JP2021160217A - 液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布およびその製造方法、液体含浸皮膚被覆シート、ならびにフェイスマスク - Google Patents

液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布およびその製造方法、液体含浸皮膚被覆シート、ならびにフェイスマスク Download PDF

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Katsuhito Iwai
千明 大倉
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Abstract

【課題】皮膚への密着性に優れ、かつ良好な触感を有する、液体含浸皮膚被覆シートを提供する。【解決手段】第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、前記第1繊維層は前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含み、前記第2繊維層は前記第2繊維層の総質量を基準として親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含み、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。【選択図】なし

Description

本開示は、液体、特に化粧料を含浸させた液体含浸皮膚被覆シートの基材となる積層不織布およびその製造方法、ならびに当該不織布を用いた液体含浸皮膚被覆シートおよびフェイスマスクに関する。
人体または動物の皮膚を被覆して、人体または動物の皮膚に所定の物質を付与するために用いられる、液体を含浸させたシートが種々提案され、実用されている。具体的には、有効成分を含む液体(例えば化粧料)を含浸させた液体含浸皮膚被覆シート(フェイスマスクや踵、肘、膝などに使用する角質ケアシート)等が挙げられる。液体含浸皮膚被覆シートの基材としては、不織布が一般的に用いられている。液体含浸皮膚被覆シートは、比較的長い時間、皮膚に密着させて使用することが多いため、密着性、液体の放出性、触感、および利便性等の点から様々な不織布が基材として提案されている。
国際公開第2006/016601号パンフレット 特開2016−98464号公報
本開示は、液体を含浸させた状態で皮膚に対して良好な密着性を示し、かつ皮膚と接触する表面がセルロース繊維に由来する良好な触感を与える、液体含浸皮膚被覆シートを提供することを目的とする。
本開示は、第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、
前記第1繊維層は前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含み、
前記第2繊維層は前記第2繊維層の総質量を基準として親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含み、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、
液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布を提供する。
本開示はまた、第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、
前記第1繊維層は撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含み、
前記第2繊維層は親水性繊維を含み、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層の表面におけるスポット吸収率が35%以上であり、
前記第1繊維層の表面におけるスポット吸収時間が0.6秒以上であり、
前記第2繊維層の表面におけるスポット吸収時間が0.1秒以下であり、
前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、
液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布を提供する。
本開示はまた、第1繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含む第1繊維ウェブを作製すること、
第2繊維ウェブの総質量を基準として、親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含む第2繊維ウェブを作製すること、
前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、
前記積層繊維ウェブを、高圧流体流を用いた交絡処理に付して繊維同士を交絡させること
を含む、
前記第1繊維ウェブが第1繊維層となり、前記第2繊維ウェブが第2繊維層となる不織布であって、前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布の製造方法を提供する。
本開示の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布は、撥水性セルロース繊維が皮膚と接触する面に存在するため、良好な密着性を示すとともに、セルロース繊維に由来する良好な触感および風合いを有する。
不織布表面の水との接触角度を示す模式図である。
(本実施形態に至った経緯)
液体含浸皮膚被覆シート(以下、単に「シート」とも呼ぶ)の基材として、種々の繊維および種々の構成のものが提案されていることは、上記のとおりである。例えば、特許文献1は親水性繊維を50質量%以上含む親水性繊維層の一方または両方の表面に、繊度が0.5dtex以下である極細繊維を10質量%以上含む極細繊維層が位置し、親水性繊維層と極細繊維層とが一体化されてなり、極細繊維層を皮膚との接触面とする化粧料含浸用皮膚被覆シートが開示されている。特許文献1に記載のシートにおいては、極細繊維層が緻密で滑らかな表面を与え、化粧料が皮膚とシートとの間で薄い膜を形成しやすい。したがって、特許文献1に記載のシートは、極細繊維層の緻密で滑らかな表面による良好な触感と、皮膚とシートとの間に介在する液体の膜によって、皮膚への刺激性が低減したものとなる。特許文献1において例示されている極細繊維はいずれも、合成繊維である。
特許文献2に記載のシートは、親水性繊維を50質量%以上含む第1繊維層と、第1繊維層に含まれる親水性繊維よりも疎水性である疎水性繊維を50質量%以上含む第2繊維層とを含み、疎水性繊維層が1.2dtex以上の繊度を有し、疎水性繊維として疎水性に差を有するに種類以上の繊維を含み、第1繊維層を皮膚に接触させて使用するものである。特許文献2に記載のシートによれば、含浸させた液体が皮膚にとどまりやすく、液体による密着効果および保湿効果がより発揮される。
特許文献1のシートは、合成繊維である極細繊維が皮膚と接触する面を構成し、特許文献2のシートは、親水性繊維が皮膚と接触する面を構成し、それぞれの繊維の特徴を利用して、低刺激性または良好な密着性を達成している。しかしながら、液体含浸皮膚被覆シートは年齢や体質の異なる様々な利用者が用いるため、ある利用者にとって好ましい触感が、別の利用者には不快なものとなることもある。また、シートがもたらす効果(例えばフェイスマスクの場合には、保湿、美白または肌のたるみ抑制等)に応じて含浸液体の種類が異なるところ、含浸させる液体が変わるとシートの触感も変わることがあるため、液体の種類に応じてシートの構成を変更しなければならないこともある。
また、環境問題への意識の高まり、および/または天然素材志向の高まりを受けて、合成繊維が大量に用いられた製品よりも、天然繊維ないしは天然由来の材料からなる繊維をより多く含むシートを好む利用者も存在する。
本発明者らは特許文献2等とは異なり、親水性繊維を多く含む繊維層の表面ではなく、撥水性繊維を含む繊維層の表面を皮膚との接触面とし、かつ撥水性繊維をセルロース繊維とすることを試みた。撥水性繊維としては合成繊維(特にポリエチレンテレフタレートからなる繊維)があるが、合成繊維を好まない利用者のために撥水性セルロース繊維の使用を試みた。しかしながら、撥水性セルロース繊維又はこれと親水性セルロース繊維を組み合わせて単層構造の不織布を製造すると、不織布の機械的強度が低くなった。そこで、機械的強度を高めるために接着性繊維を混合して繊維同士を接着させると、触感が硬くなった。
本発明者らは、皮膚に接触する面を撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維とを含む繊維層の表面とし、かつ当該繊維層に親水性繊維を含み、撥水性セルロース繊維を含まないか、含むとしてもその割合が20質量%以下である繊維層を繊維同士の交絡により一体化させる構成を試みた。その結果、優れた密着性を有し、機械的強度も比較的大きく、液体含浸皮膚被覆シートの基材に適した不織布を得ることができた。
以下、本実施形態の不織布を構成する繊維をまず説明する。
(撥水性セルロース繊維)
セルロース繊維は本来親水性を有するものであるが、本実施形態では人為的に撥水性を付与したセルロース繊維を「撥水性セルロース繊維」と呼び、これを用いる。セルロース繊維の種類は特に限定されない。セルロース繊維には以下のものが含まれる。
(1)綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプ及びカポック等の植物に由来する天然繊維;
(2)ビスコース法で得られるレーヨン及びポリノジックレーヨン、銅アンモニア法で得られるキュプラ、及び溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)及びリヨセル(登録商標)等の再生繊維;
(3)溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;
(4)アセテート繊維等の半合成繊維;及び
(5)機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ
撥水性セルロース繊維は、これらのセルロース繊維に撥水剤を付着させることで撥水性を付与したものであってよい。あるいは、撥水性セルロース繊維は、紡糸液に特定の化合物を混合して再生繊維を紡糸した後、この再生繊維に特定の撥水剤を付与することで、特定の化合物と撥水剤との間で結合を生じさせ、もって撥水性を付与する方法で得られたものであってよい。かかる方法で得られる撥水性再生セルロース繊維は、例えば、特開2019−65443号に開示されている。
