JP2021162852A - トナー - Google Patents

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JP2021162852A JP2021032708A JP2021032708A JP2021162852A JP 2021162852 A JP2021162852 A JP 2021162852A JP 2021032708 A JP2021032708 A JP 2021032708A JP 2021032708 A JP2021032708 A JP 2021032708A JP 2021162852 A JP2021162852 A JP 2021162852A
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伸 北村
Shin Kitamura
庸好 菅原
Nobuyoshi Sugawara
大祐 辻本
Daisuke Tsujimoto
一成 大山
Kazunari Oyama
悠 西村
Yu Nishimura
一貴 村田
Kazutaka Murata
徹 高橋
Toru Takahashi
良 中島
Makoto Nakajima
仁思 佐野
Hitoshi Sano
恒 石上
Hisashi Ishigami
隆穂 柴田
Takao Shibata
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Abstract

【課題】定着画像表面の離型性向上と共に、厚紙における定着画像の耐折り曲げ性が良化したトナー。【解決手段】結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、該結着樹脂は、50質量%以上のポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂はシリコーン部位を有する特定のポリエステル樹脂Aを含有し、XPS分析において、該シリコーン部位に帰属されるケイ素原子数の全原子数に対する割合をXとし、該トナー粒子の表面における該Xの値をX1、該表面から深さ30nmの位置における該Xの値をX2とし、該ポリエステル樹脂のエステル結合に帰属される炭素原子数の全原子数に対する割合をZとし、該トナー粒子の表面における該Zの値をZ1、該表面から深さ30nmの位置における該Zの値をZ2としたとき、該X1が0.5〜20.0原子%であり、X1、Z1、X2及びZ2が特定の関係を満たすトナー。【選択図】なし

Description

本開示は、電子写真法、及び静電記録法などに用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高生産性が要求されるようになってきている。例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種に合わせたプロセススピードの変更や定着器の加熱設定温度の変更を行わずに印刷が継続可能な、メディア等速性が求められている。
メディア等速性に対応していくために、トナーには低温から高温まで幅広い温度範囲で適正に定着可能であることが求められるようになってきている。低温でトナーを軟化させる事が要求される一方、高温時に定着部材への付着力が高まる事により生じるトナーオフセットや、定着部材への紙の貼りつきを抑制する必要がある。
また、印刷市場においては印刷物の使用用途は多岐にわたっている。パッケージ印刷や厚紙への印刷に対して画像を折り曲げても画像破壊が起こらないような耐久性が要求されている。
特許文献1では、シリコーンオイルをグラフトしたポリエステル樹脂を用いる事で、定着画像の離型性を向上させ、トナーオフセットや部材への紙の貼りつきを抑制させるトナーが開示されている。
特開平08−087127号公報
上記文献のトナーは定着画像表面の離型性を向上させるために、添加剤としてシリコーンオイルをグラフトしたポリエステル樹脂を用いているため、シリコーン部分がトナー粒子内部の分子間凝集力を低下させる。そのため、定着画像の耐折り曲げ性に改善の余地があることがわかった。
本開示は、定着画像表面の離型性向上と共に、厚紙における定着画像の耐折り曲げ性が良化したトナーを提供することである。
本開示は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、50質量%以上のポリエステル樹脂を含有し、
該ポリエステル樹脂は、下記式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを含有し、
X線光電子分光装置を用いた該トナー粒子の分析において、該式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aの該式(1)で表される構造中の−(Si(RO)−Si(R−で表されるシリコーン部位に帰属されるケイ素原子数の、計測された全原子数に対する割合(ケイ素原子数/全原子数×100)をXとし、該トナー粒子の表面における該Xの値をX1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Xの値をX2とし、
X線光電子分光装置を用いた該トナー粒子の分析において、該ポリエステル樹脂のエステル結合に帰属される炭素原子数の、計測された全原子数に対する割合(炭素原子数/全
原子数×100)をZとし、該トナー粒子の表面における該Zの値をZ1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Zの値をZ2としたとき、
該X1が、0.5原子%以上20.0原子%以下であり、
下記式(2)で表されるY1及び下記式(3)で表されるY2が、下記式(4)を満たすトナー。
Figure 2021162852
式(1)中、Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、又は、−R20OH、−R20COOH、
Figure 2021162852
、及び−R20NHからなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R20は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10〜80である。
Y1=X1/Z1 (2)
Y2=X2/Z2 (3)
(Y1−Y2)/Y1≧0.50 (4)
本開示によれば、定着画像表面の離型性向上と共に、厚紙における定着画像の耐折り曲げ性が良化したトナーを提供することができる。
トナーの表面処理装置の一例を示す図
数値範囲を示す「XX以上YY以下」や「XX〜YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
本発明者らは、定着画像表面の離型性向上と、定着画像の耐折り曲げ性の更なる向上を目的として、鋭意検討した。その結果、下記式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを含有するトナーにおいて、トナー表面から内部にかけてシリコーン部位の量に勾配を持たせることで、従来にない優れた画像表面離型性と耐折り曲げ性が得られる事を見出した。
Figure 2021162852
式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、又は、−R20OH、−R20COOH、
Figure 2021162852
