JP2021155783A - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いHk/HcJを維持しながら、生産性を改善できるR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供する。【解決手段】主合金粉末を準備する工程と、O:15質量%以上40質量%以下、M:60質量%以上85質量%以下(Mは、Zn、Mg、Ca、Sn、Cd、Sb、AS、Hgからなる群から選択された少なくとも1種)、を含む、酸化物粉末を準備する工程と、混合粉末を準備する工程と、焼結体を作製する工程と、を含み、混合粉末全体に対する酸化物粉末の混合量が0.03質量%以上0.55質量%以下であり、主合金粉末の酸素量に対して混合粉末のOの含有量を300ppm以上2000ppm以下増加させる量である、酸素含有量が500ppm以上3500ppm以下のR−T−B系焼結磁石の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、R−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
14B型化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車(EV、HV、PHV)用モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品など多種多様な用途に用いられている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)が低下し、不可逆熱減磁が起こる。そのため、特に電気自動車用モータに使用される場合、高温下でも高いHcJを維持するために、室温においてさらに高いHcJが要求されている。
従来、HcJ向上のために、R−T−B系焼結磁石に重希土類元素(主としてDy)が多量に添加されていたが、残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)が低下するという問題があった。そのため、近年、R−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素を拡散させて主相結晶粒の外殻部に重希土類元素を濃化してBの低下を抑制しつつ、高いHcJを得る方法が採られている。
しかし、Dyは、産出地が限定されている等の理由から、供給が不安定である、及び価格が変動するなどの問題を有している。そのため、Dyなどの重希土類元素の使用量をできるだけ少なくしてR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させる技術が求められている。
特許文献1には、通常のR−T−B系合金よりもB量を低くするとともに、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる一種以上の金属元素Mを含有させることによりR17相を生成させ、該R17相を原料として生成させた遷移金属リッチ相(R13M)の体積率を充分に確保することにより、Dyの含有量を抑制しつつ、HcJの高いR−T−B系希土類焼結磁石が得られることが記載されている。
また、上述の通りR−T−B系焼結磁石が最も利用される用途はモータであり、特に電気自動車用モータなどの用途で高温安定性を確保するためにHcJの向上は大変有効であるが、それらの特性とともに角形比Hk/HcJ(以下、単にHk/HcJという場合がある)も高くなければならない。Hk/HcJが低いと減磁しやすくなるという問題を引き起こす。そのため、高いHcJを有するとともに、高いHk/HcJを有するR−T−B系焼結磁石が求められている。なお、R−T−B系焼結磁石の分野においては、一般に、Hk/HcJを求めるために測定するパラメータであるHkは、J(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、Jが0.9×J(Jは残留磁化、J=B)の値になる位置のH軸の読み値が用いられている。このHkを減磁曲線のHcJで除した値(Hk/HcJ=Hk(kA/m)/HcJ(kA/m)×100(%))が角形比として定義される。
国際公開第2013/008756号
特許文献1に記載されているR−T−B系希土類磁石では、重希土類元素の含有量を低減しつつ高いHcJが得られるものの、一般的なR−T−B系焼結磁石 (R14B型化合物の化学量論比よりもB量が多い)と比べて、高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)が小さく、生産性が悪化するという問題があった。
