<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換装置は、マルチポート型のものであり、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)等の電動化車両に搭載されている。
図1に示すように、電源システムは、第1蓄電池10、第2蓄電池20、第3蓄電池30、電気負荷31及び電力変換装置40を備えている。各蓄電池10,20,30は、充放電可能な2次電池である。第1,第2蓄電池10,20は、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、第3蓄電池30は、例えば鉛蓄電池である。本実施形態において、第1蓄電池10の定格電圧(例えば400V)は第2蓄電池20の定格電圧(例えば300V)よりも高く、第2蓄電池20の定格電圧は第3蓄電池30の定格電圧(例えば14V)よりも高い。また、電気負荷31には、供給電圧が一定であること、または供給電圧の変動が所定範囲内となることが要求される定電圧負荷が含まれる。定電圧負荷の具体例としては、ナビゲーション装置や、オーディオ装置、メータ装置及び各種ECUが挙げられる。
電力変換装置40は、第1フルブリッジ回路50を備えている。第1フルブリッジ回路50は、第1〜第4スイッチQ1〜Q4と、第1コンデンサ51とを備えている。本実施形態において、第1〜第4スイッチQ1〜Q4は、NチャネルMOSFETである。第1スイッチQ1及び第3スイッチQ3のドレインには、電力変換装置40の第1高電位側端子CH1が接続されている。第1スイッチQ1のソースには、第2スイッチQ2のドレインが接続され、第3スイッチQ3のソースには、第4スイッチQ4のドレインが接続されている。第2スイッチQ2及び第4スイッチQ4のソースには、電力変換装置40の第1低電位側端子CL1が接続されている。第1高電位側端子CH1には、第1コンデンサ51の第1端と、第1蓄電池10の正極端子とが接続され、第1低電位側端子CL1には、第1コンデンサ51の第2端と、第1蓄電池10の負極端子とが接続されている。
本実施形態において、第1フルブリッジ回路50が「送電回路」に相当し、第1スイッチQ1及び第3スイッチQ3が「上アーム送電スイッチ」に相当し、第2スイッチQ2及び第4スイッチQ4が「下アーム送電スイッチ」に相当する。
なお、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1には、第1蓄電池10に代えて、外部電源から入力される交流電力を直流電力に変換して出力するACDCコンバータの出力側が接続されていてもよい。また、本実施形態において、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1が「送電端子」に相当する。
電力変換装置40は、第2フルブリッジ回路60を備えている。第2フルブリッジ回路60は、第1〜第4変換スイッチSW1〜SW4と、第2コンデンサ61とを備えている。本実施形態において、第1〜第4変換スイッチSW1〜SW4は、NチャネルMOSFETである。第1変換スイッチSW1及び第3変換スイッチSW3のドレインには、電力変換装置40の第2高電位側端子CH2が接続されている。第1変換スイッチSW1のソースには、第2変換スイッチSW2のドレインが接続され、第3変換スイッチSW3のソースには、第4変換スイッチSW4のドレインが接続されている。第2変換スイッチSW2及び第4変換スイッチSW4のソースには、電力変換装置40の第2低電位側端子CL2が接続されている。第2高電位側端子CH2には、第2コンデンサ61の第1端と、第2蓄電池20の正極端子とが接続され、第2低電位側端子CL2には、第2コンデンサ61の第2端と、第2蓄電池20の負極端子とが接続されている。
なお、本実施形態において、第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2が「副受電端子」に相当し、第2フルブリッジ回路60が「副受電回路」に相当し、第1変換スイッチSW1及び第3変換スイッチSW3が「上アーム副受電スイッチ」に相当し、第2変換スイッチSW2及び第4変換スイッチSW4が「下アーム副受電スイッチ」に相当する。
電力変換装置40は、第3フルブリッジ回路70を備えている。第3フルブリッジ回路70は、第5〜第8変換スイッチSW5〜SW8と、第3コンデンサ71とを備えている。本実施形態において、第5〜第8変換スイッチSW5〜SW8は、NチャネルMOSFETである。第5変換スイッチSW5及び第7変換スイッチSW7のドレインには、電力変換装置40の第3高電位側端子CH3が接続されている。第5変換スイッチSW5のソースには、第6変換スイッチSW6のドレインが接続され、第7変換スイッチSW7のソースには、第8変換スイッチSW8のドレインが接続されている。第6変換スイッチSW6及び第8変換スイッチSW8のソースには、電力変換装置40の第3低電位側端子CL3が接続されている。第3高電位側端子CH3には、第3コンデンサ71の第1端が接続され、第3低電位側端子CL3には、第3コンデンサ71の第2端が接続されている。第3高電位側端子CH3及び第3低電位側端子CL3間の電圧は、所定の電圧範囲(例えば40〜48V)に収まるように制御される。
なお、本実施形態において、第3高電位側端子CH3及び第3低電位側端子CL3が「主受電端子」に相当し、第3フルブリッジ回路70が「主受電回路」に相当し、第5変換スイッチSW5及び第7変換スイッチSW7が「上アーム主受電スイッチ」に相当し、第6変換スイッチSW6及び第8変換スイッチSW8が「下アーム主受電スイッチ」に相当する。
