JP2021134096A - 酸化物焼結体とその製造方法およびスパッタリングターゲット - Google Patents

酸化物焼結体とその製造方法およびスパッタリングターゲット Download PDF

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能之 阿部
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Abstract

【課題】連続成膜が可能なスパッタリングターゲットまたはイオンプレーティングタブレット用の酸化物焼結体とその製造方法およびスパッタリングターゲットを提供する。【解決手段】この酸化物焼結体は、Bi、V、Co、酸素を含有し、Biの含有量がBi/(V+Co)原子数比で1.05〜1.30、Coの含有量がCo/(V+Co)原子数比で0.01〜0.10、かつ、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相が含まれることを特徴とする。この酸化物焼結体にはBi成分が過剰に含まれ、該焼結体から作製されターゲットを用いて光触媒機能を有するBi(V,Co)O4膜を製造する際、成膜時の真空中、成膜された上記膜から蒸気圧の高い酸化ビスマス成分が揮発しても、焼結体から過剰に含まれるBi成分が連続供給されるため、Biが欠損されない化学量論組成のBi(V,Co)O4膜を連続して製造することが可能となる。【選択図】なし

Description

本発明は、ビスマスと他の金属との酸化物膜をスパッタリング法若しくはイオンプレーティング法で製造する際に使用されるスパッタリングターゲット用若しくはイオンプレーティングタブレット用の酸化物焼結体に係り、特に、連続成膜が可能なスパッタリングターゲット用若しくはイオンプレーティングタブレット用の酸化物焼結体に関する。
太陽光エネルギーを有効に利用して水から水素や酸素を作り出す光触媒の開発が急がれている。中でもBiVO4(バナジウム酸ビスマス)やBi(V,Co)O4は、可視光照射下において、水を効率よく分解して酸素を発生させる光触媒として注目されている。
これ等の光触媒は、例えば、粉末を水に分散させた状態にして利用され、粉末を金属基板に転写し被膜(光触媒膜)にして利用され、焼結体形状に加工し光触媒シートにして利用されている。尚、光触媒は、一般に、その結晶面が欠陥の少ない綺麗な状態に形成されていると高活性を示すと言われている。
ところで、被膜を製造する方法として、化学的気相成長法(CVD法)や物理的気相成長法(PVD法)の技術が、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、半導体等の製造分野で構築されている。また、PVD法の中で、スパッタリング法は、大面積で均一な堆積膜の製造方法として有用であり、真空中で発生させたプラズマを利用して高品質かつ結晶性に優れた堆積膜を製造できるため、上記製造分野において広範囲に用いられている。
そして、特許文献1には、ビスマスと他の金属との酸化物[例えば、上記BiVO4やBi(V,Co)O4等]膜がコーティングされた基材を製造する方法として、スパッタリング技術により酸化物膜をコーティングする手法が開示され、例えば、BiVO4粉末から成る成形体を焼成して得られた酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして使用するスパッタリング技術が開示されている(特許文献1の実施例参照)。
しかし、BiVO4粉末から成る成形体を焼成して得られた酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして使用する特許文献1に記載のスパッタリング技術では、BiVO4膜を連続して製造することが難しく、化学量論組成からビスマス原子が欠損したコーティング(堆積)膜が製造されてしまい、コーティング(堆積)膜の光触媒性能を十分に発揮させることが困難になる問題が存在した。
特表2012−532985号公報(段落0033−0038参照)
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、ビスマスと他の金属との酸化物[Bi(V,Co)O4]膜をスパッタリング法若しくはイオンプレーティング法で製造する際に使用されるスパッタリングターゲット用若しくはイオンプレーティングタブレット用の酸化物焼結体であって、化学量論組成からビスマス原子が欠損されることなく連続して成膜が可能なスパッタリングターゲット用若しくはイオンプレーティングタブレット用の酸化物焼結体とその製造方法を提供し、かつ、該酸化物焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットを提供することにある。
