JP2021141758A - 振動型駆動装置及びフレキシブル基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動体を駆動するための駆動信号を伝達するフレキシブル基板内の配線に断線が生じても、振動体に正常な振動を励起させることが可能な振動型駆動装置を提供する。【解決手段】振動型駆動装置10は、圧電素子22を振動体20と、振動体20と接触して振動体20と相対移動する接触体30と、圧電素子22へ給電を行うフレキシブルプリント基板110(FPC_110)とを備える。FPC_110は圧電素子22に接着される環状の接合部110aを有し、接合部110aに圧電素子22へ駆動信号を供給する上層配線151U〜154Uを閉じた環状に互いに絶縁して設けた構成とする。【選択図】図5

Description

本発明は、振動型駆動装置と、振動型駆動装置を構成する振動体への給電を行うフレキシブル基板に関する。
振動型駆動装置は、一般的な電磁モータと比較すると、静音性や位置決め精度に優れているため、例えば、一眼レフカメラのレンズ駆動等に用いられている。例えば、特許文献1には、振動体が備える圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)に2相の駆動信号(交流電圧)を印加すると振動体に振動が励起され、振動体と接触する接触体が励起された振動によって回転する振動型駆動装置が開示されている。また、特許文献1には、振動体(圧電素子)へ駆動信号を印加するための手段として環形状を有するフレキシブル基板を用いた振動型駆動装置が開示されている。
特開平11−187677号公報
フレキシブル基板を通じて圧電素子へ印加される駆動信号は、駆動対象にも依るが、一般的に電圧が数百ボルト程度で、周波数が数十kHzの交流信号である。フレキシブル基板は圧電素子に接着されているため、振動体に生じる高い周波数の振動が、フレキシブル基板に対して外力として作用する。その結果、フレキシブル基板に応力が生じ、生じた応力によってフレキシブル基板内の配線に断線等の損傷が発生することがある。
また、フレキシブル基板は所定位置に配置されたコネクタに固定される。特許文献1では、フレキシブル基板は、圧電素子と接触する円弧状部から可撓性を有する接続部を経由して、接続部にてコネクタに接続されており、接続部は環状部と接続部(コネクタ)との間で略90度湾曲した状態となっている。そのため、接続部には応力が発生しやすく、発生した応力によってフレキシブル基板内の配線に断線が発生することがある。
フレキシブル基板内の配線に断線が発生すると、断線発生箇所から先には駆動信号が伝達されなくなるため、圧電素子には部分的に振動しない部分が発生することで、接触体を駆動するための正常な振動を振動体に励起させることができなくなってしまう。
本発明は、振動体を駆動するための駆動信号を伝達するフレキシブル基板内の配線に断線が生じても、振動体に正常な振動を励起させることが可能な振動型駆動装置を提供することを目的とする。
本発明に係る振動型駆動装置は、電気−機械エネルギ変換素子を有する振動体と、前記振動体と接触し、前記振動体と相対移動する接触体と、前記電気−機械エネルギ変換素子へ駆動信号を供給するフレキシブル基板と、を備える振動型駆動装置であって、前記フレキシブル基板は、前記電気−機械エネルギ変換素子と接合される環状の第1の配線部を有し、前記第1の配線部に、前記電気−機械エネルギ変換素子へ駆動信号を供給する複数の第1の配線が、閉じた環状に互いに絶縁されて設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、振動体を駆動するための駆動信号を伝達するフレキシブル基板内の配線に断線が生じても、振動体に正常な振動を励起させることが可能になる。
実施形態に係る振動型駆動装置の概略構成を示す断面図である。 図1の振動型駆動装置での振動体と給電部の概略構成を示す図である。 図1の振動型駆動装置での振動体に励起される進行波を説明する図である。 図1の振動型駆動装置での振動体とFPCの構造を説明する断面図である。 第1実施形態に係るFPCの構成と給電パネルのパターンとの関係を示す平面図である。 図5中の矢視B−B,C−C,D−Dでの各断面図である。 第1実施形態に係るFPCの上層配線に断線が生じた場合の給電ルートを説明する図である。 比較例1のFPCの構成を示す図である。 第2実施形態でのFPCの構成を説明する図である。 第2実施形態に係るFPCの下層配線に断線が生じた場合の給電ルートを説明する図である。 第2比較例のFPCの構成を示す図である。 第3実施形態でのFPCの構成を説明する図である。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る振動型駆動装置10の概略構成を示す断面図である。振動型駆動装置10は、振動体20、接触体30、加圧機構40、シャフト50、ハウジング55、ベアリング60及び給電部100を備える。なお、図1の断面図は、シャフト50の中心軸を含む断面図である。
