JP2021151641A - 炭化水素油用水素化分解触媒、およびその製造方法 - Google Patents

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智靖 香川
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知宏 三津井
弘史 山崎
Hiroshi Yamazaki
弘史 山崎
裕海 中西
Hiromi Nakanishi
裕海 中西
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Abstract

【課題】分解活性が高い領域においても高い中間留分選択性が得られる、炭化水素油の水素化分解触媒の提供。【解決手段】担体、および担体上に担持された金属成分を含み、担体は、アルミナを主成分とするマトリックスと、所定の改質超安定Y型ゼオライトとを含み、担体における改質超安定Y型ゼオライトの含有量は、10〜30質量%であり、金属成分は、第6族元素、第9族元素および第10族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む、炭化水素油の水素化分解触媒。改質超安定Y型ゼオライトのNH3−TPD測定により観測される、100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)に対する、300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)の比((Y)/(X))は、0.40以下である、炭化水素油の水素化分解触媒。【選択図】図1

Description

本発明は、炭化水素油用水素化分解触媒、および該水素化分解触媒の製造方法に関する。
近年、日本においては中間留分である灯油、軽油に対する需要が増えているのに対し、原油自体は重質化する傾向にあるため、重質油を中間留分に分解する技術の重要性が増大しており、環境保護の観点からも、硫黄含有量が極少量の中間留分を得る手段として、重質油の水素化分解法に対する社会的ニーズが強まっている。
一般的に、水素化分解触媒は、アルミナやアルミナ−シリカなどのアモルファス無機酸化物と結晶性アルミノシリケートであるゼオライトを含有する担体に、水素化活性金属を担持したものである。水素化分解触媒用のゼオライトとしてフォージャサイト型ゼオライト、特にY型ゼオライトが多く使用されている。
Y型ゼオライトは酸性質を有する固体酸であるので、炭化水素油の接触分解触媒や水素化分解触媒などの固体酸触媒として使用されている。特に、重質炭化水素油の水素化分解では、重質炭化水素の最適な分解やゼオライトの固体酸点への拡散を良くするために脱アルミニウム処理した超安定性Y型ゼオライト(以下「USY」とも称する。)が好適に使用されている。脱アルミニウム処理はUSYの固体酸量を調整するための広く知られた処理法である。
さらに、USYを酸処理し、フォージャサイト骨格のSiとAlとのモル比(SiO2/Al23)(以下「ケイバン比」とも称する。)を変えることもUSYの固体酸量を調整するための広く知られた処理法である。
特許文献1には、アルミニウムの再挿入処理によってフォージャサイト骨格内Alの量を増加させたゼオライトと多孔性無機酸化物との担体を用いた水素化分解触媒が高い分解活性と高い中間留分収率を示すことが記載されている。
特許文献2には、金属として鉄を担持したUSYを用いた重質油の水素化分解触媒が高い分解活性を示すことが記載されている。
特許文献3には、フォージャサイト骨格を構成するアルミニウム原子の一部をジルコニウム原子および/またはハフニウム原子、チタン原子で置換したUSYを用いた水素化分解触媒により重質炭化水素から中間留分を高い収率で得られることが記載されている。
特開2007−313409号公報 国際公開第2009/119390号 特開平11−156198号公報
近年、分解活性が高い領域においても高い中間留分収率を示す触媒が求められている。一般的に、水素化分解活性と中間留分収率とはトレードオフの関係にあり、従来技術には、分解活性を高めつつ、中間留分収率の低下を抑えるという観点から、さらなる改善の余地があった。
そこで本発明は、分解活性が高い領域においても高い中間留分収率(以下「中間留分選択性」とも記載する。)が得られる、炭化水素油の水素化分解触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、炭化水素油の水素化分解において、固体酸点のうち強酸点の量のみを大きく低減させたゼオライトを含む触媒担体を使用することにより、分解活性が高い領域においても高い中間留分選択性を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の[1]〜[5]に関する。
[1]
担体、および前記担体上に担持された金属成分を含み、
前記担体は、アルミナを主成分とするマトリックスと、酸処理された超安定Y型ゼオライトをマグネシウムでイオン交換してなる改質超安定Y型ゼオライト(i)とを含み、
改質超安定Y型ゼオライト(i)におけるマグネシウムの含有量は、0.40質量%以上であり、
前記担体における前記改質超安定Y型ゼオライト(i)の含有量は、10〜30質量%であり、
前記金属成分は、第6族元素、第9族元素および第10族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
炭化水素油の水素化分解触媒。
[2]
担体、および前記担体上に担持された金属成分を含み、
前記担体は、アルミナを主成分とするマトリックスと、改質超安定Y型ゼオライト(ii)とを含み、
前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)のNH3−TPD測定により観測される、100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)に対する、300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)の比((Y)/(X))は、0.40以下であり、
前記担体における前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)の含有量は、10〜30質量%であり、
前記金属成分は、第6族元素を含み、かつ第9族元素および第10族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
炭化水素油の水素化分解触媒。
[3]
前記第6族元素の含有量が酸化物換算で10〜30質量%であり、前記第9族元素および前記第10族元素の合計の含有量が酸化物換算で1〜10質量%である、前記[1]または[2]の炭化水素油の水素化分解触媒。
[4]
前記[1]の炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法であって、
前記担体を準備する工程(1)と、
前記金属成分の原料を含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程(2)と、
前記工程(2)により得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化分解触媒を得る工程(3)と
を有する炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法。
[5]
前記[2]の炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法であって、
前記担体を準備する工程(1)と、
前記金属成分の原料を含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程(2)と、
前記工程(2)により得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化分解触媒を得る工程(3)と
を有する炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法。
本発明の水素化分解触媒は、VGOなどの炭化水素油の水素化分解において、分解活性が高い領域においても高い中間留分選択性を実現することができる。また、本発明の水素化分解触媒の製造方法によれば、前記特性を有する水素化分解触媒を製造することができる。
図1は、実施例1および比較例1で用いられたゼオライトのNH3−TPD測定結果を示す。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[水素化分解触媒]
本発明の炭化水素油の水素化分解触媒は、
担体、および前記担体上に担持された所定の金属成分を含み、
前記担体は、アルミナを主成分とするマトリックス(以下、単に「マトリックス」とも記載する。)と、所定の改質がなされた超安定Y型ゼオライト(以下「改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)」とも記載する。)とを含み、
前記担体における前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の含有量は、10〜30質量%である
ことを特徴としている。
<担体>
前記担体は、アルミナを主成分とするマトリックスと、改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)とを含んでいる。
