JP2021154578A - サンドイッチ型樹脂複合鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形後の密着性低下をより抑制すること。【解決手段】本発明は、鋼板と鋼板との間に樹脂層が積層されたサンドイッチ型樹脂複合鋼板に関するものであり、前記複合鋼板としての厚みが、0.6〜3.0mmであり、前記複合鋼板の厚みに占める前記樹脂層の厚みが、40〜80%であり、前記樹脂層を構成する樹脂の緩和時間が、150s以下である。なお、前記樹脂の緩和時間は、樹脂のサンプルを25℃の環境で単純引張により延びひずみを3%付与し応力変動を測定して、得られた応力−時間の曲線図の初期(0〜3秒)における傾きより算出した応力が、ゼロとなる時間とする。【選択図】図1

Description

本発明は、サンドイッチ型樹脂複合鋼板に関する。
自動車部材、家電筐体、建材等の様々な用途において、軽量かつ高剛性であり、加工性に優れる鋼板が広く求められている。更に、近年、地球温暖化対策として、CO排出量が厳しく規制されており、特に輸送体(例えば、自動車、トラック、バスなど)の用途においては、軽量化のニーズが特に高い。こうした用途では、上記に加え、剛性や衝突安全性が高い水準で要求される。これらの解決策として、鋼板と鋼板との間に樹脂シートを積層した、サンドイッチ型樹脂複合鋼板(以下、単に「複合鋼板」と略記することがある。)が提案されている。
例えば、以下の特許文献1〜5には、鋼板間にポリプロピレン(PP)シートを積層した複合鋼板とその製造方法が開示されており、以下の特許文献6には、接着剤として変性PPを用い、鋼板間にポリアミドシートを積層した複合鋼板が開示されている。また、以下の特許文献7には、鋼板間にポリエチレンテレフタラートシートを積層した複合鋼板が開示されている。
自動車外板の必須性能である剛性は、ヤング率と断面二次モーメントに依存する。板厚が大きいほど、断面二次モーメントが大きくなり、剛性は高くなる。複合鋼板では、軽量な樹脂で厚手にすることで総厚を増加できるため、高剛性化が可能である。更に、複合鋼板では、同一剛性を有する鋼板やアルミ板と比較し、軽量化が可能になる。
特開昭51−84880号公報 特開昭51−84879号公報 特開昭64−45632号公報 特開平6−270325号公報 特開昭61−123537号公報 特開昭52−21089号公報 特開平4−299133号公報 特開2012−131221号公報 国際公開第2008/081933号
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献7に開示されているような複合鋼板による成形部材には、長期に使用した際に、加工部における樹脂シートと鋼板との界面の密着性の低下が懸念されるという課題がある。この複合鋼板の加工部の密着性低下の要因として、以下が想定される。弾性変形のひずみ領域が異なる鋼板と樹脂とが積層された複合鋼板を一体成形すると、弾性ひずみ領域の大きい樹脂に、弾性ひずみが残存する。その結果、鋼板と樹脂との界面に残留応力が発生し、長期にわたって界面に負荷がかかり続けることで、密着性が低下する。
上述の課題に対して、上記特許文献8では、成形時の残留応力が発生しない製造方法が開示されている。当該特許では、熱硬化性樹脂を半硬化させてプリフォームとし、加熱しながら一体成形することで鋼板と樹脂とを接着している。これにより、成形時の残留応力を発生させることなく、複合鋼板を成形することができるため、密着性が低下する恐れがない。ただし、成形品の金型が必要であることや、工程が複雑となる点が問題となる。
また、上記特許文献9は、複合鋼板に関連する技術ではないが、ステンレス板と樹脂の密着性を高める表面処理技術が開示されている。上記特許文献9では、化学エッチングにより、ステンレス板の表面を粗化することで、密着性が向上するとしている。これは、初期の密着性を底上げすることで、成形後の密着性低下を解決する手法である。しかしながら、アルミ板と樹脂との界面に残留応力がかかり続けるため、長期では密着性の低下を抑制できない可能性が高い。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、成形後の密着性低下をより抑制することが可能な、サンドイッチ型樹脂複合鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、複合鋼板の樹脂層に、緩和時間が短い樹脂を用いることで、成形後の密着性を全て満足できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、以下を要旨とするものである。
(1)鋼板と鋼板との間に樹脂層が積層されたサンドイッチ型樹脂複合鋼板であって、前記複合鋼板としての厚みが、0.6〜3.0mmであり、前記複合鋼板の厚みに占める前記樹脂層の厚みが、40〜80%であり、前記樹脂層を構成する樹脂の緩和時間が、150秒以下である、サンドイッチ型樹脂複合鋼板。
