JP2021161443A - 線材及び鋼線 - Google Patents

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Abstract

【課題】引張強度、疲労特性、及び捻回特性に優れる鋼線並びに伸線加工によって前記鋼線が得られる線材を提供する。【解決手段】C、Si、Mn、P、S、N、O、B、Al、Tiをそれぞれ所定量含み、残部がFe及び不純物からなり、Si、B、Ti、Nの各含有量(質量%)が、0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si、及び2.0<Ti/N<5.5を満たし、表層領域において、パーライト組織の面積率が90%以上であり、フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、フェライト組織の個々の面積の平均値が2.5μm2以下である線材。線材と同様の成分、フェライト組織の面積率、フェライト組織の個々の面積の平均値を有し、表層領域におけるパーライト組織のセメンタイト全体数に対し、長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合が60%以上である鋼線。【選択図】なし

Description

本開示は、線材及び鋼線に関する。
橋梁ケーブル用鋼線、PC(Prestressd Concrete)鋼線、ACSR(Aluminum Conductor Steel−Reinforced)線及び各種ロープ等の種々の用途に用いられる高炭素鋼線は、高強度(例えば引張強度で2000MPa以上)が要求される。
このような高強度が要求される鋼線に用いられる線材では、伸線加工後のめっき処理時の強度低下を抑制することを目的として、例えば、C含有量を高くするとともに、Siを1.0質量%程度の高濃度で添加することがある。
このような高Siの高炭素線材は、パーライト組織を形成するフェライト相と比較して粗大なフェライト組織が増加し、横断面内および線材長手方向の強度ばらつきが助長されることがある。この強度ばらつきは、その後の伸線加工時及び鋼線のねじり時に縦割れ(デラミネーション)が発生しやすくなり、また、軟質なフェライト組織の増加は疲労強度を低下させる。
線材中の強度ばらつきを低減する技術として、例えば特許文献1では、熱間圧延後の組織制御によって組織を均一化、具体的にはパーライトノジュールの粒度番号の平均値Paveおよびその標準偏差Pσを所定の範囲に制御することが提案されている。
また、特許文献2では、伸線加工性、耐疲労特性、耐水素脆化特性の向上を目的として、90面積%以下のパーライトと、合計0〜10面積%のベイナイト及びフェライトを含み、表層部のTi/N系介在物サイズを50μm以下とした線材が開示されている。
特許第6180351号公報 特許第6330920号公報
高Si及び高Cの鋼線材の場合、フェライト組織が数多く残存し易く、高強度化した場合にはデラミネーションの発生を抑制することと疲労特性の低下抑制が難しい。
本開示はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、伸線加工によって引張強度、疲労特性、及び捻回特性に優れる鋼線が得られる線材、並びに引張強度、疲労特性、及び捻回特性に優れる鋼線を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 質量%で、
C:0.80%以上1.10%以下、
Si:0.70%以上2.00%以下、
Mn:0.10%以上1.00%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0060%以下、
O:0.0060%以下、
B:0.0004%以上0.0040%以下、
Al:0.005%以上0.070%以下、及び
Ti:0.004%以上0.025%以下
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
前記Siの含有量と前記Bの含有量が下記式(1)を満たし、前記Tiの含有量と前記Nの含有量が下記式(2)を満たし、
金属組織が、パーライト組織及びフェライト組織を含み、線材の横断面を観察した場合に、前記線材の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記パーライト組織の面積率が90%以上であり、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.5μm以下である線材。
式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
式(2):2.0<Ti/N<5.5
前記式(1)及び前記式(2)において、各元素記号は前記線材における各元素の含有量(質量%)が代入される。
<2> 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.60%以下を含有し、かつ、前記Crの含有量と前記Bの含有量が下記式(3)を満たす<1>に記載の線材。
式(3):0.0048×Cr≦B≦0.013×Cr
前記式(3)において、各元素記号は、前記線材における各元素の含有量(質量%)が代入される。
<3> 前記Feの一部に代えて、質量%で、
Nb:0.025%以下、及び
V:0.15%以下
のいずれか1種又は2種を含有する<1>又は<2>に記載の線材。
<4> 前記Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.20%以下を含有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の線材。
<5> 前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:0.50%以下、
Ni:0.50%以下、及び
Sn:0.50%以下
からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の線材。
<6> 前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ca:0.0040%以下、及び
Mg:0.0040%以下
のいずれか1種又は2種を含有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の線材。
<7> 前記Feの一部に代えて、質量%で、Sb:0.15%以下を含有する<1>〜<6>のいずれか1つに記載の線材。
<8> 質量%で、
C:0.80%以上1.10%以下、
Si:0.70%以上2.00%以下、
Mn:0.10%以上1.00%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0060%以下、
O:0.0060%以下、
B:0.0004%以上0.0040%以下、
Al:0.005%以上0.070%以下、及び
Ti:0.004%以上0.025%以下
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
前記Siの含有量と前記Bの含有量が下記式(1)を満たし、前記Tiの含有量と前記Nの含有量が下記式(2)を満たし、
金属組織が、セメンタイト及びフェライト組織を含み、鋼線の横断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.0μm以下であり、
前記鋼線の縦断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記セメンタイトの全体数に対し、前記セメンタイトの長軸方向と前記鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合が60%以上である鋼線。
式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
式(2):2.0<Ti/N<5.5
前記式(1)及び前記式(2)において、各元素記号は、前記鋼線における各元素の含有量(質量%)が代入される。
