JP2021146682A - ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからの熱可塑性樹脂フィルムの回収方法及び回収装置 - Google Patents

ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからの熱可塑性樹脂フィルムの回収方法及び回収装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムから簡便かつ効率的にポリ塩化ビニリデンを分離し、熱可塑性樹脂フィルムを再生して回収する方法ならびにそのために好適な装置を提供する。【解決手段】ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムをステップ1〜ステップ4の順に処理し、該熱可塑性樹脂フィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを回収することを特徴とする回収方法であり、コーティング層を有機溶剤に溶解するステップ1、熱可塑性樹脂フィルムから有機溶剤を掻き取るステップ2、熱可塑性樹脂フィルムを乾燥するステップ3、熱可塑性樹脂フィルムを巻き取り回収するステップ4を含む。そのための装置は、巻き出しローラー、溶解槽、有機溶剤の掻き取り手段、乾燥槽、巻き取りローラーを有するものである。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを再生、回収する方法及びそのための装置に関する。
さらに詳しくは、ポリ塩化ビニリデンをコーティングしたフィルムを裁断したり粉砕したりすることなく連続的に処理して、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去することにより、熱可塑性樹脂フィルムを再生、回収する方法及びそのための装置に関する。
ポリ塩化ビニリデンを、ポリアミドやポリプロピレンあるいはポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムにコーティングしたフィルムは、所謂Kコートフィルムとして、その優れた酸素バリア性や水蒸気バリア性から各種の食品包装用フィルムとして使用されている。これらのフィルムは通常ロール状に巻き取られた形状で製造されるが、その製造時において、両端を切り落とすことによるトリミングロス、検査で不合格となった製品、あるいは、長期間在庫として保管されていた製品(長在品)等が発生する場合がある。こうしたトリミングロスや検査不合格品、長在品の廃棄処理は、塩素系のポリ塩化ビニリデンがコーティングされているため焼却処理処分ができず、多くの場合埋め立て処理が行われている。しかしながら、廃棄物削減や資源の有効利用の観点から、熱可塑性樹脂フィルムとポリ塩化ビニリデンを分離、回収して再利用することが、より一層求められるようになってきており、簡便にかつ効率的に回収する方法が望まれている。
ポリ塩化ビニリデンの層を有する積層フィルムやポリ塩化ビニリデンをコーティングしたフィルムから、各樹脂成分を分離・回収する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、ポリ塩化ビニリデン樹脂積層成形物を粗粉砕、次いで微粉砕した後、界面活性剤含有水溶液中で処理して、ポリ塩化ビニリデン樹脂を沈降・分離する方法が開示されている。
また、特許文献2には、塩化ビニリデン樹脂塗布層を有するオレフィン系樹脂基体を、界面活性剤濃度0.1wt%以上の水溶液中で、100℃以上樹脂基体が溶融する温度より低い温度で撹拌処理する方法が開示されている。実施例1には、厚さ5μmのポリ塩化ビニリデンがコーティングされた厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを約5mm角に裁断し、界面活性剤含有水溶液中で撹拌して、ポリ塩化ビニリデンを沈降させて分離し、上部に浮遊するポリプロピレンを回収することが開示されている。
特許文献3には、接着剤、コーティング剤、柔軟剤、粘着剤、防曇剤、安定剤、殺菌剤等の添加剤を塗布あるいは含有する樹脂基体を石油系溶剤中で、100℃以下の温度で撹拌処理し、添加剤を溶解除去し、樹脂基体と添加剤を分離し回収する方法が開示されている。実施例には、厚さ5μmのコーティング剤樹脂がコーティングされた厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを約5mm角に裁断し、灯油中で撹拌処理後ろ過し、ポリプロピレンを回収すると共に、濾液からは濃縮機によりコーティング剤樹脂を回収し、溶剤の灯油を再利用することが開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3の方法は、いずれも粉砕あるいは裁断したコーティングフィルムを界面活性剤水溶液や溶剤中で撹拌処理する方法であり、沈降あるいは浮遊したフィルムや樹脂をろ過で取り出す必要があるため、操作が煩雑となる。またバッチ式で処理するため、多量のコーティングフィルムを処理するには効率的な方法とは言えない。
