JP2021138783A - 熱可塑性エポキシ材料とその硬化物およびそれらの製造方法、ならびに熱可塑性エポキシ材料を与えるモノマー組成物と架橋機能を有する鎖伸長剤 - Google Patents
熱可塑性エポキシ材料とその硬化物およびそれらの製造方法、ならびに熱可塑性エポキシ材料を与えるモノマー組成物と架橋機能を有する鎖伸長剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】潜在的な架橋性基を有する熱可塑性エポキシ材料またはその樹脂硬化物を得るのに有用なモノマー組成物を提供する。【解決手段】モノマー組成物は、1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール化合物と、を含む。前記フェノール化合物は、ビスウレア構造を有するビスフェノール化合物からなる第1フェノール成分を含む。前記エポキシ化合物の前記フェノール化合物に対するモル比は、1より大きい。【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性エポキシ材料とその硬化物およびそれらの製造方法、ならびに熱可塑性エポキシ材料を得るのに有用なモノマー組成物および架橋機能を有する鎖伸長剤に関する。
エポキシ樹脂は、代表的な熱硬化性樹脂であり、様々な分野で利用されているが、熱可塑性樹脂に比較すると、成形加工性が劣る。一方、2官能のエポキシ化合物と2官能のフェノール化合物とを重合させて得られる直鎖状エポキシ重合体は、加熱溶融させることができるため、熱可塑性材料として利用できる。
特許文献1は、1分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ化合物(A)、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(B)、並びに、硬化促進剤(C)としてのモノエタノールアミン等を含有する熱可塑性エポキシ樹脂組成物を提案している。
2官能のエポキシ化合物と2官能のフェノール化合物とを反応させて得られる直鎖状エポキシ重合体は、加熱により溶融するため熱可塑性エポキシ材料として利用可能である。熱可塑性エポキシ材料を架橋剤で架橋すると、エポキシ樹脂硬化物が得られる。しかし、架橋剤を熱可塑性エポキシ材料の原料モノマーに添加すると、直鎖状エポキシ重合体が得られなくなる。そのため、架橋剤は、直鎖状エポキシ重合体に添加する必要がある。
本発明の第1側面は、1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール化合物と、を含み、
前記フェノール化合物は、ビスウレア構造を有するビスフェノール化合物からなる第1フェノール成分を含み、
前記エポキシ化合物の前記フェノール化合物に対するモル比は、1より大きい、モノマー組成物に関する。
1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール化合物と、を含み、
前記フェノール化合物は、ビスウレア構造を有するビスフェノール化合物からなる第1フェノール成分を含み、
前記エポキシ化合物の前記フェノール化合物に対するモル比は、1より大きい、モノマー組成物に関する。
本発明の第2側面は、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、前記主鎖の一方の末端のエポキシ基と、前記主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含み、
前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する、熱可塑性エポキシ材料に関する。
前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する、熱可塑性エポキシ材料に関する。
本発明の第3側面は、上記のモノマー組成物を160℃未満の温度で加熱して重合させることにより、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、前記主鎖の一方の末端のエポキシ基と、前記主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含み、前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する熱可塑性エポキシ材料を得る工程を含む、熱可塑性エポキシ材料の製造方法に関する。
本発明の第4側面は、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、前記主鎖の一方の末端のエポキシ基と、前記主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含み、前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する熱可塑性エポキシ材料を、160℃以上220℃以下の温度で加熱することにより硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得る工程を含む、エポキシ樹脂硬化物の製造方法に関する。
本発明の第5側面は、ビスウレア構造を有するビスフェノール化合物からなる、架橋機能を有する鎖伸長剤に関する。
本発明の一側面に係るモノマー組成物または架橋機能を有する鎖伸長剤を用いると、潜在的な架橋性基を有し、かつ溶融粘度の低い熱可塑性エポキシ材料を得ることができる。このような熱可塑性エポキシ材料を用いると、十分な架橋密度を有するエポキシ樹脂硬化物が容易に得られる。
本発明の一側面のモノマー組成物は、1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール化合物とを含む。フェノール化合物は、ビスウレア構造を有するビスフェノール成分を含む。ここで、エポキシ化合物の、フェノール化合物に対するモル比は、1より大きい。以下、ビスウレア構造を有するビスフェノール成分を第1フェノール成分または第1ビスフェノール成分と称する場合がある。
上記のエポキシ化合物と第1ビスフェノール成分を含むフェノール化合物とを用いるとともに、これらのモル比を上記の範囲とすることで、第1ビスフェノール成分の分解温度より低い温度で重合を行ったときに、末端にエポキシ基を有する線状ポリマーが形成される。得られるポリマーは、線状構造であることで熱可塑性を示すため、熱可塑性エポキシ材料として利用できる。熱可塑性エポキシ材料を、第1ビスフェノール成分の分解温度以上の温度で加熱すると、2つのウレア基がそれぞれ分解して、末端にアミノ基(−NH2)を有するポリマー鎖と、ジイソシアネート化合物とが生成する。ポリマー鎖の末端アミノ基の2つの活性水素は、それぞれ、ポリマー鎖のエポキシ末端と反応するため、架橋剤として機能する。また、生成したジイソシアネート化合物の2つのイソシアネート基は、それぞれ、エポキシ化合物とビスフェノール化合物との反応により生成したポリマー鎖に含まれるアルコール性ヒドロキシ基と反応するため、架橋剤として機能する。つまり、第1ビスフェノール成分は、元々有していた2つのフェノールヒドロキシ基の他に、分解により、さらに、2つのアミノ基が有する合計4つの活性水素と2つのイソシアネート基との合計6つの架橋を形成可能な架橋性基を生成可能である。ポリマー鎖に含まれる第1ビスフェノール成分の残基の分解により生成する架橋性基は、ポリマー鎖を架橋してエポキシ樹脂硬化物を与えることができる。このように、モノマー組成物は、潜在的な架橋機能を有する熱可塑性エポキシ材料を提供できる。
また、分解により、エポキシ基と反応する複数の架橋性基を生成可能な第1ビスフェノール成分を用いるため、モノマー組成物中のエポキシ化合物のフェノール化合物に対するモル比を1より多くする。つまり、エポキシ基の当量を、フェノール化合物のフェノール性ヒドロキシ基の当量に比較して多くする。エポキシ基の当量を多くすると、線状ポリマーの鎖長が過度に長くなることが抑制される。これにより、熱可塑性エポキシ材料の溶融粘度が高くなることを抑制できるため、熱可塑性エポキシ材料の成形加工性を高めることができる。
第1ビスフェノール成分は、上記のように、エポキシ化合物と反応して線状ポリマーのポリマー鎖を伸長させるとともに、分解により架橋機能を発現することができる。よって、第1ビスフェノール成分は、架橋機能を有する鎖伸長剤として有用である。本発明には、第1ビスフェノール成分からなる架橋機能を有する鎖伸長剤も包含される。また、本発明には、架橋機能を有する鎖伸長剤としての第1ビスフェノール成分の使用も包含される。
本発明の他の側面に係る熱可塑性エポキシ材料は、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、主鎖の一方の末端のエポキシ基と、主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含む。上記の主鎖は、2つの2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する。
