JP2021185831A - 没食子酸生産能を有する形質転換体 - Google Patents

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Abstract

【課題】糖類を原料として没食子酸又はその塩を生産可能な形質転換体、及びこの形質転換体を用いて没食子酸又はその塩を製造する方法の提供。【解決手段】(A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された没食子酸又はその塩の生産能を有する形質転換体。【選択図】なし

Description

本発明は、没食子酸生産能を有する形質転換体、及び当該形質転換体を用いた没食子酸又はその塩の製造方法に関する。
没食子酸は、還元性が強いことから、写真の現像剤や青インクの製造原料等に使用される。また、没食子酸プロピル等のエステルは、油脂やバターの酸化防止剤として使用されている。さらに、没食子酸を脱炭酸して合成されるピロガロールは、電子材料、有機合成試薬、写真の現像液、毛織物の媒染剤等として使用されている。
従来、没食子酸の製造方法としては、茶、没食子、五倍子からの抽出法が挙げられるが、当該方法は製造コストが高いことから、工業的に安価に製造する方法が求められていた。
斯かる状況下、微生物を利用した発酵生産により、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸またはパラヒドロキシ安息香酸等の原料から没食子酸を製造する方法が報告されている(特許文献1)。
そして、最近では、安価な原料であるグルコースを用いて没食子酸を生産する方法が所望され、例えばエシェリヒア属細菌又はクレブシェラ属細菌に、3−デヒドロシキミ酸をプロトカテク酸に変換する酵素(3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ)をコードする遺伝子とプロトカテク酸を没食子酸に変換する酵素(p-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ)をコードする遺伝子を導入した形質転換体を用いて、糖類からプロトカテク酸を経由して、没食子酸を製造する方法(特許文献2)等が報告されている。
特開2009−213392号公報 米国特許第6472190号明細書
本発明は、糖類を原料として没食子酸又はその塩を生産可能な形質転換体、及びこの形質転換体を用いて没食子酸又はその塩を製造する方法を提供することに関する。
本発明者らは、没食子酸又はその塩を効率よく生産可能な形質転換体を得るべく研究を重ねた結果、従来行われていた3−デヒドロシキミ酸をプロトカテク酸に変換する反応とは別に、シキミ酸経路の最終代謝産物であるコリスミ酸からプロトカテク酸へ戻す経路を導入することで、没食子酸又はその塩を効率よく生産できる形質転換体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)及び2)に係るものである。
1)(A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された没食子酸又はその塩の生産能を有する形質転換体。
2)1)の形質転換体を糖類の存在下で培養する工程を含む、没食子酸又はその塩の製造方法。
本発明によれば、没食子酸又はその塩を、環境負荷の少ない発酵法によって、安価かつ大量に生産することが可能となる。また、本発明の形質転換体では、コリスミ酸からの各代謝反応は阻害されておらず非栄養要求性であることから、当該形質転換体の培養に際し芳香族アミノ酸や芳香族ビタミンを添加する必要がない。
宿主としてコリネ型細菌を用いた場合の本発明の形質転換体における没食子酸生成経路を示す図。点線は、外来遺伝子産物による代謝反応を示す。
本発明において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の同一性は、Lipman−Pearson法(Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX Ver.12のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本発明において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
本発明において、「1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列」とは、1個以上10個以下、好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列をいう。また本明細書における「1又は複数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列」とは、1個以上30個以下、好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらにより好ましくは1個以上9個以下のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列をいう。本明細書において、アミノ酸又はヌクレオチドの「付加」には、配列の一末端及び両末端へのアミノ酸又はヌクレオチドの付加が含まれる。
本発明において、制御領域と遺伝子との「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
本発明において、細胞の機能や性状、形質に対して使用する用語「本来」とは、当該機能や性状、形質が当該細胞の野生型に存在していることを表すために使用される。対照的に、用語「外来」とは、当該細胞に元から存在するのではなく、外部から導入された機能や性状、形質を表すために使用される。例えば、「外来」遺伝子又はポリヌクレオチドとは、細胞に外部から導入された遺伝子又はポリヌクレオチドである。外来遺伝子又はポリヌクレオチドは、それが導入された細胞と同種の生物由来であっても、異種の生物由来(すなわち異種遺伝子又はポリヌクレオチド)であってもよい。
本発明において、「没食子酸」とは、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(3,4,5−trihydroxybenzoic acid)を意味し、没食子酸の塩としては、斯かる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。
本発明において、没食子酸又はその塩の生産能を有する形質転換体は、(A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された微生物細胞である。
すなわち、本発明の形質転換体においては、シキミ酸経路の最終代謝産物であるコリスミ酸からプロトカテク酸へ戻す経路が導入され、当該プロトカテク酸から没食子酸が生産される(図1)。
ここで、(A)の3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドは、プロトカテク酸から没食子酸を生成する反応を触媒するポリペプチドであり、例えば、(A1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(A2)配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3,4ージヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ(pobA)の変異体である3,4ージヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドである(図1では「pobA*」と表記)。
(B)の3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、コリスミ酸から3−ヒドロキシ安息香酸を生成する反応を触媒するポリペプチドであり、例えば、(B1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(B2)配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
ここで、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ストレプトマイセス ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)由来の3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼであり、「hyg5」として知られている。