撥水性セルロース繊維としては、例えば、ダイワボウレーヨン(株)製のエコリペラス(商品名、撥水性ビスコースレーヨン)、Kelheim Fibres GmbHのOlea(商品名、撥水性ビスコースレーヨン)等が上市されている。本実施形態においては、これらの撥水性セルロース繊維を用いてよい。特に、エコリペラス(商品名)は高い撥水性を示し、また、耐久性の高い撥水性を有し、例えば水流交絡処理に付された場合でも撥水性が低下しにくいことから好ましく用いられる。
撥水性セルロース繊維の繊度は、例えば、0.6dtex以上3.3dtex以下の繊度を有してよく、特に1.0dtex以上2.5dtex以下であってもよく、より特には1.4dtex以上2.0dtex以下であってもよい。撥水性セルロース繊維の繊度が小さすぎると、第1繊維層の空隙が小さくなるため、不織布が液体を保持しにくく、大きすぎると不織布の触感が低下することがある。撥水性セルロース繊維の繊度はこれらの範囲に限定されない。特に天然繊維を使用する場合には、繊度の調整が難しいことから、上記範囲外の繊度のものを使用してよい。
撥水性セルロース繊維の繊維長は、特に限定されず、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。例えば、積層不織布の製造において第1繊維層がカードウェブを作製して製造される場合、撥水性セルロース繊維は短繊維であってよい。この短繊維の繊維長は例えば20mm以上100mm以下としてよく、特に28mm以上75mm以下としてよく、より特には30mm以上65mm以下としてよい。あるいは、第1繊維層がエアレイ法で製造される場合、繊維長は例えば2mm以上20mm以下としてよい。
本実施形態においては、素材、繊維長および繊度のうち一つまたは複数が異なる撥水性セルロース繊維を、複数用いてもよい。
本実施形態において、撥水性セルロース繊維の撥水性は、例えば以下の方法で浸水時間を測定することにより評価できる。
(1)原綿1gを採取し軽く丸める。
(2)300mLビーカーに水300mLを入れ、水面から1cmの高さから採取したサンプルを静かに落とす。ビーカー底から水面までの高さは7cmとする。
(3)10分間原綿の状態を観察し、原綿がビーカーの底に着くまでの時間(浸水時間)を計測する。
上記の方法において浸水時間を測定したときに、10分経過した時点で、サンプルが吸水するもののビーカーの底までは沈降しないものが、撥水性セルロース繊維として好ましく用いられる。10分経過した時点で、サンプルが沈降せず、水面に一部ないしは全部浮いているものは、撥水性セルロース繊維としてより好ましく用いられる。
(親水性セルロース繊維)
本実施形態では、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維とを組み合わせて用いる。「親水性セルロース繊維」という用語は、撥水性セルロース繊維と区別するために用いられるものであり、撥水性が付与されておらず、本来の親水性を有するセルロース繊維を指す。したがって、親水性セルロース繊維の例は、撥水性セルロース繊維に関して説明したとおりである。
親水性セルロース繊維は、再生繊維であってよい。再生繊維は繊度の調整が容易であること、およびばらつきの小さいものであることから、好ましく用いられる。再生繊維のうち、ビスコースレーヨンは、コスト的に有利であることから、特に好ましく用いられる。
親水性セルロース繊維の繊度は、例えば、0.2dtex以上3.0dtex以下の繊度を有してよく、特に0.3dtex以上2.2dtex以下であってもよく、より特には0.6dtex以上2.0dtex以下であってもよい。親水性セルロース繊維の繊度が小さすぎると、不織布に繊維塊(ネップ)が生じやすくなり、大きすぎると不織布の触感が低下することがある。親水性セルロース繊維の繊度はこれらの範囲に限定されない。特に天然繊維を使用する場合には、繊度の調整が難しいことから、上記範囲外の繊度のものを使用してよい。
親水性セルロース繊維の繊維長は、特に限定されず、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。積層不織布の製造方法(繊維層の作製方法)と繊維長の関係は、撥水性セルロース繊維に関連して説明したとおりである。
第1繊維層には、素材、繊維長および繊度のうち一つまたは複数が異なる親水性セルロース繊維を複数用いてもよい。
親水性セルロース繊維は、撥水性セルロース繊維の撥水性の評価方法として説明した方法で浸水時間を測定したときに、60秒以内にサンプルがビーカーの底に達するようなものであってよい。親水性セルロース繊維は、サンプルをビーカー内の水面に落としてから、例えば50秒以内、特に45秒以内、より特には30秒以内に、吸水して底に達するものであってよい。
(親水性繊維)
親水性繊維は、具体的には、上記において説明した親水性セルロース繊維のほか、セルロース繊維以外の天然繊維(例えば、シルク、およびウールなど)、ならびに親水性を有する合成繊維、または疎水性の合成繊維(公定水分率が5%未満の合成繊維)に親水化処理を施したもの等である。親水化処理として、例えば、コロナ放電処理、スルホン化処理、グラフト重合処理、繊維への親水化剤の練り込み、および耐久性油剤の塗布が挙げられる。親水性繊維は、上述した親水性セルロース繊維であることが好ましい。
親水性繊維の繊度は、上述した親水性セルロース繊維と同様の繊度であるとよい。
親水性繊維の繊維長は、特に限定されず、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。積層不織布の製造方法(繊維層の作製方法)と繊維長の関係は、撥水性セルロース繊維に関連して説明したとおりである。
本実施形態においては、素材、繊維長、および繊度のうち一つまたは複数が異なる親水性繊維を、複数用いてもよい。
親水性繊維は、撥水性セルロース繊維の撥水性の評価方法として説明した方法で浸水時間を測定したときに、60秒以内にサンプルがビーカーの底に達するようなものであってよい。親水性繊維は、サンプルをビーカー内の水面に落としてから、例えば50秒以内、特に45秒以内、より特には30秒以内に、吸水して底に達するものであってよい。
(接着性繊維)
本実施形態の積層不織布は、後述するとおり、第2繊維層に接着性繊維を含んでよい。接着性繊維は、積層不織布において繊維同士を接着する役割をし、積層不織布の強度を向上させ、また、積層不織布の伸びを抑制する。接着性繊維は、一般には、熱可塑性樹脂からなる合成繊維であり、加熱により接着性を示す熱接着性繊維であるが、接着性を有する限りにおいて熱接着性のものでなくてよく、また、合成繊維以外のものであってよい。接着性繊維は、上述した親水性繊維が接着性を有するものであってもよい。
接着性繊維が合成繊維である場合、合成繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン-1−エチレン共重合体を含む)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマーから任意に選択される1または複数の熱可塑性樹脂からなるものであってよい。
合成繊維は、単一成分(「単一セクション」ともいう)からなる単一繊維であってよく、および/または複数の成分(「セクション」ともいう)から構成される複合繊維であってよい。複合繊維は、例えば、同心または偏心の芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維、または分割型複合繊維等であってよい。繊維の断面は円形であっても非円形であってもよく、非円形の形状としては、楕円形、Y形、X形、井形、多葉形、多角形、星形等が挙げられる。また、合成繊維は、中空断面を有するものであってよい。単一繊維および複合繊維のいずれの場合も、繊維を構成する各セクションは、一種類の樹脂からなっていてよく、あるいは二種以上の樹脂が混合されたものであってもよい。
合成繊維が単一繊維である場合には、単一繊維は、上記ポリオレフィン系樹脂、上記ポリエステル系樹脂、上記ポリアミド系樹脂、および上記アクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種以上の樹脂からなるものであってよい。より具体的には、ポリエチレン単一繊維、ポリプロピレン単一繊維、ポリエチレンテレフタレート単一繊維等を用いてよい。
合成繊維が複合繊維である場合には、融点の最も低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。その場合、不織布を生産する工程において、最も融点が低い熱可塑性樹脂からなる成分(以下、「低融点成分」)が溶融または軟化する条件で熱を加えると、低融点成分が接着成分となる。融点のより高い熱可塑性樹脂である第1成分と、融点のより低い熱可塑性樹脂である第2成分とからなる複合繊維を構成する樹脂の組み合わせ(第1/第2)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体等のポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、ならびにポリプロピレン/ポリエチレン、およびポリプロピレン/プロピレン共重合体等の二種類のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の組み合わせ、および融点の異なる二種類のポリエステル系樹脂の組み合わせである。
あるいは、第1成分と第2成分の組み合わせは生分解性を有する樹脂の組み合わせであってよく、そのような組み合わせによれば積層不織布における生分解性繊維の割合をより大きくすることができる。具体的には、第1成分をポリ乳酸、第2成分をポリブチレンサクシネートとすることで接着性繊維を生分解性のものとし得る。
単一繊維または複合繊維の構成成分として例示した熱可塑性樹脂は、具体的に示された熱可塑性樹脂を50質量%以上含む限りにおいて他の成分を含んでよい。具体的に示された熱可塑性樹脂は80質量%以上含まれていてよく、90質量%以上含まれていてよく、あるいは構成成分は具体的に示された熱可塑性樹脂から実質的に成っていてよい。ここで「実質的に」という用語は、通常、熱可塑性樹脂には各種の添加剤等が含まれていることを考慮して使用している。例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの組み合わせにおいて、「ポリエチレン」はポリエチレンを50質量%以上含んでいれば、他の熱可塑性樹脂および添加剤等を含んでいてよい。このことは以下の例示においてもあてはまる。
