以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
図1は、本実施形態のスイングコンディション計測及び伝達システム100(図3及び図7を参照)が計測対象とする球技プレイヤーの一例として、ゴルフのプレイヤー4を示したものである。同図において、ゴルフは周知のように、ゴルフ場Gでプレイヤー4がゴルフクラブ6をスイング動作して静止したボール7を打ち、ホール(図示せず)と呼ばれる穴にいかに少ない打数で入れられるかを競う球技の一種である。ここでは、プレイヤー4がゴルフクラブ6にスイング力を伝達する例えば左手首5に、端末となる腕時計型端末2が装着される。
図2は腕時計型端末2を示しており、本実施形態ではスイングコンディション計測及び伝達システム100を含む飛距離補正システム1が腕時計型端末2に組み込まれている。飛距離補正システム1は、プレイヤー4がゴルフをプレイ中に携帯可能な端末に組み込まれていればよく、例えば、プレイヤー4が所持する携帯端末3に組み込んでもよい。腕時計型端末2はユーザーであるゴルフのプレイヤー4の腕、好ましくは手首に装着されればよく、本実施形態では、図1に示すように、腕時計型端末2を右打ちのプレイヤー4の左手首5に装着しているものとする。なお、腕時計型端末2は、左打ちのプレイヤー4が使用することもでき、腕時計型端末2は、右手首に装着してもよい。
図3に示すように、腕時計型端末2は、制御手段11と、第一慣性計測部12と、GPS(Global Positioning System:地球測位システム)受信部13と、気圧計測部14と、気温計測部15と、高度計測部16と、集音部17と、送受信部18と、記憶部19と、表示部20と、操作部21と、報知部22と、を備えている。
制御手段11は、CPU(中央演算装置)を含んで構成され、記憶部19に記憶されたプログラム23に基づいて腕時計型端末2の全体を制御する。このCPUがプログラム23にしたがって演算処理を実行することにより、腕時計型端末2の各機能が実現される。プログラム23が飛距離補正プログラムに相当し、このプログラム23がコンピュータである腕時計型端末2により実行されることで、飛距離補正システム1が実現される。
第一慣性計測部12は、何れも慣性センサーとしての加速度センサー24及びジャイロセンサー25が組み込まれている。加速度センサー24は、プレイヤー4の左手首5における直交三軸方向の加速度を計測することができ、ジャイロセンサー25は、プレイヤー4の左手首5における直交三軸の各軸回りの角速度を計測することができる。第一慣性計測部12は、腕時計型端末2を装着したプレイヤー4の一連のスイング動作時における左手首5の加速度や角速度を計測する。第一慣性計測部12により計測された加速度情報や角速度情報は、プレイヤー4のスイング動作時における左手首5の加速度波形や角速度波形として、制御手段11に送出される。
GPS受信部13は、腕時計型端末2の現在位置を取得する位置計測部を構成し、複数の人工衛星28からの電波を無線で受信することで、腕時計型端末2ひいてはその腕時計型端末2を装着するプレイヤー4の三次元位置(経度、緯度及び高度)を計測し、その位置情報を制御手段11に送出するものである。なお、腕時計型端末2の現在位置を検出できるものであれば、GPS受信部13以外の位置検出装置を利用してもよい。また、人工衛星28には原子時計が搭載されている。この人工衛星28からは特定の周波数にて極めて正確な時刻信号波が発信されており、これをGPS受信部13により受信することで、腕時計型端末2の時間軸が規定される。GPS受信部13及び人工衛星28が位置計測部として機能する。
気圧計測部14は、圧力センサー29が組み込まれており、この圧力センサー29を使用して気圧を計測する、計測された気圧情報は、制御手段11に送出される。
気温計測部15は、サーミスタ(図示せず)を利用した温度センサー30が組み込まれており、この温度センサー30により気温を計測する。計測された気温情報は、制御手段11に送出される。
高度計測部16は、気圧計測部14に組み込まれた圧力センサー29を使用して、この圧力センサー29で計測した気圧の変化量を基に現在位置の海抜高度(標高)(以下、「高度」という。)を計算し、現在位置の高度情報として制御手段11に送出する。高度計測部16は、気圧変化を変換して相対的な高度を算出するものであり、気圧が気象条件により変化すると、計測値の高度も変化する。そのため、正確な高度がわかる場所で高度計測部16の高度を合わせることで、より正確な高度を計測することができる。例えば、ラウンド前にゴルフ場G内の正確な高度がわかる場所で高度を合わせることで、その後のプレイ中により正確な高度を計測することができる。なお、プレイヤー4の現在位置における高度は、GPS受信部13が受信したプレイヤー4の三次元位置(経度、緯度及び高度)の高度を用いてもよい。
集音部17は、外部の音を集め音声情報として制御手段11に送出するものであり、例えばマイクである。本実施形態の集音部17は、プレイヤー4の音声を集音することを想定しており、人間の音声が集音可能であればよい。集音部17は、後述するショット地点の状態を音声により入力する際に状態入力部として機能する。また集音部17は、第一慣性計測部12による加速度の計測開始と計測終了を音声により指示する際に、第一指示入力部として機能する。
送受信部18は、無線の通信手段を介して他の機器、例えば、携帯端末3との双方向通信を可能にするものである。そのため、腕時計型端末2は携帯端末3等と各種情報を送受信することができる。
記憶部19は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの各種記憶装置を用いて構成され、第一慣性計測部12により計測された加速度情報及び角速度情報、GPS受信部13が受信した腕時計型端末2の位置情報、気圧計測部14により計測された気圧情報、気温計測部15により計測された気温情報、高度計測部16により計測された高度情報、集音部17から入力された音声情報等の各種情報を書き込み及び読み出し可能となっている。また、記憶部19には予めゴルフ場Gのコースの地図情報26が記憶されている。地図情報26は、位置座標情報を含む2次元地図又は3次元地図であり、変更・追加・削除等の更新が可能である。
