JP2021147244A - リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】室温で立方晶をとり、かつ、微粒子化を実現したリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を作製する。【解決手段】LiとLaとZrとSrとOとを含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末のゾルゲル法による製造方法は、Zrを含有する第1の前駆体とLaを含有する第2の前駆体とを混合して、ZrとLaとを含有する第3の前駆体を作製する工程と、Sr金属またはSr含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを用いて、Srを含有する第4の前駆体を作製する工程と、第3の前駆体と第4の前駆体とを用いて、LiとLaとZrとSrとを含有する第5の前駆体を作製する工程と、第5の前駆体を乾燥させることにより、第6の前駆体を作製する工程と、第6の前駆体に熱を加えて結晶化させることにより、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を得る工程とを備える。【選択図】図3

Description

本明細書によって開示される技術は、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法に関する。
近年、パソコンや携帯電話等の電子機器の普及、電気自動車の普及、太陽光や風力等の自然エネルギーの利用拡大等に伴い、高性能な電池の需要が高まっている。なかでも、電池要素がすべて固体で構成された全固体リチウムイオン二次電池(以下、「全固体電池」という。)の活用が期待されている。全固体電池は、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた有機電解液を用いる従来型のリチウムイオン二次電池と比べて、有機電解液の漏洩や発火等のおそれがないため安全であり、また、外装を簡略化することができるため単位質量または単位体積あたりのエネルギー密度を向上させることができる。
全固体電池の固体電解質層や電極を構成するリチウムイオン伝導体として、例えば、Li(リチウム)とLa(ランタン)とZr(ジルコニウム)とO(酸素)とを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を含むリチウムイオン伝導体が知られている。このようなリチウムイオン伝導性固体電解質粉末としては、例えば、LiLaZr12(以下、「LLZ」という。)が知られている。LLZは、酸化物系固体電解質の中でも、立方晶においてリチウムイオン伝導性が高く、かつ、電位窓が広いという長所を有する。そのため、全固体電池の固体電解質層や電極を構成するリチウムイオン伝導体として、LLZ粉末を含むリチウムイオン伝導体を採用すれば、全固体電池のリチウムイオン伝導性を向上させることができると共に、電極の活物質の材料選択範囲を広くすることができ、最適な活物質材料を含有する電極を構成することができる。
元素置換を行っていないLLZは、室温において正方晶をとるが、LLZに対して元素置換を行ったものは、室温においても安定的に立方晶をとる。LLZに対して元素置換を行ったものとしては、例えば、LLZに対してSr(ストロンチウム)の元素置換を行ったものや、LLZに対してSrおよびMg(マグネシウム)の元素置換を行ったもの(以下、「LLZ−Mg,Sr」という。)等が知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、LLZに対して少なくともSrの元素置換を行ったもの、すなわち、LiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を、「LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末」という。LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、他の置換元素を用いたもの(例えば、LLZに対してTa(タンタル)の元素置換を行ったものや、LLZに対してAl(アルミニウム)の元素置換を行ったもの)と比べて、リチウムイオン伝導性が高く、かつ、置換元素の埋蔵量が多いために安定供給が可能である。
特開2016−40767号公報
従来、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、固相法により製造される。固相法による製造の際には、焼結による粒成長を伴うため、作製されるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の粒子が大きくなる(例えば、粒径が10μm〜数百μm程度となる)。そのため、例えば、作製されたリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を用いて全固体電池の電極や固体電解質層を構成すると、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の充填密度を十分に向上させることができず、その結果、電極や固体電解質層におけるリチウムイオン伝導パスを効果的に増やすことができず、全固体電池のリチウムイオン伝導性を十分に向上させることができない。
なお、このような課題は、全固体電池の固体電解質層や電極に用いられるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造に限らず、他の用途のためのリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造の際にも共通の課題である。
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示されるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法は、ゾルゲル法によるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、LiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有し、前記製造方法は、Zrを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Zrを少なくとも含有する第1の前駆体を作製する工程と、Laを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Laを少なくとも含有する第2の前駆体を作製する工程と、前記第1の前駆体と前記第2の前駆体とを混合して、ZrとLaとを少なくとも含有する第3の前駆体を作製する工程と、Sr金属またはSr含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、Srを少なくとも含有する第4の前駆体を作製する工程と、前記第3の前駆体と前記第4の前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとを少なくとも含有する第5の前駆体を作製する工程と、前記第5の前駆体を乾燥させることにより、第6の前駆体を作製する工程と、前記第6の前駆体に熱を加えて結晶化させることにより、前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を得る工程と、を備える。本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、リチウムイオン伝導性の高い固体電解質粉末であるLiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有する固体電解質粉末を得ることができる。また、本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、液相法であるゾルゲル法を採用することにより、固相法による場合と比較して、非常に微小な粒子(例えば、数nm〜数百nm程度の粒径の粒子)から構成されたリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を製造することができる。そのため、例えば、製造されたリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を用いて全固体電池の電極や固体電解質層を構成すると、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の充填密度を向上させることができ、その結果、電極や固体電解質層におけるリチウムイオン伝導パスを効果的に増やすことができ、全固体電池のリチウムイオン伝導体を向上させることができる。また、本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、Srを含有する第4の前駆体を作製する際に、Sr金属またはSr含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とが用いられるため、Srが溶媒にキレート化しやすくなり、その結果、Srが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を作製することができる。また、本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、Zrを含有する第1の前駆体およびLaを含有する第2の前駆体が作製された後、両者を混合することによりZとLaとを含有する第3の前駆体が作製される。そのため、この混合の際に、金属イオン(Zr2+)キレート錯体と結合しているO−R(Rは炭化水素)結合に、Laイオンおよび水が存在することとなり、
