JP7498591B2 - アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

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Description

この発明は、フラックスフリーにより接合がされるフラックスフリーろう付用のアルミニウム合金クラッド材に関する
コンデンサやエバポレーターなどのアルミニウム製自動車用熱交換器は、これまでの小型軽量化と共にアルミニウム材料の薄肉高強度化が進んできている。アルミニウム製熱交換器の製造では、継手を接合するろう付が行われるが、現在主流のフッ化物系フラックスを使用するろう付方法では、フラックスが材料中のMgと反応して不活性化しろう付不良を生じ易いため、Mg添加高強度部材の利用が制限される。このため、フラックスを使用せずにMg添加アルミニウム合金を接合するろう付方法が望まれている。
Al-Si-Mgろう材を用いるフラックスフリーろう付では、溶融して活性となったろう材中のMgが接合部表面のAl酸化皮膜(Al)を還元分解することで接合が可能となる。閉塞的な面接合継手などでは、Mgによる酸化皮膜の分解作用によりろう材を有するブレージングシート同士を組合せた継手や、ブレージングシートとろう材を有さない被接合部材(ベア材)を組合せた継手で良好な接合状態が得られる(特許文献1参照)。
しかし、コンデンサやエバポレーターなど一般的な熱交換器の代表的な継手形状であるチューブとフィン接合部などでは雰囲気の影響を受け易く、Mg添加ろう材の表面でMgO皮膜が成長し易くなる。MgO皮膜は分解され難い安定な酸化皮膜であるため接合が著しく阻害される。
このため、一般的な熱交換器にフラックスフリー技術を適用するためには開放部を有する継手で安定した接合状態が得られるフラックスフリーろう付用ブレージングシートが強く望まれている。
フラックスフリーろう付の接合状態を安定させる方法として、例えば特許文献2に示すAl-Si-Mg-Bi系ろう材を用い、ろう材中のBi粒子やMg-Bi化合物粒子の分布状態を制御する技術が提案されている。この技術によれば、円相当径5.0~50μmの単体BiあるいはBi-Mg化合物をろう材中に分散させておくことで、これら化合物が材料製造時にろう材表面に露出し、露出部での酸化皮膜形成が抑制されることで短時間のろう付加熱時間でのフラックスフリーろう付性が向上するとされている。
特許公報第4547032号明細書 特開2014-50861号公報
しかし、従来提案されているフラックスフリーろう付方法では、現在主流のフッ化物系フラックスを使用するろう付方法を代替できるほどに安定した接合性が得られているとは言い難く、一般的な熱交換器に広く適用するためにはさらなる技術の向上が必要である。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、フラックスフリーによってろう付を安定して行うことができるフラックスフリーろう付用のアルミニウム合金クラッド材を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、Bi添加Al-Si-Mg系ろう材においてろう付性をさらに向上させるためにはろう溶融時に表面にBiを均一に濃化させることが最も重要であること、また、5μm以上の粗大なMg-Bi化合物は材料製造時の酸化皮膜生成抑制には効果があるものの、ろう付加熱時に溶解しにくく、むしろある程度微細な0.1μm以上5.0μm未満のBi-Mg化合物を所定の数密度以上に分散させることで、ろう付加熱時に確実にMg-Bi化合物が溶解し、金属Biを生成、かつ生成したBiが表面に均一に濃化することで、良好なろう付性が得られることを見出した。
また、フラックスフリーろう付におけるろう溶融挙動とろう付性の関係を調査し、フラックスフリーろう付においては酸化を抑制しつつ、短時間のうちに活性な溶融ろうを生成させ、フィレットを形成することが重要となるため、液相線温度が低く、固液共存域が短いろう材が好ましいため、高Siろう材が好ましいことを明らかにするとともに、高Siろう材で問題となる鋳造時に生成する粗大な初晶Siの抑制手法についても検討を重ねた。
さらに、より一層フラックスフリーろう付の安定性を向上させるため研究を行ったところ、若干の減圧を併用することでろう付安定性は高まり、フッ化物系フラックスを使用するろう付法と同等以上のろう付安定性を得られる可能性が示唆された。ただし、その場合には真空ろう付ほどではないが蒸気圧の高いZnが蒸発して耐食性が劣化してしまうという新たな問題が生じた。AlブレージングシートではZnが添加されたAl犠牲材がクラッドされ、その犠牲陽極効果によって、心材を防食しているため、Zn蒸発が生じるとブレージングシートの耐食性が劣化してしまう。
そこで、本発明者らはZnが蒸発した場合でも高い耐食性を得るという観点から鋭意検討を重ねた結果、Znを含有する部材表面のろう付中のMg濃度を所定値以下に抑えることでZn蒸発が抑制できること、さらに、犠牲材の成分を適正化することでZn蒸発が生じた場合でもあっても耐食性が劣化しにくいことを見出し、上記のようにMg-Bi化合物の分散状態を適切に制御したAl-Si-Mg-Biろう材と組み合わせることで、開放部を有する継手で安定した接合状態が得られるとともに、かつ耐食性に優れるフラックスフリーろう付用アルミニウム合金クラッド材を発明するに至った。
