以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、本発明を光学機器の一例である交換レンズに適用した場合について説明するが、本発明は、レンズ一体型のデジタルカメラやビデオカメラ等の他の光学機器にも適用可能であり、また、その要旨の範囲内で種々の変形や変更が可能である。
図1は、本実施の形態に係る光学機器の一例である交換レンズの外観を概略的に示す斜視図である。図1において、交換レンズ101はカメラ本体1へ取り付けられた状態で示され、交換レンズ101に収容される撮像光学系の光軸方向がX軸方向と定義され、X軸方向と直交する2方向がそれぞれZ軸方向、Y軸方向と定義される。Z軸方向とY軸方向は互いに直交し、カメラ本体1を水平に構えた場合、Z軸方向は略水平方向と一致し、Y軸方向は略鉛直方向と一致する。また、Z軸回りの回転方向がピッチ(Pitch)方向と定義され、Y軸回りの回転方向をヨー(Yaw)方向と定義される。
図1(A)に示すように、カメラ本体1の正面(被写体側)から見て左側(カメラ本体1の背面から見て右側)には、ユーザがカメラ本体1を手で把持するためのグリップ部2が設けられる。また、カメラ本体1の上面には電源操作部3が配置される。カメラ本体1が電源オフ状態にあるときにユーザが電源操作部3をオン操作すると、カメラ本体1が電源オン状態となり撮像が可能となる。また、カメラ本体1が電源オン状態にあるときにユーザが電源操作部3をオフ操作すると、カメラ本体1が電源オフ状態になる。
カメラ本体1の上面には、モードダイアル4、レリーズボタン5及びアクセサリシュー6が設けられる。モードダイアル4をユーザが回転操作することで、撮像モードを切り替えることができる。撮像モードには、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件をユーザが任意に設定可能なマニュアル静止画撮像モード、自動で適正な露光量が得られるオート静止画撮像モード及び動画の撮像を行うための動画撮像モード等が含まれる。また、レリーズボタン5をユーザが半押し操作することで、オートフォーカスや自動露出制御等の撮像準備動作を指示することができ、全押し操作することで撮像を指示することができる。アクセサリシュー6には、外部フラッシュ等のアクセサリが脱着可能に装着される。また、カメラ本体1内には、交換レンズ101内の撮像光学系によって形成される被写体像を光電変換(撮像)する撮像素子が設けられる。
交換レンズ101は、レンズマウント102を介して、カメラ本体1に設けられたカメラマウント7に機械的及び電気的に接続される。交換レンズ101の内部には、被写体からの光を結像させて被写体像を形成する撮像光学系が収容される。
図1(B)に示すように、カメラ本体1の背面には、背面操作部8及び表示部9が設けられる。背面操作部8は、様々な機能が割り当てられた複数のボタンやダイアルを含む。カメラ本体1が電源オン状態であり、静止画撮像モード又は動画撮像モードが設定されると、表示部9には撮像素子によって撮像された被写体像のスルー画像が表示される。また、表示部9にはシャッタ速度や絞り値等の撮像条件を示す撮像パラメータが表示され、ユーザはその表示を見ながら背面操作部8を操作することにより、撮像パラメータの設定値を変更することが可能である。背面操作部8は、記録された撮像画像の再生を指示するための再生ボタンを含み、再生ボタンをユーザが操作することで撮像画像が表示部9に再生表示される。
図2は、交換レンズ101及びカメラ本体1の電気的及び光学的な構成を示すブロック図である。図2において、カメラ本体1は、カメラ本体1及び交換レンズ101へ電力を供給する電源部10と、電源操作部3、モードダイアル4、レリーズボタン5、背面操作部8及び表示部9のタッチパネル機構を含む操作部11とを有する。カメラ本体1に設けられたカメラ制御部12と交換レンズ101に設けられたレンズ制御部104とは互いに連係することによってカメラ本体1及び交換レンズ101を全体的に制御する。カメラ制御部12は、記憶部13に格納されるコンピュータプログラムを読み出して実行する。その際、カメラ制御部12は、レンズマウント102に設けられた電気接点105の通信端子を介して、レンズ制御部104と各種制御信号やデータ等の通信を行う。電気接点105は、電源部10から供給された電力を交換レンズ101に供給する電源端子を含む。
