以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
図1は、調湿システム1を利用した建物(住宅)2の一例を概念的に示す側面図である。本実施形態の調湿システム1は、建物2の空間(本例では、居室3)を調湿するためのものである。本実施形態では、例えば、冬期において、調湿システム1が、居室3を換気しながら、空調及び加湿する態様が説明されるが、このような態様に限定されない。
本実施形態の調湿システム1は、調湿ユニット4、第1空気供給部5及び第2空気供給部6を含んで構成されている。さらに、本実施形態の調湿システム1は、第1空気排出部7、第2空気排出部8及び制御部9を含んで構成されている。図2は、調湿ユニット4の一例を示す分解斜視図である。図2では、調湿ユニット4の筐体17の一部を構成する蓋部17aが外された状態が示されている。
調湿ユニット4は、空気を調湿するためのものである。本実施形態の調湿ユニット4は、図1及び図2に示されるように、第1チャンバー11と、第2チャンバー12とを有している。本実施形態では、第1チャンバー11と、第2チャンバー12とが並列的に用いられている。
図2に示されるように、本実施形態では、第1チャンバー11及び第2チャンバー12が一体に形成されているが、これらが分解可能に形成されてもよい。また、調湿ユニット4には、第1チャンバー11及び第2チャンバー12以外に、他のチャンバー(例えば、図示しない第3チャンバーなど)が含まれてもよい。
第1チャンバー11は、第1入口13、第1出口14、第1空間15及び第1調湿エレメント16を含んで構成されている。第1空間15は、第1入口13と、第1出口14との間に設けられている。本実施形態の第1空間15は、筐体17によって区分されている。この筐体17には、調湿ユニット4をメンテナンスするための蓋部17aが設けられている。本実施形態の第1空間15の容積は、第2チャンバー12の第2空間23の容積と同一とされている。なお、第1空間15の容積と、第2空間23の容積とが、互いに異なるものでもよい。
本実施形態の筐体17は、直方体状に形成されており、断面矩形の箱状に形成されている。また、筐体17は、断熱材を用いて形成されてもよい。これにより、第1チャンバー11は、第1空間15とその外部とが断熱されるため、第1空間15内の空気の温度(ひいては、相対湿度(相対蒸気圧))の変動を最小限に抑えることができる。
第1入口13は、第1チャンバー11(本例では、第1空間15)に、空気を取り込むためのものである。第1入口13は、第1空間15の長手方向の一方側に設けられている。本実施形態の第1入口13は、一方の第1入口13aと、他方の第1入口13bとを含んでいる。これらの第1入口13a、13bには、相対湿度の異なる空気(図1に示した第1空気A1及び第2空気A2)が供給される。
第1出口14は、第1チャンバー11(本例では、第1空間15)内の空気を排出するためのものである。第1出口14は、第1空間15の長手方向の他方側に設けられている。本実施形態の第1出口14は、一方の第1出口14aと、他方の第1出口14bとを含んでいる。これらの第1出口14a、14bからは、相対湿度の異なる空気(図1に示した第4空気A4及び第5空気A5)が排出される。
第1調湿エレメント16は、第1空間15内の空気を調湿するための調湿材18が配されたものである。調湿材18は、相対湿度の高い空気から水蒸気を吸着しうるとともに、相対湿度の低い空気に自らが吸着した水蒸気を放出しうる吸放湿性能を有するものである。本実施形態の第1調湿エレメント16は、第1空間15内の空気の流れに沿うように、シート状に形成された複数の調湿材18が、間隔を空けて積層(例えば、ハニカム状やオニ段状に積層)されることによって形成される。このような第1調湿エレメント16は、湿気交換面積を効果的に増大させることができる。
調湿材18は、空気中の水蒸気を吸着しうるとともに、自らが吸着した水蒸気を空気中に放出しうる吸着材(図示省略)を含んで構成されている。吸着材としては、例えば、上記の特許文献1と同様のものが採用されうる。
第2チャンバー12は、第2入口21、第2出口22、第2空間23及び第2調湿エレメント24を含んで構成されている。第2空間23は、第2入口21と第2出口22との間に設けられている。本実施形態の第2空間23は、第1空間15と同様に、筐体17によって区分されており、第2空間23とその外部とが断熱されている。
第2入口21は、第2チャンバー12(本例では、第2空間23)に、空気を取り込むためのものである。第2入口21は、第1チャンバー11の第1入口13と同様に構成されており、一方の第2入口21aと、他方の第2入口21bとを含んで構成される。これらの第2入口21a、21bには、相対湿度の異なる空気(図1に示した第1空気A1及び第2空気A2)が供給される。
