次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械1の側面図である。図2は、建設機械1の制御ブロック図である。
建設機械1は、建設現場、解体現場、及び鉱山等で用いられ、土木作業及び建築作業を行う。建設機械1は、特に土砂等を掘削する掘削作業を主として行う。図1に示すように、建設機械1は、クローラ11と、旋回体12と、作業機13と、を備える。
クローラ11は、左右1対で配置されている。左右のクローラ11は、オペレータの操作に応じて駆動される。これにより、建設機械1を走行させることができる。旋回体12は、クローラ11に支持されている。旋回体12は、クローラ11に対して鉛直方向(建設機械1の上下方向)を回転軸として旋回可能に構成されている。旋回体12には、作業機13が取り付けられている。作業機13は、オペレータの操作に応じて上記の掘削作業を行う。作業機13は、ブーム14と、アーム15と、バケット16と、を備える。
ブーム14は、細長い部材として構成されている。ブーム14の一端部は、旋回体12の前部に回転可能に取り付けられている。ブーム14には油圧シリンダであるブームシリンダ17が取り付けられており、ブームシリンダ17が伸縮することでブーム14を回転させることができる。また、建設機械1は、このブーム14の回転角を検出するブーム角度センサ20を備えている。
アーム15は、ブーム14と同様に細長い部材である。アーム15の一端部は、ブーム14の先端部に回転可能に支持されている。建設機械1は、アーム15を回転させるためのアームシリンダ18と、アーム15の回転角度を検出するアーム角度センサ21と、を備えている。
バケット16は、容器状に形成された部材として構成されている。バケット16の一端部は、アーム15の先端部に回転可能に支持されている。建設機械1は、バケット16を回転させるためのバケットシリンダ19と、バケット16の回転角度を検出するバケット角度センサ22と、を備えている。ブーム14及びアーム15を回転させてバケット16の位置を調整した状態で、バケット16を回転させることで、バケット16の姿勢が変化してすくい動作/ダンプ動作が行われる。これにより土砂が掘削される。
旋回体12の上側には、オペレータが搭乗するためのキャビン31が配置されている。キャビン31の内部には、オペレータが着座するための運転座席32と、作業機13を操作するための操作レバー33と、表示装置34と、が配置されている。また、運転座席32の周囲には、その他の操作具(例えば、建設機械1の走行を指示する走行レバー、及び、エンジンの回転数を上昇させるアクセルレバー等)も配置されている。なお、以下の説明では、運転座席32に着座したオペレータが向く方向を前として前後方向及び左右方向を定義する。また、建設機械1の向きとは、クローラ11ではなく旋回体12の向き(即ち着座したオペレータの向き)を指すものと定義する。
表示装置34は、後述の図4に示すように、表示部35と、操作キー36と、を備える。表示部35は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、様々な情報を表示することができる。操作キー36は、表示部35の近傍に配置されたハードウェアキーである。操作キー36には、押圧して操作するプッシュキー及び回転して操作するダイヤルキーが含まれている。なお、表示部35と操作キー36は同じ筐体に設けられている必要はなく、それぞれが離れた位置に配置されていてもよい。また、操作キー36に加えて又は代えて、オペレータが画面に触れて操作を行うタッチパネルを設けてもよい。
また、表示装置34は、運転座席32に対向するように配置されている。言い換えれば、運転座席32に着座して前方を見たオペレータの視界に入る位置に配置されている。例えば、表示装置34は、表示部35の表示面が、前後方向に対して略垂直となるように配置されている。なお、本実施形態では、オペレータの視界のうち下部に表示装置34が配置されているが、オペレータの視界の上部に表示装置34が配置されていてもよい。詳細は後述するが、表示装置34には、前方を撮影した映像に情報を付加したものが表示される。従って、上記の位置に表示装置34を配置することで、オペレータは、運転座席32から前方を直接見た光景と、表示装置34の映像と、を見比べ易くなる。