交換レンズ101が有する撮像光学系は、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズを含むフォーカス群201(レンズ群)と、光量調節動作を行う絞り群401と、像振れを低減する防振素子としてのシフトレンズを含む防振群510とを有する。防振群510は、シフトレンズを光軸に対して直交するZ軸方向及びY軸方向に平行な平面内で移動(シフト)させて、像振れを低減する防振動作を行う。さらに、交換レンズ101は、フォーカス群201を駆動するフォーカス駆動部301、絞り群401を駆動する絞り駆動部402及び防振群510を駆動する防振駆動部520を有する。
カメラ本体1は、シャッタユニット14、シャッタ駆動部15、撮像素子16、画像処理部17、焦点検出部18、表示部9及びカメラ制御部12を有する。シャッタユニット14は、交換レンズ101内の撮像光学系で集光され、撮像素子16で露光される光の量を調整する。撮像素子16は、撮像光学系により形成された被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。画像処理部17は、撮像信号に対して各種画像処理を施して画像信号を生成する。表示部9は、画像処理部17から出力された画像信号(スルー画像)を表示し、撮像パラメータを表示し、若しくは、記憶部13や不図示の記録媒体に記録された撮像画像を再生表示する。
カメラ制御部12は、操作部11における撮像準備操作(レリーズボタン5の半押し操作)に応じて、フォーカス群201の駆動を制御する。例えば、オートフォーカスが指示された場合、焦点検出部18は、画像処理部17で生成された画像信号に基づいて撮像素子16で結像される被写体像の焦点状態を判定し、焦点信号を生成してカメラ制御部12に送信する。それと同時に、フォーカス駆動部301は、フォーカス群201の現在位置を検出し、レンズ制御部104を介して現在位置を示す信号をカメラ制御部12に送信する。カメラ制御部12は、被写体像の焦点状態とフォーカス群201の現在位置とを比較し、そのずれ量からフォーカス駆動量を算出してレンズ制御部104に送信する。そして、レンズ制御部104は、フォーカス駆動部301を介してフォーカス群201を目標位置まで駆動制御し、被写体像の焦点ずれを補正する。
フォーカス駆動部301は、カム筒、駆動モータ、カム筒及び駆動モータを連結する減速ギア、フォーカス群201の基準位置を検出するフォトインタラプタ(以下、「PI」と略す。)を備える。なお、フォーカス駆動部301の詳細な構成については後述する。駆動モータとして、エンコーダを備えるDCモータや超音波モータを採用してもよい。また、PIは発光部から発した光を受光部で直接受光するが、PIの代わりに反射面からの反射光を受光するフォトリフレクタや、導電パターンに接触するブラシを用いてもよい。
カメラ制御部12は、操作部11で設定された絞り値やシャッタ速度の設定値に応じ、絞り駆動部402及びシャッタ駆動部15を介して、絞り群401及びシャッタユニット14の駆動を制御する。例えば、自動露出制御が指示された場合、カメラ制御部12は、画像処理部17で生成された輝度信号を受信して測光演算を行う。そして、この測光演算結果に基づいてカメラ制御部12は、操作部11におけるユーザの撮像指示操作(レリーズボタン5の全押し操作)に応じて、絞り群401の駆動を制御する。また、カメラ制御部12は、シャッタ駆動部15を介してシャッタユニット14の駆動を制御し、撮像素子16による露光処理を行う。
カメラ本体1は、ユーザによる手振れ等の像振れを検出するピッチ振れ検出部19及びヨー振れ検出部20を有する。ピッチ振れ検出部19とヨー振れ検出部20はそれぞれ、角速度センサ(振動ジャイロ)や角加速度センサを用いて、ピッチ方向及びヨー方向の像振れを検出して振れ信号を出力する。カメラ制御部12は、ピッチ振れ検出部19からの振れ信号を用いて防振群510(シフトレンズ)のY軸方向におけるシフト位置を算出する。同様に、カメラ制御部12は、ヨー振れ検出部20からの振れ信号を用いて防振群510のZ軸方向におけるシフト位置を算出する。そして、カメラ制御部12は、算出したピッチ方向のシフト位置やヨー方向のシフト位置に応じて、防振群510を目標位置まで駆動制御し、露光中やスルー画像表示中の像振れを低減する防振動作を行う。
図3及び図4は、交換レンズ101及びカメラ本体1における構成部品の位置関係を説明するための断面図である。図3及び図4の断面図は、X軸方向及びY軸方向に平行な平面で交換レンズ101及びカメラ本体1を切断した際の断面図を示し、それぞれフォーカス群201の繰り込み状態と繰り出し状態を示す。図3及び図4で示される中心線(図中一点鎖線)は、撮像光学系の光軸と略一致する。すなわち、中心線は光軸と同義である。
本実施の形態では、撮像光学系の一例として、第1のフォーカスレンズ211及び第2のフォーカスレンズ212を含むフォーカス群201と、第1の固定レンズ611及び第2の固定レンズ612を含む固定群601とからなる二群構成について説明する。
