本発明は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造に関するものである。
従来、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造が用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。特許文献1には、金属製の平板状屋根材の裏側(屋内側)における結露の発生を防止すべく、屋根下地材と平板状屋根材との間に、連続する凹部を上下にそれぞれ有する通気部材を設けた屋根構造が開示されている。
しかしながら、上記屋根構造では、屋根下地材と平板状屋根材との間には通気路が確保されるものの、屋根下地材とその下方の断熱材との間に通気路が形成されていないため、冬季に室内で生じて小屋裏に至った湿気によって屋根下地材の下面において結露が生じ、構造用合板等で構成される屋根下地材が腐朽により劣化するおそれがあった。
また、上記屋根構造において、屋根下地材と断熱材との間に通気路を形成することが考えられるが、その場合、屋根下地材の上下に通気路を形成しなければならず、施工に手間がかかる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造において、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、屋根下地材と断熱材との間に通気路を形成し、吸水率が15%以下の中密度繊維板によって構成された野地板を屋根下地材として用いることとした。
具体的には、第1の発明は、平板状屋根材と、該平板状屋根材が上面に取り付けられる屋根下地材とを備えた屋根構造であって、上記屋根下地材の下方には、軒先側から棟木側に向かって空気が流れる通気路が形成され、上記屋根下地材は、密度が0.7以上0.85未満で吸水率が15%以下の中密度繊維板によって構成された野地板を有していることを特徴とするものである。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2−m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)である。
第1の発明では、屋根下地材の下方に、軒先側から棟木側へ延びる通気路が形成されている。そのため、冬季に室内で生じた湿気が小屋裏に至っても、通気路を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。よって、屋根下地材の下面において結露が生じて屋根下地材が腐朽により劣化するおそれがない。つまり、屋根下地材の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、第1の発明では、屋根下地材の野地板が、密度が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、木材繊維間に隙間が形成されているため、従来、野地板として用いられていた構造用合板に比べて透湿抵抗が低い。このような湿気を透過させ易い野地板を屋根下地材として用いることにより、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材の下方において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材を通過して通気路に至る。よって、平板状屋根材と屋根下地材との間に通気路がなく、平板状屋根材の大部分が屋根下地材に密着した構成であっても、平板状屋根材と屋根下地材との間で生じた結露による湿気を屋外へ排出することができ、平板状屋根材の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、第1の発明によれば、吸水率が15%以下に構成された中密度繊維板を野地板として用いている。このような野地板は、構造用合板等で構成された従来の野地板(吸水率60%以上)に比べて表面に付着した雨水を吸水し難い。また、このような野地板によれば、釘が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板として用いることにより、雨水が平板状屋根材の隙間から屋根下地材に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板に浸透し難くなり、野地板の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一、雨水が野地板に浸透したとしても、野地板の裏面まで至ることがなく、雨漏りを防止することができる。
また、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。
これに対し、第1の発明によれば、野地板が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、第1の発明によれば、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
さらに、第1の発明によれば、屋根下地材の下方に通気路が形成され、野地板を透湿性に優れた中密度繊維板で構成している。そのため、万一、雨水が野地板に浸透したとしても、野地板に浸透した雨水は、いずれ気化して水蒸気となり、野地板を通過して通気路に至るため、通気路を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。
以上により、第1の発明によれば、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することができる。
第2の発明は、第1の発明において、上記中密度繊維板は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤と、ユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤とを含んでいることを特徴とする。
第2の発明では、野地板を構成する中密度繊維板の接着剤として、耐水性に優れるユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤を用いている。このような第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。また、耐水性に優れた第1の接着剤は高価であるため、第1の接着剤のみを接着剤として用いると中密度繊維板も高価になり、屋根下地材の製造コストが嵩む。そこで、第2の発明では、第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いた中密度繊維板を用いることとした。第2の接着剤は、安価で耐水性が低いため、高価で耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率15%以下の中密度繊維板を、比較的安価に且つ透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。よって、そのような中密度繊維板を野地板とすることにより、透湿性と防水性に優れた野地板を有する屋根下地材を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
第3の発明は、第2の発明において、上記中密度繊維板は、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満であることを特徴とする。
ここで、透湿抵抗は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される値である。
第3の発明では、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満に構成された中密度繊維板を野地板として用いている。このように透湿抵抗が極めて低く、透湿性に優れた中密度繊維板を野地板として用いることにより、野地板裏面での結露の発生及び野地板の腐朽による劣化を抑制する効果がさらに増大する。
第4の発明は、第1乃至3のいずれか1つの発明において、上記平板状屋根材は、金属屋根材であり、上記屋根下地材は、上記野地板の上面に設けられた透湿防水シートを有していることを特徴とする。
ところで、上記平板状屋根材が金属屋根材である場合、アスファルトルーフィングのような透湿性のないシート材を野地板の上面に設けると、金属屋根材と透湿性のないシート材との間において水蒸気(湿気)が抜けず、金属屋根材の下面で結露した結露水や金属屋根材の下面側へ侵入した雨水が排出されずに溜まり、金属屋根材の下面に錆が発生するおそれがある。
第4の発明では、平板状屋根材として金属屋根材を用いる場合、屋根下地材を、透湿性と防水性に優れた野地板と、該野地板の上面に設けられた透湿性と防水性を有するシートとで構成することとしている。このような構成により、金属屋根材の下面において結露が生じたり、金属屋根材の下面側へ雨水が浸入したりしても、その水分(結露水や雨水)は、気温上昇時に気化して水蒸気となり、透湿性を有する屋根下地材(透湿防水シートと野地板)を通過して通気路に至るため、水分(結露水や雨水)が金属屋根材の下面に溜まることがない。つまり、上記構成によれば、金属屋根材の下面における錆の発生を抑制することができる。また、上記構成によれば、屋根下地材の防水性がさらに向上するため、野地板の腐朽等の劣化をさらに抑制することができる。
以上説明したように、本発明の屋根構造によると、屋根下地材の下方に通気路を形成すると共に、透湿性と防水性に優れた吸水率15%以下の中密度繊維板からなる野地板を屋根下地材として用いることにより、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することができる。
図1は、実施形態1に係る建物の屋根構造の一部分の外観を示す斜視図である。
図2は、図1の屋根構造の一部分を妻側に平行な面で切断した断面図である。
図3は、図2の部分拡大図である。
図4は、図1の屋根構造の一部分を平側に平行な面で切断した断面図である。
図5は、透水性試験の様子を示す模式図である。
図6は、透水性試験の試験結果である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2に示すように、屋根構造1は、屋根下地材20の上に、複数の金属製の平板状屋根材10,…,10を、順に配置して葺いたものである。本実施形態1では、複数の平板状屋根材10,…,10は、棟木5側から軒先6側に向かって縦方向に延びるように配置されてそれぞれはぜ継ぎされた、所謂、立平葺きで施工されている。
−屋根構造の構成−
図2〜図4に示すように、屋根構造1は、平板状屋根材10と、屋根下地材20と、断熱材30とを備えている。平板状屋根材10と屋根下地材20は、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に施工されている。複数の垂木2,…,2の下端面には、石膏ボード3が取り付けられている。なお、図2中、符号7は鼻隠し、符号8は水切り、符号9は棟包みである。
屋根構造1では、断熱材30は、ロックウールによって構成され、複数の垂木2,…,2の各間に設けられている。断熱材30は、高さが、複数の垂木2,…,2の成よりも低くなるように形成されている。そのため、屋根下地材20の下方には、垂木2に沿って軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。
以上のような構成により、本実施形態1では、屋根構造1は、天井側ではなく屋根側に断熱材30が設けられる、所謂、屋根断熱タイプの屋根構造に構成されている。
〈平板状屋根材の詳細な構成〉
図2〜図4に示すように、平板状屋根材10は、折り曲げ形成された矩形状の金属板で構成され、本実施形態1では、ガルバリウム鋼板(登録商標)で構成されている。平板状屋根材10は、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で、屋根下地材20の上面に取り付けられている。なお、平板状屋根材10は、ガルバリウム鋼板(登録商標)に限られず、銅板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等で構成されていてもよい。
平板状屋根材10は、本体部11と、第1係合部(はぜ)12と、第2係合部(はぜ)13と、支持脚部14と、固定部15とを備えている。
本体部11は、平板状屋根材10を構成する矩形状の金属板の幅方向の両端部を除く部分であり、平板状屋根材10の長手方向に延び、屋根下地材20に取り付けられた際に、該屋根下地材20の上方を覆う概ね平板状の部分である。本体部11は、幅方向の両端部に、端から中程に向かう程、低くなる段差部11aが形成されている。これにより、本体部11は、幅方向の中程部分が両端部に比べて下方へ浅く窪んだ形状となる。本体部11は、幅方向の両端部に段差部11aが形成されることにより、長手方向の撓みが抑制される。
第1係合部12は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。第1係合部12は、本体部11の幅方向の一方側(図4では右側)において上方に突出して隣り合う平板状屋根材10の第2係合部13と係合する形状に形成されている。
具体的には、本実施形態1では、第1係合部12は、本体部11の幅方向の一端から上方に向かって延びる矩形平板状の第1直線部12aと、第1直線部12aの上端から平板状屋根材10の幅方向の内側に向かって延びた後、幅方向の外側へ斜め上方に向かって折れ曲がり、斜め上方に延びる突出部12bと、突出部12bの上端から下方に向かって第1直線部12aに平行に延びる矩形平板状の第2直線部12cとを有している。第1係合部12は、第1直線部12aと突出部12bと第2直線部12cとにより、幅方向の内側に向かって突出する片ひげ矢印形状に形成されている。
第2係合部13は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。第2係合部13は、本体部11の幅方向の他方側(図4では左側)において上方に突出して隣り合う平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さることにより、隣り合う平板状屋根材10の第1係合部12と係合(はぜ継ぎ)する形状に形成されている。
具体的には、本実施形態1では、第2係合部13は、本体部11の幅方向の他端から上方に向かって延びる矩形平板状の直線部13aと、直線部13aの上端から幅方向の外側へ斜め下方に向かって延びた後、平板状屋根材10の幅方向の内側に向かって折れ曲がり、直線部13aに略垂直に延びる突出部13bと、突出部13bの一端から幅方向の外側へ斜め下方に向かって折れ曲がり、斜め下方に延びる終端部13cとを有している。第2係合部13は、直線部13aと突出部13bと終端部13cとにより、幅方向の外側に向かって突出する片ひげ矢印形状に形成されている。第2係合部13は、第1係合部12に覆い被さるように、第1係合部12よりも一回り大きい片ひげ矢印形状に形成されている。
支持脚部14は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。支持脚部14は、第1係合部12の第2直線部12cの下端(第1直線部12aの下端と同じ高さ位置)から下方に延び、第1係合部12を支持する部分である。支持脚部14は、第1係合部12の第2直線部12cと長さ(図4の紙面直交方向の長さ)が等しい矩形平板状に形成されている。
固定部15は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。固定部15は、支持脚部14の下端から幅方向の外側に延び、屋根下地材20に当接する平板状の部分を有し、屋根下地材20に固定されている。固定部15は、支持脚部14と長さ(図4の紙面直交方向の長さ)が等しい矩形平板状に形成されている。固定部15は、前述したように、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で屋根下地材20に固定されている。
このような構成により、平板状屋根材10は、固定部15を釘4で屋根下地材20に固定し、第1係合部12に隣接する平板状屋根材10の第2係合部13を覆い被せて係合させると共に、第2係合部13を隣接する平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さるように係合させるだけで、屋根下地材20上に施工される。
〈屋根下地材の詳細な構成〉
屋根下地材20は、野地板21と、透湿防水シート22とを備えている。野地板21と透湿防水シート22とは、いずれも透湿性と防水性とを兼ね備えている。そのため、本実施形態1では、平板状屋根材10と屋根下地材20との間に屋外と連通する連通路が設けられていない。
[野地板]
野地板21は、密度(g/cm3)が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。本実施形態では、密度0.79g/cm3の厚さ9.2mm厚の中密度繊維板を、野地板21として用いている。
