼205と、撹拌翼205の下方に設けられた凝集部にあたる第1撹拌室201と、撹拌翼205を介して第1撹拌室201の上方に設けられ、第1撹拌室201と連通した別の凝集部にあたる第2撹拌室202と、第1撹拌室201及び第2撹拌室202よりも流下側に配置され、第2撹拌室202から流出する汚泥スラリを固液分離する固液分離部211と、固液分離部211上方の処理水部204と、固液分離部211で固液分離された汚泥スラリを第1撹拌室201側へと内部循環させる循環部203を備える。循環部203には、固液分離されて装置外へと排出される凝集沈殿汚泥を一時的に貯蔵し、高速凝集沈殿処理装置22の装置と一体化した構造である汚泥ピット207を備える。循環部203には濃縮部207Aを併設することもある。第2撹拌室202には第2撹拌室202の汚泥濃度を検出するための汚泥濃度検出手段28が配置されている。汚泥ピット207及び濃縮部207Aは、循環部203の一部に設置され、固液分離された汚泥スラリを一時的に貯蔵して固液分離を促進させることができる。
原水は、原水供給管208を介して高速凝集沈殿処理装置22へ供給される。原水供給管208には原水に無機凝集剤を注入するための無機凝集剤注入手段6が接続されている。高速凝集沈殿処理装置22内に供給された原水は第1撹拌室201へ導かれ、第1撹拌室201内の既存の凝集フロックを含む汚泥スラリと混合される。汚泥スラリと混合した原水は、第1撹拌室201から第2撹拌室202、固液分離部211へと導かれる。固液分離部211では、汚泥スラリの固液分離が行われ、処理水は固液分離部211上方の処理水部204を通って高速凝集沈殿処理装置22の外部へ流出する。
固液分離部で分離されて濃縮された汚泥スラリ203aは固液分離部211から循環部203を経由して第1撹拌室201に戻る。循環部203に備えた汚泥ピット207や濃縮部207Aを経て第1撹拌室201にもどる場合もある。汚泥の循環流は主に撹拌機206の駆動により生じるが、例えば汚泥ピット207に別途設けた設備(例えばポンプ)により促進させてもよい。
循環部203から内部循環される汚泥スラリ203aには高分子凝集剤添加手段4から高分子凝集剤が添加されて、第1撹拌室201、第2撹拌室202、循環部203に返送される。汚泥ピット207で返送されなかった残りの凝集沈殿汚泥は上水汚泥として系外に排泥される。また、循環部203の汚泥スラリを装置外に引き抜いた後、高分子凝集剤を添加して分離汚泥とし、これを高速凝集沈殿処理装置22の凝集部に返送することも可能である。
汚泥ピット207の汚泥に直接、高分子凝集剤添加手段4からの高分子凝集剤を添加し、汚泥ピット207の系外に引き抜かれた分離汚泥を、返送ポンプや返送配管を経由して、凝集部に返送することも可能である。また、集泥部209から系外へ引き抜かれた凝集沈殿汚泥の一部に高分子凝集剤を添加して、凝集沈殿汚泥を集泥部209からの引抜配管から分岐した配管と返送ポンプで高速凝集沈殿処理装置22の凝集部に高分子凝集剤が添加された分離汚泥を返送することも可能である。高分子凝集剤は、高分子凝集剤添加手段4で汚泥ピット207から凝集部までの配管や返送ポンプの吸込部や吐出部に添加する。このように、固液分離処理後の高濃度の汚泥スラリ203aに高分子凝集剤を添加して第1撹拌室201に返送させてもよく、これにより、少ない高分子凝集剤の添加量で、装置内全体としての凝集効果を高め、且つ固液分離性能をより向上できる。
分離汚泥への高分子凝集剤添加率は0.005〜3.0wt%対SSで、好ましくは0.01〜2.0wt%対SSである。高分子凝集剤の添加率が0.005wt%対SS未満では高分子凝集剤が不足し、凝集効果が得られない。また高分子凝集剤の添加率が3.0wt%対SSを超えると、分離汚泥に対して、高分子凝集剤が過剰で、粘性の高い凝集フロックが生成し、凝集部で、その粘性の高い凝集フロックの分散性が悪く、原水等に由来する濁質等が取り込めずに、凝集沈殿処理効果が得られない。