O−R + La(NO) + HO → O−La + R−OH +HNO
のような加水分解反応が起こり、Zrキレート錯体中にLaが取り込まれ、LaとZrとの骨格形成がしやすくなり、その結果、Laがキレート錯体中に取り込まれないことによるLa単体での析出の発生を抑制することができ、室温で立方晶をとるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を作製することができる。
(2)上記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、さらにMgを含有し、前記第4の前駆体を作製する工程は、Sr金属またはSr含有金属アルコキシドとMg金属またはMg含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、SrとMgとを少なくとも含有する前記第4の前駆体を作製する工程であり、前記第5の前駆体を作製する工程は、前記第3の前駆体と前記第4の前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前記第5の前駆体を作製する工程である構成としてもよい。本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、リチウムイオン伝導性の非常に高い固体電解質粉末であるLiとLaとZrとSrとMgとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有する固体電解質粉末を得ることができる。また、本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、SrとMgとを含有する第4の前駆体を作製する際に、Sr金属またはSr含有金属アルコキシドとMg金属またはMg含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とが用いられるため、SrおよびMgが溶媒にキレート化しやすくなり、その結果、SrおよびMgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を作製することができる。
(3)上記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、さらにMgを含有し、前記製造方法は、さらに、Mg金属またはMg含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、Mgを少なくとも含有する第7の前駆体を作製する工程を備え、前記第5の前駆体を作製する工程は、前記第3の前駆体と前記第4の前駆体と前記第7の前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前記第5の前駆体を作製する工程である構成としてもよい。本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、リチウムイオン伝導性の非常に高い固体電解質粉末であるLiとLaとZrとSrとMgとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有する固体電解質粉末を得ることができる。また、本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、Mgを含有する第7の前駆体を作製する際に、Mg金属またはMg含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とが用いられるため、Mgが溶媒にキレート化しやすくなり、その結果、Mgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を作製することができる。
(4)上記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、前記両親媒性の溶媒は、2−メトキシエタノールである構成としてもよい。本リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法によれば、置換元素(Sr等)を溶媒に効果的にキレート化することができ、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を効率的に作製することができる。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末、該リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を含む固体電解質層または電極、該固体電解質層または該電極を備える蓄電デバイス、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
第1実施形態における全固体リチウムイオン二次電池102の断面構成を概略的に示す説明図 ガーネット型結晶構造を模式的に示す説明図 第1実施形態におけるLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法の一例を示すフローチャート 第2実施形態におけるLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法の一例を示すフローチャート 性能評価の結果を示す説明図
A.第1実施形態:
A−1.全固体電池102の構成:
(全体構成)
図1は、第1実施形態における全固体リチウムイオン二次電池(以下、「全固体電池」という。)102の断面構成を概略的に示す説明図である。図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向という。
全固体電池102は、電池本体110と、電池本体110の一方側(上側)に配置された正極側集電部材154と、電池本体110の他方側(下側)に配置された負極側集電部材156とを備える。正極側集電部材154および負極側集電部材156は、導電性を有する略平板形状部材であり、例えば、ステンレス鋼、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、これらの合金から選択される導電性金属材料、炭素材料等によって形成されている。以下の説明では、正極側集電部材154と負極側集電部材156とを、まとめて集電部材ともいう。
(電池本体110の構成)
電池本体110は、電池要素がすべて固体で構成されたリチウムイオン二次電池本体である。なお、本明細書において、電池要素がすべて固体で構成されているとは、すべての電池要素の骨格が固体で構成されていることを意味し、例えば該骨格中に液体が含浸した形態等を排除するものではない。電池本体110は、正極114と、負極116と、正極114と負極116との間に配置された固体電解質層112とを備える。以下の説明では、正極114と負極116とを、まとめて電極ともいう。
(固体電解質層112の構成)
固体電解質層112は、略平板形状の部材であり、リチウムイオン伝導性を有するリチウムイオン伝導体202を含んでいる。
(正極114の構成)
正極114は、略平板形状の部材であり、正極活物質214を含んでいる。正極活物質214としては、例えば、S(硫黄)、TiS、LiCoO(以下、「LCO」という。)、LiMn、LiFePO、Li(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O(以下、「NCM」という。)、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が用いられる。また、正極114は、リチウムイオン伝導助剤としてのリチウムイオン伝導体204を含んでいる。正極114は、さらに電子伝導助剤(例えば、導電性カーボン、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Ag(銀))を含んでいてもよい。