野地板21を構成する中密度繊維板は、耐水性に優れた第1の接着剤と、該第1の接着剤と比較して耐水性が低い第2の接着剤とを含んでいる。本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤を第1の接着剤とし、ユリア樹脂系接着剤を第2の接着剤として含む中密度繊維板によって野地板21が構成されている。また、本実施形態1では、野地板21において、第1の接着剤と第2の接着剤とは、重量比率が第1の接着剤:第2の接着剤=2:8となるように配合されて含まれている。なお、第1の接着剤は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤に限られず、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも一種を含むものであればよい。
(吸水率)
野地板21は、吸水率が15%以下となるように構成されている。なお、野地板21は、吸水率が13.6%以下となるように構成されるのが好ましく、さらに、吸水率が13.2%以下となるように構成されるのがより好ましい。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2−m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)を用いる。
上述のように耐水性に優れる第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。よって、野地板21を構成する中密度繊維板の成形に第1の接着剤を用い、その配合比率を調整することにより、野地板21の吸水率を所望の吸水率、本実施形態では、15%以下(好ましくは13.6%以下、より好ましくは13.2%以下)にすることができる。
なお、従来野地板として用いていた厚さ12mmの構造用合板A(スギ)と構造用合板B(表層カラマツ、芯層スギ)について、上記吸水率試験を行い、吸水率を算出したところ、その吸水率は、82%と61%であった。このことから、本実施形態1の野地板21の吸水率が従来の野地板と比較して著しく低いことが判る。
(透湿性能)
野地板21は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が、2.5m2・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
上述のように耐水性に優れる第1の接着剤を含む中密度繊維板は、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。
しかしながら、本実施形態1では、野地板21を構成する中密度繊維板の成形に第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いている。第2の接着剤は、第1の接着剤に比べて耐水性が低いため、耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率の低い(15%以下の)中密度繊維板を、透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。つまり、第1の接着剤と第2の接着剤との配合比率を調整することにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満の野地板21(中密度繊維板)を構成することができる。なお、本実施形態1では、上述のように、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤からなる第1の接着剤と、ユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤とを、重量比率が第1の接着剤:第2の接着剤=2:8となるように配合して添加して形成した中密度繊維板を野地板21として用いることにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満の野地板21を構成することができる。
なお、従来野地板として用いていた上記構造用合板Aと構造用合板Bについて、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定した透湿抵抗は、23m2・h・mmHg/gと27m2・h・mmHg/gであった。このことから、本実施形態1の野地板21の透湿抵抗が従来の野地板と比較して著しく低い、つまり、透湿性能が著しく高いことが判る。
[透湿防水シート]
透湿防水シート22は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が0.65m2・s・Pa/μg以下となるように構成されている。この透湿抵抗は、JIS A6111の屋根用の透湿防水シートの規定に準拠したものである。本実施形態1では、透湿防水シート22は、多数の微細孔(直径0.5μm程度)が設けられた樹脂フィルムで構成され、透湿抵抗が0.5m2・s・Pa/μg以下に構成されている。なお、透湿防水シート22は、JIS A6111に準拠したものであればいかなるものを用いてもよく、不織布で構成してもよい。また、これらを積層したものとしてもよい。
−屋根構造の施工方法−
屋根構造1は、以下のようにして施工される。
まず、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の間に断熱材30(袋入りロックウール)を充填し、各垂木2の下端面(内面)にステープルで固定した後、複数の垂木2,…,2の下端面(内面)に石膏ボード3を押しつけ、ビス等で石膏ボード3を複数の垂木2,…,2に打ち付ける。
次に、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に屋根下地材20を施工する。具体的には、複数の垂木2,…,2上に野地板21を敷きつめ、釘やビス等で野地板21を複数の垂木2,…,2に固定する。その後、野地板21上に透湿防水シート22を敷きつめ、ステープル釘等で透湿防水シート22を野地板21に打ち付ける。このとき、野地板21の上において複数の透湿防水シート22を、屋根勾配の下側から上側へ順に辺縁を重ね合わせながら敷きつめ、隣り合う透湿防水シート22の重ね合わせた部分にステープル釘等を打ち込む。このようにして屋根下地材20が施工される。
なお、本実施形態1では、垂木2の成よりも薄い断熱材30を用いている。そのため、断熱材30及び屋根下地材20を施工することにより、断熱材30と屋根下地材20との間に、自動的に軒先6側から棟木5側に向かって延びる通気路40が形成される。
屋根下地材20の施工後、平板状屋根材10を葺く。具体的には、複数の平板状屋根材10,…,10を、棟木5の延伸方向の一端(けらば)から他端(けらば)まで順に葺いていく。具体的には、平板状屋根材10を、長手方向が棟木5側から軒先6側へ延びるように、屋根下地材20上の所定の位置に配置し、平板状の固定部15を、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で固定する。次の屋根下地材20は、第2係合部13が、先に屋根下地材20に取り付けられた平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さる位置に配置され、第2係合部13を、先に屋根下地材20に取り付けられた平板状屋根材10の第1係合部12に押しつけることによって該第1係合部12を内部に嵌める(はぜ継ぎする)。このとき、互いに係合する第1係合部12と第2係合部13との間に、防水材を挟み込むことが好ましい。このようにして、複数の平板状屋根材10,…,10を、棟木5の延伸方向の一端側から他端側に順に葺いていく。
複数の平板状屋根材10,…,10の施工後、複数の平板状屋根材10,…,10の軒先6側に水切り8を設ける一方、複数の平板状屋根材10,…,10の棟木5側に棟包み9を設ける。
以上のようにして、屋根構造1が施工される。
−屋根構造の特性−
〈屋根下地材の特性〉
上述のように、従来の屋根下地材では、野地板(構造用合板)の吸水率が高いため、防水シートを貫く釘穴を通って野地板に至った雨水が野地板の表面から内部に浸透し易かった。また、従来の屋根下地材では、野地板を貫く釘穴の止水性が低く、雨水が野地板まで至ると、野地板の釘穴に浸入し、釘穴からも野地板内部に雨水が吸収されていた。さらに、野地板は保水性が高く乾燥し難い。つまり、従来の屋根下地材では、野地板の吸水性、透水性が高いことに加え、保水性が高いため、野地板の腐朽による劣化を招き易かった。
これに対し、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の屋根下地材に比べて吸水率が低い(15%以下)野地板21を用いている。そのため、雨水が、透湿防水シート22を貫く釘4の釘穴を通って野地板21に至っても、野地板21に至った雨水は、表面から内部に浸透し難い。仮に、若干量の水を吸収しても透湿性と同様に通気性にも優れており、乾燥が速いという特長を持つ。また、このような野地板21によれば、釘4が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘4に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、雨水が平板状屋根材10の隙間から屋根下地材20に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板21に浸透し難くなり、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一、雨水が野地板21に浸透したとしても、野地板21の裏面まで至ることがなく、雨漏りを防止することができる。
また、上述のように、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。また、屋根の勾配にしたがって合板上を流れた水は、合板の継ぎ目で漏れ易く、これも雨漏りの原因となる。
これに対し、本実施形態1の屋根下地材20では、野地板21が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板21は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板21の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
この点を実証すべく、以下の透水性試験を行った。
(1)試験体
以下の2種類の試験体Xを2枚ずつ用意した。
I:中密度繊維板(厚さ9mm、密度0.79g/cm3、含水率8.9%)
II:合板(厚さ9mm、密度0.42g/cm3、含水率10.6%、針葉樹)
なお、Iの試験体Xは、野地板21を構成する中密度繊維板と同様に、吸水率が15%以下で透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
(2)試験方法
まず、図5に示すように、試験用器具を組み立てる。具体的には、試験体Xの中心に釘51(N50、スクリュー釘)を上方から打ち込む。Iの試験体Xの一方(試験体X1と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X2と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。IIの試験体Xの一方(試験体X3と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X4と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。このようにして形成された4種類の試験体X1〜X4のそれぞれに対し、釘51を覆うように試験体Xの上面にアクリル樹脂からなる円筒52(内径34mm、高さ300mm)を立てて置き、円筒52と試験体Xの上面との隙間をコーキング剤53で埋めた後、これらを円筒52よりも大径のビーカー54の上に載せる。
試験用器具の組み立て後、水(常温)を、円筒52内に静かに注ぐ。水は、円筒52の高さ250mm(約227ml)の位置まで注ぐ。そして、これらを気温20℃、相対湿度65%の環境下で8日間静置し、定期的に水の残量、試験体Xの外観状態及び釘穴からの水の漏れを確認した。
(3)試験結果
図6のグラフは、上記透水性試験の結果である。図6のグラフの縦軸に示す透水量(ml)は、円筒52内に注がれた水の減少量である。また、■印が試験体X1、◆印が試験体X2、●印が試験体X3、▲印が試験体X4のそれぞれの透水量を示している。
図6のグラフから判るように、4種類の試験体X1〜X4のうち、試験体X4の透水量が最も多く、試験開始後3日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。次いで、試験体X3の透水量が多く、試験開始後4日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。この結果より、試験体X3及びX4では、釘51を打ち込む際に釘穴が大きく形成されるために、この釘穴から水が試験体Xの繊維方向に拡がる(浸透する)と共に、釘51を伝って試験体Xの下方(ビーカー54)まで通り抜け易い(釘穴の止水性が低い)ことが判る。
これに対し、本実施形態1の野地板21を構成する試験体X1及びX2は、4種類の試験体X1〜X4の中で試験体X3及びX4に比べて透水量が著しく少なく、試験開始から3日経過しても、円筒52内からほとんど水が流出しなかった。試験体X1及びX2では、試験開始から8日経過しても、釘51からビーカー54へ水が滴らなかった。これは、試験体X1及びX2では、釘51が木材繊維間をかき分けるように打ち込まれ、その釘51に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、水が通過する隙間がほとんど形成されないことによるものと推測される。また、試験体X1は、耐水性に優れる第1の接着剤(本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤)を含む接着剤で形成され、吸水率が15%以下に構成されている。そのため、釘穴によって釘51の周囲に隙間が形成されたとしても、木材繊維が耐水性に優れる第1の接着剤でコーティングされているため、水が浸入しないものと推測される。このように、試験体X1及びX2では、水が表面(上面)から内部に浸透することがなく、釘穴に浸入することもなく、試験体X3及びX4に比べて透水性が著しく低い、即ち、防水性が極めて高いことが判る。
このように、本実施形態1では、防水性が極めて高く(透水性が極めて低く)、通気性に優れた野地板21を屋根下地材20として用いていることにより、屋根下地材20の腐朽による劣化及び雨漏りを防止することができる。
〈通気路の特性〉
上述のように、本実施形態1では、垂木2の成よりも薄い断熱材30を、複数の垂木2,…,2の各間に設けている。そのため、断熱材30及び屋根下地材20を施工するだけで、各断熱材30と屋根下地材20との間に、軒先6側から棟木5側に向かって延びる通気路40が形成される。
通気路40では、軒先6側の端部が流入口40aとなり、棟木5側の端部(棟包み9と平板状屋根材10との間)が流出口40bとなって、屋外の空気が流入口40aから流出口40bへ流れる。そのため、室内の湿気が断熱材30を通過して屋根下地材20の下面側(野地板21の下面)に至ったとしても、屋根下地材20の下面において結露が生じ難くなる。また、屋根下地材20の下面において結露が生じたとしても、結露水は、通気路40を流れる空気によって気化して水蒸気となり、該空気と共に軒先6側から棟木5側へ流れ、流出口40bから速やかに屋外へ排出されることとなる。そのため、屋根下地材20の腐朽による劣化を防止することができる。
また、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の屋根下地材に比べて吸水率が低く(15%以下)且つ透湿抵抗の低い(2.5m2・h・mmHg/g未満)野地板21を用いている。そのため、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材10の下方(具体的には、透湿防水シート22の上下面)において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材20(野地板21及び透湿防水シート22)を通過して通気路40に至る。平板状屋根材10と屋根下地材20との間で生じた結露による湿気は、通気路40を流れる空気と共に軒先6側から棟木5側へ流れ、流出口40bから速やかに屋外へ排出されることとなる。そのため、屋根下地材20の腐朽による劣化を防止することができる。