《アルミナを主成分とするマトリックス》
マトリックスはアルミニウム(Al)を主成分として含んでいる。前記担体におけるアルミニウム(前記改質超安定Y型ゼオライトを構成するアルミニウムを除く。)の含有量(Al23換算)は、バランスである。
前記マトリックスは、アルミニウム(Al)および酸素(O)の他の元素を含んでいてもよい。他の元素の例としては、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、リン(P)、ホウ素(B)およびジルコニウム(Zr)が挙げられる。他の元素は、通常、酸化物として存在する。他の元素の合計の含有量は、前記担体の量を基準(100質量%)とすると、各元素の酸化物換算で、例えば1〜15質量%であってもよい。
《改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)》
前記担体は、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を含む。
この改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)としては、
酸処理されたUSYをマグネシウム(Mg)でイオン交換したものであって、マグネシウム含有量が0.40質量%以上であるUSY(以下「改質超安定Y型ゼオライト(i)」または「Mg−USY」とも記載する。)、および
NH3−TPD測定により観測される、100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)に対する、300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)に対する比(以下「(Y)/(X)」比とも記載する。)が、0.40以下であるUSY(換言すると、酸処理されたUSYを、前記(Y)/(X)比が0.40以下になるように改質したもの)(以下「改質超安定Y型ゼオライト(ii)」とも記載する。)
が挙げられる。
ここで用いる前記酸処理されたUSYの格子定数は、2.428〜2.439nmであることが好ましい。
(改質超安定Y型ゼオライト(i)(Mg−USY))
前記Mg−USYにおけるMgO換算でのマグネシウム(Mg)の含有量は、前記Mg−USYの量を基準(100質量%)とすると、Mg−USYの強酸点の量を選択的に抑制する観点からは、0.40質量%以上、好ましくは0.50質量%以上である。また、イオン交換反応において余った過剰のMgが、Mg−USYに担持されてしまうことを抑制する観点からは、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.4質量%以下である。
(改質超安定Y型ゼオライト(ii))
下記の方法ないし条件で行われる前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)のアンモニア昇温脱離法(以下「NH3−TPD」とも記載する。)による測定において、100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)に対する、300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)に対する比は、高い中間留分収率を得る観点から、0.40以下であり、好ましくは0.35以下である。また、高い分解活性を実現する観点から、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.28以上である。
NH3−TPDは、固体試料にアンモニアを吸着させた後、一定の昇温速度に制御して連続的に昇温させて脱離するアンモニア量及びアンモニアの脱離温度を測定する方法である。100℃以上300℃未満の範囲内でのピークは、前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)の酸点のうち、酸点以外におよび弱酸点に吸着したアンモニアの脱離に由来すると考えられる。また、300℃以上500℃未満の範囲内でのピークは、強酸点に吸着したアンモニアの脱離に由来すると考えられる。
〜NH3−TPD測定法〜
昇温脱離(TPD)装置(例:マイクロトラックベル社製 BELCAT−B)の試料室内に測定試料を0.2グラム導入し、試料室内を500℃で1時間排気処理した後、100℃まで降温させ、前記測定試料に100℃で0.5時間かけてアンモニアガスを吸着させる。次いで、試料室内を100℃で0.5時間排気処理した後、50ml/分の量のヘリウムガスの流通下で、前記測定試料を100℃から10℃/分の昇温速度で700℃まで加熱し、100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)(μV)、および300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)(μV)を測定する。
前記(Y)/(X)比の値は、たとえば、後述する製造方法においてイオン交換するマグネシウムの量を増やすことにより小さくすることができる。
(改質超安定Y型ゼオライト(i,ii))
前記担体における前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の含有量(前記担体の量を基準(100質量%)とする。)は、分解活性をより高める観点から、10質量%以上、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、高い中間留分選択性を得る観点から、30質量%以下、好ましくは28質量%以下である。
前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)のケイバン比(Al23に対するSiO2のモル比)は、好ましくは10〜80である。この値は、蛍光X線測定装置(例:RIX−3000((株)リガク製))を用いて、改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)のSiおよびAl、それぞれの含有量を測定し、これらをSiO2およびAl23、それぞれの物質量に換算することによって求められる値である。
ケイバン比が10以上であると、改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の固体酸量が多すぎず、高い中間留分選択性を実現することができる。また、ケイバン比が80以下であると、改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の固体酸量が少な過ぎず、水素化分解を十分に進行させることができる。
前記酸処理されたUSYおよび前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の、以下の方法で測定される格子定数(以下「UD」とも記載する。)は、通常、2.428〜2.439nmである。前記格子定数がこの範囲にあると、本発明の触媒は高い中間留分選択性を示す。
〜格子定数の測定方法〜
X線回折装置を用いて、試料粉末を約2/3質量部、内部標準としてTiO2アナターゼ型の粉末を約1/3質量部秤量し、これら混合して得られた粉末をX線回折装置にセットし、2θ=23〜33°までスキャンしてX線回折パターンを測定する。得られたパターンにおける、TiO2アナターゼ型、USYの(533)面、(642)面のピークに基づき格子定数を算出する。
前記改質超安定Y型ゼオライト(i)と前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)とは重複していてもよく、たとえば前記改質超安定Y型ゼオライト(i)について上述したNH3−TPD測定を行った場合に、前記(Y)/(X)比は、好ましくは0.40以下であり、より好ましくは0.35以下であり、その下限値は、好ましくは0.25であり、より好ましくは0.28である。
<金属成分>
前記担体には金属成分が担持されている。
前記金属成分は、第6族元素、第9族元素及び第10族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。ここで、「第6族元素」、「第9族元素」及び「第10族元素」とは、IUPAC形式の長周期表(新周期表)に基づく名称である。なお、短周期表(旧周期表)に基づき、「第6族元素」は「第VIA族元素」と称されることもあり、「第9族元素」及び「第10族元素」は「第VIII族元素」と総称されることもある。
第6族元素の例としては、モリブデン(Mo)、およびタングステン(W)が挙げられ、第9族元素及び第10族元素の例としては、コバルト(Co)、およびニッケル(Ni)が挙げられる。
金属成分は、通常、これらの元素の酸化物である。
これらの金属成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記金属成分は、好ましくは、第6族元素を含み、かつ第9族元素および第10族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
金属成分の含有量は、水素化分解触媒の量を基準(100質量%)とすると、酸化物換算で10〜35質量%であってよく、好ましくは15〜30質量%である。特に、第6族元素の金属成分の含有量は、上記基準で、酸化物換算で10〜30質量%であることが好ましく、13〜24質量%であることがより好ましい。また、第9族元素及び第10族元素の含有量の合計は、上記基準で、酸化物換算で1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。金属成分の含有量が上記範囲にあると、本発明の触媒の水素化分解性能が効果的に発現する。