そこで本開示は、重希土類元素(RH)の含有量を低減しつつ、高いHcJと高いHk/HcJを維持しながら、生産性を改善できるR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、限定的でない実施形態において、R−T−B系焼結磁石の製造方法であって、R:28.5質量%以上33.0質量%以下(Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)、B:0.85質量%以上0.95質量%以下、Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFeまたはFeとCoであり、T全体に対するFeの含有量は90質量%以上である)、O:100ppm以上1500ppm以下、を含み、Tの含有量(質量%)を[T]、Bの含有量(質量%)を[B]とするとき、[T]/55.85>14×[B]/10.8を満足する主合金粉末を準備する工程と、O:15質量%以上40質量%以下、
M:60質量%以上85質量%以下(Mは、Zn、Mg、Ca、Sn、Cd、Sb、AS、Hgからなる群から選択された少なくとも1種)、を含む、酸化物粉末を準備する工程と、前記主合金粉末と前記酸化物粉末とを混合することにより混合粉末を準備する工程と、前記混合粉末の焼結体を作製する工程と、を含み、前記混合粉末を準備する工程は、混合粉末全体に対する酸化物粉末の混合量が0.03質量%以上0.55質量%以下であり、主合金粉末の酸素量に対して混合粉末のOの含有量を300ppm以上2000ppm以下増加させる量である、酸素含有量が500ppm以上3500ppm以下のR−T−B系焼結磁石である。
ある実施形態において、酸化物粉末のMは、Zn、Mg、Caからなる群から選択された少なくとも1種である。
本発明に係る態様により、RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いHk/HcJを維持しながら、生産性を改善できるR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することができる。
本発明者らは検討の結果、特許文献1に記載されるような通常のR−T−B合金粉末よりもB量を低くしたR−T−B合金粉末において、酸素を含む特定の元素及び特定の組成範囲からなる酸化物粉末を特定の量添加することで、高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)を拡大できることを見出した。これにより、RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いH/HcJを維持しながら、生産性を改善できるR−T−B系焼結磁石を製造することができる。
一方、後述する実施例に示すように、酸化物粉末を用いずに製造工程(例えば、粉砕工程や成形工程)で酸素を導入させた場合は本開示と同じ効果は得られない。これは、酸化物粉末を用いて酸素を導入する場合と製造工程により酸素を導入する場合とでは焼結時における液相の生成過程が異なるからだと考えられる。以下に詳述する。主合金粉末中における酸化されていない希土類を主とする相の量は、焼結時の昇温過程における液相生成に大きく影響を与えると考えられる。製造工程で酸素を導入した場合、主合金粉末は酸化し、主合金粉末中における酸化されていない希土類を主とする相の量は低下する。酸化された主合金粉末を用いて成形等を行った後焼結を行うと、焼結時の昇温過程において液相が生成されにくいと考えられる。一方、本開示の酸化物粉末を用いた場合は、主合金粉末は、酸化物粉末中の酸化物相を主合金粉末が還元するまで酸化が抑制される。よって、昇温過程において一定時間は、主合金粉末中における酸化されていない希土類を主とする相の量は低下せず、焼結時の昇温過程において液相生成が阻害されにくい。そのため、焼結時の昇温過程から十分な液相が生成されると考えられる。このように、酸化物粉末の添加により焼結時の昇温過程から十分な液相が生成された上で、酸化物粉末から酸素が導入されることで、適正な焼結温度の幅を大きく拡大することができると考えられる。また、本開示の酸素を含む特定の元素及び特定の組成範囲からなる酸化物粉末を特定の量添加することにより、これらの元素が焼結磁石に残存しにくく、不純物として焼結磁石への悪影響を与えないため、RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いH/HcJを得ることができる。
なお、本開示における高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)としては、HcJが1400kA/m以上得られ、H/HcJが85%以上得られる範囲を焼結温度の幅として用いることができる。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、主合金粉末を準備する工程と、酸化物粉末を準備する工程と、混合粉末を準備する工程と、焼結体を作製する工程と、を含む。また、本開示のR−T−B系焼結磁石は酸素含有量が500ppm以上3500ppm以下である。R−T−B系焼結磁石の酸素含有量が500ppm未満であると、酸素量が少なすぎて高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)が小さくなる可能性があり、3500ppmを超えると、HcJが低下す可能性があり、さらに高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)が小さくなる可能性がある。
