JP2021183716A - 鋼線およびばね - Google Patents

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太一 岡田
Taichi Okada
隆志 渡邉
Takashi Watanabe
貴文 宇和野
Takafumi Uwano
和宏 後藤
Kazuhiro Goto
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Abstract

【課題】高い強度と高い靱性とを両立させることが可能な鋼線およびばねを提供する。【解決手段】鋼線1は、0.5質量%以上0.7質量%以下の炭素と、1質量%以上2.5質量%以下の珪素と、0.5質量%以上1質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含み、残部が鉄および不可避的不純物である鋼から構成される。線径が、0.5mm以上2mm以下である。引張強度が、2000N/mm2以上2700N/mm2以下である。鋼は、パーライト組織を有する。鋼の格子歪をS%とし、引張強度をT N/mm2とした場合、S%に0.58885%を足した値をT N/mm2で除した値である{(S%+0.58885%)/T}mm2/Nが4.8×10−6mm2/N以上である。【選択図】図1

Description

本開示は、鋼線およびばねに関するものである。
パーライト組織を含む鋼線において、ばねの耐へたり性、およびばねの疲労強度を向上させるための技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2012−117129号公報
鋼線およびばねにおいては、高い強度を有すると共に高い靱性を有することが好ましい。そこで、高い強度と高い靱性とを両立させることが可能な鋼線およびばねを提供することを目的の1つとする。
本開示に従った鋼線は、0.5質量%以上0.7質量%以下の炭素と、1質量%以上2.5質量%以下の珪素と、0.5質量%以上1質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含み、残部が鉄および不可避的不純物である鋼から構成される。線径が、0.5mm以上2mm以下である。引張強度が、2000N/mm以上2700N/mm以下である。鋼は、パーライト組織を有する。鋼の格子歪をS%とし、引張強度をT N/mmとした場合、S%に0.58885%を足した値をT N/mmで除した値である{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上である。
上記鋼線によれば、高い強度と高い靱性とを両立させることができる。
図1は、鋼線の構造を示す概略斜視図である。 図2は、鋼線を構成する鋼の長手方向に垂直な断面における構造を示す概略断面図である。 図3は、ばねの構造を示す概略斜視図である。 図4は、鋼線およびばねの製造方法の概略を示すフローチャートである。 図5は、原料線材の構造を示す斜視図である。 図6は、{(S%+0.58885%)/T}mm/Nと捻回値との関係を示す図である。 図7は、{(S%+0.58885%)/T}mm/Nとフェライト組織の割合との関係を示す図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示の鋼線は、0.5質量%以上0.7質量%以下の炭素と、1質量%以上2.5質量%以下の珪素と、0.5質量%以上1質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含み、残部が鉄および不可避的不純物である鋼から構成される。線径が、0.5mm以上2mm以下である。引張強度が、2000N/mm以上2700N/mm以下である。鋼は、パーライト組織を有する。鋼の格子歪をS%とし、引張強度をT N/mmとした場合、S%に0.58885%を足した値をT N/mmで除した値である{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上である。
本発明者らは、鋼線の強度と靱性とを両立させる対応策について検討した。鋼線を製造する際の伸線工程における線材の加工度を大きくすると、鋼線の強度を向上させることができるが、これに伴って時効硬化による靱性の低下が発生する。