(負極116の構成)
負極116は、略平板形状の部材であり、負極活物質216を含んでいる。負極活物質216としては、例えば、Li金属、Li−Al合金、LiTi12(以下、「LTO」という。)、カーボン(グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、表面に低結晶性炭素がコーティングされたコアシェル型黒鉛)、Si(ケイ素)、SiO等が用いられる。また、負極116は、リチウムイオン伝導助剤としてのリチウムイオン伝導体206を含んでいる。負極116は、さらに電子伝導助剤(例えば、導電性カーボン、Ni、Pt、Ag)を含んでいてもよい。
A−2.リチウムイオン伝導体の構成:
次に、固体電解質層112に含まれるリチウムイオン伝導体202の構成について説明する。なお、正極114に含まれるリチウムイオン伝導体204および負極116に含まれるリチウムイオン伝導体206の構成は、固体電解質層112に含まれるリチウムイオン伝導体202の構成と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態において、固体電解質層112に含まれるリチウムイオン伝導体202は、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を含んでいる。より詳細には、リチウムイオン伝導体202は、上述したLLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末(LiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末であり、例えば、LLZ−Mg,Sr)を含んでいる。なお、「ガーネット型結晶構造」とは、一般式C12で表される結晶構造である。図2は、ガーネット型結晶構造を模式的に示す説明図である。図2に示すように、ガーネット型結晶構造において、CサイトScは酸素原子Oaと12面体配位し、AサイトSaは酸素原子Oaと8面体配位し、BサイトSbは酸素原子Oaと4面体配位している。なお、ガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性粉末(リチウムイオン伝導性固体電解質)では、通常のガーネット型結晶構造では酸素原子Oaと8面体配位する箇所であって、空隙Vとなる箇所に、リチウムが存在し得る。空隙Vは、例えば、図2におけるBサイトSb1とBサイトSb2とに挟まれる箇所である。空隙Vに存在するリチウムは、BサイトSb1を形成する4面体の面Fb1とBサイトSb2を形成する4面体の面Fb2とを一部に含む8面体を構成する酸素原子Oaと8面体配位している。例えばLiLaZr12という組成のガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性粉末(リチウムイオン伝導性固体電解質)では、CサイトScをランタンが占有し、AサイトSaをジルコニウムが占有し、BサイトSbと空隙Vとをリチウムが占有し得る。なお、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末がLiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するものであることは、X線回折装置(XRD)で分析することにより確認することができる。具体的には、リチウムイオン伝導性固体電解質粉末をX線回折装置により分析することにより、X線回折パターンを得る。得られたX線回折パターンと、LLZに対応するICDD(International Center for Diffraction Data)カード(01−080−4947)(LiLaZr12)とを対比し、両者における回折ピークの回折角度及び回折強度比が概ね一致していれば、該リチウムイオン伝導性固体電解質粉末はLiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するものであると判定することができる。例えば、後述の「D.LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の好ましい態様」に記載された各リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、該粉末から得られたX線回折パターンとLLZに対応するICDDカードとの両者における回折ピークの回折角度及び回折強度比が概ね一致するため、LiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するものであると判定される。
LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、元素置換がなされていないLLZ粉末と異なり、室温においても立方晶をとるため、室温においても高いリチウムイオン伝導性を有する。そのメカニズムは明らかではないが、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末において、Laのイオン半径とSrのイオン半径とは近いので、LLZ結晶相においてLaが配置されているLaサイトにSrが配置されやすく、LaがSrに置換されることで、格子ひずみが生じ、かつLaとSrとの電荷の違いにより自由なLiイオンが増加し、リチウムイオン伝導性が向上するものと考えられる。
また、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、さらに置換元素としてのMgを含有することが好ましい。LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末がMgを含有すると、Liのイオン半径とMgのイオン半径とは近いので、LLZ結晶相においてLiが配置されているLiサイトにMgが配置されやすく、LiがMgに置換されることで、LiとMgとの電荷の違いにより結晶構造内のLiサイトに空孔が生じてリチウムイオンが動きやすくなり、その結果、リチウムイオン伝導性が向上するものと考えられる。
なお、SrおよびMgは、比較的埋蔵量が多く安価であるため、LLZの置換元素としてSrおよびMgを用いれば、高いリチウムイオン伝導性を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末を安定的に供給することができると共に、製造コストを低減することができる。
本実施形態のリチウムイオン伝導体202は、上述したLLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を加圧成形した圧粉体である。なお、本実施形態のリチウムイオン伝導体202は、上述したLLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末に加えて、バインダーを含み、シート状に形成されていてもよい。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(以下、「PVDF−HFP」という。)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリアミド、シリコーン(ポリシロキサン)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等が用いられる。このような構成とすれば、リチウムイオン伝導体202のリチウムイオン伝導性を向上させつつ、リチウムイオン伝導体202の成形性やハンドリングを向上させることができる。
A−3.LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法:
次に、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法について、LLZ−Mg,Sr粉末を例にとって説明する。図3は、第1実施形態におけるLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下に詳述するように、本実施形態では、LLZ−Mg,Sr粉末を、固相法ではなく、液相法の1つであるゾルゲル法により製造するものとしている。
