JP2021159014A - 酵素含有組成物の製造方法 - Google Patents

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Motomitsu Kitaoka
峻太郎 町田
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勝一 齋藤
Katsuichi Saito
金忠 清水
Kinchu Shimizu
那波 橋倉
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Abstract

【課題】遺伝子組換え技術を用いることなく、ラクト−N−ビオースI(LNB)及びガラクト−N−ビオース(GNB)を効率よく製造するための酵素含有組成物を、簡便な操作により製造する方法の提供。【解決手段】1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で熱処理する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、酵素含有組成物の製造方法に関する。詳細には、ラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースを効率よく合成できる酵素含有組成物の製造方法に関する。
ラクト−N−ビオースI(Galβ1−3GlcNAc、LNB)及びガラクト−N−ビオース(Galβ1−3GalNAc、GNB)は、それぞれ母乳に含まれるミルクオリゴ糖の構成単位であり、腸内のムチン型糖鎖のコア構造である。LNBについてはこれまでにビフィズス菌の選択的増殖促進作用などの機能性が報告されており、腸内細菌叢改善など、健康の増進と維持に有効な働きが期待されているオリゴ糖である。
LNB及びGNBを大量に合成する従来の方法として、本発明者らが開発した、ビフィズス菌の酵素群(スクロースホスホリラーゼ(SP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP))の存在下で、スクロース、及びN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)又はN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を原料としてLNB及びGNBを合成する方法がある(特許文献1)。しかし、該方法は、必要となる各種酵素として、それぞれの遺伝子をクローニングして大腸菌で発現させた遺伝子組換え酵素を用いたものであって、安全性に関して懸念があり、我が国において食品として利用するには改良の余地がある。
一方で、我が国においても受容度の高いLNBの製造法としてビフィズス菌の菌体抽出液をそのまま利用する方法も知られている(特許文献2、特許文献3)。しかし、ビフィズス菌は本来LNBを資化するように適応しているため、LNBを合成するための十分な量の酵素を得るには改良の余地がある。
ビフィズス菌の菌体中にはLNBの合成に必要な酵素だけでなく、エネルギー代謝など生命の維持に必要な酵素群や代謝物もその菌体内には多数存在している。それらがLNB合成反応に与える影響についての報告は皆無である。
特許第4915917号明細書 特許第5792105号明細書 特許第5800741号明細書
本発明は、遺伝子組換え技術を用いることなく、ラクト−N−ビオースI(LNB)及びガラクト−N−ビオース(GNB)を効率よく製造するための酵素含有組成物を、簡便な操作により製造する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、特定の酵素の存在下で特定の熱処理をすることにより、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た菌体処理物に含まれる、LNB合成及びGNB合成に必要な酵素の活性は保持したまま、該合成の効率を低下させる酵素の活性を選択的に低下させられることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で熱処理する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法を提供する。
前記製造方法は、前記菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものであることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記熱処理がN−アセチルヘキソサミンの存在下で行われることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記熱処理がUMP又はUDP−グルコースの存在下で行われることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種であり、前記2種のビフィドバクテリウム属細菌の一方が、GLNBPを産生し、SPを産生しないものであり、他方が、SPを産生し、GLNBPを産生しないものであることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、GLNBPを産生し、SPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベであり、SPを産生し、GLNBPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムであることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)であり、前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621であることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種であることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記1種のビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムであり、スクロースを炭素源として培養されたものであることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540、NITE P-1541、又はNITE P-1542であることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記トリプシンを含む消化酵素がパンクレアチンであることを好ましい態様としている。
本発明はまた、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)を産生し、スクロースホスホリラーゼ(SP)を産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、GLNBP、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む第一の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第一の熱処理をして得た処理物と、SPを産生し、GLNBPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含む第二の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第二の熱処理をして得た処理物とを混合する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法を提供する。
前記製造方法は、前記第一の菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものであり、前記第二の菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合
物を除去する工程を経たものであることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記第一の熱処理がN−アセチルヘキソサミンの存在下で行われることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記第一の熱処理及び第二の熱処理がUMP又はUDP−グルコースの存在下で行われることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、GLNBPを産生し、SPを産生しない前記1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌が1種であって、ビフィドバクテリウム・ブレーベであり、SPを産生し、GLNBPを産生しない前記1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌が1種であって、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムであることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)であり、前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621であることを好ましい態様としている。
前記製造方法は、前記トリプシンを含む消化酵素がパンクレアチンであることを好ましい態様としている。
本発明はまた、スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)を含む、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体処理物から得られた酵素含有組成物であって、菌体に含まれるホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)の活性が5%以下に低減された、組成物を提供する。
本発明によって、遺伝子組換え技術を用いることなく、ラクト−N−ビオースI(LNB)及びガラクト−N−ビオース(GNB)を効率よく製造するための酵素含有組成物を、簡便な操作により製造することができる。LNB及びGNBは、ビフィドバクテリウム属細菌(ビフィズス菌)の選択的増殖促進等の作用を有しており、医薬、食品分野等で有用である。例えば、育児用粉乳などの製品に添加するための食品素材としてのLNB及びGNBを従来よりも低コストで提供することができる。
ラクト−N−ビオースI(LNB)の合成法の一態様を示す図。 本発明の一態様に係るLNB合成の結果を示すグラフ。 本発明の一態様に係るGNB合成の結果を示すグラフ。 本発明の一態様に係るグルコアミラーゼ処理の効果を示すグラフ。 本発明の一態様に係るLNB合成の結果を示すグラフ。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1に記載したように、ラクト−N−ビオースI(LNB)の合成法が知られている。
スクロース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースを原料として、前記原料に、後述する、本発明の第一の態様に係る製造方法により製造される酵素含有組成物、本発明の第二の態様に係る製造方法により製造される酵素含有組成物、又は本発明の第三の態様に係る酵素含有組成物を作用させることでLNBが生成する。