本発明者らの検討によれば、鋼の格子歪と引張強度とが特定の関係を満たす場合に、時効硬化による靱性の低下が発生し難くなり、靱性を維持しつつ高い強度を達成することができる。具体的には、本開示の鋼線では、鋼における格子歪であるS%と引張強度であるT N/mmとにおいて、S%に0.58885%を足した値をT N/mmで除した値である{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上である。したがって、本開示の鋼線によれば、高い強度と高い靱性とを両立させることができる。
上記鋼線の鋼におけるフェライト組織の割合は20%以下であってもよい。フェライト組織の割合を20%以下とすることで、鋼の組織の均一性を向上させることができ、時効硬化による靱性の低下が発生し難くすることができる。したがって、十分な靱性を確保することが容易となる。ここで、フェライト組織の割合とは、鋼線の長手方向に垂直な断面における一辺200μmの正方形領域において、フェライト組織の面積の総和と、パーライト組織の面積の総和とを足した値に対するフェライト組織の面積の総和の割合%をいう。
上記鋼線における鋼は、0.05質量%以上0.5質量%以下のバナジウム、0.02質量%以上1質量%以下のコバルト、0.02質量%以上1質量%以下のニッケルおよび0.05質量%以上0.5質量%以下のモリブデンからなる群から選択される一種以上の元素をさらに含有してもよい。
本開示のばねは、上記鋼線から構成される。本開示のばねによれば、本開示の鋼線を含むことにより、高い強度と高い靱性とを両立させることが可能なばねを提供することができる。
ここで、鋼線を構成する鋼の成分組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
炭素:0.5質量%以上0.7質量%以下
炭素は、パーライト組織を有する鋼線の強度に大きな影響を与える元素である。鋼線として十分な強度を得る観点から、炭素の含有量は0.5質量以上とする必要がある。炭素の含有量が多くなると靱性が低下し、ばねの形状に加工する時や伸線時における加工性が低下する。十分な加工性を確保する観点から、炭素の含有量は0.7質量%以下とする必要がある。強度をさらに向上させる観点から、炭素の含有量は0.62質量%以上とすることが好ましい。靱性を向上させて加工を容易とする観点から、炭素の含有量は0.68質量%以下とすることが好ましい。
珪素:1質量%以上2.5質量%以下
珪素は、鋼の製錬時の脱酸剤として必要な元素である。また、珪素は、加熱による軟化を抑制する性質である軟化抵抗性を鋼に付与する。鋼線がばねの形状に加工された後に実施される窒化処理のような熱処理において軟化を抑制する観点から、珪素の含有量は1質量%以上とする必要がある。加熱に対する軟化抵抗性をさらに向上させる観点から、珪素の含有量を1.5質量%以上とすることが好ましく、1.95質量%以上とすることがより好ましい。珪素の含有量が多くなると靱性が低下するおそれがある。十分な靱性を確保する観点から、珪素の含有量は2.5質量%以下とする必要がある。
マンガン:0.5質量%以上1質量%以下
マンガンは、珪素と同様に鋼の製錬時の脱酸剤として必要な元素である。脱酸剤としての効果を十分に果たすために、マンガンの含有量は0.5質量%以上とする必要がある。脱酸剤としての効果をさらに十分に果たすために、マンガンの含有量を0.55質量%以上とすることが好ましい。マンガンが過度に添加されると、伸線工程前にパテンティングが実施される場合において、加熱後の冷却時にマルテンサイト組織が生成する原因となる。このようにして生成したマルテンサイト組織は、伸線時における加工性を低下させる。そのため、マンガンの含有量は1質量%以下とする必要がある。マルテンサイト組織の生成をより低減させる観点から、マンガンの含有量を0.8質量%以下とすることが好ましい。
クロム:0.5質量%以上2質量%以下
クロムは、鋼組織の微細化や加熱時の軟化を抑制することに寄与する。このような効果を十分に発揮させる観点から、クロムの含有量を0.5質量%以上とする必要があり、0.7質量%以上とすることが好ましい。クロムが過度に添加されると、伸線工程前にパテンティングが実施される場合において、加熱後の冷却時にマルテンサイト組織が生成する原因となる。このようにして生成したマルテンサイト組織は、伸線時における加工性を低下させる。また、クロムが過度に添加されると、靱性が低下する原因となる。そのため、クロムの含有量は、2質量以下とする必要がある。マルテンサイト組織の生成を低減させると共に、靱性を向上させる観点から、クロムの含有量を1.5質量%以下とすることが好ましい。
不可避的不純物