固液分離部211の固液分離によって処理水から分離された凝集沈殿汚泥は、汚泥ピット207へと流れる。汚泥ピット207中の凝集沈殿汚泥は、返送手段5によって引き抜かれ、汚泥ピット207から高速凝集沈殿処理装置22の外に引き抜いた凝集沈殿汚泥の一部に対して高分子凝集剤が添加された後、再び高速凝集沈殿処理装置22内の第1撹拌室201、第2撹拌室202、循環部203の汚泥スラリ203aへ返送されてもよい。図5には図示していないが、汚泥ピットから引き抜かれた分離汚泥の返送にはポンプや返送配管等の使用が有効である。
高分子凝集剤の添加場所は、汚泥ピット207から引き抜かれた凝集沈殿汚泥の一部の分離汚泥を返送先に返送するまでの配管や引抜ポンプや返送ポンプの吸込部や吐出部である。また、高分子凝集剤添加手段4を介して汚泥ピット207へ高分子凝集剤を添加することで、高分子凝集剤の添加及び混合のための特別な反応槽などの設備を用意する必要がなく、且つ既存の高速凝集沈殿処理装置22内に高分子凝集剤を添加するために高速凝集沈殿処理装置22を改造する必要もないため、既存の設備を活用してより効率の良い処理が行える。
本発明の第2の実施の形態に係る浄水処理装置によれば、高速凝集沈殿処理装置22を利用することにより、凝集沈殿処理を効率化することができるとともに、高分子凝集剤の添加量を最適化することができる。
(浄水処理方法)
図4又は図5に示す浄水処理装置を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る浄水処理方法を実施することができる。即ち、本発明の第2の実施の形態に係る浄水処理方法は、凝集フロックを形成させる凝集部と、凝集部で形成された凝集フロックを含む原水を固液分離して汚泥スラリと処理水とを得る固液分離部と、汚泥スラリを凝集部へ内部循環して循環させる循環部とを備え、凝集処理、固液分離及び汚泥スラリの内部循環を連続的に行うスラリ循環型高速凝集沈殿処理を行うことを含む。
第2の実施の形態に係る浄水処理方法によれば、スラリ循環型高速凝集沈殿処理を利用することにより、高分子凝集剤の添加量を最適化して効率的な処理を行いながら、高い凝集沈殿効果を安定して継続的に得ることが可能となる。
(制御方法)
本発明の第2の実施の形態に係る浄水処理方法は、原水の濁度及び無機凝集剤の注入率と原水の流量に基づいて、凝集部により原水から発生する発生汚泥重量を推定し、凝集部の設定汚泥濃度及び凝集部への流入水の流量に基づいて、凝集部に必要な必要汚泥重量を決定し、必要汚泥重量と発生汚泥重量とに基づいて、凝集部へ返送する分離汚泥の汚泥重量を決定し、汚泥重量に基づいて、凝集部へ返送する分離汚泥の返送流量を制御することを含む。ここでは、図6に示すフローチャートに従って、高分子凝集剤の添加量及び汚泥流量を制御する方法について説明する。
まず、ステップS301において、原水流量検出手段36が原水の流量を検出し、原水濃度検出手段35が、原水の濁度を検出し、検出結果を制御手段7へ出力する。原水の流量及び濁度は管理値を利用してもよい。ステップS302において、制御手段7が、無機凝集剤の注入率を入力するか、予め規定された無機凝集剤の注入率の管理値や実績値を抽出する。ステップS303において、制御手段7が、原水の濁度と無機凝集剤の注入率から、高速凝集沈殿処理装置22における凝集沈殿処理で発生する発生汚泥重量、即ち、無機凝集剤由来の汚泥発生量と原水由来の汚泥発生量の合計を推定する。
即ち、ステップS303において、高速凝集沈殿処理装置22における凝集沈殿処理で発生する汚泥濃度は、原水の濁度に起因するSS濃度と無機凝集剤由来のSS濃度の合計となるため、例えば、以下の推定式(3)から計算できる。