本開示によれば、伸線加工によって引張強度、疲労特性、及び捻回特性に優れる鋼線が得られる線材、並びに引張強度、疲労特性、及び捻回特性に優れる鋼線が提供される。
パーライト組織及びフェライト組織を含む金属組織の一例を示すSEM画像である。 ベイナイト組織の一例を示すSEM画像である。 セメンタイト一例について長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度を説明する概略図である。 (A)ベイナイトを含む視野、(B)マルテンサイトを含む視野、(C)フェライトを含む視野、(D)パーライト及びラメラの崩れたパーライト(板状でないセメンタイトとフェライトで構成されるパーライト)を含む視野の各SEM写真の一例である。
本明細書中、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中、成分(元素)の含有量を示す「%」は、質量基準である。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
以下、本開示に係る線材及び鋼線について詳細に説明する。なお、「横断面」とは、線材又は鋼線の長手方向(中心軸方向)に垂直な断面を意味し、「縦断面」とは、線材又は鋼線の長手方向(中心軸方向)に平行であり、かつ中心軸を含む断面を意味する。
高Cかつ高Siの鋼種では、等温変態線図(TTT線図)におけるパーライト変態のノーズが高温側になるため、フェライト組織などの非パーライト組織が増える傾向がある。本発明者らは、これらの非パーライト組織の比率を下げることで、捻回特性を向上させることができると考えた。
フェライト組織を低減させるには、オーステナイト粒界にBを偏析させることが効果的である。しかし、粒界偏析するBはフェライト組織の生成を抑制する効果があるものの、多量にBを添加してもB化合物として析出してしまい、Bによる効果が明確でなかった。
そして、本発明者らが検討を重ねたところ、Si量とB量に相関があり、Si量が高くなるとノーズが高温側になってフェライト組織が生成し易くなるが、B量を高くすることで、フェライト組織の生成を抑制することができることが分かった。すなわち、Si量とB量のバランスを調整することで、高Cかつ高Siの鋼種であってもフェライト組織の生成を効果的に抑制することができる。また、Ti量とN量の比率がフェライト組織の低減に大きく影響することがわかった。
さらに、フェライト組織の少ない鋼線は捻回特性が優れており、破壊が生じやすいフェライト組織が低減することで疲労特性も向上し、強度、捻回特性、疲労特性のバランスが向上した。
本開示に係る線材及び鋼線は、上記のような知見に基づいて導き出されたものである。
[線材]
本開示に係る線材は、質量%で、
C:0.80%以上1.10%以下、
Si:0.70%以上2.00%以下、
Mn:0.10%以上1.00%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0060%以下、
O:0.0060%以下、
B:0.0004%以上0.0040%以下、
Al:0.005%以上0.070%以下、及び
Ti:0.004%以上0.025%以下
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
前記Siの含有量と前記Bの含有量が下記式(1)を満たし、前記Tiの含有量と前記Nの含有量が下記式(2)を満たし、
金属組織が、パーライト組織及びフェライト組織を含み、線材の横断面を観察した場合に、前記線材の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記パーライト組織の面積率が90%以上であり、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.5μm以下である。
式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
式(2):2.0<Ti/N<5.5
前記式(1)及び前記式(2)において、各元素記号は前記線材における各元素の含有量(質量%)が代入される。
<線材及び鋼線の鋼成分>
本開示に係る線材及び鋼線の鋼成分(化学組成)について説明する。なお、本開示に係る線材及び鋼線は、同じ鋼成分を有するため、線材及び鋼線の鋼成分を併せて説明する。以下、「鋼材」と記した場合は、線材及び鋼線の両方を意味する。
C:0.80%以上1.10%以下
Cは、鋼材の強度に寄与する。C含有量が0.80%未満であると、鋼材の引張強度が不足する場合がある。このため、C含有量は0.80%以上とし、好ましくは0.84%以上である。
一方、C含有量が1.10%を超えると、セメンタイト分率が上昇し、高強度化に寄与する反面、線材の絞り(延性)が低下し、伸線加工後の鋼線の疲労強度、捻回特性が低下する。そのため、C含有量は、1.10%以下とし、好ましくは1.05%以下であり、より好ましくは1.00%以下である。
Si:0.70%以上2.00%以下
Siは脱酸剤であり、また、固溶強化によって鋼材の強度向上に寄与する。さらに後工程で加熱される場合には強度低下の抑制に寄与する。これらの効果を得るため、Si含有量は0.70%以上とし、0.80%以上であってもよく、0.90%超であってもよい。
一方、Si含有量が高過ぎると、線材の絞り(延性)が低下する。そのため、Si含有量は2.00%以下とし、1.85%以下でもよく、1.70%以下でもよい。
また、Siは550℃近傍でのパーライト変態速度を低減させ、フェライト組織を増加させる。そのため、Si含有量が高い鋼成分ではBの含有によってフェライト組織の抑制を行う。本開示に係る線材及び鋼線は、Si含有量に応じて適したB含有量が存在し、下記式(1)を満たす必要がある。
式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
式(1)において各元素記号(Si及びB)は、鋼材における各元素(Si及びB)の含有量(質量%)が代入される。なお、B含有量については後述する。
Si含有量とB含有量は、下記式(1A)の関係でもよく、式(1B)の関係でもよい。
式(1A):0.0025×Si−0.0014<B<0.0025×Si−0.0001
式(1B):0.0025×Si−0.0013<B<0.0025×Si−0.0003
Mn:0.10%以上1.00%以下
Mnは、鋼の強度を高める作用に加えて、鋼中のSをMnSとして固定して鋼材の熱間脆性を防止する作用を有する元素である。しかしながら、Mn含有量が0.10%未満では上記作用が不足するため、Mn含有量は0.10%以上とし、0.15%以上でもよく、0.20%以上でもよい。
一方、Mnは偏析しやすい元素である。1.00%を超えてMnを含有させると、特に中心部にMnが濃化し、中心部にマルテンサイトやベイナイトが生成されて、線材の絞りが低下してしまう。よって、Mn含有量は1.00%以下とし、0.95%以下でもよく、0.85%以下でもよい。
P:0.030%以下
Pは、鋼材の粒界に偏析して鋼材の捻回特性を低下させてしまう元素である。P含有量が0.030%を超えると、捻回特性の低下が著しくなる。そこで、鋼材のP含有量は0.030%以下に制限し、好ましい上限は0.025%である。
P含有量は低いほど好ましいが、製造コスト(脱燐コスト)の低減の観点から、P含有量は、0%超であってもよく、0.0005%以上であってもよく、0.001%以上であってもよい。
S:0.030%以下
Sは、MnSを形成して、線材の絞りを低下させてしまう元素である。S含有量が0.030%を超えると、線材の絞りの低下が著しくなる。このことから、鋼材のS含有量は0.030%以下に制限し、好ましい上限は0.015%である。
S含有量は低いほど好ましいが、製造コスト(脱硫コスト)の低減の観点から、S含有量は、0%超であってもよく、0.002%以上であってもよく、0.005%以上であってもよい。
N:0.0060%以下
Nは捻回特性を低下させてしまう元素であり、また、Nの含有量が高いとBの窒化物の形成量も増加し、後述するBの効果が発揮されない。そのため、N含有量は0.0060%以下に制限し、好ましい上限は0.0050%、又は0.0040%である。