一方、積層シートやフィルムを破砕や裁断することなく、シート状やフィルム状で連続的に分離、回収する方法として、特許文献4の実施例には、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の接着樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を共押出成形した5層の多層シート(PP/EVA/PVDC/EVA/PP)を加熱ロールで加熱し、次いで回転ロールを通すことにより、PP、EVA/PVDC/EVA、PPの3層に分離する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、多層シートを加熱することで接着樹脂と被接着樹脂間の接着強度が剥離可能な強度まで低下することを利用する方法であるため、接着樹脂を用いずに、ポリ塩化ビニリデンを熱可塑性樹脂フィルムに直接塗布したコーティングフィルムに対しては適用することができない。
特開平5−261735号公報 特開平9−279066号公報 特開2001−123004号公報 特開平2−131907号公報
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムから簡便かつ効率的にポリ塩化ビニリデンを分離し、熱可塑性樹脂フィルムを再生して回収する方法、並びに、そのために好適な装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムを、破砕や裁断することなく、ロール等に巻き取られた長尺状の状態のまま、有機溶剤を貯留した溶解槽中を連続的に通過させてポリ塩化ビニリデンを溶解除去し、熱可塑性樹脂フィルムを再生し、乾燥後、連続的に巻き取ることで、簡便かつ効率的に熱可塑性樹脂フィルムを回収できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムを、ステップ1〜ステップ4の順に処理することで、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを回収することを特徴とする回収方法を提供する。
ステップ1:ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムから、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を有機溶剤に溶解するステップ
ステップ2:有機溶剤中を通過した熱可塑性樹脂フィルムから有機溶剤を掻き取るステップ
ステップ3:熱可塑性樹脂フィルムを乾燥するステップ
ステップ4:熱可塑性樹脂フィルムを巻き取り、回収するステップ
また、本発明は、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを回収する回収装置であって、
(A)巻き出しローラー、
(B)有機溶剤の貯留が可能で、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムの下層面に接触することが可能なスクレーパーを底部に配置した溶解槽、
(C)有機溶剤中から引き揚げられたフィルムに付着した有機溶剤を掻き取る手段、
(D)乾燥槽、
(E)巻き取りローラー、
を有することを特徴とする回収装置を提供する。
本発明のポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからの熱可塑性樹脂フィルムの回収方法及び回収装置によれば、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムを破砕あるいは裁断する必要がなく、また、ポリ塩化ビニリデンを除去した後の熱可塑性樹脂フィルムを濾過等により分離する必要もないので、簡便な操作で熱可塑性樹脂フィルムからポリ塩化ビニリデンを分離し、熱可塑性樹脂フィルムを再生、回収することができる。さらに、連続的に処理することができるので、大量のポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムから効率的に熱可塑性樹脂フィルムを回収することができる。
本発明の回収装置の一実施形態を示す図である。
本発明のポリ塩化ビニリデンコーティングフィルム(以下、PVDCコートフィルムと称する。)から熱可塑性樹脂フィルムを回収する回収方法の各ステップについて、以下詳細に説明する。本発明の回収方法は、PVDCコートフィルムを連続的に処理する方法であり、大量のPVDCコートフィルムを簡便に効率良く処理することが可能であるため、ロール等に巻き取られた長尺状のPVDCコートフィルムに適用した場合に最も効果的である。
(ステップ1)
