JP2021124416A - 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット - Google Patents

酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット Download PDF

Info

Publication number
JP2021124416A
JP2021124416A JP2020018653A JP2020018653A JP2021124416A JP 2021124416 A JP2021124416 A JP 2021124416A JP 2020018653 A JP2020018653 A JP 2020018653A JP 2020018653 A JP2020018653 A JP 2020018653A JP 2021124416 A JP2021124416 A JP 2021124416A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
binding
oxidized ldl
gpi
gpi complex
complex
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020018653A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6826740B1 (ja
Inventor
栄次 松浦
Eiji Matsuura
栄次 松浦
文章 竹中
Fumiaki Takenaka
文章 竹中
シェン ウェン タン
Xian Wen TAN
シェン ウェン タン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Okayama University NUC
Original Assignee
Okayama University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Okayama University NUC filed Critical Okayama University NUC
Priority to JP2020018653A priority Critical patent/JP6826740B1/ja
Priority to PCT/JP2021/003773 priority patent/WO2021157576A1/ja
Priority to CN202180000515.XA priority patent/CN114207442A/zh
Priority to EP21712937.8A priority patent/EP3882630A4/en
Priority to US17/281,069 priority patent/US20220205997A1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP6826740B1 publication Critical patent/JP6826740B1/ja
Publication of JP2021124416A publication Critical patent/JP2021124416A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/543Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with an insoluble carrier for immobilising immunochemicals
    • G01N33/54366Apparatus specially adapted for solid-phase testing
    • G01N33/54386Analytical elements
    • G01N33/54387Immunochromatographic test strips
    • G01N33/54388Immunochromatographic test strips based on lateral flow
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6893Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids related to diseases not provided for elsewhere
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/92Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving lipids, e.g. cholesterol, lipoproteins, or their receptors
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2405/00Assays, e.g. immunoassays or enzyme assays, involving lipids
    • G01N2405/04Phospholipids, i.e. phosphoglycerides
    • G01N2405/06Glycophospholipids, e.g. phosphatidyl inositol
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/32Cardiovascular disorders
    • G01N2800/323Arteriosclerosis, Stenosis

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】 生体試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の容易かつ迅速な検出方法とそれに用いる検出キットを提供することを課題とする。
【解決手段】 ラテラルフローアッセイ用テストストリップを用い、酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネントを介して、前記試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を前記テストストリップの所定の位置に固定する工程、及び、標識体を含む第二結合コンポーネントを、テストストリップの所定の位置に固定された前記酸化LDL/βGPI複合体に結合させることで、当該酸化LDL/βGPI複合体を標識する工程を含む酸化LDL/βGPI複合体の検出方法とそれに用いる検出キットを提供することによって解決する。
【選択図】 図5

