本実施の形態に係る画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面図である。また、図2は、画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
画像形成装置1は、インクジェット方式で記録媒体Sにインク像(以下「画像」という)を形成する画像形成装置本体2と、記録媒体Sの搬送方向における画像形成装置本体2の上流側に配置された給紙部3と、同下流側に配置された排紙部4と、を備える。
給紙部3は、記録媒体Sを積載し、積載された記録媒体Sを上から1枚ずつ画像形成装置本体2に給送(給紙)する機能を有する。一方、排紙部4は、画像形成装置本体2から排出された画像形成済みの記録媒体Sを積載し整列させるスタッカーとしての機能を有する。なお、給紙部3および排紙部4は公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
画像形成装置本体2は、インクジェットヘッド102(図2を参照)が搭載されたヘッドユニット10と、給紙部3から給紙された記録媒体Sを画像形成装置本体2内で搬送するための搬送部20と、画像が形成された記録媒体Sの画像形成面を加熱する加熱部30と、を備える。
搬送部20は、ヘッドユニット10の下に配置された第1搬送ベルト21、かかる第1搬送ベルト21の下流に配置された第2搬送ベルト25、各々の搬送経路に配置された搬送ローラー(以下は適宜「ローラー」と略称する場合がある)R、などを備える。
第1搬送ベルト21は、図中の右側および下方に配置された従動ローラー22および24と、左側に配置された駆動ローラー23と、に架け渡されている。第1搬送ベルト21は、搬送駆動部51(図2を参照)の第1駆動モーター(図示せず)の駆動力が駆動ローラー23に伝達されることにより、図1中の反時計方向に回転する。
第2搬送ベルト25は、図中の右側に配置された従動ローラー26と、左側に配置された駆動ローラー27とに架け渡されている。第2搬送ベルト25は、搬送駆動部51(図2参照)の第2駆動モーター(図示せず)の駆動力が駆動ローラー27に伝達されることにより、図1中の反時計方向に回転する。
ヘッドユニット10は、第1搬送ベルト21に対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部から、第1搬送ベルト21によって搬送される記録媒体Sに対してインクを吐出することにより、インク像すなわち画像を記録媒体S上に形成する。
なお、搬送方向におけるヘッドユニット10の上流側には、搬送される記録媒体Sの姿勢および幅方向の端部の位置を整列させるためのアライナー5が配置されている。
本実施の形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット10が、第1搬送ベルト21の回転方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている(図1を参照)。
各ヘッドユニット10は、インクジェットヘッド102(図2を参照)を備える。インクジェットヘッド102には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
インクジェットヘッド102に含まれるノズルの図1の図面に垂直な方向(以下、「直交方向」と称する)についての配置範囲は、第1搬送ベルト21により搬送される記録媒体Sのうち画像が形成される領域の直交方向の幅をカバーしている。
ヘッドユニット10は、画像形成時には第1搬送ベルト21(または駆動ローラー23の回転軸)に対して位置が固定されて用いられる。すなわち、この画像形成装置1は、シングルパス方式のインクジェット画像形成装置である。
一具体例では、インクジェットヘッド102から記録媒体Sに吐出されるインクとして、当該記録媒体Sに供給されるエネルギー量(この例では後述するヒーターの発熱量)に応じて粘度が変化するインク(例えば水系インク)が用いられる。
次に、主として図2を参照して、画像形成装置1における他の主要な機能構成を説明する。画像形成装置1は、ヘッドユニット10が有するヘッド駆動部101およびインクジェットヘッド102と、加熱部30と、制御部40と、搬送駆動部51と、入出力インターフェース52とを備える。
ヘッド駆動部101は、制御部40の制御に基づいてインクジェットヘッド102の記録素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を出力することにより、インクジェットヘッド102のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU41は、画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
