以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型回転機(以下、適宜「SAG型回転機」と略記する)は、コイルを備える固定子と、前記固定子から軸方向に所定の間隔を空けて配置され、前記コイルと磁気的に相互作用しながら回転する回転子とを1対で備える装置である。そして、本実施形態におけるSAG型回転機は、前記固定子と前記回転子との間に作用するスラスト力を低減するスラスト力低減部をさらに備える。このようなSAG型回転機について、以下、第1ないし第8実施形態のシングルアキシャルギャップ型同期モータ(以下、適宜「SAG型同期モータ」と略記する)AGa〜AGhを用いて、より具体的に説明する。
電気エネルギを機械エネルギへ変換するモータ(電気モータ、電動機)は、様々な用途に利用されており、一般に、出力軸を有し回転する回転子(ロータ)と、前記回転子と相互作用する固定子(ステータ)とを備え、回転変化する磁界(回転磁界)によって前記回転子を回転させる。このモータは、一般に、動作原理の観点から分類すると、同期モータと誘導モータ(非同期モータ)とに大別される。
同期モータは、給電された交流電流が作る回転磁界によって回転子が吸引されて追従回転し、同期速度で回転する電動機である。同期モータには、例えば、回転子に永久磁石を用いる永久磁石同期電動機(PM型モータ)や、鉄のようなリラクタンス(磁気抵抗)が小さく一時的に磁石となる材料を回転子に用いるリラクタンス型同期電動機等がある。
誘導モータは、固定子が作る回転磁界によって電気伝導体の回転子に誘導電流を発生させ、これによってすべりに対応した回転トルクを得る電動機である。誘導モータには、例えば、始動時には所定の方法で回転トルクが与えられ始動後には単相交流電力で回転トルクを得る単相誘導電動機や、三相交流電力で回転トルクを得る例えばかご形三相誘導電動機および巻線形三相誘導電動機等の三相誘導電動機等がある。
このようにモータは、同期モータと誘導モータとに大別され、上述のように、本実施形態におけるSAG型回転機について、SAG型同期モータを用いて、より具体的に説明するが、スラスト力に関し、同期モータと誘導モータとに差異は、無く、シングルアキシャルギャップ型誘導モータについても同様に説明できる。また、シングルアキシャルギャップ型発電機についても、同様に、説明できる。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータの構成を示す断面図である。図2は、第1実施形態のシングルアキシャルギャップ型同期モータにおける固定子を説明するための図である。図2Aは、スラスト力低減部の一部を含む固定子の斜視図であり、図2Bは、図2Aに示す状態から、コイルを取り除いた状態での斜視図であり、図2Cは、図2Bに示す状態から、コイルを取り除いた状態での断面斜視図である。図2には、出力軸も図示されている。
第1実施形態におけるSAG型同期モータAGaは、例えば、図1に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3aと、出力軸6とを備える。
固定子1は、回転子2を回転させるための磁界を発生させる部品であり、例えば、図1および図2に示すように、固定子用バックヨーク11と、複数のコイル12とを備える。
固定子用バックヨーク11は、複数のコイル12それぞれで生じる各磁束を結合するための部材である。固定子用バックヨーク11には、交流磁界が作用するので、例えば、比較的高い透磁率を持ち、交流磁界に適した軟磁性材料である磁性鉄粉や電磁鋼板を巻回した巻き鉄心等で円板状に形成される。固定子用バックヨーク11は、磁気的に等方性を有することが好ましい。円板状の固定子用バックヨーク11における中心には、図1に示すように、円柱状の出力軸6を遊挿するための円形な挿通孔111が形成されている。
複数のコイル12は、それぞれ、通電により回転子2を回転させる磁界を発生させるための部材である。本実施形態では、複数のコイル12は、それぞれ、有芯のコイルであり、芯となるステータコア121と、ステータコア121に巻き回され、絶縁被覆された長尺な導体部材122とを備える。ステータコア121は、それぞれ、固定子用バックヨーク11と同様に、例えば、比較的高い透磁率を持ち、交流磁界に適した軟磁性材料である磁性鉄粉や電磁鋼板等で形成される。複数のコイル12における各ステータコア121は、図2に示すように、固定子用バックヨーク11に、周方向に所定の間隔を空けて等間隔で配置され、例えば接着剤による接着やネジによるねじ止で固定される。なお、図1および図2に示す例では、複数のコイル12における各ステータコア121は、固定子用バックヨーク11と別体で構成されたが、一体で構成されてもよい。導体部材122は、一例では、帯状(テープ状、リボン状)であり、幅方向がコイル軸方向に沿うようにステータコア121に巻き回され、これにより、本実施形態では、複数のコイル12は、それぞれ、いわゆるパンケーキ構造となっている。もちろん、導体部材122は、帯状に限らず、断面円形や断面矩形等の線材であってもよい。複数のコイル12それぞれには、SAG型同期モータAGaを稼働するために、図略の配線によって給電される。
回転子2は、固定子1で生成された各磁界によって回転する部品である。回転子2は、例えば、図1に示すように、回転子用バックヨーク21と、複数の駆動用磁石22とを備える。
回転子用バックヨーク21は、複数の駆動用磁石22それぞれで生じる各磁束を結合するための部材である。回転子用バックヨーク21は、直流磁界が作用し、比較的強度を必要とするため、例えば、比較的高い透磁率を持つバルクの鉄等で円板状に形成される。回転子用バックヨーク21は、磁気的に等方性を有することが好ましい。円板状の回転子用バックヨーク21は、固定子用バックヨーク11と略同形であり、その中心には、図1に示すように、円柱状の出力軸6を挿通するための円形な挿通孔211が形成されている。出力軸6は、この挿通孔211に挿通されて固定される。これにより、出力軸6は、回転子2と共に回転し、SAG型同期モータAGaで生成される回転運動を出力する。