表示部20は、制御手段11からの表示制御信号を受け、腕時計型端末2の現在位置等の様々な表示を行なうものである。図2に示すように、表示部20は腕時計型端末2の本体正面に露出して設けられる液晶モジュールや液晶パネルにより構成され、これらの液晶モジュールや液晶パネルは周知のように、多数のサブ画素を格子状に配列したドットマトリクスによる表示を行なうものである。表示部20は、後述するアドバイス情報を文字や地図等により表示して提示する際に情報提示部として機能する。
操作部21は、プレイヤー4による操作を受けて、電気的な操作信号を制御手段11に送出するものである。図2に示すように、操作部21は、第1ボタン31、第2ボタン32、第3ボタン33及び第4ボタン34を備えると共に、表示部20がタッチパネルとなっており、表示部20の表面部35も操作部21として機能する。なお、操作部21としてのボタンの数は、4つに限るものではなく増減可能である。操作部21は、後述するショット地点の状態を入力する際に状態入力部として機能する。また操作部21は、第一慣性計測部12による加速度の計測開始と計測終了を音声により指示する際に、第二指示入力部として機能する。集音部17による第一指示入力部と、操作部21による第二指示入力部は、少なくともどちらか一方を備えていればよい。
報知部22は、記憶部19に記憶された情報等を音声によりプレイヤー4に報知するものであり、例えばスピーカーである。報知部22は、後述するアドバイス情報を音声により提示する際に情報提示部として機能する。また報知部22は、後述するベスト飛距離時のスイング情報を音声や振動で提示する際に、出力部として機能する。この場合の出力部は、例えば音声を出力するスピーカーおよび/または振動を発生するバイブレーターで構成される。
制御手段11は、プレイヤー4がゴルフクラブ6をスイング動作したときに、そのゴルフクラブ6のヘッドに打ち当てたボール7の実際の飛距離を算出する飛距離算出部27を備えている。図4を参照して、飛距離の具体的な算出方法を説明すると、腕時計型端末2が備える第一慣性計測部12は、集音部17や操作部21からの計測開始の指示を受けて、腕時計型端末2を装着した部位の加速度の計測を開始し、集音部17や操作部21からの計測終了の指示を受けて、当該加速度の計測を終了し、この間に腕時計型端末2を装着したプレイヤー4がスイングをした場合に相当する加速度変化を計測すると、飛距離算出部27は第一慣性計測部12からの計測結果を受けて、プレイヤー4がクラブ6をスイングしたと判断し、プレイヤー4のスイングした位置Aの位置情報をGPS受信部13により取得する。飛距離算出部27は、取得した位置Aでの最後のスイングをプレイヤー4がボール7を打った第1打と決定し、その位置情報を記憶部19に記憶する。また飛距離算出部27は、第一慣性計測部12による計測開始から計測終了までの計測結果を、位置Aの位置情報と関連付けて、位置Aでの一連のスイング動作時の加速度波形として記憶部19に記憶する。
次に、プレイヤー4が打ったボール7の到達地点まで移動し、その位置Bで飛距離算出部27は位置Aと同様に、第一慣性計測部12による加速度の計測開始から計測終了までの間に、プレイヤー4がクラブ6をスイングしたと判断した場合に、位置Bの位置情報をGPS受信部13により取得する。飛距離算出部27は、取得した位置Bでの最後のスイングをプレイヤー4がボール7を打った第2打と決定し、その位置情報を記憶部19に記憶する。また飛距離算出部27は、第一慣性計測部12による計測開始から計測終了までの計測結果を、位置Bの位置情報と関連付けて、位置Bでの一連のスイング動作時の加速度波形として記憶部19に記憶する。
そして飛距離算出部27は、第1打を打った位置情報と第2打を打った位置情報を記憶部19から読み出し、位置Aと位置Bとの直線距離を算出する。算出された直線距離は、位置Aからの第1打の飛距離として、前述した位置Aでのスイング動作時の加速度波形と関連付けて記憶部19に記憶される。以降同様に、第3打、第4打・・・での位置情報を取得し、それぞれ、位置Bからの第2打、位置Cからの第3打・・・の飛距離を算出し、位置B、位置C・・・でのスイング動作時の加速度波形と関連付けて記憶部19に記憶する。なお、本実施形態では、位置Aでの最後のスイングをプレイヤー4がボール7を打った第1打と決定しているが、プレイヤー4がショットすることを声で宣言し、その後ショットすることで、その音声を集音部17により集音し、集音した時の位置Aの位置情報をGPS受信部13により取得してもよいし、プレイヤー4が操作部21を操作し、位置Aの位置情報をGPS受信部13により取得してもよい。
また、飛距離算出部27は、プレイヤー4の打ったボール7がフェアウェイの中心位置Cから左右方向にずれているか否かを算出する。上記の第1打についての具体的な算出方法を説明すると、図4に示すように、位置Aと位置Bを結んだ直線に対して直角な直線とフェアウェイの両端との交点である左端位置L及び右端位置Rの位置情報を地図情報26から読み出す。そして、左端位置Lと右端位置Rを結んだ直線の中間点をフェアウェイの中心位置Cと決定する。その中心位置Cから位置Bが左方向に所定距離(例えば、2m)以上離れた場合には第1打を左方向にずれたと判定し、中心位置Cから位置Bが右方向に所定距離(左方向と同様に、例えば、2m)以上離れた場合には第1打を右方向にずれたと判定する。位置Bが中心位置Cから所定距離未満の場合には、第1打をずれ無しと判定する。左右方向のずれの判定は、その後の第2打、第3打・・・についても行う。なお、左右方向のずれを判定する所定距離は任意に設定可能である。また、左右方向のずれの判定結果は、クラブ6の番手情報と紐付けされて記憶部19に記憶される。複数の判定結果が蓄積されると、飛距離算出部27は左方向にずれた割合、右方向にずれた割合、ずれ無しの割合を算出し、記憶部19に記憶する。
上記の例では、プレイヤー4が打ったボール7について、コースのフェアウェイの中心位置Cから位置Bのずれを、飛距離算出部27が算出している。しかし、プレイヤー4はコースによって、左サイドや右サイドへ意図的にボール7を打っている場合がかなりあるので、別な例として、左端位置Lと右端位置Rを結んだ直線の任意の地点を基準位置と決定し、その基準位置から位置Bのずれを、飛距離算出部27で算出する構成としてもよい。基準位置は、例えばプレイヤー4が操作部21を操作し、ボール7をどの方向に打とうと意図していたのかを指示することで決定する。この場合、例えばボール7をフェアウェイの中央の方向に打とうと意図していたら、その旨を操作部21への操作で指示すれば、上述した中心位置Cが基準位置として決定される。
