第1の実施形態
第1の実施形態に係る二次電池は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む正極活物質含有層を含む正極と、ニオブチタン複合酸化物を含む負極活物質含有層を含む負極と、電解質とを具備する。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量は34重量%以上である。負極活物質含有層の少なくとも一部が正極活物質含有層と対向する。二次電池は、下記(1)式を満たす。
−0.17≦(Dc−Da)×S/B≦0.02 (1)
但し、Dc(mAh/cm2)は、使用最大電圧まで充電された二次電池に含まれる正極を3.0V(vs.Li/Li+)まで放電したときの単位面積当りの正極容量である。Da(mAh/cm2)は、使用最大電圧まで充電された二次電池に含まれる負極を3.0V(vs.Li/Li+)まで放電したときの単位面積当りの負極容量である。Sは、負極活物質含有層の正極活物質含有層に対向する部分の面積(cm2)である。B(Ah)は、使用最大電圧まで充電された二次電池を0.2Cのレートで終止電圧まで放電したときの放電容量である。
第1の実施形態に係る二次電池によれば、放電末期の正極電位が卑な(低電位)状態になるのを抑制することができると共に、充電末期の正極電位が貴な(高電位)状態になるのを抑制することができる。これにより、高容量で、レート性能と充放電サイクル性能に優れる二次電池を実現することができる。
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む正極活物質含有層を含む正極と、ニオブチタン複合酸化物を含む負極活物質含有層を含む負極とを含む二次電池は、充電終止電圧が例えば3Vで、かつ放電終止電圧が例えば1.5Vとなる電圧範囲で充放電がなされ得る。Dc及びDaは、上記電圧範囲を包含する電圧範囲での、正極単位面積当りの容量、負極単位面積当りの容量に対応する。(Dc−Da)の値は、ゼロに近い程、正極電位と負極電位のずれが小さい。(Dc−Da)の値は、正極電位と負極電位のずれに対する指標である。(Dc−Da)の値に面積Sを乗じたものは、負極活物質含有層と正極活物質含有層が対向する部分での容量差である。((Dc−Da)×S)の放電容量Bに対する比が、マイナスの値である時、正極の電位が下がる方向に向かう。((Dc−Da)×S/B)の値が−0.17よりも小さいと、放電末期の正極電位が卑な(低電位)状態になるため、過放電による正極劣化が大きくなり、二次電池の抵抗増大によりレート性能が低下する。((Dc−Da)×S)の放電容量Bに対する比が大きくなると、充電末期の正極、放電末期の負極の電位が上がる方向に向かう。((Dc−Da)×S/B)の値が0.02を超えると、充電末期の正極電位が貴な(高電位)状態になるため、過充電による正極劣化が大きくなり、二次電池の抵抗増大によりレート性能が低下する。また、負極の過放電による負極劣化が大きくなり、二次電池の抵抗増大によりレート特性が低下する。
図1及び図2を参照して具体的に説明する。図1及び図2は、正極電位、負極電位及び電池電圧それぞれの容量(Ah)に対する変化を示す曲線である。各図において、横軸は容量(Ah)で、縦軸は電圧(V)または電位(V(vs.Li/Li+))である。各図において、X1は、正極電位曲線、X2、X3及びX4はそれぞれ負極電位曲線、Yは電池電圧曲線を示す。また、各図において、充電終止電圧が例えば3Vで、かつ放電終止電圧が例えば1.5Vである。正極単位面積当りの容量Dc1と負極単位面積当りの容量Da1は、((Dc1−Da1)×S/B)の値が正の値を取る。この値が十分に大きい場合、負極電位が貴側に向かう方向にシフトするため、負極電位がX2で示す負極電位曲線で示される。その結果、充電終止電圧P1での正極電位Vccが貴な(高電位)状態になると共に、放電終止電圧N1での正極電位Vdcも貴な(高電位)状態になる。よって、過放電による正極劣化を抑制できるものの、過充電による正極劣化が大きくなる。
一方、正極単位面積当りの容量Dc3と負極単位面積当りの容量Da3は、((Dc3−Da3)×S/B)の値が負の値を取る。この値が十分に小さい場合、負極電位が卑側に向かう方向にシフトするため、負極電位がX4で示す負極電位曲線で示される。そのため、充電終止電圧P3での正極電位Vccが卑な(低電位)状態になると共に、放電終止電圧N3での正極電位Vdcも卑な(低電位)状態になる。よって、過充電による正極劣化を抑制できるものの、過放電による正極劣化が大きくなる。
正極単位面積当りの容量Dc2と負極単位面積当りの容量Da2は、((Dc2−Da2)×S/B)の値が(1)式で示される範囲にある。この場合の負極電位は、X3で示す負極電位曲線で示される。そのため、充電終止電圧P2での正極電位Vccと、放電終止電圧N2での正極電位Vdcの双方が適切な電位になる。その結果、過充電及び過放電による正極劣化を抑制することができる。従って、電池抵抗の上昇を抑制することができるため、レート性能と充放電サイクル寿命性能とに優れた二次電池を実現することができる。なお、これらの効果は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量は34重量%以上にすることにより、得られる。より好ましい範囲は34重量%以上61重量%以下である。
以下、放電容量B、面積S、Dc、Daそれぞれの詳細を説明する。
B[Ah]は、二次電池を25℃で使用最大電圧まで0.05Cのレートで定電流充電後、定電圧充電で電流値が0.01Cとなるまで充電し、0.2Cのレートで終止電圧まで放電したときの放電容量である。放電容量Bは、二次電池としての放電容量である。ここで、放電容量Bを求めるために使用する「使用最大電圧」は、二次電池を、危険も欠陥もなしに使用できる最大の電圧であり、各二次電池に固有の値である。使用最大電圧は、例えば、二次電池の仕様書などに、「充電電圧」及び「安全保障最大電圧」などと記載されている電圧である。また、「終止電圧」は、二次電池を、正極及び負極の何れの過放電をも抑える、すなわち二次電池の劣化を抑えて使用することができる最低の使用電圧であり、各二次電池に固有の値である。
面積Sは、負極活物質含有層と正極活物質含有層の互いに対向する対向面積である。対向面積は、二次電池の充放電反応への影響が大きいため、(Dc−Da)×Sは、実施形態に係る二次電池の負極容量と正極容量との差の実質的な値を反映している。
捲回型構造の電極群を備える二次電池における面積Sは、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、二次電池をアルゴンガス雰囲気で分解して、電極群を取り出す。次に、取り出した電極群を、捲回軸と平行な方向と、その方向に直交する方向との2つの方向で切断する。それぞれの切断面において、正極活物質含有層のうち負極活物質含有層と対向している部分の長さの合計を測る。或いは、取り出した電極群をX線CTにより断面観察することによっても、捲回軸と平行な方向における対向部分の長さの合計と、捲回軸に直交する方向における対向部分の長さの合計とを測ることができる。捲回軸と平行な方向における対向部分の長さの合計と、捲回軸に直交する方向における対向部分の長さの合計とを乗ずることにより、二次電池のSを算出することができる。
