JP2021137400A - ゴム臭気消臭用組成物及びゴム臭気の消臭方法 - Google Patents

ゴム臭気消臭用組成物及びゴム臭気の消臭方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム臭気に対して優れた消臭効果を有するゴム臭気消臭用組成物及びゴム臭気の消臭方法を提供する。【解決手段】本発明ゴム臭気消臭用組成物は、のヒドラジド化合物と、植物精油とを含み、前記植物精油は、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する。前記ヒドラジド化合物がカルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。本発明ゴム臭気消臭用組成物によれば、ゴム臭気に対して優れた消臭効果を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム臭気消臭用組成物及びゴム臭気の消臭方法に関する。
化学材料、化学薬品等の製造現場や加工現場においては、人に対して不快感を与える種々の臭気が発生するため、環境面や安全面の観点から、その臭気を消臭又は低減することが求められている。中でも、天然ゴム、タイヤ等のゴムは、不快な臭気が発生しやすいため、製造現場や加工現場の環境を悪化させるおそれがあるばかりか、その近隣にも臭気による影響が出やすいことから、ゴム臭気を消臭又は低減させるための検討がこれまでにも広く行われている。
ゴム臭気を消臭する方法としては、例えば、特許文献1に、ゴムの配合剤である炭酸カルシウム、シリカ及びクレー等粉末充填剤に香料等の消臭剤を用いて、ゴム臭気を抑制する方法が開示されている。さらに特許文献2には、発生した臭気ガスを燃焼法で脱臭する方法が提案されている。
特開平7−222792号公報 特開平11−140222号公報
しかしながら、近年の環境配慮への意識の高まりから、ゴム臭気を簡便な方法で消臭することができ、かつ、優れた消臭効果をもたらすことができる消臭剤や消臭方法の開発が求められており、この観点から、従来の消臭剤等に対しても改善の余地が残されていた。加えて、特許文献1で提案されている方法では、無機材料等を必須とすることから、分散性等の点で消臭剤の調製が難しくなることがあり、また、特許文献2で提案されている方法では、装置のイニシャルコスト、燃料費のランニングコストが高まりやすいという問題もあった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ゴム臭気に対して優れた消臭効果を有するゴム臭気消臭用組成物及びゴム臭気の消臭方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドラジド化合物と、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する植物精油とを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ヒドラジド化合物と、植物精油とを含み、
前記植物精油は、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する、ゴム臭気消臭用組成物。
項2
前記ヒドラジド化合物がカルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、項1に記載のゴム臭気消臭用組成物。
項3
前記植物精油は、パイン油及びリモネンの両方を含有する、項1又は2に記載のゴム臭気消臭用組成物。
項4
さらにノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤と、水とを含む、項1〜3のいずれか1項に記載のゴム臭気消臭用組成物。
項5
項1〜4のいずれか1項に記載のゴム臭気消臭用組成物を噴霧する工程を備える、ゴム臭気の消臭方法。
項6
ヒドラジド化合物を含む第1液を噴霧する第1工程、及び、
パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する植物精油を含む第2液を噴霧する第2工程をこの順に備える、ゴム臭気の消臭方法。
項7
前記ヒドラジド化合物がカルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、項6に記載のゴム臭気の消臭方法。
本発明のゴム臭気消臭用組成物は、ゴム臭気に対して優れた消臭効果を有する。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本発明のゴム臭気消臭用組成物(以下、単に「ゴム臭気消臭用組成物と表記する」)は、ヒドラジド化合物と、植物精油とを含み、前記植物精油は、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する。これにより、本発明のゴム臭気消臭用組成物は、ゴム臭気に対して優れた消臭効果を発揮することができる。
