JP2021181971A - ウイルスの固相化蛍光計数法 - Google Patents

ウイルスの固相化蛍光計数法 Download PDF

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Abstract

【課題】検体中の不活化した抗原(ウイルス)又は抗体量を表面プラズモン励起増強の蛍光分光(SPFS)法を用いて蛍光計数する定量方法を提供する。【解決手段】検体中のウイルスまたは抗体の測定対象を定量する方法であって、1)固相化行程:不活化したウイルスまたはその抗体を、プラズモン金属錯体量子結晶とともに金属基板上にプラズモン金属錯体と金属基板との電位差で凝集させ、金属基板上に金属錯体量子結晶とともに固定し、ウイルスにまたは抗体を固相化する固相化工程と、2)蛍光標識化行程:抗原抗体反応より固相化したウイルス又は抗体を蛍光標識化する蛍光標識化工程と、3)標識蛍光励起工程:蛍光標識されたウイルス又は抗体に励起光を照射して表面プラズモン励起により蛍光標識化したウイルス又は抗体の点状蛍光画像を得る蛍光励起工程と、4)蛍光計数工程:その蛍光画像中の蛍光点または粒を二値化して計数定量する蛍光計数工程からなる。【選択図】図19A

Description

本発明は、ウイルス又はその抗体を量子結晶凝集法で固相化して表面プラズモン励起法で蛍光画面に現出する蛍光点計数で定量する新規な蛍光計数法に関する。
ウイルス検査は現在PCR法による遺伝子検査が主流である。鼻や喉の奥の粘液や痰を採取し、中に含まれる抗原ウイルスなどのタンパク質を調べる検査である。このPCR法は検体を採取し、その検体中に含まれる遺伝子を増幅し、特定の遺伝子配列と一致するか否かを検査する精度の高い方法である。しかしながら、この方法には、熟達した前処理技術と精巧な検査機器を必要とするとともに、検査に要する時間が約6時間以上となる。そのため、簡易迅速な遺伝子増幅法が望まれ、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法が提案されている。しかし、PCR法はあくまでも遺伝子の増幅を用いるから、迅速性が要求されるその場検査に適さない。しかもPCR法は陽性か陰性かの定性判断であって、定量性にかける欠点がある。
そこで、PCR法を補足する検査として、血清中のウイルス特異的抗体を検出するイムノクロマト法や酵素抗体法(ELISA)を利用した簡易迅速な血清学的診断法が提案されている。一般的な急性ウイルス感染症の場合、血中の抗体は、発症後1週間ほど経過した後に誘導される。そのためこの種、血清学的診断では、疾患の急性期および回復期の血中抗体価を測定し、抗体の推移を比較する必要がある。よって、発症後速やかに検査を実施し診断する必要がある急性ウイルス感染症の診断法には血清中の特異抗体検出法を取り入れることは比較的難しい。しかしながら、血清学的診断に必要な血液検体は、採取が比較的簡単で、検体採取時の医療従事者への二次感染リスクが比較的低い。さらに、イムノクロマト法によるウイルス特異抗体検出法は、目視判定による定性分析ができるため、特別な装置を必要とせず、外来・ベットサイドで迅速かつ簡便に検査することが可能であり、一刻も早い臨床現場への導入が求められている。
ただ、COVID−19の場合、現在のところ、発症6日後までのCOVID-19患者血清ではウイルス特異的抗体の検出は困難である。また、発症1週間後の血清でも検出率は2割程度にとどまることが明らかになった。さらに、抗体陽性率は経時的に上昇していき、発症13日以降になると、殆どの患者で血清中のIgG抗体は陽性となる一方、IgM抗体の検出率が低く、IgG抗体のみ陽性となる症例が多い。このことから、当該キットを用いたCOVID−19の血清学的診断には発症6日後までの血清と発症13日以降の血清のペア血清による評価が必要と考えられている。さらに、遺伝子増幅でない抗体検査法では非特異反応を否定できない場合があり、結果の解釈には、信頼性に欠け、複数の検査結果、臨床症状を総合的に判断した慎重な検討が必要であるとされる。
かかる現状では、ウイルスの検査には、遺伝子を増幅するPCR法に匹敵する精度と、イムノクロマト法と同等の簡易迅速検査が要求される。そこで、本発明者らはかかる二つの課題である、PCR法に匹敵する精度とイムノクロマト法と同等の簡易迅速検査が行える方法を実現するため、鋭意研究をおこなった。組織、細胞内の抗原を特異的に認識する抗体を用いてその抗原の分布を調べるに蛍光抗体法という方法がある。1次抗体、2次抗体を順次使用することにより、組織、細胞中の1次抗体の分布、すなわちそれが認識する抗原の分布を蛍光標識した二次抗体の分布として見るという方法である。しかしながら、この方法を組織、細胞の系外で利用するためには、患者から採取した検体中のウイルスを組織、細胞の系外で固相化しなければならない。また、時間をかけてウイルスを検体として固相化できたとしても、固相化した検体間に疑似検体が存在しやすく、これが非特異反応(測定対象以外の何らかの生体成分が測定試薬や採血管の添加物などの成分と異常反応を引き起こし、病態とかけ離れた測定値を示す現象をいう)を惹起し、測定精度を劣化させることを知った。
特願2020−74439号
KONIKAMINORUTA Report 2012
本発明は上記PCR法に匹敵する精度を備えると同時に、上記イムノクロマト法と同等の簡易迅速検査が行える方法および装置を実現することを課題とする。かかる課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果、表面プラズモンを励起増強するプラズモン金属錯体の量子結晶を凝集させる方法を利用すると、その量子結晶の凝集際、ウイルスを同時に凝集させ、量子結晶とともにウイルスが凝集分散して金属基板上に固相化される。そして、凝集させたプラズモン金属錯体の表面プラズモン増強作用により、標識したウイルスの抗体の蛍光が蛍光画像に点状または粒状に現れ、ウイルスの個数が点状蛍光数として計数できる(以下、蛍光計数法という)一方、該蛍光計数法では非特異反応が解消または軽減でき、精度が著しく向上することを見出した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、蛍光画像中の検体(ウイルス又はそれが人間又は動物体内の免疫機能で産生する抗体)を蛍光点又は粒で定量する新規な蛍光計数システムであって、不活化したウイルスまたはその抗体を、プラズモン金属錯体とともに金属基板上に電極電位差で凝集させ、金属基板上に金属錯体量子結晶とともに固定し、固相化する工程と、固相化したウイルスをまたは固相化した抗体を抗原抗体反応を利用して標識化する工程と、量子結晶の表面プラズモン励起作用で得られる蛍光画像中の蛍光点又は粒を二値化して所定の閾値以上の蛍光点又は粒をカウントして計数する工程からなることを特徴とする蛍光計数システムにある。本発明においては、量子結晶(50〜150nmのプラズモン金属錯体をいう。以下同じ)とともに抗体(通常緩衝液で希釈、以下同じ)を固相化(量子結晶凝集法で金属基板との電極電位差で金属基板上に凝集した状態)し、次いでウイルス抗原(通常エタノール等で不活化、緩衝液で希釈化する場合もある。以下同じ)と標識抗体(蛍光体で標識化され、通常緩衝液で希釈、以下同じ)とを混合して上記固相化基板に滴下する抗体と標識抗体とで抗原を挟み込むいわゆる抗原抗体反応を利用する1)サンドイッチ法だけでなく、ウイルス抗原を固相化し、次いで標識抗体で標識化するか、又は抗体を固相化し、次いで標識抗原(蛍光体で標識化したもので、抗原の一部を標識したものを含む。以下同じ)を標識化する2)直接法、並びにウイルス抗原を固相化し、次いで抗体および二次抗体を順に結合させて標識化するか、抗体を固相化し、次いでウイルス抗原を結合した後、最後に抗体および二次抗体を順に結合させて標識化する3)間接法が利用される。
本発明は、第1に、抗原抗体反応により捕捉されたウイルス又はその抗体と関連する標識蛍光分子を,同時に固相化したプラズモン金属錯体により効率よく表面プラズモン励起にすることにより蛍光増強するので、ウイルス等の検体を蛍光点数として定量することができる。これは従来の金膜極表面に誘起された局在場光により励起されるその蛍光シグナルを検出する、表面プラズモン励起増強蛍光分光(SPFS)免疫測定法(非特許文献1)とは違って、蛍光シグナルが蛍光顕微鏡で観測される蛍光画像中に点状または粒状に現れ、これを二値化して一定の閾値以上の蛍光点または粒をカウント(計数)すると、ウイルス数、抗体数と相関し、ウイルスや抗体の正確な定量が可能である。これは、蛍光強度を測定する従来法と異なり、正確な定量が可能であることを意味する。また、陽性か、陰性かの定性的PCR法とは違って病状の発症、進行、治癒の現状を知ることができる貴重な定量検査となる。また、免疫抗体を検査するイムノクロマト法と異なり、感染か否かをウイルス量の蛍光計数法による定量により、迅速にかつ正確に判断することができる。さらに、金膜極表面に誘起された局在場光により励起される固相化基板に比してマイクロ流路の必要もなく、非特異反応による蛍光シグナルの疑似性も解消される。
従来の蛍光分光(SPFS)法と本発明の蛍光計数法と異なる点は、前者が検体であるウイルス等が金薄膜上に有機分子で固相化に対し、後者ではプラズモン金属錯体量子結晶の凝集により形成され、一体化されたものかにあると思われる。検体の固相化技術は通常複雑であるとともに、この種の基板型の反応場であるSPFS測定は反応効率の点で不利であり,高効率な反応促進技術として、微小流路(マイクロ流路)が適用される。しかしながら、このマイクロ流路の利用が表面プラズモン励起増強蛍光分光(SPFS)法による測定を複雑で困難なものとしている。本発明ではプラズモン金属錯体の量子結晶の凝集によりウイルスの測定に必要な固相化を簡易迅速に達成することができる。即ち、反応場での抗体または抗原の固相化が容易で、しかも、マイクロ流路を使用せずとも再現性の高い表面プラズモン励起増強の蛍光分光(SPFS)が可能な新規な方法を提供できる(特許文献1)。