図3に示すように、制御手段11は、プレイヤー4の打ったボール7の実際の飛距離から、高度、気温、気圧、及びショット地点の状態を考慮した補正飛距離を算出する補正飛距離算出部36を備えている。ここで、高度による影響を考慮した補正飛距離算出部36の算出方法を、上記の第1打の飛距離の補正飛距離について説明する。高度計測部16は、位置Aにおける高度を計測し、計測した高度情報を制御手段11の補正飛距離算出部36に送出する。補正飛距離算出部36は、位置Aの高度と基準高度である海抜0mとの高低差を算出し、その高度差に基づき実際の飛距離から所定の計算式により海抜0mにおいてショットしたと仮定した場合の補正飛距離を算出する。なお、本実施形態では、基準高度を海抜0mと設定して補正飛距離を算出しているが、この基準高度は任意に設定可能である。
また、高度計測部16は、位置Bにおいても高度を計測し、計測した高度情報を制御手段11の補正飛距離算出部36に送出する。補正飛距離算出部36は、位置Aの高度と位置Bの高度とを比較し、高度に差がある場合には、その高低差Hを算出する。そして、図5(A)に示すように位置Aが位置Bよりも低い場合には、ショットが打ち上げであると判定し、図5(B)に示すように位置Aが位置Bよりも高い場合には、ショットが打ち下ろしであると判定し、図5(C)に示すように位置Aと位置Bに高度差が無い場合には、水平であると判定する。そして、打ち上げ又は打ち下ろしの場合には、その高低差Hに基づき実際の飛距離から所定の計算式により、位置Aと位置Bに高低差Hが無いと仮定した補正飛距離を算出する。水平であると判定した場合には、実際の飛距離を補正飛距離とする。
次に、気温による影響を考慮した補正飛距離算出部36の算出方法を、上記の第1打の飛距離の補正飛距離について説明する。気温計測部15は、位置Aにおける気温を計測し、計測した気温情報を制御手段11の補正飛距離算出部36に送出する。補正飛距離算出部36は、位置Aの気温と基準気温である摂氏20度との温度差を算出し、その温度差に基づき実際の飛距離から所定の計算式により摂氏20度においてショットしたと仮定した場合の補正飛距離を算出する。なお、本実施形態では、基準気温を摂氏20度と設定して補正飛距離を算出しているが、この基準気温は任意に設定可能である。
次に、気圧による影響を考慮した補正飛距離算出部36の算出方法を、上記の第1打の飛距離の補正飛距離について説明する。気圧計測部14は、位置Aにおける気圧を計測し、計測した気圧情報を制御手段11の補正飛距離算出部36に送出する。補正飛距離算出部36は、位置Aの気圧と基準気圧である1013ヘクトパスカルとの気圧差を算出し、その気圧差に基づき実際の飛距離から所定の計算式により1013ヘクトパスカルにおいてショットしたと仮定した場合の補正飛距離を算出する。なお、本実施形態では、基準気圧を1013ヘクトパスカルと設定して補正飛距離を算出しているが、この基準気圧は任意に設定可能である。
次に、ショット地点の状況による影響を考慮した補正飛距離算出部36の算出方法を、上記の第1打の飛距離の補正飛距離について説明する。本実施形態においてショット地点の状況とは、打つボール7が置かれた地面の状態とショット時の風の強さと方向である。地面の状態は、ティーグランド37、フェアウェイ38、ラフ39、バンカー40、池41、上り傾斜及び下り傾斜であり、ショット時の風の強さは、「強い」及び「弱い」であり、風の方向は、「アゲインスト」、「フォロー」及び「横風」である。なお、ボール7の飛距離に影響を与えるその他の環境の状態を考慮した補正飛距離を算出してもよい。
図3に示すように、制御手段11は、集音部17から送出された音声情報を判定する用語判定部43を備えている。また、制御手段11は、予め登録された用語を記憶させておく用語辞書部44を備えている。予め登録される用語は、例えば、「ティーグランド」、「フェアウェイ」、「ラフ」、「バンカー」、「池」、「上り傾斜」、「下り傾斜」、「アゲインスト」、「フォロー」、「横風」等のショット地点の状態を表すものである。用語判定部43は、集音部17からの音声情報を受信すると、その音声情報に係る用語が用語辞書部44に記憶された用語であるか否かを判定する。用語辞書部44に記憶された用語である場合には、用語判定部43は補正飛距離算出部36にその用語に対応した用語信号を送出する。補正飛距離算出部36は、用語信号を受信すると、その用語に対応した所定の計算式により、実際の飛距離からショット地点がフェアウェイ38であって、傾斜がなく、無風状態と仮定した場合の補正飛距離を算出する。なお、本実施形態では、ショット地点の基準状態をフェアウェイ38であって、傾斜がなく、無風状態と設定して補正飛距離を算出しているが、この基準状態は任意に設定可能である。
こうして、飛距離補正システム1の補正飛距離算出部36により、基準高度や、基準温度や、基準気圧や、ショット地点の基準状態でのボール7の飛距離となる補正飛距離を求めることで、後述するアドバイス算出部82が、現在プレイ中のコースでの高度や、気温や、気圧や、ショット地点の状態を考慮した予測されるボール7の飛距離を算出し、その飛距離に適した推奨クラブの番手を、例えば表示部20や報知部22により提示する構成としてもよい。
用語辞書部44には、予めクラブ6の番手に対応する用語が記憶されており、ショットをする前に、クラブ6の番手を音声入力することで、その用語(クラブ6の番手)に対応するクラブ6の番手情報が用語判定部43から補正飛距離算出部36に送出される。そのため、飛距離算出部27は、クラブ6の番手に対応させて実際の飛距離情報を記憶部19に送出する。同様に、補正飛距離算出部36も、算出した補正飛距離をクラブ6の番手に対応させ、補正飛距離情報を記憶部19に送出する。飛距離情報及び補正飛距離情報を受信した記憶部19は、クラブ6の番手に対応させて、各打ごとに飛距離情報やスイング波形の加速度波形と関連付けて補正飛距離を記憶する。なお、用語辞書部44に記憶される用語は、追加・削除・変更等の更新が可能である。