複数の駆動用磁石22は、それぞれ、例えば、永久磁石であり、回転子用バックヨーク21に、周方向に所定の間隔を空けて等間隔で交互に磁極を反転して配置され、例えば接着剤による接着で固定される。
固定子1と回転子2とは、複数のコイル12と複数の駆動用磁石22とが互いに対向するように、軸方向に所定の間隔を空けて出力軸6を介して配置される。複数のコイル12と複数の駆動用磁石22とは、同数であってよく、異数であってもよい。
スラスト力低減部3aは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものである。前記スラスト力は、出力軸6の中心線に対し平行な方向に働く力である。スラスト力低減部3aは、第1実施形態では、図1、図2Bおよび図2Cに示すように、回転子2に配置される第1低減部用磁石31と、固定子1に配置され、磁気的に反発するように第1低減部用磁石31と相互作用する第2低減部用磁石32とを備える。第1実施形態では、スラスト力低減部3aは、さらに、低減部用ヨーク33を備え、第2低減部用磁石32は、この低減部用ヨーク33を介して固定子1に配置されている。
第1および第2低減部用磁石31、32は、第1実施形態では、それぞれ、第1および第2永久磁石31、32である。より具体的には、第1低減部用磁石31は、出力軸(回転子2における回転軸)6の外周側に前記出力軸6と同心で配置された円環状、より詳しくは低高な円筒状の第1永久磁石31であり、第2低減部用磁石32は、第1永久磁石31における外径および内径それぞれと同径な外径および内径の円環状、より詳しくは低高な円筒状の第2永久磁石32であり、端面において、第1永久磁石31と同極で対向するように、第1永久磁石31と同様に、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。第1および第2永久磁石31、32は、全周着磁されている。これによって第1永久磁石31と第2永久磁石32との間には、磁気的な反発力が働く。低減部用ヨーク33は、固定子用バックヨーク11と第2永久磁石32とを磁気的に連結し、固定子用バックヨーク11からの、第1永久磁石31と対向する第2永久磁石32における対向面の高さを調整する部材である。低減部用ヨーク33の高さを調整して前記対向面の高さを調整することで、第1永久磁石31と第2永久磁石32との間に働く前記反発力の大きさが調整できる。低減部用ヨーク33は、主に直流磁界が作用するため、回転子用バックヨーク21と同様に、例えば、比較的高い透磁率を持つバルクの鉄等で、第2永久磁石32における外径および内径それぞれと同径な外径および内径の円環状、より詳しくは低高な円筒状に形成される。なお、サイズ(大きさ)によっては、固定子1のコイル12による交流の漏れ磁束を受ける場合には、交流磁界に適した上述の磁性鉄粉や磁性鋼板の巻き鉄心等で低減部用ヨーク33が形成されてもよい。低減部用ヨーク33は、第2永久磁石32と固定子用バックヨーク11との間に、出力軸6の軸方向に沿って連結するように配置され、第1永久磁石31と同様に、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。したがって、本実施形態では、これら第1永久磁石31、第2永久磁石32および低減部用ヨーク33は、出力軸6の軸方向に沿って、第1永久磁石31、第2永久磁石32および低減部用ヨーク33の順に配置され、第2永久磁石32と低減部用ヨーク33とは、例えば接着剤等で接着固定され、低減部用ヨーク33と固定子用バックヨーク11とは、例えば接着剤等で接着固定される。
第1実施形態では、図1に示すように、第1永久磁石31および回転子用バックヨーク21は、出力軸6とで磁路を形成し、第2永久磁石32、低減部用ヨーク33および固定子用バックヨーク11は、出力軸6とで磁路を形成する。このため、出力軸6は、例えば、比較的高い透磁率を持つ鉄等の軟磁性材料で形成され、第1永久磁石31と出力軸6との間および回転子用バックヨーク21と出力軸6との間に形成される各エアギャップは、狭いほど好ましく、同様に、第2永久磁石32と出力軸6との間、低減部用ヨーク33と出力軸6との間、および、固定子用バックヨーク11と出力軸6との間それぞれに形成される各エアギャップは、狭いほど好ましい。このように出力軸6を磁気回路の一部に組み込むことで、スラスト力低減部3aの部品点数が低減され、構造が簡略化される。なお、出力軸6に代え、磁路を形成するための円環状、より詳しくは低高な円筒状のヨークが第1および第2永久磁石31、32それぞれに対し、それらの内周側または外周側に設けられてもよい。第2および第4ないし第6実施形態も同様である。
このような構成の第1実施形態におけるSAG型同期モータAGaは、稼働すると、固定子1と回転子2との間にスラスト力(吸引力)が働くが、前記スラスト力(吸引力)をスラスト力低減部3aの反発力(低減力)でキャンセル(相殺)可能となるため、軸方向のスラスト力を低減できる。このため、軸受の大型化や低寿命化が回避でき、スラスト力を受けるための構造部材の大型化等が回避できる。
上記SAG型同期モータAGaは、スラスト力低減部3aが第1および第2低減部用磁石31、32を備えて構成されるので、磁石の反発力を、スラスト力(吸引力)を低減する前記低減力に利用できる。
上記SAG型同期モータAGaは、第1および第2永久磁石31、32で第1および第2低減部用磁石31、32を構成するので、永久磁石の磁力を、前記低減力に利用するから、前記低減力の発生に、エネルギを必要としない。