被写体像の焦点ずれに応じて所定の光学位置へ移動したフォーカス群201は、固定群601を介して、被写体からの光を撮像素子16の結像面上に結像させる。このとき、絞り群401は、第1のフォーカスレンズ211や第2のフォーカスレンズ212とともにフォーカス群201に収容され、フォーカス群201と一体的に移動する。一方、防振群510は、第1の固定レンズ611及び第2の固定レンズ612の間に配置され、固定群601の一部として機能する。
さらに、本実施の形態の撮像光学系は、撮像光学系全体としての光学性能を維持するために、第2のフォーカスレンズ212の位置を意図的にずらす調整機構を有する。これにより、組立工程において作業者は、全体の光学性能の状態を確認しながら、各構成部品に生じる製造誤差や組立ばらつき等の光学性能に対する悪影響を解消することができる。
図5及び図6は、交換レンズ101におけるフォーカス駆動機構の構成を詳細に説明するための分解図である。フォーカス駆動機構はフォーカス群201とフォーカス駆動部301からなる。図5(A)はフォーカス群201とフォーカス駆動部301が組付けられた状態を示し、図5(B)はフォーカス駆動機構をフォーカス群201とフォーカス駆動部301へ分解した状態を示し、図6はフォーカス駆動部301を分解した状態を示す。
フォーカス駆動部301の固定部材である固定筒106は、内周側に第1の固定レンズ611を保持し、被写体側に固定部材である直進案内筒107を保持する。直進案内筒107は、内周側にフォーカス群201を収容し、外周側に光軸周りに回転可能なカム筒108を保持する。カム筒108は、弾性部材109によって光軸方向に結像面側へ向けて付勢され、撮像素子の結像面側(カメラ本体1側)が固定筒106と摺動可能なように密着する。これによりカム筒108の光軸方向のガタつきが抑えられる。
フォーカス駆動部301の駆動モータ310は、その回転軸が光軸と平行となるように、固定筒106の被写体側の端面に固定される。駆動モータ310の回転軸には第1の減速ギア321が固定される。また、フォーカス駆動部301の第2の減速ギア322、第3の減速ギア323、第4の減速ギア324は、固定筒106の結像面側の端面にそれぞれが回転可能に保持される。具体的には、第2の減速ギア322、第3の減速ギア323、第4の減速ギア324の被写体側の回転軸は固定筒106の結像面側の端面に設けた保持孔に保持される。また、第2の減速ギア322、第3の減速ギア323、第4の減速ギア324の背面側の軸はギアカバー341に設けた保持孔によって保持される。ギアカバー341は第2の減速ギア322、第3の減速ギア323、第4の減速ギア324を挟むように固定筒106に固定される。
フォーカス駆動部301のカム筒ギア330は、第4の減速ギア324と係合するようにカム筒108の外周面に対して固定される。駆動モータ310が回転駆動すると、その駆動力は第1の減速ギア321、第2の減速ギア322、第3の減速ギア323、第4の減速ギア324、カム筒ギア330を介して減速された上で、カム筒108へ伝達される。これにより、カム筒108は、弾性部材109によって光軸方向への移動を規制された状態のまま、光軸を中心に回転する。
フォーカス群201は略円筒状のフォーカスレンズを含むアセンブリ部材であり、外周面において周方向に120°等分で配置される複数の移動コロ231(カム機構)を有する。移動コロ231はフォーカス群201の径方向へ突出する係合部材であり、後述する直進案内筒107の直進溝111へ係合する。フォーカス群201は、直進案内筒107の内周側へ、直進案内筒107の被写体側から挿入されて組み込まれる。直進案内筒107の内周面には光軸方向へ延伸する3個の貫通溝である直進溝111が形成される。これらの貫通溝はいずれも同じ溝幅となっている。フォーカス群201の各移動コロ231が直進溝111と係合することにより、直進案内筒107はフォーカス群201の回転方向への移動を規制して、光軸方向へのフォーカス群201の直進を案内する。
フォーカス駆動部301のカム筒108の内周面には、フォーカス群201のストローク(光軸方向の移動量)に対応して、回転方向に斜行する線形の軌跡を持つカム溝112(カム機構)が形成される。カム溝112は、各移動コロ231に対応するように配置された3つの非貫通の有底溝で構成される。各カム溝112はいずれも同じカム軌跡を描き、同じ溝幅で同じ溝深さとなっている。
