JP6705331B2 - モータ、モータの制御方法、及びモータの制御装置 - Google Patents

モータ、モータの制御方法、及びモータの制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、モータ、モータの制御方法、及びモータの制御装置に関するものである。
モータにおいて、周方向に複数の爪状磁極を有する回転子鉄心と、回転子鉄心内に内包された界磁磁石とによって構成され、それら各爪状磁極が交互に異なる磁極に機能させるランデル型ロータを備えたランデル型モータが知られている(例えば特許文献1)。この特許文献1には、ランデル型ロータに加えて、周方向に複数の爪状磁極を有する固定子鉄心と、固定子鉄心に内包された環状巻線とによって構成され、それら各爪状磁極が交互に異なる磁極に機能させるランデル型ステータを備えたランデル型モータが開示されている。
このランデル型モータは、回転子(ロータ)及び固定子(ステータ)が共にランデル型で構成されていることから、マルチランデル型モータとも言われている。
特開2013−226026号公報
ところで、モータにおいて、トルク向上や出力(トルク、回転数)向上を図ることは常に考えられていることである。上記したマルチランデル型モータにおいても、トルク向上や出力向上を図ることが発明者にて検討されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、トルク向上や出力向上を図ることができるモータ、モータの制御方法、及びモータの制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するモータは、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータと、前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧を制御する制御部とを備え、前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度に設定されたモータであって、前記制御部は、前記A相入力電圧及び前記B相入力電圧の波形に対して、A相及びB相用基本電圧波形よりそれぞれ進み側の位相角を与え、通電幅を180度以下に設定する。
この構成によれば、制御部は、A相及びB相入力電圧の波形に対して、各基本電圧波形よりそれぞれ進み側の位相角を与え、通電幅を180度以下に設定することから、モータの出力向上及びトルク向上が図れる(図6(a)(b)参照)。
上記課題を解決するモータの制御方法は、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータとを備え、前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度とした構成のモータの制御方法であって、前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧は、A相及びB相用基本電圧波形に対し、それぞれ進み側の位相角が24〜42度で通電幅が150〜170度に設定される。
この構成によれば、A相及びB相入力電圧は、各基本電圧波形に対しそれぞれ進み側の位相角が24〜42度で通電幅が150〜170度に設定されることから、より確実にモータの出力向上が図れる(図6(a)参照)。
上記課題を解決するモータの制御方法は、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータとを備え、前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度とした構成のモータの制御方法であって、前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧は、A相及びB相用基本電圧波形に対し、それぞれ進み側の位相角が0〜36度(0を含まず)で通電幅が155〜180度に設定される。
この構成によれば、A相及びB相入力電圧は、各基本電圧波形に対しそれぞれ進み側の位相角が0〜36度(0を含まず)で通電幅が155〜180度に設定されることから、より確実にモータのトルク向上が図れる(図6(b)参照)。
上記課題を解決するモータの制御方法は、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータとを備え、前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度とした構成のモータの制御方法であって、前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧は、A相及びB相用基本電圧波形に対し、それぞれ進み側の位相角が24〜36度で通電幅が155〜170度に設定される。