振動体20は、弾性体21と、弾性体21に接合された電気−機械エネルギ変換素子である圧電素子22とを有し、これらは共に環状の形状を有する。弾性体21の材料は適宜選択できるが、本実施形態では、弾性体21を電気的に接地(GND接続)させるために、一例として、窒化処理されたステンレス鋼等の鉄系材料を用いている。
接触体30は、本体30aと接触ばね30bとを有し、これらも環形状を有している。接触体30の材料としては、ステンレス鋼等の鉄系材料を用いることができるが、これに限定されるものではない。なお、「接触体」とは、振動体20と接触し、振動体20に発生した振動によって、振動体20に対して相対移動する部材である。接触体30と振動体20との接触は、接触体30と振動体20の間に他の部材が介在しない直接接触に限られない。つまり、接触体30と振動体20との接触は、振動体20に発生した振動によって接触体30が振動体20に対して相対移動するならば、接触体30と振動体20の間に他の部材が介在する間接接触であってもよい。「他の部材」とは、接触体及び振動体20とは独立した部材(例えば、焼結体よりなる高摩擦材)であってもよいし、これに限られず、接触体30又は振動体20にメッキや窒化処理等によって形成された表面処理部であってもよい。
加圧機構40は、制振ゴム41、加圧ばね受け部材42、加圧ばね受けゴム43、加圧ばね44及び加圧ばね固定部材45を有する。振動体20及び接触体30は、シャフト50を中心軸として同心円状に配置され、シャフト50に固定された加圧機構40によってシャフト50のスラスト方向で接触(摩擦接触)している。具体的には、シャフト50に固定された加圧ばね固定部材45によって移動を規制された加圧ばね44が、制振ゴム41、加圧ばね受け部材42及び加圧ばね受けゴム43を介して接触体30を振動体20に対してシャフト50のスラスト方向に押圧する。これにより、接触体30と振動体20は安定的に接触した状態で保持される。
ハウジング55は、振動型駆動装置10を備える機器(不図示)の所定位置に固定されており、振動体20はハウジング55に固定されている。また、ベアリング60は、シャフト50をハウジング55に対して回転可能に軸支している。
図2は、振動体20と給電部100の概略構成を示す図である。給電部100は、フレキシブルプリント基板110(以下「FPC_110」と記す)と、FPC_110が取り付けられるコネクタ190(図2参照)を有する。説明の便宜上、FPC_110を以下に説明するように、複数の配線部に分けて、FPC_110の構成について説明する。
FPC_110は、圧電素子22に取り付けられる平板状、且つ、環状の第1の配線部(以下「接合部110a」と言う)と、接合部110aから接合部110aの径方向へ延出する第2の配線部(以下「中継部110b」と言う)を有する。FPC_110は第3の配線部(以下「端子部110c」と言う)を有し、中継部110bは端子部110cと接合部110aとを接続している。圧電素子22の一方の面は弾性体21に接合されており、圧電素子22の他方の面(弾性体21と接合されている面の反対側の面)にFPC_110の接合部110aが、例えば接着剤により、接合されている。
コネクタ190は、外部給電用ハーネス195を有する。駆動信号として4相の交流電圧が4本の外部給電用ハーネス195を通じて電源(不図示)から供給されている。外部給電用ハーネス195は、電源から供給される駆動信号を、コネクタ190に取り付けられた端子部110cの端子電極151C〜154C(図5参照)に供給する。なお、不図示であるが、弾性体21は、外部給電用ハーネス195を通じて接地されている。
電源からコネクタ190とFPC_110を通じて圧電素子22へ駆動信号を印加することにより、振動体20に駆動振動を励起させることができる。駆動振動の態様は圧電素子22が有する複数の電極部(以下では「給電パネル」と称呼する)の数や配置形態に依存するが、圧電素子22は、励起される駆動振動が振動体20の周方向に進むn次の進行波となるように設計される。「n次の進行波」とは、弾性体21の基底部21a(弾性体21において圧電素子22が接合されている部分(図4参照))の周方向における波数がn個となる曲げ振動である。圧電素子22に発生した駆動振動は、振動体20(弾性体21)の基底部21aへ伝達される。
図3は、本実施形態で振動体20に励起される進行波(振動体20に生じる変位)を説明する図である。図3には、圧電素子22に対して駆動信号として4相の交流電圧を印加することにより、振動体20に9次の進行波を励起させた状態が示されている。なお、図3では、振動の態様を明確にするために、振動(変位)を誇張して示している。