第2出口22は、第2チャンバー12(本例では、第2空間23)内の空気を排出するためのものである。第2出口22は、第1チャンバー11の第1出口14と同様に構成されており、一方の第2出口22aと、他方の第2出口22bとを含んで構成されている。これらの第2出口22a、22bからは、相対湿度の異なる空気(図1に示した第4空気A4及び第5空気A5)が排出される。
第2調湿エレメント24は、第2空間23内の空気を調湿するための調湿材18が配されたものである。本実施形態の第2調湿エレメント24は、空気の流れ方向の長さL2(図2に示す)が異なる点を除いて、第1調湿エレメント16と同一仕様で構成されている。
図1に示されるように、第1空気供給部5は、調湿ユニット4の第1チャンバー11及び/又は第2チャンバー12に、第1空気A1を供給するためのものである。第1空気A1は、後述の第2空気A2よりも相対湿度が高いものである。本実施形態の第1空気A1としては、外気である場合が例示される。このような第1空気(外気)A1は、冬期において、建物2内の空間(本例では、居室3)内の空気(室内空気C1)よりも温度が低い。このため、第1空気A1の相対湿度は、室内空気C1(第2空気A2)の相対湿度に比べて高い。
本実施形態の第1空気供給部5は、第1流路26と、第1切替手段27とを含んで構成されている。
本実施形態の第1流路26は、筒状に形成されたダクトによって形成されているが、このような態様に限定されない。第1流路26は、例えば、間仕切り壁(図示省略)で囲まれた空間等で構成されてもよい。本実施形態の第1流路26の上流側の端部は、屋外28に接続されている。また、第1流路26の下流側の端部は、第1切替手段27を介して分岐しており、第1チャンバー11の一方の第1入口13a及び第2チャンバー12の一方の第2入口21aにそれぞれ接続されている。このような第1流路26は、相対湿度が高い第1空気A1を、第1チャンバー11及び/又は第2チャンバー12に供給することができる。
第1切替手段27は、第1チャンバー11の一方の第1入口13a及び第2チャンバー12の一方の第2入口21aのいずれか一方に切り替えて、第1空気A1を供給可能な切換弁として構成されている。第1切替手段27は、制御部9に接続されており、予め定められた手順に基づいて、上記のような切り替えが行われる。
第2空気供給部6は、調湿ユニット4の第1チャンバー11及び/又は第2チャンバー12に、第1空気A1よりも相対湿度の低い第2空気A2を供給するためのものである。第2空気A2としては、第1空気A1よりも相対湿度が低い空気であれば、適宜採用されうる。本実施形態の第2空気A2には、後述の空気調和機31で空調(加熱)された相対湿度の低い空気が採用される。
本実施形態の第2空気供給部6は、空気調和機31と、第2流路32と、第2切替手段33とを含んで構成されている。
本実施形態の空気調和機31は、ヒートポンプ式である場合が例示される。空気調和機31は、建物2の内部に設置された室内機31aと、建物2の外部に設置された室外機(図示省略)とをセットとして含んでいる。室内機31aは、熱源チャンバー34の内に格納されている。空気調和機31は、冬期において、室内機31aで空調(加熱)された相対湿度の低い第2空気A2を吹き出すことができる。
熱源チャンバー34は、第1取込口35と、第2取込口36と、第1排出口37とを含んで構成されている。第1取込口35は、居室3の室内空気C1を取り込むためのものである。一方、第2取込口36は、外気(床下空気)C2を取り込むためのものである。これらの第1取込口35及び第2取込口36は、室内機31aの空気吸込口(図示省略)側に設けられている。これにより、室内機31aは、室内空気C1と新鮮な外気C2との混合気を空気吸込口から取り込んで、これらの混合気を加熱した相対湿度の低い第2空気A2を、空気吹出口(図示省略)から吹き出すことができる。
第1排出口37は、室内機31aの空気吹出口(図示省略)側に設けられている。これにより、熱源チャンバー34は、上記の混合気を加熱した相対湿度の低い第2空気A2を排出することができる。
本実施形態の第2流路32は、第1流路26と同様に、筒状に形成されたダクトによって形成されているが、例えば、間仕切り壁で囲まれた空間等で構成されてもよい。本実施形態の第2流路32の上流側の端部は、熱源チャンバー34の第1排出口37に接続されている。また、第2流路32の下流側は、第2切替手段33を介して分岐しており、第1チャンバー11の他方の第1入口13b及び第2チャンバー12の他方の第2入口21bにそれぞれ接続されている。このような第2流路32は、相対湿度が低い第2空気A2を、第1チャンバー11及び/又は第2チャンバー12に供給することができる。
第2流路32には、第2流路32の下流側を正圧(熱源チャンバー34内を負圧)にするための第1ファン40が設けられてもよい。このような第1ファン40は、熱源チャンバー34内の第2空気A2を、第1チャンバー11及び第2チャンバー12に効率よく供給することができる。なお、第1ファン40は、熱源チャンバー34の中に設けられてもよい。