すなわち、アルミニウム合金クラッド材のうち、第1の形態は、心材の片面に犠牲材が配置され、前記心材のもう一方の片面に、質量%で、Si:6.0~14.0%、Mg:0.05~1.5%、Bi:0.05~0.25%、Sr:0.0001~0.1%を含有し残部がAlおよび不可避不純物からなり、かつ、成分含有量の質量%において、(Bi+Mg)×Sr≦0.1の関係を満たすAl-Si-Mg-Bi系ろう材が配置され、
前記Al-Si-Mg-Bi系ろう材に含まれるMg-Bi系化合物が、ろう付前の表層面方向の観察において、円相当径で0.1μm以上5.0μm未満の直径を有するものが10000μm視野あたり20個よりも多く存在し、かつ、5.0μm以上の径を有するものが10000μm視野あたり2個未満であり、
さらに、前記心材が、質量%で、Mn:1.0~1.7%、Si:0.2~1.0%、Fe:0.1~0.5%、Cu:0.08~1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:0.5~6.0%を含有するとともにMg含有量が0.1%以下に規制され、残部がAlと不可避不純物からなり、ろう付後の犠牲材表面のMg濃度が0.15%以下であることを特徴とする。
の形態のアルミニウム合金クラッド材は、前記形態において、前記犠牲材が、質量%で、さらにSi:0.2~0.8%、Cr:0.05~0.5%、 他の形態のお田尾のTi:0.05~0.3%の1種あるいは2種以上を含有することを特徴とする。
他の形態のアルミニウム合金クラッド材は、心材の片面に犠牲材が配置され、前記心材のもう一方の片面に、質量%で、Si:6.0~14.0%、Mg:0.05~1.5%、Bi:0.05~0.25%、Sr:0.0001~0.1%を含有し残部がAlおよび不可避不純物からなり、かつ、(Bi+Mg)×Sr≦0.1の関係を満たすAl-Si-Mg-Bi系ろう材が配置され、
前記Al-Si-Mg-Bi系ろう材に含まれるMg-Bi系化合物が、ろう付前の表層面方向の観察において、円相当径で0.1μm以上5.0μm未満の直径を有するものが10000μm2視野あたり30個よりも多く存在し、かつ、5.0μm以上の径を有するものが10000μm2視野あたり2個未満であり、
さらに、前記心材が、質量%で、Mn:1.0~1.7%、Si:0.2~1.0%、Fe:0.1~0.5%、Cu:0.08~1.0%、Mg:0.1~0.7%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:0.5~6.0%を含有するとともにMg含有量が0.1%以下に規制され、残部がAlと不可避不純物からなり、ろう付後の犠牲材表面のMg濃度が0.15%以下であることを特徴とする。
他の形態のアルミニウム合金クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記心材がさらに、Mg:0.1~0.7%を含有することを特徴とする。
他の形態のアルミニウム合金クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記心材がさらに、Ti:0.05~0.3%を含有することを特徴とする。
他の形態のアルミニウム合金クラッド材の発明は、前記形態の発明において、ろう付後の前記犠牲材の最卑部と前記心材の中央部の自然電位が犠牲材最卑部のほうが卑であって、自然電位差が120~280mVの範囲にあり、さらに前記犠牲材の最表面と最卑部との電位差が50mV以内であることを特徴とする。
以下に、本発明で規定した内容について、その作用とともに説明する。
以下で説明する成分は、いずれも質量%で示されている。
<ろう材>
Si:6.0~14.0%
Siは、ろう付時に溶融ろうを形成し、接合部のフィレットを形成するために添加される。開放部におけるフラックスフリーろう付では、酸化を抑制しつつ、短時間のうちに活性な溶融ろうを生成させ、フィレットを形成することが重要となるため、液相線温度が低く、固液共存域が短いろう材が好ましい。含有量が下限未満であると、溶融ろう生成時間が長くなるとともに溶融ろうが不足する。一方、上限超であると、やはり溶融ろう生成時間が長くなるとともに材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。このため、Siの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でSi含有量を、下限で9.0%、上限で13.0%とするのが望ましい。
Mg:0.05~1.5%
Mgは、Al酸化皮膜(Al)を還元分解するために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると、ろう付雰囲気中の酸素と反応して接合を阻害するMgOが生成することや、材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。このため、Mgの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でMg含有量を、下限で0.1%、上限で1.2%とするのが望ましく、さらに、下限で0.2%、上限で1.0%とするのがより望ましい。