記憶部44には、入出力インターフェース52を介して外部装置200から入力された印刷ジョブ(印刷枚数などの種々のユーザー設定情報を含む画像形成指示)および当該印刷ジョブに係る画像データが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて上述した第1駆動モーター、第2駆動モーター等に駆動信号を供給して第1搬送ベルト21および第2搬送ベルト25を所定の速度およびタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ローラーのモーター(図示せず)に駆動信号を供給して、搬送ローラーを所定の速度およびタイミングで回転させる。
入出力インターフェース52は、外部装置200と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース52は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、または、これらの組み合わせで構成される。
外部装置200は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース52を介して印刷ジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
加熱部30は、画像形成部すなわちヘッドユニット10のインクジェットヘッド102によって画像が形成(すなわちインクが着弾)された記録媒体Sを加熱することにより、記録媒体S上の画像を乾燥させて記録媒体Sに定着させる役割を担う。なお、加熱部30の詳細な説明は後述する。
印刷ジョブの実行時における画像形成装置1の概略的な動作を説明する。上述した外部装置200から入出力インターフェース52を介して印刷ジョブを取得した場合、画像形成装置1は、制御部40の制御の下、以下のような動作を行う。
画像形成装置1は、給紙部3内の最上位の記録媒体S(図1参照)をピックアップして、かかる記録媒体Sを、画像形成装置本体2内の搬送経路に給送する。この記録媒体Sは、ヘッドユニット10よりも上流に配置されたローラーRによって図1中の左方向に搬送され、アライナー5によって幅方向位置が整列させられる。
続いて、制御部40は、第1搬送ベルト21を回転させて記録媒体Sをヘッドユニット10の下に搬送させるとともに、ヘッドユニット10の対応する色のインクジェットヘッド102からインクを吐出させる制御を行う。かかる動作により、印刷ジョブで規定された色および形状の画像が記録媒体S上に形成される。
画像が形成された記録媒体Sは、続いて下流側の第2搬送ベルト25によって図1中の左方向に搬送される。このとき、加熱部30によって記録媒体S全体が加熱されることにより、記録媒体S上の画像が加熱および乾燥され、記録媒体Sに定着させられる。
かかる定着プロセスが完了した記録媒体Sは、印刷ジョブの設定が片面印刷である場合には、図1中に示す排出用搬送経路P1を経て、画像形成面を上に向けた状態で排紙部4に排紙される。
一方、印刷ジョブの設定が両面印刷である場合、記録媒体Sは、図1中に示す両面印刷用搬送経路P2を経て、画像形成装置本体2内の下側に配置された反転搬送路RPでいわゆるスイッチバック動作が行われることにより、進行方向の前後が逆になるように搬送される。
この後、記録媒体Sは、図1中に示す逆「S」字状の搬送路を経て、アライナー5およびヘッドユニット10に連なる搬送路に戻される。そして、記録媒体Sは、未印刷面である第2面を上にした状態(姿勢)となって、搬送ローラーRによりヘッドユニット10に向けて搬送される。
なお、この後の処理は上述した片面印刷の場合と同様であり、記録媒体Sは、アライナー5による整列、ヘッドユニット10による画像形成、加熱部30による定着の各プロセスが実行された後、排出用搬送経路P1を通り、第2面を上に向けた状態で排紙部4に排紙される。
ところで、従来、インクジェット方式の画像形成装置では、印刷(すなわち画像形成および定着)の過程で記録媒体Sへの急激な吸湿または乾燥の処理が行われることに起因して、画像形成された記録媒体Sにカールが発生するという問題がある。
特に、記録媒体Sに両面印刷を行う場合、表面(1面目)の画像形成プロセスにおいてカールの発生した記録媒体Sの表裏を反転させて2面目の画像形成を行う際、当該カールのついた記録媒体Sがヘッドユニット10に接触する場合がある。この場合、記録媒体Sの2面目に形成されるインク像が画像不良となる、さらにはヘッドユニット10(ノズル等)にダメージを生じさせる等の不具合が発生するおそれがある。
上述した問題に対処するため、従来は、画像形成部の下流側に直線の搬送経路(ストレート経路)を確保し、かかるストレート経路に加熱部(ヒーター等)を配置することで、記録媒体Sのカール軽減を図っていた。
また、従来は、カールによる上記の不具合を回避するために、搬送方向におけるヘッドユニット10(画像形成部)の上流側に、カール検知部(光学的または物理的なセンサーなど)を配置するとともに、かかるカール検知部の下流側かつ画像形成部の上流側に、カールが大きい記録媒体Sを除去するためのパージ経路を設けていた。
この場合、画像形成部の上流の経路を通る記録媒体Sに所定の判定基準(閾値)を超える量のカールが検出された場合、その記録媒体Sを、パージ経路を通して除去するように搬送制御して、画像形成部に記録媒体Sが搬送されることを防止する。