振動体20(弾性体21)における接触体30との接触面25(図4参照)に生じた進行波によって、接触体30、加圧機構40及びシャフト50が一体となってシャフト50を中心軸として回転する。よって、例えば、シャフト50において末広がりに構成されているフランジ面に駆動対象を固定することによって、駆動対象を回転させることができる。また、シャフト50の回転駆動力をギア等を介して取り出すことによって、駆動対象を回転駆動させ又はリニア駆動させることもできる。なお、シャフト50を固定して、振動体20を可動に構成することにより、振動体20を接触体30に対して相対的に回転させることも可能である。
図4は、振動体20の構成と、振動体とFPC_110との接続部の構成を説明する断面図であり、概ね、図1中に破線枠Aで示す領域から振動体20とFPC_110を抜き出して示す図である。
環状の形状を有する弾性体21は、外周部を構成する基底部21aと、内周部を構成し、ハウジング55に固定される取付部21cと、基底部21aと取付部21cとを連結する連結部21bとが一体的に形成された構造を有する。基底部21aの一方の面(図4での上面)は接触体30と接触する接触面25であり、基底部21aの他方の面(図4での下面)は圧電素子22との接合面となっている。弾性体21は、例えば、取付部21cとハウジング55のそれぞれに螺合可能なネジ溝を設けてネジ溝同士を螺合させることにより、ハウジング55に固定される。
圧電素子22において弾性体21と接合される面には、全面電極等の接地用電極(不図示)が形成されており、接地用電極は弾性体21と電気的に接続されている。前述の通り、弾性体21は外部給電用ハーネス195を通じて接地されているため、接地用電極はGND電位となっている。圧電素子22においてFPC_110が接着される面には、給電パネル23が設けられている。給電パネル23の具体的な配置については、図5を参照して後述する。
FPC_110において圧電素子22の給電パネル23と接触する面には給電電極160が設けられている。圧電素子22の給電パネル23が設けられた面にFPC_110が接着されることで、給電電極160は給電パネル23と導通した状態となっている。
なお、図4では、給電電極160を明示するために給電電極160を一定の厚みを設けて図示し、その厚みによってFPC_110と給電パネル23との間に隙間が表されている。しかし、実際には給電電極160の厚みは薄く、且つ、FPC_110は接着剤により給電パネル23と接着されているため、このような隙間は実質的には存在しない。
給電電極160を通じて給電パネル23へ駆動信号が印加されると、給電パネル23と弾性体21(全面電極)との間に電位差が発生する。つまり、圧電素子22を構成している圧電体に電界が印加されることで、圧電体には圧電効果による変位(変形)が生じ、このときに駆動信号の周波数を調整することにより、前述の9次の進行波を生じさせることができる。なお、振動体に所望の進行波を発生させる方法や構成については、既存の技術であるため、詳細な説明は省略する。
図5は、FPC_110の配線構造と、給電パネル23のパターンと、それらの関係を説明する図である。図5では、FPC_110での外形及び配線と給電パネル23の外形(形状)のみを抽出して重ね合わせており、これらのFPC_110の厚み方向における上下関係については考慮していない。図6(a),(b),(c)はそれぞれ、図5中に示す矢視B−B,C−C,D−DでのFPC_110の断面図である。
図5に示すように、圧電素子22には、略扇形の給電パネル23が周方向に略等間隔に36個配置されている。1つの給電パネル23の周方向の大きさは、駆動振動の周方向波長の略1/4となっている。9次の進行波を発生させるためには、36個の給電パネルには、駆動信号として4相の位相の異なる交流電圧を周方向に周期的に印加する必要がある。そのため、36個のうちの任意の1つの給電パネル23を4n−3(n=1)番目とすると、周方向に数えて4n−3(n=1〜9)番目同士の給電パネル23に同位相の駆動信号が印加されるようにする必要がある。同様に、周方向に数えて4n−2(n=1〜9)番目同士、4n−1(n=1〜9)番目同士、4n(n=1〜9)番目同士に、同位相の駆動信号が印加されるようにする必要がある。
FPC_110は、柔軟な樹脂で形成された平面的な基材に、以下に説明するように、FPC_110の厚み方向の異なる深さ位置に配線が設けられた構造を有する。説明の便宜上、第1の深さ位置に設けられた配線を「上層配線」と称呼し、第2の深さ位置に設けられた配線を「下層配線」と称呼する。
FPC_110の接合部110aには、内周側から外周側へ向けて同心円状に、4本の閉じた環状(輪状)の上層配線151U,152U,153U,154Uが設けられている。上層配線151U〜154Uは、接合部110aの厚み方向の同じ深さ位置に(つまり、同一平面上に)設けられている。