当該ステップ1は、PVDCコートフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を有機溶剤に溶解するステップである。例えば、巻き出しローラーにセットしたロール状のPVDCコートフィルムを巻き出して、有機溶剤を貯留し底部にスクレーパーを設置した溶解槽に導入し、溶解槽に貯留した有機溶剤中を通過させる。また、PVDCコートフィルムは、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を下層側にして溶解槽中に送り出し、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層をスクレーパーと接触させながら有機溶剤中を通過させるのがよい。こうすることで、有機溶剤を吸収して膨潤しゲル状態になったポリ塩化ビニリデンが掻き取られるので、効率的にポリ塩化ビニリデンを分離することができる。
使用される有機溶剤は、ポリ塩化ビニリデンを溶解するが、熱可塑性樹脂フィルムを溶解しない有機溶剤であれば、特に限定されない。熱可塑性樹脂フィルムの種類によって好適な有機溶剤は異なるが、例えば、熱可塑性樹脂フィルムがポリアミド樹脂フィルムの場合には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素類等を用いることができる。中でも、ポリ塩化ビニリデンに対する溶解性に優れていることから、テトラヒドロフランを用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、PVDCコートフィルムのベースフィルム用樹脂、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、その中でもポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン6)樹脂、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)樹脂、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)樹脂、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)樹脂、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)樹脂、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)樹脂、ポリドデカンアミド(ナイロン12)樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T)樹脂、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6I)樹脂、及びこれらの混合物、あるいはこれらのナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン樹脂(ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6))等が挙げられる。
中でも融点が200℃以上のナイロン樹脂が耐熱性の点で好ましく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン66/6Iコポリマー、ナイロン66/6I/6コポリマーが挙げられる。さらには機械特性の点で、ナイロン6、ナイロン66が好ましい。
PVDCコートフィルムを浸漬する有機溶剤は、加温しても加温しなくてもよい。加温して浸漬時の温度を高くするほどポリ塩化ビニリデンを溶解し易くなるが、温度が高くなると有機溶剤が揮発し易くなり作業環境が悪化するので、加温する場合の温度は、使用する有機溶剤の沸点や揮発性を考慮して適宜選定することが望ましい。例えば、有機溶剤としてテトラヒドロフランを用いる場合は、揮散による作業環境の悪化を考慮すると室温〜40℃程度が好ましい。
PVDCコートフィルムを連続して有機溶剤に浸漬してポリ塩化ビニリデンを溶解除去する場合、浸漬処理の進行とともに、有機溶剤中のポリ塩化ビニリデン濃度が増加するので、浸漬処理終了段階では、フィルムに付着している有機溶剤中に含まれるポリ塩化ビニリデンの量も増加する。その結果、溶解槽を1基だけ用いて浸漬処理を一度だけ実施する場合には、処理の進行につれて回収した熱可塑性樹脂フィルム上にポリ塩化ビニリデンが残存することとなり、熱可塑性樹脂フィルムを再利用する場合に問題となることがある。
回収した熱可塑性樹脂フィルム上にポリ塩化ビニリデンが残存するのを防ぐためには、PVDCコートフィルムを複数回、有機溶剤中に浸漬することが望ましい。そのため、有機溶剤を貯留した溶解槽を複数設置し、PVDCコートフィルムを複数の溶解槽に順次通過させ、各溶解槽毎に貯留した有機溶剤中に浸漬させるのがよい。溶解槽を経由するにしたがって、PVDCコートフィルム中のポリ塩化ビニリデンの量が減少し、溶解槽の有機溶剤中に含まれるポリ塩化ビニリデンの濃度が段階的に低下するため、浸漬処理が終了した段階での熱可塑性樹脂フィルムに付着した有機溶剤由来のポリ塩化ビニリデンを極力減らすことができる。
PVDCコートフィルムを有機溶剤中に浸漬させる回数(すなわち、溶解槽の基数)は、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層の厚みや処理速度等によって適宜選定することができる。好ましい回数は2〜5回(基)であり、さらに好ましい浸漬回数(溶解槽の基数)は3〜4回(基)である。浸漬回数が多くなると、有機溶剤の消費量が増えるため経済性が低下し、浸漬回数が少ないと、ポリ塩化ビニリデンが残存することにより乾燥後のフィルムが黄色に変色する。