なお、前記樹脂の緩和時間は、樹脂のサンプルを25℃の環境で単純引張により延びひずみを3%付与し応力変動を測定して、得られた応力−時間の曲線図の初期(0〜3秒)における傾きより算出した応力が、ゼロとなる時間とする。
(2)前記樹脂の緩和時間は、110秒以下である、(1)に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
(3)前記樹脂の緩和時間は、40秒以下である、(1)又は(2)に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
(4)前記樹脂層を構成する樹脂の80℃での弾性率は、300MPa以上である、(1)〜(3)の何れか1つに記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
(5)前記樹脂層を構成する樹脂の80℃での弾性率は、420MPa以上である、(1)〜(4)の何れか1つに記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
(6)前記樹脂層を構成する樹脂の25℃での弾性率は、500MPa以上である、(21)〜(5)の何れか1つに記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
(7)前記樹脂層を構成する樹脂の25℃での弾性率は、800MPa以上である、(1)〜(6)の何れか1つに記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
(8)前記鋼板の少なくとも一方は、少なくともその片面に化成処理層を有しており、前記化成処理層を介して前記樹脂層と積層されている、(1)〜(7)の何れか1つに記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
以上説明したように本発明によれば、成形後の密着性低下をより抑制することが可能な、サンドイッチ型樹脂複合鋼板を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係るサンドイッチ型樹脂複合鋼板の模式図である。 実施例及び比較例における密着性評価のための試験片の模式図である。 実施例及び比較例における密着性評価のための試験片の模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下では、本発明の実施形態に係るサンドイッチ型樹脂複合鋼板について、詳細に説明する。本実施形態に係る複合鋼板は、例えば、自動車、家電、建材等に使用可能な鋼板であり、軽量かつ高剛性を両立したものとなっている。
以下で詳述するように、本実施形態に係る複合鋼板は、成形後長期にわたって鋼板と樹脂層の密着性の低下を抑制し、剥離発生を抑制できる。また、本実施形態に係る複合鋼板を自動車外板や骨格に適用することで、剛性を担保しながら軽量化を実現することが可能である。
また、本実施形態に係る複合鋼板の樹脂に、80℃での弾性率が300MPa以上の樹脂を用いることで、高温環境での密着性能低下の抑制も可能である。更に、本実施形態に係る複合鋼板を構成する鋼板に、化成処理した表面処理鋼板を用いることで、鋼板と樹脂層の密着性の更なる向上が可能となる。
以上のような特徴を有する本実施形態に係る複合鋼板について、以下で詳述する。
<サンドイッチ型樹脂複合鋼板の全体構成について>
以下では、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るサンドイッチ型樹脂複合鋼板の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係るサンドイッチ型樹脂複合鋼板の全体構成を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る複合鋼板1は、2つの鋼板11と、2つの鋼板11の間に位置する樹脂層20と、を有する。ここで、本実施形態では、一方の鋼板11を第1の鋼板11a、他方の鋼板11を第2の鋼板11bとして、区別する場合がある。本実施形態に係る複合鋼板1は、図1に模式的に示したように、鋼板11b、樹脂層20、鋼板11aが順に積層された積層体となっている。
複合鋼板1の総厚(図1に示した厚みt)は、0.6〜3.0mmである。複合鋼板の総厚が0.6mm未満である場合、現実的に使用できる鋼板の厚みの下限が0.1〜0.2mmとなり、複合鋼板1の厚みtに占める樹脂層20の厚みtの割合を40%以上とすることが困難となって、目的とする軽量と剛性とを両立させることができない。一般的に、曲げ変形した場合、中立軸から最も離れた表面側のひずみが最も大きくなる。複合鋼板1の総厚が3.0mmを超えると、表層の鋼板に入るひずみ量が大きくなり、鋼板が破断するなど、加工性が確保できなくなる場合がある。複合鋼板1の総厚tを0.6mm以上3.0mm以下の範囲内とすることで、軽量化、剛性、及び、加工性を担保することが可能となる。複合鋼板1の総厚tは、好ましくは0.6mm以上であり、より好ましくは0.8mm以上である。また、複合鋼板1の総厚tは、好ましくは2.0mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下である。
