JP2021131013A - 組子の構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】曲面を有する組子の構造物、また、その製造方法を提供する。【解決手段】仮想曲面に沿って形成された組子の構造物1であって、組子の構造物1は、仮想曲面の軸方向に沿って延びる第一地組みフレーム部材2と、第一地組みフレーム部材2を連結する第二地組みフレーム部材3、4、を備え、第一地組みフレーム部材2は、仮想曲面の軸方向に沿って接合された1対の軸部材からなり、軸部材の接合面は、仮想曲面の径方向に沿って形成されている、組子の構造物1である。【選択図】図1
Description
本発明は、曲面を有する組子の構造物に関する。
一般的に、木材は、その組織の連続性と柔軟性ゆえに、かなりの程度まで湾曲させることができる。そのため、一体の連続する木材から作られる木材構造物は、曲面構成の自由度が大きい。木材を用いて曲面を作り出す技法としては、熱や蒸気を当てながら木材に力を加えて曲げることが最も一般的である。
木材構造物の一種として、組子がある。組子は、障子や欄間などの装飾として発展してきた伝統的な木工技法であり、長尺で細い木材を縦横または斜めに組み合わせて作られるフレーム(地組み)を基本構造とし、フレームの中にさらに細かいパーツを組み込むことで多様な意匠が表される。従来、組子はもっぱら平面的な構造物として用いられてきたが、その理由として、組子は細いフレームと小さなパーツの精密な組み合わせによって成り立つものであるために、組み上げた後に曲げることが極めて難しいということがあった。
組子を用いて曲面を有する構造物を作り出すことも提案されている。例えば、特許文献1には、組子を用いて形成される球体が記載されている。特許文献1の発明は、組子のパーツ(組子片)を組み合わせて正六角形組子のパネルを形成し、このパネルを、球面の一部を形成するように湾曲させる。そして、連結用組子片を用いて正六角形組子のパネル同士を連結し、正六角形組子のパネルと正五角形の穴とが組み合わされた球体を得るものである。
特許文献2には、任意の曲面に格子組みすることが可能な組子片(自在組子)を記載している。特許文献2の自在組子は、保持部と嵌合部を備えた基材を薄肉にして柔軟性を持たせ、任意の形状に湾曲して用いるものである。
また一方で、木材を曲げる技術として、挽き曲げと称される技法なども知られている。挽き曲げを応用するものとして、例えば特許文献3には、表面が長手方向に沿って湾曲形成された木製の装飾材が記載されている。特許文献3の発明は、基板の表面に不織布を介して表面板を貼着し、湾曲しようとする箇所の基板の裏面に多数の細溝を長手方向に互いに平行に形成し、細溝に接着剤を入れて貼り合わせて湾曲部を形成し、湾曲部を有する木製装飾部材を得るものである。
しかしながら、特許文献1の方法では、あらかじめ想定した曲面に合わせて連結用組子片を準備することが必要であり、また、組子のパネルは曲げに対する許容度が低いため、作り出せる曲面は限定的であった。特許文献2の自在組子は、自在組子そのものは自在に曲げられるものではあるが、自在組子によって構成される曲面の中に組子文様を構成することはできない。また、特許文献3の挽き曲げ技法を、細い部材からなる組子に応用することは現実的ではない。
このように、従来、曲面に精密な組子文様を備える立体的な組子の構造物は、実現されていなかった。この状況に鑑み本発明は、曲面を有する組子の構造物を提供すること、また、その製造方法を提供することを目的とする。
発明者は当初、平面的に構成された組子の構造物同士を連結することによって、立体的な組子の構造物を作り出すという着想の下に検討を進めた。発明者はさらに本課題を解決するために検討を重ね、平面の組子において、組子を構成するフレーム(地組み)を曲げて曲面を作り出すことに想到した。そして、互いに平行に延びる地組みフレーム部材を長さ方向に切断し、切断面を角度付けしてから再度貼り合わせることによって、折れ曲がった面を有する組子が得られること、このような折れ曲がった組子をつなげてゆき、貼り合わせ部の先端を滑らかに削ると、全体として曲面が表現された構造物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、次の構成を有する。
[1]仮想曲面に沿って形成された組子の構造物であって、
前記組子の構造物は、前記仮想曲面の軸方向に沿って延びる第一地組みフレーム部材と、前記第一地組みフレーム部材を連結する第二地組みフレーム部材と、を備え、
前記第一地組みフレーム部材は、前記仮想曲面の軸方向に沿って接合された1対の軸部材からなり、