[主合金粉末を準備する工程]
本開示の主合金粉末は以下の組成を有する。
R:28.5質量%以上33.0質量%以下
B:0.85質量%以上0.95質量%以下、
Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、
Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、
T:61.5質量%以上70.0質量%以下、
酸素(O):100pp以上1500ppm以下、を含む。
以下に、各組成について詳述する。
(R:28.5〜33.0質量%)
本開示の主合金粉末は、Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種である。TはFeまたはFeとCoであり、T全体に対するFeの含有量が90質量%以上である。
Rの含有量は、28.5〜33.0質量%である。Rが28.5質量%未満であると焼結時の緻密化が困難となる可能性があり、33.0質量%を超えると主相比率が低下して高いBを得られない可能性がある。Rの含有量は、好ましくは29.5〜32.5質量%である。Rがこのような範囲であれば、より高いBを得ることができる。
(B:0.85〜0.95質量%)
Bの含有量は、0.85〜0.95質量%である。Bが0.85質量%未満であるとR17相が生成されて高いHcJが得られないおそれがあり、0.92質量%を超えるとR13M相の生成量が少なすぎて高いHcJが得られないおそれがある。Bの含有量は、好ましくは0.85〜0.92質量%である。より高いBと高いHcJを得ることができる。Bの一部はCと置換することができる。
Bの含有量は下記式(1)を満たす。
[T]/55.85>14×[B]/10.8
式(1)を満足することにより、Bの含有量が一般的なR−T−B系焼結磁石よりも少なくなる。一般的なR−T−B系焼結磁石は、主相であるR14B相以外に軟磁性相であるR17相が生成しないように、[T]/55.85(Feの原子量)は14×[B]/10.8(Bの原子量)よりも少ない組成となっている([T]は、質量%で示すFeの含有量である)。本発明のR−T−B系焼結磁石は、一般的なR−T−B系焼結磁石と異なり、[T]/55.85が14×[B]/10.8よりも多くなるように式(1)で規定している。なお、本発明のR−T−B系焼結磁石におけるTの主成分はFeであるため、Feの原子量を用いた。
(Ga:0.2〜1.0質量%)
Gaの含有量は、0.2〜1.0質量%である。Gaが0.2質量%未満であると、R13M相の生成量が少なすぎて、R17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができないおそれがあり、1.0質量%を超えると不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBが低下するおそれがある。Gaの含有量は、好ましくは、0.3質量%以上0.7質量%未満である。これにより、より高いBと高いHcJを得ることができる。
(Cu:0.05〜0.50質量%)
Cuの含有量は、0.05〜0.50質量%である。Cuが0.05質量%未満であると高いHcJを得ることができないおそれがあり、0.50質量%を超えると焼結性が悪化して高いHcJが得られないおそれがある。C
(T:61.5〜70.0質量%)
TはFeまたはFeとCoであり、T全体に対するFeの含有量は90質量%以上である。Coを含有することにより耐食性を向上させることができるが、Coの置換量がFeの10質量%を超えると、高いBが得られない可能性がある。Tの含有量は、61.5質量%以上70.0質量%以下である。Tの含有量が61.5質量%未満であると、大幅にBが低下する可能性があり、70.0質量%を超えるとHcJが低下する可能性がある。
主合金粉末は、上述した元素の他にも、1種以上の他の元素(不可避的不純物以外の意図的に加えた元素)を含んでもよい。例えば、このような元素としてAl、Ag、Zn、In、Sn、Ti、Ge、Y、H、F、P、S、V、Ni、Mo、Hf、Ta、W、Nb、Zrなどを含有してもよい。また、上述した不可避的不純物として挙げた元素を意図的に加えてもよい。このような元素は、合計で例えば2.0質量%程度含まれてもよい。この程度であれば、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることが十分に可能である。
(酸素(O):100ppm以上1500ppm以下)
酸素含有量の100ppm〜1500ppm以下である。酸素量が100ppm未満であると、生産性が大幅に悪化する可能性があり、1500ppmを超えるとHcJが低下する可能性がある。
次に、本開示の主合金粉末の製造方法について説明する。
主合金粉末は公知の方法により製造することができる。
例えば、前記組成となるようにそれぞれの元素の金属または合金を準備し、ストリップキャスティング法等を用いてフレーク状の合金を得る。