電極群の構造は、捲回型(捲回工程を経る)に限らず、積層型、つづら折り等にすることができる。また、負極活物質含有層の全部に限らず、負極活物質含有層の一部が正極活物質含有層と対向していても良い。一例として、捲回型の電極群において、正極又は負極の巻き始めの部分が反対極と対向していない、あるいは正極又は負極の巻き終わりの部分が反対極と対向していないなどが挙げられる。対向面積の調整は、例えば、電極のサイズ、正極活物質含有層と負極活物質含有層が対向していない非対向部分の面積等の変更により行うことが可能である。
(1)式におけるDc、Daの測定方法を以下に説明する。
二次電池の放電容量Bを前述の条件で測定した後、Arガス雰囲気下で解体して電極群を取り出し、正極活物質含有層と負極活物質含有層とが対向している箇所の正極と負極から、2cm角の正方形の平面形状を有する板状の正極と負極をそれぞれ切り出す。切り出した正極において、正極集電体の一方の面に形成された正極活物質含有層をN−メチル−2−ピロリドンで溶かして剥ぎ取り、正極集電体の他方の面の正極活物質含有層を残し、測定用正極を得る。また、切り出した負極において、負極集電体の一方の面に形成された負極活物質含有層をN−メチル−2−ピロリドンで溶かして剥ぎ取り、負極集電体の他方の面の負極活物質含有層を残し、測定用負極を得る。測定用正極と測定用負極を用い、以下に説明する三極式ガラスセルを用いて測定を行う。
図3は、三極式ガラスセルの概略図断面図である。
三極式ガラスセル1001は、ガラス製の容器101と、容器101内に収容される、参照極102と作用極103と対極104とを備える。作用極103は、測定用正極または測定用負極である。参照極102と対極104は、それぞれ、Li金属電極である。2枚のガラスフィルタ105の間に、図の上側から対極104、セパレータ107、参照極102、作用極103がこの順番に配置されている。上側に位置するガラスフィルタ105の上方にポリプロピレン板(PP板)106が配置されている。また、下側に位置するガラスフィルタ105の下方にポリプロピレン板(PP板)106が配置されている。セパレータ107は、特に限定されないが、例えば、微多孔性の膜、織布及び不織布、並びにこれらのうちの同一材又は異種剤の積層物などを用いることができる。
容器101内には、非水電解質(図示しない)が収容されている。参照極102、作用極103、対極104、セパレータ107、2枚のガラスフィルタ105及び2枚のPP板106は、非水電解質中に浸漬されている。非水電解質は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを1:1で混合した混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解させたものを用いる。
Dc、Daの測定では、使用最大電圧まで充電(例えば3V)された二次電池を前述の方法により解体したものを測定用正極および測定用負極として用いる。
Dcの測定では、作用極103に測定用正極を用いる。三極式ガラスセルを25℃において0.05Cのレートで、作用極の電位が3.0V(vs.Li/Li+)に達するまで放電させる。この放電によって得られた放電容量と測定用正極の正極活物質含有層の面積から単位面積当りの正極容量Dcを得る。
Daの測定では、作用極103に測定用負極を用いる。三極式ガラスセルを25℃において0.05Cのレートで、作用極の電位が3.0V(vs.Li/Li+)に達するまで放電させた。この放電によって得られた放電容量と測定用負極の負極活物質含有層の面積から単位面積当りの負極容量Daを得る。
Vdc、Vdaの測定では、作用極103に測定用正極、対極104に測定用負極を用いる。三極式ガラスセルを25℃において0.05Cのレートで、正極と負極間を3.0Vまで充電させた後、3.0Vで保持したまま0.005Cになるまで充電する。その後20分間開回路とする。その後、0.05Cのレートで正極と負極間が1.5Vになるまで放電させる。正極と負極間が1.5Vとなった時の正極の電位をVdc、負極の電位をVdaとする。
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極、及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
また、第1の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
さらに、第1の実施形態に係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
第1の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
1)負極
負極は、集電体と負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、ニオブチタン複合酸化物を負極活物質として含む。負極活物質含有層は、任意に導電剤及び結着剤をさらに含むことができる。
ニオブチタン複合酸化物の例には、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物および直方晶型(orthorhombic)Na含有ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、−0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、−0.3≦δ≦0.3である。
直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の例として、Li2+vNa2-wM4uTi6-s-tNbsM5tO14+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M4は、Cs、K、Sr、Ba及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M5は、Zr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。組成式中のそれぞれの添字は、0≦v≦4、0<w<2、0≦u<2、0<s<6、0≦t<3、s+t<6、−0.5≦δ≦0.5である。
活物質含有層は、1種のニオブチタン複合酸化物を単独で含んでもよく、ニオブチタン複合酸化物を2種類以上含んでもよい。さらに、ニオブチタン複合酸化物を1種又は2種以上と、更に1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。
ニオブチタン複合酸化物とは他の活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+jTi3O7、0≦j≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+jTi5O12、0≦j≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、及び上記直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物以外の直方晶型チタン含有複合酸化物が挙げられる。