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、屋根下地材20の下方に、軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。そのため、冬季に室内で生じた湿気が小屋裏に至っても、通気路40を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。よって、屋根下地材20の下面において結露が生じて屋根下地材20が腐朽により劣化するおそれがない。つまり、屋根下地材20の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、本実施形態1によれば、屋根下地材20の野地板21が、密度が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、木材繊維間に隙間が形成されているため、従来、野地板として用いられていた構造用合板に比べて透湿抵抗が低い。そのため、このような湿気を透過させ易い野地板21を屋根下地材20として用いることにより、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材10の下方において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材20を通過して通気路40に至る。よって、平板状屋根材10と屋根下地材20との間に通気路40がなく、平板状屋根材10の大部分が屋根下地材20に密着した構成であっても、平板状屋根材10と屋根下地材20との間で生じた結露による湿気を屋外へ排出することができ、平板状屋根材10の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、本実施形態1によれば、吸水率が15%以下に構成された中密度繊維板を野地板21として用いている。このような野地板21は、構造用合板等で構成された従来の野地板(吸水率60%以上)に比べて表面に付着した雨水を吸水し難く、いくらか吸水しても構造用合板より速乾性に優れる。また、このような野地板21によれば、釘4が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘4に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、雨水が平板状屋根材10の隙間から屋根下地材20に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板21に浸透し難くなり、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一雨水が野地板21に浸透したとしても、裏面にまで至ることはなく、雨漏りを防止することができる。
また、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。
これに対し、本実施形態1によれば、野地板21が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板21は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、本実施形態1によれば、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板21の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
さらに、本実施形態1によれば、屋根下地材20の下方に通気路40が形成され、野地板21を透湿性に優れた中密度繊維板で構成している。そのため、万一、雨水が野地板21に浸透したとしても、野地板21に浸透した雨水は、いずれ気化して水蒸気となり、野地板21を通過して通気路40に至るため、通気路40を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。
以上により、本実施形態1によれば、施工が容易で、平板状屋根材10及び屋根下地材20が腐朽により劣化し難い屋根構造1を提供することができる。
また、本実施形態1では、野地板21を構成する中密度繊維板の接着剤として、耐水性に優れるユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤を用いている。このような第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。また、上述のような耐水性に優れた第1の接着剤は高価であるため、第1の接着剤のみを接着剤として用いると中密度繊維板も高価になり、屋根下地材20の製造コストが嵩む。そこで、本実施形態1では、第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いた中密度繊維板を用いることとした。第2の接着剤は、安価で耐水性が低いため、高価で耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率15%以下の中密度繊維板を、比較的安価に且つ透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。よって、そのような中密度繊維板を野地板21とすることにより、透湿性と防水性に優れた野地板21を有する屋根下地材20を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
また、本実施形態1では、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満に構成された中密度繊維板を野地板21として用いている。このように透湿抵抗が極めて低く、透湿性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、野地板21と透湿防水シート22との間における結露の発生及び野地板21の腐朽による劣化を抑制する効果がさらに増大する。
ところで、平板状屋根材10が金属板によって形成された金属屋根材10である場合、アスファルトルーフィングのような透湿性のないシート材を野地板21の上面に設けると、金属屋根材10と透湿性のないシート材との間において水蒸気(湿気)が抜けず、金属屋根材10の下面で結露した結露水や金属屋根材10の下面側へ侵入した雨水が排出されずに溜まり、金属屋根材10の下面に錆が発生するおそれがある。
これに対し、本実施形態1では、屋根下地材20を、透湿性と防水性に優れた野地板21と、該野地板21の上面に設けられた透湿性と防水性を有する透湿防水シート22とで構成することとしている。このような構成により、金属屋根材10の下面において結露が生じたり、金属屋根材10の下面側へ雨水が浸入したりしても、その水分(結露水や雨水)は、気温上昇時に気化して水蒸気となり、透湿性を有する屋根下地材20(透湿防水シート22と野地板21)を通過して通気路40に至るため、水分(結露水や雨水)が金属屋根材10の下面に溜まることがない。つまり、上記構成によれば、金属屋根材10の下面における錆の発生を抑制することができる。また、上記構成によれば、屋根下地材20の防水性がさらに向上するため、野地板21の腐朽等の劣化をさらに抑制することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、屋根下地材20を、野地板21と透湿防水シート22とで構成していたが、屋根下地材20は、透湿防水シート22を備えないものであってもよい。上述のように、野地板21は、従来の野地板に比べて透水性が低く防水性に優れるため、透湿防水シート22を設けなくても、野地板21に雨水が浸透するのを抑制することができるため、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、上記実施形態1では、平板状屋根材の一例として金属板によって形成された平板状の金属屋根材について説明した。しかしながら、平板状屋根材は、屋根下地材にベタ置きする平板状の屋根材であればいかなるものであってもよく、平板状の金属屋根材に限られない。平板状屋根材は、屋根下地材にベタ置きする平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等であってもよい。
また、上記実施形態1では、立平葺きの屋根構造1について説明したが、本発明に係る屋根構造の平板状屋根材の葺き方は、立平葺きに限定されない。本発明に係る屋根構造の平板状屋根材の葺き方は、平葺きであってもよく、瓦棒葺きであってもよい。
また、上記各実施形態において、平板状屋根材として金属屋根材を用いず、平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等を用いる場合、透湿防水シート22の代わりに、アスファルトルーフィングのような透湿性を有しないシート材を用いることとしてもよい。金属屋根材と異なり、化粧スレートやアスファルトシングル等は、錆が発生しない。よって、平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等を用いる場合には、透湿防水シート22の代わりに透湿性を有しないシート材を用いることにより、屋根構造にかかる費用を削減することができる。
ただし、ベタ置き型の屋根材(平板状屋根材)は、太陽からの熱を直接的に屋根材の下面に伝えるため、ルーフィングとその上面の水分は、夏場であれば70℃程度にまで温度が上昇する。アスファルトルーフィングを用いる場合、平板状屋根材とアスファルトルーフィングとの間に熱だけでなく熱と水分が共存することとなり、アスファルトルーフィングの劣化が促進される。そのため、アスファルトルーフィングを用いる場合、耐久性の高いアスファルトルーフィングを使用する等の配慮が必要である。
一方、近年の技術開発により、腐食、錆に強い金属屋根材が開発されている。このように腐食や錆に強い金属屋根材を用いる場合には、水分による腐食の心配が無いため、アスファルトルーフィングを用いることが可能となる。また、腐食や錆に強い金属屋根材とアスファルトルーフィングを用いる場合、通気路40を介してアスファルトルーフィングの上面(金属屋根材の下面)の水分を排出する必要がなく、主としてアスファルトルーフィングの下面(中密度繊維板からなる野地板21の上面)の水分を排出すればよいため、野地板21の腐朽防止に特化した構造となる。
また、上記実施形態1では、本発明に係る屋根下地材20を、屋根断熱タイプの屋根構造1に適用する例について説明したが、屋根下地材20は、屋根側ではなく天井側に断熱材30が設けられた天井断熱タイプの屋根構造に適用することも勿論可能である。天井断熱タイプの屋根構造に適用した場合においても、屋根下地材20の下方に通気路40を形成し、上記実施形態1と同様の野地板21を用いることにより、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施形態1では、充填断熱工法で施工された屋根構造について説明しているが、本発明は、外張り断熱工法で施工された屋根構造にも適用可能である。
本発明は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造に有用である。
1 屋根構造
5 棟木
6 軒先
10 平板状屋根材
20 屋根下地材
21 野地板
22 透湿防水シート
40 通気路
本発明は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造に関するものである。
従来、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造が用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。特許文献1には、金属製の平板状屋根材の裏側(屋内側)における結露の発生を防止すべく、屋根下地材と平板状屋根材との間に、連続する凹部を上下にそれぞれ有する通気部材を設けた屋根構造が開示されている。
しかしながら、上記屋根構造では、屋根下地材と平板状屋根材との間には通気路が確保されるものの、屋根下地材とその下方の断熱材との間に通気路が形成されていないため、冬季に室内で生じて小屋裏に至った湿気によって屋根下地材の下面において結露が生じ、構造用合板等で構成される屋根下地材が腐朽により劣化するおそれがあった。
また、上記屋根構造において、屋根下地材と断熱材との間に通気路を形成することが考えられるが、その場合、屋根下地材の上下に通気路を形成しなければならず、施工に手間がかかる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造において、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、屋根下地材と断熱材との間に通気路を形成し、吸水率が15%以下の中密度繊維板によって構成された野地板を屋根下地材として用いることとした。
具体的には、第1の発明は、平板状屋根材と、該平板状屋根材が上面に取り付けられる屋根下地材とを備えた屋根構造であって、上記平板状屋根材は、上記屋根下地材との間に屋外に連通する連通路が形成されないように上記屋根下地材の上面に取り付けられ、上記屋根下地材の下方には、軒先側から棟木側に向かって空気が流れる通気路が形成され、上記屋根下地材は、密度が0.7以上0.85未満で吸水率が15%以下の中密度繊維板によって構成された野地板を有し、上記野地板は、上記平板状屋根材の下方において生じた湿気が上記野地板を通過して上記通気路に至るような透湿抵抗になるように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2−m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)である。
第1の発明では、屋根下地材の下方に、軒先側から棟木側へ延びる通気路が形成されている。そのため、冬季に室内で生じた湿気が小屋裏に至っても、通気路を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。よって、屋根下地材の下面において結露が生じて屋根下地材が腐朽により劣化するおそれがない。つまり、屋根下地材の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、第1の発明では、屋根下地材の野地板が、密度が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、木材繊維間に隙間が形成されているため、従来、野地板として用いられていた構造用合板に比べて透湿抵抗が低い。このような湿気を透過させ易い野地板を屋根下地材として用いることにより、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材の下方において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材を通過して通気路に至る。よって、平板状屋根材と屋根下地材との間に通気路がなく、平板状屋根材の大部分が屋根下地材に密着した構成であっても、平板状屋根材と屋根下地材との間で生じた結露による湿気を屋外へ排出することができ、平板状屋根材の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、第1の発明によれば、吸水率が15%以下に構成された中密度繊維板を野地板として用いている。このような野地板は、構造用合板等で構成された従来の野地板(吸水率60%以上)に比べて表面に付着した雨水を吸水し難い。また、このような野地板によれば、釘が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板として用いることにより、雨水が平板状屋根材の隙間から屋根下地材に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板に浸透し難くなり、野地板の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一、雨水が野地板に浸透したとしても、野地板の裏面まで至ることがなく、雨漏りを防止することができる。
また、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。
これに対し、第1の発明によれば、野地板が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、第1の発明によれば、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
さらに、第1の発明によれば、屋根下地材の下方に通気路が形成され、野地板を透湿性に優れた中密度繊維板で構成している。そのため、万一、雨水が野地板に浸透したとしても、野地板に浸透した雨水は、いずれ気化して水蒸気となり、野地板を通過して通気路に至るため、通気路を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。