得られたフレーク状の合金を水素粉砕し、粗粉砕粉のサイズを例えば1.0mm以下とする。次に、粗粉砕粉をジェットミル等により微粉砕することで、例えば粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(メジアン径))が2〜7μmの微粉砕粉(合金粉末)を得る。なお、ジェットミル粉砕前の粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として公知の潤滑剤を使用してもよい。
[酸化物粉末を準備する工程]
本開示の酸化物粉末は以下の組成を有する。
O:15質量%以上40質量%以下、
M:60質量%以上85質量%以下(Mは、Zn、Mg、Ca、Sn、Cd、Sb、AS、Hgからなる群から選択された少なくとも1種)、を含む。
酸化物粉末は、Zn、Mg、Ca、Sn、Cd、Sb、As、Hgを含む公知の酸化物を用いることができる。
(O:15〜40質量%)
O(酸素)の含有量は、15質量%以上40質量%以下である。Oの含有量が15質量%未満であると酸化物粉末の混合割合が増加して、焼結後にM元素が不純物として残存する可能性があり、40質量%を超えると、酸化物粉末の混合割合が低下して、十分な効果が得らない可能性がある。
(M:60〜85質量%)
Mは、Zn、Mg、Ca、Sn、Cd、Sb、As、Hgからなる群から選択された少なくとも1種である。これらの元素は焼結時等に蒸発しやすく焼結磁石に残存しにくい。そのため、これらの元素が不純物として磁石への悪影響を与えにくく、RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いH/HcJを得ることができる。M素は、好ましくは、Zn、Mg、Caからなる群から選択された少なくとも1種である。
[混合合金を準備する工程]
それぞれ準備した主合金粉末と酸化物粉末とを混合することにより混合粉末を得る。
主合金粉末と酸化物粉末とは例えば、V型混合機などの公知の混合器で混合すればよい。
主合金粉末と添加合金粉とを混合粉末全体に対する酸化物粉末の混合量が0.03質量%以上0.55質量%以下となるように混合する。混合粉末全体に対する酸化物粉末の混合量が0.03質量%未満であると高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)を広げることができない可能性があり、0.55質量%を超えると、Brが低下する可能性がある。
さらに、混合粉末全体に対する前記酸化物粉末の混合量は、主合金粉末の酸素量に対して混合粉末のOの含有量を300ppm以上2000ppm以下増加させる量である。すなわち、混合粉末全体に対する酸化物粉末の混合量は、主合金粉末に酸化物粉末を混合することにより、得られた混合合金粉末の酸素量が主合金粉末に対して300ppm以上2000ppm以下増加する量である。酸化物粉末の混合量が300ppm未満増加させる量であると、酸化物粉末による酸素添加量が少なすぎて、高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(適正温度範囲)を広げることができない可能性があり、2000ppmを超えるとHcJが低下する可能性がある。
[混合粉末の焼結体を作製する工程]
好ましい実施形態において、混合粉末の焼結体を作製する工程は、磁場中プレスによって前記微粉末から粉末成形体を作製する工程と、この粉末成形体を焼結する工程とを含む。酸化物粉末以外での酸化を抑えるために、磁場中プレスでは不活性ガス雰囲気中によるプレスまたは湿式プレスによって粉末成形体を形成する方が好ましい。
次に、成形体を焼結して希土類焼結磁石体(焼結体)を得る。
成形体の焼結は、好ましくは、0.13Pa(10−3Torr)以下、より好ましくは0.07Pa(5.0×10−4Torr)以下の圧力下で、温度1000℃〜1150℃の範囲で行なう。焼結による酸化を防止するために、雰囲気の残留ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換され得る。得られた、焼結体に対しては、熱処理を行うことが好ましい。熱処理により、磁気特性を向上させることができる。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、公知の条件を採用することができる。こうして得た希土類焼結磁石体に対しては、必要に応じて、研削・研磨工程、表面処理工程、および着磁工程が施され、最終的な希土類焼結磁石が完成する。
ある好ましい実施形態では、本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、重希土類元素RH(RHは、Tb、Dy、Hoの少なくとも1つ)を焼結体の表面から内部に拡散する拡散工程を更に含む。重希土類元素RHを焼結体の表面から内部に拡散すると、保磁力を効率的に高めることができる。
本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はそれらに限定されるものではない。