即ち、本発明者らは、かかる蛍光計数法がウイルスの検出において定量性に優れることを見出した。例えば、インフルエンザウイルスを、抗原抗体反応(サンドイッチ法)で蛍光分光を行う場合、従来の固相化と異なり、測定した画像が図6に示すように、ウイルスが有ると、量子結晶上の固相化した抗体と標識した抗体で挟み込み、粒状に多数の蛍光を発し、この粒状の蛍光がウイルスを挟み込んだ標識抗体の蛍光であり、一定の閾値以上の蛍光粒をカウントするとウイルス数と相関する一方(図6(a))、ウイルスがない場合は、粒状の多数の蛍光が現れないことを新たに見出した(図6(b))。そこで、本発明の詳細を検査するに、次の特徴を見出した。溶液中のプラズモン金属錯体が、電析基板電位の選択により、還元電位近傍の電極電位を有する金属基板上で金属錯体の量子結晶として凝集し(以後、量子結晶凝集法という)、その際、溶液中に抗原又は抗体が共存すると、金属錯体とともに基板又は粒子上に抗原又は抗体が凝集し、固相化したプラズモン反応場とする。そのため、従来の、プラズモン金属薄膜と異なり、100nm前後の金属錯体結晶が規則正しく配列し、一定の間隔をおいてその量子結晶間に抗原又は抗体が物理的又は化学的に固相化するため、マイクロ流路を形成することと同様の構造となり、表面プラズモン励起増強が可能となる。その結果、かかる表面プラズモン励起増強の蛍光分光(SPFS)方法において、蛍光顕微鏡で観測される粒状の蛍光個数をカウントして、ウイルスの有り無し、カウント数の多少により、ウイルス数の定量により、疾病を解析するのが有効である。
本発明では、表面プラズモン励起増強の蛍光分光(SPFS)方法において、蛍光顕微鏡で観測される画像検索に優れ、蛍光画像中の粒状の蛍光個数をカウントして、ウイルスの有り無し、カウント数の多少により、疾病を解析することができる新規な検体固相化蛍光計数法を提供する。
本発明では、量子結晶凝集法を用いてプラズモン金属錯体を抗体とともに固相化して表面プラズモン励起効果を備え、励起光の照射により、表面プラズモン励起して標識化した複合体の蛍光をその蛍光画像中に、粒状蛍光として観測可能で、粒状蛍光個数をウイルス量として検出可能な固相化基板を形成する。ここで、量子結晶凝集法とは溶液中のプラズモン金属錯体が、電析基板電位の選択により、還元電位近傍の電極電位を有する金属基板上で金属錯体の量子結晶として凝集し(以後、量子結晶凝集法という)、その際、溶液中に抗原又は抗体が共存すると、金属錯体とともに基板又は粒子上に抗原又は抗体が凝集し、固相化したプラズモン反応場とするもので、100nm前後の金属錯体結晶が規則正しく配列し、一定の間隔をおいてその量子結晶間に抗原又は抗体が物理的又は化学的に固相化する凝集法をいう(特開2016−197114号参照)。特に、本発明ではAg試薬(チオ硫酸銀水溶液を含む銀錯体水溶液:通常1000〜5000ppmのチオ硫酸銀水溶液でpH約5)だけでなく、これと不活化したウイルス又は抗体を含む緩衝液(通常リン酸緩衝液でpH7以上)とを混合して用いる。すると、混合液は通常中性域から弱アルカリ域に移行するとともに、緩衝作用により量子結晶と検体との金属基板上の凝集は分散傾向になるという特徴を有する。また、PCR検査の検体採取に使用されている咽頭拭い液は、市販のキット(拭い棒と培地入り容器)が使用されている。コパンUTMなどがその一例である。コパンUTMの液体培地には、HEPES緩衝液のほかショ糖やゼラチンなどが添加されており、ウイルス、 クラミジア、マイコプラズマ及びウレアプラズマの採取、保存、輸送に適する。また、サイトメガロウイルスや水痘様帯状疱疹ウイルスを含めた臨床ウイルスの凍結保護剤としても機能する。本検査法では、ヒトから採取した検体を不活化した後に測定を行う。その際、不活化液として通常、エタノールを使用するが、ウイルスをより安定に存在させるためにエタノールに緩衝液を混ぜて不活化を行うのが好ましい。具体的には70%エタノールへ緩衝液(リン酸緩衝液pH7.4)を混ぜて、50%エタノール溶液(緩衝液希釈)を作成してヒトから採取した検体を浸漬して不活化した後に、本検査法に用いて検出を行う。これにより、ヒトから採取した不活化した検体は緩衝液の働きによって、pHを一定に保つことが出来る。
また、本発明の他の方法では、プラズモン金属錯体の量子結晶凝集法を用いて抗原を固相化し、その抗原と抗体とを反応させて量子結晶間に間隙又はマイクロ流路を備える抗体固相化基板を形成し、さらに蛍光物質を用いて標識化した標識2次抗体を結合させるようにしても製造することができる。
また、本発明においては、金属基板に代えて金属粉体を使用してもよい。この場合、洗浄後、残る複合体又は標識2次抗体に励起光を照射して量子結晶を表面プラズモン励起して複合体又は2次標識抗体の蛍光を増強し、その蛍光画像を観測し、画像中の粒状蛍光の個数をカウントして検出する。
本発明においては、通常、蛍光標識を付けた抗体(1次抗体)で抗原を挟みこんで製造したが、標識を付けた抗体として蛍光標識を付けた1次抗体と蛍光標識を付けた2次抗体で抗原を補足し、蛍光を画像化して解析するようにすると、より蛍光画像を適切にかつ正確に獲得することができる。
本発明によれば、ウイルス抗原の蛍光強度でなく、ウイルス抗原の蛍光個数をウイルス濃度として計測することができる。しかも抗体又は抗原固相化基板を形成する量子結晶は量子結晶間にnmサイズの間隙又はマイクロ流路を備えるので、励起光により入射された光子と量子結晶を形成するプラズモン金属粒子の自由電子との間に相互作用が起こり、表面プラズモン励起して各複合体又は2次標識抗体の蛍光を増強するので、全体の蛍光強度でなく、その粒状の蛍光を再現性良くカウントして検出することができる。したがって、表面プラズモン励起増強蛍光分光(SPFS)法を用いて、2〜5分という短時間で迅速に検査することができるので、前処理が煩雑で、プライマーによって感度が鈍く、プロトコールが多く、検査まで時間がかかるというPCR検査に代わる精度の高い診断結果を提供できる。また、疾病の有り無しの判定だけでなく、カウント数はウイルス数に対応するので、疾病の軽重度の判定をすることができるので、画期的である。
本発明によれば、特定のウイルスに有効な体内で生成される抗体を捕捉する抗体検査方法を提供することができる。ここでは、1次抗体と蛍光標識を付けた2次抗体で抗原を捕捉して、1次抗体もしくは標識を付けた2次抗体を1次抗体もしくは標識を付けた1次抗体へ結合させると、蛍光がより強くなるので、標識2次抗体を加えることで、蛍光をより高感度で検出する事が可能になる。
(実施形態1)
検体中のウイルスまたは抗体の測定対象を定量する方法であって、1)不活化したウイルスまたはその抗体の固相化工程により固相化基板を作成する工程と、2)抗原抗体反応より固相化したウイルス又は抗体を蛍光標識化する標識化工程と、3)蛍光標識されたウイルス又は抗体に励起光を照射して表面プラズモン励起により蛍光標識化したウイルス又は抗体の点状蛍光画像を得る蛍光励起工程と、4)その蛍光画像中の少なくとも1視野測定での蛍光点または粒を二値化して所定閾値以上の蛍光点または粒を採択し、計数定量する蛍光計数工程からなる。蛍光点数は検体中のウイルスと相関関係を有する(図7、図8)。
(実施形態2)
前記固相化行程において、不活化したウイルスまたはその抗体を緩衝液中に採取し、1000ppm〜5000ppm、好ましくは1000〜3000ppmのプラズモン金属錯体水溶液と混合して中性となし、金属基板上に滴下する。検体中のウイルスは蛍光画像中に均一に分散固相化され、2以上の視野の平均値を出すまでもなく、1視野測定で正確な測定ができる(図16)。
(実施形態3)
検体中の固相化対象が、抗体を産生させるウイルス(不活化)またはその抗体であって、その検体中の濃度が10μg/ml以上で可能である。固相化基板の感度は固相化される抗体濃度の増加により向上する(図7)。
(実施形態4)
本発明における蛍光標識化は、サンドイッチ法が一般的であるが、ウイルス抗原を固相化し、次いで標識抗体で標識化するか、又は抗体を固相化し、次いで標識抗原(蛍光体で標識化したもので、抗原の一部を標識したものを含む。以下同じ)を標識化する2)直接法、またはウイルス抗原を固相化し、次いで抗体および二次抗体を順に結合させて標識化するか、抗体を固相化し、次いでウイルス抗原を結合した後、最後に抗体および二次抗体を順に結合させて標識化する3)間接法も使用可能である。ウイルス抗原は通常エタノール等で不活化し、緩衝液で希釈化するのが好ましい。標識抗体は蛍光体で標識化され、通常緩衝液で希釈されるのが好ましい。
(実施態様5)
金属基板上に抗原又は抗体とともに凝集した100nm前後のプラズモン金属錯体量子結晶凝集隗(図9−1)に対し、励起光を照射すると、量子結晶により表面プラズモン励起現象が起こり、量子結晶とともに固相化されたウイルス又はその抗体の蛍光標識は励起される。これにより非特異反応の少ない測定とともに、表面プラズモン励起により所定の閾値以上の輝度値を有する点状の蛍光個数が正確に得られ、これがウイルス又は抗体濃度と相関関係を有することになり、定量測定が可能となる(図11(b))。
(実施形態6)
本発明に係る蛍光計数工程では、1視野測定における定量が2以上視野測定の平均値と同等の結果が得られる。これにより、迅速な定量測定が可能となる(図16)。
(実施形態7)
前記固相化行程で、二種以上の別個のウイルスと抗原抗体反応で結合する抗体を固相化するとともに、前記標識化行程では別個の蛍光波長の標識抗体で標識化することにより、1測定で検体中にある2以上のウイルスに対する定量が可能となる(図19A及びB)。
(実施形態8)