鋼線の製造工程において、不可避的不純物としてリンおよび硫黄が不可避的に鋼線を構成する鋼中に混入する。リンおよび硫黄は、過度に存在すると粒界偏析を生じたり、介在物を生成したりして、鋼の特性を悪化させる。そのため、リンおよび硫黄の含有量は、それぞれ0.025質量%以下とすることが好ましい。また、不可避的不純物の含有量は、リンおよび硫黄を含めて合計で0.3質量%以下とすることが好ましい。
バナジウム:0.05質量%以上0.5質量%以下
バナジウムは、鋼中において炭化物生成元素として機能し、炭化物を生成することによって加熱時の軟化抑制に寄与する。このような効果を十分に発揮させる観点から、バナジウムの含有量を0.05質量%以上としてもよい。バナジウムの過剰な添加は、靱性を低下させる。十分な靱性を確保する観点から、バナジウムの添加量を0.5質量%以下としてもよく、さらには0.2質量%以下としてもよい。
コバルト:0.02質量%以上1質量%以下
コバルトは、鋼の耐熱性の向上や加熱時の軟化を抑制することに寄与する。このような効果を十分に発揮させる観点から、コバルトの含有量を0.02質量%以上としてもよく、さらには0.05質量%以上としてもよい。上記鋼が1質量%を超えてコバルトを含んでも、コバルトの上記効果は飽和する。したがって、コバルトの含有量は、1質量%以下であることが好ましい。コバルトの含有量は、コストを低減させる観点から0.5質量%以下であってもよい。
ニッケル:0.02質量%以上1質量%以下
ニッケルを添加することにより、耐食性や靱性を向上させることができる。この機能を十分に発揮させる観点から、ニッケルの含有量を0.02質量%以上としてもよく、さらには0.1質量%としてもよい。上記鋼が1質量%を超えてニッケルを含んでも、ニッケルの上記効果は飽和する。また、上記鋼が1質量%を超えて高価な元素であるニッケルを含むと、鋼線の製造コストが上昇する。したがって、ニッケルの含有量は、1質量%以下であることが好ましい。ニッケルの含有量は、コストを低減させる観点から0.5質量%以下であってもよい。
モリブデン:0.05質量%以上0.5質量%以下
モリブデンは、鋼中において炭化物生成元素として機能し、炭化物を生成することによって加熱時の軟化抑制に寄与する。このような効果を十分に発揮させる観点から、モリブデンの含有量を0.05質量%以上としてもよい。十分な靱性を確保する観点から、モリブデンの含有量を0.5質量%以下としてもよく、さらには0.25質量%以下としてもよい。
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示に係る鋼線およびばねの実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図1は、鋼線の構造を示す斜視図である。なお、図1においては、鋼線の長手方向Yに垂直な断面が併せて図示されている。図1を参照して、本実施の形態における鋼線1は、長手方向Yに垂直な断面が円形であり、外周面11が円筒面形状である鋼線である。鋼線1の線径Dは、0.5mm以上2mm以下である。
鋼線1は、0.5質量%以上0.7質量%以下の炭素と、1質量%以上2.5質量%以下の珪素と、0.5質量%以上1質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含み、残部が鉄および不可避的不純物である鋼から構成される。
図2は、鋼線1の長手方向Yに垂直な断面の一部を示す概略断面図である。図2では、パーライト組織21同士の境界21A、およびパーライト組織21とフェライト組織22との境界22Aを実線で示している。図2を参照して、鋼線1を構成する鋼は、パーライト組織21と、フェライト組織22とを含む。本実施の形態において、鋼線1を構成する鋼におけるパーライト組織21の割合は80%以上である。パーライト組織21の割合は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。本実施の形態において、鋼線1を構成する鋼におけるフェライト組織22の割合は20%以下である。フェライト組織22の割合は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下である。フェライト組織の割合を20%以下とすることで、鋼の組織の均一性を向上させることができ、時効硬化による靱性の低下が発生し難くすることができる。したがって、十分な靱性を確保することが容易となる。パーライト組織21およびフェライト組織22の割合は、たとえば以下の方法により導出される。まず、鋼線1からサンプルが採取される。そして、得られたサンプルの長手方向Yに垂直な断面が研磨される。研磨された面が、例えば電子顕微鏡により観察される。この観察により得られる画像を適切なソフトウェアによって処理することにより、パーライト組織21およびフェライト組織22の割合が導出される。