はじめに、Zrを少なくとも含有する前駆体(以下、「Zr含有前駆体」という。)を作製する(S110)。Zr含有前駆体は、例えば、Zrを含有する材料と、溶媒とを用いて作製される。Zrを含有する材料としては、例えば、Zr(OC等が用いられ、溶媒としては、例えば、1−ブタノール等が用いられる。Zrを含有する材料に溶媒を加え、還流(例えば、100℃〜130℃、1時間〜5時間)を行うことにより、Zr含有前駆体を作製することができる。なお、還流後の溶液に、酢酸を加えて攪拌(例えば、室温、1時間〜3時間)を行い、さらに水を加えて攪拌(例えば、3℃〜10℃、1時間〜3時間)を行ってもよい。Zr含有前駆体は、特許請求の範囲における第1の前駆体に相当し、Zr含有前駆体を作製するためのS110の工程は、特許請求の範囲における第1の前駆体を作製する工程に相当する。なお、本明細書において、前駆体とは、溶液(または溶媒)中において、金属イオン(Zr2+、La3+、Mg2+、Sr2+など)に溶媒や配位子が配位し、キレート錯体を形成したものを意味し、ゾル状、ゲル状、ウェットゲル状であるものを含む。
また、Laを少なくとも含有する前駆体(以下、「La含有前駆体」という。)を作製する(S120)。La含有前駆体は、例えば、Laを含有する材料と、溶媒とを用いて作製される。Laを含有する材料としては、溶媒に溶けるものであれば任意のLa源を用いることができ、例えば、La(NOやその水和物(例えば、La(NO・6HO)、LaClやその水和物(例えば、LaCl・7HO)等が用いられる。また、溶媒としては、例えば、1−ブタノール等が用いられる。Laを含有する材料に対して、必要により乾燥処理(例えば、140℃〜160℃、1時間〜3時間)を行った後、溶媒を加え、攪拌(例えば、室温、1時間〜3時間)を行うことにより、La含有前駆体を作製することができる。La含有前駆体は、特許請求の範囲における第2の前駆体に相当し、La含有前駆体を作製するためのS120の工程は、特許請求の範囲における第2の前駆体を作製する工程に相当する。
Zr含有前駆体とLa含有前駆体とを作製した後、両者を混合することにより、ZrとLaとを少なくとも含有する前駆体(以下、「Zr−La含有前駆体」という。)を作製する(S130)。例えば、Zr含有前駆体とLa含有前駆体とを混合し、攪拌(例えば、40℃〜80℃、1時間〜3時間)を行うことにより、Zr−La含有前駆体を作製することができる。Zr−La含有前駆体は、特許請求の範囲における第3の前駆体に相当し、Zr−La含有前駆体を作製するためのS130の工程は、特許請求の範囲における第3の前駆体を作製する工程に相当する。
また、Zr−La含有前駆体とは別に、LiとMgとSrとを少なくとも含有する前駆体(以下、「Li−Mg−Sr含有前駆体」という。)を作製する(S140)。Li−Mg−Sr含有前駆体は、例えば、Li金属と、Sr金属と、Mg金属と、両親媒性の溶媒とを用いて作製される。両親媒性の溶媒としては、例えば、2−メトキシエタノールや2−エトキシエタノール、モノエタノールエミン、ジエタノールアミン等が用いられる。両親媒性の溶媒中にLi金属と、Sr金属と、Mg金属とを添加し、還流(例えば、115℃〜135℃、3時間〜7時間)を行うことにより、Li−Mg−Sr含有前駆体を作製することができる。Li−Mg−Sr含有前駆体は、特許請求の範囲における第4の前駆体に相当し、Li−Mg−Sr含有前駆体を作製するためのS140の工程は、特許請求の範囲における第4の前駆体を作製する工程に相当する。すなわち、S140の工程は、Sr金属とMg金属と両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、SrとMgとを少なくとも含有する前駆体を作製する工程に該当する。
Zr−La含有前駆体とLi−Mg−Sr含有前駆体とを作製した後、両者を混合することにより、前駆体を作製する(S150)。このとき作製される前駆体は、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前駆体である。以下、この前駆体を、「乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体」という。例えば、Zr−La含有前駆体とLi−Mg―Sr含有前駆体とを混合し、攪拌(例えば、3℃〜7℃、10時間〜14時間)を行うことにより、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製することができる。なお、本実施形態では、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製した後、還流(例えば、115℃〜135℃、1時間〜3時間)を行う。乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体は、特許請求の範囲における第5の前駆体に相当し、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製するためのS150の工程は、特許請求の範囲における第5の前駆体を作製する工程に相当する。すなわち、S150の工程は、Zr−La含有前駆体とLi−Mg−Sr含有前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前駆体を作製する工程に該当する。
次に、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を乾燥させる(S160)。以下、この乾燥処理後の前駆体を、「乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体」という。乾燥処理により、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体に含まれる溶媒が揮発する。この乾燥処理としては、例えば、110℃〜130℃、1時間〜3時間の乾燥処理を所定回数(例えば、3回)行った後、例えば、160℃〜180℃、0.5時間〜2時間の乾燥処理を所定回数(例えば、1回)行う。乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体は、特許請求の範囲における第6の前駆体に相当し、乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体を作製するためのS160の工程は、特許請求の範囲における第6の前駆体を作製する工程に相当する。
次に、乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体に熱を加えて結晶化させることにより、LLZ−Mg,Srの粉末を作製する(S170)。このとき行われる熱処理は、例えば、大気中、650℃〜850℃、2時間〜4時間の熱処理である。この熱処理により、室温で立方晶をとり、かつ、非常に微小な粒子(例えば、数nm〜数百nm程度の粒径の粒子)からなるLLZ−Mg,Srの粉末を得ることができる。
A−4.全固体電池102の製造方法:
次に、本実施形態の全固体電池102の製造方法の一例を説明する。はじめに、固体電解質層112を作製する。具体的には、上述した方法によりLLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を作製し、該リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を所定の圧力で加圧成形したり、バインダーを添加してシート状に成形したりすることにより、リチウムイオン伝導体202の成形体である固体電解質層112を作製する。
また、別途、正極114および負極116を作製する。具体的には、正極活物質214の粉末と、リチウムイオン伝導体204と、必要により電子伝導助剤の粉末とを所定の割合で混合し、所定の圧力で加圧成形したり、バインダーを添加してシート状に成形したりすることにより正極114を作製する。また、負極活物質216の粉末と、リチウムイオン伝導体206と、必要により電子伝導助剤の粉末とを混合し、所定の圧力で加圧成形したり、バインダーを添加してシート状に成形したりすることにより負極116を作製する。
次に、正極側集電部材154と、正極114と、固体電解質層112と、負極116と、負極側集電部材156とをこの順に積層して加圧することにより一体化する。以上の工程により、上述した構成の全固体電池102が製造される。
A−5.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態におけるLLZ−Mg,Sr粉末(LiとLaとZrとSrとMgとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末)の製造方法は、ゾルゲル法によるものである。具体的には、該製造方法は、
Zrを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Zrを少なくとも含有する第1の前駆体(Zr含有前駆体)を作製する工程(S110)と、