建設機械1は、周囲の情報を取得する情報取得装置として、3次元計測センサ41と、撮影装置42と、GNSSアンテナ43と、方位センサ44と、を備える。また、これらが取得した情報は、制御装置50へ出力される。
3次元計測センサ41は、前方に対して3次元計測を行って、前方に存在する物体及び地形等の位置及び形状を取得する。3次元計測センサ41は、例えばステレオカメラである。ステレオカメラは、互いに適宜の距離だけ離して配置された1対の撮像素子(例えばCCD)を備える。それぞれの撮像素子で取得された映像を比較することで、取得した映像に含まれる物体等の位置を算出できる。また、3次元計測センサ41として、3次元LIDAR(Laser Imaging Detectiоn and Ranging)を用いてもよい。LIDARとは、電波を照射するとともに、当該電波の反射波を受信するまでの時間を計測することで、周囲の物体等の位置及び形状を取得する技術である。
撮影装置42は、前方を撮影して映像(連続した複数枚の画像)を取得するカメラである。本実施形態では、3次元計測センサ41及び撮影装置42の両方が、運転座席32よりも高い位置であって、運転座席32によりも前方に配置されている。これに代えて、3次元計測センサ41及び撮影装置42の少なくとも一方が異なる位置に配置されていてもよい。ただし、オペレータは、撮影装置42が撮影した映像を確認しながら作業を行うことがあるため、オペレータが直接前方を見る視点と、撮影装置42の視点と、が近似していることが好ましい。例えば、撮影装置42の左右方向の位置は、運転座席32の左右方向の位置と、重なっていることが好ましい。
また、3次元計測センサ41で得られた情報と、撮影装置42で得られた画像とは、対応付けて用いられる。そのため、3次元計測センサ41で得られた情報の位置(建設機械1が原点の3次元座標、以下単に3次元座標)と、撮影装置42の画像の位置(画像座標)と、の対応関係が予め作成されて制御装置50に記憶されている。また、3次元計測センサ41及び撮影装置42の3次元座標における設置位置についても記憶されている。
GNSSアンテナ43は、GPS等の衛星測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信する。GNSSアンテナ43によって受信された測位信号は、制御装置50又は図略の受信部に入力され、測位演算が行われる。測位演算を行うことで、建設機械1の位置情報(特にGNSSアンテナ43の位置情報)が例えば緯度・経度情報として算出される。本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
方位センサ44は、旋回体12に配置されている。そのため、クローラ11が停止した状態で旋回体12が旋回した場合であっても、当該旋回体12の向く方位を検出できる。方位センサ44としては、例えば磁気センサ又はジャイロセンサを用いることができる。
制御装置50は、コンピュータとして構成されており、CPU(演算部)、ROM、RAM等を備える。また、前記ROMには、建設機械1の各部を制御データに基づいて動作させるための適宜の動作プログラムが記憶されている。このソフトウェアとハードウェアとの協働により、制御装置50を、図2に示す自己位置認識部51、候補画像作成部52、ガイド選択部53、ガイド変更部54、ガイド位置特定部55、ガイド画像作成部56、干渉判定部57、掘削具調整部58、進捗算出部59、及び完了時間算出部60として機能させることができる。これにより、撮影装置42が撮影した映像上であって掘削の対象となる対象領域に仮想ガイドを重畳させることができる。例えば、地面を掘削して穴を形成する場合は、当該地面のうち、穴の形成予定箇所だけでなくその周囲を含めた箇所(地面)が対象領域となる。以下、この処理について具体的に説明する。
