以下、図面を参照しながら、本開示に係る実施形態の電動アシスト自転車について詳細に説明する。以下で説明する材料、形状及び配置位置は、説明のための例示であって、電動アシスト自転車の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
図1は、実施形態の電動アシスト自転車1を右側から見た図である。図2は、電動アシスト自転車1を、左側から見て左ペダル側部材6a付近を示す図である。図3は、図1からモータユニット11のユニットケース64及びチェーンケース63の一部を省略して電動アシスト自転車1の後側部分を示す図である。なお、本開示に係る電動アシスト自転車は、図1に例示するようなシティーサイクルに限定されず、例えば、スポーツサイクル、折り畳み式の自転車等であってもよい。以下では、説明の便宜上、上下、左右、前後等の方向を示す用語を使用するが、電動アシスト自転車1及び各構成要素の上下、左右、前後は通常の使用状態における上下、左右、前後を意味する。
図1に例示するように、電動アシスト自転車1は、左右2つのペダル8a(図2)、8bの踏み込みのアシストモードとしての第1モードと、自転車にユーザが乗らない状態でモータ12(図4)による補助動力を車輪側に出力させて走行させる第2モードとを実行可能な自転車である。第1モード及び第2モードは後で詳しく説明する。
電動アシスト自転車1は、フレーム2、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5、左ペダル側部材6a(図2)、右ペダル側部材6b、チェーン60、及び前照灯9を備える。左ペダル側部材6aは、左クランクアーム7a及び左ペダル8aを含む。右ペダル側部材6bは、右クランクアーム7b及び右ペダル8bを含む。また、電動アシスト自転車1は、バッテリ10、及びモータユニット11を備える。電動アシスト自転車1は、第1モードが実行されるときに、ユーザがペダル8a、8bを踏む力(踏力)をモータユニット11のモータ12(図4)によりアシストする。モータ12は、モータユニット11のユニットケース64の内部に配置される。なおモータ12は、モータユニット11の外部に取り付けてもよい。
クランク軸30(図5)の左右方向両端部である軸方向両端部には、左クランクアーム7a及び右クランクアーム7bの一端部が連結される。左クランクアーム7a及び右クランクアーム7bの他端部には、左ペダル8aと右ペダル8bとがそれぞれ接続される。左クランクアーム7a及び右クランクアーム7bは、互いに反対方向に延びている。実施形態では、左ペダル8a及び右ペダル8bの踏力による人力駆動力により回転するクランク軸30の回転力が、ワンウェイクラッチ40(図5)を介してフロントスプロケット50(図3、図5)に伝達される。フロントスプロケット50は、車輪側の部材であるチェーン60を介して、車輪としての後輪3bに設けられたリアスプロケット61(図3)と連結されている。これにより、各ペダル8a、8bの踏力が、チェーン60と、リアスプロケット61とを介して後輪3bに伝達される。また、モータ12の補助動力が、減速歯車等を介してセカンドスプロケット62(図3)に取り出され、取り出された動力がセカンドスプロケット62からチェーン60を介して後輪3bに伝達される。また、チェーン60の一部は、チェーンケース63により覆われている。
本例では、左ペダル側部材6a及び右ペダル側部材6bの重量を異ならせる、より具体的には、後述のように、左ペダル側部材6aの重量を右ペダル側部材6bの重量より大きくすることにより、後述する押し歩きモード等の第2モードの実行時に、モータ12の回転によってフロントスプロケット50(図3、図5)が回転してもクランク軸30(図5)が連れ回りすることを抑制できる。これにより、自転車の横で自転車を押し歩きするまたは支えるユーザが歩きやすくなる。
なお、モータユニット11は、モータ12の回転力が減速歯車等を介してフロントスプロケット50に伝達される一軸式であってもよい。
フレーム2は、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5等を連結し、バッテリ10及びモータユニット11を支持する。フレーム2は、複数のパイプで構成される。本実施形態では、複数のパイプとして、ヘッドパイプ2a、フロントフォーク2b、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2f、及びボトムブラケット(図示せず)が設けられている。ボトムブラケットは、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、及びチェーンステー2eを繋ぐパイプである。
