以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図には、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。Z軸は、鉛直方向に平行である。上方および下方は、それぞれZ軸正方向およびZ軸負方向に対応する。
また、本実施の形態では、基板Fは、X−Y平面に平行に載置されており、カッターホイール101が基板Fの表面F1に接近および離間するように、スクライブヘッドは動作する。以下の説明では、基板Fの表面F1に接近する方向は、単に「下方」と称され、基板Fの表面F1から離間する方向は、単に「上方」と称される場合がある。そのため、本実施の形態では、スクライブヘッドの各構成が上下方向に移動するとは、基板Fの表面F1に対して接近および離間することと同義である。
<実施形態>
図1は、スクライブ装置1の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、スクライブ装置1は、移動台2と、スクライブヘッド10と、を備えている。移動台2は、ボールネジ3と螺合されている。移動台2は、一対の案内レール4によってY軸方向に移動可能に支持されている。モータ5の駆動によりボールネジ3が回転することで、移動台2が、一対の案内レール4に沿ってY軸方向に移動する。
移動台2の上面には、モータ5が設置されている。モータ5は、上部に位置する載置部6をXY平面で回転させて所定角度に位置決めする。モータ5により水平回転可能な載置部6は、図示しない真空吸着手段を備えている。載置部6上に載置された基板Fは、この真空吸着手段によって、載置部6上に保持される。
スクライブ装置1は、移動台2とその上部の載置部6とを跨ぐように、ブリッジ7が支柱8a、8bに架設されている。ブリッジ7には、レール9が取り付けられている。レール9とスクライブヘッド10とは、移送部11を介して接続され、移送部11がレール9をスライド移動することにより、スクライブヘッド10は、X軸方向に移動するように設置されている。
スクライブ装置1を用いて基板Fの表面F1にスクライブラインを形成する場合、まず、カッターホイール101が取り付けられたホルダユニット110がスクライブヘッド10に取り付けられる。
スクライブ装置1は、スクライブヘッド10を所定の位置に移動させ、カッターホイール101に対して所定の荷重を印加して、基板Fの表面F1へ接触させる。その後、スクライブ装置1は、スクライブヘッド10をX軸方向に移動させることにより、基板Fにスクライブラインを形成する。
スクライブ装置1は、必要に応じて載置部6を回動ないしY軸方向に移動可能である。上記では、スクライブヘッド10がX軸方向に移動し、載置部6がY軸方向に移動すると共に、回転するスクライブ装置1について示したが、スクライブ装置1はスクライブヘッド10と載置部6とが相対的に移動するものであればよい。たとえば、スクライブヘッド10が固定され、載置部6がX軸、Y軸方向に移動し、かつ回転するスクライブ装置1であってもよい。
次に、スクライブヘッド10の構成について説明する。
図2は、スクライブヘッド10の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、スクライブヘッド10は、プレート12と、取付板13と、ストッパ14と、カッター機構100と、移動機構200と、撮像部400と、駆動機構600と、を備える。この他、スクライブヘッド10は、測定部300(図9参照)と、管502に圧力を付与するための圧力付与部500(図12)を備える。
プレート12は、スクライブヘッド10を支持する。スクライブヘッド10は、プレート12に支持された状態で、スクライブ装置1の移送部11(図1参照)に取り付けられる。
カッター機構100は、基板Fの表面F1にスクライブラインを形成するカッターホイール101(図3(a)〜(c)参照)を保持する。移動機構200は、カッターホイール101を基板Fの表面F1に接近および離間させる。測定部300(図9参照)は、基板Fに対するカッターホイール101の荷重(スクライブ荷重)を測定する。撮像部400は、基板Fと載置部6とを位置合わせするために用いられる。以下、各構成について説明する。
図3(a)は、カッター機構100の構成を示す斜視図である。
図3(a)に示すように、カッター機構100は、ホルダユニット110と、ジョイント120と、受け部130と、ブロック部材140と、カバー150と、を備える。カッターホイール101は、ホルダユニット110に保持される。
図3(b)は、ホルダユニット110およびジョイント120について、Y−Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、X軸正側から見た場合の断面図である。なお、図3(b)では、ジョイント120にホルダユニット110が装着されている部分のみが示されている。また、ホルダユニット110のうち、ジョイント120から突出している部分は側面図で示されている。図3(c)は、ホルダユニット110のうち、ジョイント120から突出している部分について、X−Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、Y軸正側から見た場合の側面図である。
図3(b)、(c)に示すように、ホルダユニット110は、上記したカッターホイール101と、ホルダ111と、ピン軸112と、を備える。
ホルダ111は、傾斜面111cが形成されている上部111aがジョイント120に装着される。ホルダ111の下部111bには、カッターホイール101を保持するための側壁113a、113bがX軸方向に向かい合って形成されている。側壁113a、113bは、X軸方向から見た場合に、下端に向かって幅が狭くなる台形形状に形成されている。側壁113a、113bとの間に溝114が形成されている。
側壁113a、113bの下端には、円形の孔115a、115bが溝114を跨ぐようにして同軸上に形成されている。孔115a、115bの中心軸は、X軸に平行である。孔115a、115bと、カッターホイール101の孔101aとが同一直線上に並ぶように、カッターホイール101を溝114に挿入する。そして、孔115a、115bと、カッターホイール101の孔101aとに、孔101a、孔115a、115bよりも小さい径を有するピン軸112が通される。ピン軸112の両端部のそれぞれは側壁113a、113bで係止される。このようにして、カッターホイール101は、ホルダユニット110に回転可能に保持される。
なお、図3(c)では、ピン軸112は一点鎖線で示され、孔115a、115bは、破線で示されている。
ホルダ111は、上部111aと下部111bとが一体的に形成されている。または、上部111aと下部111bとが別体であってもよい。
図3(b)、(c)に示すように、ジョイント120の下面には、上方(Z軸正側)に向かって開口する円形の穴121が形成されている。穴121の最奥部121aに磁石122が設置されている。また、穴121の内部には、穴121の中心軸G1と垂直な方向に位置決めピン123が設けられる。穴121にホルダ111の上部111aが挿入されることにより、ホルダユニット110がジョイント120に装着される。
ホルダ111は、少なくとも上部111aが磁性材料により形成されている。このため、上部111aが穴121に挿入されると、上部111aが磁石122に吸引され、上部111aの傾斜面111cがピン123に当接する。
また、中心軸G1を挟んで位置決めピン123とは反対側であってジョイント120の下方に、ホルダ111の上部111aに向かってボルト124が嵌められている。これにより、ホルダ111の傾斜面111cが位置決めピン123に適切に当接する。
