以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
まず、本実施の形態に係る、におい判定システムの構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る、におい判定システム10の構成図である。
図1に示すように、におい判定システム10は、においの判定の対象の気体(以下「サンプルガス」という。)が注入されるサンプルガス注入部11と、キャリアーガスとしての空気を周囲から取り込んで送り出すポンプ12と、ポンプ12によって送り出されたキャリアーガスから揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)を除去するVOCフィルター13と、サンプルガス注入部11から注入されたサンプルガス、および、ポンプ12によって送り出されてVOCフィルター13を通過したキャリアーガスが混合される混合部14と、混合部14でキャリアーガスと混合されてキャリアーガスによって移動させられたサンプルガスの成分を分離するカラム15と、カラム15によって成分が分離された気体を検知するガスセンサーとしてのPID(Photo Ionization Detector)センサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18と、サンプルガスのにおいの質および強度を表示するためのコンピューター20とを備えている。すなわち、におい判定システム10は、サンプルガスのにおいの質および強度をガスクロマトグラフィーを利用して判定するシステムである。
カラム15としては、パックドカラムおよびキャピラリーカラムのいずれが採用されても良いが、気体の成分を分離する性能が高いキャピラリーカラムが採用されることが好ましい。
半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18は、共に半導体ガスセンサーであるが、気体の検知の性能、すなわち、検知可能な気体の種類が互いに異なるガスセンサーである。PIDセンサー16は、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18のいずれとも、気体の検知の性能が異なる。すなわち、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18は、種類が異なるガスセンサーである。例えば、PIDセンサー16は、VOCガスの検知の性能が高く、半導体ガスセンサー17は、酢酸系の気体の検知の性能が高く、半導体ガスセンサー18は、硫黄系の気体の検知の性能が高い。
図2は、コンピューター20のブロック図である。
図2に示すように、コンピューター20は、種々の操作が入力されるキーボード、マウスなどの入力デバイスである操作部21と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部22と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部23と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部24と、コンピューター20全体を制御する制御部25とを備えている。コンピューター20は、例えば、PC(Personal Computer)である。
記憶部24は、においを判定するための、におい判定プログラム24aを記憶している。におい判定プログラム24aは、例えば、コンピューター20の製造段階でコンピューター20にインストールされていても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリー、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの外部の記憶媒体からコンピューター20に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター20に追加でインストールされても良い。
記憶部24は、ニューラルネットワーク24bを記憶可能である。また、記憶部24は、ニューラルネットワーク24bと同様な構成のニューラルネットワークを、ニューラルネットワーク24b以外にも少なくとも1つ記憶可能である。記憶部24は、病臭、口臭、コーヒーの香り、ワインの香り、養鶏場の臭い、ごみ処理場の臭い、家庭臭など、においのカテゴリー毎に、後述する判定モード1用の、においの質を判定するためのニューラルネットワークである、におい質ニューラルネットワークと、判定モード1用の、においの強度を判定するためのニューラルネットワークである、におい強度ニューラルネットワークと、後述する判定モード2用のにおい質ニューラルネットワークと、判定モード2用のにおい強度ニューラルネットワークと、後述する判定モード3用のにおい質ニューラルネットワークと、判定モード3用のにおい強度ニューラルネットワークとを記憶可能である。
記憶部24は、ニューラルネットワークの学習データのためのデータ(以下「学習データ用データ」という。)24cを記憶可能である。また、記憶部24は、学習データ用データ24cと同様な構成の学習データ用データを、学習データ用データ24c以外にも少なくとも1つ複数記憶可能である。記憶部24は、ニューラルネットワークと同様に、においのカテゴリー毎に、複数の学習データ用データを記憶可能である。
制御部25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部24に記憶されているプログラムを実行する。
制御部25は、におい判定プログラム24aを実行することによって、ガスセンサーの検知結果に基づいたクロマトグラムをガスセンサー毎に生成するクロマトグラム生成手段25aと、においの質および強度をニューラルネットワークを用いて判定する、におい判定手段25bとを実現する。