各溶解槽を通過するにしたがってPVDCコートフィルムに残存するポリ塩化ビニリデンの量が減少するので、各溶解槽での浸漬時間を順次短くすることができる。各溶解槽での浸漬時間が短くなることで、接続する溶解槽の大きさ(長さ)を順次小型化することが可能となる。溶解槽の槽長さが短くなることで、設備の簡素化ならびに有機溶剤の使用量の削減を図ることができる。
複数の溶解槽には夫々その底部にスクレーパーを設置し、スクレーパーをPVDCコートフィルムのポリ塩化ビニリデンコーティング層側と接触させ、有機溶剤中に溶け出しあるいは有機溶剤を吸収して膨潤したポリ塩化ビニリデンをできるだけ掻き取るようにすることが好ましい。
(ステップ2)
当該ステップ2は、有機溶剤中を通過しポリ塩化ビニリデンのコーティング層が除去された熱可塑性樹脂フィルムから、付着した有機溶剤を掻き取るステップであり、熱可塑性樹脂フィルムの片面もしくは両面をスクレーパーと接触させることにより行う。スクレーパーは複数用いることが好ましく、直列または対向する位置に設置する。なお、本発明において、スクレーパーは、ゴム、樹脂、金属等で作製することができる。
有機溶剤によるポリ塩化ビニリデンの溶解処理を複数回行うことで、最終的に有機溶剤中から引き出された熱可塑性樹脂フィルム上に付着した有機溶剤に含まれるポリ塩化ビニリデンは減少するが、付着した有機溶剤を掻き取ることで、残存するポリ塩化ビニリデンをさらに減らすことが可能となる。また、最終溶解槽のスクレーパーにて有機溶剤の再付着を完全に無くすことにより、次のステップ3で熱可塑性樹脂フィルムを乾燥させる際の負荷を減少させ、乾燥効率を高めることができる。
このステップ2は、ステップ1とステップ1の間に行ってもよい。すなわち、ステップ1において複数の溶解槽を通過させる際に、有機溶剤中を通過した熱可塑性樹脂フィルムから有機溶剤を掻き取るステップを実施する。これにより、熱可塑性樹脂フィルムに付着している、有機溶剤で膨潤したポリ塩化ビニリデンを掻き取ることで、次のステップ1でポリ塩化ビニリデンを効率よく溶解することができる。
(ステップ3)
当該ステップ3は、ポリ塩化ビニリデンを除去した熱可塑性樹脂フィルムを乾燥するステップであり、熱可塑性樹脂フィルムを乾燥槽に導入して乾燥する。
乾燥手段としては、熱風乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、赤外線や遠赤外線による乾燥等を用いることができ、複数の乾燥手段を組み合せることもできる。簡便性及び迅速性の点より、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は20〜150℃、好ましくは50〜80℃である。
(ステップ4)
当該ステップ4は、PVDCコートフィルムからポリ塩化ビニリデンコーティング層を除去し、再生した熱可塑性樹脂フィルムを回収するステップである。紙管等をセットした巻き取りローラーで連続的に巻き取ることで熱可塑性樹脂フィルムを回収する。
PVDCコートフィルムは、一定の速度で溶解槽及び乾燥槽を通過して巻き取れるように、巻き取りローラーの回転速度を制御するのがよい。
長尺状のPVDCコートフィルムの巻き取り速度は、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層の厚みや使用する有機溶剤の種類あるいは有機溶剤中の浸漬温度等によって適宜選定されるが、約1〜8m/分にすることが好ましい。
回収した熱可塑性樹脂フィルムは、PVDCコートフィルムのベース樹脂、成形品等として再利用することができる。
また、回収した熱可塑性樹脂フィルムの重合度は、通常の成形加工が施せる程度であれば特に制限はないが、ポリアミド樹脂の場合、1重量%の98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2〜4の範囲のものが好ましい。
次に、本発明のPVDCコートフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを回収する回収装置について、詳細を説明する。
本発明の回収装置は、(A)巻き出しローラー(1)、(B)溶解槽(2a〜2c)、(C)掻き取り手段であるスクレーパー(30f、30g)、(D)乾燥槽(4)、及び(E)巻き取りローラー(5)が連結された一連の装置から構成されている。溶解槽は、上記したように、回収した熱可塑性樹脂フィルムへのポリ塩化ビニリデンの残存をできる限り防ぐために複数基用いることが好ましい。掻き取り手段(スクレーパー)は、最終溶解槽(3)に設置する。
本発明の回収装置について、溶解槽が3基の場合を一実施形態として図1に示す。