このような熱可塑性エポキシ材料を加熱すると、ビスウレア構造の2つのウレア基がそれぞれ分解して、上記と同様に、末端にアミノ基(−NH2)を有するポリマー鎖と、ジイソシアネート化合物とが生成する。熱可塑性エポキシ材料は、上記と同様に、複数の架橋性基を生成可能であり、潜在的な架橋機能を有する。ポリマー鎖に含まれるウレア基の分解により生成する複数の架橋性基は、ポリマー鎖を架橋してエポキシ樹脂硬化物を与え得る。また、フェノール化合物に対してエポキシ化合物を過剰に用いることで、線状ポリマーの主鎖の両末端がエポキシ基となるとともに、熱可塑性エポキシ材料の溶融粘度が低く抑えられている。よって、熱可塑性エポキシ材料は、高い成形加工性を有する。
熱可塑性エポキシ材料は、上記のモノマー組成物を160℃未満の温度で加熱して重合させることにより熱可塑性エポキシ材料を得る工程を含む製造方法により得ることができる。160℃未満の温度でモノマー組成物を重合することで、第1ビスフェノール成分のビスウレア構造がポリマー鎖に組み込まれる前に分解されることが抑制される。これにより、ポリマー鎖を線状に成長させることができ、得られるエポキシ材料の熱可塑性を確保することができる。
本発明には、熱可塑性エポキシ材料を硬化させたエポキシ硬化物も包含される。
エポキシ樹脂硬化物は、熱可塑性エポキシ材料を、160℃以上300℃以下の温度で加熱することにより硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得る工程を含む、エポキシ樹脂硬化物の製造方法により得ることができる。上記のような温度で加熱することで、熱可塑性エポキシ材料に含まれるウレア基が分解して、末端にアミノ基(−NH2)を有するポリマー鎖と、ジイソシアネート化合物とが生成する。ポリマー鎖の末端アミノ基の2つの活性水素は、それぞれ、ポリマー鎖のエポキシ末端と反応して架橋構造を形成する。また、生成したジイソシアネート化合物の2つのイソシアネート基は、それぞれ、ポリマー鎖に含まれるアルコール性ヒドロキシ基と反応して架橋構造を形成する。
このように、熱可塑性エポキシ材料の分子鎖中に、分解により、多くの架橋構造を形成可能な残基が含まれるため、別途架橋剤または硬化剤を用いなくても、熱可塑性エポキシ材料から容易に樹脂硬化物を得ることができる。また、熱可塑性エポキシ材料を硬化させることができるため、成形加工の自由度を高めることができる。
以下に、鎖伸長剤、モノマー組成物、熱可塑性エポキシ材料およびその製造方法、ならびにエポキシ樹脂硬化物およびその製造方法について、より具体的に説明する。
[鎖伸長剤]
第1ビスフェノール成分は、ビスウレア構造を有する。第1ビスフェノール成分は、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香環を1分子中に2つ有することで、エポキシ化合物と反応して線状ポリマー鎖を伸長させることができる。加えて、線状ポリマーに組み込まれたビスウレア構造の分解により、上述のように架橋機能が発現され得る。そのため、第1ビスフェノール成分は、架橋機能を有する鎖伸長剤として有用である。
第1ビスフェノール成分は、ビスウレア構造を有する。第1ビスフェノール成分は、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香環を1分子中に2つ有することで、エポキシ化合物と反応して線状ポリマー鎖を伸長させることができる。加えて、線状ポリマーに組み込まれたビスウレア構造の分解により、上述のように架橋機能が発現され得る。そのため、第1ビスフェノール成分は、架橋機能を有する鎖伸長剤として有用である。
ビスウレア構造とは、ウレア基(−NH−C(=O)−NH−)を2つ有する構造を言う。ビスウレア構造において、2つのウレア基は、通常、2価の有機基R1で連結されている。このようなビスウレア構造は、−NH−C(=O)−NH−R1−NH−C(=O)−NH−で表すことができる。このように、ビスウレア構造は、2つのウレア基部分に合計4つのイミノ基−NH−基を含む。4つのイミノ基のうち、一部のイミノ基では、水素原子は、有機基に置き換わっていてもよい。しかし、より多くの架橋点を形成し易い観点からは、4つのイミノ基の全てにおいて、窒素原子には水素原子が結合していることが好ましい。
2つのウレア基を連結する有機基R1は、ウレア基からイソシアネート基とアミノ基とが生成する分解反応を阻害しない二価の有機基であればよい。有機基R1としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有有機基などが挙げられる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子などが例示されるが、これらに限定されるものではない。有機基R1は、1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。有機基R1が2つ以上のヘテロ原子を含む場合、少なくとも2つのヘテロ原子の種類は同じであってもよく、全てのヘテロ原子の種類が異なっていてもよい。有機基R1は、直鎖状または分岐鎖状の基であってもよく、環(炭化水素環、ヘテロ原子含有環など)を含むものであってもよい。重合反応または硬化反応の高い反応効率を確保し易い観点から、有機基R1におけるヘテロ原子は、酸素原子であることが好ましい。同様の観点から、有機基R1は、炭化水素基であることがより好ましい。
ビスウレア構造は、例えば、ジイソシアネート化合物とアミノ基を有する化合物との反応により形成され得る。アミノ基を有する化合物は、ジイソシアネート化合物1分子当たり2分子の比率で用いられる。このようなビスウレア構造では、有機基R1は、ジイソシアネート化合物における2つのイソシアネート基を連結する有機基に相当する。有機基R1としては、脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素環を含む有機基、芳香族炭化水素環を含む有機基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン基、オクタメチレン基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、3〜16であり、4〜12または4〜10であってもよい。
芳香族炭化水素環を含む有機基としては、例えば、アリーレン基(フェニレン基(具体的には、o−、m−、またはp−フェニレン基)、トリレン基、ナフチレン基など)、1つの芳香族炭化水素環とアルキレン基とを有する二価基(キシリレン基、ジプロピルベンゼンジイル基(具体的には、2つのプロピル基のそれぞれに結合手を有する二価基)など)、2つ以上の芳香族炭化水素環を有する二価基が挙げられる。2つ以上の芳香族炭化水素環を有する二価基としては、ビフェニル環を有する二価基(ビフェニレン基、3,3’−ジメチルビフェニレン基など)、ビスアリールアルカン(ジフェニルメタン、2−(メチルフェニル)−2−フェニルメタン、2,2−ジフェニルプロパンなど)に対応する二価基、ビスアリールエーテル(ジフェニルエーテルなど)に対応する二価基、ビスアリールチオエーテル(ジフェニルチオエーテルなど)に対応する二価基などが挙げられる。芳香族炭化水素環の炭素数は、例えば、6〜14であり、6〜10であってもよい。アルキレン基の炭素数は、例えば、1〜6であり、1〜4であってもよい。ビスアリールアルカンのアルカン部分の炭素数は、例えば、1〜6であり、1〜4であってもよい。
脂肪族炭化水素環を含む有機基としては、例えば、二価の脂肪族炭化水素基、1つの脂肪族炭化水素環とアルキレン基とを有する二価基(シクロヘキサンジメチレン基、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサンに対応する二価基(より具体的には、シクロヘキサン環の1位のメチル基と5位とに結合手を有する二価基)など)、2つ以上の脂肪族炭化水素環を有する二価基(ジシクロヘキシルメタンジイル基など)が挙げられる。二価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、シクロアルカンジイル基(シクロヘキサンジイル基、メチルシクロヘキサンジイル基など)、架橋環式脂肪族炭化水素基(ノルボルネンジイル基など)が挙げられる。1つの脂肪族炭化水素環は、例えば、5〜14員環であり、5〜10員環または5〜8員環であってもよい。アルキレン基の炭素数は、例えば、1〜6であり、1〜4であってもよい。脂肪族炭化水素環を含む有機基には、上記の芳香族炭化水素環を有する有機基の水素添加物も含まれる。
これらの有機基R1は、比較的容易に入手可能なジイソシアネート化合物に対応する基を例示したに過ぎない。有機基R1は、これらの例に限定されるものではない。芳香族炭化水素環および脂肪族炭化水素環は、それぞれ、1つまたは2つ以上のアルキル基を有するものであってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。アルキル基は、炭素数が1〜6または1〜4のアルキル基であってもよい。上記の環が2つ以上のアルキル基を有する場合、少なくとも2つのアルキル基の種類は同じであってもよく、全てのアルキル基の種類は異なっていてもよい。有機基R1に含まれる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、およびアルキレン基のそれぞれは、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