以上により、第1の発明によれば、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することができる。
第2の発明は、第1の発明において、上記中密度繊維板は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤と、ユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤とを含んでいることを特徴とする。
第2の発明では、野地板を構成する中密度繊維板の接着剤として、耐水性に優れるユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤を用いている。このような第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。また、耐水性に優れた第1の接着剤は高価であるため、第1の接着剤のみを接着剤として用いると中密度繊維板も高価になり、屋根下地材の製造コストが嵩む。そこで、第2の発明では、第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いた中密度繊維板を用いることとした。第2の接着剤は、安価で耐水性が低いため、高価で耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率15%以下の中密度繊維板を、比較的安価に且つ透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。よって、そのような中密度繊維板を野地板とすることにより、透湿性と防水性に優れた野地板を有する屋根下地材を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
第3の発明は、第2の発明において、上記中密度繊維板は、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満であることを特徴とする。
ここで、透湿抵抗は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される値である。
第3の発明では、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満に構成された中密度繊維板を野地板として用いている。このように透湿抵抗が極めて低く、透湿性に優れた中密度繊維板を野地板として用いることにより、野地板裏面での結露の発生及び野地板の腐朽による劣化を抑制する効果がさらに増大する。
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記屋根下地材は、上記野地板の上面に設けられた透湿防水シートを有し、上記透湿防水シートは、上記平板状屋根材の下方において生じた湿気が上記屋根下地材を通過して上記通気路に至るような透湿抵抗になるように構成されていることを特徴とするものである。
第5の発明は、第4の発明において、上記平板状屋根材は、金属屋根材であることを特徴とする。
ところで、上記平板状屋根材が金属屋根材である場合、アスファルトルーフィングのような透湿性のないシート材を野地板の上面に設けると、金属屋根材と透湿性のないシート材との間において水蒸気(湿気)が抜けず、金属屋根材の下面で結露した結露水や金属屋根材の下面側へ侵入した雨水が排出されずに溜まり、金属屋根材の下面に錆が発生するおそれがある。
第4及び第5の発明では、屋根下地材を、透湿性と防水性に優れた野地板と、該野地板の上面に設けられた透湿性と防水性を有するシートとで構成することとしている。このような構成により、平板状屋根材として金属屋根材を用いることにより、金属屋根材の下面において結露が生じたり、金属屋根材の下面側へ雨水が浸入したりしても、その水分(結露水や雨水)は、気温上昇時に気化して水蒸気となり、透湿性を有する屋根下地材(透湿防水シートと野地板)を通過して通気路に至るため、水分(結露水や雨水)が金属屋根材の下面に溜まることがない。つまり、上記構成によれば、金属屋根材の下面における錆の発生を抑制することができる。また、上記構成によれば、屋根下地材の防水性がさらに向上するため、野地板の腐朽等の劣化をさらに抑制することができる。
以上説明したように、本発明の屋根構造によると、屋根下地材の下方に通気路を形成すると共に、透湿性と防水性に優れた吸水率15%以下の中密度繊維板からなる野地板を屋根下地材として用いることにより、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することができる。
図1は、実施形態1に係る建物の屋根構造の一部分の外観を示す斜視図である。
図2は、図1の屋根構造の一部分を妻側に平行な面で切断した断面図である。
図3は、図2の部分拡大図である。
図4は、図1の屋根構造の一部分を平側に平行な面で切断した断面図である。
図5は、透水性試験の様子を示す模式図である。
図6は、透水性試験の試験結果である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2に示すように、屋根構造1は、屋根下地材20の上に、複数の金属製の平板状屋根材10,…,10を、順に配置して葺いたものである。本実施形態1では、複数の平板状屋根材10,…,10は、棟木5側から軒先6側に向かって縦方向に延びるように配置されてそれぞれはぜ継ぎされた、所謂、立平葺きで施工されている。
−屋根構造の構成−
図2〜図4に示すように、屋根構造1は、平板状屋根材10と、屋根下地材20と、断熱材30とを備えている。平板状屋根材10と屋根下地材20は、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に施工されている。複数の垂木2,…,2の下端面には、石膏ボード3が取り付けられている。なお、図2中、符号7は鼻隠し、符号8は水切り、符号9は棟包みである。
屋根構造1では、断熱材30は、ロックウールによって構成され、複数の垂木2,…,2の各間に設けられている。断熱材30は、高さが、複数の垂木2,…,2の成よりも低くなるように形成されている。そのため、屋根下地材20の下方には、垂木2に沿って軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。
以上のような構成により、本実施形態1では、屋根構造1は、天井側ではなく屋根側に断熱材30が設けられる、所謂、屋根断熱タイプの屋根構造に構成されている。
〈平板状屋根材の詳細な構成〉
図2〜図4に示すように、平板状屋根材10は、折り曲げ形成された矩形状の金属板で構成され、本実施形態1では、ガルバリウム鋼板(登録商標)で構成されている。平板状屋根材10は、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で、屋根下地材20の上面に取り付けられている。なお、平板状屋根材10は、ガルバリウム鋼板(登録商標)に限られず、銅板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等で構成されていてもよい。
平板状屋根材10は、本体部11と、第1係合部(はぜ)12と、第2係合部(はぜ)13と、支持脚部14と、固定部15とを備えている。
本体部11は、平板状屋根材10を構成する矩形状の金属板の幅方向の両端部を除く部分であり、平板状屋根材10の長手方向に延び、屋根下地材20に取り付けられた際に、該屋根下地材20の上方を覆う概ね平板状の部分である。本体部11は、幅方向の両端部に、端から中程に向かう程、低くなる段差部11aが形成されている。これにより、本体部11は、幅方向の中程部分が両端部に比べて下方へ浅く窪んだ形状となる。本体部11は、幅方向の両端部に段差部11aが形成されることにより、長手方向の撓みが抑制される。
第1係合部12は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。第1係合部12は、本体部11の幅方向の一方側(図4では右側)において上方に突出して隣り合う平板状屋根材10の第2係合部13と係合する形状に形成されている。
具体的には、本実施形態1では、第1係合部12は、本体部11の幅方向の一端から上方に向かって延びる矩形平板状の第1直線部12aと、第1直線部12aの上端から平板状屋根材10の幅方向の内側に向かって延びた後、幅方向の外側へ斜め上方に向かって折れ曲がり、斜め上方に延びる突出部12bと、突出部12bの上端から下方に向かって第1直線部12aに平行に延びる矩形平板状の第2直線部12cとを有している。第1係合部12は、第1直線部12aと突出部12bと第2直線部12cとにより、幅方向の内側に向かって突出する片ひげ矢印形状に形成されている。
第2係合部13は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。第2係合部13は、本体部11の幅方向の他方側(図4では左側)において上方に突出して隣り合う平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さることにより、隣り合う平板状屋根材10の第1係合部12と係合(はぜ継ぎ)する形状に形成されている。
具体的には、本実施形態1では、第2係合部13は、本体部11の幅方向の他端から上方に向かって延びる矩形平板状の直線部13aと、直線部13aの上端から幅方向の外側へ斜め下方に向かって延びた後、平板状屋根材10の幅方向の内側に向かって折れ曲がり、直線部13aに略垂直に延びる突出部13bと、突出部13bの一端から幅方向の外側へ斜め下方に向かって折れ曲がり、斜め下方に延びる終端部13cとを有している。第2係合部13は、直線部13aと突出部13bと終端部13cとにより、幅方向の外側に向かって突出する片ひげ矢印形状に形成されている。第2係合部13は、第1係合部12に覆い被さるように、第1係合部12よりも一回り大きい片ひげ矢印形状に形成されている。
支持脚部14は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。支持脚部14は、第1係合部12の第2直線部12cの下端(第1直線部12aの下端と同じ高さ位置)から下方に延び、第1係合部12を支持する部分である。支持脚部14は、第1係合部12の第2直線部12cと長さ(図4の紙面直交方向の長さ)が等しい矩形平板状に形成されている。
固定部15は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。固定部15は、支持脚部14の下端から幅方向の外側に延び、屋根下地材20に当接する平板状の部分を有し、屋根下地材20に固定されている。固定部15は、支持脚部14と長さ(図4の紙面直交方向の長さ)が等しい矩形平板状に形成されている。固定部15は、前述したように、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で屋根下地材20に固定されている。
このような構成により、平板状屋根材10は、固定部15を釘4で屋根下地材20に固定し、第1係合部12に隣接する平板状屋根材10の第2係合部13を覆い被せて係合させると共に、第2係合部13を隣接する平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さるように係合させるだけで、屋根下地材20上に施工される。
〈屋根下地材の詳細な構成〉
屋根下地材20は、野地板21と、透湿防水シート22とを備えている。野地板21と透湿防水シート22とは、いずれも透湿性と防水性とを兼ね備えている。そのため、本実施形態1では、平板状屋根材10と屋根下地材20との間に屋外と連通する連通路が設けられていない。
[野地板]
野地板21は、密度(g/cm3)が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。本実施形態では、密度0.79g/cm3の厚さ9.2mm厚の中密度繊維板を、野地板21として用いている。
野地板21を構成する中密度繊維板は、耐水性に優れた第1の接着剤と、該第1の接着剤と比較して耐水性が低い第2の接着剤とを含んでいる。本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤を第1の接着剤とし、ユリア樹脂系接着剤を第2の接着剤として含む中密度繊維板によって野地板21が構成されている。また、本実施形態1では、野地板21において、第1の接着剤と第2の接着剤とは、重量比率が第1の接着剤:第2の接着剤=2:8となるように配合されて含まれている。なお、第1の接着剤は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤に限られず、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも一種を含むものであればよい。
(吸水率)
野地板21は、吸水率が15%以下となるように構成されている。なお、野地板21は、吸水率が13.6%以下となるように構成されるのが好ましく、さらに、吸水率が13.2%以下となるように構成されるのがより好ましい。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2−m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)を用いる。
上述のように耐水性に優れる第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。よって、野地板21を構成する中密度繊維板の成形に第1の接着剤を用い、その配合比率を調整することにより、野地板21の吸水率を所望の吸水率、本実施形態では、15%以下(好ましくは13.6%以下、より好ましくは13.2%以下)にすることができる。
なお、従来野地板として用いていた厚さ12mmの構造用合板A(スギ)と構造用合板B(表層カラマツ、芯層スギ)について、上記吸水率試験を行い、吸水率を算出したところ、その吸水率は、82%と61%であった。このことから、本実施形態1の野地板21の吸水率が従来の野地板と比較して著しく低いことが判る。
(透湿性能)
野地板21は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が、2.5m2・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
上述のように耐水性に優れる第1の接着剤を含む中密度繊維板は、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。
しかしながら、本実施形態1では、野地板21を構成する中密度繊維板の成形に第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いている。第2の接着剤は、第1の接着剤に比べて耐水性が低いため、耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率の低い(15%以下の)中密度繊維板を、透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。つまり、第1の接着剤と第2の接着剤との配合比率を調整することにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満の野地板21(中密度繊維板)を構成することができる。なお、本実施形態1では、上述のように、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤からなる第1の接着剤と、ユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤とを、重量比率が第1の接着剤:第2の接着剤=2:8となるように配合して添加して形成した中密度繊維板を野地板21として用いることにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満の野地板21を構成することができる。
なお、従来野地板として用いていた上記構造用合板Aと構造用合板Bについて、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定した透湿抵抗は、23m2・h・mmHg/gと27m2・h・mmHg/gであった。このことから、本実施形態1の野地板21の透湿抵抗が従来の野地板と比較して著しく低い、つまり、透湿性能が著しく高いことが判る。
[透湿防水シート]
透湿防水シート22は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が0.65m2・s・Pa/μg以下となるように構成されている。この透湿抵抗は、JIS A6111の屋根用の透湿防水シートの規定に準拠したものである。本実施形態1では、透湿防水シート22は、多数の微細孔(直径0.5μm程度)が設けられた樹脂フィルムで構成され、透湿抵抗が0.5m2・s・Pa/μg以下に構成されている。なお、透湿防水シート22は、JIS A6111に準拠したものであればいかなるものを用いてもよく、不織布で構成してもよい。また、これらを積層したものとしてもよい。