前記軸部材の接合面は、前記仮想曲面の径方向に沿って形成されている、
組子の構造物。
[2]木製である、[1]に記載の組子の構造物。
[3]前記第一地組みフレーム部材および前記第二地組みフレーム部材によって、三組手の地組みが形成されている、[1]又は[2]に記載の組子の構造物。
[4]照明シェード、パーティションまたは壁面装飾材である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組子の構造物。
[1]仮想曲面に沿って形成された組子の構造物であって、
前記組子の構造物は、前記仮想曲面の軸方向に沿って延びる第一地組みフレーム部材と、前記第一地組みフレーム部材を連結する第二地組みフレーム部材と、を備え、
前記第一地組みフレーム部材は、前記仮想曲面の軸方向に沿って接合された1対の軸部材からなり、
前記軸部材の接合面は、前記仮想曲面の径方向に沿って形成されている、
組子の構造物。
[2]木製である、[1]に記載の組子の構造物。
[3]前記第一地組みフレーム部材および前記第二地組みフレーム部材によって、三組手の地組みが形成されている、[1]又は[2]に記載の組子の構造物。
[4]照明シェード、パーティションまたは壁面装飾材である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組子の構造物。
[5](A)平面に構成された地組みを備える組子の構造物を作成する工程と、
(B)前記工程(A)で得られた組子の構造物において、前記地組みのうち、任意の一方向の地組みフレーム部材を、その長さ方向に沿って切断する工程と、
(C)前記工程(B)で得られた切断面を、切断面に対して所定の角度の傾きを有する切削面が得られるよう切削する工程と、
(D)前記工程(C)で得られた切削面同士を接合する工程と、
を含む、曲面を有する組子の構造物の製造方法。
[6]前記工程(C)において、前記所定の角度が0.01〜30度である、
[5]に記載の、組子の構造物の製造方法。
(B)前記工程(A)で得られた組子の構造物において、前記地組みのうち、任意の一方向の地組みフレーム部材を、その長さ方向に沿って切断する工程と、
(C)前記工程(B)で得られた切断面を、切断面に対して所定の角度の傾きを有する切削面が得られるよう切削する工程と、
(D)前記工程(C)で得られた切削面同士を接合する工程と、
を含む、曲面を有する組子の構造物の製造方法。
[6]前記工程(C)において、前記所定の角度が0.01〜30度である、
[5]に記載の、組子の構造物の製造方法。
本願発明によれば、仮想曲面に沿って組子が形成された、曲面を有する組子の構造物が得られる。本願発明は組子を湾曲することなく曲面を作り出すため、組み合わされた組子片が歪んだり折れたりすることがなく、曲面上に精密な組子文様が構成された構造物を得ることができる。本願発明によれば、壁掛けランプシェードのような小型の構造物から壁面装飾のように大型の構造物まで、幅広い大きさおよび曲率の曲面を有する組子の構造物を提供できる。
また本願発明の製造方法は、平面的に構成された組子を作成するという伝統的な技法に加えて、地組みフレームの1辺を切断し、角度付けしたのちに接合するという工程を含む。この製造方法によれば、組子における切断箇所が少なく、細かい部材の組み合わせによる幾何学模様が展開するという組子特有の美的特長を十分に保ちながら、曲面を有する構造物を作り出すことができる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態をより詳しく説明するが、示された実施例は一例に過ぎない。本発明はここに示す実施例に限定されない。
図1は、本発明の一例である組子の構造物1を示す。図1に示される組子の構造物1は、曲面上に麻の葉文様の組子が構成されている。組子の構造物1は全体がヒノキ材からなる。図1の組子の構造物1では、両端面に側板が取り付けられているが、側板は、組子構造物の用途や設置場所などに応じて、あってもよいし無くてもよい。
本発明の組子の構造物の材質は特に制限されないが、典型的には木製であり、ヒノキ材のほか、スギ、スプルース、ヒバ、マツ等を用いることが好ましく、その他の木材、また、異なる種類の木材を組み合わせて用いてもよい。さらに、木材以外に、アクリルやポリカーボネート等の樹脂類、および/または、金、銀、銅、鉄、アルミニウムなどの金属類を全部または一部に用いてもよい。