、及び−R20NHからなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R20は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10〜80(好ましくは30〜60)である。
が、いずれもメチル基であることが好ましい。
式(1)で表される構造中の−(Si(RO)−Si(R−で表される部位、すなわち、式(1)のうちA及びBを除く構造を、シリコーン部位ともいう。
本発明者らは、上記効果が得られた理由について以下のように考えている。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aは、極性が高いポリエステル部位と極性が低いシリコーン部位が結合(例えば、共有結合)した樹脂である。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aが、極性が低いシリコーン部位を有する事で、結着樹脂の表面自由エネルギーを効果的に下げる事ができ、画像表面の離型性が向上する。しかしながら、シリコーン部位を有する樹脂を用いた場合、特に厚紙における定着画像の耐折り曲げ性が低下する事が本発明者らの検討により分かった。これは、シリコーン部位が存在する事でトナー内部における分子間凝集力が低下する為と考えられる。
そこで、トナー表面から内部にかけてシリコーン部位の量が減少していくようにシリコーン部位の量に勾配を持たせる事で、トナー内部の分子間凝集力低下を抑制しつつ、トナー表面近傍においてはシリコーン部位により表面自由エネルギーの低い状態を維持できると考えられる。
X線光電子分光装置(XPS)を用いたトナー粒子の分析において、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aのシリコーン部位(式(1)で表される構造中の−(Si(RO)−Si(R−で表される部位)に帰属されるケイ素原子数の、計測された全原子数に対する割合(ケイ素原子数/全原子数×100)をXとしたとき、トナー粒子の表面におけるXの値X1が、0.5原子%以上20.0原子%以下である。尚、Xは、シリコーン部位の存在量を反映した値であり、シリコーン部位の存在量の指標となる値である。
X1が上記範囲内であると、後述する比率Y1(すなわちX1/Z1)を好適な範囲に制御しやすくなり、画像表面の離型性と、トナー内部の内部凝集力による耐折り曲げ性の両立が可能となる。
トナー粒子表面におけるX1は、好ましくは4.0原子%以上15.0原子%以下であり、より好ましくは7.0原子%以上12.0原子%以下である。
また、XPSを用いたトナー粒子の分析において、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Xの値をX2とし、ポリエステル樹脂のエステル結合に帰属される炭素原子数の、計測された全原子数に対する割合(炭素原子数/全原子数×100)をZとし、トナー粒子の表面における該Zの値をZ1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Zの値をZ2としたとき、下式(2)で表されるY1および下式(3)で表されるY2が、下式(4)を満たす。
Y1=X1/Z1 (2)
Y2=X2/Z2 (3)
(Y1−Y2)/Y1≧0.50 (4)
上記式(4)を満たすことは、トナー粒子表面から内部にかけてシリコーン部位の量Xが減少していくように勾配を持つことを意味する。このような勾配を持たせることで、トナー粒子内部の分子間凝集力低下を抑制しつつ、トナー粒子表面近傍においてはシリコーン部位により表面自由エネルギーの低い状態を維持できると考えられる。
この勾配が急峻なほど好ましく、勾配を数値表現したのが、比率Yの、トナー粒子表面に対するトナー粒子内部での減少率である。
トナー粒子の深さ方向における比率Yの値は、後述するトナー粒子の熱処理の条件、シリコーン部位及びポリエステル部位の親和性により制御できる。
すなわち、トナー粒子表面における比率Y1と比較して、トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における比率Y2の値が50%以上(好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは55%以上80%以下)減少している。
また、該トナー粒子の表面から深さ20nmの位置における該Xの値をX3とし、該トナー粒子の表面から深さ20nmの位置における該Zの値をZ3としたとき、X3/Z3で表されるY3と前記Y1とが、 (Y1−Y3)/Y1≧0.50 を満たすことが好ましい。
すなわち、トナー粒子表面における比率Y1と比較して、トナー粒子の表面から深さ20nmの位置における比率Y3の値が50%以上(好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは55%以上80%以下)減少していることが好ましい。なお、この場合には、トナー粒子の表面からの深さが20nm〜30nmにおいても比率Yの減少率が50%以上であることが必要である。
また、該トナー粒子の表面から深さ10nmの位置における該Xの値をX4とし、該トナー粒子の表面から深さ10nmの位置における該Zの値をZ4としたとき、X4/Z4で表されるY4と前記Y1とが、 (Y1−Y4)/Y1≧0.50 を満たすことが好ましい。
すなわち、トナー粒子表面における比率Y1と比較して、トナー粒子の表面から深さ10nmの位置における比率Y4の値が50%以上(好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは55%以上80%以下)減少していることがより好ましい。なお、この場合には、トナー粒子の表面からの深さが10nm〜30nmにおいても比率Yの減少率が50%以上であることが必要である。
比率Yはトナー粒子の内部にいくほど減少することが好ましい。
トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を有する。結着樹脂について説明する。
結着樹脂は、50質量%以上のポリエステル樹脂を含有する。
また、ポリエステル樹脂は、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを含有する。式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aに加え、結着樹脂は、その他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂、並びにこれらのうち2種以上の樹脂が結合したハイブリッド樹脂等が挙げられる。
結着樹脂中、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを含むポリエステル樹脂の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。該含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは100質量%以下である。結着樹脂がポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂が結着樹脂の主成分であることにより、トナー粒子内部の分子間凝集力を効果的に発揮させる事ができ、定着画像の耐折り曲げ性を得ることが可能となる。
