JP2021161106A - 5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法 - Google Patents

5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産効率の高い5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法を提供する。【解決手段】一実施形態によると、硫酸存在下、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを接触させて、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を含む第1混合物を得ることを含む、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法が提供される。【選択図】 なし

Description

本発明は、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法に関する。
下記式(I)に示すルセオグリフロジンは、抗糖尿病薬の有効成分である。
Figure 2021161106
ルセオグリフロジンは、非特許文献1に記載のように、下記式(II)に示す5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸を中間体として合成される。
Figure 2021161106
5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸は、クロロホルム中、鉄触媒存在下、臭素(Br)と、下記式(III)に示す4−メトキシ−2−メチル安息香酸接触とを接触させることにより合成される。
Figure 2021161106
非特許文献2には、1モルの4−メトキシ−2−メチル安息香酸に対して1.27モルの臭素(Br)を反応させて、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸が得られること、及び、その収率が34%であることが記載されている。
Anderson R. Aguillon, Alessandra Mascarello, Natanael D. Segretti, Hatylas F. Z de Azevedo, Cristiano R. W. Guimaraes, Leandro S. M. Miranda, and Rodrigo O. M. A. de Souza, "Synthetic Strategies toward SGLT2 Inhibitors" Organic process research & development, 2018, 22, p.467−488. Hiroyuki Kakinuma, et al. "(1S)−1,5−Anhydro−1−[5−(4−ethoxybenzyl)−2−methoxy−4−methylphenyl]−1−thio−D−glucitol(TS−071) is a Potent, Selective Sodium−Dependent Glucose Cotransporter 2 (SGLT2) Inhibitor for Type 2 Diabetes Treatment" Journal of Medicinal Chemistry, 2010, 53, p. 3247−3261.
本発明の目的は、生産効率の高い5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法を提供することにある。
実施形態によると、硫酸存在下、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸(以下、単に「基質」とする場合もある。)と臭素とを接触させて、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を含む第1混合物を得ることを含む、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法が提供される。
本発明によると、生産効率の高い5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法が提供される。
非特許文献1及び2に記載された方法では、反応溶媒としてクロロホルム(CHCl)が用いられる。クロロホルムは毒性が高く、排出規制が厳しい物質である。また、クロロホルム中で5−メトキシ−2−メチル安息香酸と臭素とを反応させて得られた反応液は、ゲル状を示し、流動性が低いことがある。反応液の流動性が低いと、生成物の単離が困難となり、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の生産効率が低下する。
このような問題に対して本発明者らが鋭意研究したところ、硫酸存在下で5−メトキシ−2−メチル安息香酸と臭素とを反応させることにより上記の問題を解決し得ることを見出した。
すなわち、実施形態によると、硫酸存在下、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを接触させて、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を含む第1混合物を得ることを含む、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法が提供される。
4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸のアルコキシ基の炭素数は、例えば、1乃至5である。中でも、メトキシ基(CHO−)又はエトキシ基(CO−)であることが好ましい。5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸のアルコキシ基は、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸のアルコキシ基と同一である。
4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸のアルキル基の炭素数は、例えば、1乃至5である。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、又はブチル基である。アルキル基は、一部の水素が他の元素で置換されていてもよい。5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸のアルキル基は、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸のアルキル基と同一である。
