JP2021159965A - アルミニウムブレージングシート - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はフラックスフリーろう付け用に用いて好適なブレージングシートの提供を目的とする。【解決手段】本発明は、質量%で、Mgを0.01〜2.0%、Siを1.5〜14.0%、Biを0.005〜1.5%含有し、さらに熱力学計算において、以下の式(1)を満たす0.01質量%以上0.5質量%以下の添加元素を少なくとも1種類以上含有し、前記1種類以上の添加元素の合計含有量がその他不可避不純物元素を含めて0.05質量%以上1.5質量%以下の範囲で含まれるAl−Si−Mg−Bi系ろう材が、ブレージングシート最表面に位置し、前記ろう材に含まれ、表層面(RD−TD)方向の観察による長辺の長さが50μm以上である粗大Si粒子が、1000000μm2あたり10個以下である。γx<γ0、かつ、γ3x<1.002×γx…式(1)【選択図】図1

Description

本発明は、フラックスフリーろう付用などとして好適なアルミニウムブレージングシートに関する。
ラジエータなどのアルミニウム製自動車用熱交換器にあっては、小型軽量化とともにアルミニウム材料の薄肉高強度化が進められている。アルミニウム製熱交換器の製造では、継手を接合するろう付が行われる。
現在主流のフッ化物系フラックスを用いるろう付方法においては、フラックスが材料中のMgと反応し、不活性化してろう付不良を生じ易いため、Mg添加高強度部材の利用が制限される。このため、フラックスを使用することなくMg添加アルミニウム合金を接合するろう付方法が望まれている。
フラックスフリーろう付け技術の先行例として、Mgを含有する心材にSiとBiを含有するろう材を被覆したブレージングシートを用い、560〜620℃に加熱してろう付けする方法が知られている(特許文献1参照)。
特開2018−99726号公報 特開2014−50861号公報
フラックスフリーろう付の接合状態を安定させる方法として、本発明者らは、例えば特許文献2に示すAl−Si−Mg−Bi系ろう材に関し、このろう材中のBi粒子やMg−Bi化合物粒子の分布状態を制御する技術について研究している。
しかし、これらの従来技術において、現在主流のフッ化物系フラックスを使用するろう付方法を代替できるほどに安定した接合性が得られているとは言い難く、一般的な熱交換器に広く適用するためには、さらなる技術の向上が必要である。
そこで本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、Biを添加したAl−Si−Mg系ろう材においてろう付性を向上させるためには、ろう溶融時に表面にBiを均一に存在させることが重要であることを見出した。
また、本発明者らは、Al−Si−Mg−Bi系ろう材において、Al−Si系で亜共晶組成であってもあたかも初晶Siのような粗大なSiが晶出する場合があることを知見した。この粗大なSi晶出物の粒子は、Alより相対的に硬く、鋳造後の圧延工程でも破砕されずに、ろう材に粗大なまま残存してしまう。粗大に残存したSi晶出物の粒子は、ろう付時にAl中に拡散し、Si濃度を上昇させるので、Alの融点を低下させ、ろう付時に局所的に溶融するエロージョンが発生する原因となる。そのため、粗大なSiが晶出しないようにしなければならない。
本発明者らが上述のAl−Si−Mg−Bi系ろう材における粗大Si晶出物について研究したところ、粗大Si晶出物がAlP化合物を核として成長していることを知見した。Pはアルミニウムブレージングシートを製造する場合に用いるアルミニウム合金溶湯中に微量ながら不可避不純物として含まれていると思量される。そこで、本発明者らが、アルミニウム合金溶湯中に含まれているPの影響を除外するために、アルミニウム合金溶湯におけるPの活量を低下させる元素の添加を試み、本願発明に到達した。
本願発明は、以上説明の背景に鑑みなされたもので、フラックスフリーろう付において良好な接合性が得られるフラックスフリーろう付用アルミニウムブレージングシートを提供することを目的とする。
(1)本形態に係るアルミニウムブレージングシートは、少なくとも二層以上の複層構造を有するアルミニウムブレージングシートであって、質量%で、Mgを0.01〜2.0%、Siを1.5〜14.0%、Biを0.005〜1.5%含有し、さらに熱力学計算において、以下の式(1)を満たす0.01〜0.5%の添加元素を少なくとも1種類以上含有し、前記1種類以上の添加元素の合計含有量がその他不可避不純物元素を含めて0.05〜1.5%の範囲で含まれるAl−Si−Mg−Bi系ろう材が、心材の片面または両面かつ前記ブレージングシート最表面に位置し、前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれ、表層面(RD−TD)方向の観察による長辺の長さが50μm以上である粗大Si粒子が、1000000μmあたり10個以下であることを特徴とする。
γ<γ、かつ、γ3x<1.002×γ …式(1)
ただし、式(1)において、γは、狙い濃度(0.01〜0.5質量%)の添加元素を加えた際のPの活量係数を示し、γは、元素添加なしの場合のPの活量係数を示し、γ3xは、各添加元素を狙い濃度の3倍とした際のPの活量係数を示し、1.002は係数を示す。
(2)本形態に係るアルミニウムブレージングシートにおいて、前記添加元素が、Cr、Ni、Cu、Mo、Fe、Pb、Hg、Tl、In、Au、Ir、Sb、Re、Lu、Snのいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
(3)本形態に係るアルミニウムブレージングシートにおいて、前記添加元素が、Cr、Ni、Cu、Moのいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
本発明によれば、非酸化性雰囲気において、フラックスフリーろう付けにより、エロージョンの原因となる粗大析出Si粒子の析出数が少なく、良好で安定したろう付接合を行うことが可能になる。
本発明の一実施形態におけるフラックスフリーろう付用のブレージングシートを示す図である。 本発明の一実施形態におけるアルミニウム製自動車用熱交換器を示す斜視図である。 本発明の実施例におけるろう付評価モデルを示す図である。
