以下では、本発明の実施の形態に係る電動自転車及びその制御方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、以下の説明において、「前方」とは、電動自転車の走行時の進行方向であり、「後方」とはその反対方向である。具体的には、電動自転車のサドルに対してハンドル側が「前方」である。「左右方向」は、前後方向に対して直交する方向であり、前方を向いたときの左側が「左方向」であり、右側が「右方向」である。
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る電動自転車の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る電動自転車1を示す側面図である。
本実施の形態に係る電動自転車1は、第1モードと、第2モードとを有する。第1モードは、例えばアシストモードであり、ペダル17への踏力に基づく車体10の前進が補助(アシスト)される。第2モードには、例えば押し歩きモード又は自走モードが含まれる。押し歩きモードでは、電動自転車1を押して歩くときの車体10を前へ押す力に基づく車体10の前進が補助される。自走モードでは、電動自転車1を支えながら進むときの車体10の前進が補助される。各モードの詳細については、後で説明する。
図1に示されるように、電動自転車1は、車体10と、車体10に取り付けられたモータ駆動ユニット20、操作部40、バッテリー50、前照灯60及び人検知センサ70とを備える。車体10は、フレーム11と、前輪12と、後輪13と、ハンドル14と、サドル15と、クランク16と、ペダル17と、駆動スプロケット18と、チェーン19とを備える。モータ駆動ユニット20は、電動モータ21と、電動モータ21を制御する制御装置22とを備える。また、図1には示していないが、電動自転車1は、クランク回転センサ31と、踏力センサ33とを備える(図3を参照)。
フレーム11は、図1に示されるように、ヘッドパイプ111と、メインフレーム112と、立パイプ113と、フォーク114と、チェーンステー115とを備える。ヘッドパイプ111は、前輪12を支持するフォーク114及びハンドル14を、ヘッドパイプ111の軸を中心に回転自在に支持する。ハンドル14を左右に回すことで、フォーク114に支持された前輪12の向きを左右に回転させることができる。
メインフレーム112は、ヘッドパイプ111と立パイプ113とを連結する部分である。メインフレーム112の下端部には、クランク16及びモータ駆動ユニット20が取り付けられている。本実施の形態に係る電動自転車1は、クランク16とモータ駆動ユニット20とが一体化された、いわゆるセンターユニット方式の電動自転車である。
立パイプ113は、サドル15を着脱可能に支持する。具体的には、立パイプ113には、サドル15を支持するシートポストが挿入されて固定される。本実施の形態では、立パイプ113に、バッテリー50が着脱可能に取り付けられている。
フォーク114は、前輪12を回転自在に支持する。前輪12を支持するフォーク114には、前照灯60が取り付けられている。チェーンステー115は、後輪13を回転自在に支持する。
ハンドル14には、図2に示されるように、一対のグリップ141及びブレーキレバー142が左右に設けられている。図2は、本実施の形態に係る電動自転車1のハンドル14及び操作部40の斜視図である。
一対のグリップ141は、適切な姿勢で乗車された場合に、手で握られる部分である。また、一対のグリップ141は、電動自転車1を押し歩く際にも手で握られて、前方への押力を受ける。一対のグリップ141の少なくとも一方には、握る力又は押力を検知するグリップセンサが設けられていてもよい。
一対のブレーキレバー142は、前輪12及び後輪13の各々に取り付けられたブレーキ装置(図示せず)の動作レバーである。一方のブレーキレバー142を操作することで、前輪12に取り付けられたブレーキ装置(図示せず)が駆動され、前輪12に対して機械的な制動力を与える。他方のブレーキレバー142を操作することで、後輪13に取り付けられたブレーキ装置(図示せず)が駆動され、後輪13に対して機械的な制動力を与える。
サドル15は、適切な姿勢で乗車された場合に、人が座る部分である。サドル15には、荷重センサが設けられていてもよい。
クランク16は、図1に示されるように、クランク軸161と、一対のクランクアーム162とを有する。クランクアーム162は、メインフレーム112の両側に1つずつ設けられており、左右方向に延びるクランク軸161の両端に固定されている。クランクアーム162の一方端がクランク軸161に固定され、他方端には、ペダル17が回転自在に固定されている。ペダル17に踏力が加えられた場合、クランクアーム162がクランク軸161を中心に回転し、当該回転による人力駆動力が駆動スプロケット18及びチェーン19を介して後輪13に伝達される。アシストモードで動作する場合には、踏力に基づく人力駆動力と、当該人力駆動力に付加された電動モータ21による補助駆動力とが後輪13に伝達される。