第2切替手段33は、第1チャンバー11の他方の第1入口13b及び第2チャンバー12の他方の第2入口21bのいずれか一方に切り替えて、第2空気A2を供給可能な切換弁として構成されている。第2切替手段33は、制御部9に接続されており、予め定められた手順に基づいて、上記のような切り替えが行われる。
第1空気排出部7は、第1空気A1が調湿ユニット4(第1チャンバー11及び第2チャンバー12)を経由することによって相対湿度が低下した第4空気A4を、居室外(本実施形態では、小屋裏)38に排出するためのものである。本実施形態の第1空気排出部7は、第3流路41と、第3切替手段42とを含んで構成されている。
第3流路41は、第1流路26と同様に、筒状に形成されたダクトによって形成されているが、例えば、間仕切り壁で囲まれた空間等で構成されてもよい。第3流路41の上流側は、第3切替手段42を介して分岐しており、第1チャンバー11の一方の第1出口14a及び第2チャンバー12の一方の第2出口22aにそれぞれ接続されている。第3流路41の下流側の端部は、居室外(本実施形態では、小屋裏)38に接続されている。本実施形態の第3流路41には、第3流路41の上流側を負圧にするための第2ファン43が設けられるのが望ましい。このような第2ファン43は、第1チャンバー11又は第2チャンバー12内を負圧にして、第4空気A4を居室外38に効率よく排出するのに役立つ。
第3切替手段42は、第1チャンバー11の一方の第1出口14a及び第2チャンバー12の一方の第2出口22aのいずれか一方に切り替えて、第4空気A4を取り出し可能な切換弁として構成されている。第3切替手段42は、制御部9に接続されており、予め定められた手順に基づいて、上記のような切り替えが行われる。
第2空気排出部8は、第2空気A2が調湿ユニット4(第1チャンバー11及び第2チャンバー12)を経由することによって相対湿度が高められた第5空気A5を、建物2内の空間(居室3)に供給するためのものである。本実施形態の第2空気排出部8は、第4流路44と、第4切替手段45とを含んで構成されている。
本実施形態の第4流路44は、第1流路26と同様に、筒状に形成されたダクトによって形成されているが、例えば、間仕切り壁で囲まれた空間等で構成されてもよい。第4流路44の上流側は、第4切替手段45を介して分岐しており、第1チャンバー11の他方の第1出口14b及び第2チャンバー12の他方の第2出口22bにそれぞれ接続されている。第4流路44の下流側の端部は、建物2の空間(居室3)に接続されている。
第4切替手段45は、第1チャンバー11の他方の第1出口14b及び第2チャンバー12の他方の第2出口22bのいずれか一方に切り替えて、第5空気A5を取り出し可能な切換弁として構成されている。第4切替手段45は、制御部9に接続されており、予め定められた手順に基づいて、上記のような切り替えが行われる。
制御部9は、第1空気供給部5(本例では、第1切替手段27)及び第2空気供給部6(本例では、空気調和機31、第2切替手段33及び第1ファン40)を制御するためのものである。本実施形態では、制御部9によって、第1空気排出部7(第3切替手段42及び第2ファン43)、第2空気排出部8(第4切替手段45)も制御される。
制御部9は、CPU(中央演算装置)からなる演算部(図示省略)と、制御手順が予め記憶されている記憶部(図示省略)と、記憶部から制御手順を読み込む作業用メモリ(図示省略)とを含んで構成されている。
図3は、調湿システム1を用いた調湿方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、制御部9(図1に示す)に記憶されている制御手順に基づいて実施される。
図1及び図3に示されるように、制御部9は、先ず、空気調和機31の運転を開始して(ステップS1)、計時を開始する(ステップS2)。ステップS1では、図1に示されるように、制御部9が第1ファン40の運転を開始させてもよい。これにより、後述の第1モード及び第2モードでは、熱源チャンバー34内の第2空気A2が、第1チャンバー11又は第2チャンバー12に効率よく供給されうる。
次に、図1及び図3に示されるように、制御部9は、第1チャンバー11に第1空気A1を供給し、かつ、第2チャンバー12に第2空気A2を供給する第1モードを行う(ステップS3)。第1モードでは、第1空気供給部5から第1チャンバー11に第1空気A1が供給され、かつ、第2空気供給部6から第2チャンバー12に第2空気A2が供給される。図4は、第1モードの一例を説明する図である。