図3(a)に示すように、受け部130は、筒状の部材であり、下面に孔131が形成されている。孔131にジョイント120が嵌められる。受け部130の上方にブロック部材140が接続部材141を介して設けられている。
カバー150は、L字状の部材であり、ブロック部材140に装着される。カバー150の上面151には図示しない孔が形成されており、この孔に、後述する駆動機構600のナット632が装着される(図2参照)。上面151には、また、ストッパ14が設けられている。ストッパ14については、追って図13を参照して説明する。また、カバー150のX軸負側の側面に移動機構200が連結される(図2参照)。
図4(a)は、駆動機構600の構成を説明するための分解斜視図である。
図4(a)に示すように、駆動機構600は、サーボモータ610と、カップリング620と、すべりネジ630と、を備えている。すべりネジ630は、ネジ軸631およびナット632から構成される。ナット632は、軸部633および鍔部634から構成される。
サーボモータ610の下面610aには、ベアリング611が装着されている。サーボモータ610には、ベアリング611の孔611aを貫通するようにシャフト612が設けられている。シャフト612は、サーボモータ610の回転軸である。
ネジ軸631はナット632に嵌め合わされている。ネジ軸631およびシャフト612は、それぞれ、カップリング620に固定される。このようにして組み立てられると、図4(b)に示すような駆動機構600が構成される。
なお、ベアリング611とカップリング620との間には、取付板13が設けられる(図2参照)。
図5は、移動機構200の構成を説明するための分解斜視図である。
図5に示すように、移動機構200は、筒部210と、第1移動子220と、第2移動子221と、支持部222と、磁石223、224と、伝達部230と、を備えている。
筒部210は、矩形状の箱体のX軸負側の側面210aに、Z軸方向に沿って突部211が一体的に設けられた形状である。筒部210は、上面から下面にかけて第1移動子220および第2移動子221を収容するための内部空間212が形成されている。内部空間212を形成する筒部210の内側面212aの形状は円柱形状であり、また、筒部210の内側面212aの径はZ軸方向に沿って一定である。また、筒部210の上面および下面の開口のそれぞれに、蓋213が設けられている。
突部211のX軸正側の側面211aの中央部分には、トラック形状の開口214が形成されている。開口214は、内部空間212に連通するように形成されている。これにより、内部空間212は開口214を介して筒部210の外部へと連通している。
筒部210のY軸負側の側面210bには、内部空間212に連通する孔210c、210dが形成されている(図8参照)。孔210c、210dに、管501、502が取り付けられている。本実施の形態では、後述する圧力付与部500(図12参照)から供給される空気圧が管502から筒部210の内部空間212に供給される。管501には、圧力付与部500から空気圧は供給されず、大気圧が開放されている。
図6(a)は、筒部210の内部空間212に収容される各部材の構成を示す分解斜視図である。図6(b)は、図5で示した伝達部230をX軸負側から見た場合の伝達部230の斜視図である。
図5、図6(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221は、磁性材料から形成される球であり、同一の径となるように形成されている。第1移動子220および第2移動子221の径は、筒部210の内側面212aの径よりも僅かに小さい。
支持部222は、第1移動子220および第2移動子221を所定距離だけ離間させて支持する。支持部222は円柱形状の部材であり、Z軸方向の中央部分に、X軸方向に貫通する孔225が形成されている。本実施形態では、支持部222は第1移動子220および第2移動子221の径よりも小さく形成されている。なお、支持部222の径は、筒部210の内側面212aの径よりも小さければ、第1移動子220および第2移動子221の径と同一または大きくても構わない。
支持部222の両端には、孔225に連通する円形状の凹部222a、222bが形成されている。凹部222a、222bには、孔225に連通するネジ孔222c、222d(図7(a)参照)が形成されており、磁石223、224は凹部222a、222bに嵌め込まれる。
また、支持部222の孔225に後述するピン232(図6(b)参照)を挿入したとき、ピン232を孔225内で止めるために、ネジ226が用いられる。ネジ226は、ネジ孔222d(図7(a)参照)に挿入されてネジ留めされる。
磁石223、224は円柱形状であり、磁石223、224のそれぞれに第1移動子220および第2移動子221のそれぞれが接触する。第1移動子220は磁石223の上面223aに接触する。第2移動子221は磁石224の下面224aに接触する。上面223aおよび下面224aは、X−Y平面に平行な面に形成されている。また、磁石223、224のサイズは同一である。
図5、図6(b)に示すように、伝達部230は、X軸負側の側面に、Z軸方向に延びる溝231が形成されている。溝231の幅および深さは一定である。溝231の幅は、図5の突部211の幅よりも僅かに大きい。溝231の底面231aの中央部分にはピン232が設けられている。ピン232は、支持部222に形成されている孔225に挿入される。このため、ピン232は、孔225の径と同一か若干小さくなるように形成されている。
伝達部230は、溝231を挟んで側壁233、234がY軸方向に向かい合って形成されている。溝231のY軸方向の長さは、筒部210の突部211のY軸方向の長さと同一である(図7(b)、図8参照)。
次に、移動機構200の組み立てについて説明する。
図7(a)は、移動機構200およびプレート12をX−Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、Y軸正側から見た場合の断面図である。
図7(a)に示すように、筒部210の内部空間212に支持部222が収容される。このとき、支持部222の孔225が筒部210の開口214から視認されるように、支持部222は内部空間212に収容される。また、支持部222は、支持部222の中心軸が内部空間212の中心軸と一致するように、内部空間212に収容される。
このように配置された支持部222の孔225に伝達部230のピン232が挿入される。このとき、ピン232のX軸負側の端部が孔225のX軸負側から突出しないように挿入される。こうして、ピン232が孔225に挿入されると、支持部222のネジ孔222dにネジ226が挿入され、ピン232はネジ226によって孔225内の上方に押し付けられる。これにより、ピン232は支持部222に固定される。よって、ピン232を介して伝達部230と支持部222とが連結される。
このようにしてピン232が支持部222の孔225内で固定されると、ピン232のX軸負側の端部が孔225のX軸負側から突出しないため、ピン232は筒部210の内側面212aに接触しない。
支持部222が内部空間212に収容されると、磁石223の上面223aが凹部222aから露出するように、支持部222の凹部222aに磁石223が嵌め込まれる。同様に、磁石224の下面224aが凹部222bから露出するように、支持部222の凹部222bに磁石224が嵌め込まれる。