また、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の代わりにN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を用いると、ガラクト−N−ビオース(GNB)が生成する。すなわち、スクロー
ス、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースを原料として、前記原料に、後述する、本発明の第一の態様に係る製造方法により製造される酵素含有組成物、本発明の第二の態様に係る製造方法により製造される酵素含有組成物、又は本発明の第三の態様に係る酵素含有組成物を作用させることでGNBが生成する。
リン酸の存在下でスクロースホスホリラーゼ(SP, 酵素番号EC 2.4.1.7)によって、スクロースからグルコース−1−リン酸が生成する。グルコース−1−リン酸から、UDP−グルコースの存在下及び/又はUDP−ガラクトースで、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT, 酵素番号EC 2.7.7.12)、及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE, 酵素番号EC 5.1.3.2)の作用によって、ガラクトース−1−リン酸が生成する。ガラクトース−1−リン酸から、N−アセチルグルコサミンの存在下で1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP, 酵素番号EC 2.4.1.211)の作用によって、LNBが生成する。
LNB合成系及びGNB合成系では、LNB合成系を例にして説明すると、図1に示すように、原料及び反応中間産物が、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体処理物中に含まれる、LNB合成の効率を低下させる酵素に利用されてしまう。具体的には、グルコース−1−リン酸をグルコース−6−リン酸に変換する酵素であるホスホグルコムターゼ(PGM, 酵素番号EC 5.4.2.2)は、LNB合成系におけるグルコース−1−リン酸を消費してしまう。そのため、LNB合成系に用いられる酵素含有組成物としては、PGMの活性が低下していることが好ましい。
また、前記PGMの作用により生じたグルコース−6−リン酸は、フルクトース−6−リン酸に変換され、該フルクトース−6−リン酸は、フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK, 酵素番号EC 4.1.2.22)の作用によりアセチルリン酸に変換される。その後、アセチルリン酸は酢酸に変換される結果、LNB合成系のpHが低下し、LNB合成の進行が抑制されてしまう。そのため、LNB合成系に用いられる酵素含有組成物としては、F6PPKの活性が低下していることが好ましい。
本発明の第一の態様は、1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で熱処理する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法である。
本態様に用いる菌体処理物としては、1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、SP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含み、SP、GLNBP、GalT及びGalEの熱安定性(耐熱性)がPGM及びF6PPKよりも高く、前記熱処理をすることによって、SP、GLNBP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下するものであれば、特に制限されない。尚、PGM及びF6PPK活性の低下とは、熱処理後のPGM及びF6PPKの残存活性が、それぞれ、熱処理前のPGM及びF6PPK活性よりも低いことを意味するが、熱処理によってPGM及びF6PPK活性がほぼ又は完全に消失することも含む。
前記菌体処理物を前記熱処理したときに、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の残存率が、SPでは好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、GLNBPでは、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、GalTでは、好ましくは40%以上、より好ましくは45%
以上、さらに好ましくは50%以上であり、GalEでは、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。一方で、PGMでは、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下であり、F6PPKでは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。
前記菌体処理物を前記熱処理したときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性は、下記の通りである。
SPの活性は10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mM スクロースの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのグルコース−1−リン酸を生成する活性を1ユニット(U)として、好ましくは0.05 U/mL以上、より好ましくは0.1 U/mL以上、さらに好ましくは0.2 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば5 U/mL以下であってよい。
GLNBPの活性は10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mM LNBの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのガラクトース−1−リン酸を生成する活性を1 Uとして、好ましくは0.05 U/mL以上、より好ましくは0.1 U/mL以上、さらに好ましくは0.2 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば5 U/mL以下であってよい。
GalTの活性は5 mM塩化マグネシウム、1 mMガラクトース−1−リン酸、1 mM UDP−グルコースの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのグルコース−1−リン酸を生成する活性を1 Uとして、好ましくは1 U/mL以上、より好ましくは2 U/mL以上、さらに好ましくは5 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば40
U/mL以下であってよい。
GalEの活性は5 mM塩化マグネシウム、1 mM UDP−ガラクトースの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのUDP−グルコースを生成する活性を1 Uとして、好ましくは0.5 U/mL以上、より好ましくは1 U/mL以上、さらに好ましくは2 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば20 U/mL以下であってよい。
PGMの活性は1 mMグルコース−1−リン酸の存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのグルコース−6−リン酸を生成する活性を1 Uとした。PGMでは、下限は特に制限されないが、例えば0以上であってよく、一方で、好ましくは1 U/mL以下、より好ましくは0.5 U/mL以下、さらに好ましくは0.2 U/mL以下である。
F6PPKの活性は10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mMフルクトース−6−リン酸の存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのアセチルリン酸を生成する活性を1
Uとして、下限は特に制限されないが、例えば0以上であってよく、一方で、好ましくは1
U/mL以下、より好ましくは0.5 U/mL以下、さらに好ましくは0.2 U/mL以下である。
また、本態様に用いる菌体処理物としては、前記各酵素を含む菌体破砕物、菌体抽出物又はその分画物、粗精製画分等が挙げられる。
菌体の破砕の方法は、前記各酵素のうちSP、GLNBP、GalT及びGalEの活性ができるだけ維持される限り特に制限されず、例えば、超音波破砕機、ビーズ式破砕機、又はフレンチプレスを用いる方法等が挙げられる。菌体破砕を水性媒体中で行えば、菌体抽出物が得られる。
分画物又は粗精製物は、菌体抽出物から、通常酵素の分画又は精製に用いられる方法、例えば透析、ろ過(例えばクロスフローろ過が挙げられ、具体的には、中空糸膜を用いたクロスフローろ過が挙げられる。)、塩析、溶媒沈殿法、各種クロマトグラフィー等によって得ることができ、これらの方法は低分子化合物を除去するのに好ましい。当該低分子化合物は、その分子量が、下限は特に制限されないが、好ましくは100以上、より好ましくは150以上であり、一方で、好ましくは10,000以下、より好ましくは3,000以下である。また、当該低分子化合物の除去率は、好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。
したがって、本態様に係る製造方法は、前記菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものであることを好ましい態様としている。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌は、その菌体処理物としてSP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKが含まれる限り、1種でも2種以上でもよい。2種以上である場合、SP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKは、それぞれ、その2種以上のビフィドバクテリウム属細菌のうちどのビフィドバクテリウム属細菌に由来するものであってもよい。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌については、後述する。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の一態様としては、例えば、後述する、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌を含み、もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む態様が挙げられる。当該もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌は特に制限されない。