この構成によれば、A相及びB相入力電圧は、各基本電圧波形に対しそれぞれ進み側の位相角が24〜36度で通電幅が155〜170度に設定されることから、より確実にモータの出力向上とトルク向上との両立が図れる(図6(a)(b)参照)。
上記課題を解決するモータの制御装置は、上記モータの制御方法にて設定されるA相及びB相入力電圧を生成してモータの制御を行う。
この構成によれば、トルク向上や出力向上が図れるモータの制御装置の提供が可能である。
本発明のモータ、モータの制御方法、及びモータの制御装置によれば、トルク向上や出力向上を図ることができる。
実施形態のモータの斜視図。 実施形態のステータの一部を切断したモータの分解斜視図。 実施形態のステータの一部を切断した径方向から見たモータの分解正面図。 実施形態のモータの駆動制御回路図。 (a)は入力電圧の基本電圧波形図、(b)は(a)の位相角を変化させた波形図、(c)は(b)の位相角及び通電幅を変化させた波形図。 (a)は各位相角における通電幅に対する出力を示すグラフ、(b)は各位相角における通電幅に対するトルクを示すグラフ。
以下、モータ(制御方法及び制御装置)の一実施形態を図に従って説明する。
図1は、本実施形態のモータMの全体斜視図を示し、回転軸1にはロータ2が固着されている。そのロータ2の外側には、モータハウジング(図示せず)に固着されたステータ3が配置されている。モータMは、図1において、上からマルチランデル型のA相モータMa、マルチランデル型のB相モータMbが順に積層された2層2相のマルチランデル型モータである。A相モータMa及びB相モータMbは、それぞれマルチランデル型の単一モータとして構成されている。
(ロータ2)
図2及び図3に示すように、モータMのロータ2は、ランデル型構造のA相ロータ2a及びB相ロータ2bを積層した2層2相構造のロータである。A相ロータ2a及びB相ロータ2bは、同じ構成であって、それぞれ第1ロータコア10、第2ロータコア20及び界磁磁石30から構成されている。
(第1ロータコア10)
第1ロータコア10は、電磁鋼板にて作製され、円環状をなす第1ロータコアベース11を有している。第1ロータコアベース11の中央位置には、回転軸1に外嵌固着するための貫通穴12が形成されている。また、第1ロータコアベース11の外周面11aには、等角度間隔に8個の同一形状の第1ロータ側爪状磁極13が、径方向外側に突出されその先端が軸方向の第2ロータコア20側に屈曲形成されている。
第1ロータ側爪状磁極13において、第1ロータコアベース11の外周面11aから径方向外側に突出した部分を第1ロータ側基部13xとし、軸方向に屈曲された先端部分を第1ロータ側磁極部13yとする。第1ロータ側基部13xを軸方向から見たときの形状は、径方向外側にいくほど幅狭になる台形状をなしている。第1ロータ側磁極部13yを径方向から見たときの形状は、長方形状をなしている。また、第1ロータ側磁極部13yを軸方向から見たときの形状は、回転軸1の中心軸線Oを中心とした円周に沿った円弧形状をなしている。また、各第1ロータ側爪状磁極13の周方向角度範囲は、隣り合う第1ロータ側爪状磁極13間の隙間の角度範囲より小さく設定されている。
(第2ロータコア20)
第2ロータコア20は、第1ロータコア10と同一材質及び同一形状であって、円環状をなす第2ロータコアベース21を有している。第2ロータコアベース21の中央位置には、回転軸1に外嵌固着するための貫通穴22が形成されている。また、第2ロータコアベース21の外周面21aには、等角度間隔に8個の同一形状の第2ロータ側爪状磁極23が、径方向外側に突出されその先端が軸方向の第1ロータコア10側に屈曲形成されている。
第2ロータ側爪状磁極23において、第2ロータコアベース21の外周面21aから径方向外側に突出した部分を第2ロータ側基部23xとし、軸方向に屈曲された先端部分を第2ロータ側磁極部23yとする。第2ロータ側基部23xを軸方向から見たときの形状は、径方向外側にいくほど幅狭になる台形状をなしている。第2ロータ側磁極部23yを径方向から見たときの形状は、長方形状をなしている。また、第2ロータ側磁極部23yを軸方向から見たときの形状は、回転軸1の中心軸線Oを中心とした円周に沿った円弧形状をなしている。また、各第2ロータ側爪状磁極23の周方向角度範囲は、隣り合う第2ロータ側爪状磁極23間の隙間の角度範囲より小さく設定されている。
そして、第2ロータコア20と第1ロータコア10とは、軸方向から見て、それぞれ第2ロータコア20の第2ロータ側爪状磁極23が第1ロータコア10の第1ロータ側爪状磁極13間に位置するように配置固定される。このとき、第2ロータコア20と第1ロータコア10とは、軸方向において各ロータコアベース11,21間に界磁磁石30が配置されるようにして組み付けられる。この組付状態では、第1ロータ側爪状磁極13の先端面が第2ロータコアベース21の磁石30とは反対面と面一となり、第2ロータ側爪状磁極23の先端面が第1ロータコアベース11の磁石30とは反対面と面一となる。