(C)の3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドは、3−ヒドロキシ安息香酸からプロトカテク酸を生成する反応を触媒するポリペプチドであり、例えば、(C1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(C2)配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
ここで、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コマモナス テストステロニ(Comamonas testosteroni)由来の3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼであり、「mobA」として知られている。
また、本発明の形質転換体は、没食子酸又はその塩の生産量を高める点から、さらに(D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドの発現を強化することができる。
(D)の3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドは、3−デヒドロシキミ酸からプロトカテク酸を生成する反応を触媒するポリペプチドであり、例えば、(D1)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(D2)配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
ここで、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コリネバクテリウム グルタミカム由来の3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼであり、「qsuB」として知られている。
本発明の形質転換体は、さらに、(E)3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸(DAHP)シンターゼ活性を有するポリペプチド、(F)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド及び(G)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一つのポリペプチドの発現を強化することができる。
(E)のDAHPシンターゼ活性を有するポリペプチドは、エリスロース−4−リン酸及びホスホエノールピルビン酸とから、芳香族化合物生合成経路の初発代謝産物であるDAHPを生成するポリペプチドであり、例えば、(E1)配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(E2)配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つDAHPシンターゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コリネバクテリウム グルタミカム由来のDAHPシンターゼであり、「aroF」として知られている。
配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コリネバクテリウム グルタミカム由来のDAHPシンターゼであり、「aroG」として知られている。
(F)の3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドは、3−デヒドロキナ酸から3−デヒドロシキミ酸への変換を触媒するポリペプチドであり、例えば、(F1)配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(F2)配列番号16で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コリネバクテリウム グルタミカム由来の3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼであり、「aroD」として知られている。
(G)のトランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドは、2種の反応を触媒する活性を有する。一つ目の反応は、非酸化的ペントース・リン酸経路において、D−キシルロース−5−リン酸からグリセルアルデヒド−3−リン酸への変換と、D−リボース−5−リン酸(R5P)からセドヘプツロース−7−リン酸(S7P)への変換とを触媒する反応である。これらの反応は可逆的で共役している。また、二つ目の反応は、D−フルクトース−6−リン酸(F6P)からエリスロース−4−リン酸(E4P)への変換と、グリセルアルデヒド−3−リン酸からD−キシルロース−5−リン酸への変換を触媒する反応である。これらの反応は可逆的で共役している。トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えば、(G1)配列番号18で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(G2)配列番号18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つトランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
配列番号18で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、コリネバクテリウム グルタミカム由来のトランスケトラーゼであり、「tkt」として知られている。
配列番号2、6、8、10、12、14、16及び18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の例としては、配列番号2、6、8、10、12、14、16及び18で示されるアミノ酸配列に対して1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列が挙げられる。
(A2)の配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3,4ージヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばコリネバクテリウム属細菌由来の3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられ、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム由来の4−ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ、コリネバクテリウム スラナレアエ(Corynebacterium suranareeae)由来の4−ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ、コリネバクテリウム クルディラクティス(Corynebacterium crudilactis)由来の4−ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ等が挙げられる。
(B2)の配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばストレプトマイセス属細菌由来の3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼが挙げられ、具体的には、ストレプトマイセス ハイグロスコイピカス由来の3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ、ストレプトマイセス マレイシエンシス(Streptomyces malaysiensis)由来のイミンデアミナーゼ等が挙げられる。