なお、本明細書において、ゴム臭気に対する「消臭効果」とは、例えば、ゴム臭気の強度を弱める作用を包含し、必ずしも、ゴム臭気を完全に消失させることだけを意味するものではない。同様に、ゴム臭気に対する「消臭性能」とは、ゴム臭気の強度を弱めることができる性質を包含し、必ずしも、ゴム臭気を完全に消失させる性能だけを意味するものではない。
ゴム臭気消臭用組成物において、ヒドラジド化合物は、ゴム臭気に対する消臭効果を発揮するための有効成分であって、いわゆる反応剤としての役割も果たし得る成分である。例えば、ヒドラジド化合物は、ゴム臭気に含まれる臭気成分であるアルデヒド化合物と反応することができる。ヒドラジド化合物がアルデヒド化合物と反応することで、該アルデヒド化合物は分解し、この結果、ゴム臭気が低減され得る。
ヒドラジド化合物の種類は特に限定されず、公知のヒドラジド化合物を広く挙げることができる。中でも、ヒドラジド化合物は、アルデヒド化合物と反応することができる化合物であることが好ましく、低分子量であるほど好ましい。ヒドラジド化合物の具体例としては、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等を挙げることができ、アルデヒド化合物に対する反応性が優れるという点で、カルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、カルボジヒドラジドであることが特に好ましい。
ヒドラジド化合物は公知の方法で製造することができ、また、ヒドラジド化合物は市販品等から入手することもできる。
ゴム臭気消臭用組成物において、植物精油は、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する。
ゴム臭気消臭用組成物において、パイン油及びリモネンは、ゴム臭気に対する消臭効果を発揮するための有効成分になり得る。特に、ゴム臭気消臭用組成物において、前記植物精油と前記ヒドラジド化合物が組み合わせられることによって、ゴム臭気成分に対する消臭効果がいっそう高められる。
パイン油の種類は特に限定されず、例えば、公知のパイン油を広くゴム臭気消臭用組成物に適用することができる。パイン油は、例えば、公知の方法で製造して得ることができ、あるいは、市販品等から入手することもできる。
リモネンは、単環式モノテルペンであり、C1016で表されるキラル化合物である。従って、リモネンには異性体が存在する。本発明ではその異性体の種類は特に限定されず、D−リモネンでもL−リモネンでも、その混合物であってもよい。ゴム臭気に対する消臭効果がより優れるという点で、リモネンは、D−リモネンであることが好ましい。
リモネンは、例えば、公知の方法で製造して得ることができ、あるいは、市販品等から入手することもできる。
植物精油は、パイン油及びリモネンのいずれか一方のみを含むだけで、ゴム臭気に対して優れた消臭効果を発揮することができる。ゴム臭気に対する消臭効果より高まるという点で、植物精油は、パイン油及びリモネンの両方を含むことが好ましい。パイン油及びリモネンの両方を含むことで、それぞれ単独で使用した場合に比べて、パイン油自身あるいはリモネン自身の香料臭が強く出すぎずに各香料臭が緩和され、同時に新たな香りが創生されてゴム臭の強度が緩和されやすい(中和効果)。
ゴム臭気消臭用組成物において、植物精油がパイン油及びリモネンの両方を含む場合、両者の含有割合は特に限定されず、種々の組成割合において、ゴム臭気に対する消臭効果を発揮することができる。
ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、植物精油におけるパイン油の含有割合は、パイン油及びリモネンの総質量に対して、5質量%以上とすることができ、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。また、ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、植物精油におけるパイン油の含有割合は、パイン油及びリモネンの総質量に対して、95質量%以下とすることができ、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以下であることが特に好ましい。
ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、植物精油におけるリモネンの含有割合は、パイン油及びリモネンの総質量に対して、5質量%以上とすることができ、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。また、ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、植物精油におけるリモネンの含有割合は、パイン油及びリモネンの総質量に対して、95質量%以下とすることができ、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以下であることが特に好ましい。