Description

本発明は試料中の酸化LDL/βGPI複合体の検出方法、及び、検出キットに関する。
抗リン脂質抗体症候群をはじめとする種々の動脈硬化性疾患において、患者の血中には、酸化LDL/βGPI複合体が存在し、動脈硬化の進展に寄与することが明らかとされている。また、血中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を測定することにより、動脈硬化巣の大きさが推定でき、動脈硬化の進行状況をモニタリングすることができる。
酸化LDL/βGPI複合体を検出又は定量する手法としては、ELISA法(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay法)が知られている(特許文献1)。しかしながら、ELISA法は、種々の試薬の添加、インキュベーション、洗浄という煩雑な実験操作を繰り返し行う方法であるため、検査を行うスタッフに高い実験技術が要求されるとともにハイスループット性に欠けるという問題点があった。
特許第5616592号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、生体試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の容易かつ迅速な検出方法とそれに用いる検出キットを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究努力を重ねた結果、ラテラルフローを用いた測定系によれば、従来のELISA法と比較して遥かに迅速かつ容易に、且つ、驚くべきことに、広いダイナミックレンジで試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出、定量できることを見出した。
すなわち、本発明は、
試料中に含まれる酸化LDLとβ−グリコプロテインIの複合体(酸化LDL/βGPI複合体)の検出方法であって、
ラテラルフローアッセイ用テストストリップを用い、
酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネントを介して、前記試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を前記テストストリップの所定位置に捕捉する工程、及び、
標識体を含む第二結合コンポーネントを、テストストリップの所定位置に固定された前記酸化LDL/βGPI複合体に結合させることで、当該酸化LDL/βGPI複合体を標識する工程、
を含むことを特徴とする酸化LDL/βGPI複合体の検出方法を提供することによって、上記課題を解決するものである。
酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネントとしては、酸化LDL/βGPI複合体と結合し、当該第一結合コンポーネントを介して酸化LDL/βGPI複合体をラテラルフローアッセイ用テストストリップの所定位置に捕捉することができる限り、酸化LDL/βGPI複合体のどの部位とどのようなメカニズムで結合するものを用いても良い。しかし、本発明者らが独自に見出した知見によれば、第一結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する第一結合部を備えていることが好ましい。そのような第一結合コンポーネントとしては、例えば、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する抗βGPI抗体が好適である。抗βGPI抗体を第一結合コンポーネントとして用いることによって、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体をより優れた感度で検出、測定することができる
なお、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する第一結合部を備える第一結合コンポーネントを用いることによって、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体をより優れた感度で検出できるのは、以下の理由によるのではないかと推測される。すなわち、本発明に係る検出方法においては、第一結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体と結合して、当該複合体をテストストリップの所定位置に捕捉する役割を担うものであるところ、検出対象とする酸化LDL/βGPI複合体は、一つの酸化LDL粒子と、疾患の状態にもよるが、通常、複数のβGPI分子を構成要素として含んでいる(Journal of Lipid Research, 2001, vol.42, no.5, pp.697−709.)。したがって、第一結合コンポーネントが、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する第一結合部を備えている場合には、第一結合コンポーネントは、複数の結合点で当該複合体と結合することができることになるため、テストストリップ上の所定の位置に酸化LDL/βGPI複合体をより高い確率で捕捉することができるものと推測される。因みに、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する第一結合部を備えている第一結合コンポーネントとしては、前述したとおり、例えば、抗βGPI抗体が挙げられる。
また、本発明は、その好適な一態様において、
前記第一結合コンポーネントが、
酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する前記第一結合部と、第一の特異的結合要素とを含む第一結合ユニットと、
前記第一の特異的結合要素と特異的に結合する第二の特異的結合要素を含む第二結合ユニットであって、テストストリップ上の所定位置に位置している第二結合ユニット、
を含み、
第一結合コンポーネントを介して、前記試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を前記テストストリップの所定の位置に捕捉する前記工程が、酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる工程と、前記第一結合ユニットの前記第一の特異的結合要素と前記第二結合ユニットの前記第二の特異的結合要素とを結合させる工程とを含んでいることを特徴とする酸化LDL/βGPI複合体の検出方法に係るものである。なお、酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる工程は、前記テストストリップ上で行っても良いし、前記テストストリップ外で行っても良い。
第一結合コンポーネントが、前記第一結合ユニットと前記第二結合ユニットを備えている場合には、酸化LDL/βGPI複合体を第一結合コンポーネントを介してテストストリップの所定位置に捕捉する工程が、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる工程と、第一結合ユニットの第一の特異的結合要素と第二結合ユニットの第二の特異的結合要素とを結合させる工程の二つの工程に分けて行われることになる。その結果、例えば、第一結合ユニットの第一結合部についていえば、テストストリップへの一時的な固定のし易さよりも、前記複合体との特異的な結合効率を重視して、前記複合体と特異的に結合する第一結合部を選択することができるという利点が得られる。また、第一結合ユニットの第一の特異的結合要素、及び第二結合ユニットの第二の特異的結合要素についていえば、検出対象とする前記複合体との特異的な結合効率よりも、ラテラルフローにより輸送されてくる検出対象とする物質の捕捉効率を主に考慮して、第一及び第二の特異的結合要素の組み合わせを選択することができ、感度の高い検出が可能になるという利点が得られる。
なお、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットの第一結合部とを結合させる工程と、第一結合ユニットの第一の特異的結合要素と第二結合ユニットの第二の特異的結合要素とを結合させる工程とは、どちらを先に行っても良いし、同時に行われるようにしても良いが、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる工程を時間的に先に行うのが好ましく、テストストリップ上で行う場合には、ラテラルフローのより上流側で行うのが好ましい。因みに、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる工程は、テストストリップ上で行っても良いが、テストストリップ外で行うのが好ましく、テストストリップ外で行う場合には、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる反応に適した温度、時間等の条件を自由に設定することができるという利点が得られる。
第一結合ユニットと第二結合ユニットが備えている第一の特異的結合要素及び第二の特異的結合要素としては、特異的かつ強固な結合を形成する任意の物質の組み合わせを用いることができる。本発明に係る検出方法の好適な一態様においては、前記第一の特異的結合要素及び前記第二の特異的結合要素は、それぞれ、アビジン及びビオチン若しくはその逆、ストレプトアビジン及びビオチン若しくはその逆、又は、ニュートラビジン及びビオチン若しくはその逆のいずれかであるのが好ましい。これらの特異的結合要素の組み合わせは解離定数が10−15M程度にも及ぶ非常に強い結合を形成する。この結合は、本発明に係る検出方法において第一結合コンポーネントの結合部を提供する物質として典型的に用いられる抗体、フラグメント抗体、アプタマー、及びペプチド等が酸化LDL/βGPI複合体形成する結合と比較して非常に強い結合であり、ラテラルフローにより輸送されてくる前記複合体と第一結合ユニットとの結合体を、漏れなく、効率良く、テストストリップ上の所定位置に捕捉し、検出感度の向上に寄与することができるという利点を有している。なお、「アビジン及びビオチン若しくはその逆」とは、アビジンが第一の特異的結合要素でビオチンが第二の特異的結合要素であっても良いし、その逆に、アビジンが第二の特異的結合要素でビオチンが第一の特異的結合要素であっても良いことを意味している。他の「ストレプトアビジン及びビオチン若しくはその逆」及び「ニュートラビジン及びビオチン若しくはその逆」についても同様である。
また、本発明は、その好適な一態様において、前記第二結合コンポーネントが、酸化LDL/βGPI複合体を構成するアポリポプロテインB−100(apоB100)に結合する第二結合部を備えている。
なお、本発明が検出対象とする酸化LDL/βGPI複合体は、複合体一つあたり、一つの酸化LDL粒子を構成要素として含んでおり当該LDL粒子には、通常、一つの粒子当たり一つのapоB100が含まれている(Journal of Lipid Research, 2001, vol.42, no.9, pp.1346−1367;Biological and Pharmaceutical Bulletin, 2016, vol.39, no.1, pp.1−24.)。したがって、当該apоB100に結合する結合部を備えている第二結合コンポーネントを介して酸化LDL/βGPI複合体を標識することにより、テストストリップ上の前記所定の位置に捕捉されている酸化LDL/βGPI複合体一つあたり一つの標識体を結合させることができるため、優れた精度で酸化LDL/βGPI複合体を測定することができ、より定量性に優れた酸化LDL/βGPI複合体の検出が可能になる。
また、本発明は、その好適な一態様において、前記酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合部との結合が、抗原抗体反応に基づく結合であることを特徴とする酸化LDL/βGPI複合体の検出方法であり、また、前記酸化LDL/βGPI複合体と前記第二結合部との結合が、抗原抗体反応に基づく結合であることを特徴とする酸化LDL/βGPI複合体の検出方法である。
また、前記第二結合コンポーネントに含まれる標識体としては、標識体として機能し、何らかの手段でその有無、更には量を検出することができるものであれば、斯界で使用されている如何なる標識体を用いても良いが、好適な一態様において、前記標識体は金ナノ粒子、白金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金−プラチナ合金ナノ粒子等の金属ナノ粒子又はコロイド状量子ドットである。
また、本発明は、さらに、以上の検出方法を実施するための検出キットを提供することによって、上記課題を解決するものである。
本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法によれば、生体試料などの試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を、従来のELISA法と比較して、迅速かつ容易に、しかも広いダイナミックレンジで検出、定量することができるという利点が得られる。また、本発明に係る検出キットによれば、熟練を要することなく、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を、迅速かつ簡便に検出、定量することができるという利点が得られる。
ラテラルフローアッセイ用テストストリップの一例を示す概念図である。 SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す写真である。各レーンは以下の試料の測定結果を示している:タンパク質分子量マーカー(M)、3H3抗体又は2E10抗体を産生するハイブリドーマの細胞培養液の上清(C)、3H3抗体又は2E10抗体の精製工程で得られた流出液(E)、精製された3H3抗体又は2E10抗体(P)。なお、電気泳動には2−メルカプトエタノールによって還元処理した試料を用いた。 TBARSアッセイの結果を示すグラフである。硫酸銅(II)を用いて酸化誘導したLDL試料中、及び、エチレンジアミン四酢酸を加えて硫酸銅(II)の酸化作用を阻害した比較用試料中に生成したTBARS(チオバルビツール酸反応性物質)の量を検出した。TBARS量はnmоlマロンジアルデヒド当量で示した。 アガロースゲル電気泳動の結果を示す写真である。図中(A)はAmido Black 10Bを用いてタンパク質を染色した結果を、(B)はFat Red 7Bを用いて脂質を染色した結果を示している。 本発明に係る検出方法の一例の実験手順を示す概念図である。 実験5において展開液A及び展開液Bを展開した後のテストストリップの写真である。既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料をサンプルとして用いた。 本発明に係る検出方法の一例(実験5)により得られた標準曲線を示すグラフである。既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料をサンプルとし、本発明に係る検出方法によって測定値を得た。得られた測定値をプロットし、4係数ロジスティック回帰モデルを適用することによって標準曲線を取得した。 ELISA法(実験6)により得られた標準曲線を示すグラフである。既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料をサンプルとし、本発明に係る検出方法によって測定値を得た。得られた測定値をプロットし、4係数ロジスティック回帰モデルを適用することによって標準曲線を取得した。 本発明に係る検出方法の一例により標準試料から得られる検出値(相対強度)と、ELISA法により同じ標準試料から得られる検出値(吸光度)との関係を示す相関図である。 本発明に係る検出方法の一例(実験7)により得られた標準曲線を示すグラフである。既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料をサンプルとし、本発明に係る検出方法によって測定値を得た。得られた測定値をプロットし、4係数ロジスティック回帰モデルを適用することによって標準曲線を取得した。 本発明に係る検出方法の一例により測定された血清試料A〜I中の酸化LDL/βGPI複合体の含有量を示す図である。図10に示した標準曲線を用いることにより、各血清試料中の酸化LDL/βGPI複合体の含有量を半定量的に求めた。 ELISA法(実験7)により得られた標準曲線を示すグラフである。既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料をサンプルとし、本発明に係る検出方法によって測定値を得た。得られた測定値をプロットし、4係数ロジスティック回帰モデルを適用することによって標準曲線を取得した。 ELISA法により測定された血清試料A〜I中の酸化LDL/βGPI複合体の含有量を示す図である。図12に示した標準曲線を用いることにより、各血清試料中の酸化LDL/βGPI複合体の含有量を半定量的に求めた。 本発明に係る検出方法の一例により測定された血清試料A〜I中の酸化LDL/βGPI複合体の含有量と、ELISA法により測定された血清試料A〜I中の酸化LDL/βGPI複合体の含有量との関係を示す相関図である。 本発明に係る検出方法のその他の一例(実験8)により得られた標準曲線を示すグラフである。既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料をサンプルとし、本発明に係る検出方法によって測定値を得た。得られた測定値をプロットし、4係数ロジスティック回帰モデルを適用することによって標準曲線を取得した。