モータ駆動ユニット20は、電動モータ21及び制御装置22が、樹脂製又は金属製の筐体に収納されてユニット化されている。また、当該筐体には、クランク回転センサ31及び踏力センサ33(図3を参照)も収納されている。
電動モータ21は、制御装置22による制御に基づいて、バッテリー50からの電力を受けて駆動する。電動モータ21の回転トルク(すなわち、補助駆動力)は、駆動スプロケット18に伝達されて、駆動スプロケット18が回転する。これにより、後輪13を回転させることができる。
制御装置22は、クランク回転センサ31、踏力センサ33及び人検知センサ70などのセンサによる検知結果に基づいて、電動モータ21の動作を制御する。本実施の形態では、制御装置22は、モータ駆動ユニット20の筐体の内部に収納されているが、これに限らない。制御装置22は、モータ駆動ユニット20とは別体で設けられていてもよい。
図3は、本実施の形態に係る電動自転車1の構成を示すブロック図である。具体的には、図3は、電動自転車1の構成のうち、電力を使用する主な構成を示している。
図3に示されるように、電動自転車1の制御装置22は、制御部221を有する。制御装置22は、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)などで実現され、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで構成されている。あるいは、制御装置22は、専用の電子回路で実現されてもよい。
制御装置22には、図3に示されるように、電源スイッチ41、手動スイッチ42、ライトスイッチ43、クランク回転センサ31、踏力センサ33及び人検知センサ70が接続されている。制御装置22には、各スイッチに対する操作信号(具体的には、押下の有無)、及び、各センサによる検知結果が入力される。
また、制御装置22には、バッテリー50と、電動モータ21、表示部44及び前照灯60とが接続されている。制御装置22は、バッテリー50から供給される電力を、電動モータ21、表示部44及び前照灯60に供給する。
制御部221は、電動自転車1の動作モードに応じて、電動モータ21を駆動する。具体的には、制御部221は、第1モードと第2モードとを切り替えて実行する。
第1モードの一例であるアシストモードは、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するモードである。アシストモードは、電源スイッチ41が押下されて電源がオンされた後、人が電動自転車1に乗車している場合に実行される。具体的には、アシストモードは、ペダル17への踏力が閾値Thより大きい場合に実行される。
第2モードの一例である押し歩きモードは、電動自転車1を人が押して歩くときに、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩くモードである。押し歩きモードは、人が電動自転車1に乗車しておらず、電動自転車1の車体10を押しながら歩く場合に実行される。
第2モードの一例である自走モードは、電動自転車1を人が支えた状態で、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して自走させるモードである。自走モードは、押し歩きモードと同様に、人が電動自転車1に乗車しておらず、電動自転車1の車体10を支えながら歩く場合に実行される。自走モードにおいて、人は、車体10を前方に押す力を加えていない。
なお、押し歩きモードと自走モードとは、車体10に対する前方への押す力の有無によって判別可能である。制御部221は、例えば、グリップ141などに設けられたグリップセンサなどによって前方への押す力の有無を検知し、検知結果に応じて押し歩きモードと自走モードとを切り替えて実行してもよい。あるいは、制御部221は、押し歩きモードと自走モードと判別することなく、第2補助駆動力を付加する第2モードとして実行してもよい。
本実施の形態では、押し歩きモード又は自走モードは、手動スイッチ42が押下されている期間に実行される。なお、押し歩きモード又は自走モードは、ペダル17への踏力が上記閾値Thより大きい場合には実行されない。つまり、アシストモード(第1モード)と押し歩きモード又は自走モード(第2モード)とは、排他的に実行される。