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM62-bTi6-cM7dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M6は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M7はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、−0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリアクリル酸化合物、ウレタン共重合体、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。上記ポリアクリル酸化合物には、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、アクリル共重合体、及びウレタン共重合体が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、次のとおりにすることが好ましい。負極活物質、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96重量%以下、2重量%以上30重量%以下及び2重量%以上30重量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2重量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2重量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30重量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
集電体は、負極活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、例えば、LieNi1-f-gCofMngO2;0<e≦1、0<f<1、0<g<1、f+g<1)で表される。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量は34重量%以上にすることが好ましく、より好ましい範囲は34重量%以上61重量%以下である。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS;Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)で測定される。具体的には、正極中のニッケル含有量は、例えば合材層(正極活物質含有層)をN−メチルピロリドン(NMP)あるいは水に溶解させた後、遠心分離で導電剤と正極活物質を分離後に正極活物質を、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)で測定される。
正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物以外の正極活物質を含み得る。他の正極活物質として、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLieMn2O4又はLieMnO2;0<e≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLieNiO2;0<e≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLieCoO2;0<e≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLieNi1-fCofO2;0<e≦1、0<f<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLieMnfCo1-fO2;0<e≦1、0<f<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLieMn2-mNimO4;0<e≦1、0<m<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLieFePO4;0<e≦1、LieFe1-nMnnPO4;0<e≦1、0<n≦1、LieCoPO4;0<e≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLieMn2O4;0<e≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLieNiO2;0<e≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLieCoO2;0<e≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLieNi1-fCofO2;0<e≦1、0<f<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLieMn2-mNimO4;0<e≦1、0<m<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLieMnfCo1-fO2;0<e≦1、0<f<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLieFePO4;0<e≦1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LikVPO4F(0≦k≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80重量%以上98重量%以下、及び2重量%以上20重量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2重量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20重量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77重量%以上95重量%以下、2重量%以上20重量%以下、及び3重量%以上15重量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3重量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15重量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99重量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1重量%以下であることが好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極は、例えば、負極活物質の代わりに正極活物質を用いて、負極と同様の方法により作製することができる。