初めに、制御装置50の自己位置認識部51が行う自己位置認識処理について説明する。自己位置認識処理とは、建設機械1の位置及び方位を認識するための処理である。具体的には、3次元計測センサ41が計測して得られた、前方に存在する物体及び地形等の位置及び形状に基づいて、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)処理を行うことで、周囲の物体や地形の位置関係を示す周囲地図を作成し、更に、当該周囲地図上の建設機械1の位置及び方位を特定することができる。
また、自己位置認識処理において、GNSSアンテナ43の検出結果である建設機械1の絶対位置と、方位センサ44の検出結果である建設機械1が向いている方位とを用い、更に、絶対位置毎の物体や地形等が記憶されたデータを用いることで、建設機械1の周囲の物体や地形等との位置関係を特定できる。そのため、3次元計測センサ41だけでなくGNSSアンテナ43及び方位センサ44の検出結果を用いることで、3次元計測センサ41に基づく自己位置認識の精度を向上させることができる。
建設機械1が移動又は旋回した場合、建設機械1の自己位置が変化する。従って、自己位置認識部51は所定のタイミングで新たに建設機械1の位置及び方位を求めて、自己位置を更新する。
次に、制御装置50の候補画像作成部52と、ガイド選択部53と、ガイド変更部54と、ガイド位置特定部55と、ガイド画像作成部56と、で行われる仮想ガイドの設定について、図3のフローチャートに沿って説明する。
候補画像作成部52は、作業中に表示する仮想ガイドであって、オペレータの選択候補である複数の仮想ガイドテンプレートを並べた画像(図4に示すテンプレート候補画像71、候補画像)を作成して表示部35に表示する。仮想ガイドテンプレートとは、仮想ガイドを作成するための基となる形状(データ)である。仮想ガイドテンプレートは予め作成されて、制御装置50のROM等に記憶されている。図4に示す例では、鉛直方向に平行な鉛直面、水平方向に平行な水平面、及びそれらを組み合わせた形状の仮想ガイドテンプレートが表示されている。なお、鉛直面及び水平面以外の平面を含む仮想ガイドテンプレートを表示することもできる。オペレータは、操作キー36を操作して、目標の形状の仮想ガイドテンプレート、あるいは目標の形状に近い仮想ガイドテンプレートを選択する。これにより、ガイド選択部53は、選択された仮想ガイドテンプレートを特定する(S101)。
ガイド変更部54は、オペレータの操作に応じて、仮想ガイドテンプレートの形状を変更して仮想ガイドを作成する(S102)。具体的には、図4に示す表示部35の右側には、テンプレート候補画像71で選択された仮想ガイドテンプレートの形状を変更するためのテンプレート変更画像72が表示されている。テンプレート変更画像72には、選択された仮想ガイドテンプレートと、地表の位置を示す地表線と、形状を変更する方向等を示すマークと、が表示されている。オペレータは、例えば変更する仮想平面及びその変更方向を選択して、ダイヤルキー等を回すことで、仮想ガイドテンプレートの形状を変更することができる。また、地表線の位置についても変更可能である。なお、この段階では、仮想ガイドの大まかな形状を特定することを目的としている。従って、例えば仮想ガイドを構成する仮想平面の種類、仮想平面の数、及び各仮想平面の大まかな縦横比等が設定可能であればよい。
なお、本実施形態では、テンプレート候補画像71とテンプレート変更画像72とが同時に表示部35に表示されている。これに代えて、初めにテンプレート候補画像71を表示し、仮想ガイドテンプレートの選択が確定した後に、テンプレート変更画像72を表示することもできる。
次に、ガイド位置特定部55は、ステップS102で作成された仮想ガイドの位置を特定する処理を行う(S103)。本実施形態では、図5に示すように、障害物81の手前に、掘削の対象である対象領域が存在するものとする。表示装置34には、作成された仮想ガイド75及びその基準点76が表示される。基準点76は、仮想ガイド75の位置を特定するための位置を示す点である。また、オペレータは、この基準点の位置を指定する。本実施形態では、レーザポインタ82を用いて、仮想ガイド75の基準点76を合わせたい位置(表示部35ではなく作業現場)にレーザ照射点83を合わせる。この状態において、撮影装置42で撮影を行って、撮影した画像座標上におけるレーザ照射点83の位置を特定する。上述のように画像座標と3次元座標の対応関係は予め作成されているため、レーザ照射点83の3次元座標を特定できる。従って、オペレータの指示通りに仮想ガイド75を設置できる。