また、特許文献1記載の技術では、上述のカール検知部によって記録媒体Sのカールが検出された場合、画像形成部の手前で当該記録媒体Sの搬送を停止することにより、上述した不具合の発生を防止している。
かくして従来は、上記のような構成を採用して記録媒体Sのカール状態を軽減し、仮に記録媒体Sのカールが基準値を超えるような場合でも、当該記録媒体Sを除去または搬送停止することで、そのような記録媒体Sが画像形成部に侵入することを防止していた。
しかしながら、上述の従来技術は、記録媒体Sのカール発生を完全には防止できないこと、さらには記録媒体Sにカールが発生することを前提とした構成であること等から、十分な対策とは言えず、いわば消極的な解決策に留まっていると考えられる。
具体的には、従来技術では、記録媒体Sの種類やインクの吐出量(印字率)などの画像形成条件によっては、画像形成時に発生する記録媒体Sのカールが想定外に大きくなり、上述したストレート経路および加熱部の構成だけでは当該カールを十分に矯正することが出来なかった。
このため、従来技術では、カールのある記録媒体Sが画像形成部に侵入することを防止することに留まっており、印刷の生産性が大幅に低下する問題があった。
すなわち、画像形成条件によってはカールを十分に矯正できない従来技術では、損紙(ヤレ紙)が発生すること、再度の印刷処理を行う必要が生じること、特許文献1の技術では動作停止すること、が更なる課題として残されており、いずれにしても印刷の生産性の低下を招いていた。
一具体例として、多数枚からなる冊子を制作するために、多数の記録媒体Sを連続して両面印刷する印刷ジョブを実行する場合を考えてみる。この印刷ジョブの実行中に、例えば1枚だけ十分にカール矯正できずに除去(パージ)される記録媒体Sが発生した場合、除去された記録媒体Sの第2面に印刷されるはずだった情報(文字等)が欠落することになる。
この場合、予め設定された印刷ジョブ(すなわち連続プリント動作)が全て実行された後に、欠落した情報だけを、当該情報が欠落した記録媒体Sの面に印刷するために追加的な作業および印刷処理が必要となることから、作業効率および生産性が大幅に低下する。
上記問題に鑑みると、より積極的ないし根本的な解決策として、記録媒体Sの種類、インクの吐出量(印字率)、さらには両面印刷などの種々の画像形成条件に対応して、画像形成時に発生した記録媒体Sのカールを十分に矯正することの出来る技術が必要であると考えられる。かかる技術を確立させることによって、印刷の生産性を格段に向上させることができるからである。
この課題を解決すべく、本発明者らは、まず、従来構成(すなわち上述したストレート経路およびヒーター等の加熱部)を備えたインクジェット画像形成装置において、種々の画像形成条件下で、できるだけ記録媒体Sのカール量が少なくなるようなヒーターの加熱量を求める実験を行った。
ここで、「種々の画像形成条件」は、記録媒体Sの坪量(厚紙/薄紙の別)、インク吐出量(印字率の高低)、片面印刷/両面印刷の別、などである。
かかる実験を通じて、本発明者らは、以下のような知見を得た。
記録媒体Sが薄紙や普通紙の場合、坪量の大きい厚紙と比較して、吸湿および乾燥の影響を受けやすく、カール(すなわち画像形成面(上面)の先後端側が上方に反る変形状態)が大きくなりやすい。また、厚紙と比較して、薄紙や普通紙の場合、印字率の高低の影響を受けやすく、印字率が高いほど(すなわち記録媒体S上に着弾するインク量が多いほど)、上記のカールが大きくなりやすい。
一方、厚紙の場合、カール発生の要因としては、印字率(着弾するインク量)による影響はわずかであり、むしろ搬送経路が湾曲している場合に、かかる湾曲形状の影響を受けやすいことが確認された。
また、両面印刷を行う場合、第1面の印刷時に記録媒体Sを加熱する加熱量を抑え気味にして、第2面の印刷時に加熱量を高めに設定すると、最終的に記録媒体Sの歪み(カール等の変形)がより少なくなることが分かった。ここで、「抑え気味に」とは、片面印刷時の記録媒体Sへの加熱量よりも少なくすることである。
上記のような知見に基づき、本発明者らは、画像形成条件(上述した諸条件の組み合わせ)に応じて、従来構成の加熱部(ヒーター等)によって記録媒体Sを加熱する加熱量を変化ないし調整(制御)することによって、カールをより抑制できることが分かった。
その一方、従来構成のままで記録媒体Sに対する加熱量を変えるだけの対応では、カールの抑制(変形した用紙の形状補正ないし矯正)の改善効果は得られたものの、例えば「カール検知部およびパージ経路を除去しても運用上問題ない」と評価できるほどの顕著な改善効果は得られないことが分かった。
上記の実験結果を踏まえ、本発明者らは更なる鋭意研究を行い、ヒーター等を備えた加熱部30を、図1に示すように、第1加熱部31および第2加熱部32の複数とすることにより、カール補正に関する顕著な改善効果が得られることを見出した。
すなわち、本実施の形態の画像形成装置1の加熱部30は、搬送方向におけるヘッドユニット10の下流のストレート搬送路SP(第2搬送ベルト25の上方)に配置された第1加熱部31と、搬送方向における第1加熱部31の下流側に配置された第2加熱部32と、を有する。