電力変換装置40は、降圧チョッパ回路72を備えている。降圧チョッパ回路72は、第1変圧スイッチSC1、第2変圧スイッチSC2、リアクトル73及び第4コンデンサ74を備えている。本実施形態において、第1変圧スイッチSC1及び第2変圧スイッチSC2は、NチャネルMOSFETである。第1変圧スイッチSC1のドレインには、電力変換装置40の第3高電位側端子CH3が接続されている。第1変圧スイッチSC1のソースには、リアクトル73の第1端及び第2変圧スイッチSC2のドレインが接続されている。リアクトル73の第2端には、第4コンデンサ74の第1端及び電力変換装置40の第4高電位側端子CH4が接続されている。第2変圧スイッチSC2のソースには、電力変換装置40の第3,4低電位側端子CL3,CL4及び第4コンデンサ74の第2端が接続されている。第4高電位側端子CH4には、第3蓄電池30の正極端子及び電気負荷31の第1端が接続され、第4低電位側端子CL4には第3蓄電池30の負極端子及び電気負荷31の第2端が接続されている。本実施形態において、降圧チョッパ回路72が「DCDCコンバータ」に相当する。
電力変換装置40は、第1コイル81、第2コイル82及び第3コイル83を有するトランス80を備えている。第1コイル81の第1端には、第1スイッチQ1のソース及び第2スイッチQ2のドレインが接続され、第1コイル81の第2端には、第3スイッチQ3のソース及び第4スイッチQ4のドレインが接続されている。第2コイル82の第1端には、第1変換スイッチSW1のソース及び第2変換スイッチSW2のドレインが接続され、第2コイル82の第2端には、第3変換スイッチSW3のソース及び第4変換スイッチSW4のドレインが接続されている。第3コイル83の第1端には、第5変換スイッチSW5のソース及び第6変換スイッチSW6のドレインが接続され、第3コイル83の第2端には、第7変換スイッチSW7のソース及び第8変換スイッチSW8のドレインが接続されている。
第1コイル81、第2コイル82及び第3コイル83は、例えばトランス80が備えるコアを介して、互いに磁気結合する。第1コイル81の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル82及び第3コイル83それぞれには、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。一方、第1コイル81の第1端に対する第2端の電位が高くなる場合、第2コイル82及び第3コイル83それぞれには、その第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。なお、本実施形態において、第1コイル81が「送電コイル」に相当し、第2コイル82が「副受電コイル」に相当し、第3コイル83が「主受電コイル」に相当する。
第1コイル81の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第1コイル81の電圧Vt1の極性を正極性と定義し、この場合に第1コイル81に流れる電流IL1の向きを正と定義する。第2コイル82の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル82の電圧Vt2の極性を正極性と定義し、この場合に第2コイル82に流れる電流IL2の向きを正と定義する。第3コイル83の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第3コイル83の電圧Vt3の極性を正極性と定義し、この場合に第3コイル83に流れる電流IL3の向きを正と定義する。なお、本実施形態において、第1〜第3コイル81〜83の極性が正極性の場合を「第1極性」とすると、第1〜第3コイル81〜83の極性が負極性の場合は「第2極性」に相当する。一方、第1〜第3コイル81〜83の極性が負極性の場合を「第1極性」とすると、第1〜第3コイル81〜83の極性が正極性の場合は「第2極性」に相当する。
電力変換装置40は、第1〜第3電圧センサ91〜93と、第1〜第3電流センサ94〜96を備えている。第1電圧センサ91は、第1コンデンサ51の端子電圧である第1電圧V1rを検出し、第2電圧センサ92は、第2コンデンサ61の端子電圧である第2電圧V2rを検出し、第3電圧センサ93は、第3コンデンサ71の端子電圧である第3電圧V3rを検出する。
第1電流センサ94は、第1高電位側端子CH1と第1フルブリッジ回路50との間を流れる電流である第1電流I1rを検出する。第2電流センサ95は、第2フルブリッジ回路60と第2高電位側端子CH2との間に流れる電流である第2電流I2rを検出する。第3電流センサ96は、第3フルブリッジ回路70と第3高電位側端子CH3との間を流れる電流である第3電流I3rを検出する。なお、本実施形態では、第1〜第3電流I1r〜I3rの符号を以下のように定義する。第1電流I1rの符号は、第1蓄電池10の正極端子から第1高電位側端子CH1へと向かう方向を正と定義する。第2電流I2rの符号は、第2高電位側端子CH2から第2蓄電池20の正極端子へと向かう方向を正と定義する。第3電流I3rの符号は、第3高電位側端子CH3から第1変圧スイッチSC1のドレインへと向かう方向を正と定義する。
第1〜第3電圧センサ91〜93及び第1〜第3電流センサ94〜96の検出値は、電力変換装置40が備える制御部100に入力される。制御部100は、第1〜第4スイッチQ1〜Q4、第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8、第1変圧スイッチSC1及び第2変圧スイッチSC2をオンオフする。以下、図2を用いて、これら各スイッチQ1〜Q4,SW1〜SW8,SC1,SC2の操作方法について説明する。図2は、制御部100が実行する処理のブロック図である。
制御部100は、第1指令電流算出部200と、第1電流制御部210とを備えている。第1指令電流算出部200は、第1電流算出部201と、第1最小値選択部202とを備えている。第1電流算出部201は、入力された第1指令電力P1*を、第2電圧センサ92により検出された第2電圧V2rで除算することにより、第2蓄電池20に流す充電電流の指令値である指令電流I1pを算出する。指令電流I1pは、定電力制御(CP)により第2蓄電池20に電力を供給するために設定される。指令電流I1pの符号が正の場合、第2蓄電池20が充電される側に第2高電位側端子CH2に第2電流I2rが流れる。なお、第1指令電流算出部200に入力される第1指令電力P1*が0の場合、指令電流I1pが0となる。