実験例1
R−T−B系焼結磁石の組成がおよそ表1のNo.1に示す組成となるように、各元素を秤量してストリップキャスト法により鋳造し、フレーク状の合金を得た。得られたフレーク状の合金を水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素雰囲気中で乾式粉砕し、D50が4.0μmの合金粉末を得た。
前記合金粉末に、潤滑剤を微粉砕粉100質量%に対して、0.4質量%添加、混合した後、磁界中成形し、成形体を複数個得た。なお、成形装置は、磁場印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた複数個の成形体を焼結して焼結体を得た。焼結は得られた複数個の成形体に対し、焼結温度を1000℃〜1100℃の間で10℃毎にふり、それぞれ焼結をおこなった。得られた複数個の焼結体に対し、800℃で2時間保持した後室温まで冷却し、次いで500℃で2時間保持した後室温まで冷却する熱処理を施して複数個のR−T−B系焼結磁石(No.1)を得た。得られた焼結磁石の成分Nd、Pr、B、Co、Al、Cu、Ga、Zrの含有量をICP発光分光分析法により測定した。O(酸素量)はガス融解−赤外線吸収法を使用して測定した。結果を表1に示す(No.1の複数個のR−T−B系焼結磁石間ではほとんど組成の差が無かったため一つのみ示す)。
Figure 2021155783
実験例2
主合金粉末の組成がおよそ表2のNo.Aに示す組成となるように、各元素を秤量してストリップキャスト法により鋳造し、フレーク状の合金を得た。得られたフレーク状の合金を水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素雰囲気中で乾式粉砕し、D50が4.0μmの合金粉末を得た。得られた合金粉末の成分分析結果を表2のNo.Aに示す。表2における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。なお、No.Aは本開示の式1を満足していた。
Figure 2021155783
更に、表3のNo.aに示す組成の酸化物粉末を準備した。酸化物粉末は公知のMg酸化物を用いた。
Figure 2021155783
主合金粉末と酸化物粉末とを表4に示す条件で混合することにより、混合粉末を準備した。表4におけるNo.2は、主合金粉末No.Aと酸化物粉末No.aとを混合したものであり、混合粉末全体に対する前記酸化物粉末の質量比は、0.27質量%であり、前記酸化物粉末の混合量は、主合金粉末の酸素量に対して混合粉末の酸素含有量を1100ppm増加させる量である。
得られた混合粉末に、潤滑剤を微粉砕粉100質量%に対して、0.4質量%添加、混合した後、磁界中成形し、成形体を複数個得た。なお、成形装置は、磁場印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた複数個の成形体に対して、実験例1と同様な方法で焼結温度をふり、焼結を行った後、実験例1と同様な方法で熱処理を施して複数個のR−T−B系焼結磁石(No.2)を得た。得られた焼結磁石の成分を実験例1と同様にして測定した。結果を表5に示す(No.2の複数個のR−T−B系焼結磁石間ではほとんど組成の差が無かったため一つのみ示す)。
Figure 2021155783
Figure 2021155783
得られた複数個のNo.1(実験例1)およびNo.2(実験例2)のR−T−B系焼結磁石に対して機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−HトレーサによってBおよびHcJを測定した。そして、No.1およびNo.2の複数のサンプルにおいて、HcJ及びH/HcJをそれぞれ比較して本開示における高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅(HcJが1400kA/m以上得られ、H/HcJが85%以上得られる焼結温度の範囲)を求めた。焼結温度の幅は、例えば、適正な焼結温度が1030℃〜1060℃の場合、焼結温度幅は30℃とする。
なお、H/HcJは以下の様にしてもとめた。R−T−B系焼結磁石をB−Hトレーサで測定し、J(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、Jが0.9×J(Jは残留磁化、J=B)の値になる位置のH軸の読み値をHとし、このHを減磁曲線のHcJで除した値(H(kA/m)/HcJ(kA/m)×100(%))をH/HcJとして求めた。結果を表6に示す。
Figure 2021155783
表6におけるNo.1は、本開示における高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅を「焼結温度幅」に示している。また、そのときのHcJの最小値と最大値を「HcJ幅」に示している。また、「B」はサンプル間でほとんど差がないため、一つのみ示している。No.2も同様である。