また、本実施の形態では、搬送方向における上述したストレート搬送路SP(第2搬送ベルト25)の下流側に湾曲搬送路CPを設け、かかる湾曲搬送路CPに沿うように第2加熱部32を配置している。ここで、湾曲搬送路CPの湾曲方向(向き)は、記録媒体Sに発生し得るカールの向き(記録媒体Sが変形する態様)と逆の方向(向き)である。
かくして、本実施の形態の画像形成装置1の加熱部30は、画像が形成された記録媒体Sの画像形成面を加熱する第1加熱部31と、第1加熱部31によって加熱され湾曲搬送路CPに搬送される記録媒体Sの画像形成面を加熱する第2加熱部32と、を備える(図1および図2を参照)。
本実施の形態では、記録媒体Sの搬送方向に沿って2つの加熱部(31,32)を配置し、かつ、各々の加熱部(31,32)の加熱量を、画像形成条件に応じて適宜変更(この例では制御部40によって制御)する。かかる構成すなわち第1加熱部31と下流側の第2加熱部32とで個別に加熱量を調整する構成とすることにより、様々な印刷環境に柔軟に対応して、記録媒体Sのカールをより効果的に矯正することができる。
本実施の形態において、第1加熱部31は、主として記録媒体S上の画像(インク)の予備乾燥(「ピニング」とも称される)を行う役割を担う。一方、第2加熱部32は、記録媒体S上のインクを完全に乾燥させると同時に記録媒体Sのカール矯正を行う役割を担う。
そして、制御部40は、記録媒体Sの種類(紙種)、坪量、インク付着量などの画像形成条件(種々の印刷環境)に応じて第1加熱部31および第2加熱部32の出力すなわち加熱量を制御する。
上記のような構成とすることにより、種々の画像形成条件ないし印刷環境に柔軟に対応して、記録媒体Sに発生するカールを、従来よりも格段に効果的に矯正ないし抑制することができる。
そして、記録媒体Sに発生するカールが矯正されることにより、損紙(ヤレ紙)の発生ひいては再度の印刷処理の必要性などの生産性の低下を招く根本的な原因を除去ないし大幅に減らすことができるので、印刷の生産性を向上させることができる。
加えて、本実施の形態では、従来構成としてのカール検知部およびパージ経路を省略できるので、装置全体の小型化および低コスト化を図ることができる。
以下、図1、および図3以下を参照して、第1加熱部31および第2加熱部32のより具体的な構成を説明する。
図1に示すように、第1加熱部31は、上述した第2搬送ベルト25等により構成されたストレート搬送路SPに沿って配置されている。一具体例では、第1加熱部31は、複数のヒーター(加熱源)を備えており、これら加熱源の出力が制御部40によって制御されることにより、画像が形成された記録媒体Sの画像形成面を上方から加熱して、当該画像(インク)を予備的に加熱する。
ここで、「予備的に加熱する」とは、インクが完全に乾燥しない程度に加熱すること、言い換えると、画像が記録媒体Sに完全に定着しない程度に加熱することを意味する。
かかる観点からは、本実施の形態における第1加熱部31は、記録媒体Sに形成された画像(インク)を完全に乾燥ないし定着させるように加熱する従来構成の加熱部とは異なっている。
また、第1加熱部31により画像(記録媒体S上のインク)を予備的に加熱する機能、言い換えると第1加熱部31ではインクを完全には乾燥させない構成(加熱量を従来よりも低くする構成)とすることにより、ストレート搬送路SP上で発生する記録媒体Sのカールの量が従来よりも小さくなる効果も得られる。
これに対して、第2加熱部32は、搬送方向における第1加熱部31の下流側の湾曲搬送路CP上に配置されている。また、上述のように、湾曲搬送路CPの湾曲の向きは、第1加熱部31の加熱によって記録媒体Sに発生するカールの方向とは逆(反対)の向きである。
さらに、湾曲搬送路CPの下流に接続され排紙部4へと連なる排出用搬送経路P1は、図1に示すように、湾曲搬送路CPの湾曲方向とは逆向きに湾曲する経路と、排紙部4に向けて水平方向に伸びる直線状の経路とを有する。概して、湾曲搬送路CPと排出用搬送経路P1とで、略「S」字状に湾曲している。
本実施の形態において、排出用搬送経路P1は、湾曲搬送路CPで第2加熱部32によって加熱された記録媒体Sを冷却する(余分な熱を逃がす)とともに、湾曲搬送路CPの湾曲形状に基づいて生じ得る、本来のカールとは逆方向の変形(いわば「逆カール」)を矯正し、記録媒体Sの変形を最小化した状態として排紙部4へ送り出す役割を担う。
一具体例では、第2加熱部32は、複数のヒーター(加熱源)を備えており、これら加熱源の出力が制御部40によって制御されることにより、画像が形成された記録媒体Sの画像形成面を上方(図1に示す例では斜め上側)から加熱して、当該画像(インク)を完全に乾燥(記録媒体S上に定着)させる。
なお、本実施の形態では、第1加熱部31によって記録媒体S上のインクを完全には乾燥(定着)させないことから、第2加熱部32のある湾曲搬送路CPでは、当該インクが第2加熱部32または湾曲搬送路CPを構成するガイド部材などに接触させないこと、および移動する記録媒体S上のインクを速やかに乾燥(定着)させることが必要となる。
加えて、この例では、画像形成条件によって第1加熱部31および第2加熱部32の両方の出力を制御する構成を採用している。このため、第1加熱部31および第2加熱部32に備えられる加熱源は、応答性の良い赤外線ヒーターを用いるとよい。