ゴム臭気消臭用組成物において、ヒドラジド化合物及び植物精油の含有割合は特に制限されない。例えば、ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、ヒドラジド化合物100質量部あたり、植物精油の含有量を1質量部以上とすることができ、3質量部以上とすることが好ましく、5質量部以上とすることがより好ましく、6質量部以上とすることがさらに好ましく、8質量部以上とすることが特に好ましい。また、ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、ヒドラジド化合物100質量部あたり、植物精油の含有量を100質量部以下とすることができ、80質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましく、35質量部以下とすることがさらに好ましく、25質量部以下とすることが特に好ましい。
ゴム臭気消臭用組成物における植物精油は、本発明の効果が阻害されない限り、パイン油及びリモネン以外の植物精油を含むことができる。植物精油がパイン油及びリモネン以外の植物精油を含む場合、その含有割合は、パイン油及びリモネンの全質量に対して5質量%以下とすることができ、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。あるいは、ゴム臭気消臭用組成物における植物精油は、パイン油及びリモネンのみからなることもできる。この場合にあっても、植物精油に不可避的に含まれる植物精油は除外されない。
ゴム臭気消臭用組成物は、ヒドラジド化合物及び植物精油に加えて界面活性剤を含有することもできる。ゴム臭気消臭用組成物が界面活性剤を含むことで、有効成分を水等の水性媒体に可溶化することができる。これにより、例えば、ゴム臭気消臭用組成物は、水溶性消臭剤として、ゴム製品の加工工場等から外部排出される臭気に対し噴霧したり、対象物であるゴム材料に噴霧等したりすることで、容易、かつ、効率よくゴム臭気を消臭することが可能となる。
界面活性剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の界面活性剤をゴム臭気消臭用組成物に広く適用することができる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンイソデシルエーテル等があげられる。中でも少量で有効成分を水性媒体に可溶化できる点で、ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルであることが好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテルであることがさらに好ましい。なお、ノニオン性界面活性剤において、アルキレンとは、例えば、炭素数が1〜10のアルキレンを意味することができ、好ましくは炭素数が1〜5、さらに好ましくは炭素数が1〜3、特に好ましくは炭素数が2である。
ノニオン性界面活性剤のHLBは10以上であることが好ましく、この場合、ヒドラジド化合物及び植物精油を水性媒体に可溶化しやすくなる。
ノニオン性界面活性剤の含有割合は、パイン油及びリモネンの全質量を100質量部とした場合、10〜1000質量部とすることができ、20〜800質量部であることが好ましく、30〜600質量部であることがより好ましく、40〜400質量部であることがさらに好ましく、50〜200質量部であることが特に好ましい。これらの場合、ヒドラジド化合物及び植物精油は水性媒体に可溶化しやすく、長期にわたり可溶化が安定し、また、泡立ちも起こりにくい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキススルホコハク酸エステル塩等があげられる。中でも少量でヒドラジド化合物及び植物精油を水性媒体に可溶化でき、組成物の高温安定性も改善されやすい点で、アニオン性界面活性剤は、高級アルコール硫酸エステル塩であることが好ましい。
アニオン性界面活性剤の含有割合は、パイン油及びリモネンの全質量を100質量部とした場合、10〜1000質量部とすることができ、20〜800質量部であることが好ましく、30〜600質量部であることがより好ましく、40〜400質量部であることがさらに好ましく、50〜200質量部であることが特に好ましい。これらの場合、ヒドラジド化合物及び植物精油は水性媒体に可溶化しやすく、高温に晒されても白濁が起こりにくく、また、泡立ちも起こりにくい。
ゴム臭気消臭用組成物が界面活性剤を含む場合、ゴム臭気消臭用組成物はさらに水性媒体を含む。水性媒体は、例えば、水、炭素数1〜4の低級アルコール又はこれらの混合物等を挙げることができる。中でも水性媒体は、水が好ましい。水は、蒸留水、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水、純水、電解水等の各種の水を用いることができる。