なお、レーザポインタ82で基準点76を指示する構成に代えて、目印物体を作業現場に配置することもできる。この場合、レーザ照射点83と同様に1つの目印物体を配置する構成であってもよい、複数の目印物体を配置する構成であってもよい。複数の目印物体を配置する場合、例えば、仮想ガイド75の水平面の4隅に合わせて目印物体を配置することで、仮想ガイド75の位置及び大きさを簡単にかつ正確に合わせることができる。
次に、ガイド変更部54は、オペレータの操作に応じて、ステップS103で位置が特定された仮想ガイド75の位置及び形状の変更を行う(S104)。ステップS102では仮想ガイド75の大まかな形状が変更可能であるのに対し、ステップS104では仮想ガイド75の詳細な形状及び位置が変更可能である。仮想ガイド75の形状を変更する操作はステップS102と同様である。また、仮想ガイド75の位置を変更する操作は、例えば基準点76及びその移動方向を選択してダイヤルキーを回す等の操作で変更させることができる。
ステップS104の処理は、表示部35に仮想ガイド75のみを表示して行うこともできるが、図6に示すように、表示部35に撮影装置42が撮影した映像と仮想ガイド75とを重畳して表示した状態で行うこともできる。これにより、仮想ガイド75の位置及び形状をより分かり易く調整することができる。以下、撮影装置42が撮影した映像上に仮想ガイド75を重畳した画像(以下、ガイド画像73)を作成する処理について説明する。
具体的には、仮想ガイド75の設置位置の3次元座標を画像座標に変換する。次に、仮想ガイド75の3次元モデルを画像座標に変換する。これにより、撮影装置42を視点としたときの仮想ガイド75の位置及び形状を得ることができる。従って、撮影装置42が撮影した映像上に、仮想ガイド75を適切な位置及び形状で重畳してガイド画像73を作成できる。
また、本実施形態では、3次元計測センサ41の計測結果と仮想ガイド75の3次元座標とに基づいて、画像座標系において、撮影装置42が撮影した画像の表示物(特に地表)と、仮想ガイド75と、の何れが手前側(即ち、撮影装置42に近い側)に表示されているかを特定できる。そして、図6に示すように、仮想ガイド75のうち、表示物よりも撮影装置42に近い側を可視部分75aとして描画し、表示物よりも撮影装置42から遠い側の部分(例えば地表に埋まっている部分)を不可視部分75bとして描画する。そして、可視部分75aと不可視部分75bとを区別してガイド画像73を作成する。
可視部分75aと不可視部分75bとを区別する方法としては、例えば可視部分75aよりも不可視部分75bの透明度(後方の映像が透過される度合い)を高くすることが考えられる。あるいは、可視部分75aと不可視部分75bとで描画色を異ならせてもよい。また、可視部分75a及び不可視部分75bの一方を枠線のみで表示してもよい。これにより、オペレータは、ガイド画像73において仮想ガイド75が設置されている位置が分かり易くなるため、掘削すべき対象領域に簡単かつ正確に仮想ガイド75を合わせることができる。
以上により、仮想ガイド75に関する設定が完了する。この仮想ガイド75は、図7に示すように、作業機13を操作して掘削を行う際にも表示される。従って、オペレータは、ガイド画像73を確認しながら作業機13を操作することで、仮想ガイド75に合わせて掘削を行うことができる。なお、建設機械1の位置及び向きが変化した場合であっても、上述のように自己位置認識等の処理が新たに行われて情報が更新されるため、位置及び向きの変化に応じて仮想ガイド75の表示位置及び形状を変化させることができる。また、掘削作業を進めることで地表の位置が下がった場合、3次元計測センサ41が取得する情報が変化するため、それに応じて不可視部分75bであった部分が可視部分75aとして表示される処理が行われる。