Bi:0.05~0.25%
Biは、ろう付昇温過程で材料表面に濃化し、ろう付中の酸化を抑制するとともに溶融ろうの表面張力を低下させることで開放部での接合性を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると効果が飽和するだけでなく、材料表面でBiの酸化物が生成し易くなり接合が阻害される。このため、Biの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でBi含有量を、下限で0.08%、上限で0.23%とするのが望ましい。
Sr:0.0001~0.1%
Srは、Si含有量が高いろう材で発生する粗大な初晶Si生成を抑制するために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に溶湯表面で酸化してドロスが増加したり、粗大な化合物を形成することで鋳造性が低下する。このため、Srの含有量を上記範囲に定める。
なお、同様の理由でSr含有量を、下限で0.0005%、上限で0.06%とするのが望ましい。
ろう材の不可避不純物としてFe:0.3%以下の範囲で含有してもよい。
(Bi+Mg)×Sr≦0.1
フラックスフリーろう付用のAl-Si-Mg-Bi系ろう材では活性なMgやBiを含有しているため、所定量以上のSrと共存すると鋳造時に溶湯中に粗大なBi-Mg-Sr化合物が生成し鋳造性が低下する。この化合物はBiとMgの総量が多いほど、また、Sr含有量が多いほど生成しやすくなる。(Bi+Mg)×Srはこの粗大なBi-Mg-Sr化合物生成の臨界条件を示すものであり、(Bi+Mg)×Sr≦0.1とすることで、Al-Si-Mg-Bi系ろう材にSrを添加しても粗大なBi-Mg-Sr化合物が生成せず、かつ、Sr本来の添加目的である初晶Si生成抑制効果を得ることができる。このため、上記範囲に定める。
なお、同様の理由で(Bi+Mg)×Sr≦0.08とするのが望ましい。
Mg-Bi系化合物:円相当径で、0.1~5.0μm径未満のものが10000μm視野あたり20個よりも多い
微細なMg-Bi系化合物が分散することで、ろう付昇温過程でこの化合物が溶解した際に、Biが材料表面に均一に濃縮し易くなり、材料の酸化が抑制される。0.1μm未満の化合物は溶解しても、溶解量が少ないため上記効果が得られない。5.0μm以上の化合物はろう付昇温過程で溶融しにくく、化合物のまま残存してしまうため上記効果が得られない。また、上記化合物が10000μm視野あたり20個以下であると、溶解箇所が少なく、Biが材料表面に均一に濃縮しにくい。同様の理由で、さらに30個以上であるのが望ましく、さらに、40個以上であるのがより望ましい。
なお、ろう材表面のMg-Bi系化合物の数は、作製した材料のろう材表面を0.1μmの砥粒で鏡面処理し、FE-EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)を用いた全自動粒子解析を行うと共に、さらに、1μm以下の微細な化合物を測定するため、切出したろう材層の表面から機械研磨、および電解研磨をして薄膜を作製し、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、表面方向10000μm(100μm角)の観察視野において、0.1~5.0μmのMg-Bi系化合物粒子数をカウントすることで求められる。
また、Mg-Bi系化合物を細かく密に分布させる手段としては、鋳造時には、溶湯温度が高いところから早い冷却速度で鋳込むこと(Mg-Bi化合物の粗大晶出を抑制、Mg,Biの鋳造時の固溶を促進し、その後の熱処理で所望の状態で分散させる)、熱延時には、一定以上の大きな総圧下量をとること(晶出物の破砕促進による微細化と数密度の増加)、高温域での圧延時間を長くとること(熱間圧延時の動的析出を促進)、熱延仕上り温度を低くしてその後の冷却速度を速くする(緩慢冷却による粗大析出を抑制)ことなどを適正に組み合わせることで調整することができる。
Mg-Bi系化合物:円相当径で、5.0μm径以上のものが10000μm視野あたり2個未満
粗大なMg-Bi系化合物は、ろう付昇温過程で溶融し難く材料表面にBiが均一に濃化しにくく、また、粗大な化合物ができることで5.0μm未満の微細なMg-Bi化合物の生成量が減ってしまうため、所定値よりも低くする必要がある。
なお、ろう材表面のMg-Bi系化合物の数は、前述したFE-EPMAによる全自動粒子解析により求められる。また、粗大なMg-Bi系化合物の生成を抑制する手段としては、前述の鋳造条件や熱延条件を適切に制御することで調整することができる。
例えば、鋳造時に、溶湯温度が高いところから早い冷却速度で鋳込むこと(Mg-Bi化合物の粗大晶出を抑制)、熱延時には、一定以上の大きな総圧下量をとること(晶出物の破砕促進による微細化)、熱延仕上り温度を低くしてその後の冷却速度を速くする(緩慢冷却による粗大析出を抑制)ことなどを適正に組み合わせることで調整することができる。
犠牲材
Zn:0.5~6.0%