磁石223、224が支持部222に設置されると、第1移動子220が内部空間212に収容される。第1移動子220は磁性材料から形成されているため、磁石223に吸引されることにより、磁石223を介して支持部222に支持される。このとき、第1移動子220は磁石223に対してZ軸方向に離間することはない。第2移動子221も同様にして磁石224を介して支持部222に支持される。
上記のようにして、第1移動子220、第2移動子221、支持部222、および磁石223、224が筒部210の内部空間212に収容されると、第1移動子220および第2移動子221の全周と内部空間212との間に隙間が形成され、支持部222の全周と内部空間212との間に隙間が形成される。
図7(b)は、図7(a)の移動機構200をZ軸正側から見た場合の上面図である。
上記のとおり、支持部222の孔225に挿入されたピン232は、孔225から突出しないよう、支持部222のネジ孔222dに挿入されたネジ226で押さえ付けられている(図7(a)参照)。このため、図7(b)に示すように、伝達部230の溝231が筒部210の突部211に嵌まると、筒部210の側面211aと溝231の底面231aとの間に隙間が生じる。このため、伝達部230の側壁233、234と筒部210の側面210aとの間にも隙間が生じる。なお、図7(b)中の矢印は、隙間が形成されている箇所を指している。
こうして、筒部210の内部空間212に第1移動子220、第2移動子221、支持部222、および磁石223、224が収容された後、図5に示した2つの蓋213が、内部空間212の上面および下面の開口に装着されて、内部空間212の上面および下面が塞がれる。これにより、図8に示すように、移動機構200の組み立てが完了する。
このように、移動機構200が組み立てられると、筒部210のX軸負側の側面がプレート12に取り付けられる。これにより、移動機構200がプレート12に固定される(図2参照)。
なお、図7(a)では、ネジ226は支持部222のネジ孔222dに挿入され、ピン232はネジ226で下方から押さえ付けられていたが、ネジ孔222cにネジ226が挿入されてもよい。この場合、ピン232は、ネジ226に上方から押さえ付けられる。または、ネジ孔222c、222dのそれぞれにネジ226が挿入され、ピン232が上下方向から押さえ付けられて、支持部222の孔225内に固定されてもよい。
図9は、スクライブヘッド10の構成を示す斜視図である。ただし、説明の便宜上、図9では、カッター機構100、撮像部400、および駆動機構600は省略されている。
図9に示すように、測定部300は、ロードセル310と、当接部材320と、台330と、を備えている。
ロードセル310は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接したとき、カッターホイール101が基板Fに対して付与するスクライブ荷重を測定する。ロードセル310の上面には突起311が設けられている。
当接部材320は、ロードセル310の突起311に当接するブロック部材である。また、当接部材320は、下面にナット321が設けられている。台330は、ロードセル310が載置される台であり、プレート12に固定されている。
なお、図9では、当接部材320のナット321が、ロードセル310の突起311に当接している状態が図示されている。このような測定部300の動作に関しては、追って図13、〜図14(b)を参照して説明する。
図2に戻り、撮像部400は、プレート12に装着されている。撮像部400は、基板Fの載置部6における位置決めを行う際に用いられる。撮像部400によって撮像された画像により、ユーザは載置部6に基板Fが適切に位置付けられているかを把握することができる。
上記したカッター機構100、移動機構200、測定部300、および駆動機構600は、以下のようにして連結される。
図5、図9に示すように、伝達部230のX軸正側の側面に、カッター機構100のカバー150のX軸負側の側面(図2、図3(a)参照)が当接され、伝達部230とカバー150とが図示されないボルトで固定される。これにより、図1に示すように、カッター機構100と移動機構200とが連結される。
また、図9に示すように、伝達部230のY軸正側の側面に、当接部材320のY軸負側の側面が当接され、当接部材320のY軸正側の側面に形成されている孔から図示されないボルトが挿入されて、伝達部230と当接部材320とが連結される。こうして、図2に示すように、カッター機構100および当接部材320は、移動機構200の伝達部230に連結される。
カッター機構100と駆動機構600との連結は、まず、図2に示すように、サーボモータ610と取付板13とが連結される。取付板13は、L字状の板部材であり、X−Y平面に沿って平行な上壁13aに、図示しない孔がZ軸方向に形成されている。この孔に、サーボモータ610の下面610aに装着されているベアリング611(図4(a)、(b)参照)が嵌め合わされるようにして、上壁13aと下面610aとが図示しないネジでネジ留めされる。
次に、カッター機構100のカバー150の上面151に形成されている図示しない孔に、ナット632の鍔部634が密着するようにして軸部633が嵌められる(図4(a)、(b)参照)。このとき、ネジ軸631はナット632に噛み合わされた状態である。
そして、取付板13に連結された状態のサーボモータ610とネジ軸631とが、カップリング620を介して接続される(図4(a)、(b)参照)。最後に、取付板13の上壁13aの端縁からZ軸負側に延在する側壁13bがプレート12に図示しないネジでネジ留めされる。こうして、駆動機構600は、カッター機構100に装着された状態でプレート12に、取付板13を介して固定される。
サーボモータ610が駆動すると、シャフト612が回転駆動する。シャフト612の回転駆動力がカップリング620を介してネジ軸631に伝達される。これにより、ネジ軸631は回転し、このネジ軸631の回転によってナット632が上下方向に移動する。ナット632はカッター機構100のカバー150に連結されているため、ナット632が上下方向に移動すると、カッター機構100も上下方向に移動する。これにより、カッターホイール101を基板Fの表面F1に対して接近および離間させることができる。
上記駆動機構600は、すべりネジ630(ネジ軸631およびナット632)の構成に大きな特徴を有する。本発明者は、スクライブヘッド10にすべりネジ630を設けることにより、基板Fの表面F1のどの場所であっても、基板Fに対するカッターホイール101のスクライブ荷重が一定に維持されることを見出した。
以下、すべりネジ630の構成、および基板Fに対するカッターホイール101のスクライブ荷重について、図10(a)、(b)を参照して説明する。
図10(a)は、すべりネジ630を模式的に示した図である。図10(b)は、従来のスクライブヘッド(比較例)に適用されていたボールネジ700を模式的に示した図である。
図10(a)に示すように、すべりネジ630は、ネジ軸631のリード角が45°となるように設計されている。ネジ軸631がこのような角度に設定された場合、すべりネジ630の正効率と逆効率とが同一となる。
「発明が解決しようとする課題」で説明したとおり、従来のスクライブヘッドでは、基板Fの表面F1の場所によって、基板Fに対するカッターホイール101のスクライブ荷重に変動が生じていた。これは、カッターホイール101が基板Fの表面F1の形状に対応して動作していないためである。逆に言えば、カッターホイール101が基板Fの表面F1の形状に追従して動作すれば、スクライブ荷重の変動は生じないと考えられる。
カッターホイール101が基板Fの表面F1の形状に追従しない要因として、図10(b)に示すように、従来の多くのスクライブヘッドに設けられているボールネジ700の正効率および逆効率の関係が挙げられる。
