JP2021161118A - 重合性脂環式化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーとして使用できる、縮合環構造を有する新規な重合性脂環式化合物を提供する。
【解決手段】式(P1)で表される重合性脂環式化合物である。式中、環Zは、C6〜15の脂環式炭素環であり、C1〜12の置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよく、縮合環を有していてもよい。L及びLは、それぞれ独立に、C1〜5の2価の炭化水素基を表し、B及びBは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C2〜12のアルコキシカルボニル基、又は置換基を有していてもよいC7〜12のフェノキシカルボニル基を表し、Rは、C1〜12の置換基を表し、mは、置換基Rの数を表し、0〜4の整数である。
Figure 2021161118

【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーとして用いられる重合性脂環式化合物に関する。
カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等が知られている。ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール類をモノマー原料として製造される。ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、医療用部品、建材、フィルム、シート、ボトル、光学記録媒体、レンズ等の分野でいわゆるエンジニアリングプラスチックスとして広く利用されている。また、ポリカーボネートジオールは、例えばイソシアネート化合物と反応させて、ポリウレタンなどの原料にも利用される。
ポリエステル樹脂は、一般的に、テレフタル酸類、ナフタレンジカルボン酸類等のジカルボン酸や、プロパンジオール、ブタンジオール、エチレングリコールなどの各種脂肪族ジオールをモノマー原料として製造される。ポリエステル樹脂は、耐熱性、強度、染色性、蒸散性等の優位性を生かし、衣料用繊維、容器、包装資材等として広く利用される。また、ポリエステル樹脂は、コーティング材料、接着剤、フィルム、電子写真用トナー等の用途にも使用される。
近年、多様な化合物をモノマー成分とするポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が開発されている。例えば、特許文献1及び2には、イソソルビドに代表されるエーテル基含有ジオールをモノマー成分とするポリカーボネート樹脂が開発されている。特許文献3〜5には、フルオレン環を含む化合物をモノマー成分とするポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネートが提案されている。特許文献6及び7には、ノルボルナン骨格を含む縮合環化合物をモノマー成分とするポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が提案されている。
国際公開WO2004/111106号 国際公開WO2007/063823号 特許第5119250号 特許第5204200号 特開2015−25111号公報 特開平6−43302号公報 特開2002−322267号公報
近年、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂の用途がますます広がり、機械的物性、耐熱性などに対する要求性能も多岐にわたる。そこで、新しい構造を有する熱可塑性樹脂の開発が期待されており、その原料モノマーとして用いられる重合性化合物の開発が望まれている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、例えばカーボネート結合を有する熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーとして使用できる、縮合環構造を有する新規な重合性脂環式化合物を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、下記式(P1)で表される、重合性脂環式化合物にある。
Figure 2021161118
式(P1)中、環Zは、置換基を有していてもよい、炭素数6〜15の脂環式炭素環を表す。脂環式炭素環はヘテロ原子を含んでいてもよい。L1及びL2は、それぞれ独立に、直接結合又は炭素数1〜5の2価の炭化水素基を表す。B1及びB2は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいフェノキシカルボニル基又は酸ハライド基を表す。R1は、置換基を表す。mは、置換基R1の数を表し、mは0〜4の整数である。
上記重合性脂環式化合物は、縮合環構造を有する新規な化合物であり、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はフェノキシカルボニル基を有する。そのため、上記重合性脂環式化合物は、例えばカーボネート結合を有する熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーとして使用できる。
図1は、製法Aによってジヒドロキシ化合物P1−1を合成する反応を示す図である。 図2は、製法Bによってジヒドロキシ化合物P1−1を合成する反応を示す図である。 図3は、製法Cによってジヒドロキシ化合物P1−1を合成する反応を示す図である。 図4は、ジカルボン酸化合物P1−2を合成する反応を示す図である。 図5は、ジカルボン酸エステル化合物P1−3を合成する反応を示す図である。 図6は、化合物(N1)と化合物(N2)とから化合物(P1)を合成する反応を示す図である。 図7は、各出発原料から得られる重合性脂環式化合物を示す図である。 図8は、実施例1−1で得られたポリカーボネート共重合体のNMRチャートである。 図9は、実施例1−2で得られたポリカーボネート共重合体のNMRチャートである。 図10は、実施例1−3で得られたポリカーボネート共重合体のNMRチャートである。 図11は、実施例1−4で得られたポリカーボネート共重合体のNMRチャートである。 図12は、実施例1−5で得られたポリカーボネート共重合体のNMRチャートである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成などの説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明は、その要旨を超えない限り以下の内容に限定されない。また、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値あるいは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。また、「ppm」、「%」は、特段の説明がない限り、それぞれ「重量ppm」、「重量%」を意味する。また、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」は、それぞれ実質的に同義である。
[重合性脂環式化合物]
重合性脂環式化合物は、下記式(P1)で表され、例えば、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーとして用いられる。このような熱可塑性樹脂は、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂である。なお、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂のことを、例えば、「カーボネート系樹脂」ということができる。熱可塑性樹脂の詳細については、後述するが、熱可塑性樹脂は、式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来する構造単位を少なくとも有する。重合性脂環式化合物は、式(P1)に示されるように、縮合環を有している。
Figure 2021161118
式(P1)で表される重合性脂環式化合物においては、シクロペンタン(具体的には、シクロペンタン骨格)及び環Z(具体的には、脂環式炭化水素骨格)が、シクロブタン(具体的にはシクロペンタン骨格)を挟み、それぞれシクロブタン(具体的には、シクロブタン骨格)と縮合環を形成している。換言すれば、シクロペンタンと環Zとは、シクロブタンを挟んでこのシクロブタンに縮環している。
式(P1)中、環Zは、炭素数6〜15の脂環式炭素環を表す。脂環式炭素環は、脂環式化合物の環状骨格を意味し、炭素から構成された環だけでなく、複素環を含む概念である。脂環式炭素環の炭素数が6以上であるため、重合性脂環式化合物の全長がある程度長くなる。そのため、重合性脂環式化合物をモノマーとして用いることにより、構造単位間の結合距離を長くすることができる。その結果、靱性などの機械的物性に優れた熱可塑性樹脂を製造することができる。また、脂環式炭素環の炭素数が6以上であるため、低吸水かつ、耐熱性に優れた樹脂が得られるという効果が得られる。このような効果が増大するという観点から、脂環式炭素環の炭素数は7以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。なお、脂環式炭素環の炭素数は、具体的には、脂環式炭素環の環状に連なった原子の数を表し、炭素原子の数だけでなく、複素環の場合には炭素以外の原子(具体的には、ヘテロ原子)を含んだ数を意味する。
また、環Zの脂環式炭素環の炭素数が15以下であるため、剛直結合数を抑え、樹脂の耐熱性と靭性の両立という効果が得られる。このような効果が増大するという観点から、脂環式炭素環の炭素数は12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
環Zの脂環式炭素環は、置換基を1つ又は複数有していてもよい。環Zの脂環式炭素環が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜14の炭化水素基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜14のアリールオキシ基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、シリル基、スルフィニル基、スルホ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基が挙げられる。
炭素数1〜14の炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、又は炭素数3〜14のアリール基等が挙げられる。
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。
炭素数2〜10のアルキニル基としては、アセチレン基、プロピニル基が挙げられる。
炭素数3〜14のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。前記炭素数1〜10のアシル基としては、アセチル基が挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。
炭素数3〜14のアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられる。
炭素数1〜10のアシルオキシ基としては、メトキシアセチル基、フェノキシアセチル基が挙げられる。
シリル基としては、トリメチルシリル基が挙げられる。
スルホ基としては、スルホ基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が挙げられる。
スルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基が挙げられる。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基が挙げられる。
アリールチオ基としては、フェニルチオ基が挙げられる。
アミノ基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。
上述の炭素数1〜14の炭化水素基等の、環Zに有していてもよい置換基は、さらに1つ以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基が挙げられる。
置換基数の上限は、環Zの構造によって決定される。重合性脂環式化合物を合成するための原料調達が容易であるという観点、重合性脂環式化合物の合成が容易になるという観点、置換基が増えることで、化合物骨格の内、剛直骨格の割合が減少することで耐熱性が低下するおそれがあるという観点から、置換基数は、0以上、4以下であることが好ましく、0以上、2以下であることがより好ましく、0又は1であることがさらに好ましい。
化合物骨格の内、剛直な骨格の割合を増やし、耐熱性に優れた樹脂を得るという観点から、環Zの脂環式炭素環は置換基を有しておらず脂環式炭素環を構成する炭素原子には水素原子が結合しているか、あるいは置換基が炭素数1〜14の炭化水素基であることが好ましい。得られる樹脂の靭性向上や成型の際、溶融粘度が低く流動性に優れた樹脂を得るという観点からは、置換基は炭素数5〜12のアルキル基であることが好ましい。また、得られる樹脂の耐熱性向上という観点からは、置換基は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。熱可塑性樹脂の耐熱性、合成容易性、がより向上するという観点からは、置換基は炭素数が1〜2のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1のアルキル基(具体的には、メチル基)であることがより好ましい。また、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂の耐熱性がより向上し、原料を安価に入手できるという観点からは、環Zにおける脂環式炭素環は、置換基としてメチル基を1つ有し、脂環式炭素環を構成する他の炭素原子(つまり、置換基が結合した炭素原子以外の炭素原子)には、置換基が結合しておらず、水素原子が結合していることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が優れた耐熱性と靱性とを両立できると共に、原料を安価に入手できるという観点からは、環Zの脂環式炭素環は、置換基を有していないことが好ましい。ただし、式(B1)における「−L2−B2」は、重合反応基であり、置換基に含まれない。
熱可塑性樹脂の耐熱性の向上、重合時における化合物の反応性向上の観点からは、環Zの脂環式炭素環の有する置換基は炭素数1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、同様の観点から炭素数1〜3のアルコキシ基であることがより好ましく、耐熱性により優れるという観点からメトキシ基であることがさらに好ましい。
ジヒドロキシ化合物を重合に用いる場合において、ヒドロキシ基のβ位炭素の水素原子がアルキル基等の置換基により置換されていれば、樹脂の製造時にモノマーからのヒドロキシ基の脱離を抑制することができる。そのため、重合温度をより高くし、分子量がより大きな樹脂を得ることができる。したがって、例えばL2がメチレン基の場合、環ZのL2が結合している炭素原子に対してさらに置換基が結合していることが好ましい。
環Zの脂環式炭素環は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子は、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。式(P1)で表される重合性脂環式化合物に極性が付与される観点から、ヘテロ原子は、酸素原子及び/又は硫黄原子であることが好ましい。この場合には、熱可塑性樹脂を構成する、重合性脂環式化合物に由来する構造単位にも極性が付与される。そのため、例えば、熱可塑性樹脂と異種材料樹脂とを混合する場合において、熱可塑性樹脂と異種材料樹脂との親和性の向上、異種材料樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンドした際の相溶性の向上が可能になる。式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来する構造単位のことを、適宜「構造単位B0」という。脂環式炭素環は、例えば上記の官能基としてヘテロ原子を含むことができる。また、脂環式炭素環は、後述の架橋構造にヘテロ原子を含むことができる。重合性脂環式化合物の合成が容易になるという観点、熱可塑性樹脂製造時における縮合重合反応を阻害しにくいという観点、得られる樹脂の極性を下げて吸水率を抑制するという観点からは、環Zはヘテロ原子を含まないことが好ましい。
環Zの脂環式炭素環は、環を構成する炭素原子の数が4以上の炭素環を少なくとも1つ有することが好ましい。この場合には、剛直な骨格となり耐熱性に優れるという効果を示す。
本明細書において、脂環式炭素環は、縮合環を有するものを包含する概念である。環Zの脂環式炭素環は、縮合環を有していてもよい。この場合において、縮合環を含む脂環式炭素環の炭素数が上記のごとく6〜15となる。脂環式炭素環が縮合環を含む場合には、熱可塑性樹脂を構成するモノマー単位間の結合距離(具体的には、構造単位A1間の結合距離)を長くすることができる。これにより、熱可塑性樹脂の靱性などの機械的物性が向上する。
脂環式炭素環は、例えばノルボルナン骨格のように、脂環式炭素環を構成する炭素原子に結合した炭素数5以下の炭化水素基が、脂環式炭素環を構成する他の炭素原子と結合して、環を形成した構造を有することが好ましい。すなわち、脂環式炭素環骨格に、炭素数5以下の炭化水素基が架橋した構造を有することが好ましい。この場合には、剛直な骨格となり耐熱性、鉛筆硬度に優れるという効果が得られる。この効果が向上するという観点から、架橋構造の炭化水素基の炭素数は、3以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
また、脂環式炭素環は、例えばオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタンのように、脂環式炭素環を構成する炭素原子に結合した酸素原子が、脂環式炭素環を構成する他の炭素原子と結合して環を形成した構造を有することが好ましい。すなわち、脂環式炭化水素骨格に酸素原子が架橋した構造(つまり、環状エーテル結合)を有することが好ましい。この場合には、ヘテロ元素の極性が高いため異種ポリマーとの相溶性が向上するという効果が得られる。また、環Zの脂環式炭素環は、例えばチアビシクロ[2.2.1]ヘプタンのように、脂環式炭化水素骨格に硫黄原子が架橋した構造(つまり、環状チオエーテル結合)を有することが好ましい。この場合には、ヘテロ元素の極性が高いため異種ポリマーとの相溶性が向上するという効果が得られる。
式(P1)におけるL1及びL2は、それぞれ独立に、直接結合又は炭素数1〜5の2価の炭化水素基を表す。炭化水素基は、例えばアルキレン基であり、炭素数1〜5の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基等が例示される。
重合性脂環式化合物の合成が容易になるという観点、熱可塑性樹脂の製造時における縮合重合反応を阻害しにくいという観点、置換基が含有されることで運動性が増し、耐熱性が低下するという観点からは、L1及びL2は、置換基を有していないことが好ましい。また、熱可塑性樹脂の靱性、成形加工性(具体的には成型する際に溶融した時の流動性)がより向上するという観点から、L1及びL2の炭化水素基の炭素数は3〜5が好ましい。一方、熱可塑性樹脂の靱性を確保しつつ、剛直な骨格が形成されることにより耐熱性がより向上し、さらに成形加工性(具体的には成型する際に溶融した時の流動性)がより向上するという観点から、L1及びL2の炭化水素基の炭素数は1〜2が好ましい。さらに、熱可塑性樹脂の製造時に、モノマーを合成するための原料が安価になるという観点から、L1及びL2は、メチレン基であることが好ましい。メチレン基は、メタンジイル基とも呼ばれる。
式(P1)におけるL1の結合部位は、シクロペンタン骨格を形成する炭素原子であれば限定されず、シクロペンタンとシクロブタンとの縮環部位における炭素原子であってもよい。同様に、式(P1)におけるL2の結合部位は、環Zの脂環式炭化水素骨格を形成する炭素原子であれば限定されず、環Zの脂環式炭素環とシクロブタンとの縮環部位における炭素原子であってもよく、環Zの脂環式炭素環自体が縮環している場合には、その脂環式炭素環内の縮環部位であってもよい。
1、B2は、それぞれL1、L2に結合した官能基(具体的には、重合反応基)である。B1及びB2は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいフェノキシカルボニル基又は酸ハライド基を表す。B1及びB2がヒドロキシ基の場合には、重合性脂環式化合物がジオール(つまり、ジヒドロキシ化合物)となるため、重合性脂環式化合物は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂を製造するためのモノマーとして用いられる。B1及びB2がカルボキシ基の場合には、重合性脂環式化合物がジカルボン酸となり、重合性脂環式化合物は、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂を製造するためのモノマーとして用いられる。B1及びB2がアルコキシカルボニル基である場合には、重合性脂環式化合物がジカルボン酸のエステルとなり、重合性脂環式化合物は、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂を製造するためのモノマーとして用いられる。B1及びB2がフェノキシカルボニル基や酸ハライド基である場合には、アルコキシカルボニル基の場合と同様である。また、B1及びB2のうちの一方が、ヒドロキシ基であり、もう一方がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、酸ハライド基の場合には、重合性脂環式化合物は、ポリエステルカーボネートを製造するためのモノマーとして用いられる。
安価原料調達、重合時の反応性という観点から、アルコキシカルボニル基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。また、安価原料調達、重合時の反応性という観点から、フェノキシカルボニル基の炭素数は7〜12であることが好ましく、7〜10であることがより好ましく、7〜8であることがさらに好ましい。
酸ハライド基としては、カルボン酸ハライド基であることが好ましい。カルボン酸ハライドとしては、カルボン酸クロライド、カルボン酸ブロマイド、カルボン酸アイオダイドが挙げられる。なかでも、安価製造の観点でカルボン酸クロライドがより好ましい。
アルコキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基が有していてもよい置換基とは、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
式(P1)におけるB1及びB2は、例えば下記の構造群のいずれかである。構造群中の、Eは、炭素数12以下のアルキル基を表し、Phは、炭素数12以下のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基などの置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
Figure 2021161118
式(P1)におけるL1及びL2がメチレン基であり、B1及びB2が、ヒドロキシ基であることが好ましい。この場合には、式(P1)における「−L1−B1」及び「−L2−B2」は、ヒドロキシメチル基となる。そして、この場合には、安価原料調達、合成容易性、重合時の反応性、得られる樹脂の耐熱性や靭性の両立という効果が得られる。
また、式(P1)におけるL1及びL2が直接結合であり、B1及びB2が、カルボキシ基、又は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基であることが好ましい。この場合には、式(P1)における「−L1−B1」及び「−L2−B2」は、カルボキシ基、又はメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基となる。そして、この場合には、安価原料調達、合成容易性、重合時の反応性、得られる樹脂の耐熱性や靭性の両立という効果が得られる。