また、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の他の態様としては、例えば、後述する、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の態様が挙げられる。
また、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の他の態様としては、例えば、後述する、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌を含み、もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む態様が挙げられる。当該もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌は特に制限されない。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得られた、SP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKは、いずれも当該ビフィドバクテリウム属細菌内在性ものであることが好ましい。すなわち、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が産生する上記酵素をコードする遺伝子は、非外来性遺伝子であることが好ましい。
尚、菌体処理物に、必要に応じてSP、GLNBP、GalT及びGalEから成る群から選択される一又はそれ以上を添加することは妨げられない。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌の菌体を培養するための培地は、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に適した培地であれば特に制限されないが、例えばNB培地、MRS培地等が挙げられる。培地の炭素源としては、グルコース、スクロース等が挙げられる。
培養温度、培養時間等の発酵条件は、通常のビフィドバクテリウム属細菌の培養と同様の条件を採用することができる。例えば、培養温度は30〜40℃が好ましく、34〜38℃がより好ましい。培養時間は、通常、5〜24時間、好ましくは10〜16時間が好ましい。
培地に接種する菌体は、予め種培養又は前培養しておいてもよい。種培養又は前培養に用いられる培地には、酵母エキス等の生育促進物質や、L−システイン等の還元剤等を添加してもよい。
GLNBPを産生する細菌を用いる場合は、グルコースを炭素源として用いることが好ましく、そのときスクロースを炭素源として用いないことが好ましい。GLNBPの産生は、グルコースにより誘導されると推定される。すなわち、グルコースを含み、スクロースを含まない培地で培養することが好ましい。また、他の炭素源で細菌を培養して細菌を増殖させた後、炭素源をグルコースに変えて培養することによって、GLNBPを産生させてもよい。
SPを産生する細菌を用いる場合は、スクロースを炭素源として用いることが好ましく、
そのときグルコースを炭素源として用いないことが好ましい。SPの産生は、スクロースにより誘導されると推定される。すなわち、スクロースを含み、グルコースを含まない培地で培養することが好ましい。また、他の炭素源で細菌を培養して細菌を増殖させた後、炭素源をスクロースに変えて培養することによって、SPを産生させてもよい。
ただし、ビフィドバクテリウム・ビフィダムはSP遺伝子を元来有しないため、スクロースを炭素源として用いてもSPは産生されない。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合には、前記2種のビフィドバクテリウム属細菌の一方が、GLNBPを産生し、SPを産生しないものであり、他方が、SPを産生し、GLNBPを産生しないものであることが好ましい。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のGLNBPを産生し、SPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌としては、結果的に、2種のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得られた菌体処理物としてSP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKが含まれれば、GalT、GalE、PGM及びF6PPKからなる群から選択される一又はそれ以上を産生するものであっても、産生しないものであってもよい。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のGLNBPを産生し、SPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えばGLNBPを産生し、SPを産生しない、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが挙げられ、好ましくはGLNBPを産生し、SPを産生しない、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダムである。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のGLNBPを産生し、SPを産生しないビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、例えばビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)、ビフィドバクテリウム・ブレーベJCM1192が挙げられ、好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)である。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のGLNBPを産生し、SPを産生しないビフィドバクテリウム・ビフィダムとしては、例えばビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304 (NITE BP-1252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダムJCM1254が挙げられ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304 (NITE BP-1252)である。
尚、GLNBPを産生し、SPを産生しない、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスは、グルコースを含み、スクロースを含まない培地で培養した場合に、GLNBPを産生し、SPを産生しないが、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを産生する細菌である。
JCMとの文言から始まる受託番号の菌株は、理化学研究所バイオリソース研究センター(RIKEN BioResource Research Center)から入手することができる。
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)は、2012年2月23日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、NITE BP-1253の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)は、上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ブレーベに分類される細菌であって、グルコースを含み、スクロースを含まない培地で培養した場合に、GLNBPを産生し、SPを産生しないが、GalT、G
alE、PGM及びF6PPKを産生するものであり、さらにその16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の菌学的性質を有する細菌である。また、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)には、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304 (NITE BP-1252)は、2012年2月23日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、NITE BP-1252の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304 (NITE BP-1252)は、上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに分類される細菌であって、グルコースを含み、スクロースを含まない培地で培養した場合に、GLNBPを産生し、SPを産生しないが、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを産生するものであり、さらにその16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の菌学的性質を有する細菌である。また、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304 (NITE BP-1252)には、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のSPを産生し、GLNBPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌としては、結果的に、2種のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得られた菌体処理物としてSP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKが含まれれば、GalT、GalE、PGM及びF6PPKからなる群から選択される一又はそれ以上を産生するものであっても、産生しないものであってもよい。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のSPを産生し、GLNBPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えばSPを産生し、GLNBPを産生しない、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アドルセンティス、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレータムなどが挙げられる。また、ビフィドバクテリウム属細菌のうち、ビフィドバクテリウム・ビフィダムのみがSP遺伝子を元来有しないことから、SPを産生しGLNBPを産生しないビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを除くビフィドバクテリウム属細菌であってもよい。好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムである。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムは、単に、ビフィドバクテリウム・ロンガムと称されることがある。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のSPを産生し、GLNBPを産生しないビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムとしては、例えばビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621が挙げられる。