実施形態7をインフルエンザとCovid−19ウイルスに適用すると、1測定で、ウイルスを区別して検出可能である(図19A及びB)。
本発明の第1法(サンドイッチ法)の工程(1)〜(4)からなる概要図である。 本発明の第1法において、金属基板の代わりに金属粉体を使った場合の工程(1)〜(3)からなる概要図である。 本発明の第1法において、金属基板の代わりに金属粉体を使った場合の工程(4)〜(5)からなる概要図である。 本発明の第2法(間接法)の工程(1)〜(4)からなる概要図である。 本発明の量子結晶基板の製造方法を示す工程図である。 本発明の第1法及び第2法の標識抗体として互いに結合可能な第1次標識抗体と第2次標識抗体を使うウイルス検出方法を示す概要図である。 インフルエンザウイルスがいる場合の蛍光画像(a)とインフルエンザウイルスがいない場合の蛍光画像(b)である。 インフルエンザウイルスの定量を本発明の蛍光カウント数で行う時のグラフである。 本発明の蛍光画像の解析方法を示す工程説明図である。 量子結晶固相化基板の2万5千倍SEM画像で、(a)はAg試薬(チオ硫酸銀水溶液)2000ppmとリン酸緩衝液使用時の固相化基板、(b)はAg試薬2000ppmとインフルエンザ抗体(50μg/ml)含有リン酸緩衝液使用時の固相化基板、(c)Ag試薬2000ppmとインフルエンザウイルス(50μg/ml)含有リン酸緩衝液使用時の固相化基板のそれぞれのSEM画像を示す。 各固相化基板の量子結晶状態及び成分分析結果を示すグラフで、Ag試薬(チオ硫酸銀水溶液)4000ppmとリン酸緩衝液使用時の固相化基板のSEM画像および成分分析グラフである。 Ag試薬4000ppmとインフルエンザ抗体(50μg/ml)含有リン酸緩衝液使用時の固相化基板のSEM画像および成分分析グラフである。 Ag試薬4000ppmとインフルエンザウイルス(50μg/ml)含有リン酸緩衝液使用時の固相化基板のSEM画像および成分分析グラフである。 インフルエンザ抗体固相化基板の作成方法を示すイメージ図(a)及び固相化基板の明視部画像(b)を示す 固相化基板の感度の試験工程図である。 FITCインフルエンザ抗体の各濃度と蛍光画像の蛍光点のカウント数の相関関係を示すグラフである。 インフルエンザ抗体の固相化と量子結晶濃度との関係を示すイメージ図である。 不活化したインフルエンザウイルス抗原を固相化し、本発明方法(直接法)で蛍光計数する方法の工程図である。 不活化したインフルエンザウイルス抗原を本発明方法(サンドイッチ法)で蛍光計数する方法を示す工程図である。 患者検体を用い、不活化したCovid−19ウイルスを本発明方法(サンドイッチ法)で蛍光計数する方法を示す工程図である。 本発明の量子結晶固相化蛍光計数法の解析法を示す概要図である。 本発明の不活化検体を使った第3法(直接法)の工程(1)〜(4)からなる概要図である。 本発明の第3法の工程(5)〜(7)からなる概要図である。 本発明の検体不活性採取キットを用いた採取工程(1)〜(3)からなる概要図である。 本発明の検体不活性採取キットを用いた採取工程(4)〜(6)からなる概要図である。 本発明のサンドイッチ法の2種類のウイルスを検出する場合の(1)固相化行程および(2)蛍光標識化行程前半からなる概要図である。 本発明のサンドイッチ法の2種類のウイルスを検出する場合の(3)蛍光標識化行程後半および(4)表面プラズモン励起工程からなる概要図である。
本発明では量子結晶凝集法を用い、所定の金属基板及び金属粉体上に、以下にあげる多様なものを用いて、簡便に固相化基板を作成することが出来る。
(量子結晶凝集反応)
固相化基板として銀錯体量子結晶を凝集する場合、凝集用基板として、銅及び銅合金基板、特にリン青銅基板を用いるのがよい。
本発明方法で用いるプラズモン金属量子結晶領域を有する基板をバイオチップという。その製造方法は、以下の通りである。
1)金属錯体水溶液を錯体を形成する金属より卑なる電極電位(イオン化傾向の大きい)金属基板上で電極電位差により化学還元して量子結晶(ナノサイズの金属錯体結晶)を凝集させる。銀錯体の場合、チオ硫酸銀水溶液を銀より卑なる電極電位(イオン化傾向の大きい)の銅または銅合金上で凝集させることにより銀錯体の量子結晶を電極電位差電析法を採用して形成している。詳しくは、金属錯体の水溶液中の濃度は主として形成する量子結晶のサイズを考慮して決定すべきであり、分散剤を使用するときはその濃度をも考慮するのがよく、通常、100ppmから1000ppmの範囲で使用できるが、抗原抗体反応に用いる抗原を含むウイルスまたはウイルスが免疫反応で産生させる抗体にも依存してナノクラスタというべき50〜150nmのナノサイズを調製するには500以上1000ppm、好ましくは1000以上5000ppm、好ましくは1000〜300ppmの量子結晶水溶液を用いるのが好ましい。また、本発明の抗原および抗体の固相化には固相化対象を不活化液および緩衝液と混合して量子結晶水溶液とともに凝集させるので、量子結晶水溶液からのみの凝集と異なり、量子結晶は固相化基板上に分散する傾向にある(図9−1(a),(b)及び(c)参照)
2)量子結晶を形成する金属錯体は担持金属の電極電位Eと相関する式(I)で示される錯体安定度定数(logβ)以上を有するように選択される。
式(I):E゜=(RT/|Z|F)ln(βi)
(ここでE゜は、標準電極電位、Rは、気体定数、Tは、絶対温度、Zは、イオン価、Fは、ファラデー定数を表す。)
ここで、金属錯体が、Au、Ag、PtまたはPdから選ばれるプラズモン金属の錯体である場合は、励起光に対して局在表面プラズモン共鳴増強効果を有する。特に、金属錯体が銀錯体であるときは、安定度定数(生成定数)(logβi)が8以上の銀錯化剤とハロゲン化銀との反応により形成されるのがよく、ハロゲン化銀としては塩化銀が好ましく、錯化剤としてはチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、チオ尿素、ヨウ化カリ、チオサリチル酸塩、チオシアヌル酸塩から選ばれる1種であるのが好ましい。銀錯体は平均直径が5〜20nmであるナノクラスタからなる量子ドットを有し、量子結晶のサイズが50〜150nmとなる。
(固相化濃度の検討その1)
量子結晶を用いた固相化技術において、量子結晶試薬(Ag試薬)の濃度は非常に重要である。そこで、固相化する量子結晶試薬の濃度を変えてBiotinを固相化し、Avidin-Biotin結合を用いてFITC標識が付与されたAvidinを蛍光顕微鏡で検出する。
FITC-Avidin VEC社 「FLUORESCEIN AVIDIN D」CatNo.A−2001
Biotin 和光社 「(+)−Biotin」CatNo.023−08711
量子結晶濃度を1000、2000、3000、4000、5000ppmの濃度で、Biotin(5μg/ml)を固相化した固相化基板を作成する(固相化時間1分間)。次にFITC-Avidin(5μg/ml)をBiotin固相化基板に滴下してAvidin-Biotin結合を用いてFITC標識が付与されたAvidinをキーエンス社蛍光顕微鏡「BZ-X710」で画像を測定し、得られた蛍光画像の平均輝度値を算出する(反応時間1分間)。その結果、1000ppm(画像の平均輝度値54)、2000ppm(69)、3000ppm(62)、4000ppm(59)、5000ppm(59)で、Biotinが多く固相化し、FITC-Avidinが最も結合したのは平均輝度が一番高い2000ppm(等量のBiotin添加後の濃度は1000ppm)だったと結論することができる。これはおそらく、量子結晶量が少ないと、固相化Biotin量も少なく、量子結晶量が沢山あると、固相化Biotinが埋没してしまい、FITC-Avidinの検出が少なくなったと考えられる。
なお、各量子結晶の測定に使用した機器は次の通りである。
使用機器
機器:キーエンス社蛍光顕微鏡BZ−X710
光源:メタルハライドランプ80W
蛍光フィルタ:BZ−XフィルタGFP(525±25)
解析ソフト:BZ−X Analyzer

(固相化濃度の検討その2)
次に、抗原抗体反応を用いたインフルエンザウイルスの検出においても量子結晶試薬の最適濃度の検討を行った。固相化する量子結晶濃度をかえてインフルエンザ抗体を固相化し、抗原抗体反応を用いてインフルエンザウイルスとFITC標識を付与したインフルエンザ抗体を蛍光顕微鏡で測定し、得られた蛍光画像から蛍光点をカウントした(抗原抗体反応―サンドイッチ法)。
インフルエンザ抗体:Hytest社「Monoclonal Mouse anti-influenza A haemogglutinin H1」CatNo.3AH1
インフルエンザウイルス:HyTest社「Influenza A(H1N1)virus」CatNo.IN73-3
FITCインフルエンザ抗体(ARP社「Anti−Influenza A virus(H1N1)FITC」)CatNo.12-6250-3
量子結晶濃度2000、4000、6000ppmの各濃度で等量のインフルエンザ抗体(100μg/ml)を緩衝液と混ぜて金属基板に滴下し、固相化基板を作成する(固相化時間1分間)。次に、不活化されているインフルエンザウイルス(10μg/ml)とFITC標識の付いたインフルエンザ抗体(25μg/ml)を混ぜて形成した複合体を固相化基板に滴下する(反応時間1分間)未結合の複合体やFITC抗体などは水や緩衝液で洗い流す。このチップをキーエンス社蛍光顕微鏡「BZ-X710」で測定し、得られた蛍光画像の所定の閾値以上の蛍光点をカウントする。その結果、Avidin-Biotin結合の場合と同様、量子結晶2000ppmでインフルエンザを固相化する場合(全体では1000ppm)が最もインフルエンザウイルスを含む複合体を多く検出することができた。量子結晶濃度でインフルエンザ抗体を固相化した場合の各濃度2000、4000、6000ppmでのイメージは図12に示す通りである。