第1最小値選択部202は、第1電流算出部201により算出された指令電流I1pと、第1定電流指令値I1*とのうち小さい方を第1指令電流Iref1として選択する。第1定電流指令値I1*は、定電流制御(CC)により第2蓄電池20に電力を供給するために設定される。第1最小値選択部202から出力された第1指令電流Iref1は、第1リミッタ203により上限値又は下限値が制限される。
第1電流制御部210は、第1電流偏差算出部211、第1フィードバック制御部212及び第2リミッタ213を備えている。第1電流偏差算出部211は、第1リミッタ203から出力された第1指令電流Iref1から、第2電流センサ95により検出された第2電流I2rを減算することにより、第1電流偏差ΔI1を算出する。
第1フィードバック制御部212は、算出された第1電流偏差ΔI1を0にフィードバック制御するための操作量として、第1指令位相φaを算出する。本実施形態では、このフィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。第1指令位相φaについては後述する。なお、第1フィードバック制御部212で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御に限らず、例えば、比例積分微分制御であってもよい。
第1フィードバック制御部212により算出された第1指令位相φaは、第2リミッタ213により上限値又は下限値が制限され、制御部100が備えるPWM生成部320に入力される。
制御部100は、第2指令電流算出部300と、第2電流制御部310とを備えている。第2指令電流算出部300は、第2電流算出部301と、電圧偏差算出部302と、第2フィードバック制御部303と、第2最小値選択部304とを備えている。第2電流算出部301は、入力された第2指令電力P2*を、第3電圧センサ93により検出された第3電圧V3rで除算することにより、第3高電位側端子CH3に流す指令電流I2pを算出する。指令電流I2pは、定電力制御(CP)により降圧チョッパ回路72に電力を供給するために設定される。指令電流I2pの符号が正の場合、第3高電位側端子CH3から第1変圧スイッチSC1のドレインへと向かう方向に第3電流I3rが流れる。
電圧偏差算出部302は、降圧チョッパ回路72に印加する印加電圧の電圧指令値V3*から第3電圧V3rを減算することにより、電圧偏差ΔVを算出する。電圧指令値V3*については後述する。第2フィードバック制御部303は、算出された電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として、指令電流I2vを算出する。本実施形態では、このフィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。指令電流I2vは、定電圧制御(CV)により降圧チョッパ回路72に電力を供給するために設定される。なお、第2フィードバック制御部303で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御に限らず、例えば、比例積分微分制御であってもよい。
第2最小値選択部304は、第2電流算出部301により算出された指令電流I2p、第2フィードバック制御部303により算出された指令電流I2v、及び第2定電流指令値I2*のうち最小値を第2指令電流Iref2として選択する。第2定電流指令値I2*は、定電流制御により降圧チョッパ回路72に電力を供給するために設定される。第2最小値選択部304から出力された第2指令電流Iref2は、第3リミッタ305により上限値又は下限値が制限される。
第2電流制御部310は、第2電流偏差算出部311、第3フィードバック制御部312及び第4リミッタ313を備えている。第2電流偏差算出部311は、第3リミッタ305から出力された第2指令電流Iref2から、第3電流センサ96により検出された第3電流I3rを減算することにより、第2電流偏差ΔI2を算出する。
第3フィードバック制御部312は、算出された第2電流偏差ΔI2を0にフィードバック制御するための操作量として、第2指令位相φbを算出する。本実施形態では、このフィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。第2指令位相φbについては後述する。なお、第3フィードバック制御部312で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御に限らず、例えば、比例積分微分制御であってもよい。
第3フィードバック制御部312により算出された第2指令位相φbは、第4リミッタ313により上限値又は下限値が制限され、PWM生成部320に入力される。
PWM生成部320は、第1指令位相φa及び第2指令位相φbに基づいて、第1〜第4スイッチQ1〜Q4及び第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8の操作信号を生成して、第1〜第4スイッチQ1〜Q4及び第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8のゲートに対して出力する。以下、図3を用いて、第1〜第4スイッチQ1〜Q4及び第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8の操作態様について説明する。
図3(a),(b)は、第1〜第4スイッチQ1〜Q4の操作状態を示す。図3(c)は、第1コイル81の電圧Vt1の推移を示す。図3(d),(e)は、第1〜第4変換スイッチSW1〜SW4の操作状態を示す。図3(f)は、第2コイル82の電圧Vt2の推移を示す。図3(g),(h)は、第5〜第8変換スイッチSW5〜SW8の操作状態を示す。図3(i)は、第3コイル83の電圧Vt3の推移を示す。図3(j)は、第1変圧スイッチSC1及び第2変圧スイッチSC2の操作状態を示す。