<1.用語の説明>
<1.1.試料>
まず、本発明に係る検出方法が対象とする「試料」は、酸化LDL/βGPI複合体を含む可能性がある試料であればどのようなものであってもよい。一般的な選択肢としては、動脈硬化性疾患の患者等から採取した検体、特に、血清、血漿、全血等の血液検体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの試料は、そのまま測定に用いてもよいし、適宜の希釈液によって希釈してから用いてもよい。なお、試料を濾過したものを測定に用いてもよい。
<1.2.検出>
本明細書における「検出」とは、検出対象となる物質の有無を判定することのみならず、検出対象となる当該物質を定量的又は半定量的に測定することを含む。なお、後述するように、本発明に係る検出方法においては、試料から得られる測定値を、既知の濃度の標準物質を含む標準試料を用いて得られる標準曲線に当てはめることによって、各種試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の量を定量的又は半定量的に求めることができる。
<1.3.ラテラルフローアッセイ用テストストリップ>
「ラテラルフローアッセイ用テストストリップ」とは、ラテラルフロー法により試料に含まれる測定対象物を検出又は定量する際に用いられるテストストリップを意味する。以下、本発明に係る検出方法に用いられる「ラテラルフローアッセイ用テストストリップ」(以下、単に「テストストリップ」ということもある)について説明する。図1は、本発明に係る検出方法に用いられるラテラルフローアッセイ用テストストリップの一例を示す概念図である。上段に平面図、下段に垂直断面図を示してある。図1において、1はテラルフローアッセイ用テストストリップである。ラテラルフローアッセイ用テストストリップ1は、測定対象となる試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出するためのものであって、図1に示すとおり、支持体2と、支持体2上に位置し、支持体2と一体化されているメンブレン3とから構成されている。メンブレン3には、試料が流れる方向の上流(図1では左側)から順に、試料と接触しテストストリップ中に試料を取り込む部位であるサンプルパッド11、試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を捕捉する部位である検出部12、第二結合コンポーネントを捕捉するコントロール部13、及び、テストストリップ中を浸潤してきた液体を吸収する吸収パッド14が形成されている。テストストリップ1の大きさに特に制限はないが、例えば、幅3mm〜10mm、サンプルパッド11からウィッキングパッド14までの長さが5mm〜30mm程度のものが好適に用いられる。
<1.3.1.検出部>
検出部12は、サンプルパッド11を介してテストストリップ1のメンブレン3に吸収された試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体が捕捉される部位である。本発明に係る検出方法において、試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体は、当該複合体と結合する第一結合コンポーネントを介して、テストストリップの所定位置、すなわち、検出部12に捕捉される。このようにして検出部12に捕捉された当該酸化LDL/βGPI複合体に、標識体を含む第二結合コンポーネントが結合することによって、当該酸化LDL/βGPI複合体は、標識体により標識される。検出部12に捕捉されている前記複合体と結合する第二結合コンポーネントの量、換言すれば標識体の量は、検出部12に捕捉されている酸化LDL/βGPI複合体の量に依存して増加することになる。したがって、検出部12に捕捉される標識体を検出又は定量することによって、試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出又は定量することができる。
<1.3.2.コントロール部>
本発明に係る検出方法に用いられるテストストリップ1のメンブレン3は、好ましくは、コントロール部13を備えている。コントロール部13は、検出部12よりも下流側に位置し、検出部12を通過した液体が接触する部位であり、第二結合コンポーネントと結合する物質を備えている。コントロール部13を設けておくことにより、検出部12に捕捉された酸化LDL/βGPI複合体に結合せずに検出部12を通過した第二結合コンポーネントをコントロール部13において捕捉することができる。第二結合コンポーネントは、前述したとおり、標識体を含んでいるため、コントロール部13に捕捉された標識体の有無を検出することによって、メンブレン3中で、ラテラルフローによる試料の輸送、移動が確実に行われていることを確認することができる。
<1.3.3.サンプルパッド>
サンプルパッド11は、テストストリップ1中に試料を取り込むための部位であり、サンプルパッド11が液状の試料と接触することによりテストストリップ1のメンブレン3内に試料が取り込まれる。サンプルパッド11と試料との接触は、例えば、液状の試料をサンプルパッド11に滴下したり、液状の試料に対してサンプルパッド11を浸漬することにより行うことができる。サンプルパッド11は、試料がテストストリップ1のメンブレン3中を毛細管現象により移動し、検出部12、コントロール部13、及び、ウィッキングパッド14に到達することができる限りにおいて、テストストリップ上のどのような位置に設置されていてもよいが、試料との接触の容易さという観点からは、テストストリップ1の一方の端部に設置されていることが好ましい。
<1.3.4.ウィッキングパッド>
ウィッキングパッド14は、テストストリップ1のメンブレン3中をラテラルフローにより移動してきた液体を吸収するとともに、テストストリップ中における毛細管現象による液状の試料の輸送を促進する部位であり、吸収性を備えた材料で構成される。
<1.3.5.支持体>
テストストリップ1を構成するサンプルパッド11、検出部12、コントロール部13、及びウィッキングパッド14が設けられているメンブレン3は、任意の支持体2の上に配置されることが好ましい。支持体2は、メンブレン3中の毛管流を妨げず、メンブレン3を支持できるものである限り、どのような物質から構成されていてもよく、例えば、プラスチック、ガラス、セラミック、及び紙などを好適に用いることができる。サンプルパッド11、検出部12、コントロール部13、及びウィッキングパッド14が形成されているメンブレン3は、適宜の接着剤を用いて支持体2に付着させることができる。接着剤は、メンブレン3中の毛管流を妨げない限りにおいて、任意の接着剤を用いることができる。
<1.3.6.メンブレンの材質>
メンブレン3は、試料が当該メンブレン3中に浸透し、毛管流によって移動することができる限りにおいて、どのような素材から構成されていても良く、例えば、セルロース、酢酸セルロースやニトロセルロースを含むセルロース誘導体、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ナイロン、アクリル繊維、ガラス繊維を好適な素材として例示することができる。なお、テストストリップ1を構成するメンブレン3は、メンブレン3に対するタンパク質等の非特異的吸着を抑制する観点から、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン、シュークロース等のブロッキング剤を含んでいてもよい。
<1.4.第一結合コンポーネント>
第一結合コンポーネントとは、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体と結合する結合コンポーネントであり、それを介して、当該複合体をテストストリップ1上の所定位置、すなわち、検出部12に捕捉する役割を担うものである。第一結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体と結合することができ、かつ、結合した酸化LDL/βGPI複合体を検出部12に捕捉することができる限りにおいて、どのような物質又は物質の組み合わせからなるものであっても良い。また、第一結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体のどの部分と結合するものであっても良い。第一結合コンポーネントとしては、抗体、フラグメント抗体、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー等、それらの修飾物、複合体等を例示することができる。
一方、より優れた検出感度を得るという観点からは、第一結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する第一結合部を備えていることが好ましい。酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合するとは、酸化LDLに結合していないβGPIと比較して、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに強く結合することを意味する。このような結合部を備えている物質としては、例えば、特許第5616592号公報に開示されている以下(a)乃至(e)の抗体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(a)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:3に記載のアミノ酸配列、及び、CDR3として配列番号:4に記載のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体、
(b)重鎖可変領域として配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体、
(c)CDR1として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:7に記載のアミノ酸配列、及びCDR3として配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗体、
(d)軽鎖可変領域として配列番号:5に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗体、
(e)上記(a)または(b)に記載の重鎖、および、上記(c)または(d)に記載の軽鎖の対を有する抗体。なお、より具体的には、同じく、特許第5616592号公報に開示されている、細胞融合法により樹立されたハイブリドーマクローン3H3が産生する抗βGPI抗体を例示することができる。このような抗体は、特許第5616592号公報に開示されている方法で製造することができる。
以上のように、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する第一結合部を備える第一結合コンポーネントを用いることによって、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体をより優れた感度で検出できる。その理由は定かではないが、前述したとおり、本発明に係る検出方法が対象とする酸化LDL/βGPI複合体は、一つの酸化LDL粒子と、疾患の状態にもよるが、通常、複数のβGPI分子を構成要素として含んでいる。したがって、第一結合コンポーネントが、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する第一結合部を備えている場合には、第一結合コンポーネントは、複数の結合点で当該複合体と結合することができ、テストストリップ上の所定位置に酸化LDL/βGPI複合体をより高い確率で捕捉することができるからではないかと推測される。
<1.5.第二結合コンポーネント>
一方、第二結合コンポーネントは標識体を含む結合コンポーネントであって、第一結合コンポーネントを介して検出部12に捕捉された酸化LDL/βGPI複合体に結合することによって、当該酸化LDL/βGPI複合体を適宜の手段で検出可能に標識する役割を担っている。第二結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体と結合することができる限りにおいて、特に限定されず、任意の物質又は物質の組み合わせを用いることができる。なお、第二結合コンポーネントとしては、抗体、フラグメント抗体、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー等、それらの修飾物、複合体等を例示することができる。
一方、より優れた検出感度を得るという観点から、第二結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体を構成するapоB100に特異的に結合する第二結合部を備えていることが好ましい。前述したとおり、本発明が検出対象とする酸化LDL/βGPI複合体は、通常、複合体一つあたり一つのapоB100を含んでいるので、第二結合コンポーネントが、apоB100に結合する第二結合部を備えている場合には、検出部12に捕捉されている酸化LDL/βGPI複合体一つあたり一つの標識体を結合させることができるため、より定量性に優れた酸化LDL/βGPI複合体の検出が可能になる。このような第二結合部を備えている物質としては、例えば、抗apоB100抗体が挙げられ、抗apoB100抗体としては、例えば、特開2005−097203号公報に開示されている抗体N2E10を用いることができる。
<1.6.標識体>
第二結合コンポーネントに含まれる「標識体」は、標識体として機能し、何らかの手段でその有無、更には、量を検出することができるものであれば、斯界で使用されている如何なる標識体を用いてもよい。本発明に係る検出方法に用いることができる標識体としては、例えば、金ナノ粒子、白金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金−プラチナ合金ナノ粒子などの金属ナノ粒子、コロイド状量子ドット、着色ラテックスビーズなどの色素が組み込まれたポリマー粒子、色素を含んだシリカナノ粒子、及び、炭素ナノ粒子などが例示されるが、これらに限られるものではない。結合コンポーネントへの修飾の容易さ、検出感度や検出精度、及び、検出の容易さ等の観点から、標識体としては、特に、金ナノ粒子、白金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金−プラチナ合金ナノ粒子などの金属ナノ粒子が好適に用いられ、金ナノ粒子がより好適に用いられる。特に、平均粒子直径5〜250nm程度の金ナノ粒子が好ましく、平均粒径10〜100nm程度の金ナノ粒子がより好ましい。また、上記の標識体は、分散性向上、ラテラルフロー用テストストリップへの非特異的吸着の抑制等の観点から、適宜の方法で安定化されることができる。例えば、標識体が金ナノ粒子である場合には、クエン酸塩、シリカ、及びポリエチレングリコール等により被覆されていてもよい。
なお、標識体を含む第二結合コンポーネントとは、第二結合コンポーネントの一部に、上記標識体が共有結合、配位結合、水素結合、疎水結合、ファンデルワールス力等の相互作用により結合した結合コンポーネントを意味する。このような標識体を含む結合コンポーネントは、公知の化学的手法を用いて調製することができる。また、標識体を含む結合コンポーネントとして、市販のものがあれば、それを用いてもよい。
