JP2021165442A - 紡績糸織物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエステルを高混率に用いながらも、ピリングの発生が抑制され、形態安定性に優れ、更には手アイロンで着ジワが回復しやすい織物を提供する。【解決手段】単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を75質量%以上含む紡績糸を50質量%以上含む織物であって、織物が平織組織からなり、織物の2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度が200〜300本であることを特徴とする織物。【選択図】なし

Description

本発明は、抗ピリング性と形態安定性を両立し、手アイロンでシワが回復しやすい、シャツ用途等に好適な紡績糸織物に関する。
ドレスシャツやカジュアルシャツなどのシャツ製品には、綿の紡績糸、又は綿とポリエステルの混紡の紡績糸を用いた織物が主に使われている。
紡績糸は、毛羽があることで、かさ高性があり、柔軟で、べたつき難いという特徴を持っている。ポリエステル繊維は、綿や麻、絹、羊毛等の天然繊維と比べると強度が高くて耐久性も高いが、ポリエステル繊維の紡績糸は、ピリングが発生しやすい問題があり、ポリエステル短繊維を高混率で含む紡績糸を用いた織物はこれまでシャツ製品にあまり使われていなかった。
ピリングとは、着用中や洗濯中に布地表面が摩擦され、布地表面が毛羽立ち、毛羽が絡み合い、小さな毛玉(ピル)ができることを言い、特に、紡績糸にポリエステルやポリアミドなどの合成繊維が含まれていると、該繊維が強く切れにくいため、発生した毛玉が脱落しにくく、生地表面に残るため外観を損なう。そのため、衣料用生地においてポリエステル短繊維を高混率に使用する場合には、製造中にピリングの発生を抑制するための対策が行われるが、それによる新たな欠点が発生したり、十分な対策となっていない場合が多い。
一方では、ポリエステルを混紡することで形態安定性を高めることができる。例えば織物のシャツ地では、綿繊維に対してポリエステル短繊維を50質量%程度混紡したうえで形態安定加工することでW&W性を高めた製品が販売されている。しかし、この場合においてもW&W性はまだ十分ではなく、ポリエステル短繊維をこれ以上の混率にするとピリングが発生しやすくなり、ポリエステルを高混率にした織物を作ることは難しかった。
ポリエステルを高混率に用いた生地については、以下のような技術が従来から提案されている。例えば、特許文献1には、熱可塑性合成繊維の短繊維を含む抗ピリング布地であって、布地の少なくとも片面表面に、短繊維端部の溶融玉と、短繊維の毛羽先端部の溶融玉を表面研磨することによって形成される研磨痕とを有する布地が提案されている。しかし、この布地は、溶融玉が研磨されて肌にチクチクしない点は良いが、表面研磨するために製造工程が複雑になること、及び埃が付きやすく取れにくい問題があった。更には、この技術では着シワの改善には至らなかった。
また、特許文献2には、着じわ回復性に優れた織編物として、フィラメントが芯に配置され短繊維糸が鞘に配置された芯鞘構造の繊維束(B)と短繊維のみからなる繊維束(A)とが特定の条件で相互に巻き付きあってなる複合交撚糸を使用した織編物が提案されている。しかし、この織編物は、特殊な構造の複合紡績糸を用いる必要があるため、汎用性に欠ける。また、この織編物は、着用中にシワは付きにくいが、一度シワが付いてしまえば取れにくいのでアイロン掛けが必要であった。
さらに、特許文献3には、ハリコシと柔らかさ、通気性、保形性を兼ね備えたビジネスシャツ地として、ポリエステル繊維25〜97質量%と、単糸繊度3〜17dtexのポリエステルフィラメント3〜25質量%を用いた編地が提案されている。この編地は、非常に形態安定性が良く、編地なので着ジワも発生しにくいのであるが、やはり付いてしまったシワは、洗濯したり、アイロン掛けしないと取れにくかった。
このように従来のポリエステルを高混率に用いた生地では、抗ピリング性と形態安定性を両立し、さらに着ジワを容易に取ることができるものは提案されていないのが現状である。
WO2019/031356号公報 特開平11−100742号公報 特開2019−77955号公報
本発明は、上述の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、ポリエステルを高混率に用いながらも、ピリングの発生が抑制され、形態安定性に優れ、更には手アイロンで着ジワが回復しやすい織物を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、織物を構成する紡績糸として、極細のポリエステル短繊維からなる毛羽の少ない細番手の糸を特定の織規格で高密度に製織することにより、織物表面を滑らかにしてピリング防止性能と形態安定性を両立できる薄地織物を作ることができ、更には着用時のシワや洗濯後のシワを手アイロンで取ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を75質量%以上含む紡績糸を50質量%以上含む織物であって、織物が平織組織からなり、織物の2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度が200〜300本であることを特徴とする織物。
(2)織物のKES表面特性としてMIUが0.12〜0.18、SMDが1.8〜4.0であることを特徴とする(1)に記載の織物。