本実施形態では、ショット地点の状態及びクラブ6の番手を音声により入力する方法を採用しているが、操作部21を操作してショット地点の状態及びクラブ6の番手を入力してもよい。
また、本実施形態では、高度、気温及び気圧を全て計測し、ショット地点の状態を入力しているが、例えば、気温を計測しない等、計測する項目や入力する項目は任意に決定することができ、これら以外の項目を追加してもよい。
図7は、本実施形態のスイング解析システム51を組み込んだ腕時計型端末2及び携帯端末3の全体構成図である。携帯端末3はプレイヤー4の下半身用衣服の収容部であるポケット、好ましくは後ポケットに収容される。図6に示すように、本実施形態では、携帯端末3を下半身用衣服の右後ポケット8に収容している。なお、携帯端末3は腰9の加速度等を計測するために腰9に近接していればよく、左後ポケット10に収容してもよい。
携帯端末3は、制御手段52と、第二慣性計測部53と、GPS(Global Positioning System:地球測位システム)受信部54と、送受信部55と、記憶部56と、表示部57と、操作部58と、を備えている。
制御手段52は、CPU(中央演算装置)を含んで構成され、記憶部56に記憶されたプログラム59に基づいて携帯端末3の全体を制御する。このCPUがプログラム59にしたがって演算処理を実行することにより、携帯端末3の各機能が実現される。また、上述のとおり、プログラム23により腕時計型端末2の各機能が実現される。プログラム23及びプログラム59がスイング解析プログラムに相当し、これらプログラム23及びプログラム59がコンピュータである腕時計型端末2及び携帯端末3により実行されることで、スイング解析システム51が実現される。
第二慣性計測部53は、何れも慣性センサーとしての加速度センサー60及びジャイロセンサー61が組み込まれている。加速度センサー60は、直交三軸方向の加速度を計測することができ、ジャイロセンサー61は、直交三軸の各軸回りの角速度を計測することができる。第二慣性計測部53は、携帯端末3が右後ポケット8に収容された状態でプレイヤー4がスイング動作を行なうことで、プレイヤー4の腰9の加速度や角速度を計測する。第二慣性計測部53により計測された加速度情報や角速度情報は、プレイヤー4のスイング動作時における左腰9の加速度波形や角速度波形として、制御手段52の解析部62に送出される。
GPS受信部54は、携帯端末3の現在位置を取得する位置計測手段を構成し、複数の人工衛星28からの電波を無線で受信することで、携帯端末3の三次元位置(経度、緯度及び高度)を計測し、その位置情報を制御手段52に送出するものである。なお、携帯端末3の現在位置を検出できるものであれば、GPS受信部54以外の位置検出装置を利用してもよい。また、人工衛星28には原子時計が搭載されている。この人工衛星28からは特定の周波数にて極めて正確な時刻信号波が発信されており、これをGPS受信部54により受信することで、携帯端末3の時間軸が規定される。上述のとおり、腕時計型端末2も、人工衛星28からの時刻信号波を受信して時間軸が規定されることから、腕時計型端末2と携帯端末3の時間軸は同期される。
送受信部55は、無線の通信手段を介して、腕時計型端末2と携帯端末3との双方向通信を可能にするものである。腕時計型端末2も送受信部18を備えており、腕時計型端末2の記憶部19に記憶された情報を携帯端末3に送信することや、携帯端末3の記憶部56に記憶された情報を腕時計型端末2に送信することが可能である。
記憶部56は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの各種記憶装置を用いて構成され、GPS受信部54が受信した携帯端末3の位置情報や、後述するプレイヤー4の左手首5の3軸合成加速度情報や、プレイヤー4の腰9の3軸合成加速度情報等の各種情報を書き込み及び読み出し可能となっている。
表示部57は、携帯端末3の本体正面に露出して設けられる液晶モジュールや液晶パネルにより構成され、これらの液晶モジュールや液晶パネルは周知のように、多数のサブ画素を格子状に配列したドットマトリクスによる表示を行なうものである。
操作部58は、プレイヤー4による操作を受けて、電気的な操作信号を制御手段52に送出するものである。本実施形態の携帯端末3では、表示部57がタッチパネルとなっており、表示部57の表面部63が操作部58として機能する。また操作部58は、前述の腕時計型端末2に備えた操作部21と同様に、第一慣性計測部12による加速度の計測開始と計測終了を音声により指示する際に、第二指示入力部として機能する。
報知部64は、前述の腕時計型端末2に備えた報知部22と同様に、後述するベスト飛距離時のスイング情報を音声や振動で提示する際に、出力部として機能する。出力部は、例えば音声を出力するスピーカーおよび/または振動を発生するバイブレーターで構成される。
解析部62は、第一慣性計測部12が計測したプレイヤー4の左手首5の加速度と、第二慣性計測部53が計測したプレイヤー4の腰9の加速度と、飛距離算出部27が算出したボール7の飛距離と、に基づいてプレイヤー4の左手首5及び腰9の動きと飛距離との関係を解析する。本実施形態では、プレイヤー4による一連のスイング動作における、いわゆるタメ、左手首5の加速度、速度及び傾き、腰9の加速度、速度及び傾き、とボール7の飛距離との関係を解析する。
上述のとおり、腕時計型端末2の第一慣性計測部12と携帯端末3の第二慣性計測部53の時間軸は同期されており、プレイヤー4が一連のスイング動作を行なうと、第一慣性計測部12によりプレイヤー4の左手首5の3軸合成加速度を計測し、第二慣性計測部53でプレイヤー4の腰9の3軸合成加速度を計測する。また、上述のとおり、腕時計型端末2の飛距離算出部27により実際のボール7の飛距離がクラブ6の番手に対応して記憶部19に記憶される。プレイヤー4の左手首5の3軸合成加速度情報とクラブ6の番手に対応した飛距離情報が、腕時計型端末2の送受信部18と携帯端末3の送受信部55を介して解析部62に送出されると共に、プレイヤー4の腰9の3軸合成加速度情報が解析部62に送出される。これらの情報は、紐付け(関連付け)されて記憶部56に記憶される。