ポリエステル樹脂中、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは100質量%以下である。ポリエステル樹脂が、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aであることが特に好ましい。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aは、−(Si(RO)−Si(R−で表されるシリコーン部位を有する。すなわち、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aは、下記式(1´)で表されるシリコーン部位を有する。
Figure 2021162852
式(1´)中、R及びnは、式(1)と同様である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。nは、シロキサンユニットの繰り返し数の平均値であり、10〜80(好ましくは20〜65)の整数を表す。)
式(1)及び(1´)中、Rが、いずれもメチル基であることが好ましい。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aは、式(1´)で表されるシリコーン部位及びポリエステル部位を有する。式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aのポリエステル部位は、非晶性ポリエステル樹脂部位であることが好ましい。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aのポリエステル部位を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
ポリエステル部位を構成する2価のカルボン酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1以上50以下のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル。
一方、ポリエステル部位を構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I−1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:及び式(I−2)で示されるジオール類。
Figure 2021162852
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
Figure 2021162852
(式中、R’はエチレン又はプロピレン基であり、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0以上10以下である。)
ポリエステル部位の構成成分は、上述の2価のカルボン酸成分及び2価のアルコール成分以外に、3価以上のカルボン酸成分、3価以上のアルコール成分を含有してもよい。
3価以上のカルボン酸成分としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上のアルコール成分としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
ポリエステル部位の構成成分は、上述した化合物以外に、1価のカルボン酸成分及び1価のアルコール成分を構成成分として含有してもよい。具体的には、1価のカルボン酸成分としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、テトラコンタン酸、ペンタコンタン酸等が挙げられる。
また、1価のアルコール成分としては、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、テトラコンタノールなどが挙げられる。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂A中のポリエステル部位の含有量は、90.0質量%以上99.5質量%以下が好ましく、95.0質量%以上98.0質量%以下がより好ましい。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aのシリコーン部位を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
シリコーン部位は、前記式(1´)で表される構造(−(Si(RO)−Si(R−)を有する。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aにシリコーン部位を形成させる成分としては、式(1´)の末端にポリエステルと化学的に反応する官能基を有するシリコーンオイルを用いる事ができる。ポリエステルと反応する官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。
シリコーンオイルの末端の官能基は、ポリエステルとの反応性を制御する上で、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が好ましい。
シリコーンオイルの官能基の価数は、好ましくは1価、2価又は3価以上である。シリコーンオイルの両末端に官能基を有する2価のシリコーンオイルを用いる事が好ましい。
より好ましくは、式(1´)の両末端にヒドロキシ基を含む置換基を有するシリコーンオイルである。ヒドロキシ基を含む置換基は、例えば、
−(CH−O−(CH−OH
で表される。式中pは1〜3の整数であり、qは1〜3の整数である。
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の2価のカルボン酸成分及び2価のアルコール成分並びに官能基を有するシリコーンオイルをエステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを製造する。
重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。
トナー粒子は結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル部位と相溶性が高い為、定着時に可塑効果を発現して低温定着性が良好となる。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーに用いられるアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−イコサンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、低温定着性及び耐折り曲げ性の観点から、炭素数6以上18以下の脂肪族ジオールが好ましく、より好ましくは炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールの含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性をより高める観点から、アルコール成分中に80モル%以上100モル%以下が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためのアルコール成分としては、上記の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分を含有していてもよい。
例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物を含むビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