(界磁磁石30)
界磁磁石30は、フェライト焼結磁石等よりなる円環板状の永久磁石である。界磁磁石30は、その中央位置に回転軸1を貫通させる貫通穴32が形成されている。そして、界磁磁石30の一側面が第1ロータコアベース11と当接し、他側面が第2ロータコアベース21と当接するようにして、界磁磁石30は第1及び第2ロータコアベース11,21間に挟持固定される。界磁磁石30の外径は、第1及び第2ロータコアベース11,21の外径と一致するように設定されている。界磁磁石30は、軸方向に磁化されていて、第1ロータコア10側をN極、第2ロータコア20側をS極となるように磁化されている。従って、この界磁磁石30によって、第1ロータコア10の第1ロータ側爪状磁極13はN極として機能し、第2ロータコア20の第2ロータ側爪状磁極23はS極として機能する。
このように第1及び第2ロータコア10,20と界磁磁石30とから構成されたA相ロータ2a及びB相ロータ2bは、所謂ランデル型構造のロータとなる。A相ロータ2a及びB相ロータ2bは、N極となる第1ロータ側爪状磁極13とS極となる第2ロータ側爪状磁極23とが周方向に交互に配置され、磁極数が16極(極数対が8個)のロータとなる。そして、A相ロータ2a及びB相ロータ2bは、軸方向に積層されて2層2相のランデル型のロータ2として構成される。
また、A相ロータ2a及びB相ロータ2bの積層構造において、A相ロータ2aとB相ロータ2bとは、それぞれの第2ロータコア20同士を当接させて積層される。また、A相ロータ2aの第2ロータ側爪状磁極23(第1ロータ側爪状磁極13)に対し、B相ロータ2bの第2ロータ側爪状磁極23(第1ロータ側爪状磁極13)が反時計回り方向に電気角θ2(45度)だけずらして積層される。
(ステータ3)
図2及び図3に示すように、ロータ2の径方向外側に配置されたステータ3は、ランデル型構造のA相ステータ3a及びB相ステータ3bを積層した2層2相構造のステータである。A相ステータ3a及びB相ステータ3bは、径方向内側において対応するA相ロータ2a及びB相ロータ2bとそれぞれ対向するように軸方向に積層されている。A相ステータ3a及びB相ステータ3bは、同じ構成であって、それぞれ第1ステータコア40、第2ステータコア50及びコイル部60とから構成されている。
(第1ステータコア40)
第1ステータコア40は、電磁鋼板にて作製され、円環状をなす第1ステータコアベース41を有している。第1ステータコアベース41の径方向外側部には、軸方向に円筒状に延びる第1ステータ側円筒外壁42が形成されている。また、第1ステータコアベース41の内周面41aには、等角度間隔に8個の同形状の第1ステータ側爪状磁極43が、径方向内側に突出されその先端が軸方向の第2ステータコア50側に屈曲形成されている。
第1ステータ側爪状磁極43において、第1ステータコアベース41の内周面41aから径方向内側に突出した部分を第1ステータ側基部43xとし、軸方向に屈曲された先端部分を第1ステータ側磁極部43yとする。第1ステータ側基部43xを軸方向から見たときの形状は、径方向内側にいくほど幅狭になる台形状をなしている。第1ステータ側磁極部43yを径方向から見たときの形状は、長方形状をなしている。また、第1ステータ側磁極部43yを軸方向から見たときの形状は、回転軸1の中心軸線Oを中心とした円周に沿った円弧形状をなしている。また、各第1ステータ側爪状磁極43の周方向角度範囲は、隣り合う第1ステータ側爪状磁極43間の隙間の角度範囲より小さく設定されている。
(第2ステータコア50)
第2ステータコア50は、第1ステータコア40と同一材質及び同一形状であって、円環状をなす第2ステータコアベース51を有している。第2ステータコアベース51の径方向外側部には、軸方向に円筒状に延びる第2ステータ側円筒外壁52が形成されている。この第2ステータ側円筒外壁52と第1ステータ側円筒外壁42とは、軸方向に当接するようになっている。第2ステータコアベース51の内周面51aには、等角度間隔に8個の同形状の第2ステータ側爪状磁極53が、径方向内側に突出されその先端が軸方向の第1ステータコア40側に屈曲形成されている。
第2ステータ側爪状磁極53において、第2ステータコアベース51の内周面51aから径方向内側に突出した部分を第2ステータ側基部53xとし、軸方向に屈曲された先端部分を第2ステータ側磁極部53yとする。第2ステータ側基部53xを軸方向から見たときの形状は、径方向内側にいくほど幅狭になる台形状をなしている。第2ステータ側磁極部53yを径方向から見たときの形状は、長方形状をなしている。また、第2ステータ側磁極部53yを軸方向から見たときの形状は、回転軸1の中心軸線Oを中心とした円周に沿った円弧形状をなしている。また、各第2ステータ側爪状磁極53の周方向角度範囲は、隣り合う第2ステータ側爪状磁極53間の隙間の角度範囲より小さく設定されている。