実施形態に係る製造方法においては、上記のような置換基を有する4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の5位を臭素化するため、優れた効果を発揮するものと考えられる。
4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸は、例えば、下記式(III’)で表される。
Figure 2021161106
は、アルコキシ基であり、Rは、アルキル基である。
5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸は、例えば、下記式(II’)で表される。
Figure 2021161106
、及び、Rは、上記式(III’)と同義である。
前記4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸としては、工業的に入手可能なものを用いてもよく、2−アルキル安息香酸から合成したものを用いてもよい。
硫酸は、クロロホルムと比較して毒性及びコストが低い。また、基質である4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸、及び、生成物である5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の硫酸への溶解性は、クロロホルムへの溶解性と比較して高い。それゆえ、硫酸の存在下で反応させると、第1混合物の流動性を高め易く、簡易な操作で生成物を単離できる。したがって、実施形態に係る製造方法によると、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の生産効率を高められる。
更に、硫酸は、臭素の酸化剤として機能し得るため、本発明においては、臭素の使用量を低減できる。通常の芳香族化合物の臭素化は、下記式(A)及び(B)に示すように進むと考えられる。
Figure 2021161106
上記のとおり、芳香族化合物の臭素化においては、臭素カチオン(Br)が活性種となり、ベンゼン環に結合し、水素(H)を脱離させる。脱離した水素は、臭素アニオン(Br)と反応して臭化水素(HBr)を生成する。したがって、1モルの芳香族化合物のモノブロム化には、1モル以上の臭素の単体(Br)を必要とし、従来、反応性を高めるために1モルを超えるBrを要してきた。
これに対して、実施形態に係る製造方法においては、硫酸は、臭素アニオンを酸化して臭素カチオンを生成していると推定される。加えて、特定の基質を臭素化すること、つまり、基質の反応性も、本発明の作用効果に影響していると考えられる。すなわち、前記の硫酸の存在下で、4位にアルコキシ基を有し、2位にアルキル基を有する安息香酸の5位を臭素化するため、少ない臭素の量で選択的に基質の5位を臭素化できるものと推定する。それゆえ、硫酸の存在下でこれらを反応させると、1モルの臭素単体(Br)から、1モルより多くのモノブロム化芳香族化合物を得られるものと考えられる。
したがって、実施形態に係る方法によると、1モルの4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する臭素(Br)の量を、1モル以下へと低減できる。臭素の量が少ないと、ジブロモ体の収率を低下させ、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の選択性を高められる。5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の収率を高めるという点からは、1モルの4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する臭素(Br)の量は、1モルより少ない量であることが好ましく、0.8モル以下であることがより好ましく、0.6モル以下であることが更に好ましい。
一方、臭素の量が過剰に少ないと、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の生産効率が低下する恐れがある。したがって、1モルの4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する臭素(Br)の量は、0.4モル以上であること好ましく、0.5モル以上であることがより好ましい。
反応に用いられる硫酸の量は特に限定されない。反応を良好に進め、後処理も容易とするためには、1gの4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する硫酸そのものの量(HSOの量)は、1mL以上10mL以下であることが好ましく、2mL以上5mL以下であることがさらに好ましい。
実施形態において硫酸としては、市販のものを使用できる。硫酸は、酸化力が強いという点からは、濃度が高いものを用いることが好ましい。加えて、水は、基質である4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸及び生成物である5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対して貧溶媒となるため、硫酸に含まれる水の量は少ない方が好ましい。中でも、入手のし易さ、取り扱い易さ等を考慮すると、使用する硫酸は、濃度が90質量%以上の濃硫酸を用いることが好ましく、95質量%以上の濃硫酸を用いることがより好ましい。硫酸の濃度の上限値は、一例によると、98質量%である。硫酸としては、発煙硫酸を用いてもよい。また、硫酸のみからなる100質量%のHSOを使用してもよい。
硫酸は、反応溶媒として用いられることが好ましい。反応溶媒としては、上記濃度範囲の硫酸を用いることが好ましい。すなわち、反応溶媒がクロロホルム等の有機溶媒を含むと、反応性が低下する恐れがある。反応溶媒に含まれる硫酸以外の溶媒の量は、5質量%以下であることが好ましい。
反応性を高めるという点からは、1gの4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する硫酸の量は、1mL以上であることが好ましく、2mL以上であることがより好ましい。硫酸の量の上限値は特にないが、一例によると、1gの4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対して10mL以下であり、他の例によると、5mL以下である。