量子結晶濃度(ppm)とカウント数
2000(228カウント)、4000(159カウント)、6000(47カウント)
測定条件:閾値62 ぼかしフィルタ無し ×10倍レンズの1視野測定(ここで、1視野測定とは図16に示すように、特願2019−234330号の場合と違ってチップの1部分のみを取得する方法をいい、測定時間の短縮につながる)。
使用機器
機器:キーエンス社蛍光顕微鏡BZ−X710
光源:メタルハライドランプ80W
蛍光フィルタ:BZ−XフィルタGFP(525±25)
解析ソフト:BZ−X Analyzer
(固相化基板の調整)
本発明の固相化基板は、量子結晶金属錯体水溶液の他に、固相化対象の抗原を含むウイルスおよび抗体を含む不活化液および/または緩衝液と混合して量子結晶の凝集に固相化する点で凝集作用は異なるが、基本的に、プラズモン金属錯体の量子結晶を製造する量子結晶凝集法(特開2016−197114号)を用いて抗体又は抗原を固相化することができる。そこで、本明細書では特開2016−197114号公報記載の方法が引用され、参照される。ただし、ウイルスおよびそれが産生する抗体は不活化液または緩衝液中に添加され、固相化のためにプラズモン金属錯体試薬(例えば、チオ硫酸銀水溶液)と混合されて固相化基板上に添加されて凝集する。量子結晶だけの場合と違って量子結晶による抗原および抗体の固相化の場合、緩衝液との相互作用、pHの変化の影響を受けると考えられる。
図9はチオ硫酸銀水溶液(Ag試薬)2000ppmに等量のリン酸緩衝液を混合したコントロール(図9−1(a))とし、リン酸緩衝液に抗体(インフルエンザ抗体:ARP社「Anti−Influenza A virus(H1N1)FITC」)CatNo.12-6250-3)および抗原(不活化インフルエンザ抗原:インフルエンザウイルス:HyTest社「Influenza A(H1N1)virus」CatNo.IN73-3)をそれぞれ50μg/mlとなるように加え、これにチオ硫酸銀水溶液(Ag試薬)2000ppmに等量混合した場合のSEM画像を(図9−1(a))と(図9−1(b))に示す。緩衝液を加えた場合は量子結晶が全体に拡散し、抗体および抗原がその量子結晶上に結合して固相化されることがわかる。かかる量子結晶の分散凝集が蛍光画像における蛍光点計数が可能な状況を作り上げると思われ、これにより、抗原および抗体が固相化した基板は標識されると、励起光の照射により、表面プラズモン励起して複合体の蛍光をその蛍光画像中に、粒状蛍光として観測可能での粒状蛍光個数をウイルス量として検出可能である。
なぜなら、図9−2、図9−3および図9−4に示す如く、リン青銅基板のCuおよびSn成分以外に各量子結晶ではAg成分の検出が見られ、量子結晶銀錯体により固相化が行われているのを確認できる。なお。抗体および抗原の検出はされない。
(インフルエンザ抗体固相化基板作成および感度)
上記チオ硫酸銀水溶液(Ag試薬)2000ppm(pH5.2)とインフルエンザ抗体(50μg/ml)の0.1
mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)との等量混合液(pH7.2)をリン青銅板上に添加すると、約1分間で固相化するので、金属基板上の残液をエアで吹き飛ばして抗体固相化基板を得た(図10(a))。図10(b)はその固相化基板の明視部画像である。
上記量子結晶凝集法を用いて濃度を変えたFITC標識の付いたインフルエンザ抗体を固相化して抗体固相化基板を作成し、得られたそれぞれの蛍光画像の蛍光点をカウントした。FITCインフルエンザ抗体(ARP社「Anti−Influenza A virus(H1N1)FITC」)CatNo.12-6250-3)を用いた。
2000ppmのチオ硫酸銀水溶液(Ag試薬)に、上記抗体(250、125、62.5、31.25μg/ml)を等量混合し、基板上に滴下し、各種固相化基板を作成する(図11(a))。所要時間は約1分である。この固相化基板を図11(b)に示すように蛍光顕微鏡(キーエンス社BZ−X710)でその蛍光感度を所定閾値以上の蛍光点をカウントした。その結果、本発明の固相化基板は濃度依存的にカウント数が増えることが分かった。即ち、本発明に係る固相化基板は抗体が定量的に固相化されており、図12に示すように定量化される。したがって、本発明によれば、定量的に抗原および抗体が定量的に固相化することができることがわかる。
(ウイルスの固相化その1)
図13にインフルエンザウイルスの直接法の検査工程を示す(不活化したインフルエンザウイルスの固相化)
量子結晶凝集法を用いて不活化したインフルエンザウイルスを固相化した基板へ、FITC標識のついたインフルエンザ抗体滴下して得られた蛍光画像から蛍光点をカウントする(これを抗原抗体反応を用いた直接法という)。
インフルエンザウイルス:HyTest社「Influenza A(H1N1)virus」CatNo.IN73-3
FITCインフルエンザ抗体(ARP社「Anti−Influenza A virus(H1N1)FITC」)CatNo.12-6250-3
上記チオ硫酸銀水溶液(Ag試薬)2000ppmと前期インフルエンザウイルス(50μg/ml)リン酸緩衝液との等量混合液(pH7.4)をリン青銅板上に添加してウイルス固相化基板を作成する(約1分間で固相化する)。比較のため、ウイルスのない緩衝液を量子結晶Ag試薬と混ぜて固相化基板を形成する。次に、FITC標識の付いたインフルエンザ抗体(25μg/ml)を上記2つの固相化基板に滴下する(反応時間はわずか1分間)。未結合の複合体やFITC抗体などを水や緩衝液で洗い流す。金属基板上の残液をエアで吹き飛ばして抗体固相化基板を得た(図10(a))。図10(b)はその固相化基板の蛍光画像である。
(抗体の固相化その1)
図14にインフルエンザウイルスのサンドイッチ法の検査工程を示す(インフルエンザ抗体の固相化)
インフルエンザ抗体を量子結晶凝集法を用いて固相化した基板へ、FITC標識のついたインフルエンザ抗体と不活化したインフルエンザウイルスを複合化し、これを滴下して抗原抗体反応で得られた蛍光画像から蛍光点をカウントする。
インフルエンザ抗体:Hytest社「Monoclonal Mouse anti-influenza A haemogglutinin H1」CatNo.3AH1
インフルエンザウイルス:HyTest社「Influenza A(H1N1)virus」CatNo.IN73-3
FITCインフルエンザ抗体(ARP社「Anti−Influenza A virus(H1N1)FITC」)CatNo.12-6250-3
上記チオ硫酸銀水溶液(Ag試薬)2000ppmとインフルエンザ抗体(50μg/ml)リン酸緩衝液との等量混合液(pH7.2)をリン青銅板上に添加して抗体固相化基板を作成する(約1分間で固相化する)。次に、FITC標識の付いたインフルエンザ抗体(25μg/ml)とインフルエンザウイルスを混合して複合体を形成し、これを固相化基板に滴下する(反応時間はわずか1分間)。未結合の複合体やFITC抗体などを水や緩衝液で洗い流す。この測定チップを、キーエンス社蛍光顕微鏡「BZ−X710」で測定し、得られた蛍光画像の所定の閾値以上の蛍光点をカウントする。測定条件および使用機器はウイルスの固相化と同じである。
(抗体の固相化その2)
図15に検査工程を示す。量子結晶を用いてCOVID−19抗体を固相化した基板へ不活化したCOVID−19患者検体とFITC標識を付けたCOVID−19抗体の複合体を滴下して得られた蛍光画像から蛍光点をカウントする。
COVID−19抗体:GeneTex社「SARS−COV−2 spike antibody」 CatNo.GTX135356
FITC標識のCOVID−19抗体:GeneTex社「SARS−COV−2 spike antibody」 CatNo.GTX135356にFITC標識をつけたもの(標識率8.64)
2000ppmの量子結晶試薬(チオ硫酸Ag)へCOVID−19抗体(50μg/ml)を等量混ぜてリン青銅基板上に滴下して抗体固相化基板を作成する。次に、COVID−19患者から得た咽頭拭い液を70%エタノールで不活化し、FITC標識のCOVID−19抗体(34.5μg/ml)を混ぜて形成した複合体を固相化基板に滴下する。未結合の複合体やFITC]抗体などは水や緩衝液で洗い流す。
この測定チップを、キーエンス社蛍光顕微鏡「BZ−X710」で測定し、得られた蛍光画像の所定の閾値以上の蛍光点をカウントする。測定条件および使用機器はウイルスの固相化その1と同じである。
その結果、COVID−19患者2名の咽頭拭い液から採取した2検体ともウイルスを検出した。カウント数は患者の症状を表していた。なお、ブランクは70%エタノールを使用した。結果はブランク:カウント数8(相対値0)、検体1:カウント数16(相対値8)、検体2:カウント数51(相対値43)を示した。なお、相対値はブランクのカウント数を0とした際のカウント数である。
検体が唾液であっても、カウント数はやや低いが同様の結果を示す。
(量子結晶の製造)
チオ硫酸銀2000又は4000ppm水溶液を調製し、その1滴をりん青銅板上に滴下し、約1分間放置し、溶液を吹き飛ばすと、SEM像でみると、量子結晶が作成されていた。実施例1で製造したナノ粒子凝集体(量子結晶)の各種SEM像を示す写真では、100nm前後の薄い六角柱状結晶であって、表面に数nmオーダの凹凸が発現している。金属ナノ結晶に特有のファセットは確認できなかった。りん青銅坂上に滴下後の放置時間と量子結晶形状の相関関係を示す。まず、六角形の量子結晶が生成し、形状を維持しつつ成長するのが認められ、量子結晶のEDSスペクトル(元素分析)の結果を示すグラフでは、りん青銅板上に形成された結晶は銀及び錯体配位子由来の元素を検出したが、銅板上にチオ硫酸銀1000ppm水溶液を調製し、その1滴を滴下し、約3分間放置し、溶液を吹き飛ばした場合は、銀のみを検出したに過ぎなかった。