<鋼板11について>
本実施形態に係る複合鋼板1に使用する鋼板11の種類は、特に制限されない。鋼板11は、例えば、冷延鋼板や熱延鋼板であってもよいし、ステンレス鋼板、めっき鋼板であってもよい。めっき鋼板を用いる場合、特にめっきの種類は制限されない。このようなめっき鋼板として、例えば、ブリキや薄錫めっき鋼板、電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール)、ニッケルめっき鋼板、溶融亜鉛−鉄合金めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウム−シリコン合金めっき鋼板、溶融鉛−錫合金めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板、電気亜鉛−鉄合金めっき鋼板、電気亜鉛−クロム合金めっき鋼板を挙げることができる。
また、第1の鋼板11aと第2の鋼板11bとは、互いに同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
具体的には、曲げ加工や絞り加工等が求められる用途では、強度が異なる鋼板11間に樹脂層20を積層するようにし、曲率半径が小さく加工の厳しい面側の鋼板11には、軟鋼を使用し、他方の面側の鋼板11には、強度確保のために高張力鋼を使用することも可能である。
また、密着性を向上させるため、複合鋼板1に使用する鋼板11は、化成処理した鋼板であることが好ましい。これにより、鋼板と樹脂との密着性が向上し、成形後の密着性低下を抑制できる。化成処理方法は、特に限定されないが、鋼板や樹脂との密着性に優れるシランカップリング剤が含まれた化成処理液を使用することが好ましい。また、樹脂と鋼板との加工時密着性向上の観点から、グリシジルエーテル基を含んだシランカップリング剤が含まれた化成処理液を使用することがより好ましい。
複合鋼板1に使用する鋼板11の板厚(図1におけるt,t)は、互いに独立に、0.1〜0.6mmの範囲内であることが好ましい。曲げ変形時に、曲げ内側となる部分は、圧縮変形となる。複合鋼板1の場合、曲げ内側となる鋼板11が圧縮変形する。複合鋼板1に使用する鋼板11の板厚t,tが0.1mm未満と薄い場合には、剛性が低いために座屈する可能性がある。一方、複合鋼板1に使用する鋼板11の板厚t,tが0.6mmを超える場合には、総厚tに占める鋼板(t+t)の割合が大きくなり、軽量化効果が不十分になりやすい。ここで、第1の鋼板11aの厚さtと、第2の鋼板11bの厚さtとは、同じでなくともよい。複合鋼板1に使用する鋼板11の一方の厚みを厚くすることによって、加工時の表層鋼板の座屈や破断を起きにくくすることができる。
<樹脂層20について>
本実施形態に係る樹脂層20は、緩和時間が150秒以下の樹脂により構成される。これにより、複合鋼板の成形で発生する残留応力を低減でき、鋼板11と樹脂層20との界面での剥離を抑制することができる。成形後の密着性低下抑制の観点からは、樹脂の緩和時間が110秒以下であることが好ましい。樹脂の緩和時間は、より好ましくは40s以下である。緩和時間が40秒以下となることで、成形後の密着性の低下代が非常に小さくなる。
ここで、上記の緩和時間は、樹脂の応力緩和測定により求められる。
JIS K 7127に準拠し、試験片を、幅25mm×長さ200mm×厚さ0.5mmの短冊状(チャック間距離100mm)とし、装置として精密万能試験機を用いて、測定を実施する。測定は、25℃の環境で、ひずみ量を3%とし、引張速度を10mm/minとして樹脂を引張り、20分間保持して、経時の応力変化を測定する。得られた応力−時間の曲線図において、初期(0〜3秒)における傾きより算出した応力がゼロとなる時間が、着目する樹脂の緩和時間となる。
本実施形態に係る複合鋼板1を、例えば自動車の外板に適用する場合、夏場などの高温環境では、最大80℃まで板温が上昇すると推定される。このような高温環境では、複合鋼板1の樹脂層20を構成する樹脂の弾性率が、常温(例えば25℃)の環境に比べて低下する場合がある。例えば、樹脂のガラス転移点が80℃未満である場合、弾性率が約50〜60%程度低下する可能性がある。樹脂弾性率の低下により、高温環境下で複合鋼板に外力が加わると、複合鋼板1の樹脂層20を構成する樹脂がせん断変形することで、表層の鋼板に入るひずみが小さくなり、張り剛性が約50%低下する可能性がある。そのため、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の80℃での弾性率は、300MPa以上であることが好ましい。80℃での弾性率が300MPa以上あれば、80℃での複合鋼板1の剛性の低下は、25℃の場合と比べて、10%程度に抑制できる。複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の80℃での弾性率は、より好ましくは420MPa以上である。この場合、80℃での複合鋼板1の剛性の低下を、ほぼ無い状態とすることが可能となる。