一方、Nは、冷間での伸線加工中に転位に固着することにより鋼線の強度を上昇させる。N含有量の下限値は0%超でもよく、上記効果を得るため、N含有量の下限値は0.0015%でもよく、0.0020%、又は0.0025%でもよい。
O:0.0060%以下
Oは鋼中で酸化物を形成し、介在物として作用して疲労強度を低下させる。そのため、O含有量は0.0060%以下に制限し、好ましい上限は0.0050%、又は0.0040%である。
O含有量の下限値は、製造コスト(脱酸コスト)の低減の観点から、0.0015%でもよく、0.0020%、又は0.0025%でもよい。
B:0.0004%以上0.0040%以下
Bは鋼材中のフェライト組織の低減に寄与する。B含有量が0.0040%未満の場合、フェライト組織の面積率が大きくなる。そのため、B含有量は0.0004%以上とし、0.0005%以上、又は0.0007%以上であってもよい。
一方、B含有量が0.0040%超の場合、B化合物が多量に析出し、フェライト組織の低減効果を発揮しない。そのため、B含有量は0.0040%以下とし、0.0030%以下でもよいし、0.0025%以下でもよい。
Al:0.005%以上0.070%以下
Alは、脱酸作用を有する元素であり、また、線材中に窒化物を形成して、オーステナイト粒径を微細化し、鋼材の捻回特性の向上に寄与する。これらの作用効果を得るため、Al含有量は0.005%以上とし、0.010%以上でもよいし、0.015%以上でもよい。
一方、Al含有量が高過ぎると、硬質の酸化物系介在物が形成されやすくなり、伸線加工性や捻回特性が低下する。そのため、Al含有量は、0.070%以下とし、0.050%以下でもよく、0.035%以下でもよい。
Ti: 0.004%以上0.025%以下
Tiは、窒化物(TiN)を形成することでNを固着し、B窒化物の析出抑制が可能となり、Bの効果を高めることができる。そのため、Ti含有量は、0.004%以上とし、0.006%以上でもよく、0.008%以上でもよい。
一方、Ti含有量が0.025%を超えると、粗大な窒化物が分散し、捻回特性が低下する。そのため、Ti含有量は0.025%以下とし、0.023%以下でもよく、0.020%以下でもよい。
また、Tiは、下記式(2)を満たす必要がある。
式(2):2.0<Ti/N<5.5
式(2)において、各元素記号(Ti、N)は線材における各元素(Ti、N)の含有量(質量%)が代入される。
Ti/Nが2.0未満であると、Ti含有量に対してN含有量が多過ぎて、B化合物が析出し、フェライト組織の低減効果を示さない。一方、Ti/Nが5.5超であると、Ti含有量に対してN含有量が不足して、Ti炭化物が形成し、捻回特性が低減する。
Ti含有量とN含有量の関係は、下記式(2A)の関係でもよく、式(2B)の関係でもよい。
式(2A):2.1<Ti/N<5.3
式(2B):2.2<Ti/N<5.2
本開示に係る線材及び鋼線は、Feの一部に代えて、任意元素を含んでもよい。以下、任意元素について説明する。なお、以下に説明する任意元素の含有量の下限値は0%でもよいし、0%超であってもよい。
Cr:0.60%以下
Crは鋼材の強度に寄与する。そのため、Cr含有量は0%超としてもよく、0.05%以上としてもよい。
一方、Cr含有量が高過ぎると捻回特性が低下する。そのため、Cr含有量は0.60%以下とし、0.50%以下としてもよい。
Crを0.60%以下で含有し、Crの含有量とBの含有量が、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3):0.0048×Cr≦B≦0.013×Cr
式(3)において、各元素記号(Cr、B)は、線材における各元素の含有量(質量%)が代入される。
CrはB化合物(M23型)中に固溶するためB化合物(B炭化物)の析出を遅延させる。Cr含有量とB含有量が上記式(3)を満たすことで、B炭化物の析出が妨げられ、固溶Bによってさらにフェライト組織分率を低減することができる。
Nb:0.025%以下
V:0.15%以下
Nb及びVは、ピン止め効果によりオーステナイト粒径の微細化に寄与し、鋼材の捻回特性を向上させる。この効果を得るため、Nb及びVのいずれか1種又は2種をそれぞれ0%超で含有してもよい。
鋼材の捻回特性を向上させるため、Nb含有量は、0.002%以上であってもよく、0.005%以上であってもよい。
一方、Nb含有量が高過ぎると、炭化物又は炭窒化物が多量となり、オーステナイト粒径を微細化し過ぎるため焼き入れ性が悪くなり、引張強度が低下する。そのため、Nb含有量は0.025%以下とし、0.020%以下でもよい。
鋼材の捻回特性を向上させるため、V含有量は、0.008%以上であってもよく、0.010%以上であってもよい。
一方、V含有量が高過ぎると、炭化物又は炭窒化物が多量となり、オーステナイト粒径を微細化し過ぎるため焼き入れ性が悪くなり、引張強度が低下する。そのため、V含有量は、0.15%以下とし、0.08%以下でもよい。
鋼材の捻回特性を向上させるため、質量%で、Nb:0.025%以下、及びV:0.15%以下のいずれか1種又は2種を含有することが好ましい。
Mo:0.20%以下
Moはフェライト組織の抑制に寄与し、焼入れ性の上昇にも寄与する。そのため、Mo含有量は0%超でもよく、0.03%以上、又は0.05%以上でもよい。
一方、Mo含有量が0.20%を超えると、線材の焼き入れ性が過度に大きくなる場合がある。この場合、パテンティング中のパーライト変態が不十分となり、パーライト組織の面積率が減少し、伸線加工後の捻回特性が減少する恐れがある。そのため、Mo含有量は0.20%以下とし、0.15%以下でもよい。
Cu:0.50%以下
Cuは耐食性の向上に寄与する。そのため、Cu含有量は0%超であってもよく、0.02%以上、0.05%以上、0.10%以上、又は0.20%以上であってもよい。
一方、Cuの含有量が0.50%を超えると、線材の焼き入れ性が過度に大きくなる場合がある。この場合、パテンティング中のパーライト変態が不十分となり、パーライト組織の面積率が減少し、伸線加工後の捻回特性が減少する恐れがある。そのため、Cu含有量は0.50%以下とし、0,40%以下、又は0.35%以下であってもよい。
Ni:0.50%以下
Niは耐食性の向上に寄与する。そのため、Ni含有量は0%超であってもよく、0.01%以上、0.05%以上、0.10%以上であってもよい。
一方、Niの含有量が0.50%を超えると、線材の焼き入れ性が過度に大きくなる場合がある。この場合、パテンティング中のパーライト変態が不十分となり、パーライト組織の面積率が減少し、伸線加工後の捻回特性が減少する恐れがある。そのため、Ni含有量は0.50%以下とし、0.40%以下、又は0.30%以下でもよい。
Sn:0.50%以下
Snは耐食性の向上に寄与する。Snによる耐食性の向上効果の観点から、Sn含有量は0%超であってもよく、0.03%以上、0.05%以上、又は0.10%以上であってもよい。
一方、Snの含有量が0.50%を超えると、線材の焼き入れ性が過度に大きくなる場合がある。この場合、パテンティング中のパーライト変態が不十分となり、パーライト組織の面積率が減少し、伸線加工後の捻回特性が減少する恐れがある。そのため、Sn含有量は0.50%以下とし、0.40%以下、又は0.35%以下でもよい。
耐食性の向上の観点から、質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、及びSn:0.50%以下からなる群より選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。
Ca:0.0040%以下
CaはMnSを微細分散させることで延性を向上させる。CaはMnS中に固溶し、MnSを微細に分散する効果があり、MnSを微細に分散させることで、MnSに起因にした伸線加工中の断線を抑制することができる。そのため、Caの含有量は0%超でもよく、0.0002%以上、又は0.0005%以上であってもよい。
一方、Ca含有量が0.0040%を超えると、その効果は飽和する。さらに、酸化物を形成するために、かえって鋼材の延性を低下させる。そのため、Caを含有させる場合、Ca含有量は0.0040%以下とし、0.0030%以下でもよく、0.0025%以下でもよい。
Mg:0.0040%以下