ヘッドパイプ2aは、フロントフォーク2b及びハンドル4を、当該パイプの中心軸の周りに回転可能に支持する。フロントフォーク2bは、前輪3aを回転可能に支持する一対の前ホーク足と、前ホーク足の上端部から上方に延びてヘッドパイプ2aに挿入される前ホークステムとを有する。そして、ステアリングコラムの上端部に、ハンドル4が取り付けられている。
ダウンパイプ2cは、ヘッドパイプ2aとボトムブラケットを繋ぐパイプである。ダウンパイプ2cは、電動アシスト自転車1の前方に近づくほど上方に位置するように傾斜している。シートパイプ2dは、サドル5を保持するパイプであって、上端が下端よりも自転車の後方に位置するように上下方向に対し傾斜している。実施形態では、バッテリ10がシートパイプ2dに取り付けられ、モータユニット11がボトムブラケットに取り付けられている。
チェーンステー2eは、シートステー2fとボトムブラケットを繋ぐパイプである。シートステー2fは、チェーンステー2eと同様に、後輪3bを両側から挟むように左右に1本ずつ設けられている。チェーンステー2eの後方端部には、後輪3bが回転可能に支持されている。
バッテリ10は、少なくともモータユニット11のモータ12(図4)に電力を供給する電源装置である。バッテリ10は、前照灯9等の、モータユニット11以外の機器に電力を供給する構成としてもよい。
図4は、実施形態の電動アシスト自転車1の制御装置20を中心とする構成のブロック図である。モータユニット11は、モータ12、駆動回路13、及びモータ12の出力を制御する制御装置20を含む。モータユニット11は、左ペダル8a及び右ペダル8bの踏力をアシストする駆動ユニットであって、左右2つのクランクアーム7a,7bを連結するクランク軸30(図5)に作用するトルク(踏力)および車速に基づいて、モータ12の出力を制御する。また、モータユニット11は、クランク軸30の回転数を用いてモータ12の出力を制御してもよい。モータ12は、バッテリ10から供給される電力で駆動して走行をアシストできる電動機であればよいが、好適な一例は3相ブラシレスDCモータである。
電動アシスト自転車1は、例えば、クランク軸30に作用する踏力負荷を検知するトルクセンサ14と、車輪の回転数から車速を検知する車速センサ15とを備える。また、電動アシスト自転車1は、クランク軸30の回転数を検知する回転センサ16を備えていてもよい。これらのセンサの検知情報は、制御装置20に送信され、モータ12の出力制御に使用される。例えば、制御装置20の制御信号に基づいて駆動回路13がスイッチング動作することでモータ12に供給される電流が変化し、これによりモータ12の出力が制御される。
電動アシスト自転車1は、各ペダル8a、8b(図1、図2)に加えられた人力駆動力に応じてモータ12から第1補助動力を出力する第1モードと、モータ12から第2補助動力を出力して押し歩く、または第2補助動力を出力して自走させる第2モードとを実行可能な電動アシスト機能を備える。かかる電動アシスト機能はいずれも、制御装置20の制御により実行される。
電動アシスト自転車1は、電動アシスト機能を作動させるための電源スイッチ17を備える。制御装置20は、電源スイッチ17の操作信号を取得した場合に、各ペダル8a、8bの踏力をアシストする第1モードを実行する。電源スイッチ17は、例えば、1度押下するとONとなり、再度押下するとOFFになるスイッチである。また、電動アシスト自転車1は、第2モードを実行するための第2モードスイッチ18を備える。第2モードスイッチ18は、例えば、押下している間のみONとなるスイッチであって、第2モードは第2モードスイッチ18の押下時のみに実行される。
電動アシスト自転車1には、電源スイッチ17、第2モードスイッチ18等を含むスイッチユニット(図示せず)が設けられていてもよい。スイッチユニットは、一般的に、ハンドル4に設けられる。スイッチユニットには、電源スイッチ17、第2モードスイッチ18の他に、前照灯9を点灯させるスイッチ、走行モード、アシスト力等を変更するためのスイッチ、またバッテリ残量等を表示するための表示部などが搭載されていてもよい。