(3)紡績糸の撚係数が3.5〜5.5であり、長さ3mm以上の毛羽数が0〜30個/10mであり、織物のJIS−L1076A法によるピリング試験の評価が3級以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の織物。
(4)紡績糸の総繊度が英式綿番手40〜120番手であり、紡績糸が単繊維繊度0.3〜0.7dtexのポリエステル短繊維を20質量%以上含み、織物の冷アイロン後のシワ回復性が4級以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の織物。
(5)紡績糸のJIS−L1015−8.7による引張強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の織物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の織物を見頃に用いたことを特徴とするシャツ製品。
本発明の織物は、抗ピリング性に優れ、かつ、形態安定性も高く、手アイロンによる着しわ回復性が非常に優れる。尚、本発明における用語「手アイロン」とは、平らな台や机の上に生地や繊維製品を置いて、シワが付いた生地の上に掌を当てて、押し伸ばす動作でシワを伸ばすことを言う。また、手アイロン性とは、手アイロンしたときのシワの取れやすさを示している。
本発明の織物は、上述の効果を得るために、使用する紡績糸と織物表面の構造が重要である。具体的には、本発明の織物は、単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を75質量%以上含む紡績糸を50質量%以上含む平織組織からなり、2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度が200〜300本である。かかる構成により、抗ピリング性及び形態安定性が非常に高い織物とすることが可能となり、更には手アイロン性が向上して、熱や蒸気を当てずとも発生したシワを手アイロンで伸ばすことができる。
本発明の織物に用いる紡績糸は、単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を含むことが必要である。短繊維の単繊維繊度が1.1dtexを越えると、毛焼きを行なったときに溶融玉の除去処理をしないと、着用時に肌触りが悪くなったり、生地表面にある溶融玉が見た目を悪くするおそれがある。また、この紡績糸は、かかる単繊維繊度のポリエステル短繊維を75質量%以上用いていることが必要である。この混率が75質量%未満であると、細い単繊維繊度のポリエステル短繊維を使用することによる効果を十分に奏することができず、本発明の目的を達成することが難しくなる。さらに、本発明の織物では、手アイロン性を高めるために、0.3〜0.7dtexのポリエステル短繊維を紡績糸中に20質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは25〜70質量%である。この範囲にあると、洗濯後の吊乾燥するときに生地を手で伸ばしながらハンガーに掛けることでウォッシュ&ウエア性を高めることができる。また、収納時のシワや着用中にできたシワも手アイロンすることでシワ伸ばしができるようになる。
本発明の紡績糸に用いる短繊維の主原料は、ポリエステルであるが、そのポリエステルとしては、例えばエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。これ以外にもポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレートなども使用することができる。これらを複数組み合わせても良い。また、これらのポリエステルに5−ナトリウムスルホイソフタル酸のようなカチオン染料の染着性付与成分を共重合してもよく、前記ポリエステルを混合して練り込んでもよい。
また、ポリエステル繊維には、白物や淡色の繊維製品とする場合に、可視光防透性を高めるための白色顔料や繊維表面に凹凸をつけるための微粒子を練り込むことが好ましい。微粒子としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、カオリン、タルクなどが挙げられる。コストや生産性の点から酸化チタンが好ましい。該微粒子の含有量として、短繊維100質量%中に無機微粒子を0.5〜7.0質量%含むことが好ましい。より好ましくは1.0〜4.5質量%であり、更に好ましくは1.5〜3.0質量%である。また、ポリエステル繊維の原料には、必要に応じて難燃剤、抗菌剤、UVカット、蓄熱、透け防止、抗酸化剤等の微粒子や有機化合物を適宜添加することができる。
本発明の紡績糸には本発明の効果を大きく低下させない範囲でポリエステル短繊維以外の他の繊維を混用してもよい。他の繊維としては、単繊維繊度が1.1dtexを超えるポリエステル繊維、綿、麻、羊毛等の天然繊維や、レーヨンやアセテートなどの化学繊維が挙げられる。但し、他の繊維の混率は、25質量%以下に抑えるべきである。25質量%を越えると抗ピリング性や手アイロン性が低下しやすくなる。
紡績糸のJIS−L1015−8.7に基づいて測定される引張強度は、2.0cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは2.5cN/dtex以上であり、更に好ましくは2.7cN/dtex以上である。引張強度がこの範囲未満であると、得られた織物の摩耗強度が低下して実用的な耐久性が得られにくくなる。好ましい上限は4.0cN/dtex以下であり、より好ましくは3.8cN/dtex以下である。引張強度がこの範囲を越えると、ピリングが起こり易くなったり、手アイロン性が低下しやすくなる。