組子の構造物1は扁平アーチ状の断面形状を有しており、つまり、楕円筒の側面に相当する仮想曲面に沿って形成されている。組子の構造物1において、仮想曲面の軸方向aの長さは約30cmである。組子の構造物1は、軸方向に沿って延びる第一地組みフレーム部材2を備える。第一地組みフレーム部材2は、互いに平行に、約5cmの間隔で配置されている。第二地組みフレーム部材3、4は第一地組みフレーム部材2と60°の角度をなして交差している。第二地組みフレーム部材3、4と第一地組みフレーム部材2は互いに連結しており、第一地組みフレーム部材2および第二地組みフレーム部材3、4は、三組手の地組みを形成している。
第一地組みフレーム部材2は、軸方向aに沿って接合された1対の軸部材からなっている。組子の構造物1は、図1に実線囲いで示す組子単位材5が、8枚接合されて曲面を形成している。
図1に示された実施例では麻の葉文様が作成されているが、文様の種類は当然ながら限定されず、あらゆる文様やその組み合わせを用いることができる。また、地組みフレームのみからなるデザインとすることもできる。また、図1に示された実施例では、三組手の地組みとしているが、例えば、格子など他の種類の地組みを用いることもできる。
図2は、図1に示されたものとは別の本発明の実施例の組子の構造物11を示す。図2に示される組子の構造物11は、略半円形の断面形状を有しており、つまり、円筒の側面に相当する仮想曲面に沿って形成されている。組子の構造物11は、仮想曲面の軸方向aに沿って延びる第一地組みフレーム部材12と、第一地組みフレーム部材12と互いに連結する第二地組みフレーム部材13、14を備える。第一地組みフレーム部材12と、第二地組みフレーム部材13、14とは、三組手の地組みを形成している。組子の構造物11は、組子単位材15が6枚接合されて曲面を形成している。
図2の一部拡大図に示されるように、第一地組みフレーム部材12は、軸方向aに沿って接合された、1対の軸部材121、122からなっている。軸部材121、122の接合面は、仮想曲面である円筒の径方向dに沿って形成されている。軸部材121、122はもともと一体の部材であったものが切断され、切断面が角度付けされた後に、再度接合されたものある。図2の例では、軸部材121、122は接着剤で貼り合わされているが、接合方法は特に制限されない。また図2の実施例では、軸部材121、122はもともと一体の部材であったものを接合しているが、目的とするデザイン等に応じて、別途用意した部材同士を接合することもできる。
軸部材121、122は、組子の構造物11の周方向の断面において、角度αが約75°とされている。この角度αを90°未満とすることによって、組子単位材15を接合した時に、曲がった面を有する組子が得られる。図2の例では角度αは約75°であるが、目的とする曲面のデザインに応じて60〜89.99°程度(90°未満)に設定することができる。
本発明の組子の構造物は、典型的には、円筒または楕円筒の側面の一部である仮想曲面に沿って形成された組子の構造物であるが、曲面はこれに制限されない。例えば、曲率の変化する曲面であってもよく、断面がS字形状あるいは波型形状である仮想曲面に沿って形成されてもよい。
図3に、本発明の組子の製造方法を模式的に示す。
図3(A)は、平面に構成された地組みを備える組子の構造物であり、公知の方法で作成することができる。部材同士の接点は、目的や用途に応じて、接着してもよいし接着しなくてもよい。また、平面の組子の構造物は、作成して用いてもよいし、予め作られたものを入手して用いてもよい。
図3(A)は、平面に構成された地組みを備える組子の構造物であり、公知の方法で作成することができる。部材同士の接点は、目的や用途に応じて、接着してもよいし接着しなくてもよい。また、平面の組子の構造物は、作成して用いてもよいし、予め作られたものを入手して用いてもよい。
続いて、図3(B)に示されるとおり、地組みのフレームの1辺を、その長さ方向に沿って切断する。なお、図3(B)では、製造方法のモデルを示すために中央の1辺を切断しているが、より大きな構造物を製造する際には、連続する地組みのうち任意の一方向の、互いに平行する地組みフレームをいずれも切断することが好ましい。この切断方向が仮想曲面の軸方向となる。
次いで、図3(C)に示されるとおり切断面を斜めに切削する。図3の例では、切断面に対して切削面の傾きβが約5°の角度となるように切断面全体を切削している。切削面の傾きβは、目的とする曲面の曲率に応じて変更することができ、例えば、0.01〜30°とすることができ、1〜20°程度が好ましく、2〜15°程度であれば自然な曲面が得られるためより好ましい。切削面の傾きβを大きくすれば、切断された地組みフレーム同士を接合した時に曲率の大きな曲面が形成され、逆に、切削面の傾きを小さくすれば曲率の小さな曲面が形成される。なお、工程(B)で切断した地組み(組子単位材)において、すべての切削面の傾きβを同一にすれば円筒側面に近似する曲面が得られる。また、組子単位材によって異なる傾きβを有する切削面とすることで、楕円筒の側面に近似する曲面や、曲率が変化する曲面を作成することができる。