Znは、材料の自然電位を他部材よりも卑にし、犠牲防食効果を発揮させ、クラッド材の耐孔食性を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると電位が卑となりすぎて犠牲材の腐食消耗速度が速くなり、犠牲材の早期消失によってクラッド材の耐孔食性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.7%、上限で5.7%とするのが望ましい。
Mg含有量0.1%以下
Mgは蒸気圧が高く、さらに、Al酸化皮膜を還元分解するため、Mgが多いほどろう付中に材料表面の酸化皮膜が破壊されやすい。破壊された酸化皮膜下にZnが存在すると、破壊された酸化皮膜の隙間からZnが蒸発してしまう。したがって、Zn蒸発が生じ得る環境においてはZn含有層のMg添加量を所定値以下とすることでMgの蒸発と酸化皮膜の破壊に起因したZnの蒸発を抑制することができる。
なお、同様の理由で、0.05%以下とするのが望ましい。
ろう付後の犠牲材表面のMg濃度が0.15%以下
Mgは蒸気圧が高く、さらに、Al酸化皮膜を還元分解するため、Mgが多いほどろう付中に材料表面の酸化皮膜が破壊されやすい。破壊された酸化皮膜下にZnが存在すると、破壊された酸化皮膜の隙間からZnが蒸発してしまう。したがって、ろう付途中に犠牲材表面に存在するMg量が多いほど絶えずZnが蒸発することになり、結果としてZn蒸発量が多くなる。クラッド材の場合には犠牲材に添加されたMg量が少ない場合であっても、心材などの他層からMgが拡散してくるため、ろう付中の拡散を考慮した材料設計が必要である。ろう付後の犠牲材表面のMg濃度が多いほど、ろう付中に犠牲材表面が高Mgになっていたことになり、そのためZn蒸発が多くなる。したがって、ろう付後の犠牲材表面のMg量はZn蒸発のしやすさの目安となり、ろう付後の犠牲材表面のMg濃度を所定値以下とすることで、Mgの蒸発と酸化皮膜の破壊に起因したZnの蒸発を抑制することができる。
なお、同様の理由で、0.1%以下とするのが望ましい。
Si:0.2~0.8%
Siは、単体Si、Al-Fe-Si、Al-Mn-Si、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることでクラッド材の耐孔食性を向上させるので所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると腐食速度が速くなり、犠牲材の早期消失によってクラッド材の耐孔食性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.3%、上限で0.7%とするのが望ましい。
また、Siを積極的に含有しない場合、Siを不可避不純物として0.05%以下で含有するものであってもよい。
Cr:0.05~0.5%
Crは、Al-Cr系金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることや固溶Crの濃淡部を形成させることで腐食形態を層状とすることでクラッド材の耐孔食性を向上させるので所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物を形成し圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.1%、上限で0.4%とするのが望ましい。
また、Crを積極的に含有しない場合、Crを不可避不純物として0.05%未満で含有するものであってもよい。
Ti:0.05~0.3%
Tiは、Al-Ti系金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることや、固溶Tiの濃淡部を形成させることで腐食形態を層状とすることでクラッド材の耐孔食性を向上させるので所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物を形成し圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.07%、上限で0.25%とするのが望ましい。
また、Tiを積極的に含有しない場合、Tiを不可避不純物として0.05%未満で含有するものであってもよい。
心材
Mn:1.0~1.7%
Mnは、Al-Mn、Al-Mn-Si、Al-Mn-Fe、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物(晶出物)が生成し、圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で1.1%、上限で1.6%とするのが望ましく、さらに下限を1.2%とするのが一層望ましい。
Si:0.2~1.0%
Siは、固溶により材料強度を向上させる他、MgSiやAl-Mn-Si、Al-Mn-Si-Fe金属間化合物として析出し材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると材料の融点が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.6%、上限で0.9%とするのが望ましい。
Fe:0.1~0.5%