MgはMnSを微細分散させることで延性を向上させる。Mgは脱酸元素であり、酸化物を生成するが、硫化物も生成することでMnSとの相互関係を有する元素であり、MnSを微細に分散させる効果がある。この効果によりMnSに起因した伸線加工中の断線を抑制することができる。そのため、Mg含有量は0%超でもよく、0.0002%以上又は0.0005%以上であってもよい。
一方、Mg含有量が0.0040%を超えても、その効果は飽和する。さらに、酸化物を形成するために、かえって鋼材の延性を低下させる。そのため、Mg含有量は、0.0040%以下とし、0.0035%以下、又は0.0030%以下でもよい。
延性を向上させる観点から、質量%で、Ca:0.0040%以下及びMg:0.0040%以下のいずれか1種又は2種を含有することが好ましい。
Sb:0.15%以下
Sbは表層に濃化することで脱炭を抑制し、フェライト分率の増加を抑制する。そのため、Sb含有量は0%超であってもよく、0.01%以上、又は0.03%以上であってもよい。
一方、Sb含有量が高過ぎると線材の焼き入れ性が過度に大きくなる場合がある。この場合、パテンティング中のパーライト変態が不十分となり、パーライト組織の面積率が減少し、伸線加工後の捻回特性が減少する恐れがある。そのため、Sb含有量は0.15%以下とし、0.13%以下、又は0.10%以下でもよい。
残部:Fe及び不純物
本開示に係る線材及び鋼線における化学組成において、前述した各元素を除いた残部は、Fe及び不純物である。
ここで、不純物とは、原材料に含まれる成分、又は、製造の工程で混入する成分であって、意図的に鋼に含有させたものではない成分を指す。
<線材の金属組織>
本開示に係る線材の金属組織は、パーライト組織及びフェライト組織を含み、線材の横断面を観察した場合に、線材の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、パーライト組織の面積率が90%以上であり、フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、フェライト組織の個々の面積の平均値が2.5μm以下である。
線材の表面(外周面)からの深さが50μmの領域では組織のばらつきが大きいため、本開示に係る線材では、線材の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域における金属組織を規定する。以下、線材又は鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域を「表層領域」と記す場合がある。
本開示に係る線材の金属組織は、パーライト組織及びフェライト組織を含む。図1はパーライト組織及びフェライト組織を含む金属組織の一例を示すSEM画像である。パーライト組織Pは、フェライト相とセメンタイト相が交互に層状(ラメラ状)に並ぶ組織であり、図1に示すパーライト組織Pにおいて、白っぽい層状(線状)部分がセメンタイトであり、セメンタイトの間の黒っぽい層状部分がフェライトである。一方、フェライト組織Fは、フェライト相から構成される組織であり、パーライト組織Pに含まれる層状のフェライトとは区別される。
・表層領域におけるパーライト組織の面積率:90%以上
パーライト組織は線材の伸線加工によって効果的に強度を上昇させることができ、また、伸線加工後の延性も良好となる。なお、線材の外周面から深さ50μmから100μmの領域は、表層部のパーライト面積率を反映し、ばらつきも少なく測定することができる。
表層領域におけるパーライト組織の面積率が90%以上であれば、伸線加工前でも十分な引張強度が得られ、伸線加工後も十分な延性が得られる。表層領域におけるパーライト組織の面積率は、好ましくは、95%以上、より好ましくは97%以上である。
・表層領域におけるフェライト組織の面積率:2.0%以下
フェライト組織分率を小さくすることで断面内の低強度組織が低減でき、特に捻回特性が向上する。なお、外周面からの深さが50μmから100μmの領域は、表層部のフェライト面積率を反映し、ばらつきも少なく測定することができる。
フェライト組織の面積率は、C、Si、Bなどの成分(元素)の影響のほか、後述する線材を製造する工程における溶融塩浸漬温度、浸漬時間の影響を受ける。
表層領域におけるフェライト組織の面積率は2.0%以下であり、好ましくは、1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
・表層領域におけるフェライト組織の個々の面積の平均値:2.5μm以下
個々のフェライト組織が微細になることで断面内の低強度組織を分散でき、特に疲労特性が向上する。なお、外周面からの深さが50μmから100μmの領域は表層部の個々のフェライト面積を反映し、ばらつきも少なく測定することができる。
なお、個々のフェライト組織の面積の平均値は、B、Si、Ti/N、粒界に存在するB濃度の影響を受ける。また、個々のフェライト組織の面積の最大値は、後述する線材を製造する工程におけるオーステナイト粒径や冷却速度(溶融塩浸漬温度)の影響を受ける。
表層領域におけるフェライト組織の個々の面積の平均値は2.5μm以下であり、好ましくは、2.2μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。
なお、表層領域におけるフェライト組織の個々の面積の平均値の下限は特に限定されないが、製造安定性の観点から、0.3μm以上であってもよい。
本開示に係る線材の金属組織は、パーライト組織の面積率が90%以上であり、フェライト組織の面積率が2%以下であれば、パーライト組織及びフェライト組織以外の残部組織を含まなくてもよいし、含んでもよい。
残部組織としては、ベイナイト組織、マルテンサイト組織が挙げられ、強度ばらつきが助長されるため、ベイナイト組織やマルテンサイト組織は少ないことが好ましい。
残部組織の面積率は10%未満であり、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
<線材の特性等>
本開示に係る線材の引張強度は、1250MPa以上が好ましく、1300MPa以上がより好ましく、1350MPa以上が特に好ましい。
また、本開示に係る線材の直径Dは特に限定されないが、例えば、5.0〜10.0mmであり、10.0〜16.0mmでもよい。
[鋼線]
本開示に係る鋼線は、質量%で、
C:0.80%以上1.10%以下、
Si:0.70%以上2.00%以下、
Mn:0.10%以上1.00%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0060%以下、
O:0.0060%以下、
B:0.0004%以上0.0040%以下、
Al:0.005%以上0.070%以下、及び
Ti:0.004%以上0.025%以下
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
前記Siの含有量と前記Bの含有量が下記式(1)を満たし、前記Tiの含有量と前記Nの含有量が下記式(2)を満たし、
金属組織が、セメンタイト及びフェライト組織を含み、鋼線の横断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.0μm以下であり、
前記鋼線の縦断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記セメンタイトの全体数に対し、前記セメンタイトの長軸方向と前記鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合が60%以上である。
式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
式(2):2.0<Ti/N<5.5
前記式(1)及び前記式(2)において、各元素記号は、前記鋼線における各元素の含有量(質量%)が代入される。
前述したように、本開示に係る鋼線の鋼成分は、線材の鋼成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。
<鋼線の金属組織>
