JP2021130627A - 光学活性化合物およびその製造方法、光学活性化合物を含む配位化合物、環状化合物、ならびに中間体化合物 - Google Patents

光学活性化合物およびその製造方法、光学活性化合物を含む配位化合物、環状化合物、ならびに中間体化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の環構造を有する化合物において、分子鎖が交差することで不斉場が形成された光学活性化合物を提供する。【解決手段】光学活性化合物は、第1ベース部と、第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する複数の架橋鎖と、を含む。前記複数の架橋鎖は、第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖の少なくとも3つを含む。前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖および前記第3架橋鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する3つの第1原子に結合する。前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖および前記第3架橋鎖のそれぞれの他端は、前記第2ベース部が有する3以上の原子価を有する3つの第2原子に結合する。前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖が交差するように重なることで不斉場を生じている。【選択図】なし

Description

本発明は、光学活性化合物およびその製造方法、光学活性化合物を含む配位化合物、ならびに光学活性化合物を得るのに有用な環状化合物(前駆化合物)および中間体化合物に関する。
光学活性化合物は、不斉反応、不斉触媒反応、医薬品、キラルカラムクロマトグラフィーの充填剤、液晶ディスプレイ、レンズフィルターなど、様々な分野で利用されている。
光学活性化合物には、例えば、中心不斉、軸不斉、面性不斉、またはらせん構造による不斉などを有するものがある。また、複数の環が交差するように重なった構造を有する鏡像異性体が報告されている。
非特許文献1は、メビウスの輪の構造を有する分子の全合成を提案している。
非特許文献2および3は、フェニレンアセチレン単位の繰り返し構造を有するキラルな環状化合物を提案している。
非特許文献4は、[2]−カテナン、二重にインターロックされた[2]−カテナンなどのトポロジカル異性体、キラルノットを有する銅錯体またはその配位子などを記載している。
J.Am.Chem.Soc., 1982, 104, pp.3219-3221 Chem.Commun., 2018, 54, pp.735-738 Chem.Sci., 2019, 10, 4782-4791 Chemical Reviews, 1995, Vol.95, No.8, "Interlocked and Intertwined Structures and Superstructures", p.2727, p.2767
複数の環構造を備える光学活性化合物は、その特殊な立体構造により、他の化合物、金属またはイオンなどとの選択的な相互作用を生じると期待される。そのため、複数の環構造を備える光学活性化合物の開発が求められている。
本発明の第1側面は、第1ベース部と、第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する複数の架橋鎖と、を含み、
前記複数の架橋鎖は、第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖の少なくとも3つを含み、
前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖および前記第3架橋鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する3つの第1原子に結合し、
前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖および前記第3架橋鎖のそれぞれの他端は、前記第2ベース部が有する3以上の原子価を有する3つの第2原子に結合し、
前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖が交差するように重なることで不斉場を生じている、光学活性化合物に関する。
本発明の第2側面は、第1ベース部と、第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する2つの架橋鎖と、を含み、
前記第1ベース部および前記第2ベース部は、それぞれ、有機環を含み、
前記2つの架橋鎖は、それぞれ、オキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含み、
前記2つの架橋鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する2つの第1原子に結合し、
前記2つの架橋鎖のそれぞれの他端は、前記第2ベース部が有する3以上の原子価を有する2つの第2原子に結合する、環状化合物に関する。
本発明の第3側面は、第1ベース部と、前記第1ベース部に結合した2つの分子鎖と、を有し、
前記第1ベース部は、有機環を含み、
前記分子鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する2つの第1原子に結合し、
前記分子鎖のそれぞれは、オキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含む、中間体化合物に関する。
本発明の第4側面は、上記の光学活性化合物の製造方法であって、
前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の一方、ならびに前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結され、前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の他方で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結されていない第1環状化合物を準備する第1A工程と、
前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖が交差して重なるように、前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の他方で前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結して不斉場を生じさせる第2A工程と、を有する、光学活性化合物の製造方法に関する。
本発明の第5側面は、上記の光学活性化合物の製造方法であって、
前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の双方で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結され、前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結されていない第2環状化合物を準備する第1B工程と、
前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結することにより、前記第1架橋鎖と前記第2架橋鎖を交差させて、不斉場を生じさせる第2B工程と、を有する、光学活性化合物の製造方法に関する。
複数の環構造を有する化合物において、分子鎖が交差することで不斉場が形成された光学活性化合物を提供する。
[光学活性化合物]
本発明の一側面の光学活性化合物は、第1ベース部と、第2ベース部と、第1ベース部と第2ベース部とを連結する複数の架橋鎖と、を含む。複数の架橋鎖は、第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖の少なくとも3つを含む。第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖のそれぞれの一端は、第1ベース部が有する3つの第1原子(つまり、異なる3つの第1原子)に結合している。第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖のそれぞれの他端は、第2ベース部が有する3つの第2原子(つまり、異なる3つの第2原子)に結合している。第1原子および第2原子のそれぞれは、3以上の原子価を有する。そして、第1架橋鎖および第2架橋鎖が交差するように重なることで不斉場を生じている。
第1ベース部と第2ベース部とにおいて異なる原子間を少なくとも3つの架橋鎖で連結するとともに、第1架橋鎖と第2架橋鎖とを交差させることで、少なくとも2つの環の一部が交差するように重なった構造を有する光学活性化合物を提供できる。このような光学活性化合物は、少なくとも2つの環構造を含むため、他の化合物、金属またはイオンなどとの選択的な相互作用が得られる。これにより、光学活性化合物の様々な用途への適用が期待される。
このような光学活性化合物は、下記式(Ia)および(Ib)に示すように、鏡像異性体となり得る。
Figure 2021130627
ここで、A1は、第1ベース部であり、A2は第2ベース部であり、C1は第1架橋鎖であり、C2は第2架橋鎖であり、およびC3は第3架橋鎖である。
(ベース部)
第1ベース部および第2ベース部の各ベース部は、架橋鎖が連結する3以上の原子価を有する原子(第1原子または第2原子)を少なくとも3つ含み、第1架橋鎖および第2架橋鎖の交差により不斉場を形成可能な構造であれば、その構造は特に制限されない。各ベース部は、例えば、脂肪族の分子鎖で構成されていてもよく、有機環(第1有機環)を含むものであってもよい。架橋鎖の立体配置が固定され易く、不斉場を安定に形成し易い観点からは、第1ベース部および第2ベース部の少なくとも一方が第1有機環を含むことが好ましい。
第1原子および第2原子とは、各ベース部に含まれる原子のうち、原子価が3価以上であり、かつ架橋鎖と結合している原子を言う。第1原子および第2原子のそれぞれとしては、原子価が3価以上であれば特に制限されないが、非金属元素であることが好ましい。各第1原子は、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、またはホウ素原子である。同様に、各第2原子は、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、またはホウ素原子である。安定な構造が得られやすい観点から、3つの第1原子のうち、少なくとも2つは炭素原子であることが好ましい。同様に、3つの第2原子のうち、少なくとも2つは炭素原子であることが好ましい。
脂肪族の分子鎖に対応する脂肪族化合物としては、例えば、脂肪族炭化水素、3以上の原子価を有するヘテロ原子(第1ヘテロ原子)を含む鎖状の脂肪族化合物、第1ヘテロ原子以外のヘテロ原子(第2ヘテロ原子(より具体的には、原子価が2であるヘテロ原子))を含む鎖状の脂肪族化合物などが挙げられる。第1ヘテロ原子は、第1原子または第2原子となり得る。各ベース部は、第1原子または第2原子以外の第1ヘテロ原子を1つまたは2つ以上含んでもよい。第1ヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族化合物を、第1ヘテロ原子含有化合物と称し、第2ヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族化合物を第2ヘテロ原子含有化合物と称する場合がある。脂肪族化合物には、置換基(第1置換基)を有するものも含まれる。脂肪族化合物は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。脂肪族化合物は、飽和であってもよく、1つまたは2つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。
脂肪族炭化水素の炭素数は、3以上であればよく、4以上であってもよい。脂肪族炭化水素の炭素数の上限は特に制限されないが、例えば、26以下であり、18以下または12以下であってもよく、10以下または6以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、アルカン、アルケン、アルカジエン、アルカトリエンが挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例としては、プロパン、2,2−ジメチルプロパン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、2−メチルブタン、n−ペンタン、ペンテン、1,3−ペンタジエン、ヘキサン、ヘキセン、2−エチルヘキサン、オクタン、オクテン、デカン、デセンなどが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、脂肪族炭化水素は、これらの具体例に限定されるものではない。