上記第2モードは、「押し歩きモード」および「自走モード」を含む。押し歩きモードは、自転車をユーザが押して歩くときに、モータ12から補助動力を出力して押し歩きをアシストするモードである。押し歩きモードは、ユーザが自転車に乗車していない状態で、第2モードスイッチ18の押下時に実行される。一方、自走モードは、自転車をユーザが支えた状態で、モータ12から補助動力を出力して自転車を自走させるモードである。すなわち、自走モードは、ユーザが自転車を前方に押す力を加えていない点で、押し歩きモードと異なる。
なお、ハンドル4のグリップ等に設けられたセンサで前方に加わる力を検出し、その大きさによって、押し歩きモードと自走モードとを判別してもよい。或いは、押し歩きモードと自走モードとを判別することなく、第2モードとしてモータ12から補助動力を出力してもよい。いずれの場合も、制御装置20は、ユーザが電動アシスト自転車1に乗車していない状態において、第2モードの実行を許可する。
制御装置20は、第1モードを実行する第1モード実行処理部23と、第2モードを実行する第2モード実行処理部24とを含む。
制御装置20は、プロセッサ21、メモリ22、および入出力インターフェイス等を備えるマイコンで構成される。プロセッサ21は、例えばCPUまたはGPUで構成され、電動アシスト自転車1の制御プログラムを読み出して実行することにより上記各処理部の機能を実現する。メモリ22は、制御プログラム等を記憶する、ROM、HDD、SSD等の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを含む。
第1モード実行処理部23は、例えば、電源スイッチ17がONである場合に、トルクセンサ14、車速センサ15、および回転センサ16から検出値を取得し、当該各検出値に基づいて各ペダル8a、8bの踏力をアシストする第1補助動力を出力させる。第1モード実行処理部23は、2つのペダル8a、8bにかかる踏力によって生じる負荷である踏力負荷、自転車の車速、ペダル8a、8bの回転数等に基づき、駆動回路13を介してモータ12の出力を制御し、第1補助動力を調整する。
第2モード実行処理部24は、例えば、第2モードスイッチ18がONである場合に、モータ12を駆動させて押し歩きをアシストする第2補助動力を出力させる。第2モード実行処理部24は、例えば、車速が予め定められた所定の上限値を超えないように、駆動回路13を介してモータ12の出力を制御し、第2補助動力を調整する。また、第2モード実行処理部24は、第2モードスイッチ18のON信号が取得された場合に、ユーザが自転車に乗車していないと判定した状態にのみ、第2モードを実行する。
ユーザの乗車判定は、サドル5の着座センサ等を用いる方法、サドル5等を乗車できない状態にできる自転車において、その状態を検知する方法など、従来公知の方法で実行できる。
図5は、実施形態において、モータユニット11のクランク軸30の回転支持構造を示す断面図である。図6は、図5のA−A断面であって、電動アシスト自転車1の右側から左側に向かって見た図である。モータユニット11は、ユニットケース64内に少なくとも一部が収容されたクランク軸30と、クランク軸30に取り付けられたワンウェイクラッチ40と、フロントスプロケット50とを備える。フロントスプロケット50は、クランク軸30に対して回転可能に取り付けられ、ワンウェイクラッチ40を介してクランク軸30の回転力が伝達される。クランク軸30の左右方向両端部である軸方向両端部には、左右2つのクランクアーム7a、7b(図1、図2)が固定される。左右2つのクランクアーム7a、7bのそれぞれには左右2つのペダル8a、8b(図1、図2)が接続される。クランク軸30は、左右2つのペダル8a、8bに加えられた人力駆動力が、左右2つのクランクアーム7a、7bを介してクランク軸30に伝達されることで回転する。
さらに、モータユニット11は、例えば、図示しない減速機構を備え、モータ12から出力される補助動力が減速機構、補助動力出力用のセカンドスプロケット62(図3)、及びチェーン60を介して後輪3bに伝達される。より具体的には、モータ12の回転によりセカンドスプロケット62が図3の反時計回りに回転すると、チェーン60が矢印A1方向に移動して、それに伴ってチェーン60が掛け回されたリアスプロケット61とフロントスプロケット50とが図3の時計回りに回転して後輪3bが矢印A2方向に回転する。これにより、電動アシスト自転車1が前進方向(矢印A3方向)に走行する。