第1ビスフェノール成分において、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香環は、芳香族炭化水素環であってもよく、ヘテロ原子を含有する芳香環であってもよい。芳香環は、例えば、5〜20員環であってもよく、5〜14員環または6〜14員環であってもよく、6〜10員環であってもよい。第1ビスフェノール成分において、芳香環は、非芳香族性の環と縮合環を形成していてもよい。非芳香族性の環は、例えば、4〜10員環であり、5〜8員環であってもよい。非芳香族性の環は、架橋環であってもよい。
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環などが挙げられる。芳香族炭化水素環の炭素数は、例えば、6〜20であり、6〜14または6〜10であってもよい。
ヘテロ原子を含有する芳香環において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子が挙げられる。芳香環は、1つのヘテロ原子を有していてもよく、2つ以上のヘテロ原子を有していてもよい。2つ以上のヘテロ原子を有する芳香環において、少なくとも2つのヘテロ原子が同じであってもよく、全てのヘテロ原子が異なっていてもよい。ヘテロ原子を含有する芳香環は、5〜14員環であってもよく、5〜10員環であってもよい。
ヘテロ原子を含有する芳香環としては、例えば、窒素原子含有芳香環(ピロール環、ピリジン環など)、酸素原子含有芳香環(フラン環など)、硫黄原子含有芳香環(チオール環など)、および2種類以上のヘテロ原子を含有する芳香環(オキサゾール環、チアゾール環など)などが挙げられる。
第1ビスフェノール成分は、ビスウレア構造で2つの芳香環含有基が連結された構造を有するものであってもよい。芳香環含有基は、上記のような芳香環を有している。そして、2つの芳香環含有基の芳香環のそれぞれが、1つのフェノール性ヒドロキシ基を有している。
芳香環含有基は、上記の芳香環に対応する1価基であってもよく、上記の芳香環を含有する環に対応する1価基であってもよい。芳香環含有基は、上記の芳香環とこの芳香環に結合する有機基R2とを有するものであってもよく、上記の芳香環を含有する環とこの環に結合する有機基R2とを有するものであってもよい。上記の芳香環を含有する環とは、上記の芳香環と非芳香族性の環とが縮合した環である。
有機基R2としては、例えば、環構造を含まない二価の有機基が挙げられる。有機基R2としては、アルキレン基、カルボニル基、−R2a−C(=O)−基などが挙げられる。−R2a−としては、アルキレン基が挙げられる。−R2a−C(=O)−基のカルボニル基は、芳香環または芳香環を含有する環に結合していてもよく、ビスウレア構造のウレア基に結合していてもよいが、通常、ウレア基に結合している。
R2および−R2a−で表されるアルキレン基としては、メチレン、ジメチレン、プロピレン、トリメチレンなどが挙げられる。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は、例えば、1〜6であり、1〜4であってもよく、1〜3であってもよい。
芳香環および芳香環と縮合した非芳香族性の環は、それぞれ、1つまたは2つ以上のアルキル基を有するものであってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。アルキル基は、炭素数が1〜6または1〜4のアルキル基であってもよい。上記の環が2つ以上のアルキル基を有する場合、少なくとも2つのアルキル基の種類は同じであってもよく、全てのアルキル基の種類は異なっていてもよい。
有機基R2に含まれるアルキレン基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
芳香環および非芳香族性の環のそれぞれは、置換基を有していてもよい。置換基としては、脂肪族炭化水素基(アルキル基など)、脂環族炭化水素基(シクロアルキル基など)、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、芳香環は、置換基として、不飽和炭素−炭素結合を有する基(アリル基、3−ブテニル基など)を有していてもよい。
第1ビスフェノール成分としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
式(I)において、R1は、上記の有機基R1を示す。A1およびA2は、それぞれ、上記の芳香環含有基を示し、1つのフェノール性ヒドロキシ基を有する。A1とA2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。R2bおよびR2cは、それぞれ、単結合または上記の有機基R2に相当する。R2bとR2cとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。A1のR2bに対する結合手は、芳香環に有していてもよく、A1が縮合環を含む場合には、非芳香族性の環に有していてもよい。A2のR2cに対する結合手は、芳香環に有していてもよく、A2が縮合環を含む場合には、非芳香族性の環に有していてもよい。
A1−R2b−およびA2−R2c−で表される基としては、ヒドロキシアリール基、ヒドロキシアリールアルキル基などが好ましい。ヒドロキシアリール基およびヒドロキシアリールアルキル基に含まれるアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、中でもフェニル基が好ましい。ヒドロキシアリール基の具体例としては、2−、3−または4−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル基、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基、4−ヒドロキシ−2,3−ジメチルフェニル基、4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル基、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル基が挙げられる。ヒドロキシアリールアルキル基としては、例えば、上記のヒドロキシアリール基に対応するヒドロキシアリールアルキル基が挙げられる。ヒドロキシアリールアルキル基としては、例えば、2−、3−、または4−ヒドロキシベンジル、2−、3−、または4−ヒドロキシフェネチルが好ましい。R2bまたはR2cとの結合手をアリール基の1位とするとき、ヒドロキシ基の位置は、2−位、3−位、および4−位のいずれであってもよい。比較的低い温度で反応させることができる観点からは、ヒドロキシ基の位置は、2−位または3−位が好ましく、2−位がより好ましい。比較的低い温度でウレア結合を分解させることができる観点からは、ヒドロキシ基の位置は、3−位または4−位が好ましく、4−位がより好ましい。
式(I)で表される化合物は、例えば、式(IIa)で表されるアミノ基を有する化合物および式(IIb)で表されるアミノ基を有する化合物と、式(III)で表されるジイソシアネート化合物とを反応させることにより形成され得る。
式(IIa)の化合物と式(IIb)の化合物とは、異なる構造であってもよいが、上記の反応を考慮すると、同じ構造であることが好ましい。これらの化合物として同じ構造のものを用いると、式(I)の化合物が一種類の構造を取り易い。
上記の反応には、アミノ基とイソシアネート基との反応における公知の条件を採用できる。
上記の反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒は、非極性溶媒および極性溶媒のいずれでもよい。非プロトン性溶媒としては、炭化水素(ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンなど)、ニトリル(アセトニトリルなど)、アミド(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、エーテル(テトラヒドロフランなど)などが挙げられる。溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
上記の反応は、例えば、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトネート、ジブチルチンジラウレートなどから選択される少なくとも一種が挙げられる。
反応は、加圧下または減圧下で行ってもよいが、大気圧下でも効率よく進行させることができる。
反応温度は、例えば、0℃以上100℃以下であり、20℃以上50℃以下であってもよい。
反応は、空気中で行ってもよいが、副反応を抑制する観点から、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、またはアルゴンガスなど)の雰囲気下で行うことが好ましい。