第1ヘテロ原子は、例えば、N、P、Si、またはB(中でも、N)である。第1ヘテロ原子含有化合物は、第1ヘテロ原子を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。第1ヘテロ原子含有化合物が2つ以上の第1ヘテロ原子を有する場合、少なくとも2つの第1ヘテロ原子が同じであってもよく、全ての第1ヘテロ原子が異なっていてもよい。
第1ヘテロ原子含有化合物は、さらに第2ヘテロ原子を有していてもよい。第2ヘテロ原子としては、例えば、O、S、およびSeが挙げられる。第1ヘテロ原子含有化合物は、1つの第2へテロ原子を有していてもよく、2つ以上の第2ヘテロ原子を有していてもよい。第1ヘテロ原子含有化合物が2つ以上の第2ヘテロ原子を有する場合、少なくとも2つの第2ヘテロ原子が同じであってもよく、全ての第2ヘテロ原子が異なっていてもよい。
第1ヘテロ原子含有化合物の炭素数は、例えば、2以上であり、3以上または4以上であってもよい。第1ヘテロ原子含有化合物の炭素数の上限は特に制限されないが、例えば、26以下であり、18以下または12以下であってもよく、10以下または6以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第1ヘテロ原子含有化合物としては、窒素含有化合物(ジアルキルアミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、ジ(アルコキシアルキル)アミンなど)、および窒素含有化合物において少なくとも一部の窒素原子がPまたはBに置き換わった化合物、これらの化合物において一部の炭素原子がSiに置き換わった化合物、上記で例示した脂肪族炭化水素において一部の炭素原子がSiに置き換わった化合物などが挙げられる。
ジアルキルアミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルブチルアミンが挙げられる。アルキレンポリアミンとしては、アルキレンジアミン、ジアルキレントリアミン、トリアルキレンテトラミンなどが挙げられる。アルキレンポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが挙げられる。ジ(アルコキシアルキル)アミンの具体例としては、ジ(メトキシエチル)アミン)、ジ(エトキシエチル)アミンが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、第1ヘテロ原子含有化合物は、これらの具体例に限定されるものではない。
第2ヘテロ原子含有化合物は、第2ヘテロ原子を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよい。第2ヘテロ原子含有化合物が、2つ以上の第2ヘテロ原子を有する場合、少なくとも2つの第2ヘテロ原子は同じであってもよく、全ての第2ヘテロ原子が異なっていてもよい。
第2ヘテロ原子含有化合物の炭素数は、第1ヘテロ原子含有化合物について記載した範囲から選択できる。
第2ヘテロ原子含有化合物としては、酸素含有化合物(ジアルキルエーテル、多価アルコールのアルキルエーテルなど)、および酸素含有化合物において少なくとも一部の酸素原子がSまたはSeに置き換わった化合物などが挙げられる。多価アルコールとしては、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコールなどのポリC2−4アルキレングリコールが挙げられる。
ジアルキルエーテルの具体例としては、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、プロピルブチルエーテルが挙げられる。多価アルコールのアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、第2ヘテロ原子含有化合物は、これらの具体例に限定されるものではない。
脂肪族化合物が有していてもよい第1置換基としては、特に制限されず、製造方法または用途を考慮して選択すればよい。第1置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、脂肪族アシルオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、脂肪族アシル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基、N−置換アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子、オキソ基(=O)、S=基などが挙げられる。脂肪族化合物に含まれる第1元素には、アルキル基、第2置換基を有するアルキル基が置換していてもよい。これらの基も第1置換基に含まれる。アルキル基としては、C1−6アルキル基またはC1−4アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など)が挙げられる。第2置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、脂肪族アシルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基、N−置換アミノ基などが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、第1置換基および第2置換基はこれらの具体例に限定されるものではない。脂肪族化合物は、第1置換基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。脂肪族化合物が2つ以上の第1置換基を有する場合、少なくとも2つは同じであってもよく、全ての第1置換基が異なっていてもよい。
なお、ベース部が脂肪族の分子鎖を有する場合、各ベース部に着目したときに、3つの架橋鎖と結合する3つの第1原子(または第2原子)のうち、2本目の架橋鎖が結合するものを第1原子a11(または第2原子a21)とするとき、この第1原子a11(または第2原子a21)を挟むように存在する2つの第1原子a12およびa13(または第2原子a22およびa23)を両端とする分子鎖を、便宜上、第1ベース部(または第2ベース部)とする。ここで、第1原子a11と第1原子a12およびa13のそれぞれとの間には、他の第1原子は存在しない。同様に、第2原子a21と第2原子a22およびa23のそれぞれとの間には、他の第2原子は存在しない。
第1ベース部または第2ベース部が第1有機環を含む場合、各ベース部は、1つの第1有機環を含んでいてもよく、単結合または連結基で連結された2つ以上の第1有機環を含むものであってもよい。第1有機環は、脂環族環であってもよく、芳香環であってもよく、脂肪族環と芳香環との縮合環であってもよい。脂環族環は、1つまたは2つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。脂環族環は、架橋環であってもよい。第1有機環は、炭化水素環であってもよく、ヘテロ原子(第3ヘテロ原子)を環の構成原子として含む複素環であってもよい。連結基としては、アルキレン基、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、カルボニル基(−C(=O)−)などが挙げられる。連結基を構成するアルキレン基としては、例えば、C1−6アルキレン基が挙げられる。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、ジメチルメチレン基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
各第1有機環は、例えば、3員以上または4員以上であってもよく、5員以上または6員以上であってもよい。各第1有機環は、例えば、20員以下であり、14員以下または10員以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第1有機環の例を、以下に、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族環を含む縮合環式炭化水素、および複素環に区分して説明する。
脂環族炭化水素としては、シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルカジエン、架橋式脂肪族炭化水素、後述の芳香族炭化水素の水素添加体などが挙げられる。脂環族炭化水素の具体例としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカリン、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタン、ジシクロペンタジエンが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、各ベース部に含まれる脂環族炭化水素は、これらの具体例に限定されるものではない。
芳香族炭化水素としては、アレーン、ビスアリールなどが挙げられる。アレーンの具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンが挙げられる。ビスアリールの具体例としては、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルケトン、ジフェニルメタン、ジメチルジフェニルメタンが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、各ベース部に含まれる芳香族炭化水素は、これらの具体例に限定されるものではない。
脂肪族環を含む縮合環式炭化水素としては、上記の脂肪族炭化水素と上記の芳香族炭化水素とが縮合した構造を有するものが挙げられる。このような縮合環式炭化水素の具体例としては、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、アセナフテン、フルオレンなどが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、縮合環式炭化水素は、これらの具体例に限定されるものではない。
複素環に含まれ得る第3ヘテロ原子は、Se、B、P、またはSiなどであってもよいが、O、S、およびNからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。複素環は、第3ヘテロ原子を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。複素環が2つ以上の第3ヘテロ原子を含む場合、少なくとも2つは同じであってもよく、全ての第3ヘテロ原子が異なっていてもよい。複素環は、縮合環であってもよい。
複素環の具体例としては、テトラヒドロフラン、フラン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、クロメン、テトラヒドロチオフェン、チオフェン、テトラヒドロチオピラン、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、イミダゾリン、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、インドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、カルバゾール、オキサゾール、チアゾール、モルホリン、チアジンが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、複素環は、これらの具体例に限定されるものではない。
第1有機環には、置換基(第3置換基)を有するものも含まれる。第3置換基としては、第1置換基について例示したものの他、脂肪族炭化水素基、置換基(第4置換基)を有する脂肪族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、炭素−炭素不飽和結合を有するものであってもよい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、例えば、1〜26であり、1〜18または1〜12であってもよく、1〜10または1〜6であってもよく、1〜4であってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基などが挙げられる。しかし、これらは単なる例示であり、第3置換基はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、上記の炭素数の範囲において、アルケニル基の炭素数の下限は2である。