クロマトグラム生成手段25aは、サンプルガス注入部11からのサンプルガスの注入が完了した後の特定のタイミングからPIDセンサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18のそれぞれの検知値(AD値)の取り込みを開始する。検知値の取り込みを開始したタイミングを0秒とすると、クロマトグラム生成手段25aは、1秒毎に2999秒まで検知値を取り込む。すなわち、クロマトグラム生成手段25aは、PIDセンサー16の検知結果に基づいた、3000個の検知値からなるクロマトグラム(以下「PIDクロマトグラム」という。)と、半導体ガスセンサー17の検知結果に基づいた、3000個の検知値からなるクロマトグラム(以下「半導体Aクロマトグラム」という。)と、半導体ガスセンサー18の検知結果に基づいた、3000個の検知値からなるクロマトグラム(以下「半導体Bクロマトグラム」という。)との3つのクロマトグラムを、サンプルガスの測定毎に生成する。
図3は、クロマトグラム生成手段25aによって生成されるクロマトグラムの一例を示す図である。
図3において、「PID」、「半導体A」、「半導体B」とは、それぞれ、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17、半導体ガスセンサー18を意味している。
図3には、PIDクロマトグラムと、半導体Aクロマトグラムと、半導体Bクロマトグラムとが重ねて示されている。
図4(a)は、におい判定システム10で使用される、におい質ニューラルネットワーク71の一例を示す図である。図4(b)は、におい判定システム10で使用される、におい強度ニューラルネットワーク72の一例を示す図である。
図4(a)に示す、におい質ニューラルネットワーク71は、コーヒーの香りの質を判定するためのニューラルネットワークの一例である。図4(b)に示す、におい強度ニューラルネットワーク72は、コーヒーの香りの強度を判定するためのニューラルネットワークの一例である。
におい質ニューラルネットワーク71は、クロマトグラムにおける時間毎の値を説明変数とし、例えば、モカの香り、コナの香り、キリマンジャロの香りなど、においの質を目的変数とするニューラルネットワークである。におい質ニューラルネットワーク71の設定項目は、入力側のノード、すなわち、説明変数の数を示す入力ノード数と、隠れ層の層数と、隠れ層の各層のノードの数と、出力側のノード、すなわち、目的変数の数を示す出力ノード数と、活性化関数に何を使用するかということと、最適化として何を使用するかということと、Batch normalizationの使用の有無と、Weight decayの使用の有無と、Dropoutの使用の有無と、学習データ毎の教師有り学習の繰り返しの回数を示す教師学習繰返し回数とである。図4(b)に示す、におい質ニューラルネットワーク71は、入力ノード数がクロマトグラムにおける時間毎の値の個数と同一の3000個であり、隠れ層の1層目のノードの数を示す隠れノード1数が300個であり、隠れ層の2層目のノードの数を示す隠れノード2数が200個であり、出力ノード数がモカの香り、コナの香り、キリマンジャロの香りなどの50個であり、活性化関数がReLUであり、最適化がAdamであり、Batch normalizationを使用し、Weight decayを使用し、Dropoutを使用し、教師学習繰返し回数が10000回である。
におい強度ニューラルネットワーク72は、クロマトグラムにおける時間毎の値を説明変数とし、例えば、強度1〜強度6など、においの強度を目的変数とするニューラルネットワークである。におい強度ニューラルネットワーク72の設定項目は、におい質ニューラルネットワーク71の設定項目と同様である。図4(b)に示す、におい強度ニューラルネットワーク72は、入力ノード数がクロマトグラムにおける時間毎の値の個数と同一の3000個であり、隠れノード1数が50個であり、出力ノード数が強度1〜強度6の6個であり、活性化関数がReLUであり、最適化がAdamであり、Batch normalizationを使用し、Weight decayを使用し、Dropoutを使用し、教師学習繰返し回数が3000回である。
図5は、学習データ用データ24cの構成を示す図である。
図5に示すように、学習データ用データ24cは、サンプルガスの測定によってクロマトグラム生成手段25aによって生成されたオリジナルデータ30と、判定モード1のためのデータ(以下「判定モード1用データ」という。)40と、判定モード2のためのデータ(以下「判定モード2用データ」という。)50と、判定モード3のためのデータ(以下「判定モード3用データ」という。)60とを含んでいる。
オリジナルデータ30は、同一のサンプルガスの測定によってクロマトグラム生成手段25aによって生成された、PIDクロマトグラムのデータ(以下「PIDクロマトグラムデータ」という。)31と、半導体Aクロマトグラムのデータ(以下「半導体Aクロマトグラムデータ」という。)32と、半導体Bクロマトグラムのデータ(以下「半導体Bクロマトグラムデータ」という。)33とを含んでいる。
判定モード1用データ40は、基本情報データ41と、PIDクロマトグラムデータ31、半導体Aクロマトグラムデータ32および半導体Bクロマトグラムデータ33に基づいて生成された、3000個の値からなる、1つのクロマトグラム(以下「判定モード1用クロマトグラム」という。)のデータ(以下「判定モード1用クロマトグラムデータ」という。)42と、においの質の判定用のデータ(以下「質判定用データ」という。)43と、においの強度の判定用のデータ(以下「強度判定用データ」という。)44とを含んでいる。