高速凝集沈殿処理で発生する汚泥濃度(mg/L)=a×K1+b×K2 ・・・(3)
ここで、a:原水の濁度(度)
b:無機凝集剤(PAC)注入率(mg/L)
K1:原水の濁度からSSへの換算係数(0.7〜1.2(経験値))
K2:無機凝集剤(PAC)から水酸化アルミニウムへの換算係数(0.1)を示す。
ステップS304において、制御手段7が、凝集部の設定汚泥濃度と凝集部への流入水量から、凝集部の必要汚泥重量を計算する。なお、凝集部への流入水量は、原水流量と、汚泥スラリの内部循環流量と、分離汚泥の返送流量の合計である。凝集部の必要汚泥重量は、例えば以下の推定式(4)から計算できる。
凝集部の必要汚泥重量(kg/時)=(Q+Qc+Qr)×C×10-3・・(4)
ここで、C:凝集部の設定汚泥濃度(mg/L)
Q:原水流量(m3/時)
Qc:汚泥スラリの内部循環流量(m3/時)
Qr:分離汚泥の返送流量(m3/時)
ステップS305において、凝集部の不足汚泥重量を決定する。不足汚泥重量は、凝集部の必要汚泥重量から、凝集部に流入する原水濁度と無機凝集剤由来の汚泥重量と、汚泥スラリの汚泥重量の合計を減算することにより決定できる。凝集部に流入する汚泥スラリの汚泥重量は、例えば、以下の推定式(5)から計算できる。
凝集部に流入する汚泥スラリの汚泥重量(kg/時)
=Q×(a×K1+b×K2)×10-3+Qc×Cc×10-3・・・・・(5)
ここで、a:原水の濁度(度)
b:PAC注入率(mg/L)
K1:原水の濁度からSSへの換算係数(0.7〜1.2(経験値))
K2:PACから水酸化アルミニウムへの換算係数(0.1)
Q:原水流量(m3/時)
Qc:汚泥スラリの内部循環流量(m3/時)
Cc:汚泥スラリの汚泥濃度(mg/L)
凝集部の不足汚泥重量は、凝集部の必要汚泥重量から分離汚泥以外に凝集部に流入する汚泥重量を減算することで決定する。
ステップS306において、不足汚泥重量に対して、予め設定した高分子凝集剤添加率から分離汚泥に添加すべき高分子凝集剤の添加量を決定する。ここで、高分子凝集剤を溶媒で溶解させる場合には、高分子凝集剤添加重量と溶解液の高分子凝集剤濃度から、分離汚泥に添加すべき高分子凝集剤溶解液の添加液量を決定する。ステップS307において、ステップS306で決定された高分子凝集剤の添加量又は添加液量に基づいて、分離汚泥に対して高分子凝集剤を添加する。
一方、ステップS305で凝集部の不足汚泥重量が決定されると、ステップS406において、制御手段7が、凝集部での不足汚泥重量に見合う分離汚泥重量に対して、分離汚泥の汚泥濃度から分離汚泥の返送流量を決定する。凝集部への分離汚泥の返送流量は、以下の推定式(6)で計算できる。
凝集部への分離汚泥の返送流量Qr(m3/時)
={(Q+Qc)×C−Qc×Cc}÷(Cr−C)・・・・・・(6)
ここで、Q;原水流量(m3/時)、Qc;汚泥スラリの内部循環流量(m3/時)
Qr:分離汚泥の汚泥流量(m3/時)
Cc:汚泥スラリの汚泥濃度(mg/L)
Cr:分離汚泥の汚泥濃度(mg/L)
C:凝集部の汚泥濃度(mg/L)
また、汚泥濃度がCc<<Cr、C<<Crであるため、以下の式に従い、凝集部の汚泥濃度のマスバランスを考慮して(6)式を変形すると、推定式(7)が得られる。
凝集部への分離汚泥の返送流量Qr(m3/時)
={(Q+Qc)×C}÷Cr・・・・・・・・・・・・(7)
ステップS406で決定された高速凝集沈殿処理装置22への分離汚泥の返送流量に基づいて、ステップS407において、高速凝集沈殿処理装置22引き抜かれた分離汚泥の少なくとも一部が高速凝集沈殿処理装置22へと返送される。ステップS408において、分離汚泥の返送流量を確認する。ステップS408において、浄水処理を継続しない場合は、作業を終了する。浄水処理を継続する場合において処理条件を変更する場合には、ステップS101へ進む。