本開示に係る鋼線の金属組織は、セメンタイト及びフェライト組織を含み、鋼線の横断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.0μm以下であり、鋼線の縦断面を観察した場合に、鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、セメンタイトの全体数に対し、セメンタイトの長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合が60%以上である。
本開示に係る鋼線の表層領域におけるフェライト組織の面積率及びフェライト組織の個々の面積の平均値は、前述した線材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
・表層領域におけるセメンタイトの長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合:60%以上
線材に含まれるセメンタイトは、線材を伸線することで、鋼線の伸線方向、すなわち中心軸方向に揃うように傾く形状となる。そのため、鋼線の表層領域におけるセメンタイトの長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイト(以下、「中心軸に対して30°以下のセメンタイト」と称する場合がある。)の存在割合は、伸線加工度を表す指標となる。すなわち、中心軸に対して30°以下のセメンタイトの存在割合が高いほど、伸線加工が施されていることを意味し、本開示に係る鋼線は、中心軸に対して30°以下のセメンタイトの存在割合が60%以上となるように伸線加工が施されている。中心軸に対して30°以下のセメンタイトの存在割合は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上である。なお、上限は特に限定されないが、伸線加工度の増加は生産コストの増加を伴うため、中心軸に対して30°以下のセメンタイトの存在割合は95%以下でもよいし、90%以下でもよい。
<鋼線の特性等>
本開示に係る鋼線の引張強度は、1800MPa以上が好ましく、1900MPa以上がより好ましく、2040MPa以上が特に好ましい。
また、本開示に係る鋼線の直径dは特に限定されないが、例えば、1.0〜4.0mmであり、4.0〜10.0mmでもよい。
<線材組織の測定方法>
・パーライト組織の面積率の測定
パーライト組織以外の部分、すなわち非パーライト組織をマーキングし、非パーライト組織の面積率を算出して100%から引くことでパーライト組織の面積率を得ることができる。非パーライト組織とは、具体的には、フェライト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織である。これらの組織は伸線加工時の効果的な高強度化を阻害する。
ここでフェライト組織およびマルテンサイト組織とは0.1μm以上の領域でセメンタイトが存在しない組織であり、ピクリン酸飽和アルコールで3秒から10秒で腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際に黒く見える組織のことを指す。なお、腐食は鏡面研磨後2分以内に行う。鏡面研磨後に時間が経過すると酸化被膜が形成され、エッチングの時間は上記では不足するためである。図1においてFで示した部分がフェライト組織であり、パーライト組織Pのように、層状のセメンタイトと交互に並ぶ層状のフェライト(相)とは区別される。
また、図2は、ベイナイト組織の一例を示すSEM画像である。ベイナイト組織は、セメンタイトθ(図2において灰色部分)とフェライト(図2において黒っぽい部分)から構成されている点でパーライト組織と共通するが、図1に示すパーライト組織のように、セメンタイトとフェライトが層状(ラメラ状)に交互に並ぶ組織ではないため、パーライト組織と区別することができる。なお、ベイナイト組織は500℃未満の低温域で形成されやすい組織であることから、線材が500℃未満の塩浴に浸漬される場合に現れると考えることができる。なお、ベイナイトは、図2に示すような形態に限定されず、他の形態も存在する。また、パーライトも図1に示すラメラ状の形態に限らず、ラメラの崩れたパーライトも存在する。例えば、空冷や放冷などの連続冷却や500℃以上の塩浴に浸漬されてパーライト変態させる場合にみられる「板状でないセメンタイトとフェライト」で構成される組織はパーライトとみなす。
図4に、(A)ベイナイトを含む視野、(B)マルテンサイトを含む視野、(C)フェライトを含む視野、(D)パーライト及びラメラの崩れたパーライト(板状でないセメンタイトとフェライトで構成されるパーライト)を含む視野の各SEM写真の一例を示す。
非パーライト組織は、SEMを用いて線材の横断面の表層領域における組織を観察し、紙面上で2000倍となるように印刷後、紙面上にOHP(Over Head Projector)シートなどの透明シートを重ねて非パーライト組織に色を塗る。その後、非パーライト組織に色を塗った透明シートを画像解析で解析することで非パーライト組織の面積率を測定する。
・フェライト組織の面積率およびフェライト組織の面積の測定
フェライト組織はSEMを用いて線材の横断面の表層領域における組織を観察し、紙面上で2000倍となるように印刷後、紙面上にOHPシートなどの透明シートを重ねてフェライト組織に色を塗る。その後、フェライト組織に色を塗った透明シートを画像解析で解析することで個々のフェライト組織の面積および全てのフェライト組織の合計面積率を測定する。
また、フェライト組織の面積は、得られた個々のフェライト組織の面積の平均値とする。
なお、上記パーライト組織及びフェライト組織の各測定は、線材を400mm間隔で切断して3本のサンプルを採取し、各サンプルの1つの横断面について1視野あたりの面積を2.7×10−3mm(縦0.045mm、横0.060mm)として3視野観察し、合計9視野の平均値を各組織の面積率とする。画像解析には、画像解析ソフト(例えば、image−J)を用いる。なお、面積が0.1μm以下のものはノイズとして除去する。
<鋼線組織の測定方法>
線材を伸線加工して鋼線にすると、線径が細くなるに伴ってフェライト組織も伸長するため、鋼線の横断面の観察倍率は、線材の観察倍率よりも高くすることが好ましい。具体的には、鋼線の観察倍率は、2000×線材線径÷鋼線線径、とすることが好ましい。例えば、線材線径14mm、鋼線線径7mmの場合、4000倍で測定する。鋼線の表層領域におけるパーライト組織の面積率、並びにフェライト組織の面積率及びフェライト組織の個々の面積の測定方法は、観察倍率以外は線材の場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
・セメンタイトの長軸方向と鋼線の長手方向のなす角度の測定
本開示において、セメンタイトの長軸方向とは、セメンタイトの長軸における両端点を結んだ線の方向であり、セメンタイトの長軸方向と鋼線の長手方向とのなす角の鋭角となる側が30°以下であるセメンタイトの存在割合を求める。図3は、セメンタイトの一例についてセメンタイトθの長軸方向Lと鋼線の中心軸方向Cとのなす角度αを示している。
具体的には、鋼線の縦断面をSEMを用いて観察し、鋼線の伸線方向が紙面の横方向(左右方向)になり、紙面上で6000倍となるように印刷する。印刷した紙面に4μm間隔で縦横に格子を引き、格子の重なる点に最も近いラメラ間隔が0.2μm以下となる領域のセメンタイトの長軸方向と鋼線の伸線方向(紙面の左右方向)とのなす角度を測定する。セメンタイトθが湾曲している場合は、図3に示すように、セメンタイトθの長軸方向Lはセメンタイトの両端点を結んだ方向とするが、端点が紙面の外にある場合は紙面上の端点としてもよい。
合計3視野、25個以上のセメンタイトの角度を上記のようにして測定し、「30°以下のセメンタイト数/測定したセメンタイトの総数×100」を30°以下であるセメンタイトの存在割合とする。
[線材の製造方法]
次に、本開示に係る線材の製造方法を説明する。