尚、SPを産生し、GLNBPを産生しない、前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アドルセンティス、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレータムは、スクロースを含み、グルコースを含まない培地で
培養した場合に、SPを産生し、GLNBPを産生しないが、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを産生する細菌である。また、このことは、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを除くビフィドバクテリウム属細菌でも同様である。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621は、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02621の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
尚、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムBB536と同一である。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621は、上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌であって、スクロースを含み、グルコースを含まない培地で培養した場合に、SPを産生し、GLNBPを産生しないが、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを産生するものであり、さらにその16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の菌学的性質を有する細菌である。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621には、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合、前記1種のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得られた菌体処理物にSP、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKが含まれる。
本態様のビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の前記1種のビフィドバクテリウム属細菌としては、例えばビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが挙げられ、例えばビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540、NITE P-1541、NITE P-1542が挙げられる。
尚、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540、NITE P-1541、NITE P-1542は、特開2014-187886号公報に記載されているように、スクロースを炭素源として培養することによりGLNBPを高生産し、かつSPを産生するものであり、加えて、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを産生する細菌である。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540、NITE P-1541、NITE P-1542は、いずれも、2013年2月13日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託がなされたものであり、それぞれ受託番号NITE P-1540、NITE P-1541、NITE P-1542が付与されたものである。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540は、上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムに分類される細菌であって、スクロースを炭素源として培養することによりGLNBPを高生産し、かつSPを産生し、加えて、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを産生するものであり、さらにその16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の菌学的性質を有する細菌である。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540には、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
本態様に用いるトリプシンを含む消化酵素としては、前記熱処理をすることによって、SP、GLNBP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性を選択的又は優先的に低下させられる限り特に制限されず、トリプシンを含む混合物であってよく、例えばパンクレアチンが挙げられる。パンクレアチンは膵臓由来の酵素であり、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼをはじめ多くの酵素を含むものである。パンクレアチンとしては、例えば食用獣由来のパンクレアチンが挙げられる。食用獣としては、例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギが挙げられる。
また、本態様に用いるトリプシンを含む消化酵素は、トリプシン単独であってもよい。トリプシンは膵臓由来の酵素である。トリプシンとしては、例えば食用獣由来のトリプシンが挙げられる。食用獣としては、例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギが挙げられる。
上記のような菌体処理物を、前記トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で熱処理すると、SP、GLNBP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下した酵素含有組成物が得られる。
熱処理温度は、熱処理時間にもよるが、通常45℃以上、好ましくは46℃以上、より好ましくは47℃以上であり、一方で、通常50℃以下、好ましくは49℃以下、より好ましくは48℃以下である。
熱処理時間は、熱処理温度にもよるが、通常10分間以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上であり、一方で、通常4時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。
熱処理温度が高い場合は、低い場合よりも処理時間は短めでよい。
また、菌体処理物の熱処理時のpHは、通常6以上、好ましくは6.5以上、より好ましくは6.7以上であり、一方で、通常8以下、好ましくは7.5以下、より好ましくは7.2以下である。
熱処理温度、熱処理時間、菌体処理物のpH等の条件は、予備的に菌体処理物を種々の条件で熱処理し、各酵素の活性を測定し、各酵素の残存活性又はそれらの比率が前記値の範囲内となるような条件を選択することによって、適宜設定することができる。これらの酵素の活性は、当業者に公知の方法、例えば実施例に記載した方法によって測定することができる。
前記熱処理は、菌体処理物中のGLNBPの安定性を向上するために、N−アセチルヘキソサミンの存在下で行われることが好ましい。N−アセチルヘキソサミンとしては、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンが挙げられる。
また、N−アセチルヘキソサミンとしては、本態様に係る製造方法で製造される酵素含有組成物がLNBの合成に用いられる場合にはN−アセチルグルコサミンであることが好ましく、GNBの合成に用いられる場合にはN−アセチルガラクトサミンであることが好ましい。
前記熱処理時のN−アセチルヘキソサミンの終濃度としては、通常1mM以上、好ましくは2mM以上、より好ましくは5mM以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば溶解度以下が挙げられる。
また、前記熱処理は、菌体処理物中のGalT及びGalEの安定性を向上するために、UMP又はUDP−グルコースの存在下で行われることが好ましい。UMP及びUDP−グルコースは、いずれか一方を用いてもよいし両方を用いてもよい。前記熱処理時のUMP及びUDP−グルコースの終濃度としては、総量で、通常0.1mM以上、好ましくは0.2
mM以上、より好ましくは0.4mM以上であり、一方で、通常20mM以下、好ましくは15mM以下、より好ましくは12mM以下である。
本発明の第二の態様は、
1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)を産生し、スクロースホスホリラーゼ(SP)を産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、GLNBP、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む第一の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第一の熱処理をして得た処理物と、
SPを産生し、GLNBPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含む第二の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第二の熱処理をして得た処理物とを
混合する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法である。
まず、GLNBPを産生し、SPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含む第一の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第一の熱処理をして処理物を得ることについて説明する。
