JP2021139663A - 放射化抑制構造構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、長期にわたって木材等の高い含水率を維持することなく、つまり木材等に含まれる水分量の変動を許容したうえで、木材や木材複合製材からなるパネル材を用い、しかも放射化を抑制することができる放射化抑制構造と、その構築方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の放射化抑制構造は、中性子が発生する室内を閉鎖する壁体の放射化を抑制する構造であり、遮蔽体が壁体の前面に設置されたものである。この遮蔽体は、木材、あるいは集成材やCLT(Cross Laminated Timber)といった木材複合製材からなるパネル状のものであり、遮蔽体を形成する木材や木材複合製材の材料密度が大きいほど部材厚が小さく、その材料密度が小さいほど部材厚が大きい遮蔽体が用いられる。
【選択図】図2

Description

本願発明は、例えば中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)など中性子が発生する放射線医療施設や、研究施設といった室内において、その壁体の放射化を抑制する技術に関するものであり、より具体的には、木材又は木材複合製材からなるパネル状の遮蔽体を備えた放射化抑制構造と、この放射化抑制構造を構築する方法に関するものである。
中性子捕捉療法は、癌細胞にホウ素化合物を取り込ませ、そのホウ素と中性子との核反応によって癌細胞を破壊する治療法である。ホウ素(特に10B)は、熱中性子をはじめとする低エネルギーの中性子と大きく反応する性質があり、癌細胞内のホウ素と中性子が核分裂反応した結果、粒子線(アルファ線)が発生し、この粒子線によって癌細胞を破壊する。
核分裂反応によって発生する粒子線の飛程は、癌細胞の直径程度(約10〜14μm)であり、癌細胞以外の正常な細胞に影響を与えることがない。従来のX線やガンマ線による治療が、癌細胞とほぼ同じ物理的ダメージを正常細胞に与えることから、中性子捕捉療法は「癌細胞選択性治療」とも呼ばれ、特に悪性脳腫瘍や悪性黒色腫などの治療にとって現状では最も理想に近い治療法とされている。
ところで中性子捕捉療法では、照射器や加速器などを用いて患者に対する中性子線の照射が行われるが、当然ながらこの照射は、外部に中性子線が漏れないようコンクリート壁体などで閉鎖された室内で行われる。もちろん、照射された中性子線すべてが患者に吸収されるわけではなく、部分的には壁体等にも吸収される。中性子は電荷を持たないため、物質中の原子核に比較的容易に到達しやすく、しかも中性子捕捉療法で好適に使用される低エネルギーの中性子は吸収現象が顕著である。そして壁体を構成する物質の一部が、中性子を吸収した結果、安定同位体から放射性同位体となるいわゆる放射化現象を起こすことがある。
短半減期核種によって放射化したコンクリートは、多量の放射線を放出することが知られている。そのため、コンクリート壁体で閉鎖された室内にいる者は、無用な被曝を受けることとなる。また、長年にわたって中性子が照射されると、コンクリート壁体は放射化が進んで長半減期核種が多量に生成され、その結果、その放射化したコンクリート壁体は放射性廃棄物として処分する必要があり、通常の廃棄物に比べ多大な廃棄コストを強いられる。
このように、放射化の原因となる中性子が発生する施設等(以下、「中性子発生施設」という。)では、室内を閉鎖する壁体の放射化が一つの大きな問題となっていた。そこで、これまでにも中性子発生施設の壁体の放射化を抑制する種々の技術が提案されてきた。例えば特許文献1では、木材又は木材由来の材料によって形成された放射線遮蔽体を利用することで、壁体等の放射化を抑制する技術について提案している。
特開2013−228327号公報
特許文献1に開示される技術は、木材又は木材由来の材料が水分を含むことに着目したものであり、すなわち放射線遮蔽体を形成する木材等に含まれる水分によって放射線を遮蔽することを特徴とする技術である。そのため、木材等の材料の平均含水率が高いほど効果が期待できるとし、その平均含水率は30%以上が好適であって、50% 以上がより好適であり、さらに70% 以上を最も好適としている。
特許文献1の技術は、木材等が高い含水率を有することが肝要であるが、木材に含まれる水分は一部蒸発することが知られており、長期にわたって高い含水率を維持することは容易ではない。仮に、水分が蒸発しないように乾燥防止手段を施したとしても、長期にわたって高い含水率を維持することは困難であるうえ、高い含水率が維持されていることを定期的に確認する必要があり、当該技術を用いることは現実的とはいえない。