(C2)の配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばコマモナス属細菌由来の3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼが挙げられ、具体的には、コマモナス テストステロニ由来の3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ、コマモナス チオオキシダンス(Comamonas thiooxydans)由来のフェノール-2-モノオキシゲナーゼ等が挙げられる。
(D2)の配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばコリネバクテリウム属細菌由来の3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼが挙げられ、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム由来の3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ、コリネバクテリウム スラナレアエ由来の3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ等が挙げられる。
(E2)の配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つDAHPシンターゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばコリネバクテリウム属細菌由来のDAHPシンターゼが挙げられ、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム由来のDAHPシンターゼ、コリネバクテリウム スラナレアエ由来のDAHPシンターゼ、コリネバクテリウム エフィシエンス由来のDAHPシンターゼ等が挙げられる。
(F2)の配列番号16で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばコリネバクテリウム属細菌由来の3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼが挙げられ、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム由来の3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ、コリネバクテリウム クルディラクティス由来の3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ、コリネバクテリウム デセルティ由来の3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ等が挙げられる。
(G2)の配列番号18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つトランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドとしては、例えばコリネバクテリウム属細菌由来のトランスケトラーゼが挙げられ、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム由来のトランスケトラーゼ、コリネバクテリウム クルディラクティス由来のトランスケトラーゼ、コリネバクテリウム スラナレアエ由来のトランスケトラーゼ等が挙げられる。
上記ポリペプチドのアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換、付加、又は挿入等の変異を導入する方法としては、例えば、該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの欠失、置換、付加、又は挿入等の変異を導入する方法が挙げられる。ヌクレオチド配列への変異導入の手法としては、例えば、エチルメタンスルホネート、N−メチル−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸等の化学的変異原又は紫外線、X線、ガンマ線、イオンビーム等の物理的変異原による突然変異誘発、部位特異的変異導入法、Dieffenbachら(Cold Spring Harbar Laboratory Press,New York,581−621,1995)に記載の方法、等が挙げられる。部位特異的変異導入の手法としては、Splicing overlap extension(SOE)PCR(Horton et al.,Gene 77,61−68,1989)を利用した方法、ODA法(Hashimoto−Gotoh et al.,Gene,152,271−276,1995)、Kunkel法(Kunkel,T.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1985,82,488)等が挙げられる。あるいは、Site−Directed Mutagenesis System Mutan−SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、TransformerTM Site−Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD−Plus−Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販の部位特異的変異導入用キットを利用することもできる。
本発明において、上記(A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、所望により(D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド、所望により(E)DAHPシンターゼ活性を有するポリペプチド、(F)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド及び(G)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一つのポリペプチドの発現が強化された形質転換細胞としては、具体的には、当該ポリペプチドの発現に必要なポリヌクレオチドが発現可能なように導入された細胞であって、そのポリペプチドは外来のものであっても、当該細胞が本来有しているものであっても良い。例えば、当該ポリヌクレオチドが発現可能なように導入された細胞、当該ポリヌクレオチドの発現の程度が増強された細胞が挙げられる。具体的には、当該ポリヌクレオチド及びこれと作動可能に連結された制御領域を含むベクターやDNA断片が導入された細胞や、当該ポリヌクレオチドの制御領域が強制御領域に置換された細胞等が挙げられる。
ここで、ポリヌクレオチドとしては、(a)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(a1)又は(a2)のポリヌクレオチド、(b)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(b1)又は(b2)のポリヌクレオチド、(c)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(c1)又は(c2)のポリヌクレオチド、(d)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(d1)又は(d2)のポリヌクレオチド、(e)DAHPシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(e1)又は(e2)のポリヌクレオチド、(f)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(f1)又は(f2)のポリヌクレオチド、(g)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、下記(g1)又は(g2)のポリヌクレオチド、が挙げられる(これらのポリヌクレオチドを、「本発明のポリヌクレオチド」とも称する)。
(a1)配列番号1又は配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(a2)配列番号1又は配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。なお、ここで、配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするが、当該ポリペプチドは配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと同一である。