式(I)の化合物以外の第1ビスフェノール成分も、式(I)の化合物の場合に準じて得ることができる。
作製した第1ビスフェノールは、必要に応じて、公知の分離方法、精製方法、またはその組み合わせを利用して、精製してもよい。
[モノマー組成物]
モノマー組成物は、エポキシ化合物と、フェノール化合物とを含む。モノマー化合物は、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基との重合反応を促進する触媒をさらに含んでいてもよい。
モノマー組成物は、エポキシ化合物と、フェノール化合物とを含む。モノマー化合物は、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基との重合反応を促進する触媒をさらに含んでいてもよい。
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、1分子中に2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物が用いられる。2官能エポキシ化合物としては、例えば、モノマーおよびオリゴマーなどの比較的低分子量のものが用いられる。モノマー組成物は、2官能エポキシ化合物を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
エポキシ化合物としては、1分子中に2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物が用いられる。2官能エポキシ化合物としては、例えば、モノマーおよびオリゴマーなどの比較的低分子量のものが用いられる。モノマー組成物は、2官能エポキシ化合物を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
2官能エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセニルカルボキシレートなど)、グリシジルアミン化合物、グリシジルトルイジン化合物などが挙げられる。入手が容易で、目的に応じて材料を選択し易い観点から、グリシジルエーテル化合物およびグリシジルエステル化合物が好ましい。しかし、2官能エポキシ化合物は、これらに限定されるものではない。
グリシジルエーテル化合物としては、脂肪族グリシジルエーテル化合物、脂環族グリシジルエーテル化合物、芳香族グリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらのグリシジルエーテル化合物としては、ジオール骨格(または残基)とこの骨格に導入された2つのグリシジルエーテル基とを有する化合物が用いられる。
脂肪族グリシジルエーテルとしては、例えば、ジヒドロキシアルカンジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。ジヒドロキシアルカンジグリシジルエーテルとしては、例えば、ジヒドロキシC2−8アルカンジグリシジルエーテル(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテルなど)が挙げられる。ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとしては、ポリC2−4アルキレングリコールグリシジルエーテル(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルなど)などが例示できる。ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルにおいて、アルキレングリコールの繰り返し数は、例えば、2〜6であり、2〜4であってもよい。
脂環族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、ジヒドロキシシクロアルカンジグリシジルエーテル(1,6−ヘサンジオールジグリシジルエーテルなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンのジグリシジルエーテル(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。脂環族グリシジルエーテル化合物には、後述の芳香族グリシジルエーテル化合物の水素添加物も含まれる。
芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、芳香族ジオールのジグリシジルエーテル化合物、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ化合物(いわゆるビスフェノール型エポキシ樹脂)などが例示される。
芳香族ジオールのジグリシジルエーテル化合物としては、フェノール型エポキシ樹脂(カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、メチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5−ジt−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテルなど)、ナフタレン型エポキシ樹脂(1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレンなど)などが挙げられる。
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル環にアルキル基を有していてもよいビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。このようなビフェニル型エポキシ樹脂としては、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(グリシジルオキシ)ビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ビス(グリシジルオキシ)ビフェニルなどが挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAP型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、3,3’,5,5’−テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型エポキシ化合物、3,3’,5,5’−テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、2,4−ビス(グリシジルオキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(グリシジルオキシ)ベンゾフェノン、ビスフェノールフルオレンのジグリシジルエーテル(ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂とも呼ばれる。)、ビスクレゾールフルオレンのジグリシジルエーテル(ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂とも呼ばれる。)などが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族グリシジルエステル化合物、脂環族グリシジルエステル化合物、芳香族グリシジルエステル化合物などが挙げられる。これらのグリシジルエステル化合物は、ジカルボン酸骨格(残基)とこの骨格に導入された2つのグリシジルエステル基とを有する。グリシジルエステル型エポキシ樹脂のうち、脂環族グリシジルエステル化合物、芳香族グリシジルエステル化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。
芳香族グリシジルエステル化合物としては、芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、メチルフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)アルカン(ビス(カルボキシフェニル)プロパンなど)などが挙げられる。なお、フタル酸(メチルフタル酸のフタル酸部分も含む)は、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸のいずれであってもよい。
脂環族グリシジルエステル化合物としては、脂環族ジカルボン酸のジグリシジルエステルが好ましい。脂環族ジカルボン酸としては、上記の芳香族ジカルボン酸の水素添加物が好ましく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ビス(カルボキシフェニル)アルカンの水素添加物などが例示できる。
