JP2021159840A - ストロンチウム吸着剤およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 共存イオンが存在する処理液から選択的にストロンチウムを除去する性能が高いストロンチウム吸着剤を提供する。【解決手段】 化学組成がKxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]で表され、0.3≦x≦1.0、かつ、0<p≦0.3であり、結晶子径が20Å以上250Å以下であり、BET比表面積が20m2/g以上100m2/g以下であるカリウム型層状マンガン酸化物を含むストロンチウム吸着剤、及びストロンチウム吸着剤の製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は、ストロンチウム吸着剤およびその製造方法に関するものであり、より詳細には、カリウム型層状マンガン酸化物を含むストロンチウム吸着剤およびその製造方法に関する。本発明のストロンチウム吸着剤は共存イオンが存在する処理液から、選択的にストロンチウムを除去するのに有用である。
水溶液から有害イオンを除去できる吸着剤として、層状マンガン酸化物が知られている。
海水中のストロンチウムイオンの吸着剤として、マンガン原料とナトリウム原料を400℃以上で焼成して合成した、層間内にナトリウムイオンが存在している層状マンガン酸化物が特許文献1に開示されている。
一方、マンガン原料とカリウム原料を400℃以上で焼成して合成した、層間内にカリウムイオンが存在している層状マンガン酸化物が特許文献2に開示されている。
特許文献1の層状マンガン酸化物は、XRDピークから層間距離が約5.5Åのナトリウム型層状マンガン酸化物、いわゆる脱水型バーネサイトであるが、脱水型バーネサイトは水溶液中で水和により層間距離が大幅に広がるため、吸着剤が膨潤、崩壊しやすい課題を有する。
特許文献2の層状マンガン酸化物はカリウム型層状マンガン酸化物であり、層間距離が7.0〜7.2Åと水和型バーネサイトに近い層間距離をしているため、膨潤による崩壊は起こりにくいと考えられるが、ストロンチウム吸着能が十分ではない。
このように従来剤では、保形性とストロンチウム吸着性能を両立させることは困難であった。
本発明者は層状マンガン酸化物を含むストロンチウム吸着剤およびその製造方法について鋭意検討した。その結果、従来剤の製法とは異なる2段焼成法を実施することによって、カリウム含有量が高く、且つ結晶子径が小さい層状マンガン酸化物を製造できることを見出し、さらに当該層状マンガン酸化物が、保形性とストロンチウム吸着性能を両立させるという課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、化学組成がKxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]で表され、0.3≦x≦1.0、かつ、0<p≦0.3であり、結晶子径が20Å以上250Å以下であり、BET比表面積が20m2/g以上100m2/g以下であるカリウム型層状マンガン酸化物を含むストロンチウム吸着剤である。
本発明は、層間距離が増大しにくいために保形性に優れ、かつ、ストロンチウム吸着性能に優れる吸着剤を提供できるという効果を奏する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のストロンチウム吸着剤は、化学組成がKxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]で表され、0.3≦x≦1.0、かつ、0<p≦0.3であり、結晶子径が20Å以上250Å以下であり、BET比表面積が20m2/g以上100m2/g以下であるカリウム型層状マンガン酸化物を含むものである。
本発明のストロンチウム吸着剤に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、化学組成がKxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]で表されるものであり、0.3≦x≦1.0、かつ、0<p≦0.3を満たすことを特徴とする。カリウム型層状マンガン酸化物へのストロンチウムの吸着は、処理液のストロンチウムイオンと層間のカチオンのイオン交換により行われる。よって、カリウムの含有量が大きい程吸着サイトを多く持つこととなり、ストロンチウム吸着性能の向上につながる。ただし、電荷のバランスから1.0<xでは層状構造が変化すると考えられる。よって、本発明については0.3≦x≦1.0の範囲であるが、好ましくは0.3≦x≦0.5の範囲で層状構造と吸着性能を両立させることが可能となる。