以下、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
第1実施形態のブレージングシートは、少なくとも二層以上の複層構造を有するアルミニウムブレージングシートであって、心材と心材の片面または両面にクラッドされて最表面に位置するAl−Si−Mg−Bi系ろう材を具備する。あるいは、心材の片面にAl−Si−Mg−Bi系ろう材をクラッドし、心材の他面に犠牲材をクラッドした三層構造のブレージングシートであっても良い。
前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材は、質量%で、Mgを0.01〜2.0%、Siを1.5〜14.0%、Biを0.005〜1.5%含有し、さらに熱力学計算において、以下の式(1)を満たす0.01〜0.5%の添加元素を少なくとも1種類以上含有する。なお、後述する不可避不純物を含有していても良い。
γ<γ、かつ、γ3x<1.002×γ …式(1)
ただし、式(1)において、γは、狙い濃度(0.01〜0.5質量%)の添加元素を加えた際のPの活量係数を示し、γは、元素添加なしの場合のPの活量係数を示し、γ3xは、各添加元素を狙い濃度の3倍とした際のPの活量係数を示し、1.002は係数を示す。
また、前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれる前記1種類以上の添加元素の合計含有量は、その他不可避不純物元素を含めて0.05〜1.5%の範囲であり、前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材の表層面(RD−TD)方向の観察による長辺の長さが50μm以上である粗大Si粒子が、1000000μmあたり10個以下である。
以下に、本実施形態のブレージングシートにおいて規定される組成等について説明する。なお、含有量の記載はいずれも質量比で示され、質量比の範囲について「〜」を用いて表記する場合、特に指定しない限り、下限と上限を含む表記とする。よって、一例として0.01〜2.0%は、0.01%以上2.0%以下の含有量を意味する。
「ろう材」
Mg:0.01〜2.0%
Mgは、Al酸化皮膜(Al)を還元分解する。但し、ろう材におけるMg含有量が過小であると、効果が不十分であり、一方、過剰に含有すると、ろう付雰囲気中の酸素と反応して接合を阻害するMgOが生成することや、材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。このため、本形態のろう材におけるMgの含有量を前記範囲に定める。
なお、同様の理由でMg含有量を、下限で0.05%、上限で1.5%とするのが望ましい。
Si:1.5〜14.0%
Siは、ろう付時に溶融ろうを形成し、接合部のフィレットを形成する。但し、Si含有量が過小であると、フィレットを形成するための溶融ろうが不足する。一方、Siを過剰に含有すると、効果が飽和するだけでなく、材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。このため、本実施形態のろう材において、Siの含有量を前記範囲に定める。
なお、同様の理由でSi含有量を、下限で3.0%、上限で12.0%とするのが望ましい。
Bi:0.005〜1.5%
Biは、ろう付昇温過程で材料表面に濃化し、緻密な酸化皮膜の成長を抑制する。さらに、溶融ろうの表面張力を低下させることで隙間充填性が向上する。但し、Bi含有量が過小であると、効果が不十分であり、一方、Biを過剰に含有すると、効果が飽和するだけでなく、材料表面でBiの酸化物が生成し易くなり接合が阻害される。このため、本形態のろう材においてBiの含有量を前記範囲に定める。
なお、同様の理由でBi含有量を、下限で0.05%、上限で0.5%とするのが望ましい。
Ca:100質量ppm以下
Caは、不可避不純物としては、通常数百質量ppm程度以下で含有するが、 Biと高融点化合物を形成し、Biの作用を低下させるので含有量を制限するのが望ましい。100質量ppmを超えると、Biの作用が低下しろう付性が不十分となるので、100質量ppmを上限とするのが望ましい。なお、同様の理由で本形態のろう材におけるCa含有量を10質量ppm以下とするのが一層望ましい。
Zn:0.1〜9.0%
Znは、材料の電位を卑にすることで犠牲防食効果が得られるので、所望によりろう材に含有させる。ただし、Znを含有させる場合、含有量が過小であると 犠牲防食効果が不十分となり、一方、過大であると効果が飽和する。このため、本形態のろう材においてZnを含有する場合は、含有量を前記範囲とする。
なお、同様の理由でZn含有量を、下限で0.5%、上限で7.0%とするのが望ましい。また、Znを積極添加しない場合でも、Znを不純物とし て0.1%未満で含有するものであってもよい。
「Pの活量を低下させる元素」
本実施形態のろう材には、アルミニウム合金溶湯中のPの活量を低下させる元素として、Cr、Ni、Cu、Mo、Fe、Pb、Hg、Tl、In、Au、Ir、Sb、Re、Lu、Snのいずれか1種または2種以上が含有されている。
例えば、質量%で、Al:87.259%、Si:12%、Mg:0.5%、Bi:0.2%、P:0.001%、残部0.004%のねらい組成のアルミニウム合金溶湯において、上述の添加元素がない場合のPの活量係数は1.44×10-3である。
これに対し、Cr、Ni、Cu、Mo、Fe、Pb、Hg、Tl、In、Au、Ir、Sb、Re、Lu、Snにおいて、CrがPの活量係数を小さくする効果が大きく、Crから順にNi、Cu、Mo、Fe…の並びとなる順にPの活量係数を小さくする効果が徐々に小さくなる。
よって、ろう材を構成する上述の添加元素を含むアルミニウム合金の溶湯を作製し、該アルミニウム合金溶湯に対しこれらの元素を添加することで、アルミニウム合金の溶湯に微量のPを含んでいた場合、鋳造時にAlP化合物が析出し難くなる。鋳造時にAlP化合物が多く析出すると、AlP化合物を核として初晶Siが多く析出する。
従って、前述の元素を含有させたアルミニウム合金溶湯からの鋳造により、ろう材の基となる鋳片を製造した場合、鋳片におけるAlP化合物の析出を抑制できる。