ゴム臭気消臭用組成物は、前記ヒドラジド化合物及び植物精油に加えてさらにノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤と、水とを含むことが好ましい。この場合、ゴム臭気消臭用組成物は、ヒドラジド化合物及び植物精油が水に可溶化した水溶性消臭剤として得られるので、ゴム製品の加工工場等から外部排出される臭気に対し噴霧したり、対象物であるゴム材料に噴霧等したりすることで、容易、かつ、効率よくゴム臭気を消臭することが可能となる。特に、ゴム臭気消臭用組成物は、ヒドラジド化合物及び植物精油と、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤と、水とを含むことが好ましい。
ゴム臭気消臭用組成物がヒドラジド化合物並びにパイン油及びリモネンの他に、界面活性剤及び水性媒体を含む場合、ヒドラジド化合物、パイン油及びリモネンの各含有割合は特に限定されない。ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすく、また、組成物が透明になりやすいという点で、ヒドラジド化合物の含有割合は、ヒドラジド化合物、パイン油、リモネン、界面活性剤及び水性媒体の総質量Sに対し、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%、特に好ましくは5〜13質量%とすることができる。また、ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果が特に高まりやすいという点で、植物精油の含有割合は、総質量Sに対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%とすることができる。
ゴム臭気消臭用組成物に含まれる界面活性剤の含有割合は、ヒドラジド化合物、パイン油、リモネン、界面活性剤、水性媒体の総質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜8質量%、特に好ましくは1〜5質量%とすることができる。
ゴム臭気消臭用組成物が水性媒体を含む場合、水性媒体の含有割合は特に限定されない。例えば、ゴム臭気消臭用組成物に含まれるヒドラジド化合物、パイン油及びリモネン、界面活性剤、水性媒体の総質量に対し、水性媒体の含有割合は70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
ゴム臭気消臭用組成物は、本発明の効果が阻害されない限り、ヒドラジド化合物、植物精油、及び、必要に応じて含まれる界面活性剤以外に他の成分を含有することもできる。
ゴム臭気消臭用組成物は、他の成分として、芳香族化合物及び脂肪族アルコールをさらに含むことができる。
芳香族化合物の種類は特に限定されず、例えば、ゴム臭気消臭用組成物の有効成分となり得る種々の芳香族化合物を挙げることができる。中でも、芳香族化合物としては、水酸基を有する芳香族化合物、アルデヒド基を有する芳香族化合物、エステル基を有する芳香族化合物、及び、カルボキシ基を有する芳香族化合物等が例示される。
ゴム臭気に対する消臭効果が高まりやすい点で、芳香族化合物は、水酸基を有する芳香族化合物、アルデヒド基を有する芳香族化合物、及び、エステル基を有する芳香族化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、水酸基を有する芳香族化合物、アルデヒド基を有する芳香族化合物、及び、エステル基を有する芳香族化合物の混合物であることがさらに好ましい。
水酸基を有する芳香族化合物としては、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール等が例示され、アルデヒド基を有する芳香族化合物としては、ベンズアルデヒド、シナミックアルデヒドが例示され、エステル基を有する芳香族化合物としては、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル等が例示される。ゴム臭気消臭用組成物に含まれる芳香族化合物は、フェニルエチルアルコール、ベンズアルデヒド及びサリチル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、ゴム臭気消臭用組成物のゴム臭気に対する消臭効果が特に向上する。ゴム臭気消臭用組成物に含まれる芳香族化合物は、それら3種類の化合物すべてを含むことが特に好ましく、それら3種の化合物のみであってもよい。
脂肪族アルコールの種類は特に限定されず、例えば、ゴム臭気消臭用組成物の有効成分となり得る種々の脂肪族アルコールを挙げることができる。脂肪族アルコールは、飽和アルコール及び不飽和アルコールのいずれでもよく、中でも、ゴム臭気に対する消臭効果が高まりやすい点で、脂肪族アルコールは、不飽和アルコールであることが好ましい。
具体的な脂肪族アルコールとしては、ゲラニオールが例示される。ゴム臭気消臭用組成物に含まれる脂肪族アルコールは、ゲラニオールを含むことが好ましい。この場合、ゴム臭気消臭用組成物は、ゴム臭気に対する消臭効果が高まりやすい。