本発明の紡績糸のポリエステル短繊維のクリンプ数は5〜25個/25mmであることが好ましい。8〜18個/25mmがより好ましく、10〜16個/25mmがさらに好ましい。この範囲とすることで紡績糸表面の毛羽を抑制できるため、抗ピリング性を高めることができる。クリンプ数が上記範囲未満であると紡績糸の表面毛羽が摩擦で引っ張り出されやすくなる。クリンプ数が上記範囲を越えると紡績糸の毛羽が増えやすくなる。また、繊維カット長は32mm〜80mmが好ましい。この範囲であればバリカットであってもよい。繊維カット長は、紡績糸の毛羽数や毛羽絡み度合い、風合い、糸質面から長過ぎない方が好ましく、リング紡績で精紡する場合には32mm〜51mmの範囲が好適である。
本発明の紡績糸の総繊度は、英式綿番手40〜120番手(50〜147dtex)であることが好ましい。40番手未満では布地が厚くなりすぎることと、織物表面の凹凸が大きくなることで抗ピリング性や手アイロン性が低下しやすくなる。120番手を超えると織物にしたときに透け感が強くなり過ぎる。この繊度範囲であれば、単糸であっても、双糸や三子であってもよい。
本発明の紡績糸の紡績方法としては、例えば、リング紡績、オープンエンド紡績、結束紡績(例えば、ムラタボルテックススピナー)、等の各種方法が挙げられる。中でも、紡績糸の表面毛羽を後述する適正な数に調整しやすく、風合いも良いことから、リング紡績が好ましい。より好ましくはコーマ糸である。また、紡績糸を前述した各種方法で精紡する前に、一般的な方法により、混打綿、カード、コーマ、練条、粗紡等の各種処理を施すことができる。
本発明の紡績糸の撚係数は、3.5〜5.5であることが好ましい。より好ましくは3.8〜5.0である。撚係数がこの範囲にあると糸の収束性が高まり、毛羽が抑えられるとともに織物表面が滑らかになる。撚係数が上記範囲未満であると毛羽が多くなって抗ピリング性が低下しやすくなり、上記範囲を越えると手アイロン性が低下しやすくなる。
撚係数Kは、JIS−L1095−9.15.1 A法に準じて撚り数を求め、この撚り数から下記式に基づいて算出される。
撚係数K=[T]/[NE]1/2
上記式中、[T]は撚り数(回/2.54cm)、[NE]は英式綿番手である。
本発明の紡績糸の表面に存在する長さ3mm以上の毛羽数は、糸長10mあたり、0〜30個であることがより好ましい。より好ましくは20個以下である。更に好ましくは10個以下である。このレベルの少ない毛羽数になると、染色加工で毛焼きをしなくても問題無く使用することができるが、本発明の効果を高めるために毛焼きは行ったほうがより好ましい。毛羽数が上記範囲を上廻るとピリングが起こり易くなるのと、毛焼きしたときに織物表面の溶融玉が多く発生して手触りが悪くなりやすい。尚、紡績糸の毛羽数は、シキボウ株式会社製のF−インデックステスターを用いて測定することができる。
本発明の織物の組織は、平織である。平織は、経糸と緯糸を交互に浮き沈みさせて織る最も単純な織物組織である。織物シャツでは高密度な平織が用いられているが、組織点が最も多い組織なので、シワが発生し易いことが難点である。しかし、本発明では平織を採用しているにもかかわらず、上述のように織物を構成する紡績糸の単繊維繊度及び総繊度を特定の低い範囲とすることで、織物に発生したシワを手アイロンで容易に除去することができる。織物には本発明の紡績糸を100質量%用いることが好ましいが、本発明の効果を大きく低下させない範囲で他の糸を混用することもできる。但し、他の糸の混用率は、50質量%以下に抑えるべきである。50質量%を越えると抗ピリング性や手アイロン性が低下しやすくなる。他の糸を混用する場合にも、本発明の紡績糸を経緯に用いて、本発明の紡績糸数本毎に他の糸を1本の割合で規則的に交織するのがよい。本発明の紡績糸が少なくとも3本以上続けて配列されるのがよく、より好ましくは4本以上連続して配列されることが好ましい。本発明の紡績糸が2本以下で配列される場合には抗ピリング性、形態安定性及び手アイロン性が得られ難くなる。経糸の総繊度は、緯糸の総繊度と同じか又はそれより小さくすることが好ましい。より好ましくは、経緯糸とも同じ総繊度とする。経緯糸が同じ総繊度であると、織物表面に畝が出来難くなり、表面が滑らかになり易く、ピリングが出来難く、シワにもなり難い傾向がある。
本発明の織物は、染色加工後の仕上がった状態で2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度を200〜300本の高密度にすることが必要である。合計密度は、紡績糸の繊度が40〜50番手では200〜280本とするのがよく、60〜80番手では230〜300本、90〜120番手では260〜300本とすることが好ましい。このような高い合計密度にすることで、極細のポリエステル短繊維を多く含む本発明の紡績糸を用いてもハリコシのある風合いを保ちながら、抗ピリング性を向上させることができる。合計密度が200本未満であると、本発明の紡績糸の曲げ剛性が低いため風合いが柔らかくなりすぎるとともに、ピリングが起こり易くなる。合計密度が300本を越えるとピリングは起こり難いが風合いが固くなりすぎたり、製織性が低下しやすくなる。また、経密度と緯密度のバランスは、合計密度を1としたときに、経密度を0.5〜0.7とすることが好ましい。より好ましくは0.5〜0.6とするのがよい。尚、本発明に用いる織機としてはエアージェットルーム、ウォータージェットルーム、レピアルーム等を挙げることができるが、緯密度を高めやすいことや生産性の点からエアージェットルームが好ましく用いられる。本発明の織物の製造方法は、一般的な紡績糸織物の製造工程を採用すればよく、例えば経糸は整経、糊付けを行った後、織機ビームに巻き取る。これに経通しを行って織機にセットし、緯糸を打ち込んで製織する。