FeはAl-Mn-Fe、Al-Mn-Si-Feなどの金属間化合物として析出して材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物(晶出物)が生成し、圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.12%、上限で0.4%とするのが望ましい。
Cu:0.08~1.0%
Cuは、固溶して材料強度を向上させるために添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると耐食性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.10%、上限で0.6%とするのが望ましく、さらに下限を0.15%とするのが一層望ましい。
Mg:0.1~0.7%
Mgは、Siなどとの化合物が析出することで材料強度がを向上させること、およびろう材表面に拡散し、酸化皮膜(Al)を還元分解させ、接合性を向上させるため、所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると材料が硬くなりすぎて、素材製造が困難になる。
なお、同様の理由で、下限で0.2%、上限で0.65%とするのが望ましい。
また、Mgを積極的に含有しない場合、Mgを不可避不純物として0.05%以下で含有するものであってもよい。
Ti:0.05~0.3%
Tiは、Al-Ti系金属間化合物として析出して腐食の起点を分散させることや、固溶Tiの濃淡部を形成させることで腐食形態を層状とすることでクラッド材の耐孔食性を向上させるため所望により添加される。含有量が下限未満であると、効果が不十分であり、上限超えであると鋳造時に巨大な金属間化合物を形成し圧延性が低下する。
なお、同様の理由で、下限で0.07%、上限で0.25%とするのが望ましい。
また、Tiを積極的に含有しない場合、Tiを不可避不純物として0.05%未満で含有するものであってもよい。
ろう付後の犠牲材最卑部と心材中央部の自然電位差が70~280mVの範囲(犠牲材最卑部のほうが卑)
犠牲材最卑部と心材中央部の自然電位差は、犠牲材によって心材がどの程度犠牲防食されるかの目安となる。下限未満では電位差不足で心材を防食しきれず、腐食が心材方向に進んでしまう。上限超えの場合には、過防食となってアルカリ腐食が発生してしまう。このため、上記自然電位差に設定するのが望ましい。
なお、同様の理由で、下限で120mV、上限で250mVとするのが一層望ましい。
犠牲材最表面と最卑部との電位差が50mV以内
通常の電位分布は犠牲材内において犠牲材表面が最も卑で心材方向に向かって貴となる。この場合、犠牲材最表面と最卑部が一致するため、犠牲材最表面と最卑部との電位差は0となる。したがって、犠牲材最表面と最卑部との電位差は犠牲材内における逆電位勾配の大きさを意味する。この電位差を50mV以内とすることにより良好な耐食性が得られる。
犠牲材最表面と最卑部との電位差を小さくするためには、Zn蒸発を抑制するか、あるいは、Znが蒸発しても電位が大きく変化しない犠牲材成分とする必要がある。Zn蒸発の抑制は前記のとおり、犠牲材へ添加するMg量を所定値以下にすることや、ろう付後の犠牲材表面のMg濃度を低くすることにより達成される。
一方、Zn蒸発しても電位が大きく変化しない犠牲材とするためには犠牲材を構成する成分が重要である。すなわち、犠牲材には通常電位を卑にするZnとともに他元素が添加されるが、他元素を排除した場合には、Zn添加によって電位が卑となるが、ある程度Znを添加した後では電位の卑化が緩慢になる(電位に及ぼすZn量の影響が飽和する)。したがって、犠牲材をAl-Zn合金とし、かつ、犠牲材表面のZn濃度を所定値以上にすることで、Zn蒸発が生じた場合でも、犠牲材最表面と最卑部との電位差を小さくできる。
さらに、他元素のなかでもZnによる電位卑化に影響を与えにくいSi,Cr,Tiなどは添加しても上記効果に対する悪影響は小さい。
犠牲材最表面と最卑部との電位差が50mV超の場合、犠牲材表面が最卑部よりも貴なため、犠牲材表面を溶け残して腐食が進むため、犠牲材が有効に機能せず、早期に心材に腐食が到達することでクラッド材の耐食性が低下する。このため、犠牲材最表面と最卑部との電位差を50mV以内に設定するのが望ましい。
なお、同様の理由で、上記電位差を40mV以内とするのが望ましく、25mV以内がさらに望ましい。
本発明の心材、ろう材、犠牲材のアルミニウム合金は、その他に不可避不純物を含んでいる。例えば、犠牲材において、FeやMnを不可避不純物として含むものであってもよい。
すなわち、本発明によれば、フラックスフリーのろう付において、安定したろう付が可能であり、ろう付後において、高い強度と優れた耐食性を有することができるという効果が得られる。
本発明の一実施形態におけるフラックスフリーろう付用のブレージングシートを示す図である。 本発明の一実施形態におけるアルミニウム製自動車用熱交換器を示す斜視図である。 本発明の実施例におけるろう付評価モデルを示す図である。 本発明の実施例における犠牲材最表面、最卑部および心材中央部の電位差の関係を示す図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