ただし、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の80℃での弾性率が著しく高い場合は、延性が乏しくなり、成形時に破断する可能性がある。そのため、80℃での樹脂の弾性率は、3000MPa以下であることが好ましい。
また、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂は、25℃で弾性率が500MPa以上であることが好ましい。樹脂の弾性率は、複合鋼板1の剛性に大きく影響する。複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の25℃での弾性率が500MPa未満となる場合には、複合鋼板1を曲げ変形した際に、樹脂がせん断変形することで表層の鋼板に入るひずみが小さくなる。その結果、複合鋼板1の剛性は、樹脂がせん断変形しない場合の理論剛性(複合鋼板の総厚と樹脂の厚みから予想される剛性の最大値)よりも低下する可能性がある。複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の25℃で弾性率は、より好ましくは800MPa以上である。この場合、複合鋼板1の剛性は、理論剛性との差異がほぼ無い状態とすることが可能となる。
一方、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の25℃での弾性率が、10000MPaを超える場合には、上述したように、樹脂の延性が乏しいため、成形時に樹脂が破断する可能性がある。そのため、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の25℃での弾性率は、10000MPa以下であることが好ましい。
なお、上記のような各温度における樹脂の弾性率は、JIS K7161に準拠して、引張試験機を用いて測定することが可能である。より詳細には、樹脂シートを25℃の環境において、10mm/minの引張速度で、一軸で引張る。80℃の場合には、恒温槽の中で、上記の引張速度での引張試験を実施する。弾性率は、0.5%及び0.25%のひずみとその応力から算出する。
また、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂は、破断ひずみが3%以上であることが好ましい。ここで、上記の破断ひずみとは、着目する樹脂を25℃の環境において、10mm/minの引張速度で、一軸で引張り試験した際に、樹脂が破断するひずみである。複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の破断ひずみが3%以上であることで、加工時における樹脂層20の破断を、より確実に防止することが可能となる。
また、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂は、融点が180℃以上であることが好ましい。本実施形態に係る複合鋼板1を、例えば自動車の外板に適用する場合、部品成形後に焼付塗装を実施するために、180℃程度まで加熱される。そのため、複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂について、融点が180℃未満である場合、焼付塗装時に、鋼板11と樹脂層20との界面で、剥離が発生する可能性がある。なお、樹脂の融点は、各種の示差走査熱量測定装置を用いて測定することが可能である。
複合鋼板1の樹脂層20に使用する樹脂の種類は、特に制限されないが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂の場合には、樹脂の硬化時間が長いために、生産効率が熱可塑性樹脂に比べて低くなってしまう。このような熱可塑性樹脂の例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。鋼板との接着性の観点からは、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂であることが、より好ましい。
また、複合鋼板1の樹脂層20には、無機フィラーや無機チューブなどの無機物を、充填剤として添加してもよい。これにより、複合鋼板1に更に導電性を付与したり、剛性、線膨張特性などを更に向上させたりすることが可能となる。添加する無機物の例として、ガラス繊維、鋼板繊維、炭素繊維のような繊維強化材、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、鋼板粉末のようなフィラー系強化材、合成マイカや合成シリケートやクレーなどの高アスペクト比を有する無機分子などが挙げられる。これらの充填材のうち、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、6〜60μmの繊維径と30μm以上の繊維長を有することが好ましい。また、これら充填剤の添加量は、樹脂層全質量に対して、5〜15質量部程度であることが好ましい。