(b1)配列番号5で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(b2)配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(c1)配列番号7で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(c2)配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(d1)配列番号9で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(d2)配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(e1)配列番号11又は配列番号13で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(e2)配列番号11又は配列番号13で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、DAHPシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(f1)配列番号15で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(f2)配列番号15で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(g1)配列番号17で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(g2)配列番号17で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15及び17で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列の例としては、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15及び17で示されるヌクレオチド配列に対して1又は複数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列が挙げられる。ヌクレオチド配列にヌクレオチドの欠失、置換、付加、又は挿入等の変異を導入する方法は、上述したとおりである。上記ポリヌクレオチドは、1本鎖若しくは2本鎖の形態であり得、又はDNAであってもRNAであってもよい。該DNAは、cDNA、化学合成DNA等の人工DNAであり得る。
上記ポリヌクレオチドは、ベクターに組み込まれていてもよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドを含有するベクターは、発現ベクターである。また好ましくは、該ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを宿主微生物に導入することができ、かつ宿主微生物内で該ポリヌクレオチドを発現することができる発現ベクターである。好ましくは、該ベクターは、本発明のポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む。該ベクターは、プラスミド等の染色体外で自立増殖及び複製可能なベクターであってもよく、又は染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
具体的なベクターの例としては、例えば、pBluescript II SK(−)(Stratagene)、pUC18/19、pUC118/119等のpUC系ベクター(タカラバイオ)、pET系ベクター(タカラバイオ)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア)、pCold系ベクター(タカラバイオ)、pHY300PLK(タカラバイオ)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2):93−103)、pBR322(タカラバイオ)、pRS403(Stratagene)、pMW218/219(ニッポンジーン)、pRI909/910等のpRI系ベクター(タカラバイオ)、pBI系ベクター(クロンテック)、IN3系ベクター(インプランタイノベーションズ)、pPTR1/2(タカラバイオ)、pDJB2(D.J.Ballance et al.,Gene,36,321−331,1985)、pAB4−1(van Hartingsveldt W et al.,Mol Gen Genet,206,71−75,1987)、pLeu4(M.I.G.Roncero et al.,Gene,84,335−343,1989)、pPyr225(C.D.Skory et al.,Mol Genet Genomics,268,397−406,2002)、pFG1(Gruber,F.et al.,Curr Genet,18,447−451,1990)等が挙げられる。
また、上記ポリヌクレオチドは、これを含むDNA断片として構築されていてもよい。該DNA断片としては、例えば、PCR増幅DNA断片及び制限酵素切断DNA断片が挙げられる。好ましくは、該DNA断片は、本発明のポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む発現カセットであり得る。
上記ベクター又はDNA断片に含まれる制御領域は、該ベクター又はDNA断片が導入された宿主細胞内で本発明のポリヌクレオチドを発現させるための配列であり、例えばプロモーターやターミネーター等の発現調節領域、複製開始点等が挙げられる。該制御領域の種類は、ベクター又はDNA断片を導入する宿主微生物の種類に応じて適宜選択することができる。必要に応じて、該ベクター又はDNA断片はさらに、抗生物質耐性遺伝子、アミノ酸合成関連遺伝子等の選択マーカーを有していてもよい。
宿主細胞へのベクター又はDNA断片の導入には、一般的な形質転換法、例えばエレクトロポレーション法、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、パーティクル・ガン法、アグロバクテリウム法等を用いることができる。
目的のベクター又はDNA断片が導入された形質転換細胞は、選択マーカーを利用して選択することができる。例えば、選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子である場合、該抗生物質添加培地で培養することで、目的のベクター又はDNA断片が導入された細胞を選択することができる。また例えば、選択マーカーがアミノ酸合成関連遺伝子である場合、該アミノ酸要求性の宿主細胞に遺伝子導入した後、該アミノ酸要求性の有無を指標に、目的のベクター又はDNA断片が導入された細胞を選択することができる。あるいは、PCR等によって形質転細胞のDNA配列を調べることで目的のベクター又はDNA断片の導入を確認することもできる。
また、強制御領域としては、公知の高発現プロモーターであるT7プロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、trpプロモーター、tuプロモーター、gapプロモーター等が例示されるが、これらに特に限定されない。
更に、強制御領域としては原核生物由来の誘導プロモーターを用いることができ、フェルラ酸、バニリン酸またはバニリンの添加により誘導がかかるvanAプロモーター、レゾルシノールまたは2,4−ジヒドロキシ安息香酸の添加により誘導がかかるrhcHプロモーター、4−ヒドロキシ安息香酸の添加により誘導がかかるpcaIプロモーター、3−ヒドロキシ安息香酸の添加により誘導がかかるnagI(cg3351)遺伝子のプロモーター、安息香酸の添加により誘導がかかるbenA(cg2637)遺伝子のプロモーター(以下、Pbenと略す)、もしくはフラクトースまたはスクロースのいずれかの添加により誘導がかかるcg2118遺伝子のプロモーターまたはptsS(cg2925)遺伝子のプロモーター等が例示されるが、これらに特に限定されない。
宿主細胞のゲノム上に存在する前記ポリヌクレオチドの制御領域を強制御領域に置換する方法としては、強制御領域と選択マーカーのポリヌクレオチド配列を含むDNA断片を宿主細胞に導入し、相同組換え又は非相同組換え等により形質転換された細胞を選択する方法等が挙げられる。
