図1乃至図3は、本発明を小型の杭打機に適用した一形態例を示すものである。杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、上部旋回体14の前部に立設したリーダ16と、該リーダ16を後方から支持するリーダ起伏シリンダ17と、前記リーダ16に昇降可能に設けられた作業機械であるオーガ18と、該オーガ18を昇降用チェーン19を介して昇降させる昇降用油圧モータ20とを備えている。
上部旋回体14の前部には、リーダ16を起伏可能に支持するリーダサポート21が設けられ、上部旋回体14の右側部には運転室22が、左側部にはパワーユニットなどを収納した機器室23がそれぞれ設置されている。さらに、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ24が設けられるとともに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト25が搭載されている。
運転室22内には、走行や旋回、オーガ18の昇降・回転駆動などの操作を行うための複数の操作レバーや操作ペダル、押しボタンスイッチやディスプレイなどの機器が、操作性を考慮して運転席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの機器と電気的に接続されて、データ処理や判定などの各種演算処理を行うコントローラ(CPU)を中心に構成された制御装置が設けられている。
杭打機11は、地盤改良と鋼管埋設との2種類の作業を1台で行うことができるが、例えば、地盤改良を目的として使用する場合には、掘削刃26aと撹拌羽根26bとを備えた掘削ヘッド26を先端(下端)に装着し、上端にスイベルジョイント27を装着した中空ロッド28を使用する。この中空ロッド28は、上部がオーガ18の駆動部を貫通して装着され、リーダ16の下端部に設けられた振止装置29によって回転可能かつ上下動可能に保持される。また、スイベルジョイント27には、バッチャープラント(図示せず)からセメントミルクなどの地盤改良剤がグラウトホース30を通して供給され、中空ロッド28の内部流路を通って掘削ヘッド26に供給されて掘削孔内に注入される。
ここで、前記制御装置は、杭打機11の車体位置情報などに基づいて施工現場における杭芯位置合わせを支援する表示システムを構成し、図2に示すように、実杭芯位置演算部31として機能する前記コントローラと、各種データを記憶する記憶部である施工管理装置32と、表示画面によって杭芯位置合わせに関する誘導支援を受けたり、施工の結果を確認したりするディスプレイ33とを備えている。また、実杭芯位置演算部31には、杭打機11の動作状態を検出する各種センサから信号が入力される。センサには、例えば、上部旋回体14に設けられた本体傾斜計34やリーダ16に設けられたリーダ傾斜計35などが挙げられる。本体傾斜計34及びリーダ傾斜計35の検出値は、杭打機11の姿勢情報として取得されて制御プログラムの実行に使用される。
施工管理装置32は、通信接続によって制御プログラムや、施工計画情報である施工計画データなどをダウンロードして記憶可能に構成されている。施工計画データは、施工現場の位置や土質などを調べて作成された施工計画書に基づいて、あらかじめ、事務所内のコンピュータに入力されるもので、杭番号の他、該杭番号に紐付けられた深度やフィード速度、回転数、セメントミルク流量などの各種の施工目標値が含まれる。施工計画データの入力作業は、施工図面と対比して杭位置データを入力することによって行われ、具体的には、杭の埋設予定位置を、座標上の原点からの相対的位置(距離)として二次元座標で指定することになる。
作成された施工計画データは、施工現場の住所の位置情報や施工する杭打機11の号機情報、機構情報を含む車体外形情報、例えば、旋回半径に関する情報などが付加されて、ネットワーク上のデータサーバにアップロードされる。また、施工計画データに基づいて実施される工法、例えば、地盤改良工法、既製杭工法又は場所打ち杭工法のための施工管理プログラムや、該施工管理プログラムの設定パラメータのデータも作成され、同様にして、データサーバへアップロードされる。
前記車体位置情報は、周知のGNSS(Global Navigation Satellite System)技術を用いて取得され、例えば、杭打機11の上部旋回体14に設けられた受信部として第1測位機36及び第2測位機37を備え、GNSS衛星からの電波を受信しながら、杭打機11の走行や旋回などに伴って変化するアンテナの位置情報を取得する。実杭芯位置演算部31では、前後方向に離れた2本のアンテナ38,39の位置関係から、演算によって上部旋回体14の位置及び向きを求め、さらには本体傾斜計34及びリーダ傾斜計35のそれぞれで取得した姿勢情報を加味して、地面における中空ロッド28の中心軸の位置、すなわち、実杭芯位置Cの特定を行う(図1)。