本発明の第2の実施の形態に係る水処理装置及び水処理方法によれば、高速凝集沈殿処理装置22を利用した場合においても、高速凝集沈殿処理装置22から返送される分離汚泥の汚泥重量を基準として予め設定した添加率で高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加手段4を備えることにより、低濁度又は高濁度の原水が供給される場合であっても、或いは原水の急激な性状変動が生じた場合においても、高分子凝集剤の過剰な添加を抑制しながら、効率良く安定的な水処理効果を得ることが可能となる。
図5の高速凝集沈殿処理装置22の代わりに、例えば、図7に示すスラリブランケット型高速凝集沈殿処理装置を利用することもできる。この場合は、装置底部に設けられた排泥ラインに返送手段5を接続し、排泥ラインから引き抜かれた分離汚泥に高分子凝集剤を添加して、装置の凝結部や凝集部へ返送することができる。
別の方法としては、凝集部の汚泥濃度をモニタリングしつつ、凝集部の設定汚泥濃度になるように分離汚泥を第1撹拌室201または第2撹拌室202に返送する方式である。この場合は、設定汚泥濃度が設定されると、分離汚泥の返送流量が決まり、その返送流量もモニタリングできると、分離汚泥濃度から、分離汚泥の汚泥重量が計算でき、その汚泥重量に対して設定された高分子凝集剤添加量が決定できるため、分離汚泥の返送流量を制御するまでは、(6)式を使わなくても返送流量が決定できる。
図5の凝集部の1つである第2撹拌室202に設置された汚泥濃度検出手段28を用いて、分離汚泥の返送流量を制御する方法である。即ち、汚泥濃度検出手段28で第2撹拌室202の汚泥濃度を連続的に測定し、その汚泥濃度をモニタリングし、凝集部の設定汚泥濃度になるまで、分離汚泥を凝集部に返送することで、凝集部の汚泥濃度を設定値に維持できる。また、汚泥濃度検出手段28で汚泥濃度をモニタリングし、凝集部の設定汚泥濃度が維持できるように、分離汚泥の返送流量を制御する。この場合、分離汚泥の汚泥濃度が凝集部の設定汚泥濃度に比べて十分に高濃度であるので、分離汚泥の返送流量の制御で容易に凝集部の設定汚泥濃度が維持できる。
分離汚泥の返送流量制御は、凝集部の汚泥濃度をモリタリングしつつ、分離汚泥の返送流量を配管途中の流量調整弁や自動弁の開度調節や返送ポンプの回転数の流量制御で凝集部の汚泥濃度を設定濃度に常時、維持できる。また、凝集部が第2撹拌室202以外の第1撹拌室201でも循環部203でも、汚泥濃度検出手段28を移設するか、または、新たに別の検出手段を設置することで、第1撹拌室201でも循環部203で設定汚泥濃度が分離汚泥の返送流量の制御で維持できる。高分子凝集剤添加に関して、凝集部の設定汚泥濃度が維持できるための分離汚泥の返送流量と、分離汚泥の汚泥濃度から求められる汚泥重量に対して、高分子凝集剤の添加量が決定できる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る浄水処理装置は、図8に示すように、原水を一旦貯留する着水井11と、着水井11から流出する原水に無機凝集剤を注入して原水中の濁質を凝結させ、無機凝集剤を注入した原水に対して高分子凝集剤の存在下で凝集沈殿処理を行い、固液分離して凝集沈殿汚泥及び汚泥スラリを得る高速凝集沈殿処理装置22を備え、無機凝集剤注入手段6により、高速凝集沈殿処理装置22内の原水に無機凝集剤が注入され、且つ、高速凝集沈殿処理装置22内の内部循環により返送される汚泥スラリに少なくとも高分子凝集剤が注入される点が第1及び第2の実施の形態に係る水処理装置と異なる。