例えば、図6(a)に示されるように、上層配線153Uには、給電パネル23の間隔(4n−1(n=1〜9)番目の給電パネル23の位置)に合わせて、接合部110aの上面に向けて導通穴153uv(スルーホールビア)が設けられている。そして、それぞれの導通穴153uvを介して上層配線153Uと導通するように給電電極160が形成されている。こうして、上層配線153Uと導通する給電電極160は、4n−1(n=1〜9)番目の給電パネル23と電気的に接続される。
同様に、上層配線151Uと導通する給電電極160は4n−3(n=1〜9)番目の給電パネル23と電気的に接続され、上層配線152Uと導通する給電電極160は4n−2(n=1〜9)番目の給電パネル23と電気的に接続される。また、上層配線154Uと導通する給電電極160は、4n(n=1〜9)番目の給電パネル23と電気的に接続される。
上層配線151U〜154Uは環状に形成されている。そのため、接合部110aの厚み方向においての上層配線151U〜154Uの同じ深さ位置において上層配線151U〜154Uから中継部110bへ配線を引き出すことはできない。そのため、接合部110aにおいて上層配線151U〜154Uが設けられている面とは異なる面へ配線を引き出した後、端子部110cへ配線を延設する。
例えば、図6(b)に示すように、上層配線152Uから給電パネル23側の反対側へ導通穴152mvが設けられ、導通穴152mvから下層配線152Lが端子部110cへ向けて(図6(b)で左側へ向けて)延設されている。上層配線151U,153U,154Uについても、導通穴152mvと同様の導通穴を設け、それぞれの導通穴から端子部110cへ向けて下層配線151L,153L,154Lが延設されている。そのため、図6(c)では、下層配線151L〜154Lのみが断面に現れる。なお、接合部110aにおいて最外周に設けられた上層配線154Uについては、導通穴を設けることなく上層配線154UからFPC_110の厚み方向の同じ深さ位置において、中継部110bを経由して端子部110cまで配線を引き出すことができる。
端子部110cの表面及び裏面には、下層配線151L〜154Lをコネクタ190と接続するための端子電極151C〜154Cが設けられている。端子電極151C〜154Cは、端子部110cの一方の表面にのみ設けられていてもよい。なお、端子部110cには、コネクタ190の外部給電用ハーネス195のGND端子に接続されたGND電極155が設けられている。そして、GND電極155において4つの端子電極151C〜154Cの間には、図5に示すように、端子電極151C〜154C間の縁面放電を防止するためのパターンが形成されている。
例えば、図6(b)に示されるように、下層配線152Lは、端子部110cに設けられた導通穴152cvを通じて、端子電極152Cと電気的に接続されている。同様に、下層配線151L,153L,154Lはそれぞれ、導通穴を通じて、端子電極151C,153C,154Cと電気的に接続されている。こうして、FPC_110には、端子電極151C〜154Cから上層配線151U〜154Uまでの独立した4本の配線(以下「配線151〜154」と言う)が形成されている。
なお、FPC_110に形成された配線151〜154が、FPC_110を構成する樹脂材料により互いに絶縁された状態となっていることは言うまでもない。また、図5では下層配線151L〜154Lを直線で簡略化して図示しているため、例えば、下層配線151Lが上層配線152U〜154Uと接触しているかのように見えるが、上述の通りに配線151〜154は独立している。図5では、例えば、上層配線151Uと下層配線151Lとを接続する導通穴151mvを黒点で示し、下層配線151Lが上層配線152U〜154Uとは導通していないことを、導通しない交差位置には黒点を記さないことで模式的に表している。
配線151〜154に所定の周波数の駆動信号が印加されると、給電電極160と給電パネル23を介して圧電素子22の圧電体に交番電界が印加されて圧電素子22に所定のモードの伸縮振動が励起される。これにより、振動体20に前述した進行波が発生し、接触体30を所定の方向に回転させ、回転駆動力をシャフト50から外部へ取り出すことができる。
振動型駆動装置10の駆動中には、振動体20に生じる振動がFPC_110に対して外力として作用する。その結果、FPC_110に応力が生じ、生じた応力によって上層配線151U〜154Uに断線等の損傷が発生することがある。また、FPC_110の中継部110bは、コネクタ190と振動体20の位置関係にも依存するが、所定の角度で曲げられた状態に保持される。そのため、中継部110bに曲げ応力が掛かることで、下層配線151L〜154Lに断線等の損傷が発生することがある。