本実施形態の第1モード(ステップS3)では、制御部9(図1に示す)が、第1空気供給部5の第1切替手段27を切り替えることにより、第1流路26を介して、第1チャンバー11と屋外28(図1に示す)とを連通させる。これにより、第1モードでは、相対湿度の高い第1空気(外気)A1を、第1チャンバー11に供給することができ、第1調湿エレメント16(図2に示した調湿材18)に水蒸気を吸着させることができる。
さらに、本実施形態の第1モードでは、制御部9(図1に示す)が、第1空気排出部7の第3切替手段42を切り替えることにより、第3流路41を介して、第1チャンバー11と居室外38(図1に示す)とを連通させている。これにより、第1モードでは、第1空気A1の水蒸気が第1調湿エレメント16(調湿材18)に吸着されて、相対湿度が低下した第4空気A4が、第3流路41及び居室外38を介して、屋外28(図1に示す)に排出される。第1モードでは、制御部9が、第2ファン43を運転させるのが望ましい。これにより、第1モードでは、第1チャンバー11内を負圧にして、第4空気A4を屋外に効率よく排出することができる。
また、本実施形態の第1モードでは、制御部9(図1に示す)が、第2空気供給部6の第2切替手段33を切り替えることにより、第2流路32を介して、第2チャンバー12と空気調和機31(図1に示す)とを連通させる。これにより、第1モードでは、空気調和機31で空調された相対湿度の低い第2空気A2を、第2チャンバー12に供給することができ、第2調湿エレメント24(図2に示した調湿材18)に吸着している水蒸気を放出させることができる。
さらに、本実施形態の第1モードでは、制御部9(図1に示す)が、第2空気排出部8の第4切替手段45を切り替えることにより、第4流路44を介して、第2チャンバー12と建物2内の空間(図1に示した居室3)とを連通させている。これにより、第1モードでは、第2調湿エレメント24(図2に示した調湿材18)によって、第2空気A2の相対湿度が高められた第5空気A5が、第4流路44を介して、居室3に供給される。これにより、第1モードでは、夏期に比べて居室3の相対湿度が低くなる冬期において、居室3を暖房しつつ効果的に加湿することができる。
次に、図1及び図3に示されるように、制御部9は、予め定められた第1時間が経過したか否かを判断し(ステップS4)、結果が否定的である場合(ステップS4で、「N」)、ステップS3をループする。したがって、第1時間が経過するまで、第1モードが行われる。第1時間については、任意に設定されうるが、例えば、図4に示した第2チャンバー12の第2調湿エレメント24(図2に示す調湿材18)に吸着されている水蒸気が完全に放出されるまでの時間に設定されてもよい。
次に、ステップS4の結果が肯定的である場合(ステップS4で、「Y」)、制御部9は、これまでの計時をリセットし(ステップS5)、新たな計時を開始する(ステップS6)。
次に、図1及び図3に示されるように、制御部9は、第1チャンバー11に第2空気A2を供給し、かつ、第2チャンバー12に第1空気A1を供給する第2モードを行う(ステップS7)。第2モードでは、第1空気供給部5から第2チャンバー12に第1空気A1が供給され、かつ、第2空気供給部6から第1チャンバー11に第2空気A2が供給される。図5は、第2モードの一例を説明する図である。
本実施形態の第2モード(ステップS7)では、制御部9(図1に示す)が、第2空気供給部6の第2切替手段33を切り替えることにより、第2流路32を介して、第1チャンバー11と空気調和機31(図1に示す)とを連通させる。これにより、第2モードでは、空気調和機31で空調された相対湿度の低い第2空気A2を、第1チャンバー11に供給することができ、第1調湿エレメント16(図2に示した調湿材18)に吸着している水蒸気を放出させることができる。
さらに、本実施形態の第2モードでは、制御部9(図1に示す)が、第2空気排出部8の第4切替手段45を切り替えることにより、第4流路44を介して、第1チャンバー11と建物2内の空間(図1に示した居室3)とを連通させている。これにより、第2モードでは、第1調湿エレメント16(図2に示した調湿材18)によって、第2空気A2の相対湿度が高められた第5空気A5が、第4流路44を介して、居室3に供給される。これにより、第2モードでは、第1モードと同様に、居室3を暖房しつつ効果的に加湿することができる。
また、本実施形態の第2モード(ステップS7)では、制御部9(図1に示す)が、第1空気供給部5の第1切替手段27を切り替えることにより、第1流路26を介して、第2チャンバー12と屋外28(図1に示す)とを連通させる。これにより、第2モードでは、相対湿度の高い第1空気(外気)A1を、第2チャンバー12に供給することができ、第2調湿エレメント24(図2に示した調湿材18)に水蒸気を吸着させることができる。