4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素との接触方法は、硫酸存在下であれば、特に限定されない。4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を硫酸に溶解させた後、得られた溶液に臭素を加えてもよい。また、硫酸と臭素とを混合した後、得られた混合物に4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を加えてもよい。あるいは、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを混合した後、得られた混合物に硫酸を加えてもよい。反応性を高めるという点からは、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を硫酸に溶解させて得られた溶液に、臭素を加えることが好ましい。中でも、臭素は、常温で液状の単体を用いることが好ましい。そのため、この液状の臭素を、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸が溶解した硫酸溶液中に、滴下することにより4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と接触させることが好ましい。
硫酸存在下での4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素との接触は、急激な反応に伴う発熱を抑制するという点から、低温下で行われることが好ましい。すなわち、これらの接触は、60℃以下で行われることが好ましく、40℃以下で行われることがより好ましく、20℃以下で行わることが更に好ましい。一方、硫酸の酸化力は、高温下で高まる傾向にある。したがって、生産効率を高めるという点からは、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素との接触は、−5℃以上で行われることが好ましく、0℃以上で行われることがより好ましい。なお、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素との接触は、反応溶媒である硫酸の温度を上記の範囲内に調整すれば、室温環境下で行ってもよい。
硫酸存在下で4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを接触させる時間、すなわち、反応時間は、一例によれば、1時間以上72時間以下であり、他の例によれば、5時間以上24時間以下である。この反応時間中、硫酸、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸、及び臭素の混合物は、攪拌されることが好ましい。
4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素との反応は、鉄等の金属触媒下で行われてもよい。金属触媒を用いると、反応速度を高められる。一方、金属触媒を用いると、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の選択性が低下する恐れがある。また、反応液から金属触媒を取り除く工程が必要となるため、生産効率が低下し得る。実施形態に係る製造方法においては、硫酸の酸化力、および基質の反応性に起因すると考えるが、鉄等の金属触媒を併用しなくても、臭素の使用量を低減し、かつ、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の収率を高めることができる。
以上の方法により、硫酸存在下、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを接触させて、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を含む第1混合物を得ることができる。
4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素との反応は、第1混合物に水を加えることにより終息され得る。水の量は特に限定されないが、一例によると、1mLの硫酸に対して1mL以上20mL以下であり、他の例によると、2mL以上10mL以下である。水を加えた後の第1混合物の温度は、0℃以上60℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることがより好ましい。
第1混合物に水を加えることにより、固体が析出した第2混合物を得られる。固体は、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固形物を含む。固体は、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の副生成物として、3−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固形物、及び、3,5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固形物の少なくとも一方を更に含み得る。
固体における5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸、3−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸、及び、3,5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の割合は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)分光分析により算出できる。NMR分析において、測定対象はHとし、固体を重クロロホルムに溶解させたものを測定サンプルとして用いる。
以上説明した方法で得られた5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固形物は、以下の方法により精製され得る。
先ず、第2混合物中から、固体を濾別する。濾別した固体を水等の洗浄液を用いて洗浄する。洗浄後の固体を十分に乾燥させる。
乾燥後の固体を第1溶媒に溶解させて第1溶液を得る。第1溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、酢酸、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の純度を高めるという点からは、第1溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、及びn−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系溶媒を用いることが好ましく、エタノールを用いることがより好ましい。