一方、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーに用いられるカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、さらにこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。
これらの中でも低温定着性及び耐折り曲げ性の観点から、炭素数6以上18以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、より好ましくは、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸である。脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中に80モル%以上100モル%以下が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためのカルボン酸成分としては、上記脂肪族ジカルボン酸以外のカルボン酸成分を含有していてもよい。例えば、芳香族ジカルボン酸、3価以上の芳香族多価カルボン酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。芳香族ジカルボン酸には、芳香族ジカルボン酸誘導体も含まれる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフ
タレン−2,6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステルが挙げられる。該アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1以上3以下)エステル等の誘導体が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.80以上1.20以下であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、定着時に効果的に可塑効果を得る事ができ、低温定着性が良好となる。さらに、定着画像表面に結晶性の部分を効果的に配置する事ができるようになるため、耐折り曲げ性がより良好となる。
トナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性1成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物が挙げられる。磁性酸化鉄粒子の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、30質量部以上150質量部以下が好ましい。
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上を併用して用いる。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12
,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。
マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上を併用して用いる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
トナーに離型性を付与するために、離型剤(ワックス)を用いてもよい。
ワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化型ワックス;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系共重合モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスである。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量の炭化水素;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭
化水素ワックスが好ましい。
さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましい。
ワックスを添加するタイミングは、トナー製造時でもよいし、結着樹脂の製造時でもよい。また、これらワックスは、一種類を単独で使用してもよいし二種類以上を併用してもよい。ワックスは、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
トナーには、荷電制御剤を用いてもよい。荷電制御剤としては既知のものを用いることができ、例えば、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。
前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。必要に応じて一種類又は二種類以上の荷電制御剤を併用してもよい。荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下使用することが好ましい。
トナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は複数を併用して用いることができる。
帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉体は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。
また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることがより好ましい。
シリカ微粉体のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉体の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
シリカ微粉体は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物のような処理剤で、あるいは種々の処理剤を併用して処理されていることも好
ましい。
トナーには、必要に応じて他の外添剤を添加してもよい。このような外添剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。帯電補助剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。
トナー粒子の製造方法は、特に限定されず、例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。顔料などのトナー材料の分散の観点から粉砕法が好ましい。以下に、トナーの製造方法について粉砕法を例に説明するが、これに限定される訳ではない。
トナーの製造方法は、好ましくは
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを含むポリエステル樹脂、並びに必要に応じて着色剤、結晶性ポリエステル樹脂及びその他の添加剤等を混合する工程、
混合物を溶融混練する工程、及び溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び必要に応じて分級を行い、トナー粒子を得る工程を有する。