第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とは交互にオンされ、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4とは交互にオンされる。第1スイッチQ1及び第4スイッチQ4がオンされ、第2スイッチQ2及び第3スイッチQ3がオフされている場合、第1コイル81の電圧Vt1の極性は、正極性となる。また、第1スイッチQ1及び第4スイッチQ4がオフされ、第2スイッチQ2及び第3スイッチQ3がオンされている場合、第1コイル81の電圧Vt1の極性は、負極性となる。
第1変換スイッチSW1と第2変換スイッチSW2とは交互にオンされ、第3変換スイッチSW3と第4変換スイッチSW4とは交互にオンされる。第1変換スイッチSW1及び第4変換スイッチSW4がオンされ、第2変換スイッチSW2及び第3変換スイッチSW3がオフされている場合、第2コイル82の電圧Vt2の極性は、正極性となる。また、第1変換スイッチSW1及び第4変換スイッチSW4がオフされ、第2変換スイッチSW2及び第3変換スイッチSW3がオンされている場合、第2コイル82の電圧Vt2の極性は、負極性となる。
第5変換スイッチSW5と第6変換スイッチSW6とは交互にオンされ、第7変換スイッチSW7と第8変換スイッチSW8とは交互にオンされる。第5変換スイッチSW5及び第8変換スイッチSW8がオンされ、第6変換スイッチSW6及び第7変換スイッチSW7がオフされている場合、第3コイル83の電圧Vt3の極性は、正極性となる。また、第5変換スイッチSW5及び第8変換スイッチSW8がオフされ、第6変換スイッチSW6及び第7変換スイッチSW7がオンされている場合、第3コイル83の電圧Vt3の極性は、負極性となる。なお、本実施形態において、第1〜第4スイッチQ1〜Q4及び第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8のスイッチング周期Tsは、互いに同じである。
第1指令位相φaが正の場合、第1スイッチQ1のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して第1指令位相φaだけ、第1変換スイッチSW1のオンへの切り替えタイミングを遅らせる。
第2指令位相φbが正の場合、第1スイッチQ1のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して第2指令位相φbだけ、第5変換スイッチSW5のオンへの切り替えタイミングを遅らせる。
第1変圧スイッチSC1と第2変圧スイッチSC2とは交互にオンされる。制御部100は、第3電圧V3rを目標電圧に降圧し、その電力を第3蓄電池30に供給するため、第1変圧スイッチSC1及び第2変圧スイッチSC2のオンオフ比であるデューティ比を制御する。
図4は、制御部100が所定周期で繰り返し実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS10では、電力変換装置40の駆動要求があるか否かを判定する。ステップS10において否定判定した場合、ステップS11に進み、電力変換装置40を待機モードに設定する。そして、ステップS12では、第1〜第4スイッチQ1〜Q4、第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8、第1変圧スイッチSC1及び第2変圧スイッチSC2をオフにする。
ステップS10において肯定判定した場合、ステップS13に進み、第1電圧V1r及び第2電圧V2rを取得する。ステップS14では、第1電圧V1r及び第2電圧V2rに基づいて電圧指令値V3*を設定する。ステップS15では、電圧指令値V3*に基づいて、図2で説明した定電圧制御を実行し、第2指令位相φbを設定する。ステップS16では、所望の値に設定された第1指令位相φa及び第2指令位相φbに基づいて、第1〜第4スイッチQ1〜Q4及び第1〜第8変換スイッチSW1〜SW8のスイッチング制御を実行する。以下、図5及び図6を用いて、電圧指令値V3*の設定方法について説明する。
図5に示すように、トランス80に備えられている第1〜第3コイル81〜83の関係は、第1〜第3等価コイル84〜86がΔ結線された等価回路として表される。なお、図5において、先の図1で説明した構成については、便宜上、同一の符号を付している。
第1等価コイル84は、第1コイル81及び第2コイル82間の関係を表すものであり、その相互インダクタンスはL12である。また、第1等価コイル84に流れる電流をItra12とし、その符号は、第1コイル81から第2コイル82へと向かう方向を正とする。
第2等価コイル85は、第1コイル81及び第3コイル83間の関係を表すものであり、その相互インダクタンスはL13である。また、第2等価コイル85に流れる電流をItra13とし、その符号は、第1コイル81から第3コイル83へと向かう方向を正とする。
第3等価コイル86は、第2コイル82及び第3コイル83間の関係を表すものであり、その相互インダクタンスはL23である。また、第3等価コイル86に流れる電流をItra23とし、その符号は、第2コイル82から第3コイル83へと向かう方向を正とする。
この等価回路において、第3コイル83に流れる電流IL3は、第2等価コイル85に流れる電流Itra13及び第3等価コイル86に流れる電流Itra23の和となる。以下、図6を用いて、この等価回路における電流及び電圧の推移を説明する。
図6において、(a)は第1コイル81の電圧Vt1の推移を示し、(b)は第2コイル82の電圧Vt2の推移を示し、(c)は第3コイル83の電圧Vt3の推移を示し、(d)は第2等価コイル85に流れる電流Itra13の推移を示し、(e)は第3等価コイル86に流れる電流Itra23の推移を示し、(f)は第3コイル83に流れる電流IL3の推移を示す。なお、図6に示す例では、第1指令位相φaが0にされている。