ここで、プレイヤー4のスイング動作時におけるタメの算出について説明する。図8は、第一慣性計測部12で計測された左手首5の3軸合成加速度の経時変化を示す折れ線G1と、第二慣性計測部53で計測された腰9の3軸合成加速度の経時変化を示す折れ線G2を示したものである。また、折れ線G1及び折れ線G2のグラフの下側には、プレイヤー4による一連のスイング動作における、アドレスの静止状態65−1、バックスイングの途中(左手首5が軽くなり始め)65−2、トップ65−3、インパクト65−4、フォロー65−5、フィニッシュ65−6の各ポイントを示している。
本実施形態では、腰9の3軸合成加速度のピークP2が、左手首5の3軸合成加速度のピークP1よりも時間的に早く発生したスイング動作を、タメが有るものとする。そして、ピークP1がピークP2よりも時間的に早く発生した場合や、ピークP1とピークP2との時間差tが0である場合には、タメが無いものとする。また、時間差tのうちタメが有る場合の時間差tをタメの時間Tという。ここでいう「タメ」とは、ゴルフでダウンスイング中の手首のアンコックに使われる一般的な表現とは異なる。なお図8は、タメが有る場合のスイングの左手首5と腰9の3軸合成加速度を示している。
図7に示すように、解析部62は、速度算出部70を備えており、この速度算出部70がプレイヤー4の左手首5の3軸合成加速度情報に基づいて、腕時計型端末2、ひいてはプレイヤー4の左手首5の速度を所定の計算式により算出する。左手首5の速度は、トップ65−3からインパクト65−4までのスイングの平均速度や、インパクト65−4の瞬間の単位時間における速度等を算出する。例えば、本実施形態におけるインパクト65−4の瞬間の速度V=5.75m/sである。
また、速度算出部70によりプレイヤー4の腰9の3軸合成加速度情報に基づいて、プレイヤー4の腰9の速度を所定の計算式により算出する。腰9の速度は、スイングにおける平均速度や、インパクト65−4の瞬間の単位時間における速度等を算出する。
また、図7に示すように、解析部62は、傾き算出部71を備えており、この傾き算出部71がプレイヤー4の左手首5の3軸合成加速度情報に基づいて、腕時計型端末2、ひいてはプレイヤー4の左手首5の傾きを3軸方向の角度で算出する。左手首5の傾きは、アドレスの静止状態65−1、バックスイングの途中(左手首5が軽くなり始め)65−2、トップ65−3、インパクト65−4、フォロー65−5、フィニッシュ65−6の各ポイントで算出する。例えば、本実施形態におけるアドレスの静止状態65−1の左手首5の傾きの角度は、腕を鉛直に垂らした状態を0度として、θx軸は手首から鉛直下方、θy軸は手首から身体後方、θz軸は手首からアドレスの身体左側であるとすると、θx=4.2deg、θy=−6.8deg、θz=12.6degである。従ってこれは、アドレスで手を鉛直に垂らして、手の甲を左側に向けた姿勢から4.2度フックグリップ側へ捩じり、手首を前方(体の正面側)へ6.8度だし、手を鉛直下方に垂らした姿勢から12.6度手首を内側(右側)へ動かした姿勢になる。
また、傾き算出部71によりプレイヤー4の腰9の3軸合成加速度情報に基づいて、プレイヤー4の腰9の傾きを3軸方向の角度で算出する。腰9の傾きは、アドレスの静止状態65−1、バックスイングの途中(左手首5が軽くなり始め)65−2、トップ65−3、インパクト65−4、フォロー65−5、フィニッシュ65−6の各ポイントで算出する。
このように、プレイヤー4のスイング動作時における各種情報の計測を継続することで、計測結果が記憶部56に蓄積される。解析部62は、蓄積された計測結果から、最も飛距離が長かった時のスイング動作時におけるタメの時間T、左手首5と腰9の加速度、速度及び傾きを算出し、それらの条件をプレイヤー4のベストスイングとして記憶部56に記憶する。このベストスイングにおけるタメの時間T、左手首5と腰9の加速度、速度及び傾きは、携帯端末3の表示部57に表示することができ、プレイヤー4はこれらの情報を確認することができる。また、飛距離が長かった所定回数(例えば、10回)のスイング動作時におけるタメの時間T、左手首5と腰9の加速度、速度及び傾きの平均値を算出し、その結果を表示部57に表示することもできる。なお、記憶部56に記憶されている情報であれば、飛距離が短かったスイングの各種情報を表示部57に表示することもできる。
記憶部19に記憶されたプログラム23と記憶部56に記憶されたプログラム59は、アドバイス情報提示プログラムにも相当する。これらプログラム23及びプログラム59がコンピュータである腕時計型端末2及び携帯端末3により実行されることで、アドバイス情報提示システム81が実現される。
図3に示すように、腕時計型端末2の制御手段11は、アドバイス算出部82を備えている。アドバイス算出部82は、プレイヤー4に対して助言・忠告等のアドバイスを提示する際のアドバイス情報を算出する。アドバイスは、腕時計型端末2が備える報知部22から音声により報知することや、腕時計型端末2の表示部20に文字、図形や地図等により表示することが可能である。アドバイス情報は、表示部20に表示するか、報知部22により音声により報知するか、その両方とするか、を操作部21への操作により選択することができる。
以下、アドバイス情報提示システム81で実現する具体的なアドバイス情報について説明する。プレイヤー4が、集音部17への音声又は操作部21への操作により、ゴルフ場Gのコース情報を入力すると、アドバイス算出部82は記憶部19から該当するコースの地図情報26を読み出し、表示部20に表示する。なお、この地図情報26の表示は、腕時計型端末2を装着したプレイヤー4の位置情報を計測し、予め記憶部19に記憶された当該コースの位置情報から、プレイヤー4が当該コース内に入ったことを確認した時点で表示部20に自動的に表示するようにしてもよい。
また、地図情報26からバンカー40や池41等のハザードの情報を読み出し、ハザード情報を報知する。ハザード情報は、バンカー40や池41等の位置情報や、現在位置から当該バンカー40や池41等までの距離情報等であり、また、「左バンカー注意!」等の文言を表示部20に表示したり、報知部22により音声で報知したりするものである。なお、表示部20に表示されるコースの地図情報26はカラーで表示され、ティーグランド37、フェアウェイ38、ラフ39、バンカー40、池41、グリーン42はそれぞれ異なる色で表示されるため、ハザード情報は視覚的に確認し易くなっている。