<他の成分>
後述する製造方法においてリン酸を用いる場合など、本発明に係る触媒は、前記担体および前記金属成分とは別にリンを含むことがある。本発明の触媒におけるこのリンの含有量(酸化物(P25)換算)は、触媒の表面積を低下させない観点から、水素化分解触媒の量を基準(100質量%)とすると、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
また、後述する製造方法において有機酸を用いる場合など、本発明に係る触媒は、前記担体および前記金属成分とは別に、少量の炭素を含むこともある。
(水素化処理触媒の物性)
本発明の水素化処理触媒の、BET法により求められる比表面積は、好ましくは280〜420m2/gである。測定試料の前処理条件は以下のとおりであり、測定には、たとえば全自動表面積測定装置(例:ユアサアイオニクス(株)製、マルチソーブ12型)が使用される。
〜前処理条件〜
水素化処理触媒を磁製ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、500℃の温度で1時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却し、測定用サンプルを得る。
本発明の水素化処理触媒の、水銀圧入法(水銀の接触角:130度、表面張力:480dyn/cm)により測定される平均細孔径(全細孔容積の50%に相当する細孔直径)は、好ましくは60〜120Åである。
本発明の水素化処理触媒の、水銀圧入法(水銀の接触角:130度、表面張力:480dyn/cm)により測定される細孔容積(41Å以上の細孔直径を有する細孔の容積)は、好ましくは0.45〜0.75mL/gである。
[担体の製造方法]
前記担体は、ゼオライトして前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を使用することを除いて、マトリックスとゼオライトとを含んでなる水素化分解触媒の従来公知の製造方法により、製造することができる。
《改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の製造方法》
前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)は、どのような方法によって製造されてもよく、そのような方法として、例えば、
ケイバン比が4以上、8以下の範囲にあるY型ゼオライトを準備する工程(i)、
前記Y型ゼオライトを、硫黄化合物を含む水溶液と接触させて、スチーム処理用Y型ゼオライトを調製する工程(ii)、
飽和水蒸気量が50%以上の雰囲気で前記スチーム処理用Y型ゼオライトを620℃超、700℃以下の温度で水蒸気と接触させて、USYを調製する工程(iii)、
前記USYを、酸を含む水溶液と接触させて、酸処理済みUSYを調製する工程(iv)、および
前記酸処理済みUSYを、マグネシウムイオンを含む金属塩溶液と接触させて、改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を得る工程(v)
を含む改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の製造方法(以下「製造方法(P)」とも記載する。)が挙げられる。
以下、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の製造方法について、上記の製造方法(P)を例として、詳述する。
上記製造方法(P)のうち、Y型ゼオライトを準備する工程(i)、スチーム処理用Y型ゼオライトを調製する工程(ii)およびUSYを調製する工程(iii)は、特開平9−108572号公報を参照でき、酸処理済みUSYを調製する工程(iv)以降については、特開昭52−156798号公報を参照できるが、上記製造方法(P)では、USYを調製する工程(スチーム処理工程)(iii)以降の操作が重要となる。
(USYを調製する工程(スチーム処理工程)(iii))
上記製造方法(P)は、市販または公知の製法で得られるY型ゼオライトを、硫酸アンモニウムを含む水溶液と接触させた後、飽和水蒸気量が50%以上の雰囲気で前記スチーム処理用Y型ゼオライトを620℃超、700℃以下の温度で水蒸気と接触させて、USYを調製する工程を含む。
工程(iii)におけるスチーム処理時間は、概ね20分以上、12時間以下の範囲にあることがより好ましい。前述のスチーム処理温度にもよるが、処理時間が短すぎるとゼオライトの骨格からAlが脱離し、その欠陥に結晶構造内のSiが移動して再挿入され、結晶構造が安定化するのに十分でないため好ましくない。また、スチーム処理温度が一定の状態で処理時間を長くしても、生産性の観点から好ましくない。
工程(iii)における水蒸気濃度は、飽和水蒸気量の50%以上であり、好ましくは90%以上である。飽和水蒸気量が低い状態でスチーム処理をすると、ゼオライトの骨格が壊れやすくなる傾向にある。この理由は、骨格外Alが生成する際にできる欠陥によって骨格が不安定になるためと考えられる。一方、前述の飽和水蒸気量の範囲であれば、ゼオライトの骨格は壊れにくくなる傾向にある。この理由は、結晶の表面又は結晶構造内のSiが移動して結晶の欠陥に再挿入され、結晶構造が安定化されるためと考えられる。したがって、水蒸気濃度が前述の下限以上となるようにして、スチーム処理を行う。
(酸処理済みUSYを調製する工程(USYの酸処理工程)(iv))
上記の製造方法は、前記工程(iii)で得られたUSYを、酸を含む水溶液(以下「酸溶液」とも記載する。)と接触(以下「酸処理」とも記載する。)させ、酸処理済みUSYを調製する工程を含む。この工程の目的は、前述の工程で生成した結晶性が低い骨格外Alの一部を除去すること、および強い固体酸を発現する骨格内Alの一部を脱離することによってゼオライトの固体酸を調整することである。
工程(iv)では、酸として、従来公知の酸を用いることができる。前記酸の例としては、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、およびクエン酸が挙げられる。工業的な観点から、硫酸を用いることが好ましい。
工程(iv)における酸処理の温度は、25℃以上、65℃以下の範囲にあることが好ましく、25℃以上、55℃以下の範囲にあることがより好ましく、25℃以上、45℃以下の範囲にあることが特に好ましい。酸溶液の温度によって骨格外Alの除去しやすさや骨格内Alの脱離のしやすさは変わり、酸処理の温度が高すぎると結晶性が高い骨格外Alまで除去されたり、骨格内から脱離したAlが骨格内に再挿入されたりするおそれがある。また、酸処理の温度が低すぎても、結晶性が低い骨格外Alの除去や骨格内のAlが脱離しにくい傾向にある。したがって、酸処理の温度は前述の範囲にあることが好ましい。
工程(iv)における酸溶液の量は、目的とするケイバン比を得るために最適な量を選択することができる。
工程(iv)における酸処理の時間は、酸処理の温度又は酸の量にもよるが、概ね1時間以上、24時間以下であることが好ましい。酸処理の時間がこの範囲内であれば、酸処理工程の目的を十分に達成することができる。
酸処理後の酸溶液とゼオライト(酸処理済みUSY)とは、ろ過等の方法で固液分離することができる。また、この時に分離したゼオライトには酸溶液に由来する成分が残留することがある。そのため、分離したゼオライトを再度イオン交換水に懸濁させ、濾布上で温水を掛ける等の洗浄処理を行うことが好ましい。この洗浄処理は、濾液の電導度が0.1mS/cm以下となるまで繰り返すとよい。分離したゼオライトは、乾燥させる。この乾燥は、好ましくは80〜400℃での熱処理により行われる。さらに、必要に応じてこのゼオライトを大気雰囲気下において、温度400℃を超え600℃以下の範囲で熱処理してもよい。このような処理を行うことで、部分的に残留したアンモニウムイオンやその他成分を除去することができる。
酸処理済みUSYのケイバン比(測定方法、算出方法等は上述のとおりである。)は、高い中間留分選択性を示す改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を製造する観点からは、好ましくは10以上であり、水素化分解を十分に進行させる改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を製造する観点からは、好ましくは80以下である。
酸処理済みUSYの上述した方法で測定される格子定数(UD)は、フォージャサイト骨格内にAlが十分に存在し、次の工程(v)で、ゼオライトの固体酸の強酸点部分の選択的な抑制の効果を得やすいという観点からは、好ましくは2.428nm以上であり、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)の中間留分選択性を高める観点からは、2.439nm以下である。
(改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を得る工程(酸処理済みUSYのイオン交換工程)(v))