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビスフルオロスルホニルイミド(LiN(SO2F)2;LiFSI)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2;LiTFSI)のようなフッ素を含むリチウム塩及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
上記フッ素を含むリチウム塩と共に、過塩素酸リチウム(LiClO4)のような他のリチウム塩をさらに含むこともできる。電解質は、少なくとも電解質塩として上記フッ素を含むリチウム塩の1以上を含むことが望ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;酢酸エチルおよび酢酸メチルのような酢酸エステル;プロピオン酸エチル(ethyl propionate;EP)、プロピオン酸メチルのようなプロピオン酸エステル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
電解質は、イソシアネート基含有化合物及びトリアルキルシリル基含有化合物の少なくとも一方の化合物を含むことが望ましい。化合物の含有量は、例えば、電解質に対して0.01重量%以上5重量%以下にすることが、好ましい。イソシアネート基含有化合物としては、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、トリアルキルシリル基含有化合物としては、トリメチルシリルホスフェート、トリエチルシリルホスフェート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び、γ-メタクリロキシプロピルトリエト キシシラン等が挙げられる。これらの添加剤は、特に負極に良好な被膜を形成するとともに、水酸基と強固な結合を形成する。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100重量ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
第1の実施形態に係る二次電池の製造方法を説明する。
第1の実施形態に係る二次電池は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含み、かつリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量が34重量%以上の正極活物質含有層を含む正極と、ニオブチタン複合酸化物を含む負極活物質含有層を含む負極と、電解質とを具備する二次電池であって、上記(1)に示す関係式を満たす二次電池を用意することによって、得られるものである。具体的な製造方法を以下に説明する。
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含み、かつリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量が34重量%以上の正極活物質含有層を含む正極と、ニオブチタン複合酸化物を含む負極活物質含有層を含む負極と、イソシアネート基含有化合物及びトリアルキルシリル基含有化合物の少なくとも一方を含む電解質とを具備する二次電池ユニットを作製する工程と、
二次電池ユニットに初回充放電を施す工程と、
二次電池ユニットに45℃以上80℃未満の範囲で24時間以上200時間以下の条件でエージングを施す工程と
を含むものである。
二次電池ユニットは、初回充放電を施す準備が整ったもので、少なくとも電極群の作製、電解質の充填及び封止が完了した段階の二次電池であり得る。
初回充放電は、二次電池に最初に施す充電と放電である。初回充放電後、エージングの前に、1回以上の充電、1回以上の放電、あるいは双方を施しても良い。
エージングは、充電状態の二次電池ユニットに施すことが望ましい。充電状態は、負極のニオブチタン複合酸化物にリチウム又はリチウムイオンが挿入された状態にあることを示す。つまり、完全放電状態でなければよい。
エージングの温度と時間を上記範囲にすることにより、負極における電解質の還元分解反応を優先的に生じさせることが可能となる。その結果、負極の自己放電量を正極の自己放電量よりも大きくすることができるため、使用最大電圧まで充電された二次電池における負極電位を貴側または卑側にシフトさせることができ、実施形態の二次電池が得られる。エージング温度のより好ましい範囲は、45℃以上65℃以下である。
次に、第1の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図4は、第1の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図5は、図4に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図4及び図5に示す二次電池100は、図4に示す袋状外装部材2と、図4及び図5に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図4に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図5に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図5に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図4に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第1の実施形態に係る二次電池は、図4及び図5に示す構成の二次電池に限らず、例えば図6及び図7に示す構成の電池であってもよい。
図6は、第1の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図7は、図6に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図6及び図7に示す二次電池100は、図6及び図7に示す電極群1と、図6に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図7に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図4に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
第1の実施形態に係る二次電池は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む正極と、ニオブチタン複合酸化物を含む負極と、電解質とを含む。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量が34重量%未満である。また、二次電池は、前述の(1)式を満たす。上記構成の二次電池は、放電末期の正極電位が卑な状態になるのを抑制することができると共に、充電末期の正極電位が貴な状態になるのを抑制することができる。これにより、高容量で、かつ放電レート性能と充放電サイクル性能に優れる二次電池を実現することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、組電池が提供される。第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第2の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第2の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第2の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図8に示す組電池200は、5つの単電池100a〜100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a〜100eのそれぞれは、第1の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図8の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