プレイヤー4がショットすることを、集音部17への音声又は操作部21への操作により、腕時計型端末2に入力すると、アドバイス算出部82はプレイヤー4の位置情報と地図情報26から、グリーン42までの距離を算出する。また、記憶部19からプレイヤー4の平均飛距離や平均補正飛距離を読み出し、グリーン42までの距離に適した推奨クラブ6の番手を提示する。このとき、表示部20に表示されたコースの地図情報26に推奨クラブ6の番手のプレイヤー4の過去の平均飛距離を円弧線83及び数値84で表示する(図2参照)。
また、アドバイス算出部82は、推奨クラブ6を使用した場合のプレイヤー4のショットの左右方向へのずれの割合や傾向等についても算出する。アドバイス算出部82は、プレイヤー4のショットの左右方向へのずれの割合を記憶部19から読み出し、表示部20又は報知部22により提示する。左右方向へのずれについての提示方法は、ずれの割合を表示部20に表示するか、報知部22により音声で報知してもよく、また、ずれの割合からプレイヤー4のショットの傾向を算出し、その傾向を「左方向へのずれ65%、注意!」等の文言で表示部20に表示したり、報知部22により音声で報知したりすることができる。
また、アドバイス算出部82は、プレイヤー4の過去の飛距離が長かったショットや、左右方向のズレが無かったショットのタメの時間Tの平均の長さ、左手首5の加速度、速度及び傾きや、腰9の加速度、速度及び傾きを算出し、表示部20に表示したり、報知部22により報知したりすることができる。
また、プレイヤー4による次のショットが、打ち上げになるか、打ち下ろしになるか、高低差Hが事前にわかっている場合には、その旨を音声又は操作部21の操作により腕時計型端末2に入力することで、記憶部19に記憶されているプレイヤー4の打ち上げ時、打ち下ろし時、当該高低差Hに対応した過去の平均飛距離を読み出し、表示部20に表示することもできる。
また、ショット地点の状態(ティーグランド37、フェアウェイ38、ラフ39、バンカー40、池41、上り傾斜、下り傾斜、風の強さ、風の方向等)を音声又は操作部21の操作により腕時計型端末2に入力することで、記憶部19に記憶されているプレイヤー4のその状態に対応した過去の平均飛距離を読み出し、表示部20に表示することもできる。
アドバイス算出部82が算出するアドバイス情報は、記憶部19,56に記憶された情報に基づいて算出されるが、例えば、過去のショットの情報中から飛距離が極端に短い失敗ショットの情報を排除した平均飛距離を算出し、報知するようにしてもよい。
前述の図3に示す記憶部19に記憶されたプログラム23は、スイングコンディション計測プログラムにも相当する。当該プログラム23がコンピュータである腕時計型端末2により実行されることで、スイングコンディション計測及び伝達システム100の飛距離算出部27や信号生成部となるアドバイス算出部82が実現される。本実施形態のスイングコンディション計測及び伝達システム100は、腕時計型端末2の操作部21や報知部22と、携帯端末3の操作部58や報知部64と連携して、飛距離算出部27及びアドバイス算出部82の他に、前述の第一慣性計測部12と、記憶部19と、を主な構成要素とする。
アドバイス算出部82は、操作部21又は操作部58からの操作入力を受けて、記憶部19に記憶される飛距離と関連付けられた加速度波形の中から、飛距離が最大の加速度波形を読み出し、この加速度波形に応じた音又は振動が報知部22又は報知部64から出力されるように、当該加速度波形からアドバイス情報となるスイング出力信号を生成し、報知部22又は報知部64に出力する信号生成部としての機能を有する。こうした信号生成部としての機能は、腕時計型端末2の制御手段11にではなく、若しくは腕時計型端末2の制御手段11に加えて、携帯端末3の制御手段52に組み込んでもよい。
以下、スイングコンディション計測及び伝達システム100で実現する具体的なアドバイス情報について、図9〜図11を参照して説明する。プレイヤー4が前述したゴルフ場Gの位置Aで、集音部17への音声又は操作部21への操作により、第一慣性計測部12による加速度の計測開始を指示すると、アドバイス算出部82は第一慣性計測部12からの波形データとなる加速度波形の取り込みを開始する。その後、図9に示すように、プレイヤー4が「構え」→「スイング」→「ショット」の順にゴルフクラブ6を動かして、地面に静止したボール7を打ち当てる一連のスイング動作を行なうと、プレイヤー4の左手首5の加速度が第一慣性計測部12により計測され、その計測結果が加速度波形としてアドバイス算出部82に取り込まれる。
プレイヤー4が一連のスイング動作を終了した後に、集音部17への音声又は操作部21への操作により、第一慣性計測部12による加速度の計測終了を指示すると、アドバイス算出部82は第一慣性計測部12からの加速度波形の取り込みを終了して、第一慣性計測部12による計測開始から計測終了までの全期間にわたり、一連のスイング動作で生じた測定結果となる加速度波形を記憶部19に記憶させる。また飛距離算出部27は、第一慣性計測部12による計測開始から計測終了までの間に、第一慣性計測部12から取り込まれた加速度波形に、プレイヤー4がスイングした場合に相当する大きさの変化があれば、プレイヤー4がクラブ6をスイングしたと判断して、位置Aでの位置情報をGPS受信部13により取得し、この位置情報を先ほどアドバイス算出部82が記憶部19に記憶させた加速度波形に関連付けさせる。これにより記憶部19には、プレイヤー4が位置Aで一連のスイング動作をしたときの加速度波形が記憶保持される。
次にプレイヤー4は、位置Bにて同様の手順で一連のスイング動作を行ない、プレイヤー4が位置Bで一連のスイング動作をしたときの加速度波形を記憶部19に記憶させる。飛距離算出部27は、位置Aの位置情報と位置Bの位置情報が記憶部19に記憶されると、位置Aと位置Bとの直線距離を、位置Aからゴルフクラブ6で打ち当てたボール7の飛距離として算出し、その飛距離を記憶部19に記憶されるプレイヤー4が位置Aで一連のスイング動作をしたときの加速度波形に関連付けさせる。これにより記憶部19には、プレイヤー4が位置Aで一連のスイング動作をしたときの加速度波形が、ボール7の飛距離と関連付けて記憶保持される。