本発明組成に調整してアルミニウム合金を溶製する。該溶製は半連続鋳造法によって行うことができる。
本実施形態では、ろう付前時点で微細なMg-Bi化合物を分散させるため、ろう材の鋳造時に溶湯温度が高いところから速い冷却速度で鋳造することでMg-Bi化合物の粗大晶出を抑制しつつ、MgとBiを鋳塊内に固溶させる。
具体的には、溶湯温度を700℃以上とすることでMgとBiの固溶度を高めることができる。
得られたアルミニウム合金鋳塊に対しては、所定条件で均質化処理を行う。均質化処理温度が低いと粗大なMg-Bi化合物が析出し、ろう付前時点で本発明のMg-Bi化合物の分布状態が得られにくくなるため、処理温度400℃以上で1~10時間行うことが望ましい。
次に、上記ろう材を心材、犠牲材と組み付けて熱間でクラッド圧延するが、このとき、本発明では、熱延時の所定温度での圧延時間、熱延開始から終了までの相当ひずみ、熱延仕上げ温度、熱延後の冷却速度を制御し、Mg-Bi化合物を所定のサイズと数密度に調整する。
先ず熱延時所定の温度域での圧延時間を満たすことで、本発明で定義する所定サイズのMg-Bi化合物の析出を動的ひずみが入る環境下で促進する。具体的には、熱延時の材料温度が400~500℃の間の圧延時間を10min以上とすることで微細なMg-Bi化合物の析出を促進する。
また、熱延開始から終了までの相当ひずみを制御することで、鋳造時に生成した粗大なMg-Bi晶出物を破砕して微細化するとともに数密度を増やすとができる。具体的には、式(1)で示す相当ひずみεが、ε>5.0となるようにスラブ厚みや仕上げ厚みを調整することでMg-Bi晶出物が十分に微細化し、数密度が増加する。

ε=(2/√3)ln(t0/t) ・・・式(1)
t0:熱延開始厚み(スラブ厚み)
t :熱延仕上げ厚み
さらに、熱延の仕上げ温度が高く、動的ひずみがない状態で高温で維持されることや、熱延後の冷却速度が遅くなると、結晶粒界などに本発明が目的とするよりも粗大なMg-Bi化合物が析出するため、熱延仕上げ温度を所定温度まで低くし、一定以上の冷却速度を確保することで粗大なMg-Bi化合物の析出を抑制する。具体的には、熱延仕上げ温度を250~350℃とし、仕上げ温度から200℃までの冷却速度を-20℃/hrよりも早く制御することで粗大なMg-Bi化合物の析出を抑制する。
その後、冷間圧延などを経て、図1に示すように、心材2の片面にろう材3が配置され、心材2の他面に犠牲材4が配置された本発明のアルミニウム合金クラッド材1が得られる。
冷間圧延では、例えば、75%以上の総圧下率で冷間圧延を行い、温度200~450℃にて中間焼鈍を行い、その後圧延率40%の最終圧延を行うことができる。冷間圧延では、Mg-Bi化合物は破砕されにくいため、本発明が目的とするサイズや数密度を逸脱することはないため、特に条件が限定されるものではない。また、中間焼鈍は行わないものとしても良いし、最終焼鈍で終了させたH2n調質ものものでもよい。
上記工程で得られたブレージングシートからなるアルミニウム合金クラッド材1は、熱交換器の構成部材として、他の構成部材10(図1に示すフィンやチューブやサイドプレートなど)と組み合わされた組み付け体として、ろう付に供される。
上記組み付け体は、常圧下の非酸化性雰囲気とされた加熱炉内に配置される。非酸化性ガスには窒素ガス、あるいは、アルゴンなどの不活性ガス、または、水素、アンモニアなどの還元性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いて構成することができる。ろう付炉内雰囲気の圧力は常圧を基本とするが、例えば、製品内部のガス置換効率を向上させるためにろう材溶融前の温度域で100kPa~0.1Pa程度の中低真空とすることや、炉内への外気(大気)混入を抑制するために大気圧よりも5~100Pa程度陽圧としてもよい。
加熱炉は密閉した空間を有することを必要とせず、ろう付材の搬入口、搬出口を有するトンネル型であってもよい。このような加熱炉でも、不活性ガスを炉内に吹き出し続けることで非酸化性が維持される。該非酸化性雰囲気としては、酸素濃度として体積比で50ppm以下が望ましい。
上記雰囲気下で、例えば、昇温速度10~200℃/minで加熱して、組み付け体の到達温度が559~630℃となる熱処理条件にてろう付接合を行う。
ろう付条件において、昇温速度が速くなるほどろう付時間が短くなるため、材料表面の酸化皮膜成長が抑制されてろう付性が向上する。到達温度は少なくともろう材の固相線温度以上とすればろう付可能であるが、液相線温度に近づけることで流動ろう材が増加し、開放部を有する継手で良好な接合状態が得られ易くなる。ただし、あまり高温にするとろう浸食が進み易く、ろう付後の組付け体の構造寸法精度が低下するため好ましくない。
図2は、上記アルミニウム合金クラッド材1を用いてフィン6を形成し、ろう付対象材としてアルミニウム合金製のチューブ7を用いたアルミニウム製熱交換器5を示している。フィン6、チューブ7を、補強材8、ヘッダプレート9と組み込んで、フラックスフリーろう付によって自動車用などのアルミニウム製熱交換器5を得ている。