基本情報データ41は、学習データ用データ24cの生成の基になった、サンプルガスの測定の識別情報である測定ID41aと、この測定が行われた年月日を示す測定年月日41bと、この測定が行われた時刻を示す測定時刻41cと、この測定の測定モード41dと、この測定の測定者の識別情報である測定者ID41eと、測定者によるコメント41fとを含んでいる。なお、測定者は、臭気判定士の資格者であることが好ましい。
におい判定システム10は、測定の総時間、サンプルガスをカラム15に注入する流量、カラム15の温度変化の設定など、測定の方法をパターン化した測定モードを幾つか採用することができる。測定モード41dは、におい判定システム10が採用している測定モードのうち、学習データ用データ24cの生成の基になった、サンプルガスの測定で実行されたものである。
コメント41fは、測定者によって自由に記載されるものである。例えば、コメント41fは、「きのこのにおい」など、測定に関して測定者が感じた内容が記載される。
質判定用データ43は、測定者によって判定された、においの質43aと、判定の成否を示す成否情報43bと、判定が失敗した場合の正しい質が示される修正情報43cと、質43aを教師データとして使用する場合に立てて、質43aを教師データとして使用しない場合に倒す教師データフラグ43dとを含んでいる。教師データフラグ43dが立てられている場合、説明変数としての判定モード1用クロマトグラムデータ42と、教師データとしての質43aとの組み合わせが、判定モード1用のにおい質ニューラルネットワークの学習データになる。
強度判定用データ44は、測定者によって判定された、においの強度44aと、判定の成否を示す成否情報44bと、判定が失敗した場合の正しい強度が示される修正情報44cと、強度44aを教師データとして使用する場合に立てて、強度44aを教師データとして使用しない場合に倒す教師データフラグ44dとを含んでいる。教師データフラグ44dが立てられている場合、説明変数としての判定モード1用クロマトグラムデータ42と、教師データとしての強度44aとの組み合わせが、判定モード1用のにおい強度ニューラルネットワークの学習データになる。
判定モード2用データ50は、基本情報データ51と、PIDクロマトグラムデータ31、半導体Aクロマトグラムデータ32および半導体Bクロマトグラムデータ33に基づいて生成された、3000個の値からなる、1つのクロマトグラム(以下「判定モード2用クロマトグラム」という。)のデータ(以下「判定モード2用クロマトグラムデータ」という。)52と、質判定用データ53と、強度判定用データ54とを含んでいる。
基本情報データ51は、基本情報データ41と同一内容の情報である。
質判定用データ53は、測定者によって判定された、においの質53aと、判定の成否を示す成否情報53bと、判定が失敗した場合の正しい質が示される修正情報53cと、質53aを教師データとして使用する場合に立てて、質53aを教師データとして使用しない場合に倒す教師データフラグ53dとを含んでいる。質53aは、質43aと同一内容の情報である。教師データフラグ53dが立てられている場合、説明変数としての判定モード2用クロマトグラムデータ52と、教師データとしての質53aとの組み合わせが、判定モード2用のにおい質ニューラルネットワークの学習データになる。
強度判定用データ54は、測定者によって判定された、においの強度54aと、判定の成否を示す成否情報54bと、判定が失敗した場合の正しい強度が示される修正情報54cと、強度54aを教師データとして使用する場合に立てて、強度54aを教師データとして使用しない場合に倒す教師データフラグ54dとを含んでいる。強度54aは、強度44aと同一内容の情報である。教師データフラグ54dが立てられている場合、説明変数としての判定モード2用クロマトグラムデータ52と、教師データとしての強度54aとの組み合わせが、判定モード2用のにおい強度ニューラルネットワークの学習データになる。
判定モード3用データ60は、基本情報データ61と、PIDクロマトグラムデータ31、半導体Aクロマトグラムデータ32および半導体Bクロマトグラムデータ33に基づいて生成された、3000個の値からなる、1つのクロマトグラム(以下「判定モード3用クロマトグラム」という。)のデータ(以下「判定モード3用クロマトグラムデータ」という。)62と、質判定用データ63と、強度判定用データ64とを含んでいる。
基本情報データ61は、基本情報データ41と同一内容の情報である。
質判定用データ63は、測定者によって判定された、においの質63aと、判定の成否を示す成否情報63bと、判定が失敗した場合の正しい質が示される修正情報63cと、質63aを教師データとして使用する場合に立てて、質63aを教師データとして使用しない場合に倒す教師データフラグ63dとを含んでいる。質63aは、質43aと同一内容の情報である。教師データフラグ63dが立てられている場合、説明変数としての判定モード3用クロマトグラムデータ62と、教師データとしての質63aとの組み合わせが、判定モード3用のにおい質ニューラルネットワークの学習データになる。
強度判定用データ64は、測定者によって判定された、においの強度64aと、判定の成否を示す成否情報64bと、判定が失敗した場合の正しい強度が示される修正情報64cと、強度64aを教師データとして使用する場合に立てて、強度64aを教師データとして使用しない場合に倒す教師データフラグ64dとを含んでいる。強度64aは、強度44aと同一内容の情報である。教師データフラグ64dが立てられている場合、説明変数としての判定モード3用クロマトグラムデータ62と、教師データとしての強度64aとの組み合わせが、判定モード3用のにおい強度ニューラルネットワークの学習データになる。
次に、におい判定システム10における、においの判定のモードについて説明する。