また、pはMn欠損の度合いを表し、マンガン酸化物中に含まれるカリウムとマンガンのモル比α[単位なし]とマンガン原子Mnの平均価数Z[単位なし]を用いてp=1−4/(α+Z)の式により算出することができる。Mnの欠損は結晶内部でのストロンチウムイオンの移動しやすさにつながるため、Mnの欠損が存在するとストロンチウム吸着性能は大きくなる。ただし、Mnの欠損度合いが大きすぎると結晶が維持できないと考えられる。よって、pについては、0<p≦0.3の範囲であるが、好ましくは0.01≦p≦0.1の範囲、より好ましくは0.02≦p≦0.1の範囲で層状構造と吸着性能を両立させることが可能となる。
本発明のストロンチウム吸着剤に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、結晶子径が20Å以上250Å以下である。粒子内の物質移動の観点から、小さい結晶子径である程ストロンチウム吸着性能が大きくなるが、結晶子径が小さすぎる場合、アモルファスに近くなってしまい、ストロンチウムを結晶内部に保持することが難しくなると考えられるため、結晶子径が20Å以上250Å以下にすることにより、良好なストロンチウム吸着性能が得られる。結晶子径は20Å以上200Å以下が好ましく、50Å以上200Å以下がより好ましい。ここで述べる結晶子径とは、CuKαを線源とする粉末X線回折で、001面のピークからシェラー式(定数K=0.9)で求められる結晶子径である。
本発明のストロンチウム吸着剤に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、BET比表面積が20m2/g以上100m2/g以下である。カリウム型層状マンガン酸化物と処理液の接触面積はストロンチウム吸着性能と層状マンガン酸化物の強度に大きな影響を与えるもので、BET比表面積が20m2/g未満の場合は吸着性能が低く、100m2/gを超える場合は、層状マンガン酸化物粒子の崩壊を招く。BET比表面積は22m2/g以上50m2/g以下であることが好ましく、23m2/g以上40m2/g以下であることがより好ましい。
カリウム型層状マンガン酸化物へのストロンチウムの吸着は、処理液のストロンチウムイオンと層間のカチオンのイオン交換により行われる。これは、交換されるストロンチウムのイオン半径または水和半径に適した層間距離があるためといわれている。カリウム型層状マンガン酸化物の層間距離は、ストロンチウムの吸着性能の観点から、本発明のストロンチウム吸着剤に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、層間距離が7.0Å以上7.3Å以下が好ましく、7.05Å以上7.25Å以下であることがより好ましい。ここで述べる層間距離とは、相対するマンガン層の基底面の距離で表されるものであり、XRD回折ピークの001面を表すピークから求めることができる。層間距離が7.0Å以上7.3Å以下であるカリウム型層状マンガン酸化物は、CuKαを線源とする粉末X線回折で、2θ=12.4±0.3°、2θ=25.0±1.0°及び2θ=37.0±1.0°に回折ピークを有する。
本発明のストロンチウム吸着剤に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、カリウム原料とマンガン原料を混合し、次いで得られた混合物を焼成することによって製造することができる。当該製造方法については、カリウム原料とマンガン原料のモル比を0.3以上1.7以下で混合し、200℃以上350℃未満で一度焼成した後、350℃以上600℃以下で再度焼成することを特徴とする。
使用するカリウム原料としては、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム等の熱分解によりカリウムを供給可能なカリウム化合物などをあげることができ、取扱いの容易さから炭酸カリウムが好適に用いられる。
使用するマンガン原料としては、例えば、炭酸マンガン(MnCO3)等の炭酸塩や四三酸化マンガン(Mn3O4)、三二酸化マンガン(Mn2O3)、二酸化マンガン(MnO2)等のマンガン酸化物などをあげることができ、カリウム原料との反応性の観点から炭酸マンガン(MnCO3)が好適に用いられる。また、カリウムおよびマンガン以外の元素を導入する際は、酸化物、水酸化物、酢酸塩等の焼成により分解して導入元素を供給可能な化合物を、原料として使用することができる。
それぞれの原料は反応性の観点から、50μm以下の小粒径が好適に用いられ、凝集を防止し、操作性に優れる観点から0.01μm以上の原料が用いられる。
カリウム原料とマンガン原料はモル比を0.3以上1.7以下で混合することにより本発明のカリウム型層状マンガン酸化物を得ることができる。0.3未満であると未反応のマンガン酸化物が残存しやすく、1.7より大きい場合は未反応のカリウムが残存しやすい。ストロンチウム吸着能の観点から、モル比は0.4以上1.5以下が好ましい。