熱可塑性樹脂の耐熱性の向上、重合時における化合物の反応性向上の観点からは、式(P1)におけるL1及びL2が直接結合であり、B1及びB2が、ヒドロキシ基であることが好ましい。この場合には、式(P1)における「−L1−B1」及び「−L2−B2」は、ヒドロキシ基となる。そして、この場合には、重合時の反応性、得られる樹脂の耐熱性向上という効果が得られる。式(P1)における「−L1−B1」及び「−L2−B2」は、ヒドロキシ基である場合において、L1及びL2が結合している炭素環の炭素原子に隣接した炭素環の炭素原子に、アルコキシ基が結合していることがより好ましい。この場合には、樹脂の耐熱性が一層向上する。
式(P1)におけるR1は、シクロペンタン(具体的にはシクロペンタン骨格)に結合した置換基を表し、mは、その置換基の数を表す。置換基R1を複数有する場合には、各置換基は同じであっても異なっていてもよい。シクロペンタンにおける置換基の結合部位は、シクロペンタン骨格を形成する炭素原子であれば限定されず、シクロペンタンとシクロブタンとの縮環部位における炭素原子であってもよい。ヒドロキシ基のβ位炭素の水素原子がアルキル基により置換されていれば、樹脂の製造時にモノマーからのヒドロキシ基の脱離を抑制することができる。そのため、重合温度をより高くし、分子量がより大きな樹脂を得ることができる。したがって、例えばLがメチレン基の場合、シクロペンタン骨格を構成する炭素原子の中でLが結合している炭素原子に対してさらに置換基が結合していることが好ましい。置換基R1の詳細は、上述の環Zの脂環式炭素環の置換基と同様である。
式(P1)におけるmは、0〜4の整数である。重合性脂環式化合物を合成するための原料調達が容易であるという観点、重合性脂環式化合物の合成が容易になるという観点、化合物骨格の内、剛直な骨格の割合を増やし耐熱性を高めるという観点から、mは1又は0であることが好ましい。mが0の場合には、シクロペンタンは、置換基R1を有さず、重合反応基となる式(P1)における「−L1−B1」を除き、置換基を有さない。つまり、この場合には、シクロペンタンを構成する炭素原子には、「−L1−B1」を除き、水素原子が結合する。
上記式(P1)における環Zがシクロペンタン環以外の脂環式骨格を有することが好ましい。つまり重合性環式化合物は、シクロペンタン環と環Zが、シクロブタン環を挟んで非対称であることが好ましい。この場合には、溶解性を向上させることができ、モノマーの合成やポリマー作成に優位という効果が得られる。また、式(B1)構造を有するカーボネート系樹脂の光弾性係数を低くすることができるという効果が得られる。
重合性脂環式化合物は、下記式(P2)〜(P11)で表される化合物から選択されるいずれかであることが好ましい。この場合には、後述の製造方法により、重合性脂環式化合物を容易に製造できる。また、この場合には、耐熱性と靭性、低吸水という効果が得られる。
Figure 2021161118
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式(P2)〜(P11)では、式(P1)におけるシクロブタンに縮環した環Zの脂環式炭素環骨格を特定した構造を示している。式(P2)〜(P11)中、R1、L1、L2、B1、B2、mの詳細は、式(P1)と同様である。式(P2)〜(P11)におけるR2は、式(P1)における環Zの脂環式炭素環に結合しうる上述の置換基と同義である。nは、置換基R2の数を表し、下限は0であり、上限は、環Zに相当する脂環式炭素環の炭素数によって異なる。具体的には、式(P2)におけるnは、0〜6の整数である。式(P3)及び式(P11)におけるnは、0〜11の整数である。式(P4)及び式(P5)におけるnは、0〜9の整数である。式(P6)におけるnは、0〜7の整数である。式(P7)におけるnは、0〜13の整数である。式(P8)〜式(P10)におけるnは、0〜5の整数である。
重合性脂環式化合物が式(P2)で表される場合には、適度な剛直骨格を有するため、最低限の耐熱性と高い靭性という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P3)で表される場合には、剛直なノルボルネン骨格を二つ有するため、高い耐熱性や表面硬度、低光弾性係数という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P4)で表される場合には、剛直な骨格である架橋構造を持つ環と、架橋構造を持たない環をバランスよく有し、縮環により非極性である炭素原子を多く含むため、耐熱性や表面硬度、光弾性係数と靭性の両立という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P5)で表される場合には、剛直な骨格である架橋構造を持つ環と、架橋構造を持たない環をバランスよく有し、縮環により非極性である炭素原子を多く含むため、耐熱性や表面硬度、光弾性係数と靭性の両立という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P6)で表される場合には、適度な剛直骨格を有するため、最低限の耐熱性と高い靭性という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P7)で表される場合には、剛直なノルボルネン骨格を二つ有する_ため、高い耐熱性や表面硬度、低光弾性係数という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P8)で表される場合には、柔軟な脂環式構造で構成されるため、最低限の耐熱性と高い靭性という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P9)で表される場合には、剛直な骨格と極性の高いヘテロ元素を有するため、耐熱性と異種ポリマーとブレンドした際の相溶性向上という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P10)で表される場合には、剛直な骨格と極性の高いヘテロ元素を有するため、耐熱性と異種ポリマーとブレンドした際の相溶性向上という効果が得られる。
重合性脂環式化合物が式(P11)で表される場合には、柔軟な脂環式構造で構成されるため、最低限の耐熱性と高い靭性という効果が得られる。
式(P2)〜(P11)におけるR1及びR2がいずれも炭素数1〜14の炭化水素基であることが好ましく、いずれも炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、いずれも炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。この場合には、化合物骨格の内、剛直な骨格の割合を増えるため、高い耐熱性という効果が得られる。
式(P2)〜(P11)におけるm及びnが0又は1であることが好ましい。この場合には、化合物骨格の内、剛直な骨格の割合を増えるため、高い耐熱性という効果が得られる。
式(P2)〜(P11)の中でも、(P2)〜(P7)の化合物から選択されるいずれかであることが好ましい。この場合には、剛直なノルボルネン骨格と柔軟な脂環式構造を有し耐熱性と靭性の両立という効果が得られる。さらに合成が容易であるという観点、耐熱性と靭性の両立という観点から、式(P4)が好ましい。
原料を安価に入手できるという観点、熱可塑性樹脂の靱性、耐熱性の向上が可能になるという観点から、重合性脂環式化合物は、下記の化合物群(I)から選択されるいずれかであることが好ましい。
Figure 2021161118
化合物群(I)において、R1は、水素原子又はメチル基である。また、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。なお、化合物群(I)には、R1が2つ存在しているが、これらは、同一であっても、異なっていてもよい。化合物群(I)における2つのR1は、それぞれ、式(P2)〜(P5)、式(P9)、式(10)におけるR1、R2に対応する。
重合反応基がヒドロキシメチレン基の場合、化合物群(I)における置換基R1、R2がメチル基の場合において、そのメチル基の結合部位は、重合反応基が結合した炭素原子であることが好ましい。この場合には、重合時におけるヒドロキシ基の脱離が抑制され、重合温度を高くすることができるため、分子量が大きな熱可塑性樹脂が得られる。
合成が容易であり、安価に合成が可能になるという観点からは、化合物群Iの中でも下記の化合物群(I−1)から選択されるいずれかがより好ましい。
Figure 2021161118
また、下記の化合物群(I−2)は、極性原子(具体的には、エーテル構造でのO、チオエーテル構造でのS)を有するため、化合物群(I−2)から選択されるいずれかの化合物をモノマーとして用いることにより、熱可塑性樹脂に極性が付与される。そのため、例えば、熱可塑性樹脂と異種材料樹脂とを混合する場合において、熱可塑性樹脂と異種材料樹脂との親和性の向上、異種材料樹脂と熱可塑性樹脂との界面での接着性の向上が可能になる。この効果を十分得るためには、異種材料樹脂も極性を有していることが好ましい。つまり、異種材料部材との親和性や接着性の向上が可能になるという観点からは、重合性脂環式化合物は、化合物群(I−2)から選択されるいずれかがであることが好ましい。
Figure 2021161118
吸水率の低い熱可塑性樹脂が得られるという観点から、化合物群Iの中でも下記の化合物群(I−3)から選択されるいずれかが好ましい。
Figure 2021161118
耐熱性、靱性に優れる熱可塑性樹脂が得られるという観点、原料を安価に調達できるという観点から、化合物群Iの中でも下記の化合物群(I−4)から選択されるいずれかが好ましい。
Figure 2021161118
耐熱性に優れる熱可塑性樹脂が得られるという観点からは、化合物群Iの中でも下記の化合物群(I−5)から選択されるいずれかが好ましい。
Figure 2021161118
耐熱性に優れる熱可塑性樹脂が得られるという観点からは、式(P1)は下記の化合物群(Z−1)から選択されるいずれかが好ましい。
Figure 2021161118
1、R2は、それぞれ独立に、水素原子又は、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である
耐熱性かつ、重合で高い反応性を示す観点からは、式(P1)は、下記式(Z−2)で表されることが特に好ましい
Figure 2021161118
式(Z−2)において、OMeはメトキシ基を示す。ヒドロキシ基が結合する炭素原子とメトキシ基が結合した炭素原子は、同一のシクロペンタン骨格を構成する隣接した炭素原子であることが好ましい。つまり、式(Z−2)において、ヒドロキシ基とメトキシ基は、シクロペンタン骨格を構成する任意の隣接した2つの炭素原子にそれぞれ結合していることが好ましい。
<重合性脂環式化合物の合成方法>
重合性脂環式化合物の製造方法は、特に限定されない。式(P1)で表される重合性脂環式化合物がジヒドロキシ化合物の場合、つまり、式(P1)におけるB1及びB2がヒドロキシ基の場合には、重合性脂環式化合物は、例えば図1〜図3に示される製法A〜Cにより製造される。
図1〜図3において、化合物(M1)は、シクロペンタジエン骨格を有する化合物(つまり、シクロペンタジエン類)であり、5員環の脂環式構造中に二重結合を2つ有する。化合物M1におけるR1、mの詳細は、式(P1)と同様である。環Z1は、脂環式炭素環骨格中に二重結合を2つ有する炭素数6〜15の脂環式炭素環を表す。この脂環式炭素環は、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよく、縮合環を有していてもよい。置換基、ヘテロ原子、縮合環の詳細については、上述の式(P1)における環Zと同様である。
図1〜図3において、また、環Z2は、脂環式炭素環骨格中に二重結合を1つ有する、炭素数6〜15の脂環式炭素環を表す。この脂環式炭素環は、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよく、縮合環を有していてもよい。置換基、ヘテロ原子、縮合環の詳細については、上述の式(P1)における環Zと同様である。
図1〜図3において、M1及びM2は、それぞれ独立に、直接結合又は炭素数1〜4の2価の炭化水素基である。炭化水素基は、炭素数1〜5の置換基を有していてもよい。2価の炭化水素基は、具体的には、アルキレン基である。L1及びL2の詳細は、上述の式(P1)と同様である。
図1に示すように、不飽和結合を有する化合物(M1)と化合物(M2)とから化合物(M3)が製造される。具体的には、化合物(M1)、化合物(M2)のように、2m、2n個のπ電子を持つ2つの不飽和分子は、遷移金属活性種(具体的には、金属触媒)の存在下において、2つの金属−炭素結合と一つの炭素−炭素結合が形成されて環化してメタラサイクル(図示略)を形成する。この際、金属中心は酸化状態が形式的に2価増加する。その後、還元的脱離を経て炭素−炭素結合が形成され、遷移金属中心の酸化状態は還元されて活性種が再生する。これにより不飽和分子の多量化など複数の反応が進行する。このとき、PdやNiを用いた際には、四員環が形成される(伊藤健児著、「有機遷移金属錯体を活用する付加環化反応」、2002年、vol.60、NO.1、p.28−p.41参照)。また、Fe触媒を用いた場合において、2つの不飽和分子から4員環が形成される(ジョーダン・エム・ホイト(Jordan M.Hoyt)他、“アイロン−キャタライズド・インターモレキュラー・[2+2]サイクロアディションズ・オブ・アンアクティベイティッド・アルケンズ(Iron−catalyzed intermolecular [2+2]cycloadditions of unactivated alkenes)”、“サイエンス(Science)”、VOL.349、ISSUE6251、2015年8月28日、p.960−p.963参照)。また、例えば1,4−ジヒドロ−エポキシナフタレンのような橋頭位やその他の位置にヘテロ元素を持つ不飽和構造において、Niを用いることにより四員環が形成される(ドー−ジェン・ハン(Daw−Jen Huang)他、“[2+2]ダイマリゼイション・オブ・ノルボルナジエン・アンド・イッツ・デリバティブズ・イン・ザ・プレゼンス・オブ・ニッケル・コンプレックスィズ・アンド・ジンク・メタル([2+2]Dimerization of norbornadiene and its derivatives in the presence of nickel complexes and zinc metal)”、”ジャーナル・オブ・オーガノメタリック・ケミストリ(Journal of Organometallic Chemistry)”、490、1995、C1−C7参照)
図1〜図3に示される製造方法において、化合物(M1)は、シクロペンタジエン骨格を有する環式のジエン化合物である。化合物(M2)、化合物(M5)、化合物(M8)としては、例えばノルボルネン骨格のような歪んだ不飽和結合を有する化合物を用いることができる。シクロペンタジエン骨格を有する化合物と、ノルボルネン骨格を有する化合物を原料として用いることにより、原料の反応性が高くなり、式(P1)が有する四員環構造(具体的には、シクロブタン)が形成されやすくなる。
また、ノルボルネン骨格のように歪んだ不飽和結合を有する化合物は、光環化反応を用いることにより、四員環を形成する。実際、ジシクロペンタジエンは、金属触媒存在下での光照射により、二量化することが知られている(ロバート・サロモン(Robert G. Salomon)他)、“カッパーキャタリシス・イン・フォトシクロアディションズ・I・ノルボルネン(Copper(I) catalysis in photocycloadditions. I. Norbornene)” ”ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)1974、96、4、p.1137参照)。したがって、光環化反応を用いて四員環構造を有する化合物を製造することもできる。しかしながら、光反応は一般的に収率が低く、また、図1〜図3、および図6に示すような四員環に対して非対称な構造を有する脂環式化合物の合成には不適である。
図1に示されるように、製法Aは、化合物(M1)及び化合物(M2)を環化反応の出発原料とする方法である。製法Aでは、化合物(M1)と化合物(M2)により環化反応が起こり、化合物(M3)が得られる。次いで、オキソ反応により、化合物(M3)にアルデヒドが付加された化合物(M4)が得られる。その後、化合物(M3)に対する水素添加反応(つまり、還元反応)により、化合物(P1−1)が得られる。
製法Aでは、化合物(M1)と化合物(M2)による環化反応には、遷移金属触媒として、Pd(dba)2、Pd(acac)2、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、PdCl2(dppp)、PdCl2(H2NCH2CH2NH2)、NiCl2、NiBr2、NiCl2(PPh3)2、Ni(Cod)2等が用いられる。配位子としては、P(p−tolyl)3、PPh3、P[(p−MeO)Ph]3、P(Cy)3などが用いられるが、配位子を使用しなくてもよい。還元剤としては、例えば亜鉛を用いることができる。反応温度は例えば60〜200℃である。溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(つまり、THF)、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラリン、デカリンなどが用いられる。低沸点溶媒を用いる際は、加圧しても良く、例えば0.5MPa〜10MPaの圧力条件で反応が実施される。反応中、pHを調節する目的で、酢酸、プロピオン酸、4−メトキシ安息香酸、安息香酸、ギ酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(つまり、PPTS)、トシル酸、メタンスルホン酸等が用いられる。
例えばオキソ反応により、化合物(M3)から、図1におけるM1及びM2が直接結合である化合物(M4)が得られる。反応温度は、例えば20〜200℃である。本工程で使用されるロジウム化合物は有機リン化合物と錯体を形成し水素と一酸化炭素存在下でヒドロホルミル化活性を示す物であればその前駆体の形態によらない。すなわち、Rh(acac)(CO)2,Rh2O3,Rh4(CO)12,Rh6(CO)16,Rh(NO3)3などの触媒前駆体物質を有機リン化合物と一緒に反応混合物中に導入し反応容器内で触媒活性を持つロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を形成させてもよいし、あらかじめロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体触媒を調製してそれを反応容器内に導入してもよい。好適なロジウム触媒の量としては、原料の化合物(M3)に対して、ロジウム金属として50〜50000ppmであり、より好ましくは50〜2000ppmである。配位子とロジウム金属とのモル比(配位子/ロジウム)は1〜50の範囲である。また、P(−R)(−R)(−R)で表されるホスフィンまた、P(−OR)(−OR)(−OR)で表されるホスファイトが挙げられる。R、R、Rの具体例としては炭素数1〜12の置換されていても良いアルキル基、炭素数1〜12の置換されていても良い脂環式アルキル基、炭素数1〜12の置換されていても良いアリール基が挙げられる。本工程で使用される好適なホスファイトの具体例としては、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3−メトキシ−6−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2−t−ブチルフェニル)t−ブチルホスファイトなどが挙げられる。これらのホスフィン、ホスファイトのみに限定されるものではない。また、これらのホスファイトは単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用しても良い。溶媒としては、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、炭素数5以上の脂肪族炭化水素類、エチルベンゼン、プロパノール、ブタノールなどが用いられる。反応時の圧力条件は、例えば1MPa〜15MPaである。反応に用いられる水素/一酸化炭素混合ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比は導入ガス組成(水素/一酸化炭素)として0.2〜5.0の範囲が好ましい。アルデヒド基を含有する(M4)はオキソ反応に何ら限定されるものではなく他の既知の反応で実施して良い。
還元反応により、化合物(M4)を化合物(P1)に変換することができる。遷移金属触媒としては、水素還元する触媒としては、前記オキソ反応における好ましいRh触媒、公知の水素還元能を有したニッケル、コバルト、ルテニウム、パラジウム、白金などの周期率表VIII族及び亜クロム酸銅、銅−亜鉛などの金属触媒を使用することができる。これらの金属触媒は、金属単体、金属酸化物、シリカやアルミナ、ケイソウ土やカーボンなどの無機担体に担持された形態、あるいは金属錯体などの形態で使用できる。これらの水素化触媒のうち水素還元反応速度と反応後の触媒分離の観点から、Rh触媒、ラネーニッケル、ニッケル/ケイソウ土、亜クロム酸銅、ルテニウム/カーボン、ルテニウム/アルミナ触媒が特に好適に使用される。溶媒としては、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、炭素数5以上の脂肪族炭化水素類、エチルベンゼン、プロパノール、ブタノールなどが用いられる。反応時の圧力条件は、例えば1MPa〜15MPaである。配位子としては、前記オキソ反応における好ましい配位子を用いても良いし、配位子は用いなくともよい。一酸化炭素混合ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比は導入ガス組成(水素/一酸化炭素)として0.2〜5.0の範囲、または水素ガスのみを用いることが好ましい。なお、オキソ反応後、クエンチを行わず、水素還元を行うこともできる。その場合オキソ反応工程と同一の触媒、または別途好ましい触媒を添加する。アルデヒド基を含有する(M4)から(P1)の合成は上記の水素還元反応に何ら限定されるものではなく他の既知の反応で実施して良い。例えば、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いた還元反応が挙げられる。水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤は、上述の還元工程で使用する溶媒や、メタノール、エタノールといったアルコール溶媒とともに用いられる。
配位子の略号は、以下を意味する。
dba:ジベンジリデンアセトン
acac:アセチルアセトナート
PPh:フェニルホスフィン
dppp:ジフェニルホスフィノプロパン
tolyl:メチルフェニル基
Cy:シクロヘキシル基
Me:メチル基
Ph:フェニル基
図2に示されるように、製法Bは、化合物(M1)と化合物(M5)を環化反応の出発原料とする方法である。製法Aでの化合物(M2)と異なり、製法Bでの化合物(M5)が不飽和結合を1つしか有さないため、製法Bでは過剰環化が抑制される。この点において、製法Bを行うことが好ましい。化合物(M1)と化合物(M5)との環化反応により化合物(M6)が得られる。そして、例えばオキソ反応により、化合物(M6)にアルデヒドを付加することにより、化合物(M7)が得られる。その後、化合物(M7)に対する水素添加反応により、化合物(P1−1)が得られる。環化反応、オキソ反応、水素添加反応の反応条件は、製法Aと同様である。
図3に示されるように、製法Cは、化合物(M1)と化合物(M8)を環化反応の出発原料とする方法である。製法Aの化合物(M2)と異なり、製法Cの化合物(M8)は不飽和結合を1つしか有さないため、製法Cでは過剰環化が抑制される。この点において、製法Cを行うことが好ましい。化合物(M1)と化合物(M8)との環化反応により化合物(M9)が得られる。そして、例えばオキソ反応により、化合物(M9)にアルデヒドを付加することにより、化合物(M10)が得られる。その後、化合物(M10)に対する水素添加反応により、化合物(P1−1)が得られる。環化反応、オキソ反応、水素添加反応の反応条件は、製法Aと同様である。
なお、図1〜図3では環Z1、環Z2、環Zが有しうる置換基を省略しているが、例えば、化合物(M2)、化合物(M5)、化合物(M8)として、置換基を有する化合物を用いることにより、環(Z)の脂環式炭素環に置換基が結合した化合物(P1−1)を製造することができる。
上述の製法A〜製法Cにより、例えば下記式(P21)〜式(P34)で表されるジヒドロキシ化合物を得ることが可能である。
Figure 2021161118