Laを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Laを少なくとも含有する第2の前駆体(La含有前駆体)を作製する工程(S120)と、
Zr含有前駆体とLa含有前駆体とを混合して、ZrとLaとを少なくとも含有する第3の前駆体(Zr−La含有前駆体)を作製する工程(S130)と、
Sr金属とMg金属と両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、SrとMgとを少なくとも含有する第4の前駆体(Li−Mg−Sr含有前駆体)を作製する工程(S140)と、
第3の前駆体(Zr−La含有前駆体)と第4の前駆体(Li−Mg−Sr含有前駆体)とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとMgとSrとを少なくとも含有する第5の前駆体(乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体)を作製する工程(S150)と、
第5の前駆体(乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体)を乾燥させることにより、第6の前駆体(乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体)を作製する工程(S160)と、
第6の前駆体(乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体)に熱を加えて結晶化させることにより、LLZ−Mg,Sr粉末を得る工程(S170)と、
を備える。
このように、第1実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、リチウムイオン伝導性の非常に高い固体電解質粉末であるLLZ−Mg,Sr粉末を得ることができる。また、第1実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、液相法であるゾルゲル法を採用することにより、固相法による場合と比較して、非常に微小な粒子(例えば、数nm〜数百nm程度の粒径の粒子)から構成されたLLZ−Mg,Sr粉末を製造することができる。そのため、例えば、製造されたLLZ−Mg,Sr粉末を用いて全固体電池の電極や固体電解質層を構成すると、LLZ−Mg,Sr粉末の充填密度を向上させることができ、その結果、電極や固体電解質層におけるリチウムイオン伝導パスを効果的に増やすことができ、全固体電池のリチウムイオン伝導体を向上させることができる。また、第1実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、SrとMgとを含有する前駆体(Li−Mg−Sr含有前駆体)を作製する際に、Sr金属とMg金属と両親媒性の溶媒とが用いられるため、SrおよびMgが溶媒にキレート化しやすくなり、その結果、SrおよびMgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができる。また、第1実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、Zr含有前駆体およびLa含有前駆体が作製された後、両者を混合することによりZr−La含有前駆体が作製される。そのため、この混合の際に、金属イオン(Zr2+)キレート錯体と結合しているO−R(Rは炭化水素)結合に、Laイオンおよび水が存在することとなり、
O−R + La(NO) + HO → O−La + R−OH +HNO
のような加水分解反応が起こり、Zrキレート錯体中にLaが取り込まれ、LaとZrとの骨格形成がしやすくなり、その結果、Laがキレート錯体中に取り込まれないことによるLa単体での析出の発生を抑制することができ、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができる。なお、Zr含有前駆体およびLa含有前駆体を作製した後、両者を混合することによりZr−La含有前駆体を作製するのではなく、例えば、Zr源とLa源と溶媒とを混合していきなりZr−La含有前駆体を作製すると、Zrのキレートが生成されず、目的とする化学物質が得られないため(目的の比率とは異なる状態で凝集したり沈殿物が生成されたりするため)、好ましくない。
なお、本実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法において、SrとMgとを含有する前駆体(Li−Mg−Sr含有前駆体)を作製する際に、両親媒性の溶媒として2−メトキシエタノールが用いられることが好ましい。両親媒性の溶媒として2−メトキシエタノールが用いられると、置換元素であるSrおよびMgを溶媒に効果的にキレート化することができ、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を効率的に作製することができる。
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態におけるLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下では、第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法における各工程の内、上述した第1実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法における各工程と同一内容の工程については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法では、上述した第1実施形態と同様に、Zr含有前駆体およびLa含有前駆体を作製し(S110,S120)、両者を混合することにより、Zr−La含有前駆体を作製する(S130)。
第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法では、Liを少なくとも含有する前駆体(以下、「Li含有前駆体」という。)を作製する(S141)。Li含有前駆体は、例えば、Li金属と、溶媒とを用いて作製される。溶媒としては、例えば、2−メトキシエタノール等が用いられる。溶媒中にLi金属を添加し、還流(例えば、115℃〜135℃、3時間〜7時間)を行うことにより、Li含有前駆体を作製することができる。
また、Mgを少なくとも含有する前駆体(以下、「Mg含有前駆体」という。)を作製する(S142)。Mg含有前駆体は、例えば、Mg金属と、両親媒性の溶媒とを用いて作製される。両親媒性の溶媒としては、例えば、2−メトキシエタノールや2−エトキシエタノール、モノエタノールエミン、ジエタノールアミン等が用いられる。両親媒性の溶媒中にMg金属を添加し、還流(例えば、115℃〜135℃、3時間〜7時間)を行うことにより、Mg含有前駆体を作製することができる。Mg含有前駆体は、特許請求の範囲における第7の前駆体に相当し、Mg含有前駆体を作製するためのS142の工程は、特許請求の範囲における第7の前駆体を作製する工程に相当する。
また、Srを少なくとも含有する前駆体(以下、「Sr含有前駆体」という。)を作製する(S143)。Sr含有前駆体は、例えば、Sr金属と、両親媒性の溶媒とを用いて作製される。両親媒性の溶媒としては、例えば、2−メトキシエタノールや2−エトキシエタノール、モノエタノールエミン、ジエタノールアミン等が用いられる。両親媒性の溶媒中にSr金属を添加し、還流(例えば、115℃〜135℃、3時間〜7時間)を行うことにより、Sr含有前駆体を作製することができる。Sr含有前駆体は、特許請求の範囲における第4の前駆体に相当し、Sr含有前駆体を作製するためのS143の工程は、特許請求の範囲における第4の前駆体を作製する工程に相当する。
Zr−La含有前駆体とLi含有前駆体とMg含有前駆体とSr含有前駆体とを作製した後、それらを混合することにより、前駆体を作製する(S152)。このとき作製される前駆体は、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前駆体である。以下、この前駆体を、「乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体」という。例えば、Zr−La含有前駆体とLi含有前駆体とMg含有前駆体とSr含有前駆体とを混合し、攪拌(例えば、3℃〜7℃、10時間〜14時間)を行うことにより、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製することができる。なお、本実施形態では、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製した後、還流(例えば、115℃〜135℃、1時間〜3時間)を行う。乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体は、特許請求の範囲における第5の前駆体に相当し、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製するためのS152の工程は、特許請求の範囲における第5の前駆体を作製する工程に相当する。