第4置換基としては、例えば、第1置換基について例示したものから選択できるが、これらに限定されるものではない。アルキル基は、第4置換基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。アルキル基が2つ以上の第4置換基を有する場合、少なくとも2つは同じであってもよく、全ての第4置換基が異なっていてもよい。
第1有機環は、第3置換基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。第1有機環が2つ以上の第3置換基を有する場合、少なくとも2つは同じであってもよく、全ての第3置換基が異なっていてもよい。
各ベース部がリジッドになり、不斉場が安定に形成され易くなる観点からは、第1有機環は、少なくとも芳香環を含むのが好ましい。同様の観点から、第1ベース部および第2ベース部の双方が少なくとも芳香環を含む場合がより好ましい。
(架橋鎖)
光学活性化合物は、第1ベース部と第2ベース部とを連結する複数の架橋鎖を備える。複数の架橋鎖は、第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖の少なくとも3つを含む。光学活性化合物が有する架橋鎖の数は、3以上であればよく、用途(例えば、配位する金属またはイオンの種類およびサイズ、包接する化合物の種類およびサイズ)などに応じて決定すればよい。架橋鎖の数の上限は制限されないが、例えば、6以下であり、5以下または4以下であってもよい。光学活性化合物は、3つの架橋鎖を有するものであってもよい。第1〜第3架橋鎖以外の各架橋鎖も、第1ベース部に含まれる他の第1原子と第2ベース部に含まれる他の第2原子とに結合している。
第1〜第3架橋鎖のそれぞれは、第1ベース部に含まれる3つの第1原子および第2ベース部に含まれる3つの第2原子にそれぞれ結合している。このように架橋鎖のそれぞれが異なる第1原子および異なる第2原子に結合するとともに、第1架橋鎖と第2架橋鎖とを交差させることで、不斉場を形成することができる。
各架橋鎖は、炭化水素で構成された分子鎖(炭化水素鎖)であってもよく、ヘテロ原子(第4ヘテロ原子)を含む分子鎖であってもよい。第4ヘテロ原子を含む分子鎖は、第4ヘテロ原子を側鎖(置換基も含む)および主鎖の少なくとも一方に含む。第4ヘテロ原子を含む分子鎖は、第4ヘテロ原子を側鎖に含む炭化水素鎖であってもよく、第4ヘテロ原子を主鎖に含む分子鎖であってもよい。炭化水素鎖および第4ヘテロ原子を含む分子鎖のそれぞれには、置換基(第5置換基)を有するものも包含される。第5置換基は、炭化水素鎖または第4ヘテロ原子を含む分子鎖の主鎖および側鎖の少なくとも一方に結合している。第4ヘテロ原子は第5置換基に含まれていてもよい。架橋鎖の構造は、第1原子および第2原子の種類、これらの原子と架橋鎖とを結合するための反応の種類などに応じて決定すればよい。光学活性化合物を、金属またはイオンに配位させたり、化合物を包接したりする場合には、金属、イオンまたは化合物に対して相互作用させ易くなる観点から、架橋鎖が第4ヘテロ原子を含むことが好ましい。第4ヘテロ原子の種類、架橋鎖における位置、および数などは、用途(例えば、金属、イオン、または化合物の種類およびサイズなど)に応じて選択すればよい。
架橋鎖は、通常、脂肪族鎖であるが、脂肪族鎖と有機環(第2有機環)とを主鎖に含む分子鎖であってもよい。第2有機環を含む分子鎖は、1つまたは2つ以上の脂肪族鎖を含んでいてもよく、1つまたは2つ以上の第2有機環を含んでいてもよい。例えば、第2有機環を含む分子鎖は、1つの第2有機環と1つの脂肪族鎖とで構成されていてもよく、2つの脂肪族鎖とこれらの間に介在する1つの第2有機環とで構成されていてもよく、脂肪族鎖と第2有機環とが交互に繰り返して配置された構造であってもよい。架橋鎖が、2つ以上の脂肪族鎖を含む場合、少なくとも2つは同じであってもよく、全ての脂肪族鎖が異なっていてもよい。架橋鎖が2つ以上の第2有機環を含む場合、少なくとも2つは同じであってもよく、全ての第2有機環が異なっていてもよい。
第2有機環としては、例えば、第1有機環について例示したものから選択できる。光学活性化合物を、金属、イオンまたは化合物に対して相互作用させ易くなる観点からは、第2有機環としては、第1有機環について例示されるもののうち、複素環、第4ヘテロ原子を含む第3置換基、または第4ヘテロ原子を含む第4置換基を有する有機環が好ましい。なお、第4ヘテロ原子としては、第1ヘテロ原子含有化合物について記載した範囲から選択できる。第3置換基または第4置換基に含まれる第4ヘテロ原子は、例えば、O、SおよびNの少なくとも一種である。各架橋鎖は、第4ヘテロ原子を1つ含んでいてもよく、2つ以上含んでいてもよい。2つ以上の第4ヘテロ原子を含む架橋鎖において、少なくとも2つの第4ヘテロ原子は同じであってもよく、全ての第4ヘテロ原子が異なっていてもよい。
第5置換基としては、例えば、第1置換基について例示したものの他、有機環(第3有機環)を含む基が挙げられる。第3有機環を含む基としては、第3有機環に対応する一価基(R−)、第3有機環を有するオキシ基またはチオ基(R−O−またはR−S−)、第3有機環を有するアシルオキシ基(R−C(=O)−O−)、第3有機環を有するオキシカルボニル基(R−O−C(=O)−)、第3有機環を有するアシル基(R−C(=O)−)、および第3有機環が窒素原子に置換したN−置換アミノ基(R−NH−、(RN−)などが挙げられる。R−は、第3有機環に対応する一価基である。N,N−二置換アミノ基(RN−において、2つのRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
第3有機環としては、第1有機環について例示したものから選択できる。光学活性化合物を、金属、イオンまたは化合物に対して相互作用させ易くなる観点からは、第3有機環は、第1有機環について例示されるもののうち、複素環、第4ヘテロ原子を含む第3置換基、または第4ヘテロ原子を含む第4置換基を有する有機環が好ましい。
架橋鎖に含まれる脂肪族鎖のうち、炭化水素鎖としては、脂肪族炭化水素に対応する二価基が挙げられる。炭化水素鎖は、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよい。炭化水素鎖は、飽和であってもよく、1つまたは2つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。炭化水素鎖に対応する脂肪族炭化水素としては、例えば、アルカン、アルケン、アルカジエン、アルカトリエンが挙げられる。
架橋環が、主鎖に第2有機環を含まない場合、架橋鎖は脂肪族鎖で構成される。この場合、脂肪族鎖に対応する脂肪族炭化水素の炭素数は、例えば、8以上であり、9以上または10以上であってもよい。また、脂肪族炭化水素の炭素数の上限は、特に制限されないが、例えば、40以下であり、26以下であってもよく、18以下または16以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
架橋鎖が主鎖に脂肪族鎖と第2有機環とを含む場合、架橋鎖に含まれる脂肪族鎖の数、第2有機環のサイズおよび数にもよるが、脂肪族鎖に対応する脂肪族炭化水素の炭素数の下限は、特に制限されず、1以上であればよく、2以上、4以上、6以上、または8以上であってもよい。脂肪族炭化水素の炭素数の上限は、例えば、26以下であり、18以下、16以下、または12以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
これらの脂肪族炭化水素において、炭素数は、第1架橋鎖と第2架橋鎖とを交差させることができる範囲で、光学活性化合物の用途に応じて選択すればよい。上記脂肪族炭化水素の具体例としては、ベース部について例示した脂肪族炭化水素の他、メタン、エタン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第4ヘテロ原子を主鎖に含む分子鎖について、分子鎖に含まれる脂肪族鎖に対応する第4ヘテロ原子を主鎖に含む脂肪族化合物としては、第1ヘテロ原子含有化合物および第2ヘテロ原子含有化合物についての説明を参照できる。
架橋環が、主鎖に第2有機環を含まない場合、主鎖の原子数は、例えば、8以上であり、9以上または10以上であってもよい。また、主鎖の原子数の上限は、特に制限されないが、例えば、40以下であり、26以下であってもよく、18以下または16以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
架橋鎖が主鎖に第4ヘテロ原子を含み、かつ脂肪族鎖および第2有機環を含む場合、架橋鎖に含まれる脂肪族鎖の数、第2有機環のサイズおよび数にもよるが、各脂肪族鎖の主鎖に含まれる部分の原子数の下限は、特に制限されず、1以上であればよく、2以上、4以上、6以上、または8以上であってもよい。各脂肪族鎖の主鎖に含まれる部分の原子数の上限は、例えば、26以下であり、18以下、16以下、または12以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第1架橋鎖は、−X−R−で表される第1ユニットを含むことが好ましい。また、第2架橋鎖は、−X−R−で表される第2ユニットを含むことが好ましい。RおよびRは、それぞれ、アルキレン基である。Xは、原子価が2の第4ヘテロ原子、または>X1a−R1aで表される基である。同様に、Xは、原子価が2の第4ヘテロ原子、または>X2a−R2aで表される基である。X1aおよびX2aは、それぞれ、原子価が3の第4ヘテロ原子である。R1aおよびR2aは、それぞれ、水素原子、第1置換基について例示したアルキル基、または第1置換基について例示した第2置換基を有するアルキル基である。架橋鎖の連結により2つ以上の環が形成されるとともに、第1架橋鎖および第2架橋鎖が第4ヘテロ原子を含むことで、金属、イオンまたは他の化合物に対して相互作用し易くなる。
およびXのそれぞれは、酸素原子、イオウ原子、イミノ基またはN−置換イミノ基であってもよい。N−置換イミノ基の窒素原子上の置換基は、第1置換基について例示したアルキル基、または第1置換基について例示した第2置換基を有するアルキル基である。中でも、XおよびXのそれぞれが酸素原子またはイオウ原子(特に酸素原子)である場合、金属、イオンまたは他の化合物に対する高い相互作用性を確保しながらも、光学活性化合物を比較的容易に製造することができる。
またはRで表されるアルキレン基の炭素数は、例えば、1〜40の範囲から選択できる。アルキレン基の炭素数は、8以上、9以上または10以上であってもよい。また、アルキレン基の炭素数は、40以下であり、26以下であってもよく、18以下または16以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第1架橋鎖は、第1ユニットの繰り返し構造を含むことが好ましい。同様に、第2架橋鎖は、第2ユニットの繰り返し構造を含むことが好ましい。第1架橋鎖および第2架橋鎖がこのような複数の第4ヘテロ原子を含む繰り返し構造を含むことで、フレキシブルとなり、交差させた構造が安定化し易い。また、複数の第4ヘテロ原子を含むこのようなフレキシブルな架橋鎖により、金属、イオン、または他の化合物に対してさらに相互作用し易くなる。このような第1架橋鎖および第2架橋鎖を含む光学活性化合物は、多座配位子として作用し易い。
第1架橋鎖および第2架橋鎖のそれぞれが上記の繰り返し構造を含む場合、各ユニットにおけるRまたはRで表されるアルキレン基の炭素数は、例えば、2〜4であり、2または3であってもよい。アルキレン基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が挙げられる。
第1架橋鎖における第1ユニットの繰り返し数をn1とし、第2架橋鎖における第2ユニットの繰り返し数をn2とする。このとき、n1およびn2の少なくとも一方は、3以上であることが好ましく、双方が3以上であることが好ましい。繰り返し数n1およびn2のそれぞれは、第1架橋鎖と第2架橋鎖とを交差させることができる範囲で、光学活性化合物の用途に応じて選択すればよい。n1およびn2のそれぞれは、4以上であってもよい。n1およびn2のそれぞれの上限は特に制限されないが、例えば、16以下であり、12以下または10以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第3架橋鎖としては、第1架橋鎖または第2架橋鎖についての説明を参照できる。第3架橋鎖は、第1架橋鎖および第2架橋鎖の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよい。第3架橋鎖は、炭化水素鎖であってもよいが、第4ヘテロ原子を含む分子鎖であることが好ましい。第3架橋鎖に含まれる第4ヘテロ原子は、酸素原子、イオウ原子、および窒素原子からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