−屋根構造の施工方法−
屋根構造1は、以下のようにして施工される。
まず、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の間に断熱材30(袋入りロックウール)を充填し、各垂木2の下端面(内面)にステープルで固定した後、複数の垂木2,…,2の下端面(内面)に石膏ボード3を押しつけ、ビス等で石膏ボード3を複数の垂木2,…,2に打ち付ける。
次に、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に屋根下地材20を施工する。具体的には、複数の垂木2,…,2上に野地板21を敷きつめ、釘やビス等で野地板21を複数の垂木2,…,2に固定する。その後、野地板21上に透湿防水シート22を敷きつめ、ステープル釘等で透湿防水シート22を野地板21に打ち付ける。このとき、野地板21の上において複数の透湿防水シート22を、屋根勾配の下側から上側へ順に辺縁を重ね合わせながら敷きつめ、隣り合う透湿防水シート22の重ね合わせた部分にステープル釘等を打ち込む。このようにして屋根下地材20が施工される。
なお、本実施形態1では、垂木2の成よりも薄い断熱材30を用いている。そのため、断熱材30及び屋根下地材20を施工することにより、断熱材30と屋根下地材20との間に、自動的に軒先6側から棟木5側に向かって延びる通気路40が形成される。
屋根下地材20の施工後、平板状屋根材10を葺く。具体的には、複数の平板状屋根材10,…,10を、棟木5の延伸方向の一端(けらば)から他端(けらば)まで順に葺いていく。具体的には、平板状屋根材10を、長手方向が棟木5側から軒先6側へ延びるように、屋根下地材20上の所定の位置に配置し、平板状の固定部15を、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で固定する。次の屋根下地材20は、第2係合部13が、先に屋根下地材20に取り付けられた平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さる位置に配置され、第2係合部13を、先に屋根下地材20に取り付けられた平板状屋根材10の第1係合部12に押しつけることによって該第1係合部12を内部に嵌める(はぜ継ぎする)。このとき、互いに係合する第1係合部12と第2係合部13との間に、防水材を挟み込むことが好ましい。このようにして、複数の平板状屋根材10,…,10を、棟木5の延伸方向の一端側から他端側に順に葺いていく。
複数の平板状屋根材10,…,10の施工後、複数の平板状屋根材10,…,10の軒先6側に水切り8を設ける一方、複数の平板状屋根材10,…,10の棟木5側に棟包み9を設ける。
以上のようにして、屋根構造1が施工される。
−屋根構造の特性−
〈屋根下地材の特性〉
上述のように、従来の屋根下地材では、野地板(構造用合板)の吸水率が高いため、防水シートを貫く釘穴を通って野地板に至った雨水が野地板の表面から内部に浸透し易かった。また、従来の屋根下地材では、野地板を貫く釘穴の止水性が低く、雨水が野地板まで至ると、野地板の釘穴に浸入し、釘穴からも野地板内部に雨水が吸収されていた。さらに、野地板は保水性が高く乾燥し難い。つまり、従来の屋根下地材では、野地板の吸水性、透水性が高いことに加え、保水性が高いため、野地板の腐朽による劣化を招き易かった。
これに対し、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の屋根下地材に比べて吸水率が低い(15%以下)野地板21を用いている。そのため、雨水が、透湿防水シート22を貫く釘4の釘穴を通って野地板21に至っても、野地板21に至った雨水は、表面から内部に浸透し難い。仮に、若干量の水を吸収しても透湿性と同様に通気性にも優れており、乾燥が速いという特長を持つ。また、このような野地板21によれば、釘4が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘4に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、雨水が平板状屋根材10の隙間から屋根下地材20に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板21に浸透し難くなり、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一、雨水が野地板21に浸透したとしても、野地板21の裏面まで至ることがなく、雨漏りを防止することができる。
また、上述のように、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。また、屋根の勾配にしたがって合板上を流れた水は、合板の継ぎ目で漏れ易く、これも雨漏りの原因となる。
これに対し、本実施形態1の屋根下地材20では、野地板21が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板21は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板21の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
この点を実証すべく、以下の透水性試験を行った。
(1)試験体
以下の2種類の試験体Xを2枚ずつ用意した。
I:中密度繊維板(厚さ9mm、密度0.79g/cm3、含水率8.9%)
II:合板(厚さ9mm、密度0.42g/cm3、含水率10.6%、針葉樹)
なお、Iの試験体Xは、野地板21を構成する中密度繊維板と同様に、吸水率が15%以下で透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
(2)試験方法
まず、図5に示すように、試験用器具を組み立てる。具体的には、試験体Xの中心に釘51(N50、スクリュー釘)を上方から打ち込む。Iの試験体Xの一方(試験体X1と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X2と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。IIの試験体Xの一方(試験体X3と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X4と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。このようにして形成された4種類の試験体X1〜X4のそれぞれに対し、釘51を覆うように試験体Xの上面にアクリル樹脂からなる円筒52(内径34mm、高さ300mm)を立てて置き、円筒52と試験体Xの上面との隙間をコーキング剤53で埋めた後、これらを円筒52よりも大径のビーカー54の上に載せる。
試験用器具の組み立て後、水(常温)を、円筒52内に静かに注ぐ。水は、円筒52の高さ250mm(約227ml)の位置まで注ぐ。そして、これらを気温20℃、相対湿度65%の環境下で8日間静置し、定期的に水の残量、試験体Xの外観状態及び釘穴からの水の漏れを確認した。
(3)試験結果
図6のグラフは、上記透水性試験の結果である。図6のグラフの縦軸に示す透水量(ml)は、円筒52内に注がれた水の減少量である。また、■印が試験体X1、◆印が試験体X2、●印が試験体X3、▲印が試験体X4のそれぞれの透水量を示している。
図6のグラフから判るように、4種類の試験体X1〜X4のうち、試験体X4の透水量が最も多く、試験開始後3日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。次いで、試験体X3の透水量が多く、試験開始後4日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。この結果より、試験体X3及びX4では、釘51を打ち込む際に釘穴が大きく形成されるために、この釘穴から水が試験体Xの繊維方向に拡がる(浸透する)と共に、釘51を伝って試験体Xの下方(ビーカー54)まで通り抜け易い(釘穴の止水性が低い)ことが判る。
これに対し、本実施形態1の野地板21を構成する試験体X1及びX2は、4種類の試験体X1〜X4の中で試験体X3及びX4に比べて透水量が著しく少なく、試験開始から3日経過しても、円筒52内からほとんど水が流出しなかった。試験体X1及びX2では、試験開始から8日経過しても、釘51からビーカー54へ水が滴らなかった。これは、試験体X1及びX2では、釘51が木材繊維間をかき分けるように打ち込まれ、その釘51に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、水が通過する隙間がほとんど形成されないことによるものと推測される。また、試験体X1は、耐水性に優れる第1の接着剤(本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤)を含む接着剤で形成され、吸水率が15%以下に構成されている。そのため、釘穴によって釘51の周囲に隙間が形成されたとしても、木材繊維が耐水性に優れる第1の接着剤でコーティングされているため、水が浸入しないものと推測される。このように、試験体X1及びX2では、水が表面(上面)から内部に浸透することがなく、釘穴に浸入することもなく、試験体X3及びX4に比べて透水性が著しく低い、即ち、防水性が極めて高いことが判る。
このように、本実施形態1では、防水性が極めて高く(透水性が極めて低く)、通気性に優れた野地板21を屋根下地材20として用いていることにより、屋根下地材20の腐朽による劣化及び雨漏りを防止することができる。
〈通気路の特性〉
上述のように、本実施形態1では、垂木2の成よりも薄い断熱材30を、複数の垂木2,…,2の各間に設けている。そのため、断熱材30及び屋根下地材20を施工するだけで、各断熱材30と屋根下地材20との間に、軒先6側から棟木5側に向かって延びる通気路40が形成される。
通気路40では、軒先6側の端部が流入口40aとなり、棟木5側の端部(棟包み9と平板状屋根材10との間)が流出口40bとなって、屋外の空気が流入口40aから流出口40bへ流れる。そのため、室内の湿気が断熱材30を通過して屋根下地材20の下面側(野地板21の下面)に至ったとしても、屋根下地材20の下面において結露が生じ難くなる。また、屋根下地材20の下面において結露が生じたとしても、結露水は、通気路40を流れる空気によって気化して水蒸気となり、該空気と共に軒先6側から棟木5側へ流れ、流出口40bから速やかに屋外へ排出されることとなる。そのため、屋根下地材20の腐朽による劣化を防止することができる。
また、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の屋根下地材に比べて吸水率が低く(15%以下)且つ透湿抵抗の低い(2.5m2・h・mmHg/g未満)野地板21を用いている。そのため、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材10の下方(具体的には、透湿防水シート22の上下面)において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材20(野地板21及び透湿防水シート22)を通過して通気路40に至る。平板状屋根材10と屋根下地材20との間で生じた結露による湿気は、通気路40を流れる空気と共に軒先6側から棟木5側へ流れ、流出口40bから速やかに屋外へ排出されることとなる。そのため、屋根下地材20の腐朽による劣化を防止することができる。
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、屋根下地材20の下方に、軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。そのため、冬季に室内で生じた湿気が小屋裏に至っても、通気路40を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。よって、屋根下地材20の下面において結露が生じて屋根下地材20が腐朽により劣化するおそれがない。つまり、屋根下地材20の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、本実施形態1によれば、屋根下地材20の野地板21が、密度が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、木材繊維間に隙間が形成されているため、従来、野地板として用いられていた構造用合板に比べて透湿抵抗が低い。そのため、このような湿気を透過させ易い野地板21を屋根下地材20として用いることにより、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材10の下方において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材20を通過して通気路40に至る。よって、平板状屋根材10と屋根下地材20との間に通気路40がなく、平板状屋根材10の大部分が屋根下地材20に密着した構成であっても、平板状屋根材10と屋根下地材20との間で生じた結露による湿気を屋外へ排出することができ、平板状屋根材10の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、本実施形態1によれば、吸水率が15%以下に構成された中密度繊維板を野地板21として用いている。このような野地板21は、構造用合板等で構成された従来の野地板(吸水率60%以上)に比べて表面に付着した雨水を吸水し難く、いくらか吸水しても構造用合板より速乾性に優れる。また、このような野地板21によれば、釘4が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘4に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、雨水が平板状屋根材10の隙間から屋根下地材20に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板21に浸透し難くなり、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一雨水が野地板21に浸透したとしても、裏面にまで至ることはなく、雨漏りを防止することができる。
また、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。
これに対し、本実施形態1によれば、野地板21が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板21は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、本実施形態1によれば、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板21の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
さらに、本実施形態1によれば、屋根下地材20の下方に通気路40が形成され、野地板21を透湿性に優れた中密度繊維板で構成している。そのため、万一、雨水が野地板21に浸透したとしても、野地板21に浸透した雨水は、いずれ気化して水蒸気となり、野地板21を通過して通気路40に至るため、通気路40を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。
以上により、本実施形態1によれば、施工が容易で、平板状屋根材10及び屋根下地材20が腐朽により劣化し難い屋根構造1を提供することができる。
また、本実施形態1では、野地板21を構成する中密度繊維板の接着剤として、耐水性に優れるユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤を用いている。このような第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。また、上述のような耐水性に優れた第1の接着剤は高価であるため、第1の接着剤のみを接着剤として用いると中密度繊維板も高価になり、屋根下地材20の製造コストが嵩む。そこで、本実施形態1では、第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いた中密度繊維板を用いることとした。第2の接着剤は、安価で耐水性が低いため、高価で耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率15%以下の中密度繊維板を、比較的安価に且つ透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。よって、そのような中密度繊維板を野地板21とすることにより、透湿性と防水性に優れた野地板21を有する屋根下地材20を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