上記第一の菌体処理物としては、GLNBPを産生し、SPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含み、GLNBP、GalT及びGalEの熱安定性(耐熱性)がPGM及びF6PPKよりも高く、前記第一の熱処理をすることによって、GLNBP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下するものであれば、特に制限されない。尚、PGM及びF6PPK活性の低下とは、熱処理後のPGM及びF6PPKの残存活性が、それぞれ、熱処理前のPGM及びF6PPK活性よりも低いことを意味するが、第一の熱処理によってPGM及びF6PPK活性がほぼ又は完全に消失することも含む。
前記第一の菌体処理物に前記第一の熱処理をしたときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の残存率については、前記第一の態様において、前記菌体処理物を前記熱処理したときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の好ましい残存率を援用する。
前記第一の菌体処理物に前記第一の熱処理をしたときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性については、前記第一の態様において、前記菌体処理物を前記熱処理したときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の好ましい範囲を援用する。
また、前記第一の菌体処理物は、前記各酵素を含む菌体破砕物、菌体抽出物又はその分画物、粗精製画分等が挙げられる。
菌体の破砕の方法は、前記各酵素のうちGLNBP、GalT及びGalEの活性ができるだけ維持される限り特に制限されず、例えば、超音波破砕機、ビーズ式破砕機、又はフレンチプレスを用いる方法等が挙げられる。菌体破砕を水性媒体中で行えば、菌体抽出物が得られる。分画物又は粗精製物は、菌体抽出物から、通常酵素の分画又は精製に用いられる方法、例えば透析、ろ過(例えばクロスフローろ過が挙げられ、具体的には、中空糸膜を用いたクロスフローろ過が挙げられる。)、塩析、溶媒沈殿法、各種クロマトグラフィー等によって得ることができ、これらの方法は低分子化合物を除去するのに好ましい。当該低分子化合物の好ましい分子量については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
したがって、本態様に係る製造方法は、前記第一の菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものであることを好ましい態様としている。
前記ビフィドバクテリウム属細菌は、第一の菌体処理物としてGLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKが含まれ、SPが含まれない限り、1種でも2種以上でもよい。2種以上である場合、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKは、それぞれ、その2種以上のビフィドバクテリウム属細菌のうちどのビフィドバクテリウム属細菌に由来するものであってもよい。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌については、後述する。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の一態様としては、例えば、後述する、前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌が含み、もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む態様が挙げられる。当該もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌はSPを産生しないものであれば特に制限されない。
また、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の他の態様としては、例えば、後述する、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の態様が挙げられる。
また、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の他の態様としては、例えば、後述する、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌を含み、もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む態様が挙げられる。当該もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌はSPを産生しないものであれば特に制限されない。
前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得られた、GLNBP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKは、いずれも当該ビフィドバクテリウム属細菌内在性であることが好ましい。すなわち、前記ビフィドバクテリウム属細菌が産生する上記酵素をコードする遺伝子は、非外来性遺伝子であることが好ましい。
尚、菌体処理物に、必要に応じてGLNBP、GalT及びGalEから成る群から選択される一又はそれ以上を添加することは妨げられない。
前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体は、当該細菌を適当な培地で培養することにより得られる。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌としては、前記第一の態様に記載した、ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のGLNBPを産生し、SPを産生しないビフィドバクテリウム属細菌から選択される2種が挙げられる。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌としては、前記第一の態様に記載した、ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のGLNBPを産生し、SPを産生しないビフィドバクテリウム属細菌から選択される1種が挙げられる。
前記トリプシンを含む消化酵素としては、前記第一の熱処理をすることによって、GLNBP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下させられる限り、特に制限されない。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記第一の菌体処理物を、前記トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4
時間以下、45℃以上50℃以下で第一の熱処理をすると、GLNBP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下した処理物が得られる。
第一の熱処理の温度、時間、第一の熱処理時のpHの詳細については、前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記第一の熱処理は、前記第一の菌体処理物中のGLNBPの安定性を向上するために、N−アセチルヘキソサミンの存在下で行われることが好ましい。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
また、前記第一の熱処理は、前記第一の菌体処理物中のGalT及びGalEの安定性を向上するために、UMP又はUDP−グルコースの存在下で行われることが好ましい。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
次に、SPを産生し、GLNBPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含む第二の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第二の熱処理をして処理物を得ることについて説明する。
上記第二の菌体処理物としては、SPを産生し、GLNBPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含み、SP、GalT及びGalEの熱安定性(耐熱性)がPGM及びF6PPKよりも高く、前記第二の熱処理をすることによって、SP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下するものであれば、特に制限されない。尚、PGM及びF6PPK活性の低下とは、熱処理後のPGM及びF6PPKの残存活性が、それぞれ、熱処理前のPGM及びF6PPK活性よりも低いことを意味するが、第二の熱処理によってPGM及びF6PPK活性がほぼ又は完全に消失することも含む。
前記第二の菌体処理物に前記第二の熱処理をしたときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の残存率については、前記第一の態様において、前記菌体処理物を前記熱処理したときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の好ましい残存率を援用する。
前記第二の菌体処理物に前記第二の熱処理をしたときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性については、前記第一の態様において、前記菌体処理物を前記熱処理したときの、熱処理前に対する熱処理後の酵素活性の好ましい範囲を援用する。
また、前記第二の菌体処理物は、前記各酵素を含む菌体破砕物、菌体抽出物又はその分画物、粗精製画分等が挙げられる。
菌体の破砕の方法は、前記各酵素のうちSP、GalT及びGalEの活性ができるだけ維持される限り特に制限されず、例えば、超音波破砕機、ビーズ式破砕機、又はフレンチプレスを用いる方法等が挙げられる。菌体破砕を水性媒体中で行えば、菌体抽出物が得られる。分画物又は粗精製物は、菌体抽出物から、通常酵素の分画又は精製に用いられる方法、例えば透析、ろ過(例えばクロスフローろ過が挙げられ、具体的には、中空糸膜を用いたクロスフローろ過が挙げられる。)、塩析、溶媒沈殿法、各種クロマトグラフィー等によって得ることができ、これらの方法は低分子化合物を除去するのに好ましい。当該低分子化合物の好ましい分子量については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
したがって、本態様に係る製造方法は、前記第二の菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものであることを好ましい態様としている。