(量子結晶凝集理論)
量子結晶は2000又は4000ppmチオ硫酸銀錯体水溶液の場合、りん青銅板上に滴下して1分間放置すると、100nm前後の六角柱状に形成され、各六角柱状の量子結晶は数nmオーダの凹凸を持つことがSEM像から確認されたが、金属ナノ結晶に特有のファセットは確認できず、EDS元素分析で銀及び錯体配位子由来の元素を検出されたため、全体は銀錯体のナノ結晶であって、その表面に現れる凹凸は錯体中の銀がクラスタとして量子ドットを形成して広がっていると推測される。本発明の銀錯体量子結晶がりん青銅板上に形成される一方、銅基板上には銀のみのナノ粒子が析出する現象を見ると、チオ硫酸銀錯体の平衡電位が0.33で銅の電極電位(0.34)と同等であるため、銅基板上には銀(0.80)のみが析出し、りん青銅の場合は0.22と電極電位がわずかに卑であるため、銀錯体の結晶が析出したものと思われる。したがって、量子結晶を作成するためには1)錯体水溶液が500〜2000ppmという希薄な領域であること、2)金属錯体水溶液の平衡電位に対し担持金属の電極電位がわずかに卑であること、3)電極電位差で金属錯体が凝集させることが重要であるが、抗原抗体の固相化にはそれより濃度の高い2000ppm以上のチオ硫酸Ag量子結晶試薬を使用するのが望ましいことが分かった。
基板はサンドペーパーで磨いて表面酸化被膜を物理的に除去し、その上にチオ硫酸銀溶液を滴下して量子結晶の凝集作用で固相化基板を形成することができる。基板表面物理状態が量子結晶の形成状態に影響を与え、測定値に影響を与える場合がある。そこで、量子結晶形成領域を一定にすべく、図4に示すように、1)リン青銅版の基板液滴下領域に円形溝加工(エッチング加工)を施し、2)その領域内をそのまま使用するもしくはサンドペーパー研磨、電解研磨、化学研磨を施し、3)Ag試薬液(2000〜4000ppmチオ硫酸銀溶液)を滴下して表面張力で円形溝内に液溜めし、4)その後除去して量子結晶の凝集状態を確保する。凝集状態を観測し、測定結果のばらつきを検査した結果、そのまま使用、電解研磨、化学研磨、サンドペーパー研磨で測定結果のばらつきがあることがわかった。
(固相化の対象)
固相化の対象は人間や動物の免疫機能により抗体を産生させるウイルスであるウイルス、細菌、真菌等だけでなく、重金属およびたんぱくを含む。また、かかるウイルスにより産生される抗体を含む。
抗体としては、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ヒト等の動物種のIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類のクラスのモノクローナル抗体やウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ラット、マウス、ニワトリ等の動物種のIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類のクラスを含むポリクローナル抗体や免疫グロブリン等の抗体、Fc領域やFab領域や重鎖や軽鎖や抗原結合部位やヒンジ部等の断片化した抗体の一部、リコンビナントされた抗体や断片化した一部、ヒトBリンパ球にウイルス(EBV等)を感染させ増殖させて抗体遺伝子をクローニングして得られたヒト抗体を含む。
ウイルスとしては、コロナウイルスやインフルエンザウイルスや鳥インフルエンザウイルスやアデノウイルス等の動物に感染する動物ウイルスやタバコモザイクウイルス等の植物に感染する植物ウイルスやバクテリオファージ等の細菌に感染する細菌ウイルス等のウイルス、また、ウイルスの表面にあるスパイクやウイルスのヌクレオカプシド等の断片化したウイルスの一部、また、リコンビナントされたウイルスや断片化した一部を含む。
本発明においては、ヒトや動物から採取する検体及び不活化したウイルスや断片化した一部を含む検体を固相化対象として含み、咽頭拭い液、唾液、血液、尿等のヒトや動物から採取する体液を検体として含む。
(固相化基板の実施例1)
量子結晶と、アビジンと結合能を有しているビオチンを固相化する実施例を挙げる。
量子結晶を作成するAg試薬(1000ppm、20μl)とビオチン(5μg/ml、20μl)を混ぜた液を作成しリン青銅板へ滴下し、基板上に精製される量子結晶へビオチンが固相化される。
次に、ビオチンと結合能を有しているFITC蛍光標識を付与したアビジンをビオチン固相化基板へ滴下する。すると、ビオチンとFITC蛍光標識を付与したアビジンが結合し、蛍光顕微鏡で観察すると粒上のFITCの蛍光が観察される。量子結晶とビオチンを混ぜて滴下することで、量子結晶にビオチンが固相化された固相化基板が出来ることが分かる。このことから、量子結晶基板には分子化合物等を固相化出来ることが分かった。
(Ag試薬は500ppm~10000ppmの範囲を持ち、固相化するビオチンは1pg/ml〜1g/mlの範囲を持つ)
(固相化基板の実施例2)
量子結晶を作成するAg試薬(2000ppm、12.5μl)とヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体(25μg/ml、12.5μl)を等量混ぜた液を作成しリン青銅板へ滴下し、基板上に精製される量子結晶へヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体を固相化する。次に、ヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体と抗原抗体反応で結合するH1N1インフルエンザウイルスとFITC標識を付与したH1N1インフルエンザウイルス抗体の複合体を、ヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体固相化基板へ滴下する。すると、固相化基板の固相化された抗体へインフルエンザウイルスとFITC標識抗体の複合体が結合し、蛍光顕微鏡で観察すると粒上のFITCの蛍光が観察された。その結果、量子結晶とヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体を混ぜて滴下することで、量子結晶にヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体が固相化された固相化基板が出来ていることが分かった。このことから、量子結晶基板には抗体等を固相化出来ることが分かった。(Ag試薬は500ppm~10000ppmの範囲を持ち、固相化するヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体は1pg/ml〜1g/mlの範囲を持つ)
(固相化基板の実施例3)
今度は、量子結晶を作成するAg試薬(4000ppm、12.5μl)とヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体(100μg/ml、12.5μl)を等量混ぜた液を作成しリン青銅板へ滴下し、基板上に精製される量子結晶へヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体を固相化する。
次に、ヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体と抗原抗体反応で結合するH1N1インフルエンザウイルス( 100μg/ml、5μl )とFITC標識を付与したH1N1インフルエンザウイルス抗体(50μg/ml、5μl)の複合体を、ヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体固相化基板へ滴下する。固相化基板の固相化された抗体へインフルエンザウイルスとFITC標識抗体の複合体が結合し、蛍光顕微鏡で観察すると下の画像のように粒上のFITCの蛍光が観察された。
使用機器は以下の通りである。
機器:キーエンス社 蛍光顕微鏡BZ-X710
光源:メタルハライドランプ80W
蛍光フィルタ:BZ-Xフィルタ GFP (525±25)
解析ソフト:BZ-X Analyzer
(蛍光画像の解析方法)
図8(1)から(3)に示すように蛍光画像を解析した。
工程(1)は画像取得工程で、測定により得られた蛍光画像を、画像解析ソフト「BZ-X Analyzer」に取り込み解析を行う(蛍光が丸い粒のように観察される)。ここでは図16に示すように、対物10倍レンズ1枚だけを撮影し(1視野測定)、2値化して計数(カウント)すると撮影時間は3.5秒と早くなるが、複数の画像を撮影してもよい。
工程(2)は二値化工程で、蛍光画像の全ての範囲を対象に、設定した輝度値以上の蛍光の粒を全て抽出して、二値化する(赤い粒が設定した輝度値以上の抽出された蛍光の粒)。
工程(3)はカウント工程で、抽出された設定した輝度値以上の蛍光の粒をカウントする(赤い粒(破線部)の蛍光のみの数を算出する)。
「蛍光画像取得工程」
ここでは、上記プラズモン金属ナノ結晶基板上に捕捉された断片化DNAに励起光を照射して、捕捉断片化DNAの自家蛍光を表面プラズモン増強効果により増強し、蛍光コロニーを蛍光画像として取得する技術を参考にすることができる(特願2019−234330号の蛍光計測法参照)。
(実施例4)
また、同様に量子結晶を作成するAg試薬(2000ppm、5μl)とFITC標識を付与したH1N1インフルエンザウイルス抗体(250μg/ml、5μl)を混ぜた液を作成しリン青銅板へ滴下し、基板上に精製される量子結晶へFITC標識を付与したH1N1インフルエンザウイルス抗体を固相化する。この固相化基板を蛍光顕微鏡で観察すると粒上のFITCの蛍光が観察された。このことから、量子結晶基板にはFITC等の蛍光標識を固相化することが出来る。(Ag試薬は500ppm~10000ppmの範囲を持ち、FITC標識を付与したH1N1インフルエンザウイルス抗体は1pg/ml〜1g/mlの範囲を持つ)