におい判定システム10には、においの判定のモードとして、判定モード1、判定モード2および判定モード3が存在する。
判定モード1は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムにおける波形の中で最もピーク値が高い波形を組み合わせて集約した1つのクロマトグラム、すなわち、判定モード1用クロマトグラムを生成し、におい質ニューラルネットワーク、および、におい強度ニューラルネットワークのそれぞれに判定モード1用クロマトグラムを入力するモードである。
例えば、PIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムが図3に示すクロマトグラムである場合、判定モード1用クロマトグラムは、例えば、図6に示すようになる。図6において、「PID」、「半導体A」、「半導体B」とは、それぞれ、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17、半導体ガスセンサー18を意味している。図6においては、波形81aが半導体Aクロマトグラムにおける波形であり、波形81bが半導体Bクロマトグラムにおける波形であり、波形81aおよび波形81b以外の波形である波形81cがPIDクロマトグラムにおける波形である。
判定モード2は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムにおける波形の中で最もピーク値が高い波形を組み合わせて集約し、基になったPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報を付加した1つのクロマトグラム、すなわち、判定モード2用クロマトグラムを生成し、におい質ニューラルネットワーク、および、におい強度ニューラルネットワークのそれぞれに判定モード2用クロマトグラムを入力するモードである。すなわち、判定モード2用クロマトグラムは、判定モード1用クロマトグラムに、基になったPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報を付加したクロマトグラムである。ここで、区別情報は、波形の形状である。すなわち、判定モード2用クロマトグラムにおいては、基になったクロマトグラムがPIDクロマトグラムである波形は元のままの形状が維持され、基になったクロマトグラムが半導体Aクロマトグラムである波形は特定の幅のパルス波に変更され、基になったクロマトグラムが半導体Bクロマトグラムである波形は、基になったクロマトグラムが半導体Aクロマトグラムである波形の幅より短い特定の幅のパルス波に変更される。
例えば、PIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムが図3に示すクロマトグラムである場合、判定モード2用クロマトグラムは、例えば、図7に示すようになる。図7において、「PID」、「半導体A」、「半導体B」とは、それぞれ、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17、半導体ガスセンサー18を意味している。図7において、波形82aは、図6に示す波形81aを、特定の幅のパルス波に変更したものであり、波形82bは、図6に示す波形81bを、波形82aの幅より短い特定の幅のパルス波に変更したものである。
判定モード3は、判定モード2用クロマトグラムに対して、基になったクロマトグラムがPIDクロマトグラムである全ての波形において、ピーク値以外の全ての値をゼロにするように、波形の形状を単純化したクロマトグラム、すなわち、判定モード3用クロマトグラムを生成し、におい質ニューラルネットワーク、および、におい強度ニューラルネットワークのそれぞれに判定モード3用クロマトグラムを入力するモードである。
例えば、PIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムが図3に示すクロマトグラムである場合、判定モード3用クロマトグラムは、例えば、図8に示すようになる。図8において、「PID」、「半導体A」、「半導体B」とは、それぞれ、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17、半導体ガスセンサー18を意味している。図8において、波形82cは、図7に示す波形81cを、波形82bの幅より短い特定の幅、例えば、最小の幅である1秒分の幅のパルス波に変更したものである。
次に、におい判定システム10を使用した学習データ用データの生成方法について説明する。
図9は、におい判定システム10を使用した学習データ用データの生成方法のフローチャートである。
図9に示すように、測定者は、サンプルガスを入れるためのサンプルバッグに一定量のサンプルガスを入れる(S101)。例えば、測定者は、容量が1リットルであるサンプルバッグに、サンプルガスを充満させる。
次いで、測定者は、S101においてサンプルバッグに入れたサンプルガスのにおいを嗅ぎ、サンプルガスのにおいの質がサンプルガスのカテゴリーの、におい質ニューラルネットワークにおいて定められた目的変数のいずれに該当するかということと、サンプルガスのにおいの強度がサンプルガスのカテゴリーの、におい強度ニューラルネットワークにおいて定められた目的変数のいずれに該当するかということとを判定する(S102)。
次いで、測定者は、今回のサンプルガスに対応する学習データ用データにおいて、基本情報データと、質判定用データにおける質と、強度判定用データにおける強度とを操作部21から登録する(S103)。ここで、測定者は、質判定用データにおける質として、S102において判定した、においの質を登録し、強度判定用データにおける強度として、S102において判定した、においの強度を登録する。