巻き出しローラー(1)は、ロール状に巻き取られたPVDCコートフィルムをセットするローラーであり、巻き取りローラー(5)と連動して作動し、PVDCコートフィルムを溶解槽(2a)へ送り出す。巻き出しローラー(1)と溶解槽(2a)の間にはガイドローラー(10a〜10c)が設置され、PVDCコートフィルムを溶解槽(2a)に送り込むようになっている。
3基の溶解槽(2a〜2c)ならびに最終溶解槽(3)はいずれも有機溶剤を貯留する槽であるが、巻き取りローラー側に向かうにしたがってPVDCコートフィルム上のポリ塩化ビニリデンの量が少なくなるので、それにつれて必要な有機溶剤の量が減少することから、各溶解槽及び最終溶解槽は段階的に槽長さが短くなっている。すなわち、2番目の溶解槽(2b)の長さは最初の溶解槽(2a)より短く、3番目の溶解槽(2c)は2番目の溶解槽(2b)より短くなっており、最終溶解槽(3)の長さは3番目の溶解槽(2c)より短く、最も長さの短い溶解槽となっている。
3基の溶解槽(2a〜2c)ならびに最終溶解槽の夫々の入口部及び出口部にはガイドローラー(10c〜10j)が設置されるとともに、各溶解槽及び最終溶解槽にはPVDCコートフィルムが有機溶剤中で浮き上がらないように押えるためのガイドローラー(20a〜20h)(以下、押えローラーと称する。)が夫々2基設置されている。これにより、PVDCコートフィルムが有機溶剤中に浸漬され、次の槽へ送り出すようになっている。
また、3基の溶解槽の底部には、2基の押えローラーの間にスクレーパー(30a〜30e)が設置され、スクレーパーの先端部がPVDCコートフィルムの下層面に接触するようになっている。各溶解槽に設置するスクレーパーの数は特に規定されないが、最初の溶解槽(2a)ではPVDCコートフィルム上のポリ塩化ビニリデンの量が多く、また有機溶剤に溶解するポリ塩化ビニリデンの量も多いため、複数のスクレーパー(図1では30a、30bの2基)を設置するのがよい。図1では、2番目の溶解槽(2b)にも2基のスクレーパー(30c、30d)を設置する例を示しているが、2番目の溶解槽では、最初の溶解槽(2a)に比べてPVDCコートフィルム上のポリ塩化ビニリデンの量が少なくなっているので、スクレーパーは1基でもよい。そして、3番目の溶解槽(2c)では、PVDCコートフィルム上のポリ塩化ビニリデンの量はさらに少なくなり、かつ溶解槽自体の長さも短いため、スクレーパーの設置は1基(30e)としている。
最終溶解槽(3)の底部にもスクレーパーを設けてもよいが、最終溶解槽の段階ではPVDCコートフィルム上のポリ塩化ビニリデンの量は極めて少量となっており、かつ溶解槽の長さも最も短いため、底部のスクレーパーは基本的には不要である。それよりも、最終溶解槽(3)では、出口部のガイドローラー(10j)よりさらに巻き取りローラー側に、熱可塑性樹脂フィルムの両面と接触するように2基のスクレーパー(30f、30g)を設置することが重要である。当該スクレーパーにより熱可塑性樹脂フィルム上に付着する有機溶剤を掻き取ることができるため、有機溶剤に溶解したポリ塩化ビニリデンが熱可塑性樹脂フィルム上に残存するのを防ぐことができる。
なお、図示していないが、3基の溶解槽(2a〜2c)及び最終溶解槽(3)の夫々の上面には有機溶剤を注入するための注入口、底部には有機溶剤を抜き出すための排液口が設けられている。
最終溶解槽(3)を出た熱可塑性樹脂フィルムは乾燥槽(4)に導入される。乾燥槽(4)の中は50〜60℃に設定されている。入口部のガイドローラー(10k)を経由して引き出された熱可塑性樹脂フィルムは、乾燥槽中で乾燥された後、出口部のガイドローラー(10l)を経由し、乾燥槽(4)と巻き取りローラー(5)の間に設置されたガイドローラー(10m)を経て、巻き取りローラー(5)に巻き取られる。
巻き取りローラー(5)は、PVDCコートフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去して再生した熱可塑性樹脂フィルムを、ロール状に巻き取り回収する。巻き取りローラー(5)には、ロール状に巻き取るための紙管が取り付けられるようになっており、巻き出しローラー(1)と連動しながら、巻き取り速度が一定となるように回転速度を制御することが可能となっている。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ約20μmのポリ塩化ビニリデンのコーティング層を有する長さ約500mのポリアミド6フィルムを巻き取った幅225mmのロール(以下、PVDCコートPAロール)を用いて、図1に示す装置でポリアミド6フィルムの回収試験を実施した。
PVDCコートPAロールを、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層が下層側になるようにして、図1に示す装置の巻き出しローラー(1)にセットした。
PVDCコートPAロールの先端部に、図1の装置の巻き出しローラー(1)から巻き取りローラー(5)まで届く長さを有し、PVDCコートPAロールと同じ幅のポリアミド6のみからなるナイロンフィルムを装着し、3基の溶解槽(2a〜2c)、最終溶解槽(3)及び乾燥槽(4)内を経由させて巻き取りローラー(5)に巻き付けた。次いで、3基の溶解槽及び最終溶解槽にテトラヒドロフランを、各溶解槽及び最終溶解槽の入り口部及び出口部に設置したガイドローラーに接触しない、かつ、PVDCコートPAロールが十分浸漬される深さまで充填した。