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また、式(P1)で表される重合性脂環式化合物がジカルボンの場合、つまり、式(P1)におけるB1及びB2がカルボキシ基の場合には、重合性脂環式化合物は、例えば、図4に示される反応により製造される。図4に示すように、ジカルボン酸からなる重合性脂環式化合物(具体的には、化合物(P1−2))は、例えば図1における化合物(M4)、図2における化合物(M7)、図3における化合物(M10)を酸化することにより得られる。
ジカルボン酸を得るための反応条件は次の通りである。酸化剤としては、過マンガン酸カリウム、クロム酸、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、酸素、過酸化物等が用いられる。溶媒としては、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数5以上の炭化水素系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、酢酸等の高極性溶媒、塩化メチレン等のハロゲン溶媒等が用いられ、無溶媒で行っても良い。
式(P1)で表される重合性脂環式化合物がジエステルの場合、つまり、式(P1)におけるB1及びB2がアルコキシカルボニル基又はフェニルカルボキシ基である場合には、重合性脂環式化合物は、例えば、図5に示される反応により製造される。図5に示すように、ジエステルからなる重合性脂環式化合物(具体的には、化合物(P1−3))は、例えば図4における化合物(P1−2)と各種アルコール(具体的には、R3OH、R4OH)とを反応させることにより得られる。これにより、化合物(P1−2)におけるジカルボン酸がエステル化し、化合物(P1−3)が得られる。R3、R4は、同じであっても異なってもよく、アルキル基、フェニル基等の炭化水素基を表す。
エステル化の反応条件は、次の通りである。縮合剤としては、トシル酸や硫酸といったブレンステッド酸、イミダゾール系縮合剤であるカルボニルジイミダゾール、カルボジイミド系縮合剤であるN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド等が用いられる。溶媒としては、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数5以上の炭化水素系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒等が用いられる。その他反応条件として、塩化スルホニルを用い、酸クロライドに変換した後、アルコールを添加することでエステル化できる。
式(P1)で表される化合物として、具体的には、図6に示される式(P4−1)で表されるジヒドロキシ化合物(この化合物を、適宜、化合物(P4−1)という)がある。図6に示すように、式(P4−1)で表されるジヒドロキシ化合物は、例えば、製法Aにより得られる。具体的には、まず、化合物(N1)と化合物(N2)とを環化反応させることにより、化合物(N3)と化合物(N4)が得られる。尚、この工程において出発原料として(N2)を用いず(N1)のみを使用した場合においても、反応中クラッキングが進行し(N2)が生成されるため、結果として化合物(N1)と化合物(N2)との環化反応により、(N3)と(N4)を取得することができる。またこの工程において(N1)を用いず(N2)のみを出発原料として使用した場合においても、反応中(N2)の二量化が進行し、(N1)が生成されるため、結果として化合物(N1)と化合物(N2)との環化反応により、(N3)と(N4)を取得することができる。(Kyung−sun Son、“Selective synthesis of tricyclopentadiene from dicyclopentadiene with homogeneous Pd catalysts”、“アプライド・オーガノメタリック・ケミストリ(Applied Organometallic Chemistry)”、2014、Vol.28、p.151−155参照)。次いで、オキソ反応により、化合物(N3)と化合物(N4)とから化合物(N5)が得られ、化合物(N5)の還元反応により、化合物(P4−1)が得られる。なお、図6では、置換基R1、R2を有さない化合物の例を示しているが、上述のように、例えば化合物(N1)、化合物(N2)として、置換基を有する化合物を用いることにより、置換基を有するジヒドロキシ化合物を得ることができる。
化合物(P1)の例として、化合物(P2)〜(P5)、化合物(P9)、化合物(P10)について、合成に使用される出発原料を図7に示す。図7中、R1、R2、B1、B2、L1、L2は、式(P5)と同様であり、L1、L2は、例えばメチレン基、B1、B2は、例えばヒドロキシ基である。
図7に示される化合物(P4)は、化合物(Q1)のみ、又は化合物(Q2)のみ、又は化合物(Q1)と化合物(Q2)を原料として使用した製法Aにより製造される。化合物(P5)は、化合物(Q1)、化合物(Q3)を原料として使用した製法B又は製法Cにより製造される。化合物(P2)は、化合物(Q1)、化合物(Q4)を原料として使用した製法B又は製法Cにより製造される。化合物(P3)は、化合物(Q1)、化合物(Q5)を原料として使用した製法B又は製法Cにより製造される。化合物(P9)は、化合物(Q1)、化合物(Q6)を原料として使用した製法B又は製法Cにより製造される。化合物(P10)は、化合物(Q1)、化合物(Q7)を原料として使用した製法B又は製法Cにより製造される。式(P1)で表される他の化合物も、出発原料を適宜選択することにより、例えば製法A〜Cによって製造できる。
また、化合物(M3)をエポキシ化し、アルコール等の溶媒で開環することで、L,Lが直接結合でヒドロキシ基を含有する化合物(W2)、化合物(W3)が得られる。エポキシ化において好ましい酸化剤はメタクロロ安息香酸(つまりmCPBA)、過酸化水素、過酢酸などが挙げられ、開環で用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
Figure 2021161118
式(Z−3)において、R1、mの詳細は、式(P1)と同様である。式(Z−3)において、化合物(W1)の2つのエポキシ基はそれぞれシクロペンタン骨格、環Z上に含有する。また、化合物(W2)のヒドロキシ基が結合する炭素原子とメトキシ基が結合した炭素原子は、同一の脂環式炭素環骨格を構成する隣接した炭素原子である。つまり、式(Z−3)において、化合物(W2)のヒドロキシ基とメトキシ基は、脂環式炭素環骨格を構成する任意の隣接した2つの炭素原子にそれぞれ結合している。
[重合性脂環式化合物の用途]
重合性脂環式化合物は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーとして用いられる。
重合性脂環式化合物をポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を製造するにあたり、量比を合わせる観点から5%熱重量減少温度(Td5)高い方が望ましい。具体的には、重合性脂環式化合物の5%熱重量減少温度(Td5)が150℃以下であると熱分解してしまい、定量性に問題があるため好ましくない。重合性脂環式化合物のTd5は170℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、210℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましい。
<熱可塑性樹脂の構造>
式(P1)で表される重合性脂環式化合物を用いて得られる熱可塑性樹脂は、分子内に例えば下記の式(X)で表される、繰り返しの構造単位を含む。
Figure 2021161118
式(X)において、Qはジヒドロキシ化合物に基づく構造単位を示し、Q2はジカルボン酸化合物に基づく構造単位を示し、aは0及び/又は1を示す。式(X)におけるaが0の場合には、式(X)で表される構造単位を有する熱可塑性樹脂はポリカーボネート樹脂である。aが1の場合には、熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂である。aが0及び1の場合、具体的には、熱可塑性樹脂が、式(X)におけるa=0の繰り返し構造単位と、a=1の繰り返し構造単位とを含有する場合には、熱可塑性樹脂は、ポリエステルカーボネート樹脂である。
「ジヒドロキシ化合物に基づく構造単位」は、ジヒドロキシ化合物から2個の官能基(ヒドロキシ基)を除いた部分である。「ジカルボン酸化合物に基づく構造単位」は、ジカルボン酸又はその誘導体(具体的には、エステル、ハロゲン化物等)であるジカルボン酸化合物から2個の官能基を除いた部分である。ジカルボン酸化合物の官能基は、典型的には、−C(=O)−X1で表される。Xは、OH、OX2又はハロゲン原子を示す。X2は炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基などの炭化水素基を示す。式(X)におけるQ1及びQの少なくとも一方として、上述の式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来の構造単位A1を含有する。
式(X)で表される構造を有する熱可塑性樹脂が、式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来する構造単位A1として、式(P1)におけるB1及びB2がヒドロキシ基であるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有する場合には、式(X)は、Q1に構造単位A1を含む。また、熱可塑性樹脂は、式(P1)のジヒドロキシ化合物に由来の構造単位A1と、式(P1)以外のジヒドロキシ化合物に由来の構造単位を含んでいてもよい。この場合には、式(X)におけるQ1が構造単位A1と、その他の構造単位を含む。
また、式(X)で表される構造を有する熱可塑性樹脂が、式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来する構造単位A1として、式(P1)のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む場合であって、式(X)におけるaが1である場合には、Q2は、構造単位A1であっても、構造単位A1以外の他の構造単位であってもよい。
式(X)で表される構造を有する熱可塑性樹脂が、式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来する構造単位A1として、式(P1)におけるB1及びB2が、カルボキシ基であるジカルボン酸化合物に由来する構造単位、B1及びB2がアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基であるジカルボン酸エステル化合物に由来する構造単位を含有する場合には、式(X)中のQ2が構造単位A1を含む。この場合には、Q1は、構造単位A1であってもよいし、構造単位A1以外の構造単位であってもよい。
(構造単位A1)
構造単位A1は、式(P1)で表される重合性脂環式化合物に由来する構造単位であり、下記の式(B1)で表される。
Figure 2021161118
式(B1)は、式(P1)で表される重合性脂環式化合物からB1及びB2が脱離した構造を表す。式(B1)における環Z、L1、L2、R1、m等の詳細は、式(P1)と同様である。
(その他の構造)
熱可塑性樹脂は、構造単位A1以外のその他の構造単位を含有することができる。このような構造単位は特に限定されないが、後述の構造単位A2、構造単位A3、構造単位A4、構造単位A5、構造単位A6、構造単位A7、構造単位A8等が挙げられる。つまり、式(P1)で表される重合性脂環式化合物は、ホモポリマーの製造に用いることもできるが、コポリマーの製造に用いることができる。重合性脂環式化合物を用いてコポリマーを製造する場合には、重合性脂環式化合物以外のモノマーに由来の特性が、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂に付与される。
構造単位A1の含有割合は、得られる樹脂の表面硬度を向上、または光弾性係数を低減する観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上がよりさらに好ましく、37.5モル%以上が特に好ましい。構造単位A1の含有割合は最大で50モル%である。
同様の観点から、構造単位A1の含有割合は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上がよりさらに好ましく、75質量%以上が特に好ましい。
一方で、得られる樹脂の耐湿熱性とフィルム強度の両立の観点から、構造単位A1の含有割合は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上がさらに好ましく、4モル%以上がよりさらに好ましく、5モル%以上が特に好ましい。また、50モル%以下が好ましく、37.5モル%以下がより好ましく、25モル%以下がさらに好ましく、20モル%以下がよりさらに好ましく、15モル%以下が特に好ましい。
同様の観点から、構造単位A1の含有割合は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がよりさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がよりさらに好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
透明性等の光学特性、耐候性、成形性、耐熱性等の特性の向上が可能になるという観点から、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂は、イソソルビド、イソマンニド、イソイデッドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位をさらに含むことが好ましい。イソソルビド、イソマンニド、イソイデッドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位のことを以下適宜「構造単位A2」という。構造単位A2は、下記式(A2)で表される。
Figure 2021161118
熱可塑性樹脂が構造単位A2を有する場合には、熱可塑性樹脂は、少なくとも構造単位A1と構造単位A2とを少なくとも含有し、共重合体となる。また、植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるという観点、カーボンニュートラルの観点から、熱可塑性樹脂は、イソソルビドに由来する構造単位を有することがより好ましい。
耐熱性を向上させるという観点から、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂中の構造単位A2の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、30モル%以上であることがよりさらに好ましく、40モル%以上であることが特に好ましく、49モル%以下であることが好ましい。
同様の観点から熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がよりさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましく、99質量%以下であることが好ましい。
吸水率を抑制し、機械強度や光学特性とのバランスを取るという観点から、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂中の構造単位A2の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることがさらにより好ましく、30モル%以上であることが特に好ましく、49モル%以下であることが好ましく、47モル%以下であることがより好ましく、45モル%以下であることがさらに好ましく、42モル%以下であることがよりさらに好ましく、40モル%以下であることが特に好ましい。同様の観点から熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、37.5質量%以上がよりさらに好ましく、42.5質量%以上が特に好ましい。また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がよりさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
透明性等の光学特性、機械強度、溶融時の流動性等の特性の向上が可能になるという観点から、ポリカーボネート樹脂は、構造単位A1及び構造単位A2以外の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有することが好ましい。構造単位A1及び構造単位A2以外の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のことを、以下適宜「構造単位A3」といい、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を「構造単位A3’」という。なお、構造単位A3、A3’は、構造単位A1及び構造単位A2だけでなく、後述の構造単位A4〜構造単位A8も含まない概念である。ポリカーボネート樹脂が構造単位A3、A3’を有する場合には、ポリカーボネート樹脂は、少なくとも構造単位A1と構造単位A3、A3’とを少なくとも有する共重合ポリカーボネートとなる。脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物、分岐脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、脂環式ジヒドロキシ化合物は含まない。
直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール等が挙げられる。
分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂に柔軟性を付与し、ポリカーボネート樹脂の靭性を向上させる観点から、構造単位A3を構成するジヒドロキシ化合物としては、1級水酸基を有す直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物が特に好ましい。1級水酸基を有する直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
靱性等の特性を向上させるという観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位A3の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、30モル%以上であることがさらにより好ましく、40モル%以上であることが特に好ましく、49モル%以下であることが好ましい。
同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましい。
耐熱性と機械強度の両立の観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位A3の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%以下であることがよりさらに好ましく、15モル%以下であることが特に好ましく、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%であることがよりさらに好ましく、15モル%以下であることが特に好ましい。同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがよりさらに好ましく、40質量%以下であることがよりさらに好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、及びリモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂に柔軟性を付与し、ポリカーボネート樹脂の靭性を向上させる観点から、構造単位A3’を構成するジヒドロキシ化合物としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等が好ましい。
靱性等の特性を向上させるという観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位A3’の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、30モル%以上であることがさらにより好ましく、40モル%以上であることが特に好ましく、49モル%以下であることが好ましい。
同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましい。
耐熱性と機械強度の両立の観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位A3’の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%以下であることがよりさらに好ましく、15モル%以下であることが特に好ましく、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%であることがよりさらに好ましく、15モル%以下であることが特に好ましい。同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがよりさらに好ましく、40質量%以下であることがよりさらに好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂は、下記式(A5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位をさらに含有することができる。この場合には、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を好適な範囲に制御することができるため、熱可塑性樹脂の溶融成形や製膜が容易になる可能性がある。また、この場合には、熱可塑性樹脂に光学特性(具体的には、低光弾性係数や透明性)が付与されうる。熱可塑性樹脂は、式(A5)で表される構造単位を1種または2種以上含有することができる。式(A5)で表される構造単位のことを適宜「構造単位A5」という。
Figure 2021161118
式(A5)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数5〜炭素数20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のアリール基を表す。
式(A5)で表されるジヒドロキシ化合物としては、国際公開番号2017/159525の段落[0024]のジヒドロキシ化合物が挙げられる。
光弾性係数の低減や高い表面硬度を有する熱可塑性樹脂を得る観点から、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し構造単位A5の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは22.5モル%以上、よりさらに好ましくは32.5モル%以上であり、特に好ましくは40モル%以上であり、49モル%以下であることが好ましい。同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、22.5質量%以上であることがさらに好ましく、32.5質量%以上であることがよりさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。
一方、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の溶融成形性や製膜性を良好なものにすべく、ガラス転移温度や機械強度を好適な範囲に調整するという観点から、構造単位A5の含有量は、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、よりさらに好ましくは17.5モル%以上であり、特に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下であり、よりさらに好ましくは35モル%以下であり、特に好ましくは30モル%以下であり、最も好ましくは27.5モル%以下である。同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、35質量%以上であることがよりさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂は、下記式(A6)及び/又は下記式(A7)で表される構造単位をさらに含有することができる。この場合には、熱可塑性樹脂は、逆波長分散性を得ることができ、位相差フィルムなどの光学フィルムに好適になる。式(A6)で表される構造単位のことを適宜「構造単位A6」といい、式(A7)で表される構造単位のことを適宜「構造単位A7」という。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