上記の製造方法は、前記工程(iv)で得られた酸処理済みUSYを、マグネシウムイオンを含む金属塩溶液と接触させて、改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を得る工程(v)を含む。前記酸処理済みUSYの固体酸の強酸点部分の水素イオンとマグネシウムイオンとを交換することで、その弱酸点および強酸点のうち強酸点の量を選択的に抑制する(低減させる)ことができる。
工程(v)では、マグネシウムイオンを含む金属塩として、硫酸マグネシウムを用いることが好ましい。この工程では、硫酸マグネシウムを水に溶解した水溶液に、前述の工程で得られた酸処理済みUSYを接触させることで、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)が得られる。
工程(v)における硫酸マグネシウムの量は、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)におけるMgの含有量(MgO換算)が0.40質量%以上となるように調整される。
工程(v)におけるイオン交換の温度は、イオン交換が効率的に行う観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であり、工業的な観点からは、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
工程(v)におけるイオン交換の時間は、30分以上、4時間以下であることが好ましい。イオン交換の時間がこの範囲内であれば、イオン交換工程の目的を十分に達成することができる。
[水素化分解触媒の製造方法]
本発明に係る水素化分解触媒は、前記担体上に前記金属成分を担持することにより製造することができる。
本発明の炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法は、
前記担体を準備する工程(1)と、
前記金属成分の原料を含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程(2)と、
前記工程(2)により得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化分解触媒を得る工程(3)と
を有することを特徴としている。
本発明に係る水素化分解触媒は、例えば、
塩基性アルミニウム塩を含む第一の水溶液と、酸性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを混合して、pH6.5〜9.5の混合液とし、混合液中に析出した担体前駆体を得る工程(以下、「第1工程」とも称する。)、
担体前駆体を洗浄し、熟成し、濃縮捏和し、濃縮捏和物と前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)とを混練し、混錬物を成型し、乾燥し、焼成して前記担体を得る工程(以下、「第2工程」とも称する。)、及び、
担体に、第6族元素、第9族元素及び第10族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属成分を担持して水素化分解触媒を得る工程(以下、「第3工程」とも称する。)を含む方法により製造することができる。
この方法では、前記第1工程および前記第2工程が、前記工程(1)に相当し、前記第3工程が前記工程(2)および前記工程(3)に相当する。
以下、それぞれの工程について説明する。
<第1工程>
第1工程では、塩基性アルミニウム塩を含む第一の水溶液と、酸性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを混合して、pH6.5〜9.5の混合液とし、混合液中に析出した担体前駆体を得る工程である。ここで、第一の水溶液は、通常、塩基性の水溶液であり、第二の水溶液は、通常、酸性の水溶液である。
第一の水溶液に含まれる塩基性アルミニウム塩としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が挙げられる。また、第二の水溶液に含まれる酸性アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられる。
また、第1工程においては、第一の水溶液がケイ酸塩および/またはリン酸塩を含んでいてもよいが、第一の水溶液にケイ酸塩(ケイ酸化合物)および/またはリン酸塩(リン酸化合物)を添加するタイミングは特に限定されない。例えば、塩基性アルミニウム塩及びケイ酸塩および/またはリン酸塩を実質的に同時に添加・混合して第一の水溶液を調製してもよいし、塩基性アルミニウム塩を含む水溶液を用意しておき、第二の水溶液と混合する直前に、ケイ酸塩および/またはリン酸塩を添加・混合して第一の水溶液としてもよい。
第一の水溶液がケイ酸塩を含む場合、用いるケイ酸化合物としては、例えば、塩基性又は中性のケイ酸化合物を用いてもよい。塩基性のケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
第一の水溶液がリン酸塩を含む場合、用いるリン酸化合物としては、例えば、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、第1工程においては、第二の水溶液がチタニウム鉱酸塩を含んでいてもよいが、第二の水溶液にチタニウム鉱酸塩を添加するタイミングは特に限定されない。例えば、酸性アルミニウム塩及びチタニウム鉱酸塩を実質的に同時に添加・混合して第二の水溶液を調製してもよいし、酸性アルミニウム塩を含む水溶液を用意しておき、第一の水溶液と混合する直前に、チタニウム鉱酸塩を添加・混合して第二の水溶液としてもよい。
第二の水溶液に含まれるチタニウム鉱酸塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタン等が挙げられ、特に硫酸チタニルは安価であるため好適に使用される。
第二の水溶液を調製する際の条件は、特に限定されないが、第二の水溶液中でのチタニウム鉱酸塩の安定性を確保する観点から、例えば、調製時の温度を60℃以下とすることが好ましい。また、第二の水溶液を調製する際の温度は、チタニウム鉱酸塩を溶解させやすくする観点から、例えば30℃以上であることが好ましい。
第1工程において、第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して得られる混合液のpHは、6.5〜9.5である。混合液のpHを上記数値範囲内とすることで、混合液において担体前駆体を安定的に析出させることができる。混合液のpHは、6.5〜8.5であることが好ましく、6.5〜7.5であることがより好ましい。これにより、担体前駆体からの不純物の除去が容易になる。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合する方法は特に限定されず、例えば、第一の水溶液に第二の水溶液を添加して混合する方法、第二の水溶液に第一の水溶液を添加して混合する方法等を用いることができる。また、第一の水溶液と第二の水溶液とを一括して混合してもよいし、一方の水溶液を連続的に他方の水溶液に添加してもよい。連続的に添加する場合、添加開始から添加完了までの時間は特に制限されず、例えば5〜20分であってよく、7〜15分であってもよい。特に、第一の水溶液に第二の水溶液を添加して混合する場合、擬ベーマイトの他にバイヤライトやギブサイト等の結晶物の生成を充分に抑制し、得られる水素化精製触媒の比表面積をより効果的に確保する観点から、13分以下であることが好ましい。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合する際のその他の条件は、特に制限されない。例えば、第一の水溶液に第二の水溶液を添加して混合する場合、第一の水溶液を撹拌機付き容器に入れ、通常40〜80℃、好ましくは55〜70℃に加温して保持し、第一の水溶液の温度±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に加温した第二の水溶液を添加することによって、第一の水溶液と第二の水溶液とを混合してよい。
<第2工程>
第2工程では、上記第1工程で得られた担体前駆体を洗浄し、熟成し、濃縮捏和し、濃縮捏和物と前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)とを混練し、混錬物を成型し、乾燥し、焼成して前記担体(無機酸化物担体)を得る工程である。
第1工程で得られた担体前駆体を、所望により熟成した後、洗浄して副生塩を除き、アルミニウム等を含む水和物のスラリーを得る。得られた水和物のスラリーを、所望により更に加熱熟成した後、慣用の手段により、例えば、濃縮捏和して成型可能な捏和物とした後、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)と混練し、押出成型等により所望の形状に成型し、通常70〜150℃、好ましくは90〜130℃で乾燥した後、更に400〜800℃、好ましくは450〜600℃で、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間焼成して、前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を含む担体を得る。
なお、第2工程では、濃縮捏和物に所望によりホウ素を含む化合物を添加してもよい。ホウ素を含む化合物としては、ホウ酸が挙げられる。
<第3工程>