本実施形態において、樹脂層20の厚さ(図1における厚さt)は、複合鋼板1の総厚(図1における厚さt)に対して、40%以上80%以下である。樹脂層20の厚さが複合鋼板1の総厚に対して40%未満である場合、複合鋼板1において鋼板11が占める割合が大きくなり、軽量性を維持して剛性を大きくすることが困難となる。一方、樹脂層20の厚さが複合鋼板1の総厚に対して80%超である場合、複合鋼板1における鋼板11が占める割合が小さくなり、その板厚が薄くなる。複合鋼板1の板厚が薄い場合、曲げ変形した際に、表層の鋼板の剛性が低いために座屈してしまう。複合鋼板1の総厚に対する樹脂層20の厚みの割合は、好ましくは50%以上80%以下であり、より好ましくは60%以上80%以下である。
なお、樹脂層20の厚みt、及び、複合鋼板1の総厚tは、それぞれ以下のようにして測定することが可能である。すなわち、複合鋼板1を精密カッター等で切断し、樹脂埋め、研磨後に、光学顕微鏡等で観察することで、各厚みを測定できる。
<接着剤について>
本実施形態に係る複合鋼板1において、鋼板11と樹脂層20とは、接着剤を介して積層されていてもよい。接着剤を用いることで、樹脂層20を構成する樹脂と鋼板11との接着性能に捉われずに、樹脂層20に用いる樹脂を選定することができる。接着剤の使用は、積層する鋼板と樹脂層との組み合わせ、成形条件、これら条件に伴い必要とされる接着性能に応じて、適宜選択、使用すればよい。
また、接着剤は、第一の鋼板11aと樹脂層20との積層、第2の鋼板11bと樹脂層20との積層の双方に用いてもよいし、いずれか一方のみの積層に使用してもよい。
接着剤を構成する樹脂は、破断ひずみが3%以上であることが好ましい。破断ひずみは、樹脂を25℃の環境において、10mm/minの引張速度で、一軸で引張り試験した際に、樹脂が破断するひずみである。接着剤を構成する樹脂の破断ひずみが3%以上となることで、加工時に接着剤層が破断することを、より確実に防止することが可能となる。
接着剤を構成する樹脂は、融点が180℃以上であることが好ましい。接着剤を用いた複合鋼板1を、例えば自動車の外板に適用する場合、部品成形後に焼付塗装が実施される。用いる接着剤について、融点が180℃未満である場合、焼付塗装時の鋼板と接着剤との界面で、剥離が発生する可能性がある。
接着剤を構成する樹脂の種類は、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の場合、樹脂の硬化時間が長いために、生産効率が熱可塑性樹脂に比べて低くなる。熱可塑性樹脂の例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。鋼板との接着性から、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。
接着剤により形成される接着剤層の厚さは、樹脂層20の厚さtとの合計で、複合鋼板1の総厚tに対して、40%以上80%以下とする。接着剤層と樹脂層20の厚さの合計が、複合鋼板1の総厚に対して40%未満となる場合、軽量性を維持して剛性を大きくすることが困難となる可能性がある。一方、接着剤層と樹脂層20の厚さの合計が、複合鋼板1の総厚に対して80%超となる場合、鋼板の板厚が薄くなるため、曲げ変形時に鋼板が座屈しやすくなる。
なお、上記のような接着剤を用いた接着剤層は、実質的に樹脂層20と同等の機能を有することから、樹脂層20に対する厚みの割合に制約はなく、樹脂層20の製造や鋼板11との積層、接着剤層の形成における作業性等に応じて、適宜調整すればよい。
以上、本実施形態に係る複合鋼板1について、詳細に説明した。
なお、図1では、樹脂層20と接する側の鋼板11の表面の全体にわたって、樹脂層20が積層されている場合を図示しているが、樹脂層20は、樹脂層20と接する側の鋼板11の表面の一部にだけ形成されていてもよい。
<複合鋼板の製造方法について>
本実施形態に係る複合鋼板は、公知の鋼板ラミネート方法を適用して製造することが可能である。具体的には、(1)切り板状の樹脂シートを鋼板間に積層して熱圧着する方法と、(2)鋼板間に溶融した樹脂をTダイで押出して熱圧着する方法と、が挙げられる。中でも好ましい方法は、連続的に製造可能な、(2)鋼板間に溶融した樹脂をTダイで押出して熱圧着する方法である。
ここで、熱圧着温度は、複合鋼板に用いる樹脂及び接着剤の熱分解温度以下であれば、特に制限されないが、鋼板と樹脂との接着性の点から、樹脂の融点以上で圧着することが好ましい。接着剤を使用する場合は、接着剤の融点以上の温度で熱圧着することが好ましい。
<まとめ>