カリウム原料とマンガン原料の混合については、両者を高分散かつ均一に混合する方法として、例えば、乳鉢、V型混合器、回転型混合器等の混合器で混合することがあげられる。また、原料粒径を細かくすることと合わせ、ボールミルで粉砕と混合を同時に行うこともできる。
混合した原料は2段階に分けて焼成を行う。まず、200℃以上350℃未満で焼成を行う。200℃以上350℃未満で前もって焼成(1段目焼成)を行うことにより、カリウム原料とマンガン原料の反応性を向上させ、最終的な生成物のカリウム含有量を大きくすることができる。焼成温度が200℃未満であると反応が十分に進行せず未反応の原料が残りやすく、350℃以上であると反応性が十分向上する前に層状マンガン酸化物が生成し、最終的な生成物のカリウム含有量が低下しやすい。1段目焼成は250℃以上350℃以下の焼成が好ましい。その後、350℃以上600℃以下で焼成(2段目焼成)を行うことにより、本発明のカリウム型層状マンガン酸化物を含むストロンチウム吸着剤を得ることができる。この2段目焼成は1段目焼成後そのまま温度を上げて焼成することも、一度温度を下げてから再度過熱して焼成することもできる。焼成温度が350℃未満であると反応が十分に進行せず未反応の原料が残りやすく、600℃より高いと、高価数の可溶性マンガン酸化物が生成しやすい。350℃以上500℃以下の焼成によりストロンチウム吸着能が高いカリウム型層状マンガン酸化物をより好適に得ることができる。
焼成プロセスは昇温、定温保持、降温の一般的な焼成プロセスで行うことができ、定温保持は原料が十分に反応する時間とすればよく、30分以上24時間以下の焼成時間で焼成することができる。なお、1段目焼成については、30分以上12時間以下の時間を掛けることが好ましく、3時間以上12時間以下の時間を掛けることがより好ましい。昇温速度は生産性と焼成機器の昇温性能で選択することができ、0.1℃/min以上20℃/min以下で昇温することができる。カリウム原料とマンガン原料の合成反応は、通常の合成反応とは異なり、降温時も連続して反応が進行するため、室温まで比較的ゆっくりとした速度で降温することが好ましく、焼成機器の降温性能と合わせて0.1℃/min以上10℃/min以下で降温することが好ましい。
焼成はマッフル炉、管状炉等により焼成することができる。焼成の雰囲気については、原料の熱分解により副生する二酸化炭素等を連続的に除去するため、ガス流通下で行うことが好ましい。また、流通させるガスは空気が好適に用いられるが、Mnの価数を調整するため、流通ガスの酸素濃度を0%以上100%以下に調整して焼成することもできる。また、原料の混合粉をそのまま焼成することもできるが、原料の反応を均一に行うため、加圧成型した0.1mm以上20mm以下のペレットとして焼成することもできる。
混合、焼成して得られたカリウム型層状マンガン酸化物はそのままストロンチウム吸着剤として使用することができるが、水洗、乾燥することで、未反応のカリウム除去を行い、ストロンチウム吸着剤として使用することもできる。
カリウム型層状マンガン酸化物は成型体とすることで、ストロンチウム吸着剤として使用することができる。その際には、カリウム型層状マンガン酸化物とバインダーを混錬した後、混錬物を成型、焼成することで成型体とすることができる。使用するバインダーとしては、例えば、粘土、シリカゾル、アルミナゾル、およびジルコニアゾルから選ばれる1種以上などを使用することができる。また、必要に応じ、カルボキシルメチルセルロースなどの成型助剤、または水の少なくともいずれか1種以上を添加してもよい。成型体の形状としては球状、略球状、楕円状、円柱状、多面体状および不定形からなる形状の1種以上の形態とすることができ、0.1mm以上2.0mm以下の径を有することが例示できる。バインダーの効果がより発現し、より十分な成型体強度を得ることができるため、成型体の焼成温度は100℃以上500℃以下で焼成することが好ましい。このとき、600℃以上の温度で焼成するとマンガン酸化物が層状からホランダイト型トンネル構造に変化してしまうため、600℃以上の温度で焼成することはできない。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
<試料中のカリウムとマンガンの測定>
得られた試料の組成分析は誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法)により行った。すなわち、試料粉末50mgを過酸化水素水1mlと塩酸5mlで溶解し、イオン交換水で1Lに希釈することで、測定溶液を調製した。一般的な誘導結合プラズマ発光分析装置(商品名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER製)を用い、得られた測定溶液を測定することで、得られた試料の化学組成を分析した。この際、得られた測定溶液のカリウムのモル濃度をCK[mol/L]、マンガンのモル濃度をCMn[mol/L]とし、試料中のカリウムとマンガンのモル比α[単位なし]を算出した。