鋼線1の引張強度T N/mmは、2000N/mm以上2700N/mm以下である。鋼線1の引張強度T N/mmの下限は、好ましくは2050N/mmであり、より好ましくは2100N/mmである。鋼線1の引張強度T N/mmの上限は、好ましくは2600N/mmであり、より好ましくは2500N/mmである。引張強度T N/mmは、例えば、JIS Z 2241に基づいて測定される。
鋼線1を構成する鋼における格子歪をS%とした場合、S%に0.58885%を足した値を引張強度T N/mmで除した値である{(S%+0.58885%)/T}mm/Nは、4.8×10−6mm/N以上である。例えば、S%が0.5%である場合、S%に0.58885%を足した値は、0.0108885となる。さらに、引張強度T N/mmが2230N/mmである場合、{(S%+0.58885%)/T}mm/Nは、4.88×10−6mm/Nとなる。なお、小数点第三位以下を四捨五入している。{(S%+0.58885%)/T}mm/Nは、好ましくは4.84×10−6mm/N以上である。格子歪は、例えば下記式(1)に示すWilliamson−Hall法を用いて導出される。式(1)において、S%は格子歪を表し、βラジアンは回折線の半値幅を表し、λ×10−1nmは測定X線の波長を示し、θラジアンは回折線のブラッグ角を表し、無次元数であるεは定数を表す。
Figure 2021183716
図3は、ばねの構造を示す斜視図である。図3を参照して、本実施の形態におけるばね2は、鋼線1から構成される。
次に、鋼線1およびばね2の製造方法の一例について説明する。図4を参照して、本実施の形態における鋼線1およびばね2の製造方法においては、まずS10として原料線材準備工程が実施される。図5は、原料線材の構造を示す斜視図である。図5において、原料線材5の長手方向Yに垂直な断面を併せて図示している。S10では、0.5質量%以上0.7質量%以下の炭素と、1質量%以上2.5質量%以下の珪素と、0.5質量%以上1質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含み、残部が鉄および不可避的不純物である鋼から構成される原料線材5が準備される。原料線材5を構成する鋼は、0.05質量%以上0.5質量%以下のバナジウム、0.02質量%以上1質量%以下のコバルト、0.02質量%以上1質量%以下のニッケルおよび0.05質量%以上0.5質量%以下のモリブデンからなる群から選択される一種以上の元素をさらに含有してもよい。
次に、工程S20としてパテンティング工程が実施される。この工程S20では、工程S10において準備された原料鋼線に対してパテンティングが実施される。具体的には、原料鋼線がオーステナイト化温度A1点以上の温度域に加熱された後、MS点よりも高い温度域まで急冷され、当該温度域で保持される熱処理が実施される。これにより、原料鋼線の金属組織がラメラ間隔の小さい微細パーライト組織となる。A1点以上の温度域の上限は、好ましくは860℃である。A1点以上の温度域の下限は、好ましくは800℃である。A1点以上の温度域は、820℃以上840℃以下であることがより好ましい。急冷後に保持される温度域の上限は、好ましくは630℃である。急冷後に保持される温度域の下限は、580℃である。本実施の形態において、急冷後の保持時間は、10秒以上240秒以下である。上記パテンティング処理において、原料鋼線をA1点以上の温度域に加熱する処理は、脱炭の発生を抑制する観点から不活性ガス雰囲気中で実施される。本実施の形態においてパテンティング工程におけるA1点以上の温度域での保持時間は、10秒以上100秒未満である。A1点以上の温度域での上記保持時間は、20秒以上100秒未満であることがより好ましい。A1点以上の温度域での上記保持時間の上限は、好ましくは60秒である。A1点以上の温度域での保持時間を上記範囲とすることで、鋼線1を構成する鋼においてフェライト組織が形成されることを低減させることができ、鋼の組織の均一性を向上させることができる。