従来のフレキシブルプリント基板の配線パターンでは、フレキシブルプリント基板内配線に断線が生じた際に、断線箇所から先の給電電極へ駆動信号が伝達されなくなることで、振動体に所望の振動を生じさせることができなくなる。その結果として、振動体と接触体との間で偏摩耗や異常発熱、異常動作音が発生する等して、最終的には駆動不可の状態となる。
これに対して本実施形態に係る振動型駆動装置10では、上層配線151U〜154Uに断線が発生した場合に駆動信号が伝達されなくなる給電パネル23が生じてしまうことを抑制することができる。以下、その理由について図7を参照して説明する。
図7は、上層配線152Uに断線が生じ、上層配線151U,153U,154U及び下層配線151L〜154Lに断線は生じていない状態を模式的に示す図である。なお、図7では給電パネル23の図示を省略している。
例えば、断線が生じていない配線151では、端子電極151Cに供給された駆動信号は、導通穴151Cv(不図示)、下層配線151L、導通穴151mv、上層配線151U、導通穴151uv(不図示)を経由して9つの給電電極160へ伝わる。
これに対して、上層配線152Uの位置E1で断線が生じている配線152でも、位置E1に隣接する給電電極160A,160Bへ、以下のルートで駆動信号を伝えることができる。すなわち、端子電極151Cに供給された駆動信号は、導通穴152Cv(不図示)、下層配線152L、導通穴151mvを経由し、上層配線152Uを図7では時計まわり方向に経由して給電電極160Aへ伝わるが、断線した位置E1より先には伝わらない。しかし、端子電極151Cに供給された駆動信号は、導通穴152Cv(不図示)、下層配線152L、導通穴151mvを経由した後に、上層配線152Uを図7において反時計まわり方向に伝わって給電電極160Bへ伝わる。こうして、位置E1で断線が生じていても、位置E1に隣接する2カ所の給電電極160A,160Bに駆動信号を伝えることができるため、振動体20に所望の振動を励起させ続けることができる。他の上層配線151U,153U,154Uに断線が生じた場合については、位置E1で断線が発生している配線152についての説明に準ずるため、説明を省略する。
ここで、FPC_110に対する比較例としてのFPCについて説明する。図8は、比較例1のFPC_910の概略構成を示す平面図である。FPC_910は、上層配線911U〜914UがFPC_110の上層配線151U〜154Uと異なっている以外は、FPC_110と同等の構造を有する。そのため、図8において、FPC_910の構成要素のうちFPC_110の構成要素と実質的に同じものについては、同じ符号を付しており、それらについての説明は省略する。
図7に示した給電電極160A,160B間の位置E1と同じ位置で、上層配線912Uに断線が生じた場合について説明する。上層配線912Uは、下層配線152Lとの接続位置から、図8において反時計まわり方向に円を描くように延設され、9つ目の給電電極160A3を終端としている。つまり、上層配線912Uは、環(輪)として閉じていない。そのため、位置E1で断線が発生した場合、位置E1よりも反時計まわり方向にある4カ所の給電電極160A,160A1,160A2,160A3へ駆動信号は伝えられなくなる。その結果、圧電素子22に所望の駆動信号を励起させることができなくなってしまい、所望の駆動性能を得ることができずに最終的には故障が発生してしまう。
上層配線911U,913U,914Uもそれぞれ、上層配線912Uと同様に、下層配線151L,153L,154Lとの接続位置から、図8において反時計まわり方向に円を描くように延設されて、9つ目の給電電極を終端としている。そのため、上層配線911U,913U,914Uに断線が生じると、断線部よりも反時計まわり方向に位置する給電電極への駆動信号の伝達ができなくなる。
以上の説明から、本実施形態にでのFPC_110では、FPC_910で生じる問題の発生を抑制することができることがわかる。このように本実施形態では、複数の上層配線のそれぞれにおいて、隣接する給電電極間に断線が生じても、全ての給電電極へ駆動信号を伝達することができるため、振動型駆動装置を正常な状態で駆動し続けることが可能となる。
<第2実施形態>
第2実施形態では、FPCの別の実施形態について説明する。なお、第2実施形態に係るFPCを用いた振動型駆動装置の全体的な構成は、第1実施形態に準ずるため、図示と説明を省略する。
図9は、第2実施形態に係るFPC_110Pの配線構造を説明する図である。なお、図9は、図5と同様に表されているが、給電パネル23の図示を省略している。また、FPC_110Pの配線要素のうち、第1実施形態で説明したFPC_110の配線要素と実質的に同じものについては同じ符号を付している。