不可視部分75bが可視部分75aに変化した部分を掘削が完了した領域(掘削完了部分)とし、当該掘削完了部分の深さ、奥行き、及び幅の絶対値の少なくとも1つをリアルタイムで表示する処理が行われてもよい。掘削完了部分の深さ、奥行き、及び幅の絶対値は、3次元計測センサ41及び撮影装置42の3次元座標における設置位置からの距離情報に基づいて算出することができる。掘削完了部分の深さ、奥行き、及び幅の絶対値は、表示部35に表示されるもののうち、例えばバケット16の幅等、形状が変化することのない部分の寸法の絶対値によって補正されることが好ましい。これにより、算出精度を向上することができる。また、作業中のガイド画像73は、図略の無線装置を介して外部(例えば共同作業者又は管理者の情報処理装置等)へ送信することもできる。
次に、干渉判定部57で行われる干渉判定及び掘削具調整部58で行われる調整処理について、図8を参照して説明する。図8は、バケット16と仮想ガイド75との干渉を検出して、目標位置を調整する処理を説明する図である。
本実施形態では、干渉判定部57は、バケット16と仮想ガイド75が干渉するか否かを判定する。バケット16と仮想ガイド75の干渉とは、バケット16と仮想ガイド75とが重なっている状態を意味する。従って、バケット16と仮想ガイド75とが接触しており、かつ、重なっていない状態は、厳密には干渉には該当しない。そして、現在又は将来において干渉が生じると干渉判定部57が判定した場合は、掘削具調整部58が作業機13を制御して、干渉が生じないようにする。以下、詳細に説明する。
建設機械1を基準としたバケット16の位置及び姿勢は、ブーム14の形状及び角度と、アーム15の形状及び角度と、バケット16の形状及び角度と、に基づいて算出することができる。作業機13の各部の角度は、上記のように角度センサ20〜22で検出されている。また、作業機13の各部の形状は、予め制御装置50に記憶されている。従って、干渉判定部57は、角度センサ20〜22の検出結果に基づいて、バケット16の現在の位置及び姿勢を算出できる。
また、オペレータが操作レバー33を所定の傾倒角度にした状態において、この操作レバー33の操作状態に基づいて、所定時間後に作業機13がどのような位置及び姿勢になるかは算出可能である。従って、干渉判定部57は、バケット16の現在の位置及び姿勢を算出できるだけでなく、バケット16の将来の位置及び姿勢を算出できる。
また、上述のように仮想ガイド75の3次元座標における位置は既に得られている。干渉判定部57は、バケット16の位置及び姿勢を算出して、更にバケット16の形状を用いて、バケット16を3次元座標に配置することで、3次元座標においてバケット16が占める部分を算出できる。従って、現在又は将来においてバケット16が占める部分と、仮想ガイド75が占める部分と、を比較することで、バケット16が仮想ガイド75に干渉するか否かを判定できる(図8を参照)。
掘削具調整部58は、バケット16が将来的に仮想ガイド75に干渉すると干渉判定部57が判定した場合、以下の処理を行う。初めに、掘削具調整部58は、将来のバケット16が占める部分の各点のうち、仮想ガイド75を超えている長さが最も長い点(以下、点B1)の座標を特定する。例えば、仮想ガイド75を超えている各点から仮想ガイド75に対して垂線を引き、この垂線の長さが最も長い点を点B1とする。また、現在のバケット16における点B1と同じ箇所を点Aと称する。
次に、掘削具調整部58は、点B1から仮想ガイド75へ引いた垂線と仮想ガイド75の交点である点B2の座標を求める。掘削具調整部58は、点Aが点B2に移動するように、作業機13(詳細にはシリンダ17,18,19)を制御する。このとき、掘削具調整部58は、ブーム14、アーム15、及びバケット16の回転角度の変化量が最も小さくなるように、作業機13を制御する。これにより、バケット16をスムーズに移動させることができる。なお、上記とは異なる計算方法で点B2を求めることもできる。