また、本実施形態の第2モードでは、制御部9(図1に示す)が、第1空気排出部7の第3切替手段42を切り替えることにより、第3流路41を介して、第2チャンバー12と居室外38(図1に示す)とを連通させている。これにより、第2モードでは、第1空気A1の水蒸気が第2調湿エレメント24(図2に示した調湿材18)に吸着されて、相対湿度が低下した第4空気A4が、第3流路41及び居室外38を介して、屋外28(図1に示す)に排出される。第2モードでは、制御部9が第2ファン43を運転させることにより、第2チャンバー12内を負圧にして、上記の空気を屋外28に効率よく排出するのが望ましい。
次に、図1及び図3に示されるように、本実施形態の制御部9は、予め定められた第2時間が経過したか否かを判断し(ステップS8)、結果が否定的である場合(ステップS8で、「N」)、ステップS7をループする。したがって、第2時間が経過するまで、第2モードが行われる。第2時間は、任意に設定しうるが、例えば、図5に示した第1チャンバー11の第1調湿エレメント16(図2に示した調湿材18)に吸着されている水蒸気が完全に放出されるまでの時間に設定されるのが望ましい。
次に、ステップS8の結果が肯定的である場合(ステップS8で、「Y」)、図1に示した制御部9は、これまでの計時をリセットし(ステップS9)、新たな計時を開始する(ステップS2)。以後、例えば、居住者等による終了命令等があるまで、ステップS2以降が繰り返される。
このように、本実施形態の調湿システム1では、制御部9が、第1モード(図4に示す)と、第2モード(図5に示す)とが交互に行われるように、第1空気供給部5及び第2空気供給部6を制御することができる。これにより、調湿システム1は、空調及び加湿された第5空気A5を、建物2内の空間(居室3)に連続的に、かつ、効率よく供給することができる。したがって、本実施形態の調湿システム1によれば、冬期において、安定的に居室3を加湿(及び空調)することができる。
ところで、図1に示されるように、第2空気供給部6では、第1チャンバー11及び第2チャンバー12と、空気調和機31との間で接続される第2流路(ダクト)32の取り回し等によって、第2流路32の一部の圧力損失が大きくなる場合がある。このような第2流路32の圧力損失の部分的な増大は、第1チャンバー11及び第2チャンバー12に供給される空気(第2空気A2)の風量に、差異を生じさせる場合がある。なお、第2流路32の圧力損失は、第2流路32の上流側(本例では、第1ファン40)での第2空気A2の空気圧から、第2流路32の下流側(本例では、各チャンバー11、12の入口13b、21b)での第2空気A2の空気圧を減じることで求められる。
本実施形態では、第2流路32において、第2切替手段33と第2チャンバー12(他方の第2入口21b)とを接続している部分が直線状であるのに対して、第2切替手段33と第1チャンバー11(他方の第1入口13b)とを接続している部分が屈曲している。このような屈曲している部分では、直線状の部分に比べて、圧力損失が大きくなる。このため、空気調和機31から第2切替手段33までに供給される第2空気A2の風量が一定である場合には、第1チャンバー11に供給される第2空気A2の風量が、第2チャンバー12に供給される第2空気A2の風量に比べて小さくなる。
上記のように風量に差がある場合に、例えば、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24が同一仕様(即ち、圧力損失が同一)であると、供給される空気(本例では、第2空気A2)の風量に応じた吸放湿を行うことができなくなる。また、第1チャンバー11を経由して居室3に供給される第5空気A5は、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失によって、その風量がさらに低下し、居室3を十分に加湿(及び空調)することが困難になるおそれがある。なお、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24で生じる圧力損失は、各調湿エレメントを通過する前の空気圧から、各調湿エレメントを通過した後の空気圧を減じることで求められる。
本実施形態の調湿ユニット4は、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失と、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失とを異ならせている。図2に示されるように、本実施形態では、第1チャンバー11の第1空間15の容積と、第2チャンバー12の第2空間23の容積とが同一(本例では、断面積も同一)に設定されている。なお、第1空間15及び第2空間23の容積は、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24が配されていない状態で特定されるものとする。このため、第1調湿エレメント16の空気の流れ方向の長さL1と、第2調湿エレメント24の空気の流れ方向の長さL2とを異ならせることにより、それらの圧力損失を互いに異ならせることができる。