第3の実施の形態において、内部循環により凝集部へ返送される汚泥スラリとしては、図9に示すように、固液分離部211から循環部203を介して第1撹拌室201側へと内部循環する汚泥スラリ203aと、固液分離部211から汚泥ピット207や濃縮部207Aを経て第1撹拌室201に返送される汚泥スラリ203aを含むことができる。
図8に示す制御手段7は、凝集部に内部循環される汚泥スラリの汚泥重量に基づいて、高分子凝集剤添加手段4で、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を制御する。例えば、制御手段7は、凝集部に内部循環される汚泥スラリの汚泥濃度及びその内部循環流量を検出する。制御手段7は、汚泥スラリの汚泥濃度と内部循環流量とを乗算して汚泥スラリの汚泥重量を算出し、汚泥重量の算出結果に基づいて、予め設定した高分子凝集剤添加率から高分子凝集剤の添加量を決定する。汚泥スラリの内部循環流量は、市販の流速計で計測できる。
また、原水の濁度を検出する原水濃度検出手段35及び原水の流量を検出する原水流量検出手段36が設けられていてもよく、原水流量検出手段36及び原水濃度検出手段35の検出結果が制御手段7へ出力されるように構成されていてもよい。原水濃度検出手段35及び原水流量検出手段36を備えることにより、原水の濁度及び流量を測定することができ、原水の濁度由来する発生汚泥重量を考慮にいれた、より好適な浄水処理が行えるとともに、高分子凝集剤添加手段4から高分子凝集剤が汚泥スラリに添加される。汚泥スラリへの高分子凝集剤添加率は0.005〜3.0wt%対SSで、好ましくは0.01〜0.1wt%対SS、更に好ましくは0.01〜0.5wt%対SSである。高分子凝集剤の添加率が0.005wt%対SS未満では高分子凝集剤が不足し、凝集効果が得られない。また高分子凝集剤の添加率が3.0wt%対SSを超えると、汚泥スラリの汚泥に対して、高分子凝集剤が過剰で、粘性の高い凝集フロックが生成し、凝集部で、その粘性の高い凝集フロックの分散性が悪く、原水等に由来する濁質等が取り込めずに、凝集沈殿処理効果が得られない。
高分子凝集剤添加手段4は、図9に示す第1撹拌室201、第2撹拌室202(図示省略)及び循環部203の少なくともいずれかに高分子凝集剤を添加することができる。高分子凝集剤が、第1撹拌室201及び第1撹拌室201に続く第2撹拌室202及び循環部203の少なくともいずれかに添加されることにより、第1撹拌室201及び第2撹拌室202内に供給される原水中の微細なフロックを高分子凝集剤が備える架橋作用によって粗大化できる。この粗大化したフロックが、原水中の濁質及び凝集フロックに取り込まれる溶解性金属及びカビ臭発生物質等を表面吸着することにより、原水からの濁質等の除去効果を更に向上できる。
特に、第3の実施の形態においては、循環部203から第1撹拌室201へ返送される汚泥スラリ203aに高分子凝集剤が添加されることが好ましい。これにより、低濁度の原水であっても、無機凝集剤との混合で生成される微小な凝集フロックを高分子凝集剤が架橋させて、より粗大かつ強固な凝集フロックへと成長させることができる。その結果、固液分離性能を向上でき、効率良く安定的な水処理効果を得ることが可能となる。
さらに、循環部203の中でも、特に汚泥スラリが濃縮する循環部203の底部の汚泥スラリに対して、高分子凝集剤を選択的に添加して、凝集部に内部循環することで、少ない高分子凝集剤の添加量で、装置内全体としての凝集効果を高め、且つ固液分離性能をより向上できる。高速凝集沈殿処理装置22内において、汚泥スラリは固液分離部211で濃縮されて、循環部203から第1撹拌室201へさらに第2撹拌室202へと内部循環される。