フォーカス群201が直進案内筒107へ組み込まれる際、各移動コロ231は対応する直進溝111へ係合し、直進溝111から突出する各移動コロ231の頂部が対応するカム溝112へ係合する。なお、各移動コロ231は対応する直進溝111とカム溝112にそれぞれわずかな隙間を形成して係合する。カム筒108が回転すると、各対応する直進溝111とカム溝112に係合する移動コロ231は、カム溝112のカム軌跡に沿って移動し、その結果、フォーカス群201を光軸方向へ進退させる。
また、固定筒106には、門型形状の第1のPI371(検出素子)と第2のPI372(検出素子)が保持される。第1のPI371と第2のPI372では、スリットを構成するように発光部と受光部が互いに向かい合うように配置される。スリットにリブ等が挟まれる場合、発光部からの光が遮光されて受光部に受光されないため、Lowの信号が発生する。また、スリットに何も挟まれない場合、発光部からの光が受光部に受光されるため、Highの信号が発生する。
カム筒ギア330の外周側にはカム筒108の回転方向へ延在する、基準位置検出用の第1のリブ331(被検出部)と第2のリブ332(被検出部)が形成される。固定筒106へカム筒108が密着する際、第1のPI371のスリットへ第1のリブ331が挟まれ、第2のPI372のスリットへ第2のリブ332が挟まれる。
第1のPI371のスリットへ第1のリブ331が挟まれている間、第1のリブ331が発光部からの光を遮光するので、第1のPI371はLowの信号を発生する。カム筒108が回転して第1のリブ331の端部が第1のPI371のスリットを通過する際、発光部からの光が遮光されなくなるか、又は発光部からの光が遮光されるようになる。このとき、第1のPI371が生成する信号はLowからHighへ、若しくはHighからLowへ変化する。この信号が切り替わるタイミングが基準信号として利用される。
また、第2のPI372のスリットへ第2のリブ332が挟まれている間、第2のリブ332が発光部からの光を遮光するので、第2のPI372はLowの信号を発生する。カム筒108が回転して第2のリブ332の端部が第2のPI372のスリットを通過する際、発光部からの光が遮光されなくなるか、又は発光部からの光が遮光されるようになる。このときも、第2のPI372が生成する信号はLowからHighへ、若しくはHighからLowへ変化する。やはり、この信号が切り替わるタイミングも基準信号として利用される。
ところで、一般的に、フォーカス駆動部では、駆動モータとして、アクチュエータの一種であるステッピングモータが採用される。しかしながら、ステッピングモータは、相対的な駆動量しか制御することができず、基準位置に基づいた駆動制御を行っていないため、電源オフ状態では、フォーカス群201の現在位置が定まらない。したがって、ユーザが電源操作部3をオン操作した際、一旦、フォーカス群201を基準位置まで移動させる必要がある。そして、早期に基準位置を知るためには、フォーカス群201のストロークにおいて、基準位置を複数設定するのが好ましい。
これに対応して、本実施の形態に係るフォーカス駆動機構では、第1のPI371が生成する信号が切り替わるタイミングと、第2のPI372が生成する信号が切り替わるタイミングが異なるように構成される。具体的には、第1のリブ331が第1のPI371のスリットを通過するタイミングと、第2のリブ332が第2のPI372のスリットを通過するタイミングが異なるように、これらの構成要素が配置される。なお、第1のリブ331は回転方向に関する端部として第1の起点部331aと第3の起点部331bを有する。また、第2のリブ332は回転方向に関する端部として第2の起点部332aを有する。すなわち、本実施の形態では、3つの基準位置が設定される。
ところで、第1のリブ331や第2のリブ332はカム筒108の外周から突出するため、カム筒108の周辺部品は第1のリブ331や第2のリブ332との干渉を避ける必要がある。このとき、第1のリブ331や第2のリブ332がカム筒108の外周側の領域において大きな領域を占めるように配置されると、これらのリブを避けるために周辺部品の配置の自由度が少なくなり、各周辺部品を空間的に効率よく配置するのが困難となる。また、第1のリブ331や第2のリブ332はカム筒ギア330に形成されるため、カム筒ギア330が大きくなる。その結果、フォーカス駆動機構、引いては、交換レンズ101のコスト上昇と大型化を招く。本実施の形態では、これに対応して、第1のリブ331、第2のリブ332、第1のPI371や第2のPI372の配置を工夫する。
例えば、図7(A)に示すように、図中に実線の矢印で示す光軸方向に沿って眺めたときに第1のリブ331と第2のリブ332が重ならないように配置された場合、第1のリブ331と第2のリブ332がカム筒108の回転方向に長く延在する。このとき、図に示すように、第1のリブ331と第2のリブ332が延在する長さをL0とする。