一般に知られているように、ボールネジの正効率とは、ネジ軸の回転運動からナットの直線運動への変換効率であり、逆効率とは、ナットの直線運動からネジ軸の回転運動への変換効率である。
サーボモータの駆動によってボールネジのネジ軸が回転し、ナットが上下方向に移動すると、カッターホイールが基板を押圧して基板Fにスクライブ荷重が付与される。このように、カッターホイールの動作は、ボールネジの正効率に関わる。
一方、カッターホイールから基板Fにスクライブ荷重が付与されると、付与されたスクライブ荷重に抗して基板からカッターホイールに反力(抵抗力)が付与される。この反力はスクライブ荷重の向きとは逆方向であるため、反力によってスクライブ荷重が低減されないよう、サーボモータは基板に対してさらにスクライブ荷重を付与する。
具体的には、基板からカッターホイールに付与された反力によってカッターホイールおよびナットが押圧される。これにより、ナットが直線運動してネジ軸が回転し、サーボモータに反力が伝達される。サーボモータに基板からの反力が伝達されると、この反力に応じたスクライブ荷重が基板に付与される。このように、反力がサーボモータに伝達されることは、ボールネジの逆効率に関わる。
したがって、たとえば、正効率と逆効率とが一致しないボールネジであって、正効率は良好であるが、逆効率が正効率よりも低い場合、ボールネジのネジ軸の回転およびナットの直線運動は円滑に行われ、カッターホイールが円滑に基板に当接する。
基板からの反力をカッターホイールが受けた場合、反力によりカッターホイールを介してナットが押し上げられてネジ軸が回転する。このときのネジ軸の回転駆動力は、正効率におけるネジ軸の回転駆動力よりも小さい。このため、サーボモータへの反力の伝達が遅くなり、この反力に対して荷重を付与するタイミングも遅くなる。これにより、カッターホイールは基板表面に適切に当接することができない。
図10(b)に示すように、特許文献1等のスクライブヘッドに使用されているボールネジ700は、ネジ軸701とナット702とから構成されている。ネジ軸701のリード角は、精々33°程度に留まっており、ボールネジ700の正効率と逆効率とは同一ではない。このようなリード角の場合、ボールネジ700は、正効率より逆効率が低い。
ボールネジ700の正効率と逆効率とが同一でない場合、特に、図10(b)に示すような逆効率が正効率よりも低い場合、カッターホイール101が基板Fを押圧するときのネジ軸701の回転駆動力E3と、基板Fからの反力を受けたときのネジ軸701の回転駆動力E4とは同一の大きさとはならず、回転駆動力E4のほうが回転駆動力E3よりも小さい。
このため、ボールネジ700を使用した場合、基板Fの表面F1に対して上下方向に移動するときのカッターホイール101の応答性は低くなり、カッターホイール101の基板Fの表面F1に対する追従性が低い。よって、基板Fの表面F1が上下に変位している場合、カッターホイール101が基板Fの表面F1に対する当接を適切に維持できず、その結果、荷重変動が生じる。
これに対し、本実施の形態では、図10(a)に示すように、すべりネジ630は、リード角が45°に設計されているネジ軸631とナット632とで構成されている。ネジ軸631のリード角が45°の場合、すべりネジ630の正効率と逆効率との比は、1:1であり、正効率と逆効率とが同一である。
このようなネジ軸631を用いると、カッターホイール101が基板Fを押圧するときのネジ軸631の回転駆動力E1と、基板Fからの反力を受けたときのネジ軸631の回転駆動力E2との大きさが同一となる。
これにより、カッターホイール101の基板Fの表面F1に対する応答性が向上し、カッターホイール101の基板Fの表面F1に対する追従性が向上する。したがって、基板Fの表面F1の形状に対するスクライブ荷重の変動が抑制される。その結果、基板Fの表面F1のどの場所でも所定のスクライブ荷重を維持できる。
なお、本実施の形態では、リード角が45°に設計されているネジ軸631を含むすべりネジ630が用いられており、ボールネジは用いられていない。これは、リード角が45°に設計されたネジ軸631を含むすべりネジ630が、汎用品として普及しており、入手しやすいためである。
上記すべりネジ630を備える駆動機構600を駆動することにより、カッターホイール101を基板Fの表面F1に対して接近および離間させることができる。本実施の形態では、さらに、カッターホイール101を基板Fの表面F1に対して接近および離間させる別の構成を備えている。その構成が、図5〜図9を参照して説明した移動機構200と、後述する圧力付与部500の構成(図12参照)である。
なお、特許請求の範囲における「他の駆動機構」は、移動機構200と圧力付与部500との組み合わせに相当する。
次に、移動機構200の具体的な作用について、図11、および適宜図5〜図9を参照しながら説明する。
図9を参照して説明したとおり、カッター機構100および当接部材320は、移動機構200の伝達部230に連結される。よって、移動機構200では、伝達部230が基板Fの表面F1に対して上下方向に移動すると、カッター機構100および当接部材320も基板Fの表面F1に対して上下方向に移動する。図7(a)を参照して説明したとおり、伝達部230は、支持部222にピン232を介して連結されており、支持部222は、第1移動子220および第2移動子221を支持する。したがって、伝達部230の移動は、第1移動子220および第2移動子221の移動に起因する。そこで、第1移動子220および第2移動子221の移動について説明する。
図11(a)、(b)は、筒部210の内部空間212における第1移動子220および第2移動子221の移動と、内部空間212に供給される空気の流れ方を説明するための図である。
図11(a)は、内部空間212に第1移動子220等が収容された筒部210をY−Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、X軸正側から見た場合の断面図である。なお、図11(a)では、支持部222の孔225に伝達部230のピン232が嵌められている。すなわち、支持部222と伝達部230とが連結されている。また、図11(a)では、管501、502は省略されている。図11(b)は、図11(a)で示された第2移動子221付近を拡大した模式図である。
なお、以下の説明では、「第1移動子220に対して支持部222とは反対側」は、「第1移動子220のZ軸正側」を意味し、単に「第1移動子220の上方」または「第1移動子220の上側」と記載される場合がある。また、「第2移動子221に対して支持部222側」は、「第2移動子221のZ軸負側」を意味し、単に「第2移動子221の下方」または「第2移動子221の下側」と記載される場合がある。
図11(a)に示すように、筒部210の内部空間212に、第1移動子220、第2移動子221、支持部222、磁石223、224が収容され、伝達部230のピン232が支持部222の孔225に挿入される。このような内部空間212において、第2移動子221を介して支持部222と反対側に配置される第2空間R2に、圧力付与部500(図12参照)から空気圧が矢印の方向に供給される。本実施の形態では、第1移動子220に対して支持部222の反対側に配置される第1空間R1には、空気圧は供給されない。