本実施形態に係る複合鋼板は、軽量で剛性が高く、加工後の密着性低下を抑制可能であり、自動車や家電、建材などの材料として好適に適用できる。また、本実施形態に係る複合鋼板を自動車の外板に適用する場合は、夏場などの高温環境での部品の性能低下や、自動車製造時の焼付塗装環境での外観不良を更に抑制することができる。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明に係る複合鋼板を具体的に説明する。
(使用する鋼板、樹脂)
以下に示す実施例及び比較例では、以下の表1に示す鋼板と樹脂とを使用して、複合鋼板を作製した。鋼板としては、冷延鋼板(SPCC)と溶融亜鉛めっき鋼板(引張強度340MPa)とを用いた。
なお、鋼板に対して化成処理を施す場合には、日本パーカライジング株式会社製の化成処理剤(WO2011/016570A1における実施例1に記載の下地処理層)を用い、付着量が100mg/mとなるように塗布した。また、鋼板に対して化学エッチングを施す場合には、水酸化ナトリウム水溶液に冷延鋼板を浸漬して、表面に粗度を付与するようにした。
樹脂には、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリアセタール(ユピタール:F20、ガラス転移点:110℃、融点:165℃)、ユニチカ株式会社製ナイロン(ユニチカナイロン6:A3030N−2、ガラス転移点:108℃、融点:220℃)、株式会社ハギテック製ナイロン(6ナイロンシート、ガラス転移点:8℃、融点:224℃)、東洋紡株式会社製ポリエステル(バイロン:RN−9300、ガラス転移点:73℃、融点:198℃)、東洋紡株式会社製ポリエステルエラストマー(ペルプレン:P−90BD、ガラス転移点:101℃、融点:203℃)、三菱ガス化学株式会社製ポリカーボネート(ユピゼータ:FPC−0220、ガラス転移点:184℃、融点:−)を使用した。
(複合鋼板の作製)
実施例及び比較例における複合鋼板は、はじめに樹脂シートを作製し、得られた樹脂シートを鋼板間に積層した上で、熱圧着することで作製した。樹脂シートに用いた樹脂は、ハギテック製ナイロンシートを除き、全てペレットである。そのため、樹脂がペレットのものについては、ホットプレス装置で樹脂シートを作製した。
樹脂シートの作製手順は、以下の通りである。樹脂ペレットを融点以上の温度で10分間加温し、次いでプレス圧30kgf/cm(1kgfは、約9.8Nである。)で10分間加圧し、最後に金型冷却でシートを得た。加熱温度は、樹脂の融点よりも40℃高い温度とした。シートの厚さは、0.55〜3.50mmの範囲内となるように作製した。
複合鋼板は、上記で作製したシートを鋼板間に積層し、ホットプレス装置で熱圧着した。熱圧着の手順は、シート作製時と同様に10分間加温して、プレス圧30kgf/cmで10分間加熱圧着し、その後、冷却用金型で冷却して、複合鋼板を得た。加熱温度は、樹脂の融点よりも20℃高い温度とした。
また、以下の実施例16は、東洋紡製ポリエステル(バイロン:30Pガラス転移点:−28℃、融点:125℃)を接着剤に使用し、複合鋼板は、上記で作製した樹脂シートと接着剤を鋼板間に積層し、ホットプレス装置で熱圧着した。熱圧着の手順は、シート作製時と同様に10分間加温して、プレス圧30kgf/cmで10分間加熱圧着し、その後、冷却用金型で冷却して、複合鋼板を得た。加熱温度は180℃とした。
(複合鋼板に使用する樹脂の物性)
表1に示す複合鋼板に使用した樹脂の緩和時間は、以下の手順で確認した。
上記手順で作成した樹脂シートから、試験片を調整した。試験片のサイズは、25mm×200mm×0.5mm(チャック間距離100mm)とした。測定装置は、精密万能試験機(島津製作所製、AG−X)を用いた。測定は、25℃の環境で、ひずみ量3%、引張速度10mm/minで樹脂を引張り、20分間保持して、経時の応力変化を測定した。得られた応力−時間の曲線図において、初期(0〜3秒)における傾きより算出した応力がゼロとなる時間を、樹脂の緩和時間として求めた。
表1に示す複合鋼板に使用した樹脂の25℃及び80℃での弾性率を、以下の手順により測定した。上記手順で作成した樹脂シートから、試験片を調整した。試験片のサイズは、10mm×500mm×0.5mm(チャック間200mm)とした。測定装置は、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、RSA−G2)を使用した。測定条件は、以下の通りである。測定モードは、引張りモードとし、昇温速度は、3℃/minとし、周波数は、1Hzとし、測定範囲は0℃〜200℃とした。
Figure 2021154578
(複合鋼板の評価)
<1.成形後の外観(剥離有無)調査>
複合鋼板の成形品の密着性を、評価した。評価は、下記条件で成形した角筒成形品について、成形直後、並びに、成形して25℃の環境で静置して3日後及び7日後の外観を、それぞれ目視で確認し、鋼板と樹脂層との界面での剥離有無を評価した。
成形条件は、以下の通りである。試験片のサイズは、140mm角とした。25℃の環境で角筒張出し、試験片を成形した。成形条件は、パンチ70mm角(SR 8,CR 15)、ダイス74mm角(SR 5,CR 12)、ビード高さ2mm、BHF(しわ押さえ荷重)30ton、成形速度20mm/min、成形高さ7mm、油NO.610R(日本工作油)で実施した。