溶融混錬する工程で、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加してもよい。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
ここで、トナー粒子を得る過程においてトナー粒子の熱処理を行う事により、トナー表面から内部にかけてシリコーン部位の量が減少していくようにシリコーン部位の量の勾配を形成することができる。例えば、粉砕法で得られたトナー粒子に対し、熱処理を行うことができる。トナーの製造方法は、好ましくはトナー粒子を熱処理する工程を有する。
シリコーン部位はポリエステルユニットと親和性が低いため、熱処理による流動場にお
いてトナー粒子表面に押し出されるように流動する。その結果、トナー粒子表面近傍ではシリコーン部位の量が増大し、トナー粒子内部ではシリコーン部位の量が減少しやすくなる。
例えば、図1で表される表面処理装置を用いて、熱風により表面処理を行うことができる。
原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
このとき、処理室に供給された混合物は、処理室内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された混合物を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。処理室内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃〜300℃であることが好ましい。
より好ましくは165℃〜190℃である。
熱風供給手段の出口部における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止することができる。さらに、トナー内のシリコーン部位の流動化を促進し、トナー表面から内部にかけてシリコーン部位の量の勾配を付与しやすくなる。
さらに熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8(8−1,8−2,8−3)から供給される冷風によって冷却され、冷風供給手段8から供給される温度は−20℃〜30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、熱処理トナー粒子の融着や合一を防止することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、表面処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。
粉体供給口から供給されるトナー粒子の旋回方向、冷風供給手段から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、トナー粒子に強力な遠心力がかかり、トナー粒子の分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃ったトナーを得ることができる。
得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような混合機により混合し、トナーを得てもよい。
外添剤の混合は、トナー粒子の熱処理の前に行ってもよいし、熱処理の後に行ってもよい。熱処理の前後の両方行ってもよい。
次に、各物性の測定方法に関して記載する。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂やトナーのTgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
測定範囲30〜180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、試料のガラス転移温度(Tg)とする。
<軟化点Tmの測定方法>
軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度Tm(℃)である。
測定試料は、約1.3gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf/cm(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ
解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカー内に、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<シリコーン部位の量X及び比率Yの測定>
(前処理)
イオン交換水10.3gにショ糖20.7g(キシダ化学社製)を溶解させたショ糖水溶液、及び界面活性剤であるコンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤、和光純薬工業社製)6mLを、30mLのガラスバイアル(例えば、日電理化硝子株式会社製、VCV−30、外径:35mm、高さ:70mm)に入れて十分混合し、分散液を作製する。
このバイアルにトナー1.0gを添加し、トナーが自然に沈降するまで静置して処理前分散液を作製する。この分散液を、振とう機(YS−8D型:(株)ヤヨイ製)にて、振とう速度:200rpmで5分間振とうし、外添剤粒子をトナー粒子表面から離脱させる。この後、遠心分離機を用いて3700rpmで30minの遠心分離を行い、脱離した外添剤粒子を分離し、トナー粒子を吸引濾過することで採取し、乾燥させる。
(X線光電子分光装置(XPS)によるシリコーン部位の量の測定)
測定前処理を施したトナー粒子の粉末を、XPS装置の試料台にインジウムシートを用いて固定し、以下の条件で測定する。
使用装置:アルバック・ファイ社製 PHI 5000VersaProbe II
照射線:Al−Kα線
出力:100μm、25W、15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
Stepsize:0.125eV
測定対象元素:検出される全元素
測定範囲:紛体300μm×200μm
(スパッタ条件)
スパッタイオンガン:Arガスクラスターイオンビーム
加速電圧:20kV
スパッタ領域:5mm×5mm
なお、トナー粒子の表面を分析する際は、スパッタリングは使用しない。
上記条件で得られた全原子数に対するシリコーン部位由来の(シリコーン部位に帰属される)ケイ素原子数の割合(×100)をシリコーン部位の量X(原子%)とする。ここで、前処理により脱離しなかった外添剤のシリカが残存する場合には、Si2pの光電子スペクトルのピーク分離により、シリカとシリコーン部位のピークを分離して、シリコーン部位由来のケイ素原子数を算出する。
また、C1s光電子スペクトルのピーク分離によりエステル結合に帰属される炭素原子数を算出し、該炭素原子数の全原子数に対する割合(×100)を、ポリエステル樹脂のエステル結合に由来する(帰属される)炭素原子数の全原子数に対する割合(Z)とする。
比率Yは、上記のように求めたシリコーン部位の量XをZで除した値(X/Z)とする。トナー表面におけるX/Z(すなわちX1/Z1)をY1とする。
トナー粒子表面からの「深さ」に関し、まず、上記条件において膜厚既知のポリエステル膜をスパッタして得られる、スパッタ時間及びスパッタ深さの関係を算出する。得られた関係に基づいて、所望の深さになる時間トナー粒子の紛体を上記条件でスパッタする。そして、上記条件でXPS分析を行い、トナー粒子の表面から深さ10nm、20nm又は30nmの位置における比率Yの値(すなわち、Y2,Y3及びY4)を算出する。
<トナー中のポリエステル樹脂および結晶性ポリエステル樹脂の含有量の測定>