図11(b)中の矢印の方向に示すように、圧力付与部500(図12参照)から供給される空気は、管502から孔210dを通り、第2空間R2に供給される。第2空間R2において、第2移動子221と内部空間212(筒部210の内側面212a)との間には隙間が生じている。このため、第2空間R2に供給された空気はこの隙間を通る。また、上記のとおり、筒部210の開口214は内部空間212と連通するように形成されているため、第2移動子221と内部空間212との間の隙間を通った空気の一部は、開口214から筒部210の外部へと排出される。
また、圧力付与部500(図12参照)から第2空間R2に供給された空気のうち一部は、支持部222と内部空間212との間の隙間、および第1移動子220と内部空間212との間の隙間を通って、第1空間R1に流入する。そして、図11(a)に示されている孔210cを通って管501から排出される。
図11(b)は、説明のために、第2移動子221と内部空間212との間の隙間、および支持部222と内部空間212との間の隙間が大きく図示されていたが、実際の隙間の間隔は非常に微小である。このため、第2空間R2に圧力付与部500(図12参照)から空気圧が供給されると、この空気圧によって第2移動子221は支持部222に向かって押圧される。
第2移動子221は、磁石224を介して支持部222に支持されており、支持部222には磁石223を介して第1移動子220が支持されている。よって、第2移動子221が第2空間R2内の空気圧に押圧されると、第2移動子221、支持部222、および第1移動子220が上方に移動する。
図2、図9を参照して説明したとおり、伝達部230を介して支持部222にカッター機構100が連結されている。よって、第1移動子220および第2移動子221の移動が伝達部230を介してカッター機構100に伝達される。したがって、カッター機構100は、第1移動子220および第2移動子221の移動とともに移動する。上記の場合、カッター機構100およびカッターホイール101は、上方に移動する。
このように、圧力付与部500から移動機構200に供給される空気圧によって、第1移動子220および第2移動子221が上方に移動する。この移動が伝達部230を介してカッター機構100に伝達されるため、カッターホイール101は上方に移動する。このようにして、圧力付与部500から第2空間R2に供給される空気圧によって、カッターホイール101に上向きの駆動力が付与される。
これに対し、駆動機構600のサーボモータ610がカッターホイール101を基板F側に移動させる方向(下向き)に駆動すると、すべりネジ630によりカッター機構100に駆動力が付与される。これにより、カッター機構100が下方向に移動する。このようにして、サーボモータ610の駆動力によって、カッターホイール101に下向きの駆動力が付与される。
このとき、カッター機構100が下方向に移動し、この移動が伝達部230を介して支持部222に伝達される。よって、第1移動子220および第2移動子221はカッター機構100とともに下方向に移動する。
このように、スクライブヘッド10では、カッターホイール101に対して互いに異なる方向の駆動力が付与される。そして、この駆動力によって、カッターホイール101が基板Fの表面F1に接近および離間する。
圧力付与部500が空気圧を付与する場合、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力の方が、サーボモータ610による駆動力よりも小さく設定される。この場合、第1移動子220および第2移動子221は下方向に移動し、これに伴い、カッター機構100も下方向に移動する。これにより、カッターホイール101は基板Fの表面F1に当接させることができる。
したがって、サーボモータ610による駆動力と、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力との差から、カッターホイール101のスクライブ荷重を設定することができる。
このように、互いに方向の異なる2つの駆動力の差からスクライブ荷重を取り出して、カッターホイール101から基板Fに対してこのスクライブ荷重を付与することができる。
また、上記のように、圧力付与部500(図12参照)から第2空間R2に空気圧が供給されると、供給された空気は、第2移動子221と筒部210の内側面212aとの間の隙間を通る。また、この隙間を通った空気の一部は、開口214から筒部210の外部へ排出されるが、残りの空気は、第2移動子221と筒部210の内側面212aとの間に生じている隙間を通って第1空間R1に流入し、孔210cから排出される。
このため、第1移動子220および第2移動子221は、上記隙間を空気が通ることにより、筒部210の内側面212aから離れる方向に圧力を受けて、この圧力が均衡した位置に調心される。よって、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離間した状態で、調心位置に支持される。
これにより、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aと非接触の状態で支持部222に支持されるため、移動時に摩擦抵抗を受けない。このため、第1移動子220および第2移動子221が内部空間212を上下方向に移動するとき、摩擦抵抗に妨げられることなく、円滑に移動できる。これにより、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重を微細かつ安定的に調整できる。
図12は、スクライブヘッド10の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、スクライブヘッド10は、図1に示したプレート12、取付板13、ストッパ14、カッター機構100、移動機構200、測定部300、撮像部400、および駆動機構600を備え、さらに、制御部510と、圧力付与部500と、駆動部520と、を備える。
圧力付与部500は、図示しない空圧源を含み、筒部210の内部空間212の第2空間R2に空気圧を供給する。
駆動部520は、プレート12を基板Fに対して上下方向に移動させる。上記したとおり、プレート12に、移動機構200の筒部210および測定部300の台330が固定されている。また、取付板13を介して駆動機構600がプレート12に固定されている。このため、プレート12が上下方向に移動すると、筒部210、台330、および台330に載置されているロードセル310、および駆動機構600も上下方向に移動する。
制御部510は、CPU等の演算処理回路や、ROM、RAM、ハードディスク等のメモリを含んでいる。制御部510は、メモリに記憶されたプログラムに従って各部を制御する。
次に、スクライブヘッド10の動作について、図13〜図14(b)を参照して説明する。なお、これらの動作は、図12の制御部510により行われる。
図13は、基板Fの表面F1にカッターホイール101が当接したときの、スクライブヘッド10をY軸負側から見た場合の側面図である。図14(a)、(b)は、スクライブヘッド10をX軸正側から見た場合の側面図である。ただし、図14(a)、(b)では、カッター機構100、撮像部400、および駆動機構600は省略されており、プレート12、移動機構200、および測定部300のみ図示されている。
スクライブヘッド10によるスクライブ動作が開始されると、制御部510は、サーボモータ610を駆動させて(図1、図4(a)、(b)参照)、カッターホイール101を一旦基板Fの表面F1に対して退避させる。この場合、制御部510はサーボモータ610に、カッター機構100が上方に移動するように駆動させる。