従って、鋳片を必要な厚さまで圧延してクラッド材とするろう材シートを形成し、心材とろう材シートをクラッド圧延してブレージングシートを製造した場合、ろう材には粗大な初晶Siの析出が生じないか、析出したとしてもその個数は少ない。
「活量係数の計算例」
Al:87.259%、Si:12%、Mg:0.5%、Bi:0.2%、P:0.001%の組成を有するアルミニウム合金に対し0.04%の元素を添加した場合の900℃におけるPの活量と活量係数を計算した。計算には、熱力学計算ソフトウエアのFact Stage 7,X(データベース SGTEb:(株)計算力学研究センター)を用いた。
結果を以下の表1に記載する。
Figure 2021159965
表1に示す計算例は、Al:87.259%、Si:12%、Mg:0.5%、Bi:0.2%、P:0.001%の組成を有するアルミニウム合金に対しねらい組成の0.04%の元素を添加した場合と、3倍の0.12%の元素を添加した場合の活量係数を比較し、両者の差分を計算した結果を示す表である。
表1に示すように、計算結果によれば、CrとNiとCuとMoがPの活量を抑制する場合に特に抗力の大きな元素と推定できる。
また、CrとNiとCuとMoとの他に、Fe、Pb、Hg、Tl、In、Au、Ir、Sb、Re、Lu、Snのいずれか1種または2種以上を採用しても良い。
この結果に基づき、Al−Si−Mg−Bi系合金に対し、Cr、Ni、Cu、Mo、Fe、Pb、Hg、Tl、In、Au、Ir、Sb、Re、Lu、Snのいずれか1種または2種以上を採用し、残部Alと不可避不純物の組成のアルミニウム合金ろう材を用いることで、長辺長さ50μm以上の粗大Si粒子の析出数の少ないろう材を備えたブレージングシートを提供できる。
「微細Mg−Bi系化合物」
微細Mg−Bi系化合物:本形態のろう材には、円相当径で、0.01μm以上5.0μm未満の微細Mg−Bi系化合物が10000μm視野あたり10個よりも多く含まれている。
微細Mg−Bi系化合物が分散することで、ろう付昇温過程で化合物が溶融した際に、Biが材料表面に均一に濃縮し易くなり、緻密な酸化皮膜の成長が抑制される。ろう材に含まれる微細Mg−Bi系化合物が10個以下であると、緻密な酸化皮膜の抑制効果が不十分となり、ろう付性が低下する。同様の理由で、本形態のろう材に含まれる微細Mg−Bi系化合物は、20個以上であることが望ましい。
なお、ろう材表面の微細Mg−Bi系化合物の数は、作製した材料のろう材表面を0.1μmの砥粒で鏡面処理し、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いた全自動粒子解析を行うと共に、さらに、1μm以下の微細Mg−Bi系化合物を測定するため、切出したろう材層の表面から機械研磨、および電解研磨を行って薄膜を作製し、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、表面方向10000μm(100μm角)の観察視野において、0.01μm以上5.0μm以下の微細Mg−Bi系化合物の粒子数をカウントすることで求められる。
また、Mg−Bi系化合物を細かく密に分布させる手段としては、鋳造時に、溶湯温度が高いところから早い冷却速度で鋳込むこと、熱延時に、一定以上の大きな総圧下量をとること、高温域での圧延時間を長くとること、熱延仕上り温度を一定以上低く、かつ、その後の冷却速度を早くすることなどを適正に組み合わせることで調整することができる。
粗大Mg−Bi系化合物:円相当径で、5.0μm径以上の粗大Mg−Bi系化合物が10000μm視野(100μm角)あたり2個未満
粗大Mg−Bi系化合物は、ろう付昇温過程で溶融し難く、材料表面にBiが均一に濃化しにくくなるため、酸化皮膜成長の抑制効果が低い。また、粗大Mg−Bi系化合物ができることで5.0μm未満の微細Mg−Bi化合物の生成量が減るため、酸化皮膜成長の抑制効果が低下する。
なお、ろう材表面の粗大Mg−Bi系化合物の数は、前述したEPMAによる全自動粒子解析により求められる。
また、粗大Mg−Bi系化合物の生成を抑制する手段としては、前述の条件と同様に鋳造時に溶湯温度が高いところから早い冷却速度で鋳込むこと、熱延時には、一定以上の大きな総圧下量をとること、高温域での圧延時間を長くとること、熱延仕上り温度を一定以上低く、かつ、その後の冷却速度を早くすることなどを適正に組み合わせることで調整することができる。
粗大Bi単体粒子:円相当径で5.0μm以上の粗大Bi単体粒子が10000μm視野(100μm角)あたり5個未満
ろう材中に粗大Bi単体粒子が存在すると、ろう付昇温過程でBiの融点である271℃から溶融して材料表面に濃化するが、濃化が始まる温度域は、ろう付昇温過程の低い温度域である。このため、ろう材が溶融するまでに材料表面でBiが酸化して堆積することや、早い段階で酸化皮膜が不安定となり、再酸化が進み易くなることで、接合が阻害され、良好な接合状態が得られ難くなる。また、酸化によりBiが消耗するため、溶融ろうの表面張力を低下させる効果が低下する。
このとき、ろう材中で粗大Bi単体粒子が殆ど存在しないように材料を作製することでこれら問題を防止することが可能となる。具体的には、前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれる円相当径で5.0μm径以上の粗大Bi単体粒子を、ろう付前の表層面(RD−TD)方向の観察において、10000μm視野あたり5個未満とすることで、酸化などによるBiの消耗が殆どなく、Bi添加によるろう付性向上効果を大きくできる。
ろう材表面の粗大Bi単体粒子の数は、作製した材料のろう材表面を0.1μmの砥粒で鏡面処理し、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いた全自動粒子解析を行うことで求めることができる。
なお、粗大Bi単体粒子の発生を抑制する手段としては、合金のMgとBiの配合比率や、鋳造時の溶湯温度と冷却速度、および、均質化処理条件を適正に組み合わせることで調整することができる。鋳造時の溶湯温度が低いほど、また、鋳造時の冷却速度が遅いほど、粗大Bi単体粒子の数が増加する傾向があり、均質化処理条件が低温で短時間であるほど、同様に粗大Bi単体粒子の数が増加する傾向にある。