次いで、測定者は、S101においてサンプルガスを入れたサンプルバッグをサンプルガス注入部11にセットした後、予め定められた測定条件に応じた測定を、操作部21を介してコンピューター20に指示する(S104)。ここで、測定者は、S104の指示において、今回のサンプルガスのカテゴリーを指定する。
したがって、コンピューター20のクロマトグラム生成手段25aは、予め定められた測定条件に応じた測定を実行してPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムを生成し、S104における指示において指定されたカテゴリーにおいて、それぞれ、今回のサンプルガスに対応する学習データ用データにおいてPIDクロマトグラムデータ、半導体Aクロマトグラムデータおよび半導体Bクロマトグラムデータとして登録する(S105)。
次いで、コンピューター20の、におい判定手段25bは、S105において生成されたPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムに基づいて、判定モード1用クロマトグラム、判定モード2用クロマトグラムおよび判定モード3用クロマトグラムを生成し、それぞれ、今回のサンプルガスに対応する学習データ用データにおいて判定モード1用クロマトグラムデータ、判定モード2用クロマトグラムデータおよび判定モード3用クロマトグラムデータとして登録する(S106)。
次いで、におい判定手段25bは、今回のサンプルガスに対応する学習データ用データにおける全ての教師データフラグを立てることによって、各ニューラルネットワークに、各クロマトグラムデータを学習させる(S107)。すなわち、におい判定手段25bは、判定モード1用のにおい質ニューラルネットワークに判定モード1用クロマトグラムデータを学習させ、判定モード1用のにおい強度ニューラルネットワークに判定モード1用クロマトグラムデータを学習させ、判定モード2用のにおい質ニューラルネットワークに判定モード2用クロマトグラムデータを学習させ、判定モード2用のにおい強度ニューラルネットワークに判定モード2用クロマトグラムデータを学習させ、判定モード3用のにおい質ニューラルネットワークに判定モード3用クロマトグラムデータを学習させ、判定モード3用のにおい強度ニューラルネットワークに判定モード3用クロマトグラムデータを学習させる。
図9に示す方法は、S107の工程の後、終了する。
図9に示す方法が繰り返されて多数の測定者のそれぞれの学習データ用データが生成されることによって、各ニューラルネットワークにおける判定の精度が向上する。
次に、におい判定システム10を使用したニューラルネットワークの検証方法について説明する。
図10は、におい判定システム10を使用したニューラルネットワークの検証方法のフローチャートである。
図10に示すように、作業者は、特定のカテゴリーのニューラルネットワークの検証を希望する場合、特定のカテゴリーのニューラルネットワークの検証を操作部21を介してコンピューター20に指示する(S121)。
コンピューター20のにおい判定手段25bは、特定のカテゴリーのニューラルネットワークの検証が指示されると、指定されたカテゴリーの各ニューラルネットワークに各ニューラルネットワーク用のクロマトグラムを入力することによって、各ニューラルネットワークに判定を実行させる(S122)。すなわち、におい判定手段25bは、判定モード1用のにおい質ニューラルネットワークに全ての判定モード1用クロマトグラムデータのそれぞれに基づいて、においの質を判定させ、判定モード1用のにおい強度ニューラルネットワークに全ての判定モード1用クロマトグラムデータのそれぞれに基づいて、においの強度を判定させ、判定モード2用のにおい質ニューラルネットワークに全ての判定モード2用クロマトグラムデータのそれぞれに基づいて、においの質を判定させ、判定モード2用のにおい強度ニューラルネットワークに全ての判定モード2用クロマトグラムデータのそれぞれに基づいて、においの強度を判定させ、判定モード3用のにおい質ニューラルネットワークに全ての判定モード3用クロマトグラムデータのそれぞれに基づいて、においの質を判定させ、判定モード3用のにおい強度ニューラルネットワークに全ての判定モード3用クロマトグラムデータのそれぞれに基づいて、においの強度を判定させる。
次いで、におい判定手段25bは、S122における判定の結果と、各ニューラルネットワーク用のクロマトグラムに対応付けられた、測定者による判定の結果とを照合して、S122における判定の成否を判断し、判断結果を成否情報に登録する(S123)。例えば、におい判定手段25bは、判定モード1用のにおい質ニューラルネットワークに特定の判定モード1用クロマトグラムデータに基づいて、においの質を判定させた場合に、この判定の結果と、この判定モード1用クロマトグラムデータに対応付けられた質判定用データの質とが一致するとき、この判定モード1用クロマトグラムデータに対応付けられた質判定用データの成否情報に「正解」と登録し、一致しないとき、この成否情報に「不正解」と登録する。なお、におい判定手段25bは、成否情報に「不正解」と登録する場合、この成否情報に対応する修正情報に、判定モード1用クロマトグラムデータに基づいて判定した質を登録しても良い。
次いで、におい判定手段25bは、S123における判断結果に基づいて、検証の結果を表示部22に出力する(S124)。
図10に示す方法は、S124の工程の後、終了する。
図11は、判定モード1用のニューラルネットワークに関してS124において出力される検証結果画面の一例を示す図である。