制御部221は、アシストモードを実行する場合、ペダル17への踏力と電動自転車1の速度とに基づいて、電動モータ21が生成する第1補助駆動力の大きさを決定する。ペダル17への踏力は、踏力センサ33による検知結果から得られる。電動自転車1の速度は、後輪13の単位時間当たりの回転数と、後輪13の大きさとに基づいて算出される。なお、電動自転車1の速度は、前輪12の単位時間当たりの回転数と前輪12の大きさとに基づいて算出されてもよい。例えば、ホールICなどの車速を検知するセンサが前輪12又は後輪13に取り付けられている。車速の検知手段は、特に限定されない。
なお、前輪12又は後輪13の単位時間当たりの回転数と電動自転車1の速度とを予め対応付けたテーブルが、制御装置22のメモリに記憶されていてもよい。制御部221は、当該テーブルを参照することで、前輪12又は後輪13の回転数から電動自転車1の速度を決定してもよい。
アシストモードにおける第1補助駆動力は、走行時の速度に応じて異なるが、例えば、ペダル17への踏力の2倍以下の大きさである。例えば、制御部221は、速度が時速10km未満の場合に、電動モータ21を駆動することで、ペダル17への踏力の2倍以下の第1補助駆動力を発生させる。制御部221は、速度が時速24km以上の場合は、電動モータ21に第1補助駆動力を発生させない。制御部221は、速度が時速10km以上24km未満の場合には、電動モータ21を駆動することで、速度に応じて定められた第1補助駆動力を発生させる。
制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを実行する場合、電動自転車1の自走の速度が予め定められた上限値を超えないように、電動モータ21に第2補助駆動力を生成させる。押し歩きモード又は自走モードにおける第2補助駆動力は、例えば、自走の速度が時速6km未満になる大きさである。ここでは、自走の速度の上限値が時速6kmとしたが、3kmでもよく、特に限定されない。
本実施の形態では、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードが実行中の場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて第2補助駆動力を調整する。具体的には、制御部221は、第2補助駆動力を大きく若しくは小さくし、又は、第2補助駆動力の付加を開始若しくは停止させる。あるいは、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始又は停止する。具体的な調整例については、図5~図7を用いて後で説明する。また、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードが実行されていない場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて、押し歩きモード及び自走モードの実行を禁止する。
電源スイッチ41及び手動スイッチ42は、図1及び図2に示されるように、ハンドル14に設けられた操作部40に含まれている。
図4は、本実施の形態に係る電動自転車1の操作部40の平面図である。操作部40は、図4に示されるように、電源スイッチ41と、手動スイッチ42と、ライトスイッチ43と、表示部44とが設けられている。
電源スイッチ41は、電源のオン及びオフを切り替えるスイッチである。具体的には、電源スイッチ41は、バッテリー50から電動モータ21への電力供給の許可及び停止を切り替える。
例えば、電源がオフされている状態(電源オフ状態)で電源スイッチ41が押下されたとき、バッテリー50から電動モータ21への電力供給が可能になる(電源オン状態)。このため、制御部221は、アシストモード、及び、押し歩きモード又は自走モードを実行可能になる。また、電源オン状態で電源スイッチ41が押下されたとき、バッテリー50から電動モータ21への電力供給が停止される。このため、制御部221は、アシストモード、押し歩きモード及び自走モードのいずれも実行不可能になる。
手動スイッチ42は、押し歩きモード又は自走モードを開始する指示を受け付ける入力部の一例である。本実施の形態では、手動スイッチ42が押下されている期間のみ、押し歩きモード又は自走モードを実行する。つまり、手動スイッチ42を押し続けながら車体10を押して又は支えて歩くことで、押し歩きモード又は自走モードが実行される。これにより、電動モータ21による第2補助駆動力が発生し、押し歩き又は自走を補助することができる。手動スイッチ42の押下を止めた場合、電動モータ21の駆動が停止され、第2補助駆動力も発生しなくなる。
なお、手動スイッチ42を1回押下した場合に、その後、手動スイッチ42を押し続けなくても、押し歩きモード又は自走モードが実行されてもよい。押し歩きモード又は自走モードの実行中に、再び手動スイッチ42を押下した場合に、押し歩きモード又は自走モードが停止されてもよい。この場合、押し歩きの際に、手動スイッチ42を押し続けなくてよいので、車体10を押すことに専念することができる。つまり、押し歩きの際にバランスを崩しにくくなり、転倒などの危険性を低下させることができる。