そして、制御部510はサーボモータ610を駆動させて(図1、図4(a)、(b)参照)、カッターホイール101を基板Fの表面F1に近付ける。つまり、制御部510はサーボモータ610に、カッター機構100が下方に移動するように駆動させる。さらに、制御部510は圧力付与部500に、第2空間R2に所定の空気圧を供給させる。このようにして、カッターホイール101には、サーボモータ610による駆動力と、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力とが付与される。
図13に示すように、制御部510は、上記2つの駆動力の差により、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するよう、圧力付与部500およびサーボモータ610を制御する。
図14(a)に示すように、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、当接部材320のナット321がロードセル310の突起311に当接する。この間、ロードセル310はカッターホイール101の荷重を測定する。
そして、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると(図13参照)、プレート12が基板Fの表面F1に対して位置N0から下方に移動して位置N1に位置する。プレート12には、ロードセル310を支持する台330が連結されているため、プレート12が移動すると台330も移動する。これにより、台330が支持するロードセル310も移動するため、当接部材320の突起311からロードセル310が離間する。
このように、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、ロードセル310が当接部材320から離間する。すなわち、ロードセル310は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、カッターホイール101の荷重を測定している。したがって、ロードセル310が当接部材320から離間する直前に測定された荷重は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接したときの荷重である。すなわち、このときの測定値は、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重である。
制御部510は、ロードセル310による測定結果(ロードセル310が当接部材320から離間する直前に測定されたスクライブ荷重)により、予め設定されたスクライブ荷重と比較して、スクライブ荷重を校正する。
また、図2に示すように、スクライブヘッド10は、カッター機構100のカバー150の上面151にストッパ14が設けられている。このストッパ14は、カッター機構100が上方に過剰に移動することを規制するために設けられている。圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力が、サーボモータ610による駆動力より過剰に大きい場合、カッター機構100は上方に移動しようとするが、ストッパ14が取付板13の上壁13aに当接するため、カッター機構100はこれ以上、上方に移動することができない。このようにして、ストッパ14によってカッター機構100の上方への移動が規制される。
次に、スクライブ荷重の校正について説明する。
サーボモータ610による駆動力と、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力との差が所定のスクライブ荷重となるように、制御部510は圧力付与部500に対し、第2空間R2に空気圧を供給させる。また、制御部510はサーボモータ610を駆動させる。このような所定のスクライブ荷重を得るために必要な空気圧および駆動力は、予め算出することが可能である。
しかしながら、理論上計算された空気圧が第2空間R2に供給されたとしても、たとえば、基板Fの種類やカッターホイール101の仕様や状態等により、所定のスクライブ荷重を得ることができない場合がある。サーボモータ610による駆動力も同様である。そこで、所定のスクライブ荷重を得るため、予め試験等を繰り返し行うことで、第2空間R2に供給される空気圧およびサーボモータ610の駆動力の校正値が算出されたデータテーブルが作成される。このようなデータテーブルは、スクライブヘッド10を制御するための制御部510に記憶される。所定のスクライブ荷重が設定されると、制御部510はデータテーブルを参照して、第2空間R2に適切な空気圧を圧力付与部500に供給させる。また、制御部510はサーボモータ610を駆動させる。このように、制御部510にデータテーブルが備えられている場合、所定のスクライブ荷重に設定することが可能である。
一方、図14(a)に示すように、本実施形態に搭載されているロードセル310は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、当接部材320に当接された状態で、カッターホイール101の荷重を継続して測定している。
そして、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると(図13参照)、図14(b)に示すように、ロードセル310と当接部材320とが離間する。このため、ロードセル310から当接部材320が離間する直前に測定された荷重は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接したときの荷重、すなわち、スクライブ荷重に相当する。
制御部510は、このようにして測定されたスクライブ荷重と設定されたスクライブ荷重とを比較して、所定のスクライブ荷重が基板Fに付与されるよう、圧力付与部500に適切な空気圧を供給させ、サーボモータ610を駆動させる。
このように、本実施の形態のスクライブヘッド10は、スクライブラインを形成する直前のスクライブ荷重を測定できる。つまり、スクライブラインを形成する際、必ずスクライブ荷重が測定されるため、その都度、適切な空気圧が第2空間R2に供給され、サーボモータ610が駆動される。このため、上記したようなデータテーブルは不要である。
また、データテーブルを参照してスクライブ荷重が調整されると、スクライブ動作の直前であらためてスクライブ荷重の測定が行われていない場合がある。この場合、基板Fにスクライブ荷重が付与されてはいるが、真に所定のスクライブ荷重が付与されているのか不明である。
これに対し、本実施の形態のスクライブヘッド10は、スクライブ動作を行う直前のスクライブ荷重が必ず測定される。よって、スクライブ荷重の信頼性が高まり、設定されたスクライブ荷重でスクライブラインを形成することができる。
<実施形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
図4(a)、(b)、図10(a)に示すように、すべりネジ630の正効率と逆効率とが同一であるように構成されている。この構成により、カッターホイール101が基板Fを押圧する場合と、基板Fからの反力を受けた場合におけるネジ軸631の回転駆動力E1、E2が等しい。よって、カッターホイール101の応答性が向上し、その結果、カッターホイール101の基板Fの表面F1に対する追従性が向上する。これにより、基板Fの表面F1の形状に対するスクライブ荷重の変動が抑制される。したがって、基板Fの表面F1のどの場所でも所定のスクライブ荷重を維持できる。
また、ネジ軸631のリード角が45°に設計されている。この構成により、すべりネジ630の正効率と逆効率との比が1:1となる。よって、すべりネジ630の正効率と逆効率とを同一に設定できる。
また、上記のとおり、スクライブヘッド10では、すべりネジ630が採用されている。リード角が45°のすべりネジ630は汎用品であり、容易に入手可能である。よって、駆動機構600を容易に構成できる。