得られた試料の組成分析は誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法)により行った。すなわち、試料粉末50mgを過酸化水素水1mlと塩酸5mlで溶解し、イオン交換水で1Lに希釈することで、測定溶液を調製した。一般的な誘導結合プラズマ発光分析装置(商品名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER製)を用い、得られた測定溶液を測定することで、得られた試料の化学組成を分析した。この際、得られた測定溶液のカリウムのモル濃度をCK[mol/L]、マンガンのモル濃度をCMn[mol/L]とし、試料中のカリウムとマンガンのモル比α[単位なし]を算出した。
α(=K/Mn)=CK/CMn
<試料に含有されるマンガンの割合の測定>
得られた試料に含有されるマンガンの割合の測定は電位差滴定法により行った。すなわち、試料粉末50mgを塩酸2mlと(1+1)硫酸4mlと共に加熱することにより溶解し、ピロリン酸ナトリウム10水和物25gを加えることにより、測定溶液を調製した。電位差滴定装置(商品名:電位差滴定装置 model AT−610、京都電子工業製)を用いて0.02mol/L過マンガン酸カリウム水溶液で滴定を行い、試料に含有されるマンガンの割合(wt.%)を測定した。
<試料に含有されるマンガンの割合の測定>
得られた試料に含有されるマンガンの割合の測定は電位差滴定法により行った。すなわち、試料粉末50mgを塩酸2mlと(1+1)硫酸4mlと共に加熱することにより溶解し、ピロリン酸ナトリウム10水和物25gを加えることにより、測定溶液を調製した。電位差滴定装置(商品名:電位差滴定装置 model AT−610、京都電子工業製)を用いて0.02mol/L過マンガン酸カリウム水溶液で滴定を行い、試料に含有されるマンガンの割合(wt.%)を測定した。
<マンガン原子Mnの平均価数の測定>
得られた試料のマンガン原子Mnの平均価数の測定はヨード滴定により行った。すなわち、試料粉末150mgにヨウ化カリウム1.5gを加え、1N水酸化ナトリウム100mlと6N塩酸25mlで溶解させ1時間攪拌し、3〜4価のMnイオンをヨウ化カリウムにより還元し、2価にするとともにヨウ素を遊離させた。その後、1%でんぷん溶液を数滴加え測定溶液を調整した。また、空試験としてヨウ化カリウム1.5gを加え、1N水酸化ナトリウム100mlと6N塩酸25mlで溶解させ1時間攪拌し、1%でんぷん溶液を数滴加え空試験溶液を調整した。測定溶液と空試験溶液を攪拌しながら色が無色透明になるまで0.1Nチオ硫酸ナトリウムで滴定し、測定溶液に対する滴定量と空試験溶液に対する滴定量を比較することによりMnイオンの還元により遊離したヨウ素量を求めた。遊離したヨウ素量から試料の還元に必要とされた電子量を求め、試料に含有されるマンガンの割合からMnの平均価数を算出した。
得られた試料のマンガン原子Mnの平均価数の測定はヨード滴定により行った。すなわち、試料粉末150mgにヨウ化カリウム1.5gを加え、1N水酸化ナトリウム100mlと6N塩酸25mlで溶解させ1時間攪拌し、3〜4価のMnイオンをヨウ化カリウムにより還元し、2価にするとともにヨウ素を遊離させた。その後、1%でんぷん溶液を数滴加え測定溶液を調整した。また、空試験としてヨウ化カリウム1.5gを加え、1N水酸化ナトリウム100mlと6N塩酸25mlで溶解させ1時間攪拌し、1%でんぷん溶液を数滴加え空試験溶液を調整した。測定溶液と空試験溶液を攪拌しながら色が無色透明になるまで0.1Nチオ硫酸ナトリウムで滴定し、測定溶液に対する滴定量と空試験溶液に対する滴定量を比較することによりMnイオンの還元により遊離したヨウ素量を求めた。遊離したヨウ素量から試料の還元に必要とされた電子量を求め、試料に含有されるマンガンの割合からMnの平均価数を算出した。
計算式は以下のとおりである。
試料重量:S[mg]
測定溶液に対する0.1Nチオ硫酸ナトリウム滴定量:A[ml]
空試験溶液に対する0.1Nチオ硫酸ナトリウム滴定量:B[ml]
試料に含有されるMnの割合:W[wt.%]
Mnの原子量:54.94
Mnの平均価数:Z[単位なし]=2+[(A―B)×0.1]/(S×W/100/54.94)
<化学組成式におけるpとxの算出>
前項までに測定したデータを用いて化学組成KxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]におけるpとxを算出し、試料の化学組成を決定した。
測定溶液に対する0.1Nチオ硫酸ナトリウム滴定量:A[ml]
空試験溶液に対する0.1Nチオ硫酸ナトリウム滴定量:B[ml]
試料に含有されるMnの割合:W[wt.%]