FPC_110Pの配線は、図6に示したFPC_110の配線と同様に、給電電極、上層配線、給電電極と上層配線とを接続する導通穴、下層配線、上層配線と下層配線とを接続する導通穴、端子電極、端子電極と下層配線とを接続する導通穴を有する。
一例として、配線251について説明する。導通穴(不図示)を介して端子電極151Cと導通するように下層配線251L1が形成されている。また、中継部110bの幅方向(図9の左右方向)に下層配線251L1から一定距離だけ離れた位置に下層配線251L1が形成されている。端子部110cの所定位置において、下層配線251L1から上層配線が設けられる深さ位置と同じ深さ位置へ導通穴(不図示)が設けられている。そして、この導通穴から上層配線が設けられる深さ位置と同じ深さ位置において、下層配線251L2側へ接続配線251Nが設けられ、接続配線251Nから下層配線251L2に接続される導通穴(不図示)を設けられている。こうして、下層配線251L1と下層配線251L2とが接続されている。下層配線251L1,251L2はそれぞれ、導通穴(不図示)を通じて、上層配線251Uに接続されている。つまり、上層配線251Uに対して、下層配線251L1,251L2は並列接続される。上層配線251Uは、下層配線251L1,L2との接続部から、図9上で反時計まわり方向へ円を描きながら伸びて、9つ目の給電電極160を終端としている。
同様に、配線252は、端子電極152Cから、接続配線252Nにより接続された下層配線252L1,252L2を介して上層配線252Uへと延びており、9つ目の給電電極を終端としている。配線253は、端子電極153Cから、接続配線253Nにより接続された下層配線253L1,253L2を介して上層配線253Uへと延びており、9つめの給電電極を終端としている。配線254は、端子電極154Cから、接続配線254Nにより接続された下層配線254L1,254L2を介して上層配線254Uへと延びており、9つ目の給電電極を終端としている。なお、FPC_110Pでは、接続配線251N〜254Nは、端子部110cに設けられているが、中継部110bに設けられていてもよい。
FPC_110Pの下層配線では、例えば、導通する下層配線151L1と下層配線151L2は、中継部110bの幅方向で一定の間隔を有するように設けられている。そして、下層配線251L1,251L2間に、異なる位相の交流電圧が印加される3本の下層配線253L2,252L1,254L2が配線されている。このような形態は、互いに導通する下層配線252L1,252L2間、下層配線253L1,253L2間、下層配線254L1,254L2間も同様である。このような配線とする利点について、図10を参照して説明する。
図10は、隣り合う下層配線251L1,253L2に断線が生じ、その他の下層配線には断線が生じていない状態を模式的に示す図である。中継部110bは湾曲した状態で保持されるため、下層配線に応力が掛かって断線するおそれがある。一例として、下層配線251L1に位置E2で断線が生じた場合、位置E2から上層配線252Uへ駆動信号が伝達されなくなる。また、位置E2の近傍に作用した応力が大きい場合、位置E2の隣の下層配線において位置E2に近い位置に断線が発生する可能性が大きくなる。ここでは、位置E2に隣接する位置E3でも、下層配線253L2に断線が生じたものとする。
FPC_110Pでは、圧電素子22へ同位相の駆動信号を伝達する2本の下層配線間に、異なる位相の駆動信号を伝達する下層配線を設けた構造としている。つまり、下層配線251L1の隣には、異なる位相の駆動信号を伝達するための下層配線を設け、下層配線251L2を下層配線251L1から離れた位置に設けることで、下層配線251L1,251L2に同時に断線が生じ難い構造となっている。
図10の例では、下層配線251L1に位置E2で断線が生じても、端子電極151Cから下層配線252L2への電気的な接続は保持されているため、下層配線251L2を通じて上層配線251Uへ駆動信号を伝達することができる。よって、上層配線251Uに接続された給電電極160から圧電素子22への駆動信号の印加に支障は生じない。同様に、位置E2に隣接する位置E3で下層配線253L2に断線が生じても、端子電極153Cから下層配線253L1を通じて上層配線253Uへ駆動信号を伝達することができる。そのため、上層配線253Uに接続された給電電極160から圧電素子22への駆動信号の印加に支障は生じない。なお、他の下層配線に断線が生じた場合については、位置E2や位置E3で断線が発生した場合と同様であるため、説明を省略する。
ここで、FPC_110Pに対する比較例としてのFPCについて説明する。図11は、比較例2のFPC_910の概略構成を示す平面図である。FPC_920は、下層配線921L1〜924L1,921L2〜924L2がFPC_110Pの下層配線251L1〜254L1,251L2〜254L2Uと異なっている以外は、FPC_110Pと同等の構造を有する。そのため、図11において、FPC_920の構成要素のうちFPC_110Pの構成要素と実質的に同じものについては、同じ符号を付しており、それらについての説明は省略する。