モータユニット11のユニットケース64(図5)内には、駆動回路13、制御装置20、ワンウェイクラッチ40、及び減速機構が収容される。ユニットケース64は、ボトムブラケット等のフレーム2に固定される。また、ユニットケース64内には、トルクセンサ14、クランク軸30を回転可能に支持する軸受33等が設けられている。軸受33は、例えば、ボールベアリングであって、クランク軸30の軸方向両端部の近傍にそれぞれ設けられる。
クランク軸30は、軸方向両端部がユニットケース64から外部に突出した状態で、ユニットケース64に固定された軸受33により回転可能に支持されている。クランク軸30の軸方向両端部にそれぞれ固定される左右2つのクランクアーム7a、7b(図1〜図3)は、互いに同じ重量を有する。
一方、クランク軸30の軸方向両端部にクランクアーム7a、7bを介して取り付けられた左ペダル8aと右ペダル8bとの重量は、互いに異なっている。
図7は、実施形態において、左ペダル8aを上から見た図である。図8は、左ペダル8aの側面図である。左ペダル8aは、踏み面を持つ略直方体状のペダル本体70と、ペダル本体70の中心部に回転可能に支持され先端部が左クランクアーム側(図7、図8の左側)に突出するペダル軸72とを含んで構成される。ペダル軸72のペダル本体70の側面から突出する先端部には、左クランクアーム7a(図2)の他端部に取り付けるための雄ねじが形成されていてもよい。ペダル本体70の複数位置には、厚み方向に貫通する貫通孔71が形成される。ペダル本体70は、樹脂成形体70aにより形成される。さらに、ペダル本体70を形成する樹脂成形体70aの内部には、薄板状の鉄製等の金属部品74がインサート成型されている。ペダル本体70に貫通孔71が形成されているので、それに合わせて、金属部品74に貫通孔が形成されてもよい。なお、ペダル本体70に、貫通孔71の代わりに凹部が形成されてもよい。
右ペダル8bも左ペダル8aと同様に、樹脂成形体により形成されるペダル本体70(図3)と、ペダル軸とを含んで構成されるが、右ペダル8bは、左ペダル8aと異なり、薄板状の金属部品74(図7、図8)を含んでいない。これにより、左ペダル8aは、右ペダル8bより金属部品74の重量分だけ重くなっている。金属部品74は、左ペダル8aと右ペダル8bとで所定の重量差をつけるために設けられる。好ましくは、金属部品74は、50g〜500gの重量を有する。より好ましくは、金属部品74は、60〜300gの重量を有する。さらに好ましくは、金属部品74は、80〜120gの重量を有する。これにより、左ペダル8a及び右ペダル8bの重量差が、好ましくは50g〜150g、より好ましくは、60g〜300g、さらに好ましくは80〜120gである。金属部品74の重量を、このような範囲に限定した場合には、ユーザが自転車に乗車してペダル8a、8bをこいで走行するときに左右のペダル8a、8bの重量差を感じにくくなる。一方、金属部品74の重量は、上記の範囲に限定するものではなく、ユーザが乗車した走行時に左右のペダル8a、8bの重量差を感じにくいものであればよい。上記のように左右2つのペダル8a、8bの重量を異ならせることにより、左ペダル側部材6aの重量と右ペダル側部材6bの重量とが異なっている。これにより、後述のように第2モード実行時における各ペダル8a、8bの連れ回りを抑制できる。
図5に戻って、クランク軸30には、ユニットケース64内において筒状体31が装着されている。筒状体31は、クランク軸30にスプライン結合部(またはセレーション結合部)と呼ばれる複数の軸方向の溝とその嵌合部とで、相対回転を不能に固定されている。さらに、筒状体31の周囲には、磁歪式のトルクセンサ14が配置される。クランク軸30に固定された筒状体31はペダル8a、8bの踏力により捩じれ、その捩じれの程度は踏力により変化するため、磁歪式のトルクセンサ14を用いて踏力負荷を検知できる。