第3工程では、上記第2工程で得られた前記担体(無機酸化物担体)に、第6族元素、第9族元素及び第10族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属成分を担持して前記改質超安定Y型ゼオライト(i,ii)を含む水素化分解触媒を得る工程である。
担体に金属成分を担持する方法は特に制限されず、例えば、含浸法、浸漬法等の手段を用いることができる。担体に金属成分を担持させるための金属化合物としては、例えば、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸コバルト、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム等が挙げられる。
担体に担持する金属成分に第6族元素の金属成分が含まれる場合、酸を用いて金属成分を溶解させることが好ましい。この場合、酸としては、リン酸、有機酸等が挙げられる。
有機酸を用いる場合、有機酸としてはカルボン酸化合物が好ましく、具体的にはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等が挙げられる。
第3工程においては、上述した方法により担体に金属成分を担持した後、所望により乾燥、焼成することで、水素化分解触媒を調製してもよい。通常100〜300℃、好ましくは150〜270℃で乾燥した後、更に通常400〜700℃、好ましくは450〜570℃で焼成してもよい。また、焼成時間は、例えば0.5〜10時間である。
[水素化分解触媒を用いた炭化水素油の水素化分解]
本発明に係る水素化分解触媒は、炭化水素油、特にVGOの水素化分解に好適に使用される。本発明に係る水素化分解触媒を使用した水素化分解処理は、例えば、固定床反応装置にアルミナを主成分とする無機酸化物担体にMoO3およびNiOを担持した前処理触媒と本発明に係る水素化分解触媒とを体積比1:1で充填して、水素雰囲気下、高温高圧条件で行われる。
炭化水素油としては、重質軽油、減圧軽油、及び溶剤脱瀝油の中から選ばれたものが用いられる。重質軽油とは、原油の常圧蒸留により得られる重質の軽油であり、減圧軽油とは、常圧蒸留残渣油の減圧蒸留により得られる軽油である。また、溶剤脱瀝油は、減圧蒸留残渣から、プロパンなどの溶剤で抽出した留分である。本発明においては、これらの重質炭化水素油は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応圧力(水素分圧)は、好ましくは6〜15MPaであり、より好ましくは8〜15MPaである。反応圧力が6MPa以上であると、脱硫及び脱窒素を十分に進行させることができ、また、反応圧力が15MPa以下であると水素消費を抑え、以って運転コストを抑えることができる。
反応温度は、好ましくは300〜450℃であり、より好ましくは350〜420℃である。反応温度が300℃以上であると、実用的な速度で反応を進行させることができる。また、450℃以下であると、触媒劣化を抑制することができる。
液空間速度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜10.0h-1であり、より好ましくは0.5〜5.0h-1である。液空間速度が0.1h-1以上であると、処理量が高く、実用的な生産性を達成できる。また、液空間速度が5.0h-1以下であると、反応時間を十分に確保し、十分に水素化分解を行うことができる。
水素/油比は、好ましくは100〜3000NL/Lであり、より好ましくは300〜2000NL/Lである。水素/油比が100NL/L以上であると、水素化分解が十分に進行させることができる。また、3000NL/L以下であると、運転コストを抑制することができる。
水素化分解触媒の製造において、上記前処理触媒と上記工程で得られた水素化分解触媒とを体積比1:1で充填した反応装置中で予備硫化処理することにより、予備硫化済みの水素化分解触媒を製造することができる。より具体的には、上記触媒と、硫黄化合物を含む石油蒸留物(炭化水素油)及び硫化剤(ジメチルサルファイド、ジメチルジスルフィド、二硫化炭素等)を混合した混合油とを、200〜400℃(好ましくは240〜340℃)、常圧又はそれ以上の水素分圧(例えば2〜15MPa)の水素雰囲気下で接触させて予備硫化処理を行い、予備硫化済み水素化分解触媒を得てもよいし、単に水素化分解触媒と硫化水素とを、上記と同様の条件で接触させて予備硫化済み水素化分解触媒を得てもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法ないし評価方法]
各種測定ないし評価は以下のように行った。
(ケイバン比分析)
蛍光X線測定装置(RIX−3000、リガク(株)製)を用いて、ゼオライトに含まれるSiおよびAl、それぞれの含有量を測定した。この測定結果から、SiおよびAlの含有量を、SiO2およびAl23、それぞれの物質量に換算して、ケイバン比(SiO2/Al23)を算出した。
(UD測定)
X線回折装置(リガク社製「RINT−Ultima」、線源:CuKα)を使用し上述の方法によりUDを算出した。
(NH3−TPD測定)
昇温脱離(TPD)装置(マイクロトラックベル社製 BELCATB)の試料室内に実施例等のゼオライトを0.2g導入し、試料室内を500℃で1時間排気処理した後、100℃まで降温させ、ゼオライトに100℃で0.5時間かけてアンモニアガスを吸着させた。次いで、試料室内を100℃で0.5時間排気処理した後、50ml/分の量のヘリウムガスの流通下で、ゼオライトを100℃から10℃/分の昇温速度で700℃まで加熱し、100℃から700℃までの加熱の間に脱離するアンモニアの量を測定した。得られたアンモニアの脱離パターンの100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)に対する、300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)の比((Y)/(X)比)を算出した。
(触媒成分の含有量の測定)
測定試料3gを容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取し、乾燥(200℃、20分)させ、焼成(700℃、5分)した後、過酸化ナトリウム(Na22)2gおよび水酸化ナトリウム(NaOH)1gを加えて15分間溶融した。さらに、硫酸(H2SO4)25mlと水200mlを加えて溶解したのち、純水で500mlになるよう希釈して試料とした。得られた試料について、ICP装置((株)島津製作所製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を用いて、各成分の含有量を酸化物換算基準(Na2O、MgO、Al23、SiO2、TiO2、B23、P25、MoO3、WO3、NiO)で測定した。
(水素化分解活性試験)
アルミナ担体にMoO3が20質量%、NiOが5質量%担持された前処理触媒と、水素化分解触媒とを体積比で1:1で充填した反応管を固定床流通式水素化分解装置に取り付けた。その後、硫黄分濃度が1質量%の炭化水素油を用いて触媒層平均温度290℃、水素分圧4.5MPa、液空間速度1.0h-1、水素/油比250NL/Lの条件下で、8時間以上触媒の予備硫化を行った。
反応管における、水素化分解触媒の充填部分に、実施例等で製造された触媒A〜Mをそれぞれ充填し、以下に示した性状をもつVGOを原料油に用い、固定床流通式水素化分解装置を用いて、水素の存在下、以下に示した反応条件での水素化分解性能評価を行った。
評価結果を基に、下記式(1)により分解率を、下記式(2)により中間留分選択性を求めた。なお、分解活性は、触媒Aの分解率70%における反応温度における他の触媒の分解率の値の比を求め、相対分解率として示した。
式(1)・・分解率(%)={(原料油における、沸点が360℃より高い留分の含有量(質量%)−生成油における、沸点が360℃より高い留分の含有量(質量%))/原料油における、沸点が360℃より高い留分の含有量(質量%)}×100
式(2)・・中間留分選択性(%)=(分解率が70%の際の生成油における、沸点が145℃〜360℃の留分の含有量(質量%)/70)×100
(原料油の性状)
原料油 :減圧軽油
15℃での密度:0.9210g/cm3
硫黄分 :2.478質量%
窒素分 :960質量ppm
(反応条件)
反応温度 :360℃(運転開始後1日〜2日)
375℃(運転開始後3日)
390℃(運転開始後4日)
405℃(運転開始後5日)
液空間速度:0.50hr-1
水素圧力 :13.5MPa
水素/油比:1000NL/L
[実施例1]<触媒A>
〔改質USYの調製〕
(Y型ゼオライトを準備する工程(i)、およびスチーム処理用Y型ゼオライトを調製する工程(ii))
従来公知の方法により、ケイバン比が5.0、Na含有量がNa2O換算で4.4質量%であり、UDが2.456nmのゼオライト(スチーム処理用のゼオライト)3.0kgを準備した。このゼオライトを、硫酸アンモニウムを含む水溶液と接触させて、スチーム処理用のゼオライトを調製した。
(USYを調製する工程(スチーム処理工程)(iii))
スチーム処理用のゼオライトを飽和水蒸気雰囲気中にて650℃で2時間スチーム処理し、酸処理用のゼオライト(以下「USY(a)」と記載する。)を約2.7kg得た。USY(a)のUDは、2.437nmであった。
(酸処理済みUSYを調製する工程(酸処理工程)(iv))