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータの構成を示す断面図である。図4は、第2実施形態のシングルアキシャルギャップ型同期モータにおける固定子を説明するための図である。図4Aは、スラスト力低減部の一部を含む固定子の斜視図であり、図4Bは、図4Aに示す状態から、コイルを取り除いた状態での斜視図であり、図4Cは、図4Bに示す状態から、コイルを取り除いた状態での断面斜視図である。図4には、出力軸も図示されている。
第1実施形態のスラスト力低減部3aは、上述のように、第1低減部用磁石31、第2低減部用磁石32、低減部用ヨーク33を備えたが、第2実施形態のスラスト力低減部3bは、さらに、電磁石を備えるものである。
このような第2実施形態におけるSAG型同期モータAGbは、例えば、図3に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3bと、出力軸6とを備える。これら第2実施形態のSAG型同期モータAGbにおける固定子1、回転子2および出力軸6は、それぞれ、第1実施形態のSAG型同期モータAGaにおける固定子1、回転子2および出力軸6と同様であるので、その説明を省略する。この点、後述の第3ないし第8実施形態も同様であり、以下、この点の記載を省略する。
スラスト力低減部3bは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第2実施形態では、図3、図4Bおよび図4Cに示すように、第1低減部用磁石31と、第2低減部用磁石32と、低減部用ヨーク33と、第1電磁石34とを備える。
これら第2実施形態のスラスト力低減部3bにおける第1低減部用磁石31、第2低減部用磁石32および低減部用ヨーク33は、それぞれ、第1実施形態のスラスト力低減部3aにおける第1低減部用磁石31、第2低減部用磁石32および低減部用ヨーク33と同様であるので、その説明を省略する。
第1電磁石34は、絶縁被覆された長尺な導体部材を巻き回した円環状、より詳しくは低高な円筒状のコイルであり、当該第1電磁石34の磁極が第2低減部用磁石32の磁極と並置するように配置されている。より具体的には、本実施形態では、図3および図4Cに示すように、円環状の第1電磁石34は、出力軸6の軸方向に沿って連結されるように配置された第2永久磁石32および低減部用ヨーク33の内周側であって、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。図3および図4Cに示す例では、第1電磁石34は、エアギャップを形成しないように、その外周側面が前記第2永久磁石32および低減部用ヨーク33の内周側面に密着するように当接させて配置されている。第1電磁石34には、磁力を発生させるために、図略の配線によって所定の電力量(電流量)で給電される。
このような構成の第2実施形態におけるSAG型同期モータAGbは、第1実施形態におけるSAG型同期モータAGaと同様な作用効果を奏する。
そして、上記SAG型同期モータAGbは、第1電磁石34を備えるので、前記第1電磁石34に給電する電力量(電流量)を調整することで、スラスト力を低減する前記低減力を調整できる((前記低減力)=(第2永久磁石32の磁力)+(第1電磁石34の磁力))。第1電磁石34の磁極が第2永久磁石の磁極と同極となるように、第1電磁石34に給電されると、第1電磁石34の無給電の場合に較べて、前記低減力は、増加され、第1電磁石34の磁極が第2永久磁石の磁極と異極となるように、第1電磁石34に給電されると、第1電磁石34の無給電の場合に較べて、前記低減力は、減少される。
次に、別の実施形態について説明する。
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータの構成を示す断面図である。
第1実施形態のスラスト力低減部3aは、上述のように、出力軸6を用いて磁路を形成したが、第3実施形態のスラスト力低減部3cは、磁路を自己完結で形成するものである。
このような第3実施形態におけるSAG型同期モータAGcは、例えば、図5に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3cと、出力軸6とを備える。
第3実施形態のスラスト力低減部3cは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第3実施形態では、第1低減部用磁石35と、第2低減部用磁石36と、低減部用ヨーク33とを備える。第3実施形態のスラスト力低減部3cにおける低減部用ヨーク33は、第2低減部用磁石32に代え、第2低減部用磁石36と固定子用バックヨーク11との間に、出力軸6の軸方向に沿って連結するように配置される点を除き、第1実施形態のスラスト力低減部3aにおける低減部用ヨーク33と同様であるので、その説明を省略する。
第1低減部用磁石35は、回転子2に配置され、逆極性の磁極が並置するように配置された1対の第3および第4永久磁石351、352を備える。第2低減部用磁石36は、固定子1に配置され、逆極性の磁極が並置するように配置された1対の第5および第6永久磁石361、362を備える。そして、第1および第2低減部用磁石35、36が磁気的に反発して相互作用するように、これら第3永久磁石351と第5永久磁石361とは、同極性の磁極が対向するように配置され、これら第4永久磁石352と第6永久磁石362とは、同極性の磁極が対向するように配置される。より具体的には、第3永久磁石351は、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置された円環状、より詳しくは低高な円筒状である。第4永久磁石352は、第3永久磁石351の内周側であって、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置された円環状、より詳しくは低高な円筒状である。