そこで、特許文献1に記載のスパッタリング技術において、化学量論組成からビスマス原子が欠損したコーティング(堆積)膜が製造されてしまう原因を本発明者が鋭意分析したところ、酸化ビスマス成分の蒸気圧が関与していることを発見するに至った。すなわち、酸化ビスマス成分の蒸気圧は高いため、成膜時における真空中、スパッタリング成膜されたコーティング[上記BiVO4やBi(V,Co)O4等]膜から酸化ビスマス成分が揮発してしまい、化学量論組成からビスマス原子が欠損したコーティング(堆積)膜が製造されるためであった。そこで、本発明では、酸化物焼結体にビスマス成分を過剰に含ませる手法を採用することで上記課題を解決している。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
ビスマス、バナジウム、コバルト、酸素を含有し、かつ、ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.05〜1.30、コバルトの含有量がコバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比で0.01〜0.10であると共に、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相が含まれることを特徴とし、
第2の発明は、
第1の発明に記載の酸化物焼結体において、
酸化ビスマス相が含まれないか、酸化ビスマス相が含まれてもその粒径が1μm未満であることを特徴とし、
また、第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の酸化物焼結体において、
酸化コバルト相が含まれないか、酸化コバルト相が含まれてもその粒径が1μm未満であることを特徴とする。
次に、本発明に係る第4の発明は、
ビスマス原料粉末とバナジウム原料粉末およびコバルト原料粉末を混合、粉砕し、造粒すると共に、得られた造粒粉を加圧成形し、かつ、得られた成形体を焼成して第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の酸化物焼結体を製造する方法において、
上記ビスマス原料粉末とバナジウム原料粉末およびコバルト原料粉末の平均粒径が1μm以下であることを特徴とし、
第5の発明は、
スパッタリングターゲットにおいて、
第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の酸化物焼結体を加工して得られることを特徴とするものである。
本発明に係る酸化物焼結体によれば、
ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.05〜1.30、コバルトの含有量がコバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比で0.01〜0.10であると共に、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相が含まれているため、
BiVO4粉末等から成る成形体を焼成して製造される特許文献1の酸化物焼結体に較べてビスマス成分が過剰に含まれている。
従って、成膜時における真空中、スパッタリング成膜されたBi(V,Co)O4膜から酸化ビスマス成分が揮発しても、酸化物焼結体から過剰に含まれるビスマス成分を供給し続けることができるため、ビスマス原子が欠損されないBi(V,Co)O4膜を連続して製造することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(1)スパッタリング法
スパッタリング法では、一般に、約10Pa以下の雰囲気ガス圧の下、被成膜体である基板を陽極とし、膜の構成金属を含む酸化物焼結体で作製されたスパッタリングターゲット(以下、ターゲットと略称する場合がある)を陰極とし、これ等の間にグロー放電を起こさせることでアルゴンプラズマを発生させ、かつ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させて弾き飛ばされる粒子(スパッタ粒子)を上記基板上に堆積させて薄膜が形成される。
ターゲット用カソード(陰極)の背面に磁石を配置し、ターゲット表面に出る磁場の効果により濃いプラズマ領域を作り、アルゴンイオンの発生量を増加させて成膜速度を高めたマグネトロンスパッタリング法が工業的には良く用いられている。マグネトロンスパッタリング法では、磁場で形成される濃いプラズマ領域直下のターゲット表面にアルゴンイオンが最も多く照射されて消耗する部分となり、消耗された部分は「エロージョン」と呼ばれている。被成膜体である基板上に飛ばされるスパッタ粒子の組成は、一般に、ターゲット表面の上記「エロージョン」部の組成と一致している。また、基板を非加熱の状態で成膜する場合もあるが、基板を加熱した状態で成膜する場合もある。良質の結晶膜を製造するには基板を加熱する場合が多い。