合成繊維が、融点のより高い熱可塑性樹脂が第1成分として芯成分を構成し、融点のより低い熱可塑性樹脂が第2成分として鞘成分を構成する同心または偏心芯鞘型複合繊維である場合、芯/鞘の組み合わせは、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/プロピレン−エチレン共重合体、ポリプロピレン/プロピレン−ブテン-1−エチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル(例えば、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート)であってよい。これらの樹脂の組み合わせは、分割型複合繊維において用いてもよい。
芯鞘型複合繊維の場合、芯成分と鞘成分との複合比(芯成分:鞘成分)が体積比で80:20〜20:80であることが好ましく、70:30〜30:70であることがより好ましく、60:40〜40:60であることがさらに好ましい。
分割型複合繊維の場合、二つの成分の比(第1:第2)は体積比で、80:20〜20:80であることが好ましく、70:30〜30:70であることがより好ましく、60:40〜40:60であることがさらに好ましい。分割型複合繊維の場合、分割数(即ち、複合繊維におけるセクションの数)は、例えば、4以上、32以下であってよく、特に4以上、20以下であってよく、より特には6以上、10以下であってよい。
本実施形態においては、第1成分/第2成分の組み合わせが、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンである、芯鞘型複合繊維(同心または偏心)を接着性繊維として好ましく用いることができる。これらの繊維は、比較的低い温度(110℃以上130℃以下で接着性を示し、接着後の不織布の風合いを柔軟にすることから好ましく用いられる。
接着性繊維の繊度は、例えば、1.0dtex以上4.0dtex以下であってよく、特に1.5dtex以上2.5dtex以下であってよく、より特には1.6dtex以上2.4dtex以下、さらにより特には1.7dtex以上2.2dtex以下であってよい。接着性繊維の繊度が小さすぎると、積層不織布の強度が低く、積層不織布に伸びが生じやすくなることがあり、大きすぎると、積層不織布の触感を硬くすることがある。積層不織布に伸びが生じやすいと、例えば積層不織布をフェイスマスクとして使用する場合には、目や口の位置に設けた開口部の位置ずれが生じることがある。
特に接着性繊維が分割型複合繊維である場合、分割型複合繊維は分割前の繊度が1.0dtex以上4.0dtex以下であってよく、分割後に0.1dtex以上1.0dtex未満の接着性繊維を与えるものであってよい。
接着性繊維の繊維長は、特に限定されず、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。例えば、積層不織布の製造において第2繊維層がカードウェブを作製して製造される場合、接着性繊維は短繊維であってよい。この短繊維の繊維長は例えば20mm以上100mm以下としてよく、特に28mm以上75mm以下としてよく、より特には30mm以上65mm以下としてよい。あるいは、第2繊維層がエアレイ法で製造される場合、繊維長は例えば2mm以上20mm以下としてよい。
(他の繊維)
本実施形態の積層不織布は、上述の撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維ならびに親水性繊維および接着性繊維以外の繊維を含んでいてよい。例えば、第1繊維層は、撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維以外の他の繊維として、セルロース繊維以外の親水性繊維を含んでよい。
あるいは、他の繊維は、例えば、接着性繊維として機能しない合成繊維であってよい。具体的には、接着性繊維として、T℃で加熱したときに接着性を示す合成繊維を用いたときに、融点がT℃よりも高く、T℃で加熱したときに接着性を示さない合成繊維が他の繊維として含まれていてよい。したがって、ある合成繊維が接着性繊維として含まれるか、他の繊維として含まれるかは、それとともに不織布に含まれる合成繊維によって決定され、ある合成繊維は、接着性繊維として含まれる場合もあれば、他の繊維として含まれる場合もある。
例えば、ポリエステル(芯)/ポリプロピレン(鞘)からなる芯鞘型複合繊維は、ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の組み合わせから成る芯鞘型複合繊維とともに用いる場合は、ポリエチレンが最も低い温度で熱接着性を示すために、他の繊維として含まれることとなる。一方、これが、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン6の組み合わせからなる分割型複合繊維とともに用いる場合、ポリプロピレンが最も低い温度で熱接着性を示すために、接着性繊維として含まれることとなる。
また他の繊維は、撥水性セルロース繊維の撥水性の評価方法として説明した方法で浸水時間を測定したときに、その浸水時間が60秒より大きく、10分未満であるセルロース繊維であってよい。
他の繊維の繊度は、例えば、1.0dtex以上4.0dtex以下であってよく、特に1.3dtex以上2.5dtex以下、より特には1.4dtex以上2.2dtex以下であってよい。他の繊維の繊度が小さすぎると、不織布にネップを生じさせ、風合いに影響が出ることがあり、大きすぎると、不織布の表面がざらついたものとなって、触感が低下することがある。
他の繊維の繊維長は、特に限定されず、不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。積層不織布の製造方法(繊維層の作製方法)と繊維長の関係は、撥水性セルロース繊維および接着性繊維に関連して説明したとおりである。
(不織布の構成)
本実施形態の積層不織布は、第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる。この積層不織布において、第1繊維層は撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含み、第2繊維層は親水性繊維を含み、かつ撥水性セルロース繊維を含まないか、含むとしても20質量%以下の割合で含み、両繊維層は繊維同士の交絡により一体化されている。この積層不織布は、液体含浸皮膚被覆シートとして使用する場合、第1繊維層を皮膚に接触させて使用する。
第1繊維層には、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維の両方が含まれる。撥水性セルロース繊維は第1繊維層を皮膚と接触させる際に、シートと皮膚との密着性を向上させる役割をする。親水性セルロース繊維は、後述するように繊維同士を高圧流体流、特に高圧水流を噴射して交絡させる場合に、繊維同士の交絡を確保してシートの一体性を確保する役割をする。第1繊維層が撥水性セルロース繊維のみで構成されると、第1繊維層内および第1繊維層と第2繊維層との間で繊維同士が十分に交絡せず、シートの一体性が損なわれることがある。一方、第1繊維層に含まれる親水性セルロース繊維の割合が大きすぎると、繊維同士の交絡が緊密になりすぎて、第1繊維層の表面の密着性が低下することがある。
本実施形態において、第1繊維層は、第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含んでよい。撥水性セルロース繊維の割合は、特に40質量%以上60質量%以下であってよく、より特には45質量%以上55質量%以下であってよい。親水性セルロース繊維の割合は、特に40質量%以上60質量%以下であってよく、より特には45質量%以上55質量%以下であってよい。ここで、第1繊維層に含まれる繊維の割合は、第2繊維層と一体化される前の第1繊維層に含まれる繊維の割合である。したがって、第2繊維層との一体化により、第2繊維層を構成する繊維の一部が第1繊維層に混入しているとしても、当該混入した繊維は第1繊維層に含まれるものとはならない。
あるいは、本実施形態の積層不織布において、第1繊維層は、積層不織布の第1繊維層の表面におけるスポット吸収率を以下の方法に従って測定したときに、35%以上となるように、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含むものであってよい。第1繊維層の表面におけるスポット吸収率は、特に50%以上であってよく、より特には60%以上であってよく、さらにより特には70%以上であってよい。スポット吸収率の上限は、例えば100%であってよい。第1繊維層の表面におけるスポット吸収率が低いほど撥水性が高く、第1繊維層を皮膚接触面として液体含浸皮膚被覆シートに使用した場合に、肌への密着性がより良好となる傾向にある。一方で、スポット吸収率が低すぎると、撥水性セルロース繊維の割合が大きくて、後述するように繊維同士を高圧流体流(特に水流)で交絡させる場合に、繊維同士が十分に交絡せず、シートの一体性が損なわれることがある。
(スポット吸収率)
(1)不織布(タテ22cm以上×ヨコ10cm以上)を用意し、測定対象となる表面(第1繊維層の表面が測定対象となる場合には第1繊維層の表面)が上面となるように置く。不織布の下には、不織布以外のものに蒸留水が吸収されることを防ぐためポリエチレン製のシートを配置する。
(2)スポイトに蒸留水を入れ、不織布からの距離が1cmの位置で蒸留水を1滴(0.049mL)滴下する。なお滴下は不織布の端から2cm以上離れた位置で行う。
(3)蒸留水を滴下した場所から2cm離れた箇所に蒸留水を1滴滴下し、同様にして合計40箇所に蒸留水を滴下する。
(4)蒸留水を40箇所に滴下した後10分経過したときに、不織布表面から液滴形の液体が存在しなくなった箇所の数P(0≦P≦40)を数え、下記の式によりスポット吸収率(%)を算出する。
スポット吸収率(%)=P×100/40
上記スポット吸収率は、親水性繊維の割合が小さい場合でも大きくなる傾向にあり、本実施形態の不織布の第1繊維層は、撥水性セルロース繊維を含むにもかかわらず、そのスポット吸収率は比較的大きく、100%に近い値または100%を示すことがある。そのため、スポット吸収率のみによって、親水性セルロース繊維の割合を調整することが困難となることがある。そこで、本実施形態の積層不織布において、第1繊維層は、積層不織布の第1繊維層の表面におけるスポット吸収時間を以下の方法に従って測定したときに、0.6秒以上となるように、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含むものであってよい。第1繊維層の表面におけるスポット吸収時間は、特に1.2秒以上であってよく、より特には1.6秒以上であってよく、さらにより特には2.5秒以上であってよい。第1繊維層の表面におけるスポット吸収時間が所定の時間以上であると、第1繊維層の表面が良好な撥水性を示し、第1繊維層を皮膚接触面として液体含浸皮膚被覆シートに使用した場合に、肌への密着性が良好となる傾向にある。
(スポット吸収時間)