<2.本発明の酸化LDL/βGPI複合体の検出方法>
以下、試料中に含まれる酸化LDLとβ−グリコプロテインIの複合体(酸化LDL/βGPI複合体)の検出方法について説明する。なお、「酸化LDL/βGPI複合体」は、酸化LDLとβ−グリコプロテインIの複合体を略記したものである。
<2.1.酸化LDL/βGPI複合体を捕捉する工程−その1>
本発明に係る検出方法において、試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体は、当該複合体と結合する第一結合コンポーネントを介して、テストストリップ1の所定位置、すなわち、検出部12に捕捉される。例えば、酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネントがテストストリップの検出部12に予め一時固定されている場合には、ラテラルフローにより輸送されてくる酸化LDL/βGPI複合体が検出部12に一時固定されている第一結合コンポーネントと結合することにより、酸化LDL/βGPI複合体を第一結合コンポーネントを介してテストストリップの所定位置に捕捉する工程が実現される。好ましい一態様において、第一結合コンポーネントの酸化LDL/βGPI複合体と結合する部位が、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIと特異的に結合する第一結合部であることは前述したとおりである。ただし、酸化LDL/βGPI複合体をテストストリップの所定位置に捕捉する工程は、これに限られるものではなく、以下に述べるようなものであってもよい。
<2.2.酸化LDL/βGPI複合体を捕捉する工程−その2>
本発明に係る検出方法の好適な一態様においては、第一結合コンポーネントは、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する第一結合部と、第一の特異的結合要素とを含む第一結合ユニットと、前記第一の特異的結合要素と特異的に結合する第二の特異的結合要素を含む第二結合ユニットであって、テストストリップ上の所定位置に位置している第二結合ユニットを備えている。このような場合には、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体をテストストリップの所定位置に捕捉する前記工程は、酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合ユニットの第一結合部とを結合させる工程と、前記第一結合ユニットの前記第一の特異的結合要素と前記第二結合ユニットの前記第二の結合要素とを結合させる工程という二つの工程に分けて行われることになる。なお、第二の特異的結合要素を含む第二結合ユニットが、テストストリップ上の所定位置、すなわち、検出部12に位置しているとは、第二結合ユニットが検出部12に一時固定されていることを意味し、第二結合ユニットを検出部12に一時固定する手段はどのような手段であっても構わない。
酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合ユニットの第一結合部とを結合させる工程と、前記第一結合ユニットの前記第一の特異的結合要素と前記第二結合ユニットの前記第二の結合要素とを結合させる工程は、どちらを先に行ってもよく、また両者を同時に行ってもよいが、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部とを結合させる工程を先に行う方が好ましい。また、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部とを結合させる工程はテストストリップの中で行ってもよいし、テストストリップの外で行っても良いが、テストストリップの外で行う方が好ましい。
例えば、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部を備えている第一結合ユニットを予め混合・インキュベートし、結合させた上でラテラルフローアッセイに供することにより、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部とを結合させる工程を、第一の特異的結合要素と第二の結合要素とを結合させる工程よりも先に、かつ、テストストリップの外で行うことができる。このような場合には、酸化LDL/β2GPI複合体と第一結合部とを、両者の結合に適した条件で十分に結合させることができるため、感度の高い検出が可能となるという利点がある。
また、例えば、テストストリップ上の、前記第二結合ユニットが位置する所定位置(すなわち、検出部12)よりも上流側の部分に第一結合ユニットをラテラルフローによって拡散可能に塗布しておくことにより、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部とを結合させる工程を、第一の特異的結合要素と第二の結合要素とを結合させる工程よりも先に、かつ、テストストリップの中で行うことができる。このような場合には、試験者は、酸化LDL/β2GPI複合体を含んでいると思われる試料と第一結合ユニットとを、事前に混合、インキュベートする必要がなく、テストストリップ中に酸化LDL/βGPI複合体を含む試料を流す操作のみによって、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部とを結合させる工程が実現されるので作業効率が向上するという利点がある。
いずれにせよ、酸化LDL/βGPI複合体と第一結合部とを結合させる工程を、前記第一結合ユニットの前記第一の特異的結合要素と前記第二結合ユニットの前記第二の結合要素とを結合させる工程よりも先に行う場合には、酸化LDL/βGPI複合体が、第二結合ユニットが位置している所定位置にラテラルフローによって輸送されてくるときには、酸化LDL/βGPI複合体には既に第一結合ユニットが結合していることになり、酸化LDL/βGPI複合体に結合している第一結合ユニットが備えている第一の特異的結合要素と、所定位置に位置している第二結合ユニットが備えている第二の特異的結合要素とが結合し、酸化LDL/βGPI複合体が当該所定位置に捕捉される工程が完了する。
<2.3.特異的結合要素>
本発明に係る検出方法の好適な一態様において、第一結合ユニット及び第二結合ユニットが備えている「特異的結合要素」とは、対になる特異的結合要素同士で特異的に結合することができる物質又は物質の複合体を意味する。対になる特異的結合要素同士で特異的に結合することができる限り、本発明に係る検出方法に用いることができる第一の特異的結合要素と第二の特異的結合要素の組み合わせには特段の制限はないが、好適な組み合わせとして、例えば、アビジン−ビオチン結合ペアを形成することができる物質群、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレンなどを含むホスト−ゲスト相互作用により結合する物質群、抗原抗体反応により結合する物質群等を例示することができる。
より優れた検出感度を得るという観点からは、第一の特異的結合要素と第二の特異的結合要素との結合は、解離定数が小さいものであることが好ましく、例えば、10−8M以下、より好ましくは10−10M以下、さらに好ましくは10−12M以下であることが好ましい。具体的な物質を例示するならば、アビジンとビオチン、ストレプトアビジンとビオチン、又はニュートラビジンとビオチンの組み合わせを用いることが好ましい。アビジンとビオチン、ストレプトアビジンとビオチン、又はニュートラビジンとビオチンの結合は、解離定数が10−15Mにも及ぶ非常に強固な結合であり、このような結合を用いることによって、ラテラルフローにより輸送されてくる酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットとの結合体を、漏れなく、効率良く、テストストリップ上の所定位置に捕捉することができる。これにより、より優れた検出感度を得ることができる。なお、解離定数は公知の実験方法で求めることができる。なお、上に挙げた2個1対の物質の組み合わせは、どちらを第一の特異的結合要素又は第二の特異的結合要素としても良い。
また、第一結合ユニットは、第一結合部と酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子との特異的な結合を阻害しない限りにおいて、二分子以上の第一の特異的結合要素を備えていてもよい。このような場合には、ラテラルフローにより輸送されてくる酸化LDL/βGPI複合体と第一結合ユニットとの結合体を、さらに効率良く、テストストリップ上の所定位置に捕捉することができるという利点がある。なお、第二結合ユニットについても二分子以上の第二の特異的結合要素を備えていても良いことは勿論である。
<2.4.酸化LDL/βGPI複合体を標識する工程>
以上のようにして、テストストリップ上の所定位置に捕捉された酸化LDL/βGPI複合体に対して、標識体を含む第二結合コンポーネントを結合させることによって、当該酸化LDL/βGPI複合体は検出可能な標識体により標識される。所定位置に捕捉された酸化LDL/βGPI複合体を標識体により標識するには、試料のラテラルフローによる検出部通過が完了した時点で、サンプルパッド11上に標識体を含む第二結合コンポーネントを含む溶液を滴下するか、サンプルパッド11の下端等を第二結合コンポーネントを含む溶液中に浸漬することによって、テストストリップ1を構成するメンブレン3中に第二結合コンポーネントを浸透させれば良い。
検出部12に捕捉される標識体の量は、検出部12に捕捉されている酸化LDL/βGPI複合体の量に応じて変化することになるので、検出部12に捕捉される標識体の有無又はその量を検出することによって、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出又は定量することができる。
テストストリップ1の検出部12に捕捉されている標識体の有無又はその量は、用いる標識体の種類に応じた適宜の手法により検出することができ、検出部12(及び必要に応じてコントロール部13)の、例えば、反射光の強度、蛍光強度、発光強度、光の吸収強度等を測定機器を用いて測定したり、画像撮影して画像解析するなどして行うことができる。既知の濃度の標準物質を含む標準試料から得られる標準曲線と、未知の濃度の酸化LDL/βGPI複合体を含む試料から得られた測定値を比較することで、当該試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出又は定量することができる。なお、標準物質としては、例えば、後述する実験で調製するCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を用いることができる。
なお、より優れた検出感度を得るという観点からは、テストストリップ1は、第二結合コンポーネントを捕捉する物質が含浸、固定されているコントロール部13を備えているのが望ましい。コントロール部13が設けられている場合には、検出部12において酸化LDL/βGPI複合体と結合せず、検出部12に捕捉されなかった第二結合コンポーネントは、コントロール部13に捕捉されることとなる。この場合には、検出部12に捕捉される標識体の量が検出部12に捕捉された酸化LDL/βGPI複合体の量を反映して増加するのみならず、コントロール部13に捕捉される標識体の量が検出部12に捕捉された酸化LDL/βGPI複合体の量を反映して減少することになる。したがって、検出部12に加えてコントロール部13に捕捉されている標識体についても、その量を反映する測定値を併せて取得し、両部における測定値の比率(検出部12において得られる測定値/コントロール部13において得られる測定値)を測定値として用いることによって、より優れた検出強度を得ることができるという利点がある。
<3.検出キット>
本発明に係る検出キットは、少なくとも以下(A)乃至(C)を含むことを特徴とする酸化LDL/βGPI複合体の検出キットである;
(A)酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネント、
(B)標識体を含む第二結合コンポーネント、及び、
(C)ラテラルフローアッセイ用テストストリップ。
なお、本発明に係る検出キットは、その好適な一態様において、第一結合コンポーネントとして、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する第一結合部を備えている第一結合コンポーネントを含んでいる。
また、本発明に係る検出キットは、その好適な一態様において、第二結合コンポーネントとして、酸化LDL/βGPI複合体を構成するapоB100に結合する第二結合部を備えている第二結合コンポーネントを含んでいる。
さらに好適な一態様において、本発明に係る検出キットは、第一結合コンポーネントとして、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する第一結合部と、第一の特異的結合要素とを含む第一結合ユニットと、当該第一の特異的結合要素と特異的に結合する第二の特異的結合要素を含む第二結合ユニットであって、テストストリップ上の所定位置に位置している第二結合ユニットを含んでいる。
なお、第一結合コンポーネント又は第一結合コンポーネントを構成する第二結合ユニットは、予め、ラテラルフローアッセイ用テストストリップの所定位置に一時固定されていても良いし、使用者がラテラルフローアッセイ用テストストリップの所定位置に一時固定するものであっても良い。また、キットに含まれるラテラルフローアッセイ用テストストリップには、サンプルパッド11及び/又はウィッキングパッド14が予め設けられているのが好ましいが、設けられておらず、使用者が適宜設けるようにしても良い。コントロール部13についても同様である。
本検出キットの使用方法は、<2.本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法>で説明したと同様である。なお、本発明に係る検出キットは、以上(A)乃至(C)を含んでいる限りにおいて、その他の構成成分を含んでいても良い。本検出キットが含むことができるその他の構成成分としては、例えば、標準試料となるCu2+−酸化LDL/βGPI複合体が挙げられる。また、ブロッキング剤、試料希釈液等を含んでいてもよい。
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
<実験1.抗βGPI抗体及び抗apоB100抗体の調製>
本明細書において用いた抗βGPI抗体(以下、「3H3抗体」という)及び抗apоB100抗体(以下、「2E10抗体」という)を、従来公知のハイブリドーマ法により、以下のようにして調製した。
3H3抗体を産生するハイブリドーマとしては、特許第5616592号公報の実施例3に記載の方法で得た3H3抗体を産生するハイブリドーマクローン3H3を用いた。一方、2E10抗体を産生するハイブリドーマとしては、特開2005−097203号公報、段落[0020]乃至[0024]に記載の方法で得たマウス−マウス・ハイブリドーマN2E10を用いた。なお、2E10抗体を産生する当該マウス−マウス・ハイブリドーマN2E10は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1)に国内寄託され、平成15年(2003年)9月2日付で受領され、受託番号として、FERM P−19508が付与されている。
3H3抗体又は2E10抗体を産生するハイブリドーマを、常法に従い、2.5%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)及び100ユニットのペニシリン−ストレプトマイシンを含むIMDM(Iscove‘s Modified Dulbecco’s Medium)培地中で培養した。当該細胞培養液の上清を遠心分離よりにより回収した後、Protein A セファロース樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる精製に供した。セファロース樹脂に担持されているプロテインAに捕捉された3H3抗体及び2E10抗体をpH2.7のグリシン−HCl緩衝液により溶出させ、その後に、常法に従い、溶液の溶媒をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に置換した。