また、スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いる方法は「高周波スパッタリング法」、直流プラズマを用いる方法は「直流スパッタリング法」という。一般に、「直流スパッタリング法」は「高周波スパッタリング法」に較べて成膜速度が速く、電源設備が安価で、成膜操作が簡単である等の理由から工業的に広範に利用されている。但し、「高周波スパッタリング法」は絶縁性のスパッタリングターゲットでも成膜可能であるのに対し、「直流スパッタリング法」では導電性のスパッタリングターゲットを用いる必要がある。尚、マグネトロンを用いた場合、「直流マグネトロンスパッタリング法」、「高周波マグネトロンスパッタリング法」と呼ばれている。
(2)酸化物焼結体
スパッタリング法による酸化物膜の成膜(製造)では、一般に、堆積膜の構成金属を含む酸化物焼結体が原料のスパッタリングターゲットとして使用され、真空中で発生させたアルゴンイオンを電界で加速させて原料(スパッタリングターゲット)に叩きつけて酸化物焼結体の構成原子をスパッタリング粒子としてはじき飛ばし、スパッタリングターゲットの正面に配置された基板上にこれ等スパッタ粒子を堆積させる。また、酸化物膜の成膜(製造)では、雰囲気ガスに酸素ガスを添加してもよい。
Bi(V,Co)O4膜をスパッタリング法で製造する場合、500℃以上に加熱された基板上に堆積させることが結晶膜を得るためには必要である。しかし、酸化ビスマス成分は上述したように蒸気圧が高いため、成膜時における真空中、成膜された堆積膜から酸化ビスマス成分が揮発し易く、化学量論組成からビスマス原子が欠損した堆積膜が製造されてしまい、光触媒性能を十分に発揮させることが困難になることがある。
これを回避するには、ビスマス成分を過剰に含む酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして使用することが有効である。すなわち、Bi(V,Co)O4膜を製造する場合、スパッタリング成膜時において、加熱基板へバナジウムとコバルトの総和に対してビスマスが過剰に供給され続けても、ビスマスの過剰分は基板から揮発していくため、Bi(V,Co)O4膜を製造することができる。
そして、本発明に係る酸化物焼結体は、ビスマス、バナジウム、コバルト、酸素を含有し、かつ、ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.05〜1.30、コバルトの含有量がコバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比で0.01〜0.10であると共に、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相が含まれることを特徴とする。
ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.05未満の場合、特許文献1に記載のスパッタリング技術と同様、ビスマス原子が欠損した堆積膜が形成されてしまう弊害があり、他方、ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.30を超える場合、Bi4211やBi4(V,Co)211等の第2相が生成され易くなり、単相のBi(V,Co)O4膜が得られなくなる弊害がある。また、コバルトの含有量がコバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比で0.10を超えた場合、製造された被膜の光触媒特性が劣ってしまう弊害がある。
本発明の酸化物焼結体は、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相で構成されていることが重要である。ここで、シーライト型(Scheelite-type)結晶構造の結晶相として、例えば、BiVO4結晶相若しくはBi(V,Co)O4結晶相が挙げられ、オーリビリアス型(Aurivillius-type)結晶構造の結晶相として、例えば、Bi4211結晶相若しくはBi4(V,Co)211結晶相が挙げられる。また、BiVO4結晶相やBi4(V,Co)211結晶相は正方晶、単斜晶若しくはこれ等混合体でもよい。
そして、本発明の酸化物焼結体において、シーライト型結晶構造のBiVO4結晶相若しくはBi(V,Co)O4結晶相に、オーリビリアス型結晶構造のBi4211結晶相若しくはBi4(V,Co)211結晶相を混在させた構造とすることで、酸化物焼結体全体のBi含有量をBi(V,Co)O4膜に対して過剰状態にすることができる。