第1溶媒の量は、特に限定されないが、一例によると、1gの固体に対して0.5mL以上20mL以下であり、他の例によると、3mL以上10mL以下である。
乾燥後の固体の溶解性を高めるために、第1溶媒は加熱されることが好ましい。すなわち、第1溶媒の温度を60℃以上に加熱した後、乾燥後の固体を投入することが好ましい。あるいは、第1溶媒と乾燥後の固体とを混合した後、この混合物を60℃以上に加熱して第1溶液を得ることが好ましい。第1溶媒の温度の上限値は、第1溶媒の沸点により変更され得る。第1溶媒の温度の上限値は、一例によると、100℃以下であり、他の例によると、80℃以下である。
次に、第1溶液を冷却して5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固体を再び析出させる。第1溶液の温度は、一例によると、50℃以下まで冷却し、他の例によると、30℃以下まで冷却する。第1溶液の冷却温度の下限値は特にないが、一例によると、−10℃以上とし、他の例によると、5℃以上とする。
5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の析出物を、第1溶媒に溶解した後、冷却して再結晶化させることにより、より純度の高い5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の結晶が得られる。
なお、シリカゲルカラム精製することにより、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸、3−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸、及び、3,5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の混合物から、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を単離できる。
以上説明したように、実施形態に係る方法によると、硫酸中で、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを反応させるため、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の生産効率を高めることができる。上述したように、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸は、ルセオグリフロジンの中間体として有用な物質である。したがって、実施形態に係る方法を用いると、ルセオグリフロジンの生産効率も高めることができる。
次に、このようにして得られた5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を用いた、下記式(IV)に表されるジアリールケトン誘導体の製造方法の一例を説明する。このジアリールケトン誘導体は、ルセオグリフロジンの中間体として使用できる。下記式(IV)において、R及びRは、上記式(II’)におけるものと同義である。
Figure 2021161106
先ず、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸とハロゲン化剤とを反応させて、下記式(IVa)に表されるハロゲン化物を得る。
Figure 2021161106
上記式(IVa)において、R及びRは、上記式(IV)におけるものと同義である。Xは、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、臭素原子、又は塩素原子を用いることが好ましく、塩素原子を用いることがより好ましい。
ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、臭化チオニル、及び三臭化リンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。ハロゲン化剤の使用量は、例えば、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸1モルに対して、1〜5モルの範囲である。
反応を促進させるために添加剤を使用してもよい。添加剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。添加剤の使用量は、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸1モル対して、通常0.001〜1モルの範囲で適宜調整することができる。
ハロゲン化反応に使用される溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2−メチル−THF、1,4−ジオキサン、t−ブチルーメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。ハロゲン化反応に使用される溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。反応性の観点から、溶媒として、塩化メチレン、THF、ジメトキシエタン、ジグライム等を使用することが好ましい。溶媒の使用量は、反応容器の容量等を勘案して適宜調整することができる。溶媒の使用量は、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸1gに対して、通常1〜100mLの範囲で適宜調整することができる。ハロゲン化の温度及び時間は、ハロゲン化反応の進行に応じて適宜調整することができる。ハロゲン化の温度は、通常−30〜120℃の範囲であり、ハロゲン化の時間は、通常0.1〜10時間の範囲である。
次に、上記式(IVa)に表されるハロゲン化物と、下記式(IVb)に表される芳香族化合物であるエチルフェニルエーテル(フェネトール)とを、チタン化合物の存在下で接触させることにより、上記式(IV)に表されるジアリールケトン誘導体が得られる。
Figure 2021161106
チタン化合物は、ルイス酸として作用する。チタン化合物に代えて又はチタン化合物とともに、チタン化合物以外のルイス酸を使用してもよい。チタン化合物としては、例えば、チタンが0価であるもの、チタンが2価であるもの、3価であるもの、4価であるもの等が知られているが、いずれのチタン化合物であってもよい。チタン化合物としては、例えば、TiCl、TiBr、TiI、TiO、Ti(O−iPr)Cl、Ti(O−iPr)Cl、Ti(O−iPr)Cl等の4価のチタン塩又はその溶媒和物;TiCl、TiBr、TiO等の3価のチタン塩又はその溶媒和物;TiCl、TiO等の2価のチタン塩又はその溶媒和物;金属Ti等の0価のチタン又はその溶媒和物が挙げられる。なお、「iPr」は、イソプロピル基を意味する。溶媒和物としては、例えば、水和物等が挙げられる。