また、本実施形態1では、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満に構成された中密度繊維板を野地板21として用いている。このように透湿抵抗が極めて低く、透湿性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、野地板21と透湿防水シート22との間における結露の発生及び野地板21の腐朽による劣化を抑制する効果がさらに増大する。
ところで、平板状屋根材10が金属板によって形成された金属屋根材10である場合、アスファルトルーフィングのような透湿性のないシート材を野地板21の上面に設けると、金属屋根材10と透湿性のないシート材との間において水蒸気(湿気)が抜けず、金属屋根材10の下面で結露した結露水や金属屋根材10の下面側へ侵入した雨水が排出されずに溜まり、金属屋根材10の下面に錆が発生するおそれがある。
これに対し、本実施形態1では、屋根下地材20を、透湿性と防水性に優れた野地板21と、該野地板21の上面に設けられた透湿性と防水性を有する透湿防水シート22とで構成することとしている。このような構成により、金属屋根材10の下面において結露が生じたり、金属屋根材10の下面側へ雨水が浸入したりしても、その水分(結露水や雨水)は、気温上昇時に気化して水蒸気となり、透湿性を有する屋根下地材20(透湿防水シート22と野地板21)を通過して通気路40に至るため、水分(結露水や雨水)が金属屋根材10の下面に溜まることがない。つまり、上記構成によれば、金属屋根材10の下面における錆の発生を抑制することができる。また、上記構成によれば、屋根下地材20の防水性がさらに向上するため、野地板21の腐朽等の劣化をさらに抑制することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、屋根下地材20を、野地板21と透湿防水シート22とで構成していたが、屋根下地材20は、透湿防水シート22を備えないものであってもよい。上述のように、野地板21は、従来の野地板に比べて透水性が低く防水性に優れるため、透湿防水シート22を設けなくても、野地板21に雨水が浸透するのを抑制することができるため、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、上記実施形態1では、平板状屋根材の一例として金属板によって形成された平板状の金属屋根材について説明した。しかしながら、平板状屋根材は、屋根下地材にベタ置きする平板状の屋根材であればいかなるものであってもよく、平板状の金属屋根材に限られない。平板状屋根材は、屋根下地材にベタ置きする平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等であってもよい。
また、上記実施形態1では、立平葺きの屋根構造1について説明したが、本発明に係る屋根構造の平板状屋根材の葺き方は、立平葺きに限定されない。本発明に係る屋根構造の平板状屋根材の葺き方は、平葺きであってもよく、瓦棒葺きであってもよい。
また、上記各実施形態において、平板状屋根材として金属屋根材を用いず、平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等を用いる場合、透湿防水シート22の代わりに、アスファルトルーフィングのような透湿性を有しないシート材を用いることとしてもよい。金属屋根材と異なり、化粧スレートやアスファルトシングル等は、錆が発生しない。よって、平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等を用いる場合には、透湿防水シート22の代わりに透湿性を有しないシート材を用いることにより、屋根構造にかかる費用を削減することができる。
ただし、ベタ置き型の屋根材(平板状屋根材)は、太陽からの熱を直接的に屋根材の下面に伝えるため、ルーフィングとその上面の水分は、夏場であれば70℃程度にまで温度が上昇する。アスファルトルーフィングを用いる場合、平板状屋根材とアスファルトルーフィングとの間に熱だけでなく熱と水分が共存することとなり、アスファルトルーフィングの劣化が促進される。そのため、アスファルトルーフィングを用いる場合、耐久性の高いアスファルトルーフィングを使用する等の配慮が必要である。
一方、近年の技術開発により、腐食、錆に強い金属屋根材が開発されている。このように腐食や錆に強い金属屋根材を用いる場合には、水分による腐食の心配が無いため、アスファルトルーフィングを用いることが可能となる。また、腐食や錆に強い金属屋根材とアスファルトルーフィングを用いる場合、通気路40を介してアスファルトルーフィングの上面(金属屋根材の下面)の水分を排出する必要がなく、主としてアスファルトルーフィングの下面(中密度繊維板からなる野地板21の上面)の水分を排出すればよいため、野地板21の腐朽防止に特化した構造となる。
また、上記実施形態1では、本発明に係る屋根下地材20を、屋根断熱タイプの屋根構造1に適用する例について説明したが、屋根下地材20は、屋根側ではなく天井側に断熱材30が設けられた天井断熱タイプの屋根構造に適用することも勿論可能である。天井断熱タイプの屋根構造に適用した場合においても、屋根下地材20の下方に通気路40を形成し、上記実施形態1と同様の野地板21を用いることにより、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施形態1では、充填断熱工法で施工された屋根構造について説明しているが、本発明は、外張り断熱工法で施工された屋根構造にも適用可能である。
本発明は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造に有用である。
1 屋根構造
5 棟木
6 軒先
10 平板状屋根材
20 屋根下地材
21 野地板
22 透湿防水シート
40 通気路
本発明は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造に関するものである。
従来、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造が用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。特許文献1には、金属製の平板状屋根材の裏側(屋内側)における結露の発生を防止すべく、屋根下地材と平板状屋根材との間に、連続する凹部を上下にそれぞれ有する通気部材を設けた屋根構造が開示されている。
しかしながら、上記屋根構造では、屋根下地材と平板状屋根材との間には通気路が確保されるものの、屋根下地材とその下方の断熱材との間に通気路が形成されていないため、冬季に室内で生じて小屋裏に至った湿気によって屋根下地材の下面において結露が生じ、構造用合板等で構成される屋根下地材が腐朽により劣化するおそれがあった。
また、上記屋根構造において、屋根下地材と断熱材との間に通気路を形成することが考えられるが、その場合、屋根下地材の上下に通気路を形成しなければならず、施工に手間がかかる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造において、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、屋根下地材と断熱材との間に通気路を形成し、吸水率が15%以下の中密度繊維板によって構成された野地板を屋根下地材として用いることとした。
具体的には、第1の発明は、平板状屋根材と、該平板状屋根材が上面に取り付けられる屋根下地材とを備えた屋根構造であって、上記平板状屋根材は、上記屋根下地材との間に屋外に連通する連通路が形成されないように上記屋根下地材の上面に取り付けられ、上記屋根下地材の下方には、軒先側から棟木側に向かって空気が流れる通気路が形成され、上記屋根下地材は、密度が0.7以上0.85未満で吸水率が15%以下の中密度繊維板によって構成された野地板を有し、上記中密度繊維板は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤と、ユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤とを含み、上記中密度繊維板は、上記第1の接着剤と上記第2の接着剤との配合比率を調整することにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m 2 ・h・mmHg/g未満になるように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2−m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)である。
また、透湿抵抗は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される値である。
第1の発明では、屋根下地材の下方に、軒先側から棟木側へ延びる通気路が形成されている。そのため、冬季に室内で生じた湿気が小屋裏に至っても、通気路を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。よって、屋根下地材の下面において結露が生じて屋根下地材が腐朽により劣化するおそれがない。つまり、屋根下地材の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、第1の発明では、屋根下地材の野地板が、密度が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、木材繊維間に隙間が形成されているため、従来、野地板として用いられていた構造用合板に比べて透湿抵抗が低い。このような湿気を透過させ易い野地板を屋根下地材として用いることにより、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材の下方において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材を通過して通気路に至る。よって、平板状屋根材と屋根下地材との間に通気路がなく、平板状屋根材の大部分が屋根下地材に密着した構成であっても、平板状屋根材と屋根下地材との間で生じた結露による湿気を屋外へ排出することができ、平板状屋根材の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、第1の発明によれば、吸水率が15%以下に構成された中密度繊維板を野地板として用いている。このような野地板は、構造用合板等で構成された従来の野地板(吸水率60%以上)に比べて表面に付着した雨水を吸水し難い。また、このような野地板によれば、釘が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板として用いることにより、雨水が平板状屋根材の隙間から屋根下地材に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板に浸透し難くなり、野地板の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一、雨水が野地板に浸透したとしても、野地板の裏面まで至ることがなく、雨漏りを防止することができる。
また、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。
これに対し、第1の発明によれば、野地板が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、第1の発明によれば、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
さらに、第1の発明によれば、屋根下地材の下方に通気路が形成され、野地板を透湿性に優れた中密度繊維板で構成している。そのため、万一、雨水が野地板に浸透したとしても、野地板に浸透した雨水は、いずれ気化して水蒸気となり、野地板を通過して通気路に至るため、通気路を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。
以上により、第1の発明によれば、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することができる。
また、第1の発明では、野地板を構成する中密度繊維板の接着剤として、耐水性に優れるユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤を用いている。このような第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。また、耐水性に優れた第1の接着剤は高価であるため、第1の接着剤のみを接着剤として用いると中密度繊維板も高価になり、屋根下地材の製造コストが嵩む。そこで、第1の発明では、第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いた中密度繊維板を用いることとした。第2の接着剤は、安価で耐水性が低いため、高価で耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率15%以下の中密度繊維板を、比較的安価に且つ透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。よって、そのような中密度繊維板を野地板とすることにより、透湿性と防水性に優れた野地板を有する屋根下地材を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
また、第1の発明では、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満に構成された中密度繊維板を野地板として用いている。このように透湿抵抗が極めて低く、透湿性に優れた中密度繊維板を野地板として用いることにより、野地板裏面での結露の発生及び野地板の腐朽による劣化を抑制する効果がさらに増大する。
第2の発明は、第1の発明において、上記平板状屋根材は、金属屋根材であり、上記屋根下地材は、上記野地板の上面に設けられた透湿防水シートを有していることを特徴とする。
ところで、上記平板状屋根材が金属屋根材である場合、アスファルトルーフィングのような透湿性のないシート材を野地板の上面に設けると、金属屋根材と透湿性のないシート材との間において水蒸気(湿気)が抜けず、金属屋根材の下面で結露した結露水や金属屋根材の下面側へ侵入した雨水が排出されずに溜まり、金属屋根材の下面に錆が発生するおそれがある。
第2の発明では、屋根下地材を、透湿性と防水性に優れた野地板と、該野地板の上面に設けられた透湿性と防水性を有するシートとで構成することとしている。このような構成により、平板状屋根材として金属屋根材を用いることにより、金属屋根材の下面において結露が生じたり、金属屋根材の下面側へ雨水が浸入したりしても、その水分(結露水や雨水)は、気温上昇時に気化して水蒸気となり、透湿性を有する屋根下地材(透湿防水シートと野地板)を通過して通気路に至るため、水分(結露水や雨水)が金属屋根材の下面に溜まることがない。つまり、上記構成によれば、金属屋根材の下面における錆の発生を抑制することができる。また、上記構成によれば、屋根下地材の防水性がさらに向上するため、野地板の腐朽等の劣化をさらに抑制することができる。
以上説明したように、本発明の屋根構造によると、屋根下地材の下方に通気路を形成すると共に、透湿性と防水性に優れた吸水率15%以下の中密度繊維板からなる野地板を屋根下地材として用いることにより、施工が容易で、平板状屋根材及び屋根下地材が腐朽により劣化し難い屋根構造を提供することができる。
図1は、実施形態1に係る建物の屋根構造の一部分の外観を示す斜視図である。
図2は、図1の屋根構造の一部分を妻側に平行な面で切断した断面図である。
図3は、図2の部分拡大図である。
図4は、図1の屋根構造の一部分を平側に平行な面で切断した断面図である。
図5は、透水性試験の様子を示す模式図である。
図6は、透水性試験の試験結果である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2に示すように、屋根構造1は、屋根下地材20の上に、複数の金属製の平板状屋根材10,…,10を、順に配置して葺いたものである。本実施形態1では、複数の平板状屋根材10,…,10は、棟木5側から軒先6側に向かって縦方向に延びるように配置されてそれぞれはぜ継ぎされた、所謂、立平葺きで施工されている。
−屋根構造の構成−
図2〜図4に示すように、屋根構造1は、平板状屋根材10と、屋根下地材20と、断熱材30とを備えている。平板状屋根材10と屋根下地材20は、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に施工されている。複数の垂木2,…,2の下端面には、石膏ボード3が取り付けられている。なお、図2中、符号7は鼻隠し、符号8は水切り、符号9は棟包みである。