また、本発明に係る酸化物焼結体に酸化ビスマス相が含まれる場合、上述したように酸化ビスマス成分は蒸気圧が高いことから、成膜時における真空下、プラズマにより酸化物焼結体が加熱されると酸化ビスマス成分は揮発し易いため、酸化物焼結体(ターゲット)の組成変化が生じてしまい、一定組成のBi(V,Co)O4膜を得ることができない。これに対し、オーリビリアス型のBi4211結晶相やBi4(V,Co)211結晶相は、その複合化合物における格子の一つとしてBiイオンが占有されているため、成膜時における真空中、プラズマにより加熱されても熱安定性が良好なことから酸化物焼結体の組成を維持することが可能となる。また、これ等結晶相の粒子が均一に混ざった形で酸化物焼結体を形成していることが重要である。酸化物焼結体をこのような相構成にすることで、長時間、スパッタリング成膜に使用しても、プラズマ加熱による焼結体表面のビスマス減少を小さく抑制できるため、被成膜体である基板上に一定組成のスパッタ粒子を堆積させることができる。
ここで、本発明の酸化物焼結体を構成するシーライト型(Scheelite-type)結晶構造の結晶相とオーリビリアス型(Aurivillius-type)結晶構造の結晶相は、完全な化学量論組成である必要はない。例えば、BiVO4結晶相、Bi4211結晶相、Bi(V,Co)O4結晶相、Bi4(V,Co)211結晶相は完全な化学量論組成でなくてもよい。すなわち、ビスマス/バナジウムの原子数比やビスマス/(バナジウム+コバルト)の原子数比が化学量論比からずれていてもよく、酸素欠損が含まれていてもよい。これ等の組成ずれによってむしろ良好な導電性を持たせて安定したスパッタリング成膜を行うためには、酸素欠損が含まれている方が好ましい。
ところで、本発明に係る酸化物焼結体にオーリビリアス型のBi4(V,Co)211結晶相が含まれているにも関わらず、スパッタリング法で製造される堆積膜がBi(V,Co)O4膜になるのは以下の理由による。
すなわち、スパッタリングにより酸化物焼結体(ターゲット)からはじき飛ばされる粒子は、ターゲットを構成する結晶相がBi(V,Co)O4とBi4(V,Co)211であっても、酸化物焼結体(ターゲット)を構成する原子はBi、V、Co、Oであるため、これ等がターゲット正面に配置された基板上に到達して所定の化合物を形成し直すからであり、酸化物焼結体のビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比、および、コバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比を保てばBi(V,Co)O4膜を得ることができる。
本発明に係る酸化物焼結体は、酸化ビスマス相が含まれないことが最も好ましいが、酸化ビスマス相が含まれていてもその粒径が1μm未満であれば問題ない。また、酸化ビスマス相が含まれている場合、酸化ビスマス相の粒径は500nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下である。尚、酸化物焼結体中に酸化ビスマス相が含まれ、かつ、酸化ビスマス相の粒径が1μm以上である場合、酸化ビスマスの蒸気圧が高いため、酸化物焼結体の表面がプラズマにより加熱されると酸化物焼結体から短時間で酸化ビスマスが昇華してしまい、酸化物焼結体におけるビスマスの適度な過剰状態を維持できなくなる。同様に、本発明に係る酸化物焼結体は、酸化コバルト相が含まれないことが最も好ましいが、酸化コバルト相が含まれていてもその粒径が1μm未満であれば問題ない。尚、粒径1μm以上の酸化コバルト相が酸化物焼結体中に含まれた場合、該酸化物焼結体(ターゲット)が連続して使用されると酸化コバルト相に掘り残りが生じて突起が形成され易く、アーキングの原因になってBi(V,Co)O4膜を安定して製造することが困難となる。そして、本発明に係る酸化物焼結体においては、その三重点に存在する酸化ビスマス相や酸化コバルト相の粒径が1μm未満あるため、酸化ビスマス相や酸化コバルト相が存在していても問題はない。通常、このような相は微量であるため非晶質である場合が多い。
(3)酸化物焼結体の製造方法
本発明に係る酸化物焼結体を製造するには、ビスマス原料粉末とバナジウム原料粉末およびコバルト原料粉末を混合、粉砕した後、造粒し、得られた造粒粉を加圧成形し、かつ、得られた成形体を大気中で焼成して得ることができる。
そして、上記ビスマス原料粉末にはBi23等の酸化物粉末、(BiO)2CO3等の炭酸化合物粉末を用いることができ、バナジウム原料粉末にはV25等の酸化物粉末を用いることができ、また、コバルト原料粉末にはCoO等の酸化物粉末、CoCO3等の炭酸塩粉末を用いることができる。