本発明の織物は、本発明の紡績糸を50質量%以上含むことが必要である。より好ましくは75質量%以上である。更に好ましくは80質量%以上である。上記範囲未満の混率では、本発明の紡績糸による効果を十分に奏することができず、抗ピリング性、形態安定性、手アイロン性が低下しやすくなる。
次に、本発明の織物の染色加工方法について説明する。一般的な織物の加工は、少なくとも片側表面の毛焼き、糊抜き、精練、染色、仕上げを行う染色加工の工程を有する。ここで先染め糸を使った柄物の一態様として、製織する前の糸に精練、染色の先染めを行う場合もある。本発明では、製造過程の各工程においては、従来のポリエステルを混用した織物シャツの一般的な条件で加工すればよいが、本発明の課題に関わる工程について以下説明する。
本発明の織物では、極細繊維を用いていること、さらに毛羽が少ない紡績糸を用いていることから、織物表面に著しく目立った毛羽は存在しないので毛焼きを省略してもよいが、毛焼きを行うと抗ピリング性能はより高まる。一方、ポリエステル繊維の毛焼きにおける最大の問題であった溶融玉が布地に残存することによる布地のがさつき、風合いや外観の悪化という問題があるが、本発明では布地表面に存在する毛羽が少なく、極細繊維が多くを占めるため、毛焼きを行った場合でも溶融玉の大きさが小さく、個数も少ないので、外観が悪くならず、風合いも良好である。毛焼きは、例えば、ガスバーナーからの火炎による直接毛焼(ガス毛焼)及び/又は加熱ローラーとの接触による間接毛焼(接触毛焼)によって行うことができる。本発明の織物の主成分であるポリエステルは、溶融点が210〜260℃であるので、直接毛焼が好ましい。溶融点がより高い素材については、加熱ローラーの温度がより高温で短時間に熱が伝わる間接毛焼きが好ましい。毛焼条件は、特に制限はないが、ピリングの発生原因となる布地表面に存在する毛羽先に溶融玉を形成させられればよい。毛焼き工程に供給する織物の通過速度(毛焼き加工速度)は、60〜120m/分が好ましく、より好ましくは80〜100m/分である。尚、紡績糸が天然繊維を含む場合には、ガス毛焼きにより天然繊維の毛羽を炭化させ焼き切れば、ピリングが抑制されるためガス毛焼きが好ましい。
本発明の織物には、若干のアルカリ減量加工を行なうことが好ましい。アルカリ減量加工を行うと、紡績糸に含まれる異形断面繊維の繊維表面がアルカリ減量加工で侵食されることで織物にドレープ性が良くなり、抗ピリング性、形態安定性が高まりやすい。但し本発明の織物にアルカリ原料加工を行う場合の減量率は1〜15質量%以下に抑えるのが好ましい。織物に原料加工を行ったかどうかは、紡績糸の表面にあるポリエステル繊維を観察して、表面にアルカリが浸食した凹みがあるかどうかをSEM写真等で確認することによって判断することができる。
一般に、加工工程中の織物には熱が掛かるため、織物の幅は縮む方向に、密度は高まる方向に性量が動こうとするが、本発明の織物は、表面の凹凸が少なく、滑らかな表面になるように仕上げることが好ましい。そのため、仕上後の性量は、生機から縮み過ぎないように、工程中の織物にかかる張力や、熱処理時の幅を調整することが好ましい。
なお、本発明の織物には、アルカリ減量加工以外にも、各種機能加工を施すことができる。機能加工としては、例えば、SR加工等の防汚加工、消臭加工、抗菌・制菌加工、UVカット加工、摩擦溶融加工、静電防止加工、スキンケア加工等が挙げられる。
本発明の織物は、上述のように構成されているので、以下のような効果を奏することができる。まず本発明の織物は、単繊維繊度が細いポリエステル短繊維を多く含む紡績糸を使用し、経密度と緯密度の合計密度を特定の割合にして平織組織にしているので、KES表面特性としてMIU0.12〜0.18、SMD1.8〜4.0を達成することができる。本発明の織物は、組織点が最も多い平織組織を持つ。それにもかかわらず、KES表面特性のこの数値範囲は、本発明の織物が非常に滑らかな表面形態であることを示している。従って、本発明の織物は、毛羽立ちにくく、ピリングの発生を抑えることができる。そして抗ピリング性と形態安定性を両立することが可能となる。なお、MIUは、平均摩擦係数を表しており、数値が低いと織物表面の滑りやすいことを示す。SMDは、表面粗さを表しており、数値が低いと織物表面の凹凸が少ないことを示す。
また、本発明の織物は、さらに紡績糸の撚係数及び毛羽数を特定の範囲に制御しているので、ポリエステル短繊維の混率が高いにもかかわらずJIS−L1076Aによるピリング試験の評価が3級以上、さらには4級以上、さらには4.5級を達成することができる。
また、本発明の織物は、ポリエステル素材を使用し、さらに紡績糸の単繊維繊度や番手や撚係数を特定の範囲に制御してしわ回復性を高めているので、つり干し時に引っ張ってシワ伸ばしすることで高い形態安定性を達成することができ、JIS−L1096−8.24洗濯後のしわの測定法において、つり干ししたときの防しわ性が極めて高い。特に干す直前に縦横を両手で引っ張たり、ハタく等のしわを軽減させる操作をしっかり行うことで優れた性能が得られる。具体的には、本発明の織物は、ライン乾燥で3.5級以上の性能を達成することができる。
本発明において「手アイロン」とは、平らな台や机の上に生地や繊維製品を置いて、シワが付いた生地の上に掌を当てて、押し伸ばす動作でシワを伸ばすことを言う。本発明の織物は、ポリエステル素材を使用し、さらに紡績糸の単繊維繊度や番手や撚係数を特定の範囲に制御しているので、手アイロンでシワが回復しやすい性能を持つ。これは、従来の木綿やポリエステル繊維からなる織物では得られなかった性能である。手アイロンでのシワ回復性(手アイロン性)は、後述する冷アイロン後のシワ回復性で評価できる。本発明の織物であれば4級以上の手アイロン性を発揮することが可能である。