したがって、第4永久磁石352の外径は、第3永久磁石351の内径より小さい(小径)。図5に示す例では、エアギャップを形成しないように、第4永久磁石352は、その外周側面で第3永久磁石351の内周側面に密着するように当接させて配置されている。第5永久磁石361は、第3永久磁石351における外径および内径それぞれと同径な外径および内径の円環状、より詳しくは低高な円筒状であり、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置される。第6永久磁石362は、第4永久磁石352における外径および内径それぞれと同径な外径および内径の円環状、より詳しくは低高な円筒状であり、第5永久磁石361の内周側であって、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置される。図5に示す例では、エアギャップを形成しないように、第6永久磁石362は、その外周側面で第5永久磁石361の内周側面に密着するように当接させて配置されている。これにより、第3永久磁石351と第5永久磁石361とは、端面で対向するように配置され、第4永久磁石352と第6永久磁石362とは、端面で対向するように配置される。
このような構成の第3実施形態におけるSAG型同期モータAGcは、第1実施形態におけるSAG型同期モータAGaと同様な作用効果を奏する。
そして、上記SAG型同期モータAGcは、第1低減部用磁石35として1対の第3および第4永久磁石351、352を備え、第2低減部用磁石36として1対の第5および第6永久磁石361、362を備えるので、図5に示すように、前記第1低減部用磁石35の磁路が当該第1低減部用磁石35自体で自己完結するように前記1対の第3および第4永久磁石351、352で形成され、前記第2低減部用磁石36の磁路が当該第2低減部用磁石36自体で自己完結するように前記1対の第5および第6永久磁石361、362ならびに低減部用ヨーク33で形成されるから、磁束の漏れを低減できる。
なお、図5に示す例では、第1および第2低減部用磁石35、36の第3ないし第6永久磁石351、352、361、362は、固定子1における周方向に等間隔で配置された複数のコイル12の内周側に配置されているが、第1および第2低減部用磁石35、36の各磁路が自己完結しているので、第1および第2低減部用磁石35、36の第3ないし第6永久磁石351、352、361、362は、固定子1における周方向に等間隔で配置された複数のコイル12の外周側に配置されてもよい。このような場合、前記複数のコイル12の内周側に配置される場合に較べて、より大きな水平断面(出力軸6の軸方向と直交する断面)で、固定子1に配置された第1低減部用磁石35と回転子2に配置された第2低減部用磁石36とが互いに対向するので、固定子1と回転子2と間に形成される軸方向のギャップ間隔が回転子2の1回転中に変化する面ブレを低減できる。
また、第1ないし第3実施形態におけるSAG型同期モータAGa〜AGcは、低減部用ヨーク33を備え、第2永久磁石32における対向面の高さをこの低減部用ヨーク33で調整したが、この前記対向面の高さ調整が不要な場合には、低減部用ヨーク33が省略され、第2低減部用磁石32を構成する前記第2永久磁石32が固定子1の固定子用バックヨーク11に、直接、配置されてもよい。
次に、別の実施形態について説明する。
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータの構成を示す断面図である。
第1実施形態のスラスト力低減部3aは、上述のように、第1および第2低減部用磁石として第1および第2永久磁石31、32を備えたが、第4実施形態のスラスト力低減部3dは、前記第1および第2低減部用磁石として永久磁石および電磁石とを備えるものである。
このような第4実施形態におけるSAG型同期モータAGdは、例えば、図6に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3dと、出力軸6とを備える。
第4実施形態のスラスト力低減部3dは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第4実施形態では、第1低減部用磁石37と、第2低減部用磁石38とを備える。第4実施形態の第1低減部用磁石37は、第1実施形態の第1低減部用磁石31と同様な第1永久磁石31(37)を備えて構成されるので、その説明を省略する。
第2低減部用磁石38は、固定子1に配置され、第2電磁石38を備えて構成される。この第2電磁石38は、例えば、図6に示すように、円環状の第2電磁石用コア381と、第2電磁石用コア381の内周側に配置され、絶縁被覆された長尺な導体部材を巻き回した第2電磁石用コイル382とを備える。円環状の第2電磁石用コア381は、第1永久磁石37(第1低減部用磁石31としての第1永久磁石31)における外径および内径それぞれと同径な外径および内径の円環状、より詳しくは低高な円筒状であり、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。したがって、第1永久磁石37と第2電磁石用コア381とは、端面で互いに対向するように配置されている。第2電磁石用コア381は、上述の低減部用ヨーク33と同様な各材料のいずれかで円板状に形成される。第2電磁石用コイル382は、エアギャップを形成しないように、その外周側面で第2電磁石用コア381の内周側面に密着するように当接させて、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。第2電磁石用コイル382には、図略の配線によって、端面において、第2電磁石用コア381が第1永久磁石37(31)と同極で対向するように、所定の電力量(電流量)で給電される。これによって第1永久磁石37(31)と第2電磁石38の第2電磁石用コア381との間には、磁気的な反発力が働く。