図11に示す検証結果画面によれば、においの質に関して、におい質ニューラルネットワークの判定は、200個の判定モード1用クロマトグラムデータのうち、187個が正解であり、13個が不正解であり、正解率が93.5%であることが分かる。同様に、においの強度に関して、におい質ニューラルネットワークの判定は、200個の判定モード1用クロマトグラムデータのうち、145個が正解であり、55個が不正解であり、正解率が72.5%であることが分かる。また、図11に示す検証結果画面には、不正解であった判定モード1用クロマトグラムデータの測定IDのリストが、においの質および強度のそれぞれに関して示されている。
図11に示す検証結果は、判定モード1用のニューラルネットワークに関するものである。作業者は、判定モード2用のニューラルネットワークに関する検証結果と、判定モード3用のニューラルネットワークに関する検証結果とについても、操作部21を介してコンピューター20に指示することによって、表示部22に出力することができる。
作業者は、図10に示す方法によって、任意のカテゴリーのニューラルネットワークの検証を実行することができる。
作業者は、図10に示す方法によるニューラルネットワークの検証の結果、判定の正解率が低いと判断した場合、ニューラルネットワークの設定項目、すなわち、入力ノード数、隠れ層の層数、隠れ層の各層のノードの数、出力ノード数、活性化関数に何を使用するかということ、最適化として何を使用するかということ、Batch normalizationの使用の有無、Weight decayの使用の有無、Dropoutの使用の有無、および、教師学習繰返し回数を変更した後、再度、図10に示す方法によってニューラルネットワークの検証を実行することができる。
また、作業者は、学習データ用データにおける教師データフラグを倒すことによって、学習データ用データにおける質および強度の少なくとも1つを教師データから外すことができる。例えば、作業者は、基本情報データにおける測定者IDで示される特定の測定者による判定の結果が明らかに適切ではないと判断した場合、この測定者による判定の結果を教師データから外すことができる。また、作業者は、基本情報データにおける測定年月日で示される特定の期間の測定による判定の結果が明らかに適切ではないと判断した場合、この期間の測定による判定の結果を教師データから外すことができる。
次に、におい判定システム10を使用した、においの判定方法について説明する。
図12は、におい判定システム10を使用した、においの判定方法のフローチャートである。
図12に示すように、作業者は、サンプルガスを入れるためのサンプルバッグに一定量のサンプルガスを入れる(S141)。
次いで、作業者は、S141においてサンプルガスを入れたサンプルバッグをサンプルガス注入部11にセットした後、予め定められた測定条件に応じた判定を、操作部21を介してコンピューター20に指示する(S142)。ここで、作業者は、S142の指示において、今回のサンプルガスのカテゴリーと、判定モード1〜3のいずれかとを指定する。
したがって、コンピューター20のクロマトグラム生成手段25aは、予め定められた測定条件に応じた測定を実行してPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムを生成する(S143)。
次いで、コンピューター20の、におい判定手段25bは、S143において生成されたPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムに基づいて、判定モード1用クロマトグラム、判定モード2用クロマトグラムおよび判定モード3用クロマトグラムを生成する(S144)。
次いで、におい判定手段25bは、S142における指示において指定されたカテゴリーの、S142における指示において指定された判定モードに対応する、におい質ニューラルネットワーク、および、におい強度ニューラルネットワークのそれぞれに、S144において生成した判定モード1用クロマトグラム、判定モード2用クロマトグラムおよび判定モード3用クロマトグラムのうち、S142における指示において指定された判定モードに対応するクロマトグラムを入力することによって、ニューラルネットワークに判定を実行させる(S145)。
次いで、におい判定手段25bは、S145における判定の結果を表示部22に出力する(S146)。
図12に示す方法は、S146の工程の後、終了する。
図13は、においのカテゴリー、判定モードとして、それぞれ、コーヒーの香り、判定モード3が指定された場合にS146において出力される判定結果画面の一例を示す図である。
図13において、「PID」、「半導体A」、「半導体B」とは、それぞれ、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17、半導体ガスセンサー18を意味している。
図13に示す判定結果画面によれば、サンプルガスのにおいの質、強度は、それぞれ、キリマンジャロ、強度3である。図13に示す判定結果画面は、S143において生成されたPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムを、全センサー波形として含む。また、図13に示す判定結果画面は、S145においてニューラルネットワークに入力されたクロマトグラムを、判定波形として含む。
なお、作業者は、判定結果画面が表示されている場合に、現在の判定モードから、判定モード1〜3のうち、現在の判定モード以外のいずれかの判定モードへの変更を指示することによって、ニューラルネットワークに入力されるクロマトグラムを、におい判定手段25bに変更させることができる。におい判定手段25bは、判定モードの変更が指示されると、指定された判定モードに対応する、におい質ニューラルネットワーク、および、におい強度ニューラルネットワークのそれぞれに、S144において生成した判定モード1用クロマトグラム、判定モード2用クロマトグラムおよび判定モード3用クロマトグラムのうち、指定された判定モードに対応するクロマトグラムを入力することによって、ニューラルネットワークに判定を実行させる。そして、におい判定手段25bは、図13に示す判定結果画面と同様に、判定の結果を表示部22に出力する。