第1撹拌室201で無機凝集剤が注入された原水と、汚泥スラリが混合し、汚泥スラリに原水の凝結した濁質が取り込まれる。さらに第2撹拌室202で汚泥スラリの汚泥が凝集して凝集フロックが生成する。凝集フロックは循環部203で固液分離されて集泥部209から凝集沈殿汚泥として装置外に排出され、処理水は処理水部204を経由して、装置外に排出される。高分子凝集剤の添加場所は、汚泥スラリが内部循環する第1撹拌室201、第2撹拌室202、循環部203であるが、第2撹拌室202又は第1撹拌室201流出部がより好ましい。汚泥濃度検出手段28は、第2撹拌室202の汚泥濃度を検出、またはモニタリングするための種々の検出手段を用いることができる。
本発明の第3の実施の形態に係る浄水処理装置によれば、高速凝集沈殿処理装置22内で循環する汚泥スラリへ高分子凝集剤を添加することにより、凝集沈殿処理を効率化することができるとともに、高分子凝集剤の添加量を最適化することができる。
(浄水処理方法)
本発明の第3の実施の形態に係る浄水処理方法は、原水の濁度及び無機凝集剤の注入率と原水の流量に基づいて、凝集部により原水から発生する発生汚泥重量を推定し、凝集部の設定汚泥濃度及び凝集部への流入水の流量に基づいて、凝集部に必要な必要汚泥重量を決定し、必要汚泥重量と発生汚泥重量とに基づいて、凝集部へ内部循環する汚泥スラリの汚泥重量を決定し、汚泥重量に基づいて、凝集部へ返送する汚泥スラリの内部循環流量を制御することを含む。ここでは、図10に示すフローチャートに従って、高分子凝集剤の添加量及び内部循環流量を制御する方法について説明する。
まず、図10のステップS501において、図8の原水流量検出手段36が、原水の流量を検出し、原水濃度検出手段35が、原水の濁度を検出し、検出結果を制御手段7へ出力する。原水の流量及び濁度は設定値を利用してもよい。次に、ステップS502において、制御手段7が、無機凝集剤の注入率を入力するか、予め規定された無機凝集剤の注入率の管理値や実績値を抽出する。ステップS503において、制御手段7が、原水の濁度と無機凝集剤の注入率から、高速凝集沈殿処理装置22における凝集沈殿処理で発生する汚泥重量、即ち、無機凝集剤由来の汚泥発生量と原水由来の汚泥発生量の合計を推定する。
即ち、ステップS503において、高速凝集沈殿処理装置22における凝集沈殿処理で発生する汚泥濃度は、原水に起因する汚泥濃度と無機凝集剤由来の汚泥濃度の合計となり、その合計値は上述の推定式(3)から計算できる。
ステップS504において、制御手段7が、凝集部の設定汚泥濃度と、凝集部への流入水量から、凝集部の必要汚泥重量を計算する。凝集部への流入水量は、原水流量と、汚泥スラリの内部循環流量との合計である。凝集部の必要汚泥重量は以下の推定式(8)から計算できる。
凝集部の必要汚泥重量(kg/時)=(Q+Qc)×C×10-3・・・・・(8)
ここで、C:凝集部の設定汚泥濃度(mg/L)
Q:原水流量(m3/時)
Qc:汚泥スラリの内部循環流量(m3/時)
ステップS505において、凝集部の不足汚泥重量を決定する。不足汚泥重量は、ステップS504で決定した凝集部の必要汚泥重量から、ステップS503で決定した凝集部に流入する原水濁度と無機凝集剤由来の発生汚泥重量と、汚泥スラリ重量の合計を減算することにより決定できる。凝集部に流入する汚泥重量は、以下の推定式(9)から計算できる。
凝集部に流入する汚泥重量(kg/時)
=Q×(a×K1+b×K2)×10-3+Qc×Cc×10-3・・・・・(9)
ここで、a:原水の濁度(度)、b:PAC注入率(mg/L)
K1:原水の濁度からSSへの換算係数(0.7〜1.2(経験値))
K2:PACから水酸化アルミニウムへの換算係数(0.1)
Q:原水流量(m3/時)
Qc:汚泥スラリの内部循環流量(m3/時)
Cc:汚泥スラリの汚泥濃度(mg/L)