以上の処理を行うことで、仮にバケット16が仮想ガイド75に干渉するような操作がオペレータにより行われた場合であっても、当該干渉を予防しつつ、仮想ガイド75を超えないように(仮想ガイド75に沿って)バケット16の位置及び姿勢を変化させることができる。
なお、干渉判定部57がバケット16と仮想ガイド75の干渉を検出した場合、作業機13を停止させることで、この干渉を予防する構成であってもよい。また、警告音を発したり又は警告を表示したりすることで、オペレータに干渉の可能性を通知する構成であってもよい。
また、本実施形態では、仮想ガイド75は、バケット16と、仮想ガイド75と、が将来的に干渉するか否かを判定する。これに代えて、干渉判定部57が、現在のバケット16と、仮想ガイド75と、が干渉しているか否かを判定する構成であってもよい。この構成によれば、干渉していると判定された時点で作業機13の動作を止めても、バケット16が仮想ガイド75を超えてしまうが、例えば仮想ガイド75が余裕をもって設定されている場合、又は、仮想ガイド75に沿った厳密な掘削までは求められていない場合は有効である。また、既に干渉が生じている場合は、干渉を予防する処理ではなく、干渉を解消する処理が行われる。例えば、仮想ガイド75を超えた領域の掘削量が最も少なくなるようにバケット16の位置及び姿勢を変化させる制御が行われる。
次に、進捗算出部59で行われる進捗算出処理、及び、完了時間算出部60で行われる完了時間算出処理について、図9を参照して説明する。図9は、進捗率及び作業完了時間を算出する処理を説明する図である。
本実施形態では、3次元計測センサ41の計測結果により地表の3次元座標が取得される。また、仮想ガイド75の3次元座標が設定される。従って、図9の上側の図に示すように、掘削の開始前の地表の位置と、仮想ガイド75の位置と、に基づいて、掘削すべき領域(未掘削部分)の体積を算出できる。また、図9の下側の図に示すように、掘削の開始前の地表の位置と、掘削の途中の地表の位置と、仮想ガイド75の位置と、に基づいて、掘削完了部分又は未掘削部分の体積を算出できる。従って、進捗算出部59は、現在の掘削完了部分の体積を、掘削開始前の未掘削部分の体積(即ち、掘削すべき範囲の全体の体積)で除することで、掘削作業の進捗率を算出する。
算出された進捗率は、ガイド画像73上に表示される。また、進捗率としては、掘削が完了した割合ではなく、掘削が残っている割合を算出及び表示することもできる。
また、掘削が進められることで、未掘削部分が掘削完了部分に変化していく。ここで、所定時間における未掘削部分から掘削完了部分の変化量を算出することで、掘削速度(単位時間あたりに掘削される体積)を把握することができる。従って、未掘削部分を掘削速度で除することで、掘削作業が完了するまでの時間(掘削完了時間)を推測することができる。この掘削の完了時間もガイド画像73上に表示される。なお、進捗率と掘削完了時間の何れか一方のみをガイド画像73に表示することもできる。
また、建設機械1が備える撮影装置42を用いて、施工記録を作成することもできる。例えば、掘削作業の開始前、掘削作業中、及び完了後において、撮影装置42が撮影した画像を制御装置50に記憶するか、外部へ送信する。これにより、施工記録の作成が容易となる。また、建設機械1を移動させる場合は、その旨の情報を付して画像を撮影して制御装置50に記憶するか、外部へ送信する。これにより、掘削作業の中断時の記録も自動的に作成できる。
以上に説明したように、上記実施形態の建設機械1は、撮影装置42と、表示装置34と、候補画像作成部52と、ガイド選択部53と、ガイド画像作成部56と、干渉判定部57と、を備える。撮影装置42は、対象領域を撮影する。候補画像作成部52は、予め作成された複数の仮想ガイド75を、オペレータの選択候補として示すテンプレート候補画像71を表示装置34に表示する。ガイド選択部53は、テンプレート候補画像71から、オペレータの操作に応じた仮想ガイド75を選択する。ガイド画像作成部56は、撮影装置42が撮影した画像の対象領域上に、ガイド選択部53が選択した仮想ガイド75が重畳された画像であるガイド画像73を表示装置34に表示する。干渉判定部57は、バケット16の現在の位置及び姿勢、又は、前記掘削具の将来の位置及び姿勢を算出する処理を行って、当該算出された位置及び姿勢のバケット16と、対象領域上に配置された仮想ガイド75と、が干渉するか否かを判定する。