本実施形態に係るアルミニウムブレージングシートは、前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれ、表層面(RD−TD)方向の観察により、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する微細Mg−Bi系化合物が10000μm視野あたり10個よりも多く存在し、かつ、5.0μm以上の径を有する粗大Mg−Bi系化合物が10000μm視野あたり2個未満であり、さらに、前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれ、前記表層面方向の観察において、 円相当径で5.0μm以上の径を有する粗大Bi単体粒子が10000μm視野あたり5個未満であることがより好ましい。
「ろう材表層面におけるSi粒子の分布」
粗大Si粒子:長辺の長さが50μm以上の粗大Si粒子が1000000μmあたり10個以下
鋳造起因の粗大Si粒子は塊状、あるいは板状で熱間圧延でも破砕されずにブレージングシートにそのまま残存することが多い。この粗大Si粒子はろう付時にエロージョンと呼ばれる局所溶融を引きおこし、ろう付け時の穴あきの原因となる。
また、この粗大Si粒子は鋳造時に生じるものであり、例えば、DC鋳造時の表面側と中心側とで凝固条件が異なることから、分布状態に差が出る可能性がある。また、ブレージングシートは、通常はコイルから幅方向および長さ方向ともに分割して切り出されて供される。そのため、異なる鋳造条件でも生じていないことを確認するため、鋳造時の幅方向に3分割した場合にそれぞれが含まれるように、さらに長さ方向でも鋳造時の高さ方向(横型連鋳の場合は長さ方向)に3分割した場合にそれぞれが含まれるように観察し、観察視野として1000000μm視野(1000μm角)を構成することが好ましい。
「心材」
本形態における心材の組成は特定のものに限定されるものではないが、 以下の成分が好適に示される。
心材は、一例として、質量%で、Si:0.05〜1.2%、Mg:0.01〜2.0%、Mn:0.1〜2.5%、Cu:0.01〜2.5%、Fe:0.05〜1.5%、Zr:0.01〜0.3%、Ti:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.5%、Bi:0.005〜 1.5%およびZn:0.1〜9.0%の内1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成できる。
また、心材は、他の例として、質量%で、Si:0.05〜1.2%、Mg:0.01〜2.0%を含有し、さらにMn:0.1〜2.5%、Cu:0.01〜2.5%、Fe:0.05〜1.5%、Zr:0.01〜0.3%、Ti:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.5%、Bi:0.005〜1.5%およびZn:0.1〜9.0%の内1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成できる。
Si:0.05〜1.2%
Siは、固溶により材料強度を向上させる他、MgSiやAl−Mn−S i化合物として析出し材料強度を向上させる効果がある。但し、含有量が過小であると、効果が不十分となる。一方、含有量が過大であると、心材の固相線温度が低下し、ろう付時に溶融する。これらのため、心材にSiを含有させる場合、Si含有量は前記範囲とする。なお、同様の理由で、Si含有量を下限で0.1%、上限で1.0%とするのが望ましい。なお、Siを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.05%以下含有する心材であってもよい。
Mg:0.01〜2.0%
Mgは、Siなどとの化合物が析出することで材料強度を向上する。一部はろう材に拡散し、酸化皮膜(Al)を還元分解する。ただし、含有量が過小であると効果が不十分であり、一方、過大に含有すると、効果が飽和するだけでなく、材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。これらのため、心材にMgを含有させる場合、Mg含有量は前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Mg含有量を下限で0.05%、上限で1.0%とするのが望ましい。なお、Mgを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.01%以下含有する心材であってもよい。
Mn:0.1〜2.5%
Mnは、金属間化合物として析出して材料強度を向上させる。さらに固溶により材料の電位を貴にして耐食性を向上させる。ただし、含有量が過小であると効果が不十分であり、一方、過大に含有すると、材料が硬くなり素材圧延性が低下する。これらのため、心材にMnを含有させる場合、Mn含有量は前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Mn含有量を下限で0.3%、上限で 1.8%とするのが望ましい。なお、Mnを積極的に含有しない場合でも、 不可避不純物として、例えば0.1%以下含有する心材であってもよい。
Cu:0.01〜2.5%
Cuは、固溶して材料強度を向上させる。ただし、含有量が過小であると効果が不十分であり、一方、過大に含有すると、心材の固相線温度が低下し、ろう付時に溶融する。これらのため、心材にCuを含有させる場合、Cu含有量は前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Cu含有量を下限で0.02%、上限で1.2%とするのが望ましい。なお、Cuを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.01%以下含有する心材であってもよい。
Fe:0.05〜1.5%
Feは、金属間化合物として析出して材料強度を向上させる。さらに、ろう付時の再結晶を促進させ、ろう侵食を抑制する。ただし、含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると、ろう付後の腐食速度が速くなる。これらのため、心材にFeを含有させる場合、Fe含有量を前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Fe含有量を下限で0.1%、上限で0.6%とするのが望ましい。なお、Feを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.05%以下含有する心材であってもよい。