前記ビフィドバクテリウム属細菌は、第二の菌体処理物としてSP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKが含まれる限り、1種でも2種以上でもよい。2種以上である場合、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKは、それぞれ、その2種以上のビフィドバクテリウム属細菌のうちどのビフィドバクテリウム属細菌に由来するものであってもよい。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌については、後述する。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の一態様としては、例えば、後述する、前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌を含み、もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む態様が挙げられる。当該もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌はGLNBPを産生しないものであれば特に制限されない。
また、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の他の態様としては、例えば、後述する、本態様のビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の態様が挙げられる。
また、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種以上である場合のビフィドバクテリウム属細菌の他の態様としては、例えば、後述する、前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌を含み、もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む態様が挙げられる。当該もう1種及びそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌はGLNBPを産生しないものであれば特に制限されない。
前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得られた、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKは、いずれも当該ビフィドバクテリウム属細菌内在性であることが好ましい。すなわち、前記ビフィドバクテリウム属細菌が産生する上記酵素をコードする遺伝子は、非外来性遺伝子であることが好ましい。
尚、菌体処理物に、必要に応じてSP、GalT及びGalEから成る群から選択される一又はそれ以上を添加することは妨げられない。
前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体は、当該細菌を適当な培地で培養することにより得られる。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌としては、前記第一の態様に記載した、ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のSPを産生し、GLNBPを産生しないビフィドバクテリウム属細菌から選択される2種が挙げられる。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である場合の好ましいビフィドバクテリウム属細菌としては、前記第一の態様に記載した、ビフィドバクテリウム属細菌が2種である場合のSPを産生し、GLNBPを産生しないビフィドバクテリウム属細菌から選択される1種が挙げられる。
前記トリプシンを含む消化酵素としては、前記第二の熱処理をすることによって、SP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下させられる限り、特に制限されない。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記第二の菌体処理物を、前記トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第二の熱処理をすると、SP、GalT及びGalEに比べてPGM及びF6PPKの活性が選択的又は優先的に低下した処理物が得られる。
第二の熱処理の温度、時間、第二の熱処理時のpHについては、前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記第二の熱処理は、前記第二の菌体処理物中のGalT及びGalEの安定性を向上するために、UMP又はUDP−グルコースの存在下で行われることが好ましい。その詳細については前記第一の態様に記載した説明を援用する。
前記第一の熱処理をして得た処理物と、前記第二の熱処理をして得た処理物とを混合する方法は常法に従うことができる。
尚、こうして得られた混合物に、必要に応じてSP、GLNBP、GalT及びGalEから成る群から選択される一又はそれ以上を添加することは妨げられない。
本発明の第三の態様は、スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)を含む、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体処理物から得られた酵素含有組成物であって、菌体に含まれるホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)の活性が5%以下に低減された、組成物である。
本態様の酵素含有組成物は、前記第一の態様又は第二の態様により得ることができるものである。
前記組成物中の前記各酵素の活性は、菌体に含まれる前記各酵素の活性に対し、SPでは好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、GLNBPでは、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、GalTでは、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上であり、GalEでは、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。一方で、PGMでは、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下であり、F6PPKでは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。
前記組成物中の前記各酵素の活性は、下記の通りである。
SPの活性は10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mM スクロースの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのグルコース−1−リン酸を生成する活性を1ユニット(U)として、好ましくは0.05 U/mL以上、より好ましくは0.1 U/mL以上、さらに好ましくは0.2 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば5 U/mL以下であってよい。
GLNBPの活性は10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mM LNBの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのガラクトース−1−リン酸を生成する活性を1 Uとして、好ましくは0.05 U/mL以上、より好ましくは0.1 U/mL以上、さらに好ましくは0.2 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば5 U/mL以下であってよい。
GalTの活性は5 mM塩化マグネシウム、1 mMガラクトース−1−リン酸、1 mM UDP−グルコースの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのグルコース−1−リン酸を生成する活性を1 Uとして、好ましくは1 U/mL以上、より好ましくは2 U/mL以上、さらに好ましくは5 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば40
U/mL以下であってよい。
GalEの活性は5 mM塩化マグネシウム、1 mM UDP−ガラクトースの存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのUDP−グルコースを生成する活性を1 Uとして、好ましくは0.5 U/mL以上、より好ましくは1 U/mL以上、さらに好ましくは2 U/mL以上であり、一方で、上限は特に制限されないが、例えば20 U/mL以下であってよい。
PGMの活性は1 mMグルコース−1−リン酸の存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのグルコース−6−リン酸を生成する活性を1 Uとした。PGMでは、下限は特に制限されないが、例えば0以上であってよく、一方で、好ましくは1 U/mL以下、より好ましくは0.5 U/mL以下、さらに好ましくは0.2 U/mL以下である。
F6PPKの活性は10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mMフルクトース−6−リン酸の存在下、pH 7.0、30℃の条件で測定し、1分間に1 μmolのアセチルリン酸を生成する活性を1
Uとして、下限は特に制限されないが、例えば0以上であってよく、一方で、好ましくは1
U/mL以下、より好ましくは0.5 U/mL以下、さらに好ましくは0.2 U/mL以下である。
本発明の他の態様は、スクロース、N−アセチルグルコサミン、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースに、前記第一の態様若しくは第二の態様に係る製造方法により製造された酵素含有組成物、又は前記第三の態様に係る酵素含有組成物を作用させて、ラクト−N−ビオースIを産生させる、ラクト−N−ビオースI(LNB)の製造方法である。
また、本発明の他の態様は、スクロース、N−アセチルガラクトサミン、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースに、前記第一の態様若しくは第二の態様に係る製造方法により製造された酵素含有組成物、又は前記第三の態様に係る酵素含有組成物を作用させて、ガラクト−N−ビオースを産生させる、ガラクト−N−ビオース(GNB)の製造方法である。
LNB合成系及びGNB合成系については既に記載した通りである。ただし、LNB合成系を例にして説明すると、図1に示すように、グルコースホスホリラーゼ(GP)などのグルカンホスホリラーゼは、アクセプター基質となるα−グルカン類(例:マルトオリゴ糖)などの多糖の存在下でLNB合成系におけるグルコース−1−リン酸を消費してしまう。そのため、LNB合成系においては、このような多糖を原料に含めないことが好ましい。また、このような多糖を分解すべく、グルコアミラーゼの存在下で原料を熱処理することや、グルコアミラーゼの存在下で前記第一の態様又は第二の態様に係る製造方法が含む前記各熱処理をすることも好ましい。