また、手動スイッチ42には、押し歩きモードを実行するための押し歩きスイッチと、自走モードを実行するための自走スイッチとの2つの異なるスイッチが含まれてもよい。制御部221は、押し歩きスイッチが押下されたとき、押し歩きモードを実行し、自走スイッチが押下されたとき、自走モードを実行してもよい。
ライトスイッチ43は、前照灯60の点灯及び消灯を切り替えるスイッチである。表示部44は、バッテリー50の残量を表示する。
電源スイッチ41、手動スイッチ42及びライトスイッチ43はそれぞれ、物理的に押下可能な機械式のスイッチであるが、これに限らない。操作部40は、例えば、タッチパネルディスプレイなどであってもよい。電源スイッチ41、手動スイッチ42及びライトスイッチ43の少なくとも1つは、ディスプレイに表示されるGUI(Graphical User Interface)などで実現されてもよい。
また、操作部40には、他に、アシストモード、押し歩きモード及び自走モードの動作の強弱を切り替えるモードスイッチなどが設けられていてもよい。また、操作部40の各スイッチ及び表示部44のレイアウトは、図4に示した例には限定されない。例えば、ライトスイッチ43及び表示部44は設けられていなくてもよい。
バッテリー50は、電動モータ21の駆動用の電力を貯める蓄電池である。バッテリー50は、例えば、二次電池であるが、キャパシタなどであってもよい。
人検知センサ70は、電動自転車1を操作する人を検知するセンサである。人検知センサ70による検知結果は、電動自転車1に対する人の位置の特定に利用される。
本実施の形態では、人検知センサ70は、電動自転車1に取り付けられた1以上の赤外線センサ又はカメラである。例えば、人検知センサ70は、ヘッドパイプ111又はハンドル14の中央に取り付けられて、後方(サドル15側)を撮影するカメラであってもよい。カメラによって撮影された画像に基づいて、制御部221が人の位置を特定してもよい。
また、例えば、人検知センサ70は、電動自転車1の異なる部位に取り付けられた複数の赤外線センサであってもよい。複数の赤外線センサは、例えば、サドル15の下部、車体10の前方部分(例えば、ヘッドパイプ111)、車体10の後方(例えば、荷台又は後輪13の泥除け)、バッテリー50、及び、モータ駆動ユニット20などに取り付けられる。複数の赤外線センサは、互いに異なる範囲を検知範囲とする。例えば、制御部221は、複数の赤外線センサのいずれで人が検知されたかに基づいて、人の位置を特定することができる。
本実施の形態では、制御部221は、基準位置に対する人の相対的な位置を特定する。具体的には、制御部221は、基準位置に対して人が前方に居るのか、後方に居るのかを判定する。以下で、詳しく説明する。
[人の位置と補助駆動力との関係]
続いて、人の位置と電動モータ21が発生させる補助駆動力との関係について、図5~図7を用いて説明する。
図5及び図6はそれぞれ、人80が電動自転車1を押し歩く様子を示す側面図である。図7は、人80が電動自転車1を支え歩く様子を示す側面図である。具体的には、図5~図7はそれぞれ、水平な地面82、上り坂83及び下り坂84で、電動自転車1を押し歩く様子を示している。
本実施の形態では、制御部221は、図5~図7の各々に破線で示される基準位置81に対する人80の位置を判定する。基準位置81は、通常の押し歩き動作時に、側方から見たときの人80が位置する位置である。
例えば、基準位置81は、図5に示されるように、電動自転車1が水平な地面82に置かれた場合においてサドル15を通る鉛直線である。ここでは、基準位置81は、サドル15と立パイプ113との接続部分よりやや前方に設けているが、これに限らない。基準位置81は、サドル15の前方端部を通る鉛直線であってもよく、サドル15の後方端部を通る鉛直線であってもよい。また、基準位置81は、サドル15の前方端部から後方端部までを含む範囲であってもよい。
なお、基準位置81は、人80に応じて変更可能であってもよい。電動自転車1を押し歩く姿は、人80によって異なる場合があるため、その人に応じた基準位置を設定してもよい。あるいは、身長などのカテゴリに応じた基準位置が予め設定されていてもよく、人80の身長に応じて適切な基準位置が設定されてもよい。
本実施の形態では、制御部221は、基準位置81に対する人80の位置に応じて第2補助駆動力の大きさを決定する。第2補助駆動力には、例えば、「強」、「中」、「弱」の3段階の大きさがある。