得られた3H3抗体又は2E10抗体の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により確認した。なお、当該SDS−PAGEには、ゲル濃度12.5%(w/v)のポリアクリルアミドゲルを用い、還元剤としては2−メルカプトエタノールを用いた。結果を図2に示す。図2において、各レーンに用いられた試料は、分子量スタンダード(レーンM)、還元処理した細胞培養液の上清(レーンC)、抗体精製工程で得られた廃液(レーンE)、そして、精製後の抗体(レーンP)である。図2のレーンPを見ると、3H3抗体及び2E10抗体ともに、重鎖(分子量約50kDa)と軽鎖(分子量約25kDa)に相当する位置に強い発色が観察され、その他の位置にはほとんど発色が観察されていない。以上の結果は、純度の高い3H3抗体及び2E10抗体が得られていることを示している。
<実験2.ビオチン−3H3抗体コンジュゲートの調製>
次に、上記実験1で得られた3H3抗体に対してビオチンを修飾することにより、本実施例に用いられるビオチン−3H3抗体コンジュゲートを調製した。具体的には、市販のビオチンラベリングキット(商品名「Biotin Labeling Kit−NH」、株式会社同仁堂社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従って、以下のようにして行った。
実験1で得られた3H3抗体200μgを含む溶液に、上記ビオチンラベリングキットに付属しているWS Bufferを加え、最終体積を200μLとした。ピペッティングにより混合した後、混合液200μL全量を、上記ビオチンラベリングキットに付属しているFiltration Tubeの濾過膜上部に加え、4℃、8,000g、10分間の条件で遠心した。一方、上記ビオチンラベリングキットに付属しているNH−Reactive Biotinに10μLのDMSO(ジメチルスルホキシド)を加え溶解させた。前記Filtration Tubeの濾過膜上部に残留した溶液に対して、100μLのReaction Buffer(上記ビオチンラベリングキットに付属)を加えるとともに、NH−Reactive Biotinを含むDMSO溶液を全量加え、ピペッティングにより混合した。37℃で10分間静置した後、当該混合液に対して、WS Bufferを100μL加え、4℃、8,000g、10分間遠心した。抗体に結合していないフリーのビオチンを除去するため、前記Filtration Tubeの濾過膜上部に残留した溶液に、200μLのWS Bufferを加え、4℃、8,000gで10分間遠心した。さらに、もう一度、200μLのWS Bufferの添加及び4℃、8,000gで10分間遠心した後に、前記Filtration Tubeの濾過膜上部に残留した溶液に対してPBSを加え、最終体積200μLのビオチン−3H3抗体コンジュゲート溶液を得た。当該ビオチン−3H3抗体コンジュゲート溶液に含まれるビオチン−3H3抗体コンジュゲートの濃度は、市販のキット(商品名「PierceTM BCA Protein Assay Kit」、Thermo Scientific社)を用いて、BCAタンパク質アッセイ法に測定した。
<実験3.金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートの調製>
次に、上記実験1で得られた2E10抗体に対して、直径20nmの金ナノ粒子を結合させることにより、本実施例で用いられる金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートを調製した。具体的には、市販の金ナノ粒子コンジュゲーションキット(商品名「Naked Gold Conjugation Kit(20nm)」、Bioporto Diagnostics社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従って、以下のようにして行った。
まず、限外ろ過によって、2E10抗体を含む懸濁液の溶媒をPBSから超純水に置換した。限外ろ過膜としては、商品名「Amicon Ultra 0.5mL Centrifugal Filters 10K」(Merck Millipore社製)を用いた。次に、上記金ナノ粒子コンジュゲーションキットに付属している直径20nmの金ナノ粒子を含む懸濁液を、波長520nmでの光学密度(OD)が6A.U.となるように超純水で希釈した。なお、光学密度の測定は分光光度計(商品名「BioSpec−Nano」、株式会社島津製作所製)を用いて行った。そして、金ナノ粒子を含む当該懸濁液に対して0.2M KCO溶液を適量加えることによって、当該懸濁液のpHを9.0に調整した。以上のようにして調製された金ナノ粒子を含む当該懸濁液に対して、2E10抗体を含む懸濁液(2E10抗体の濃度:48μg/mL)を加えた。得られた混合液を1時間静置した後、上記金ナノ粒子コンジュゲーションキットに付属している安定化バッファー(Stabilizing Buffer)を、体積比が1:5(混合液:安定化バッファー)となるように上記混合液に加えることによって反応を停止させた。
<実験4.標準サンプルの調整>
<実験4.1.ヒト血清試料からのLDLの単離>
LDL(Low−Density Lipoprotein、低密度リポタンパク質)は、市販のヒト血清プール(コスモ・バイオ株式会社製)からシングルスピン密度勾配超遠心法により、以下のようにして単離した。
まず、3種類の調整密度溶液(Density−Adjusted Solution、以下「DAS」という)、DAS1〜3を調製した。DAS1、DAS2、及びDAS3の密度は、それぞれ1.006g/cm、1.019g/cm、及び1.063g/cmである。なお、DAS1〜3は、1mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含んでおり、密度はKBr(臭化カリウム)によって調整したものである。次に、ヒト血清13mL当たりKBr1.82gの体積−重量割合で、解凍したヒト血清にKBrを加えた後、氷浴上で10分間、スターラーを用いて混合した。このようにして得られたヒト血清を含む混合溶液(体積23.6mL)、DAS1(体積18.2mL)、DAS2(体積18.2mL)、及びDAS3(体積10mL)を、DAS3、DAS2、DAS1、ヒト血清を含む混合溶液の順で、遠心用のポリカーボネート製のボトル容器(商品名「80PC ボトル(C)」、日立工機株式会社製)に、ゆっくりと充填した。以上のようにして、サンプルを充填したボトル容器をRP45Tアングルローター(日立工機株式会社製)に設置し、SCP85H超遠心機(日立工機株式会社製)を用いて、100,000g、4℃、24時間の条件で遠心した。遠心後、VLDL(超低密度リポタンパク質)含有分画及びカイロミクロン含有分画を除去し、LDL分画を得た。得られたLDL分画は、市販の遠心式限外ろ過フィルター(商品名「Amicon Ultra 15mL Centrifugal Filters 10K」、Merck Millipore社製)を用いて濃縮した後、PBS(pH7.4)を外液として用い、一晩透析を行った。透析後に得られたサンプル中に含まれるLDLの濃度は、市販のキット(商品名「PierceTM BCA Protein Assay Kit」、Thermo Scientific社)を用いて、BCAタンパク質アッセイ法に測定した。
<実験4.2.LDLの酸化>
次に、実験4.1.で得られたLDLを常法に従い硫酸銅(II)(CuSO)を用いて酸化することによって酸化LDLを調製した。具体的な実験手順は以下に示すとおりである。
実験4.1.で得られたLDLを含む溶液の濃度を、アポリポプロテインB(以下、「apоB」ということもある)換算で濃度100μg/mLとなるように調整した。当該溶液に対して、硫酸銅(II)の濃度が5μMとなるように硫酸銅(II)を添加することによって酸化反応を開始した。37℃で16時間インキュベートした後、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を、EDTAの濃度が1mMとなるように加えることによって酸化反応を停止させた。酸化反応を停止させた後、当該溶液の一部を、LDLの酸化を確認するための試験用試料として抜き取り、後述するTBARS(Thiobarbituric Reactive Substance)アッセイに供した。一方、残りの溶液は、1mM EDTAを含むPBSに対して一晩透析することによって精製した後、適宜濃縮及び希釈をして用いた。
以上の実験4.2.と並行して、酸化反応開始時からEDTA濃度が1mMとなるようにEDTAを加えた以外は、以上の実験4.2.と同様にして比較実験用のLDL試料を調製した。当該LDL試料についても、酸化反応開始から37℃で16時間インキュベートした後、溶液の一部を比較用試料として抜き取り、後述するTBARSアッセイにおけるネガティブコントロールとして用いた。
<実験4.3.TBARSアッセイ>
LDLが酸化されているか否かの確認を従来公知のTBRASアッセイにより行った。なお、TBRASアッセイは、LDLの酸化反応の副生物として生成するマロンジアルデヒド(MDA:Malondialdehyde)を代表とするチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の量を定量することによって、脂質酸化反応をモニタリングする手法である。なお、不飽和脂質酸の酸化反応の副生物であるMDAがチオバルビツール酸(TBA:Thiobarbituric Acid)と反応することによって生じるMDA−TBA付加体は蛍光性であるため蛍光分光光度計を用いて定量が可能である。具体的な実験手順は以下に示すとおりである。
まず、0.67%(w/v)のチオバルビツール酸溶液と0.2%(w/v)のトリクロロ酢酸溶液を等量含む反応バッファーを調製した。当該反応バッファーと、前記実験4.2.で抜き取った試験用試料又は比較用試料とを混合した後、100℃の湯浴中で30分間インキュベートした。冷却後、蛍光分光光度計を用いた測定により、試験用試料溶液中又は比較用試験溶液中に生成したMDA−TBA付加体の量を定量した。なお、測定に用いた励起光の波長は515nm、検出した蛍光の波長は553nmである。
なお、実験4.2.で得られた上記試験用試料溶液に代えて、既知の濃度のMDA(0〜60nmоles)を含む標準試料を用いた以外は、上記と同様の測定を行うことによって標準曲線を得た。当該標準曲線に基づき、実験4.2.で得られた上記試験用試料溶液及び比較用試料溶液に含まれるチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の量をMDA当量として求めた。結果を図3に示す。図3より、5μMの硫酸銅(II)を加えた後37℃で16時間インキュベートした試験用試料においては、有意な量のMDA−TBA付加体が生成していることが分かる。これは当該試験用試料において、LDLの酸化反応が進行したことを示している。これに対して、実験4.2.において酸化反応開始時から1mMのEDTAを加えた比較用試料においては、MDA−TBA付加体はほとんど生成していない。これは当該比較用試料においてはLDLの酸化反応が進行していないことを示している。以上の結果より、硫酸銅(II)を用いる酸化反応によってCu2+−酸化LDLが得られたことが示された。
<実験4.4.Cu2+−酸化LDLとβGPIの複合体の形成>
実験4.2.においてLDLを常法に従い硫酸銅(II)を用いて酸化することによって得られたCu2+−酸化LDLと、βGPIとを、以下のようにして複合体とした。すなわち、適宜の濃度のCu2+−酸化LDL又はβGPIを含む溶液を希釈、混合することにより、Cu2+−酸化LDLの濃度が100μg/mL及びβGPIの濃度が50μg/mLである反応溶液を調製した。当該反応溶液を37℃で16時間インキュベートすることによって、Cu2+−酸化LDL/βGPI複合体を得た。当該反応溶液を−80℃まで冷却することによって凍結させて複合化反応を停止させ、以後の実験には、当該凍結サンプルを適宜解凍して用いた。なお、以上のようにして得られたサンプル中に含まれるCu2+−酸化LDL/βGPI複合体の濃度は、市販のキット(商品名「PierceTM BCA Protein Assay Kit」、Thermo Scientific社)を用いて、BCAタンパク質アッセイ法によって測定した。
<実験4.5.電気泳動による複合体形成の確認>
Cu2+−酸化LDL/βGPIの複合体の形成を確認するため、ヒト血清、実験4.1.により得られたLDL、実験4.2.により得られたCu2+−酸化LDL、βGPI、及び、実験4.4.により得られたCu2+−酸化LDL/βGPI複合体をアガロースゲル電気泳動に供した。アガロースゲル電気泳動には、市販のTITAN GEL Universal Plate(Helena Laboratories社製)を用い、ヒト血清サンプルを除いて、ウェル当たり8μgのタンパク質をロードした。なお、ヒト血清サンプルのロード量はウェル当たり2μLである。電気泳動にはバルビタール緩衝液(10mM barbital、50mM sodium diethylbarbiturate、1mM EDTA、15mM NaN)を用い、電圧90V、泳動時間30分の条件で電気泳動を行った。泳動後のアガロースゲルを、固定液(60%(v/v)EtOH、10%(v/v)CHCOOH、30%(v/v)HO)に15分間浸漬した後に、60℃で20分間、乾燥器中で乾燥させた。乾燥後のゲルをAmido black 10Bによるタンパク質の染色、又は、Fat Red7Bによる脂質の染色に供した。染色後のゲルの写真を図4に示す(図4中、左側AにAmido black 10Bによるタンパク質染色の結果、右側BにFat Red7Bによる脂質染色の結果を示す)。図4に見られるとおり、LDL又はCu2+−酸化LDLをロードしたレーンにおいては、LDL又はCu2+−酸化LDLの泳動が確認されたのに対して、Cu2+−酸化LDL/βGPI複合体をロードしたレーンにおいては、タンパク質及び脂質の泳動はいずれも確認されなかった。この結果は、負に帯電しているCu2+−酸化LDLに対してβGPIが結合することによって電荷が中和されることと対応しており、実験4.4.において、確かにCu2+−酸化LDL/βGPI複合体が得られたことを示している。
<実験5.ラテラルフローアッセイ>
本発明に係る検出方法によって、試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の量を検出できることを実証するため、まず、既知の濃度の酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料を用いて、酸化LDL/βGPI複合体の検出実験を行った。なお、図5は当該実験の手順を示す概念図である。
<実験5.1.テストストリップ>
ラテラルフロー用のテストストリップとしては、市販のテストストリップ(Bioporto Diagnostics社製、商品名「gRAD OneDetection−120strips」)を用いた。
なお、当該テストストリップは、図1に示した構造を備えており、被験試料が流れる方向の上流から、サンプルパッド、検出部、コントール部、及び、ウィッキングパッドを備えている。検出部には、ビオチン結合タンパク質が固定化されている。一方、上記コントロール部には、抗マウスIgG抗体、抗ヤギIgG抗体、抗ウサギIgG抗体の混合物(以下、「ポリクロ―ナル抗IgG抗体」という)が固定化されている。検出部及びコントロール部はそれぞれ約1mm幅の線状の形状をしている。
<実験5.2.展開液の調製>
本実験において、ラテラルフローアッセイは、試料を含む展開液Aと、検出対象を標識する展開液Bの二つの展開液を用いて行った。展開液Aと展開液Bは、以下の手順にて調製した。
<展開液A>
展開液Aは、被験試料とビオチン−3H3抗体コンジュゲートを含む展開液である。本実験において、当該展開液Aは、前述した「実験4」で調製したCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を既知の濃度(0.1〜50.0μg/mL)で含む標準試料溶液(25μL)と、前述した「実験2」で調製したビオチン−3H3抗体コンジュゲートを含む溶液(2.5μL、抗体濃度:0.1mg/mL)を混合することにより調製した。なお、標準試料溶液は、「実験4」で調製したCu2+−酸化LDL/βGPI複合体と、希釈液(25μL、0.5%(w/v)のBSAを含む10mM ホウ酸緩衝液、pH7.0)を用いて調製した。
<展開液B>