反応性の点や、反応系における取り扱いが容易である点から、チタン化合物は、下記式(4)で表される3価又は4価のチタン塩又はその溶媒和物であることが好ましく、四塩化チタン又はその溶媒和物であることがより好ましい。
TiR (OR (4)
式中、Rは、ハロゲン原子であり、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、r及びsは、r+s=3又は4を満たす0〜4の整数である。式(4)において、Rは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、Rは、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
ハロゲン化物及び芳香族化合物の量は特に制限されず、ハロゲン化物及び芳香族化合物の反応性等を勘案して適宜調整することができる。ジアリールケトン誘導体を高純度及び/又は高収率で製造する観点から、芳香族化合物の使用量は、ハロゲン化物1モルに対して、通常1〜100モルの範囲、好ましくは1〜10モルの範囲、より好ましくは1〜2モルの範囲である。ジアリールケトン誘導体を高収率で製造する観点から、チタン化合物の使用量は、ハロゲン化物1モルに対して、通常0.1〜10モルの範囲、好ましくは0.5〜5モルの範囲、より好ましくは1.0〜3モルの範囲である。
溶媒は、フリーデル− クラフツ アシル化反応に使用される公知の溶媒から適宜選択することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2−メチル−THF、1,4−ジオキサン、t−ブチルーメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。反応性及び溶解性の観点から、溶媒はメチレン、THF、ジメトキシエタン及びジグライムから選択される1種以上の溶媒を含むことが好ましい。ハロゲン化物の製造工程において、同様の溶媒を使用することができる。ハロゲン化物の製造工程で使用された溶媒を、そのまま、溶媒として使用することができる。溶媒の使用量は、反応容器の容量等を勘案して適宜調整することができる。溶媒の使用量は、ハロゲン化物1gに対して、通常1〜100mLの範囲である。反応温度は、通常−30〜120℃の範囲で適宜調整することができ、反応時間は、通常0.5〜24時間の範囲で適宜調整することができる。
ジアリールケトン誘導体の製造後、後処理を行ってもよい。後処理としては、特に限定されず、通常の反応処理を適用すれることができる。例えば、反応後、反応液中に水、塩酸水等を添加して反応を止め、次いで、クロロホルム等の有機溶媒で生成物を抽出し、次いで、得られた有機層を分取し、濃縮後、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、目的とするケトン誘導体を単離ことができる。
次に、このようにして得られたジアリールケトン誘導体を用いた、下記式(V)に表されるジアリールメタン誘導体の製造方法の一例を説明する。このジアリールメタン誘導体は、ルセオグリフロジンの中間体として使用できる。下記式(V)において、R及びRは、上記式(IV)におけるものと同義である。
Figure 2021161106
上記ジアリールメタン誘導体は、上記ジアリールケトン誘導体を、チタン化合物の存在下、還元剤を用いて還元することにより得られる。チタン化合物は、ルイス酸として機能する。チタン化合物としては、上述したものと同様のものを用い得る。
還元剤としては、例えば、カルボニル基、エーテル基、アルコキシド基等を有する還元反応に使用される還元剤が挙げられる。還元剤の具体例としては、トリエチルシラン、テトラメチルジシロキサン等のシラン化合物、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素マグネシウム等の水素化ホウ素金属塩、水素等が挙げられる。これらの中でも、チタン化合物と組み合わせた場合の反応性の点や、工業的に安価で入手可能な点から、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素マグネシウム等の水素化ホウ素金属塩が好ましく、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素アルカリ金属塩がより好ましい。
還元剤及びチタン化合物の量は特に制限されず、ジアリールケトン誘導体の反応性等を勘案して適宜調整することができる。還元剤の使用量は、ジアリールケトン誘導体1モルに対して、好ましくは0.5〜5.0モルの範囲、より好ましくは0.5〜3.0モルの範囲、より一層好ましくは0.5〜2.0モルの範囲である。チタン化合物の使用量は、ジアリールケトン誘導体1モルに対して、好ましくは0.05〜5.0モルの範囲、より好ましくは0.1〜3.0モルの範囲、より一層好ましくは0.5〜2.0モルの範囲である。
溶媒としては、ジアリールケトン誘導体の製造に用いるものと同種のものを用いることができる。また、ジアリールケトン誘導体の製造工程で使用された溶媒を、そのまま、工程使用することができる。溶媒の量は、反応容器の容量等を勘案して適宜調整することが
できる。溶媒の使用量は、ジアリールケトン誘導体1gに対して、通常1〜100mLの範囲である。溶媒に対するジアリールケトン誘導体、チタン化合物及び還元剤の添加順序は特に制限されず、製造装置等を勘案して適宜決定することができる。添加方法としては、例えば、溶媒にジアリールケトン誘導体を添加した後、チタン化合物及び還元剤を添加する方法、溶媒にチタン化合物及び還元剤を添加した後、ジアリールケトン誘導体を添加する方法等が挙げられるが、溶媒にチタン化合物及び還元剤を添加した後、ジアリールケトン誘導体を添加する方法が好ましい。具体的には、溶媒にチタン化合物及び還元剤を添加し、還元剤とチタン化合物とを、20〜120℃にて反応させ、次いで、溶媒にジアリールケトン誘導体を添加する方法が、還元反応の収率が高い点で好ましい。還元剤とチタン化合物とを反応させる時間は、0.1〜17時間の範囲で適宜調整することができる。
ジアリールケトン誘導体の還元反応の反応温度は、通常、−30〜120℃の範囲で適宜調整することができる。ジアリールケトン誘導体の還元反応の反応時間は、通常、0.5〜24時間の範囲で適宜調整することができる。
ジアリールケトン誘導体の製造後、後処理を行ってもよい。後処理としては、特に限定されず、通常の反応処理を適用すれることができる。例えば、反応液中に水、塩酸水等を添加して反応を止め、次いで、クロロホルム等の有機溶媒で生成物を抽出し、次いで、得られた有機層を分取し、濃縮後、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、ジアリールメタン誘導体を単離することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は具体例であって、本発明はこれらにより限定されるものではない。