剥離がなく、外観が良好であったものを合格として、評点「A」を付し、外観が不良であったものを不合格として、評点「B」を付した。
<2.密着性評価>
得られた複合鋼板の初期密着性を、以下のように評価した。図2に、評価に用いた試験片100の形態を模式的に示した。図2に示したような試験片100を準備し、樹脂層103の存在しない部分の鋼板101を、図3に示すように、T字に折り曲げて使用した。試験片100のサイズは、幅が25mm、T字部分の長さが50mm、積層部分が100mmである。T字に折り曲げた部分の鋼板101を引張試験機に取り付けて、速度を100mm/minに設定して、25℃の環境で剥離試験を行った。剥離強度は、以下の式(i)より算出した。なお、下記の式(i)において、S:剥離強度、P:荷重[単位:N]である。

S=P/25mm ・・・式(i)
なお、評価は、次に示す基準で行った。評点「A」及び評点「B」を合格とした。得られた結果を、以下の表2において「初期」の密着性として示した。
A:剥離強度が5.5N/25mm以上
B:剥離強度が4.0N/25mm以上5.5N/25mm未満
C:剥離強度が2.0N/25mm以上4.0N/25mm未満
D:剥離強度が2.0N/25mm未満
<3.V曲げ後の密着性評価>
得られた複合鋼板をV曲げし、経時の密着性を評価した。
V曲げの条件は、以下の通りである。試験片サイズを、25mm×150mmとし、支点間距離を120mm、速度を1000mm/minに設定して、25℃の環境で金型を使用して、90°(R5)となるように、V曲げを行った。その後、試験片を、25℃の環境で7日間静置した。
剥離試験の条件は、以下の通りである。3点曲げ試験片の一方を、曲げ部の起点まで鋼板を剥がし、剥離部を引張試験機に取り付けて、速度を100mm/minに設定して、25℃の環境で剥離試験を行った。剥離強度の算出は、<2.密着性評価>に記載の通りである。
なお、評価は、次に示す基準で行った。評点「A」〜評点「C」を合格とした。得られた結果を、以下の表2において「曲げ変形後」の密着性として示した。
A:初期の密着性からの低下率が5%未満
B:初期の密着性からの低下率が5%以上15%未満
C:初期の密着性からの低下率が15%以上30%未満
D:剥離発生
<4.剛性評価>
複合鋼板の曲げ剛性を求め、理論剛性との差異を評価した。3点曲げ試験は、ASTM D−790に準じ、試験片のサイズは、25mm×150mmとし、支点間距離を120mm、速度を1000mm/minに設定して、25℃の環境で実施した。測定の結果得られた荷重−ひずみ線図の傾き(最大荷重の1/8の荷重までの荷重を使用して算出)を式(ii)に代入して、曲げ剛性を算出した。理論剛性は、式(iii)より算出した。ここで、以下の(ii)及び式(iii)式において、D:曲げ剛性実測値、D:曲げ剛性理論値、k:荷重−ひずみ線図の傾き、l:支点間距離、H:複合鋼板の総厚、h:樹脂の厚さ、E:鋼板のヤング率である。

=kl/48 ・・・式(ii)
=(E/12)・(H−h) ・・・式(iii)
なお、評価は、次に示す基準で行った。
A:実測値が理論値の95%以上
B:実測値が理論値の90%以上
C:実測値が理論値の90%未満
<5.比剛性の評価>
複合鋼板の比剛性を求め、厚さが0.6mmの単一鋼板の比剛性との差異を評価した。複合鋼板の比剛性は、以下の式(iv)より算出した。剛性は、<4.剛性評価>の測定値を用いた。ここで、下記の式(iv)において、W:複合鋼板の質量、D:複合鋼板の剛性、G:比剛性である。

G=W/D ・・・式(iv)
なお、評価は、次の基準で行った。
A:複合鋼板の比剛性が0.6mmの単一鋼板の比剛性の90%以上
B:複合鋼板の比剛性が0.6mmの単一鋼板の比剛性の90%未満
<6.80℃の曲げ剛性評価>
複合鋼板の80℃での曲げ剛性保持率を、評価した。ASTM D−790に準じ、試験片のサイズは、25mm×150mmとし、支点間距離を120mm、速度を1000mm/minに設定して、80℃の環境で3点曲げ試験を実施した。測定の結果、得られた荷重−ひずみ線図の傾き(最大荷重の1/8の荷重までの荷重を使用して算出)を式(v)に代入して、曲げ剛性を算出した。25℃での曲げ剛性は、<4.剛性評価>で得た測定値を用いた。曲げ剛性保持率を、以下の式(vi)により算出した。ここで、下記式(v)及び式(vi)において、D:曲げ剛性、k:荷重−ひずみ線図の傾き、l:支点間距離、H:80℃での曲げ剛性保持率、である。

D=kl/48 ・・・式(v)
H=D80℃/D25℃×100 ・・・式(vi)
なお、評価は、次に示す基準で行った。
A:80℃での剛性保持率が95%以上
B:80℃での剛性保持率が90%以上95%未満
C:80℃での剛性保持率が90%未満
(評価結果)
以上の評価結果を、以下の表2にまとめて示した。