時刻t1において、第1コイル81の電圧Vt1の極性及び第2コイル82の電圧Vt2の極性が負極性から正極性とされる。時刻t1から第2指令位相φbだけ遅れた時刻t2において、第3コイル83の電圧Vt3の極性が負極性から正極性とされる。時刻t1からスイッチング周期Tsの半分だけ経過した時刻t3において、第1コイル81の電圧Vt1の極性及び第2コイル82の電圧Vt2の極性が正極性から負極性とされる。これら時刻t2及び時刻t3間の期間を制御期間TAとする。制御期間TAにおける第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量を制御するため、第2等価コイル85に流れる電流Itra13の時間変化量、及び第3等価コイル86に流れる電流Itra13の時間変化量について考える。
第2等価コイル85に流れる電流Itra13の時間変化量は、第1電圧V1r及び第3電圧V3rを用いて、下式(c1)で表される。
ここで、N1は第1コイル81の巻き数を表し、N3は第3コイル83の巻き数を表す。本実施形態において、第3コイル83の巻き数N3は、第1コイル81の巻き数N1よりも小さい。図6(d)は、上式(c1)で表される第2等価コイル85に流れる電流Itra13の時間変化量が、制御期間TAにおいて正とされる一例である。
第3等価コイル86に流れる電流Itra23の時間変化量は、第2電圧V2r及び第3電圧V3rを用いて、下式(c2)で表される。
ここで、N2は第2コイル82の巻き数を表す。本実施形態において、第3コイル83の巻き数N3は、第2コイル82の巻き数N2よりも小さい。図6(e)は、上式(c2)で表される第3等価コイル86に流れる電流Itra23の時間変化量が、制御期間TAにおいて負とされる一例である。
図5に示した等価回路より、第3コイル83に流れる電流IL3は、第2等価コイル85に流れる電流Itra13、及び第3等価コイル86に流れる電流Itra23の和であるため、その時間変化量は下式(c3)となる。
図6(f)では、上式(c3)で表される第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量が、制御期間TAにおいて正とされる。このように、制御部100は、第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量が、制御期間TAにおいて正となるように電圧指令値V3*を設定する。そのために、制御部100は、下式(c4)を満たすように、第1電圧V1r及び第2電圧V2rに基づいて、電圧指令値V3*を設定する。
図7に、上式(c4)を満たすように電圧指令値V3*が設定された本実施形態と、上式(c4)を満たさない電圧指令値V3*が設定された比較例とのそれぞれにおける各波形を示す。図7において、(a)は第3コイル83に流れる電流IL3の推移を示し、(b)は第3コイル83の電圧Vt3の推移を示し、(c)は第5変換スイッチSW5の端子電圧(ドレイン及びソース間電圧)の推移を示す。
本実施形態において、制御期間TAにおける第3コイル83に流れる電流IL3は、漸増するように制御される。そのため、第1フルブリッジ回路50及び第2フルブリッジ回路60から第3フルブリッジ回路70へと比較例と同じ大きさの電力が供給される場合、制御期間TAの開始タイミングにおいて第3コイル83に流れる電流IL3は、比較例よりも本実施形態の方が小さい。その結果、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が比較例に比べて低減される。これにより、図7(c)に示すように、制御期間TAの開始タイミングにおいて発生するサージ電圧が比較例に比べて低減される。
上記説明では、制御期間TAを、第3コイル83の電圧Vt3の極性が負極性から正極性に切り替えられてから、第1コイル81の電圧Vt1の極性が正極性から負極性に切り替えられる期間としたが、制御期間TAはこれに限定されるものではない。第3コイル83の電圧Vt3の極性が正極性から負極性に切り替えられてから、第1コイル81の電圧Vt1の極性が負極性から正極性に切り替えられる期間を制御期間TAとしてもよい。この制御期間TAにおいて、上式(c4)を満たすように電圧指令値V3*が設定されることによっても、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が低減される。
図8は、本実施形態に係る構成のシミュレーション結果である。図8において、(a)は第3コイル83に流れる電流IL3の推移を示し、(b)は第5変換スイッチSW5の端子電圧の推移を示す。第3コイル83に流れる電流IL3が図6(f)で説明した波形に制御されている。このシミュレーション結果では、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が比較例に比べて23%低減されることが確かめられた。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
制御期間TAの開始タイミングにおいて、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが小さいほど、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が抑制される。ただし、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが小さいと、第1フルブリッジ回路50から第3フルブリッジ回路70へ供給される電力が低下する懸念がある。