第4実施形態では、図6に示すように、第1永久磁石37(31)および回転子用バックヨーク21は、出力軸6とで磁路を形成し、第2電磁石38および固定子用バックヨーク11は、出力軸6とで磁路を形成する。
このような構成の第4実施形態におけるSAG型同期モータAGdは、稼働すると、固定子1と回転子2との間にスラスト力(吸引力)が働くが、前記スラスト力(吸引力)をスラスト力低減部3dの反発力(低減力)でキャンセル(相殺)可能となるため、軸方向のスラスト力を低減できる。
上記SAG型同期モータAGdは、第2低減部用磁石として第2電磁石38を備えるので、永久磁石を節約でき、前記第2電磁石38に給電する電力量(電流量)を調整することで、スラスト力を低減する前記低減力を調整できる。
上記SAG型同期モータAGdは、第1永久磁石37と第2電磁石38の第2電磁石用コア381が同形であるので、第1永久磁石37と第2電磁石用コア381との間で生じる反発力を無駄なく適切に利用できる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第5実施形態)
図7は、第5実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータを説明するための図である。図7Aは、断面斜視図であり、図7Bは、スラスト力低減部の一部を含む固定子の斜視図である。
第4実施形態のスラスト力低減部3dは、上述のように、第2低減部用磁石として円環状(低高な円筒状)の第2電磁石38を備えたが、第5実施形態のスラスト力低減部3eは、前記第2低減部用磁石として複数の第2電磁石(第2電磁石群)を備えるものである。
このような第5実施形態におけるSAG型同期モータAGeは、例えば、図7に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3eと、出力軸6とを備える。
第5実施形態のスラスト力低減部3eは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第5実施形態では、第1低減部用磁石37と、第2低減部用磁石39とを備える。第5実施形態の第1低減部用磁石37は、第4実施形態の第1低減部用磁石37(すなわち、第1実施形態の第1低減部用磁石31)と同様な第1永久磁石37(31)を備えて構成されるので、その説明を省略する。
第2低減部用磁石39は、固定子1に配置され、複数の第2電磁石39(39−1、39−2、39−3、・・・)を備えて構成される。これら複数の第2電磁石39は、それぞれ、例えば、図7Bに示すように、円柱状の第2電磁石用コア391と、第2電磁石用コア391の外周側面に、絶縁被覆された長尺な導体部材を巻き回した第2電磁石用コイル392とを備える。複数の第2電磁石39は、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心となるように、固定子1の固定子用バックヨーク11に周方向に所定の間隔を空けて等間隔で配置されている。したがって、第1低減部用磁石37の第1永久磁石と複数の第2電磁石39とは、端面で互いに対向するように配置されている。第2電磁石用コア391は、第2電磁石用コア381と同様に、すなわち、上述の低減部用ヨーク33と同様な各材料のいずれかで円柱状に形成される。複数の第2電磁石39それぞれには、図略の配線によって、複数の第2電磁石39それぞれが第1永久磁石37と同極で対向するように、所定の電力量(電流量)で給電される。これによって第1永久磁石37と複数の第2電磁石39との間には、磁気的な反発力が働く。
このような構成の第5実施形態におけるSAG型同期モータAGeは、稼働すると、固定子1と回転子2との間にスラスト力(吸引力)が働くが、前記スラスト力(吸引力)をスラスト力低減部3eの反発力(低減力)でキャンセル(相殺)可能となるため、軸方向のスラスト力を低減できる。
上記SAG型同期モータAGeは、第2低減部用磁石として複数の第2電磁石39を備えるので、永久磁石を節約でき、前記複数の第2電磁石39に給電する電力量(電流量)を調整することで、スラスト力を低減する前記低減力を調整できる。
上記SAG型同期モータAGeは、第2低減部用磁石として複数の第2電磁石39を備えるので、前記複数の第2電磁石39それぞれに給電する各電力量(電流量)それぞれを調整することで、前記面ブレを低減できる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第6実施形態)
図8は、第6実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータを説明するための図である。図8Aは、全体斜視図であり、図8Bは、断面斜視図である。
第1実施形態のスラスト力低減部3aは、上述のように、第1および第2低減部用磁石として第1および第2永久磁石31、32を備えたが、第6実施形態のスラスト力低減部3fは、前記第1および第2低減部用磁石として第3および第4電磁石41、38を備えるものである。
このような第6実施形態におけるSAG型同期モータAGfは、例えば、図8に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3fと、出力軸6とを備える。