(1)不織布(タテ22cm以上×ヨコ10cm以上)を用意し、測定対象となる表面(第1繊維層の表面が測定対象となる場合には第1繊維層の表面)が上面となるように置く。不織布の下には、不織布以外のものに蒸留水が吸収されることを防ぐためポリエチレン製のシートを配置する。
(2)スポイトに蒸留水を入れ、不織布からの距離が1cmの位置で蒸留水を1滴(0.049mL)滴下する。なお滴下は不織布の端から2cm以上離れた位置で行う。
(3)蒸留水の滴下後、不織布表面から、液滴形の液体が不織布表面から存在しなくなるまでの時間(吸収時間)を測定する。
(4)蒸留水を滴下した場所から2cm離れた箇所に蒸留水を1滴滴下し、吸収時間を測定することを、合計40箇所に蒸留水を滴下して実施する。
(5)40箇所における吸収時間の平均値をスポット吸収時間(秒)として算出する。なお、10分経過しても液体が不織布表面に残ったままのものが5箇所以上ある場合は、その不織布の第1繊維層の表面のスポット吸収時間は600秒とする。
スポット吸収時間は、撥水性セルロース繊維の割合が小さい場合でも大きくなる傾向にあり、本実施形態の不織布の第1繊維層は、親水性セルロース繊維を含むにもかかわらず、そのスポット吸収時間が上限値(600秒)に近い値または上限値となることがある。そのため、スポット吸収時間のみによって、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含む繊維層と、撥水性セルロース繊維のみを含む繊維層とを区別することができないことがある。そこで、本実施形態においては、スポット吸収率とスポット吸収時間の二つのパラメータを用いて、二つのセルロース繊維の割合を調整することが好ましい。この二つのパラメータを用いることで、繊維層における繊維の割合の調整が容易となる。
あるいは、本実施形態の積層不織布において、第1繊維層は、積層不織布の第1繊維層の表面にて水との接触角度を以下の方法に従って測定したときに、10分後の接触角度が90度以下となるように、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含むものであってよい。第1繊維層の表面の10分後の接触角度は、特に80度以下であってよく、より特には70度以下であってよく、さらにより特には60度以下であってよい。接触角度の下限は、例えば0度であってよい。第1繊維層の表面における10分後の接触角度が大きいほど撥水性が高く、第1繊維層を皮膚接触面として液体含浸皮膚被覆シートに使用した場合に、肌への密着性が良好となる傾向にある。一方で、10分後の接触角度が大きすぎると、撥水性セルロース繊維の割合が大きくて、後述するように繊維同士を高圧流体流(特に水流)で交絡させる場合に、繊維同士が十分に交絡せず、シートの一体性が損なわれることがある。
(不織布の水との接触角度の測定方法)
(1)不織布(タテ22cm以上×ヨコ10cm以上)を用意し、測定対象となる表面(第1繊維層の表面が測定対象となる場合には第1繊維層の表面)が上面となるように置く。不織布の下には、不織布以外のものにイオン交換水が吸収されることを防ぐためポリエチレン製のシートを配置する。
(2)25mLビュレット(アズワン製)にイオン交換水を入れ、ビュレット台にセット
する。
(3)ビュレットの先端と不織布の距離が1cmになるようセットする。
(4)イオン交換水を1滴(0.049mL)滴下し、着水から10分後に、図1に示すように、不織布10の水滴20との接触角度αを測定する。測定は3箇所で行い、また水滴の左右両方ともの接触角度を測定し、合計6点の角度について、それらを平均する。なお、10分以内に水滴が不織布内に吸収された場合は、不織布の別の場所で測定をやり直す。ただし、40点測定を行っても測定箇所が3箇所に満たない(すなわち、イオン交換水を滴下して10分経過した後で水滴が残っている箇所が3箇所に満たない)場合は、接触角度を0度とする。
本実施形態において、第1繊維層と第2繊維層とが繊維同士の交絡により一体化されている場合には、各繊維層の繊維が他の繊維層に移動する等して、一体化される前の各繊維層に含まれる繊維の割合を求めることが困難となることがある。スポット吸収時間、スポット吸収率および接触角度の測定はそのような場合に第1繊維層の表面が撥水性セルロース繊維によって適切な撥水性を有しているか否かを知る指標となり得る。
本実施形態において、第1繊維層は、撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維以外に、接着性繊維および/または他の繊維を含んでよい。第1繊維層が、撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維以外の繊維を含む場合、当該繊維の割合は第1繊維層の総質量を基準として、例えば40質量%以下であってよく、特に30質量%以下、より特には20質量%以下であってよい。撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維以外の繊維の割合が多すぎると、撥水性セルロース繊維および/または親水性セルロース繊維の割合が小さくなり、シートの皮膚への密着性が低下することがあり、あるいは繊維同士の交絡が不十分となることがある。第1繊維層は、撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維のみで構成されてよい。
第2繊維層は、親水性繊維を含み、撥水性セルロース繊維を含まないか、または含むとしても20質量%以下の割合で含む。第2繊維層は、撥水性セルロース繊維を含まないことが好ましい。第2繊維層は、積層不織布の機械的強度を確保する役割をする。後述するように繊維同士を高圧流体流、特に高圧水流を噴射して交絡させる場合に、第2繊維層に親水性繊維が含まれることで、繊維同士の交絡がより強固なものとなり、不織布の機械的強度を高くし得る。一方、撥水性セルロース繊維は特に水との親和性が小さいため、繊維同士の交絡に寄与しにくい傾向にある。そのため、本実施形態では撥水性セルロース繊維が第2繊維層に含まれないことが好ましく、含まれるとしてもその割合は20質量%以下である。
また、第2繊維層に含まれる親水性繊維が多く含まれることにより、第2繊維層で多くの液体を保持することが可能となる。特に親水性繊維が親水性セルロース繊維である場合、繊維は高い吸液性を示すので、これが第2繊維層に多く含まれると、第2繊維層でさらに多くの液体を保持することが可能となる。
本実施形態において、第2繊維層は、第2繊維層の総質量を基準として、親水性繊維を50質量%以上含んでよい。親水性繊維の割合は、特に60質量%以上であってよく、より特には70質量%以上であってよく、さらにより特には80質量%以上であってよい。親水性繊維の割合の上限は、例えば100質量%であってよく、特に95質量%、より特には90質量%であってよい。ここで、第2繊維層に含まれる繊維の割合は、第1繊維層と一体化される前の第2繊維層に含まれる繊維の割合である。したがって、第1繊維層との一体化により、第1繊維層を構成する繊維の一部が第2繊維層に混入しているとしても、当該混入した繊維は第2繊維層に含まれるものとはならない。
あるいは、本実施形態の積層不織布において、第2繊維層は、積層不織布の第2繊維層の表面におけるスポット吸収率が97%以上となるように、親水性繊維を含むものであってよい。第2繊維層の表面におけるスポット吸収率は、特に99%以上であってよく、より特には100%であってよい。第2繊維層の表面におけるスポット吸収率は、第2繊維層が上面となるように不織布を置くことにより測定することができる。
あるいは、本実施形態の積層不織布において、第2繊維層は、積層不織布の第2繊維層の表面におけるスポット吸収時間を測定したときに、0.1秒以下となるように、親水性繊維を含むものであってよい。第2繊維層の表面におけるスポット吸収時間は、特に0秒であってよい。第2繊維層の表面におけるスポット吸収時間は、第2繊維層が上面となるように不織布を置くことにより測定することができる。
あるいは、本実施形態の積層不織布において、第2繊維層は、積層不織布の第2繊維層の表面にて水との接触角度を上記の方法に従って測定したときに、接触角度が5度以下となるように、親水性繊維を含むものであってよい。第2繊維層の表面における水との接触角度は、特に0度であってよい。第2繊維層の表面における水との接触角度は、第2繊維層が上面となるように不織布を置くことにより測定することができる。
第2繊維層は、親水性繊維に加えて、接着性繊維を含んでよい。その場合、積層不織布において、繊維同士がこの接着性繊維で接着されていることが好ましい。接着性繊維により繊維同士が接着されることで、積層不織布の機械的強度がより向上し得る。また、接着性繊維が第2繊維層に含まれ、第1繊維層に好ましくは含まれない場合には、触感に与える影響をより小さくして、不織布の機械的強度を向上させることができる。
第2繊維層が接着性繊維を含む場合、接着性繊維は、第2繊維層の総質量を基準として、例えば10質量%以上30質量%以下含まれてよく、特に15質量%以上28質量%以下、より特には20質量%以上25質量%以下含まれてよい。接着性繊維の占める割合が大きすぎると、第2繊維層における保液性、ひいては積層不織布全体の保液性が低下することがある。
接着性繊維が分割型複合繊維である場合、分割前の分割型複合繊維は、第2繊維層の総質量を基準として、10質量%以上30質量%以下含まれるとよく、特に15質量%以上28質量%以下、より特には20質量%以上25質量%以下含まれてよい。分割後においては接着性を示している繊維が、第2繊維層の総質量を基準として、5質量%以上15質量%以下含まれるとよく、特に7.5質量%以上14質量%以下、より特には10質量%以上12.5質量%以下含まれてよい。
本実施形態において、第2繊維層は、親水性繊維および接着性繊維以外に、他の繊維を含んでよい。第2繊維層が他の繊維を含む場合、他の繊維の割合は第2繊維層の総質量を基準として、例えば40質量%以下であってよく、特に30質量%以下、より特には25質量%以下であってよい。他の繊維の割合が大きすぎると、親水性セルロース繊維、および含まれる場合には接着性繊維の割合が小さくなり、積層不織布の保液性および/または機械的強度が不十分となることがある。第2繊維層は、親水性繊維のみ、または親水性繊維と接着性繊維のみで構成されてよい。
本実施形態の積層不織布において第2繊維層が親水性繊維として親水性セルロース繊維を含む場合、積層不織布の総質量を基準としてセルロース繊維(撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維の両方を含み、また、両方に当てはまらないセルロース繊維も含む)を、例えば85質量%以上含んでよく、特に90質量%以上、より特には95質量%以上含んでよい。セルロース繊維をより多く含むことで、積層不織布の生分解性が高くなり、これを用いたシートを環境への負荷が少ない製品として提供することができる。本実施形態の積層不織布は、セルロース繊維のみで構成されていてよい。