表1、2および表4、5に示す組成(残部がAlと不可避不純物)の各種ブレージングシートを、表7に示す鋳造条件および均質化条件(ろう材)、ならびに熱間圧延条件にて熱間圧延板を作製した。なお、成分中の「-」は、含有量が0または不可避不純物量であることを示している。
その後、中間焼鈍を含む冷間圧延によって、H14相当調質の0.30mm厚の冷間圧延板を作製した。なお、各層のクラッド率は犠牲材10%、ろう材8%とした。
また、ろう付対象部材としてA3003合金、H14のアルミニウムベア材(0.06mm厚)のコルゲートフィンを用意した。
前記アルミニウムクラッド材を用いて幅25mmのチューブを製作し、該チューブとコルゲートフィンとを該チューブろう材とコルゲートフィンが接するように組み合わせ、ろう付評価モデルとしてチューブ15段、長さ300mmのコアとした。前記コアを、窒素雰囲気中(真空度100kPa、酸素含有量30ppm)のろう付炉にて、600℃まで加熱後そのまま冷却して、そのろう付状態を評価した。
その際、室温から550℃までの昇温時の入熱量(ろう付熱処理中のZnの拡散係数と時間の積の積算値)は6×10-11、ろう付完了までの入熱量は4×10-10とし、ろう付温度から室温までは100℃/minの速度で冷却した。
ろう付後の電位や材料表面の元素濃度は、ろう付後の元素拡散状態に影響を受ける。元素拡散状態は材料仕様(ろう付前の添加成分や量)が決まっていれば入熱量によって決まるので、入熱量を規定する。入熱量は元素の拡散のしやすさを示すパラメータで、ここではZnの拡散係数と時間の積の積算値で示している。なお、拡散係数は下記式で求める。
拡散係数=振動数因子×EXP(-活性化エネルギー/(気体定数×絶対温度で示した温度))
振動数因子:1.77×10-5(m/s)
活性化エネルギー:118(kJ/mol)
ろう付完了までの入熱量は、ろう付温度に到達後、冷却して室温に至るまでの間のろう付プロセス全体の入熱量で算出する。
また、入熱量を含むろう付条件は、本発明としては上記条件に限定されるものではなく、上記条件は、ろう付前のクラッド材に対する評価の測定条件として用いることができる。
なお、ろう付条件は上記に限定されるものではない。
実施例における各供試材について、以下の評価を行い、評価結果を表3および表6に示した。
ろう付性
○接合率
以下式にて接合率を求め、各試料間の優劣を評価した。
フィン接合率=(フィンとチューブの総ろう付長さ/フィンとチューブの総接触長さ)×100
接合率では、90%以上を○、90%未満を×と評価した。
○フィレット長さ
前記コアから切り出したサンプルを樹脂包埋、鏡面研磨し、光学顕微鏡を用いて図3に示すようにフィン11とチューブ12との間の接合部13接合部におけるフィレット長さを測定した。測定する接合部は20箇所とし、その平均をフィレット長さとして、優劣を評価した。
フィレット長さでは、800μm以上を◎、700μm以上800μm未満を○○○、600μm以上700μm未満を○○、500μm以上600μm未満を○、500μm未満を×と評価した。
○粗大な初晶Si粒
作製したブレージングシートを樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察してろう材層中の粗大な初晶Siの形成状態を評価した。観察は300μmの視野を10箇所とした。
円相当直径で30μm以上の粗大Si粒が2個未満の場合を○○、2~9個の範囲を○、10個以上見られた場合を×とした。
ろう付後の強度
ブレージングシートをドロップ形式で炉に設置し、前記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った。その後、サンプルを切り出し、JISに準拠した通常の方法にて室温にて引張試験を実施して引張強さを評価した。
ろう付後の強度では、190MPa以上を◎、180MPa以上190MPa未満を○○、145MPa以上180MPa未満を○、145MPa未満を×と評価した。
耐食性
ブレージングシートをドロップ形式で炉に設置し、前記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った。その後、サンプルを30mm×80mmのサイズに切り出し、犠牲材面以外をマスキングしたのち、腐食試験に60日間供した。腐食試験はpH3に調整した1%NaCl水溶液を腐食液として使用し、噴霧30分、湿潤90分を1サイクルとして試験に供した(腐食試験のサイクルや温度、湿度等はSWAATと同じ)。
腐食試験後のサンプルはリン酸クロム酸混合溶液によって腐食生成物を除去し、最大腐食部の断面観察を行って腐食深さを測定した。
耐食性では、腐食深さが20μm以内を◎、犠牲材層内である場合を○○、犠牲材層を超えて板厚の半分以内を○、60日間で貫通した供試材のうちで、SWAATに40日間の腐食試験では貫通せず、その後、貫通したものは△、40日間のうちに貫通したものを×と評価した。
ろう付後の犠牲材表面のMg濃度
上記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行い、ろう付後のサンプルについて、樹脂包埋、鏡面研磨し、断面方向のEPMA分析によって犠牲材表面のMg濃度を測定した。測定されたEPMAデータのうち、犠牲材表面から5μmの範囲の平均Mg濃度を犠牲材表面のMg濃度とした。なお、犠牲材表面ではMgOの生成により、Mg濃度が高く検出される場合があるため、1.0%以上が検出されたデータを除外の上で上記平均Mg濃度を算出した。