また、図7(B)に示すように、図中に破線の矢印で示す光軸方向に対して直交する方向に沿って眺めたときに第1のPI371と第2のPI372が重ならないように配置された場合、第1のPI371と第2のPI372が光軸方向に長く延在する。このとき、図に示すように、第1のPI371と第2のPI372が延在する長さをl0とする。
これに対して、本実施の形態では、図7(C)に示すように、光軸方向に沿って眺めたときに第1のリブ331と第2のリブ332が少なくとも一部において重なるように配置される。このとき、第1のリブ331と第2のリブ332がカム筒108の回転方向に延在する長さL1は長さL0よりも短くなる。また、光軸方向に対して直交する方向に沿って眺めたときに第1のPI371と第2のPI372が少なくとも一部において重なるように配置される。このとき、第1のPI371と第2のPI372が光軸方向に延在する長さl1は長さl0よりも短くなる。なお、第1のリブ331と第2のリブ332はカム筒108の回転方向に沿い且つ互いに平行に配置される。
これにより、第1のリブ331や第2のリブ332がカム筒108の外周側の領域において大きな領域を占めるのを防止し、周辺部品の配置の自由度を大きくすることができる。また、カム筒ギア330を大きくする必要を無くすことができる。さらに、第1のリブ331や第2のリブ332の配置に付随して第1のPI371や第2のPI372が配置される領域も小さくすることができるため、2つのPIが実装されるフレキシブル基板(不図示)も小さくすることができる。その結果、交換レンズ101のコスト上昇と大型化を抑制することができる。
図8は、第1のPI371及び第2のPI372の発光部や受光部の配置について説明するための図である。上述したように、本実施の形態では、図中に破線の矢印で示す光軸方向に対して直交する方向に沿って眺めたときに第1のPI371と第2のPI372が重なるように配置される(図8(A))。このとき、光軸方向に関して、例えば、第1のPI371の発光部と第2のPI372の受光部が接近するため、第1のPI371の発光部から発した光がスリットから漏れ、誤って第2のPI372の受光部で受光されるおそれがある。
これに対応して、本実施の形態では、各発光部から互いに反対向きに光を発するように、第1のPI371と第2のPI372が配置される。例えば、図8(B)や図8(C)に示すように、光軸方向に対して直交する方向に沿って眺めたときに、第1のPI371の発光部371aと第2のPI372の発光部372aが重なるように配置してもよい。このとき、発光部371aは、第2のPI372の受光部372bとは反対方向に光371cを発するため、受光部372bが誤って光371cを受光することない。また、発光部372aは、第1のPI371の受光部371bとは反対方向に光372cを発するため、受光部371bが誤って光372cを受光することない。なお、光軸方向に対して直交する方向に沿って眺めたときに、第1のPI371の受光部371bと第2のPI372の受光部372bが重なるように配置しても、同様の効果を得ることができる。以上より、第1のPI371や第2のPI372による誤検出を防止することができる。
図9は、第1のPI371と第2のPI372の保持方法を説明するための図である。図9において、第1のPI371と第2のPI372は、いずれもカム筒108の外側において固定筒106に取り付けられ、スリットがカム筒108を向くように配置される。具体的に、第1のPI371と第2のPI372は固定筒106に開口する取り付け穴に嵌め込むように取り付けられる。各取り付け穴は、図中矢印で示す+X方向(光軸方向に関して被写体側)に拡張され、拡張された部分に弾性を有する第1の付勢部106a(付勢手段)と第2の付勢部106b(付勢手段)が配置される。第1の付勢部106aは、取り付け穴において、第1のPI371を図中矢印で示す+X方向とは逆方向の−X方向(光軸方向に関して結像面側)に付勢する。第2の付勢部106bは、取り付け穴において、第2のPI372を図中矢印で示す−X方向に付勢する。これにより、第1のPI371と第2のPI372は、固定筒106の結像面側に設けられた当接壁(図示しない)に当接し、光軸方向の位置が規定される。
ところで、カメラ本体1や交換レンズ101に衝撃が加わった場合、カム筒108とカム筒108に取り付けられたカム筒ギア330が+X方向に移動することがある。このとき、カム筒ギア330に形成された第1のリブ331と第2のリブ332も+X方向に移動して第1のPI371と第2のPI372にそれぞれ衝突することがある。