LNB合成系及びGNB合成系における各原料の好適な濃度は、スクロースは、好ましくは66mM〜880mM、より好ましくは330mM〜700mM、N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミンは好ましくは60mM〜800mM、より好ましくは300mM〜650mM、リン酸は好ましくは30mM〜400mM、より好ましくは100mM〜200mM、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースは、合計で好ましくは0.1mM〜3mM、より好ましくは0.5mM〜1.5mMである。UDP−グルコース及びUDP−ガラクトースは、いずれか一方でもよく、任意の割合の混合物であってもよい。
反応は、好ましくは20〜40℃、より好ましくは30〜37℃で、好ましくは5〜1000時間、より好ましくは24〜720時間行うことが好ましい。反応は、撹拌下でも静置でもよい。
また、前記第一の態様若しくは第二の態様に係る製造方法により製造された酵素含有組成物、又は前記第三の態様に係る酵素含有組成物は、アクリルアミド等の樹脂、カラギーナン、アルギン酸等の糖類のような担体に固定化されたものであってもよい。固定化した酵素含有組成物を用いる場合は、これらを充填したカラムに原料液を通液してもよい。
反応液中にLNB又はGNBが産生されたことの確認は、例えば実施例に記載したHPLCによる方法によって行うことができる。
産生されたLNB及びGNBは、用途によって反応液又はその乾燥物をそのまま使用してもよ
いし、精製してもよい。反応液からのLNB及びGNBの単離、精製は、例えば、ゲル濾過、イオン交換等の各種クロマトグラィフィー、限外濾過、結晶化、塩析、溶媒沈殿等の方法によって行うことができる。
上記のようにして製造されたLNB及び/又はGNBは、飲食品組成物又は医薬組成物に配合することができる。これらの飲食品組成物及び医薬組成物は、例えばビフィズス菌増殖作用を有する。
医薬組成物の製剤形態は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。製剤化にあたっては製剤担体として通常の薬剤に汎用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。
また、飲食品組成物としては、LNB及び/又はGNBを含有させること以外は、通常飲食品組成物に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
上記のような飲食品組成物としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類; 農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品; 水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
さらに、LNB及び/又はGNBを飼料組成物中に含有させてもよい。飼料組成物の形態としては特に制限されず、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を配合することにより製造できる。飼料組成物の形態としては、例えば、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕2種のビフィドバクテリウム属細菌を用いた粗酵素液の調製
グルコースを含み、スクロースを含まない培地で培養したビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)の乾燥菌体と、スクロースを含み、グルコースを含まない培地で培養したビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621の乾燥菌体とが、それぞれ、33.3 g/L、16.6 g/L(計50 g/L)となるように混合し、50 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に懸濁した。
この懸濁液を超音波ホモジナイザーSonifier250(BRANSON, Kanagawa, Japan)又はSonifier450(BRANSON)に供し、十分に酵素が抽出される条件で細胞破砕を行った。具体的には、Sonifier250の場合には、Duty cycle 50%、Output control 2として10分間氷上で処理をした。Sonifier450の場合には、Duty cycle 50%、Output control 5とし、「10分間の破砕後に10分間以上の静置」を氷水中で攪拌しながら行った。これを4回繰り返した。
次に超音波処理後の液を遠心し、その上清を回収し、透析又は中空糸膜によるクロスフローろ過によって低分子化合物の除去を行った。上清(粗酵素液)の液量が5 mL以下の場合にはSonifier250+透析により、5 mL以上の場合はSonifier450+クロスフローろ過により行った。透析の場合には、分画分子量12,000〜14,000の透析チューブに上清(粗酵素液)を入れ、1,000倍容量の50 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に16時間以上浸漬した。クロスフローろ過の場合には、孔径0.25 μmの精密濾過用中空糸膜モジュールPMP-003(Asahi Kasei, Tokyo, Japan)を使用し、50 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で循環ろ過し、続いて分画分子量10,000の限外ろ過用中空糸膜モジュールSLP-0053(Asahi Kasei)で循環ろ過を行った。いずれも計算上の低分子化合物の除去率が99%以上となるよう処理し、粗酵素液を得た。
〔実施例2〕ブタ膵液由来パンクレアチン処理
次に、粗酵素液中のPGM及びF6PPK活性の抑制を行った。粗酵素液にブタ膵液由来パンクレアチン(Wako Pure Chemicals, Osaka, Japan)を終濃度1 mg/mLとなるように添加した。このとき、GLNBPの安定性を上げるためにN−アセチルグルコサミン(終濃度10 mM)又はN−アセチルガラクトサミン(終濃度10 mM)を添加した。また、GalT及びGalEの安定性を上げるためにUDP−グルコース(終濃度0.5 mM)を添加した。このときの溶液のpHは7.0であった。この溶液を1時間、47℃で熱処理した。本処理後の粗酵素液を遠心し、上清を回収し、水酸化ナトリウムによりpH を7.5に調整し、酵素含有組成物を得た。
熱処理後の各酵素の活性はマイクロプレートリーダーを用い、反応温度30℃での吸光度の経時変化を測定することで算出した。
GLNBP活性は、50 mM MOPS緩衝液(pH 7.0)、5 U/mLグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)(Wako Pure Chemicals)、5 U/mL PGM (Sigma-Aldrich Japan, Tokyo, Japan)、2 μMグルコース1,6-ビスリン酸、5 mM塩化マグネシウム、0.25 mM ThioNAD+、10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mM LNB、0.25 mM UDP-グルコース、2 U/mL GalTからなる反応液における400 nmの吸光度変化から算出した。
SP活性は、50 mM MOPS緩衝液(pH 7.0)、5 U/mL G6PDH、5 U/mL PGM、2 μMグルコース1,6-ビスリン酸、5 mM塩化マグネシウム、0.25 mM ThioNAD+、10 mMリン酸二水素ナトリウム、10 mMスクロースからなる反応液における400 nmの吸光度変化から算出した。
GalT活性は、50 mM MOPS緩衝液(pH 7.0)、5 U/mL G6PDH、5 U/mL PGM、2 μMグルコース1,6-ビスリン酸、5 mM塩化マグネシウム、0.25 mM ThioNAD+、1mMガラクトース-1-リン酸、1 mM UDP-グルコースからなる反応液における400 nmの吸光度変化から算出した。
GalE活性は、50 mM MOPS緩衝液(pH 7.0)、5 U/mL G6PDH、 5 U/mL PGM、2 μMグルコース1,6-ビスリン酸、5 mM塩化マグネシウム、0.25 mM ThioNAD+、0.5 mMガラクトース-1-リン酸、1 mM UDP-ガラクトース、2 U/mL GalTからなる反応液における400 nmの吸光度変化から算出した。
PGM活性は、50 mM MOPS緩衝液(pH 7.0)、5 U/mL G6PDH、2 μMグルコース1,6-ビスリン酸、5 mM塩化マグネシウム、0.25 mM ThioNAD+、1 mMグルコース-1-リン酸からなる反応液における400 nmの吸光度変化から算出した。
F6PPK活性は、50 mM MOPS緩衝液(pH 7.0)、0.15 mg/mL酢酸キナーゼ、10 U/mLグリセロールキナーゼ(Toyobo, Osaka, Japan)、5 U/mLグリセロール3-リン酸オキシダーゼ(Toyobo)、5 U/mLペルオキシダーゼ(Toyobo)、5 mM塩化マグネシウム、0.1 mMアデノシン二リン酸、1 mMグリセロール、0.5 mM TOPS、0.5 mM 4-アミノアンチピリンからなる反応液における550 nmの吸光度変化から算出した。
トリプシン活性は、1 mM N-α-ベンゾイル-DL-アルギニンp-ニトロアニリド、35 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)からなる反応液における410 nmの吸光度変化から算出した。
結果を表1に示す。GLNBP、SP、GalT、GalEの活性がそれぞれ50%、90%、40%、30%以上残存しているのに対し、PGMおよびF6PPKの活性が1%以下に低下した。
Figure 2021159014
〔実施例3〕各種プロテアーゼ処理
実施例2で用いた1 mg/mLブタ膵液由来パンクレアチンと同程度のトリプシン活性を示す、0.04 mg/mLウシ膵液由来プロテアーゼ(Sigma-Aldrich Japan)、0.0095 mg/mLブタ膵液由来トリプシン(Wako Pure Chemicals)、又は0.015 mg/mLウシ膵液由来トリプシン(Wako Pure Chemicals)を用い、実施例2と同様の処理をした。
結果を表2に示す。いずれのプロテアーゼを用いた場合も、GLNBP、SP、GalT、GalEの活性がそれぞれ50%, 90%, 40%, 30%以上残存しているのに対し、PGMおよびF6PPKの活性が1%以下に低下した。
Figure 2021159014
〔実施例4〕LNB合成
実施例2においてN−アセチルグルコサミンを用いて得られた酵素含有組成物を用いてLNB合成を行った。スクロース、N−アセチルグルコサミン、UDP−グルコース、リン酸を、それぞれ600 mM、300 mM、0.5 mM、50 mMとなるように調製し、ろ過滅菌した後、30℃で攪拌しながら反応させた。尚、UDP−グルコースは実施例2で添加したものであ
る。反応液量は25 mLとした。反応液中のスクロース(Suc)、LNB、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の各濃度は高速液体クロマトグラフィーで測定した。カラムはSCR101C(Shimadzu, Kyoto, Japan)を使用し、85℃、移動相純水、流速1 mL/minの条件で分析した。スクロースは荷電化粒子検出器Corona CAD(ESA Biosciences, Inc., Chelmsford, MA)で検出し、LNBおよびN−アセチルグルコサミンはUV-VIS検出器SPD-10A(Shimadzu)を用い、215 nmの波長で検出した。