本発明において、宿主細胞は、没食子酸又はその塩の生産に適するものであれば、大腸菌、枯草菌、放線菌、シュードモナス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトバチルス属細菌、真菌(ノイロスポラ属、アスペルギルス属、トリコデルマ属等)、酵母(サッカロマイセス属、クライベロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、トリコスポロン属、ロドスポリジウム属、ピキア属、キャンディダ属等)等、いずれを用いてもよいが、放線菌が好ましい。
放線菌としては、コリネ型細菌として定義されている一群の微生物(Bergey's Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974))が好ましく、具体的には、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌、ロドコッカス属菌、ストレプトマイセス属菌、マイクロコッカス属菌、等が挙げられる。
コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム ハロトレランス(Corynebacterium halotolerance)、コリネバクテリウム アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)等が挙げられる。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス等が挙げら、マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)、マイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)等が挙げられる。
コリネ型細菌のうち、好ましくはコリネバクテリウム属菌であり、より好ましくはコリネバクテリウム グルタミカムである。
また、コリネ型細菌は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。例えば、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase:LDH)、ホスホエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)、マレートデヒドロゲナーゼ(malate dehydrogenase)等の遺伝子の破壊株が挙げられる。
作製された形質転換体において、(A)〜(G)の各酵素の活性が強化されていることは、該形質転換体の細胞抽出液中の各酵素活性を測定することにより確認することができる。そして、作製された形質転換細胞を培養し、没食子酸又はその塩の生産性を評価し、適切な形質転換細胞を選択することにより、有用な没食子酸又はその塩の生産株を得ることができる。生産物の測定方法は、後記参考例に記載の方法にしたがって行うことができる。
本発明の没食子酸又はその塩の製造方法は、上述した形質転換細胞を糖類の存在下で培養することにより実施される。
糖類としては、グルコースが好適であるが、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース等の単糖類の他、代謝によりグルコースを生成し得る糖類も使用できる。このような糖類にはグルコース単位を有するオリゴ糖又は多糖類が含まれ、セロビオース、スクロース(ショ糖)、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、キシロビオース等の二糖類;デキストリン又は可溶性澱粉等の多糖類等が挙げられる。
また、例えばこれらの原料化合物を含む原料として、糖蜜も用いることができる。また、わら(稲わら、大麦わら、小麦わら、ライ麦わら、オート麦わら等)、バガス、コーンストーバー等の非可食農産廃棄物や、スイッチグラス、ネピアグラス、ミスキャンサス等のエネルギー作物や、木くず、古紙等を糖化酵素等で糖化した、グルコース等の複数の糖を含む糖化液を用いることもできる。
形質転換細胞を培養する培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、本発明の形質転換細胞の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記の糖類又はそれを含む糖蜜や糖化液が用いられるが、上記の糖類の他に、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリンのような糖アルコール;酢酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸のような有機酸;エタノール、プロパノールのようなアルコール;ノルマルパラフィンのような炭化水素等も用いることができる。炭素源は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
培養液中の原料化合物である糖類の濃度は、1〜20w/v%が好ましく、2〜10w/v%がより好ましく、2〜5w/v%がさらに好ましい。
窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物、メチルアミン等のアルキルアミン類、アミノ酸等の含窒素有機化合物、アンモニアもしくはその塩(塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムのような無機又は有機アンモニウム化合物)、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等を使用することができる。
無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、ビタミン類や消泡剤等を添加することもできる。ビタミン類としては、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。
コリネ型細菌用培地としては、A培地〔J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 7:182-196 (2004)〕、BT培地〔J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)〕、CGXII培地〔特許第6322576号〕等が挙げられ、これらの培地において、糖類濃度を上記範囲にして用いればよい。
なお、糖類を含む反応又は培養に先立ち、同様の培地で、形質転換体を好気条件下で、温度約25〜38℃で、約12〜48時間培養して増殖させることが好ましい。
培養温度又は反応温度は、15〜45℃が好ましく、25〜37℃がより好ましい。
また、培養又は反応時間は、24時間〜168時間、好ましくは24時間〜96時間、より好ましくは24時間〜72時間、必要に応じ撹拌又は振とうしながら行うことができる。また、培養中は必要に応じてアンピシリンやカナマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養は、バッチ式、流加式、連続式の何れでもよい。中でも、バッチ式が好ましい。
培養又は反応は、好気的条件で行ってもよく、還元条件で行ってもよいが、好気的条件下で行うのが好ましい。
好気的条件下で反応又は培養を行う場合、没食子酸又はその塩の生成効率の点から、形質転換体の過度の増殖を抑制する条件下で行うのが好ましい。
没食子酸の酸化を防ぐため、培養は溶存酸素濃度が低い条件で行うことが好ましい。具体的には溶存酸素濃度が0.1〜3ppmが好ましく、0.1〜1ppmがより好ましい。
培養物からの没食子酸又はその塩の回収及び精製方法は特に制限されない。すなわち、周知のイオン交換樹脂法、沈澱法、晶析法、再結晶法、濃縮法その他の方法を組み合わせることにより実施できる。例えば、菌体を遠心分離等で除去した後、カチオン及びアニオン交換樹脂でイオン性の物質を除き、濃縮すれば没食子酸又はその塩を取得することができる。培養物中に蓄積された没食子酸又はその塩は、そのまま単離することなく用いてもよい。
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>(A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された没食子酸又はその塩の生産能を有する形質転換体。