その後は、第1実施形態と同様に、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を乾燥させることにより、乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体を作製し(S160)、乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体に熱を加えて結晶化させることにより、LLZ−Mg,Srの粉末を作製する(S170)。
以上説明したように、第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末(LiとLaとZrとSrとMgとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末)の製造方法は、ゾルゲル法によるものである。具体的には、該製造方法は、
Zrを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Zrを少なくとも含有する第1の前駆体(Zr含有前駆体)を作製する工程(S110)と、
Laを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Laを少なくとも含有する第2の前駆体(La含有前駆体)を作製する工程(S120)と、
Zr含有前駆体とLa含有前駆体とを混合して、ZrとLaとを少なくとも含有する第3の前駆体(Zr−La含有前駆体)を作製する工程(S130)と、
Sr金属と両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、Srを少なくとも含有する第4の前駆体(Sr含有前駆体)を作製する工程(S143)と、
Mg金属と両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、Mgを少なくとも含有する第7の前駆体(Mg含有前駆体)を作製する工程(S142)と、
第3の前駆体(Zr−La含有前駆体)と第4の前駆体(Sr含有前駆体)と第7の前駆体(Mg含有前駆体)とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとMgとSrとを少なくとも含有する第5の前駆体(乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体)を作製する工程(S152)と、
第5の前駆体(乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体)を乾燥させることにより、第6の前駆体(乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体)を作製する工程(S160)と、
第6の前駆体(乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体)に熱を加えて結晶化させることにより、LLZ−Mg,Sr粉末を得る工程(S170)と、
を備える。
このように、第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、上述した第1実施形態と同様に、リチウムイオン伝導性の非常に高い固体電解質粉末であるLLZ−Mg,Sr粉末を得ることができる。また、第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、上述した第1実施形態と同様に、液相法であるゾルゲル法を採用することにより、固相法による場合と比較して、非常に微小な粒子(例えば、数nm〜数百nm程度の粒径の粒子)から構成されたLLZ−Mg,Sr粉末を製造することができる。そのため、例えば、製造されたLLZ−Mg,Sr粉末を用いて全固体電池の電極や固体電解質層を構成すると、LLZ−Mg,Sr粉末の充填密度を向上させることができ、その結果、電極や固体電解質層におけるリチウムイオン伝導パスを効果的に増やすことができ、全固体電池のリチウムイオン伝導体を向上させることができる。また、第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、Srを含有する前駆体(Sr含有前駆体)およびMgを含有する前駆体(Mg含有前駆体)を作製する際に、それぞれSr金属およびMg金属と、両親媒性の溶媒とが用いられるため、SrおよびMgが溶媒にキレート化しやすくなり、その結果、SrおよびMgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができる。また、第2実施形態のLLZ−Mg,Sr粉末の製造方法によれば、Zr含有前駆体およびLa含有前駆体が作製された後、両者を混合することによりZr−La含有前駆体が作製される。そのため、この混合の際に、金属イオン(Zr2+)キレート錯体と結合しているO−R(Rは炭化水素)結合に、Laイオンおよび水が存在することとなり、
O−R + La(NO) + HO → O−La + R−OH +HNO
のような加水分解反応が起こり、Zrキレート錯体中にLaが取り込まれ、LaとZrとの骨格形成がしやすくなり、その結果、Laがキレート錯体中に取り込まれないことによるLa単体での析出の発生を抑制することができ、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができる。
C.性能評価:
リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法について、性能評価を行った。図5は、性能評価の結果を示す説明図である。図5に示すように、本性能評価では、3つの異なる製造方法によりリチウムイオン伝導性固体電解質粉末のサンプル(S1〜S3)が作製された。各サンプルの製造方法は、以下に詳述するように、使用する溶媒、Mg源および、Sr源の組合せが互いに異なる。
サンプルS1の製造方法は、以下の通りである。Zrを含有する材料としてのZr(OCに、溶媒としての1−ブタノールを加え、還流(118℃、3時間)を行った。還流後の溶液に酢酸を加えて攪拌(室温、2時間)を行い、さらに水を加えて攪拌(5℃、2時間)を行うことにより、Zr含有前駆体を作製した。また、Laを含有する材料としてのLa(NO・6HOに対して乾燥処理(150℃、2時間)を行った後、溶媒としての1−ブタノールを加え、攪拌(室温、2時間)を行うことにより、La含有前駆体を作製した。作製したZr含有前駆体とLa含有前駆体とを混合し、攪拌(60℃、2時間)を行うことにより、Zr−La含有前駆体を作製した。
また、Li源としてのLi金属と、Mg源としてのMg金属と、Sr源としてのSr金属とを、両親媒性の溶媒である2−メトキシエタノール中に添加し、還流(125℃、5時間)を行うことにより、Li−Mg−Sr含有前駆体を作製した。この際、Li源(Li金属)を、LLZの組成比よりも20%過剰に加えた。
作製されたZr−La含有前駆体とLi−Mg−Sr含有前駆体とを混合し、攪拌(5℃、12時間)を行うことにより、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製した。この乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体に対して還流(125℃、2時間)を行った。その後、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体に対して乾燥処理(120℃、2時間×3回、および、170℃、1時間×1回)を行った。最後に、乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体に対する熱処理(750℃、3時間)を行って結晶化させることにより、LLZ−Mg,Srの粉末を得た。
また、サンプルS2の製造方法は、サンプルS1の製造方法と比較して、Li−Mg−Sr含有前駆体を作製する際に、両親媒性の溶媒ではない1−ブタノールを用いた点、Mg源としてMg金属ではなくMg(OH)を用いた点、および、Sr源としてSr金属ではなくSr(CHCOO)を用いた点が異なり、その他の点はサンプルS1の製造方法と同様である。