5つの単電池100a〜100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a〜100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次電池を具備する。したがって、高エネルギー密度で、かつ優れたレート性能と寿命性能を示す。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第1の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第3の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第3の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図10は、図9に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図9及び図10に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図9に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図10に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子の正側端子と負側端子としてそれぞれ用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第3の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池又は第2の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、高エネルギー密度で、かつ優れたレート性能と寿命性能を示す。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第4の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図11は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
図11に示す車両400は、車両本体40と、第3の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図11に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図11では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図12を参照しながら、第4の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図12は、第4の実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図12に示す車両400は、電気自動車である。
図12に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図12に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a〜300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a〜200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a〜200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a〜301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図12に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a〜200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。電池パックが高出力で優れた寿命性能を示すことができるため、車両は高いパフォーマンスを示すとともに信頼性が高い。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
正極活物質として、式LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2で表される組成を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粉末を準備した。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のNi含有量を表1に示す。
このリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粉末と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、95重量部:3重量部:2重量部の混合比で、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)に投入して、混合した。次いで、このようにして得られた混合物を分散させ、スラリーを調製した。
次に、調製したスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。集電体への片面当たりの塗布量は、124g/m2とした。次に、塗膜を乾燥させ、プレスを行い、密度が3.3g/cm3である正極活物質含有層を備えた正極を作製した。
[負極の作製]
活物質として、TiNb2O7で表される組成を有するニオブチタン複合酸化物を準備した。導電剤としてアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジェンゴム(SBR)とを準備した。これらTiNb2O7と、ABと、CMCと、SBRとを、95重量部:2重量部:1.5重量部:1.5重量部の混合比で、溶媒としての純水に投入して混合した。次いで、得られた混合物を分散させ、スラリーを得た。
次に、調製したスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。集電体への片面当たりの塗布量は、110g/m2とした。次に、塗膜を乾燥させ、プレスを行い、密度が2.4g/cm3である負極活物質含有層を備えた負極を作製した。