次に、工程S30として伸線工程が実施される。この工程S30では、工程S20においてパテンティングが実施された原料鋼線の伸線が実施される。本実施の形態において、伸線工程の加工度としての減面率の下限は80%である。減面率の下限は、好ましくは83%であり、より好ましくは86%である。減面率を80%以上とすることで、鋼線1の強度を向上させることができる。本実施の形態において減面率の上限は、95%である。伸線工程を実施することで、パーライト組織を有し、図1に示すような鋼線1が得られる。なお、伸線が実施される前の原料鋼線の長手方向に垂直な断面の断面積V、伸線が実施された後の原料鋼線の長手方向に垂直な断面の断面積Vとした場合、減面率は、VとVとの差をVで除した割合%である。
次に、S30において得られた鋼線1を用いたばね2の製造方法を説明する。S30に引き続き、工程S40としてばねの形状に加工するばね加工工程が実施される。このS40では、図1および図3を参照して、鋼線1が、たとえば図3に示すらせん形状に塑性加工されることにより、ばねの形状に成形される。次に、工程S50として、焼なまし工程が実施される。このS50では、S40においてばねの形状に成形された鋼線1に対して、焼きなまし処理が実施される。具体的には、ばねの形状に成形された鋼線1が加熱されることにより、S40において生じた鋼線1中のひずみが低減される。以上の工程により、本実施の形態のばね2は完成する。
ここで、本実施の形態における鋼線1およびばね2では、鋼における格子歪であるS%と引張強度であるT N/mmとにおいて、S%に0.58885%を足した値をT N/mmで除した割合である{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上である。したがって、本実施の形態における鋼線1およびばね2によれば、高い強度と高い靱性とを両立させることができる。
上記実施の形態では、S50において焼きなまし処理が実施された鋼線1に対して、窒化処理が実施されてもよい。窒化処理は本実施の形態のばね2の製造方法において必須の工程ではないが、これを実施することにより、鋼線1の外周面を覆うように窒化物層が形成される。その結果、ばね2の強度を向上させることができる。また、S50において焼きなまし処理が実施された鋼線1に対してショットピーニングが実施されてもよい。ショットピーニングは、本実施の形態のばね2の製造方法において必須の工程ではないが、これを実施することにより、ばね2の表面を含む領域に圧縮応力が付与され、疲労強度の向上に寄与する。
上記実施の形態では、S30の伸線工程が実施される前に、原料線材5における脱炭層を除去する皮剥ぎ工程や焼鈍工程が実施されてもよい。焼鈍工程における加熱温度は、例えば550℃以上650℃以下である。焼鈍工程における処理時間は、例えば120分以上240分以下である。また、S20のパテンティング工程が実施される前に、下引き伸線工程が実施されてもよい。下引き伸線工程が実施されることで、S30の伸線工程における加工度を調整することが容易となる。
上記本開示の鋼線1のサンプルを作製し、高い強度と高い靱性とを両立させることができる効果を確認する評価を行った。評価の手順は以下の通りである。
上記実施の形態において説明した鋼線1の製造方法と同様の手順でサンプルIを作製した。サンプルIにおける鋼の成分組成を表1に示す。サンプルIのパテンティング工程における820℃以上の温度域での保持時間を60秒に設定した。鋼の成分組成を表1に示すように変更した以外は、サンプルIと同様にしてサンプルII〜VIIIを作製した。パテンティング工程における820℃以上の温度域での保持時間を20秒とした以外は、サンプルIと同様にしてサンプルIXおよびサンプルXを作製した。表1に示す鋼の成分組成以外の成分は、鉄および不可避的不純物である。
Figure 2021183716
サンプルI〜Xにおける引張強度T N/mm、格子歪S%、フェライト組織22の割合および捻回値を測定した。引張強度T N/mm、格子歪S%およびフェライト組織22の割合については、サンプルI〜Xを作製してから2週間経過した後に測定が実施された。格子歪Sの測定では、X線の波長を0.0689nmとした。測定された引張強度T N/mm、格子歪S%から{(S%+0.58885%)/T}mm/Nを算出した。捻回値の測定は、以下のようにして実施された。サンプルの一端を固定し、サンプルの他端を捻じり、サンプルが破断するまでの捻じり回数を捻回値として測定した。標点間距離を100×Dとし、捻じり速度を60rpmとした。サンプルの作製直後の第1の捻回値と、時効硬化による靱性への影響を確認するためにサンプルの作製後2週間経過した後の第2の捻回値とをそれぞれ測定した。第1の捻回値および第2の捻回値が共に20回以上であるものを合格とした。第1の捻回値が20回以上であり、第2の捻回値が20回未満であるものは、時効硬化が発生しているものとして不合格とした。なお、第1の捻回値が20回未満であるものは不合格とする。これらの実験結果を表2、図6および図7に示す。表2では第2の捻回値のみを示す。表2中の総合評価では、第1の捻回値および第2の捻回値が共に20回以上であると共にフェライト組織22の割合が20%以下であるものを合格としてAで示し、第1の捻回値が20回以上であり、第2の捻回値が20回未満であるものを不合格としてBで示す。