(測定例1)
本発明は患者のウイルスの検出に表面プラズモン励起増強蛍光分光(SPFS)法を適用するものであり、ウイルス抗原の存在する咽頭拭い液、唾液、尿、糞便を用いる。図1は工程(1)〜(4)からなる方法である。工程(1)では量子結晶凝集法を利用して抗体固相化基板を作成する。詳しくはウイルス抗体を緩衝液(pH7.4のリン酸緩衝液)に添加し、固相化抗体液を作成する。これに、等量の1000〜10000、好ましくは2000〜4000ppm濃度のプラズモン金属錯体水溶液中に添加し、プラズモン金属錯体とウイルス抗体との複合水溶液を調整し、ウイルス抗体を含むプラズモン金属錯体溶液をプラズモン金属錯体の還元電位近傍の電極電位を有する金属基板上に滴下して抗体が結合したプラズモン金属錯体量子結晶を凝集させてウイルス抗体を固相化したウイルス抗体固相化基板を用意する。ここで、プラズモン金属としてパラジウム、プラチナ、金、銀、及び銅から選ばれる一種が選択され、プラズモン金属錯体の酸化還元電位近傍の電極電位を有する金属基板が選択され、チオ硫酸銀錯体の量子結晶を利用するときは基板として銅又は銅合金、特にリン青銅が選択される。
ここで、抗体としては、インフルエンザウイルス抗体として、ウイルス抗原やハイブリドーマから作成されるラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ヒトなどの動物種のIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類のクラスのモノクローナル抗体又はウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ラット、マウス、ニワトリなどの動物種のIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類のクラスを含むポリクローナル抗体や免グロブリン等の抗体、Fc領域やFab領域や重鎖や軽鎖や抗原結合部位やヒンジ部等の断片化した抗体の一部、リコンビナントされた抗体や断片化した一部、ヒトBリンパ球にウイルス(EBV等)を感染させ増殖させて抗体遺伝子をクローニングして得られたヒト抗体を含む。コロナウイルス抗体として、ウイルス抗原やハイブリドーマから作成されるラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ヒトなどの動物種のIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類のクラスのモノクローナル抗体又はウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ラット、マウス、ニワトリなどの動物種のIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類のクラスを含むポリクローナル抗体や免グロブリン等の抗体、Fc領域やFab領域や重鎖や軽鎖や抗原結合部位やヒンジ部等の断片化した抗体の一部、リコンビナントされた抗体や断片化した一部、ヒトBリンパ球にウイルス(EBV等)を感染させ増殖させて抗体遺伝子をクローニングして得られたヒト抗体を挙げることができる。
工程(2)では抗原抗体反応を利用して蛍光物質で標識化したウイルス抗体と検体中のウイルス抗原との複合体を形成する。ここで、検体としては、咽頭拭い液、唾液、尿、糞便が対象となる。ウイルス抗体を標識化する蛍光物質として、Pacific Blueなどの励起光400nm〜436nmやFITCなどの励起光453〜505nmやTRITCなどの励起光485〜566nmやAPCなどの励起光488〜706nmやIRDye800などの励起光732〜784nmの蛍光物質を挙げることができる。
行程(3)では抗原抗体反応を利用して上記複合体を上記抗体固相化基板に滴下し、基板上の抗体に複合体を結合させ、純水や緩衝液等で未結合の複合体及び抗体を洗浄する。ここで、緩衝液として中性域のリン酸緩衝液を使用したが、PBS、HEPES、TRIS、BIS-TRIS、CAPS、CAPSO、Glycylglycine、MES、MOPS、PIPESなどを利用する。
工程(4)では、基板上に残る、標識化した抗体と抗原との複合体に励起光を照射し、表面プラズモン励起により、その蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウントする。蛍光画像中のある閾値以上の蛍光の粒を二値化してカウントするには同一出願人の特願2019−234330号の蛍光計測法を利用することができるので、かかる蛍光計測法をここに引用し、参照する。本発明では図16に示す1視野測定条件:閾値62 ぼかしフィルタ無し ×10倍レンズの1視野測定(ここで、1視野測定とは図16に示すように、特願2019−234330号の場合と違ってチップの1部分のみを取得する方法をいう。本発明に係る固相化基板を使用したときの1視野測定は2以上の1視野測定の平均値をほぼ同等であるため、平均値を採用することなく、1視野測定の結果を使用できることが見出されている。量子結晶により抗原又は抗体の固相化がほぼ均一に形成されていることを物語っている)。
上記実施例では抗体を固相化した基板を使用したが、同種の金属粉体を使用することにより液中での抗原抗体反応を利用してウイルス抗原を検出することができる。
ウイルス抗原の存在する咽頭拭い液、唾液、尿、糞便を用い、図2では工程(1)〜(5)からなる。工程(1)では量子結晶凝集法を利用して抗体固相化金属粉体を作成する。詳しくはウイルス抗体を500〜10000ppm濃度のプラズモン金属錯体水液中に添加するとともに、ここに担体金属粉体を添加して混合する。ウイルス抗体とともにプラズモン金属錯体はプラズモン金属錯体の還元電位近傍の電極電位を有する金属粉体と凝集し、ウイルス抗体とプラズモン金属錯体と担体金属粉体とが一体となったウイルス抗体固相化金属粉体を形成する。
他方、工程(2)では第1抗原抗体反応を利用して蛍光物質で標識化したウイルス抗体と検体中のウイルス抗原との複合体を形成する。ここで、検体および蛍光物質は第1法と同じである。
次いで、工程(3)では上記複合体を上記抗体固相化粉体液中に添加し、第2抗原抗体反応を利用し、抗体固相化粉体と上記複合体を結合させる。
工程(4)では、抗体固相化粉体と複合体との合体物をろ過し、これを純水や緩衝液等で未結合の複合体及び抗体を洗浄する。
最後に、工程(5)では、基板上に残る、標識化した抗体と抗原との複合体に励起光を照射し、表面プラズモン励起により、その蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウントする。
本発明の第2法では、ウイルス抗原やその一部(感染性のない抗原の一部、例えば、ウイルスの表面にあるスパイクやウイルスのヌクレオカプシド等の断片化したウイルスの一部)を固相化し、体内で生成される抗体を捕捉する方法であり、図3に示すように、プラズモン金属錯体の量子結晶凝集法を用いて抗原やその一部を固相化した後その抗原やその一部と抗体とを反応させて量子結晶間に間隙又はマイクロ流路を備える抗原やその一部固相化基板を形成する一方、蛍光物質を用いて標識化した抗体を前記抗原やその一部固相化基板に滴下して両者を結合させ、未結合標識抗体を洗浄後、基板に残る標識抗体に励起光を照射して量子結晶を表面プラズモン励起して標識抗体の蛍光を増強し、その蛍光を検出する方法である。プラズモン金属錯体の量子結晶凝集法を用いて抗原やその一部を固相化した後その抗原やその一部と抗体とを反応させて量子結晶間に間隙又はマイクロ流路を備える抗原やその一部固相化基板を形成する一方、蛍光物質を用いて標識化した標識抗体を前記抗原やその一部固相化基板に滴下して両者を結合させ、未結合標識抗体を洗浄後、基板に残る標識抗体に励起光を照射して量子結晶を表面プラズモン励起してその蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウント検出する方法である。すなわち、工程(1)では量子結晶凝集法を利用して抗原やその一部固相化基板を作成する。詳しくはウイルス抗原やその一部を500〜10000ppm濃度のプラズモン金属錯体水溶液中に添加する。ここで、ウイルス抗原やその一部として咽頭拭い液、唾液、尿、糞便や感染性のない抗原の一部を用いる。
ウイルス抗原やその一部の処理はオートクレーブ(121℃15分以上の高圧蒸気滅菌)や0.01%以上の次亜塩素酸Na浸漬1時間以上や4%ホルムアルデヒド液浸漬や70%エタノール浸漬などを参考とすることができる。
プラズモン金属錯体とウイルス抗原やその一部との複合水溶液を調整し、ウイルス抗原やその一部を含むプラズモン金属錯体溶液をプラズモン金属錯体の還元電位近傍の電極電位を有する金属基板上に滴下して抗原やその一部が結合したプラズモン金属錯体量子結晶を凝集させてウイルス抗原やその一部を固相化したウイルス抗原やその一部固相化基板を用意する。
次いで、工程(2)では第1抗原抗体反応を利用して固相化した抗原やその一部と血中のウイルス抗体との複合体を形成する。ここで、ウイルス抗体を含む検体としては、血液、血清、血漿を用いる。
工程(3)では標識抗体を用意し、第2抗原抗体反応を利用して抗原抗体固相化基板に滴下し、基板上の抗体に複合体を結合させ、純水や緩衝液等で未結合の標識抗体を洗浄する。
ただし、工程(2)の検体と工程(3)の標識抗体をあらかじめ混ぜて行うこともできる。