式(A6)、式(A7)中、A1〜A8は、それぞれ独立に、=CH−又は=N−を示す。R22、R23、及びR24は、それぞれ独立に、直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、置換されていてもよい炭素数6〜12のアラルキレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、及び置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基を示す。
式(A6)、(A7)中、R25〜R32はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3〜14のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数3〜14のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキニル基、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基を示す。R25〜R32のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。vは0〜5の整数値を示す。
熱可塑性樹脂中の構造単位(A6)及び構造単位(A7)含有割合が過度に高くなると、光弾性係数や信頼性が悪化したり、熱可塑性樹脂から構成されたフィルムを延伸しても高い複屈折が得られなくなるおそれがある。また、オリゴフルオレン構造単位が熱可塑性樹脂中を占める割合が過度に高くなると、分子設計の幅が狭くなり、必要に応じた樹脂の改質が困難になる。一方、仮に、非常に少量のオリゴフルオレン構造単位により所望の逆波長分散性が得られたとしても、この場合には、オリゴフルオレンの含有量のわずかなばらつきに応じて光学特性が敏感に変化する。そのため、諸特性が一定の範囲に収まるように熱可塑性樹脂を製造することが困難になる。
式(A6)、(A7)中のR22、R23、及びR24に関して、「置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基」における「炭素数4〜10のアリーレン基」の具体例としては、これらに限定されるものではないが、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等のフェニレン基;1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基等のナフチレン基;2,5−ピリジレン基、2,4−フリレン基等のヘテロアリーレン基が挙げられる。
式(A6)、(A7)中のR22、R23、及びR24に関して、「置換されていてもよい炭素数6〜12のアラルキレン基」における「炭素数6〜10のアラルキレン基」としては、例えば、芳香環構造と、各々前記芳香環構造の任意の2箇所に結合した2つの直鎖状又は分岐状のアルキレン基とからなる基が挙げられる。芳香環構造は、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭化水素環構造でもよく、フラン環、ピリジン環等の複素環構造でもよい。炭素数6〜10のアラルキレン基の具体例としては、これらに限定されるものではないが、下記[G]群に示されるものが挙げられる。
Figure 2021161118
合成が容易になるという観点、原料を安価に調達できるという観点から、構造単位(A6)は、下記式(A6−1)で表されることが好ましい。同様の観点から、構造単位(A7)は、下記式(7−1)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
式(A6−1)、式(A7−1)中、A4及びA5はそれぞれ独立に=CH−又は=N−を示す。式(A6−1)、式(A7−1)中のR22、R23、R24は、それぞれ、式(A6)、式(A7)中のR22、R23、R24と同様である。式(A6−1)、式(A7−1)中のR25〜R32は、それぞれ、式(A6)、式(A7)中のR25〜R32と同様である。vは0〜2の整数を示す。
式(A6−1))、式(A7−1)中、R22、R23、及びR24は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基であることがより好ましい。
合成が容易になるという観点、原料を安価に調達できるという観点から、構造単位A6は、下記式(A6−2)で表され、構造単位A7は(A7−2)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
式(A6−2)、式(A7−2)中、A5は、=CH−又は=N−を示す。式(A6−2)、式(A7−2)中のR22、R23、R24は、それぞれ、式(A6)、(D5)中のR22、R23、R24と同様である。式(A6−2)、式(A7−2)中のR25〜R32は、それぞれ、式(A6)、式(A7)中のR25〜R32と同様である。vは0〜2の整数を示す。
合成が容易になるという観点、原料を安価に調達できるという観点から、構造単位(A6)は下記式(A6−3)で表され、構造単位(A7)は、下記式(A7−3)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
式(A6−3)、式(A7−3)中、R22、R23、R24は、それぞれ独立に、直接結合、メチレン基、又はエチレン基を示す。
合成が容易になるという観点、逆波長分散性が向上するという観点から、構造単位(A6)は、下記式(A6−4)で表され、構造単位(A7)は、下記式(A7−4)で表されることがさらにより好ましい。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
式(A6−4)、(A7−4)中、R22、R23、R24は、それぞれ独立に、直接結合、メチレン基、又はエチレン基を示す。
逆波長分散性が向上するという観点から、構造単位(A6)は、下記式(A6−5)で表され、構造単位(A7)は、下記式(A7−5)で表されることがさらにより好ましい。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
式(A6−5)、式(A7−5)中、R22、R23、R24は、それぞれ独立に、直接結合、メチレン基、又はエチレン基を示す。
原料を安価に調達できるという観点から、構造単位(A6)は、具体的には下記に示す構造群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
また、下記に示した構造群は、芳香環が密に導入されており、剛直骨格となるために低光弾性係数を示す。低光弾性係数の構造単位を含む熱可塑性樹脂は応力による位相差の変化が少なく、成形性及び信頼性の観点で好ましい。つまり、成形性、位相差変化の信頼性の観点から、構造単位(A6)、構造単位(A7)は、具体的には下記に示す構造群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
Figure 2021161118
安価合成、低吸水を両立し、さらに好ましい波長分散に調節できる観点で、構造単位A7が下記式(A7−5)で表される構造であることが特に好ましい。
Figure 2021161118
構造単位(A6)、構造単位(A7)を有する熱可塑性樹脂は、例えば、下記式(j)で表されるモノマーの重合等の方法により製造できる。
Figure 2021161118
式(j)中のA1〜A8、R22〜R32、vは、それぞれ、上記式(A6)、(A7)中の式(j)中のA1〜A8、R22〜R32、及びvと同じである。J1及びJ2は、それぞれ独立に、重合反応基を示す。J1、J2は、例えば、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基などのヒドロキシル基含有基;カルボキシ基、アルボキシアルキル基などのカルボキシ基含有基;アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ヒドロキシエステル基等のエステル含有基;酸ハライド基である。J1及びJ2は同じであっても異なっていてもよい。式(j)で表されるモノマーの製造を短工程で実施できる傾向があることから、J1及びJ2が同一であることが好ましい。
式(j)で表されるモノマーは、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体の原料として用いることができる。重合反応基は、J1及びJ2の2か所のみであることが好ましい。つまり、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート等の重合条件で、重合反応基として働くような置換基はR25〜R32には含まれないことが好ましい。
式(j)中のJ1及びJ2はヒドロキシ基であることが好ましい。J1及びJ2がヒドロキシ基であるモノマーは、光学性能が良好な熱可塑性樹脂の製造に使用できる。J1及びJ2がヒドロキシ基であるモノマーは下記式(j1)で表される。
Figure 2021161118
また、式(j)中のJ1及びJ2はエステル基であることが好ましい。J1及びJ2がエステル基であるモノマーは、光学性能が良好なポリエステル、ポリエステルカーボネートの製造に使用できる。工業的に入手可能なアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルを用いて容易に導入できる点では、エステル基は、2−(メトキシカルボニル)エチル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基、又は2−(メトキシカルボニル)プロピル基であることが好ましい。
エステル基の活性が向上し、エステル交換反応が容易に進行するため、ジエステル化合物とジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを同一条件下で反応させ、ポリエステルカーボネートを1段階で合成することができる点では、エステル基がフェノキシカルボニルアルキル基であることが好ましい。特に、2−(フェノキシカルボニル)メチル基、2−(フェノキシカルボニル)エチル基、及び2−(フェノキシカルボニル)プロピル基は、2−ブロモ酢酸フェニル、アクリル酸フェニル、及びメタクリル酸フェニルを用いた導入法や、2−ブロモ酢酸エステル、2−クロロ酢酸エステル、2−ヨード酢酸エステル、アクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類からのエステル交換による導入法が可能なため、特に好ましい。J1及びJ2がエステル基であるモノマーは、例えば下記式(j2)で表される。
Figure 2021161118
式(J2)中、J3及びJ4はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の有機置換基、又はハロゲン原子を示す。
3及びJ4において、炭素数1〜10の有機置換基の具体例としては、これらに限定されるものではないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ、n−デシルオキシ等の直鎖状のアルキルオキシ基;イソプロピルオキシ基、2−メチルプロピルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の分岐鎖を含むアルキルオキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等の環状のアルキルオキシ基;フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;1−イミダゾイル基を含むヘテロアリール基:、2−ピリジルオキシ基、2−フリルオキシ基等のヘテロアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、p−メトキシベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基が挙げられる。ハロゲン原子の具体例としては、これらに限定されるものではないが、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
ジヒドロキシ化合物とのエステル交換で生じる低沸点のアルコールを除去することでポリエステルカーボネートを効率的に合成できる点では、J3及びJ4がメチル基又はエチル基であることが好ましい。エステル交換反応が容易に進行するためジエステル化合物とジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを一括添加で反応器に仕込むことで、好ましい重合体であるポリエステルカーボネートを1段階で合成することができる点では、J3及びJ4がアリール基であることが好ましい。特に、分子量が小さく、ポリエステルカーボネート合成後、フェノールとして留去できることから、フェニル基が特に好ましい。なお、後述する熱可塑性樹脂の製造方法においてJ3及びJ4がアリール基である化合物を用いる場合、重合時の反応性の観点から、炭酸ジエステルとして後述のジアリールカーボネート類を用いることが好ましく、副生物を容易に除去できるとの観点からは、J3及びJ4のアリール基と、ジアリールカーボネート類におけるアリール基とが同じであることがより好ましい。重合反応性が良好で溶液重合や界面重合など比較的簡易な設備で熱可塑性樹脂を得ることができるという観点では、J3及びJ4が酸クロリド含有基であることが好ましく、工業的に安価に製造可能なことから、酸クロリド、酸ブロミドがさらに好ましい。
式(j)で表されるモノマーの具体例としては下記の化合物群が挙げられる。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
Figure 2021161118
Figure 2021161118
Figure 2021161118
ポリカーボネート樹脂が、構造単位(A6)及び/又は構造単位(A7)を含有する場合には、光学特性を高めるという観点、ポリカーボネート樹脂から構成された光学フィルムの波長分散特性を好ましいものとする、複屈折を好ましい範囲に調節する観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく全構造単位の合計モル量に対し、0.1モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、3モル%以上であることがさらに好ましく、4モル%以上であることがさらにより好ましく、5モル%以上であることが特に好ましく、45モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましく、17.5モル%以下であることがさらにより好ましく、12.5モル%以下であることが特に好ましい。同様の観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7.5質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることがよりさらに好ましく、15質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上であることがよりさらに好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、下記式(D6)で表される構造単位をさらに含有することができる。この場合には、ポリカーボネート樹脂は、優れた光学特性を示す。ポリカーボネート樹脂は、式(D6)で表される構造単位を1種または2種以上含有することができる。式(D6)で表される構造単位のことを適宜「構造単位D6」という。
Figure 2021161118
式(D6)中、Vは置換されていてもよいアリーレン基を示し、Vの置換基は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3〜14のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数3〜14のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキニル基、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基であり、L7及びL8はそれぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜12のアラルキレン基を示し、sは0〜4の整数を示し、tは0〜4の整数を示す。
式(D6)中、s及びtはそれぞれ独立に0〜4の整数を示すが、耐熱性の観点から、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましい。また、成形加工性が良好になるガラス転移温度に調節するという観点、モノマー原料の合成が安価になるという観点から、s及びtはそれぞれ独立に0又は1であることが特に好ましい。
また、モノマー原料の合成容易性の観点から、構造単位D6は、下記式(D6−1)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
式(D6−1)中、Vは置換されてもよいフェニレン基又はナフチレン基であり、Vの置換基は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、sは0又は1を示し、tは0又は1を示す。
モノマー原料の合成容易性の観点、好ましい光学特性(具体的には、好ましい波長分散特性)に調節する観点から、構造単位D6は、下記式(D6−2)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
式(D6−2)中、R33は、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、sは0又は1を示し、tは0又は1を示す。
構造単位D6の具体例として、下記の構造単位が挙げられる。
Figure 2021161118
構造単位D6を有するポリカーボネート樹脂は、例えば、下記式(i)で表されるモノマーの重合等の方法により製造できる。
Figure 2021161118
ただし、式(i)中のV、L7、L8、s、tは、それぞれ、上記式(D6)中のV、L7、L8、s、tと同じである。式(i)で表されるモノマーの具体例としては下記のものが挙げられる。
Figure 2021161118
ポリカーボネート樹脂が、上記「構造単位D6」に由来する構造単位を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂を光学フィルムとして利用する際の波長分散特性を好ましいものとする観点から、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは45質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上、とりわけ好ましくは60質量%以上である。
該構造単位の含有割合が過度に少ないと、ポリカーボネート樹脂を光学フィルムとして利用する際の波長分散特性が好ましいものとならない場合がある。また、該構造単位の含有割合が過度に多いと、本発明のポリカーボネート樹脂を光学フィルムとして利用する際の、波長450nmで測定した位相差と波長550nmで測定した位相差との比が、過度に大きくなり光学特性が好ましいものとならない場合があるので、熱可塑性樹脂中の全てのジヒドロキシ化合物、全てのジカルボン酸化合物、全てのカーボネートに基づく熱可塑性樹脂の総質量に対し、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、87.5質量%以下であることがよりさらに好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。なお、光学フィルムの位相差比とは、波長450nmで測定した光学フィルムの位相差λ(450)と波長550nmで測定した光学フィルムの位相差λ(550)との比λ(450)/λ(550)のことである。
ポリカーボネート樹脂は、下記式(D7)で表される構造単位をさらに含有することができる。この場合には、ポリカーボネート樹脂の靱性及び耐熱性の向上や低吸水化が可能になる。また、式(D7)で表される構造単位の原料は、安価に入手可能である。式(D7)で表される構造単位のことを適宜「構造単位D7」という。
Figure 2021161118
式(D7)中、R1は直接結合、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜40のアルキレン基を示す。R2〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜14のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜14のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキニル基、置換基を有するケイ素原子、置換基を有するハロゲン原子、置換基を有するニトロ基、又は置換基を有するシアノ基を示す。L3及びL4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアラルキレン基を示す。oは0〜4の整数を示し、pは0〜4の整数を示す。
耐熱性と合成容易性の観点から、式(D7)におけるL3及びL4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。耐熱性と合成容易性の観点から、式(D7)におけるo及びpは、それぞれ独立に0又は1が好ましい。
合成容易性の観点から、式(D7)は、下記式(D7−1)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
式(D7−1)中、R1は直接結合、酸素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜40のアルキレン基を示す。R3、R4、R7、及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3〜14のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数3〜14のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキニル基、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示し、L3及びL4はそれぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、oは0又は1を示し、pは0又は1を示す。
対称構造を有するため、合成が容易になるという観点から、式(D7)は、下記式(D7−2)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
式(D7−2)中、R1は直接結合、酸素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜40のアルキレン基を示す。R4及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜14のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜14のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキニル基、置換基を有するケイ素原子、置換基を有するハロゲン原子、置換基を有するニトロ基、又は置換基を有するシアノ基を示す。L3及びL4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。oは0又は1を示し、pは0又は1を示す。
原料を安価に調達できるという観点、耐熱性が向上するという観点から、式(D7)は、下記式(D7−3)で表されることが好ましい。
Figure 2021161118
式(D7−3)中、R1は、直接結合、酸素原子、又は炭素数1〜40の置換されていてもよいアルキレン基を示す。R4は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、L3及びL4は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。oは0又は1を示し、pは0又は1を示す。
上記式(D7−3)中のL3又はL4のアルキレン基が長くなると耐熱性が下がる傾向にあるため、о及びpが0であること、又はо若しくはpが1であり、L3若しくはL4が炭素数1〜2のアルキレン基であることが好ましい。合成容易性の観点から、アルキレン基の炭素数は2であることがより好ましい。