Mnの原子量:54.94
Mnの平均価数:Z[単位なし]=2+[(A―B)×0.1]/(S×W/100/54.94)
<化学組成式におけるpとxの算出>
前項までに測定したデータを用いて化学組成KxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]におけるpとxを算出し、試料の化学組成を決定した。
Mn欠損の割合p[単位なし]は前述のマンガンのモル比αとMnの平均価数Zを用いて算出した。
計算式は以下のとおりである。
p=1−4/(α+Z)
また、xは以下の式によって算出した。
また、xは以下の式によって算出した。
x=α×(1−p)
<BET比表面積の測定>
得られた試料中のBET比表面積測定装置(商品名:FlowSorbIII、Micromeritics製)を使用し、得られた試料のBET比表面積を測定した。BET比表面積測定にあたり、前処理としてBET比表面積測定装置に付属する前処理装置を用い、試料を窒素気流中にて150℃で1時間加熱し、水分の除去を行った。
<BET比表面積の測定>
得られた試料中のBET比表面積測定装置(商品名:FlowSorbIII、Micromeritics製)を使用し、得られた試料のBET比表面積を測定した。BET比表面積測定にあたり、前処理としてBET比表面積測定装置に付属する前処理装置を用い、試料を窒素気流中にて150℃で1時間加熱し、水分の除去を行った。
<粉末X線回折測定>
X線回折装置(商品名:Ultima4、リガク製)を使用し、得られた試料の粉末X線回折測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は毎秒0.04°、計測時間は0.25秒、測定範囲は2θとして5°から70°の範囲で測定した。
X線回折装置(商品名:Ultima4、リガク製)を使用し、得られた試料の粉末X線回折測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は毎秒0.04°、計測時間は0.25秒、測定範囲は2θとして5°から70°の範囲で測定した。
<ストロンチウム吸着量の測定>
汚染水処理施設の処理水を模擬し、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウムをイオン交換水に溶解させ、被処理水溶液(以下、「模擬海水」とする。)を調製した。なお、模擬海水の各成分の濃度は塩化ナトリウム0.3%、カルシウム5ppm、マグネシウム5ppm、ストロンチウム5ppmである。
汚染水処理施設の処理水を模擬し、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウムをイオン交換水に溶解させ、被処理水溶液(以下、「模擬海水」とする。)を調製した。なお、模擬海水の各成分の濃度は塩化ナトリウム0.3%、カルシウム5ppm、マグネシウム5ppm、ストロンチウム5ppmである。
模擬海水250mLに、吸着剤試料0.05gを添加した。これを温度25℃で1時間撹拌することにより吸着試験を行った。
試料水溶液中のストロンチウム濃度測定は誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法)により行った。測定には一般的な誘導結合プラズマ発光分析装置(商品名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER製)を用い、得られた測定溶液を測定することでストロンチウム濃度を求めた。
吸着試験を行う前の模擬海水のストロンチウム濃度をC0(mg/L)、吸着試験後の模擬海水C(mg/L)、吸着剤試料の重量W(g)とし、ストロンチウム吸着量を下式により求めた。
ストロンチウム吸着量(mg/g)=(C0−C)×0.250/W
実施例1
炭酸カリウム(特級試薬、キシダ化学製)と炭酸マンガン(工業用高純度原料、Lianyungang Dongdu Chemical製)をカリウムとマンガンのモル比1.0でボールミルを用いた粉砕混合を行い、混合粉をマッフル炉で空気流通下300℃、1時間で1段目の焼成を行った後、そのまま温度を上げ400℃、6時間で2段目の焼成を行い、試料の倍量の水で水洗後、5Cの濾紙を用いて濾過をした後、再度試料の倍量の水で水洗し、5Cの濾紙を用いて濾過を行った。その後、60℃の空気中で乾燥させ、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.307Mn0.99□0.01O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.14Å、結晶子径は191Å、BET比表面積は28.8m2/g、Mn価数は3.73であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は16.5mg/gであった。