端子電極151Cから延びる下層配線921L1は、端子部110cにおいて、下層配線921L1に隣接するように設けられた下層配線921L2と接続されている。なお、下層配線921L1と下層配線921L2とは、FPC_920の厚み方向の同じ深さ位置に形成され、これらの間が接続配線で接続されている。下層配線921L1,921L2は、上層配線251Uに接続されている。その他の下層配線については、下層配線921L1,921L2と同様に形成されているため、説明を省略する。
図10に示した位置E2,E3でFPC_920に断線が発生した場合、断線は下層配線921L1,921L2で発生したことになり、この場合には、端子電極151Cから上層配線251Uへの駆動信号の伝達ができなくなる。その結果、圧電素子22に所望の駆動信号を励起させることができなくなってしまい、所望の駆動性能を得ることができずに最終的には故障が発生してしまう。その他の下層配線についても、同様の断線が生じた場合には、対応する上層配線への駆動信号の伝達ができなくなってしまう。
以上の説明から、本実施形態にでのFPC_110Pでは、FPC_920で生じる問題の発生を抑制することができることがわかる。このように本実施形態では、複数の下層配線に断線が生じた場合であっても、給電電極へ駆動信号を伝達することができなくなってしまう事態が生じることを抑制して、振動型駆動装置を正常な状態で駆動し続けることが可能となる。
なお、FPC_110Pでは、同位相の駆動信号を伝達する2本の下層配線間に3本の異なる位相の駆動信号を伝達する下層配線を設けた構成について説明した。しかし、これに限られず、同位相の駆動信号を伝達する2本の下層配線間に異なる位相の駆動信号を伝達する配線が少なくとも1本設けられいれば、上記効果を得ることは可能である。
また、同位相の駆動信号を伝達する2本の下層配線を有する構成について説明したが、同位相の駆動信号を伝達する3本以上の下層配線を有する構成とすることで、上記効果をより確実に得ることが可能になる。更に、端子電極151C〜154Cのそれぞれから下層配線251L1〜254L1を引き出した後に分岐させた下層配線251L2〜254L2を備える構成について説明したが、8カ所に端子電極を設けて、それぞれから下層配線を引き出した構成としてもよい。
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態とFPC_110と第2実施形態のFPC_110Pとを組み合わせた構成について説明する。図12は、第3実施形態に係るFPC_110Qの配線構造を説明する図である。図12は、図5と同様に表されているが、給電パネル23の図示を省略している。FPC_110Qは、第1実施形態で説明したFPC_110が有する上層配線151U〜154Uに対して、第2実施形態で説明したFPC_110Pが有する下層配線251L1〜254L1,251L2〜254L2を有している。
FPC_110Qでは、上層配線151U〜154Uのそれぞれで断線が生じた場合であっても、断線箇所が1箇所であれば、全ての給電電極160へ駆動信号を伝達することができる。また、下層配線251L1〜254L1,251L2〜254L2において、互いに導通する2本の下層配線のそれぞれに断線が生じない限りは、対応する上層配線への駆動信号の伝達に支障は生じない。よって、FPC_110Qを用いて振動型駆動装置を構成することにより、FPC_110やFPC_110Pを用いて振動型駆動装置を構成する場合によりも、更に信頼性を高めることが可能となる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。例えば、第2実施形態で説明した、同一位相の配線を複線化した構成は、接触体を回転駆動する振動型駆動装置に限らず、リニア駆動型の振動型駆動装置に用いられるフレキシブル基板へ適用することが可能である。
10 振動型駆動装置
20 振動体
22 圧電素子
30 接触体
110 フレキシブルプリント基板
110a 接合部
151U,152U,153U,154U 上層配線

Claims (10)

  1. 電気−機械エネルギ変換素子を有する振動体と、
    前記振動体と接触し、前記振動体と相対移動する接触体と、
    前記電気−機械エネルギ変換素子へ駆動信号を供給するフレキシブル基板と、を備える振動型駆動装置であって、
    前記フレキシブル基板は、前記電気−機械エネルギ変換素子と接合される環状の第1の配線部を有し、前記第1の配線部に、前記電気−機械エネルギ変換素子へ駆動信号を供給する複数の第1の配線が、閉じた環状に互いに絶縁されて設けられていることを特徴とする振動型駆動装置。