以上のように、ゴム臭気消臭用組成物は、フェニルエチルアルコール、ベンズアルデヒド、サリチル酸メチル及びゲラニオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果がより高まりやすく、かつ、脂肪族アルコール自身の香料臭が強くなりすぎないという観点から、前記脂肪族アルコールの含有割合は、植物精油、脂肪族アルコール及び芳香族化合物の全質量に対し、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは4〜7質量%である。
ゴム臭気消臭用組成物の消臭効果がより高まりやすく、かつ、芳香族化合物自身の香料臭が強くなりすぎないという観点から、芳香族化合物の含有割合は、植物精油、脂肪族アルコール及び芳香族化合物の全質量に対し、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%である。
ゴム臭気消臭用組成物は、本発明の効果が阻害されない程度である限り、各種添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、殺菌剤、消泡剤、凍結防止剤等が挙げられる。ゴム臭気消臭用組成物が添加剤を含む場合、添加剤の含有割合は特に限定されない。例えば、添加剤の含有割合は、ゴム臭気消臭用組成物に含まれるヒドラジド化合物、パイン油、リモネン、界面活性剤、水性媒体の総質量に対し、5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは、0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下とすることができる。
なお、念のための注記に過ぎないが、本発明のゴム臭気消臭用組成物における各成分の含有割合の好ましい上限及び下限はどのように組み合わせてもよい。
ゴム臭気消臭用組成物を調製する方法は特に限定されない。例えば、ヒドラジン化合物と、植物精油と、必要に応じて使用される界面活性剤及び水性媒体とをそれぞれ所定の割合で混合することで、ゴム臭気消臭用組成物を調製することができる。
ゴム臭気消臭用組成物を用いてゴム臭気を消臭する方法は特に限定されない。例えば、ゴム臭気消臭用組成物を、ゴム製品の加工工場等から外部排出される臭気に対し噴霧する方法、対象物であるゴム材料に噴霧する方法、ゴム材料に塗布する方法を挙げることができ、容易にゴム臭気を消臭できるという点で噴霧する方法が好ましい。特に、ゴム臭気消臭用組成物中の有効成分が界面活性剤により可溶化されている場合は、噴霧する方法が好ましい。ゴム臭気消臭用組成物を噴霧する場合は、適宜の方法で噴霧することができ、例えば、二流体ノズル等の公知の噴霧手段を使用することができる。
ゴム臭気を消臭するにあたり、ゴム臭気消臭用組成物の使用量も特に限定されず、ゴム臭気消臭用組成物中の有効成分濃度、ゴム臭気の種類、強度等に応じて適宜選択することができる。例えば、ゴム臭気1立方メートル/分に対し、1〜100cc/分の噴霧速度で噴霧することができる。なお、ゴム臭気消臭用組成物を用いてゴム臭気を消臭するにあたり、必要に応じて水等の水性媒体でさらに希釈して用いることもできる。
本発明のゴム臭気消臭用組成物は、少なくともヒドラジド化合物及び植物精油を有効成分として含むことから、ゴム臭気を効率よく消臭することができる。限定的な解釈を望むものではないが、本発明のゴム臭気消臭用組成物では、まず、ヒドラジド化合物がゴム臭気を分解させ、これによりゴム臭が低減される。さらに、ゴム臭気分解物及び残存するゴムゴム臭気に対し、植物精油が中和あるいは相殺し、これにより、臭気濃度が低減して、ゴム臭気に対して優れた消臭効果が発揮されるものと推察される。
特に本発明のゴム臭気消臭用組成物は、ゴム臭気の中でもアルデヒド系の悪臭成分に対して有効に消臭効果を発揮することができる。
本発明のゴム臭気消臭用組成物は、ゴム臭気用消臭剤として好適に使用することができ、ゴム材料を使用した製造現場やタイヤの製造工場等で発生するゴム臭を低減するための使用に適している。
本発明のゴム臭気消臭用組成物が適用できるゴムの種類は特に限定されず、例えば、公知のゴム材料に広く適用することができる。中でも、タイヤ等の製造に使用されるゴムに好適に使用することができ、タイヤを製造するために使用される天然ゴム等に対して効果的に消臭することができる。
本発明は、下記第1工程及び第2工程をこの順に備えるゴム臭気の消臭方法をも包含することができる。
工程1:ヒドラジド化合物を含む第1液を噴霧する工程
工程2:パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する植物精油を含む第2液を噴霧する工程。
ここで、前記ヒドラジド化合物は、本発明のゴム臭気消臭用組成物におけるヒドラジド化合物と同様である。すなわち、工程1におけるヒドラジド化合物がカルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
工程1で使用する第1液は、本発明のゴム臭気消臭用組成物において、植物精油を含有しないことを除いては、本発明のゴム臭気消臭用組成物と同様である。また、工程2で使用する第2液は、本発明のゴム臭気消臭用組成物において、ヒドラジド化合物を含有しないことを除いては、本発明のゴム臭気消臭用組成物と同様である。