Zr:0.01〜0.3%
Zrは、微細な金属間化合物を形成し材料強度を向上させる。ただし、含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると、材料が硬くなり加工性が低下する。これらのため、心材にZrを含有させる場合、Zr含有量を前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Zr含有量を下限で0.05%、上限で0.2%とするのが望ましい。なお、Zrを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.01%以下含有する心材であってもよい。
Ti:0.01〜0.3%
Tiは、微細な金属間化合物を形成し材料強度を向上させる。ただし、含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると、材料が硬くなり加工性が低下する。これらのため、心材にTiを含有させる場合、Ti含有量を前記範囲とする。なお、同様の理由で、Ti含有量を下限で0.05%、上限で0.2%とするのが望ましい。なお、Tiを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.01%以下含有する心材であってもよい。
Cr:0.01〜0.5%
Crは、微細な金属間化合物を形成し、材料強度を向上させる。ただし、 含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると、材料が硬くなり加工性が低下する。これらのため、心材にCrを含有させる場合、Cr含有量を前記範囲とする。なお、同様の理由で、Cr含有量を下限で0.05%、上限で0.3%とするのが望ましい。なお、Crを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.01%以下含有する心材であってもよい。
Bi:0.005〜1.5%
Biは、一部がろう材層に拡散することで溶融ろうの表面張力を低下させる。また、材料表面の緻密な酸化皮膜成長を抑制する。ただし、含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると効果が飽和するとともに、材料表面でBiの酸化物が生成し易くなり接合が阻害される。これらのため、心材にBiを含有させる場合、Bi含有量を前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Bi含有量を下限で0.05%、上限で0.5%とするのが望ましい。なお、Biを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.005%以下含有する心材であってもよい。
Zn:0.1〜9.0%
Znは、材料の孔食電位を他部材よりも卑にし、犠牲防食効果を発揮する。ただし、含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると効果が飽和する。これらのため、心材にZnを含有させる場合、Zn含有量を前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Zn含有量を下限で0.5%、上限で7.0%とするのが望ましい。なお、Znを積極的に含有しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.1%以下含有する心材であってもよい。
「犠牲材」
本形態では、心材に犠牲材をクラッドしたアルミニウムブレージングシートとすることができる。
本形態における犠牲材の組成は特定のものに限定されるものではないが、以下の成分が好適に示される。
Zn:0.1〜9.0%
Znは、材料の自然電位を他部材よりも卑にし、犠牲防食効果を発揮させ、クラッド材の耐孔食性を向上させるために犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると電位が卑となりすぎて犠牲材の腐食消耗速度が速くなり、犠牲材の早期消失によってクラッド材の耐孔食性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるZn量を下限で1.0%、上限で8.0%とするのが望ましい。
Si:0.05〜1.2%
Siは、Al−Mn−Si、Al−Mn−Si−Feなどの金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると腐食速度が速くなり、犠牲材の早期消失によってクラッド材の耐孔食性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるSi量を下限で0.3%、上限で1.0%とするのが望ましい。
Mg:0.01〜2.0%
Mgは、酸化皮膜を強固にすることで耐食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると材料が硬くなりすぎて圧延製造性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるMg量を下限で0.05%、上限で1.5%とするのが望ましい。
Mn:0.1〜2.5%
Mnは、Al−Mn、Al−Mn−Si、Al−Mn−Fe、Al−Mn−Si−Feなどの金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると腐食速度が速くなり、犠牲材の早期消失によってクラッド材の耐孔食性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるMn量を下限で0.4%、上限で1.8%とするのが望ましい。
Fe:0.05〜1.5%
Feは、Al−Mn−Fe、Al−Mn−Si−Feなどの金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると腐食速度が速くなり、犠牲材の早期消失によってクラッド材の耐孔食性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるFe量を下限で0.1%、上限で0.7%とするのが望ましい。