図3は、第2加熱部32の一具体例を示す側面図であり、複数(6本)の赤外線ヒーター300が湾曲搬送路CPの上方近傍に、かつ搬送方向に沿って所定間隔で配列された構成例を示す。
ここで、各々の赤外線ヒーター300は、記録媒体Sが搬送される搬送方向に直交する紙面方向(すなわち記録媒体Sの幅方向)に延び、湾曲搬送路CPに沿って並んで配列されている。
一方、図4は、第2加熱部の他の具体例を示す側面図である。図4に示す第2加熱部32Aは、湾曲搬送路CPに設けられた略矩形状の開口CPaの位置に設けられている。具体的には、第2加熱部32Aは、湾曲搬送路CPの開口CPaの位置に配置されたローラー対R,Rの一方すなわち上側のローラーR内に、複数(2本)の赤外線ヒーター300が組み込まれた構成となっている。
図5および図6は、図3の構成を前提とした場合の第1加熱部31および第2加熱部32における赤外線ヒーター300の配置例を示す平面図であり、各々、記録媒体Sが搬送される方向を白抜き矢印で示している。
図5に示す例では、第1加熱部31および第2加熱部32は、各々、搬送される記録媒体Sの幅方向に伸びる6つの赤外線ヒーター300(3つの上流側ヒーター300−1、および3つの下流側ヒーター300−2)を備える。
ここで、各々の赤外線ヒーター300(300−1および300−2)は、記録媒体Sが搬送される搬送方向に直交する方向(すなわち記録媒体Sの幅方向)に延び、各々の搬送路(この例ではストレート搬送路SPおよび湾曲搬送路CP)に沿って並んで配列されている。
また、第1加熱部31および第2加熱部32において、3つの上流側ヒーター300−1は搬送される記録媒体Sの最大幅に等しい寸法を有している。一方、第1加熱部31および第2加熱部32において、3つの下流側ヒーター300−2は、上流側ヒーター300−1よりも短い寸法を有する。そして、各々の下流側ヒーター300−2の長さ方向の中央は、搬送される記録媒体Sの幅方向における中央と対応している。
図5に示す構成に基づいて、制御部40は、搬送される記録媒体Sの幅に対応するヒーターを選択的に稼働する制御を行う。一具体例では、図5に示すような最大幅の記録媒体Sを使用する場合、制御部40は、第1加熱部31および第2加熱部32の各々で、上流側ヒーター300−1のみを稼働し、下流側ヒーター300−2は稼働させないように制御する。
一方、図5に示す記録媒体Sよりも狭い幅の記録媒体を使用する場合、制御部40は、第1加熱部31および第2加熱部32の各々で、下流側ヒーター300−2のみを稼働し、上流側ヒーター300−1は稼働させないように制御する。
図6に示す構成例は、図5と比較して分かるように、第1加熱部31および第2加熱部32内の下流側ヒーター300−2の寸法および配置は同等であるが、上流側ヒーター300−1の数、寸法および配置が異なっている。
具体的には、図6に示す構成例では、上流側ヒーター300−1は、下流側ヒーター300−2よりも短い長さであり、下流側ヒーター300−2の長さ方向の外側かつ搬送可能な最大幅を有する記録媒体Sの幅方向の両端側に配置されている。
図6に示す構成に基づいて、制御部40は、搬送される記録媒体Sの幅に対応するヒーターを選択的に稼働する制御を行う。一具体例では、図5に示すような最大幅の記録媒体Sを使用する場合、制御部40は、第1加熱部31および第2加熱部32の各々で、上流側ヒーター300−1と下流側ヒーター300−2の両方を稼働させるように制御する。
一方、図6に示す記録媒体Sよりも狭い幅の記録媒体を使用する場合、制御部40は、第1加熱部31および第2加熱部32の各々で、下流側ヒーター300−2のみを稼働し、上流側ヒーター300−1は稼働させないように制御する。
総じて、図5および図6に示す構成を採用する場合、制御部40は、通過する記録媒体Sの幅に応じて、第1加熱部31および第2加熱部32内の赤外線ヒーター(ヒーター300−1または300−2)を選択的に稼働(通電)させるように加熱制御を行う。
なお、図5および図6で上述した制御は一例であり、他にも例えば、記録媒体の坪量に応じて稼働させるヒーター(300−1または300−2)の数を変えてもよい。
あるいは、電力(通電量)に上限がある場合、制御部40は、第2加熱部32を稼働させるタイミングで第1加熱部31の出力を下げる制御を行ってもよい。このような制御を行うことにより、第1加熱部31および第2加熱部32の全体の通電量が上限値を超えないようにすることができる。
次に、図7のフローチャートを参照して、上述した第1加熱部31および第2加熱部32に関する加熱制御、言い換えると記録媒体Sのカール補正方法の処理の流れの一例について説明する。
なお、以下に説明する第1加熱部31および第2加熱部32における出力(加熱量)の比率は、第1加熱部31および第2加熱部32を合わせて(同時に)使用可能な出力上限値を10とした場合の出力配分を意味する。
印刷ジョブを受信した後のステップS1で、画像形成装置1は、画像形成に関する種々の動作を開始する。具体的には、ステップS1において制御部40は、給紙部3を制御して積載された記録媒体Sのうちの最上位の1枚を画像形成装置本体2に給紙するとともに、かかる記録媒体Sの搬送および画像形成の動作を行うように、上述した搬送駆動部51やヘッドユニット10等を制御する。