他方、木材や木材複合製材からなるパネル材(板材)は、調達しやすく、加工しやすく、比較的廉価であり、しかも景観上も優れているうえ、さらに放射化を抑制する特性も具備していることから、放射線の遮蔽体としては好ましい部材といえる。しかしながら、上記したとおり木材等に含まれる水分量は変動が著しいため、必要量を維持するよう制御することは難しい。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、長期にわたって木材等の高い含水率を維持することなく、つまり木材等に含まれる水分量の変動を許容したうえで、木材や木材複合製材からなるパネル材を用い、しかも放射化を抑制することができる放射化抑制構造と、その構築方法を提供することである。
本願の発明者らは、木材に含まれる炭素が中性子を遮蔽する能力を備えていることを究明した。そして本願発明は、炭素を含む木材等からなる遮蔽体を利用することに着目し、さらに遮蔽体の材料密度が大きいほど炭素含有量が多いという点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
本願発明の放射化抑制構造は、中性子が発生する室内を閉鎖する壁体の放射化を抑制する構造であり、遮蔽体が壁体の前面に設置されたものである。この遮蔽体は、木材、あるいは集成材やCLT(Cross Laminated Timber)といった木材複合製材からなるパネル状のものであり、遮蔽体を形成する木材や木材複合製材の材料密度が大きいほど部材厚が小さく、その材料密度が小さいほど部材厚が大きい遮蔽体が用いられる。
本願発明の放射化抑制構造は、濃度比D/Cの合計値が1.0を下回るものとすることもできる。なお濃度比D/Cは、所定期間が経過したときの壁体の推定放射能濃度Dを、あらかじめ定めた放射能濃度のクリアランスレベルCで除した値(比)である。
本願発明の放射化抑制構造構築方法は、本願発明の放射化抑制構造を構築する方法であって、部材厚設定工程と遮蔽体設置工程を備えた方法である。このうち部材厚設定工程では、木材や木材複合製材からなるパネル状の遮蔽体の部材厚を設定し、遮蔽体設置工程では、部材厚設定工程で設定された部材厚の遮蔽体を壁体の前面に設置する。なお部材厚設定工程では、材料密度が大きいほど部材厚が小さくなるように、材料密度が小さいほど部材厚が大きくなるように設定する。
本願発明の放射化抑制構造構築方法は、材料密度を条件とし、濃度比D/Cの合計値が1.0を下回るように遮蔽体の部材厚を設定する方法とすることもできる。
本願発明の放射化抑制構造、及び放射化抑制構造構築方法には、次のような効果がある。
(1)本願発明で用いる木材や木材複合製材は、調達しやすく、加工しやすく、比較的廉価であり、木材等からなる遮蔽体によって形成された放射化抑制構造は景観的に優れている。
(2)材料密度が小さい木材等を用いるときは部材厚を大きくするなど、部材厚を調整することによって所望の放射化抑制効果が得られることから、様々な材料密度の木材等を利用することができる。
(3)高い含水率を維持するための乾燥防止手段を要することなく、しかも気乾状態や絶乾状態にある木材など様々な含水率の木材等を利用することができる。
中性子発生室内に、本願発明の放射化抑制構造が設置された状況を示す平面図。 壁面の前面に遮蔽体を設置した放射化抑制構造を示す断面図。 (a)は壁面の前面であって表面板と遮蔽体が接触するように、裏面板と遮蔽体、表面板を配置した放射化抑制構造を示す断面図、(b)は壁面の前面であって表面板と遮蔽体の間に空隙部が設けられるように、裏面板と遮蔽体、表面板を配置した放射化抑制構造を示す断面図。 壁面の前面に空隙部を設けたうえで遮蔽体を設置した放射化抑制構造を示す断面図。 床表面からの深さと放射化量(Co60、Eu152)の関係を示すグラフ図。 材料密度(0.3g/cm、0.6g/cm、1.2g/cm)ごとの部材厚と濃度比の合計値との関係を示すグラフ図。 部材厚(5cm、10cm、19cm)ごとの材料密度と濃度比の合計値との関係を示すグラフ図。 コンクリート上に配置した気乾状態の遮蔽体と絶乾状態の遮蔽体に対して中性子を照射た結果、計測されたコンクリートの放射化量を示すグラフ図。 本願発明の放射化抑制構造構築方法の主な工程を示すフロー図。
1.全体概要
本願発明の放射化抑制構造、及び放射化抑制構造構築方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。図1は、中性子が発生する空間(以下、「中性子発生室」という。)に本願発明の放射化抑制構造100が設置された状況を示す平面図である。この図に示す中性子発生室は、コンクリート製の壁体(以下、単に「コンクリート壁体CW」という。)で閉鎖(密閉)されており、室内には中性子が発生する加速器NDが設置されている。なお、図1では加速器NDが設置された中性子発生室を示しているが、加速器NDに限らず中性子が発生する中性子発生室であれば本願発明を効果的に実施することができる。