次いで、このUSY(a)2.0kgを、室温の水20Lに懸濁させ、30℃まで昇温した。この懸濁液に、25質量%の硫酸5.8kgを徐々に加えて酸溶液を調製した後、これを30℃で4時間攪拌した。撹拌終了後の酸溶液をろ過して得られた固体を、60℃のイオン交換水40Lで洗浄し、さらに130℃で20時間乾燥し、酸処理済みゼオライト(以下「USY(A)」と記載する。)1.6kgを得た。USY(A)のUDは2.434nm、ケイバン比は30、Na含有量はNa2O換算で0.12質量%であった。
(改質USYを得る工程(イオン交換工程)(v))
次いで、このUSY(A)1.5kgを、室温の水15Lに懸濁し、30℃まで昇温した。この懸濁液にMgO換算で16質量%の硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)513gを1.16kgのイオン交換水で溶解した溶液を徐々に加えた後、70℃で1時間攪拌した。攪拌終了後の酸溶液をろ過して得られた固体を、60℃のイオン交換水30Lで洗浄し、さらに130℃で20時間乾燥し、改質USY(以下「mod−USY(A)」と記載する。固形分濃度95質量%)1.4kgを得た。mod−USY(A)のUDは2.433nm、ケイバン比は40、Mg含有量はMgO換算で0.70質量%、(Y)/(X)比は0.32であった。
〔担体前駆体の調製〕
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、イオン交換水34kgを入れ、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)9.09kgを添加し、60℃に加温して、第一の水溶液を調製した。
Al23換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)14.29kgを25.71kgのイオン交換水で希釈した溶液を60℃に加温して、第二の水溶液を調製した。
続いて、第一の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第二の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、担体前駆体(水和物)(以下「担体前駆体a」と記載する。)が析出した混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
得られた担体前駆体aの混合液(スラリー)を、60℃で1時間撹拌した後、平板フィルターを用いて脱水し、さらに、0.3質量%アンモニア水溶液150Lで洗浄した。洗浄後のケーキ状態の担体前駆体aをAl23換算で10質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、15質量%アンモニア水でpHを10.5に調整した。得られた希釈液を還流機付き熟成タンクに移し、撹拌しながら熟成温度95℃で10時間熟成した。熟成終了後の混合液を脱水し、スチームジャケットを備えた双腕式ニーダーにて練りながら所定の水分量まで濃縮捏和した。次いで、スチームを止め、ニーダーに前記mod−USY(A)(固形分濃度95質量%)1.23kgを徐々に添加し、濃縮捏和物にmod−USY(A)が均一に混ざるまでこれらを練った。得られた混錬物を押出成型機にて直径が1.6mmの円柱形状に成型し、110℃で乾燥した。乾燥した成型品を、電気炉で550℃の温度で3時間焼成し、アルミナを主成分とするマトリックス及びmod−USY(A)を含む担体aを得た。担体aの組成(担体量基準)を表1に示す。
〔水素化分解触媒の調製〕
次に、三酸化モリブデン(Climax社製;MoO3濃度99質量%)232gと炭酸ニッケル(正同化学工業(株)製;NiO濃度55質量%)106gとを、イオン交換水500mlに懸濁させ、懸濁液を95℃で5時間、液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、無水クエン酸(扶桑化学工業(株)製)145gを加えて溶解させ、含浸液を調製した。得られた含浸液を、上記担体a1000gに噴霧含浸させた後、担体aを250℃で乾燥し、電気炉にて焼成温度550℃で1時間焼成して水素化分解触媒Aを得た。
水素化分解触媒Aの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)と水素化活性試験結果を示す。
[実施例2]<触媒B>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製を行い、mod−USY(A)を得た。
〔担体前駆体の調製〕
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、イオン交換水32kgを入れ、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)8.73kgを添加し、リン濃度がP25換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム水溶液(米山化学工業(株)製のP25濃度19質量%のリン酸ナトリウム結晶をイオン交換水で溶解したもの)2.40kgを攪拌しながら添加し、次いで、SiO2換算で5.0質量%のケイ酸ナトリウム水溶液(AGCエスアイテック(株)製のSiO2濃度24質量%のケイ酸ナトリウム水溶液をイオン交換水で希釈したもの)1.20kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、第一の水溶液を調製した。
Al23換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)13.71kgを24.69kgのイオン交換水で希釈した溶液を60℃に加温して、第二の水溶液を調製した。
続いて、第一の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第二の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、担体前駆体(水和物)(以下「担体前駆体b」と記載する。)が析出した混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、ニーダーに添加するmod−USY(A)の量を557gに変更した以外は実施例1の担体の調製と同様の方法により、担体bを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体bに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Bを得た。表1に水素化分解触媒Bの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[実施例3]<触媒C>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製における工程(i)〜(iii)を行った後、USY(a)の懸濁液に添加する硫酸の量を4.0kgに変更した以外は実施例1の工程(iv)と同様の方法により、酸処理済みゼオライト(以下「USY(C)」と記載する。)1.7kgを得た。USY(C)のUDは2.439nm、ケイバン比は12、Na含有量はNa2O換算で0.10質量%であった。
次いで、USY(A)をUSY(C)1.5kgに変更したこと以外は実施例1の工程(v)と同様の方法により、改質USY(以下「mod−USY(C)」と記載する。)1.4kgを得た。mod−USY(C)のUDは2.438nm、ケイバン比は13、Mg含有量はMgO換算で1.25質量%、(Y)/(X)比は0.38であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製と同様の方法により、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をmod−USY(C)(固形分濃度95質量%)1.23kgに変更した以外は実施例1の担体の調製と同様の方法により、担体cを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体cに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Cを得た。表1に水素化分解触媒Cの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[実施例4]<触媒D>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製における工程(i)〜(iii)を行った後、USY(a)の懸濁液に添加する硫酸の量を6.5kgに変更した以外は実施例1の工程(iv)と同様の方法により、酸処理済みゼオライト(以下「USY(D)」と記載する。)1.5kgを得た。USY(D)のUDは2.429nm、ケイバン比は76、Na含有量はNa2O換算で0.07質量%であった。