第3架橋鎖は、第1架橋鎖または第2架橋鎖の場合に準じて、−X−R−で表される第3ユニットを含んでもよく、第3ユニットの繰り返し構造を含んでもよい。XおよびRについては、それぞれ、XおよびRについての説明を参照できる。第3架橋鎖は、X3が酸素原子である第3ユニット(つまり、オキシアルキレンユニット)の繰り返し構造を含むことが好ましい。
第3ユニットの繰り返し数n3は、n1について記載した範囲から選択してもよい。第3架橋鎖は、第1架橋鎖および第2架橋鎖の場合のように、他の架橋鎖と交差していてもよいが、交差していないことが好ましい。第3架橋鎖が他の架橋鎖と交差していないことで、金属、イオンまたは他の化合物がベース部と架橋鎖で構成される環に近接し易い。n3は、光学活性化合物の用途などに応じて選択すればよく、例えば、12以下、10以下、または8以下としてもよい。これらの上限値は、n1について記載した下限値と任意に組み合わせることができる。
下記式(II)に、第1ベース部および第2ベース部が第3置換基を有していてもよいベンゼン環であり、第1〜第3架橋鎖がオキシアルキレンユニットの繰り返し構造を有する光学活性化合物の例を示す。
Figure 2021130627
ここで、Rは、第3置換基であり、nbは、各ベンゼン環におけるRの個数である。R〜R、およびn1〜n3は、上述と同じである。各ベンゼン環のRは同じであってもよく、異なっていてもよい。各ベンゼン環についてnbは同じであってもよく、異なっていてもよい。
本発明の光学活性化合物は、上述のような構造を有するため、金属、イオン、または他の化合物に対して高い相互作用が得られやすい。そのため、光学活性化合物は、金属またはイオンに配位して、配位化合物を構成することができる。また、光学活性化合物は、ベース部と架橋鎖で構成される2つ以上の環構造を有する。このような光学活性化合物は、クリプタント(または光学活性クリプタント)と呼ばれることがある。光学活性化合物は、他の化合物を包接して包接化合物を構成することができる。
[配位化合物]
本発明には、イオンまたは金属と、イオンまたは金属に配位する上記の光学活性化合物とを含む配位化合物も包含される。イオンまたは金属は、配位化合物の用途に応じて選択できる。配位化合物は、イオンおよび金属から選択される少なくとも一種を含んでいればよい。
金属としては、酸化数が0の金属、例えば、パラジウム(0)、ニッケル(0)、白金(0)などが挙げられる。イオンとしては、非金属イオン、金属イオンが挙げられる。
非金属イオンとしては、有機アンモニウムカチオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。有機アンモニウムカチオンとしては、光学活性化合物が有する環のサイズなどに応じて選択でき、例えば、アルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。アルキルアンモニウムカチオンにおけるアルキル基には、置換基(第6置換基)を有するアルキル基も含まれる。アルキル基としては、例えば、C1−6アルキル基(エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基など)が挙げられる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
第6置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、C6−14アリール基(フェニル基、ナフチル基など)が挙げられる。アリール基には、置換基(第7置換基)を有するアリール基も含まれる。第7置換基としては、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。第7置換基としてのアルキル基としては、例えば、C1−6アルキル基(エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基など)が挙げられる。第6置換基および第7置換基のアルコキシ基およびアルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、C1−6アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基など)などが挙げられる。第6置換基および第7置換基の個数は、それぞれ、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
金属イオンとしては、例えば、典型金属イオン(例えば、周期表第1族、第2族、第12〜第16族の金属イオン)、遷移金属イオンが挙げられる。典型金属イオンの具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、セシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンが挙げられる。遷移金属イオンの具体例としては、バナジウムイオン、モリブデンイオン、マンガンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、白金イオン、銅イオン、銀イオン、金イオンが挙げられる。しかし、金属イオンはこれらに限定されるものではない。金属イオンの酸化数は配位化合物の用途に応じて選択すればよい。
配位化合物は、1分子に1つの金属原子または金属イオンを含む単核錯体であってもよく、1分子に2つ以上の金属原子または金属イオンを含む多核錯体であってもよい。
配位化合物は、1分子に、配位子としての上記の光学活性化合物を1つ有していればよく、2つ以上有していてもよい。配位化合物は、第1配位子としての上記の光学活性化合物と、他の配位子(第2配位子)とを有していてもよい。第2配位子は、単座配位子であってもよく、多座配位子であってもよい。配位化合物は、1分子中に1つの第2配位子を含んでいてもよく、2つ以上の第2配位子を含んでいてもよい。配位化合物が1分子中に2つ以上の第2配位子を含む場合、少なくとも2つの第2配位子は同じであってもよく、全ての第2配位子が異なっていてもよい。
第2配位子としては、特に制限されないが、例えば、アクア、ヒドロキソ、オキソ、チオラト、スルフィド、ハロ(クロロ、ブロモなど)、ヒドリド、シアナト、アジド、チオシアナト、イソチアナト、ニトロ、ニトリト、カルボニル、カルボキシラト、オキサラト、オキソアニオン、アミン(アンミン、トリアミン、テトラミン、ピリジン、トリイミンなど)、ホスフィン(トリアリールホスフィン(トリフェニルホスフィンなど)、トリアルキルフォスフィンなど)、ホスフェート(ハロゲン原子を有するホスフェート(ヘキサフルオロホスフェートなど)も含む)、ボーレート(ハロゲン原子を有するボーレート(テトラフルオロボーレートなど)も含む)、パークロレート、オレフィン(ジベンジリデンアセトン、シクロオクタジエンなど)、アミノ酸または糖などの構造を含むものが挙げられる。
下記式(II)および(III)に一価の金属イオンMを1つ含む単核錯体および金属イオンMを2つ含む二核錯体の例をそれぞれ示す。
Figure 2021130627
ここで、Xは、一価のカウンターアニオン(第2配位子)である。A、A、およびC1〜C3は上述と同じである。
[光学活性化合物の製造方法]
光学活性化合物は、例えば、第1架橋鎖および第2架橋鎖の一方、ならびに第3架橋鎖で、第1ベース部と第2ベース部とが連結され、第1架橋鎖および第2架橋鎖の他方で第1ベース部と第2ベース部とが連結されていない環状化合物(第1環状化合物)を準備する第1A工程と、第1架橋鎖および第2架橋鎖が交差して重なるように、第1架橋鎖および第2架橋鎖の他方で第1ベース部と第2ベース部とを連結して不斉場を生じさせる第2A工程と、を有する、光学活性化合物の製造方法により製造できる。第1A工程と第2A工程とを経る製造方法を、A法と称することがある。
あるいは、光学活性化合物は、第1架橋鎖および第2架橋鎖の双方で第1ベース部と第2ベース部とが連結され、第3架橋鎖で第1ベース部と第2ベース部とが連結されていない環状化合物(第2環状化合物)を準備する第1B工程と、第3架橋鎖で第1ベース部と第2ベース部とを連結することにより、第1架橋鎖と第2架橋鎖とを交差させて、不斉場を生じさせる第2B工程と、を有する、光学活性化合物の製造方法により製造できる。第1B工程と第2B工程とを経る製造方法を、B法と称することがある。
第1A工程および第1B工程をまとめて第1工程と称し、第2A工程および第2B工程をまとめて第2工程と称する場合がある。
以下に、まず第2工程について説明する。
(第2工程)
第2工程において、第1ベース部と第2ベース部との連結は、別途準備した架橋鎖を含む鎖状化合物における架橋鎖の両末端をそれぞれ、第1ベース部の第1原子と第2ベース部の第2原子とに直接または間接的に(例えば、第4ヘテロ原子を介して)結合させることで行うことができる。また、第1ベース部と第2ベース部との連結は、第1ベース部の第1原子および第2ベース部の第2原子の一方において鎖を伸長させることにより架橋鎖を形成し、成長した架橋鎖の末端を他方に結合することにより行ってもよい。架橋鎖の鎖長のばらつきを抑制する観点からは、前者の方法が有利である。
架橋鎖と各ベース部との連結は、例えば、架橋鎖が結合する第1原子および第2原子を含む基またはこれらの原子に結合する第4ヘテロ原子を含む基と、架橋鎖を含む鎖状化合物の末端基との反応を利用して行われる。そのため、第1原子、第2原子または第4ヘテロ原子を含む基の種類に応じて、鎖状化合物の末端基を選択すればよい。また、架橋鎖と各ベース部との連結のための上記の反応には、公知の反応が利用できる。例えば、カップリング反応、求核置換反応、求電子置換反応、エステル結合形成反応、アミド結合形成反応、ウレタン結合反応、イミン形成反応、オレフィンメタセシス反応などから選択される少なくとも1つを利用してもよい。これらの反応と脱離反応とを組み合わせてもよい。
例えば、第2工程において、イミン形成反応を利用する場合、第1ベース部にホルミル基を有するとともに、第2ベース部にホルミル基を有する第1環状化合物と、双方の末端に第1級アミノ基を有する鎖状化合物とを反応させることにより、架橋鎖で第1ベース部と第2ベース部とを連結することができる。この反応は、第2A工程に使用してもよく、第2B工程に使用してもよい。第1工程において、他の反応を利用して架橋鎖で第1ベース部と第2ベース部とを連結した場合には、第2工程で第3架橋鎖を導入する際に、イミン形成反応を利用することが有利である。
第2工程において、例えば、第1ベース部にヒドロキシ基を有するとともに、第2ベース部にヒドロキシ基を有する第1環状化合物と、双方の末端が脱離基である鎖状化合物とを反応させることにより、架橋鎖で第1ベース部と第2ベース部とを連結することができる。第2A工程では、鎖状化合物として、例えば、第1架橋鎖および第2架橋鎖の他方の架橋鎖の末端に脱離基が結合した化合物を用いる。第2B工程では、鎖状化合物として、例えば、第3架橋鎖の末端に脱離基が結合した化合物を用いる。ベース部のヒドロキシ基の酸素原子が第4ヘテロ原子に相当する。形成される架橋鎖は、末端がヒドロキシ基由来の酸素原子を介して第1原子および第2原子に結合している。下記に第2A工程および第2B工程の反応工程の例を示す。
Figure 2021130627
ここで、Lは、脱離基である。
上記反応工程式に示されるように、第2A工程では、第1ベース部A1と第2ベース部A2とが第1架橋鎖C1および第3架橋鎖C3で連結された第1環状化合物(c1−1)において、第1ベース部A1のヒドロキシ基および第2ベース部A2のヒドロキシ基の部分に、第2架橋鎖C2の双方の末端に脱離基Lを有する鎖状化合物(c2−1)を反応させることにより、第2架橋鎖C2による連結が行われる。同様に、第2B工程では、第1ベース部A1と第2ベース部A2とが第1架橋鎖C1および第2架橋鎖C2で連結された第2環状化合物(c1−2)において、第1ベース部A1のヒドロキシ基および第2ベース部A2のヒドロキシ基の部分に、第3架橋鎖C3の双方の末端に脱離基Lを有する鎖状化合物(c2−2)を反応させることにより、第3架橋鎖C3による連結が行われる。これらの工程により、光学活性化合物(Ia−1)が形成される。
上記反応工程式では、双方の末端が酸素原子(第4ヘテロ原子)である第1架橋鎖C1と双方の末端が酸素原子(第4ヘテロ原子)である第3架橋鎖C3とで第1ベース部A1と第2ベース部A2とが連結された構造を有する第1環状化合物(c1−1)を用いた例を示す。同様に、第2環状化合物(c1−2)は、双方の末端が酸素原子(第4ヘテロ原子)である第1架橋鎖C1と双方の末端が酸素原子(第4ヘテロ原子)である第2架橋鎖C2とで第1ベース部A1と第2ベース部A2とが連結された構造を有する例である。