また、本発明の織物は、繊維の内部に水を貯めこまない疎水性のポリエステルのマイクロファイバーを用いているため、速乾性に極めて優れている。具体的には、本発明の織物は、拡散性残留水分率40分以下を達成することができる。
本発明の織物は、上述のようにピリングができにくく、耐久性があり、形態安定性やシワ回復性が高いため、広範囲の用途に使用でき、シャツ地やブラウス等の一般衣料以外にも、ハンカチ、シーツやカバー、側地等の寝装材、生活関連資材、衛生材等の用途にも展開が期待される。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をより具体的に示すが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではない。
実施例・比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
<単繊維繊度>
化学繊維については、JIS−L1015−8.5.1正量繊度A法に基づいて、単糸繊度(単繊維繊度)を求めた。天然繊維については、JIS−L1019−7.4.2ソータ法による方法に基づいて単繊維繊度を求めた。
<繊維長>
化学繊維の繊維長は、JIS−L1015−8.4.1ステープルダイヤグラム法(A法)に基づいて平均繊維長を求めた。天然繊維の繊維長はJIS−L1019−7.2.1ダブルソータ法(A法)に基づいて有効繊維長を求めた。
<英式綿番手>
JIS−L1095−9.4.2に準じて、見掛け綿番手を測定し、これを英式綿番手とした。
<繊維の糸混率>
JIS−L1030−2 5.9.2(正量混用率)に準じて測定した。
<紡績糸の撚係数>
JIS−L1095−9.15.1 A法に準じて撚り数を求め、この撚係数から下記式に基づいて撚係数Kを算出した。
撚係数K=[T]/[NE]1/2
上記式中、[T]は撚り数(回/2.54cm)、[NE]は英式綿番手である。
<紡績糸の毛羽数>
紡績糸の毛羽数は、シキボウ株式会社製のF−インデックステスターを用いて測定した。糸長は10mとし、長さ3mm以上の毛羽の数を測定した。
<織物の密度>
織物の密度は、JIS−L1096−8.6.1 A法(織物の密度)に準じて測定した。
<クリンプ数>
JIS−L1015−8.12.1 けん縮数に準じて測定した。
<KES表面特性>
カト−テック社製KES−FB4−Aを用いて、織物の表面特性を測定した。経及び緯方向に沿ってMIU及びSMDを各1回測定して経緯の平均値とした。測定条件は、荷重MIU:50gf、接触圧:10gf、試料張力:20gfとした。
<抗ピリング性>
仕上がった生地を、JIS−L1076(2012)A法(ICI形試験機を用いる方法)を用いて抗ピリング性を評価した。3.0級以上を合格、2.5以下を不合格と判定した。
<形態安定性>
仕上がった生地を、JIS−L1096(2010)8.24の洗濯後のしわに従って評価した。但し、乾燥方法はつり干しとし、干す前に試料の両端を掴んで引っ張ることでタテ及びヨコ方向にシワ伸ばしをしてつり干した。3.5級以上を合格、3級以下を不合格と判定した。
<冷アイロン後のシワ回復性(手アイロン性)>
「手アイロン性」とは、平らな台や机の上で、生地や繊維製品を置いて、シワが付いた生地の上に掌を当てて、押し伸ばす動作でシワ伸ばすしたときのシワの回復性を示すが、評価の再現性を求めるために、室温のアイロン(冷アイロン)を使って下記の方法で行った。
JIS−L1059−2(2009)シワ付け後の外観評価(リンクル法)の操作に従って、仕上がった生地から150mm×280mmの大きさの試験片を3枚採取してシワ付け操作を行なった。但し、荷重時間は20分のところを2時間に変更した。続いて、徐重後速やかに下記のシワ伸ばし作業を行ってから、リンクル法の評価法に従い、レプリカを使ってシワの強さを判定した。
シワ伸ばし作業:アイロン台の上に、試験片を広げて静置し、アイロンの向きを試料片のタテ方向に平行にして試料の中央にアイロンを置き、アイロンをヨコ方向に試料の中央からゆっくり左端に1回だけ滑らせる、続いてアイロンを中央に置き直して、中央から右端までゆっくり1回だけ滑らせることで、試料全体に渡って1度だけシワ伸ばしを行う。4級以上を合格、4級未満を不合格と判定した。
アイロン条件:パナソニック社製コードレス家庭用アイロン使用
(品番NI−WL600)質量約1kg
20℃65%RHの環境で、アイロンを室温のまま使用する。
アイロンを動かすスピードは30mm/秒とする。
<拡散性残留水分率(速乾性)>
生地を10cm×10cmのサイズに切り、標準状態(20℃×65%RH)で調整した生地サンプルの質量を測定した(W0)。次いで、無張力下で広げ、生地サンプル中央に0.6mLの水を滴下した後の生地サンプルの質量を測定した(W1)。その後、生地サンプルを吊り下げた状態で、生地サンプルの質量を測定した(W2)。これらの測定値から、生地の拡散性残留水分率を下記の式より算出し、拡散性残留水分率が10%に到達した時間を拡散乾燥時間とした。
拡散性残留水分率(%)=(W2−W0)×100/(W1−W0)
<引張強度>
紡績糸の引張強度は、JIS−L1015−8.7法に準じて測定した。仕上がった生地の引張強度は、JIS−L1096−8.14 A法(ストリップ法)に準じて測定した。
(1)紡績糸Aの製造