その他の評価項目
・犠牲材最卑部と心材中央部の電位差
上記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った材料から分極測定用のサンプルを切り出した。測定面以外をマスキングした後、50℃に加熱した5%NaOH溶液中に10秒浸漬、その後、30%HNO3溶液中に60秒浸漬、さらに水道水、イオン交換水で洗浄した後、乾燥させずにそのままpH3に調整した室温の5%NaCl水溶液中、大気解放の条件で自然電位(参照電極は銀/塩化銀電極)を120min測定した。自然電位は値が落ちつく100~120minの平均値を求めた。
なお、心材中央部についてはあらかじめNaOHなどを用いたエッチングにより、心材中央部を露出させたのちに上記測定を行って自然電位を求めた。
・犠牲材最表面と最卑部との電位差
上記ろう付条件にてろう付相当熱処理を行った材料から分極測定用のサンプルを切り出した。測定面以外をマスキングした後、50℃に加熱した5%NaOH溶液中に10秒浸漬、その後、30%HNO溶液中に60秒浸漬、さらに水道水、イオン交換水で洗浄した後、乾燥させずにそのままpH3に調整した室温の5%NaCl水溶液中、大気解放の条件で自然電位(参照電極は銀/塩化銀電極)を120min測定した。自然電位は値が落ちつく100~120minの平均値を求めた。
なお、犠牲材最卑部については、あらかじめNaOHなどを用いたエッチングにより、犠牲材表面から3μm毎の位置を露出させたのちに上記測定を行って自然電位を求め、断面方向での電位分布を得たのち、最も卑な自然電位が得られた位置を犠牲材最卑部とした。
犠牲材最表面、最卑部および心材中央部の電位差の関係を図4の参考概略図に示す。
Figure 0007498591000001
Figure 0007498591000002
Figure 0007498591000003
Figure 0007498591000004
Figure 0007498591000005
Figure 0007498591000006
Figure 0007498591000007
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲は上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは、上記実施形態に対する適宜の変更が可能である。
1 アルミニウム合金クラッド材
2 心材
3 ろう材
4 犠牲材
5 アルミニウム製熱交換器
6 フィン
7 チューブ
10 他の構成部材
11 フィン
12 チューブ
13 接合部

Claims (5)

  1. 心材の片面に犠牲材が配置され、前記心材のもう一方の片面に、質量%で、Si:6.0~14.0%、Mg:0.05~1.5%、Bi:0.05~0.25%、Sr:0.0001~0.1%を含有し残部がAlおよび不可避不純物からなり、かつ、成分含有量の質量%において、(Bi+Mg)×Sr≦0.1の関係を満たすAl-Si-Mg-Bi系ろう材が配置され、
    前記Al-Si-Mg-Bi系ろう材に含まれるMg-Bi系化合物が、ろう付前の表層面方向の観察において、円相当径で0.1μm以上5.0μm未満の直径を有するものが10000μm視野あたり20個よりも多く存在し、かつ、5.0μm以上の径を有するものが10000μm視野あたり2個未満であり、
    さらに、前記心材が、質量%で、Mn:1.0~1.7%、Si:0.2~1.0%、Fe:0.1~0.5%、Cu:0.08~1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、
    前記犠牲材が、質量%で、Zn:0.5~6.0%を含有するとともにMg含有量が0.1%以下に規制され、残部がAlと不可避不純物からなり、ろう付後の犠牲材表面のMg濃度が0.15%以下であることを特徴とするアルミニウム合金クラッド材。
  2. 前記犠牲材が、質量%で、さらにSi:0.2~0.8%、Cr:0.05~0.5%、Ti:0.05~0.3%の1種あるいは2種以上を含有することを特徴とする請求項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  3. 前記心材がさらに、Mg:0.1~0.7%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  4. 前記心材がさらに、Ti:0.05~0.3%を含有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
  5. ろう付後の前記犠牲材の最卑部と前記心材の中央部の自然電位が犠牲材最卑部のほうが卑であって、自然電位差が70~280mVの範囲にあり、さらに前記犠牲材の最表面と最卑部との電位差が50mV以内であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材。
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