上述したように、本実施形態では、第1チャンバー11に供給される空気(本例では、図5に示した第2空気A2)の風量が、第2チャンバー12に供給される空気(本例では、図4に示した第2空気A2)の風量に比べて小さくなる傾向がある。このため、本実施形態では、空気の風量が小さくなる傾向のある第1チャンバー11において、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失を相対的に小さくしている。本実施形態では、図2に示した第1調湿エレメント16の長さL1が、第2調湿エレメント24の長さL2よりも小さく形成されることにより、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失を、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失よりも小さく設定される。
このように、本実施形態の調湿ユニット4(調湿システム1)は、第1チャンバー11及び第2チャンバー12に供給される空気(本例では、第2空気A2)の風量に応じて、圧力損失が異なる第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24が配されている。このため、本実施形態の調湿ユニット4は、第1チャンバー11及び第2チャンバー12に供給される空気を、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24に確実に通過させることができ、吸放湿を効果的に行うことができる。したがって、本実施形態の調湿ユニット4は、調湿性能を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失が、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失よりも小に設定されているため、第1チャンバー11を経由して居室3に供給される第5空気A5(図5に示す)の風量の低下を防ぐことができる。したがって、本実施形態の調湿システム1は、居室3を効果的に加湿(及び空調)することができる。
第1調湿エレメント16の長さL1(容積)と、第2調湿エレメント24の長さL2(容積)との合計長さ(合計容積)は、調湿対象の空間(図1に示した居室3)の大きさ(調湿性能)に応じて設定されるのが望ましい。これにより、調湿ユニット4(調湿システム1)は、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24において、空間(居室3)の加湿に必要な水蒸気を蓄えることができるため、居室3を効果的に加湿(及び空調)することができる。
上述したように、本実施形態では、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失が、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失よりも小である。したがって、第1調湿エレメント16の吸放湿量は、第2調湿エレメント24の吸放湿量よりも小さい。このため、制御部9(図1に示す)は、単位時間あたりにおいて、第1チャンバー11に、第2チャンバー12よりも少ない空気(第1空気A1及び第2空気A2)を供給するように、第1空気供給部5及び第2空気供給部6を制御してもよい。これにより、本実施形態の調湿システム1は、空気の供給に必要なエネルギー(消費電力)を抑えつつ、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24の吸放湿能力に応じて、空気の供給量を調節できるため、効率よく吸放湿することができる。
第1空気A1の単位時間あたりの供給量(m3/h)の調節は、制御部9が、第2ファン43の風量(回転数)を調節することによって行われうる。第2空気A2の供給量の調節は、制御部9が、空気調和機31及び第1ファン40の風量を調節することによって行われうる。
本実施形態では、単位時間あたりにおいて、第1チャンバー11に、第2チャンバー12よりも少ない空気(第1空気A1)が供給されるため、第1モードにおいて、第1調湿エレメント16の調湿材18が、水蒸気を吸着するのに必要な時間が長くなる傾向がある。このため、制御部9は、第1チャンバー11への第1空気A1の供給時間(図3に示した第1時間)を、第2チャンバー12への第1空気A1の供給時間(図3に示した第2時間)よりも大きくするように、第1空気供給部5及び第2空気供給部6を制御してもよい。これにより、第1調湿エレメント16の調湿材18は、第1空気A1の供給量が小さくても、水蒸気を確実に吸着することができるため、居室3を効果的に加湿(及び空調)することが可能となる。