また、これ等の原料粉末は平均粒径が1μm以下であることが好ましい。原料粉末の粒径が1μmを超えた場合、得られる酸化物焼結体に粒径1μm以上の酸化ビスマス相や酸化コバルト相が含まれてしまうことがある。粒径1μm以上の酸化ビスマス相が含まれた場合、酸化ビスマスの蒸気圧が高いため、スパッタリング中に酸化物焼結体の表面がプラズマにより加熱されると酸化物焼結体から短時間で酸化ビスマスが昇華して酸化物焼結体におけるビスマスの過剰状態を維持することが困難となり、結果的に一定組成のBi(V,Co)O4膜を安定して製造できなくなる。また、粒径1μm以上の酸化コバルト相が含まれる場合、酸化物焼結体(ターゲット)の連続使用により酸化コバルト相に掘り残りによる突起が形成されてしまい、結果的に一定組成のBi(V,Co)O4膜を安定して製造できなくなる。
次に、上記造粒粉を得るための混合、粉砕条件は、造粒粉の粒径に留意して適宜定めることができる。また、造粒粉を得るための設備は、公知のボールミル、ビーズミル、アトライター等の混合攪拌装置を用いることができる。
また、造粒粉の加圧成形には、金型やラバー等に造粒紛を充填し、一軸プレスや冷間静水圧プレスで成形することができる。
そして、得られた成型体を、大気中、700℃以上の温度で焼成することにより本発明に係る酸化物焼結体を製造することができる。焼成時における雰囲気は、大気に酸素を添加した雰囲気としてもよい。
得られた酸化物焼結体は、X線回折測定により酸化物焼結体に含まれる結晶相を同定することができる。所望の結晶相が得られるように、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気、降温速度を適宜選択することができる。
(4)スパッタリングターゲット
得られた酸化物焼結体を加工してスパッタリングターゲットを製造するには、使用するスパッタリングカソードに合致した大きさに酸化物焼結体を裁断し、かつ、裁断された酸化物焼結体のスパッタリング面(エロージョンが形成される面)を砥石で研磨する。そして、研磨された酸化物焼結体を銅等で形成されたバッキングプレートに金属インジウム等を用いてボンディングすることでスパッタリングターゲットを製造することができる。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
(酸化物焼結体の製造)
平均粒径が1μm以下のBi23粉末、平均粒径が1μm以下のV25粉末、および、平均粒径が1μm以下のCoO粉末を原料粉末とし、ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.05、コバルトの含有量がコバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比で0.05[以下、ビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比、および、コバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比を「焼結体作製時の仕込組成」と呼ぶ]となる割合で上記Bi23粉末とV25粉末およびCoO粉末を調合し、かつ、樹脂製ポットに入れて湿式ボールミルで混合した。この際、硬質ZrO2ボールを用い、混合時間を18時間とした。
次に、混合後スラリーを取り出し、濾過、乾燥、造粒し、得られた造粒粉を冷間静水圧プレスで3ton/cm2の圧力を掛けて成形した。
そして、得られた成形体を以下のようにして焼成した。
炉内容積0.1m3当たり5リットル/分の割合で酸素を焼成炉内の大気に導入する雰囲気で、上記成形体を、900℃で3時間焼成して酸化物焼結体を製造した。この際、1℃/分で昇温し、焼成後における冷却の際は酸素の導入を止め、700℃までを10℃/分で降温した。
(酸化物焼結体の分析)
得られた酸化物焼結体の破材を粉砕して以下の分析を実施した。
まず、ICP発光分光法にて酸化物焼結体の組成分析を行ったところ、上記仕込組成と同じ組成の酸化物焼結体が得られていることを確認した。
また、酸化物焼結体のX線回折(XRD)測定を実施したところ、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相に起因する回折ピークのみが観察され、酸化ビスマス結晶相は観察されなかった。
次に、酸化物焼結体の微細組織分析として、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)搭載の走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、電子線回折による分析を行ったところ、酸化物焼結体を構成している結晶相はBi(V,Co)O4結晶相とBi4(V,Co)211結晶相であることが分かった。また、微細組織分析においては、酸化物焼結体の三重点や粒界に非晶質である酸化ビスマス相は確認されなかった。
これ等の結果を以下の表1に示す。
(スパッタリングターゲットの製造)