脱離基(上記反応工程式では、Lで示される)としては、例えば、トシル基、メシル基、トリフルオロメチルスルホニル基、ノナフルオロブチルスルホニル基、ハロゲン原子(I、Br、Cl、Fなど)、エステル基、ヒドロキシ基が挙げられる。しかし、これらの場合に限らず、脱離基の種類は、架橋鎖の末端の原子、第1原子および第2原子またはこれらに結合する第4ヘテロ原子の種類などに応じて選択すればよい。
第1鎖状化合物の量は、第1環状化合物1モルに対して、例えば0.8〜1.2モルであり、0.9〜1.1モルであってもよい。第2鎖状化合物の量は、第2環状化合物1モルに対して、例えば0.8〜1.2モルであり、0.9〜1.1モルであってもよい。
第2工程は、例えば、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、有機溶媒が挙げられる。溶媒は、プロトン性溶媒および非プロトン性溶媒のいずれであってもよい。プロトン性溶媒としては、アルコール(エタノール、プロパノール、2−プロパノールなど)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)などが挙げられる。非プロトン性溶媒としては、炭化水素(ヘキサン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルムなど)、エーテル(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど)、エステル(酢酸エステルなど)、ケトン(アセトン、エチルメチルケトンなど)、ニトリル(アセトニトリルなど)、アミド(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の反応工程式[2A][2B]において、第2工程は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、第3級アミン(トリエチルアミンなど)、金属水酸化物などであってもよいが、金属炭酸塩が好ましい。金属炭酸塩としては、アルカリ金属(具体的には、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)の炭酸塩、周期表第2族金属(Ca、Mgなど)の炭酸塩などが挙げられる。中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸セシウムなどを用いてもよい。塩基は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基の量は、第1環状化合物または第2環状化合物1モルに対して、例えば、2〜4モルであり、2.5〜3.5モルであってもよい。
第2工程の反応を効率よく進行させる観点から、脱離基Lが、Clの場合には、反応系にアルカリ金属ヨウ化物(NaI、KI、CsIなど)を導入してもよい。アルカリ金属ヨウ化物の存在下で第2工程を行うと、脱離基LがClからIに変換されて、反応を促進することができる。
第2工程は、加熱下で行うことができる。第2工程の温度は、例えば、50℃以上溶媒の沸点以下であり、70〜150℃または80〜120℃であってもよい。
第2工程の加熱を行う時間は、特に制限されないが、例えば、1時間以上200時間以下であり、6時間以上150時間以下、または12時間以上100時間以下であってもよい。
第2工程は、大気圧下で行うことができるが、必要に応じて、加圧下または減圧下で行ってもよい。
第2工程で得られる反応混合物は、例えば、公知の分離方法または精製方法に供することにより、光学活性化合物を得ることができる。分離方法および精製方法としては、例えば、濾過、洗浄、抽出、蒸留、晶析、再結晶、およびクロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
B法により光学活性化合物を形成する場合、架橋鎖(特に、第1架橋鎖および第2架橋鎖)の鎖長または構造、塩基の種類などを選択することにより、一方の鏡像異性体を優先的に形成することもできる。例えば、塩基に含まれる金属イオンの種類またはサイズを選択することで、金属イオンを鋳型としたり、架橋鎖との相互作用の程度を調節したりすることができる。これにより、架橋鎖の立体的な配置を制御することができ、一方の鏡像異性体を優先的に形成することができる。
なお、本発明には、上記の第1環状化合物または第2環状化合物のような環状化合物も包含される。環状化合物は、光学活性化合物を合成するための前駆体(または中間体)などとして有用である。環状化合物の中でも、第1ベース部および第2ベース部が、それぞれ、有機環を含み、架橋鎖が、それぞれ、オキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含むものが好ましい。特に、第1ベース部と、第2ベース部と、第1ベース部と第2ベース部とを連結する2つの架橋鎖と、を含む環状化合物が好ましい。なお、2つの架橋鎖のそれぞれの一端は、第1ベース部が有する2つの第1原子に結合し、2つの架橋鎖のそれぞれの他端は、第2ベース部が有する2つの第2原子に結合している。
(第1工程)
第1工程では、第1環状化合物または第2環状化合物が準備される。これらの環状化合物は、市販品を購入することにより準備してもよく、公知の製造方法またはその変法を用いて合成することにより準備してもよい。
各環状化合物は、例えば、第ベース部と第2ベース部とを架橋鎖で連結することにより得ることができる。架橋鎖によるベース部の連結は、第2工程の場合に準じて行うことができる。各環状化合物は、例えば、架橋鎖を含む鎖状化合物における架橋鎖の両末端をそれぞれ、第1ベース部の第1原子と第2ベース部の第2原子とに直接または間接的に(例えば、第4ヘテロ原子を介して)結合させることにより得ることができる。
第1工程では、第1ベース部の3つの第1原子のうち2つと第2ベース部の3つの第2原子のうちの2つとを2つの架橋鎖で連結させる。そのため、少なくとも、2つの架橋鎖による連結を行う間、残る1つの第1原子(または第2原子)、もしくはこの原子に結合した第4ヘテロ原子は、必要に応じて保護基で保護されていてもよい。そして、保護基を脱保護させた第1環状化合物または第2環状化合物が、第2工程に供される。
保護基は、保護基で保護する第1原子、第2原子、または第4ヘテロ原子の種類に応じて選択される。例えば、第2工程において、第1ベース部のヒドロキシ基および第2ヒドロキシ基の部分に鎖状化合物を反応させる場合、保護基は、ヒドロキシ基の保護基である。このような保護基としては、例えば、還元条件で脱保護され得る保護基(ベンジル基など)、塩基性条件で脱保護され得る保護基(ベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基など)、酸化条件で脱保護され得る保護基(p−メトキシベンジル基など)などが挙げられる。
保護基で保護されたヒドロキシ基−O−Proを第1ベース部A1および第2ベース部A2に有する第1環状化合物(c1−1p)は、例えば、以下の[1A]に示すような反応工程式により得ることができる。第1環状化合物(c1−1p)を、例えば、還元、加水分解、または酸化して、保護基Proを脱保護することにより、第1環状化合物(c1−1)を準備することができる。
Figure 2021130627
ここで、LおよびLは脱離基である。
反応工程式[1A]では、保護基で保護されたヒドロキシ基−O−Proと、2つの遊離のヒドロキシ基とを有する第1ベース部A1を含む化合物(b1p)と、鎖状化合物(c3−1)(c3−2)とを反応させることにより、第1ベース部A1に酸素原子(第4ヘテロ原子)を介して第1架橋鎖C1および第3架橋鎖C3が結合した化合物(b1p−c)が形成される。そして、この化合物(b1p−c)と保護基で保護されたヒドロキシ基−O−Proと、2つの遊離のヒドロキシ基とを有する第2ベース部A2を含む化合物(b2p)とを反応させることにより、第1環状化合物(c1−1p)が得られる。
脱離基Lと脱離基Lとは同じであってもよく、異なっていてもよい。脱離基L側よりも脱離基L側の末端と第1ベース部を含む化合物(b1p)との反応を優先する観点から、脱離基Lとしては、脱離基Lよりも脱離性が低いものを用いてもよい。例えば、スルホニル基を含む脱離基Lと、ハロゲン原子(I、Br、Clなど)などの脱離基Lとを含む鎖状化合物(c3−1)(c3−2)を用いてもよい。
化合物(b1p)と鎖状化合物(c3−1)(c3−2)との反応、および(b1p−c)と化合物(b2p)との反応は、それぞれ、第2工程に準じて行うことができる。反応条件も、第2工程の条件を参照できる。
第2環状化合物(c1−2)および第2架橋鎖C2と第3架橋鎖C3とで第1ベース部A1および第2ベース部A2が連結された第1環状化合物についても、第1環状化合物(c1−1)の場合に準じて、得ることができる。
第1ベース部A1を有する化合物および第2ベース部A2を有する化合物としては、市販品を用いてもよく、公知の製造方法またはその変法により合成したものを用いてもよい。
光学活性化合物が、第1ベース部、第2ベース部または架橋鎖などに置換基を有する場合、置換基は、製造過程の適当な段階で導入することができる。必要に応じて置換基を保護基で保護した状態で上記の各工程を行い、適当な段階で脱保護してもよい。
反応工程式[1A]において、得られる化合物(b1p−c)および化合物(c1−1p)は、反応混合物をそのまま次工程に用いてもよく、必要により、分離または精製して次工程に用いてもよい。分離方法または精製方法としては、例えば、第2工程について記載したものから選択できる。
なお、本発明には、ベース部(第1ベース部および第2ベース部の一方のベース部)に、第1〜第3架橋鎖のうち、2つの架橋鎖に対応する分子鎖が結合した化合物も包含される。このような化合物は、光学活性化合物を合成するための中間体(または上記の環状化合物を合成するための前駆体)などとして有用である。このような化合物としては、ベース部に第1架橋鎖および第3架橋鎖に対応する分子鎖が結合した上記の化合物(b1p−c)の他、ベース部に第2架橋鎖および第3架橋鎖に対応する分子鎖が結合した化合物、ベース部に第1架橋鎖および第2架橋鎖に対応する分子鎖が結合した化合物が挙げられる。中でも、ベース部が芳香環を含み、分子鎖がオキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含むものが好ましい。なお、2つの分子鎖のそれぞれの一端は、ベース部が有する2つの第1原子(または第2原子)に結合している。分子鎖の他端は、上記の脱離基(脱離によりヒドロキシ基を生成し得る脱離基など)であってもよく、ヒドロキシ基であってもよく、保護基で保護されたヒドロキシ基であってもよい。保護基としては、上述のヒドロキシ基の保護基が挙げられる。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下に、実施例1および2の合成に関する反応工程を示す。
Figure 2021130627
ここで、Etは、エチル基であり、Bnは、ベンジル基であり、Tsは、トシル基である。
実施例1(A法による光学活性化合物9aの製造)
(1)化合物7aの合成
下記の手順で、化合物5aを合成し、化合物5aを用いてベンジル基で保護されたヒドロキシ基を有する第1環状化合物7aを合成した。
4−ベンジルオキシ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルエステル(化合物4)10.0g(34.7mmol)、および2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エチルトシレート24.6g(76.3mmol)を、アセトニトリル100mLおよびジメチルホルムアミド(DMF)33mLの混合物に溶解した。得られる溶液に、炭酸カリウム12.0g(86.8mmol)を加え、90℃で、22時間撹拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去した。残渣を10質量%濃度の塩酸で中和し、さらに水を添加した。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、4−ベンジルオキシ−3,5−ビス{2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エトキシ}安息香酸エチルエステル(化合物5a)(収量17.9g,収率88%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン/酢酸エチル=5/1(体積比)の混合物を、展開溶媒として用いた。
化合物5aの分析結果は以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.38 (t, J=7.1 Hz, 3H), 3.56-3.72 (m, 16H), 3.86-3.88 (m, 4H), 4.18-4.20 (m, 4H), 4.34 (q, J=7.2 Hz, 2H), 5.12 (s, 2H), 7.27-7.37 (m, 5H), 7.50-7.52 (m, 2H).