そして、第2ステータコア50と第1ステータコア40とは、第1ステータ側円筒外壁42と第2ステータ側円筒外壁52とを当接させるとともに、軸方向から見て、それぞれ第2ステータコア50の第2ステータ側爪状磁極53が第1ステータコア40の第1ステータ側爪状磁極43間に位置するように配置固定される。このとき、第1及び第2ステータコアベース41,51、第1及び第2ステータ側円筒外壁42、52、及び第1及び第2ステータ側爪状磁極43,53の内側には断面長方形状の環状空間が形成され、この空間にコイル部60が配置されるようにして組み付けられる。この組付状態では、第1ステータ側爪状磁極43の先端面が第2ステータコアベース51のコイル部60とは反対側面と面一となり、第2ステータ側爪状磁極53の先端面が第1ステータコアベース41のコイル部60とは反対側面と面一となる。
(コイル部60)
コイル部60は、環状巻線61を有し、その周囲が樹脂モールドよりなるコイル絶縁層62にて覆われてなる。そして、コイル部60は、第1及び第2ステータコアベース41,51、第1及び第2ステータ側円筒外壁42、52、及び第1及び第2ステータ側爪状磁極43,53の各内側面に当接するようにしてその内側面間の環状空間に収容される。
このように第1及び第2ステータコア40,50とコイル部60とから構成されたA相ステータ3a及びB相ステータ3bは、所謂ランデル型構造のステータとなる。A相ステータ3a及びB相ステータ3bは、第1及び第2ステータコア40,50間の環状巻線61にて第1及び第2ステータ側爪状磁極43,53をその時々で互いに異なる磁極に励磁する16極の所謂ランデル型構造のステータとなる。そして、A相ステータ3a及びB相ステータ3bは、軸方向に積層されて2層2相のランデル型のステータ3として構成される。
また、A相ステータ3a及びB相ステータ3bの積層構造において、A相ステータ3aとB相ステータ3bとは、それぞれの第2ステータコア50同士を当接させて積層される。また、A相ステータ3aの第1ステータ側爪状磁極43(第2ステータ側爪状磁極53)に対し、B相ステータ3bの第1ステータ側爪状磁極43(第2ステータ側爪状磁極53)が時計回り方向に電気角θ1(45度)だけずらして積層される。
つまりこれにより、ステータ3側のA相及びB相ステータ3a,3bのずれ方向と、ロータ2側のA相及びB相ロータ2a,2bのずれ方向とが逆方向となっており、それぞれ45度ずつずれていることから、ステータ3側のA相及びB相ステータ3a,3bとロータ2側のA相及びB相ロータ2a,2bとは電気角で90度(電気角θ1+|θ2|)ずれるようにして構成されている。そして、A相ステータ3aのコイル部60(環状巻線61)には2相交流電源のうちのA相入力電圧vaが印加され、B相ステータ3bのコイル部60(環状巻線61)には2相交流電源のうちのB相入力電圧vbが印加される。
次に、上記のように構成した2層2相のランデル型のモータMの駆動制御態様について図4を用いて説明する。
図4に示すように、駆動制御回路70は、A相駆動回路部71、B相駆動回路部72、及び、両駆動回路部71,72を駆動制御する制御回路73を有している。
(A相駆動回路部71)
A相駆動回路部71は、4個のMOSトランジスタQa1,Qa2,Qa3,Qa4を用いたフルブリッジ回路にて構成される。4個のMOSトランジスタQa1〜Qa4は、A相ステータ3aの環状巻線61(以下、A相環状巻線61aという)を挟んで、襷掛けに接続されたMOSトランジスタQa1,Qa4の組とMOSトランジスタQa2,Qa3の組とに分かれる。そして、2つの組のMOSトランジスタQa1,Qa4とMOSトランジスタQa2,Qa3とを交互にオン・オフさせることによって、A相駆動回路部71に供給される例えば12ボルトの直流電源GからA相入力電圧vaを生成してA相環状巻線61aに印加する。
(B相駆動回路部72)
B相駆動回路部72は、同じく4個のMOSトランジスタQb1,Qb2,Qb3,Qb4を用いたフルブリッジ回路にて構成される。4個のMOSトランジスタQb1〜Qb4は、B相ステータ3bの環状巻線61(以下、B相環状巻線61bという)を挟んで、襷掛けに接続されたMOSトランジスタQb1,Qb4の組とMOSトランジスタQb2,Qb3の組とに分かれる。そして、2つの組のMOSトランジスタQb1,Qb4とMOSトランジスタQb2,Qb3とを交互にオン・オフさせることによって、同じく直流電源GからB相入力電圧vbを生成してB相環状巻線61bに印加する。
(制御回路73)