一方、第2チャンバーへの第1空気A1の供給時間(図3に示した第2時間)が、第1チャンバー11への第1空気A1の供給時間(図3に示した第1時間)よりも短くなると、第2調湿エレメント24への水蒸気の吸着率が低下することが考えられる。しかしながら、本実施形態の制御部9は、単位時間あたりにおいて、第2チャンバー12に、第1チャンバー11よりも多い第1空気A1が供給されるため、第2調湿エレメント24に短時間で多く水蒸気を吸着させることができる。
本実施形態では、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失が、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失よりも小であり、第1調湿エレメント16に蓄え可能な水蒸気の量も、第2調湿エレメント24に蓄え可能な水蒸気の量に比べて小さい。このため、制御部9は、第1チャンバー11への第2空気A2の供給時間(図3に示した第2時間)を、第2チャンバー12への第2空気A2の供給時間(図3に示した第1時間)よりも小さくするように、第1空気供給部5及び第2空気供給部6を制御してもよい。これにより、本実施形態の調湿システム1は、第1調湿エレメント16及び第2調湿エレメント24にそれぞれ蓄えられる水蒸気の量に基づいて、第2空気A2に水蒸気が放出される時間が設定されるため、居室3を効率よく加湿(及び空調)することができる。
これまでの実施形態では、図1に示されるように、冬期において、調湿システム1が、居室3を換気しながら、空調及び加湿する態様が説明されたが、このような態様に限定されない。調湿システム1は、加湿をする必要のない時期において、居室3を換気するのに用いられてもよい。図6は、居室3を換気する第3モードの一例を説明する図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の調湿システム1では、これまでの実施形態と同様に、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失が、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失よりも小に設定されている。
この実施形態の調湿システム1は、第3空気供給部51を含んで構成されている。さらに、調湿システム1は、第3空気排出部52を含んで構成されている。
第3空気供給部51は、第1チャンバー11のみに、換気用の第3空気A3を供給するためのものである。第3空気A3は、換気に用いられるものであれば、適宜選択されうる。本実施形態の第3空気A3は、図1に示した外気(床下空気)C2である場合が例示される。この第3空気A3には、居室3の室内空気C1(図1に示す)が含まれてもよいし、空気調和機31によって空調された空気が供給されてもよい。
この実施形態の第3空気供給部51は、これまでの実施形態の第2空気供給部6(図1に示す)によって構成されており、図1に示した空気調和機31と、第2流路32と、第2切替手段33と、第1ファン40とを含んで構成されている。なお、空気調和機31は、停止されていても、運転されていてもよい。
一方、図6に示されるように、第3空気排出部52は、第1チャンバー11に供給された第3空気A3を、図1に示した建物2内の空間(居室3)に供給するためのものである。この実施形態の第3空気排出部52は、これまでの実施形態の第2空気排出部8(図1に示す)によって構成されており、第4流路44と、第4切替手段45とを含んで構成されている。
次に、居室3を換気する第3モードが説明される。第3モードでは、第3空気A3が、第3空気供給部51から第1チャンバー11に供給される。制御部9が、第3空気供給部51の第2切替手段33を切り替えることにより、第2流路32を介して、第1チャンバー11と熱源チャンバー34(図1に示す)とを連通させる。さらに、制御部9は、第3空気排出部52の第4切替手段45を切り替えることにより、第4流路44を介して、第1チャンバー11と、図1に示した建物2内の空間(居室3)とを連通させている。これにより、第3モードでは、換気用の第3空気A3が、第1チャンバー11を経由して、居室3に供給される。
この実施形態の調湿システム1では、これまでの実施形態と同様に、第1調湿エレメント16で生じる圧力損失が、第2調湿エレメント24で生じる圧力損失よりも小に設定されている。このため、第3モードでは、換気用の第3空気A3を、圧力損失が相対的に小さい第1調湿エレメント16が配される第1チャンバー11に経由させることにより、第2チャンバー12を経由させる場合に比べて、第3空気A3の風量を維持することができる。このため、第1ファン40(図1に示す)の風量を増加させる必要がなくなるため、第1ファン40の消費電力を抑えることが可能となる。