屋根構造1では、断熱材30は、ロックウールによって構成され、複数の垂木2,…,2の各間に設けられている。断熱材30は、高さが、複数の垂木2,…,2の成よりも低くなるように形成されている。そのため、屋根下地材20の下方には、垂木2に沿って軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。
以上のような構成により、本実施形態1では、屋根構造1は、天井側ではなく屋根側に断熱材30が設けられる、所謂、屋根断熱タイプの屋根構造に構成されている。
〈平板状屋根材の詳細な構成〉
図2〜図4に示すように、平板状屋根材10は、折り曲げ形成された矩形状の金属板で構成され、本実施形態1では、ガルバリウム鋼板(登録商標)で構成されている。平板状屋根材10は、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で、屋根下地材20の上面に取り付けられている。なお、平板状屋根材10は、ガルバリウム鋼板(登録商標)に限られず、銅板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等で構成されていてもよい。
平板状屋根材10は、本体部11と、第1係合部(はぜ)12と、第2係合部(はぜ)13と、支持脚部14と、固定部15とを備えている。
本体部11は、平板状屋根材10を構成する矩形状の金属板の幅方向の両端部を除く部分であり、平板状屋根材10の長手方向に延び、屋根下地材20に取り付けられた際に、該屋根下地材20の上方を覆う概ね平板状の部分である。本体部11は、幅方向の両端部に、端から中程に向かう程、低くなる段差部11aが形成されている。これにより、本体部11は、幅方向の中程部分が両端部に比べて下方へ浅く窪んだ形状となる。本体部11は、幅方向の両端部に段差部11aが形成されることにより、長手方向の撓みが抑制される。
第1係合部12は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。第1係合部12は、本体部11の幅方向の一方側(図4では右側)において上方に突出して隣り合う平板状屋根材10の第2係合部13と係合する形状に形成されている。
具体的には、本実施形態1では、第1係合部12は、本体部11の幅方向の一端から上方に向かって延びる矩形平板状の第1直線部12aと、第1直線部12aの上端から平板状屋根材10の幅方向の内側に向かって延びた後、幅方向の外側へ斜め上方に向かって折れ曲がり、斜め上方に延びる突出部12bと、突出部12bの上端から下方に向かって第1直線部12aに平行に延びる矩形平板状の第2直線部12cとを有している。第1係合部12は、第1直線部12aと突出部12bと第2直線部12cとにより、幅方向の内側に向かって突出する片ひげ矢印形状に形成されている。
第2係合部13は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。第2係合部13は、本体部11の幅方向の他方側(図4では左側)において上方に突出して隣り合う平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さることにより、隣り合う平板状屋根材10の第1係合部12と係合(はぜ継ぎ)する形状に形成されている。
具体的には、本実施形態1では、第2係合部13は、本体部11の幅方向の他端から上方に向かって延びる矩形平板状の直線部13aと、直線部13aの上端から幅方向の外側へ斜め下方に向かって延びた後、平板状屋根材10の幅方向の内側に向かって折れ曲がり、直線部13aに略垂直に延びる突出部13bと、突出部13bの一端から幅方向の外側へ斜め下方に向かって折れ曲がり、斜め下方に延びる終端部13cとを有している。第2係合部13は、直線部13aと突出部13bと終端部13cとにより、幅方向の外側に向かって突出する片ひげ矢印形状に形成されている。第2係合部13は、第1係合部12に覆い被さるように、第1係合部12よりも一回り大きい片ひげ矢印形状に形成されている。
支持脚部14は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。支持脚部14は、第1係合部12の第2直線部12cの下端(第1直線部12aの下端と同じ高さ位置)から下方に延び、第1係合部12を支持する部分である。支持脚部14は、第1係合部12の第2直線部12cと長さ(図4の紙面直交方向の長さ)が等しい矩形平板状に形成されている。
固定部15は、平板状屋根材10を構成する金属板の幅方向の一部分によって構成され、平板状屋根材10の長手方向に延びるものである。固定部15は、支持脚部14の下端から幅方向の外側に延び、屋根下地材20に当接する平板状の部分を有し、屋根下地材20に固定されている。固定部15は、支持脚部14と長さ(図4の紙面直交方向の長さ)が等しい矩形平板状に形成されている。固定部15は、前述したように、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で屋根下地材20に固定されている。
このような構成により、平板状屋根材10は、固定部15を釘4で屋根下地材20に固定し、第1係合部12に隣接する平板状屋根材10の第2係合部13を覆い被せて係合させると共に、第2係合部13を隣接する平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さるように係合させるだけで、屋根下地材20上に施工される。
〈屋根下地材の詳細な構成〉
屋根下地材20は、野地板21と、透湿防水シート22とを備えている。野地板21と透湿防水シート22とは、いずれも透湿性と防水性とを兼ね備えている。そのため、本実施形態1では、平板状屋根材10と屋根下地材20との間に屋外と連通する連通路が設けられていない。
[野地板]
野地板21は、密度(g/cm3)が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。本実施形態では、密度0.79g/cm3の厚さ9.2mm厚の中密度繊維板を、野地板21として用いている。
野地板21を構成する中密度繊維板は、耐水性に優れた第1の接着剤と、該第1の接着剤と比較して耐水性が低い第2の接着剤とを含んでいる。本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤を第1の接着剤とし、ユリア樹脂系接着剤を第2の接着剤として含む中密度繊維板によって野地板21が構成されている。また、本実施形態1では、野地板21において、第1の接着剤と第2の接着剤とは、重量比率が第1の接着剤:第2の接着剤=2:8となるように配合されて含まれている。なお、第1の接着剤は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤に限られず、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも一種を含むものであればよい。
(吸水率)
野地板21は、吸水率が15%以下となるように構成されている。なお、野地板21は、吸水率が13.6%以下となるように構成されるのが好ましく、さらに、吸水率が13.2%以下となるように構成されるのがより好ましい。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2−m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)を用いる。
上述のように耐水性に優れる第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。よって、野地板21を構成する中密度繊維板の成形に第1の接着剤を用い、その配合比率を調整することにより、野地板21の吸水率を所望の吸水率、本実施形態では、15%以下(好ましくは13.6%以下、より好ましくは13.2%以下)にすることができる。
なお、従来野地板として用いていた厚さ12mmの構造用合板A(スギ)と構造用合板B(表層カラマツ、芯層スギ)について、上記吸水率試験を行い、吸水率を算出したところ、その吸水率は、82%と61%であった。このことから、本実施形態1の野地板21の吸水率が従来の野地板と比較して著しく低いことが判る。
(透湿性能)
野地板21は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が、2.5m2・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
上述のように耐水性に優れる第1の接着剤を含む中密度繊維板は、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。
しかしながら、本実施形態1では、野地板21を構成する中密度繊維板の成形に第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いている。第2の接着剤は、第1の接着剤に比べて耐水性が低いため、耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率の低い(15%以下の)中密度繊維板を、透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。つまり、第1の接着剤と第2の接着剤との配合比率を調整することにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満の野地板21(中密度繊維板)を構成することができる。なお、本実施形態1では、上述のように、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤からなる第1の接着剤と、ユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤とを、重量比率が第1の接着剤:第2の接着剤=2:8となるように配合して添加して形成した中密度繊維板を野地板21として用いることにより、吸水率が15%以下で且つ透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満の野地板21を構成することができる。
なお、従来野地板として用いていた上記構造用合板Aと構造用合板Bについて、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定した透湿抵抗は、23m2・h・mmHg/gと27m2・h・mmHg/gであった。このことから、本実施形態1の野地板21の透湿抵抗が従来の野地板と比較して著しく低い、つまり、透湿性能が著しく高いことが判る。
[透湿防水シート]
透湿防水シート22は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が0.65m2・s・Pa/μg以下となるように構成されている。この透湿抵抗は、JIS A6111の屋根用の透湿防水シートの規定に準拠したものである。本実施形態1では、透湿防水シート22は、多数の微細孔(直径0.5μm程度)が設けられた樹脂フィルムで構成され、透湿抵抗が0.5m2・s・Pa/μg以下に構成されている。なお、透湿防水シート22は、JIS A6111に準拠したものであればいかなるものを用いてもよく、不織布で構成してもよい。また、これらを積層したものとしてもよい。
−屋根構造の施工方法−
屋根構造1は、以下のようにして施工される。
まず、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の間に断熱材30(袋入りロックウール)を充填し、各垂木2の下端面(内面)にステープルで固定した後、複数の垂木2,…,2の下端面(内面)に石膏ボード3を押しつけ、ビス等で石膏ボード3を複数の垂木2,…,2に打ち付ける。
次に、建物の小屋組において間隔を空けて配された複数の垂木2,…,2の上方に屋根下地材20を施工する。具体的には、複数の垂木2,…,2上に野地板21を敷きつめ、釘やビス等で野地板21を複数の垂木2,…,2に固定する。その後、野地板21上に透湿防水シート22を敷きつめ、ステープル釘等で透湿防水シート22を野地板21に打ち付ける。このとき、野地板21の上において複数の透湿防水シート22を、屋根勾配の下側から上側へ順に辺縁を重ね合わせながら敷きつめ、隣り合う透湿防水シート22の重ね合わせた部分にステープル釘等を打ち込む。このようにして屋根下地材20が施工される。
なお、本実施形態1では、垂木2の成よりも薄い断熱材30を用いている。そのため、断熱材30及び屋根下地材20を施工することにより、断熱材30と屋根下地材20との間に、自動的に軒先6側から棟木5側に向かって延びる通気路40が形成される。
屋根下地材20の施工後、平板状屋根材10を葺く。具体的には、複数の平板状屋根材10,…,10を、棟木5の延伸方向の一端(けらば)から他端(けらば)まで順に葺いていく。具体的には、平板状屋根材10を、長手方向が棟木5側から軒先6側へ延びるように、屋根下地材20上の所定の位置に配置し、平板状の固定部15を、屋根下地材20に向かって打ち込まれた釘4で固定する。次の屋根下地材20は、第2係合部13が、先に屋根下地材20に取り付けられた平板状屋根材10の第1係合部12に覆い被さる位置に配置され、第2係合部13を、先に屋根下地材20に取り付けられた平板状屋根材10の第1係合部12に押しつけることによって該第1係合部12を内部に嵌める(はぜ継ぎする)。このとき、互いに係合する第1係合部12と第2係合部13との間に、防水材を挟み込むことが好ましい。このようにして、複数の平板状屋根材10,…,10を、棟木5の延伸方向の一端側から他端側に順に葺いていく。
複数の平板状屋根材10,…,10の施工後、複数の平板状屋根材10,…,10の軒先6側に水切り8を設ける一方、複数の平板状屋根材10,…,10の棟木5側に棟包み9を設ける。
以上のようにして、屋根構造1が施工される。
−屋根構造の特性−
〈屋根下地材の特性〉
上述のように、従来の屋根下地材では、野地板(構造用合板)の吸水率が高いため、防水シートを貫く釘穴を通って野地板に至った雨水が野地板の表面から内部に浸透し易かった。また、従来の屋根下地材では、野地板を貫く釘穴の止水性が低く、雨水が野地板まで至ると、野地板の釘穴に浸入し、釘穴からも野地板内部に雨水が吸収されていた。さらに、野地板は保水性が高く乾燥し難い。つまり、従来の屋根下地材では、野地板の吸水性、透水性が高いことに加え、保水性が高いため、野地板の腐朽による劣化を招き易かった。
これに対し、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の屋根下地材に比べて吸水率が低い(15%以下)野地板21を用いている。そのため、雨水が、透湿防水シート22を貫く釘4の釘穴を通って野地板21に至っても、野地板21に至った雨水は、表面から内部に浸透し難い。仮に、若干量の水を吸収しても透湿性と同様に通気性にも優れており、乾燥が速いという特長を持つ。また、このような野地板21によれば、釘4が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘4に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、雨水が平板状屋根材10の隙間から屋根下地材20に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板21に浸透し難くなり、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一、雨水が野地板21に浸透したとしても、野地板21の裏面まで至ることがなく、雨漏りを防止することができる。
また、上述のように、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。また、屋根の勾配にしたがって合板上を流れた水は、合板の継ぎ目で漏れ易く、これも雨漏りの原因となる。
これに対し、本実施形態1の屋根下地材20では、野地板21が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板21は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板21の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
この点を実証すべく、以下の透水性試験を行った。
(1)試験体
以下の2種類の試験体Xを2枚ずつ用意した。
I:中密度繊維板(厚さ9mm、密度0.79g/cm3、含水率8.9%)
II:合板(厚さ9mm、密度0.42g/cm3、含水率10.6%、針葉樹)
なお、Iの試験体Xは、野地板21を構成する中密度繊維板と同様に、吸水率が15%以下で透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
(2)試験方法