Figure 2021183716
サンプルI〜サンプルXでは、第1の捻回値が20回以上であった。表2を参照して、サンプルI〜サンプルXでは、引張強度T N/mmが2000N/mm以上2700N/mm以下である。したがって、サンプルI〜サンプルXは、高い強度を有する。図6を参照して、{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上のサンプルI〜サンプルVIでは、第2の捻回値が20回以上であった。つまり、サンプルI〜サンプルVIでは、時効硬化による靱性の低下が発生し難くなり、高い靱性を維持している。{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N未満のサンプルVII〜サンプルXでは、第2の捻回値が20回未満であった。つまり、サンプルVII〜サンプルXでは、時効硬化が発生し、靱性が低下している。したがって、サンプルI〜サンプルVIは、高い強度と高い靱性とを両立しているといえる。図7を参照して、{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上であると共に、フェライト組織の割合が20%以下であるサンプルI〜サンプルVIは、時効硬化による靱性の低下が発生し難くなり、高い靱性を維持している。したがって、{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上であると共に、フェライト組織の割合が20%以下であることがより好ましい。このように、本開示の鋼線によれば、高い強度と高い靱性とを両立させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本開示の鋼線およびばねは、高い強度と高い靱性とを有することが求められる場合において特に有利に適用される。
1 鋼線
2 ばね
5 原料線材
11 外周面
21 パーライト組織
21A,22A 境界
22 フェライト組織
D 線径
I,II,III,IV,V,VI,VII,VIII,IX,X サンプル
S 格子歪
S10,S20,S30,S40,S50 工程
T 強度
,V 断面積
Y 長手方向

Claims (4)

  1. 0.5質量%以上0.7質量%以下の炭素と、
    1質量%以上2.5質量%以下の珪素と、
    0.5質量%以上1質量%以下のマンガンと、
    0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含み、
    残部が鉄および不可避的不純物である鋼から構成され、
    線径が、0.5mm以上2mm以下であり、
    引張強度が、2000N/mm以上2700N/mm以下であり、
    前記鋼は、パーライト組織を有し、
    前記鋼の格子歪をS%とし、引張強度をT N/mmとした場合、S%に0.58885%を足した値をT N/mmで除した値である{(S%+0.58885%)/T}mm/Nが4.8×10−6mm/N以上である、鋼線。
  2. 前記鋼におけるフェライト組織の割合は20%以下である、請求項1に記載の鋼線。
  3. 前記鋼は、0.05質量%以上0.5質量%以下のバナジウム、0.02質量%以上1質量%以下のコバルト、0.02質量%以上1質量%以下のニッケルおよび0.05質量%以上0.5質量%以下のモリブデンからなる群から選択される一種以上の元素をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の鋼線。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鋼線から構成される、ばね。
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WO2022259606A1 (ja) * 2021-06-08 2022-12-15 住友電気工業株式会社 鋼線およびばね

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