本開示に係る線材の製造方法は特に限定されないが、好ましい製造方法として、例えば、前記化学成分を有する鋳片を鋳造する工程と;前記鋳片を加熱する工程と;前記加熱後の鋳片を熱間圧延して熱延鋼片を得る工程と;前記熱延鋼片を冷却する工程と;前記熱延鋼片を加熱する工程と;前記加熱後の熱延鋼片を熱間圧延して熱延線材を得る工程と;前記熱延線材を水冷する工程と;前記熱延線材を巻き取る工程と;前記巻き取り後の熱延線材を冷却する工程と;前記熱延線材をパテンティングする工程と;前記パテンティング後の熱延線材を冷却し、線材とする工程と;を有する方法が挙げられる。
本開示に係る線材の好ましい製造条件について以下に詳細に述べる。
(鋳造)
本開示に係る線材の製造方法では、まず、鋼を溶製した後、連続鋳造等によって、本開示に係る線材の化学成分を有する鋳片を製造する。
(鋳片の加熱)
鋳片は、熱間圧延の前に、その表面の平均温度が1220〜1300℃の範囲内にある加熱温度まで加熱されることが好ましい。加熱温度が1220℃未満の場合、Tiが炭化物を形成してNを効率的に固着できないため、後工程でBNが形成し、Bの効果を効率的に得られない。一方、1300℃を超える場合には脱炭が短時間で大きく進行してしまう。
また、鋳片は3時間〜24時間の範囲内で加熱されることが好ましい。加熱時間が3時間未満の場合、中心部の加熱が不足し、TiによるNの固着が不足する。一方、24時間を超えて加熱を行った場合には脱炭が大きく進行してしまう。
(鋳片の熱間圧延、冷却)
鋳片は加熱後に熱間圧延を行って鋼片とし、空冷によって冷却する。
(鋼片の加熱)
鋼片は、熱間圧延の前に、その表面の平均温度が1120〜1200℃の範囲内にある加熱温度まで加熱されることが好ましい。加熱温度が1120℃未満の場合、鋳片の圧延、冷却段階で形成されたB化合物の再溶解が進行しない。一方、1200℃を超えて加熱すると、鋳片段階で析出させたTiNが再溶解し、Bの化合物が後工程で形成されやすくなって固溶状態のBが少なくなる。
(熱間圧延)
熱間圧延後に一度冷却され、再度加熱保持された鋼片は、熱間圧延されて線材となる。熱間圧延では、仕上圧延入側の温度を950℃〜1050℃とすることが好ましい。仕上圧延入側の温度が950℃以上であれば、熱間圧延工程が950℃以上で行われたとみなすことができ、固溶状態のBを残存させることができる。950℃未満では、B化合物が析出する可能性があり、Bの効果を効率的に得られない。一方、1050℃超の場合、仕上げ圧延後の水冷で狙いの温度まで冷却できない可能性がある。
(水冷及び巻き取り)
次に、仕上げ圧延後の熱延鋼は水冷され、巻き取られる。水冷停止温度及び巻取温度は820℃〜865℃で行うことが好ましい。水冷停止温度及び巻取温度が820℃未満の場合、変形抵抗が大きくなって巻き取ることが困難になる。水冷停止温度及び巻取温度が865℃超の場合には、オーステナイト粒が粗大化し、粗大なフェライト組織が形成されやすくなる。なお、水冷は熱間圧延終了の直後に開始される。
(冷却)
次いで、巻き取られた線材は、巻き取り後から溶融塩への浸漬までの間に730〜780℃の範囲に5〜15℃/秒で冷却されることが好ましい。
巻取り後、730〜780℃(冷却到達温度)までを5〜15℃/秒で冷却速度することで、これまでの工程で少量のBが粒界上に析出していても粒内から粒界へBが拡散でき、Bの欠乏領域を作りにくくなる。フェライト組織はBの欠乏領域に優先的に形成されるため、欠乏領域を少なくすることでフェライト組織の面積率の低減が可能となる。
冷却到達温度が730℃未満となる場合には、フェライト組織が形成されるために粗大なフェライトが形成されやすくなる。一方、冷却到達温度が780℃超の場合には、溶融塩に浸漬される際の線材温度が高くなり、溶融塩の温度を上昇させる場合があるため、780℃以下が好ましい。
また、冷却速度が15℃/秒超の場合、Bの粒内からの拡散が困難になり、B析出に伴う欠乏層が形成されやすくなるため、個々のフェライト組織が粗大化する。一方、冷却速度が5℃/秒未満の場合、オーステナイト粒が粗大化し、個々のフェライト組織が粗大化する。
(パテンティング)
冷却された線材は500〜600℃の溶融塩に浸漬させることが好ましい。
溶融塩温度が500〜600℃に制御される場合、十分な冷却速度で冷却され、さらにB化合物が析出する時間が短くなることでB欠乏領域を増加させずにパーライト組織の核を形成することができ、フェライト組織の面積率を低減することができる。500℃未満の溶融塩に浸漬させた場合、ベイナイト変態が進行し、パーライト組織率が低減する。600℃以上の溶融塩に浸漬させる場合、冷却速度が低下し、B化合物の析出を助長する。
溶融塩浸漬時間は30秒〜70秒が好ましい。浸漬時間が30秒未満ではパーライト変態が終わらず、非パーライト組織分率が上昇する可能性がある。浸漬時間が70秒超ではパーライト変態後にラメラ構造が崩れてしまい、引張強度が低下する。
なお、温度が異なる複数の溶融塩に浸漬してパテンティングを行ってもよい。例えば、500℃〜530℃の1次溶融塩槽に10秒〜30秒浸漬させて、次いで540℃〜575℃の2次溶融塩槽に30秒〜60秒浸漬させる。
(冷却)
溶融塩によるパテンティング後、線材を水洗して表面に付着している溶融塩を除去し、放冷を経て、本開示に係る線材を好適に製造することができる。
[鋼線の製造方法]
本開示に係る鋼線の製造方法も特に限定されないが、例えば、上記製造方法によって製造された本開示に係る線材をさらに伸線加工する方法が好適である。
(伸線加工)
伸線加工による伸線加工ひずみεは以下の式で表現される。
ε=Ln(D/D)
は伸線加工前の直径、Dは伸線加工後の直径である。εは1.0以上2.5以下とすることが好ましい。εが1.0未満の場合、セメンタイトの長軸方向が鋼線の長軸方向にそろわないため繊維組織を作っておらず強度が上昇できない。一方で、εが2.5超の場合、加工によってセメンタイトが強制分解されて固溶炭素がフェライト中に過度に固溶するため捻回特性が低下する。
なお、伸線加工前にはリン酸亜鉛皮膜やホウ砂皮膜などの表面潤滑処理をすることが好ましい。
上記工程を経て本開示に係る鋼線を製造することができる。なお、伸線加工後にはめっきなどの後処理や脱脂処理を施してもよい。
本開示に係る線材は、伸線加工によって引張強度、疲労特性、及び捻回特性に優れる鋼線を得ることができる。
本開示に係る鋼線の用途は特に限定されないが、高強度であり、疲労特性及び捻回特性が要求される用途、例えば、橋梁ケーブル用鋼線、PC鋼線、ACSR線及び各種ロープ等の種々の用途に好適であり、本開示に係る線材は、これらの用途に用いる鋼線の素材として好適である。
以下、実施例によって本開示の例を具体的に説明するが、本開示に係る線材及び鋼線は以下の実施例により制限されるものではない。
[線材及び鋼線の製造]
<線材の製造>
(No.1−1〜No.1−27:成分同一)
まず、表1に示す化学組成の鋼種1(steel 1)を転炉によって溶製した後、分塊圧延によって、122mm角のビレット(鋳片)を得た。なお、表1の各元素の含有量は質量%であり、残部はFe及び不純物元素であり、「−」はその元素を含まないことを意味する。なお、後述の表3についても同様である。
次いで、鋼種1を用い、表2に示す製造条件1〜27により、それぞれ熱間圧延、巻き取り、冷却、溶融塩への浸漬を行った後、水洗、放冷して、表4に示す線径(伸線前線径D)及び線材組織を有する線材を製造した。なお、表2において「冷却速度」は、巻取温度から1次溶融塩に浸漬するまでの温度(1次溶融塩浸漬温度)までの冷却速度である。
なお、表2における下線は、製造条件が本開示の望ましい範囲から外れていることを示す。また、表4における下線は、本開示で規定する範囲から外れていることを示す。
(No.2〜No.31:成分以外の製造条件同一)
表3に示す化学組成の鋼種2〜31(steel 2〜31)を転炉によって溶製した後、分塊圧延によって、122mm角のビレット(鋳片)を得た。なお、表3における下線は、その元素の含有量が本開示で規定する範囲から外れていることを示す。
次いで、鋼種2〜31を用い、表2に示す製造条件1により、それぞれ熱間圧延、巻き取り、冷却、溶融塩への浸漬を行った後、水洗、放冷して、表5に示す線径(伸線前線径D)を有する線材を製造した。
<鋼線の製造>
上記のようにして製造した線材に対し、それぞれ表4及び表5に示す「鋼線製造方法」の真ひずみで伸線加工を施すことにより、伸線後の線径dを有する鋼線を製造した。なお、伸線加工における潤滑のため、線材の表面にリン酸亜鉛皮膜を形成して伸線加工を行った。