まず、図5に示すように、試験用器具を組み立てる。具体的には、試験体Xの中心に釘51(N50、スクリュー釘)を上方から打ち込む。Iの試験体Xの一方(試験体X1と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X2と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。IIの試験体Xの一方(試験体X3と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X4と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。このようにして形成された4種類の試験体X1〜X4のそれぞれに対し、釘51を覆うように試験体Xの上面にアクリル樹脂からなる円筒52(内径34mm、高さ300mm)を立てて置き、円筒52と試験体Xの上面との隙間をコーキング剤53で埋めた後、これらを円筒52よりも大径のビーカー54の上に載せる。
試験用器具の組み立て後、水(常温)を、円筒52内に静かに注ぐ。水は、円筒52の高さ250mm(約227ml)の位置まで注ぐ。そして、これらを気温20℃、相対湿度65%の環境下で8日間静置し、定期的に水の残量、試験体Xの外観状態及び釘穴からの水の漏れを確認した。
(3)試験結果
図6のグラフは、上記透水性試験の結果である。図6のグラフの縦軸に示す透水量(ml)は、円筒52内に注がれた水の減少量である。また、■印が試験体X1、◆印が試験体X2、●印が試験体X3、▲印が試験体X4のそれぞれの透水量を示している。
図6のグラフから判るように、4種類の試験体X1〜X4のうち、試験体X4の透水量が最も多く、試験開始後3日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。次いで、試験体X3の透水量が多く、試験開始後4日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。この結果より、試験体X3及びX4では、釘51を打ち込む際に釘穴が大きく形成されるために、この釘穴から水が試験体Xの繊維方向に拡がる(浸透する)と共に、釘51を伝って試験体Xの下方(ビーカー54)まで通り抜け易い(釘穴の止水性が低い)ことが判る。
これに対し、本実施形態1の野地板21を構成する試験体X1及びX2は、4種類の試験体X1〜X4の中で試験体X3及びX4に比べて透水量が著しく少なく、試験開始から3日経過しても、円筒52内からほとんど水が流出しなかった。試験体X1及びX2では、試験開始から8日経過しても、釘51からビーカー54へ水が滴らなかった。これは、試験体X1及びX2では、釘51が木材繊維間をかき分けるように打ち込まれ、その釘51に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、水が通過する隙間がほとんど形成されないことによるものと推測される。また、試験体X1は、耐水性に優れる第1の接着剤(本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤)を含む接着剤で形成され、吸水率が15%以下に構成されている。そのため、釘穴によって釘51の周囲に隙間が形成されたとしても、木材繊維が耐水性に優れる第1の接着剤でコーティングされているため、水が浸入しないものと推測される。このように、試験体X1及びX2では、水が表面(上面)から内部に浸透することがなく、釘穴に浸入することもなく、試験体X3及びX4に比べて透水性が著しく低い、即ち、防水性が極めて高いことが判る。
このように、本実施形態1では、防水性が極めて高く(透水性が極めて低く)、通気性に優れた野地板21を屋根下地材20として用いていることにより、屋根下地材20の腐朽による劣化及び雨漏りを防止することができる。
〈通気路の特性〉
上述のように、本実施形態1では、垂木2の成よりも薄い断熱材30を、複数の垂木2,…,2の各間に設けている。そのため、断熱材30及び屋根下地材20を施工するだけで、各断熱材30と屋根下地材20との間に、軒先6側から棟木5側に向かって延びる通気路40が形成される。
通気路40では、軒先6側の端部が流入口40aとなり、棟木5側の端部(棟包み9と平板状屋根材10との間)が流出口40bとなって、屋外の空気が流入口40aから流出口40bへ流れる。そのため、室内の湿気が断熱材30を通過して屋根下地材20の下面側(野地板21の下面)に至ったとしても、屋根下地材20の下面において結露が生じ難くなる。また、屋根下地材20の下面において結露が生じたとしても、結露水は、通気路40を流れる空気によって気化して水蒸気となり、該空気と共に軒先6側から棟木5側へ流れ、流出口40bから速やかに屋外へ排出されることとなる。そのため、屋根下地材20の腐朽による劣化を防止することができる。
また、本実施形態1の屋根下地材20では、従来の屋根下地材に比べて吸水率が低く(15%以下)且つ透湿抵抗の低い(2.5m2・h・mmHg/g未満)野地板21を用いている。そのため、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材10の下方(具体的には、透湿防水シート22の上下面)において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材20(野地板21及び透湿防水シート22)を通過して通気路40に至る。平板状屋根材10と屋根下地材20との間で生じた結露による湿気は、通気路40を流れる空気と共に軒先6側から棟木5側へ流れ、流出口40bから速やかに屋外へ排出されることとなる。そのため、屋根下地材20の腐朽による劣化を防止することができる。
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、屋根下地材20の下方に、軒先6側から棟木5側へ延びる通気路40が形成されている。そのため、冬季に室内で生じた湿気が小屋裏に至っても、通気路40を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。よって、屋根下地材20の下面において結露が生じて屋根下地材20が腐朽により劣化するおそれがない。つまり、屋根下地材20の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、本実施形態1によれば、屋根下地材20の野地板21が、密度が0.7以上0.85未満の構造用の中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、木材繊維間に隙間が形成されているため、従来、野地板として用いられていた構造用合板に比べて透湿抵抗が低い。そのため、このような湿気を透過させ易い野地板21を屋根下地材20として用いることにより、夜間の放射冷却等によって平板状屋根材10の下方において結露が生じたとしても、結露水は、日中の気温上昇によって気化して水蒸気となり、屋根下地材20を通過して通気路40に至る。よって、平板状屋根材10と屋根下地材20との間に通気路40がなく、平板状屋根材10の大部分が屋根下地材20に密着した構成であっても、平板状屋根材10と屋根下地材20との間で生じた結露による湿気を屋外へ排出することができ、平板状屋根材10の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、本実施形態1によれば、吸水率が15%以下に構成された中密度繊維板を野地板21として用いている。このような野地板21は、構造用合板等で構成された従来の野地板(吸水率60%以上)に比べて表面に付着した雨水を吸水し難く、いくらか吸水しても構造用合板より速乾性に優れる。また、このような野地板21によれば、釘4が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘4に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水等の水分が浸入し難くなる。このように表面だけでなく釘穴からも吸水し難い防水性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、雨水が平板状屋根材10の隙間から屋根下地材20に至っても、従来に比べて雨水が格段に野地板21に浸透し難くなり、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。また、万一雨水が野地板21に浸透したとしても、裏面にまで至ることはなく、雨漏りを防止することができる。
また、従来の合板からなる野地板では、最表層の単板が水を吸収すると、吸収された水は、導管・仮導管を通って単板の繊維方向(通常長手方向)に移動し、小口から漏出して裏面に至る。裏面に至った水の一部は、そのまま滴って雨漏りの原因となり、また、他の一部は、最裏層の単板の小口から再度吸収されて単板内を移動し、垂木と接触する部分で再度単板から漏出し、垂木から滴ってやはり雨漏りの原因となる。
これに対し、本実施形態1によれば、野地板21が中密度繊維板で構成されている。中密度繊維板で構成された野地板21は、繊維方向が無く、高密度で空隙が少なく、耐水性の接着剤や撥水剤を使用でき、吸水率も著しく低い。そのため、本実施形態1によれば、従来の合板からなる野地板のように継ぎ目(小口)から水が漏出することがなく、野地板21の継ぎ目からの雨漏りも防止することができる。
さらに、本実施形態1によれば、屋根下地材20の下方に通気路40が形成され、野地板21を透湿性に優れた中密度繊維板で構成している。そのため、万一、雨水が野地板21に浸透したとしても、野地板21に浸透した雨水は、いずれ気化して水蒸気となり、野地板21を通過して通気路40に至るため、通気路40を流れる空気と共に屋外へ排出することができる。
以上により、本実施形態1によれば、施工が容易で、平板状屋根材10及び屋根下地材20が腐朽により劣化し難い屋根構造1を提供することができる。
また、本実施形態1では、野地板21を構成する中密度繊維板の接着剤として、耐水性に優れるユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びフェノール樹脂の少なくとも1種からなる第1の接着剤を用いている。このような第1の接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が第1の接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。一方、耐水性に優れた第1の接着剤のみを接着剤として中密度繊維板を形成すると、吸水率を著しく低減することができるものの、透湿抵抗が増大する虞がある。また、上述のような耐水性に優れた第1の接着剤は高価であるため、第1の接着剤のみを接着剤として用いると中密度繊維板も高価になり、屋根下地材20の製造コストが嵩む。そこで、本実施形態1では、第1の接着剤と共に、安価で耐水性が低いユリア樹脂系接着剤からなる第2の接着剤を接着剤として用いた中密度繊維板を用いることとした。第2の接着剤は、安価で耐水性が低いため、高価で耐水性の高い第1の接着剤と混ぜて用いることにより、吸水率15%以下の中密度繊維板を、比較的安価に且つ透湿抵抗を増大させることなく形成することができる。よって、そのような中密度繊維板を野地板21とすることにより、透湿性と防水性に優れた野地板21を有する屋根下地材20を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
また、本実施形態1では、透湿抵抗が2.5m2・h・mmHg/g未満に構成された中密度繊維板を野地板21として用いている。このように透湿抵抗が極めて低く、透湿性に優れた中密度繊維板を野地板21として用いることにより、野地板21と透湿防水シート22との間における結露の発生及び野地板21の腐朽による劣化を抑制する効果がさらに増大する。
ところで、平板状屋根材10が金属板によって形成された金属屋根材10である場合、アスファルトルーフィングのような透湿性のないシート材を野地板21の上面に設けると、金属屋根材10と透湿性のないシート材との間において水蒸気(湿気)が抜けず、金属屋根材10の下面で結露した結露水や金属屋根材10の下面側へ侵入した雨水が排出されずに溜まり、金属屋根材10の下面に錆が発生するおそれがある。
これに対し、本実施形態1では、屋根下地材20を、透湿性と防水性に優れた野地板21と、該野地板21の上面に設けられた透湿性と防水性を有する透湿防水シート22とで構成することとしている。このような構成により、金属屋根材10の下面において結露が生じたり、金属屋根材10の下面側へ雨水が浸入したりしても、その水分(結露水や雨水)は、気温上昇時に気化して水蒸気となり、透湿性を有する屋根下地材20(透湿防水シート22と野地板21)を通過して通気路40に至るため、水分(結露水や雨水)が金属屋根材10の下面に溜まることがない。つまり、上記構成によれば、金属屋根材10の下面における錆の発生を抑制することができる。また、上記構成によれば、屋根下地材20の防水性がさらに向上するため、野地板21の腐朽等の劣化をさらに抑制することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、屋根下地材20を、野地板21と透湿防水シート22とで構成していたが、屋根下地材20は、透湿防水シート22を備えないものであってもよい。上述のように、野地板21は、従来の野地板に比べて透水性が低く防水性に優れるため、透湿防水シート22を設けなくても、野地板21に雨水が浸透するのを抑制することができるため、野地板21の腐朽による劣化を抑制することができる。
また、上記実施形態1では、平板状屋根材の一例として金属板によって形成された平板状の金属屋根材について説明した。しかしながら、平板状屋根材は、屋根下地材にベタ置きする平板状の屋根材であればいかなるものであってもよく、平板状の金属屋根材に限られない。平板状屋根材は、屋根下地材にベタ置きする平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等であってもよい。
また、上記実施形態1では、立平葺きの屋根構造1について説明したが、本発明に係る屋根構造の平板状屋根材の葺き方は、立平葺きに限定されない。本発明に係る屋根構造の平板状屋根材の葺き方は、平葺きであってもよく、瓦棒葺きであってもよい。
また、上記各実施形態において、平板状屋根材として金属屋根材を用いず、平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等を用いる場合、透湿防水シート22の代わりに、アスファルトルーフィングのような透湿性を有しないシート材を用いることとしてもよい。金属屋根材と異なり、化粧スレートやアスファルトシングル等は、錆が発生しない。よって、平板状の化粧スレートやアスファルトシングル等を用いる場合には、透湿防水シート22の代わりに透湿性を有しないシート材を用いることにより、屋根構造にかかる費用を削減することができる。
ただし、ベタ置き型の屋根材(平板状屋根材)は、太陽からの熱を直接的に屋根材の下面に伝えるため、ルーフィングとその上面の水分は、夏場であれば70℃程度にまで温度が上昇する。アスファルトルーフィングを用いる場合、平板状屋根材とアスファルトルーフィングとの間に熱だけでなく熱と水分が共存することとなり、アスファルトルーフィングの劣化が促進される。そのため、アスファルトルーフィングを用いる場合、耐久性の高いアスファルトルーフィングを使用する等の配慮が必要である。
一方、近年の技術開発により、腐食、錆に強い金属屋根材が開発されている。このように腐食や錆に強い金属屋根材を用いる場合には、水分による腐食の心配が無いため、アスファルトルーフィングを用いることが可能となる。また、腐食や錆に強い金属屋根材とアスファルトルーフィングを用いる場合、通気路40を介してアスファルトルーフィングの上面(金属屋根材の下面)の水分を排出する必要がなく、主としてアスファルトルーフィングの下面(中密度繊維板からなる野地板21の上面)の水分を排出すればよいため、野地板21の腐朽防止に特化した構造となる。
また、上記実施形態1では、本発明に係る屋根下地材20を、屋根断熱タイプの屋根構造1に適用する例について説明したが、屋根下地材20は、屋根側ではなく天井側に断熱材30が設けられた天井断熱タイプの屋根構造に適用することも勿論可能である。天井断熱タイプの屋根構造に適用した場合においても、屋根下地材20の下方に通気路40を形成し、上記実施形態1と同様の野地板21を用いることにより、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施形態1では、充填断熱工法で施工された屋根構造について説明しているが、本発明は、外張り断熱工法で施工された屋根構造にも適用可能である。
本発明は、屋根下地材と平板状屋根材とを備えた屋根構造に有用である。
1 屋根構造
5 棟木
6 軒先
10 平板状屋根材
20 屋根下地材
21 野地板
22 透湿防水シート
40 通気路