ワンウェイクラッチ40は、筒状体31に固定され、内周面の周方向複数位置に溝が形成されたアウター41と、フロントスプロケット50に固定されるインナー42とを含む。本実施形態では、インナー42の一端部がユニットケース64から外部に突出し、当該一端部にフロントスプロケット50が固定されている。また、アウター41は、筒状体31を介してクランク軸30に固定されている。すなわち、インナー42はフロントスプロケット50と一体に回転し、アウター41はクランク軸30と一体に回転する。
アウター41及びインナー42はいずれも、クランク軸30が挿通可能な筒状体であって、例えば、インナー42がアウター41の筒内に挿入され、クランク軸30の径方向に重なり合うように配置される。インナー42には、アウター41側に付勢されてアウター41の内周面に接触すると共に、クランク軸30が正方向である図6の矢印B方向に回転するときにアウター41の溝41aに引っ掛かる爪43が設けられている。なお、クランク軸30が逆方向(図6の矢印B方向と逆方向)に回転するときには、爪43がアウター41の溝41aに引っ掛からないように構成されている。ここで、正方向の回転とは、電動アシスト自転車1を前進させる方向の回転を意味する。
ワンウェイクラッチ40は、ユーザが各ペダル8a、8bをこいでクランク軸30が正方向に回転したときに、インナー42の爪43がアウター41の溝41aに引っ掛かり、正方向の回転力がフロントスプロケット50に伝達される構造を有する。一方、クランク軸30が逆方向に回転しても、その回転力はフロントスプロケット50に伝達されない。また、クランク軸30よりもフロントスプロケット50が速く正方向に回転する場合、またはフロントスプロケット50のみが回転する場合は、インナー42の爪43はアウター41の溝41aに引っ掛からない。
一方、インナー42の爪43はアウター41側に付勢されてアウター41の内周面に接触しているため、ペダル8a、8bに足を載せていない押し歩きモード等の第2モードの実行時には、フロントスプロケット50の回転によりクランク軸30が回転して各ペダル8a、8bの連れ回りが発生する傾向となる。すなわち、各ペダル8a、8bに荷重がかかっていない状態でフロントスプロケット50に固定されたインナー42が図6の矢印B方向に回転すると、インナー42の爪43が図6の矢印C方向に移動するが、その爪43とアウター41の内周面との間で作用する摩擦力によって、アウター41に伝わる回転力でクランク軸30が回転する傾向となる。
一方、本実施形態によれば、左ペダル側部材6aの重量と右ペダル側部材6bの重量とが異なっているので、左ペダル側部材6aと右ペダル側部材6bとの重量差によって作用するクランク軸30の回転抵抗が、フロントスプロケット50からワンウェイクラッチ40を介してクランク軸30に伝達される回転力を上回って、クランク軸30を停止させる。これにより、第2モードを実行する際に、モータ12の補助動力でワンウェイクラッチ40を介してクランク軸30が回転する傾向となっても、左ペダル8aが下がった状態でクランク軸30の回転が停止する。すなわち、図9に示すように、クランク軸30の回転で左クランクアーム7aが矢印B方向に回転して左ペダル8aが最下端に位置した状態で、左右2つのペダル側部材6a、6bの重量差によって、左ペダル8aが上がる方向に左クランクアーム7aがそれ以上矢印B方向に回転しない。これにより、ペダル8a、8bの連れ回りが抑制され、自転車の横で自転車を押し歩きするまたは支えるユーザが歩きやすくなる。
特に、実施形態では、各クランクアーム7a、7bの回転中心であるクランク軸30の回転中心から遠い位置にある左右2つのペダル8a、8bの重量差をつけているので、その重量差を過度に大きくすることなく、クランク軸30の回転抵抗を容易に大きくできる。しかも左右2つのペダル8a、8bの一方のペダルである左ペダル8aのみに金属部品74を設けるだけで、左右2つのペダル8a、8bの重量差をつけることができる。これにより、左右2つのペダルの重量差がない既存の電動アシスト自転車を利用して、左右2つのペダル側部材6a、6bの重量差をつけた実施形態の電動アシスト自転車1を容易に実現できる。
さらに、左ペダル側部材6aの重量を右ペダル側部材6bの重量より大きくしているので、自転車の押し歩き時等の第2モードの実行時において、左ペダル8aを最下端に位置させた状態を維持できる。このため、ユーザが自転車の左側に立って押し歩く、または自転車を支えて歩く場合に、ユーザの足の上側に左ペダル8aが当たることがない。また、ユーザが自転車に乗車しようとする場合に、左ペダル8aが下にあるので、ユーザが左ペダル8aを下まで移動させる動作を行うことなく左ペダル8aに容易に足に載せることができるので、自転車に乗車しやすくなる。