工程1及び工程2を備える消臭方法により、ゴム臭気を効果的に消臭することができる。具体的には、まず工程1で噴霧する第1液によってアルデヒド化合物等のゴム臭気が分解する。次いで、工程1で噴霧する第2液によって、工程1で生成したゴム臭気の分解物や残存するゴム臭気が中和あるいは相殺され、これにより、臭気濃度が低減する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
<有効成分>
ゴム臭気を消臭するための有効成分として、下記の各種化合物を準備した。
・カルボジヒドラジド(日本ファインケム社製「CDH」)
・パイン油(日本テルペン化学社製「パインオイルNT−20」)
・D−リモネン(塩野香料社製「D−LIMONENE」)
<界面活性剤>
・ノニオン性界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(第一工業製薬製「ノイゲンET135」)
・アニオン性界面活性剤:アルキル硫酸アステルトリエタノールアミン塩(第一工業製薬製「モノゲンT423S」)
(調製例1)
後掲の表1に示す配合割合で植物精油を調製した。具体的に、パイン油75質量%、及び、D−リモネン25質量%で構成される植物精油1を調製した。
(調製例2〜5)
パイン油、及び、D−リモネンの配合割合を後掲の表1に示す配合割合に変更したこと以外は調製例1と同様の方法で植物精油をそれぞれ調製した。調製例2〜5で得られた有効成分をそれぞれ植物精油2、植物精油3、植物精油11、及び、植物精油12とした。
Figure 2021137400
(実施例1)
後掲の表2に示すように、カルボジヒドラジドが10質量%、前記植物精油1が1質量%、前記ノニオン界面活性剤が1質量%、前記アニオン界面活性剤が1質量%、水が87質量%となる試験サンプル1を得た。具体的には、所定量の前記植物精油1と、前記ノニオン界面活性剤と、前記アニオン界面活性剤とを混合し、ラボディスパーで攪拌しながら水を少量ずつ添加することで溶液を得た。この溶液にさらに、カルボジヒドラジドを所定量添加することで試験サンプル1を得た。
(実施例2)
前記植物精油1を前記植物精油2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、試験サンプル2を得た。
(実施例3)
前記植物精油1を前記植物精油3に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、試験サンプル3を得た。
(実施例4)
後掲の表2に示す配合割合に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、試験サンプル4を得た。
(実施例5)
各成分を後掲の表2に示す配合割合に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、試験サンプル5を得た。
(実施例6)
各成分を後掲の表2に示す配合割合に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、試験サンプル6を得た。
(実施例7)
前記植物精油1を前記植物精油11に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、試験サンプル7を得た。
(実施例8)
前記有効成分1を前記有効成分12に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、試験サンプル8を得た。
(実施例9)
各成分を後掲の表2に示す配合割合に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、試験サンプル9を得た。
(比較例1)
各成分を後掲の表2に示す配合割合に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、試験サンプル10を得た。
(比較例2)
各成分を後掲の表2に示す配合割合に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、試験サンプル11を得た。
(評価方法)
各実施例で得られた試験サンプルの外観評価、ラボ消臭試験及びタイヤ工場での消臭試験を以下の手順で実施した。
<外観評価>
試験サンプルを−5℃、25℃及び50℃の恒温槽にそれぞれ保存し、24時間後の外観を目視観察した。
<ラボ消臭試験>
20L容量のテドラバッグ2袋に無臭空気を充填し、アセトアルデヒド(ナカライテスク製の試薬特級)又はイソバレルアルデヒド(ナカライテスク製の試薬特級)をそれぞれ6μL注入し、室温で1時間静置し、臭気を揮散させた。各テドラバッグ内の臭気を1L容量のテドラバッグにそれぞれに小分けし、このテドラバッグに水で30倍希釈した試験サンプルを100μL注入注した。この注入から10分後、1Lのテドラバッグ内のアルデヒド濃度又はイソバレルアルデヒド濃度を検知管で測定した。検知管(ガステック社製)の型式はアセトアルデヒドを92L、イソバレルアルデヒドを91Lとした。アルデヒド濃度を計測後、テドラバッグ内の臭気強度及び快不快度を、6名のパネラーによる官能評価により、下記評価基準により臭気判定した。