以上に説明したように、におい判定システム10は、カラム15によって成分が分離されたサンプルガスに対する、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18のそれぞれの検知結果に基づいたPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムに基づいて、においの質を判定するので、判定可能なにおいの質を従来より増やすことができる。
におい判定システム10は、においの質、強度を、それぞれ、におい質ニューラルネットワーク、におい強度ニューラルネットワークを用いて判定するので、においの質および強度の両方を目的変数とするニューラルネットワークを用いて、においの質および強度の両方を判定する構成と比較して、少ない学習データであっても、においの質および強度のそれぞれの判定の精度を向上することができる。
なお、におい判定システム10は、においの質および強度の両方を目的変数とするニューラルネットワークを用いて、においの質および強度の両方を判定する構成であっても良い。
におい判定システム10は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムのいずれか1つの波形を組み合わせて集約した1つのクロマトグラム、すなわち、判定モード1用クロマトグラム、判定モード2用クロマトグラムまたは判定モード3用クロマトグラムをニューラルネットワークの入力にするので、ニューラルネットワークに入力される説明変数を減少させることができ、その結果、必要な学習データを減少させることができる。したがって、におい判定システム10は、少ない学習データであっても、においの判定の精度を向上することができる。
なお、におい判定システム10は、PIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムの全てをニューラルネットワークの入力にする構成であっても良い。例えば、におい判定システム10は、ピーク値以外の少なくとも1つの値をゼロにするように、波形の形状を単純化した、PIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムの全てをニューラルネットワークの入力にする判定モードを備えても良い。
におい判定システム10は、判定モードが判定モード1、判定モード2および判定モード3のいずれかである場合、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムにおける波形の中で最もピーク値が高い波形、すなわち、特徴的な波形を組み合わせて集約した1つのクロマトグラムを、ニューラルネットワークに入力するので、少ない学習データであっても、においの判定の精度を向上することができる。
なお、におい判定システム10は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムのいずれか1つの波形を組み合わせて集約した1つのクロマトグラムであって、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムにおける波形の中で最もピーク値が高い波形を組み合わせて集約した1つのクロマトグラムではない、クロマトグラムを、ニューラルネットワークに入力する構成であっても良い。例えば、におい判定システム10は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムのいずれか1つの波形を組み合わせて集約し、基になったPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報を付加した1つのクロマトグラムを、ニューラルネットワークの入力にする判定モードを備えても良い。また、におい判定システム10は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムのいずれか1つの波形を組み合わせて集約し、基になったPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報を付加し、ピーク値以外の少なくとも1つの値をゼロにするように、波形の形状を単純化した1つのクロマトグラムを、ニューラルネットワークの入力にする判定モードを備えても良い。
におい判定システム10は、判定モードが判定モード2および判定モード3のいずれかである場合、基になったクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報、すなわち、波形の形状を、ニューラルネットワークに入力するクロマトグラム、すなわち、判定モード2用クロマトグラムおよび判定モード3用クロマトグラムに付加することによって、PIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムにおける特徴を、判定モード2用クロマトグラムおよび判定モード3用クロマトグラムに付加するので、少ない学習データであっても、においの判定の精度を向上することができる。
なお、におい判定システム10は、基になったクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報を、ニューラルネットワークに入力するクロマトグラムに付加しない構成であっても良い。例えば、におい判定システム10は、時間帯毎にPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムのいずれか1つの波形を組み合わせて集約し、ピーク値以外の少なくとも1つの値をゼロにするように、波形の形状を単純化した1つのクロマトグラムを、ニューラルネットワークの入力にする判定モードを備えても良い。