内部循環される汚泥スラリの汚泥流量Qcは、循環比Rと、原水流量Qから計算できる。循環比(装置内の返送比)Rは、Q/Qcである。循環比Rは0.01〜0.5の範囲とすることが好ましく、0.01〜0.3の範囲とすることがより好適である。循環比Rが0.01未満では、循環部への汚泥スラリの汚泥供給量が少なく、原水の凝結した濁質を取り込むことができない。また、循環比Rが0.5を超えると、撹拌動力費が過大となるばかりか、凝集部での凝集フロックの破壊や、固液分離部での固液分離障害が発生する。
ステップS506において、S505で決定した不足汚泥重量に対して、予め設定した高分子凝集剤添加率から汚泥スラリに添加すべき高分子凝集剤の添加量を決定する。ここで、高分子凝集剤を溶媒で溶解させる場合には、高分子凝集剤添加重量と溶解液の高分子凝集剤濃度から、汚泥スラリに添加すべき高分子凝集剤溶解液の添加液量を決定する。ステップS507において、ステップS506で決定された高分子凝集剤の添加量又は添加液量に基づいて、汚泥スラリに対して高分子凝集剤を添加する。
一方、ステップS505で凝集部の不足汚泥重量が決定されると、ステップS606において、制御手段7が、凝集部での不足汚泥重量に見合う汚泥スラリの汚泥重量に対して、汚泥スラリの汚泥濃度から汚泥スラリの内部循環流量を決定する。
(汚泥スラリ流量の評価方法)
第1撹拌室201から第2撹拌室202へ内部循環される汚泥スラリの汚泥流量Qcは、原水流量と、汚泥スラリの汚泥濃度とその流量から推定式(10)に従って推定できる。
Qc={Q×C−Q×(a×K1+b×K2)}÷(Cc−C)・・・(10)
ここで、Q:原水流量(m3/時)
Qc;汚泥スラリ流量(m3/時)
a:原水の濁度(度)
b:無機凝集剤(PAC)注入率(mg/L)
K1:原水の濁度からSSへの換算係数(0.7〜1.2(経験値))
K2:PACから水酸化アルミニウムへの換算係数(0.1)
C:第2撹拌室の汚泥濃度(設定値)(mg/L)
Cc:汚泥スラリの汚泥濃度(mg/L)
である。
ステップS606で決定された高速凝集沈殿処理装置22への汚泥スラリの内部循環流量に基づいて、ステップS607において、汚泥スラリが高速凝集沈殿処理装置22に内部循環される。ステップS608において、汚泥スラリの内部循環流量を確認する。
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明は実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲において変形し具体化し得るものである。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
(比較例1)
図11に示す従来の浄水処理装置において、表1に示す仕様の横流式凝集沈殿処理装置を用いて、pH7.1、濁度3度の河川水を原水に無機凝集剤、PAC10〜30mg/L、高分子凝集剤0〜0.15mg/Lで表面負荷率30から60mm/分で凝集沈殿処理した。その結果を表2に示す。
高分子凝集剤(エバグロースWA−142 水ing(株)製、粉末品)を脱塩水に溶解して0.05wt%水溶液に調製して、使用時に都度、脱塩水で10倍に希釈して使用した。PACは凝集混和槽に、高分子凝集剤はフロック形成槽に添加した。
濁度3度の原水を表面負荷率30mm/分で凝集沈殿処理すると、PAC単独ではPAC20mg/Lで処理水濁度が0.5度で、沈殿槽から引抜いた凝集沈殿汚泥のSS濃度は250mg/Lであった。PAC20mg/Lと高分子凝集剤0.10mg/Lでは処理水濁度が0.3度で、沈殿槽からの凝集沈殿汚泥のSS濃度は360mg/Lであった。PAC20mg/Lと高分子凝集剤0.10mg/L、表面負荷率60mm/分で凝集沈殿処理すると、処理水濁度が1.4度であった。表面負荷率を高くするに従い、処理水濁度が急激に上昇した。高分子凝集剤注入率を高めても処理水濁度の上昇を抑えることはできなかった。高分子凝集剤注入率を増やしても沈殿槽から凝集沈殿汚泥のSS濃度が高まらず、沈殿槽で凝集沈殿汚泥の高濃度化や圧密化を進めることができなかった。