下記のように、溶剤への溶解度の差を利用してトナーから上記材料を分離して各含有量を求める事ができる。
第一分離:23℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(結着樹脂)と不溶分(結晶性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を分離する。可溶分として分離した結着樹脂について、十分に溶剤を乾燥除去した後に質量測定し、結着樹脂の含有量を求める。
続いて、590℃熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法により結着樹脂成分の含有モノマーを定性し、H−NMRにより各モノマーのモル比率を算出する事により、結着樹脂中におけるポリエステル樹脂の含有量を求める事ができる。
第二分離:100℃のMEKに、第一分離で得られた不溶分(結晶性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、無機微粒子)を溶解させ、可溶分(結晶性ポリエステル樹脂、離型剤)と不溶分(着色剤、無機微粒子)を分離する。
第三分離:23℃のクロロホルムに、第二分離で得られた可溶分(結晶性ポリエステル樹脂、離型剤)を溶解させ、可溶分として結晶性ポリエステル樹脂が分離される。十分に溶剤を乾燥除去した後に質量測定を行い、結晶性ポリエステル樹脂の含有量を求める事ができる。
<式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aの構造の確認>
式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aの構造の確認には以下の方法を用いる。
式(1)のRのうちの炭化水素基並びにシリコーン部位は、13C−NMR及び固体29Si−NMRにより確認する。
13C−NMRの測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM−ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用の試料の重クロロホルム可溶分
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si−CH)又はフェニル基(Si−C)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRのうちの炭化水素基を確認する。
固体29Si−NMRの測定条件は、具体的には下記の通りである。
装置:JNM−ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DD/MAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay :180s
Scan:2000
以下、実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、本発明は何らこれに限定されるものではない。なお、以下の処方において、特に断りのない限り部は、質量基準である。
<式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂(結着樹脂1)の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
ポリエステル部位を形成するための上記モノマー97部及び両末端にヒドロキシ基を有
するシリコーンオイル(KF−6001、信越化学工業(株)製)4部を、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
KF−6001により、式(1)において、Rがいずれもメチル基であり、nが38である構造が得られる。
そこに、還流冷却器、水分分離装置、Nガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にNガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aである結着樹脂1を得た。
<ポリエステル樹脂(結着樹脂2)の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
上記ポリエステルユニットを構成するモノマーを、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
そこに、還流冷却器、水分分離装置、Nガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にNガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂である結着樹脂2を得た。
<スチレンアクリル樹脂(結着樹脂3)の製造例>
・スチレン: 70.0モル部
・アクリル酸2−エチルヘキシル: 30.0モル部
上記スチレンアクリル樹脂を構成するためのモノマー100部と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド5部を混合したものを、加熱したキシレン200部中に4時間かけて滴下した。さらに、キシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してスチレンアクリル樹脂である結着樹脂3を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、カルボン酸モノマーとして1,10−デカンジカルボン酸100.0モル部、アルコールモノマーとして1,9−ノナンジオール100.0モル部を投入した。撹拌しながら140℃に昇温し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。
次いで、ジオクチル酸スズを0.57部添加した後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。さらに、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂は、DSC測定において明確な吸熱ピークを有していた。
(トナー1の製造例)
・結着樹脂1 100部
・結着樹脂2 20部
・結晶性ポリエステル樹脂 5.0部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6.0部
・C.I.ピグメントブルー 15:3 4.0部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、二軸混練押し出し機によって、160℃で溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、トナー母
粒子を得た。
該トナー母粒子100部に対して、疎水化処理したシリカ微粒子(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m/g)1.0部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、図1で示す表面処理装置によって熱処理を行い、熱処理トナー粒子を得た。運転条件はフィード量=5kg/hとし、熱風温度=180℃、熱風流量=6m/min.、冷風温度=−5℃、冷風流量=4m/min.、ブロワー風量=20m/min.、インジェクションエア流量=1m/min.とした。