スクロース(Suc)、LNB、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の各濃度の経時変化を図2に示す。21日の反応後、LNB濃度は276 mMに達し、原材料であるN−アセチルグルコサミンに対するモル収率は92%となった。
〔実施例5〕GNB合成
実施例2においてN−アセチルガラクトサミンを用いて得られた酵素含有組成物を用いて、実施例4のN−アセチルグルコサミンをN−アセチルガラクトサミンに変更してGNB合成を行った。N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)はUV-VIS検出器SPD-10A(Shimadzu)を用い、215 nmの波長で検出した。
スクロース(Suc)、LNB、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)の各濃度の経時変化を図3に示す。21日の反応後、GNB濃度は254 mMに達し、原材料であるN−アセチルガラクトサミンに対するモル収率は85%となった。
〔実施例6〕グルコアミラーゼ処理
実施例1で調製した粗酵素液はグリコーゲンを含むと考えられたため、実施例2のブタ膵液由来パンクレアチン処理時にグルコアミラーゼ(Wako Pure Chemicals)を終濃度2 U/mLとなるように添加し処理して得られた酵素含有組成物を用いて、実施例4と同様にLNB合成を行った。
結果を図4に示す。グルコアミラーゼ処理をした場合の方が、しない場合よりもLNBが効率よく合成できることができた。
〔実施例7〕1種のビフィドバクテリウム属細菌を用いた試験例
スクロースを含み、グルコースを含まない培地で培養したビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540の乾燥菌体が50 g/Lとなるように、50 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に懸濁した。続いて、GLNBPの安定性を上げるためにN−アセチルグルコサミンを用いて実施例2と同様にブタ膵液由来パンクレアチン処理を行い、酵素含有組成物を得た。次に、得られた酵素含有組成物を用いて実施例4と同様にLNB合成を行った。
ブタ膵液由来パンクレアチン処理後に、実施例2と同様に算出した、熱処理前に対する熱処理後の各酵素の活性は表3の通りである。実施例2の結果と同様の結果が得られた。尚、実施例2の熱処理後の各酵素の活性(U/mL)と実施例7の熱処理後の各酵素の活性(U/mL)のうち、小さい方に対する大きい方の相対活性(%)を表4に示した。
また、LNB合成の結果を図5に示した。実施例7ではLNBが最大濃度に達するまでの反応時間が、実施例2に比べて大幅に短縮された。
Figure 2021159014
Figure 2021159014
〔実施例8〕粗酵素液の処理方法がLNB合成量に与える影響の検討
表5に示す条件で粗酵素液を処理して得られた酵素含有組成物を用い、LNB合成を行った。
表5中、「2種」とは、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)の乾燥菌体とビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621の乾燥菌体とを用いた場合を示し、「1種」とは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540の乾燥菌体を用いた場合を示している。
例えば、表5中のNo.10は、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)の乾燥菌体とビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621の乾燥菌体とを用い、低分子除去をクロスフローろ過により行い、実施例1のように粗酵素液を調製し、実施例2と同様にブタ膵液由来パンクレアチン処理を行い、実施例6と同じようにグルコアミラーゼ処理を行ったものである。また、LNB合成時の反応系は1.5
mLであり、その結果、LNBの最大濃度は254 mMであることを示したものである。
表5から次のことが分かった。
・グルコアミラーゼ処理をしてもパンクレアチン処理をしない場合、LNB合成に影響を与えなかった(No.4)。
・パンクレアチン処理をした場合には、しなかった場合よりもLNB生産性が向上するが、到達するLNB最大濃度にはばらつきがみられた(No.1-8)。
・パンクレアチン処理とグルコアミラーゼ処理の両者を行うことで安定した高いLNB合成ができた(No.9-10)。
Figure 2021159014

Claims (19)

  1. 1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で熱処理する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法。
  2. 前記菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記熱処理がN−アセチルヘキソサミンの存在下で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記熱処理がUMP又はUDP−グルコースの存在下で行われる、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が2種であり、
    前記2種のビフィドバクテリウム属細菌の一方が、GLNBPを産生し、SPを産生しないものであり、他方が、SPを産生し、GLNBPを産生しないものである、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. GLNBPを産生し、SPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベであり、
    SPを産生し、GLNBPを産生しない前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムである、
    請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)であり、
    前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621である、
    請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記1種のビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムであり、スクロースを炭素源として培養されたものである、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE P-1540、NITE P-1541、又はNITE
    P-1542である、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記トリプシンを含む消化酵素がパンクレアチンである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)を産生し、スクロースホスホリラーゼ(SP)を産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、GLNBP、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)、ホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)を含む第一の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第一の熱処理をして得た処理物と、
    SPを産生し、GLNBPを産生しない1種又は2種以上の前記ビフィドバクテリウム属細菌の菌体から得た、SP、GalT、GalE、PGM及びF6PPKを含む第二の菌体処理物を、トリプシンを含む消化酵素の存在下で、10分間以上4時間以下、45℃以上50℃以下で第二の熱処理をして得た処理物とを
    混合する工程を含む、酵素含有組成物の製造方法。
  13. 前記第一の菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものであり、
    前記第二の菌体処理物が、分子量が10,000以下の化合物を除去する工程を経たものである、
    請求項11に記載の製造方法。
  14. 前記第一の熱処理がN−アセチルヘキソサミンの存在下で行われる、請求項11又は12に記載の製造方法。
  15. 前記第一の熱処理及び第二の熱処理がUMP又はUDP−グルコースの存在下で行われる、請求項14に記載の製造方法。
  16. GLNBPを産生し、SPを産生しない前記1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌が1種であって、ビフィドバクテリウム・ブレーベであり、
    SPを産生し、GLNBPを産生しない前記1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌が1種であって、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムである、
    請求項12〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
  17. 前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1320 (NITE BP-1253)であり、
    前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621である、
    請求項16に記載の製造方法。
  18. 前記トリプシンを含む消化酵素がパンクレアチンである、請求項12〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
  19. スクロースホスホリラーゼ(SP)、1,3−β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ(GLNBP)、UDP−グルコース:ガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)を含む、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体処理物から得られた酵素含有組成物であって、菌体に含まれるホスホグルコムターゼ(PGM)及びフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(F6PPK)の活性が5%以下に低減された、組成物。
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