続いて、図3(D)に示されるとおり、組子単位材の切削面同士を接合し、折れ曲った面を有する組子構造物を得る。接合の方法は、接着剤による接着、テープなどによる貼り付け、ピン等による固定など、目的と用途に応じて適宜選択すればよいが、外観への影響を最小限にとどめる観点からは接着が好ましい。切削面同士の接合は、切断前に一部材であったものを再度接合してもよく、異なる部材であったものを接合してもよい。例えば、デザイン等に応じて、異なる組子文様を備える組子単位材を接合してもよく、異なる木種の組子単位材を接合してもよい。
工程(D)に続いて、接合した切削面の先端の角を丸めて、滑らかなカーブに仕上げる。図3においては2つの組子単位材の接合のみを示しているが、同様の接合を繰り返し、列を増やしていくことによって、本発明の組子の構造体が得られる。こうして得られる構造体は、組子構造そのものは湾曲されていないが、全体的には仮想曲面に沿う、自然な曲面を有する外観となる。なお、より自然な曲面を作り出すために、接合された組子構造体の表面全体をサンダーややすり等で仕上げることも好ましい。
本発明の製造方法は、上記工程の間や前後に、必要に応じて、補強、仕上げ、乾燥、磨き、他の部品の取り付けなど、目的の製品や用途に応じた工程を含み得る。
本発明の組子の構造物は、曲面のみを有するものに限られず、曲面と平面とが組み合わされていてもよい。例えば、平面の組子と平面の組子の間が曲面の組子で連結されて、全体として波型の構造物となっていてもよい。当然、曲面のみで形成されて円筒や楕円筒の全部または一部の形態であってもよい。また、組子の構造物と他の素材、例えば、別の木製装飾(例えば透かし彫り、浮き彫り、塗り等)や別の素材(紙、樹脂、金属、陶器や磁器等)とが組み合わされた面となっていてもよい。
図4は、本発明の組子の構造物を作成するために用いられうる、平面的に構成された地組みが連続する組子の例を示す。三組手に組まれたフレームのうち、いずれの辺を切断するかは目的のデザインに応じて任意に決めることができる。また、目的とする完成品の大きさに応じて、平面状の組子を作成することができる。
図5は、本発明の実施例である照明シェードの例を示す。図5の照明シェードは、図1に示した組子の構造物(文様違い)を軸方向に3つ並べて構成したものであり、軸方向の長さは約90cmである。本発明の組子の構造物は、照明シェードのほか、曲面を有するパーティション、壁面装飾材など、多様なインテリア用品、建築部材として用いることができる。
1、11 組子の構造物
2、12 第一地組みフレーム部材
3、4、13、14 第二地組みフレーム部材
5、15 組子単位材
121、122 軸部材
2、12 第一地組みフレーム部材
3、4、13、14 第二地組みフレーム部材
5、15 組子単位材
121、122 軸部材
Claims (6)
- 仮想曲面に沿って形成された組子の構造物であって、
前記組子の構造物は、前記仮想曲面の軸方向に沿って延びる第一地組みフレーム部材と、前記第一地組みフレーム部材を連結する第二地組みフレーム部材と、を備え、
前記第一地組みフレーム部材は、前記仮想曲面の軸方向に沿って接合された1対の軸部材からなり、
前記軸部材の接合面は、前記仮想曲面の径方向に沿って形成されている、
組子の構造物。 - 木製である、請求項1に記載の組子の構造物。
- 前記第一地組みフレーム部材および前記第二地組みフレーム部材によって、三組手の地組みが形成されている、請求項1又は2に記載の組子の構造物。
- 照明シェード、パーティションまたは壁面装飾材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組子の構造物。
- (A)平面に構成された地組みを備える組子の構造物を作成する工程と、
(B)前記工程(A)で得られた組子の構造物において、前記地組みのうち、任意の一方向の地組みフレーム部材を、その長さ方向に沿って切断する工程と、
(C)前記工程(B)で得られた切断面を、切断面に対して所定の角度の傾きを有する切削面が得られるよう切削する工程と、
(D)前記工程(C)で得られた切削面同士を接合する工程と、
を含む、曲面を有する組子の構造物の製造方法。 - 前記工程(C)において、前記所定の角度が0.01〜30度である、
請求項5に記載の、組子の構造物の製造方法。
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