得られた熱処理トナー粒子を、慣性分級方式のエルボージェットを用いて分級し、重量平均粒径6.0μmの熱処理トナー粒子を得た。
該熱処理トナー粒子100部に対して、疎水化処理したシリカ微粒子(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m/g)1.0部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、目開き150μmのメッシュで篩い、負摩擦帯電性のトナー1を得た。トナー1のTmは135℃、Tgは56℃であった。
(磁性コア粒子の製造例)
(工程1:秤量・混合工程)
・Fe 62.7部
・MnCO 29.5部
・Mg(OH) 6.8部
・SrCO 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。
(工程2:仮焼成工程)
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した。その後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
(工程3:粉砕工程)
仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
(工程4:造粒工程)
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム1.0部、及びバインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加した。そして、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機(株))を用いて、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、温度650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
(工程5:焼成工程)
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
(工程6:選別工程)
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径が37.0μmの磁性コア粒子を得た。
(被覆樹脂の製造例)
・シクロヘキシルメタクリレート 26.8質量%
・メチルメタクリレート 0.2質量%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3質量%
・メチルエチルケトン 31.3質量%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れた。
セパラブルフラスコ内に、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加し、5時間還流して重合させた。
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。得られた沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂を得た。
30部の被覆樹脂を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液(固形分濃度30%)を得た。
(被覆樹脂溶液の調製)
・樹脂溶液(固形分濃度30%) 33.3質量%
・トルエン 66.4質量%
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m/g、DBP吸油量:75ml/100g)
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液を得た。
(磁性キャリアの製造例)
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液及び磁性コア粒子を投入した(被覆樹脂溶液の投入量は、磁性コア粒子100部に対して、樹脂成分として2.5部)。
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径が38.2μmの磁性キャリアを得た。
<現像剤1の製造例>
トナー1と磁性キャリアを、磁性キャリア90部に対して、トナー1が10部になるように、V型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)を用いて、0.5s−1、回転時間5minの条件で混合して現像剤1を調製した。
得られた現像剤1を用いて以下の評価を行った。
<離型性(定着部材への紙の貼りつき)の評価>
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNE
R ADVANCE C5051を用い、定着温度、プロセススピードを自由に設定できるように改造した。この改造機のシアン位置の現像器に現像剤1を入れ、静電潜像担持体または、紙上のトナーの載り量が所望になるように現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。
紙:CS−680(68.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:1.20mg/cm
評価画像:上記A4用紙の先端余白5mmの位置に2cm×29cmの画像を配置
定着試験環境:高温高湿環境:温度30℃/湿度80%RH(以下「H/H」)
プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温調を調節して定着画像を出力し、定着時に巻き付きが起こるかを目視で観測し、巻き付きが見られない上限の温度を定着分離可能温度とした。定着分離可能温度について、以下の基準で評価した。
(評価基準)
A:定着分離可能温度が130℃以上。
B:定着分離可能温度が130℃より低く125℃以上。
C:定着分離可能温度が125℃より低く120℃以上。
D:定着分離可能温度が120℃より低い。
<耐折り曲げ性>
定着可能下限温度から20℃高い温度を定着適正温度として設定し、カラー複写機・プリンター用普通紙 GF−C209(A4 209g/cm)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)上に、A4片面にトナー載り量が0.90mg/cmのベタ画像形成し、ベタ画像が形成された記録紙を十字に折り曲げた。
折り曲げた画像部を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、画像の剥れ部分の面積率を算出する事により折り曲げ性の評価を行った。
(評価基準)
A:剥れ部の面積率が5%未満
B:剥れ部の面積率が5%以上10%未満
C:剥れ部の面積率が10%以上20%未満
D:剥れ部の面積率が20%以上
<低温定着性の評価>
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C5051を用い、定着温度、プロセススピードを自由に設定できるように改造した。この改造機のシアン位置の現像器に現像剤1を入れ、静電潜像担持体または、紙上のトナーの載り量が所望になるように現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。
紙:CS−680(68.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.90mg/cm
評価画像:上記A4用紙の中心に10cmの画像を配置