Zr:0.01〜0.3%
Zrは、Al−Zr系金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることや、固溶Zrの濃淡部を形成させることで腐食形態を層状とすることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物を形成し圧延性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるZr量を下限で0.05%、上限で0.25%とするのが望ましい。
Ti:0.01〜0.3%
Tiは、Al−Ti系金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることや、固溶Tiの濃淡部を形成させることで腐食形態を層状とすることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物を形成し圧延性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるTi量を下限で0.05%、上限で0.25%とするのが望ましい。
Cr:0.01〜0.5%
Crは、Al−Cr系金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることや固溶Crの濃淡部を形成させることで腐食形態を層状とすることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため、所望により犠牲材に添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物を形成し圧延性が低下する。なお、同様の理由で、犠牲材に含まれるCr量を下限で0.1%、上限で0.4%とするのが望ましい。
Bi:0.005〜1.5%
Biは、溶融ろうが犠牲材表面に接触した際に溶融ろうに拡散することで溶融ろうの表面張力を低下させ、また、材料表面の緻密な酸化皮膜成長を抑制するので、所望により犠牲材に添加される。ただし、含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、一方、過大であると効果が飽和するとともに、材料表面でBiの酸化物が生成し易くなり接合が阻害される。これらのため、犠牲材に含まれるBi含有量を前記範囲とする。
なお、同様の理由で、Bi含有量を下限で0.05%、上限で0.5%とするのが望ましい。ただし、Biを積極的に添加しない場合でも、不可避不純物として、例えば0.005%以下含有する犠牲材であってもよい。
本実施形態に係るアルミニウムブレージングシートにおいて、前記心材に犠牲材がクラッドされ、前記犠牲材が質量%で、Zn:0.1〜9.0%を含有し、さらに、Si:0.05〜1.2%、M g:0.01〜2.0%、Mn:0.1〜2.5%、Fe:0.05〜1.5%、Zr:0.01〜0.3%、Ti:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.5%、Bi:0.005〜1.5%の内1種または2種以上を含有することが好ましい。
「ブレージングシートの製造方法」
本形態の組成に調製してアルミニウム合金を溶製する。該溶製は半連続鋳造法によって行うことができる。
本形態では、ろう付前時点で微細なMg−Bi化合物を分散させるため、ろう材の鋳造時に高い溶湯温度から急冷することでMgとBiを鋳塊内で過飽和に固溶させる。具体的には、溶湯温度を700℃以上とすることでMgとBiの固溶度を高めることができる。
得られたアルミニウム合金鋳塊に対しては、所定条件で均質化処理を行う。均質化処理温度が低いと粗大なMg−Bi化合物が析出し、ろう付前時点で本形態のMg−Bi化合物の分布状態が得られにくくなるため、処理温度400℃以上で1〜10時間行うことが望ましい。
アルミニウム合金鋳塊に対し、熱間圧延と冷間圧延を行うことでシート状のろう材を得ることができる。
アルミニウム合金鋳塊において、通常の共晶Siは針状に晶出するため、熱間圧延等で破砕されやすいが、初晶のように晶出する粗大Si粒子は塊状や板状になる形状の違いがあるため、破砕されにくい。そのため、針状ではない粗大Si粒子は、圧下率を高めてもろう材からクラッド材にめり込む形で残存してしまうことが多い。その為、粗大Si粒子の晶出は防がなければならないが、後記するように、Pの活量を低下させる元素を添加することで粗大Si粒子の晶出を抑制することができる。
次に、前記ろう材を心材などと組み付けて熱間でクラッド圧延するが、このとき、本形態では、熱延時の所定温度での圧延時間、熱延開始から終了までの相当ひずみ、熱延仕上げ温度、熱延後の冷却速度を制御し、Mg−Bi化合物を所定のサイズと数密度に調整する。
まず、熱延時所定の温度域での圧延時間を満たすことで、本形態で定義する所定サイズのMg−Bi化合物の析出を動的ひずみが入る環境下で促進する。具体的には、熱延時の材料温度が400〜500℃の間の圧延時間を10min以上とすることで微細Mg−Bi化合物の析出を促進する。
また、熱延開始から終了までの相当ひずみを制御することで、鋳造時に生成した粗大なMg−Bi晶出物を破砕し微細化することができる。具体的には、以下の式(2)で示す相当ひずみεが、ε>5.0となるようにスラブ厚みや仕上げ厚みを調整することでMg−Bi晶出物を十分に微細化できる。
ε=(2/√3)ln(t0/t) …式(2)
式(2)において、t0:熱延開始厚み(スラブ厚み)、t:熱延仕上げ厚み。
さらに、熱延の仕上げ温度が高く、動的ひずみがない状態が維持されることや、熱延後の冷却速度が遅くなると、結晶粒界などに本形態が目的とするよりも粗大なMg−Bi化合物が析出するため、熱延仕上げ温度を所定温度まで低くし、一定以上の冷却速度を確保することで粗大なMg−Bi化合物の析出を抑制する。
具体的には、一例として、熱延仕上げ温度を250〜350℃とし、仕上げ温度から200℃までの冷却速度を20℃/hrよりも早く制御することで粗大なMg−Bi化合物の析出を抑制する。
その後、冷間圧延などを経て、本形態のブレージングシートが得られる。