高い耐熱性の観点からは、上記式(D7−3)中のR1は直接結合、又は酸素原子であることが好ましい。合成容易性と高い靭性に調節する観点からは、上記式(D7−3)中のR1はメチレン基、炭素数2〜40のアルキルメチレン基、炭素数3〜40のジアルキルメチレン基であることが好ましく、炭素数2〜40のアルキルメチレン基であることがより好ましい。
耐熱性の観点からは、上記式(D7−3)におけるR1はメチレン基を有することがより好ましい。合成容易性と靭性の向上が可能になるという観点からは、上記式(D7−3)におけるR1は、炭素数2〜40のアルキルメチレン基であることがより好ましい。原料をより安価に調達できるという観点からは、アルキルメチレン基の炭素数は2〜4であることが好ましい。靭性のさらなる向上の観点からは、アルキルメチレン基の炭素数は3以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。耐熱性のさらなる向上の観点から、アルキルメチレン基の炭素数は40以下が好ましく、炭素数30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。靭性向上と耐熱性のバランスの観点からは、アルキルメチレン基の炭素数は7〜15が好ましい。
熱安定性の観点から、式(D7−3)におけるR1は炭素数3〜40のジアルキルメチレン基であることが好ましい。靭性の観点から、ジアルキルメチレン基の炭素数は5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。耐熱性の観点から、ジアルキルメチレン基の炭素数は40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。合成容易性の観点からは、ジアルキルメチレン基の炭素数は3〜10が好ましい。
耐熱性の観点からは、式(D7−3)におけるR4は水素原子であることが好ましい。また、原料を安価に調達できるという観点、靭性の観点からは、式(D7−3)におけるR4はメチル基であることが好ましい。
高い耐熱性の観点から、式(D7−3)におけるo及びpは0であることが好ましい。また、靭性の観点から、式(D7−3)におけるo及びpは1であることが好ましい。
式(A8)の具体例としては、下記の構造群のうちのいずれかの構造が挙げられる。
Figure 2021161118
構造単位D7を有するポリカーボネート樹脂は、例えば、下記式(g)で表されるモノマーの重合により製造される。
Figure 2021161118
式(g)中のR1〜R9、L3、L4、o及びpはそれぞれ上記式(D7)中のR1〜R9、L3、L4、o及びpと同じである。式(g)で表されるモノマーの具体例としては下記のものが挙げられる。
Figure 2021161118
ポリカーボネート樹脂の耐湿熱性や靭性が向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全てのジヒドロキシ化合物、全てのカーボネートに基づくポリカーボネート樹脂の総質量に対し、構造単位(D7)の含有割合は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上がよりさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましい。また、耐候性を高める観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全てのジヒドロキシ化合物、全てのカーボネートに基づくポリカーボネート樹脂の総質量に対し、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がよりさらに好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
[熱可塑性樹脂の製造方法]
ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂は、一般的な重合方法により製造される。
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造される。具体的には、ホスゲンを用いた溶液重合法、モノマー原料と炭酸ジエステルとを反応させる溶融重合法が挙げられる。これらのいずれの方法でもよいが、重合触媒の存在下に、原料モノマー(具体的にはジヒドロキシ化合物)を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
炭酸ジエステルとしては、下記式(o)で表されるものを用いることができる。
Figure 2021161118
式(o)において、E5およびE6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜炭素数18の脂肪族基、または置換基を有していてもよい炭素数6〜炭素数12の芳香族基である。
式(o)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネートが例示される。また、式(o)で表される炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等が例示される。好ましくは、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートである。炭酸ジエステルとしては、1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
また、炭酸ジエステルは、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換されていてもよい。全炭酸ジエステル量の内、置換された炭酸ジエステルの量は、好ましくは50mol%以下であり、より好ましくは30mol%以下である。ジカルボン酸、ジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。また、前記構造(A6)、(A7)を導入するための原料ジカルボン酸化合物を用いることもできる。このようなジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネート樹脂が得られる。
反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの使用量は、モル比で、0.90〜1.10であることが好ましく、0.96〜1.04であることがより好ましい。炭酸ジエステルの使用量が0.90より小さくなると、ポリカーボネート樹脂の末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化したり、所望する高分子量体が得られなくなるおそれがある。一方、炭酸ジエステルの使用量が1.10を超えると、同一重合条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂の製造が困難となったりするばかりか、ポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加するおそれがある。残存炭酸ジエステルは、成形時、または成形品の臭気の原因となる。
原料ジヒドロキシ化合物としては、構造単位A1を導入するためのジヒドロキシ化合物と、必要に応じて添加される他の構造単位を導入するためのジヒドロキシ化合物が用いられる。これらのジヒドロキシ化合物の配合割合は、上記のように、所望の物性、特性が得られるように適宜調整することができる。
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。好ましくは、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが好ましい。
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム等が挙げられる。また、ナトリウム、カリウム、リチウム、又はセシウムのアルコレート;フェノレートの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩;ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等も挙げられる。
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物としては、1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
塩基性ホウ素化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等の金属塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、及びアミノキノリン等が挙げられる。
上述の塩基性化合物としては、1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
重合触媒として、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物を用いる場合、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1molに対する重合触媒の使用量は、金属換算量で、通常、0.1〜500μmolであり、好ましくは0.5〜300μmolであり、より好ましくは1〜250μmolである。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られなくなるおそれがある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、ポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、副生成物が発生して流動性が低下したり、ゲルの発生が多くったりするおそれがある。その結果、所望の品質のポリカーボネート樹脂の製造が困難になる。
ポリカーボネート樹脂の製造に当たり、各種の原料ジヒドロキシ化合物は、固体として供給してもよいし、加熱して溶融状態として供給してもよいし、水に可溶なものであれば、水溶液として供給してもよい。原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
原料ジヒドロキシ化合物を重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降反応は、第1段目から圧力を徐々に下げながら反応温度を上げていき、発生するフェノールを反応系外へ除きながら行われる。最終的には反応系の圧力200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
重縮合反応における減圧では、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが好ましい。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのmol比が不適切になり、重合度が低下するおそれがある。
具体的には、ジヒドロキシ化合物として、例えば、式(24)で表される化合物などの式(P1)で表されるジヒドロキシ化合物の他、イソソルビド、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合であって、全ジヒドロキシ化合物に対する1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用割合がmol比で50mol%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなる。そのため、減圧しながら反応系内の圧力が13kPa程度までは、昇温速度40℃/h以下で昇温させながら重縮合反応を行い、さらに6.67kPa程度までの圧力下で、昇温速度40℃/h以下で昇温させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200から250℃の温度で重縮合反応を行うことが好ましい。この場合には、十分に重合度が高いポリカーボネート樹脂が得られる。
また、全ジヒドロキシ化合物に対する1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用割合がmol比で50mol%未満の場合には急激な粘度上昇が起こり易くなり、30mol%以下の場合には尚更である。そのため、減圧下しながら反応系内の圧力が13kPa程度までは、昇温速度40℃/h以下で昇温させながら重縮合反応を行い、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、昇温速度40℃/h以上で昇温させながら反応を行い、最終的に200Pa以下の減圧下、220℃から290℃の温度で重縮合反応を行うことが好ましい。この場合には、十分に重合度が高いポリカーボネート樹脂が得られる。なお、上述の6.67kPa程度までの圧力下での昇温は、昇温速度50℃/hで行うことがより好ましい。
反応は、バッチ式で行うことも、連続式で行うこともできる。また、バッチ式と連続式とを組み合わせてもよい。
ポリカーボネート樹脂を溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物、亜リン酸化合物、リン酸の金属塩、亜リン酸の金属塩を重合時に添加することができる。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルが好適である。リン酸化合物としては、1種の化合物、又は2種以上の化合物を用いることができる。リン酸化合物の添加量は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001mol%以上0.005mol%以下であることが好ましく、0.0003mol%以上0.003mol%以下であることがより好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さくなる。また、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、添加によりかえって着色が促進されたり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
亜リン酸化合物としては、熱安定剤として用いられる下記の化合物を用いることができる。具体的には、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。亜リン酸化合物としては、1種または2種以上の化合物が用いられる。
亜リン酸化合物の添加量は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001mol%以上0.005mol%以下であることが好ましく、0.0003mol%以上0.003mol%以下であることがより好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さくなる。上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、添加によりかえって着色が促進されたり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
リン酸化合物とその金属塩、あるいは亜リン酸化合物とその金属塩とを併用することができる。この場合には、これらの化合物、金属塩の総添加量が、全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001mol%以上0.005mol%以下であることが好ましく、0.0003mol%以上0.003mol%以下であることがより好ましい。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さくなる。また上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、添加によりかえって着色が促進されたり、耐熱性が低下するおそれがある。
なお、リン酸化合物の金属塩、亜リン酸化合物の金属塩としては、アルカリ金属塩、亜鉛塩が好ましく、亜鉛塩がより好ましい。このリン酸亜鉛塩の中でも、長鎖アルキルリン酸亜鉛塩が好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
かかる熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
これらのなかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが、好ましく使用される。
熱安定剤としては、1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
熱安定剤は、溶融重合時に添加した後、さらに追加して添加することができる。
即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合してポリカーボネート樹脂を得た後に、さらに亜リン酸化合物などの熱安定剤を追加して配合してもよい。この場合には、ポリカーボネート樹脂の色相の悪化をより防止することができる。
熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.0001〜1質量部が好ましく、0.0005〜0.5質量部がより好ましく、0.001〜0.2質量部がさらに好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物]
ポリカーボネート樹脂には、各種添加剤を添加し、脂組成物を得ることができる。
ポリカーボネート樹脂には、酸化防止剤を配合することができる。この場合には、ポリカーボネート樹脂の酸化を防止することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。酸化防止剤としては、1種または2種以上の化合物を用いることができる
酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部が好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂には、離型剤を配合することができる。この場合には、溶融成形時の金型からの離型性が向上する。
離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
これらのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
これらの離型剤は、1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
離型剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂には、光安定剤を配合することができる。
光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
光安定剤としては、1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
光安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂には、黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。入手容易であるとい観点から、アンスラキノン系染料が好ましい。
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725;、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]、一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solvent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]、一般名Solvent Blue45[CA.No61110]が代表例として挙げられる。
ブルーイング剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブルーイング剤の配合量は、通常、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.1×10-4〜2×10-4質量部である。
ポリカーボネート樹脂と、他の熱可塑性樹脂等の異種材料樹脂とをブレンドして使用してもよい。光学性能が良好で、射出成型ができる傾向があるという観点から、他の熱可塑性樹脂を共存在させることが好ましい。共存在させる他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、重縮合系ポリマー、オレフィン系ポリマー、又は付加重合系ポリマーが挙げられ、重縮合系ポリマーが好ましい。
より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマーや、重縮合系ポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と他の熱可塑性樹脂とは相溶性を有するものが好ましい。この場合には、熱可塑性樹脂が優れた透明性を示す場合に、その透明性の低下を防ぐことができる。
上述のブレンドにより得られる樹脂組成物は、重合体として、構造単位B1を少なくとも有する重合体と、この重合体とは異なる他の重合体とを共存在させた重合体共存在物である。この方法において、上記一般式(B1)で表される2価の構造単位は、機械特性と耐熱性、光学特性でバランスを取ることができる範囲内であれば、前記樹脂組成物中に任意のモル分率で含まれていてよく、上記一般式(B1)で表される2価の構造単位は、得られる樹脂の表面硬度を向上、または光弾性係数を低減する観点から、樹脂組成物中に含まれる全ての構造単位の合計モル量に対し、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上がよりさらに好ましく、37.5モル%以上が特に好ましい。構造単位(B1)の含有割合は最大で50モル%である。
同様の観点から、構造単位(B1)の含有割合は、樹脂組成物中に含まれる全ての構造単位の総質量に対し、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上がよりさらに好ましく、75質量%以上が特に好ましい。
一方で、得られる樹脂の耐湿熱性とフィルム強度の両立の観点から、構造単位(B1)の含有割合は、樹脂組成物中に含まれる全ての構造単位の合計モル量に対し、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上がさらに好ましく、4モル%以上がよりさらに好ましく、5モル%以上が特に好ましい。また、50モル%以下が好ましく、37.5モル%以下がより好ましく、25モル%以下がさらに好ましく、20モル%以下がよりさらに好ましく、15モル%以下が特に好ましい。
同様の観点から、構造単位(B1)の含有割合は、樹脂組成物中に含まれる全ての構造単位の総質量に対し、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がよりさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がよりさらに好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
<ポリエステルカーボネート樹脂>
ポリエステルカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造される。その製造方法を以下に説明する。
_重合に用いる炭酸ジエステルの一部をジカルボン酸化合物と置換することでポリエステルカーボネートが得られる。前記ジカルボン酸化合物は、上記一般式(P1)のB1、B2がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、酸ハライド基で表されるジカルボン酸化合物、及び/又は、上記一般式(j2)で表されるジカルボン酸化合物を示す。その他のカルボキシ基を有する化合物としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができ、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。得られたポリエステルカーボネートの耐熱性や光弾性係数の低減の観点から、脂環式ジカルボン酸が好ましく、特には取扱いや入手のし易さから、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。これらのジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとして前記ポリエステルカーボネートの原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