定着試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温度を調節して定着画像を出力し、定着画像の様子を目視にて評価した。
(評価基準)
A:115℃以下の温度領域で定着が可能。
B:115℃より高く120℃以下の温度領域で定着が可能。
C:120℃より高く125℃以下の温度領域で定着が可能。
D:125℃より高い温度領域にしか定着可能領域がない。
以上の各評価項目において、現像剤1は全てA判定であった。
<実施例2〜7>
(トナー2〜7の製造例)
結着樹脂種と結晶性ポリエステル樹脂量を変更し、また、シリコーン部位の量X1、比率Yが表1のようになるように、トナーの熱処理条件を変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2〜7を得た。
なお、熱処理の条件は、以下のように変更した
トナー2においては、熱風温度を178℃とした。トナー3及び4においては、熱風温度を175℃、トナー5及び6においては、熱風温度を170℃、トナー7においては熱風温度を170℃とした。その他の熱処理条件についてはトナー1の熱処理条件と同様にした。
Figure 2021162852
表1及び表3中、「結晶性ポリエステル樹脂の含有量」は、結着樹脂100部に対する部数を示す。「比率Yの減少率」は、トナー粒子の表面から表1に記載の深さの位置における比率Yの値の、トナー粒子の表面における比率Y1に比較した減少率を表している。
なお、トナー1及び2は、トナー粒子表面からの深さ10nm〜30nmにおいても常に比率Yの減少率が50%以上であった。
また、トナー3及び4は、トナー粒子表面からの深さ20nm〜30nmにおいても常に比率Yの減少率が50%以上であった。
(現像剤2〜7の製造例)
表2の通り、各トナーを用いて、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤2〜7を得た。
さらに、現像剤1と同様にこれらの評価を行った。各評価結果を表2に示す。
Figure 2021162852
<比較例1〜2>
(トナー8、9の製造例)
結着樹脂種を表3のとおりに変更し、シリコーン部位の量X1及び比率Yが表3のようになるように、トナーの熱処理条件を変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー8、9を得た。
なお、熱処理の条件は、以下のように変更した
トナー8及び9においては、熱風温度を160℃とし、その他の熱処理条件についてはトナー1の熱処理条件と同様にした。
Figure 2021162852
(現像剤8,9の製造例)
表4のとおり、各トナーを用いて、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤8、9を得た。
さらに、現像剤1と同様にこれらの評価を行った。評価結果を表4に示す。
比較例1ではトナー表面に対するトナー内部のシリコーン部位の量の減少率が小さいため、トナーの内部凝集力低下により耐折り曲げ性がDランクとなった。比較例2では式(
1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを用いていないため、離型性がDランクとなった。
Figure 2021162852

Claims (9)

  1. 結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    該結着樹脂は、50質量%以上のポリエステル樹脂を含有し、
    該ポリエステル樹脂は、下記式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aを含有し、
    X線光電子分光装置を用いた該トナー粒子の分析において、該式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aの該式(1)で表される構造中の−(Si(RO)−Si(R−で表されるシリコーン部位に帰属されるケイ素原子数の、計測された全原子数に対する割合(ケイ素原子数/全原子数×100)をXとし、該トナー粒子の表面における該Xの値をX1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Xの値をX2とし、
    X線光電子分光装置を用いた該トナー粒子の分析において、該ポリエステル樹脂のエステル結合に帰属される炭素原子数の、計測された全原子数に対する割合(炭素原子数/全原子数×100)をZとし、該トナー粒子の表面における該Zの値をZ1、該トナー粒子の表面から深さ30nmの位置における該Zの値をZ2としたとき、
    該X1が、0.5原子%以上20.0原子%以下であり、
    下記式(2)で表されるY1及び下記式(3)で表されるY2が、下記式(4)を満たすことを特徴とするトナー。
    Figure 2021162852
    式(1)中、Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、
    Aは、ポリエステル部位を表し、
    Bは、ポリエステル部位、又は、−R20OH、−R20COOH、
    Figure 2021162852
    、及び−R20NHからなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R20は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、
    平均繰り返し数nは10〜80である。
    Y1=X1/Z1 (2)
    Y2=X2/Z2 (3)
    (Y1−Y2)/Y1≧0.50 (4)
  2. 前記結着樹脂中の前記ポリエステル樹脂の含有量が、70質量%以上である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記結着樹脂が、前記ポリエステル樹脂である請求項1に記載のトナー。
  4. 該トナー粒子の表面から深さ20nmの位置における該Xの値をX3とし、該トナー粒子の表面から深さ20nmの位置における該Zの値をZ3としたとき、X3/Z3で表されるY3と前記Y1とが、
    (Y1−Y3)/Y1≧0.50
    を満たす請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。
  5. 該トナー粒子の表面から深さ10nmの位置における該Xの値をX4とし、該トナー粒子の表面から深さ10nmの位置における該Zの値をZ4としたとき、X4/Z4で表されるY4と前記Y1とが、
    (Y1−Y4)/Y1≧0.50
    を満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、前記結着樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上10.0質量部以下である請求項6に記載のトナー。
  8. 前記X1が、7.0原子%以上12.0原子%以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。
  9. 前記式(1)で表される構造を有するポリエステル樹脂Aは、前記シリコーン部位及びポリエステル部位を有し、
    該ポリエステル部位は、非晶性ポリエステル樹脂である請求項1〜8のいずれか一項に記載のトナー。
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