一方、展開液Bは、測定対象である酸化LDL/βGPI複合体を標識するためのものであり、金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートを含む展開液である。当該展開液Bは、前述した「実験3」で調製した金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートを含む溶液(2.5μL、抗体濃度:48μg/mL)と希釈液(25μL、0.5%(w/v)のBSAを含む10mM ホウ酸緩衝液、pH7.0)を混合することにより調製した。
以上のようにして得られた展開液Aは、ピペッティングにより混合した後、さらに、室温(25℃)で15分間インキュベートした上で、以下に述べるラテラルフローアッセイに供した。展開液Bについても同様に混合、インキュベートした上でラテラルフローアッセイに供した。
<実験5.3.ラテラルフローアッセイ>
テストストリップをウィッキングパッドが上、サンプルパッドが下を向くように、おおよそ垂直とした状態で、図5の「展開液A」に示すとおり、サンプルパッドを展開液Aと1分間接触させることによって、展開液Aをテストストリップ中に展開した。続いて、図5の「展開液B」に示すとおり、上記サンプルパッドを展開液Bと4分間接触させることによって、展開液Bをテストストリップに展開した。
展開液A及び展開液Bを展開した後のテストストリップの写真を図6に示す。本実験例において、展開液Bは、金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートを含んでいる。当該金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートは、検出部に捕捉されている酸化LDL/βGPI複合体、及び、コントロール部に固定されているポリクロ―ナル抗IgG抗体に結合する。金ナノ粒子が捕捉されることによって検出部及びコントロール部には、図6に示すとおり、目視で確認可能なライン(紫〜赤紫色である)が現れるので、試験者は試験の成否を容易に確認することができる。
<実験5.4.検出部及びコントロール部における標識体の検出>
展開液A及び展開液Bを展開した後、テストストリップの検出部及びコントロール部に捕捉された標識体、すなわち、金ナノ粒子の量を画像解析ソフト(ImageJ)を用いた画像解析により測定した。具体的な手順は以下に示すとおりである。なお、検出部及びコントロール部に捕捉された標識体の量を検出することができる限りにおいて、適宜の手法を用いることができることは勿論である。
まず、展開液A及び展開液Bを展開した後のテストストリップの写真(図6)を、市販のスマートフォンのカメラ機能を用いて撮影した。なお、写真撮影はフラッシュを使わずに行った。得られた写真の画像データをパーソナルコンピュータに取り込み、画像解析ソフト(ImageJ)を用いてグレイスケールイメージへと変換した。次いで、グレイスケールイメージへと変換された画像上で、上記検出部又はコントロール部に相当する領域をROI(Region of Interest)として選択し、次いで、このようにして選択したROIにおける輝度分布を示すヒストグラムを取得した。なお、当該ヒストグラムにおいて、x軸は輝度(グレイ値)を表しており、y軸は選択領域において各輝度(グレイ値)を示すピクセルの数を示している。検出部及びコントロール部について、当該ヒストグラムにおける曲線下面積を求め、検出部について得られた曲線下面積とコントロール部について得られた曲線下面積の比率(検出部について得られた曲線下面積/コントロール部について得られた曲線下面積)を測定データとして得た。
<実験5.5.標準曲線の取得>
得られた測定データ(検出部について得られた曲線下面積/コントロール部について得られた曲線下面積)を縦軸に、標準試料中に含まれるCu2+−酸化LDL/βGPI複合体の濃度を横軸としてプロットした。結果を図7に示す。図7には、プロットした測定データと、以下の数1に示す4係数ロジスティック回帰モデルに基づいて得られた標準曲線を併せて示している。図7に示されているとおり、当該標準曲線の平均二乗誤差MSEは0.002974、決定係数Rは0.9809、残差平方和SSは0.02379、残差標準偏差SYXは0.07712であり、当該標準曲線が信頼性の高いものであることを示している。以上の結果は、本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法が、少なくとも、0.1〜50.0μg/mLの濃度範囲において、酸化LDL/βGPI複合体の検出又は定量的な測定に応用できることを示している。
Figure 2021124416
<実験6.ELISA法との比較>
本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法をELISA法に基づく従来の検出方法と比較するため、ELISA法により、既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料を用いて、Cu2+−酸化LDL/βGPI複合体の検出実験を行った。具体的には、Kobayashiらの手法(Journal of Lipid Research,2003, vol.44, pp.716−726.)に若干の修正を加え、以下に示す手順にて実験を行った。
市販のイムノアッセイ用マイクロプレート(商品名「イムロン2HB」、ThermoFisher Scientific社製)に、「実験1」で調製した3H3抗体を含む溶液(抗体濃度:8μg/mL、緩衝液:10mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4)を各ウェル50μLずつ加え、4℃で一晩インキュベートすることによって、3H3抗体を吸着させた。その後、当該プレートを5%(w/v)の牛血清アルブミン(BSA)を用いてブロッキングした。次いで、Hepes緩衝液(リファレンス)、又は「実験4」で調製した既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料(Cu2+−酸化LDL/βGPI複合体濃度:0.02−2.00μg/mL)を各ウェルに50μL加え、1時間室温でインキュベートした。各ウェルから液を除去し、0.05% Tween−20/PBSで洗浄した後、「実験2」で調製したビオチン−2E10抗体コンジュゲート(ビオチン−抗apоB100抗体コンジュゲート)を各ウェルに添加し、1時間静置した。各ウェルから液を除去し、0.05% Tween−20/PBSで洗浄した後、市販のHRP(Horseradish Peroxidase)修飾されたストレプトアビジンを各ウェルに添加し、1時間インキュベートした。各ウェルから液を除去し、0.05% Tween−20/PBSで洗浄した後、各ウェルに、TMB(3,3‘,5,5’−tetramethylbenzidine)及び過酸化水素(H)を加え、30分間インキュベートした。0.3N 硫酸を加え反応を停止させた後、波長650nmをリファレンスとして、波長450nmの吸光度を測定した。波長450nmにおける吸光度と波長650nmにおける吸光度の比率を測定データとして、当該測定データを縦軸に、標準試料中に含まれるCu2+−酸化LDL/βGPI複合体の濃度を横軸としてプロットした。その結果を図8に示す。
図8には、プロットした測定データと数1に示す4係数ロジスティック回帰モデルに基づいて得られた標準曲線を併せて示している。図8に示されているとおり、当該標準曲線の平均二乗誤差MSEは0.0007411、決定係数Rは0.9984、残差平方和SSは0.01556、残差標準偏差SYXは0.03026であり、当該標準曲線が信頼性の高いものであることを示している。
一方、図8を見ると、ELISA法を用いた場合、測定対象となる標準試料に含まれるCu2+−酸化LDL/βGPI複合体の濃度が2μg/mLを超える濃度領域において、標準曲線が頭打ちとなっている。この結果は、Cu2+−酸化LDL/βGPI複合体の濃度が2.0μg/mLを超える濃度領域において、ELISA法は定量性を失うことを示している。したがって、ELISA法を用いて酸化LDL/βGPI複合体を検出、定量する場合には、測定結果が2.0μg/mL以下の濃度範囲に収まるようにサンプルを希釈しなければならない。しかし、一般的にはサンプル中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の濃度は不明であること、また、ELISA法による測定には約3時間程度の時間がかかることを考えると、実験者には大変な負担がかかるものであるといえる。
これに対して、図7から明らかなとおり、本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法においては、2μg/mLは勿論のこと、50.0μg/mLの濃度においても標準曲線が頭打ちとなっていない。この結果は、本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法は、従来のELISA法と比較して、遥かに広いダイナミックレンジで酸化LDL/βGPI複合体の検出、定量が可能であることを示している。
一方、本発明に係る検出方法は、比較的低濃度領域においても優れた定量性を発揮する。図9には、ELISA法が優れた定量性を示す低濃度領域(0.02μg/mL〜1μg/mL)においてELISA法から得られた測定データをx軸に、本発明に係る検出方法から得られた測定データをy軸にプロットしたグラフを示している。図9に示されているとおり、本発明に係る検出方法で得られた測定データと、ELISA法で得られた測定データは非常に良く相関している(R=0.9871)。この結果は、本発明に係る検出方法は、ELISA法が優れた定量性を示す低濃度領域(0.02μg/mL〜1μg/mL)においても、ELISA法と遜色ないレベルで酸化LDL/βGPI複合体を検出、定量できるものであることを示している。
<実験7.血清中の酸化LDL/βGPI複合体の検出>
本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法を用いて、血清試料中に含まれる未知濃度の酸化LDL/βGPI複合体の検出を行った。展開液Aを調製する際に、標準試料溶液に代えて合計9検体のヒト血清(試料A〜試料I)を被験試料として用いた以外は、「実験5」におけると同様にして、酸化LDL/βGPI複合体の検出を行った。
なお、本実験においても、「実験5」においてと同様の手順で、「実験4」で調製したCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を既知の濃度(0.1〜50.0μg/mL)で含む標準試料溶液を用いて、標準曲線を得た。図10には、このようにして得られた標準曲線を示している。図10に示されているとおり、当該標準曲線の平均二乗誤差MSEは0.01454、決定係数Rは0.959、残差平方和SSは0.1308、残差標準偏差SYXは0.1618であり、当該標準曲線が信頼性の高いものであることを示している。本実験では、未知濃度の酸化LDL/βGPI複合体を含む血清試料から得られた測定データを、当該標準曲線に当てはめることによって、当該血清試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の含量を半定量的に求めた。合計9検体のヒト血清試料(試料A〜試料I)について、本発明に係る検出方法で得られた測定結果を図11に示す。
一方、検出結果の妥当性を検証するための比較対象として、ELISA法を用いて、合計9検体の同じヒト血清試料について、その試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の検出を行った。
なお、ELISA法についても、「実験6」においてと同様の手順で、「実験4」で調製したCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を既知の濃度(0.02〜2.0μg/mL)で含む標準試料溶液を用いて、標準曲線を得た。図12には、このようにして得られた標準曲線を示している。図12に示されているとおり、当該標準曲線の平均二乗誤差MSEは0.0007411、決定係数Rは0.9984、残差平方和SSは0.01556、残差標準偏差SYXは0.03026であり、当該標準曲線が信頼性の高いものであることを示している。本実験では、未知濃度の酸化LDL/βGPI複合体を含む血清試料から得られた測定データを、当該標準曲線に当てはめることによって、当該血清試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体の含量を半定量的に求めた。合計9検体のヒト血清試料(試料A〜試料I)について、ELISA法で得られた測定結果を図13に示す。
さらに、図14は、図11に示した本発明に係る検出方法により得られた測定結果をy軸に、図13に示したELISA法により得られた測定結果をx軸にプロットしたグラフである。図14に示されているとおり、両方法で得られた測定結果は、非常に良く相関している(R=0.6399)。以上の結果は、本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法が、血清試料又は血清を含む種々の試料に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出するための、有効かつ信頼性の高い方法であることを示している。
<実験8.本発明に係る検出方法の他の一例>
展開液Aに含まれるビオチン−3H3抗体コンジュゲートに代えてビオチン−2E10抗体コンジュゲート、展開液Bに含まれる金ナノ粒子−2E10抗体コンジュゲートに代えて金ナノ粒子−3H3抗体コンジュゲートを用いた以外は、実験5と同様にして、既知の濃度のCu2+−酸化LDL/βGPI複合体を含む標準試料を用いて、酸化LDL/βGPI複合体の検出実験を行った。なお、ビオチン−2E10抗体コンジュゲートは、3H3抗体の代わりに、2E10抗体を用いた以外は上記実験2におけると同様の実験手順にて調製した。また、金ナノ粒子−3H3抗体コンジュゲートは、2E10抗体の代わりに、3H3抗体を用いた以外は上記実験3におけると同様の実験手順にて調製した。
得られた測定データ(検出部について得られた曲線下面積/コントロール部について得られた曲線下面積)を縦軸に、標準試料中に含まれるCu2+−酸化LDL/βGPI複合体の濃度を横軸としてプロットした。結果を図15に示す。図15には、プロットした測定データと数1に示す4係数ロジスティック回帰モデルに基づいて得られた標準曲線を併せて示している。図15に示されているとおり、当該標準曲線の平均二乗誤差MSEは0.00006322、決定係数Rは0.9984、残差平方和SSは0.0005058、残差標準偏差SYXは0.01124であり、当該標準曲線が信頼性の高いものであることを示している。また、以上の結果は、本発明に係る検出方法において、第一結合コンポーネントが備えている第一結合部を提供する物質として、酸化LDL/βGPI複合体を構成するapоB100と結合する抗apоB100抗体、第二結合コンポーネントが備えている第二結合部を提供する物質として、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIと結合する抗βGPI抗体を用いた場合であっても、酸化LDL/βGPI複合体を検出又は定量することができることを示している。
しかし、実験8で得られた図15に示す標準曲線と、先の実験5で得られた図7に示す標準曲線とを比較すると、実験5の検出方法の方が得られるシグナルが大きく、検出感度に優れていることがわかる。この結果は、本発明に係る検出方法は、第一結合コンポーネントが備えている第一結合部を提供する物質として、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIと特異的に結合する抗βGPI抗体を、第二結合コンポーネントが備えている第二結合部を提供する物質として、酸化LDL/βGPI複合体を構成するapоB100と結合する抗apоB100抗体を用いた場合に、極めて優れた感度を発揮することを示している。
本発明に係る酸化LDL/βGPI複合体の検出方法又は検出キットによれば、従来のELISA法と比較して、迅速かつ容易に、しかも広いダイナミックレンジで生体試料などの試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を検出、定量することができる。極めて容易かつハイスループットな動脈硬化性疾患の検査、診断技術としての応用が期待でき、その産業上の利用可能性は大きい。
1 ラテラルフローアッセイ用テストストリップ
2 支持体
3 メンブレン
11 サンプルパッド
12 検出部
13 コントロール部
14 ウィッキングパッド