図1の装置の巻き取りローラー(5)を巻き取り速度が3m/分になるように制御しながら駆動させ、PVDCコートPAロールを巻き出しローラー(1)から引き出して、3基の溶解槽、最終溶解槽及び乾燥槽を通過させて巻き取りローラー(5)に巻き取った。なお、乾燥槽(4)では50℃の熱風を循環させた。
PVDCコートPAロールの巻き取りローラー(5)への巻き取りが終了した後、処理の最初の1/3に相当する部分、中間の1/3に相当する部分、最後の1/3に相当する部分の夫々3箇所からフィルムを切り出し、赤外線吸収スペクトルの測定ならびに加熱試験(200℃−2時間)を行った。
赤外線吸収スペクトルの測定ではいずれのフィルムからもポリ塩化ビニリデンに由来するスペクトルは観察されず、ポリアミド6樹脂に由来するスペクトルのみが観察された。
加熱試験では、ポリ塩化ビニリデンがコーティングされたポリアミド6フィルムは褐色に着色するのに対して、切り出したフィルムはいずれも透明であり、着色は認められなかった。
赤外線吸収スペクトルの測定ならびに加熱試験の結果より、PVDCコートフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層は除去され、ポリアミド6フィルムが再生されていることが判る。
本発明によれば、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムから、連続的にポリ塩化ビニリデンを除去して熱可塑性樹脂を再生することができるので、製造工程で発生するロール状に巻かれた長尺のトリミングロスや検査不合格品、長在品から効率的に熱可塑性樹脂フィルムを回収し、再利用に供することができる。
1:巻き出しローラー
2a〜2c:溶解槽
3:最終溶解槽
4:乾燥槽
5:巻き取りローラー
10a〜10m:ガイドローラー
20a〜20h:ガイドローラー(押えローラー)
30a〜30g:スクレーパー

Claims (9)

  1. ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムを、ステップ1〜ステップ4の順に処理することで、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを回収することを特徴とする回収方法。
    ステップ1:ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムから、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を有機溶剤に溶解するステップ
    ステップ2:有機溶剤中を通過した熱可塑性樹脂フィルムから有機溶剤を掻き取るステップ
    ステップ3:熱可塑性樹脂フィルムを乾燥するステップ
    ステップ4:熱可塑性樹脂フィルムを巻き取り、回収するステップ
  2. ステップ1において、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムを、有機溶剤を貯留し、底部にスクレーパーを設置した溶解槽中に、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を下層側にして有機溶剤中でスクレーパーに接触させながら通過させる、請求項1に記載の回収方法。
  3. ステップ1において複数の溶解槽を順次通過させる、請求項2に記載の回収方法。
  4. さらに、ステップ1とステップ1の間にステップ2を実施する、請求項1〜3のいずれかに記載の回収方法。
  5. 熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の回収方法。
  6. 有機溶剤がテトラヒドロフランである、請求項1〜5のいずれかに記載の回収方法。
  7. ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂フィルムを回収する回収装置であって、
    (A)巻き出しローラー、
    (B)有機溶剤の貯留が可能で、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムの下層面に接触することが可能なスクレーパーを底部に配置した溶解槽、
    (C)有機溶剤中から引き揚げられたフィルムに付着した有機溶剤を掻き取る手段、
    (D)乾燥槽、
    (E)巻き取りローラー、
    を有することを特徴とする回収装置。
  8. 溶解槽及び乾燥槽が、巻き出しローラーから供給された前記熱可塑性樹脂フィルムを順次送り出すための複数のローラーを備えている、請求項7に記載の回収装置。
  9. 溶解槽が、槽長さの異なる複数の溶解槽から構成され、かつ巻き取りローラー側に向かうにしたがって溶解槽の槽長さが短くなるように構成されている、請求項7または8に記載の回収装置。

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