制御回路73は、A相駆動回路部71の各MOSトランジスタQa1〜Qa4のゲート端子にそれぞれ出力する駆動信号Sa1〜Sa4を生成する。つまり、制御回路73は、MOSトランジスタQa1,Qa4の組とMOSトランジスタQa2,Qa3の組を交互にオン・オフさせて、A相環状巻線61aの通電を制御するための駆動信号Sa1〜Sa4を生成している。
また、制御回路73は、B相駆動回路部72の各MOSトランジスタQb1〜Qb4のゲート端子にそれぞれ出力する駆動信号Sb1〜Sb4を生成する。つまり、制御回路73は、MOSトランジスタQb1,Qb4の組とMOSトランジスタQb2,Qb3の組を交互にオン・オフさせて、B相環状巻線61bの通電を制御するための駆動信号Sb1〜Sb4を生成している。
ここで、図5(a)において、A相及びB相環状巻線61a,61bに印加させるA相及びB相入力電圧va,vbの基本電圧波形αを示す。A相及びB相入力電圧va,vbの位相差は、本実施形態では90度に設定されている。また、A相及びB相入力電圧va,vbの基本電圧波形αの正側及び負側の各極性の通電幅θwはそれぞれ180度である。本発明者は、A相及びB相入力電圧va,vbの基本電圧波形αから進み側に位相を変化させ(位相角θdの設定)、またそれに伴い通電幅θwを180度から小さく変化させたときのモータMのトルクや出力(トルク、回転数)の変化を検討した。
ちなみに、図5(b)に示す電圧波形は、A相及びB相入力電圧va,vbの基本電圧波形αに対し、進み側の位相角θdのみを設定した第1電圧波形βである。また、図5(c)に示す電圧波形は、A相及びB相入力電圧va,vbの基本電圧波形αに対し、進み側の位相角θdを設定するとともに、それに伴って通電幅θwを180度から小さくした第2電圧波形γである。通電幅θwは、中央位置を基準として立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジを同等に変更し、その中央位置にて対称形状に変更する。
図6(a)及び図6(b)は、A相及びB相入力電圧va,vbの基本電圧波形αに対する位相角θd及び通電幅θwの変化と、モータMの出力及びトルクの変化を示している。
具体的に、図6(a)は、位相角θdが0度(基本電圧波形α)、12度、24度、36度、42度の各角度において、通電幅θwを120〜180度の範囲で10度ごとに変化させたときのモータMの出力変化(トルク、回転数)をグラフとしたものである。
図6(a)から明らかなように、位相角θdを0度より大きく、通電幅θwを180度以下に設定した場合の出力値は、位相角θdが0度かつ通電幅θwが180度のとき、すなわち基本電圧波形αのときの出力値である第1基準値X1を上回る。
また、位相角θdが0度のとき、通電幅θwが140度付近でモータMの出力が最大値となる。このときの出力値を第2基準値X2とするとき、第2基準値X2を上回るような位相角θd及び通電幅θwの範囲は、位相角θdが12度のとき通電幅θwが125〜165度である。出力の最大値は通電幅θwが150±5度付近である。また、位相角θdが24度のとき通電幅θwが125〜175度で出力が第2基準値X2を上回り、出力の最大値は通電幅θwが155±5度付近である。また、位相角θdが36度のとき通電幅θwが125〜180度で出力が第2基準値X2を上回り、出力の最大値は通電幅θwが160±5度付近である。また、位相角θdが42度のとき通電幅θwが130〜180度で出力が第2基準値X2を上回り、出力の最大値は通電幅θwが160±5度付近である。少なくとも位相角θdが0度から42度までの範囲では、モータMの出力の最大値も大きい。
これらから、A相及びB相入力電圧va,vbの位相角θd及び通電幅θwの設定に際し、基本電圧波形αに対する進み側の位相角θdを0度より大きく、通電幅θwを180度以下とすれば、モータMの出力向上を図ることが可能である。さらに、基本電圧波形αに対する進み側の位相角θdを24〜42度、通電幅θwを150〜170度とすれば、より確実にモータMの出力向上を図ることが可能である。
図6(b)は、位相角θdが0度(基本電圧波形α)、12度、24度、36度、42度の各角度において、通電幅θwを120〜180度の範囲で10度ごとに変化させたときのモータMのトルク変化をグラフとしたものである。
図6(b)から明らかなように、位相角θdを0度より大きく、通電幅θwを180度以下に設定した場合のトルクは、位相角θdが0度かつ通電幅θwが180度のとき、すなわち基本電圧波形αのときのトルクである基準値Yを上回る。
また、位相角θdが0度のとき、通電幅θwを180度から120度まで小さくするとモータMのトルクは次第に大きくなる。換言すると、位相角θdが0度の場合では、通電幅θwを120度から180度まで大きくすると、モータMのトルクは次第に小さくなる。位相角θdが0度のときのトルクの変化を基準曲線Zとすると、これを上回るような位相角θd及び通電幅θwの範囲は、位相角θdが12度のとき通電幅θwが135〜180度である。また、位相角θdが24度のとき通電幅θwが145〜180度でトルクが基準曲線Zを上回る。また、位相角θdが36度のとき通電幅θwが155〜180度でトルクが基準曲線Zを上回る。また、位相角θdが42度のとき通電幅θwが160〜180度でトルクが基準曲線Zを上回る。