本実施形態において、第1繊維層と第2繊維層は繊維同士が交絡することにより一体化されている。繊維同士の交絡は、例えば、ニードルパンチ処理、または高圧流体流(特に水流)交絡処理によるものであってよい。本実施形態では、高圧流体流(特に水流)交絡処理により繊維同士が一体化されていることが好ましい。高圧流体流交絡処理によれば、繊維同士を緊密に交絡させて、不織布の表面を滑らかなものとすることができる。また、高圧流体流が高圧水流である場合には、第1繊維層および第2繊維層に含まれる親水性セルロース繊維および親水性繊維による交絡がより強固なものとなりやすい。
本実施形態の積層不織布において、第2繊維層が接着性繊維を含む場合、接着性繊維により繊維同士が接着していてよい。繊維同士が交絡に加えて接着されることで、不織布の機械的強度をより向上させることができる。
本実施形態の積層不織布は、第1繊維層と第2繊維層とからなる二層構造のものであってよく、あるいは第2繊維層の両方の表面に第1繊維層が配された三層構造のものであってよい。二層構造の積層不織布は、積層不織布の目付を小さくすることができ、積層不織布が折れ曲がりやすくなる。折れ曲がりやすさは凹凸への追従性につながり、密着性が向上する。第1繊維層と第2繊維層の二層構造からなる不織布においては、皮膚接触面となる第1繊維層がいずれの面に位置しているかが分かるように、例えば第1繊維層の構成繊維の一部を着色等してよく、あるいは積層不織布を作製した後で、いずれか一方の面に印刷によりしるしをつけてもよい。
本実施形態において、各繊維層の目付は特に限定されない。第1繊維層の目付は、例えば10g/m以上、特に15g/m以上であってよく、より特には20g/m以上であってよい。第1繊維層の目付の上限は、例えば70g/mであり、特に50g/m、より特には30g/mである。第2繊維層の目付は、例えば10g/m以上であってよく、特に15g/m以上、より特には20g/m以上あってよい。第2繊維層の目付の上限は、例えば70g/mであり、特に50g/m、より特には30g/mである。第1繊維層と第2繊維層の目付の比(第1/第2)は、例えば7/1〜1/7であってよく、特に3/1〜1/3、より特には1.5/1〜1/1.5であってよい。二つの繊維層の目付の比がこれらの範囲内にあると、良好な密着性を示しつつ、保液性および機械的強度の点でも実用的な不織布が得られる傾向にある。
積層不織布全体の目付もまた特に限定されず、例えば、30g/m以上であってよく、特に40g/m以上、より特には45g/m以上であってよい。積層不織布全体の目付の上限は、例えば80g/mであってよく、特に70g/m、より特には60g/mであってよい。不織布の目付は用途や含浸すべき液体の量等に応じて決定され、例えば、シートがフェイスマスクである場合には、不織布の目付は30g/m以上80g/m以下、特に40g/m以上60g/m以下としてよい。シートがアイシート(目元パックともいう)である場合には、不織布の目付は、40g/m以上80g/m以下、特に45g/m以上70g/m以下としてよい。
積層不織布の厚さは、乾燥時において、294Paの荷重を加えた状態で、例えば0.2mm以上、特に0.3mm以上、より特には0.4mm以上であってよい。また、不織布の厚さは、例えば1.3mm以下、特に1.2mm以下、より特には1.0mm以下であってよい。また、不織布全体の厚さは、乾燥時において、1.96kPaの荷重を加えた状態で、例えば、0.3mm以上、特に0.4mm以上、より特には0.5mm以上であってよい。また、同荷重を加えた状態の不織布の厚さは、例えば0.9mm以下、特に0.8mm以下、より特には0.7mm以下であってよい。積層不織布の厚さが小さすぎると、不織布に含浸させ得る液体の量が少なくなって、所定量の液体を皮膚に供給できないことがある。積層不織布全体の厚さが大きすぎると、皮膚の曲面にシートを沿わせにくく、シートが部分的に浮く等して、シート全体で均等に皮膚を被覆することが難しくなることがある。
本実施形態の積層不織布は、後述する実施例で説明する方法で保水率を測定したときに、例えば1200%以下の保水率を示すものであってよい。本実施形態の不織布の保水率は、特に1100%以下であってよく、より特には1000%以下であってよく、さらにより特には930%以下であってよい。本実施形態の保水率の下限は、例えば700%であってよく、特に750%、より特には800%であってよい。本実施形態の不織布は撥水性セルロース繊維を含んでいるために、高い保水率を示さない傾向にある。保水率が過度に大きくない積層不織布によれば、皮膚を被覆して液体による皮膚の処理が済んだ後で、廃棄されるシートに残存する液体の量を少なくすることが可能となり、液体の損失を小さくすることができる。
保水率は、各繊維層を構成する繊維の種類および割合、ならびに積層不織布の目付により変化することがある。したがって、本実施形態の積層不織布においては、上記の保水率が得られるように、これらを調整してよい。
本実施形態の積層不織布は、乾燥時のMD方向の引張強さが、例えば、30N/5cm以上160N/5cm以下であってよく、特に34N/5cm以上150N/5cm以下であってよく、より特には38N/5cm以上140N/5cm以下であってよい。乾燥時のMD方向の引張強さが低すぎると製品加工時に破断することがある。乾燥時のMD方向の引張強さが高すぎると不織布の風合いが良好でない場合がある。
本実施形態の積層不織布は、乾燥時のCD方向の引張強さが、例えば、4.5N/5cm以上30N/5cm以下であってよく、特に4.9N/5cm以上25N/5cm以下であってよく、より特には5.3N/5cm以上23N/5cm以下であってよい。乾燥時のCD方向の引張強さが低すぎると不織布にたて筋が入りやすくなる。乾燥時のCD方向の引張強さが高すぎると不織布の風合いが良好でない場合がある。
本実施形態の積層不織布は、乾燥時のMD方向の伸び率が、例えば、10%以上60%以下であってよく、特に15%以上55%以下であってよく、より特には18%以上50%以下であってよい。また、本実施形態の積層不織布は、乾燥時のCD方向の伸び率が、例えば、60%以上160%以下であってよく、特に70%以上150%以下であってよく、より特には80%以上140%以下であってよい。乾燥時のMD方向またはCD方向の伸び率が低すぎると不織布の風合いが良好でない場合がある。乾燥時のMD方向またはCD方向の伸び率が高すぎると製品加工時の打ち抜き時に不良が出やすくなる。
本実施形態の積層不織布は、乾燥時のMD方向の10%伸長時応力が、例えば、2.0N/5cm以上110N/5cm以下であってよく、特に3.0N/5cm以上100N/5cm以下であってよく、より特には4.0N/5cm以上95N/5cm以下であってよい。また、本実施形態の積層不織布は、乾燥時のCD方向の10%伸長時応力が、例えば、0.3N/5cm以上4.0N/5cm以下であってよく、特に0.4N/5cm以上3.0N/5cm以下であってよく、より特には0.5N/5cm以上2.7N/5cm以下であってよい。乾燥時のMD方向またはCD方向の10%伸長時応力が低すぎると製品加工時の打ち抜き時に不良が出やすくなる。乾燥時のMD方向またはCD方向の10%伸長時応力が高すぎると不織布の風合いが良好でない場合がある。
本実施形態の積層不織布は、湿潤時のMD方向の引張強さが、例えば、50N/5cm以上150N/5cm以下であってよく、特に53N/5cm以上140N/5cm以下であってよく、より特には55N/5cm以上130N/5cm以下であってよい。また、本実施形態の積層不織布は、湿潤時のCD方向の引張強さが、例えば、8.0N/5cm以上35N/5cm以下であってよく、特に9.0N/5cm以上32N/5cm以下であってよく、より特には10N/5cm以上25N/5cm以下であってよい。湿潤時のMD方向またはCD方向の引張強さが低すぎると製品となった液体含浸皮膚被覆シートの取り出し時に破断することがある。湿潤時のMD方向またはCD方向の引張強さが高すぎると積層不織布が折れ曲がりにくくなり、凹凸のある皮膚への追従性が低下することがある。
本実施形態の積層不織布は、湿潤時のMD方向の伸び率が、例えば、15%以上65%以下であってよく、特に20%以上60%以下であってよく、より特には25%以上55%以下であってよい。また、本実施形態の積層不織布は、湿潤時のCD方向の伸び率が、例えば、80%以上160%以下であってよく、特に90%以上150%以下であってよく、より特には95%以上142%以下であってよい。湿潤時のMD方向またはCD方向の伸び率が低すぎると皮膚へ積層不織布を貼り付けにくくなる。湿潤時のMD方向またはCD方向の伸び率が高すぎると製品となった液体含浸皮膚被覆シートの取り出し時に大きく伸びることがある。
本実施形態の積層不織布は、湿潤時のMD方向の10%伸長時応力が、例えば、2.0N/5cm以上80N/5cm以下であってよく、特に2.5N/5cm以上70N/5cm以下であってよく、より特には3.0N/5cm以上63N/5cm以下であってよい。また、本実施形態の積層不織布は、湿潤時のCD方向の10%伸長時応力が、例えば、0.30N/5cm以上1.5N/5cm以下であってよく、特に0.35N/5cm以上1.2N/5cm以下であってよく、より特には0.40N/5cm以上1.1N/5cm以下であってよい。湿潤時のMD方向またはCD方向の10%伸長時応力が低すぎると皮膚へ積層不織布を貼り付けにくくなる。湿潤時のMD方向またはCD方向の10%伸長時応力が高すぎると液体含浸皮膚被覆シートに目や口等の部分が打ち抜かれている場合、貼り付ける際に目や口等の位置が伸びてずれ、使用しにくいことがある。
本実施形態の積層不織布は、第1繊維層表面の動摩擦係数の変動係数が、例えば、0.010以上0.050以下であってよく、特に0.015以上0.040以下であってよく、より特には0.020以上0.030以下であってよい。第1繊維層表面の動摩擦係数の変動係数が高すぎると積層不織布の風合いが良好でない場合がある。第1繊維層表面の動摩擦係数の変動係数が低すぎると皮膚の凹凸に追従しにくいことがある。
本実施形態の積層不織布は、第2繊維層表面の動摩擦係数の変動係数が、例えば、0.010以上0.070以下であってよく、特に0.020以上0.060以下であってよく、より特には0.026以上0.050以下であってよい。第2繊維層表面の動摩擦係数の変動係数が高すぎると積層不織布の風合いが良好でない場合がある。第2繊維層表面の動摩擦係数の変動係数が低すぎると第2繊維層の密度が高くなりやすく、保水性が低下することがある。