これにより、バケット16が現在の仮想ガイド75に干渉しているか否か、又は、バケット16が仮想ガイド75に将来的に干渉するか否かが判定されるので、このような干渉が生じた場合に、例えばバケット16の動作を停止又は制限したり、警告を行ったりすることができる。そのため、オペレータの習熟度にかかわらず、対象領域が過剰に掘削されることを防止でき、オペレータが容易に掘削を行うことが可能となる。また、撮影装置42が撮影した画像上に仮想ガイド75が表示されるため、オペレータは直感的に掘削領域を把握することができる。
また、上記実施形態の建設機械1においては、対象領域上に配置された仮想ガイド75とバケット16とが干渉すると干渉判定部57が判定した場合に、バケット16の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することで、バケット16と仮想ガイド75との干渉を解消又は予防する掘削具調整部58を更に備える。
これにより、バケット16と仮想ガイド75が干渉している又は干渉が予測される場合であっても、当該干渉が自動的に解消又は予防されるので、対象領域が過剰に掘削されることをより確実に防止することができ、オペレータは一層容易に掘削を行うことが可能となる。
また、上記実施形態の建設機械1においては、ガイド画像作成部56は、仮想ガイド75のうち、撮影装置42が撮影した画像に含まれる表示物よりも当該撮影装置42に近い側の部分である可視部分75aと、撮影装置42が撮影した画像に含まれる表示物よりも当該撮影装置42から遠い側の部分である不可視部分75bと、を区別してガイド画像73を作成する。
これにより、オペレータは、仮想ガイド75の位置を一層容易に把握できる。
また、上記実施形態の建設機械1においては、仮想ガイド75の位置及び形状の少なくとも一方を、オペレータの操作に応じて変更するガイド変更部54を更に備える。
これにより、対象領域等に応じて仮想ガイド75の位置及び/又は形状を変更できるため、様々な作業に仮想ガイド75を活用することができる。
また、上記実施形態の建設機械1においては、対象領域の掘削完了部分及び未掘削部分の少なくとも何れかと、仮想ガイド75の位置と、に基づいて、対象領域の掘削の進捗率を算出する進捗算出部59を更に備える。
これにより、掘削の進捗率を明確なデータとして把握できる。
また、上記実施形態の建設機械1においては、対象領域の掘削完了部分及び未掘削部分の少なくとも何れかと、仮想ガイド75の位置と、掘削に掛かった時間と、に基づいて、対象領域の掘削完了時間を算出する完了時間算出部60を更に備える。
これにより、掘削の進捗率を明確なデータとして把握できる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、ステップS102とステップS104の両方において、仮想ガイド75の形状を調整する処理を行うが、少なくとも一方を省略することもできる。例えば、仮想ガイド75の形状の調整が不要な場合、ステップS102とステップS104の両方において、仮想ガイド75の形状を調整する処理を省略できる。また、上記実施形態では、テンプレート候補画像71に含まれる仮想ガイド75の候補(仮想ガイドテンプレート)は、基本的には形状が変更されることが想定されている。これに代えて、形状の変更が想定されていない仮想ガイド75のみをオペレータの選択候補として含んだ候補画像が表示装置34に表示されてもよい。
上記実施形態では、ブームシリンダ17等のシリンダとして油圧シリンダを用いる例を説明したが、例えば電動シリンダであってもよい。
上記実施形態では、掘削形状を規定するために仮想ガイド75を用いたが、それに加えて、掘削具の浸入を禁止する範囲(例えば建造物等が配置されている範囲)に仮想ガイド75を設置することもできる。
上記実施形態では、キャビン31を備える建設機械1に本発明を適用したが、キャビン31を備えずに運転座席32が露出しているタイプの建設機械1にも本発明を適用できる。