実施例1
炭酸カリウム(特級試薬、キシダ化学製)と炭酸マンガン(工業用高純度原料、Lianyungang Dongdu Chemical製)をカリウムとマンガンのモル比1.0でボールミルを用いた粉砕混合を行い、混合粉をマッフル炉で空気流通下300℃、1時間で1段目の焼成を行った後、そのまま温度を上げ400℃、6時間で2段目の焼成を行い、試料の倍量の水で水洗後、5Cの濾紙を用いて濾過をした後、再度試料の倍量の水で水洗し、5Cの濾紙を用いて濾過を行った。その後、60℃の空気中で乾燥させ、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.307Mn0.99□0.01O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.14Å、結晶子径は191Å、BET比表面積は28.8m2/g、Mn価数は3.73であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は16.5mg/gであった。
実施例2
1段目の焼成を3時間行ったこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.312Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.12Å、結晶子径は196Å、BET比表面積は23.5m2/g、Mn価数は3.76であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は17.1mg/gであった。
1段目の焼成を3時間行ったこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.312Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.12Å、結晶子径は196Å、BET比表面積は23.5m2/g、Mn価数は3.76であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は17.1mg/gであった。
実施例3
1段目の焼成を12時間行ったこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.319Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.14Å、結晶子径は180Å、BET比表面積は23.1m2/g、Mn価数は3.76であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は17.1mg/gであった。
1段目の焼成を12時間行ったこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.319Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.14Å、結晶子径は180Å、BET比表面積は23.1m2/g、Mn価数は3.76であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は17.1mg/gであった。
実施例1から実施例3に示したように、カリウム含有量が大きく、Mnに欠損があり、結晶子径が小さく、BET比表面積も大きいことを特徴とするストロンチウム吸着能の高いカリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得ることができる。
比較例1
1段目の焼成を行わなかったこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.295Mn1.01O2であった。また、層間距離は7.09Å、結晶子径は175Å、BET比表面積は26.7m2/g、Mn価数は3.68であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は14.1mg/gであった。
1段目の焼成を行わなかったこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.295Mn1.01O2であった。また、層間距離は7.09Å、結晶子径は175Å、BET比表面積は26.7m2/g、Mn価数は3.68であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は14.1mg/gであった。
比較例2