本願発明の放射化抑制構造100は、図1に示すようにコンクリート壁体CWの室内側(前面)に、すなわちコンクリート壁体CWの表面を覆うように、遮蔽体110が設置された構造である。
遮蔽体110は、木材(例えば、パープルハートやイペといったハードボード等)、あるいは集成材やCLTといった木材複合製材(以下、木材と木材複合製材を総称して「木材等」という。)からなるパネル状(板状)のものである。既述したとおり本願の発明者らは、木材に含まれる炭素が中性子を遮蔽する能力を備えていることを究明した。そして、遮蔽体110を形成する木材等の密度(以下、「材料密度」という。)が大きいほど炭素含有量が多く、逆に材料密度が小さいほど炭素含有量が少ないことを考慮して、材料密度に応じて遮蔽体110の部材厚(板厚)を設定することとした。換言すれば、例えばコンクリート壁体CWの放射化を抑制するために十分な炭素量をあらかじめ設定したうえで、コンクリート壁体CWの前面に遮蔽体110を設置するわけである。
2.放射化抑制構造
次に、本願発明の放射化抑制構造100の例について図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の放射化抑制構造構築方法は、本願発明の放射化抑制構造100を構築する方法であり、したがってまずは本願発明の放射化抑制構造100について説明し、その後に本願発明の放射化抑制構造構築方法について説明することとする。
図2は、放射化抑制構造100を示す断面図であり、壁面(側面)を形成するコンクリート壁体CWを水平面で切断した断面図である。この図に示すように本願発明の放射化抑制構造100は、例えばコンクリート壁体CWの前面に、木材等からなるパネル状(板状)の遮蔽体110が設置された構造である。なおこの図では、壁面を形成するコンクリート壁体CWの前面(室内側)に遮蔽体110を設置しているが、放射化抑制構造100は、壁面に限らず天井面や床面を形成するコンクリート壁体CWの前面に遮蔽体110を設置した構造とすることもできる。
また、コンクリート壁体CWの前面に遮蔽体110を単独で設置するほか、図3に示すように表面板120と裏面板130を前後に積層したうえで遮蔽体110設置することもできる。図3は、コンクリート壁体CWの前面に裏面板130、遮蔽体110、表面板120の順で積層配置した放射化抑制構造100を示す断面図であり、壁面(側面)を形成するコンクリート壁体CWを水平面で切断した断面図である。
図3に示す表面板120は、遮蔽体110と同様パネル状の部材であり、石膏プラスターボードやドロマイトプラスターボードなどを利用することができる。なお、壁や天井に対して放射化抑制構造100を設置する場合、表面板120は準不燃材あるいは不燃材を利用するとよい。なお図3(a)では、表面板120と遮蔽体110を積層して(つまり接触するように)設置しているが、図3(b)に示すように下地材LS(例えば、LGSといった軽量形鋼)を中間配置することによって遮蔽体110から空隙部を設けた位置に表面板120を設置してもよい。
一方、図3に示す裏面板130は、ホウ素含有樹脂からなる薄膜状あるいは板状の部材であり、例えばB4Cを含む樹脂を成型した部材を用いることができる。もちろん、ホウ素を含有する樹脂材であればB4C樹脂に限らず、無水ホウ酸を樹脂に混ぜた部材や、粉状の灰ホウ石を樹脂に混ぜた部材など、他の樹脂材を裏面板130として用いることもできる
放射化抑制構造100は、図4に示すように空隙部140を含んで構成することもできる。図4は、コンクリート壁体CWの前面に空隙部140を設けたうえで遮蔽体110を設置した放射化抑制構造100を示す断面図であり、壁面(側面)を形成するコンクリート壁体CWを水平面で切断した断面図である。なおこの図では、コンクリート壁体CWの前面に空隙部140を設け、さらにその空隙部140の前面に表面板120と裏面板130で積層された遮蔽体110を設置しているが、もちろん空隙部140の前面に単独で遮蔽体110を設置してもよい。
多量の中性子が発生する中性子発生室の場合、遮蔽体110で全ての中性子が吸収されないこともあり、図4に示すように空隙部140を設けることによって、遮蔽体110を透過した中性子を減衰させることができる。遮蔽体110を通過した中性子は、コンクリート壁体CWに到達するまでの所定距離(つまり空隙部140)の移動を強いられ、これにより中性子のエネルギーが減衰し、すなわちコンクリート壁体CWの放射化が抑制されるわけである。
既述したとおり遮蔽体110は、木材等からなるパネル状(板状)のものであり、その部材厚は材料密度に応じて設定されたものである。例えば、部材厚tと材料密度dを変数とする関数f(t,d)によって得られる値が所定の閾値以上となるように、部材厚tを設定することができる。