オリゴマータイプの2官能エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物とジカルボン酸との縮合物が挙げられる。グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、上記で例示のもの(例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物)が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、上記で例示の脂環族ジカルボン酸および芳香族カルボン酸の他、脂肪族カルボン酸も挙げられる。
オリゴマータイプの2官能エポキシ化合物の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、例えば、1500以下であってもよい。オリゴマータイプの2官能エポキシ化合物のMwは、例えば、200以上であってもよい。
なお、本明細書中、重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
Mwは、例えば、以下の手順で求められる。
Mwを測定する材料を溶媒に溶解させて測定用試料を調製する。溶媒は、材料の種類に応じて、材料を溶解可能な液状媒体から選択される。測定用試料を用いて下記の条件でGPCを測定し、Mwを求める。
装置:SHODEX社製、SYSTEM−21H
検出器:RI検出器
移動相:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
カラム:SHODEX社製、 KD−806M(×3本)
カラム温度:40℃
基準物質:標準ポリスチレン(Mw=65000、5780、589)
Mwを測定する材料を溶媒に溶解させて測定用試料を調製する。溶媒は、材料の種類に応じて、材料を溶解可能な液状媒体から選択される。測定用試料を用いて下記の条件でGPCを測定し、Mwを求める。
装置:SHODEX社製、SYSTEM−21H
検出器:RI検出器
移動相:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
カラム:SHODEX社製、 KD−806M(×3本)
カラム温度:40℃
基準物質:標準ポリスチレン(Mw=65000、5780、589)
(フェノール化合物)
フェノール化合物としては、1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有する2官能フェノール化合物が用いられる。フェノール化合物は、少なくとも第1フェノール成分(つまり、第1ビスフェノール成分)を含む。モノマー組成物は、第1ビスフェノール成分を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
フェノール化合物としては、1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有する2官能フェノール化合物が用いられる。フェノール化合物は、少なくとも第1フェノール成分(つまり、第1ビスフェノール成分)を含む。モノマー組成物は、第1ビスフェノール成分を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
(第2フェノール成分)
フェノール化合物は、第1フェノール成分とは異なるフェノール化合物(以下、第2フェノール成分と称する。)を含んでもよい。第2フェノール成分は、1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有する2官能フェノール化合物である。ただし、第2フェノール成分は、第1フェノール成分とは異なり、ビスウレア構造を有さない。
フェノール化合物は、第1フェノール成分とは異なるフェノール化合物(以下、第2フェノール成分と称する。)を含んでもよい。第2フェノール成分は、1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有する2官能フェノール化合物である。ただし、第2フェノール成分は、第1フェノール成分とは異なり、ビスウレア構造を有さない。
第2フェノール成分としては、芳香族ジオール、ビスフェノールなどが挙げられる。第2フェノール成分のうち、ビスフェノール化合物を第2ビスフェノール化合物と称する場合がある。モノマー組成物は、第2フェノール成分を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン化合物、ジヒドロキシビフェニル化合物が挙げられる。ヒドロキシアレーン化合物としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン化合物(カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、1,2−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼンなど)、ジヒドロキシナフタレン化合物(1,4−、1,5−、2,3−、または2,7−ジヒドロキシナフタレンなど)などが挙げられる。アレーン部分の炭素数は、例えば、6〜14であり、6〜10であってもよい。ジヒドロキシビフェニル化合物としては、2,5−、2,2’−または4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられる。ただし、芳香族ジオールは、これらに限定されるものではない。
第2ビスフェノール化合物は、例えば、2つのフェノール骨格を連結基で連結した構造を有するものが利用される。連結基としては、アルキレン基(直鎖状または分岐鎖状のC1−4アルキレン基など)、フルオレンに対応する二価基(具体的には、フルオレン環の9位に2つの結合手を有する二価基)、ヘテロ原子(イオウ原子、酸素原子など)、またはカルボニル基などが挙げられる。
第2ビスフェノール化合物の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAD、ビスフェノールF、3,3’,5,5’−テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビスフェノールS、3,3’,5,5’−テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレンが挙げられる。しかし、第2ビスフェノール化合物はこれらに限定されるものではない。
第2フェノール成分に含まれる芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、脂肪族炭化水素基(アルキル基など)、脂環族炭化水素基(シクロアルキル基など)、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、芳香環は、置換基として、重合性不飽和炭素−炭素結合を有する基(ビニル基、アリル基など)を有していてもよい。
エポキシ化合物のフェノール化合物に対するモル比は、1より大きければよく、1.1以上であってもよい。
フェノール化合物は、少なくとも第1ビスフェノール成分を含んでいればよい。フェノール化合物に占める第1ビスフェノール成分の割合は、0モル%より多く100モル%以下の範囲から用途または目的に応じて選択すればよい。フェノール化合物に占める第1ビスフェノール成分の割合は、特に限定されるものではないが、5モル%以上95モル%以下、20モル%以上80モル%以下、または30モル%以上70モル%以下としてもよい。
第1ビスフェノール成分は、元々有している2つのフェノール性ヒドロキシ基の他に、分解により、2つのアミノ基(−NH2)を形成し得る。つまり、第1ビスフェノール成分は、エポキシ基と反応し得る活性水素を6個有する。そのため、硬化の段階まで考慮すると、第1ビスフェノール成分のモル数は、一般的な2官能のフェノール化合物のモル数の1/3量でよい。
モノマー組成物に含まれるエポキシ化合物のモル数をxとし、第1ビスフェノール成分および第2フェノール成分のそれぞれのモル数を、yおよびzとする。xが(3y+z)×0.9≦x≦(3y+z)×1.1を充足するように、各化合物のモル数を決定することが好ましい。xが、(3y+z)×0.95≦x≦(3y+z)×1.05を充足するようにしてもよい。このような範囲となるように各化合物の割合を調節することで、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基との反応および硬化反応の双方を通して、エポキシ基と活性水素との当量比のバランスを取ることができる。
(他の重合成分)
モノマー組成物は、必要に応じて、上記の2官能エポキシ化合物および2官能フェノール化合物以外の重合成分(以下、第3モノマーと称する場合がある。)を含んでもよい。第3モノマーは、熱可塑性エポキシ材料の生成を阻害しない範囲で、用途または目的に応じて選択できる。第3モノマーとしては、単官能または多官能のものを用いてもよい。第3モノマーとしては、例えば、単官能または3官能以上のエポキシ化合物、1分子中に1つまたは3つ以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物などを用いてもよい。また、第3モノマーとして、2官能のフェノール化合物以外の、エポキシ基と反応する活性水素を有するモノマーを用いてもよい。このようなモノマーとしては、アルコール性ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、および/またはシアネートエステル基を有する化合物などが挙げられる。このような化合物は、単官能であってもよく、多官能であってもよい。