工程(4)では、基板上に残る、標識化した抗体と抗原との複合体に励起光を照射し、表面プラズモン励起により、その蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウント検出する。
上記サンドイッチ法において、標識した抗体として、互いに結合可能な第1次標識抗体と第2次標識抗体とを同時に使用し、蛍光強度を増強させる。図4の方法は本発明の第1の方法(1)から(4)の工程において互いに結合可能な第1次標識抗体と第2次標識抗体とを同時に用いる。
工程(1)では量子結晶凝集法を利用して抗体固相化基板を作成する。図17の工程(1)と同様である。
工程(2)では抗原抗体反応を利用して蛍光物質で標識化したウイルス抗体として第1次標識抗体と第2次標識抗体とを同時に用い、検体中のウイルス抗原との複合体を形成する。
または第1次標識抗体を結合させた後に第2次標識抗体を結合させてもよい。
ここで、検体としては、咽頭拭い液、唾液、尿、糞便が対象となる。ウイルス抗体を標識化する蛍光物質として、Pacific Blueなどの励起光400nm〜436nmやFITCなどの励起光453〜505nmやTRITCなどの励起光485〜566nmやAPCなどの励起光488〜706nmやIRDye800などの励起光732〜784nmの蛍光物質を挙げることができる。
第1次標識抗体と第2次標識抗体の組み合わせとして
第1次標識抗体の元となる動物種を認識する第2次標識抗体を組み合わせる。例えば、マウス由来の第1次標識抗体を使用する場合は、マウス抗体を認識する第2次標識抗体を使用し、他の動物種でも同様に組み合わせる。
工程(3)では抗原抗体反応を利用して上記複合体を上記抗体固相化基板に滴下し、基板上の抗体に複合体を結合させ、純水や緩衝液等で未結合の複合体及び抗体を洗浄する。ここで、緩衝液としてPBS、HEPES、TRIS、BIS-TRIS、CAPS、CAPSO、Glycylglycine、MES、MOPS、PIPESなどを利用する。
工程(4)では、基板上に残る、標識化した抗体と抗原との複合体に励起光を照射し、表面プラズモン励起により、その蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウントする。
(インフルエンザウイルスの抗原抗体反応による実測)
量子結晶の元となるAg試薬(500〜10000ppm)とインフルエンザ抗体(5〜1000μg/ml)を等量混合し、混合した液をリン青銅板上へ滴下し、量子結晶と抗体をリン青銅板上へ固相化する。
次いで、インフルエンザウイルス(5〜1000μg/ml)とFITC標識を付けたインフルエンザ抗体(5〜1000μg/ml)を等量混合し、さきほどの量子結晶基板へ滴下する。
試薬例として
・インフルエンザ抗体 HyTest社 Monoclonal mouse anti-Influenza A haemagglutinin H1
・インフルエンザウイルス HyTest社 Influenza A (H1N1) Virus
・FITCインフルエンザ抗体 IBL社 Anti-Influenza A Virus(H1N1) FITCを用いた。

余剰のFITC標識を付けたインフルエンザ抗体を純水などで洗浄し、光源(メタルハライドランプ80W)からの光を照射して蛍光顕微鏡(キーエンス社蛍光顕微鏡BZ-X710)
を用いて測定する。蛍光顕微鏡で画像を観察し、BZ-X Analyerで解析した。図6(a)に示す通りである。これに比べ、インフルエンザ抗原の含まない場合は図6(b)に示す通りである。表面プラズモン励起してその蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウント検出する。
ウイルスが有ると、量子結晶上の固相化した抗体と標識した抗体で挟み込み、粒状に多数の蛍光を発し、この粒状の蛍光がウイルスを挟み込んだ標識抗体の蛍光である一方(図6(a))、ウイルスがない場合は、粒状の多数の蛍光が現れないことを観測した(図6(b))。
インフルエンザ抗体(25μg/ml)とFITCインフルエンザ抗体(25μg/ml)でキーエンスBZ−X710 対物レンズ×10倍でウイルス(Virus)濃度と蛍光画像中の蛍光の粒の輝度値57以上を解析ソフト(BZ−X)を使用して二値化してカウントすると図7に示す表の結果を得た。これを直線化したのが、図7のグラフである。得られた画像からカウント数とウイルス濃度が相対関係にあることがわかる。
(現場採取検体の検査)
本発明は、入国審査、病院診断時にその場で迅速にウイルス検査を行う方法に適するもので、ヒトから採取した検体(咽頭拭い液、唾液、痰、鼻咽頭液、尿等)中の抗原を不活化弱毒化を含む場合もある。以下同じ)した後、その不活化した抗原を量子結晶凝集法で基板上に固相化し、固相化した抗原に標識を付けた抗体を抗原抗体反応で結合させて標識化した後、未結合の標識抗体を緩衝液や純水で洗浄し、抗体の標識(蛍光物質)に会う励起光を光源から照射し、蛍光顕微鏡で基板上の蛍光粒をカウントすることを特徴とする。ここで、量子結晶凝集法とは量子結晶凝集法とは特開2016−197114号に示すプラズモン金属錯体の量子結晶を製造する凝集法をいい、溶液中のプラズモン金属錯体が、電析基板電位の選択により、還元電位近傍の電極電位を有する金属基板上で金属錯体の量子結晶として凝集する方法をいう。この場合、予め量子結晶凝集法で抗体を固相化した基板上に、採取した検体中の抗原を不活化して抗原抗体反応で基板に結合させ、これを標識化した抗体で標識を抗原抗体反応で結合させて標識化した後、未結合の標識抗体を緩衝液や純水で洗浄し、抗体の標識(蛍光物質)に会う励起光を光源から照射し、蛍光顕微鏡で基板上の蛍光粒をカウントするようにしてもよい。
本発明において、検体中の、不活化の対象のウイルスは、基本的に核酸のDNAかRNAのどちらか一方とそれを保護する殻蛋白(カプシド)から構成され、脂質を含むエンベロープと呼ばれる膜で包まれている場合とエンベロープを持たない小型球形ウイルスに分類される。したがって、薬剤による不活化を受けやすいか否かの違いはエンベロープを有しているかどうかにより異なるが、一般にエンベロープを有するウイルスは消毒薬に対し感性であるので、薬剤の使用が好ましい。その他、大部分のウイルスに効果を示す不活化法として、煮沸(98℃以上)15〜20 分間、2w/v%グルタラール、0.05〜0.5w/v%(500〜5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム、76.9〜81.4v/v%消毒用エタノール 、70v/v%イソプロパノール、2.5w/v%ポビドンヨード 、55w/v%フタラール 、0.3w/v%過酢酸が挙げられる。
また、多くのウイルスは56℃・30分でカプシドタンパク質が変質して不活化され、かつまた、エーテル、クロロホルム、フロロカーボンなどの脂質溶剤により、エンベロープを持つウイルスは容易に不活化される。また、ウイルス内部に存在するヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオカプシドを認識する抗体を用いることで、膜や殻を破壊し細かくなった不活化したウイルス抗原を検出する事もできる。そのため、本発明に係る不活化としては、抗原抗体反応に影響を与えないか与えることが少ないという観点から、エタノール、ホルマリン、AVL緩衝液を使用する薬剤法と加熱処理、SD処理(化学処理)、酸性処理、アルカリ処理、放射線処理等の不活化法が使用できる。本発明においては、基板に代えて金属粉体を使用しても製造することができる。また、上記方法では、標識を付けた抗体として蛍光標識を付けた1次抗体と蛍光標識を付けた2次抗体とを同時に使用し、画像化して解析するようにすると、より蛍光画像を適切にかつ正確に獲得することができる。
本発明は、現場採取、現場検査に適用できるように、検体不活化採取キットを使用するのが好ましく、薬剤を用いて不活化するのがよい。 図18(1)に示すように、エタノール等の薬液剤Lの入ったチューブ10と棒状の検体採取部20をセットとし、検体採取部を不織布やガーゼなどの吸収性能を持つもので構成する。次いで、(2)棒状の検体採取部で検体を採取する。唾液、痰、咽頭拭い液、鼻咽頭液等を検体Sとする。(3)検体Sを採取した後、採取部20をチューブ10内に入れる。(4)チューブ10内の奥は狭小部となり、検体採取部20を挿入すると、狭小壁面で検体採取部20が圧縮され、検体S(唾液)がエタノール等の薬液L中に分散する。(5)検体採取部20以外を取り出すと、検体採取部20はチューブ10内に残る。(6)検体Sは薬剤Lで不活化され、検体採取部20内に残留することになる。
本発明によれば、ウイルス抗原を現場で採取して不活化し、基板上に量子結晶凝集法で固相化し、標識化した抗体を結合する、又は予め抗体を固相化した基板上で抗原抗体反応により不活化したウイルス抗原と標識化した抗体を結合し、その蛍光強度でなく、ウイルス抗原の蛍光個数をカウントしてウイルス濃度として計測することができる。しかも抗体又は抗原固相化基板を形成する量子結晶は、励起光により入射された光子と量子結晶を形成するプラズモン金属粒子の自由電子との間に相互作用が起こり、表面プラズモン励起して標識抗体の蛍光を増強するので、全体の蛍光強度でなく、その粒状の蛍光を再現性良くカウントして検出することができる。したがって、表面プラズモン励起増強蛍光分光(SPFS)法を用いて、2〜5分という短時間で迅速に検査することができるので、前処理が煩雑で、プライマーによって感度が鈍く、プロトコールが多く、検査まで時間がかかるというPCR検査に代わる精度の高い診断結果を提供できる。また、疾病の有り無しの判定だけでなく、カウント数はウイルス数に対応するので、疾病の軽重度の判定をすることができるので、画期的である。