また、サンプルS3の製造方法は、サンプルS1の製造方法と比較して、Li−Mg−Sr含有前駆体を作製する際に、Mg源としてMg金属ではなくMg(OH)を用いた点、および、Sr源としてSr金属ではなくSr(CHCOO)を用いた点が異なり、その他の点はサンプルS1の製造方法と同様である。
上述した方法により作製されたサンプルS2の主結晶相をXRDで同定したところ、LaZr等の不純物相が確認された。また、サンプルS2の作製の際には、ゾル化が促進され、沈殿と上澄みとの分離が確認された。サンプルS2の作製の際には、両親媒性の溶媒ではない1−ブタノールが用いられ、Mg源としてMg金属ではなくMg(OH)が用いられ、かつ、Sr源としてSr金属ではなくSr(CHCOO)が用いられたため、SrおよびMgが溶媒に良好にキレート化せず、その結果、ゾル化が促進されると共に、LLZ立方晶が良好に形成されなかったものと考えられる。
また、上述した方法により作製されたサンプルS3の主結晶相をXRDで同定したところ、LLZ立方晶が確認されたが、LaZrやSrZrO等の不純物相も確認された。サンプルS3の作製の際には、Mg源としてMg金属ではなくMg(OH)が用いられ、かつ、Sr源としてSr金属ではなくSr(CHCOO)が用いられたため、SrおよびMgが溶媒に良好にキレート化せず、その結果、SrおよびMgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物(例えば、LaZrや)が形成され、LLZ立方晶が良好に形成されなかったものと考えられる。
これに対し、上述した方法により作製されたサンプルS1は、粒径が300nm程度の微粒子であった。また、作製されたサンプルS1の主結晶相をXRDで同定したところ、LLZ立方晶が確認され、不純物相は確認されなかった。サンプルS1の作製の際には、両親媒性の溶媒である2−メトキシエタノールが用いられ、Mg源としてMg金属が用いられ、かつ、Sr源としてSr金属が用いられたため、SrおよびMgが溶媒に良好にキレート化し、その結果、SrおよびMgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温において立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができたものと考えられる。
この性能評価結果によれば、ゾルゲル法によるLLZ−Mg,Sr粉末(LiとLaとZrとSrとMgとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末)の製造方法として、Zrを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Zrを少なくとも含有する第1の前駆体(Zr含有前駆体)を作製する工程と、Laを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Laを少なくとも含有する第2の前駆体(La含有前駆体)を作製する工程と、Zr含有前駆体とLa含有前駆体とを混合して、ZrとLaとを少なくとも含有する第3の前駆体(Zr−La含有前駆体)を作製する工程と、Sr金属とMg金属と両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、SrとMgとを少なくとも含有する第4の前駆体(Li−Mg−Sr含有前駆体)を作製する工程と、第3の前駆体(Zr−La含有前駆体)と第4の前駆体(Li−Mg−Sr含有前駆体)とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する第5の前駆体(乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体)を作製する工程と、第5の前駆体(乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体)を乾燥させることにより、第6の前駆体(乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体)を作製する工程と、第6の前駆体(乾燥後LLZ−Mg,Sr前駆体)に熱を加えて結晶化させることにより、LLZ−Mg,Sr粉末を得る工程とを備える製造方法を採用すれば、微小な粒子から構成されたLLZ−Mg,Sr粉末を製造することができると共に、微粒子化の実現のために液相法であるゾルゲル法を採用しても、室温において立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができることが確認されたと言える。
D.LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の好ましい態様:
上述したように、本実施形態におけるリチウムイオン伝導体は、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末(LiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末)を含んでいる。
LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末としては、Mgを含み、含有される各元素がモル比で下記の式(1)〜(3)を満たすものを採用することが好ましい。
(1)1.33≦Li/(La+Sr)≦3
(2)0<Mg/(La+Sr)≦0.5
(3)0<Sr/(La+Sr)≦0.67
また、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末としては、Mgを含み、含有される各元素がモル比で下記の式(1´)〜(3´)を満たすものを採用することがより好ましい。
(1´)2.0≦Li/(La+Sr)≦2.5
(2´)0.01≦Mg/(La+Sr)≦0.14
(3´)0.04≦Sr/(La+Sr)≦0.17
上述の事項を換言すると、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、次の(a)を満たすことがより好ましく、(b)を満たすことがさらに好ましいと言える。
(a)Mgを含み、各元素の含有量がモル比で、1.33≦Li/(La+Sr)≦3、0<Mg/(La+Sr)≦0.5、かつ0<Sr/(La+Sr)≦0.67 を満たす。
(b)Mgを含み、各元素の含有量がモル比で、2.0≦Li/(La+Sr)≦2.5、0.01≦Mg/(La+Sr)≦0.14、かつ0.04≦Sr/(La+Sr)≦0.17 を満たす。
LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、上記(a)を満たすとき、良好なリチウムイオン伝導性を示す。そのメカニズムは明らかではないが、以下のように推定される。LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末において、LaとSrとの和に対するLiのモル比が1.33未満または3を超えると、ガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末だけでなく、別の金属酸化物が形成されやすくなる。別の金属酸化物の含有量が大きくなるほど、相対的にガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の含有量が小さくなり、また別の金属酸化物のリチウムイオン伝導性は低いので、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末のリチウムイオン伝導性が低下する。また、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末におけるMgの含有量が多くなるほど、Liサイトに多くのMgが配置されることによってLiサイトに多くの空孔が生じ、リチウムイオン伝導性が向上するが、LaとSrとの和に対するMgのモル比が0.5を超えると、Mgを含有する別の金属酸化物が形成されやすくなる。このMgを含有する別の金属酸化物の含有量が大きくなるほど、相対的にガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の含有量が小さくなる。Mgを含有する別の金属酸化物のリチウムイオン伝導性は低いので、LaとSrとの和に対するMgのモル比が0.5を超えると、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末のリチウムイオン伝導性が低下する。また、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末におけるSrの含有量が多くなるほどLaサイトに多くのSrが配置され、格子ひずみが大きくなり、かつLaとSrとの電荷の違いにより自由なLiイオンが増加し、リチウムイオン伝導性が向上するが、LaとSrとの和に対するSrのモル比が0.67を超えると、Srを含有する別の金属酸化物が形成されやすくなる。このSrを含有する別の金属酸化物の含有量が大きくなるほど、相対的にガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の含有量が小さくなり、またSrを含有する別の金属酸化物のリチウムイオン伝導性は低いので、LaとSrとの和に対するSrのモル比が0.67を超えると、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末のリチウムイオン伝導率が低下する。