そこで、本願発明者は、制御期間TAにおいて、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさを漸増させる構成について検討した。この構成によれば、制御期間TAにおいて、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが一定とされる比較例と比較して、制御期間TAの開始タイミングにおける第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが低減される。その結果、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が抑制される。また、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが漸増させられるため、第1フルブリッジ回路50から第3フルブリッジ回路70へ供給される電力の低下を防止又は抑制できる。
ここで、第3フルブリッジ回路70のスイッチング制御に用いられる電圧指令値V3*は、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさに影響を及ぼす。また、第3コイル83に流れる電流IL3の大きさの時間変化量は、第1電圧V1r、第2電圧V2r及び第3電圧V3rに依存する。この点に鑑み、本実施形態では、電圧指令値V3*が、第1電圧V1r及び第2電圧V2rに基づいて、制御期間TAにおいて第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが漸増されるように設定される。以上説明した本実施形態によれば、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧を抑制することができる。
上式(c4)の左辺は、第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量を表し、その時間変化量を上式(c4)は正の値とするものである。このため、上式(c4)を満たすように電圧指令値V3*が設定されることにより、制御期間TAにおいて、第3コイル83に流れる電流IL3が的確に漸増される。これにより、制御期間TAの開始タイミングにおける第3コイル83に流れる電流IL3を的確に低減できる。その結果、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧を的確に抑制することができる。
第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧を抑制するために、電圧指令値V3*が第1電圧V1r及び第2電圧V2rに基づいて設定される構成とした。そのため、第1電圧V1r及び第2電圧V2rに応じて、電圧指令値V3*も変化し、第3電圧V3rは所定の電圧範囲で変動する。
ところで、第3蓄電池30及び電気負荷31に供給される電圧が変動すると、第3蓄電池30の充電電圧が不安定になったり、電気負荷31の動作が不安定になったりする可能性がある。そこで、本実施形態では、第3電圧V3rが、降圧チョッパ回路72により降圧される構成とした。この構成では、第3電圧V3rが所定の電圧範囲で変動したとしても、降圧チョッパ回路72から第3蓄電池30及び電気負荷31に供給される電圧は目標電圧に維持される。そのため、第3蓄電池30及び電気負荷31に供給される電圧を安定させることができる。その結果、第3蓄電池30の充電電圧が不安定になったり、電気負荷31の動作が不安定になったりすることを抑制できる。
第3コイル83の巻き数N3が、第1コイル81の巻き数N1及び第2コイル82の巻き数N2よりも小さい構成とした。この構成では、第3コイル83のインダクタンスが、第1コイル81のインダクタンス及び第2コイル82のインダクタンスよりも小さくなるため、第3コイル83に流れる電流IL3は、第1コイル81に流れる電流IL1及び第2コイル82に流れる電流IL2よりも大きくなる。その結果、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が増大する可能性がある。そのため、制御期間TAにおいて第3コイル83に流れる電流IL3を漸増させる構成を用いるメリットが大きい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図9に示すように、電圧指令値V3*の設定方法を変更する。
第1電圧V1rと第3電圧V3rとの電圧差及び第2電圧V2rと第3電圧V3rとの電圧差が大きいほど、第3コイル83に流れる電流IL3は大きくなり、第3フルブリッジ回路70で発生するサージ電圧が増大する可能性がある。
そこで、図9に示すように、制御部100は、先の図4のステップS14において、第1電圧V1r及び第2電圧V2rが高いほど、電圧指令値V3*を高く設定する。これにより、第1電圧V1r及び第2電圧V2rが高くなった場合でも、第1電圧V1rと第3電圧V3rとの電圧差、及び第2電圧V2rと第3電圧V3rとの電圧差が大きくなることが抑制される。その結果、第3コイル83に流れる電流IL3が低減され、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧を抑制することができる。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図10に示すように、電圧指令値V3*の設定方法を変更する。
第1フルブリッジ回路50からトランス80を介して第3フルブリッジ回路70へと供給される電力P2が大きいほど、第3コイル83に流れる電流IL3は大きくなり、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧が増大する可能性がある。
そこで、図10に示すように、制御部100は、先の図4のステップS14において、電力P2が大きいほど、電圧指令値V3*を低く設定する。なお、電力P2は、第3電流I3r及び第3電圧V3rの積から算出してもよいし、前回の制御周期における電圧指令値V3*及び第2指令電流Iref2の積から算出してもよい。