なお、化合物4は、N. Michihata, Y. Kaneko, Y. Kasai, K. Tanigawa, T. Hirokane, S. Higasa, H. Yamada, J. Org. Chem. 2013, 78, 4319-4328.に記載の方法に準じて合成できる。
化合物5a 10.0g(17.0mmol)および3−ベンゾイルオキシ−4,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルエステル(化合物3)4.90g(17.0mmol)を、DMF250mLに溶解させた溶液に、炭酸セシウム22.1g(67.9 mmol)およびヨウ化セシウム1.76g(6.79mmol)を加えた。得られる混合物を、100℃で37時間撹拌した。得られる反応混合物から、溶媒を留去した。残渣を、1質量%濃度の塩酸で中和し、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、第1環状化合物7a(収量2.35g,収率18%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン/アセトン=4/1(体積比)の混合物を展開溶媒として用いた。
第1環状化合物7aの分析結果は、以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.37 (t, J=7.0 Hz, 6H), 3.62-3.81 (m, 18H), 4.14-4.24 (m, 6H), 4.34 (q, J=7.0 Hz, 4H), 5.08 (s, 2H), 5.15 (s, 2H), 7.29-7.32 (m, 5H), 7.35-7.39 (m, 5H), 7.44-7.46 (m, 4H).
なお、化合物3は、A. Alam, Y. Takaguchi, H. Ito, T. Yoshida, S. Tsuboi, Tetrahedron, 2005, 61, 1909-1918. に記載の方法に準じて合成できる。
(2)第1環状化合物であるジヒドロキシ−ジベンゾ−25−クラウン−8(化合物8a)の合成
化合物7a 3.40g(4.22mmol)を、エタノール(62mL)およびクロロホルム(31mL)の混合溶媒に溶解させ、パラジウムカーボン(パラジウム含有量10質量%)(0.55g)を加えた。混合物を、水素気流下、室温(25℃)で16時間撹拌した。得られる反応混合物を、セライトで濾過することによりパラジウムカーボンを除去した。得られた溶液から、溶媒を留去した。残渣を、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、第1環状化合物8a(白色粉末,収量1.92g,収率73%)を得た。
第1環状化合物8aの分析結果は以下の通りである。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.37 (t, J=6.3 Hz, 6H), 3.77-3.91 (m, 18H), 4.18-4.23 (m, 6H), 4.31 (q, J=6.3 Hz, 4H), 7.12 (br s, 1H), 7.28-7.31 (m, 4H), 7.33 (br s, 1H).
(3)光学活性化合物9aの合成
第1環状化合物8a 1.96g(3.08mmol)およびトリエチレングリコールジトシレート1.42g(3.09mmol)を240mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸カリウム1.28g(9.26mmol)を加え、95℃で58時間撹拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去した。残渣を、10質量%濃度の塩酸(25mL)で中和し、さらに水を加えた。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより化合物9aを分離した。シリカゲルクロマトグラフィーでは、ジクロロメタン/アセトン=4/1(体積比)の混合物を展開溶媒として用いた。分離した化合物9aを、展開溶媒としてクロロホルムを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により精製し、さらにジエチルエーテルで洗浄し、溶媒を留去することにより、化合物9a(白色粉末,収量0.97g,収率43%)を得た。
化合物9aの分析結果は以下の通りである。
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ: 1.09 (t, J=6.0 Hz, 6H), 3.31-3.35 (m, 4H), 3.40-3.50 (m, 12H), 3.62-.366 (m, 4H), 3.70-3.76 (m, 4H), 3.80-3.92 (m, 8H), 4.20 (q, J=6.0 Hz, 4H), 4.30-4.33 (m, 2H), 4.46-4.50 (m, 2H), 7.53 (d, J=1.8 Hz, 2H), 7.56 (d, J=1.8 Hz, 2H).
(4)化合物9aの光学分割
キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、上記で得られた化合物9aを光学分割したところ、比旋光度がプラスの化合物とマイナスの化合物にそれぞれ分離でき、それら絶対値がほぼ同じであることを確認した。
実施例2(A法による光学活性化合物9bの製造)
(1)化合物7bの合成
ベンジル基で保護されたヒドロキシ基を有する第1環状化合物7bは、下記の手順で、化合物5bを用いる方法により合成した。
(a)化合物5bの合成
化合物4 5.03g(17.3mmol)およびテトラエチレングリコールモノトシレート13.2g(38.1mmol)を60mLのアセトニトリルおよび20mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸カリウム5.98g(43.3mmol)を加え、90℃で17時間撹拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去した。残渣を、10質量%濃度の塩酸で中和し、さらに水を添加した。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、4−ベンジルオキシ−3,5−ビス(2−{2−[2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ]エトキシ}エトキシ)安息香酸エチルエステル(化合物5b)(収量7.66g,収率68%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、ジクロロメタン/メタノール=10/1(体積比)を展開溶媒として用いた。
化合物5bの分析結果は以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.38 (t, J=7.0 Hz, 3H), 2.57 (br s, 2H), 3.56-3.80 (m, 28H), 4.18-4.20 (m, 4H), 4.35 (q, J=7.0 Hz, 2H), 5.11 (s, 2H), 7.29 (s, 2H), 7.31-7.50 (m, 5H).
(b)化合物5b’の合成
化合物5b 7.66g(12.0mmol)およびp−トルエンスルホニルクロリド4.81g(25.2 mmol)を30mLのジクロロメタンに溶解させた。得られる溶液に、トリエチルアミン3.04g(30.0mmol)を氷浴下で加え、室温(25℃)で18時間撹拌し、水を加えた。得られる混合物を酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、4−ベンジルオキシ−3,5−ビス(2−{2−[2−(2−トシルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)安息香酸エチルエステル(化合物5b’)(収量8.06g,収率70%)を得た。化合物5b’は、化合物5bのトリオキシエチレン鎖の末端のヒドロキシ基がトシル基に変換された化合物である。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン/酢酸エチル=3/2(体積比)を展開溶媒として用いた。
化合物5b’の分析結果は以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.37 (t, J=6.5 Hz, 3H), 2.42 (s, 6H), 3.54-3.85 (m, 24H), 4.11-4.13 (m, 4H), 4.17-4.19 (m, 4H), 4.34 (q, J=6.5 Hz, 2H), 5.10 (s, 2H), 7.28 (s, 2H), 7.31-7.35 (m, 6H), 7.47-7.49 (m, 2H), 7.77-7.80 (m, 5H).
(c)化合物7bの合成
化合物5b’12.90g(13.6mmol)および化合物3 4.86g(16.9mmol)を500mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸セシウム16.51g(50.7mmol)を加え、95℃で36時間撹拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去し、1質量%濃度の塩酸を加えて酸性にし、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ジベンジルオキシ−ジベンゾ−31−クラウン−10(化合物7b)(収量4.62g,収率38%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン/アセトン=6/1(体積比)を展開溶媒として用いた。
化合物7bの分析結果は以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.37 (t, J= 7.2 Hz, 6H), 3.50-3.88 (m, 24H), 4.07-4.23 (m, 8H), 4.34 (q, J=7.2 Hz, 4H), 5.11 (s, 2H), 5.16 (s, 2H), 7.18-7.22 (m, 2H), 7.29-7.45 (m, 10H), 7.54-7.58 (m, 2H).
(2)第1環状化合物であるジヒドロキシ−ジベンゾ−31−クラウン−10(化合物8b)の合成
化合物7b 1.96g(2.19mmol)を、40mLのエタノールおよび20mLのクロロホルムに溶解させた。得られる溶液にパラジウムカーボン(パラジウム含有量10質量%)0.31gを加えた。混合物を、水素気流下、室温(25℃)で18時間撹拌した。得られる反応混合物を、セライトで濾過することにより、パラジウムカーボンを除去した。得られた溶液から、溶媒を留去した。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、第1環状化合物8b(収量1.08g,収率70%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン/アセトン=3/1(体積比)を展開溶媒として用いた。
第1環状化合物8bの分析結果は、以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.36 (t, J=7.1 Hz, 6H), 3.67-3.87 (m, 24H), 4.16-4.19 (m, 8H), 4.33 (q, J=7.1 Hz, 4H), 7.09 (br s, 1H), 7.29-7.34 (m, 4H), 7.59 (br s, 1H).