Claims (8)

  1. 試料中に含まれる酸化LDLとβ−グリコプロテインIの複合体(酸化LDL/βGPI複合体)の検出方法であって、
    ラテラルフローアッセイ用テストストリップを用い、
    酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネントを介して、前記試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を前記テストストリップの所定位置に捕捉する工程、及び、
    標識体を含む第二結合コンポーネントを、テストストリップの所定位置に固定された前記酸化LDL/βGPI複合体に結合させることで、当該酸化LDL/βGPI複合体を標識する工程、
    を含むことを特徴とする酸化LDL/βGPI複合体の検出方法。
  2. 前記第一結合コンポーネントが、酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPIに特異的に結合する第一結合部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記第一結合コンポーネントが、
    酸化LDL/βGPI複合体を構成するβGPI分子と特異的に結合する前記第一結合部と、第一の特異的結合要素とを含む第一結合ユニットと、
    前記第一の特異的結合要素と特異的に結合する第二の特異的結合要素を含む第二結合ユニットであって、テストストリップ上の所定位置に位置している第二結合ユニット、
    を含み、
    第一結合コンポーネントを介して、前記試料中に含まれる酸化LDL/βGPI複合体を前記テストストリップの所定の位置に捕捉する前記工程が、酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合ユニットの前記第一結合部とを結合させる工程と、前記第一結合ユニットの前記第一の特異的結合要素と前記第二結合ユニットの前記第二の特異的結合要素とを結合させる工程とを含んでいることを特徴とする請求項2に記載の検出方法。
  4. 前記第一の特異的結合要素及び前記第二の特異的結合要素は、それぞれ、アビジン及びビオチン若しくはその逆、ストレプトアビジン及びビオチン若しくはその逆、又は、ニュートラビジン及びビオチン若しくはその逆のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の検出方法。
  5. 前記第二結合コンポーネントが、酸化LDL/βGPI複合体を構成するアポリポプロテインB−100(apоB100)に結合する第二結合部を備えていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の検出方法。
  6. 前記酸化LDL/βGPI複合体と前記第一結合部との結合が、抗原抗体反応に基づく結合であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の検出方法。
  7. 前記酸化LDL/βGPI複合体と前記第二結合部との結合が、抗原抗体反応に基づく結合であることを特徴とする請求項1乃至6に記載の検出方法。
  8. 少なくとも下記(A)乃至(C)を含み、請求項1乃至7のいずれかに記載の検出方法を実施するための検出キット:
    (A)酸化LDL/βGPI複合体と結合する第一結合コンポーネント、
    (B)標識体を含む第二結合コンポーネント、及び、
    (C)ラテラルフローアッセイ用テストストリップ。
JP2020018653A 2020-02-06 2020-02-06 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット Active JP6826740B1 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020018653A JP6826740B1 (ja) 2020-02-06 2020-02-06 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット
PCT/JP2021/003773 WO2021157576A1 (ja) 2020-02-06 2021-02-02 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット
CN202180000515.XA CN114207442A (zh) 2020-02-06 2021-02-02 氧化LDL/β2GPI复合物的检测方法及检测试剂盒
EP21712937.8A EP3882630A4 (en) 2020-02-06 2021-02-02 METHOD FOR DETECTING AN OXIDIZED LDL/BETA2GPI COMPLEX, AND DETECTION KIT
US17/281,069 US20220205997A1 (en) 2020-02-06 2021-02-02 A detection method for detecting an oxidized LDL/Beta2GPI complex and a detection kit therefor