前記ポリエステルカーボネートにおいて、ジカルボン酸化合物に由来する構造単位の含有比率は、全ジヒドロキシ化合物と全カルボン酸化合物に由来する構造単位の合計を100モル%とした場合に、45モル%以下であり、好ましくは30モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。ジカルボン酸化合物に由来する構造単位の含有比率が上記上限値よりも多くなると、重合性が低下し、所望とする分子量まで重合が進行しなくなることがある。
ポリエステルカーボネート樹脂には、添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、上述のポリカーボネート樹脂と同様のものを使用することができる。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造される。その製造方法を以下に説明する。
重合に用いる炭酸ジエステルを上記一般式(P1)のB1、B2がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、酸ハライド基で表されるジカルボン酸化合物、及び/又は、上記一般式(j2)で表されるジカルボン酸化合物と置換し、ジヒドロキシ化合物は<ポリカーボネート樹脂>記載の化合物を用いる等の方法により、ポリエステルが得られる。また、好ましいジカルボン酸、重合触媒、重合条件等は<ポリカーボネート樹脂>、<ポリエステルカーボネート樹脂>記載の方法と同じである。
ポリエステル樹脂には、添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、上述のポリカーボネート樹脂と同様のものを使用することができる。
ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂と上述のような各種の添加剤との混合方法としては、例えば、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法がある。また、混合方法としては、各成分を例えば、塩化メチレンなどの共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法などもある。混合方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
熱可塑性樹脂、これに添加剤等が添加された熱可塑性樹脂組成物は、そのまま成形してもよいし、溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、成形することもできる。成形は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で行われる。
熱可塑性樹脂の混和性を高めて安定した離型性や各物性を得るためには、溶融押出に単軸押出機、二軸押出機を使用することが好ましい。この場合に、溶剤等の使用を避けることができるため、環境への負荷を小さくすることができ、さらに生産性の向上か可能になる。
溶融混練温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度に依存する。例えば、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が90℃より低い場合は、押出機の溶融混練温度は通常130℃〜250℃であり、好ましくは150℃〜240℃である。溶融混練温度が130℃より低い場合には、熱可塑性樹脂の溶融粘度が高くなり、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下するおそれがある。一方、250℃より高い場合には、熱可塑性樹脂の溶融粘度が低くなり、ペレットを得ることが困難になる。その結果、生産性が低下するおそれがある。
また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が90℃以上の場合は、溶融混練温度は、通常200℃〜300℃であり、好ましくは220℃〜260℃である。溶融混練温度が200℃より低い場合には、熱可塑性樹脂の溶融粘度が高くなり、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下するおそれがある。一方、300℃より高い場合には、熱可塑性樹脂の劣化が起こりやすくなるおそれがある。具体的には、熱可塑性樹脂の色が黄変したり、分子量が低下するため強度が劣化したりするおそれがある。
押出機を使用する場合には、押出時に熱可塑性樹脂の焼け、異物の混入を防止するため、フィルタを設置することが好ましい。フィルタの目開き(具体的には、除去する異物の大きさ)は、熱可塑性樹脂の用途、物性、特性に依存するが、100μm以下が好ましい。異物の混入を特に避ける必要がある場合には、フィルタの目開きは40μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂の押出は、クリーンルーム中で実施することが好ましい。この場合には、押出後の熱可塑性樹脂に異物が混入することを防止することができる。
また、押出された熱可塑性樹脂を冷却することにより、チップ化する場合には、空冷、水冷等により冷却を行うことが好ましい。空冷の場合には、ヘパフィルタ等で異物を事前に取り除いた空気を使用することが好ましい。この場合には、空気中の異物が再付着することを防ぐことができる。水冷の場合には、イオン交換樹脂等により金属成分を取り除き、フィルタにて異物を取り除いた水を使用することが好ましい。フィルタの目開きは、適宜選択可能であるが、0.45〜10μmであることが好ましい。
熱可塑性樹脂の物性、特性は、所望の用途に応じて調整することができる。
<熱可塑性樹脂のガラス転移温度>
耐熱性を高めるという観点から、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましく、115℃以上であることがさらにより好ましく、特に好ましくは125℃以上である。ガラス転移温度を高めて耐熱性を向上させるという点で、少なくとも一方の末端がヒドロキシ基ではない熱可塑性樹脂が好ましい。一方、ガラス転移温度が高すぎる場合には、押出時の剪断発熱によって熱可塑性樹脂の劣化を招くおそれがある。また、この場合には、フィルタでの濾過の際に、溶融粘度が高くなりすぎて、熱可塑性樹脂の劣化を招くおそれがある。したがって、ガラス転移開始温度Tgは、好ましくは260℃以下、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは180℃以下である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、製造時に使用するモノマーの種類、その配合割合を調整したり、重合温度を調整したり、添加剤の添加量を調整することにより、上記範囲に調整される。
ガラス転移温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移開始温度として測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば実施例に記載の方法で測定される。
<飽和吸水率>
熱可塑性樹脂の飽和吸水率が高いと、高湿度下で樹脂の物性が変化するため、成形品の信頼性が低下するおそれがある。したがって、飽和吸水率は4wt%以下が好ましく、3.5wt%以下がより好ましく、3wt%以下がさらに好ましく、2.7wt%以下がさらにより好ましく、2.5wt%以下が特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂の飽和吸水率は、例えば実施例に記載の方法で測定される。熱可塑性樹脂の飽和吸水率は、製造時に使用するモノマーの種類、その配合割合を調整したり、重合温度を調整したり、添加剤の添加量を調整することにより、上記範囲に調整される。
<沸騰水試験>
樹脂の耐湿熱性は、沸騰水試験による変形の有無で評価することができる。熱可塑性樹脂の沸騰水試験は、例えば実施例に記載の方法で実施される。
<還元粘度>
樹脂の重合度(具体的には、分子量)は、一定以上高くなれば還元粘度で表すことができる。比較的低重合度(分子量)で利用されるポリカーボネートジオール等の例外を除き、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂の重合度(具体的には、分子量)は、還元粘度により測定される。還元粘度は、次のようにして測定される。まず、フェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンとの重量比1:1の混合溶媒を用いて樹脂濃度を1.00g/dlに精密に調整した試料を作成する。次いで、温度30.0℃±0.1℃で試料の還元粘度を測定する。
熱可塑性樹脂の還元粘度が低すぎる場合には、成形後に得られる成形品の耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、機械強度等の特性が低下するおそれがある。したがって、還元粘度は、0.20dL/g以上であることが好ましく、0.30dL/g以上であることがより好ましい。一方、還元粘度が高すぎる場合には、成形時の樹脂の流動性が低下し、生産性や成形性が低下したり、成形品の歪みが大きくなったりするおそれがある。したがって、還元粘度は、1.50dL/g以下であることが好ましく、1.20dL/g以下であることがより好ましく、1.00dL/g以下であることがさらに好ましく、0.90dL/g以下であることがさらにより好ましい。なお、熱可塑性樹脂の還元粘度は、例えば実施例に記載の方法で測定される。熱可塑性樹脂の還元粘度は、製造時に使用するモノマーの種類、その配合割合を調整したり、重合温度を調整したり、添加剤の添加量を調整することにより、上記範囲に調整される。
<折曲げ試験>
熱可塑性樹脂の靭性は、例えば折り曲げ試験で評価される。この試験により破断する場合には、成形品が脆くなるおそれがある。なお、折曲げ試験は、より具体的には、実施例に記載の方法で実施される。
<シャルピー衝撃試験>
ポリカーボネート樹脂の靭性は、例えばシャルピー衝撃試験で評価される。このシャルピー衝撃強度が低いと成形品が脆くなるおそれがある。そのため、ノッチ先端半径が0.25Rの試験片を用い、ISO179(2000年)に準拠して室温(23℃)で行った測定にて、シャルピー衝撃試験の値は1kJ/m2以上であることが好ましく、2kJ/m2以上であることがより好ましく、3kJ/m2以上であることがさらに好ましい。同様に、低温(−23℃)で行った測定にて、シャルピー衝撃試験の値は1kJ/m2以上であることが好ましく、2kJ/m2以上であることがより好ましく、3kJ/m2以上であることがさらに好ましい。室温(23℃)及び低温(−23℃)で測定したシャルピー衝撃試験の値がいずれも3kJ/m2以上であることが最も好ましい。なお、シャルピー衝撃試験は、より具体的には、実施例に記載の方法で実施される。ポリカーボネート樹脂のシャルピー衝撃強度は、製造時に使用するモノマーの種類、その配合割合を調整したり、重合温度を調整したり、添加剤の添加量を調整することにより、上記範囲に調整される。
<鉛筆硬度>
熱可塑性樹脂の硬度が低いと、成形品が傷付きやすいものとなる。熱可塑性樹脂の鉛筆硬度は、B以上が好ましく、F以上がより好ましい。成形品の耐傷つき性をより高めるという観点から、熱可塑性樹脂の鉛筆硬度はH以上であることが更に好ましい。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験にて測定される。なお、鉛筆硬度は、より具体的には、実施例に記載される方法で測定される。熱可塑性樹脂の鉛筆硬度は、製造時に使用するモノマーの種類、その配合割合を調整したり、重合温度を調整したり、添加剤の添加量を調整することにより、上記範囲に調整される。
<光弾性係数>
カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の光弾性係数が高いと、応力により位相差が生じ、光学的に信頼性が低いものとなる。カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の光弾性係数は、18×10−12Pa−1以下が好ましく、15×10−12Pa−1以下がより好ましく、12×10−12Pa−1以下がさらに好ましく、9×10−12Pa−1以下がよりさらに好ましく、4×10−12Pa−1以下が特に好ましく、0以上であることが好ましい。また、光弾性係数が負の樹脂は、ブレンドにより他の樹脂の光弾性係数を低減することができる観点で、光弾性係数が負であることが好ましい。
<モノマーの5%熱重量減少温度(Td5)>
重合性脂環式化合物をポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を製造するにあたり、量比を合わせる観点からモノマーのTd5が高い方が望ましい。具体的には5%熱重量減少温度(Td5)が150℃以下であるとポリカーボネートを溶融重合する際の高真空条件では熱分解してしまい、モル比がずれ、所望とする分子量が得られなくなってしまうので好ましくない。一方で、Td5は170℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、210℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましい。
<熱可塑性樹脂の5%熱重量減少温度(Td5)>
カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の5%熱重量減少温度が高いと、熱分解しにくいものとなる。カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の5%熱重量減少温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、特に好ましくは300℃以上である。なお、5%熱重量減少温度は、具体的には、実施例に記載される方法で測定される。
[熱可塑性樹脂組成物]
熱可塑性樹脂を、他の合成樹脂、生分解性樹脂、ゴムなどと共に混練して、ポリマーアロイ等の熱可塑性樹脂組成物として使用することができる。合成樹脂、生分解性樹脂、ゴムとしては、1種以上の樹脂、ゴムを使用することができる。合成樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(つまり、ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(つまり、AS、SAN)などを用いることができる。生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどを用いることができる。
熱可塑性樹脂に、上述の他の樹脂と共に、さらに核剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、発泡剤、染顔料等の添加剤を添加し、熱可塑性樹脂組成物を作製することができる。このような添加剤としては、熱可塑性樹脂組成物に一般に用いられるものが使用される。
[熱可塑性樹脂の成形方法]
熱可塑性樹脂、これを含む樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形される。成形により、成形品が得られる。このようにして、例えば、耐熱性、透明性、耐光性、耐候性、機械強度等の特性に優れた成形品を得ることが可能になる。
[カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の用途]
カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂は、フィルム、シート、ボトル、種々の構造材料、光学部材等の用途に好適である。また、構造単位A1を少なくとも含有するポリカーボネート樹脂は、機械強度と、耐湿熱性に優れるため、柔軟性、表面硬度、耐湿熱性等が必要であるフィルム、シート、ボトル、容器分野、種々の構造材料、自動車用部品、ガラス代替材料、射出成型材料等の用途に好適である。また、構造単位A1を少なくとも含有する熱可塑性樹脂は、光弾性係数が低いという理由から、光学的な信頼性に優れると考えられる。したがって、このようなカーボネート結合を有する熱可塑性樹脂は、液晶や有機ELなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルム等に用いられる光学フィルム、光ディスク、色素や電荷移動剤等を固定化するバインダー、カメラ、ファインダー、CCDやCMOS等に用いられるレンズ等の用途にも好適である。
[効果を奏する理由]
構造単位A1を含む、カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂は、上記のごとく縮合環を有し、新規なものである。このようなカーボネート結合を有する熱可塑性樹脂は、非平面構造のシクロブタン骨格を有し、このシクロブタン骨格を挟む2つの環構造を有している。
シクロブタン構造を含む縮合環構造は、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造を含む縮合環構造と比較しても歪みが大きく、非常に剛直な骨格であるため、得られる樹脂は高い耐熱性や表面硬度を示し、応力をかけても局所的な構造変化がほとんど起こらないため、重要な光学特性の一つである光弾性係数が低いという優れた効果を示す。一方で、剛直で高耐熱性を示す構造は、一般的に降伏応力が高くなり、脆い材料となる傾向がある。しかしながら驚くべきことに、このシクロブタン構造を含む縮合環構造は剛直な骨格であるにも関わらず、得られたポリカーボネート樹脂の靭性は良好であった。
一般的に樹脂における主鎖の単位体積当たりの絡み合い数が多い方が脆性破壊を起こしづらいことが知られており、ポリスチレンなどといった側鎖に嵩高い置換基を有するポリマーは分子量あたりの主鎖長が短くなるために、主鎖の単位体積当たりの絡み合い数が減少し、脆性破壊を起こしやすい。同様の理由で、側鎖に嵩高い置換基を持つDMNDMを用いたポリカーボネート樹脂は本願発明者らの検討で高い耐熱性を有するものの、非常に脆いことがわかった。一方シクロブタン構造は樹脂中において立体的に占有する体積が小さく、主鎖の絡み合い数を損なわないため、この縮合環を有するポリカーボネート樹脂は、靭性を保持したまま、高い耐熱性や表面硬度を発現する。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、特に記載のない場合、「%」は「質量%」を示す。
[評価方法]
熱可塑性樹脂組成物及び成形品の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)プレスフィルム作成
ポリカーボネート樹脂のペレットを90℃で5時間以上、真空乾燥した。外側の幅が縦10cm横10cm厚さ0.5mmの金属板(SUS)を1cmの幅を残して内側の幅が縦8cm、横8cmをくりぬいたスペーサーを用意した。このスペーサーを2枚の鏡面加工した縦10cm横10cm厚さ1.5mmのSUS板の間に挟み、スペーサーの枠内にペレット約4gをのせて熱プレスを行った。熱プレス温度は、200〜230℃であり、予熱時間は5−7分であり、成形時の圧力は40MPaで行った。成形時の加圧時間は1分間である。熱プレス後、鏡面板とスペーサーごとシート状の試料を取り出し、水管冷却式プレスで、圧力20MPaで3分間加圧冷却した。厚さ400から500μmのフィルムを作製した。
(2)ガラス転移温度Tg
ガラス転移温度は、エスアイアイナノテクノロジー社製の示差走査熱量計「EXSTAR 6220」を用いて測定した。JISK7121:1987に準拠して測定した。具体的には、昇温速度10℃/minで測定試料約10mgを加熱し、250℃まで昇温したサンプルを液体窒素で急冷し、再度昇温速度10℃/min250℃まで昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより低温側のベースラインと高温側のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる温度から、中間点ガラス転移開始温度を求める。この中間点ガラス転移開始温度をガラス転移温度Tgとして扱う。
(3)還元粘度
溶媒を用いてポリカーボネート樹脂を溶解させ濃度1.00g/dlのポリカーボネート溶液を作製した。溶媒としては、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用いた。フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合比は、質量比で1:1である。混合溶媒への溶解は、110℃で攪拌しながら、30分かけて行い、冷却後のポリカーボネート溶液を還元粘度の測定に用いた。還元粘度の測定は、中央理化社製のウベローデ型粘度計「DT−504型自動粘度計」を用い、温度30.0℃±0.1℃で行った。溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tとから、次式(α)により相対粘度ηrelを算出し、相対粘度ηrelから次式(β)より比粘度ηsp(単位:g・cm-1・sec-1)を算出した。なお、式(β)中のη0は溶媒の粘度である。そして、比粘度ηspをポリカーボネート溶液の濃度c(g/dL)で割って、還元粘度η(η=ηsp/c)を算出した。この値が高いほど、分子量が大きいことを意味する。
ηrel=t/t0 ・・・(α)
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1 ・・・(β)
(4)飽和吸水率
(1)の方法で作成したフィルムを縦約40mm、横約40mmの形に切り出して、測定試料を作製した。測定試験片(フィルム)を真空乾燥機で90℃真空下5時間以上乾燥させたのち、真空を保ったまま、室温まで冷却した。乾燥空気を導入して、常圧まで戻し、手早く、測定試験片(フィルム)の乾燥重量W0を測定した。
測定試験片(フィルム)を室温(23℃)純水500ccに浸漬して、144時間放置した。144時間後に測定試験片(フィルム)を取り出し、測定試験片(フィルム)に表面に付着した水分を布でふき取ったのち、素早く吸水後の重量W1を測定した。以下の式で飽和吸水率を算出した。
飽和吸水率(%)=((W1−W0)/W0)×100
(5)沸騰水試験(耐湿熱性の評価)
(1)の方法で作成したフィルムを縦約40mm、横約40mmの形に切り出して、測定試料を作製した。
試験片(フィルム)を100℃に加熱した水槽の中に網かごに入れて浸漬し、3時間放置した。3時間経過後、網かごを取り出し、冷却後、試験片の外観の観察を行った。試験片(フィルム)が変形していないものを合格(○)、変形があるものを不合格(×)とした。
(6)シャルピー衝撃試験
ポリカーボネート樹脂のペレットを90℃で5時間以上、真空乾燥した。次いで、レオ・ラボ(株)製のMicro15ccTwinScrewCompounderを使用して、窒素雰囲気下、240℃にて3分間(180秒)溶融させたのち、金型温度70℃、シリンダー温度240℃にて射出成形し、機械特性試験用ISO試験片を得た。得られた試験片についてISO179(2000年)に準拠してノッチ付シャルピー衝撃試験を実施し、ノッチ付シャルピー衝撃強度を得た。本試験では、ノッチ先端半径が0.25Rの試験片を用いて測定した。シャルピー衝撃試験は、室温(23℃)、低温(−20℃)で行った。
(7)折り曲げ試験
(1)の方法で作成したフィルムから幅5mm、長さ20mmに試験片を切り出した。試験片の両端をもって折り曲げた時に、折り曲げられたものを○、割れたものを×とした。
(8)鉛筆硬度
(1)の方法で作成したフィルムを用いて、鉛筆硬度試験機(株式会社マイズ試験機社製、No.601−B)により、JIS K5600−5−4:1999に準拠して、鉛筆硬度を測定した。条件としては荷重750g、測定スピード60mm/minで行った。
(9)光弾性係数
<サンプル作製>
(1)の方法で作成したフィルムから幅5mm、長さ20mmにサンプルを切り出した。<測定>
He−Neレーザー、偏光子、補償板、検光子、及び光検出器からなる複屈折測定装置と振動型粘弾性測定装置(UBM社製)を組み合わせた装置を用いて測定した(詳細は、日本レオロジー学会誌Vol.19,p93−97(1991)を参照)。切り出したサンプルを粘弾性測定装置に固定し、25℃の室温で貯蔵弾性率E’を周波数96Hzにて測定した。同時に、出射されたレーザー光を偏光子、試料、補償板、検光子の順に通し、光検出器(フォトダイオード)で拾い、ロックインアンプを通して角周波数ω又は2ωの波形について、その振幅とひずみに対する位相差を求め、ひずみ光学係数O’を求めた。このとき、偏光子と検光子の方向は直交し、またそれぞれ、試料の伸長方向に対してπ/4の角度をなすように調整した。光弾性係数Cは、貯蔵弾性率E’とひずみ光学係数O’を用いて次式より求めた。