第6実施形態のスラスト力低減部3fは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第6実施形態では、第1低減部用磁石41と、第2低減部用磁石42とを備える。第2低減部用磁石42は、第4電磁石42を備えて構成され、この第4電磁石42は、第4実施形態の第2電磁石38と同様に構成されるので、その説明を省略する。すなわち、第4電磁石42は、第2電磁石用コア381と同様な第4電磁石用コア421と、第2電磁石用コイル382と同様な第4電磁石用コイル422とを備える。第4電磁石用コイル422には、図略の配線によって、端面において、第4電磁石用コア421が後述の第3電磁石用コア411と同極で対向するように、所定の電力量(電流量)で給電される。
第1低減部用磁石41は、回転子2に配置され、第3電磁石41を備えて構成される。この第3電磁石41は、例えば、図8Bに示すように、円環状の第3電磁石用コア411と、第3電磁石用コア411の内周側に配置され、絶縁被覆された長尺な導体部材を巻き回した第3電磁石用コイル412とを備える。円環状の第3電磁石用コア411は、第4電磁石用コア421(381)における外径および内径それぞれと同径な外径および内径の円環状、より詳しくは低高な円筒状であり、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。したがって、第3電磁石用コア411と第4電磁石用コア421(381)とは、端面で互いに対向するように配置されている。第3電磁石用コア411は、回転子用バックヨーク21と同様な材料で円環状に形成される。第3電磁石用コイル412は、その外周側面で第3電磁石用コア411の内周側面に密着するように当接させて、出力軸6の外周側に前記出力軸6と同心で配置されている。第3電磁石用コイル412には、図8Bに示すように、いわゆるスリップリング413によって、端面において、第3電磁石用コア411が第4電磁石用コア421と同極で対向するように、所定の電力量(電流量)で給電される。これによって第3電磁石41と第4電磁石42(38)との間には、磁気的な反発力が働く。
スリップリング413は、スリップリング本体4131と、1対の第1および第2連結ロッド4132、4133とを備える。スリップリング本体4131は、軸方向における回転子2の外部に配置され、出力軸6を遊挿する低高な円筒状の部材であり、その外周面に給電ブラシ(不図示)が回転子2の回転中に摺動して当接する。スリップリング本体4131の外周面には、軸方向に沿って上下に2分割するように全周に亘って帯状に形成された2個の第1および第2導電層(不図示)を備えている。前記第1導電層と前記第2導電層との間には、外周面における軸方向の略中央位置であって全周に亘って帯状の絶縁領域(不図示)が形成されている。前記給電ブラシは、2個の第1および第2電極を備え、前記給電ブラシの前記第1電極は、スリップリング本体4131の前記第1導電層に当接され、前記給電ブラシの前記第2電極は、スリップリング本体4131の前記第2導電層に当接される。第1および第2連結ロッド4132、4133は、スリップリング本体4131と、回転子2内の第3電磁石用コイル412とを電気的に接続する棒状の部材である。回転子用バックヨーク21の挿通孔211には、周面に軸方向に沿って延びて径方向に凹む2個の第1および第2切り欠き部212、213が第1および第2連結ロッド4132、4133の位置に合わせて形成されている。第1連結ロッド4132は、その一方端がスリップリング本体4131の前記第1導電層に電気的に接続されてスリップリング本体4131に連結され、第1切り欠き部212を通って、その他方端が第3電磁石用コイル412を形成する前記長尺な導体部材の一方端に電気的に接続されて第3電磁石41に連結される。第2連結ロッド4133は、その一方端がスリップリング本体4131の前記第2導電層に電気的に接続されてスリップリング本体4131に連結され、第2切り欠き部213を通って、その他方端が第3電磁石用コイル412を形成する前記長尺な導体部材の他方端に電気的に接続されて第3電磁石41に連結される。
第6実施形態では、第3電磁石41および回転子用バックヨーク21は、出力軸6とで磁路を形成し、第4電磁石42(38)および固定子用バックヨーク11は、出力軸6とで磁路を形成する。
このような構成の第6実施形態におけるSAG型同期モータAGfは、稼働すると、固定子1と回転子2との間にスラスト力(吸引力)が働くが、前記スラスト力(吸引力)をスラスト力低減部3fの反発力(低減力)でキャンセル(相殺)可能となるため、軸方向のスラスト力を低減できる。
上記SAG型同期モータAGfは、第1および第2低減部用磁石として第3および第4電磁石41、42を備えるので、第3および第4電磁石41、42に給電する各電力量(電流量)を調整することで、スラスト力を低減する前記低減力を調整できる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第7実施形態)
図9は、第7実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータを説明するための図である。図9Aは、断面図であり、図9Bは、断面斜視図である。
第1ないし第6実施形態におけるスラスト力低減部3a〜3fは、固定子1と回転子2との間に配置されたが、第7実施形態のスラスト力低減部3gは、固定子1および回転子2の外部、例えば、軸方向における回転子2の外部に配置されるものである。
このような第7実施形態におけるSAG型同期モータAGgは、例えば、図9に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3gと、出力軸6とを備える。