図5に示されるように、人80が基準位置81に略一致している場合、制御部221は、電動モータ21を制御することで、「中」の大きさの第2補助駆動力を発生させる。なお、人80の位置は、具体的には、人80の頭部又は胴体の位置である。
一方で、図6に示されるように、人80が基準位置81に対して前方に位置している場合、制御部221は、人80が基準位置81に位置する場合よりも第2補助駆動力を大きくする。具体的には、制御部221は、電動モータ21を制御することで、「強」の大きさの第2補助駆動力を発生させる。
図6に示されるように、上り坂83で電動自転車1を押し歩く際、電動自転車1の重さも加わるため、人80は力強く車体10を押そうとして前傾姿勢になる。なお、上り坂83の場合だけでなく、水平な地面82の場合でも、電動自転車1が重く力強く車体10を押そうとしているときには、人80は前傾姿勢になる。このため、人80の頭部及び胴体は、基準位置81よりも前方に位置する。この場合に、強い第2補助駆動力を発生させることで、押し歩きの補助が適切に行われる。
また、図7に示されるように、人80が基準位置81に対して後方に位置している場合、制御部221は、人80が基準位置81に位置する場合よりも第2補助駆動力を小さくする。具体的には、制御部221は、電動モータ21を制御することで、「弱」の大きさの第2補助駆動力を発生させる。
図7に示されるように、下り坂84で電動自転車1を支え歩く際、電動自転車1は、人80に押されなくても自重によって勝手に前進する。このため、人80は、前進しようとする電動自転車1の前進を抑えるように、後ろ寄りに傾いた姿勢で電動自転車1を支えながら歩く。また、下り坂84の場合だけでなく、水平な地面82の場合でも、補助駆動力が大きすぎて電動自転車1が人80に対して先行している場合、人80は後ろ寄りに傾いた姿勢になる。このため、人80の頭部及び胴体は、基準位置81よりも後方に位置する。この場合に、弱い第2補助駆動力を発生させることで、電動自転車1が前方に進みすぎないようにすることができる。
なお、人80が基準位置81よりも後方に位置する場合、制御部221は、電動モータ21の駆動を停止してもよい。つまり、人80が基準位置81よりも後方に位置する場合に、電動モータ21が発生させる第2補助駆動力の大きさは0でもよい。
[電動モータの制御動作]
次に、本実施の形態に係る電動自転車1の制御装置22による電動モータ21の制御動作について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る電動自転車1の電動モータ21の制御動作を示すフローチャートである。
図8に示されるように、まず、制御装置22の制御部221は、電源スイッチ41がオンされた場合(S11でYes)、アシストモード、押し歩きモード及び自走モードを実行可能な状態になる。なお、電源スイッチ41がオンされない限り(S11でNo)、制御部221は、電動モータ21を動作させない。
次に、制御部221は、人検知センサ70によって人80が所定の位置に検知された場合(S12でYes)、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止する(S13)。人80が所定の位置に検知されない場合(S12でNo)、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止しない。
所定の位置は、人80が電動自転車1に乗車した位置であり、例えば、電動自転車1の左右両側に人80の足が検知される位置である。制御部221は、電動自転車1の左右両側に人80が検出された場合、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止する。制御部221は、電動自転車1の左右のいずれか一方の側に人80が検知された場合、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止しない。
次に、制御部221は、手動スイッチ42が押されているか否かを判定する(S14)。手動スイッチ42が押されている場合で(S14でYes)、踏力センサ33によって検知されたペダル17への踏力が閾値Th以下のとき(S15でYes)、かつ、押し歩きモード又は自走モードの実行が禁止されていないとき(S16でNo)、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを実行する(S17)。
また、手動スイッチ42が押されている場合で(S14でYes)、踏力センサ33によって検知されたペダル17への踏力が閾値Th以下のとき(S15でYes)、かつ、押し歩きモード又は自走モードの実行が禁止されているとき(S16でYes)、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを実行せず、ステップS12に戻る。すなわち、制御部221は、第2補助駆動力を発生させない。