図1、図5〜図9に示すように、スクライブヘッド10は、カッターホイール101を基板Fの表面F1に対し接近および離間させる他の駆動機構をさらに備える。この場合、他の駆動機構は、移動機構200および圧力付与部500である。
この構成により、カッターホイール101を基板Fの表面F1から離間させる方向の駆動力を移動機構200および圧力付与部500により付与することにより、駆動機構600と駆動力の差によって、基板Fに付与されるスクライブ荷重を、低荷重の範囲で微細に調整できる。よって、厚みが小さい基板Fに対して良好にスクライブラインを形成できる。
図2、図7(a)、(b)に示すように、スクライブヘッド10は、圧力付与部500から第2空間R2に空気圧を供給する。
この構成により、サーボモータ610による駆動力と、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力との差を、カッターホイール101に付与されるスクライブ荷重として設定することができる。このとき、第2空間R2に供給された空気の一部は、第2移動子221と筒部210の内側面212aとの間の隙間を通って、開口214から排出される。このように、隙間を空気が通ることにより、第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離れる方向に圧力を受け、この圧力が均衡した位置に調心される。また、第2空間R2に供給された空気の一部は、第1移動子220と筒部210の内側面212aとの間の隙間を通る。これにより、第1移動子220も調心される。
したがって、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離間した状態で、調心位置に支持される。また、第1移動子220の方も、筒部210の内側面212aとの間に隙間が設けられるように支持部222に配置されている。このように、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aに対して無接触の状態で支持されるため、移動時に摩擦抵抗を受けない。このため、移動機構200および圧力付与部500によって、安定的に、カッターホイール101に駆動力を付与できる。
よって、サーボモータ610による駆動力と、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力との差によって、カッターホイール101のスクライブ荷重を微細かつ安定的に調整できる。
このように、カッターホイール101のスクライブ荷重を微細かつ安定的に調整できるため、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重が基板Fの表面F1のどの場所でも一定に維持される。
図5に示すように、第1移動子220および第2移動子221は、球であり、筒部210の内部空間212は円柱形状である。
この構成により、第1移動子220および第2移動子221と筒部210の内側面212aとの隙間がなだらかに小さくなるため、第2空間R2に圧力付与部500から供給される空気を円滑に流通させ得る。また、筒部210の内側面212aの最大径の緯線の全周に亘って隙間を均一にできるため、第1移動子220および第2移動子221の調心が円滑に行われ、且つ、第1移動子220および第2移動子221の全周に亘って非接触の状態にできる。よって、第1移動子220および第2移動子221は、内部空間212を非接触の状態で円滑に上下方向に移動することができる。
図7(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221は、同径に形成されており、筒部210の内側面212aの径は、一定である。
この構成により、同種の球を第1移動子220および第2移動子221として使用できるので、移動機構200の構成を簡素化でき、組み立て作業が容易にできる。
また、第1移動子220および第2移動子221は磁性材料により形成され、支持部222は第1移動子220および第2移動子221の離間方向の両端に磁石223、224を備える。
この構成により、第1移動子220および第2移動子221が、支持部222に対して、離間方向に垂直な方向に移動可能になる。このため、支持部222が筒部210の径方向に移動不能であっても、第1移動子220および第2移動子221は、隙間に空気が流れることにより、支持部222に対して相対的に移動して、調心位置に位置付けられる。よって、第1移動子220および第2移動子221を円滑かつ適正に調心できる。その結果、内部空間212において、第1移動子220および第2移動子221をより適切に非接触な状態に設定できる。
図6(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221に対する磁石223の上面223aおよび磁石224の下面224aは平面である。
この構成により、第1移動子220および第2移動子221が磁石223、224に点接触するため、支持部222に対して第1移動子220および第2移動子221が移動しやすくなる。よって、第1移動子220および第2移動子221と筒部210の内側面212aとの隙間を流れる空気からの圧力により、第1移動子220および第2移動子221を円滑に調心位置に移動させることができる。
図5、図7(a)に示すように、伝達部230は開口214を介して支持部222に接続される。
この構成により、開口214は、第2空間R2に供給された空気の排出と、伝達部230の接続とに共用されるため、筒部210の構成を簡素化できる。
また、たとえば、サーボモータ610による駆動力より圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力の方が過剰に高い場合、基板Fにカッターホイール101が当接しているのにも関わらず、さらに基板Fにスクライブ荷重が付与されようとする。このような場合、基板Fに過剰にスクライブ荷重が付与されて、基板Fが破損する等の虞がある。
しかし、伝達部230のピン232は、開口214の範囲内で移動可能である。つまり、伝達部230の移動が規制される。よって、上記のような場合、第1移動子220および第2移動子221が下方に移動しようとしても、ピン232が開口214の下端に当接するため、第1移動子220および第2移動子221はそれ以上下方への移動することができない。これにより、基板Fに過剰なスクライブ荷重が付与される虞は生じない。
図7(a)、(b)に示すように、ピン232がネジ226により支持部222の孔225内で固定されると、ピン232の端部が孔225から突出しないため、ピン232は筒部210の内側面212aに接触しない。また、伝達部230のピン232が支持部222の孔225に挿入されると、筒部210の側面211aと、溝231の底面231aとの間に隙間が生じ、また、伝達部230の側壁233、234と筒部210の側面210aとの間にも隙間が生じるように、伝達部230の溝231が突部211に嵌められる。
このような構成により、伝達部230と筒部210との間の接触面積が低減される。このため、第1移動子220および第2移動子221が移動すると、伝達部230も移動するが、伝達部230と筒部210との間の摩擦抵抗が低減される。よって、カッターホイール101のスクライブ荷重をより微細に調整することができる。
図13〜図14(b)に示すように、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、当接部材320からロードセル310が離間する。ロードセル310は、当接部材320が離間する直前のカッターホイール101の荷重を測定する。この荷重は、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重である。