次いで、USY(A)をUSY(D)1.5kgに変更したこと以外は実施例1の工程(v)と同様の方法により、改質USY(以下「mod−USY(D)」と記載する。)1.4kgを得た。mod−USY(D)のUDは2.438nm、ケイバン比は79、Mg含有量はMgO換算で0.59質量%、(Y)/(X)比は0.30であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製と同様の方法により、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をmod−USY(D)(固形分濃度95質量%)1.23kgに変更した以外は実施例1の担体の調製と同様の方法により、担体dを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体dに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Dを得た。表1に水素化分解触媒Dの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[実施例5]<触媒E>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製を行い、mod−USY(A)を得た。
〔担体前駆体の調製〕
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、イオン交換水32kgを入れ、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)8.92kgを添加し、60℃に加温して、第一の水溶液を調製した。
Al23換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)12.68kgを22.83kgのイオン交換水で希釈した溶液と、TiO2換算で33質量%の硫酸チタニル(テイカ(株)製)0.45kgを3.00kgのイオン交換水に溶解した溶液とを混合し、60℃に加温して、第二の水溶液を調製した。
続いて、第一の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第二の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、担体前駆体(水和物)(以下「担体前駆体e」と記載する。)が析出した混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体eの混合液(スラリー)に変更したこと以外は実施例1の担体の調製と同様の方法により、マトリックス及びmod−USY(A)を含む担体eを得た。担体eの組成(担体量基準)を表1に示す。
〔水素化分解触媒の調製〕
次に、メタタングステン酸アンモニウム溶液(日本無機化学工業(株)製;WO3濃度50質量%)465gと硝酸ニッケル・六水和物(関東化学(株)製;NiO濃度25質量%)231gとを混合し、30℃で30分攪拌し溶解させ、含浸液を調製した。得られた含浸液を、上記担体e1000gに噴霧含浸させた後、250℃で乾燥し、電気炉にて焼成温度550℃で1時間焼成して水素化分解触媒Eを得た。表1に水素化分解触媒Eの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[実施例6]<触媒F>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製を行い、mod−USY(A)を得た。
〔担体前駆体の調製〕
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、イオン交換水29kgを入れ、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)7.73kgを添加し、60℃に加温して、第一の水溶液を調製した。
Al23換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)12.14kgを21.86kgのイオン交換水で希釈した溶液を60℃に加温して、第二の水溶液を調製した。
続いて、第一の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第二の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、担体前駆体(水和物)(以下「担体前駆体f」と記載する。)が析出した混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
実施例1の担体の調製において、担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体fの混合液(スラリー)に変更したこと、およびニーダーに前記mod−USY(A)(固形分濃度95質量%)1.23kgを徐々に添加することに替えて、ニーダーにB23換算で56質量%のホウ酸(関東化学(株)製)803gを添加し、459gのイオン交換水を添加してこれらを30分間練り、次いで、前記mod−USY(A)(固形分濃度95質量%)1.23kgを徐々に添加しこと以外は実施例1の担体の調製と同様の方法により、担体fを得た。担体fの組成(担体量基準)を表1に示す。
〔水素化分解触媒の調製〕
次に、三酸化モリブデン(Climax社製;MoO3濃度99質量%)238gと炭酸ニッケル(正同化学工業(株)製;NiO濃度55質量%)108gとを、イオン交換水500mlに懸濁させ、懸濁液を95℃で5時間、液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸((株)製;P25濃度61.6質量%)43gを加え、次いで、無水クエン酸(扶桑化学工業(株)製)89gを加えて溶解させ、含浸液を調製した。得られた含浸液を、上記担体f1000gに噴霧含浸させた後、250℃で乾燥し、電気炉にて焼成温度550℃で1時間焼成して水素化分解触媒Fを得た。表1に水素化分解触媒Fの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例1]<触媒G>
〔USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製における工程(i)〜(iv)を行い、USY(A)を得た。USY(A)の(Y)/(X)比は0.83であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をUSY(A)1.23kg(固形分濃度95質量%)に変更した以外は実施例1の担体の調製と同様の方法により、マトリックス及びUSY(A)を含む担体gを得た。なお、USY(A)の(Y)/(X)比は0.83であった。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体gに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Gを得た。表1に水素化分解触媒Gの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例2]<触媒H>
〔改質超安定Y型ゼオライトの調製〕
実施例1の改質USYの調製における工程(i)〜(iii)を行った後、得られたUSY(a)2.0kgを、室温の水20Lに懸濁し、30℃まで昇温した。この懸濁液に、25質量%の硫酸5.8kgを徐々に加えて酸溶液を調製した後、MgO換算で16質量%の硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)513gを1.16kgのイオン交換水溶解した溶液を徐々に加え、これを70℃で4時間攪拌した。撹拌終了後の酸溶液をろ過して得られた固体を、60℃のイオン交換水40Lで洗浄し、さらに130℃で20時間乾燥し、酸処理済みゼオライト(以下「mod−USY(H)」と記載する。)1.4kgを得た。mod−USY(H)のUDは2.434nm、ケイバン比は34、Mg含有量はMgO換算で0.27質量%、(Y)/(X)比は0.50であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をmod−USY(H)(固形分濃度95質量%)1.23kgに変更した以外は実施例1と同様の方法により、担体hを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体hに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Hを得た。表1に水素化分解触媒Hの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例3]<触媒I>
〔USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製における工程(i)および(ii)を行った後、温度を650℃から600℃に変更した以外は実施例1の工程(iii)と同様の方法により、酸処理用のゼオライト(以下「USY(i)」と記載する。)を約2.7kg得た。USY(i)のUDは、2.442nmであった。
次いで、実施例1の工程(iv)において、USY(a)をUSY(i)2.0kgに変更し、懸濁液に加える硫酸の量を4.0kgに変更したこと以外は実施例1の工程(iv)と同様の方法により、酸処理済みゼオライト(以下「USY(I)」と記載する。)1.7kgを得た。USY(I)のUDは2.441nm、ケイバン比は12、Na含有量はNa2O換算で0.09質量%であった。USY(I)の(Y)/(X)比は0.42であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をUSY(I)1.23kg(固形分濃度95質量%)に変更した以外は実施例1と同様の方法により、担体iを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体iに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Iを得た。表1に水素化分解触媒Iの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例4]<触媒J>