変形例として、第一慣性計測部12による計測開始から計測終了までの間に、第一慣性計測部12から取り込まれた加速度波形に、プレイヤー4がスイングした場合に相当する大きさの変化がなく、プレイヤー4がクラブ6をスイングしていないと飛距離算出部27が判断した場合には、アドバイス算出部82が加速度波形を記憶部19に記憶させない構成にしてもよい。これにより、プレイヤー4がスイング動作を行なった必要な加速度波形だけを記憶部19に記憶保持させて、記憶部19の容量を必要最小限に抑えることができる。また、飛距離算出部27で算出されたボール7の飛距離に加えて、若しくは算出されたボール7の飛距離に代わり、補正飛距離算出部36で算出された同じ位置からのボール7の補正飛距離を、記憶部19に記憶される対応する位置での加速度波形と関連付けて記憶させてもよい。
こうして、ゴルフ場Gの位置A、位置B、位置C・・・のそれぞれで、上述した手順を繰り返すことにより、図9に示すような一連のスイング動作の3ステップである「構え」、「スイング」、「ショット」の加速度波形が、ボール7の飛距離と関連付けて記憶部19に記録されてゆく。記録された加速度波形には、スイング音(加速度)や、スイングのリズムや、スイングのタイミングなどの情報が含まれる。
図10は、図9に示す一連のスイング動作を行ったときに、第一慣性計測部12の加速度センサー24で計測された左手首5の3軸合成加速度波形の経時変化を示したものである。制御手段11のアドバイス算出部82は、第一慣性計測部12による加速度の計測開始から、プレイヤー4がクラブ6のスイングを開始するまでの間の第1期間S1と、プレイヤー4がクラブ6のスイングを開始してから、そのクラブ6をトップ位置まで動かすまでの間の第2期間S2と、プレイヤー4がクラブ6をトップ位置に動かしてからボール7に当てて、第一慣性計測部12による加速度の計測終了までの間の第3期間S3のそれぞれについて、第一慣性計測部12からの加速度波形を飛距離と関連付けて記憶部19に記憶保持させる。第1期間S1は、第一慣性計測部12による加速度の計測開始から、加速度波形が最初に上昇変化し始めるまでの「構え」に相当する期間である。第2期間S2は、加速度波形が最初に上昇変化し始めてから、加速度波形が急峻に上昇変化し始めるまでの「スイング」に相当する期間である。第3期間S3は、加速度波形が急峻に上昇変化し始めてから、第一慣性計測部12による加速度の計測終了までの「ショット」に相当する期間である。
プレイヤー4が集音部17への音声又は操作部21への操作により、ベスト飛距離時におけるスイング動作の再生を指示すると、アドバイス算出部82は、記憶部19に記憶される過去の飛距離と関連付けられた加速度波形の中から、飛距離が最大の加速度波形、すなわちベスト飛距離時の加速度波形を読み出し、このベスト飛距離時の加速度波形を報知部22から音で再現できるように、加速度波形の第1期間S1、第2期間S2、第3期間S3のそれぞれについて、各期間S1〜S3の波形変化と、そこから得られる各期間S1〜S3の時間長さに基づいて、報知部22に出力するスイング出力信号を生成する。これにより図11に示すように、腕時計型端末2のスピーカーによる報知部22から、ベスト飛距離時の第1期間S1に対応した例えば「チャ〜」という音と、第2期間S2に対応した例えば「シュ〜」という音と、第3期間S3に対応した例えば「メ〜〜ン」という音が、実際に行った一連のスイング動作と同じタイミングで連続して出力される。これによりプレイヤー4は、ベスト飛距離時におけるスイングの状態、すなわちスイングコンディションがどのようなものであったのかを、報知部22からの音の再生で簡単に把握することができる。
またアドバイス算出部82は、ベスト飛距離時の加速度波形を報知部22から音ではなく、若しくは音と共に振動で再現できるように、加速度波形の第1期間S1、第2期間S2、第3期間S3のそれぞれについて、各期間S1〜S3の波形変化と、そこから得られる各期間S1〜S3の時間長さに基づいて、報知部22に出力するスイング出力信号を生成してもよい。振動を出力する報知部22は、例えばモータを組み込んだバイブレーターで構成される。これにより図11に示すように、腕時計型端末2の報知部22から、ベスト飛距離時の第1期間S1に対応した例えば「ヴッ」という音と、第2期間S2に対応した例えば「ヴヴッ」という音と、第3期間S3に対応した例えば「ヴーー」という音が、実際に行った一連のスイング動作と同じタイミングで連続して出力される。これによりプレイヤー4は、ベスト飛距離時におけるスイングの状態、すなわちスイングコンディションがどのようなものであったのかを、報知部22からの振動による再生で簡単に把握することができる。
こうしてプレイヤー4は、報知部か22から出力される音や振動により、ベスト飛距離時におけるスイングコンディションとして、スイング音や、スイングのリズムや、スイングのタイミングを把握することができる。スイング音は、第3期間S3の開始時から加速度波形が急峻に変化して最大値に至るまでの時間長さと、その最大値に基づき、第3期間S3に対応した音や振動で再現される。スイングのリズムやタイミングは、第1期間S1〜第3期間S3の時間長さに対応した音や振動で再現される。
さらに図11に示すように、アドバイス算出部82は、記憶部19に記憶されているベスト飛距離時の加速度波形を、腕時計型端末2の報知部22だけでなく、若しくは腕時計端末2の報知部22に代わり、携帯端末3の報知部64から音や振動で再現できるように、当該報知部64に出力するスイング出力信号を生成してもよい。これによりプレイヤー4は、ベスト飛距離時におけるスイングコンディション(スイング音、スイングのタイミング、スイングのリズム)を、スマートウォッチなどの腕時計型端末2や、スマートフォンなどの携帯端末3で、音やバイブレーション(振動)として再生しながら、実際のスイング動作を行なうことが可能となる。