制御期間TAにおいて、電圧指令値V3*を低くするほど、第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量は大きくなる。そのため、本実施形態によれば、電力P2の大きさを制限することなく、第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量を大きくすることで、制御期間TAの開始タイミングにおける第3コイル83に流れる電流IL3の大きさが低減される。その結果、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧を抑制することができる。
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図11に示すように、電力変換装置40が、第1フルブリッジ回路50に代えて第1ハーフブリッジ回路110を備えており、第2フルブリッジ回路60に代えて第2ハーフブリッジ回路120を備えている。図11において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお、図11では、各電流センサ94〜96の図示を省略している。
第1ハーフブリッジ回路110は、第5スイッチQ5、第6スイッチQ6、第5コンデンサ111及び第6コンデンサ112を備えている。本実施形態において、第5スイッチQ5及び第6スイッチQ6は、NチャネルMOSFETである。第5スイッチQ5のドレイン及び第5コンデンサ111の第1端には、第1高電位側端子CH1が接続されている。第5スイッチQ5のソースには、第6スイッチQ6のドレインと、第1コイル81の第1端とが接続されている。第5コンデンサ111の第2端には、第6コンデンサ112の第1端と、第1コイル81の第2端とが接続されている。第6スイッチQ6のソース及び第6コンデンサ112の第2端には、第1低電位側端子CL1が接続されている。なお、本実施形態において、第5スイッチQ5が「上アーム送電スイッチ」に相当し、第6スイッチQ6が「下アーム送電スイッチ」に相当する。
第2ハーフブリッジ回路120は、第9変換スイッチSW9、第10変換スイッチSW10、第7コンデンサ121及び第8コンデンサ122を備えている。本実施形態において、第9変換スイッチSW9及び第10変換スイッチSW10は、NチャネルMOSFETである。第9変換スイッチSW9のドレイン及び第7コンデンサ121の第1端には、第2高電位側端子CH2が接続されている。第9変換スイッチSW9のソースには、第10変換スイッチSW10のドレインと、第2コイル82の第1端とが接続されている。第7コンデンサ121の第2端には、第8コンデンサ122の第1端と、第2コイル82の第2端とが接続されている。第10変換スイッチSW10のソース及び第8コンデンサ122の第2端には、第2低電位側端子CL2が接続されている。なお、本実施形態において、第9変換スイッチSW9が「上アーム副受電スイッチ」に相当し、第10変換スイッチSW10が「下アーム副受電スイッチ」に相当する。
第5スイッチQ5と第6スイッチQ6とは交互にオンされる。第5スイッチQ5及び第6スイッチQ6の操作態様は、先の図3(a)に対応している。また、第9変換スイッチSW9と第10変換スイッチSW10とは交互にオンされる。第9変換スイッチSW9及び第10変換スイッチSW10の操作態様は、先の図3(d)に対応している。第1指令位相φaが正の場合、第5スイッチQ5のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して第1指令位相φaだけ、第9変換スイッチSW9のオンへの切り替えタイミングを遅らせればよい。第2指令位相φbが正の場合、第5スイッチQ5のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して第2指令位相φbだけ、第5変換スイッチSW5のオンへの切り替えタイミングを遅らせればよい。
本実施形態において、制御部100は、下式(c5)を満たすように電圧指令値V3*を設定する。
以上説明した本実施形態によっても、第3フルブリッジ回路70に発生するサージ電圧を抑制することができる。
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図12に示すように、電力変換装置40は、非対称の第3ハーフブリッジ回路130及び非対称の第4ハーフブリッジ回路140を備えている。図12において、先の図11と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお、図12では、各電流センサ94〜96の図示を省略している。
第3ハーフブリッジ回路130は、第7スイッチQ7、第8スイッチQ8及び第9コンデンサ131を備えている。本実施形態において、第7スイッチQ7及び第8スイッチQ8は、NチャネルMOSFETである。第7スイッチQ7のドレインには、第1高電位側端子CH1が接続されている。第7スイッチQ7のソースには、第8スイッチQ8のドレインと、第1コイル81の第1端が接続されている。第1コイル81の第2端には、第9コンデンサ131の第1端が接続されている。第9コンデンサ131の第2端と、第8スイッチQ8のソースとには、第1低電位側端子CL1が接続されている。なお、本実施形態において、第7スイッチQ7が「上アーム送電スイッチ」に相当し、第8スイッチQ8が「下アーム送電スイッチ」に相当する。
第4ハーフブリッジ回路140は、第11変換スイッチSW11、第12変換スイッチSW12及び第10コンデンサ141を備えている。本実施形態において、第11変換スイッチSW11及び第12変換スイッチSW12は、NチャネルMOSFETである。第11変換スイッチSW11のドレインには、第2高電位側端子CH2が接続されている。第11変換スイッチSW11のソースには、第12変換スイッチSW12のドレインと、第2コイル82の第1端とが接続されている。第2コイル82の第2端には、第10コンデンサ141の第1端が接続されている。第10コンデンサ141の第2端と、第12変換スイッチSW12のソースとには、第2低電位側端子CL2が接続されている。なお、本実施形態において、第11変換スイッチSW11が「上アーム副受電スイッチ」に相当し、第12変換スイッチSW12が「下アーム副受電スイッチ」に相当する。