≪臭気強度≫
0:無臭
1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
2:何のにおいであるかわかる弱いにおい(検知閾値)
3:楽に感知できる臭い
4:強いにおい
5:強烈なにおい
≪快不快度≫
+4:極端に快
+3:非常に快
+2:快
+1:やや快
0:快でも不快でもない
−1:やや不快
−2:不快
−3:非常に不快
−4:極端に不快
<タイヤ工場での消臭試験>
ゴム加工工場にて発生する天然ゴム由来のゴム臭気を、排気ダクトを使って工場外に排気放出する際に、試験サンプルをダクト内へ噴霧し、噴霧前のダクト内の臭気(原臭)及び噴霧後の臭気(処理臭)を採取し、両者のアルデヒド濃度をHPLC法で測定することで、消臭効果を確認した。尚、アルデヒド濃度は、平成30年9月21日環境省告示78号「敷地境界線における濃度の測定−高速液体クロマトグラフ法」(別表第4 第3)に準拠した。また、臭指数及び臭気濃度は、臭気を無臭空気で希釈し、臭気を感じなくなる希釈倍数を示すもので、平成7年9月13日環境庁告示第63号「臭気指数の算定方法」に準拠して測定した値とした。試験サンプルは、実施例5で得られた試験サンプル5を水で30倍に希釈して調製した。また、排気臭気1m/分に対し、前記希釈した試験サンプルを二流体ノズルにより、1cc/分の割合でダクト内に噴霧した。
Figure 2021137400
表2には、各実施例及び比較例で得られた試験サンプルの配合割合と共に、外観評価の結果を示している。ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤が一定量含まれる場合は、有効成分の水への可溶化が起こりやすく、濁りが発生しにくいことがわかった。また、カルボジヒドラジドが20質量%未満である場合は、いずれの温度でも透明であった。
Figure 2021137400
表3には、各実施例及び比較例で得られた試験サンプルのラボ消臭試験の結果を示している。表3から、実施例で得られた試験サンプルは、臭気強度が比較例に比べて低減し、また快不快度も改善できていることがわかり、優れた消臭効果が認められた。特に、カルボジヒドラジドの含有割合が多い程、アセトアルデヒド及びイソバレルアルデヒドの濃度が低下傾向にあることがわかった。一方、カルボジヒドラジドの含有割合が多くても、臭気強度に顕著な差は見られなかった。
また、実施例1〜3と、実施例7,8との対比から、パイン油及びリモネンそれぞれを単独で使用すると、香料臭が勝るマスキングとなり、臭気強度が上昇することがわかったが、不快な臭いではなかった。これに対し、パイン油及びリモネンの両方を含む場合は、香料臭が緩和されると同時に新たな香りが創生され、この創生された香りがゴム臭に対して効果的に臭気中和効果が作用し、臭気強度の上昇が抑えられることがわかった。
以上より、ヒドラジド化合物と、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する植物精油は、ゴム臭気(特にアルデヒド化合物)に対して優れた消臭効果を発揮することができることがわかった。
Figure 2021137400
表4には、実施例5で得られた試験サンプルのタイヤ工場での消臭試験の結果を示している。表4から、実施例5で得られた試験サンプルを噴霧するとゴム臭気の臭気濃度が低下しているとがわかり、実機でも消臭効果が認められた。

Claims (7)

  1. ヒドラジド化合物と、植物精油とを含み、
    前記植物精油は、パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する、ゴム臭気消臭用組成物。
  2. 前記ヒドラジド化合物がカルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のゴム臭気消臭用組成物。
  3. 前記植物精油は、パイン油及びリモネンの両方を含有する、請求項1又は2に記載のゴム臭気消臭用組成物。
  4. さらにノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤と、水とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム臭気消臭用組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム臭気消臭用組成物を噴霧する工程を備える、ゴム臭気の消臭方法。
  6. ヒドラジド化合物を含む第1液を噴霧する第1工程、及び、
    パイン油及びリモネンの少なくとも一方を含有する植物精油を含む第2液を噴霧する第2工程をこの順に備える、ゴム臭気の消臭方法。
  7. 前記ヒドラジド化合物がカルボジヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6に記載のゴム臭気の消臭方法。
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