<2>(A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な状態で含む、<1>に記載の形質転換体。
<3>3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが下記の(A1)又は(A2)で示されるポリペプチドであり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(B1)又は(B2)で示されるポリペプチドであり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが下記の(C1)又は(C2)で示されるポリペプチドである、<2>に記載の形質転換体。
(A1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(A2)配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド
(B1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(B2)配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド
(C1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(C2)配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド
<4>3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(a1)又は(a2)で示されるポリヌクレオチドであり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(b1)又は(b2)で示されるポリヌクレオチドであり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(c1)又は(c2)で示されるポリヌクレオチドである、<2>に記載の形質転換体。
(a1)配列番号1又は配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(a2)配列番号1又は配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b1)配列番号5で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(b2)配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(c1)配列番号7で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(c2)配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
<5>さらに、(D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された、<1>〜<4>のいずれかに記載の形質転換体。
<6>(D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な状態で含む、<5>に記載の形質転換体。
<7>(D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(D1)又は(D2)で示されるポリペプチドである、<6>に記載の形質転換体。
(D1)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(D2)配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド
<8>(d)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(d1)又は(d2)で示されるポリヌクレオチドである、<6>に記載の形質転換体。
(d1)配列番号9で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(d2)配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
<9>さらに、(E)3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、(F)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド及び(G)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一つのポリペプチドの発現が強化された<1>〜<8>のいずれかに記載の形質転換体。
<10>(E)3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、(F)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド及び(G)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な状態で含む、<9>に記載の形質転換体。
<11>3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(E1)又は(E2)で示されるポリペプチドであり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(F1)又は(F2)で示されるポリペプチドであり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドが下記の(G1)又は(G2)で示されるポリペプチドである、<10>に記載の形質転換体。
(E1)配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(E2)配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、DAHPシンターゼ活性を有するポリペプチド
(F1)配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(F2)配列番号16で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド
(G1)配列番号18で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(G2)配列番号18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するポリペプチド配列からなり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチド
<12>3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(e1)又は(e2)で示されるポリヌクレオチドであり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(f1)又は(f2)で示されるポリヌクレオチドであり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが下記の(g1)又は(g2)で示されるポリヌクレオチドである、<10>に記載の形質転換体。
(e1)配列番号11又は配列番号13で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(e2)配列番号11又は配列番号13で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、DAHPシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(f1)配列番号15で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(f2)配列番号15で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(g1)配列番号17で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(g2)配列番号17で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