本実施形態では、スイングコンディション計測及び伝達システム100の計測対象としてゴルフのプレイヤー4を例示したが、長尺物の有る無しに拘わらず、スイング動作によりボールを飛ばすあらゆる球技プレイヤーが、スイングコンディション計測及び伝達システム100の計測対象となる。例えば、スイングコンディション計測及び伝達システム100は、長尺物としてバットをスイングしてボールを打つ野球のプレイヤーを計測対象とすることができる。この場合も、腕時計型端末2をプレイヤーの腕に装着することで、第一慣性計測部12によりプレイヤーのスイング動作時における加速度を計測できる。
また、スイングコンディション計測及び伝達システム100は、第一慣性計測部12の加速度センサー24で計測したプレイヤー4の左手首5の加速度波形だけでなく、ジャイロセンサー25で計測したプレイヤー4の左手首5の角速度波形や、第二慣性計測部53の加速度センサー60で計測したプレイヤー4の腰9の加速度波形や、ジャイロセンサー61で計測したプレイヤー4の腰9の角速度波形の全てまたは何れかを、アドバイス算出部82に取り込む構成としてもよい。この場合、プレイヤー4の手首(例えば左手首5)に装着可能な第一慣性計測部12と、プレイヤー4の腰9に装着可能な第二慣性計測部53の他に、同じく加速度センサーやジャイロセンサーの組み合わせで構成され、プレイヤー4の肩に装着可能な第三慣性計測部(図示せず)を設けることで、これらの慣性計測部からの加速度波形や角速度波形の全てまたは何れかを取り込んで、ベスト飛距離時におけるスイングコンディションを、腕時計型端末2や携帯端末3で再生するのが好ましい。第三慣性計測部で計測したプレイヤー4の肩の加速度波形や角速度波形を、腕時計型端末2の制御手段11に組み込まれたアドバイス算出部82に送出できるように、第三慣性計測部には携帯端末3の送受信部55と同様の構成で送受信部(図示せず)を備える。
例えば、上述したスイングのリズムに関しては、第一慣性計測部12のジャイロセンサー25で計測されるプレイヤー4の左手首5の角速度波形と、第二慣性計測部53のジャイロセンサー61で計測されるプレイヤー4の腰9の角速度波形と、可能であれば第三慣性計測部のジャイロセンサーで計測されるプレイヤー4の肩の角速度波形をそれぞれ取り込んで、アドバイス算出部82がスイングのリズムを評価する構成としてもよい。角速度波形が好ましいとする理由は、経験的に加速度波形では、衝撃や振動でノイズの影響を受けやすいと思われるからである。
また別な例として、第一慣性計測部12のジャイロセンサー25で計測されるプレイヤー4の左手首5の角速度情報の中で、特にZ軸の角速度波形のピーク或いは急峻な立ち上がりは、プレイヤー4のスイング動作時におけるクラブ6のアンコックと同期していると考えられる。したがって、ダウンスイングの開始(図7に示すトップ65−3から、ボール7に向かってクラブ6を振り下ろし始めるタイミング)を、第一慣性計測部12の加速度センサー24で計測したプレイヤー4の左手首5の加速度波形で検出し、クラブ6のアンコックを、第一慣性計測部12のジャイロセンサー25で計測したプレイヤー4の左手首5の角速度波形で検出する構成を、制御手段11のアドバイス算出部82に組み込んでもよい。
以上のように、本実施形態のスイングコンディション計測及び伝達システム100は、ユーザーとなるプレイヤー4のスイング動作時における加速度及び/又は角速度を計測する第一慣性計測部12と、プレイヤー4のスイング動作に伴うボール7の飛距離を算出する飛距離算出部27と、第一慣性計測部12の計測結果となる加速度波形や角速度波形による波形データを、飛距離算出部27で算出された飛距離と関連付けて記憶する記憶部19と、記憶部19から飛距離が最大の加速度波形や角速度波形による波形データを読み出して、この波形データに応じた音または振動が出力部である報知部22,64から出力されるように、当該波形データからスイング出力信号を生成する信号生成部としてのアドバイス算出部82と、を備えている。
このような構成とすることにより、プレイヤー4がボール7を最も遠くに飛ばした時のスイングコンディションを再現することが可能なスイングコンディション計測及び伝達システム100を提供できる。つまり、プレイヤー4がボール7を最も遠くに飛ばした飛距離が最大の加速度波形や角速度波形による波形データを予め記憶部19に記憶させておき、飛距離が最大の波形データからアドバイス算出部82がスイング出力波形を生成することで、ベスト飛距離時のスイングコンディションを報知部22,64から音や振動で再生しながら、実際のスイング動作を行なうことが可能となる。そのためプレイヤー4は、ベスト飛距離時のスイングコンディションと比べて、現在のスイング動作がどれだけずれているのかを、報知部22,64からの音や振動で適確に確認しながらスイング動作を調整できる。
また、本実施形態のスイングコンディション計測及び伝達システム100は、第一慣性計測部12による計測開始から、プレイヤー4が長尺物となるクラブ6のスイングを開始するまでの間の第1期間S1と、プレイヤー4がクラブ6のスイングを開始してから、そのクラブ6をトップ位置まで動かすまでの間の第2期間S2と、プレイヤー4がクラブ6をトップ位置に動かしてからボール7に当てて、第一慣性計測部12による計測終了までの間の第3期間S3のそれぞれで、第一慣性計測部12からの加速度波形を記憶部19で記憶するように構成し、第1期間、第2期間および第3期間のそれぞれで、飛距離が最大の加速度波形や角速度波形による波形データに対応したスイング出力信号を生成するように、信号生成部となるアドバイス算出部82を構成している。
この場合、例えばゴルフや野球などの長尺物をスイングしてボールを飛ばす球技について、プレイヤー4による一連のスイング動作における3つのステップのそれぞれで、飛距離が最大の加速度波形や角速度波形による波形データを記憶部19,56に記憶させておくことができ、ベスト飛距離時のスイングコンディションを、報知部22,64からの音や振動でより正確に再現できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、腕時計型端末2と携帯端末3は、送受信部18,55により双方向の通信が可能であるため、腕時計型端末2に解析部62及びプログラム59を設けたり、携帯端末3に気圧計測部14、気温計測部15、高度計測部16、集音部17、報知部22、プログラム23、地図情報26、飛距離算出部27、補正飛距離算出部36、用語判定部43、用語辞書部44及びアドバイス算出部82を設けたりする構成としてもよい。