第7実施形態のスラスト力低減部3gは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第7実施形態では、スラスト力低減部3gは、図9に示すように、絶縁被覆された、長尺な線状の導体部材を巻き回した第1低減部用コイル51と、回転子2側を開放するように第1低減部用コイル51を包み込み、前記回転子2とで磁気回路を形成する第1低減部用コア52とを備える。より具体的には、第1低減部用コア52は、回転子2の回転子用バックヨーク21の外径と同径な外径で、外周側面を形成する低高な円筒状の外周コア521と、外周コア521の径より小径であって出力軸6を遊挿可能な径で、内周側面を形成する、外周コア521と同高な円筒状の内周コア522と、軸方向における回転子2と対向しない端面で、外周コア521と内周コア522とを各端部で連結する円環板状の蓋コア523とを備え、これら外周コア521、内周コア522および蓋コア523で断面略コ字形状(断面洛U字形状)に形成されている。したがって、第1低減部用コア52は、回転子2側が開放されており、これら外周コア521、内周コア522および蓋コア523で形成される凹所の収容部に第1低減部用コイル51が配置され、前記凹所の内面に例えば接着剤による接着等で固定されて収容されている。第1低減部用コア52は、回転子用バックヨーク21と同様に、例えば、比較的高い透磁率を持つ鉄(例えばSUY等)やフェライト等で形成される。
そして、このような構成のスラスト力低減部3gは、第1低減部用コア52における円筒状の内周コア522に出力軸6を挿通し、第1低減部用コイル51を収容した第1低減部用コア52の前記開放側を回転子2に向くように、回転子2の回転子用バックヨーク21から軸方向に所定の間隔を空けて、軸方向における回転子2の外部に配置される。スラスト力低減部3gは、この状態で、図略の筐体(ハウジング、ケース)に、例えば接着剤による接着やネジによるねじ止め等で固定される。したがって、第7実施形態におけるSAG型同期モータAGgでは、スラスト力低減部3g、回転子2および固定子1は、この前記スラスト力低減部3g、前記回転子2および前記固定子1の順で軸方向に配置されている。第1低減部用コイル51には、図略の配線によって、電磁石となるように、所定の電力量(電流量)で給電される。
第7実施形態では、図9Aに示すように、第1低減部用コア52と回転子2とで磁気回路が形成される。より具体的には、第1低減部用コア52の外周コア521からエアギャップを介して回転子2の回転子用バックヨーク21を通り、エアギャップを介して第1低減部用コア52の内周コア522を通り、第1低減部用コア52の蓋コア523を通り、前記外周コア521に戻る磁路の磁気回路が形成され、スラスト力低減部3gは、回転子2の回転子用バックヨーク21との間に、回転子2の回転子用バックヨーク21を吸引する軸方向の磁力を前記低減力として生成する。
このような構成の第7実施形態におけるSAG型同期モータAGgは、稼働すると、固定子1と回転子2との間にスラスト力(吸引力)が働くが、前記スラスト力(吸引力)を、スラスト力低減部3gにおける、回転子2を吸引する軸方向の磁力(前記低減力)でキャンセル(相殺)可能となるため、軸方向のスラスト力を低減できる。
上記SAG型同期モータAGgは、リングコイルの第1低減部用コイル51を用いることで、構造を簡単にすることができる。
なお、上述の実施形態において、第1低減部用コア52一部は、前記図略の筐体(ハウジング、ケース)で形成されてもよい。例えば、第1低減部用コア52の蓋コア523が前記図略の筐体(ハウジング、ケース)で形成(兼用)される。あるいは、例えば、第1低減部用コア52の外周コア521が前記図略の筐体で形成(兼用)される。このようなSAG型同期モータAGgは、第1低減部用コア52の一部が前記図略の筐体で形成されていることで、部品点数を低減でき、構造を簡単にすることができる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第8実施形態)
図10は、第8実施形態におけるシングルアキシャルギャップ型同期モータを説明するための図である。図10Aは、断面図であり、図10Bは、スラスト力低減部の平面図である。
第1ないし第6実施形態におけるスラスト力低減部3a〜3fは、固定子1と回転子2との間に配置されたが、第8実施形態のスラスト力低減部3hは、第7実施形態のスラスト力低減部3gと同様に、固定子1および回転子2の外部、例えば、軸方向における回転子2の外部に配置されるものである。そして、第7実施形態のスラスト力低減部3gは、リングコイルの第1低減部用コイル51を備えたが、第8実施形態のスラスト力低減部3hは、長尺な線状の導体部材を巻き回した1対の第2および第3低減部用コイルを備えるものである。
このような第8実施形態におけるSAG型同期モータAGhは、例えば、図10に示すように、固定子1と、回転子2と、スラスト力低減部3hと、出力軸6とを備える。
第8実施形態のスラスト力低減部3hは、固定子1と回転子2との間に作用するスラスト力を低減するものであり、第8実施形態では、スラスト力低減部3hは、図10に示すように、絶縁被覆された、長尺な線状の導体部材を巻き回した1対の第2および第3低減部用コイル53、54と、回転子2とで、第2低減部用コイル53を通り、第2および第3低減部用コイル53、54の外部を通り、第3低減部用コイル54を通り、前記回転子を通って第2低減部用コイル53に戻る磁路の磁気回路を形成する第2低減部用コア55とを備える。より具体的には、第2低減部用コア55は、第2低減部用コイル53の芯となる第1コイル用コア551と、第3低減部用コイル54の芯となる第2コイル用コア5522と、軸方向における回転子2と対向しない端面で、これら第1および第2コイル用コア551、552とを各端部で連結する連結コア553とを備える。したがって、第2低減部用コイル53は、第1コイル用コア551に、前記長尺な線状の導体部材を巻き回して形成され、同様に、第3低減部用コイル54は、第2コイル用コア552に、前記長尺な線状の導体部材を巻き回して形成されている。第2低減部用コア55は、回転子用バックヨーク21、例えば、比較的高い透磁率を持つ鉄やフェライト等で円柱状に形成される。