次に、得られた酸化物焼結体を、直径152mm、厚み5mmの大きさに裁断し、かつ、裁断された酸化物焼結体のスパッタリング面(エロージョンが形成される面)をカップ砥石で研磨した後、研磨された酸化物焼結体を、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングした。
そして、上記手順により同一組成のスパッタリングターゲットを2枚製造し、以下の「エロージョン部組成」および「堆積膜組成」の各分析用に供した。
(スパッタリング成膜試験)
2枚のスパッタリングターゲットを用いた成膜試験は以下の手順で個別に実施した。
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置における真空チャンバーの非磁性体ターゲット用カソード(陰極)に上記スパッタリングターゲットを取り付けた。
また、この直流マグネトロンスパッタリング装置は、ターゲット中心の直上70mm離れた位置に加熱機能付の基板ホルダーが装備されており、この基板ホルダーに厚さ1mmで50mm×50mmの石英ガラス基板を取り付けた。
次いで、真空チャンバーを10×10-4Pa以下まで真空引きしてから、純度99.9999重量%のArガスと、Arガスに対し1%となる割合でO2ガスを導入し、ガス圧が0.5Paとなるようガス流量と真空排気速度を制御した。
そして、上記石英ガラス基板を600℃まで加熱してから、ターゲットと基板間に直流300Wを投入して直流プラズマを発生させ、石英ガラス基板上に1200nmの堆積膜が得られるまでスパッタリング成膜を実施した。
上記手順により、同一組成のスパッタリングターゲット2枚を用い、ターゲットへの積算投入電力が「0.15kWh」と「10.0kWh」の各時点における石英ガラス基板上の堆積膜組成[上記「堆積膜組成」すなわちBi/(V+Co)原子数比、および、Co/(V+Co)原子数比]と、スパッタリングターゲットにおけるエロージョン部分の焼結体組成(上記「エロージョン部組成」すなわちBi/(V+Co)原子数比)をICP発光分光法にて測定した。
これ等の結果を表1に示す。
Figure 2021134096
(測定結果)
石英ガラス基板上に成膜された堆積膜の組成は、「0.15kWh」と「10.0kWh」の何れにおいてもBi/(V+Co)原子数比が1.0に近かった。そして、スパッタリングターゲットのエロージョン部は、積算投入電力が「10.0kWh」の時点においてもBi/(V+Co)原子数比は大きく変化していない。これは、VサイトをCoが置換したBi(V,Co)O4結晶相とBi4(V,Co)211結晶相とで構成された酸化物焼結体によりスパッタリングターゲットを作製したからである。
また、石英ガラス基板上に成膜された堆積膜の結晶構造をX線回折(XRD)測定により分析した結果、積算投入電力が「0.15kWh」と「10.0kWh」の何れにおいてもBi(V0.95Co0.05)O4膜が単相の形で得られていた。このことから、実施例1に係る酸化物焼結体を用いて作製されたスパッタリングターゲットを使用して成膜を行うと、長時間連続して使用しても、化学量論組成に近いBi(V0.95Co0.05)O4膜を安定して製造することが可能となる。
[実施例2]
(酸化物焼結体の製造)
Bi/(V+Co)原子数比で1.20、および、Co/(V+Co)原子数比で0.10となる割合(表1の「焼結体作製時の仕込組成」欄参照)で、Bi23粉末とV25粉末およびCoO粉末を調合した以外は、実施例1と同じ手順で酸化物焼結体を製造した。
(酸化物焼結体の分析)
得られた実施例2に係る酸化物焼結体の破材を粉砕して実施例1と同様の分析を実施したところ、仕込組成と同じ元素組成の焼結体が得られていることを確認した。
また、実施例2に係る酸化物焼結体のX線回折(XRD)測定を実施したところ、上記Bi(V,Co)O4結晶相とBi4(V,Co)211結晶相に起因する回折ピークのみが観察され、酸化ビスマス結晶相は観察されなかった。
更に、酸化物焼結体の微細組織分析を実施したところ、酸化物焼結体の三重点や粒界において非晶質の酸化ビスマス相(粒径は20nm程度)の存在がSEM−EDXによる微細構造観察と局所組成分析から確認された。
(スパッタリング成膜試験)
実施例1と同様、同一組成のスパッタリングターゲット2枚を用い、ターゲットへの積算投入電力が「0.15kWh」と「10.0kWh」の各時点における石英ガラス基板上の堆積膜組成[上記「堆積膜組成」すなわちBi/(V+Co)原子数比、および、Co/(V+Co)原子数比]と、スパッタリングターゲットにおけるエロージョン部分の焼結体組成(上記「エロージョン部組成」すなわちBi/(V+Co)原子数比)をICP発光分光法にて測定した。これ等の結果も表1に示す。
(測定結果)