これにより、ユーザが設定したスクライブ荷重値と、ロードセル310が当接部材320から離間する直前に測定したスクライブ荷重値とが異なっていた場合、制御部510は、ロードセル310による測定値に応じて、圧力付与部500に対して第2空間R2に適切な圧力を供給させる。このようにして、適切なスクライブ荷重が調節される。これにより、スクライブ荷重の信頼性が高められた状態で、スクライブヘッド10はスクライブラインを形成することができる。
また、スクライブ動作を開始する際、スクライブ荷重が測定される。この測定により、所定のスクライブ荷重が基板Fに付与されるよう、圧力付与部500から第2空間R2に空気圧が供給される。また、サーボモータ610により駆動力が出力される。このため、スクライブ荷重の校正値がデータ化されたデータテーブルをスクライブヘッド10に搭載する必要はない。
また、カッターホイールが基板に当接した位置(0点位置)を検出するために、通常、カッターホイールの先端にセンサが設けられる。これにより、基板にカッターホイールが当接するとセンサが基板に接触して、0点位置が検出される。しかしながら、センサが基板に何度も接触するうちに、センサが劣化し、0点位置が正確に検出されない場合がある。このような場合、基板の表面の位置が特定されず、所定のスクライブラインを形成することができない。
この点、上記のとおり、本実施形態のスクライブヘッド10では、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、ロードセル310はカッターホイール101の荷重を継続して測定している。そして、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、ロードセル310が当接部材320から離間する。ロードセル310が当接部材320から離間する直前に荷重値が変化する。すなわち、荷重値が変化した時点が、基板Fの表面F1にカッターホイール101が当接した時点であり、このときのカッターホイール101の位置が0点位置である。
よって、ロードセル310によりスクライブ荷重が得られると同時に、0点位置が検出される。このように、センサを用いることなく、高精度にカッターホイール101の0点位置を検出することができる。
また、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、プレート12が下方に移動し、当接部材320のナット321とロードセル310の突起311とが離間する。
これにより、カッターホイール101は基板Fの表面F1に生ずるうねり(凹凸)に追従して上下方向に移動しながら、基板Fにスクライブラインを形成することができる。
また、スクライブヘッド10が使用されていない間でも、第2空間R2には常時、圧力付与部500から一定の空気圧が付与され得る。これにより、カッター機構100が常時、上方に位置付けられる。すなわち、カッターホイール101は基板Fや載置部6等に対して常時、上方に位置付けられる。よって、スクライブヘッド10の不使用時、スクライブヘッド10が自重により落下してカッターホイール101が基板Fや載置部6等に衝突して破損することを確実に防止することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、カッターホイール101に対して上方からサーボモータ610による駆動力が付与され、下方から圧力付与部500による空気圧が付与された。
変形例では、カッターホイール101に対して上方からサーボモータ610による駆動力に加えて、さらに、圧力付与部500による空気圧が付与される。
この構成によれば、高荷重でスクライブラインを形成するように変更することもできる。
この場合、図2、図5に示される管501と圧力付与部500とが図示しない配管で接続され、空圧源からの空気圧が第1空間R1および第2空間R2に、個別に供給されるように構成される。
また、図11(a)に示すように、第1空間R1に供給される空気圧は、第1移動子220および第2移動子221を下向きに押圧する。また、上記のとおり、サーボモータ610による駆動力の向きは、カッターホイール101を基板F側に移動させる方向(下向き)である。これに対し、圧力付与部500によって第2空間R2に付与される空気圧による駆動力は上向きである。
つまり、第1空間R1に供給される空気圧による駆動力およびサーボモータ610による駆動力と、第2空間R2に付与される空気圧による駆動力との差が、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重に相当する。
上記したとおり、本発明のサーボモータ610は、正効率と逆効率とが同一に設定されたボールネジが搭載されている。このため、サーボモータ610に加えて空気圧による駆動力が付加されると、より大きなスクライブ荷重を、より効率よく基板Fに付与することができる。
たとえば、セラミックスから形成される基板は硬質であるため、低荷重のスクライブ荷重では適切にスクライブラインを形成することができない。この点、スクライブヘッド10が上記のように構成されると、カッターホイール101は基板Fに対してより大きなスクライブ荷重を付与することができるため、硬質の基板や、厚みの大きい基板であってもスクライブラインを適切に形成することができる。
なお、第1空間R1に空気圧が供給される場合、第1空間R1に供給される空気の一部は、第1移動子220と内部空間212との間の隙間を通って、開口214から筒部210の外部へ排出される。このとき、第1移動子220は、筒部210の内側面212aから離れる方向に圧力を受けて、この圧力が均衡した位置に調心される。よって、第1移動子220は、筒部210の内側面212aから離間した状態で、調心位置に確実に支持される。
また、たとえば、基板の厚みが薄い基板は、より低荷重のスクライブ荷重を付与することが必要である。そこで、基板Fに低荷重のスクライブ荷重を付与したい場合、サーボモータ610に替えて圧力付与部500によって空気圧を付与することもできる。
この場合、上記したように、図2、図5に示される管501と圧力付与部500とが図示しない配管で接続され、空圧源からの空気圧が第1空間R1および第2空間R2に、個別に供給される。これにより、第1空間R1および第2空間R2の圧力差からスクライブ荷重を得ることができ、微小なスクライブ荷重を基板Fに付与することができる。
また上記実施の形態では、ネジ軸631のリード角が45°に設計されていたが、正効率と逆効率とが略等しくなるようにネジ軸631が設計されていればよい。たとえば、リード角が45°から数度程度の範囲内にある角度に設計されてもよい。
また、上記実施の形態では、送りネジとしてすべりネジ630を用いたが、正効率と逆効率とが略等しくなるように設計されているネジ軸を含む送りネジであれば、上記実施の形態のすべりネジ630に限られない。
たとえば、リード角が45°付近となるように設計されたネジ軸を含む専用のボールネジであってもよい。
また、上記の実施形態では、載置部6が回転して基板Fを回転することにより、スクライブラインの形成方向を90°変更することができるが、変形例として、カッターホイール101自体が90°回転するように構成されてもよい。この場合、図3(a)〜(c)に示すカッターホイール101を保持するホルダユニット110が回転可能なように構成される。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。