そして、本実施形態では、連結コア553は、図10Aに示すように、スラスト力低減部3h、固定子1および回転子2を収容する筐体(ハウジング、ケース)7で形成されている。すなわち、第2低減部用コア55の一部は、前記ケースで形成されている。したがって、第1および第2コイル用コア551、552は、軸方向に沿って延びるように、前記各端部で、所定の間隔を空けて前記ケースの内面(例えば天井面)に、例えば接着剤による接着等で固定されている。
本実施形態のスラスト力低減部3hは、図10Bに示すように、このような第2および第3低減部用コイル53、54ならびに第2低減部用コア55から成るスラスト力低減ユニット3h−kを複数備えている。図10Bに示す例では、スラスト力低減部3hは、周方向に90度間隔で配置された4個の第1ないし第4スラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4を備えている。各スラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4において、第2および第3低減部用コイル53、54は、略周方向に沿って直線上で並置されている。
そして、このような構成のスラスト力低減部3hは、4個の第1ないし第4スラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4における各第1および第2コイル用コア551、552の端面を回転子2に向け、回転子2の回転子用バックヨーク21から軸方向に所定の間隔を空けて、軸方向における回転子2の外部に配置される。したがって、第8実施形態におけるSAG型同期モータAGhでは、スラスト力低減部3h、回転子2および固定子1は、この前記スラスト力低減部3h、前記回転子2および前記固定子1の順で軸方向に配置されている。4個の第1ないし第4スラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4における各第2および第3低減部用コイル53、54には、図略の配線によって、電磁石となるように、所定の電力量(電流量)で給電される。
第8実施形態では、図10Aに示すように、第2低減部用コア55と回転子2とで磁気回路が形成される。より具体的には、第2低減部用コア55の第1コイル用コア551からエアギャップを介して回転子2の回転子用バックヨーク21を通り、エアギャップを介して第2低減部用コア55の第2コイル用コア552を通り、第2低減部用コア55の連結コア553(筐体7)を通り、前記第1コイル用コア551に戻る磁路の磁気回路が形成され、スラスト力低減部3hは、回転子2の回転子用バックヨーク21との間に、回転子2の回転子用バックヨーク21を吸引する軸方向の磁力を前記低減力として生成する。
このような構成の第8実施形態におけるSAG型同期モータAGhは、稼働すると、固定子1と回転子2との間にスラスト力(吸引力)が働くが、前記スラスト力(吸引力)を、スラスト力低減部3hにおける、回転子2を吸引する軸方向の磁力(前記低減力)でキャンセル(相殺)可能となるため、軸方向のスラスト力を低減できる。
上記SAG型同期モータAGhは、第2低減部用コア55の一部が筐体7で形成されていることで、部品点数を低減でき、構造を簡単にすることができる。
上記SAG型同期モータAGhは、2個の第2および第3低減部用コイル53、54を備えるので、第2および第3低減部用コイル53、54(2軸)それぞれで前記低減力を調整できるから、前記低減力を調整し易い。
上記SAG型同期モータAGhは、複数のスラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4を備えるので、前記複数のスラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4それぞれに給電する各電力量(電流量)それぞれを調整することで、前記面ブレの低減が可能となる。
なお、このために、第8実施形態におけるスラスト力低減部3hは、複数のスラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4それぞれで生じる前記スラスト力を低減するための各低減力を個別に制御する制御部(不図示)をさらに備えてもよい。前記制御部は、複数のスラスト力低減ユニット3h−1〜3h−4それぞれに給電する各電力量(電流量)それぞれを制御(調整)する回路である。前記制御部は、例えば、周方向に180度間隔で配置された第1および第3スラスト力低減ユニット3h−1、3h−3それぞれに給電される各電力量(電流量)を制御することで、第1スラスト力低減ユニット3h−1から第3スラスト力低減ユニット3h−3に至るX方向において、一方側(例えば第1スラスト力低減ユニット3h−1側)での固定子1と回転子2との間における軸方向の第X1間隔と、他方側(例えば第3スラスト力低減ユニット3h−3側)での固定子1と回転子2との間における軸方向の第X2間隔とを制御(調整)できる。また例えば、前記制御部は、周方向に180度間隔で配置された第2および第4スラスト力低減ユニット3h−2、3h−4それぞれに給電される各電力量(電流量)を制御することで、第2スラスト力低減ユニット3h−2から第4スラスト力低減ユニット3h−4に至るY方向(X方向に直交するY方向)において、一方側(例えば第3スラスト力低減ユニット3h−3側)での固定子1と回転子2との間における軸方向の第Y1間隔と、他方側(例えば第4スラスト力低減ユニット3h−4側)での固定子1と回転子2との間における軸方向の第Y2間隔とを制御(調整)できる。これにより、前記制御部を備えたスラスト力低減部3hは、前記面ブレを低減できる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。