表6に示すように、R−T−B系焼結磁石の組成がほぼ同じ(酸素含有量も含みほぼ同じ)であるNo.1とNo.2を比較して、本発明例の方が比較例と比べて、焼結温度幅が広い。
実施例3
実施例2と同様な方法で主合金粉末No.B〜Eを準備した。成分結果を表7に示す。また、表8のNo.b〜dに示す組成の酸化物粉末を準備した。酸化物粉末は公知のZn、Ca、Niの酸化物をそれぞれ用いた。
Figure 2021155783
Figure 2021155783
主合金粉末と酸化物粉末とを表9に示す条件で混合することにより、混合粉末を準備した。なお、No.6及びNo.8は、酸化物粉末を混合していない(主合金粉末のみ)。
得られた混合粉末および主合金粉末(No.6およびNo.8)を実験例1と同様な方法で成形体を複数個作製した。得られた複数個の成形体に対して、実験例1と同様な方法で焼結温度をふり、焼結を行った後、実験例1と同様な方法で熱処理を施して複数個のR−T−B系焼結磁石(No.3〜12)を得た。得られた焼結磁石の成分を実験例1と同様にして測定した。結果を表11に示す(複数個のR−T−B系焼結磁石間ではほとんど組成の差が無かったためNo.3〜12それぞれ一つ示す)。
得られた複数個のNo.3〜No.12のR−T−B系焼結磁石に対して機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−HトレーサによってBおよびHcJを測定した。そして、実施例2と同様な方法で複数のサンプルをそれぞれ比較して本開示における高いH/HcJを得るための適正な焼結温度の幅を求めた。結果を表11に示す。なお、No.10およびNo.12はHcJが1400kA/m以上得ることができなかったため、H/HcJが85%以上得られた時のHcJの最大値と最小値を記載した。
Figure 2021155783
Figure 2021155783
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表11に示すように、R−T−B系焼結磁石の組成が近いNo.3〜5、No.6およびNo.7、No.8およびNo.9を比べると、いずれも本発明例の方が比較例と比べて焼結温度幅が広い。また、No.5は、酸化物粉末としてNiの酸化物を使用しているが、その場合は、R−T−B系焼結磁石にNiが残存した。そして、No.3およびNo.4の本発明例と比べてB及びHcJが低下している。さらに、R−T−B系焼結磁石の酸素含有量が本開示の範囲外である、No.10はHcJが低下しており、焼結温度幅も狭い。また、主合金粉末と酸化物粉末との混合量が外れているNo.11は、酸化物粉末の混合量が多すぎるため、CaがR−T−B系焼結磁石に残存してBrが低下している。さらに、主合金粉末のR量が本開示から外れているNo.12は、HcJが低下しており、焼結温度幅も狭い。

Claims (2)

  1. R−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
    R:28.5質量%以上33.0質量%以下(Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1種)、
    B:0.85質量%以上0.95質量%以下、
    Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、
    Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、
    T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFeまたはFeとCoであり、T全体に対するFeの含有量は90質量%以上である)、
    O:100ppm以上1500ppm以下、を含み、
    Tの含有量(質量%)を[T]、Bの含有量(質量%)を[B]とするとき、[T]/55.85>14×[B]/10.8を満足する主合金粉末を準備する工程と、
    O:15質量%以上40質量%以下、
    M:60質量%以上85質量%以下(Mは、Zn、Mg、Ca、Sn、Cd、Sb、AS、Hgからなる群から選択された少なくとも1種)、を含む、酸化物粉末を準備する工程と、
    前記主合金粉末と前記酸化物粉末とを混合することにより混合粉末を準備する工程と、
    前記混合粉末の焼結体を作製する工程と、を含み、
    前記混合粉末を準備する工程は、混合粉末全体に対する酸化物粉末の混合量が0.03質量%以上0.55質量%以下であり、主合金粉末の酸素量に対して混合粉末のOの含有量を300ppm以上2000ppm以下増加させる量である、酸素含有量が500ppm以上3500ppm以下のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 酸化物粉末のMは、Zn、Mg、Caからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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