Figure 2021154578
<1.成形後の外観(剥離有無)評価>
成形直後、比較例5では、表層の鋼板が破断した。これは、比較例5の総厚が3mm以上あり、表層の鋼板に入るひずみ量が大きくなったため、鋼板が破断したと推察した。
成形後3日後、比較例1では、鋼板と樹脂の界面で剥離が発生した。比較例1に使用した樹脂の緩和時間が168秒であり、その他の樹脂に比べて緩和時間が長く、界面に負荷がかかり続けたことで、剥離が発生したと推察した。
成形後7日後、比較例6では、鋼板と樹脂の界面で剥離が発生した。比較例6は、化学エッチングにより、初期の密着性が高いが、樹脂の緩和時間が長いため、界面に負荷がかかり続けたことで、剥離が発生したと推察した。
<2.密着性評価>
初期の密着性に関し、鋼板への表面処理を施した実施例10〜11、17と比較例6は、その他の例に比べて、剥離強度が高かった。
<3.V曲げ後の密着性評価>
比較例1と比較例6は、V曲げ後、数日経過したときに剥離が発生した。比較例3と比較例5は、曲げ外側の鋼板が破断した。そのため、これらの例は、V曲げ後の密着性の評価ができなかった。その他の例については、初期の密着性からの低下率が最大で30%未満であった。実施例1、実施例4、実施例6に着目すると、緩和時間が短いほど、良好な結果であった。緩和時間が短いほど、曲げ変形後の残留応力を低減したためと推察した。
<4.剛性評価>
実施例9では、剛性が理論剛性の90%未満であった。25℃での弾性率が500MPa未満のため、曲げ変形時に樹脂がせん断変形したためと推察した。
<5.比剛性の評価>
比較例2と比較例4は、比剛性が0.6mmの単一鋼板の比剛性の90%未満であった。比較例2は、樹脂層が総厚に占める割合が40%以下である。この結果、表層の鋼板が占める割合が大きくなり、比剛性が小さくなったと推察した。比較例4は、総厚が0.6mm未満である。この結果、表層の鋼板が占める割合が大きくなり、比剛性が小さくなったと推察した。
<6.80℃での曲げ剛性の評価>
実施例7〜9と実施例17は、80℃での剛性保持率が30%程度低下し、実施例5は、10%程度低下した。これは、80℃で樹脂の弾性率が低下し、曲げ変形時に樹脂がせん断変形したためと推察した。80℃での樹脂弾性率が420MPa以上である実施例及び比較例は、いずれも80℃での剛性低下率が5%未満であった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 サンドイッチ型樹脂複合鋼板
11、11a、11b、101 鋼板
20、103 樹脂層
100 試験片

Claims (8)

  1. 鋼板と鋼板との間に樹脂層が積層されたサンドイッチ型樹脂複合鋼板であって、
    前記複合鋼板としての厚みが、0.6〜3.0mmであり、
    前記複合鋼板の厚みに占める前記樹脂層の厚みが、40〜80%であり、
    前記樹脂層を構成する樹脂の緩和時間が、150秒以下である、サンドイッチ型樹脂複合鋼板。
    なお、前記樹脂の緩和時間は、樹脂のサンプルを25℃の環境で単純引張により延びひずみを3%付与し応力変動を測定して、得られた応力−時間の曲線図の初期(0〜3秒)における傾きより算出した応力が、ゼロとなる時間とする。
  2. 前記樹脂の緩和時間は、110秒以下である、請求項1に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
  3. 前記樹脂の緩和時間は、40秒以下である、請求項1又は2に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
  4. 前記樹脂層を構成する樹脂の80℃での弾性率は、300MPa以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
  5. 前記樹脂層を構成する樹脂の80℃での弾性率は、420MPa以上である、請求項1〜4の何れか1項に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
  6. 前記樹脂層を構成する樹脂の25℃での弾性率は、500MPa以上である、請求項1〜5の何れか1項に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
  7. 前記樹脂層を構成する樹脂の25℃での弾性率は、800MPa以上である、請求項1〜6の何れか1項に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
  8. 前記鋼板の少なくとも一方は、
    少なくともその片面に化成処理層を有しており、
    前記化成処理層を介して前記樹脂層と積層されている、請求項1〜7の何れか1項に記載のサンドイッチ型樹脂複合鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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