1段目の焼成を行なわず、2段目の焼成時間を12時間に延長したこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.285Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.14Å、結晶子径は172Å、BET比表面積は29.0m2/g、Mn価数は3.81であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は15.5mg/gであった。
1段目の焼成を行なわず、2段目の焼成時間を12時間に延長したこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。得られた試料は化学組成がK0.285Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.14Å、結晶子径は172Å、BET比表面積は29.0m2/g、Mn価数は3.81であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は15.5mg/gであった。
比較例3
1段目の焼成を行なわず、2段目の焼成温度を500℃にしたこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。K0.318Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.12Å、結晶子径は289Å、BET比表面積は14.7m2/g、Mn価数は3.75であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は10.3mg/gであった。
1段目の焼成を行なわず、2段目の焼成温度を500℃にしたこと以外は実施例1と同様に行い、カリウム型層状マンガン酸化物(ストロンチウム吸着剤)を得た。K0.318Mn0.98□0.02O2[□:Mn欠損]であった。また、層間距離は7.12Å、結晶子径は289Å、BET比表面積は14.7m2/g、Mn価数は3.75であった。得られた試料のストロンチウム吸着量は10.3mg/gであった。
比較例1から比較例3に示したように、1段目の焼成を行わない場合に得られた比較例1のカリウム型層状マンガン酸化物はカリウム含有量が小さく、Mn価数も小さくMn欠損も見られないものであり、ストロンチウム吸着量が小さい。比較例2のように1段目の焼成を行わず、2段目の焼成時間を延長するだけでは得られたカリウム型層状マンガン酸化物のMn酸化度は増大しMn欠陥もみられるものの、カリウム含有量は小さいままであり、やはりストロンチウム吸着量は小さい。比較例3のように焼成温度を上げた場合に得られたカリウム型層状マンガン酸化物はカリウム含有量は大きいものの、結晶子径が大きく、BET比表面積は小さく、ストロンチウム吸着量は小さい。
本発明のカリウム型層状マンガン酸化物を含む吸着剤はストロンチウムの吸着剤として使用できる。特に、原子力発電所の放射性核種を含む海水のような、多量の共存イオンを含む処理水から、ストロンチウムを選択的に吸着する吸着剤として使用できる。
Claims (8)
- 化学組成がKxMn(1−p)□pO2[□:Mn欠損]で表され、0.3≦x≦1.0、かつ、0<p≦0.3であり、結晶子径が20Å以上250Å以下であり、BET比表面積が20m2/g以上100m2/g以下であるカリウム型層状マンガン酸化物を含むことを特徴とするストロンチウム吸着剤。
- 0.3≦x≦0.5を満たすことを特徴とする請求項1に記載のストロンチウム吸着剤。
- 0.01≦p≦0.1を満たすことを特徴とする請求項1に記載のストロンチウム吸着剤。
- BET比表面積が22m2/g以上50m2/g以下を満たすことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のストロンチウム吸着剤。
- 層間距離が7.0Å以上7.3Å以下を満たすことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のストロンチウム吸着剤。
- カリウム原料とマンガン原料を混合する混合工程、及び前記混合工程で得られた混合物を焼成する焼成工程を含むストロンチウム吸着剤の製造方法であって、混合工程においてカリウム原料とマンガン原料のモル比を0.3以上1.7以下で混合し、焼成工程において200℃以上350℃未満で一度焼成した後、350℃以上600℃以下で再度焼成することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載のストロンチウム吸着剤の製造方法。
- 再度焼成した後、生成物を水洗・乾燥することを特徴とする、請求項6に記載のストロンチウム吸着剤の製造方法。
- 請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載のストロンチウム吸着剤を使用することを特徴とするストロンチウムの吸着方法。
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