モノマー組成物は、必要に応じて、上記の2官能エポキシ化合物および2官能フェノール化合物以外の重合成分(以下、第3モノマーと称する場合がある。)を含んでもよい。第3モノマーは、熱可塑性エポキシ材料の生成を阻害しない範囲で、用途または目的に応じて選択できる。第3モノマーとしては、単官能または多官能のものを用いてもよい。第3モノマーとしては、例えば、単官能または3官能以上のエポキシ化合物、1分子中に1つまたは3つ以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物などを用いてもよい。また、第3モノマーとして、2官能のフェノール化合物以外の、エポキシ基と反応する活性水素を有するモノマーを用いてもよい。このようなモノマーとしては、アルコール性ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、および/またはシアネートエステル基を有する化合物などが挙げられる。このような化合物は、単官能であってもよく、多官能であってもよい。
(触媒)
触媒は、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基との重合反応(より具体的には重付加反応)を促進するものであればよい。このような触媒としては、3級ホスフィン、4級ホスホニウム錯体、有機アミンなどが挙げられる。モノマー組成物は、触媒を一種含んでいてもよく、二種以上含んでもよい。触媒は、第1ビスフェノールの分解温度または重合反応の速度などを考慮して選択される。
触媒は、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基との重合反応(より具体的には重付加反応)を促進するものであればよい。このような触媒としては、3級ホスフィン、4級ホスホニウム錯体、有機アミンなどが挙げられる。モノマー組成物は、触媒を一種含んでいてもよく、二種以上含んでもよい。触媒は、第1ビスフェノールの分解温度または重合反応の速度などを考慮して選択される。
3級ホスフィンとしては、脂肪族の3級ホスフィンであってもよいが、有機環を含む基を有する3級ホスフィンが好ましい。中でも、脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する3級ホスフィンが好ましい。このような3級ホスフィンとしては、例えば、トリシクロアルキルホスフィン、ジシクロアルキルアリールホスフィン、シクロアルキルジアリールホスフィン、トリアリールホスフィン、またはこれらの錯体が挙げられる。
3級ホスフィンの具体例としては、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボレートなどが挙げられる。
4級ホスホニウム錯体としては、テトラアリールホスホニウム錯体が好ましい。中でも、テトラアリールホスホニウム−テトラアリールボレート錯体などが好ましい。4級ホスホニウム錯体の具体例としては、テトラフェニルホスホニウム−テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレートなどが挙げられる。
有機アミンとしては、1〜3個の有機基を有するアミンが挙げられる。有機基としては、例えば、脂肪族、脂環族および芳香族のものが挙げられる。比較的入手が容易であるとともに、副反応が起こるのを抑制する観点からは、アルキル部分の炭素数が4以上のトリアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミンなどが好ましい。アルキルアミンおよびヒドロキシアルキルアミンのアルキル部分は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
トリアルキルアミンを構成するアルキル部分の炭素数は、4以上であればよく、4以上10以下であってもよく、4以上8以下または4以上6以下であってもよい。アルキルアミンが有するアルキル部分のうち少なくとも2つは同じであってもよく、全てが異なっていてもよい。
ジアルキルアミンの具体例としては、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソペンチルアミン、N−sec−ブチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジ(2−エチルヘシキル)アミン、N−エチルヘシキルアミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、トリプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリイソペンチルアミン、N,N−ジメチル−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルデシルアミンなどが挙げられる。
ヒドロキシアルキルアミンにおける、ヒドロキシアルキル基の個数は、1〜3個である。ヒドロキシアルキルアミンは、ヒドロキシアルキル基とともに、窒素原子にアルキル基を有していてもよい。ヒドロキシアルキル基とアルキル基との合計は、3個以下である。ヒドロキシアルキルアミンが2個または3個のヒドロキシアルキル基を有する場合、少なくとも2個のヒドロキシアルキル基の種類は同じであってもよく、全てのヒドロキシアルキル基の種類は異なっていてもよい。各ヒドロキシアルキル基の炭素数は、1以上であればよいが、2以上が好ましく、2以上10以下、3以上8以下、または3以上6以下であってもよい。ヒドロキシアルキル基において、ヒドロキシ基の位置は特に制限されないが、より高い反応制御性を確保できる観点からは、窒素原子に対するβ位に有することが好ましい。ヒドロキシアルキル基は、2つ以上のヒドロキシ基を有していてもよいが、1つのヒドロキシ基を有する場合が多い。
ヒドロキシアルキルアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、2−(ブチルアミノ)エタノール、N−ブチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
モノマー組成物において、触媒の量は、エポキシ化合物100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上10質量部以下であり、0.1質量部以上5質量部以下であってもよく、0.5質量部以上3質量部以下であってもよい。
(フィラー)
モノマー組成物は、フィラーを含んでもよい。フィラーは、有機フィラー(例えば、樹脂粒子など)および無機フィラー(無機粒子など)のいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、金属化合物(シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト、タルクなど)、金属無機酸塩(炭酸カルシウムなど)などが挙げられる。しかし、フィラーはこれらに限定されるものではない。
モノマー組成物は、フィラーを含んでもよい。フィラーは、有機フィラー(例えば、樹脂粒子など)および無機フィラー(無機粒子など)のいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、金属化合物(シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト、タルクなど)、金属無機酸塩(炭酸カルシウムなど)などが挙げられる。しかし、フィラーはこれらに限定されるものではない。
モノマー組成物中のフィラーの量は、フィラーの種類、およびモノマー組成物の用途または目的などに応じて選択できる。フィラーの量は、特に制限されないが、エポキシ化合物およびフェノール化合物の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上3000質量部以下であってもよく、0.1質量部以上1000質量部以下(または500質量部以下)であってもよい。
(他の成分)
モノマー組成物は、必要に応じて、溶剤(有機溶剤など)を含んでもよい。モノマー組成物中の溶剤の量は、例えば、30質量%以下であり、20質量%以下または10質量%以下であってもよい。
モノマー組成物は、必要に応じて、溶剤(有機溶剤など)を含んでもよい。モノマー組成物中の溶剤の量は、例えば、30質量%以下であり、20質量%以下または10質量%以下であってもよい。
また、モノマー組成物は、必要に応じて他の添加剤(着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、靱性付与剤、可塑剤、上記の触媒以外の反応促進剤、カップリング剤、濡れ性調整剤、消泡剤など)を含んでもよい。
[熱可塑性エポキシ材料およびその製造方法]