<実施例1>
(5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の合成)
先ず、4−メトキシ−2−メチル安息香酸を、硫酸に溶解させた後、得られた溶液を氷水バスで4℃まで冷却した。4−メトキシ−2−メチル安息香酸の量は0.50g(3.0mmol)であり、硫酸の量は2mLとした。硫酸の濃度は98質量%であった。液状の臭素の単体(Br)を2分間かけてこの溶液に滴下し、4℃の温度に冷却した状態で2時間にわたって攪拌した後、室温で18時間にわたって更に攪拌して、第1混合物を得た。臭素の量は0.24g(1.5mmol)であり、1モルの4−メトキシ−2−メチル安息香酸に対する臭素(Br)の量は、0.5モルとした。第1混合物は液状であった。
第1混合物に20mLの水を加え、5分間にわたって攪拌して、固形物を含む第2混合物を得た。第2混合物を濾過し、固形物を濾別した。濾別した固形物を20mLの水を用いて洗浄した。洗浄後の固形物を60℃の温度で17時間にわたって送風乾燥した。乾燥後の固形物の量は0.74gであった。
乾燥後の固形物を上述した方法でNMR分析したところ、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、3−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の混合物であった。乾燥後の固形物における5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、3−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の割合は、それぞれ、49.5質量%、49.5質量%、及び1質量%であった。
(5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の精製)
上記乾燥後の固形物を、70℃の温度のエタノールに溶解させて、第1溶液を得た。乾燥後の固形物の量は0.74gであり、エタノールの量は2.96mLであった。第1溶液を30分間攪拌して20℃まで冷却し、その後、20℃の温度に維持した状態で更に4時間攪拌して、固形物を析出させた。析出した固形物を濾別し、これをエタノールを用いて洗浄した。洗浄後の固形物を60℃の温度で17時間にわたって送風乾燥させて、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の結晶を含む固形物を得た。固形物における5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の結晶の量は0.33gであり、4−メトキシ−2−メチル安息香酸からの収率は44%であった。
(ジアリールケトン誘導体の製造)
下記反応に示すとおり、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸(BMMA)を基質として、ジアリールケトン誘導体(BMMK)を得た。
Figure 2021161106
BMMA(3g、12.2mmol)のクロロホルム溶液にDMF(1滴)加えた後氷水にて6℃まで冷却して混合液を得た。混合液に塩化オキサリル(1.71g、13.5mmol)を6℃で2分かけて滴下した後同温で2時間、室温で19時間攪拌して、塩化合物液を得た。塩化合物液を減圧濃縮した後、濃縮液に塩化メチレン12mlを加えて希釈した。希釈液を10℃まで冷却し、塩化チタン(IV)(3.5g、18.5mmol)の塩化メチレン(12ml)溶液を10−12℃で5分かけて滴下し、同温で15分攪拌してチタン混合液を得た。このチタン混合液にフェネトール(1.5g、12.3mmol)を5〜8℃で15分かけて滴下し、同温で2時間、室温で2時間攪拌して反応液を得た。反応液を氷水(20ml)にゆっくり加え、分液後有機層を減圧濃縮した。濃縮液にヘキサン(30mL)を加え、氷冷で1時間攪拌した。析出した結晶を、濾過、乾燥することによりBMMKを得た(3.4g、収率:80%)を得た。得られたBMMKの特性は下記のとおりであった。
Mp:83〜84℃。
IR(KBr)νmax:1641、1591cm−1
H−NMR(CDCl)δ:7.74―7.76(m、2H)、7.51(s、1H)、7.26(s、1H)、6.91−6.94(m、2H)、6.79(s、1H),4.09−4.14(m、2H)、3.95(s、3H)、2.33(s、3H)、1.43−1.47(m、3H)。
(ジアリールメタン誘導体の製造)
下記反応に示すとおり、BMMKを基質として、ジアリールメタン誘導体(BMMB)を得た。
Figure 2021161106
BMMK(8.1g、23.2mmol)のジメトキシエタン(80mL)溶液に水素化ホウ素ナトリウム(1.3g、34.4mmol)を加え70℃で2時間攪拌し、27℃まで冷却して混合液を得た。この混合液にTiCl(6.58g、34.7mmol)の塩化メチレン(80ml)溶液を加えた後、40℃で7時間攪拌してチタン混合液を得た。チタン混合液を氷水(300ml)へ注入し、塩化メチレン(200ml×2)で抽出し、硫酸マグネシウムを用いて脱水した後、減圧濃縮した。濃縮残渣を酢酸エチル(20ml)に希釈後、シリカゲル(20g)のパッドに通した。流出液を減圧濃縮し、濃縮残渣をヘプタンに50℃で溶解した。この溶液を25℃まで30分かけて冷却した。室温で1時間、氷冷で2時間攪拌した後、―15℃で20時間静置した。析出した結晶を濾過、冷ヘプタタン(5ml)洗浄、減圧乾燥(50℃)することによりBMMBを得た(6.1g、収率:78.7%)。得られたBMMBの特性は下記のとおりであった。
Mp:63〜65℃。
IR(KBr)νmax:1514、1491cm−1
H−NMR(CDCl)δ:7.24―7.26(m、2H)、6.98−7.00(m、1H)、6.79−6.82(m、2H)、6.71(s、1H)、3.98−4.03(m、2H)、3.87(s、3H)、3.82(s、2H)、2.20(s、3H)、1.38−1.41(m、3H)。
<実施例2>
臭素(Br)の量を0.264gに変更し、1モルの4−メトキシ−2−メチル安息香酸に対する臭素(Br)の量を0.55モルとしたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の合成及び精製を実施した。