あるいは、原子炉施設関連の技術分野で用いられている濃度比D/Cに基づいて、部材厚tを設定することもできる。この濃度比D/Cは、推定放射能濃度Dを、あらかじめ定めた放射能濃度のクリアランスレベルCで除した値(つまり比)である。なお推定放射能濃度Dは、所定期間が経過したときのコンクリート壁体CWの放射能濃度を推定したものである。原子炉施設関連の技術分野では、濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を超えなければ放射性廃棄物ではないと判断される。したがって本願発明の放射化抑制構造100を構成する遮蔽体110も、濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を下回るように、その部材厚tが設定されたものとすることもできる。すなわち、使用する部材厚tと材料密度dを与条件としたうえでコンクリート壁体CWの推定放射能濃度Dを推定し、その推定放射能濃度Dに基づいて得られる濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を下回るとき、その部材厚Tを有する遮蔽体110をコンクリート壁体CWの前面に設置して放射化抑制構造100とするわけである。
本願の発明者らは、部材厚tと材料密度dの組み合わせと、濃度比の合計値ΣD/Cとの関係を把握すべくシミュレーション解析を行っている。以下、そのシミュレーション解析について説明する。
まず、材料密度dが0.3g/cm、0.6g/cm、1.2g/cmの3種類の木材を用いるとともに、それぞれ部材厚tが5cm、10cm、19cmとなる試験体を用意し(つまり合計9個の試験体)、各試験体を床コンクリート上に配置した状態を設定する。なお、試験体と床コンクリートの間にはB4C板10mmを介在させることとした。治療用加速器のエネルギー変換装置が稼働する中性子発生室を想定し、さらに300人/年(実際のがん治療で想定される数値)の頻度で30年間使用した状況を想定して、Co60とEu152の放射化量を推定した。放射化量の推定に用いたシミュレーション解析コードは、JAEA等が開発したPHITSコードとD−chainコードである。
放射化量を評価する位置は、最も放射化量が多いと予想される治療用加速器のエネルギー変換装置の直下であって、床表面から深さ15cmの位置としている。深さ15cmを採用したのは、シミュレーション解析の結果、図5に示すようにCo60、Eu152ともに深さ15cm程度で最大の放射化量を示したからである。
図6は、材料密度d(0.3g/cm、0.6g/cm、1.2g/cm)ごとの「部材厚t」と「濃度比の合計値ΣD/C」との関係を示すグラフ図である。また図7は、部材厚t(5cm、10cm、19cm)ごとの「材料密度d」と「濃度比の合計値ΣD/C」との関係を示すグラフ図である。なお、濃度比の合計値ΣD/Cを求める推定放射能濃度DとクリアランスレベルCは、それぞれCo60とEu152の両方によって得られた値である。
図6から、濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を下回るためには、試験体(つまり遮蔽体110を形成する木材等)の材料密度が小さいほど遮蔽体110の部材厚を大きくする必要があり、逆に試験体の材料密度が大きいほど遮蔽体110の部材厚を小さくすることができることが分かる。また図7から、濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を下回るためには、遮蔽体110の部材厚が小さいほど材料密度が大きい試験体を選択する必要があり、逆に遮蔽体110の部材厚が大きいほど材料密度が小さい試験体を選択することができることが分かる。なお図7によれば、部材厚tが5cmの試験体は、いずれの材料密度dを採用しても濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を下回ることはできない。
以上説明したシミュレーション解析から、遮蔽体110を形成する木材等の材料密度が大きいほど遮蔽体110の部材厚は小さく設定され、材料密度が小さいほど遮蔽体110の部材厚は大きく設定される。換言すれば、材料密度が大きい木材等を採用する場合は部材厚が小さい遮蔽体110を設置し、逆に材料密度が小さい木材等を採用する場合は部材厚が大きい遮蔽体110を設置するわけである。
本願発明の放射化抑制構造100は、木材に含まれる炭素が有する中性子の遮蔽特性を活かし、例えばコンクリート壁体CWの放射化を抑制することを一つの特徴としている。すなわち放射化抑制構造100は、木材に含まれる水分(特に水素)に期待することなく、放射化を抑制することができる。さらに言い換えれば、木材に含まれる水分量の変動を許容したうえで放射化を抑制することができるわけである。