ペダル17への踏力が閾値Thより大きい場合(S15でNo)、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを実行しない。なお、既に押し歩きモード又は自走モードを実行中に、踏力が閾値Thを超えた場合、押し歩きモード又は自走モードを停止し、電動モータ21の駆動を停止する。なお、踏力が閾値Thを超えた場合、制御部221は、アシストモードを実行してもよい。
なお、閾値Thは、ペダル17に足を置いているだけの状態で、ペダル17にかかる踏力よりも低い値である。あるいは、閾値Thは、例えば、0でもよい。この場合、ペダル17への踏力が検知されない場合のみ、押し歩きモード又は自走モードが実行可能になる。
電源スイッチ41がオンされた状態において、手動スイッチ42が押されていない場合(S14でNo)、制御部221は、アシストモードを実行する(S18)。具体的には、制御部221は、ペダル17への踏力に基づいて電動モータ21に生成させるべき第1補助駆動力の大きさを決定し、電動モータ21にバッテリー50からの電力を供給することで、決定した第1補助駆動力を発生させる。
以降、電源スイッチ41がオフされるまで、ステップS12~S15の処理が繰り返される。
続いて、押し歩きモード又は自走モードの具体例について、図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態に係る電動自転車1の押し歩きモード又は自走モードにおける電動モータ21の制御動作を示すフローチャートである。
図9に示されるように、制御部221は、人検知センサ70によって検知された人80の位置を判定する。まず、人80が電動自転車1の両側に検知された場合(S20でYes)、制御部221は、電動モータ21による第2補助駆動力を停止する(S21)。すなわち、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを停止する。
人が電動自転車1の両側に検知されるということは、例えば、人80が電動自転車1に跨っていることなどが考えられる。あるいは、押し歩きを行っている人80とは異なる人が電動自転車1のすぐそばに居ることなどが考えられる。このように、通常の押し歩きを行っている場合ではないので、制御部221は、電動モータ21の動作を停止させ、電動自転車1が自走するのを停止させることができる。
次に、人80が両側には検知されず(S20でNo)、基準位置81に位置している場合(S22でYes)、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力をそのまま維持する(S23)。例えば、制御部221は、電動モータ21を制御することで、「中」の大きさの第2補助駆動力を発生させる。
人80が基準位置81に位置しておらず(S22でNo)、基準位置81の前方に位置している場合(S24で“前方”)、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を大きくする(S25)。例えば、制御部221は、電動モータ21を制御することで、「強」の大きさの第2補助駆動力を発生させる。これにより、図6に示されるように、上り坂83などで人80が前傾姿勢で電動自転車1を押し歩いている場合に、強い補助駆動力が発生するので、押し歩きの補助を適切に行うことができる。
人80が基準位置81に位置しておらず(S22でYes)、基準位置81の後方に位置している場合(S24で“後方”)、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を小さくする(S26)。例えば、制御部221は、電動モータ21を制御することで、「弱」の大きさの第2補助駆動力を発生させる。これにより、図7に示されるように、下り坂84などで人80が後ろ寄りの姿勢で電動自転車1を支え歩いている場合に、弱い補助駆動力が発生するので、電動自転車1が前方に進みすぎないようにすることができる。
このように、押し歩きモード又は自走モードを実行中は、人80の位置に基づいて第2補助駆動力の大きさが調整される。なお、図9に示されるステップS20~S26の処理は、押し歩きモード又は自走モードを実行中に繰り返し行われる。人80の位置が変化すると、速やかに人80の位置に応じた大きさの補助駆動力を発生させることができる。
なお、本実施の形態では、押し歩きモード又は自走モードで発生可能な第2補助駆動力として、「弱」、「中」、「強」の3段階の大きさがある例を示したが、これに限らない。例えば、第2補助駆動力には、10段階などの多段階の大きさが含まれてもよい。