ここで、前記表示システムが発揮する杭芯位置合わせの支援機能(杭芯誘導)について、図3を参照しながら説明する。まず、施工現場に搬入された杭打機11は、エンジンを始動するとシステムが起動し、第1測位機36及び第2測位機37で杭打機11の現在の車体位置情報が取得される。また、杭打機11が存在する施工現場に対応して、施工計画データのダウンロードが自動的に行われて、各杭番号の位置情報や車体外形情報などの各種情報が取得される。さらに、実杭芯位置演算部31の演算によって実杭芯位置Cの特定がなされる。これにより、最初の杭番号の杭位置データと車体位置データとに基づいて、杭の埋設予定位置に向かう最短移動経路が設定され、ディスプレイ33には誘導画面として最短移動経路を示す二次元画像が表示される。
杭打機11を走行させて杭の埋設予定位置(目標杭芯位置)に近づくと、前記誘導画面は、図3(A)に示すように、杭の埋設予定位置P及び実杭芯位置Cを含む周辺領域を拡大したアプローチ画面に切り替わる。杭の埋設予定位置P及び実杭芯位置Cは、共通の杭断面をイメージする円や円中心線によって付加した画像データである。また、アプローチ画面中の表示画像には、上部旋回体14の旋回半径に対応する実杭芯位置Cの予測軌道Sが付加される。予測軌道Sは、上部旋回体14の旋回中心、つまり旋回ベアリング13の回転中心と実杭芯位置Cとの間の水平距離である旋回半径に対応した円弧であって、実杭芯位置Cと共に表示画像の中央部に固定される。これにより、表示画像に従う旋回操作において、実杭芯位置Cの左右移動方向と、操作レバーの左右操作方向(レバー傾動方向)とが運転者目線で整合した状態となる。
杭芯位置合わせの段階では、クローラ12aを微速駆動して直進させながら、図3(B)に示すように、予測軌道(円弧)Sを杭の埋設予定位置Pに重ね合わせる。この状態から、上部旋回体14を左旋回させると、図3(C)に示すように、旋回動作に従って杭の埋設予定位置Pが予測軌道Sを倣いながら実杭芯位置Cまで移動される。言い換えると、実杭芯位置Cは、その予測軌道Sを外れることなく杭の埋設予定位置Pに向かって移動される。そして、実杭芯位置Cと杭の埋設予定位置Pとを一致させた旋回停止位置で制動保持されることにより、杭芯位置合わせの運転操作が完了する。
最初の杭番号についての施工は、施工管理プログラムの実行によって、施工データを取得しながら自動で行われ、施工が完了すると、運転者によって所定の切替操作が行われる。これにより、制御装置では、次の杭番号の杭位置データと車体位置データとに基づいて、次の杭の埋設予定位置に向かう移動経路を設定する。そして、上述の杭芯誘導を受けて、同様の手順で、次の杭の杭芯位置合わせが行われ、以降の杭の埋設予定位置に対しても同様にして杭芯位置合わせが行われる。こうして、計画された杭の埋設順序に従って杭芯位置合わせと施工とが繰り返し行われる。
このように、本発明の杭打機11の表示システムによれば、コントローラによって杭の埋設予定位置Pと、車体位置情報から求まる実杭芯位置Cと、旋回半径に対応する実杭芯位置Cの予測軌道Sとを表示画像に付加するので、表示画面でこれらの位置関係を把握した運転者は、一旦、予測軌道Sを杭の埋設予定位置Pに重ねてしまえば、その後、杭芯位置合わせに係る動作を安定した旋回動作によって行うことができる。すなわち、実杭芯位置Cを目標杭芯位置Pに直接的に合わせる方法よりも簡便かつ確実に行うことができる。これにより、誘導員の補助なしで容易に杭芯位置合わせを行うことが可能となり、施工現場の省人化・省力化に寄与するものとなる。
また、予測軌道Sを円弧で示すので、杭芯位置合わせの際に、旋回操作する方向を直感的に理解することができる。さらに、実杭芯位置Cの設定について、本体傾斜計34及びリーダ傾斜計35のそれぞれで取得した姿勢情報を加味するので、施工現場の地形や杭打機11の可動部の動きによって生じる車体位置情報の誤差を排除することが可能となり、杭芯位置合わせを正確に行うことができる。
加えて、複数の杭の埋設予定位置が連続して集中している施工現場では、従来から杭芯位置合わせを何回も繰り返すようなルーチンワークが行われているが、これを更に短く、わずかな時間でも短縮したいとのニーズがある。本発明は、このような杭打機11が使用される施工現場の工数低減のニーズに応えることができる。
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、地盤改良と同様の作業を行う鋼管埋設にも適用することが可能である。この場合、3点式杭打機のような大型杭打機にも本発明を適用できる。また、杭の埋設予定位置の周囲に既設杭などの障害物がある状況では、クローラの進入・退出方向が制限されてしまうことがあるが、そのような狭隘な場所であっても、杭の埋設予定位置への進入角度を意図的にずらした状態のままで杭芯位置合わせを行うことができる。これにより、操作の安全性や確実性が高まるだけでなく、運転室内にいる運転者に安心感を与えるという効果も期待される。