(3)光学活性化合物9bの合成
第1環状化合物8b 0.30g(0.42mmol)およびテトラエチレングリコールジトシレート0.22g(0.42mmol)を20mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸セシウム0.45g(1.38mmol)を加え、95℃で63時間撹拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去した。残渣を、10質量%濃度の塩酸で中和し、さらに水を加えた。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物9b(収量0.23g,収率62%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、ジクロロメタン/アセトン=3/1(体積比)の混合物を展開溶媒として用いた。
化合物9bの分析結果は、以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.37 (t, J=7.2 Hz, 6H), 3.50-3.85 (m, 36H), 4.11-4.31 (m, 12H), 4.35 (q, J=7.2 Hz, 4H), 7.28-7.30 (m, 4H).
下記に、実施例3および4における化合物6a、化合物6bまたは化合物6cから化合物9aまたは化合物9bを合成する際の反応工程式を示す。
Figure 2021130627
ここで、Etは、エチル基であり、Bnは、ベンジル基であり、Tsは、トシル基である。
実施例3(B法による光学活性化合物9aの合成)
(1)化合物6aの合成
化合物4に代えて、化合物3を用いた以外は、実施例1の(1)における化合物5aの場合と同様にして、2−ベンジルオキシ−3,4−ビス{2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エトキシ}安息香酸エチルエステル(化合物6a)を得た。
化合物6aの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 3.51-3.97 (m, 20H), 4.21-4.25 (m, 4H), 4.35 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 5.14 (s, 2H), 7.30-7.34 (m, 2H), 7.34-7.37 (m, 3H),7.44-7.47 (m, 2H).
(2)化合物10aおよび11aの合成
化合物6a 1.82g(3.10mmol)および化合物3 0.89g(3.10mmol)を100mLのDMFに溶解させた溶液を調製した。得られる溶液に、炭酸セシウム3.03g(9.30mmol)およびヨウ化セシウム0.40g(1.55mmol)を加え、100℃で63時間攪拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去し、1質量%濃度の塩酸を加えて酸性にした後、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去することにより固体を得た。得られた固体をエタノールで洗浄し、乾燥させることにより、ヒドロキシ基がベンジル基で保護された第2環状化合物であるジベンジルオキシ−DB24クラウン−8(化合物10aおよび化合物11aの混合物)(収量850mg,収率34%)を得た。混合物中の化合物10aと11aとのモル比は、1:1であった。
混合物の生成は、H−NMRにより確認した。分析結果は以下の通りである。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 7.51-7.27 (m, 14H), 5.13 (s, 4H, Ar-OCH2Ph), 4.34 (q, J = 7.2 Hz, 4H, -CO2CH2CH3), 4.29-4.10 (m, 8H), 3.98-3.69 (m, 16H), 1.37 (t, J = 7.2 Hz, 6H, -CO2CH2CH3).
(3)第2環状化合物12aおよび13aの合成
上記(2)で得られた化合物10aおよび11aの混合物0.430g(0.53mmol)を30mLのエタノールおよび15mLのクロロホルムに溶解させた。得られる溶液にパラジウムカーボン(パラジウム含有量10質量%)0.121gを加えた。混合物を、水素気流下、室温(25℃)で69時間攪拌した。得られる反応混合物を、セライトで濾過することにより、パラジウムカーボンを除去した。得られた溶液から、溶媒を留去した。得られる残渣から、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて、第2環状化合物12aを分離した。シリカゲルクロマトグラフィーでは、クロロホルム:トルエン:酢酸エチル=1:1:1(体積比)の混合物、クロロホルム:トルエン:酢酸エチル=1:1:2(体積比)及び酢酸エチルの混合物の順に用いて精製した。クロロホルム:トルエン:酢酸エチル=1:1:1(体積比)による溶出部分から、第2環状化合物であるジヒドロキシ−DB24クラウン8(化合物12a)(収量0.136g,収率41%)を得た。クロロホルム:トルエン:酢酸エチル=1:1:2(体積比)及び酢酸エチル部分から、第2環状化合物であるジヒドロキシ−DB24クラウン8(化合物13a)(収量0.146g,収率44%)を得た。
化合物12aおよび13aの生成は、H−NMRにより確認した。分析結果は以下の通りである。
化合物12a:
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.67-7.65 (br, 2H, -OH), 7.24 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 4.33 (q, J = 7.1 Hz, 4H, -CO2CH2CH3のCH2部分), 4.26-4.18 (m, 4H), 4.18-4.09 (m, 4H), 3.89-3.71 (m, 16H), 1.37 (t, J = 7.1 Hz, 6H, -CO2CH2CH3のCH3部分).
化合物13a:
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 1.37 (t, J=7.1 Hz, 6H), 3.69 (s, 4H), 3.77 (s, 4H), 3.79-3.81 (m, 4H), 3.82-3.84 (m, 4H), 4.19-4.21 (m, 4H), 4.23-4.25 (m, 4H), 4.33 (q, J=7.1 Hz, 4H), 6.98 (br s, 2H), 7.16 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 7.29 (d, J=1.8 Hz, 2H).
(4)光学活性化合物9aの合成
上記(3)で得られた第2環状化合物12a 80mg(0.13mmol)およびトリエチレングリコールジトシレート59mg(0.13mmol)を16mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸カリウム53mg(0.38mmol)を加え、95℃で43時間攪拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去し、残渣を、10質量%濃度の塩酸で中和し、さらに水を加えた。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去した。得られる残渣をGPCにより精製することにより、化合物9a(収量56mg,収率59%)を得た。
化合物9aの生成は、H−NMRにより確認した。分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 4.39-4.33 (m, 6H), 4.28-4.18 (m, 8H), 4.06-4.00 (m, 2H), 3.93-3.60 (m, 24H), 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
(5)化合物9aの光学分割
キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、上記で得られた化合物9aを光学分割したところ、比旋光度がプラスの化合物とマイナスの化合物にそれぞれ分離でき、それら絶対値がほぼ同じであることを確認した。
実施例4(B法による光学活性化合物9bの製造)
(1)化合物6bの合成
化合物3 8.23g(28.5mmol)およびテトラエチレングリコールモノトシレート22.0g(63.0mmol)を100mLのアセトニトリルおよび33mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸カリウム9.89g(71.6mmol)を加え、24時間還流した。得られる反応混合物から溶媒を留去し、10質量%濃度の塩酸で中和し、水を加えた。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、5−ベンジルオキシ−3,4−ビス(2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)安息香酸エチルエステル(化合物6b)(収量8.97g,収率49%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、酢酸エチル、アセトン/酢酸エチル=1/40(体積比)の混合物、およびクロロホルム/メタノール=40/1(体積比)の混合物の順に用いて精製した。クロロホルム/メタノール=40/1(体積比)の混合物による溶出部分から、化合物6bを分離した。
化合物6bの生成は、H−NMRにより確認した。分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 7.46 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.39-7.36 (m, 3H), 7.33-7.30 (m, 2H), 5.14 (s,, 2H), 4.35 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 4.23 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 4.22 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.89 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.80 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.81-3.57 (m, 24H), 1.38 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
(2)化合物6cの合成
上記(1)で得られた化合物6b 1.70g(2.65mmol)およびp−トルエンスルスルホニルクロリド1.06g(5.57mmol)を、8mLのジクロロメタンに溶解させた。得られる溶液に、トリエチルアミン3.80mL(27.3mmol)を氷冷下で加え、攪拌しながら室温(25℃)に戻し、18時間室温(25℃)で攪拌を続けた。得られる反応混合物に、水を加え、ジクロロメタンで2回抽出し、有機相を回収した。有機相を、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、5−ベンジルオキシ−3,4−ビス(2−{2−[2−(2−p−トルエンスルホン酸エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)安息香酸エチルエステル(化合物6c)(収量1.74g,収率69%)を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン/アセトン=6/1(体積比)の混合物、およびトルエン/アセトン=4/1(体積比)の混合物の順で精製した。トルエン/アセトン=4/1(体積比)の混合物による溶出部分から化合物6cを分離した。
化合物6cの生成は、H−NMRにより確認した。分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 7.28-7.44 (m, 7H), 5.11 (s, 2H), 4.32 (q, J= 7.2 Hz, 2H), 4.22 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 4.19 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.54-3.87 (m, 28H), 2.97-2.83 (br, 2H), 1.35 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
(3)化合物10bおよび11bの合成
上記(2)で得られた化合物6c 1.99g(2.09mmol)および化合物3 0.618g(2.14mmol)を100mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸セシウム2.14g(6.56mmol)を加え、100℃で72時間攪拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去し、1質量%濃度の塩酸を加え、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去した。得られる残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ヒドロキシ基がベンジル基で保護された第2環状化合物であるジベンジルオキシ−DB30クラウン10(化合物10bおよび化合物11bの混合物)(収量0.983g,収率52%)を得た。混合物中の化合物10bと11bとのモル比は、1:1であった。なお、化合物3は、実施例1と同様の手順で合成した。シリカゲルクロマトグラフィーでは、トルエン:アセトン=7:1(体積比)の混合物、およびトルエン:アセトン=4:1(体積比)の混合物の順に用いて、精製した。トルエン:アセトン=4:1(体積比)による溶出部分から化合物10bおよび化合物11bの混合物を分離した。
混合物の生成は、H−NMRにより確認した。分析結果は以下の通りである。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 7.45 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.39-7.34 (m, 6H), 7.33-7.30 (m, 2H), 5.12 (s, 4H), 4.34 (q, J = 7.0 Hz, 4H), 4.23-4.25 (m, 4H), 4.19 (m, 4H), 3.89 (m, 4H), 3.81 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.74-3.77 (m, 4H), 3.66-3.70 (m, 8H), 3.61-3.64 (m, 4H), 1.37 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
(4)第2環状化合物12bおよび13bの合成
上記(3)で得られた化合物10bおよび11bの混合物0.960g(1.07mmol)を26mLのエタノールおよび13mLのクロロホルムに溶解させた。得られる溶液にパラジウムカーボン(パラジウム含有量10質量%)0.337gを加えた。混合物を、水素気流下、室温(25℃)で23時間攪拌した。得られる反応混合物を、セライトで濾過することにより、パラジウムカーボンを除去した。得られた溶液から溶媒を留去した。残渣にメタノールを添加することにより析出した固体を、濾過により分離し、メタノールで洗浄し、乾燥することにより、第2環状化合物であるジヒドロキシ−DB30クラウン10(化合物12bおよび13bの混合物)(収量339mg,収率44%)を得た。混合物における化合物12bと化合物13bとのモル比をH−NMRスペクトルの積分比により確認したところ、化合物12b:化合物13b=93:7(モル比)であった。得られた混合物に、エタノール25mLを加え、室温(25℃)で10時間攪拌した。固体を濾過により分離して、エタノールで洗浄し、乾燥することにより、第2環状化合物12bを単離した(収量190mg,収率25%)。固体を濾過した後の濾液から溶媒を留去し、乾燥させることにより、化合物12bと化合物13bとの混合物(化合物12b:化合物13b=1:10(モル比))(収量367mg,収率48%)を得た。この混合物に、イソプロパノール6mLを加えて、攪拌、冷却し、固体を析出させた。固体を濾過により分離して、イソプロパノールで洗浄し、乾燥することにより、化合物13bを単離した(収量323mg,収率42%)。
化合物12bおよび化合物13bの分析結果は、以下の通りである。
化合物12b:
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 7.43 (s, 2H), 7.23 (s, 2H), 7.08 (s, 2H), 4.32 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 4.21 (m, 8H), 3.87-3.64 (m, 24H), 1.36 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
化合物13b:
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 7.65-7.50 (br, 2H), 7.29 (s, 2H),7.13 (s, 2H), 4.33 (q, J = 7.0 Hz, 4H), 4.23-4.18 (m, 8H), 3.86-3.47 (m, 24H), 1.36 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
(5)光学活性化合物9bの合成
第2環状化合物12b 80.1mg(0.112mmol)およびテトラエチレングリコールジトシレート56.5mg(0.112mmol)を16mLのDMFに溶解させた。得られる溶液に、炭酸セシウム110mg(0.337mmol)を加え、95℃で20時間攪拌した。得られる反応混合物から溶媒を留去した。残渣を、10質量%濃度の塩酸(25mL)で中和し、さらに水を加えた。得られる混合物を、酢酸エチルで3回抽出処理し、有機相を回収した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機相から溶媒を留去した。得られる残渣をGPCにより精製することにより、化合物9b(収量60.5mg,収率62%)を得た。
化合物9bの分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 4.35 (q, J = 7.3 Hz, 4H), 4.17-4.30 (m, 12H), 3.80-3.92 (m, 12H), 3.64--3.70 (m, 24H), 1.38 (t, J = 7.3 Hz, 6H).