C=O’/E’
(10)5%熱重量減少温度(Td5)
エスアイアイナノテクノロジー社製TG/DTA7200を用い、試料約10mgを容器に載せ、窒素雰囲気下(窒素流量50ml/分)で昇温速度10℃/分で40℃から500℃まで測定し、5%重量が減少した際の温度(Td5)を求めた。この温度が高いほど、熱分解しにくい。
(12)NMR(核磁気共鳴)
実施例1−1〜1−5の樹脂のNMRは、次のようにして測定した。外径5mmのNMR試料管に試料約30mgを入れ、重クロロホルム(0.03v/v%テトラメチルシラン含有)0.7mlに溶解した。Bruker社製「AVANCE III 950」にて、共鳴周波数950.3MHz、フリップ角30°、測定温度25℃にて、H−NMRを測定した。なお、製造例における化合物のNMRは、装置をJEOL社製「ECZ400S」に変更し、周波数を400MHzに変更した点を除き、上述の実施例の樹脂と同様の方法で測定される。
<製造例1>
(1)ペンタシクロペンタデカ−3(5),4(6)−ジエンの合成(N3,N4)
窒素雰囲気下で、シクロペンタジエン(200g、3.03mol)、トリス−p−トリルホスフィン(41g、136mmol)、酢酸(550mL)、アセトニトリル(250mL)、Pd(dba)2(26g、45.4mmol)をオートクレーブに加え、100℃で3時間オートクレーブ内を撹拌した。オートクレーブ内の反応液に水(2000mL)加え、石油エーテル(1500mL)を加えて抽出を3回繰り返し行った。次いで、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィにより精製を行った。これにより、ペンタシクロペンタデカ−3(5),4(6)−ジエンを110g取得した。なお、1H NMR分析により、ペンタシクロペンタデカ−3(5),4(6)−ジエンが得られていることを確認している。その分析結果は次の通りである。
Figure 2021161118
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ= 5.70−5.75(m, 2H), 5.63−5.70(m, 2H), 5.54(dd, J= 5.6, 2.0 Hz, 2H), 5.37−5.45(m, 2H), 2.97(dqt, J=10.4, 5.2, 5.2, 5.2, 2.4, 2.4 Hz, 2H), 2.74(br, J=3.2 Hz, 1H), 2.63−2.69(m, 1H), 2.53−2.63(m, 2H), 2.46−2.53(m, 2H), 2.14−2.28(m, 6H), 2.12(td, J= 4.8, 2.4 Hz, 6H), 1.99−2.06(m, 2H), 1.94(br, J= 6.4 Hz, 1H), 1.78−1.88(m, 2H), 1.67−1.73(m, 1H), 1.46(tt, J= 2.4, 1.2 Hz, 1H) 1.44(dt, J= 3.6, 1.2 Hz, 1H)
(2)化合物(N5)の合成
内容積300mLのステンレス製オートクレーブ(つまり、反応器)に、ペンタシクロペンタデカ−3(5),4(6)−ジエン 45.7g(230mmol)、Rh(acac)(CO)2 0.12g(0.47mmol)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト 1.37g(2.1mmol)、メチルシクロヘキサン 145mLを仕込み、反応器を密閉した。反応器内部を窒素で置換した後、水性ガス(具体的には、モル比でCO/H2=1/1の混合ガス)で置換し、さらに水性ガスを反応器内の内圧が1MPaとなるまで充填した。反応器の内容物を加熱、撹拌して内温を70℃とし、水性ガスを内圧が5MPaとなるまで圧入した。反応で消費された水性ガスは畜圧器から圧力調整器を経由して連続的に供給し、内圧を5MPaに維持しながら70℃で6時間反応を行った。
回収した反応液をメタノールと水との混合液100mlにより4回抽出した。混合液の配合割合は、体積比でメタノール/水=4/1である。回収したメタノールを含む水溶液からメタノールを減圧留去し、水相を得た。水相をトルエン100mLで3回抽出した。トルエン溶液を無水Na2SO4上で脱水して乾燥剤をろ別し、ろ液を濃縮して淡黄色油状物を得た。1H NMRからこの油状物が化合物(N5)であることを確認した。化合物(N5)の収量は58.0g(224 mmol)であり、収率は97.6%であった。なお、1H NMR分析により、化合物(N5)が得られていることを確認している。その分析結果は次の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ= 9.9−9.4(m, 2H), 3.2−3.0(m, 0.5H), 2.7−2.35(m, 4H), 2.3−1.9(m, 3.5H), 1.9−1.3(m, 10H)
Figure 2021161118
(3)化合物(P4−1)の合成
水素添加反応により、化合物(N5)から化合物(P4−1)を製造した。具体的には、まず、内容積300mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(N5) 70.6g(274mmol)、Ru/C 2.6g(Ruとして0.13g、1.2mmol)、メタノール 100mLを仕込み、反応器を密封した。反応器内部を窒素で置換した後、水素で置換し、内圧が1MPaとなるまで反応器内に水素をさらに充填した。反応器の内容物を加熱、撹拌して内温を90℃とし、内圧が8MPaとなるまで水素を圧入した。反応で消費された水素は畜圧器から圧力調整器を経由して連続的に供給し、内圧を8MPaに維持しながら100℃で12時間反応を行った。反応液をセライトろ過して触媒を除去し、ろ液をエバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィ(充填剤:シリカゲル、溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1(ただし、体積比))で精製し、淡黄色油状物を得た。1H NMR、GC−MSによる分析結果から、油状物が化合物(P4−1)の異性体混合物であることを確認した。化合物(P4−1)の収量は、19.0g(72mmol)であり、収率は26.3%であった。なお、化合物(P4−1)を適宜「DA13」という。
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ=3.8−3.2(m, 4H), 2.7−2.2(m, 2H), 2.1−1.0(m, 20H)
GC−MS(CI+、NH3) [M+NH4] m/z:280、M=262
17262 分子量262.4
GC−MS(ガスクロマトグラフィ質量分析)の測定は、次のようにして行った。なお、イオン化は、CI法により行い、試薬ガスとしてはアンモニアを用いた。注入温度は250℃、分析温度は50℃から10℃/分で昇温し、220℃で10分保持し、続いて15℃/分で300℃までとなるように昇温した。なお、使用したGCはアジレントテクノロジー7890であり、カラムはアジレントテクノロジー社製DB−1(0.25mmφ×30m、膜厚0.25μm)である。
Figure 2021161118
なお、実施例では、上述の水素添加反応によって作製したDA13を使用したが、DA13は、化合物(N5)から下記のNaBH3反応により製造することもできる。まず、回転子を入れた容積500mLの三口フラスコに滴下漏斗を取り付けた。フラスコ内に化合物(N5) 31.1g(120mmol)とメタノール150mLを入れて攪拌し、続いて氷浴中でフラスコの内温が0℃になるように冷却した。滴下漏斗から、1%NaOH水溶液20mLに水素化ホウ素ナトリウム(純度95%)3.6g(90mmol)を溶解させて水溶液を40分かけてフラスコ内に滴下させた後、さらに室温で1時間フラスコ内を攪拌した。フラスコ内の反応液を氷浴で冷却し、反応液に15%硫酸 30 mLを加えて、反応液中に残存した水素化ホウ素ナトリウムを分解した。反応液を減圧濃縮し、残渣を得た。この残渣に酢酸エチル 300mLと水 100mLを加えて2相に分離させ、水相を得た。この水相を酢酸エチル 100mLにより2回抽出した。油相に無水Na2SO4(つまり、乾燥剤)を添加して脱水させた後、濾過により乾燥剤を除去した。次いで、油相をエバポレーターで濃縮させて濃縮液を得た。充填剤としてSiO2、溶媒としてアセトンを用いたクロマトグラフィにより、濃縮液から無機物を除去し、濃縮液をエバポレーターでさらに濃縮して淡黄色油状物を得た。1H NMRの分析結果から、この油状物がDA13であることを確認した。DA13の収量は30.2g(115mmol)であり、収率は、96.0%であった。
上述の油状物についての1H NMRによる分析結果は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ=3.8−3.2(m, 4H), 2.7−2.2(m, 2H), 2.1−1.0 (m, 20H)
<製造例2>
・NCDDMの合成
オートクレーブにノルボルナジエン(10g,108.53mmol、11.04mL)、Ru3(CO)12(1.39g、2.17 mmol)、DMAc(つまり、ジメチルアセトアミド)(2.15g、21.71mmol、2.24mL)、NMP(6mL)を加え反応器を密封し窒素置換を行い、80℃で10時間攪拌した。反応の進行はTLCを用いて確認した(石油エーテル:酢酸エチル=10:1、Rf=0.9)。水を加えて反応を停止させ、ジクロロメタン30mL×3で抽出し、飽和食塩水(20mL×2)と純水で洗浄した。硫酸ナトリウムを用いて脱水した後、乾固し、シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン)で精製することでNCDを淡黄色結晶として1.88g,15.6%の収率で得た。1H NMRの分析結果から、この油状物がNCDであることを確認した。
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ=6.03(d,4H), 2.65(d,4H), 1.71 (d,2H)、1.36 (s,4H),1.25 (d,2H)
Figure 2021161118
内容積300mLのステンレス製オートクレーブに、NCD 25.0g(136mmol)、Rh(acac)(CO)2 0.09g(0.35mmol)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト 0.88g(1.4mmol)、メチルシクロヘキサン 120mLを仕込み反応器を密閉した。反応器内部を窒素で置換した後、水性ガス(CO/H2=1/1)で置換し、さらに水性ガスを1MPaまで充填した。加熱、撹拌し、内温80℃で水性ガスを反応器内圧が7MPaまで圧入した。反応で消費された水性ガスは畜圧器から圧力調整器を経由して連続的に供給し、内圧6.5MPa、100 ℃で1時間反応を行った。ゲル状の反応混合物にTHFを加えて均一溶液として回収し、溶媒を減圧留去して褐色粘稠液体を得た。1H NMRでの分析でこの回収物がNCDジホルミル体であることを確認した。こちらはこれ以上の精製を行わず次反応に使用した。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ9.7−9.4 (m, 2H), 2.5−2.3 (m, 2H), 2.3−2.0 (m, 4H), 2.0−1.6 (m, 6H), 1.4−1.1 (m, 3H) , 1.0−0.8 (m, 3H)
Figure 2021161118
1000mLの三口フラスコにNCDジホルミル体(オキソ反応濃縮物全量、理論量33.2g、136mmol)、THF 300mL、エタノール 80mLをいれて氷浴中で撹拌して均一溶液とした。1mol/LNaOH水溶液 150mLに水素化ホウ素ナトリウム(重量純度90%) 5.60g(133mmol)を溶解し、反応液内温が10℃を超えないように10分割で添加した。全量添加した後室温に昇温して1時間反応を行った。氷浴で冷却し、内温10℃以下を保ちながら3mol/LHCl水溶液を40mL加えて未反応のNaBH4を分解した。
エバポレーターで溶媒を留去後、水相をクロロホルムで抽出した。回収油相を脱塩水で洗浄後、無水MgSO4で脱水、乾燥剤をろ別し、ろ液を濃縮して粗体を得た。この粗体をアセトニトリル、アセトンで洗浄することで、NCDDMの白色粉末状固体を収量 15.5g(62mmol)、収率45.9 %で単離した。
1H NMR(400MHz, CDCl3) δ3.5−3.2 (m, 6H), 2.0−1.8 (m, 8H), 1.5−1.3 (m, 2H) , 1.3−1.1 (m, 6H) , 1.0−0.8 (m, 2H)
Figure 2021161118
<製造例3>
・TPSAの合成
ペンタシクロペンタデカ−3(5),4(6)−ジエン(N3,N4) 20g, 50.43mmolと、Ac2O 102.96g,1.01molをトルエン800mL溶解させ、Na2CO3・3H22 216.95g,690.86mmolを30分置きに4回に分けて添加し、60℃で5時間加熱攪拌する。飽和Na224水溶液を加えてクエンチした後、水を加え酢酸エチルで抽出する。硫酸ナトリウムを用いて脱水し、乾固した生成物をシリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製(石油エーテル/酢酸エチル=8/1)することで5,16−ジオキサヘプタシクロヘプタデカンを異性体交じりの黄色固体として12g、収率67%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.6 (s, 1H), 3.6 (s, 2H), 3.5 (m, 1H), 3.4 (m, 3H), 3.3 (m, 2H), 3.3 (m, 2H), 2.4−2.3 (m, 19H), 2.2 (m, 6H) , 2.0 (m, 7H) , 1.7 (m, 3H) , 1.4 (m, 3H)
Figure 2021161118
異性体交じりの5,16−ジオキサヘプタシクロヘプタデカン (30g, 130.26mmol)の無水メタノール溶液(600mL)に硫酸を加え、室温で4時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加え反応を停止し、メタノールを減圧留去した後水を加え酢酸エチルを用いて抽出(200mLx5)した。飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて脱水した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィ(ヘプタン:酢酸エチル=1:3)で生成した。酢酸エチル/ヘプタン溶媒を用いて再結晶することでTPSAを白色個体として51g得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ4.1(d, 2H), 3.7 (br, 2H), 3.5 (m, 3H), 3.5 (d, 5H), 3.4 (d, 2H), 3.3 (s, 1H), 2.2(br, 1H), 2.2−1.9 (m, 27H), 1.4 (t, 2H) , 1.1 (m, 2H)
Td5:223℃
Figure 2021161118
<製造例4>
・ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン(FN2)の合成
FN2は特開2015−25111に記載の方法で合成した。
Figure 2021161118
[使用原料]
製造例、実施例等で用いた化合物の略号、製造元は次の通りである。
<ジヒドロキシ化合物>
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物)、[SKケミカル社製]
・TCDDM:トリシクロデカンジメタノール[オクセア社製]
・DA13:製造例1で合成したジヒドロキシ化合物(ペンタシクロ[7.5.1.02,8.03,7.010,14]ペンタデカンジメタノール)
・NBD:製造例2で合成したノルボルナジエン
・NCD:製造例2で合成したノルボルナジエンの2量体
・NCDDM:製造例2で合成したノルボルナジエンの2量体のジヒドロキシ化合物
・TPSA:製造例3で合成したジヒドロキシ化合物
<炭酸ジエステル>
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱ケミカル(株)製]
<ジエステル成分>
・FN2:製造例4で合成したジエステル(ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン)
<重合触媒>
・酢酸カルシウム一水和物(Ca(CH3COO)2・H2O)[キシダ化学社製]
(実施例1−1)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13、及びISBを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。具体的には、DA13を5.70g(0.0022モル)、イソソルビド(以下「ISB」と略記する)を7.41g(0.051モル)、ジフェニルカーボネート(以下「DPC」と略記する。)を15.83g(0.0739モル)、及び重合触媒として酢酸カルシウム1水和物1.27×10-4g(7.25×10-6モル)を0.2%水溶液として反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌を行い、60分で220℃まで常圧で昇温して原料を溶解させた。
反応の第1段目の工程として、220℃を30分保ったのち、圧力を常圧から13.3kPaまで40分で減圧した後、13.3kPaで60分保持し、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで20分で上昇させ、かつ、30分で圧力を0.200kPa以下になるように制御しながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を反応容器から取り出して、ポリカーボネート共重合体(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位=100/30/70であるポリカーボネート共重合体)を得た。得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.502dl/g、ガラス転移温度Tgは143℃であった。室温での飽和吸水率は1.9wt%であった。沸騰水試験では変形がなかった。5%熱重量減少温度(Td5)は窒素雰囲気下で、345℃であった。このポリカーボネート共重合体のNMRチャートを図9に示す。
(実施例1−2)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13、ISBを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。材料としてDA13を4.03g(0.0154モル)、ISBを8.98g(0.0614モル)、DPCを16.77g(0.0783モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.35×10−4g(7.68×10−6モル、0.2%水溶液)を用いた点を除いて、実施例1−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位=100/20/80であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.638dl/g、ガラス転移温度Tgは152℃であった。室温での飽和吸水率は2.7wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。5%熱重量減少温度(Td5)は窒素雰囲気下で、341℃であった。
また、このポリカーボネート共重合体のNMRチャートを図10に示す。
(実施例1−3)
ジヒドロキシ化合物として、DA13、ISB、及びTCDDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。材料としてDA13を13.00g(0.0495モル)、TCDDMを19.45g(0.0991モル)、ISBを50.68g(0.3468モル)、DPCを108.24g(0.5053モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物8.73×10−3g(4.95×10−5モル、2%水溶液)を用いた点を除いて、実施例1−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/TCDDMに由来する構造単位=100/10/70/20であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.669dl/g、ガラス転移温度Tgは134℃であった。室温での飽和吸水率は1.9wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。5%熱重量減少温度(Td5)は窒素雰囲気下で、346℃であった。
また、このポリカーボネート共重合体のNMRチャートを図11に示す。
(実施例1−4)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13、ISB、及びCHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。材料としてDA13を21.46g(0.0818モル)、CHDMを23.59g(0.1636モル)、ISBを83.68g(0.5726モル)、DPCを178.73g(0.8344モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.44×10−2g(8.18×10−5モル、2%水溶液)を用いた点を除いて、実施例1−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/10/70/20であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.689dl/g、ガラス転移温度Tgは130℃であった。室温での飽和吸水率は2.1wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。5%熱重量減少温度(Td5)は窒素雰囲気下で、343℃であった。
また、このポリカーボネート共重合体のNMRチャートを図12に示す。
(実施例1−5)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13、ISB、及びCHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。材料としてDA13を4.03g(0.0154モル)、CHDMを1.11g(0.0077モル)、ISBを7.86g(0.0538モル)、DPCを16.79g(0.0784モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.38×10−4g(1.92×10−6モル、0.2%水溶液)を用いた点を除いて、実施例1−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/20/70/10であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.923dl/g、ガラス転移温度Tgは140℃であった。室温での飽和吸水率は1.9wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。5%熱重量減少温度(Td5)は窒素雰囲気下で、348℃であった。
また、このポリカーボネート共重合体のNMRチャートを図13に示す。
(比較例1−1)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、ISB、及びCHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。材料として、CHDMを37.83g(0.2623モル)、ISBを89.44g(0.6120モル)、DPCを191.05g(0.8918モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.85×10−3g(2.19×10−5モル、2%水溶液)に変更した点を除いて、実施例1−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/70/30であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.615dl/g、ガラス転移温度Tgは122℃であった。室温での飽和吸水率は2.0wt%であった。沸騰水試験ではフィルムは変形した。