本発明の検体不活化採取キットによれば、採取したウイルスを不活化してチューブ内に確保できるので、必要な検査場所に送付していつでも取り出して検査することができる。 本発明においては、量子結晶凝集法により、不活化した抗原等を直接固相化するが、抗体を予め固相化し、これに不活化した抗原を抗原抗体反応で標識化した抗体を結合させ、検出させるようにしてもよく、蛍光抗体法における直接法、サンドイッチ法及び間接法が採用できる。
(不活性検体からのウイルスの検出)
量子結晶を作成するAg試薬(2000ppm、12.5μl)とヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体(25μg/ml、12.5μl)を等量混ぜた液を作成しリン青銅板へ滴下し、基板上に凝集され
る量子結晶とともにヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体を固相化する。次に、不活化
した検体(25μg/ml、5μl)とFITC標識を付与したH1N1インフルエンザウイルス抗体(25μg/ml、5μl)の複合体を、ヘマグルチニンH1インフルエンザA抗体固相化基板へ滴下する。不活化した検体中にH1N1インフルエンザウイルスが存在すると、固相化基板の固相化された抗体へインフルエンザウイルスとFITC標識抗体の複合体が結合し、蛍光顕微鏡で観察すると粒上のFITCの蛍光が観察された。また、検体中にインフルエンザウイルスが存在しない場合は、粒上のFITCの蛍光が観察されなかった。蛍光顕微鏡により得られた測定画像を「キーエンス社 解析ソフト:BZ-X Analyzer」で閾値57に設定し解析すると、粒状のFITCの蛍光のカウント値に大きな差が得られた。その結果、蛍光画像からの蛍光の粒をカウントすると、ウイルス無では4であったのに対し、ウイルス有の場合は145であった。
使用機器は以下の通りである。
機器:キーエンス社 蛍光顕微鏡BZ-Z710
光源:メタルハライドランプ80W
蛍光フィルタ:BZ-Xフィルタ GFP (525±25)
解析ソフト:BZ-X Analyzer
(患者ウイルスの測定例1)
患者のウイルスの検出に本発明の蛍光計数法を適用するものであり、ウイルス抗原の存在する咽頭拭い液、唾液、痰、鼻咽頭液、尿、糞便を用いる。図17は工程(1)〜(7)からなる方法である。工程(1)では、図18に示す検体不活化採取キットを用いて不活化した検体を作成する。工程(2)では検体中の不活化抗原とAg試薬(チオ硫酸銀錯体溶液)を混合させる。工程(3)では量子結晶凝集法を利用して不活化抗原の固相化基板を作成する。詳しくは不活化した抗原を2000〜6000ppm濃度のプラズモン金属錯体水溶液中に添加し、プラズモン金属錯体と不活化した抗原との複合水溶液を調整し、不活化した抗原を含むプラズモン金属錯体溶液をプラズモン金属錯体の還元電位近傍の電極電位を有する金属基板上に滴下してプラズモン金属錯体量子結晶を凝集させて不活化した抗原を固相化した固相化基板を用意する(工程(4))。ここで、プラズモン金属としてパラジウム、プラチナ、金、銀、及び銅から選ばれる一種が選択され、プラズモン金属錯体の酸化還元電位近傍の電極電位を有する金属基板が選択され、チオ硫酸銀錯体の量子結晶を利用するときは基板として銅又は銅合金、特にリン青銅が選択される。量子結晶の作成方法としては特開2016−197114号公報記載の方法が引用され、参照される。
工程(5)では抗原抗体反応を利用して蛍光物質で標識化したウイルス抗体で、固相化した検体中のウイルス抗原を標識する。ここで、検体としては、咽頭拭い液、唾液、痰、鼻咽頭液、尿、糞便が対象となる。ウイルス抗体を標識化する蛍光物質として、Pacific Blueなどの励起光400nm〜436nmやFITCなどの励起光453〜505nmやTRITCなどの励起光485〜566nmやAPCなどの励起光488〜706nmやIRDye800などの励起光732〜784nmの蛍光物質を挙げることができる。
行程(6)では基板から、純水や緩衝液等で未結合の複合体及び抗体を洗浄する。ここで、緩衝液として中性リン酸緩衝液の他、PBS、HEPES、TRIS、BIS-TRIS、CAPS、CAPSO、Glycylglycine、MES、MOPS、PIPESなどを利用することができる。
工程(7)では、基板上に残る、標識化した抗体と抗原との複合体に励起光を照射し、表面プラズモン励起により、その蛍光画像を蛍光顕微鏡又は蛍光リーダーで観測し、得られた蛍光画像の任意の範囲内または画像全体から、任意の値の輝度値以上の蛍光の粒を二値化して、得られた個数をカウントする。蛍光画像中のある閾値以上の蛍光の粒を二値化してカウントする。本発明方法によれば、ウイルスの検出において、PCR法に匹敵する高精度の検出を簡易迅速に行うことができる。したがって、入国検査、病院等での現場での迅速な検査が可能である。
(2種類のウイルスの検出)
1枚の測定チップで、2種類のウイルスを検出する測定法として以下の方法を述べる。
1)前記Ag試薬(チオ硫酸銀水溶液3000ppm)にインフルエンザ抗体(インフルエンザ抗体として複数の抗体を含む)緩衝液とコロナウイルス(Covid−19)抗体緩衝液の混合液を等量ずつ、混ぜて最終的にAg試薬1000ppmを含む固相化検体を調整する。又は三者を順次等量混ぜて調整する。その混合液を金属基板上に滴下して固相化基板を作成する(図19A(1)参照)。
2)次に、エタノール等で不活化したヒトから採取した検体(咽頭拭い液又は唾液等)と緑標識したコロナ抗体と赤標識したインフルエンザ抗体の混合液を混ぜる。検体中にどちらかのウイルスがあると、そのウイルスと標識抗体とは複合体を形成する。そして、その複合体を固相化基板上に滴下する。
3)複合体は抗原抗体反応により基板上に固相化した抗体に結合する(図19A(2)参照)。未結合の複合体や標識抗体などは水や緩衝液で洗い流す(図19B(3)参照)
ここで、コロナ抗体の標識はFITCやCy2などの緑領域の標識を付け、インフルエンザ抗体の標識はCy5やAPC等の赤領域の標識を付け、それぞれの蛍光域が重ならないように選択する。
光源から緑波長の励起光や赤波長の励起光をそれぞれ照射する。検体中にインフルエンザウイルスが存在する場合、緑励起では蛍光は認められないが、赤励起では赤標識のインフルエンザ抗体から蛍光が認められる。他方、検体中にコロナウイルスが存在する場合、赤励起では蛍光は認めらないが、緑励起では緑標識のコロナ抗体から蛍光が認められる(図19B(4)参照)。このようにして、2つの励起光から得られる2つの蛍光画像を蛍光顕微鏡で取得し、画像上の蛍光点又は粒をカウントして計数定量する。
尚、緑領域のフィルタ:励起波長470±20nm、蛍光波長525±25nm
赤領域のフィルタ:励起波長620±20nm、蛍光波長700±37.5nmとした。

Claims (8)

  1. 検体中のウイルスまたは抗体の測定対象を定量する方法であって、1)不活化したウイルスまたはその抗体を、プラズモン金属錯体量子結晶とともに金属基板上にプラズモン金属錯体と金属基板との電位差で凝集させ、金属基板上に金属錯体量子結晶とともに固定し、ウイルスにまたは抗体を固相化する固相化工程と、2)抗原抗体反応より固相化したウイルス又は抗体を蛍光標識化する標識化工程と、3)蛍光標識されたウイルス又は抗体に励起光を照射して表面プラズモン励起により蛍光標識化したウイルス又は抗体の点状又は粒状の蛍光画像を得る蛍光励起工程と、4)その蛍光画像中の蛍光点または粒を二値化して所定閾値以上の蛍光点または粒を採択し、計数定量する蛍光計数工程からなることを特徴とするウイルス又は抗体の蛍光計数法。
  2. 前記固相化行程において、不活化したウイルスまたはその抗体を緩衝液中に採取し、1000ppm〜5000ppm、好ましくは1000〜3000ppmのプラズモン金属錯体水溶液と混合して中性とし、金属基板上に滴下する請求項1記載の蛍光計数法。
  3. 検体中の固相化対象が、抗体を産生させるウイルス(不活化)またはその抗体であって、その検体中の濃度が10μg/ml以上である請求項1記載の蛍光計数法。
  4. 前記蛍光標識化工程が、ウイルス抗原(通常エタノール等で不活化、緩衝液で希釈化する場合もある。以下同じ)と標識抗体(蛍光体で標識化され、通常緩衝液で希釈、以下同じ)とを混合して上記固相化基板に滴下する抗体と標識抗体とで抗原を挟み込む抗原抗体反応の、いわゆる1)サンドイッチ法、ウイルス抗原を固相化し、次いで標識抗体で標識化するか、又は抗体を固相化し、次いで標識抗原(蛍光体で標識化したもので、抗原の一部を標識したものを含む。以下同じ)を標識化する2)直接法、またはウイルス抗原を固相化し、次いで抗体および二次抗体を順に結合させて標識化するか、抗体を固相化し、次いでウイルス抗原を結合した後、最後に抗体および二次抗体を順に結合させて標識化する3)間接法のいずれかである請求項1に記載の蛍光計数法。
  5. 前記表面プラズモン励起工程が金属基板上に凝集した100nm前後の量子結晶凝集隗に対する励起光の照射であって、量子結晶とともに固相化されたウイルス又はその抗体の蛍光標識を励起する請求項1記載の蛍光計数法。
  6. 前記蛍光計数工程が1又は2以上視野測定での蛍光顕微鏡の測定画像であって、いずれかの1視野画像における点状蛍光の二値化して採取した所定輝度値以上の蛍光点の計数である請求項1記載の蛍光計数法。
  7. 前記固相化行程で、二種以上の別個のウイルスと抗原抗体反応で結合する抗体を固相化し、前記標識化行程では別個の蛍光波長の標識抗体で標識化し、前記蛍光計数工程で1又は2以上のウイルスを定量する請求項1記載の蛍光計数法。
  8. 二種以上の別個のウイルスがインフルエンザとCovid−19であって、標識抗体の蛍光波長が異なり、いずれかのウイルスが検出可能である請求項1記載の蛍光計数法。
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