また上記のように、位相角θdを0度以外の12度,24度,36度,42度に設定する場合、より確実に基準曲線Zを上回るような通電幅θwは160〜180度である。さらに、位相角θdが42度のときのトルクは、位相角θdが36度のときのトルクよりも全体的に下回るため、42度を含まないで位相角θdを設定する場合、より確実に基準曲線Zを上回るような通電幅θwは155〜180度である。
これらから、A相及びB相入力電圧va,vbの位相角θd及び通電幅θwの設定に際し、基本電圧波形αに対する進み側の位相角θdを0度より大きく、通電幅θwを180度以下とすれば、モータMのトルク向上を図ることが可能である。さらに、基本電圧波形αに対する進み側の位相角θdを0〜42度(0は含まず)、通電幅θwを160〜180度とすれば、より確実にモータMのトルク向上を図ることが可能である。また、42度を除いた位相角θdを0〜36度(0は含まず)では、通電幅θwを155〜180度とすれば、より確実にモータMのトルク向上を図ることが可能である。
さらに、図6(a)及び図6(b)の両特性を考慮し高出力及び高トルクの両立を図るには、位相角θdを24〜36度、通電幅θwを155〜170度に設定するのが好ましい。
位相角θdを0度、通電幅θwを180度(基本電圧波形α)に設定する場合、モータMのコイル部60にて発生する誘起電圧に対し電流の立ち下がりが遅れることで、誘起電圧の符号と電流の符号とが逆向きになる期間が存在し、マイナストルクが発生する。一方、通電幅θwを155〜170度に設定する場合、第1及び第2ステータ側爪状磁極43,53の極性の切り替え時に無通電区間が設けられ、その間に電流の立ち下がりが完了する。これにより、誘起電圧の符号と電流の符号とが逆向きになる期間が短くなり、マイナストルクの発生が抑制される。また、通電幅θwを155〜170度に設定することで、ロータ2及びステータ3間の磁気吸引力に有効な範囲のみで通電を行うことができる。さらに、進み側の位相角θdを24〜36度に設定する場合、電流の立ち上がりが前倒しされ、電流の立ち下がりの遅れによるマイナストルクの発生が抑制される。
このように通電幅θw及び位相角θdを適切な数値に設定することによって、マイナストルクの発生が抑制され、モータMの出力及びトルクの向上に繋がる。そして、本実施形態では、上記範囲内の位相角θd及び通電幅θwのA相及びB相入力電圧va,vbの生成が行われ、モータMの回転駆動が行われる。
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)A相及びB相環状巻線61a,61bに印加するA相及びB相入力電圧va,vbの波形において、基本電圧波形αに対してそれぞれ進み側の位相角θdを0度より大きく、通電幅θwを180度以下に設定すれば(図6(a)(b)参照)、モータMの出力向上及びトルク向上を図ることができる。
(2)A相及びB相環状巻線61a,61bに印加するA相及びB相入力電圧va,vbの波形において、基本電圧波形αに対してそれぞれ進み側の位相角θdを24〜42度で通電幅θwを150〜170度に設定すれば(図6(a)参照)、より確実にモータMの出力向上を図ることができる。
(3)A相及びB相入力電圧va,vbの波形において、基本電圧波形αに対してそれぞれ進み側の位相角θdを0〜36度(0を含まず)で通電幅θwを155〜180度に設定すれば、より確実にモータMのトルク向上を図ることができる。
(4)A相及びB相入力電圧va,vbの波形において、基本電圧波形αに対してそれぞれ進み側の位相角θdを24〜36度で通電幅θwを155〜170度に設定すれば、モータMの出力向上とトルク向上との両立を図ることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・A相及びB相入力電圧va,vbの進み側の位相角θd及び通電幅θwの設定の組み合わせは、モータMの出力向上やトルク向上が図れる範囲で適宜変更してもよい。
・モータMのロータ2及びステータ3の構成は一例であり、適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、ステータコア40,50及びロータコア10,20は共に電磁鋼板にて作製されていたが、電磁鋼板に代えて、圧縮成形により成形された圧粉磁心材料を用いてもよい。例えば、鉄粉等の磁性粉末と樹脂等の絶縁物を混ぜて金型で加熱プレス成形してステータコア40,50及びロータコア10,20を作るようにする。この場合、ステータコア40,50及びロータコア10,20の設計の自由度が高くなり、製造プロセスが非常に簡単になる。また、磁性粉末と絶縁物との配分量を調整することで、渦電流の抑制量を容易に調整することができる。