さらに、本実施形態の調湿システム1は、制御部9が、第1モード、第2モード及び第3モードが行われることにより、冬期での居室3の空調及び加湿、並びに、加湿を必要としない時期での居室3の換気を実現しうる。したがって、調湿システム1は、一年を通じて快適な空調環境を提供しうる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図1に示されるように、図2に示した調湿ユニットを含む調湿システムが、建物に設置された(実施例1〜3及び比較例)。実施例1〜3及び比較例では、ダクトの取り回しによって、第1チャンバーへの第2空気の風量が、第2チャンバーへの第2空気の風量よりも小さくなっている。
実施例1〜3の調湿ユニットは、第1調湿エレメントの長さL1を、第2調湿エレメントの長さL2よりも小さくすることで、第1調湿エレメントで生じる圧力損失を、第2調湿エレメントで生じる圧力損失よりも小さくしている。
一方、比較例は、第1調湿エレメントの長さL1と第2調湿エレメントの長さL2とを同一にして、第1調湿エレメントで生じる圧力損失と、第2調湿エレメントで生じる圧力損失とが同一にされている。さらに、比較例の第1調湿エレメントの長さL1と第2調湿エレメントの長さL2との和は、実施例1〜3の第1調湿エレメントの長さL1と第2調湿エレメントの長さL2との和の半分に設定されている。
実施例1〜3及び比較例の調湿システムでは、第1チャンバーに第1空気を供給し、かつ、第2チャンバーに第2空気を供給する第1モードと、第1チャンバーに第2空気を供給し、かつ、第2チャンバーに第1空気を供給する第2モードとが交互に行われた。
実施例1及び比較例の調湿システムでは、第1モード及び第2モードにおいて、第1チャンバー及び第2チャンバーに供給される第1空気について、単位時間あたりの供給量が同一に設定された。さらに、実施例1及び比較例では、第1チャンバーへの第1空気の供給時間(第1時間)と、第2チャンバーへの第1空気の供給時間(第2時間)とが同一に設定された。
実施例2及び実施例3の調湿システムでは、単位時間あたりにおいて、第1チャンバーに、第2チャンバーよりも少ない第1空気が供給された。実施例2では、実施例1及び比較例と同様に、第1チャンバーへの第1空気の供給時間(第1時間)と、第2チャンバーへの第1空気の供給時間(第2時間)とが同一に設定された。一方、実施例3では、第1チャンバーへの第1空気の供給時間(第1時間)が、第2チャンバーへの第1空気の供給時間(第2時間)よりも大きく設定された。これにより、実施例3では、第1チャンバーへの第2空気の供給時間(第2時間)が、第2チャンバーへの第2空気の供給時間(第1時間)よりも小さく設定された。
そして、実施例1〜3及び比較例について、居室の加湿量(%RH)が計算された。なお、加湿量は、予め定められた外気条件において、調湿システム稼働時に測定された居室の相対湿度(%RH)から、調湿システム未稼働時に測定された居室の相対湿度(%RH)を減じることによって求められた。また、調湿システム稼働時の相対湿度は、120分間(第1モード及び第2モードを1回実施中)に、複数回測定された相対湿度の平均値である。共通仕様は、次のとおりである。
第1空気(外気):
温度:5℃
相対湿度:60%RH
第2空気:
温度:35℃
相対湿度:14〜15%RH
第1チャンバー及び第2チャンバーへの供給量:430m3/h
テストの結果が、表1に示される。
実施例1〜3は、ダクトの取り回しに起因する第1チャンバー及び第2チャンバーへの空気の風量の差異に応じて、第1調湿エレメントで生じる圧力損失が、第2チャンバーの第2調湿エレメントで生じる圧力損失よりも小さく設定されている。このため、実施例1〜3は、比較例に比べて、加湿量を大きくすることができ、調湿性能を向上させることができた。
また、実施例2及び実施例3は、実施例1とは異なり、単位時間あたりにおいて、第1チャンバーに、第2チャンバーよりも少ない第1空気が供給されるため、第1調湿エレメント及び第2調湿エレメントの吸放湿能力に応じて、空気の供給量を調節できた。これにより、実施例2及び実施例3は、実施例1に比べて、調湿性能を向上させることができた。
さらに、実施例3は、実施例2とは異なり、第1チャンバーへの第1空気の供給時間(第1時間)を、第2チャンバーへの第1空気の供給時間(第2時間)よりも大きく設定されている。このため、実施例3は、第1空気の供給量が少ない第1チャンバーにおいて、水蒸気を確実に吸着させることができた。さらに、実施例3は、実施例2とは異なり、第1チャンバーへの第2空気の供給時間(第2時間)を、第2チャンバーへの第2空気の供給時間(第1時間)よりも小さく設定されている。このため、実施例3は、第1調湿エレメント及び第2調湿エレメントにそれぞれ蓄えられる水蒸気の量に基づいて、第2空気に水蒸気を放出することができた。したがって、実施例3は、実施例2に比べて、調湿性能を向上させることができた。