<金属組織の測定>
上記のようにして製造した線材及び鋼線を切断してサンプルを採取し、前述した方法により金属組織を測定した。なお、SEMによる断面の観察前に、横断面を鏡面研磨し、ピクリン酸水溶液によって腐食した。金属組織について表4及び表5に示す。「長軸方向角度30°以下のセメンタイトの割合」は、セメンタイトの長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合を意味する。下線は、本開示の範囲から外れていることを示す。なお、パーライト面積率及びフェライト面積率の合計が100%にならないものは、残部組織として、マルテンサイト組織及び/又はベイナイト組織が観察された。
また、表4及び表5の組成において、式(1)又は式(2)の関係式を満たす場合は「○」、満たさない場合は「×」と表記した。
[評価]
<機械的特性の評価>
上記のようにして製造した線材及び鋼線について、下記方法により機械的特性を評価した。
(引張強度)
線材又は鋼線を長さ340mmに切断後、矯正、直棒とする。200mmがチャック間長さ(試験長さ)上下70mmをチャッキングし、引張試験を行う。得られた最大荷重を断面積で除することで引張強度(MPa)を算出する。
上記引張試験において、線材の絞り値(%)を下記式によって算出した。
絞り値=(引張試験前の断面積−引張試験で破断した部分の断面積)/引張試験前の断面積×100
また、上記引張試験において、鋼線の引張強度が「2470−70×線径d(mm)」MPa以上であるものを合格とした。なお、一般的に、線径が太いほど延性が低下する傾向となるため、線径を加味して引張強度を評価する。
(捻回特性)
鋼線を100×dmmが試験長さとなるように切断する。端部50mmをチャッキングし、捻回試験に供す。捻り速度は20rpmとする。
捻回特性は、デラミネーションの発生有無により評価し、破面で決定する。捻り試験を各鋼種10本ずつ行い、デラミネーションが発生しなかった場合を合格(表4及び表5において「無し」と表記)、1本でもデラミネーションが発生すれば捻回特性は劣位(表4及び表5において「有り」と表記)と判断する。また、最終破断の捻回数を記録して各鋼線の平均値(捻回値)を算出し、18回以上を良好であると判断した。
(疲労特性)
疲労試験は回転式曲げ疲労試験を行う。試験では鋼線のままとし、矯正加工以外の加工をせずに行う。中心200mmに重りをつけて曲げ、回転させる。曲げによる応力は曲率を用いて算出する。曲率は鋼線のたわみ量を用いて、円弧状に鋼線が変形していると仮定して計算する。使用するヤング率は200GPaとする。
疲労強度を引張強度で除した「疲労強度/引張強度」の値(表4及び表5において「耐久比」と記す)が0.220以上の場合疲労特性が良好であると評価する。
上記のように評価した線材及び鋼線の引張強度、並びに鋼線の捻回特性及び疲労特性を表4及び表5に示す。下線は特性が望ましい範囲から外れていることを示す。
Figure 2021161443

Figure 2021161443
Figure 2021161443
Figure 2021161443
Figure 2021161443
<製造方法及び金属組織の依存性評価>
表4に示すように、実施例であるNo.1−1〜1−7は、いずれも本開示の要件を満足しており、引張強度、疲労特性及び捻回特性に優れた鋼線が得られている。
一方、No.1−8〜1−27では、引張強度、疲労特性及び捻回特性の少なくとも1つが不足している鋼線であったか、製造途中で問題が生じ、鋼線の製造を中止した。以下のように推測される。
No.1−8は、フェライト組織の面積率が過大であり、疲労強度が不足している。鋳片加熱温度が低過ぎて、固溶Nが残存し、B窒化物が析出したと考えられる。
No.1−9は、フェライト組織の平均面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大であり、引張強度、疲労強度、捻回特性が不足している。鋳片加熱温度が高過ぎて、脱炭によりフェライト組織が増加し、強度も低下したと考えられる。
No.1−10は、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大であり、疲労強度、捻回特性が不足している。鋳片加熱時間が短過ぎて、固溶Nが残存し、B窒化物が析出したと考えられる。
No.1−11は、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大であり、引張強度、疲労強度、捻回特性が不足している。鋳片加熱時間が長過ぎて、脱炭によりフェライト組織が増加し、強度も低下したと考えられる。
No.1−12は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。鋼片加熱温度が低過ぎて、B化合物の未溶解残存によるBが不足したと考えられる。
No.1−13は、フェライト組織の面積率が過大であり、疲労強度、捻回特性が不足している。鋼片加熱温度が高過ぎて、固溶Nが残存し、B窒化物が析出したと考えられる。
No.1−14は、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大であり、疲労強度、捻回特性が不足している。仕上圧延温度が低過ぎて、B窒化物の析出によりBが不足したと考えられる。
No.1−15は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。仕上圧延温度及び巻取温度の高温化によるオーステナイトの粗大化が生じたと考えられる。
No.1−16は、巻取不良が生じたため、巻取工程以降の作業を中止した。巻取前の水冷温度低下のため巻取不良が生じたと考えられる。
No.1−17は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。巻取温度の高温化によるオーステナイトの粗大化が生じたと考えられる。
No.1−18は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。巻取後の徐冷によるオーステナイトの粗大化が生じたと考えられる。
No.1−19は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。巻取後の急冷によりB欠乏層が生じ、粗大なフェライト組織が生じたと考えられる。
No.1−20は、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大であり、疲労強度、捻回特性が不足している。巻取後の冷却温度(浸漬開始温度)が低く、粗大なフェライト組織が生じたと考えられる。
No.1−21は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。溶融塩温度が上昇し、微細なフェライト組織が得られないと考えられる。
No.1−22は、パーライトの面積率が少なく、フェライト組織の平均面積が過大であり、引張強度、捻回特性が不足している。溶融塩温度が低く、ベイナイト組織が過多に形成したと考えられる。
No.1−23は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。溶融塩温度が上昇し、微細なフェライト組織が得られないと考えられる。
No.1−24は、伸線加工を行うことができなかった。1次溶融塩の浸漬時間が短かったため、パーライト変態が終わらずマルテンサイトが形成し、パーライト組織の面積率が少なくなったと考えられる。
No.1−25は、伸線加工を行うことができなかった。線材のパーライト組織の面積率が少なく、2次溶融塩温度が低過ぎて、パーライト変態が終わらずマルテンサイトが形成したと考えられる。
No.1−26は、フェライト組織の平均面積が過大であり、捻回特性が不足している。溶融塩温度が上昇し、微細なフェライト組織が得られないと考えられる。
No.1−27は、伸線加工を行うことができなかった。2次溶融塩の浸漬時間が短かったため、マルテンサイトが形成し、パーライト組織の面積率が不足したと考えられる。
<成分の依存性評価>