本実施形態の積層不織布は、第1繊維層表面の15分後密着力が、例えば、20mN/cm以上65mN/cm以下であってよく、特に35mN/cm以上60mN/cm以下であってよく、より特には40mN/cm以上55mN/cm以下であってよい。第1繊維層表面の15分後密着力が高すぎると積層不織布を皮膚から剥がしにくくなる。第1繊維層表面の15分後密着力が低すぎると積層不織布が皮膚からずれ落ちやすくなる。
(不織布の製造方法)
本実施形態の積層不織布は、例えば、
撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含む第1繊維ウェブを作製すること、
親水性繊維を含み、撥水性セルロース繊維を含まないか、または含むとしても20質量%以下の割合で含む第2繊維ウェブを作製すること、
第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、
積層繊維ウェブを、繊維同士を交絡させる処理に付すこと
を含む製造方法によって製造することができる。
第1繊維ウェブは第1繊維層となるウェブであり、第2繊維ウェブは第2繊維層となるウェブである。第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブに含まれる繊維の種類および割合は先に第1繊維層および第2繊維層に関連して説明したとおりであるから、ここでは省略する。第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブの目付も先に第1繊維層および第2繊維層に関連して説明したとおりであるから、ここでは省略する。第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブの積層形態も先に第1繊維層および第2繊維層の積層形態として説明したとおりであるから、ここでは省略する。
第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブは、公知の方法で作製することができる。各繊維ウェブの形態は、例えば、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、およびエアレイウェブ、および湿式抄紙ウェブ等から選択されるいずれであってもよい。第1繊維ウェブと第2繊維ウェブの形態は互いに異なっていてよい。
第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとは重ね合わされて、積層繊維ウェブとなる。積層繊維ウェブは繊維同士を交絡させる処理に付される。繊維同士を交絡させる処理は、例えば、高圧流体流を用いた交絡処理であってよい。
高圧流体流処理において、高圧流体は、例えば、圧縮空気等の高圧気体、および高圧水等の高圧液体である。不織布の製造においては、高圧流体として高圧水を用いた水流交絡処理を用いることが多く、本実施形態においても、実施の容易性等の点から、水流交絡処理が好ましく用いられる。以下においては、高圧流体として高圧水(以下においては、単に「水流」とも呼ぶ)を用いた場合の製造方法を説明する。
水流交絡処理は、支持体に積層繊維ウェブを載せて、柱状水流を噴射することにより実施する。例えば、支持体は、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体であることが好ましい。水流交絡処理は、孔径0.05mm以上、0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上、1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上、15MPa以下の水流を、積層繊維ウェブの表裏面にそれぞれ1〜5回ずつ噴射することにより実施してよい。水圧は、好ましくは、1MPa以上、10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上、7MPa以下である。
積層繊維ウェブが、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとからなる二層構造のウェブである場合、水流は第2繊維ウェブにまず噴射し、それから第1繊維ウェブに噴射することが好ましい。第2繊維ウェブをまず水流に当てることで、第2繊維ウェブ中に含まれる親水性繊維による交絡がある程度進行する。そのため、その後で第1繊維ウェブに水流を噴射したときに撥水性セルロース繊維が水をはじいても、水流による交絡が円滑に進行しやすくなる。
第2繊維ウェブが接着性繊維を含む場合、積層繊維ウェブを接着処理に付して、得られる積層不織布において繊維同士が接着された構成が得られるようにしてよい。接着処理は、熱接着処理であってよく、あるいは、電子線照射による接着、または超音波溶着であってよい。熱処理によれば、接着性繊維(例えば、複合繊維の低融点成分)が熱処理の際、加熱によって溶融または軟化して、積層繊維ウェブを構成する繊維同士を接着することができる。
熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用した熱処理である。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を積層繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、または熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。
熱処理温度(例えば、熱風の温度)は、接着性繊維を構成する成分であって、接着成分として機能させる成分が軟化または溶融する温度としてよい。例えば、熱処理温度は、当該成分の融点以上の温度としてよい。例えば、接着性繊維がポリエチレンを成分として含み、ポリエチレンを接着成分とする場合には、熱処理温度を130℃〜150℃としてよく、ポリブチレンサクシネートを接着成分とする場合には、熱処理温度を120℃〜133℃としてよい。
(液体含浸皮膚被覆シート)
本実施形態の積層不織布に液体を含浸させることにより、人または動物の皮膚を被覆するための液体含浸皮膚被覆シートが得られる。含浸させる液体および含浸量は、用途に応じて適宜選択される。シートを、対人用フェイスマスク、角質ケアシートおよびデコルテシートといった、対人用液体含浸皮膚被覆シートとして提供する場合には、有効成分を含む液体(例えば化粧料)を不織布100質量部に対して、500質量部以上2000質量部以下の含浸量で含浸させてよく、特に600質量部以上1800質量部以下の含浸量で含浸させてよく、より特には700質量部以上1500質量部以下の含浸量で含浸させてよい。有効成分は、例えば、保湿成分、角質柔軟成分、制汗成分、香り成分、美白成分、血行促進成分、紫外線防止成分、および痩身成分等であるが、これらに限定されるものではない。
フェイスマスクは、顔を被覆するのに適した形状を有し、さらに、例えば、目、鼻および口に相当する部分に、必要に応じて打ち抜き加工による開口部又は切り込み部が設けられた形態で提供される。あるいは、フェイスマスクは、顔の一部分(例えば、目元、口元、鼻または頬)のみを覆うような形状のものであってよい。あるいはまた、フェイスマスクは、目の周囲を覆うシートと、口の周囲を覆うシートとから成るセットとして提供してよく、あるいは3以上の部分を別々に覆うシートのセットとして提供してよい。
角質ケアシートは角質が厚く、硬化しやすい踵、肘、膝などに使用される皮膚被覆シートであり、角質柔軟成分および保湿成分等を含む液体を含浸させることにより、角質に対し保湿や軟化を促す効果、あるいは余分な角質の除去を促進する効果を発揮する。本実施形態の不織布は、いずれの効果・効能を発揮する角質ケアシートにおいても、基材として使用することができる。角質ケアシート、例えば踵用の角質ケアシートは、貼り付ける際に、シートが踵の曲線に合わせやすくなるように、切り込みおよび/もしくは切り欠き、ならびに/またはシートの一部が打ち抜かれて開口部を有する形態で提供される。
液体含浸皮膚被覆シートは、身体の任意の部位(例えば、首、手の甲、首から胸元までの部位(デコルテとも呼ばれている))を保湿またはその他のケアをするために用いられる、保湿成分またはその他の有効を含む液体を含浸させた保湿シートであってよい。あるいは、液体含浸皮膚被覆シートは、痩身成分を含む液体を含浸させた、痩身用シートであってよい。痩身用シートは、例えば、大腿部または腹部に貼り付けて用いられる。
本実施形態の積層不織布を用いた液体含浸皮膚被覆シートは、積層不織布の第1繊維層を皮膚に接触させて使用することで良好な密着性を発揮する。第1繊維層の表面が皮膚と良好に密着する理由としては、第1繊維層と第2繊維層とを高圧流体流(特に水流)により一体化させる際に、第1繊維層中の撥水性セルロース繊維が流体をはじくために交絡が進行しにくく、その自由度が比較的高いことによると推察される。尤も、この推察により本発明の範囲が限定されることはない。また、本実施形態の積層不織布は、皮膚と接触する面を構成する繊維の多くがセルロース繊維であるために、チクチクとした触感を与えにくく、良好な触感を与える。
以下、本実施形態を、実施例により説明する。
本実施例で使用する繊維として以下のものを用意した。
撥水性セルロース繊維1:繊度1.7dtex、繊維長40mm、炭化水素系撥水剤により繊維表面が撥水処理されたビスコースレーヨン(商品名:エコリペラス、ダイワボウレーヨン(株)製)。この繊維の撥水性を上記の方法で評価したところ、10分経過後もサンプルが沈降せず、サンプルのほぼ全部が水面に浮いていた。
親水性セルロース繊維A:繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン(商品名:コロナCD、ダイワボウレーヨン(株)製)。この繊維の撥水性(親水性)を上記の方法で評価したところ、水面にサンプルを投入した後、30秒以内でビーカーの底に達した。
親水性セルロース繊維B:繊度1.7dtex、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維(商品名:リヨセル、レンツィング社製)。この繊維の撥水性(親水性)を上記の方法で評価したところ、水面にサンプルを投入した後、30秒以内でビーカーの底に達した。
接着性繊維A:繊度1.7dtex、繊維長51mm、芯がポリプロピレン、鞘が高密度ポリエチレン(融点:約133℃)である同心芯鞘型複合繊維(商品名:NBF(H)、ダイワボウポリテック(株)製)。この繊維の撥水性(親水性)を上記の方法で評価したところ、水面にサンプルを投入した後、60秒以内でビーカーの底に達しなかった。
接着性繊維B:繊度2.2dtex、繊維長45mm、芯がポリ乳酸、鞘がポリブチレンサクシネート(融点:約115℃)である同心芯鞘型複合繊維(商品名:NBF(KK)PL、ダイワボウポリテック(株)製)。この繊維の撥水性(親水性)を上記の方法で評価したところ、水面にサンプルを投入した後、60秒以内でビーカーの底に達しなかった。