これに対して、第1のPI371や第2のPI372は−X方向に付勢されているため、+X方向へ移動する余地がある。すなわち、第1のリブ331や第2のリブ332が第1のPI371や第2のPI372にそれぞれ衝突しても、第1のリブ331や第2のリブ332とともに+X方向へ移動することができる。これにより、第1のリブ331、第2のリブ332、第1のPI371や第2のPI372が衝突によって破損するのを防止することができる。また、このとき、第1の付勢部106aや第2の付勢部106bは緩衝材として機能し、第1のリブ331や第2のリブ332の第1のPI371や第2のPI372への衝突時の衝撃を吸収する。
次いで、本実施の形態におけるフォーカス駆動機構で基準信号が発生する過程について説明する。本実施の形態では、フォーカス群201の光軸方向の総移動領域Aを4つの移動領域に区分する。具体的には、総移動領域Aを結像面側から被写体側へ向けて第1の領域A1、第2の領域A2、第3の領域A3及び第4の領域A4に区分する。また、隣接する第1の領域A1と第2の領域A2の境界が第1の基準位置として設定され、隣接する第2の領域A2と第3の領域A3の境界が第2の基準位置として設定される。さらに、隣接する第3の領域A3と第4の領域A4の境界が第3の基準位置として設定される。
図10は、各領域におけるフォーカス群201、第1のリブ331、第2のリブ332、第1のPI371及び第2のPI372の位置関係を示す斜視図である。図11は、フォーカス群201が移動するに伴い、第1のPI371や第2のPI372が発生する信号が変化する様子を示すグラフである。
本実施の形態では、第1の基準位置において、第1のリブ331の第1の起点部331aが第1のPI371のスリットを通過するように、第1のリブ331と第1のPI371の位置関係が設定される。さらに、第2の基準位置において、第2のリブ332の第2の起点部332aが第2のPI372のスリットを通過するように、第2のリブ332と第2のPI372の位置関係が設定される。また、第3の基準位置において、第1のリブ331の第3の起点部331bが第1のPI371のスリットを通過するように、第1のリブ331と第1のPI371の位置関係が設定される。これにより、第1のPI371や第2のPI372が発生する基準信号により、フォーカス群201の位置を把握することができる。
図10(A)は、フォーカス群201が第1の領域A1に位置する状態を示す図である。第1の領域A1は、フォーカス群201の焦点位置が最も無限側に位置し、フォーカス群201の繰り出し量が最も少なく、交換レンズ101の全長が最も短くなる領域である。
通常、カメラ本体1の電源操作部3のオフ操作を行うと、交換レンズ101の全長が最も短くなる状態、すなわち、繰り出し量が最も少なくなる第1の領域A1にフォーカス群201は移動する。その後、交換レンズ101への給電が切断される。すなわち、通常の電源オフ操作後の電源オン操作では、所望の位置まで移動させるために必要な基準位置として第1の基準位置が使用される。
図10(A)に示すように、第1の領域A1では、第1のリブ331におけるフォーカス群201が繰り出す際の回転方向(以下、「正回転方向」という。)の端部である第1の起点部331aは第1のPI371に達していない。したがって、第1のPI371は第1のリブ331を挟まず、第1のPI371において発光部371aから発せられた光は第1のリブ331で遮光されないため、Highの信号が発生する。一方、第1の領域A1では、第2のPI372のスリットに第2のリブ332が挟まれるため、第2のPI372において発光部372aから発せられた光は第2のリブ332で遮光され、Lowの信号が発生する。
したがって、レンズ制御部104は、電源オン操作を行ったときに第1のPI371からHighの信号が発生し、且つ第2のPI372からLowの信号が発生していることを認識すると、フォーカス群201が第1の領域A1に存在すると判断する。
そして、レンズ制御部104は、結像面側から見て時計周り(正回転方向)にカム筒108が回転するようにフォーカス駆動部301を制御する。これにより、第1の起点部331aが第1のPI371のスリットを通過し、第1のPI371が発生する信号はHiからLowに変化する。ここで、レンズ制御部104には、第2のPI372が発生する信号がLowのままで、第1のPI371が発生する信号がHiからLowに変化するときのフォーカス群201の位置は予め第1の基準位置として記憶されている。したがって、レンズ制御部104は、第1のPI371が発生する信号の変化によって第1の基準位置を検出することができる。これによりフォーカス群201の位置を特定することができる。そして、第1の基準位置を基準としてフォーカス駆動部301を駆動させることにより、所望の位置へフォーカス群201を移動させることができる。