この場合、人80の位置の判定を繰り返し行う場合において、人80の位置が基準位置81より前方であると判定される度に、制御部221は、第2補助駆動力の最大値に至るまで、その時点での大きさから一段強い大きさに変更してもよい。逆に、人80の位置が基準位置81より後方であると判定される度に、制御部221は、第2補助駆動力の最小値に至るまで、その時点での大きさから一段弱い大きさに変更してもよい。
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る電動自転車1は、電動モータ21を備える電動自転車であって、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモード(第1モード)と、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く押し歩きモード又は第2補助駆動力を付加して自走させる自走モード(第2モード)とを切り替えて実行する制御部221と、電動自転車1を操作する人を検知する人検知センサ70とを備える。制御部221は、押し歩きモード又は自走モードが実行中の場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて、第2補助駆動力を調整する。
これにより、人80と電動自転車1との位置関係に基づいて押し歩き用の補助駆動力を調整するので、押し歩きの状況に応じて適切な補助駆動力を発生させることができる。
また、例えば、制御部221は、人検知センサ70によって検知された人80が基準位置81に対して前方に位置している場合、人検知センサ70によって検知された人80が基準位置81に位置する場合よりも第2補助駆動力を大きくする。
これにより、例えば上り坂で、人80が前のめりになって電動自転車1を強く押そうとしている場合には、補助駆動力を大きくすることができる。このため、電動自転車1の押し歩きをスムーズに行うことができる。
また、例えば、制御部221は、人検知センサ70によって検知された人80が基準位置81に対して後方に位置している場合、人検知センサ70によって検知された人80が基準位置81に位置する場合よりも第2補助駆動力を小さくする。
これにより、例えば下り坂で、人80が後ろ寄りになって電動自転車1の前進を抑えようとしている場合には、補助駆動力を小さくすることができる。このため、電動自転車1の支え歩きをスムーズに行うことができる。
また、例えば、基準位置81は、電動自転車1が水平面に置かれた場合においてサドル15を通る鉛直線である。
例えば水平な地面で、人80が電動自転車1を押し歩く場合、人80の位置は、サドル15の横になる。電動自転車1を強く押そうとする場合には、人80の位置、特に頭の位置は、サドル15よりも前方になる。逆に、電動自転車1の前進を抑えようとする場合には、人80の頭の位置は、サドル15よりも後方になる。このため、サドル15を通る鉛直線を基準位置81にすることで、人80が電動自転車1を押し歩く状況を精度良く推定することができ、押し歩きの状況に応じた補助駆動力を発生させることができる。
また、例えば、制御部221は、人検知センサ70によって電動自転車1の両側に人80が検知された場合、第2補助駆動力を停止する。
このように、人80が電動自転車1の両側に検知された場合、人80が電動自転車1に乗車していると判断できるので、補助駆動力を停止する。したがって、乗車中に押し歩きモード又は自走モードが実行されるのを抑制することができる。
また、例えば、電動自転車1では、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードが実行されていない場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止する。
これにより、例えば、人80が電動自転車1を押し歩くには不適切な位置に存在する場合などに、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止することができる。
また、例えば、人検知センサ70は、電動自転車1に取り付けられた1以上の赤外線センサ又はカメラである。
これにより、簡単な構成で人80の検知を行うことができる。
(その他)
以上、本発明に係る電動自転車及びその制御方法について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施の形態では、第2モードを開始する指示を受け付ける入力部の一例として、手動スイッチ42を備える例を示したが、これに限らない。例えば、手動スイッチ42の代わりに、ハンドル14のグリップ141に設けられたグリップセンサを備えてもよい。グリップセンサが前方への押力を検知した場合に、制御部221は、押し歩きモードを実行してもよい。グリップセンサが前方への押力を検知しない場合に、制御部221は、押し歩きモードを停止してもよい。