本発明の熱可塑性エポキシ材料は、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、主鎖の一方の末端のエポキシ基と、主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含む。主鎖は、2つの2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する。
本発明の熱可塑性エポキシ材料は、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、主鎖の一方の末端のエポキシ基と、主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含む。主鎖は、2つの2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する。
このような熱可塑性エポキシ材料には、例えば、下記式(IV)で表される線状ポリマーが含まれる。
このような熱可塑性エポキシ材料は、下記式(V)で表される2官能のエポキシ化合物と下記式(VI)で表される2官能のフェノール化合物とを、2官能のエポキシ化合物の2官能のフェノール化合物に対するモル比が1より大きくなるような割合で反応させることにより得られ得る。
式(V)のエポキシ化合物および式(VI)のフェノール化合物は、それぞれ、上記モノマー組成物のエポキシ化合物およびフェノール化合物に相当する。nは、2官能のエポキシ化合物と2官能のフェノール化合物との反応により形成される、2つの2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基(G1)がフェノール化合物の残基(二価基R4)で連結された構造の繰り返し数を示す。なお、R3は、エポキシ化合物において2つのエポキシ基を連結する二価の有機基である。R4は、フェノール化合物において2つのフェノール性ヒドロキシ基の間に介在する二価の有機基である。式(V)のエポキシ化合物は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。式(VI)のフェノール化合物は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の繰り返し構造において、少なくとも一部の二価基R4は、ビスウレア構造を有している。より具体的には、上記の繰り返し構造において、少なくとも一部の−O−R4−O−は、下記式(Ia)で表すことができる。
式(Ia)は、第1ビスフェノール成分の残基に相当する。R1、R2b、およびR2cは、式(I)と同じである。−A1a−O−および−A2a−O−は、それぞれ、式(I)における−A1および−A2に対応する。より具体的には、−A1a−OHおよび−A2a−OHは、それぞれ、−A1および−A2である。A1aおよびA2aのそれぞれに結合したOHは、−A1および−A2におけるフェノール性ヒドロキシ基である。
熱可塑性エポキシ材料を構成する線状ポリマーには、このように、ビスウレア構造が組み込まれている。そのため、線状ポリマーが分解されると、生成したアミノ基(−NH2)によりポリマー鎖のエポキシ基が架橋される。また、イソシアネート基によりポリマー鎖に含まれるアルコール性ヒドロキシ基(G1基に含まれるヒドロキシ基など)が架橋される。このようにして多くの架橋構造が形成されることで、十分な架橋密度を有するエポキシ樹脂硬化物が得られる。
上記の繰り返し構造において、一部の二価基R4は、第2フェノール成分に対応する構造であってもよい。
なお、式(IV)には、2官能のエポキシ化合物と2官能のフェノール化合物との反応により形成される線状ポリマーを示したが、式(IV)は線状ポリマーの構造を模式的に示すものに過ぎない。例えば、線状ポリマーは、第3モノマーのユニットを含んでもよい。また、2官能のエポキシ化合物が脂環式エポキシ樹脂の場合には、式(IV)のエポキシ化合物の残基の部分に脂肪族環が存在する以外は、式(IV)に関する説明を参照できる。
線状ポリマーのMwは、例えば、1100以上40000以下である。Mwがこのような範囲である場合、熱可塑性を確保しながら、溶融粘度を低く保つことができる。
熱可塑性エポキシ材料は、上記のモノマー組成物を、160℃未満の温度で加熱して重合させることにより得ることができる。重合を行う温度は、160℃未満であればよく、150℃以下または140℃以下であってもよい。このような温度で重合させることで、ビスウレア構造の分解が抑制され、効率よく、ポリマーを線状に成長させることができる。重合を効率よく行う観点からは、重合を行う温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
重合を行う温度は、100℃(または120℃)以上160℃未満、100℃(または120℃)以上150℃以下、あるいは100℃(または120℃)以上140℃以下であってもよい。
重合は、空気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、またはアルゴンガスなど)の雰囲気下で行ってもよい。
反応は、加圧下または減圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。
重合時間は、特に制限されないが、例えば、5分以上3時間以下である。
[エポキシ樹脂硬化物およびその製造方法]
エポキシ樹脂硬化物は、熱可塑性エポキシ材料の硬化により得られる。より具体的には、熱可塑性エポキシ材料を、160℃以上の温度で加熱することにより硬化させることにより、エポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
エポキシ樹脂硬化物は、熱可塑性エポキシ材料の硬化により得られる。より具体的には、熱可塑性エポキシ材料を、160℃以上の温度で加熱することにより硬化させることにより、エポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
160℃以上の温度で加熱することで、熱可塑性エポキシ材料を構成する線状ポリマーに含まれるウレア基が分解して複数の架橋性基が生成する。この複数の架橋性基により、ポリマー鎖が架橋され、硬化物が得られる。
熱可塑性エポキシ材料の加熱温度は、160℃以上300℃以下が好ましく、160℃以上250℃以下がより好ましく、170℃以上200℃以下であってもよい。このような温度範囲とすることで、熱分解または酸化による材料の劣化を抑制しながら、硬化反応を効率よく進行させることができる。
硬化は、空気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、またはアルゴンガスなど)の雰囲気下で行ってもよい。
硬化は、加圧下または減圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。
硬化時間は、特に制限されないが、例えば、1分以上1時間以下である。
硬化工程の前に、上記モノマー組成物を160℃未満の温度で加熱して重合させることにより、熱可塑性エポキシ材料を得る工程を行ってもよい。熱可塑性エポキシ材料を得る工程については、上記の熱可塑性エポキシ材料の製造方法に関する説明を参照できる。モノマー組成物の重合により得られる混合物をそのまま硬化工程に供してもよく、必要に応じて、混合物を精製した後に硬化工程に供してもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜2および比較例1
(1)モノマー組成物の調製
ビスフェノールA型エポキシ化合物(分子量380)、表1に示すフェノール化合物および触媒を、表1に示す質量比で、大気中25℃にて混合することにより、モノマー組成物を調製した。
(1)モノマー組成物の調製
ビスフェノールA型エポキシ化合物(分子量380)、表1に示すフェノール化合物および触媒を、表1に示す質量比で、大気中25℃にて混合することにより、モノマー組成物を調製した。
フェノール化合物および触媒としては、以下のものを用いた。
アミン系触媒(XNH6850EY、ナガセケムテックス社製)
リン系触媒(XNH6850B、ナガセケムテックス社製)
BPA:ビスフェノールA(分子量228)
下記式で示されるpAP−IPDI−pAP(分子量440)およびmAP−IPDI−mAP(分子量440)
アミン系触媒(XNH6850EY、ナガセケムテックス社製)
リン系触媒(XNH6850B、ナガセケムテックス社製)
BPA:ビスフェノールA(分子量228)
下記式で示されるpAP−IPDI−pAP(分子量440)およびmAP−IPDI−mAP(分子量440)
pAP−IPDI−pAPは、下記の手順で調製した。
溶媒(DMF)60gに、p−アミノフェノール29.5g(0.271モル)を溶解させた溶液に、撹拌下、イソホロンジイソシアネート30.0g(0.135モル)を滴下した。得られる混合物を、大気中、25℃で2時間撹拌することにより反応を進行させ、pAP−IPDI−pAPを生成させた。反応混合物にアセトン60gを加えて希釈した。希釈物を、900mlの0.05N−HCl水溶液中に投入して沈殿を生成させた。沈殿を濾過により回収し、濾過物を数回水洗することにより、pAP−IPDI−pAPを単離した。