本実施形態の第7スイッチQ7、第8スイッチQ8、第11変換スイッチSW11及び第12変換スイッチSW12の操作態様は、第4実施形態の第5スイッチQ5、第6スイッチQ6、第9変換スイッチSW9及び第10変換スイッチSW10の操作態様と同じである。また、本実施形態においても、第4実施形態と同様に、制御部100は、上式(c5)を満たすように電圧指令値V3*を設定する。
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図13に示すように、電力変換装置40が第4フルブリッジ回路150を備えている。図13において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお、図13では、各電流センサ94〜96の図示を省略している。
第4フルブリッジ回路150は、第13〜第16変換スイッチSW13〜SW16と、第11コンデンサ151とを備えている。本実施形態において、第13〜第16変換スイッチSW13〜SW16は、NチャネルMOSFETである。第13変換スイッチSW13及び第15変換スイッチSW15のドレインには、電力変換装置40の第5高電位側端子CH5が接続されている。第13変換スイッチSW13のソースには、第14変換スイッチSW14のドレインが接続され、第15変換スイッチSW15のソースには、第16変換スイッチSW16のドレインが接続されている。第14変換スイッチSW14及び第16変換スイッチSW16のソースには、電力変換装置40の第5低電位側端子CL5が接続されている。第5高電位側端子CH5には、第11コンデンサ151の第1端と、第4蓄電池21の正極端子とが接続され、第5低電位側端子CL5には、第11コンデンサ151の第2端と、第4蓄電池21の負極端子とが接続されている。本実施形態において、第4蓄電池21の定格電圧は、例えば第2蓄電池20の定格電圧よりも低い48Vである。
なお、本実施形態において、第13変換スイッチSW13及び第15変換スイッチSW15が「上アーム副受電スイッチ」に相当し、第14変換スイッチSW14及び第16変換スイッチSW16が「下アーム副受電スイッチ」に相当する。
トランス80は、第4コイル87をさらに備えている。第4コイル87の第1端には、第13変換スイッチSW13のソース及び第14変換スイッチSW14のドレインが接続され、第4コイル87の第2端には、第15変換スイッチSW15のソース及び第16変換スイッチSW16のドレインが接続されている。第4コイル87は、例えばコアを介して、第1〜第3コイル81〜83と互いに磁気結合する。第1コイル81の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第4コイル87には、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
電力変換装置40は、第4電圧センサ97を備えている。第4電圧センサ97は、第11コンデンサ151の端子電圧である第4電圧V4rを検出する。検出された第4電圧V4rは、制御部100に入力される。制御部100は、第1〜第4スイッチQ1〜Q4、第1〜第8,第13〜第16変換スイッチSW1〜SW8,SW13〜SW16、第1変圧スイッチSC1及び第2変圧スイッチSC2をオンオフする。
第5高電位側端子CH5及び第5低電位側端子CL5が第4蓄電池21に接続されているため、第11コンデンサ151の端子電圧である第4電圧V4rは、電力変換装置40の起動前から0Vよりも高くなる。そのため、第3コイル83に流れる電流IL3の時間変化量を、制御期間TAにおいて正とするための条件は、下式(c6)となる。
ここで、N4は第4コイル87の巻き数を表し、L34は第3コイル83及び第4コイル87間の相互インダクタンスを表す。第4コイル87の巻き数N4は、第3コイル83の巻き数N3よりも大きい。制御部100は上式(c6)を満たすように電圧指令値V3*を設定する。
<その他の実施形態>
・電力変換装置40は、降圧チョッパ回路72に代えて、例えば昇降圧チョッパ回路を備えていてもよい。
・第6実施形態において、図14に示すように、第4蓄電池21に代えて、抵抗性負荷152が電源システムに備えられていてもよい。抵抗性負荷152は、抵抗体を有しており、その抵抗体への通電による発熱を利用するヒータである。抵抗性負荷152は、蓄電池のように、電力変換装置40の起動前から0Vよりも高い電圧を持たない電気機器である。この場合、抵抗性負荷152は電力供給源とならないため、制御部100は、上式(c4)を満たすように電圧指令値V3*を設定すればよい。
・第3フルブリッジ回路70に代えて、ハーフブリッジ回路及び非対称のハーフブリッジ回路が備えられていてもよい。ハーフブリッジ回路としては、例えば第4実施形態で説明された第2ハーフブリッジ回路120に相当する構成が用いられてもよい。また、非対称のハーフブリッジ回路としては、例えば第5実施形態で説明された第4ハーフブリッジ回路140が用いられてもよい。第3フルブリッジ回路70に代えて、第2ハーフブリッジ回路120に相当する構成が用いられた場合、第2指令位相φbは以下のように定義されればよい。すなわち、第2指令位相φbが正の場合、第1スイッチQ1のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して第2指令位相φbだけ、第9変換スイッチSW9に相当するスイッチのオンへの切り替えタイミングを遅らせればよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。