一方、実施形態と異なり、移動可能なストッパを設けて、クランク軸30と一体に回転する部品の回転をそのストッパの移動により止めて、ペダルの連れ回りを抑制することも考えられるが、その場合には、構造が複雑となったり、高コストになる可能性がある。実施形態によればこのような不都合が生じない。
また、実施形態と異なり、左右2つのペダルの両方の重量を同じとしたまま、各ペダルの重量を既存の電動アシスト自転車の場合より大きくし、それにより生じたクランク軸の回転抵抗によってペダルの連れ回りを抑制することも考えられる。しかしながら、その場合には、各ペダルの重量をかなり大きくしないと、ペダルの連れ回りを抑制するようなクランク軸の回転抵抗を発生させることはできない。実施形態の場合には、左右2つのペダル8a、8bの一方のペダルを他方のペダルより重くするだけでペダル8a、8bの連れ回りを抑制でき、しかも、そのときに設定する重量差を過度に大きくする必要がない。
なお、上記の実施形態では、ワンウェイクラッチ40において、インナー42がフロントスプロケット50と一体に回転し、アウター41がクランク軸30と一体に回転し、クランク軸30が正方向に回転したときに、インナー42の爪43がアウター41の溝41aに引っ掛かり、正方向の回転力がフロントスプロケット50に伝達される構造を説明した。一方、ワンウェイクラッチの構成はこれに限定するものではなく、例えばアウターがフロントスプロケット50と一体に回転し、インナーがクランク軸30と一体に回転し、クランク軸30が正方向に回転したときに、インナーの爪がアウターの溝に引っ掛かり、正方向の回転力がフロントスプロケット50に伝達される構造としてもよい。
図10は、実施形態の別例において、左ペダル75において、ペダル軸を省略した斜視図である。図11は、左ペダル75を上から見た図である。図12は、左ペダル75に組み込まれる金属部品80の斜視図である。本例の構成の場合には、左ペダル75は、樹脂成形体76aにより形成され踏み面を有するペダル本体76と、ペダル本体76の中心部に回転可能に支持されるペダル軸79と、金属部品80とを含んで構成される。ペダル本体76は、踏み面77がある表面の長手方向一方側(図11の左側)に断面略五角形の凹部78が形成される。凹部78の底面の複数位置には薄板状の突起78aが形成される。
図12に示すように、金属部品80は、略矩形の枠部81と、枠部81の幅方向両端で長手方向複数位置から幅方向外側に延びる断面略V字形の脚部82,83,84とを有する。脚部82,83,84の先端部の枠部81とは反対側面(図12の下面)は、互いに同一の平面上に位置する。幅方向両側の脚部82,83,84のそれぞれで、隣り合う脚部82,83,84の間には溝80aが形成される。金属部品80は、図10、図11に示すように、各脚部82,83,84の先端部の枠部81とは反対側面をペダル本体76の凹部78の底面に接触させた状態で、ネジ90によりペダル本体76のネジ孔(図示せず)に締結される。これにより、金属部品80が、ペダル本体76を形成する樹脂成形体76aに結合固定される。このとき、金属部品80の溝80a内に、凹部78の底面から突出する突起78aが挿入される。また、金属部品80の枠部81は、脚部82,83,84の先端部より外側に膨出した状態で配置され、枠部81より内側にはペダル軸79の回転支持部(図示せず)が配置される。
右ペダルの図示は省略するが、左ペダル75において、金属部品80がない構成と同様である。これにより、左ペダル75は、右ペダルより金属部品80がある分、重量が大きくなっている。本例において、その他の構成及び作用は、図1〜図9の構成と同様である。
図13は、実施形態の別例において、チェーン60の駆動機構の斜視図である。本例の構成では、クランク軸30の軸方向両端部に接続される左クランクアーム85aと右クランクアーム85bとの重量が異なっている。具体的には、左クランクアーム85aを鉄製とし、右クランクアーム85bをアルミニウム製とすることで、左右2つのクランクアーム85a、85bが、比重が異なる金属により形成される。これにより、左クランクアーム85aの重量が右クランクアーム85bの重量より大きくなっている。また、図示は省略するが、左右2つのクランクアーム85a、85bのそれぞれに接続される左右2つのペダルの重量は互いに同じとなっている。これにより、左ペダル側部材6aの重量が、右ペダル側部材6bの重量より大きくなっている。