ステップS2において、制御部40は、印刷ジョブの設定情報を参照し、設定された印刷モードが片面印刷であるか否かを判別する。
ここで、制御部40は、設定された印刷モードが片面印刷であると判定した場合(ステップS2、YES)、ステップS3に移行する。一方、制御部40は、設定された印刷モードが片面印刷でないと判定した場合(ステップS2、NO)、印刷モードが両面印刷の設定であると判断してステップS21に移行する。
ステップS3において、制御部40は、例えば印刷ジョブの用紙情報を参照して、使用される記録媒体S(以下、単に「用紙」ともいう)の坪量が予め定められた閾値未満であるか否かを判定する。
ここで、制御部40は、用紙の坪量が予め定められた閾値未満であると判定した場合(ステップS3、YES)、使用される用紙が普通紙または薄紙であると判断してステップS4に移行する。
一方、制御部40は、用紙の坪量が予め定められた閾値未満ではない即ち当該閾値以上であると判定した場合(ステップS3、NO)、使用される用紙が厚紙であると判断してステップS31に移行する。
ステップS4において、制御部40は、印刷ジョブのカバレッジ情報を参照して、当該用紙に吐出されるインクの吐出量が所定値未満か否かを判定する。
ここで、制御部40は、インクの吐出量が所定値未満であると判定した場合(ステップS4、YES)、発生するカールは少ない(カール量が小さい)と判断し、続くステップS5において、第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率を5:5(等分)にするように加熱制御を行う。
かくして、用紙(ここでは普通紙または薄紙)は、ヘッドユニット10(使用する色に対応するインクジェットヘッド102)から吐出されたインクによりカラー画像が形成された後、ストレート搬送路SPにおいて第1加熱部31で加熱されることより、インク(カラー画像)の予備乾燥(ピニング)の処理が行われる。
一具体例では、第1加熱部31によって加熱された用紙は、幾分かのカールを生じながら湾曲搬送路CPへと搬送される。続いて、用紙は、湾曲搬送路CPを通過する間、第2加熱部32によって、上述した第1加熱部31と同じ熱量で加熱されることにより、インク(カラー画像)の完全な乾燥(定着)の処理が行われるとともに、ストレート搬送路SPの通過中に生じた変形(通常方向のカール)が矯正され、或いは僅かに逆カールが生じる。
さらに、当該用紙は、排出用搬送経路P1を通過することによって、冷却されながら僅かな歪みも無くなるように矯正される。
そして、ステップS40において、制御部40は、当該加熱(すなわち定着およびカール補正)の処理が行われた用紙を排紙部4に排出する搬送制御を行う。
上述のような制御および動作により、普通紙または薄紙を用いた片面印刷で、インク吐出量(印字率)が比較的少ない印刷ジョブの場合に、インクの定着処理および記録媒体Sに対する適切なカール補正が行われる。
一方、制御部40は、インクの吐出量が所定値未満でない(所定値以上である)と判定した場合(ステップS4、NO)、発生するカールは多めである(カール量が大きい)と判断し、続くステップS6において、第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率を4:6(すなわち第2加熱を強め)にするように加熱制御を行う。
このとき、第1加熱部31によって加熱された用紙は、ステップS5で上述した例よりも若干大きめのカールを生じながら湾曲搬送路CPへと搬送される。続いて、用紙は、湾曲搬送路CPを通過する間、第2加熱部32によって、上述した第1加熱部31よりも多い熱量で加熱されることにより、インク(カラー画像)の完全な乾燥(定着)の処理が行われるとともに、ストレート搬送路SPの通過中に生じた変形(通常方向のカール)が矯正され、或いは僅かに逆カールが生じる。
さらに、当該用紙は、排出用搬送経路P1を通過することによって、冷却されながら僅かな歪みも無くなるように矯正される。
そして、ステップS40において、制御部40は、当該加熱(すなわち定着およびカール補正)の処理が行われた用紙を排紙部4に排出する搬送制御を行う。
上述のような制御および動作により、普通紙または薄紙を用いた片面印刷で、インク吐出量(印字率)が比較的多い印刷ジョブの場合に、インクの定着処理および記録媒体Sに対する適切なカール補正が行われる。
また、用紙が厚紙であると判定された後のステップS31において、制御部40は、ストレート搬送路SPでの加熱量を相対的に多くする必要ありと判断して、第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率を8:2とする(第1加熱を強く第2加熱を弱くする)ように加熱制御を行う。
なお、用紙が厚紙と判定された場合は、インク吐出量の判定(ステップS4)の処理を行わず、インク吐出量(印字率)に関わらず、上記のように、ストレート搬送路SPにおける第1加熱の加熱量を多く、湾曲搬送路CPにおける第2加熱の加熱量を少なくする。この理由は、厚紙がカールする場合の要因としては、インク量(印字率)の大小よりも、搬送経路(この例ではストレート搬送路SPおよび湾曲搬送路CP)の形状の方が、遥かに大きな要因となるからである。