<13>コリネ型細菌である、<1>〜<12>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<14>コリネ型細菌がコリネバクテリウム属細菌である、<13>に記載の形質転換体。
<15>コリネバクテリウム属細菌がコリネバクテリウム グルタミカムである、<14>に記載の形質転換体。
<16><1>〜<15>のいずれかに記載の形質転換体を糖類の存在下で培養する工程を含む、没食子酸又はその塩の製造方法。
実施例1 没食子酸の製造
(1)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド導入形質転換体の作製
1)cg0620遺伝子領域を3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド遺伝子と置換するためのプラスミドの構築
cg0620遺伝子領域の5’側上流領域(配列番号19)を2種類のDNAプライマー(配列番号20と21)にて増幅し、またcg0620遺伝子領域の3’側下流領域(塩基番号22)を2種類のDNAプライマー(配列番号23と24)にて増幅し、DNA断片を得た。また、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株が有するtuf遺伝子(cg0587)のプロモーター(以下、tuプロモーターと称する)を含むDNA断片(配列番号25)を人工遺伝子合成にて作製し、2種類のDNAプライマー(配列番号26と27)にて増幅して、DNA断片を得た。また、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド遺伝子(以下、hfm145VFと略記する)を含むDNA断片を人工遺伝子合成にて2種類(配列番号28と29)作製した。それぞれのDNA断片を鋳型にし、それぞれ2種類のDNAプライマー(配列番号30と31及び32と33)にて増幅して2種類のDNA断片を得た。また、pHKPsacB1(これは特願2014−523757により参照される。)を鋳型にし、2種類のDNAプライマー(配列番号34と35)にて増幅し、得られたPCR産物に対してDpnI(タカラバイオ)による処理を行った。得られた6種類のPCR産物に対し、NucleoSpin Gel and PCR Clean−up(タカラバイオ)を用いて各DNA断片を精製し、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)により連結することでプラスミドpHKPsacB_cg0620−Ptu−hfm145VF−hfm145VFoptを作製した。
2)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド遺伝子導入株の作製
エレクトロポレーションによる形質転換法を用いて、上述のプラスミドpHKPsacB_cg0620−Ptu−hfm145VF−hfm145VFoptをCY44株(CY44株は、特願2014−523757の参考例14記載のtkt株であり、aroF、aroG、aroB、aroD及びtkt遺伝子の転写をtuプロモーターによって制御することによって発現が強化されている。また、qsuB遺伝子の転写をPbenプロモーターによって制御することによって発現が強化されている。)に導入し、カナマイシン耐性で選択することにより、KC148sr株を取得した。配列番号20と36のプライマーを用いるPCR法(Sapphire Amp(タカラバイオ))によりKC148sr株を解析したところ、予想通りの結果が得られたことから、KC148sr株はプラスミドpHKPsacB_cg0620−Ptu−hfm145VF−hfm145VFoptがcg0620遺伝子領域に導入された1回交差型相同組換え体であることを確認した。
KC148sr株を1mLのLB液体培地(10g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、10g/L塩化ナトリウム)の中で24時間培養し、培養液の一部を20%スクロース含有LB寒天培地上で塗抹培養することにより、KC148株を得た。配列番号36と37のプライマーを用いるPCR法(Sapphire Amp(タカラバイオ))により、KC148株が予想通りPtu−hfm145VF−hfm145VFop遺伝子がcg0620遺伝子領域に導入されている2回交差型相同組換え体であることを確認した。
(2)3−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシラーゼ及び3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ及び形質転換体の作製
1)cg1625遺伝子領域を3−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシラーゼ遺伝子及び3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ遺伝子と置換するためのプラスミドの構築
cg1625遺伝子領域の5’側上流領域(配列番号38)を2種類のDNAプライマー(配列番号39と40)にて増幅し、またcg1625遺伝子領域の3’側下流領域(塩基番号41)を2種類のDNAプライマー(配列番号42と43)にて増幅し、DNA断片を得た。また、先行文献記載のプロモーター(以下、tytuプロモーターと称する)DNA断片(配列番号44)を人工遺伝子合成(ユーロフィンジェノミクス)にて作製し、2種類のDNAプライマー(配列番号27と45)にて増幅して、DNA断片を得た。また、3−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシラーゼ遺伝子を人工遺伝子合成(ユーロフィンジェノミクス)にて作製し(配列番号46)、2種類のDNAプライマー(配列番号47と48)にて増幅して、DNA断片を得た。また、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ遺伝子を含むDNA断片(配列番号49)を人工遺伝子合成(ユーロフィンジェノミクス)にて作製し、2種類のDNAプライマー(配列番号50と51)にて増幅して、DNA断片を得た。また、pHKPsacB1(特願2014−523757)を鋳型にし、2種類のDNAプライマー(配列番号34と35)にて増幅し、得られたPCR産物に対してDpnI(タカラバイオ)による処理を行った。得られた6種類のPCR産物に対し、NucleoSpin Gel and PCR Clean−up(タカラバイオ)を用いて各DNA断片を精製し、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)により連結することでプラスミドpHKPsacB_cg1625−Ptytu−mobA−hyg5を作製した。
2).3−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシラーゼ遺伝子及び3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ遺伝子導入株の作製
エレクトロポレーションによる形質転換法を用いて、上述のプラスミドpHKPsacB_cg1625−Ptytu−mobA−hyg5をKC148株に導入し、カナマイシン耐性で選択することにより、KC152sr株を取得した。配列番号39と52のプライマーを用いるPCR法(Sapphire Amp(タカラバイオ))によりKC152sr株を解析したところ、予想通りの結果が得られたことから、KC152sr株はプラスミドpHKPsacB_cg1625−Ptytu−mobA−hyg5がcg1625遺伝子領域に導入された1回交差型相同組換え体であることを確認した。
KC152sr株を1mLのLB液体培地(10g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、10g/L塩化ナトリウム)の中で24時間培養し、培養液の一部を20%スクロース含有LB寒天培地上で塗抹培養することにより、KC152株を得た。配列番号52と53のプライマーを用いるPCR法(Sapphire Amp(タカラバイオ))により、KC152株が予想通りPtytu−mobA−hyg5遺伝子がcg1625遺伝子領域に導入されている2回交差型相同組換え体であることを確認した。