[電極群の作製]
厚さが15μmであるポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを準備した。次いで、上記正極と上記負極をその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した後、加熱プレスを施すことにより、扁平状電極群を作製した。
得られた電極群が含む正極の集電体にアルミニウム製の正極端子を溶接した。また、負極の集電体にニッケル製の負極端子を溶接した。
[電極群の収容及び乾燥]
ラミネートフィルムからなる外装部材を準備した。ラミネートフィルムは、厚さが40μmであるアルミニウム箔と、その両方の表面上に形成されたポリプロピレン層とを含んでいた。ラミネートフィルムの全体の厚さは、0.1mmであった。
次に、上記の電極群を、正極端子の一部及び負極端子の一部が外に位置した状態で、外装部材内に収納した。次いで、外装部材の周囲を、一部を残して、熱融着した。この状態で、電極群を、80℃で24時間にわたり、真空乾燥に供した。
[非水電解質の調製]
プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比率において1:2の比率で混合して混合溶媒とした。この混合溶媒に電解質塩としてLiPF6を1Mの濃度で溶解した。ここに、さらに0.05重量%となるようにヘキサメチレンジイソシアネートを添加し、液状非水電解質を調製した。
[二次電池ユニットの組み立て]
先のようにして電極群を収納した外装部材内に、液状非水電解質を注入した。その後、外装部材の周囲のうち熱融着していなかった部分に仮封止を施し、電極群と非水電解質とを外装部材内に密閉した。
[初充放電工程及びエージング工程]
組み上げた二次電池ユニットを、槽内温度25℃とした恒温槽に入れた。恒温槽内にて電池電圧3.00Vまで0.2C電流にて定電流で充電し、電池電圧3.00V到達後、定電圧充電を行った。電流値が0.05Cとなった時点で充電を完了した。休止状態に電池を20分間維持した後、電池電圧1.5Vまで0.2C電流にて定電流で二次電池ユニットを放電した。この放電の際に確認された放電容量は1.5Ahであった。
その後、確認した容量に対してSOC90%まで0.2C電流にて定電流で二次電池ユニットを充電した。二次電池ユニットを45℃の恒温槽にて80時間貯蔵することによりエージング処理を施し、非水電解質電池を得た。
(実施例2〜9)
正極活物質、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のNi含有量、正極目付量、負極活物質、負極目付量、エージング温度と時間、電解質塩、イソシアネート基含有化合物、非水電解質中のイソシアネート基含有化合物濃度を下記表1に示す通りに設定すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池を得た。
(比較例1〜4)
正極活物質、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のNi含有量、正極目付量、負極活物質、負極目付量、エージング温度と時間、電解質塩、イソシアネート基含有化合物、非水電解質中のイソシアネート基含有化合物濃度を下記表1に示す通りに設定すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池を得た。
<測定>
実施例及び比較例にて得られた各々の非水電解質電池について、先に説明した方法により放電容量B、面積S、Dc、Da、正極の放電終止電位Vdc、負極の放電終止電位Vdaを測定し、得られた測定値から(Dc−Da)×S/Bの値を求めた。その結果を下記表3に示す。使用最大電圧として3V、終止電圧として1.5Vを使用した。
<評価>
実施例及び比較例にて作製した各電池を用いて、45℃の環境における充放電サイクル試験を行った。充電では、1Cの定電流値で電圧が3.0Vに達するまで充電し、次いで電池を3.0Vの定電圧で充電した。充電は、電流値が1/20Cに達した際に停止した。放電は、1Cの定電流値で行った。放電は電圧が1.5Vに達した際に停止した。充電と放電との間には、同じ温度環境での10分間の休止を行った。充電、休止、放電及び休止を1サイクルとした。この試験において実施するサイクル数は500サイクルとした。500サイクル目の放電容量を、1サイクル目の放電容量により除することで、高温における500サイクル後の容量維持率を評価した。この容量維持率は、サイクル特性の指標となる。
また、各電池のレート性能(0.2C容量に対する10C容量の比率)を測定した。電池を槽内温度25℃とした恒温槽に入れた。恒温槽内にて電池電圧3.00Vまで0.2C電流にて定電流で充電し、電池電圧3.00V到達後、定電圧充電を行った。電流値が0.05Cとなった時点で充電を完了した。休止状態に電池を20分間維持した後、電池電圧1.5Vまで0.2C電流にて定電流で電池を放電し、0.2C放電容量とした。次いで恒温槽内にて電池電圧3.00Vまで0.2C電流にて定電流で充電し、電池電圧3.00V到達後、定電圧充電を行った。電流値が0.05Cとなった時点で充電を完了した。休止状態に電池を20分間維持した後、電池電圧1.5Vまで10C電流にて定電流で電池を放電し、10C放電容量とした。10C放電容量を0.2C放電容量により除することで、レート性能を評価した。レート性能は急速放電特性の指標となる。これらの結果を表4に示す。
表1−表4から明らかな通り、実施例1〜9の二次電池は、レート性能とサイクル特性の双方に優れている。実施例1〜9は比較例1,2と比較し対向面積、放電容量が同等にも関わらずレート特性に優れている。実施例1〜9は比較例1,2と比較して正極の目付が小さいため、Liイオンの拡散が有利になりレート特性が優れていると考えられる。
比較例1,2は、いずれも、(Dc−Da)×S/Bの値が−0.17以上0.02以下であるものの、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量が34重量%未満である。そのため、比較例1,2の二次電池はレート性能に劣る。また、比較例3,4は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量が34重量%以上であるものの、(Dc−Da)×S/Bの値が上記範囲から外れているものである。そのため、比較例3,4の二次電池はサイクル特性に劣る。
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、二次電池が提供される。二次電池は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む正極と、ニオブチタン複合酸化物を含む負極と、電解質とを含む。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中のニッケル含有量は34重量%以上である。また、二次電池は、(1)式(−0.17≦(Dc−Da)×S/B≦0.02)を満たす。当該二次電池は、高容量で、優れたレート性能と寿命性能を示す。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。