表5に示すように、実施例であるNo.2〜18は、いずれも本開示の要件を満足しており、引張強度、疲労特性及び捻回特性に優れた鋼線が得られている。
一方、No.19〜31では、引張強度、疲労特性及び捻回特性の少なくとも1つが不足している鋼線であったか、製造途中で問題が生じ、鋼線の製造を中止した。以下のように推測される。
No.19は、C含有量が不足しており、引張強度が不足している。
No.20は、C含有量が過剰であり、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.21は、Si含有量が不足しており、引張強度が不足している。
No.22は、伸線加工を行うことができなかった。Mn含有量が過剰であり、偏析部でマルテンサイトが形成されたものと考えられる。
No.23は、Al含有量が過剰であり、捻回特性が不足している。
No.24は、Ti含有量が不足しており、引張強度、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.25は、Ti含有量が過剰であり、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大となり、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.26は、N含有量が過剰であり、フェライト組織の面積率が過大となり、疲労強度が不足している。
No.27は、Si含有量に対してB含有量が不足し、式(1)の関係を満たさず、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大となり、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.28は、Si含有量に対してB含有量が過剰で、式(1)の関係を満たさず、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大となり、引張強度、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.29は、N含有量に対するTi含有量が過剰で、関係式(2)を満たさず、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大となり引張強度、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.30は、N含有量に対するTi含有量が不足し、関係式(2)を満たさず、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大となり、疲労強度、捻回特性が不足している。
No.31は、B含有量が不足し、フェライト組織の面積率及びフェライト組織の平均面積がいずれも過大となり、疲労強度、捻回特性が不足している。
C 鋼線の中心軸
P パーライト組織
F フェライト組織
θ セメンタイト
α セメンタイトの長軸方向と鋼線の中心軸方向とのなす角度

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.80%以上1.10%以下、
    Si:0.70%以上2.00%以下、
    Mn:0.10%以上1.00%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    N:0.0060%以下、
    O:0.0060%以下、
    B:0.0004%以上0.0040%以下、
    Al:0.005%以上0.070%以下、及び
    Ti:0.004%以上0.025%以下
    を含み、残部がFe及び不純物からなり、
    前記Siの含有量と前記Bの含有量が下記式(1)を満たし、前記Tiの含有量と前記Nの含有量が下記式(2)を満たし、
    金属組織が、パーライト組織及びフェライト組織を含み、線材の横断面を観察した場合に、前記線材の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記パーライト組織の面積率が90%以上であり、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.5μm以下である線材。
    式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
    式(2):2.0<Ti/N<5.5
    前記式(1)及び前記式(2)において、各元素記号は前記線材における各元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.60%以下を含有し、かつ、前記Crの含有量と前記Bの含有量が下記式(3)を満たす請求項1に記載の線材。
    式(3):0.0048×Cr≦B≦0.013×Cr
    前記式(3)において、各元素記号は、前記線材における各元素の含有量(質量%)が代入される。
  3. 前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Nb:0.025%以下、及び
    V:0.15%以下
    のいずれか1種又は2種を含有する請求項1又は請求項2に記載の線材。
  4. 前記Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.20%以下を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の線材。
  5. 前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cu:0.50%以下、
    Ni:0.50%以下、及び
    Sn:0.50%以下
    からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の線材。
  6. 前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ca:0.0040%以下、及び
    Mg:0.0040%以下
    のいずれか1種又は2種を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の線材。
  7. 前記Feの一部に代えて、質量%で、Sb:0.15%以下を含有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の線材。
  8. 質量%で、
    C:0.80%以上1.10%以下、
    Si:0.70%以上2.00%以下、
    Mn:0.10%以上1.00%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    N:0.0060%以下、
    O:0.0060%以下、
    B:0.0004%以上0.0040%以下、
    Al:0.005%以上0.070%以下、及び
    Ti:0.004%以上0.025%以下
    を含み、残部がFe及び不純物からなり、
    前記Siの含有量と前記Bの含有量が下記式(1)を満たし、前記Tiの含有量と前記Nの含有量が下記式(2)を満たし、
    金属組織が、セメンタイト及びフェライト組織を含み、鋼線の横断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記フェライト組織の面積率が2.0%以下であり、前記フェライト組織の個々の面積の平均値が2.0μm以下であり、
    前記鋼線の縦断面を観察した場合に、前記鋼線の外周面からの深さが50μmから100μmまでの領域において、前記セメンタイトの全体数に対し、前記セメンタイトの長軸方向と前記鋼線の中心軸方向とのなす角度が30°以下であるセメンタイトの存在割合が60%以上である鋼線。
    式(1):0.0025×Si−0.0015<B<0.0025×Si
    式(2):2.0<Ti/N<5.5
    前記式(1)及び前記式(2)において、各元素記号は、前記鋼線における各元素の含有量(質量%)が代入される。
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