接着性繊維C:繊度2.2dtex、繊維長45mm、ポリエチレンテレフタレートと高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が交互に菊花状に配置された、分割数が8である分割型複合繊維(商品名:DFS(SH)、ダイワボウポリテック(株)製)。この繊維の撥水性(親水性)を上記の方法で評価したところ、水面にサンプルを投入した後、60秒以内でビーカーの底に達しなかった。
(実施例1)
[第1繊維層]
撥水性セルロース繊維1を50質量%と親水性セルロース繊維Aを50質量%混合して、パラレルカード機を用いて、狙い目付約25g/mで第1繊維ウェブを作製した。
[第2繊維層]
親水性繊維である親水性セルロース繊維Aを80質量%と接着性繊維Aを20質量%混合して、パラレルカード機を用いて、狙い目付約25g/mで第2繊維ウェブを作製した。
[積層不織布]
第1繊維ウェブの上に第2繊維ウェブを積層して積層繊維ウェブとし、積層繊維ウェブを90メッシュの平織の支持体に載置して、4m/分の速度で搬送しつつ、第2繊維ウェブの表面に1.5MPaの水圧の水流を1回噴射し、続いて第1繊維ウェブの表面に1.5MPa水圧の水流を1回噴射する水流交絡処理を行った。水流交絡処理で使用したノズルは、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルであり、処理中、ノズルと繊維ウェブとの間の間隔は20mmとした。
次いで、水流交絡処理後の繊維ウェブを、135℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いて、乾燥処理を行うとともに、接着性繊維Aの接着成分(高密度ポリエチレン、鞘成分)により繊維同士を熱接着させて、実施例1の積層不織布を得た。
(実施例2)
第2繊維ウェブの表面に噴射する水流の水圧、および、第1繊維ウェブの表面に噴射する水流の水圧をそれぞれ2.0MPaとしたこと以外は、実施例1と同様の手順で実施例2の積層不織布を得た。
(実施例3)
第1繊維ウェブを撥水性セルロース繊維1を80質量%と親水性セルロース繊維Aを20質量%混合して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で実施例3の積層不織布を得た。
(実施例4)
第2繊維ウェブを親水性セルロース繊維Aのみを用いて作製したこと、および水流交絡後の繊維ウェブを80℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いた乾燥処理にのみ付したこと以外は、実施例1と同様の手順で実施例4の積層不織布を得た。
(実施例5)
第2繊維ウェブを親水性セルロース繊維Bのみを用いて作製したこと以外は、実施例4と同様の手順で実施例5の積層不織布を得た。
(実施例6)
接着性繊維Aに代えて接着性繊維Bを用いて第2繊維ウェブを作製し、ポリブチレンサクシネート(鞘成分)を接着成分として繊維同士を接着させたこと以外は、実施例1と同様の手順で実施例6の積層不織布を得た。
(実施例7)
接着性繊維Aに代えて接着性繊維Cを用いて第2繊維ウェブを作製し、接着性繊維Cを構成する高密度ポリエチレンを接着成分として繊維同士を接着させたこと以外は、実施例1と同様の手順で実施例7の積層不織布を得た。
(比較例1)
第1繊維ウェブを親水性セルロース繊維Aのみを用いて作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で比較例1の積層不織布を得た。
(比較例2)
第1繊維ウェブを撥水性セルロース繊維1のみを用いて作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で比較例2の積層不織布を得た。
(比較例3)
第1繊維ウェブを撥水性セルロース繊維1を20質量%と親水性セルロース繊維Aを80質量%混合して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で比較例3の積層不織布を得た。
不織布の評価は、下記のように行った。
<不織布の厚さ>
厚み測定機((株)大栄科学精器製作所製のTHICKNESS GAUGE モデル CR−60A(商品名))を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定した。
<強伸度>
強伸度は、JIS L 1913:2010 6.3に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、切断時の荷重値(引張強さ)、伸び率、ならびに10%伸長時応力(10%伸長させるのに必要な力)を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)を引張方向として実施した。評価結果はいずれも3点の試料について測定した値の平均で示している。
乾燥時(標準時、DRY)及び湿潤時(WET)の引張強さ等について測定した。
<変動係数>
変動係数は、静・動摩擦測定機(トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティラボ製)を用いて測定した。試料片として5cm×10cmの不織布を用意した。なお試料片は不織布のMD方向、CD方向が長辺となるものをそれぞれ用意した。測定機の接触端子には触覚接触子(株式会社トリニティラボ製)を使用した。試料片100質量部に1000質量部の蒸留水を含浸させた状態で、試料片を測定機(テーブル摺動型)の測定テーブルに固定し、試料片の表面に対して接触端子を荷重30gf、速度10mm/sec、距離30mmで往復2回移動させた。2往復目の動摩擦力の数値を読み取り、往の数値と復の数値との平均値を、1つの試料片の動摩擦力(gf)とした。
各試料片について3回測定を行い、MD方向及びCD方向の合計6つの測定値の平均値を、各実施例及び比較例の動摩擦力Fk(gf)とした。そして動摩擦力Fk(gf)と荷重(30gf)より動摩擦係数μkを算出した。また、測定の際に得られた動摩擦係数の標準偏差σと上述した動摩擦係数の平均値μkとから、下記の式に従って動摩擦係数の変動係数(バラつき)CVを求めた。変動係数CVは、第1繊維層および第2繊維層の表面それぞれについて求めた。
動摩擦係数の変動係数(バラつき)CV=σ/μk
<密着力>
密着力を求めるにあたり、15分後水分率をまず求めた。
5cm×6cmの試料片(MD×CD)を用意し、試料片の質量を測定した後、試料片100質量部に対して1000質量部の蒸留水を含浸させた。蒸留水を含浸させた試料片を32℃に調整した金属製プレートの上に置いて15分後の質量を測定して、下記の式に従って15分後水分率を算出した。
15分後水分率(%)=[(m2−m1)/m1]×100
m1:蒸留水を含浸させる前の不織布の質量(g)
m2:32℃の金属製プレートの上に15分置いた後の不織布の質量(g)
密着力は、静・動摩擦測定機(トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティラボ製)を用いて測定した。試料片として、15分後水分率を求めた試料片と同じサンプルから採取した12cm×5cmの試料片を用意した。試料片は不織布のMD方向、CD方向が長辺となるものをそれぞれ用意した。測定機(テーブル摺動型)の測定テーブルに人工皮膚(縦24cm×横12cm、商品名:BIO SKIN PLATE、製造販売元:株式会社ビューラックス)を取り付けた。
各試料片の15分後水分率に基づいて、試料片100質量部に15分後水分率と同じ水分率となるように蒸留水を含浸させた状態で、測定機のクリップで試料片の短辺側の端部(当該箇所を「クリップ端部」とする)を水平方向に把持するために挟んだ。測定テーブルを移動させて、クリップ端部と対向する端部(当該箇所を「非クリップ端部」とする)から試料の長辺8cm×短辺5cmの領域だけが人工皮膚と重なるように水平に重ねて、15分間載置した。試料片の長辺方向に沿って、測定テーブルを試料の長辺方向と平行に、クリップ端部から遠ざかる方向に速度10mm/secで移動させた時の最大抵抗力(N)を読み取った。一つの実施例につきMD方向及びCD方向それぞれについて3枚の試料片について測定し、合計6枚の最大抵抗力(N)の平均値を求め、これを試料の密着面の面積(40cm)で除して、単位面積当たりの密着力(mN/cm)を求めた。
なお、本実施例において、密着力は、第1繊維層の表面について求め、第1繊維層の表面を人工皮膚と接触させて上記の測定を実施した。
<保水率>
不織布を縦(MD)方向×横(CD)方向=100mm×100mmに切断し、不織布の質量を測定した後、蒸留水に2分間浸した。それから、蒸留水を含浸させた不織布の三隅を洗濯ばさみで挟んで吊し、10分経過後の質量を測定して、下記の式に従って保水率を算出した。なお測定は温度23℃、相対湿度55%の条件で行った。
保水率(%)=[(M2−M1)/M1]×100
M1:蒸留水を含浸させる前の不織布の質量(g)
M2:蒸留水を含浸させてから10分間吊した後の不織布の質量(g)
実施例1〜7および比較例1〜3の評価結果を表1〜3に示す。
Figure 2021160217
Figure 2021160217
Figure 2021160217
実施例4以外の実施例はいずれも、その第1繊維層の表面のCVが第2繊維層の表面のCVよりも小さく、なめらかな触感を示した。実施例4は、第1繊維層の表面のCVが第2繊維層のそれよりも大きいものの、第1繊維層の表面は他の実施例のCVと同等の値を有しており、なめらかな触感を示した。また、実施例はいずれも、第1繊維層の表面の密着力が大きかった。実施例4は、第2繊維層の表面のCVが第1繊維層のそれよりも小さいものの、第2繊維層の表面を皮膚に接触させると、第1繊維層が外側に露出して乾燥が生じやすく、内側の第2繊維層から外側の第1繊維層へ液体の移動が生じやすくなる。その結果、皮膚に供給すべき液体の蒸発が生じるという不都合が生じることがある。
比較例1は第1繊維層に撥水性セルロース繊維が含まれていないために、密着力が低く、また、保水率が大きくなる傾向にあった。比較例2は第1繊維層が撥水性セルロース繊維のみからなるため、機械的強度(特に、CD方向の引張強さ)が小さく、実用的なものではなかった。比較例3は第1繊維層に占める撥水性セルロース繊維の割合が小さいために、第1繊維層の表面の密着性が小さかった。
実施例4および実施例5は、第2繊維層の親水性繊維がそれぞれビスコースレーヨンと溶剤紡糸セルロース繊維であるところ、実施例5が湿潤時の引張強さおよび10%伸長時応力において、実施例4よりも大きい値を示した。溶剤紡糸セルロース繊維は湿潤時の繊維強力の低下が少ないためと考えられる。