なお、ストレート搬送路SPにおける第1加熱の加熱量を多くした場合、第1加熱部31の機能は、上述した「予備的な乾燥」よりも、むしろ従来の乾燥部と同様に、インクを用紙上でほぼ完全に乾燥(定着)させる役割を担うことになる。また、第2加熱部32は、第1加熱部31で乾燥させきれなかった分のインクを完全に乾燥させるための、補助的な役割を担うことになる。
かくして、第1加熱部31によって十分に加熱された用紙(厚紙)は、幾分かのカールを生じながら湾曲搬送路CPへと搬送される。続いて、用紙(厚紙)は、湾曲搬送路CPを通過する間、第2加熱部32によって、上述した第1加熱部31よりも低い(弱い)熱量で加熱されることにより、インク(カラー画像)の乾燥(定着)の処理が完結するとともに、ストレート搬送路SPの通過中に生じた変形(通常方向のカール)が矯正され、或いは僅かに逆カールが生じる。
さらに、当該用紙は、排出用搬送経路P1を通過することによって、冷却されながら僅かな歪みも無くなるように矯正される。
そして、ステップS40において、制御部40は、当該加熱(すなわち定着およびカール補正)の処理が行われた用紙(厚紙)を排紙部4に排出する搬送制御を行う。
上述のような制御および動作により、厚紙を用いた片面印刷の印刷ジョブの実行時に、インクの定着処理および厚紙(記録媒体S)に対する適切なカール補正が行われる。
印刷モードが両面印刷の設定であると判別した後のステップS21において、制御部40は、上述したステップS3と同様に、使用される用紙の坪量が予め定められた閾値未満であるか否かを判定する。
ここで、制御部40は、用紙の坪量が予め定められた閾値未満であると判定した場合(ステップS21、YES)、使用される用紙が普通紙または薄紙であると判断してステップS22に移行する。
一方、制御部40は、坪量が予め定められた閾値未満ではない即ち当該閾値以上であると判定した場合(ステップS21、NO)、使用される用紙が厚紙であると判断してステップS27に移行する。
ステップS22において、制御部40は、上述したステップS4と同様に、印刷ジョブのカバレッジ情報を参照して、当該用紙に吐出されるインクの吐出量が所定値未満か否かを判定する。
ここで、制御部40は、インクの吐出量が所定値未満であると判定した場合(ステップS22、YES)、発生するカールは少ないと判断し、ステップS23に移行する。
そして、制御部40は、用紙の第1面の印刷時における第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率を4:4(等分かつ低め)にするように加熱制御を行う(ステップS23)。すなわち、ステップS5と比較して分かるように、両面印刷における第1面の印刷時には、片面印刷の場合と比較して、第1加熱部31および第2加熱部32の総加熱量を低めにする。このような制御とすることにより、両面印刷時の1面目の用紙の変形量を抑えることができる。
かくして、用紙(ここでは普通紙または薄紙)は、対応するインクジェットヘッド102から吐出されたインクによりカラー画像が形成された後、ストレート搬送路SPにおいて第1加熱部31で加熱されることより、カラー画像の予備乾燥(ピニング)の処理が行われる。
一具体例では、第1加熱部31によって加熱された用紙は、幾分かのカールを生じながら湾曲搬送路CPへと搬送される。続いて、用紙は、湾曲搬送路CPを通過する間、第2加熱部32によって、上述した第1加熱部31と同じ(弱めの)熱量で加熱されることにより、インク(カラー画像)の完全な乾燥(定着)の処理が行われるとともに、ストレート搬送路SPの通過中に生じた変形(通常方向のカール)が矯正され、或いは僅かに逆カールが生じる。
かかる用紙は、湾曲搬送路CPから両面印刷用搬送経路P2に搬送され、反転搬送路RPで先後端が反転させられるスイッチバック動作を経て、第2面を上にした状態でヘッドユニット10に向けて搬送される。なお、両面印刷の場合、図1に示すような複雑な経路およびヘッドユニット10に到達するまでの十分に長い直線経路に沿って用紙が搬送されることにより、当該用紙のカールは、無くなっているか極少ない量になっている。
さらに、制御部40は、続く第2面の印刷時における第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率を5:5(等分かつ少し高め)にするように加熱制御を行う(ステップS24)。これは、ステップS23において第1加熱部31および第2加熱部32の総発熱を低めにした関係で、用紙の乾燥レベルが多少不足することを考慮したものであり、後述するステップS26も同様である。
すなわち、両面印刷を行う場合、制御部40は、用紙の第2面側(裏面に印刷された画像)を加熱する第1加熱部31と第1加熱部32の総加熱量(各々の熱量の総和)が、当該用紙の第1面側を加熱する際の第1加熱部31と第1加熱部32の総加熱量よりも多くなるように、加熱制御を行う。かかる制御を行うことにより、当該用紙は、最終的に必要十分な乾燥状態を確保することができる。