このような本例の構成の場合も、上記の各例の場合と同様に、第2モードの実行時に、左ペダルが最下端の位置で停止されるようにクランク軸30の回転を停止できる。これにより、各ペダルの連れ回りが抑制され、自転車の横で自転車を押し歩きするまたは支えるユーザが歩きやすくなる。一方、本例の場合には、各クランクアーム85a、85bがクランク軸30の回転中心から近い位置にあるので、左右2つのペダルの重量差をつける場合のその重量差に比べて、左右2つのクランクアーム85a、85bの重量差を大きくする必要はある。本例において、その他の構成及び作用は、上記の図1〜図9の構成と同様である。
図14は、実施形態の別例において、左ペダル86aと右ペダル86bとを上から見た図である。図15は、左ペダル86a及び右ペダル86bの側面図である。左ペダル86aと右ペダル86bとは、ペダル軸87a、87bのうち、ペダル本体70の内部に配置される部分の大きさが互いに異なっている。具体的には、左ペダル86aのペダル軸87aにおいて、ペダル本体70の内部に配置される部分の直径d1が、右ペダル86bのペダル軸87bにおいて、ペダル本体70の内部に配置される部分の直径d2より大きくなっている。2つのペダル軸87a、87bのペダル本体70から突出する先端部の大きさ及び形状は同じである。これにより、左右2つのペダル86a、86bは、少なくとも一部の対応する部分の大きさが異なり、左ペダル86aで右ペダル86bより大きくなっている。左右2つのペダル軸87a、87bは、鉄等の同じ材質の金属により形成される。左右2つのペダル軸87a、87bの軸方向長さは同じである。このため、左ペダル86aの重量が右ペダル86bの重量より大きくなっている。本例において、その他の構成及び作用は、図1〜図9の構成と同様である。なお、本例の場合には、ペダル軸87a、87bのうち、ペダル本体70の内部に配置される部分の直径を、左右の2つのペダル86a、86bで異ならせているが、直径の代わりに軸方向長さを異ならせることにより、少なくとも一部の対応する部分の大きさを異ならせてもよい。また、2つのペダル軸87a、87bは、ペダル本体70から突出する先端部も含めて、全体で大きさを異ならせてもよい。
図16は、実施形態の別例において、左ペダル88を上から見た図である。図17は、左ペダル88の側面図である。本例の構成では、左ペダル88のペダル本体70を形成する樹脂成形体70aの内部で、幅方向(図16の上下方向)両端部に板状の鉄製等の金属部品89がインサート成型等により組み込まれる。一方、図示は省略するが、右ペダルは、左ペダル88において、板状の金属部品89がない構成と同様である。なお、板状の金属部品89は再帰反射部材や発光部材で構成されてもよい。これにより、左ペダル88の重量が右ペダルの重量より大きくなっている。本例において、その他の構成及び作用は、図1〜図9の構成と同様である。
なお、上記の各例では、左ペダルまたは左クランクアームの重量を右ペダルまたは右クランクアームの重量より大きくすることにより、左ペダル側部材の重量を右ペダル側部材の重量より大きくした場合を説明した。一方、右ペダルまたは右クランクアームの重量を左ペダルまたは左クランクアームの重量より大きくすることにより、右ペダル側部材の重量を左ペダル側部材の重量より大きくしてもよい。この場合には、自転車の押し歩き時等の第2モードの実行時において、右ペダルを最下端に位置させた状態を維持できる。このため、ユーザが自転車の右側に立って歩く場合に、ユーザの足の上側に右ペダルが当たることがない。また、ユーザが自転車に乗車しようとする場合に、右ペダルが下にあるので、ユーザが右ペダルを下まで移動させる動作を行うことなく右ペダルに容易に足に載せることができるので、自転車に乗車しやすくなる。左ペダル側部材を重くするか、右ペダル側部材を重くするかは、ユーザが自転車のどちらから乗りやすいかに応じて適宜設定できる。
また、上記の各例では、左ペダル及び右ペダルのペダル本体が樹脂成形体により形成される場合を説明したが、本開示の構成はこれに限定するものではなく、例えば各ペダルのペダル本体またはペダル全体がアルミニウム合金等の金属により形成されてもよい。