〔USYの調製〕
懸濁液に加える硫酸の量を6.6kgに変更したこと以外は比較例3のUSYの調製と同様の方法により、酸処理済みゼオライト(以下「USY(J)」と記載する。)1.5kgを得た。USY(J)のUDは2.426nm、ケイバン比は85、Na含有量はNa2O換算で0.05質量%であった。USY(J)の(Y)/(X)比は0.81であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をUSY(J)1.23kg(固形分濃度95質量%)に変更した以外は実施例1と同様の方法により、担体jを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体jに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Jを得た。表1に水素化分解触媒Jの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例5]<触媒K>
〔改質USY(Na−USY)の調製〕
実施例1の改質USYの調製における工程(i)〜(iv)を行いUSY(A)を得た。次いで、MgO換算で16質量%の硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)513gを1.16kgのイオン交換水溶解した溶液を、Na2O換算で43質量%の硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)133gを1.01kgのイオン交換水溶解した溶液に変更したこと以外は実施例1の工程(v)と同様の方法により、ナトリウムでイオン交換されたUSY(以下「mod−USY(K)」と記載する。)1.4kgを得た。mod−USY(K)のUDは2.434nm、ケイバン比は30、Na含有量はNa2O換算で3.5質量%、(Y)/(X)比は0.66であった。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)をmod−USY(K)(固形分濃度95質量%)1.23kgに変更した以外は実施例1と同様の方法により、担体kを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体kに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Kを得た。表1に水素化分解触媒Kの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例6]<触媒L>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製と同様の方法により、mod−USY(A)を得た。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)の量を3.16kgに変更した以外は実施例1と同様の方法により、担体lを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体lに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、水素化分解触媒Lを得た。表1に水素化分解触媒Lの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
[比較例7]<触媒M>
〔改質USYの調製〕
実施例1の改質USYの調製と同様の方法により、mod−USY(A)を得た。
〔担体前駆体の調製〕
実施例2の担体前駆体の調製を行い、担体前駆体bの混合液(スラリー)を得た。
〔担体の調製〕
担体前駆体aの混合液(スラリー)を担体前駆体bの混合液(スラリー)に変更し、mod−USY(A)の量を98gに変更した以外は実施例1と同様の方法により、担体mを得た。
〔水素化分解触媒の調製〕
担体aを担体mに変更したこと以外は実施例1の水素化分解触媒の調製と同様の方法により、担体mから水素化分解触媒Mを得た。表1に水素化分解触媒Mの金属成分量(酸化物換算、触媒量基準)および水素化活性試験結果を示す。
Figure 2021151641
(触媒の性状および試験の評価結果)
表1に、ゼオライトの種類、担体中のゼオライト含有量の影響を確認した結果を示す。
比較例1、3、4のように、使用するゼオライトを酸処理だけ行ったUSYとした場合、ゼオライトのNH3−TPDによる強酸点由来の(Y)が高いために、分解活性は高いが中間留分選択性は低かった。
比較例5のように、MgではなくNaでイオン交換を行った場合、Naの方がゼオライトに多くイオン交換されていることにより、強酸点に加え、弱酸点まで低減されるために、分解活性は低く、中間留分選択性も低かった。
比較例2のように、イオン交換するゼオライトを酸処理前のUSY(a)とし、硫酸による酸処理とイオン交換を同時に行うと、比較例1と同様に強酸点由来の(Y)が高いために、分解活性は高いが中間留分選択性は低かった。
比較例6のように、担体中のゼオライト含有量が多すぎると、分解活性が高くなりすぎるため、中間留分選択性が低下した。
また、比較例7のようにゼオライト含有量が低すぎると、分解活性が引く低すぎるために、中間留分が得られにくかった。
これらの比較例に対し、実施例の水素化分解触媒を用いると、分解活性が高い領域においても、高い中間留分選択性が得られることが分かった。
本発明によれば、炭化水素油の水素化分解に用いる場合であっても、高分解活性を保持したまま、ガス生成が抑制され、灯軽油等の中間留分の高収率化が達成可能な水素化分解触媒、および係る水素化分解触媒の製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 担体、および前記担体上に担持された金属成分を含み、
    前記担体は、アルミナを主成分とするマトリックスと、酸処理された超安定Y型ゼオライトをマグネシウムでイオン交換してなる改質超安定Y型ゼオライト(i)とを含み、
    改質超安定Y型ゼオライト(i)におけるマグネシウムの含有量は、0.40質量%以上であり、
    前記担体における前記改質超安定Y型ゼオライト(i)の含有量は、10〜30質量%であり、
    前記金属成分は、第6族元素、第9族元素および第10族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
    炭化水素油の水素化分解触媒。
  2. 担体、および前記担体上に担持された金属成分を含み、
    前記担体は、アルミナを主成分とするマトリックスと、改質超安定Y型ゼオライト(ii)とを含み、
    前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)のNH3−TPD測定により観測される、100℃以上300℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(X)に対する、300℃以上500℃未満の範囲内でのイオン強度の最大値(Y)の比((Y)/(X))は、0.40以下であり、
    前記担体における前記改質超安定Y型ゼオライト(ii)の含有量は、10〜30質量%であり、
    前記金属成分は、第6族元素を含み、かつ第9族元素および第10族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
    炭化水素油の水素化分解触媒。
  3. 前記第6族元素の含有量が酸化物換算で10〜30質量%であり、前記第9族元素および前記第10族元素の合計の含有量が酸化物換算で1〜10質量%である、請求項1または2に記載の炭化水素油の水素化分解触媒。
  4. 請求項1に記載の炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法であって、
    前記担体を準備する工程(1)と、
    前記金属成分の原料を含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程(2)と、
    前記工程(2)により得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化分解触媒を得る工程(3)と
    を有する炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法。
  5. 請求項2に記載の炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法であって、
    前記担体を準備する工程(1)と、
    前記金属成分の原料を含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程(2)と、
    前記工程(2)により得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化分解触媒を得る工程(3)と
    を有する炭化水素油の水素化分解触媒の製造方法。
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