におい判定システム10は、区別情報の付加の方法として、本実施の形態において示した方法以外の方法を採用しても良い。例えば、におい判定システム10は、波形の形状として、上述したパルス波以外に、三角波、正弦波など、他の形状を採用しても良い。
におい判定システム10は、判定モードが判定モード2および判定モード3のいずれかである場合、クロマトグラムにおける複数の波形の少なくとも1つにおいて、ピーク値以外の少なくとも1つの値をゼロにするように、波形の形状を単純化したクロマトグラムをニューラルネットワークに入力するので、ニューラルネットワークに入力される説明変数のうち、ゼロ以外の値、すなわち、有効な説明変数を減少させることができ、その結果、必要な学習データを減少させることができる。したがって、におい判定システム10は、少ない学習データであっても、においの判定の精度を向上することができる。
特に、におい判定システム10は、判定モードが判定モード3である場合、判定モード3用クロマトグラムにおいて、波形のリテンションタイムおよびピーク値と、基になったクロマトグラム毎に波形を区別する区別情報としてのパルス幅とのみに特徴が絞られるので、少ない学習データであっても、においの判定の精度を向上することができる。
におい判定システム10は、少ない学習データであっても、においの判定の精度を向上することができるので、例えば、自然界に存在する稀な、においを採取した場合など、貴重で少量の、においを採取した場合であっても、必要な学習データを生成することができ、その結果、貴重で少量の、においを高精度に判定することができるようになる。
におい判定システム10は、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18のそれぞれの検知結果に基づいたPIDクロマトグラム、半導体Aクロマトグラムおよび半導体Bクロマトグラムと、ニューラルネットワークに入力されるクロマトグラムとを同時に含む判定結果画面(図13参照。)を生成するので、ニューラルネットワークに入力されるクロマトグラムの変更を利用者が指示する場合の利便性を向上することができる。
におい判定システム10は、本実施の形態において、カラム15によって分離された成分の質量を検出する質量分析計を備えていない。しかしながら、におい判定システム10は、質量分析計を備えることによって、サンプルガスのにおいの質および強度を、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GCMS)を利用して判定するシステムに変更することも可能である。におい判定システム10は、GCMSを利用する場合、ガスクロマトグラフィーのみを利用する場合と比較して、気体の成分を更に分離したクロマトグラムを得ることができるので、においの判定の精度を向上することができる。
一方、におい判定システム10は、質量分析計を備えない場合、質量分析計の構成要素である、大きなヘリウムガスボンベ、および、大きな真空ポンプを備える必要がないので、小型化することができ、小型化によって可搬性を向上することができる。そのため、におい判定システム10は、においが発生している現場に移動させられて、においを現場で判定することを容易化することができる。したがって、におい判定システム10は、においを発生させている気体が運搬のために容器に入れられる場合に、においが容器に吸着してしまうときや、においを発生させている気体が運搬されている間に経時変化、化学変化などによって、においの成分が変化してしまう場合などであっても、においが発生している現場から、におい判定システム10まで、においを発生させている気体が運搬されることなく、におい判定システム10自体が現場に移動させられることによって、においを高精度に判定することができる。
なお、におい判定システム10は、キャリアーガスとして空気を周囲から取り込んで利用するので、可搬性を向上することができる。
におい判定システム10は、GCMSを利用する場合には、ガスクロマトグラフィーのみを利用する場合と異なり、一般的に24時間以上、真空ポンプを稼働した後、30分程度のウォームアップが必要である。更に、におい判定システム10は、GCMSを利用する場合には、ガスクロマトグラフィーのみを利用する場合と比較して、測定時間が長く必要である。したがって、におい判定システム10は、GCMSを利用する場合には、ガスクロマトグラフィーのみを利用する場合と比較して、においの質および強度を適切に判定するために必要な数の学習データを作成するために非常に多くの時間が必要になる。一方、におい判定システム10は、ガスクロマトグラフィーのみを利用する場合には、GCMSを利用する場合と比較して、短時間で、においの質および強度を適切に判定することができるようになる。
におい判定システム10は、本実施の形態において、複数種類のガスセンサーとして、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18を備えている。しかしながら、におい判定システム10は、複数種類のガスセンサーとして、PIDセンサー16、半導体ガスセンサー17および半導体ガスセンサー18の組み合わせ以外の組み合わせを備えていても良い。例えば、におい判定システム10は、半導体ガスセンサーが100個以上並んだ半導体センサーアレイを、複数種類のガスセンサーとして備えても良い。
なお、本実施の形態においてコンピューター20が実現している機能の一部は、例えばクラウドサービスなど、コンピューター20の外部のシステムによって実現されても良い。同様に、本実施の形態においてコンピューター20が記憶しているデータの少なくとも一部は、コンピューター20の外部のシステムによって記憶されても良い。