(実施例1)
比較例1の原水にPAC20mg/L注入後、フロック形成槽(フロック形成池)に導いた。表1の沈殿槽から引き抜いた凝集沈殿汚泥を分離汚泥としてフロック形成槽のSS濃度が10〜1000mg/Lになるようにフロック形成槽に注入した。分離汚泥のSS重量に対して、0.005〜2.0wt%対SSとなるように高分子凝集剤を添加し、フロック形成槽に添加して、凝集後に表面負荷率30mm/分で従来例1と同様に固液分離して凝集沈殿処理した。高分子凝集剤添加率は凝集沈殿汚泥のSS重量に対する比率、(wt%対SS)とした。高分子凝集剤添加率から求めた原水量当たりの高分子凝集剤注入率(mg/L)を表中に併記した。処理水濁度は、フロック形成槽のSS濃度が10mg/Lより、20〜200mg/Lの方が低い値であった。沈殿槽からの凝集沈殿汚泥のSS濃度は当初、500〜600mg/Lであったが、凝集沈殿処理が安定する試験開始3時間後には表3のいずれの条件でも1200〜3300mg/Lと高濃度になった。沈殿槽の処理水の濁度低減のほか、沈殿槽で汚泥の高濃度化と圧密化ができた。
(実施例2)
実施例1の原水にPAC20mg/L注入し、混和後、フロック形成槽のSS濃度が50mg/Lになるように凝集沈殿汚泥の少なくとも一部を分離汚泥としてフロック形成槽に返送し、分離汚泥として返送する凝集沈殿汚泥に対して高分子凝集剤を0.01〜1.0wt%対SSで添加した。フロック形成槽で凝集後に表面負荷率60mm/分で実施例1と同様に固液分離して凝集沈殿処理した。60mm/分と表面負荷率が高くなると、表3の表面負荷率30mm/分に比べて、処理水濁度はやや悪化したが、表面負荷率60mm/分の処理水濁度は比較例1の表2の処理水濁度より大幅に改善された。
(実施例3)
スラリ循環型高速凝集沈殿処装置の仕様と処理条件を表5に示す。原水流入管で濁度3度の水道原水にPAC注入後に、汚泥スラリの循環比1.0でスラリ循環型高速凝集沈殿処理装置内部の第2撹拌部のSS濃度700mg/Lの汚泥スラリと接触させて、凝集フロック生成後に表面負荷率60〜100mm/分で固液分離した。高分子凝集剤はスラリ循環型高速凝集沈殿処理装置内部の第2撹拌部に連続的に添加した。その注入率は0〜1.5mg/Lであった。その結果を表6に示す。
表5の循環比とは原水流量とスラリ循環型高速凝集沈殿処理装置内部の汚泥スラリの内部循環流量との比である。
(実施例4)
表5のスラリ循環型高速凝集沈殿処理装置と処理条件で試験した。原水配管で濁度3度の原水にPAC注入後に、スラリ循環型高速凝集沈殿処理装置内部の第2撹拌部のSS濃度775〜930mg/Lになるように、内部循環流量を調整し、汚泥スラリに高分子凝集剤を添加して高速凝集沈殿処理装置内部の第2撹拌部に循環比0.05〜0.2で内部循環して、凝集フロックを生成後に固液分離した。高分子凝集剤添加率は0.05〜0.2wt%対SSであった。循環比0.05とは原水量の0.05倍の循環スラリを内部循環した。循環比0.05で第2撹拌部のSS濃度は775mg/L、循環比0.1でSS濃度は850mg/L、循環比0.2でSS濃度は930mg/Lであった。表面負荷率100mm/分、高分子凝集剤添加率0.05wt%対SSで、循環比0.05では処理水濁度が0.7度であった。
循環比0.1、高分子凝集剤添加率0.1wt%対SSで、表面負荷率100mm/分では処理水濁度が0.3度であった。表面負荷率150mm/分にすると、処理水濁度が0.5度であった。表面負荷率200mm/分でも処理水濁度の大幅な上昇はなかった。