実施例5(化合物9aによるキラルアミン認識の評価)
実施例1または実施例3で光学分割した比旋光度がプラスの化合物とマイナスの化合物とをクロロホルムまたはクロロホルム/アセトニトリル=1/1(体積比)の混合物に溶解させた溶液に、(S)−1−フェニルエチルアンモニウムClO塩、(R)−1−フェニルエチルアンモニウムClO塩、(S)−1−(1−ナフチル)エチルアンモニウムClO塩、L−フェニルアラニンベンジルエーテルHClO塩、(S)−2−フェニルグリシノールHClO塩を添加し、化合物9aのH−NMRスペクトルのシグナル変化を追跡した。このときのシグナル変化から、化合物9aとゲストとの会合定数を求めた。その結果、比旋光度がマイナスの化合物とプラスの化合物の光学活性なアンモニウム塩に対する1段階目の会合定数に1.1〜1.5倍の差が、また2段階目の会合定数に1.0〜3.0倍の差が認められた。
実施例6(化合物9aによるナトリウムイオンおよびカリウムイオン認識の評価)
実施例1または実施例3で合成した化合物9aのナトリウムイオンおよびカリウムイオン認識能を下記の手順で評価した。
ラセミ体の化合物9aをアセトニトリル、メタノール/アセトニトリルまたはジメチルスルフォキシド/アセトニトリルの混合物に溶解させ、化合物9aを40μmol/L〜100μmol/Lの濃度で含むそれぞれの溶液を調製した。これらの溶液に、NaClOまたはKClOを10〜300等量まで添加量を変えて添加し、このときの紫外可視近赤外分光スペクトルの変化を測定した。このときのシグナル変化から、化合物9aとナトリウムイオンまたはカリウムイオンとのその相互作用が確認され、また、ナトリウムイオンとカリウムイオンは段階的に2個の金属イオンが認識されることが認められた。また、両金属イオンとも1段階目の会合定数に比較し、2段階目の会合定数が大きく減ずることが認められた。
本発明の光学活性化合物は、分子鎖が交差するように重なった構造により形成される不斉場を有する。このような特殊な構造より、不斉反応、不斉触媒反応、医薬品、化成品、キラルカラムクロマトグラフィーの充填剤、液晶ディスプレイ、レンズフィルターなど様々な用途に応用可能である。ただし、これらの用途は単なる例示であり、光学活性化合物の用途は、これらに限定されるものではない。

Claims (20)

  1. 第1ベース部と、第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する複数の架橋鎖と、を含み、
    前記複数の架橋鎖は、第1架橋鎖、第2架橋鎖および第3架橋鎖の少なくとも3つを含み、
    前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖および前記第3架橋鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する3つの第1原子に結合し、
    前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖および前記第3架橋鎖のそれぞれの他端は、前記第2ベース部が有する3以上の原子価を有する3つの第2原子に結合し、
    前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖が交差するように重なることで不斉場を生じている、光学活性化合物。
  2. 前記第1原子のそれぞれは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、またはホウ素原子であり、
    前記第2原子のそれぞれは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、またはホウ素原子である、請求項1に記載の光学活性化合物。
  3. 前記第1原子の少なくとも2つは、炭素原子であり、
    前記第2原子の少なくとも2つは、炭素原子である、請求項1または2に記載の光学活性化合物。
  4. 前記第1ベース部および前記第2ベース部の少なくとも一方は、有機環を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  5. 前記有機環は、芳香環を含む、請求項4に記載の光学活性化合物。
  6. 前記第1ベース部および前記第2ベース部の双方は、芳香環を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  7. 前記第1架橋鎖、前記第2架橋鎖、および前記第3架橋鎖のそれぞれは、炭化水素鎖またはヘテロ原子を含む分子鎖である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  8. 前記第1架橋鎖は、−X−R−(式中、Xは、酸素原子、イオウ原子、イミノ基またはN−置換イミノ基であり、Rは、アルキレン基である。)で表される第1ユニットの繰り返し構造を含み、かつ
    前記第2架橋鎖は、−X−R−(式中、Xは、酸素原子、イオウ原子、イミノ基またはN−置換イミノ基であり、Rは、アルキレン基である。)で表される第2ユニットの繰り返し構造を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  9. 前記第1架橋鎖における前記第1ユニットの繰り返し数をn1とし、前記第2架橋鎖における前記第2ユニットの繰り返し数をn2とするとき、n1およびn2の少なくとも一方は、3以上である請求項8に記載の光学活性化合物。
  10. n1およびn2の双方が3以上16以下である、請求項9に記載の光学活性化合物。
  11. およびXは酸素原子である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  12. 前記第3架橋鎖は、前記ヘテロ原子を含む分子鎖であり、
    前記ヘテロ原子は、酸素原子、イオウ原子、および窒素原子からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  13. 前記第3架橋鎖は、オキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学活性化合物。
  14. イオンまたは金属と、前記イオンまたは前記金属に配位する請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学活性化合物とを含む配位化合物。
  15. 第1ベース部と、第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する2つの架橋鎖と、を含み、
    前記第1ベース部および前記第2ベース部は、それぞれ、有機環を含み、
    前記2つの架橋鎖は、それぞれ、オキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含み、
    前記2つの架橋鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する2つの第1原子に結合し、
    前記2つの架橋鎖のそれぞれの他端は、前記第2ベース部が有する3以上の原子価を有する2つの第2原子に結合する、環状化合物。
  16. 第1ベース部と、前記第1ベース部に結合した2つの分子鎖と、を有し、
    前記第1ベース部は、有機環を含み、
    前記分子鎖のそれぞれの一端は、前記第1ベース部が有する3以上の原子価を有する2つの第1原子に結合し、
    前記分子鎖のそれぞれは、オキシアルキレンユニットの繰り返し構造を含む、中間体化合物。
  17. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学活性化合物の製造方法であって、
    前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の一方、ならびに前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結され、前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の他方で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結されていない第1環状化合物を準備する第1A工程と、
    前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖が交差して重なるように、前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の他方で前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結して不斉場を生じさせる第2A工程と、を有する、光学活性化合物の製造方法。
  18. 前記第1環状化合物が、前記第1ベース部にヒドロキシ基を有するとともに、前記第2ベース部にヒドロキシ基を有し、
    前記第2A工程において、前記他方の架橋鎖を含み、かつ双方の末端が脱離基である鎖状化合物と、前記第1環状化合物とを反応させて、前記他方の架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する、請求項17に記載の光学活性化合物の製造方法。
  19. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学活性化合物の製造方法であって、
    前記第1架橋鎖および前記第2架橋鎖の双方で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結され、前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とが連結されていない第2環状化合物を準備する第1B工程と、
    前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結することにより、前記第1架橋鎖と前記第2架橋鎖を交差させて、不斉場を生じさせる第2B工程と、を有する、光学活性化合物の製造方法。
  20. 前記第2環状化合物が、前記第1ベース部にヒドロキシ基を有するとともに、前記第2ベース部にヒドロキシ基を有し、
    前記第2B工程において、前記第3架橋鎖を含み、かつ双方の末端が脱離基である鎖状化合物と、前記第2環状化合物とを反応させて、前記第3架橋鎖で前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する、請求項19に記載の光学活性化合物の製造方法。
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