ところで、電源オン状態のままで交換レンズ101をカメラ本体1から取り外したり、電源部10を取り外したりして、電源操作部3のオフ操作以外で交換レンズ101への給電を断絶すると、フォーカス群201は給電断絶時の位置で停止して移動しない。このような場合、再度、交換レンズ101へ給電を行った際にフォーカス群201が第1の領域A1以外の領域に位置する可能性があるため、第1の基準位置を検出できないことがある。これに対応して、本実施の形態では、第1の基準位置の他に、上述した第2の基準位置や第3の基準位置が設定される。以下、第2の基準位置や第3の基準位置の検出方法について説明する。
図10(B)は、フォーカス群201が第2の領域A2に位置する状態を示す図である。第2の領域A2は、フォーカス群201の焦点位置が第1の領域A1よりも被写体側に位置し、フォーカス群201が若干繰り出す領域である。
図10(B)に示すように、第2の領域A2では、第1のPI371のスリットに第1のリブ331が挟まれるため、第1のPI371において発光部371aから発せられた光は第1のリブ331で遮光され、Lowの信号が発生する。また、第2の領域A2でも、第1の領域A1と同様に、第2のPI372のスリットに第2のリブ332が挟まれるため、第2のPI372において発光部372aから発せられた光は第2のリブ332で遮光され、Lowの信号が発生する。
したがって、レンズ制御部104は、電源オン操作を行ったときに第1のPI371からLowの信号が発生し、且つ第2のPI372からLowの信号が発生していることを認識すると、フォーカス群201が第2の領域A2に存在すると判断する。そして、レンズ制御部104は、正回転方向にカム筒108が回転するようにフォーカス駆動部301を制御する。これにより、第2の起点部332aが第2のPI372のスリットを通過し、第2のPI372が発生する信号はLowからHiに変化する。ここで、レンズ制御部104には、第1のPI371が発生する信号がLowのままで、第2のPI372が発生する信号がLowからHiに変化するときのフォーカス群201の位置は予め第2の基準位置として記憶されている。したがって、レンズ制御部104は、第2のPI372が発生する信号の変化によって第2の基準位置を検出することができる。これによりフォーカス群201の位置を特定することができる。
なお、レンズ制御部104は、フォーカス群201が第2の領域A2に存在すると判断した後、正回転方向と逆方向にカム筒108が回転するようにフォーカス駆動部301を制御してもよい。この場合、レンズ制御部104は、第1のPI371が発生する信号の変化によって第1の基準位置を検出することができる。
図10(C)は、フォーカス群201が第3の領域A3に位置する状態を示す図である。第3の領域A3は、フォーカス群201の焦点位置が第2の領域A2よりも被写体側に位置し、フォーカス群201が大きく繰り出す領域である。
図10(C)に示すように、第3の領域A3では、第1のPI371のスリットに第1のリブ331が挟まれるため、第1のPI371において発光部371aから発せられた光は第1のリブ331で遮光され、Lowの信号が発生する。一方、第3の領域A3では、第2のリブ332の第2の起点部332aが第2のPI372のスリットを通過してしまっているため、発光部372aから発せられた光は第2のリブ332で遮光されず、Hiの信号が発生する。
したがって、レンズ制御部104は、電源オン操作を行ったときに第1のPI371からLowの信号が発生し、且つ第2のPI372からHiの信号が発生していることを認識すると、フォーカス群201が第3の領域A3に存在すると判断する。そして、レンズ制御部104は、正回転方向にカム筒108が回転するようにフォーカス駆動部301を制御する。これにより、第1のリブ331の第3の起点部331bが第1のPI371のスリットを通過し、第1のリブ331が第1のPI371のスリットによって挟まれなくなるため、第1のPI371が発生する信号はLowからHiに変化する。ここで、レンズ制御部104には、第2のPI372が発生する信号がHiのままで、第2のPI372が発生する信号がLowからHiに変化するときのフォーカス群201の位置は予め第3の基準位置として記憶されている。したがって、レンズ制御部104は、第1のPI371が発生する信号の変化によって第3の基準位置を検出することができる。これによりフォーカス群201の位置を特定することができる。