冷間圧延では、例えば、75%以上の総圧下率で冷間圧延を行い、温度300〜400℃にて中間焼鈍を行い、その後圧延率40%の最終圧延を行うことができる。冷間圧延では、Mg−Bi化合物が破砕され微細化がある程度進むが、本形態で目的とするサイズや数密度を逸脱することはないため、特に条件が限定されるものではない。また、中間焼鈍は行わないものとしてもよい。
さらに、本形態ではAl−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれる円相当径 で5.0μm径以上の粗大Bi単体粒子が、表層面(RD−TD)方向の観察において、10000μm視野(100μm角)あたり5個未満とすることが望ましい。
本形態の材料を得るには、鋳造時の溶湯温度と冷却速度、 および、均質化処理条件を適正に組み合わせることで調整することができる。
鋳造では冷却速度を10℃/secよりも遅くすることでMg−Bi化合物の生成を促進することができる。さらに、均質化処理では、400℃以上の高温で行うことで鋳塊内でのMg−Bi化合物の生成を促進することができる。
熱間圧延、冷間圧延を行って心材の一方または両方の面にろう材が重ね合わされて接合されたクラッド材を得ることができる。
前記工程を経ることにより、図1に示すように、アルミニウム合金心材2の一方の面にアルミニウム合金ろう材3がクラッドされた熱交換器用のアルミニウムブレージングシート1が得られる。なお、図1では、心材の片面にろう材がクラッドされているアルミニウムブレージングシート1が記載されているが、心材の両面にろう材がクラッドされているアルミニウムブレージングシートであってもよい。また、心材の他の面に犠牲材などがクラッドされているアルミニウムブレージングシートであってもよい。
ろう付対象部材4として、例えば、質量%で、Mg:0.1〜0.8%、Si:0.1〜1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成などのアルミニウム合金を調製し、フィン材などの適宜形状に加工される。なお、本形態としては、ろう付対象部材の組成が特に限定されるものではない。
前記冷間圧延などによって熱交換機用のフィン材を得た場合には、その後、必要に応じてコルゲート加工などを施す。コルゲート加工は、回転する2つの金型の間を通すことによって行うことができ、良好に加工を行うことを可能とし、優れた成形性を示す。
前記工程で得られたフィン材は、熱交換器の構成部材として、他の構成部材(チューブやヘッダーなど)と組み合わされた組み付け体として、ろう付に供される。
前記組み付け体は、常圧下の非酸化性雰囲気とされた加熱炉内に配置される。非酸化性雰囲気は、窒素ガス、あるいは、アルゴンなどの不活性ガス、または、水素、アンモニアなどの還元性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いて構成することができる。ろう付炉内雰囲気の圧力は常圧を基本とするが、例えば、製品内部のガス置換効率を向上させるためにろう材溶融前の温度域で100kPa〜0.1Pa程度の中低真空とすることや、炉内への外気(大気)混入を抑制するために、大気圧よりも5〜100Pa程度陽圧としてもよい。
加熱炉は密閉した空間を有することを必要とせず、ろう付材の搬入口、搬出口を有するトンネル型であってもよい。このような加熱炉でも、不活性ガスを炉内に吹き出し続けることで非酸化性雰囲気が維持される。該非酸化性雰囲気としては、酸素濃度として体積比で100ppm以下が望ましい。
前記非酸化性雰囲気下で、例えば、昇温速度10〜200℃/minで加熱して、組み付け体の到達温度が559〜630℃となる熱処理条件にてろう付接合を行う。
ろう付条件において、昇温速度が速くなるほどろう付時間が短くなるため、材料表面の酸化皮膜成長が抑制されてろう付性が向上する。到達温度は少なくともろう材の固相線温度以上とすればろう付可能であるが、液相線温度に近づけることで流動ろう材が増加し、開放部を有する継手で良好な接合状態が得られ易くなる。ただし、あまり高温にするとろう浸食が進み易く、ろう付後の組付け体の構造寸法精度が低下するため好ましくない。
このとき、Al−Si系の共晶温度は577℃であり、前記ろう付条件では共晶部が溶融する。この際に、粗大Si粒子が存在すると、特に板厚が薄い場合には局所溶融が発生するため好ましくなく、前記したようにろう材にPの活量係数を低下させる元素を添加することが好ましい。
図2は、前記アルミニウムブレージングシート1を用いてフィン6を形成し、ろう付対象材としてアルミニウム合金製のチューブ7を用いたアルミニウム製熱交換器5を示している。フィン6、チューブ7を、補強材8、ヘッダプレート9と組み込んで、フラックスフリーろう付によって自動車用などのアルミニウム製熱交換器5を得ることができる。
図3は、フィン6の湾曲部とチューブ7との間に形成されたフィレットからなる接合部10の幅W(フィン6の湾曲部頂点とチューブ7の接点部分を挟むようにチューブ7の長さ方向に沿って存在するフィレットの全幅)を示す。
図3は接合部10の幅Wが大きく形成された例と小さく形成された例を左右に対比して示す。
図3に示すように接合部10の幅Wが大きいならば、良好なろう付け接合ができたこととなる。
本実施形態に係るブレージングシート1からなるフィン6を用いてろう付け接合し、製造された熱交換器5であるならば、ろう付け接合部分に十分に大きなフレットを形成できるので、良好なろう付け接合部分を有する熱交換器5を提供できる。
また、ろう材に生成している粗大Si粒子の数を10個以下に抑制できるので、ろう付け時にエロージョンを生じる可能性の低いろう付け接合ができる。
なお、粗大Si粒子が100000μmあたり、10個以下存在しているろう材を備えたブレージングシートの場合、厳密には粗大Si粒子が存在する位置でエロージョンを引き起こす可能性を有する。しかし、ブレージングシートの全面積に対し図3に示すフィレットからなる接合部10が存在する割合は極めて低くなる。このため、粗大Si粒子が100000μmあたり、10個以下であれば、実質的に接合部10に問題を生じる可能性は低く、十分に優れたろう付け性が得られると判断できる。
表2〜表4に示す組成(残部:Alと不可避不純物)のろう材を用いた各種ブレージングシートを表5に示す鋳造条件、および熱間圧延条件にて得た熱間圧延板から作製した。なお、クラッド率は心材に対しろう材10%とした。