2…ロータ、2a…A相ロータ、2b…B相ロータ、3…ステータ、3a…A相ステータ、3b…B相ステータ、10…第1ロータコア(ロータコア)、13…第1ロータ側爪状磁極(爪状磁極)、20…第2ロータコア(ロータコア)、23…第2ロータ側爪状磁極(爪状磁極)、30…界磁磁石、40…第1ステータコア(ステータコア)、43…第1ステータ側爪状磁極(爪状磁極)、50…第2ステータコア(ステータコア)、53…第2ステータ側爪状磁極(爪状磁極)、61a…A相環状巻線(巻線)、61b…B相環状巻線(巻線)、70…駆動制御回路(制御部)、M…モータ、va…A相入力電圧、vb…B相入力電圧、θd…位相角、θw…通電幅。

Claims (5)

  1. 等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、
    等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータと、
    前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧を制御する制御部とを備え、
    前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度に設定されたモータであって、
    前記制御部は、前記A相入力電圧及び前記B相入力電圧の波形に対して、A相及びB相用基本電圧波形よりそれぞれ進み側の位相角を与え、通電幅を180度以下に設定することを特徴とするモータ。
  2. 等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、
    等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータとを備え、
    前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度とした構成のモータの制御方法であって、
    前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧は、A相及びB相用基本電圧波形に対し、それぞれ進み側の位相角が24〜42度で通電幅が150〜170度に設定されることを特徴とするモータの制御方法。
  3. 等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、
    等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータとを備え、
    前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度とした構成のモータの制御方法であって、
    前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧は、A相及びB相用基本電圧波形に対し、それぞれ進み側の位相角が0〜36度(0を含まず)で通電幅が155〜180度に設定されることを特徴とするモータの制御方法。
  4. 等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したA相用ロータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のロータコア間に界磁磁石を配置したB相用ロータとを積層した2層ロータと、
    等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したA相用ステータと、等角度間隔に複数の爪状磁極を有する一対のステータコア間に巻線を配置したB相用ステータとを積層した2層ステータとを備え、
    前記A相用ステータ及び前記A相用ロータと、前記B相用ステータ及び前記B相用ロータとの相対配置角度が電気角で90度とした構成のモータの制御方法であって、
    前記A相用巻線に印加するA相入力電圧及び前記B相用巻線に印加するB相入力電圧は、A相及びB相用基本電圧波形に対し、それぞれ進み側の位相角が24〜36度で通電幅が155〜170度に設定されることを特徴とするモータの制御方法。
  5. 請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のモータの制御方法にて設定されるA相及びB相入力電圧を生成してモータの制御を行うことを特徴とするモータの制御装置。
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