単糸繊度0.6dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量0.9質量%、クリンプ数12個/25mm)と単糸繊度1.0dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量1.0質量%、クリンプ数15個/25mm)をそれぞれ50:50の質量割合でOHARA製混綿機を用いて混綿混紡した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけて繊維長の長いものだけを残し、原織機製練条機に2回通して210ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して61ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約32倍のドラフトをかけ、英式綿番手60番手の単糸(撚係数4.0Twist/inch)を作製した。
(2)紡績糸Bの製造
紡績糸Aと同じカードスライバーを用いて原織機製練条機に2回通してゲレン250/6ydのスライバーを作成して、豊田自動織機製粗紡機に通してゲレン84/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約30倍のドラフトをかけ、英式綿番手45番手の単糸(撚係数4.0Twist/inch)を作製した。
(3)紡績糸Cの製造
単糸繊度1.0dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量1.0質量%、クリンプ数15個/25mm)を100%用いて、紡績糸Aと同様に製造して、英式綿番手60番手の単糸(撚係数4.0Twist/inch)を作製した。
(4)紡績糸Dの製造
単糸繊度0.6dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量0.9質量%、クリンプ数12個/25mm)と単糸繊度1.0dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量1.0質量%、クリンプ数15個/25mm)をそれぞれ50:50の質量割合でOHARA製混綿機を用いて混綿混紡した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、原織機製練条機に2回通して210ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して60ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手で80番手の単糸(撚係数4.2Twist/inch)を作製した。
(4)紡績糸Eの製造
単糸繊度1.5dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量0.5質量%、クリンプ数22個/25mm)と、米国綿(スピーマ、有効繊維長35mm、単繊維繊度1.5dtex)をそれぞれ質量比で50%ずつ用い、一般的な混打綿、カード、コーマ、練条、粗紡、リング紡績法により精紡して、英式綿番手45番の紡績糸(撚係数4.0Twist/inch)を得た。この紡績糸における異形断面繊維の糸混率は50%であった。
(5)紡績糸Fの製造
単糸繊度0.4dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量0.5質量%、クリンプ数10個/25mm)と、単糸繊度1.0dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量1.0質量%、クリンプ数15個/25mm)をそれぞれ50:50の質量割合でOHARA製混綿機を用いて混綿混紡した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、原織機製練条機に2回通して210ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して60ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手で60番手の単糸(撚係数4.5Twist/inch)を作製した。
(6)紡績糸Gの製造
単糸繊度1.5dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量0.5質量% クリンプ数22個/25mm)を100%用いて、紡績糸Bと同様に製造して、英式綿番手45番の紡績糸(撚係数4.0Twist/inch)を得た。
(7)紡績糸Hの製造
米国綿(スピーマ、有効繊維長35mm、単繊維繊度1.5dtex)を100%用いて、紡績糸Bと同様に製造して、英式綿番手45番の紡績糸(撚係数4.0Twist/inch)を得た。
[実施例1]
上記の紡績糸Aを整経・糊付し、また緯糸にも紡績糸Aを用いてエアジェット織機で生機を製造した。なお、この織物の織組織は平織とし、経糸密度を130本/2.54cm、緯糸密度を115本/2.54cm、織幅を47.5インチとした。
製造した生機に対し、一般的なシャツ用薄地織物の毛焼・糊抜・精練・ヒートセット・仕上げ加工を下記の要領で行った。毛焼工程では、ガスバーナー毛焼機を用いて、織物の両面を毛焼した。また、糊抜及び精練工程では、水酸化ナトリウム12g/L、過硫酸ナトリウム6g/L、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム2g/L及びジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム0.2g/Lを含有する糊抜・精練処理液に、毛焼した織物を浸漬し、その後織物を絞り率100%にて絞り、織物に95℃で40分間スチームによる湿熱処理を行い、湿熱処理後の織物を連続水洗機で水洗いした後、脱水してシリンダー乾燥した。精練前後での糊抜き減量分を除いたポリエステル繊維自身の減量率は5質量%であった。その後、ポリエチレン系の可縫性向上剤、帯電防止剤と蛍光増白剤をパディグにて付与したのち、テンターで200℃で1分ヒートセットし、サンフォライズ処理を行った。仕上がった生地の経糸密度は135本/2.54cm、緯糸密度は118本/2.54cmであった。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