また、例えば、電動自転車は、ネットワークを介して外部からの指示に基づいて制御されてもよい。具体的には、図10に示されるように、電動自転車は、通信部90を備えてもよい。ここで、図10は、実施の形態の変形例に係る電動自転車の構成を示すブロック図である。
図10に示されるように、本変形例に係る電動自転車は、図3に示される制御装置22の代わりに制御装置22aを備える。制御装置22aには、通信部90が接続されている。
通信部90は、電動自転車1とは別体で設けられた外部の制御端末(図示せず)と通信する。通信部90は、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの所定の通信規格に基づく無線通信を行う。なお、無線(電波)による通信規格は、特に限定されない。
具体的には、通信部90は、クランク回転センサ31、踏力センサ33及び人検知センサ70による検出結果を制御端末に送信する。制御端末は、例えば、図3に示される制御部221を備え、制御装置22と同様に、電動モータ21に対する制御信号を生成する。制御端末は、生成した制御信号を通信部90に送信する。通信部90は、制御端末から送信される制御信号を受信する。制御装置22aは、通信部90によって受信された制御信号を電動モータ21に出力する。
このように、変形例に係る電動自転車は、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモードと、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く押し歩きモード又は第2補助駆動力を付加して自走させる自走モードとで走行可能な電動自転車であって、電動自転車を操作する人を検知する人検知センサ70を備え、電動自転車1は、押し歩きモード又は自走モードが実行中の場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて、第2補助駆動力を調整するように制御される構成を有してもよい。
あるいは、変形例に係る電動自転車は、押し歩きモード又は自走モードが実行されていない場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止するように制御される構成を有してもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、電動モータ21がクランク16と一体化されて設けられている例を示したが、前輪12又は後輪13に設けられていてもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、電動自転車1が二輪自転車である例について示したが、これに限らない。電動自転車1は、前輪及び後輪のいずれか一方が2つの三輪自転車でもよく、四輪自転車でもよい。
また、上記実施の形態において、制御装置22の特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。
また、制御装置22が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。例えば、制御装置22が行う処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
また、上記実施の形態において、制御装置22の構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、制御装置22の構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
例えば、本発明の一態様に係る電動自転車の制御方法は、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモードと、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く押し歩きモード又は第2補助駆動力を付加して自走させる自走モードとで走行可能な電動自転車の制御方法であって、押し歩きモード又は自走モードが実行中の場合に、電動自転車1を操作する人と電動自転車1との位置関係に基づいて、第2補助駆動力を調整するステップを含んでもよい。
あるいは、本発明の一態様に係る電動自転車の制御方法は、押し歩きモード又は自走モードが実行されていない場合に、人検知センサ70によって検知された人と電動自転車1との位置関係に基づいて、押し歩きモード又は自走モードの実行を禁止するステップを含んでもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。