また、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末が上記(b)を満たすと、非常に高いリチウムイオン伝導性が得られ、また、高い相対密度を有するリチウムイオン伝導体固体電解質粉末が得られる点から好ましい。
なお、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、Zrを、モル比で以下の式(4)を満たすように含むことが好ましい。Zrを該範囲で含有することにより、ガーネット型結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質粉末が得られやすくなる。
(4)0.33≦Zr/(La+Sr)≦1
E.変形例:
本明細書で開示される技術は、上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における全固体電池102の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、リチウムイオン伝導体が、固体電解質層112と正極114と負極116とのすべてに含まれているが、該リチウムイオン伝導体が、固体電解質層112と正極114と負極116との少なくとも1つに含まれているとしてもよい。
また、上記実施形態におけるLLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末(例えば、LLZ−Mg,Sr)の製造方法や全固体電池102の製造方法は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態におけるLLZ−Mg,Srの製造方法では、Sr源としてSr金属が用いられているが、Sr源としてSr含有金属アルコキシドが用いられてもよい。Sr源としてSr含有金属アルコキシドが用いられても、Srが溶媒にキレート化しやすくなり、Srが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができる。同様に、上記実施形態におけるLLZ−Mg,Srの製造方法では、Mg源としてMg金属が用いられているが、Mg源としてMg含有金属アルコキシドが用いられてもよい。Mg源としてMg含有金属アルコキシドが用いられても、Mgが溶媒にキレート化しやすくなり、Mgが他の元素(例えばZr)と結合して酸化物を形成することが抑制され、室温で立方晶をとるLLZ−Mg,Sr粉末を作製することができる。ただし、Sr源および/またはMg源として、Sr金属および/またはMg金属が用いられると、Srおよび/またはMgが溶媒によりキレート化しやすくなるため、より好ましい。
また、上記第2実施形態におけるLLZ−Mg,Srの製造方法では、Li含有前駆体とMg含有前駆体とSr含有前駆体とを個別に作製した後、これらをZr−La含有前駆体に混合することによって乾燥前LLZ−Mg,Sr前駆体を作製しているが、LiとMgとSrとの内、1つを含む前駆体(例えば、Li含有前駆体)を個別に作製すると共に、残りの2つの両方を含む前駆体(例えば、Mg−Sr含有前駆体)を直接的に作製し、両者を混合した後にZr−La含有前駆体に混合したり、両者を直接的にZr−La含有前駆体に混合したりしてもよい。
また、上記実施形態では、LLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の1つであるLLZ−Mg,Srを例にとって、その製造方法を説明したが、本明細書に開示される技術は、LLZ−Mg,Sr以外の他のLLZ−Sr系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法にも同様に適用可能である。
また、本明細書に開示される技術は、全固体電池102を構成する固体電解質層や電極に限られず、他の蓄電デバイス(例えば、リチウム空気電池やリチウムフロー電池、固体キャパシタ等)を構成する固体電解質層や電極にも同様に適用可能である。
102:全固体リチウムイオン二次電池 110:電池本体 112:固体電解質層 114:正極 116:負極 154:正極側集電部材 156:負極側集電部材 202:リチウムイオン伝導体 204:リチウムイオン伝導体 206:リチウムイオン伝導体 214:正極活物質 216:負極活物質

Claims (4)

  1. ゾルゲル法によるリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、
    前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、LiとLaとZrとSrとOとを少なくとも含有するガーネット型結晶構造を有し、
    前記製造方法は、
    Zrを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Zrを少なくとも含有する第1の前駆体を作製する工程と、
    Laを含有する材料と溶媒とを少なくとも用いて、Laを少なくとも含有する第2の前駆体を作製する工程と、
    前記第1の前駆体と前記第2の前駆体とを混合して、ZrとLaとを少なくとも含有する第3の前駆体を作製する工程と、
    Sr金属またはSr含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、Srを少なくとも含有する第4の前駆体を作製する工程と、
    前記第3の前駆体と前記第4の前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとを少なくとも含有する第5の前駆体を作製する工程と、
    前記第5の前駆体を乾燥させることにより、第6の前駆体を作製する工程と、
    前記第6の前駆体に熱を加えて結晶化させることにより、前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を得る工程と、
    を備える、
    ことを特徴とするリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、
    前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、さらにMgを含有し、
    前記第4の前駆体を作製する工程は、Sr金属またはSr含有金属アルコキシドとMg金属またはMg含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、SrとMgとを少なくとも含有する前記第4の前駆体を作製する工程であり、
    前記第5の前駆体を作製する工程は、前記第3の前駆体と前記第4の前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前記第5の前駆体を作製する工程である、
    ことを特徴とするリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法。
  3. 請求項1に記載のリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、
    前記リチウムイオン伝導性固体電解質粉末は、さらにMgを含有し、
    前記製造方法は、さらに、Mg金属またはMg含有金属アルコキシドと両親媒性の溶媒とを少なくとも用いて、Mgを少なくとも含有する第7の前駆体を作製する工程を備え、
    前記第5の前駆体を作製する工程は、前記第3の前駆体と前記第4の前駆体と前記第7の前駆体とを少なくとも用いて、LiとLaとZrとSrとMgとを少なくとも含有する前記第5の前駆体を作製する工程である、
    ことを特徴とするリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法において、
    前記両親媒性の溶媒は、2−メトキシエタノールである、
    ことを特徴とするリチウムイオン伝導性固体電解質粉末の製造方法。
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