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020018653A JP6826740B1 (ja) 2020-02-06 2020-02-06 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6826740B1 JP6826740B1 (ja) 2021-02-10
JP2021124416A true JP2021124416A (ja) 2021-08-30

Family

ID=74529558

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020018653A Active JP6826740B1 (ja) 2020-02-06 2020-02-06 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20220205997A1 (ja)
EP (1) EP3882630A4 (ja)
JP (1) JP6826740B1 (ja)
CN (1) CN114207442A (ja)
WO (1) WO2021157576A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022168892A1 (ja) 2021-02-05 2022-08-11 三井化学株式会社 重合性組成物、樹脂、成形体、光学材料、及びレンズ

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995009363A1 (fr) * 1993-09-29 1995-04-06 Yamasa Corporation Procede de titrage de lipoproteine oxydee et applications de ce procede
JP2002017353A (ja) * 1997-12-19 2002-01-22 Japan Tobacco Inc 変性ldlの定量方法
WO2003022866A1 (en) * 2001-09-07 2003-03-20 Eiji Matsuura LIGAND FOR ß2-GLYCOPROTEIN I AND USE THEREOF
JP2003227837A (ja) * 1999-07-22 2003-08-15 Ikagaku:Kk 血液中の低比重リポ蛋白(ldl)もしくは変性低比重リポ蛋白の検出方法
JP2008008894A (ja) * 2006-05-30 2008-01-17 Okayama Univ 新規な酸化ldl複合体及びその検知方法
WO2009154026A1 (ja) * 2008-06-20 2009-12-23 国立大学法人岡山大学 石灰化小球に対する抗体及びその用途

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5616592B2 (ja) 1972-02-02 1981-04-17
JP2005097203A (ja) 2003-09-26 2005-04-14 Eiji Matsuura 抗ldlモノクローナル抗体

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995009363A1 (fr) * 1993-09-29 1995-04-06 Yamasa Corporation Procede de titrage de lipoproteine oxydee et applications de ce procede
JP2002017353A (ja) * 1997-12-19 2002-01-22 Japan Tobacco Inc 変性ldlの定量方法
JP2003227837A (ja) * 1999-07-22 2003-08-15 Ikagaku:Kk 血液中の低比重リポ蛋白(ldl)もしくは変性低比重リポ蛋白の検出方法
WO2003022866A1 (en) * 2001-09-07 2003-03-20 Eiji Matsuura LIGAND FOR ß2-GLYCOPROTEIN I AND USE THEREOF
JP2008008894A (ja) * 2006-05-30 2008-01-17 Okayama Univ 新規な酸化ldl複合体及びその検知方法
WO2009154026A1 (ja) * 2008-06-20 2009-12-23 国立大学法人岡山大学 石灰化小球に対する抗体及びその用途

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
KAZUKO KOBAYASHI, J.LIPID RES., vol. V42 N5, JPN5003025126, 2001, pages 697 - 709, ISSN: 0004341060 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022168892A1 (ja) 2021-02-05 2022-08-11 三井化学株式会社 重合性組成物、樹脂、成形体、光学材料、及びレンズ

Also Published As

Publication number Publication date
JP6826740B1 (ja) 2021-02-10
WO2021157576A1 (ja) 2021-08-12
CN114207442A (zh) 2022-03-18
US20220205997A1 (en) 2022-06-30
EP3882630A4 (en) 2022-05-11
EP3882630A1 (en) 2021-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Otieno et al. Bioconjugation of antibodies and enzyme labels onto magnetic beads
JP5980127B2 (ja) ストレプトアビジン結合磁性粒子及びその製造方法
CN110763834B (zh) 一种检测免疫标志物含量的方法、试剂和试剂盒
JP5557450B2 (ja) 測定対象成分の免疫測定法
CN111024956A (zh) 一种检测ptx3的时间分辨荧光免疫层析试剂盒
WO2008053822A1 (fr) Procédé de détection d'une réaction de liaison spécifique d'une molécule par fluorométrie monomoléculaire
JP2009536344A (ja) 磁場を用いた試料中の標的分子の検出
WO2011036597A1 (en) Binding assay with multiple magnetically labelled tracer binding agents.
JP6977939B2 (ja) アルドステロン及びレニンの検出方法
CN108445215A (zh) 一种定量检测髓过氧化物酶的试剂盒及制备方法
CN110520734B (zh) 用于减少信号生成数字测定中的噪声的方法
WO2021157576A1 (ja) 酸化LDL/β2GPI複合体の検出方法、及び、検出キット
JP2010281595A (ja) リガンド分子の検出方法
Goryacheva et al. Express test for NT-proBNP competitive detection based on lateral flow immunoassay using silanized fluorescent quantum dots
CN111929445B (zh) 新型冠状病毒抗体的检测试剂
KR102323361B1 (ko) 스위치 성 부착반응을 이용한 친화 분리 시스템 및 방법
KR100781014B1 (ko) 코발라민 분석
JP2005315726A (ja) 検出試薬、検出装置、検出方法およびその検出キット
JP2006007146A (ja) 粒子分離装置
JPWO2012111687A1 (ja) ストレプトアビジン結合磁性粒子の製造方法
WO2012111686A1 (ja) ストレプトアビジン結合磁性粒子の製造方法
JP7304649B2 (ja) スイッチ性付着反応を用いた親和分離システム及び方法
Li et al. Preparation and characterization of a homogeneous immunoassay for point-of-care testing (POCT) of procalcitonin (PCT)
JP2010002393A (ja) 標的物質の検出方法
JP5137880B2 (ja) 結合性物質を固定化した乾燥粒子の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200427

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20200427

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20200901

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200904

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200911

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201228

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6826740

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250