(比較例1−2)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、ISB、及びTCDDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。材料として、TCDDMを47.19g(0.2404モル)、ISBを81.98g(0.5610モル)、DPCを175.1g(0.8174モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.53×10−3g(2.00×10−5モル、2%水溶液)に変更した点を除いて、実施例1−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/TCDDMに由来する構造単位=100/70/30であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.602dl/g、ガラス転移温度Tgは131℃であった。室温での飽和吸水率は1.8wt%であった。沸騰水試験ではフィルムは変形した。
実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−2のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度、折り曲げ試験の結果、沸騰水試験の結果、飽和吸水率、鉛筆硬度、光弾性係数を表1に示す。また、実施例5のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度、光弾性係数を表1に示す。
Figure 2021161118
表1より理解されるように、特定の構造単位を含有する実施例1−1〜実施例1−5の熱可塑性樹脂(具体的には、ポリカーボネート樹脂)は、ガラス転移温度が十分に高い。また、実施例1−1〜1−4は、ガラス転移温度を十分高く保ちながら、沸騰水試験の結果が良好であり、耐湿熱性に優れている。これに対し、特定の構造単位を含有していない比較例1−1〜1−2では、ガラス転移温度が低く、沸騰水試験は不合格となり耐湿熱性に劣っていた。
また、表1より理解されるように、特定の構造単位を含有する実施例1−1〜1−4の熱可塑性樹脂(具体的には、ポリカーボネート樹脂)は、ガラス転移温度を十分高く保ちながら、折り曲げ試験及び沸騰水試験の結果が良好であり、靱性、耐湿熱性に優れている。これに対し、特定の構造単位を含有していない比較例1−1〜1−2では、ガラス転移温度が低かったり、靱性が不十分であったり、耐湿熱性が不十分であった。
また、表1より理解されるように、特定の構造単位を含有する実施例1−1〜1−5の熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度を十分高く保ちながら、光弾性係数の結果が良好であり、光学的な信頼性、耐熱性に優れている。これに対し、特定の構造単位を含有していない比較例1−1及び1−2では、ガラス転移温度が低かったり、光弾性係数が不十分であった。特に実施例1−1の結果から、特定の構造単位を有する熱可塑性樹脂は非常に低い光弾性係数を有し、光学的な信頼性に優れている。また、実施例1−1〜1−4は鉛筆硬度の結果が良好であり、機械強度に優れている。
また、表1には示していないが、実施例1−3及び比較例1−2のシャルピー衝撃試験の結果(具体的には、室温及び低温でのシャルピー衝撃強度)を比較したところ、実施例3の室温でのシャルピー衝撃強度は3kJ/mであり、低温でのシャルピー衝撃強度は3kJ/mであった。一方、比較例1−2の室温でのシャルピー衝撃強度は3kJ/mであり、低温でのシャルピー衝撃強度は2kJ/mであった。つまり、実施例1−3は、比較例1−2と同程度以上の耐衝撃性能であった。つまり、実施例3は、靱性が良好であるといえる。
(実施例2−1)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13、ISBを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてDA13を10.87g(0.0414モル)、ISBを2.59g(0.0178モル)、DPCを12.93g(0.0604モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.13×10−3g(1.78×10−5モル、2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位=100/70/30であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.621dl/g、ガラス転移温度Tgは125℃であった。室温での飽和吸水率は0.7wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表2に示す。
(実施例2−2)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13、TCDDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてDA13を10.86g(0.0414モル)、TCDDMを2.71g(0.0138モル)、DPCを12.06g(0.0563モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物2.92×10−3g(1.66×10−5モル、2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/TCDDMに由来する構造単位=100/75/25であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は1.256dl/g、ガラス転移温度Tgは107℃であった。室温での飽和吸水率は0.3wt%であった。沸騰水試験では変形があった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表2に示す。
(実施例2−3)
本例では、ジヒドロキシ化合物としてDA13、ISBを用い、ジエステル成分として、FN2を用いてポリエステルカーボネート樹脂を作製した。材料としてDA13を40.31重量部(0.154モル)、ISBを31.35重量部(0.215モル)、FN2を28.19重量部(0.044モル)、DPCを69.44重量部(0.324モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.30×10−3重量部(7.36×10−6モル、)を反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として、圧力を53.3kPaに調整してから、220℃まで30分かけて昇温した。220℃到達時点から30分後に圧力を13.3kPaまで60分かけて減圧した。発生するフェノールは反応系外へ抜き出した。次いで反応2段目の工程として、圧力を13.3kPaに保持したまま、熱媒温度を15分かけて245℃まで昇温し、次いで、圧力を0.10kPa以下まで30分かけて減圧した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。このようにして、ポリエステルカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/FN2に由来する構造単位=100/40/40/20であるポリエステルカーボネート共重合体)を作製した。なお、FN2に由来する構造単位を下記に示す。
得られたポリエステルカーボネート樹脂の物性、評価結果を表2に示す。
Figure 2021161118
Figure 2021161118
表2より理解されるように、例えば実施例2−1は、ガラス転移温度が十分に高く、折曲げ試験や沸騰水試験の結果が良好であり、靭性と耐湿熱性に優れている。また、飽和吸水率も低い。実施例2−2は、実用的な範囲のガラス転移温度を有しつつ、折曲げ試験の結果が良好であり、靭性に優れている。また、飽和吸水率も非常に低い。これに対して、特定の構造を含有しない比較例4−2は、ガラス転移温度が低く、沸騰水試は不合格となり耐湿熱性に劣っていた。実施例2−3のポリエステルカーボネートは、十分に高いガラス転移温度を有し、沸騰水試験の結果が良好であり、耐湿熱性に優れている。また、光弾性係数が十分に低く、光学用途に適している。
(実施例3−1)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、NCDDM、ISBを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてNCDDMを5.51g(0.0222モル)、ISBを7.58g(0.0518モル)、DPCを16.16g(0.0754モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.30×10−3g(7.40×10−4モル、2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/NCDDMに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位=100/30/70であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.282dl/g、ガラス転移温度Tgは145℃であった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表3に示す。
(実施例3−2)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、NCDDM、ISB、及びCHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてNCDDMを2.05g(0.0082モル)、CHDMを2.38g(0.0165モル)、ISBを8.43g(0.0577モル)、DPCを18.01g(0.0841モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.45×10−3g(8.24×10−6モル、0.2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/NCDDMに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/10/70/20であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.804dl/g、ガラス転移温度Tgは139℃であった。室温での飽和吸水率は2.2wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表3に示す。
(実施例3−3)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、TPSA、ISB、及びTCDDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてTPSAを2.24g(0.0076モル)、TCDDMを2.99g(0.0152モル)、ISBを7.79g(0.0533モル)、DPCを16.64g(0.0777モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.34×10−3g(7.62×10−6モル、0.2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/TPSAに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/TCDDMに由来する構造単位=100/10/70/20であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.795dl/g、ガラス転移温度Tgは146℃であった。室温での飽和吸水率は2.7wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表3に示す。
(実施例3−4)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、TPSA、ISB、及びTCDDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてTPSAを4.17g(0.0142モル)、TCDDMを2.78g(0.0142モル)、ISBを6.21g(0.0425モル)、DPCを15.47g(0.0722モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.25×10−3g(7.08×10−6モル、0.2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/TPSAに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/TCDDMに由来する構造単位=100/20/60/20であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.640dl/g、ガラス転移温度Tgは148℃であった。室温での飽和吸水率は2.4wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表3に示す。
(実施例3−5)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、TPSA、ISB、及びCHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてTPSAを2.37g(0.0080モル)、CHDMを2.32g(0.0161モル)、ISBを8.22g(0.0563モル)、DPCを17.57g(0.0820モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.42×10−3g(804×10−6モル、0.2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/TPSAに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/10/70/20であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.876dl/g、ガラス転移温度Tgは141℃であった。室温での飽和吸水率は2.9wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。
得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表3に示す。
(実施例3−6)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、TPSA、ISB、及びCHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてTPSAを4.38g(0.0149モル)、CHDMを1.07g(0.0074モル)、ISBを7.61g(0.0521モル)、DPCを16.26g(0.0759モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.31×10−3g(7.44×10−6モル、0.2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/TPSAに由来する構造単位/ISBに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/20/70/10であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.600dl/g、ガラス転移温度Tgは158℃であった。室温での飽和吸水率は3.5wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。 得られたポリカーボネート共重合体の物性、評価結果を表3に示す。
Figure 2021161118
表3より理解されるように、例えば実施例3−1は、高いガラス転移温度を有しており、耐熱性に優れている。実施例3−2は、ガラス転移温度が十分に高く、折曲げ試験や沸騰水試験の結果が良好であり、靭性と耐湿熱性に優れている。実施例3−3〜実施例3−6は、カーボネート系樹脂が、分子量が大きくアルコキシ基を有する構造を含んでおり、耐熱性と耐湿熱性に優れている。
(実施例4−1)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、DA13を用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてDA13を13.65g(0.0520モル)、DPCを11.37g(0.0531モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物2.75×10−3g(1.56×10−6モル、2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/DA13に由来する構造単位=100/100であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.639dl/g、ガラス転移温度Tgは116℃であった。室温での飽和吸水率は0.31wt%であった。沸騰水試験では変形はなかった。
得られたポリカーボネートホモポリマーの物性、評価結果を表4に示す。
(比較例4−1)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、CHDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてCHDMを12.71g(0.0881モル)、DPCを19.26g(0.0899モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物4.66×10−3g(2.64×10−5モル、2%水溶液)を用いたことに変更し、また、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで20分で上昇させないで、220℃のままで反応を継続した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/CHDMに由来する構造単位=100/100であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は1.051dl/g、ガラス転移温度Tgは40℃であった。室温での飽和吸水率は0.41wt%であった。沸騰水試験では変形した。
得られたポリカーボネートホモポリマーの物性、評価結果を表4に示す。
(比較例4−2)
本例では、ジヒドロキシ化合物として、TCDDMを用いてポリカーボネート樹脂を作製した。実施例1に対して、材料としてTCDDMを13.25g(0.0675モル)、DPCを14.46g(0.0675モル)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.57×10−3g(2.02×10−5モル、2%水溶液)を用いたことに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂(具体的には、モル比で、DPCに由来する構造単位/TCDDMに由来する構造単位=100/100であるポリカーボネート共重合体)を作製した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.836dl/g、ガラス転移温度Tgは77℃であった。室温での飽和吸水率は0.36wt%であった。沸騰水試験では変形した。
得られたポリカーボネートホモポリマーの物性、評価結果を表4に示す。
Figure 2021161118
表4より理解されるように、実施例4−1に示される脂環式モノマーとDPCとから構成される熱可塑性樹脂(ホモポリマー)においてはガラス転移温度が高く、耐湿熱信頼性に長けている。また、光弾性係数が非常に低い。一方で比較例4−1、4−2ではガラス転移温度は100℃以下であり、耐湿熱信頼性は著しく損なわれる。
(実験例)
本例では、DA13、ISB、TCDDM、SPGの耐熱分解性を評価した。具体的には、各モノマーの5%重量減少温度(つまり、Td5)を測定した。SPGは、スピログリコールである。その測定方法は上述の通りである。その結果を表5に示す。
Figure 2021161118
表5より理解されるように、DA13は、他のモノマーに比べて、Td5が高い。したがって、耐熱分解性に優れており、カーボネート系樹脂などの熱可塑性樹脂の合成に好適であるといえる。つまり、熱可塑性樹脂のモノマーとして用いる場合、重合時の熱によるモノマーの分解が抑制され、重合工程でのモノマーの仕込み組成と重合工程で得られた熱可塑性樹脂の組成のずれを小さくすることができる。このため、一定の物性を有する熱可塑性樹脂を安定的に製造することが可能になる。

Claims (9)

  1. 下記式(P1)で表される、重合性脂環式化合物。
    Figure 2021161118
    (式(P1)中、環Zは、置換基を有していてもよい炭素数6〜15の脂環式炭素環を表し、該脂環式炭素環はヘテロ原子を含んでいてもよく、L1及びL2は、それぞれ独立に、直接結合又は炭素数1〜5の2価の炭化水素基を表し、B1及びB2は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいフェノキシカルボニル基又は酸ハライド基を表し、R1は、置換基を表し、mは、置換基R1の数を表し、mは0〜4の整数である。)
  2. 上記式(P1)におけるL1及びL2がメチレン基であり、B1及びB2が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はメトキシカルボニル基である、請求項1に記載の重合性脂環式化合物。
  3. 上記式(P1)におけるL1及びL2が直接結合であり、B1及びB2が、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、又はフェノキシカルボニル基である、請求項1に記載の重合性脂環式化合物。
  4. 上記脂環式炭素環が、環を構成する炭素原子の数が4以上の炭素環を少なくとも1つ有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性脂環式化合物。
  5. 上記式(P1)における環Zがシクロペンタン環以外の脂環式骨格を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性脂環式化合物。
  6. 上記式(P1)が、下記式(P2)〜(P11)から選択されるいずれかである、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合性脂環式化合物。
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    Figure 2021161118
    (式(P2)〜(P11)中、L1及びL2は、それぞれ独立に、直接結合又は炭素数1〜5の2価の炭化水素基を表し、B1及びB2は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜12のフェノキシカルボニル基を表し、R1及びR2は、炭素数1〜12の置換基を表し、mは、置換基R1の数を表し、mは0〜4の整数であり、nは、置換基R2の数を表し、式(P2)におけるnは、0〜6の整数であり、式(P3)及び式(P11)におけるnは、0〜11の整数であり、式(P4)及び式(P5)におけるnは、0〜9の整数であり、式(P6)におけるnは、0〜7の整数であり、式(P7)におけるnは、0〜13の整数であり、式(P8)〜式(P10)におけるnは、0〜5の整数である。
  7. 上記式(P2)〜(P11)におけるm及びnが0又は1である、請求項6に記載の重合性脂環式化合物。
  8. 上記式(P1)が、上記式(P2)〜(P7)から選択されるいずれかである、請求項6又は7に記載の重合性脂環式化合物。
  9. 上記式(P1)が、上記式(P4)である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の重合性脂環式化合物。
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