実施例1および実施例6と実施例7とは、第2繊維層の接着性繊維の繊維断面が同心芯鞘型であるか(実施例1、6)、菊花状分割型であるか(実施例7)において異なる。実施例7は、より高い保水率を示した。分割型複合繊維が水流交絡処理の際に分割したことにより、繊維の表面積が増加したためと考えられる。
本開示は以下の態様を含む。
(態様1)
第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、
前記第1繊維層は前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含み、
前記第2繊維層は前記第2繊維層の総質量を基準として親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含み、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、
液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
(態様2)
第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、
前記第1繊維層は撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含み、
前記第2繊維層は親水性繊維を含み、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層の表面におけるスポット吸収率が35%以上であり、
前記第1繊維層の表面におけるスポット吸収時間が0.6秒以上であり、
前記第2繊維層の表面におけるスポット吸収時間が0.1秒以下であり、
前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、
液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
(態様3)
前記第2繊維層は前記第2繊維層の総質量を基準として接着性繊維を10質量%以上30質量%以下含み、前記接着性繊維によって繊維同士が接着されている、態様1または2の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
(態様4)
前記親水性繊維として、親水性セルロース繊維を含む、態様1〜3のいずれかの液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
(態様5)
前記積層不織布の総質量を基準としてセルロース繊維を85質量%以上含む、態様4の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
(態様6)
前記積層不織布の目付が30g/m以上80g/m以下である、態様1〜5のいずれかの液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
(態様7)
第1繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含む第1繊維ウェブを作製すること、
第2繊維ウェブの総質量を基準として、親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含む第2繊維ウェブを作製すること、
前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、
前記積層繊維ウェブを、高圧流体流を用いた交絡処理に付して繊維同士を交絡させること
を含む、
前記第1繊維ウェブが第1繊維層となり、前記第2繊維ウェブが第2繊維層となる不織布であって、前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布の製造方法。
(態様8)
前記積層ウェブが、前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとからなる二層構造のウェブであり、前記高圧流体流を用いた交絡処理において、前記高圧流体流が水流であり、前記第2繊維ウェブの表面に水流を最初に噴射した後、前記第1繊維ウェブの表面に水流を噴射する、態様7の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布の製造方法。
(態様9)
態様1〜6のいずれかの液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布100質量部に対して、液体を500質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、液体含浸皮膚被覆シート。
(態様10)
態様1〜6のいずれかの液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布100質量部に対して、液体を500質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、フェイスマスク。
本開示の積層不織布は、撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含む第1繊維層と、親水性セルロース繊維を含み、撥水性セルロース繊維を含まないか、含むとしても20質量%以下の割合で含む第2繊維層とが一体化されてなり、湿潤状態にて第1繊維層が皮膚への良好な密着性を示す。したがって、本開示の積層不織布は、フェイスマスクのような、液体を含浸させた状態で皮膚を被覆する基材として有用である。

Claims (10)

  1. 第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、
    前記第1繊維層は前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含み、
    前記第2繊維層は前記第2繊維層の総質量を基準として親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含み、
    前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
    前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、
    液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
  2. 第1繊維層と前記第1繊維層に積層された第2繊維層とが一体化されてなる液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布であって、
    前記第1繊維層は撥水性セルロース繊維と親水性セルロース繊維を含み、
    前記第2繊維層は親水性繊維を含み、
    前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
    前記第1繊維層の表面におけるスポット吸収率が35%以上であり、
    前記第1繊維層の表面におけるスポット吸収時間が0.6秒以上であり、
    前記第2繊維層の表面におけるスポット吸収時間が0.1秒以下であり、
    前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、
    液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
  3. 前記第2繊維層は前記第2繊維層の総質量を基準として接着性繊維を10質量%以上30質量%以下含み、前記接着性繊維によって繊維同士が接着されている、請求項1または2に記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
  4. 前記親水性繊維として、親水性セルロース繊維を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
  5. 前記積層不織布の総質量を基準としてセルロース繊維を85質量%以上含む、請求項4に記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
  6. 前記積層不織布の目付が30g/m以上80g/m以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布。
  7. 第1繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を30質量%以上80質量%以下含み、親水性セルロース繊維を20質量%以上70質量%以下含む第1繊維ウェブを作製すること、
    第2繊維ウェブの総質量を基準として、親水性繊維を50質量%以上含み、かつ撥水性セルロース繊維を0質量%以上20質量%以下含む第2繊維ウェブを作製すること、
    前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとを重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、
    前記積層繊維ウェブを、高圧流体流を用いた交絡処理に付して繊維同士を交絡させること
    を含む、
    前記第1繊維ウェブが第1繊維層となり、前記第2繊維ウェブが第2繊維層となる不織布であって、前記第1繊維層を皮膚に接触させて使用する、液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布の製造方法。
  8. 前記積層ウェブが、前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとからなる二層構造のウェブであり、前記高圧流体流を用いた交絡処理において、前記高圧流体流が水流であり、前記第2繊維ウェブの表面に水流を最初に噴射した後、前記第1繊維ウェブの表面に水流を噴射する、請求項7に記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布100質量部に対して、液体を500質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、液体含浸皮膚被覆シート。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布100質量部に対して、液体を500質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、フェイスマスク。
JP2020063841A 2020-03-31 2020-03-31 液体含浸皮膚被覆シート用積層不織布およびその製造方法、液体含浸皮膚被覆シート、ならびにフェイスマスク Pending JP2021160217A (ja)

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