なお、第2面の定着等に関する用紙(普通紙または薄紙)の状態やカール補正に関する動作等は、ステップS5で説明した例と同様である。
そして、ステップS40において、制御部40は、当該加熱(すなわち定着およびカール補正)の処理が行われた用紙を排紙部4に排出する搬送制御を行う。
上述のような制御により、普通紙または薄紙を用いた両面印刷で、インク吐出量が比較的少ない印刷ジョブの場合に、インクの定着処理および記録媒体Sに対する適切なカール補正が行われる。
一方、制御部40は、インクの吐出量が所定値以上であると判定した場合(ステップS22、NO)、当該印字率(高カバレッジ)に起因して発生するカール量の増加に鑑みて、ステップS25に移行する。
ステップS25において、制御部40は、用紙の第1面の印刷時における第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率を3:5(第1加熱は弱めで第2加熱は普通)にするように加熱制御を行う。すなわち、ステップS6と比較して分かるように、両面印刷における第1面の印刷時には、片面印刷の場合と比較して、第1加熱部31および第2加熱部32の総加熱量を低めにする。このような制御とすることにより、両面印刷時の1面目の用紙の変形量を抑えることができる。
そして、制御部40は、続く第2面の印刷時における第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量を4:6(両方とも第1面の場合よりも強めにする)にするように加熱制御する(ステップS26)。
すなわち、上述したステップS23およびステップS24の場合と同様に、両面印刷を行う場合、用紙の第2面側(裏面に印刷された画像)を加熱する第1加熱部31と第2加熱部32の総加熱量(各々の熱量の総和)を、当該用紙の第1面側を加熱する際の第1加熱部31と第2加熱部32の総加熱量よりも多くする。
なお、第1面および第2面の画像形成および定着等に関する用紙(普通紙または薄紙)の状態やカール補正に関する動作等は、上述と同様である。
そして、ステップS40において、制御部40は、当該加熱(すなわち定着およびカール補正)の処理が行われた用紙を排紙部4に排出する搬送制御を行う。
上述のような制御により、普通紙または薄紙を用いた両面印刷で、インク吐出量が多い(印字率が高い)印刷ジョブの場合に、インクの定着処理および記録媒体Sに対する適切なカール補正が行われる。
一方、用紙が厚紙であると判定された後のステップS27において、制御部40は、用紙の第1面の印刷時における第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量を、上述したステップS31と同様に、8:2とする(第1加熱を強く第2加熱を弱くする)ように加熱制御を行う。
そして、制御部40は、続く第2面の印刷時における第1加熱部31と第2加熱部32との発熱量の比率も8:2とするように加熱制御を行う(ステップS28)。
なお、図7に示すフローでは、第1加熱部31および第2加熱部32の合計通電量に上限がある関係で、ステップS27およびステップS28の通電配分を同じにしている。
他の例として、合計通電量をより多く設定できるようなケースでは、制御部40は、用紙(厚紙)の第2面側(裏面に印刷された画像)を加熱する第1加熱部31と第1加熱部32の総加熱量(各々の熱量の総和)が、当該厚紙の第1面側を加熱する際の第1加熱部31と第1加熱部32の総加熱量よりも多くなるように、加熱制御を行うとよい。
なお、第1面および第2面の画像形成および定着等に関する用紙(普通紙または薄紙)の状態やカール補正に関する動作等は、上述と同様である。
そして、ステップS40において、制御部40は、当該加熱(すなわち定着およびカール補正)の処理が行われた用紙を排紙部4に排出する搬送制御を行う。
上述のような制御により、厚紙を用いた両面印刷を行う場合に、印字率に関わらず、画像形成された記録媒体Sに対する適切なカール補正が行われる。
このように、第1加熱部31および下流側の第2加熱部32とを備えた本実施の形態によれば、多様な印刷環境(画像形成条件)に対応して、画像が形成された記録媒体Sのカールを従来よりも効果的に抑制(補正ないし矯正)することができる。
なお、上述した実施の形態では、画像形成条件(種々の印刷環境)に応じて第1加熱部31および第2加熱部32の両方の出力(加熱量)を制御する構成とした。他の例として、画像形成条件(種々の印刷環境)に応じて、第1加熱部31または第2加熱部32のいずれか一方のみの出力(加熱量)を制御部40によって制御する構成としてもよい。
なお、いずれか一方のみの出力を制御する構成とする場合、制御部40は、記録媒体S上のインクを完全に乾燥させると同時に記録媒体Sのカール矯正を行う役割を主として担う第2加熱部32の出力(加熱量)を制御するとよい。
あるいは、記録媒体Sとして厚紙を使用する場合、制御部40は、第1加熱部31の出力(加熱量)のみを制御してもよい。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。