合成後の固形物を上述した方法でNMR分析したところ、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、3−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の混合物であった。合成後の固形物における5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、3−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の割合は、それぞれ、47質量%、30質量%、及び23質量%であった。5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の4−メトキシ−2−メチル安息香酸からの収率は78%であった。
<実施例3>
臭素(Br)の量を0.36gに変更し、1モルの4−メトキシ−2−メチル安息香酸に対する臭素(Br)の量を0.75モルとしたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の合成及び精製を実施した。
合成後の固形物を上述した方法でNMR分析したところ、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の混合物であった。合成後の固形物における5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の割合は、それぞれ、41質量%及び59質量%であった。
<比較例1>
非特許文献2に記載の方法で、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸を合成した。具体的には、先ず、4−メトキシ−2−メチル安息香酸を、クロロホルム溶液に溶解させて、得られた溶液に鉄粉を加えた。4−メトキシ−2−メチル安息香酸の量は0.50g(3.0mmol)であり、クロロホルムの量は1mlであり、鉄粉の量は0.01g(0.2mmol)であった。鉄粉を混合した溶液を4℃まで冷却後、液状の臭素の単体(Br)を2分間かけてこの溶液に滴下し、4℃の温度で冷却した状態で2時間にわたって攪拌した後、室温で18時間にわたって更に攪拌して、第1混合物を得た。臭素(Br)の量は0.61g(3.8mmol)であり、1モルの4−メトキシ−2−メチル安息香酸に対する臭素(Br)の量は1.27モルとした。第1混合物はゲル状であり、撹拌が極めて困難であった。
第1混合物にクロロホルムを加えて固形物を溶解させて、水層と有機層とに分離させた。この有機層から試料を採取して、H−NMR分析を実施した。その結果、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、3−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸、及び3,5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の割合は、それぞれ、50質量%、50質量%、及び0質量%であった。5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の4−メトキシ−2−メチル安息香酸からの収率は34%であった。
実施例1乃至3と比較例1との対比から明らかなように、硫酸を用いる方法では、クロロホルムを用いる方法と比較して、第1混合物の流動性が高く、生産効率を高めることができ、かつ、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の高い選択性を実現できた。また、実施例1乃至3の結果から明らかなように、4−メトキシ−2−メチル安息香酸に対する臭素のモル比を低めると、5−ブロモ−4−メトキシ−2−メチル安息香酸の選択性をより高めることができた。

Claims (7)

  1. 硫酸存在下、4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸と臭素とを接触させて、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸を含む第1混合物を得ることを含む、5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
  2. 1モルの前記4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する前記臭素の量は、1モル以下である請求項1に記載の5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
  3. 1モルの前記4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する前記臭素の量は、0.4モル以上0.8モル以下である請求項1に記載の5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
  4. 前記硫酸の濃度は、90質量%以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
  5. 1gの前記4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸に対する前記硫酸の量は、1mL以上10mL以下である請求項1〜4の何れか1項に記載の5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
  6. 前記第1混合物から前記5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固形物を取り出すことと、
    取り出した前記5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の固形物を60℃以上のアルコール系溶媒に溶解させて第1溶液を得ることと、
    前記第1溶液を30℃以下に冷却して前記5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の析出物を得ることと
    を更に含む請求項1〜5の何れか1項に記載の5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
  7. 前記4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸は、4−メトキシ−2−メチル安息香酸を含む請求項1〜6の何れか1項に記載の5−ブロモ−4−アルコキシ−2−アルキル安息香酸の製造方法。
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