mAP−IPDI−mAPは、p−アミノフェノールに代えて、m−アミノフェノールを用いる以外は、上記と同様にして得られる。
溶媒(DMF)60gに、p−アミノフェノール29.5g(0.271モル)を溶解させた溶液に、撹拌下、イソホロンジイソシアネート30.0g(0.135モル)を滴下した。得られる混合物を、大気中、25℃で2時間撹拌することにより反応を進行させ、pAP−IPDI−pAPを生成させた。反応混合物にアセトン60gを加えて希釈した。希釈物を、900mlの0.05N−HCl水溶液中に投入して沈殿を生成させた。沈殿を濾過により回収し、濾過物を数回水洗することにより、pAP−IPDI−pAPを単離した。
mAP−IPDI−mAPは、p−アミノフェノールに代えて、m−アミノフェノールを用いる以外は、上記と同様にして得られる。
(2)熱可塑性エポキシ材料の調製
上記(1)で得られたモノマー組成物を、表1に示す重合温度で表1に示す時間加熱することにより重合反応を進行させ、線状ポリマーを生成させた。このようにして、線状ポリマーを含む熱可塑性エポキシ材料を調製した。
上記(1)で得られたモノマー組成物を、表1に示す重合温度で表1に示す時間加熱することにより重合反応を進行させ、線状ポリマーを生成させた。このようにして、線状ポリマーを含む熱可塑性エポキシ材料を調製した。
(3)エポキシ樹脂硬化物の作製
上記(2)で得られた熱可塑性エポキシ材料を、表1に示す温度で表1に示す時間加熱した。これにより、実施例では、硬化反応が進行し、エポキシ樹脂硬化物が得られた。比較例では、加熱しても硬化反応は進行せず、硬化物は得られなかった。
上記(2)で得られた熱可塑性エポキシ材料を、表1に示す温度で表1に示す時間加熱した。これにより、実施例では、硬化反応が進行し、エポキシ樹脂硬化物が得られた。比較例では、加熱しても硬化反応は進行せず、硬化物は得られなかった。
(4)評価
(a)上記(2)で得られた熱可塑性エポキシ材料のMwを基準の手順で求めた。上記(2)で得られたエポキシ材料約0.06gを、2.0gのテトラヒドロフラン(THF)に入れ、室温(25℃)で撹拌した。このとき、エポキシ材料は、THFに対して100%の比率で溶解したことから、熱可塑性であると言える。
(a)上記(2)で得られた熱可塑性エポキシ材料のMwを基準の手順で求めた。上記(2)で得られたエポキシ材料約0.06gを、2.0gのテトラヒドロフラン(THF)に入れ、室温(25℃)で撹拌した。このとき、エポキシ材料は、THFに対して100%の比率で溶解したことから、熱可塑性であると言える。
(b)上記(3)で得られたエポキシ樹脂硬化物を直方体の小片にカットし、サンプルを準備した。サンプル約0.06g(M0)を採取し、2.0gのテトラヒドロフラン(THF)に入れ、室温(25℃)で60分間撹拌した。溶けずに残っているサンプルを取り出し、乾燥させて、質量(M1)を測定した。M1のM0に対する比率(%)を算出し、THFに対する耐溶剤性を評価した。比率が小さいほど、THFに対して溶解せず、架橋密度が高いことを示す。なお、比較例では、加熱後の材料約0.06gを用いる以外は、実施例の硬化物の場合と同様に、THFに対する耐溶剤性を評価した。
実施例および比較例の結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例1でも熱可塑性エポキシ材料が得られたが、実施例では、比較例1に比べてMwが小さい熱可塑性エポキシ材料が得られた。実施例の熱可塑性エポキシ材料は、溶融粘度も比較例1より低くなった。また、実施例では、熱可塑性エポキシ材料を加熱することにより、特に硬化剤を用いなくても、十分な架橋密度を有するエポキシ樹脂硬化物が得られた。実施例で得られたエポキシ樹脂硬化物は、THFには全く溶解せず、高い耐溶剤性を示した。それに対し、比較例では、熱可塑性エポキシ材料を加熱しても、硬化反応は進行せず、加熱により得られる材料は、THFに対して全て溶解した。
本発明のモノマー組成物は、線状ポリマーを容易に形成でき、熱可塑性エポキシ材料を得るのに有用である。また、モノマー組成物または熱可塑性エポキシ材料は、潜在的な架橋機能を有しており、エポキシ樹脂硬化物を得るのに有用である。
Claims (13)
- 1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
1分子中に2つのフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール化合物と、を含み、
前記フェノール化合物は、ビスウレア構造を有するビスフェノール化合物からなる第1フェノール成分を含み、
前記エポキシ化合物の前記フェノール化合物に対するモル比は、1より大きい、モノマー組成物。 - 前記第1フェノール成分は、前記ビスウレア構造で2つの芳香環含有基が連結された構造を有し、
前記芳香環含有基の芳香環のそれぞれが、前記フェノール性ヒドロキシ基を1つずつ有する、請求項1に記載のモノマー組成物。 - 前記フェノール化合物は、さらに、前記第1フェノール成分とは異なる第2フェノール成分を含む、請求項1または2に記載のモノマー組成物。
- 前記モノマー組成物に含まれる前記エポキシ化合物のモル数をxとし、前記モノマー組成物に含まれる前記第1フェノール成分および前記第2フェノール成分のそれぞれのモル数を、yおよびzとするとき、(3y+z)×0.9≦x≦(3y+z)×1.1を充足する、請求項3に記載のモノマー組成物。
- さらに、前記エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基との重合反応を促進する触媒を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノマー組成物。
- 前記触媒は、3級ホスフィン、4級ホスホニウム錯体、アルキル部分の炭素数が4以上のトリアルキルアミン、およびヒドロキシアルキルアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項5に記載のモノマー組成物。
- 2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、前記主鎖の一方の末端のエポキシ基と、前記主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含み、
前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する、熱可塑性エポキシ材料。 - 前記線状ポリマーの重量平均分子量は、1100以上40000以下である、請求項7に記載の熱可塑性エポキシ材料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノマー組成物を160℃未満の温度で加熱して重合させることにより、2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、前記主鎖の一方の末端のエポキシ基と、前記主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含み、前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する熱可塑性エポキシ材料を得る工程を含む、熱可塑性エポキシ材料の製造方法。
- 請求項7または8に記載の熱可塑性エポキシ材料を硬化させたエポキシ樹脂硬化物。
- 2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基を含む繰り返し構造を有する主鎖と、前記主鎖の一方の末端のエポキシ基と、前記主鎖の他方の末端のエポキシ基と、を含む線状ポリマーを含み、前記主鎖は、2つの前記2−ヒドロキシ(オキシエチレン)基のそれぞれのオキシ基間に介在するビスウレア構造を有する熱可塑性エポキシ材料を、160℃以上300℃以下の温度で加熱することにより硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得る工程を含む、エポキシ樹脂硬化物の製造方法。
- 前記硬化工程の前に、請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノマー組成物を160℃未満の温度で加熱して重合させることにより、前記熱可塑性エポキシ材料を得る工程を含む、請求項11に記載のエポキシ樹脂硬化物の製造方法。
- ビスウレア構造を有するビスフェノール化合物からなる、架橋機能を有する鎖伸長剤。
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JP2020034461A JP2021138783A (ja) | 2020-02-28 | 2020-02-28 | 熱可塑性エポキシ材料とその硬化物およびそれらの製造方法、ならびに熱可塑性エポキシ材料を与えるモノマー組成物と架橋機能を有する鎖伸長剤 |
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