(3)形質転換株の培養
表に示すCGXII培地1.5mLに終濃度1mMとなるよう安息香酸ナトリウムを添加し、上記で得られた形質転換株を接種し、32℃で培養し24時間目と32時間目の培養液を回収し、培養液を希硫酸で適宜希釈し、遠心にて菌体を除去した後、上清を回収した。上清中のグルコース濃度と没食子酸濃度を定量した。
Figure 2021185831
(4)結果
KC148株とKC152株を比較すると、KC152株の方が消費糖収率の向上が確認され、mobA及びhyg5を強化することが没食子酸生産に優位に働くことが示された。
Figure 2021185831
(5)消費糖収率の計算方法
培養後24時間目と32時間目の培養上清中のグルコース量から培養24時間から32時間におけるグルコース消費量を算出した。培養後24時間目と32時間目の培養上清中の没食子酸濃度から培養24時間から32時間における没食子酸生産量を算出した。以下の式を用いて消費糖収率(%)を算出した。
消費糖収率(%:g/g)= 没食子酸生産量/グルコース消費量×100
(6)分析条件
回収した上清はアクロプレップ96フィルタープレート(0.2μmGHP膜、日本ポール)を用いて不溶物の除去を行ない、反応液をHPLCに供した。
HPLCの装置はChromaster(日立ハイテクサイエンス)を用いた。没食子酸の分析には、L−カラム ODS(4.6mm I.D.×150mm、化学物質評価研究機構)を用い、溶離液Aを0.1M リン酸二水素カリウムの0.1%リン酸溶液、溶離液Bを70%メタノールとし、流速1.0mL/分、カラム温度40℃の条件にてグラジエント溶出を行なった。没食子酸の検出にはUV検出器(検出波長280nm)を用いた。
グルコースの分析にはICsep ION−300(7.8mm×300mm、東京化成工業)を用い、溶離液を37mM硫酸溶液とし、流速0.5mL/分、カラム温度50℃の条件で検出を行った。グルコースの検出にはRIを用いた。

Claims (13)

  1. (A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された没食子酸又はその塩の生産能を有する形質転換体。
  2. (A)3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド、(B)3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド及び(C)3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な状態で含む、請求項1に記載の形質転換体。
  3. 3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが下記の(A1)又は(A2)で示されるポリペプチドであり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(B1)又は(B2)で示されるポリペプチドであり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドが下記の(C1)又は(C2)で示されるポリペプチドである、請求項2に記載の形質転換体。
    (A1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (A2)配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド
    (B1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (B2)配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性を有するポリペプチド
    (C1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (C2)配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチド
  4. さらに、(D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドの発現が強化された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の形質転換体。
  5. (D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な状態で含む、請求項4に記載の形質転換体。
  6. (D)3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(D1)又は(D2)で示されるポリペプチドである、請求項5に記載の形質転換体。
    (D1)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (D2)配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド
  7. さらに、(E)3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、(F)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド及び(G)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一つのポリペプチドの発現が強化された請求項1〜6のいずれか1項に記載の形質転換体。
  8. (E)3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、(F)3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド及び(G)トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能な状態で含む、請求項7に記載の形質転換体。
  9. 3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(E1)又は(E2)で示されるポリペプチドであり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドが下記の(F1)又は(F2)で示されるポリペプチドであり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドが下記の(G1)又は(G2)で示されるポリペプチドである、請求項8に記載の形質転換体。
    (E1)配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (E2)配列番号12又は配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、DAHPシンターゼ活性を有するポリペプチド
    (F1)配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (F2)配列番号16で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列からなり、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチド
    (G1)配列番号18で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (G2)配列番号18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するポリペプチド配列からなり、トランスケトラーゼ活性を有するポリペプチド
  10. コリネ型細菌である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の形質転換体。
  11. コリネ型細菌がコリネバクテリウム属細菌である、請求項10に記載の形質転換体。
  12. コリネバクテリウム属細菌がコリネバクテリウム グルタミカムである、請求項11に記載の形質転換体。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の形質転換体を糖類の存在下で培養する工程を含む、没食子酸又はその塩の製造方法。
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