  2. 前記フレキシブル基板は、前記第1の配線部から延出する第2の配線部を有し、
    前記複数の第1の配線ごとに接続される第2の配線が、前記第2の配線部に設けられ、
    前記第2の配線はそれぞれ、対応する第1の配線に対して並列に接続される少なくとも2本の配線を有し、
    所定の第1の配線に接続された前記第2の配線の少なくとも2本の配線の間に、前記所定の第1の配線とは異なる第1の配線に接続される第2の配線が少なくとも1本は配置されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
  3. 前記フレキシブル基板は、前記第2の配線部と接続された第3の配線部を有し、
    前記第3の配線部は、前記第2の配線と接続される端子電極を有し、
    前記端子電極は、前記複数の第1の配線と同じ数だけ設けられ、
    前記複数の第2の配線はそれぞれ、前記端子電極から引き出された後に少なくとも2本の配線に分岐していることを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置。
  4. 前記第2の配線部は、湾曲した状態で配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の振動型駆動装置。
  5. 前記複数の第1の配線は、前記フレキシブル基板の厚み方向において同じ深さ位置に設けられ、前記第2の配線は、前記フレキシブル基板において前記第1の配線とは異なる深さ位置に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
  6. 前記第1の配線部は、所定の間隔で前記複数の第1の配線ごとに前記振動体と接合される面に取り出され、前記電気−機械エネルギ変換素子の電極と導通する複数の給電電極を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
  7. 電気−機械エネルギ変換素子を有する振動体と、
    前記振動体と接触し、前記振動体と相対移動する接触体と、
    前記電気−機械エネルギ変換素子へ駆動信号を供給するフレキシブル基板と、を備える振動型駆動装置であって、
    前記フレキシブル基板は、
    前記電気−機械エネルギ変換素子に接着される第1の配線部と、
    前記第1の配線部から所定の方向へ延出する第2の配線部と、を有し、
    前記第1の配線部に設けられて前記電気−機械エネルギ変換素子へ駆動信号を供給する第1の配線に接続されるように、前記第2の配線部に第2の配線が設けられ、
    前記第2の配線は、異なる位相の駆動信号を供給する複数の配線を有すると共に、前記複数の配線は、同じ位相の駆動信号を供給する少なくとも2本の配線を含み、前記同じ位相の駆動信号を供給する少なくとも2本の配線の間に、別の位相の駆動信号を供給する少なくとも1本の配線が設けられていることを特徴とする振動型駆動装置。
  8. 平板状で環状の形状を有する第1の配線部と、
    前記第1の配線部から所定の方向に延出する第2の配線部と、を有するフレキシブル基板であって、
    前記第1の配線部は、
    前記フレキシブル基板の厚み方向での同じ深さ位置に閉じた環状に互いに絶縁して設けらた複数の第1の配線と、
    前記複数の第1の配線のそれぞれから所定の位置において前記第1の配線部の表面に取り出された複数の給電電極と、を有し、
    前記第2の配線部は、前記フレキシブル基板の厚み方向で前記第1の配線とは異なる深さ位置に設けられて、前記複数の第1の配線ごとに接続された複数の第2の配線を有することを特徴とするフレキシブル基板。
  9. 前記複数の第2の配線はそれぞれ、対応する第1の配線に並列に接続される少なくとも2本の配線を有し、
    前記第2の配線部では、前記複数の第2の配線のうち所定の第2の配線の並列に接続された2本の配線の間に、別の第2の配線の少なくとも1本の配線が配置されていることを特徴とする請求項8に記載のフレキシブル基板。
  10. 複数の第1の配線が設けられた第1の配線部と、
    前記第1の配線部から所定の方向に延出する第2の配線部と、を有するフレキシブル基板であって、
    前記第2の配線部は、
    前記複数の第1の配線ごとに接続される複数の第2の配線を有し、
    前記複数の第2の配線はそれぞれ、対応する第1の配線に並列に接続される少なくとも2本の配線を有し、
    前記第2の配線部では、前記複数の第2の配線のうち所定の第2の配線の並列に接続された2本の配線の間に、別の第2の配線の少なくとも1本の配線が配置されていることを特徴とするフレキシブル基板。
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