石英ガラス基板上に成膜された堆積膜の組成は、「0.15kWh」と「10.0kWh」の何れにおいてもBi/(V+Co)原子数比が1.0に近かった。
また、スパッタリングターゲットのエロージョン部は、積算投入電力が「10.0kWh」の時点においてもBi/(V+Co)原子数比は大きく変化していない。これは、VサイトをCoが置換したBi(V,Co)O4結晶相とBi4(V,Co)211結晶相とで構成された酸化物焼結体によりスパッタリングターゲットを作製したからである。
また、石英ガラス基板上に成膜された堆積膜の結晶構造をX線回折(XRD)測定により分析した結果、「0.15kWh」と「10.0kWh」の何れにおいてもBi(V,Co)O4膜が単相の形で得られていた。
以上のことから、実施例2に係る酸化物焼結体を用いて作製されたスパッタリングターゲットを使用して成膜を行うと、長時間連続して使用しても、化学量論組成に近いBi(V,Co)O4膜を安定して製造することが可能となる。
[比較例1]
(酸化物焼結体の製造と分析)
Bi23原料として平均粒径15μmの粉末を用い、ボールミル混合時間を2時間とした以外は、実施例1と同じ手順で酸化物焼結体を製造した。
得られた比較例1に係る酸化物焼結体の破材を粉砕して実施例1と同様の分析を実施したところ、仕込組成と同じ元素組成[Bi/(V+Co)の原子数比が1.05、Co/(V+Co)の原子数比が0.05]の焼結体が得られていた。
しかし、X線回折(XRD)測定によると、Bi(V,Co)O4結晶相の他にBi23結晶相に起因する回折ピークが観察されており、Bi(V,Co)O4結晶相とBi23結晶相で構成されている酸化物焼結体であることが分かった。同様のSEM−EDXによる微細組織分析も実施したが、Bi(V,Co)O4結晶相の粒子の他に約1μmのBi23結晶の粒子で構成されていることが確認できた。
(スパッタリング成膜試験)
この酸化物焼結体から実施例1と同様の手順でスパッタリングターゲットを作製し、かつ、実施例1と同様の手順、条件で石英ガラス基板上に堆積膜を成膜したところ、「0.15kWh」の時点ではBi(V,Co)O4膜が得られていたが、「10.0kWh」の時点においてはV25膜が形成され、Bi(V,Co)O4膜は得られなかった。尚、「0.15kWh」と「10.0kWh」における堆積膜とエロージョン部分の組成分析結果について表1に示す。
「0.15kWh」においてはBi過剰の状態は維持されていたが、積算投入電力を増していくとエロージョン部のBi量の減少が激しく、「10.0kWh」においては、過剰Biの組成ではなかった。
このことから、過剰のBiを基板に供給することができず、Bi(V,Co)O4膜が単相の形で形成されずにV25の第二相が形成されたと推測される。
ターゲットにBi23相が存在した場合、真空中においてプラズマにより加熱されるとBi23結晶相は蒸発して消失され易く、エロージョン部はBi(V,Co)O4相のみに変化したと推測される。
このような酸化物焼結体から、量産製造にて連続して使用できるスパッタリングターゲットを製造することができない。
本発明に係るスパッタリングターゲットによれば、ビスマス原子が欠損されない化学量論組成のBi(V,Co)O4膜を連続して製造できる。このため、光触媒に用いられるBi(V,Co)O4膜の製造に利用される産業上の利用可能性を有している。

Claims (5)

  1. ビスマス、バナジウム、コバルト、酸素を含有し、かつ、ビスマスの含有量がビスマス/(バナジウム+コバルト)原子数比で1.05〜1.30、コバルトの含有量がコバルト/(バナジウム+コバルト)原子数比で0.01〜0.10であると共に、シーライト型結晶構造の結晶相とオーリビリアス型結晶構造の結晶相が含まれることを特徴とする酸化物焼結体。
  2. 酸化ビスマス相が含まれないか、酸化ビスマス相が含まれてもその粒径が1μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体。
  3. 酸化コバルト相が含まれないか、酸化コバルト相が含まれてもその粒径が1μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物焼結体。
  4. ビスマス原料粉末とバナジウム原料粉末およびコバルト原料粉末を混合、粉砕し、造粒すると共に、得られた造粒粉を加圧成形し、かつ、得られた成形体を焼成して請求項1または2に記載の酸化物焼結体を製造する方法において、
    上記ビスマス原料粉末とバナジウム原料粉末およびコバルト原料粉末の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物焼結体を加工して得られることを特徴とするスパッタリングターゲット。
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