本願の発明者らが試験を行ったところ、含水量が著しく少ない遮蔽体110を用いても十分な放射化抑制効果が得られることが分かった。この試験では、パープルハート材からなる遮蔽体110を用い、さらに気乾状態とした遮蔽体110と絶乾状態とした遮蔽体110をそれぞれコンクリート上に配置したうえで、遮蔽体110の上方から中性子を照射している。図8は、この試験で計測されたコンクリートの放射化量を示すグラフ図である。この図からも分かるように、気乾状態や絶乾状態の遮蔽体110を用いても、放射化を相当程度抑制することができる。すなわち本願発明の放射化抑制構造100は、気乾状態あるいは絶乾状態とされた遮蔽体110を、例えばコンクリート壁体CWの前面に設置した構造とすることもできる。
3.放射化抑制構造構築方法
続いて、本願発明の放射化抑制構造構築方法ついて、図9を参照しながら説明する。なお、本願発明の放射化抑制構造構築方法は、ここまで説明した放射化抑制構造100を構築する方法であり、したがって放射化抑制構造100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の放射化抑制構造構築方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.放射化抑制構造」で説明したものと同様である。
図9は、本願発明の放射化抑制構造構築方法の主な工程を示すフロー図である。まず図9に示すように、遮蔽体110を形成する木材等を選択する(Step10)。そして、既存資料を調査するか、あるいは実際に計測することによって、選択された材料の材料密度dを把握する。
遮蔽体110を形成する木材等の材料密度dを把握すると、その材料密度dに応じた遮蔽体110の部材厚tを設定する(Step20)。既述したように、濃度比の合計値ΣD/Cが1.0を下回るように部材厚tを設定することもできるし、関数f(t,d)によって得られる値が所定の閾値以上になるように部材厚tを設定することもできる。
遮蔽体110の部材厚tを設定すると、その部材厚tとなるように遮蔽体110を加工、製作する(Step30)。そして部材厚tの遮蔽体110を、例えばコンクリート壁体CWの表面を覆うように設置していくことで、本願発明の放射化抑制構造100を構築する(Step40)。
本願発明の放射化抑制構造、及び放射化抑制構造構築方法は、陽子線治療や重粒子線治療、中性子捕捉療法、PET(ポジトロン断層法検査)施設など中性子が発生する医療施設をはじめ、研究施設、検査施設、産業施設等などで、特に有効に利用することができる。本願発明は、中性子が発生する施設が現状抱える課題を解決するものであり、すなわち粒子線がん治療の普及を促進するとともに、放射線業務従事者の無用な被ばくを低減し、放射性廃棄物の発生を低減することを考えれば、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
100 本願発明の放射化抑制構造
110 (放射化抑制構造の)遮蔽体
120 (放射化抑制構造の)表面板
130 (放射化抑制構造の)裏面板
140 (放射化抑制構造の)空隙部
CW コンクリート壁体
LS 下地材
ND 加速器

Claims (4)

  1. 中性子が発生する室内を閉鎖する壁体の放射化を抑制する構造であって、
    木材又は木材複合製材からなるパネル状の遮蔽体が、前記壁体の前面に設置され、
    前記遮蔽体は、該遮蔽体を形成する木材又は木材複合製材の材料密度が大きいほど部材厚が小さく、該材料密度が小さいほど部材厚が大きい、
    ことを特徴とする放射化抑制構造。
  2. 所定期間が経過したときの前記壁体の推定放射能濃度Dと、あらかじめ定めた放射能濃度のクリアランスレベルCと、の比である濃度比D/Cの合計値が、1.0を下回る、
    ことを特徴とする請求項1記載の放射化抑制構造。
  3. 中性子が発生する室内を閉鎖する壁体の放射化を抑制する放射化抑制構造を、構築する方法であって、
    木材又は木材複合製材からなるパネル状の遮蔽体の部材厚を設定する部材厚設定工程と、
    前記部材厚設定工程で設定された部材厚の前記遮蔽体を、前記壁体の前面に設置する遮蔽体設置工程と、を備え、
    前記部材厚設定工程では、該遮蔽体を形成する木材又は木材複合製材の材料密度が大きいほど部材厚が小さく、該材料密度が小さいほど部材厚が大きくなるように設定する、
    ことを特徴とする放射化抑制構造構築方法。
  4. 前記部材厚設定工程では、前記材料密度を条件とし、所定期間が経過したときの前記壁体の推定放射能濃度Dと、あらかじめ定めた放射能濃度のクリアランスレベルCと、の比である濃度比D/Cの合計値が、1.0を下回るように、前記遮蔽体の部材厚を設定する、
    ことを特徴とする請求項3記載の放射化抑制構造構築方法。
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