経緯糸両方に紡績糸Bを用いて、経糸密度を118本/2.54cm、緯糸密度を93本/2.54cmにてエアジェット織機で生機を製造した。この織物を実施例1と同様に毛焼・糊抜・精練、及びヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の経糸密度は122本/2.54cm、緯糸密度は95本/2.54cmであった。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
経緯糸を紡績糸Cに変えた以外は全て実施例1と同様に仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
紡績糸Bを8本配列して次に紡績糸Eを2本配列した10本を1リピートの繰り返し配列を経緯に配したチェック柄とした以外は実施例2と同様にして生機を作製した。この生機を毛焼・糊抜・精練を行った。その後、漂白処理として、水酸化ナトリウム2g/L、35質量%過酸化水素水20g/L、及びポリ−α−ヒドロキシアクリル酸ナトリウム(分子量10万)2g/Lを含有する漂白処理液に、糊抜及び精練された織物を30秒間浸漬し、その後織物を絞り率100%にて絞り、織物に98℃で30分間スチームによる湿熱処理を行い、湿熱処理後の織物を25℃の水で30秒間水洗した後、絞り率100%で絞った。織物はその後、110℃で1分間乾燥させた。更にヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[実施例5]
経緯糸両方に紡績糸Dを用いて、経糸密度を150本/2.54cm、緯糸密度を123本/2.54cmとしてエアジェット織機で生機を製造した。この織物を実施例1と同様に毛焼・糊抜・精練、及びヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の経糸密度は155本/2.54cm、緯糸密度は128本/2.54cmであった。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[実施例6]
経緯糸をともに紡績糸Fに変えた以外は全て実施例1と同様に仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
経緯糸両方に紡績糸Eを用いた以外は実施例2と同様にして経糸密度118本/2.54cm、緯糸密度93本/2.54cmの生機を製造した。この生機を毛焼・糊抜・精練、更に実施例4と同様にして綿の漂白処理を行い、更にヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[比較例2]
経緯糸両方に紡績糸Gを用いた以外は実施例2と同様にして経糸密度118本/2.54cm、緯糸密度93本/2.54cmの生機を製造した。この生機を毛焼・糊抜・精練を行い、更にヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[比較例3]
経緯糸両方に紡績糸Hを用いた以外は実施例2と同様にして経糸密度118本/2.54cm、緯糸密度93本/2.54cmの生機を製造した。この生機を毛焼・糊抜・精練、更に実施例4と同様にして綿の漂白処理を行い、更にヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
[比較例4]
生機の経糸密度を93本/2.54cm、緯糸密度を83本/2.54cmに変更した以外は実施例1と同様にして生機を製造した。この生機を毛焼・糊抜・精練、更に実施例1と同様にして綿の漂白処理を行い、更にヒートセット、サンフォライズ処理して仕上げた。仕上がった生地の経糸密度は95本/2.54cm、緯糸密度は85本/2.54cmであった。評価結果を表1に示す。
[比較例5]
仕上がった生地の経糸密度が170本/2.54cm、緯糸密度が135本/2.54cmになるように設計した以外は実施例1と同様にして生機を製造しようとしたが、生機の緯糸密度を上げることができず、合計密度300本を超えることができなかった。
Figure 2021165442
表1から、本発明の要件を満たす実施例1〜6はいずれも、抗ピリング性、形態安定性、手アイロン性の全てにおいて優れている。これに対して、単糸繊度が大きすぎるポリエステル短繊維を含む紡績糸を使用した比較例1,2はいずれも、形態安定性には優れるものの、抗ピリング性及び手アイロン性に劣る。ポリエステルを全く含まない紡績糸を使用した比較例3は、抗ピリング性には優れるものの、形態安定性及び手アイロン性に劣る。織物の合計密度が低すぎる比較例4は、透け感が強すぎて好ましくなく、抗ピリング性に劣り、引張強度が低く、実用性が低かった。比較例5は、緯糸の密度を上げられず、織物の合計密度を300本以上に製織ができなかった。