なお、レンズ制御部104は、フォーカス群201が第3の領域A3に存在すると判断した後、正回転方向と逆方向にカム筒108が回転するようにフォーカス駆動部301を制御してもよい。この場合、レンズ制御部104は、第2のPI372が発生する信号の変化によって第2の基準位置を検出することができる。
図10(D)は、フォーカス群201が第4の領域A4に位置する状態を示す図である。第4の領域A4は、フォーカス群201の焦点位置が第3の領域A3よりも被写体側に位置し、フォーカス群201の繰り出し量が最も大きい領域である。
図10(D)に示すように、第4の領域A4では、第1のリブ331の第3の起点部331bが第1のPI371のスリットを通過してしまっているため、発光部371aから発せられた光は第1のPI371で遮光されず、Hiの信号が発生する。また、第2のリブ332の第2の起点部332aも第2のPI372のスリットを通過してしまっているため、発光部372aから発せられた光は第2のリブ332で遮光されず、Hiの信号が発生する。
したがって、カメラ本体1の電源オン操作を行ったとき、レンズ制御部104は、第1のPI371からHiの信号が発生し、且つ第2のPI372からHiの信号が発生していることを認識すると、フォーカス群201が第4の領域A4に存在すると判断する。そして、レンズ制御部104は、結像面側から見て反時計周り方向(正回転方向と逆方向)にカム筒108が回転するようにフォーカス駆動部301を制御する。これにより、第1のリブ331の第3の起点部331bが第1のPI371のスリットを通過し、第1のリブ331が第1のPI371のスリットによって挟まれるため、第1のPI371が発生する信号はHiからLowに変化する。ここで、レンズ制御部104には、第2のPI372が発生する信号がHiのままで、第2のPI372が発生する信号はHiからLowに変化するときのフォーカス群201の位置は予め第3の基準位置として記憶されている。したがって、レンズ制御部104は、第1のPI371が発生する信号の変化によって第3の基準位置を検出することができる。これによりフォーカス群201の位置を特定することができる。
本実施の形態では、第1の基準位置の他に、第2の基準位置や第3の基準位置が設定されるため、カメラ本体1の電源オン操作を行った際、所望の位置まで移動させるために必要な基準位置を早期に把握することができる。
また、上述したように、カメラ本体1の電源操作部3のオフ操作を通常通りに行うと、第1の領域A1にフォーカス群201は移動するため、電源オン操作を行う際、フォーカス群201は第1の領域A1に存在する頻度が高い。したがって、第1の領域A1と第2の領域A2の境界である第1の基準位置を素早く検出できるようにすれば、フォーカス群201の位置を素早く特定することができる機会を増やすことができ、使用者にとって有益である。
そこで、本実施の形態では、図11に示すように、第1の領域A1を第2の領域A2、第3の領域A3、第4の領域A4に比して最も狭く設定する。これにより、電源オン操作後にカム筒108を正回転方向へ少し回転させるだけで第1の基準位置を検出することができ、フォーカス群201の位置を素早く特定することができるため、撮影機会の逸失を抑制することができる。
なお、第2の領域A2、第3の領域A3及び第4の領域A4の区分けについて特に制約は無い。しかしながら、第2の領域A2、第3の領域A3及び第4の領域A4を均等に区分けすることにより、フォーカス群201がいずれの領域に存在しても、第2の基準位置や第3の基準位置を検出するまでの時間を略均等化することができる。これにより、ある領域において基準位置の検出までに時間が掛かりすぎるのを抑制することができ、使用者の使い勝手を向上することができる。
ところで、上述した本実施の形態のように、2つのPIを用いる場合、リブを共通化して1つのみ設けることも考えられる。この場合、リブに凹凸を設け、段差部を起点部とすることができるが、フォーカス群201の移動量が大きい場合、第2の領域A2〜第4の領域A4を設定するために、2つのPIを大きく離して配置する必要がある。このとき、2つのPIが実装されるフレキシブル基板が大型化するが、本実施の形態は、上述のように2つのPIと2つのリブの配置を工夫することにより、フレキシブル基板が大型化を抑制するこができる点で、リブを1つのみ設ける場合に対して有利である。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、フォーカス群201を移動させるフォーカス駆動機構へ本発明を適用する場合について説明したが、光軸方向に光学部品移動可能な駆動機構であれば、本発明を適用することができる。例えば、焦点距離を変えるズーム機構にも本発明を適用することができる。また、カム筒108とカム筒ギア330を一体化してもよい。