その後、中間焼鈍を含む冷間圧延によって、H14相当調質の0.30mm厚の冷間圧延板を作製した。
作製したアルミニウムクラッド材について、ろう材最表面を0.1μm程度の砥粒で研磨し、表面方向からEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いた全自動粒子解析を各サンプル10000μm(100μm角相当)の観察視野で実施した。上記砥粒で研磨しているのは圧延目(表面凹凸)を除去し、ろう材表面をより平滑にすることで、粒子解析の精度を向上させることを目的とする。
該測定では、円相当径で、0.01μm以上5.0μm未満の微細Mg−Bi系化合物の10000μm視野あたりの個数と、円相当径で、5.0μm径以上の粗大Mg−Bi系化合物の10000μm視野あたりの個数と、円相当径で5.0μm以上の粗大Bi単体粒子の10000μm視野あたりの個数と、長辺長さ50μm以上のSi粒子の個数を求め、測定結果を表6〜表8に示す。
Figure 2021159965
Figure 2021159965
Figure 2021159965
Figure 2021159965
Figure 2021159965
Figure 2021159965
Figure 2021159965
表2、表3に示すように、実施例1〜61は、質量%で、Mgを0.01〜2.0%、Siを1.5〜14.0%、Biを0.005〜1.5%含有し、さらに熱力学計算において、前述の式(1)を満たす0.01〜0.5質量%の添加元素を少なくとも1種類以上含有し、前記1種類以上の添加元素の合計含有量がその他不可避不純物元素を含めて0.05〜1.5質量%の範囲で含まれるAl−Si−Mg−Bi系ろう材が、心材の片面または両面にクラッドされて最表面に位置しているブレージングシートである。
表6、表7に示すように、これら実施例1〜61のブレージングシートは、Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれ、表層面(RD−TD)方向の観察による長辺の長さが50μm以上である粗大Si粒子が、1000000μmあたり10個以下である。
このため、上述のブレージングシートを用いてろう付けした場合、エロージョンの生じ難い、耐食性に優れた熱交換器などのろう付け対象物を得ることができる。
表4に示す比較例62のようにMg含有量が少ない場合、表8に示すように円相当径0.01μm以上5.0μm未満の微細Mg−Bi化合物数が少なく、円相当径5.0μm以上の粗大Mg−Bi化合物数が多くなり、表4に示す比較例63のように、Mg含有量が多い場合、表8に示すようにろう材層が硬く脆くなるため圧延時のクラックにより材料が破断し、製作不可となった。
表4に示す比較例64のようにSi含有量が少ない場合、ろう付時に溶融ろうが不足してしまい、比較例65のようにSi含有量が多い場合、ろう材層が硬く脆くなるため、表8に示すように圧延時に割れが生じて製作不可となった。
表4に示す比較例66のようにBi含有量が少ない場合、表8に示すように円相当径0.01μm以上5.0μm未満の微細Mg−Bi化合物数が少なく、円相当径5.0μm以上の粗大Mg−Bi化合物数が多くなり、比較例67のように、Bi含有量が多い場合、ろう付温度よりも低い材料作製工程中の焼鈍時にBiが材料表層部に濃化し、その後、酸化皮膜が厚く異常成長したため表8に示すように評価不可となった。
実施例68〜73の試料は、表4に示すように望ましい組成範囲であるものの、表5に示す製造条件2のJ、K、L、M、Nのいずれかを採用したため、微細Mg−Bi化合物数が少ないか、粗大Mg−Bi化合物数が多いか、粗大Bi単体粒子数が多い試料である。
比較例74、75および、比較例79〜84は、Pの活量係数を低下させる元素を含んでいないか、または、含有量が不十分なため、表8に示すように50μm以上の粗大Si単体粒子数が多くなり、耐エロージョン性に問題を生じた。
比較例76〜78は、表4に示すようにPの活量係数を低下させる元素を多く含ませすぎたため、粗大な化合物が生じ圧延時の破断原因となり、表8に示すように製作不可となった。
本発明のブレージングシートは、空調設備の室内機、室外機などの熱交換器あるいは自動車用熱交換器などのフラックスフリーろう付けに広く用いることができる。
1…アルミニウムブレージングシート、2…アルミニウム合金心材、3…アルミニウム合金ろう材、4…対象部材、5…アルミニウム製熱交換器、6…フィン、7…チューブ、10…接合部。

Claims (3)

  1. 少なくとも二層以上の複層構造を有するアルミニウムブレージングシートであって、
    質量%で、Mgを0.01〜2.0%、Siを1.5〜14.0%、Biを0.005〜1.5%含有し、
    さらに熱力学計算において、以下の式(1)を満たす0.01〜0.5%の添加元素を少なくとも1種類以上含有し、前記1種類以上の添加元素の合計含有量がその他不可避不純物元素を含めて0.05〜1.5%の範囲で含まれるAl−Si−Mg−Bi系ろう材が、心材の片面または両面かつ前記ブレージングシート最表面に位置し、
    前記Al−Si−Mg−Bi系ろう材に含まれ、表層面(RD−TD)方向の観察による長辺の長さが50μm以上である粗大Si粒子が、1000000μmあたり10個以下であることを特徴とするアルミニウムブレージングシート。
    γ<γ、かつ、γ3x<1.002×γ …式(1)
    ただし、式(1)において、γは、狙い濃度0.01〜0.5質量%の添加元素を加えた際のPの活量係数を示し、γは、元素添加なしの場合のPの活量係数を示し、γ3xは、各添加元素を狙い濃度の3倍とした際のPの活量係数を示し、1.002は係数を示す。
  2. 前記添加元素が、Cr、Ni、Cu、Mo、Fe、Pb、Hg、Tl、In、Au、Ir、Sb、Re、Lu、Snのいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムブレージングシート。
  3. 前記添加元素が、Cr、Ni、Cu、Moのいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムブレージングシート。
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