本発明の織物は、抗ピリング性と形態安定性を両立し、しかも手アイロンでシワが回復しやすいので、ドレスシャツ、カジュアルシャツ等のシャツ用途に極めて好適であり、当該業界に寄与すること大である。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を75質量%以上含む紡績糸を50質量%以上含む織物であって、織物が平織組織からなり、織物の2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度が200〜300本であること、及び紡績糸の総繊度が英式綿番手40〜120番手であり、紡績糸が単繊維繊度0.3〜0.7dtexのポリエステル短繊維を20質量%以上含むことを特徴とする織物。
(2)織物のKES表面特性としてMIUが0.12〜0.18、SMDが1.8〜4.0であることを特徴とする(1)に記載の織物。
(3)紡績糸の撚係数が3.5〜5.5であり、長さ3mm以上の毛羽数が0〜30個/10mであり、織物のJIS−L1076A法によるピリング試験の評価が3級以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の織物。
(4)物の冷アイロン後のシワ回復性が4級以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の織物。
(5)紡績糸のJIS−L1015−8.7による引張強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の織物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の織物を身頃に用いたことを特徴とするシャツ製品。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を75質量%以上含む紡績糸を50質量%以上含む織物であって、織物が平織組織からなり、織物の2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度が200〜300本であること、及び紡績糸の総繊度が英式綿番手40〜120番手であり、紡績糸が単繊維繊度0.40.6dtexのポリエステル短繊維を50質量%以上含むことを特徴とする織物。
(2)織物のKES表面特性としてMIUが0.12〜0.18、SMDが1.8〜4.0であることを特徴とする(1)に記載の織物。
(3)紡績糸の撚係数が3.5〜5.5であり、長さ3mm以上の毛羽数が0〜30個/10mであり、織物のJIS−L1076A法によるピリング試験の評価が3級以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の織物。
(4)織物の冷アイロン後のシワ回復性が4級以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の織物。
(5)紡績糸のJIS−L1015−8.7による引張強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の織物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の織物を身頃に用いたことを特徴とするシャツ製品。
参考例
経緯糸を紡績糸Cに変えた以外は全て実施例1と同様に仕上げた。仕上がった生地の評価結果を表1に示す。
Figure 2021165442
表1から、本発明の要件を満たす実施例1,2,4〜6、参考例はいずれも、抗ピリング性、形態安定性、手アイロン性の全てにおいて優れている。これに対して、単糸繊度が大きすぎるポリエステル短繊維を含む紡績糸を使用した比較例1,2はいずれも、形態安定性には優れるものの、抗ピリング性及び手アイロン性に劣る。ポリエステルを全く含まない紡績糸を使用した比較例3は、抗ピリング性には優れるものの、形態安定性及び手アイロン性に劣る。織物の合計密度が低すぎる比較例4は、透け感が強すぎて好ましくなく、抗ピリング性に劣り、引張強度が低く、実用性が低かった。比較例5は、緯糸の密度を上げられず、織物の合計密度を300本以上に製織ができなかった。

Claims (6)

  1. 単繊維繊度0.1〜1.1dtexのポリエステル短繊維を75質量%以上含む紡績糸を50質量%以上含む織物であって、織物が平織組織からなり、織物の2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度が200〜300本であることを特徴とする織物。
  2. 織物のKES表面特性としてMIUが0.12〜0.18、SMDが1.8〜4.0であることを特徴とする請求項1に記載の織物。
  3. 紡績糸の撚係数が3.5〜5.5であり、長さ3mm以上の毛羽数が0〜30個/10mであり、織物のJIS−L1076A法によるピリング試験の評価が3級以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の織物。
  4. 紡績糸の総繊度が英式綿番手40〜120番手であり、紡績糸が単繊維繊度0.3〜0.7dtexのポリエステル短繊維を20質量%以上含み、織物の冷アイロン後のシワ回復性が4級以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の織物。
  5. 紡績糸のJIS−L1015−8.7による引張強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の織物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の織物を見頃に用いたことを特徴とするシャツ製品。
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