JP2021123712A - 組成物、硬化膜、積層体、船舶、水中構造物、医療デバイス、及び、マイクロ流路チップ - Google Patents

組成物、硬化膜、積層体、船舶、水中構造物、医療デバイス、及び、マイクロ流路チップ Download PDF

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千晶 吉川
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【課題】食塩水の暴露環境下においても長期間、優れた生物付着抑制性能を維持できる硬化膜を形成可能な組成物の提供。【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記式(2)で表される繰り返し単位と有する第1の高分子化合物とアクリルアミドによりブロック化したポリスチレン系の第2の高分子化合物とを含有する組成物。(式中、R1〜R2はそれぞれ独立に水素原子、又は、アルキル基を表し、Z1は親水性基を有する基を表し、Z2は光ラジカル発生基を表す。)【選択図】図1

Description

本発明は、組成物、硬化膜、積層体、船舶、水中構造物、医療デバイス、及び、マイクロ流路チップに関する。
従来、生物付着を抑制するためのコーティング材料が知られている。特許文献1には、ビニル系単量体から構成されるグラフト鎖を有し、所定の計算式で定義される表面占有率(σ)が0.1以上である、グラフトポリマーを含み、少なくとも一部のグラフトポリマー鎖間が架橋されてなる生体適合性材料が記載されている。
特開2016−210956号公報
特許文献1に記載された生体適合性材料は優れた生物付着抑制性能を有している。しかし、本発明者らは、上記生体適合性材料は食塩水の暴露環境下における長期安定性の面で改善の余地があることを知見している。
そこで、本発明は、食塩水の暴露環境下においても長期間、優れた生物付着抑制性能を維持できる硬化膜を形成可能な組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、硬化膜、積層体、船舶、水中構造物、医療デバイス、及び、マイクロ流路チップを提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 後述する式1で表される繰り返し単位と、後述する式2で表される繰り返し単位と有する第1の高分子化合物と、後述する式3で表される繰り返し単位を有する第2の高分子化合物と、を含有する組成物。
[2] 上記第1の高分子化合物の全繰り返し単位に対する上記式2で表される繰り返し単位の含有量が、10mol%以下である[1]に記載の組成物。
[3] 上記Zが後述する式Aで表される基である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 上記親水性基がヒドロキシ基である、[1]〜[3]に記載の組成物。
[5] 上記光ラジカル発生基が、以下の式g1で表される基である、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 上記光ラジカル発生基が以下の式g2で表される基である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の組成物を硬化させた硬化膜。
[8] 基材と、上記基材上に形成された[7]に記載の硬化膜と、を有する積層体。
[9] [7]に記載の硬化膜を有する船舶。
[10] [7]に記載の硬化膜を有する水中構造物。
[11] 汚濁防止膜である、[10]に記載の水中構造物。
[12] [7]に記載の硬化膜を有する医療デバイス。
[13] 細胞培養容器、細胞培養シート、細胞捕捉フィルター、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、ステント、カテーテル、インプラント、コンタクトレンズ、マイクロ流路チップ、ドラッグデリバリーシステム材、人工血管、人工臓器、血液透析膜、ガードワイヤー、血液フィルター、血液保存パック、内視鏡、バイオチップ、糖鎖合成機器、成形補助材、及び、包装材からなる群より選択される1種である、[12]に記載の医療デバイス。
[14] 基材と、上記基材上に配置された[7]に記載の硬化膜と、を有するマイクロ流路チップ。
本発明によれば、食塩水の暴露環境下においても長期間、優れた生物付着抑制性能を維持できる硬化膜を形成可能な組成物が提供できる。また、本発明によれば、硬化膜、積層体、船舶、水中構造物、医療デバイス、及び、マイクロ流路チップも提供できる。
本発明の実施形態に係る船舶の模式的な一部断面図である。 本発明の実施形態に係る船舶の選定基材の模式的な断面図である。 本発明の実施形態に係る水中構造物の模式図である。 本発明の実施形態に係る医療デバイスの斜視図である。 浸漬実験結果の平均膜厚を表すグラフである(例10、例14)。 浸漬実験結果の平均膜厚を表すグラフである(例9、例13)。 浸漬実験結果の平均膜厚を表すグラフである(例8、例11)。 食塩水の暴露環境下における生物付着抑制性能の試験結果を表すグラフである(浸漬0日)。 食塩水の暴露環境下における生物付着抑制性能の試験結果を表すグラフである(浸漬1か月)。 食塩水の暴露環境下における生物付着抑制性能の試験結果を表すグラフである(浸漬2か月)。 キプロス幼生を用いて行った食塩水暴露環境下における生物付着抑制性能の評価の結果の画像である。 食塩水の暴露環境下における生物付着抑制性能における接着した幼フジツボの割合(播種数100個に対する)を表すグラフである。 飼育されたキプリス幼生である。 例21の試験終了時のサンプルの全面の画像である。図面内の、黒く見える点が、サンプル表面に付着した幼フジツボである。 例22の試験終了時のサンプルの全面の画像である。 例23の試験終了時のサンプル全面の画像である。 例24の試験終了時のサンプル全面の画像である。 例25の試験終了時のサンプル全面の画像である。 例26の試験終了時のサンプル全面の画像である。 例27の試験終了時のサンプル全面の画像である。 例28の試験終了時のサンプル全面の画像である。 各サンプルへのキプリス幼生接着数のグラフである。 1M水酸化ナトリウム溶液中で加熱処理をしたpolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)のNMRチャートである。 1M水酸化ナトリウム溶液中で加熱処理をしpolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のNMRチャートである。 1M塩酸中で加熱処理したPolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)のNMRチャートである。 1M塩酸中で加熱処理したPolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のNMRチャートである。 重水中で加水分解反応を6時間行ったpolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)のGPCチャートである。 水酸化ナトリウム中で加水分解反応を6時間行ったpolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)のGPCチャートである。 塩酸中で加水分解反応を6時間行ったpolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)のGPCチャートである。 重水中で加水分解反応を6時間行ったpolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のGPCチャートである。 水酸化ナトリウム中で加水分解反応を6時間行ったpolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のGPCチャートである。 塩酸中で加水分解反応を6時間行ったpolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のGPCチャートである。 二元共重合体(HPA/BPA=95/5)を用いたシリコン基板上の硬化膜の洗浄前後の様子を示す写真である。 三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)を用いたシリコン基板上の硬化膜の洗浄前後の様子を示す写真である。 二元共重合体(HPA/BPA=95/5)を用いたアルミ基板上の硬化膜の洗浄後の様子を示す写真である。 三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)を用いたアルミ基板上の硬化膜の洗浄後の様子を示す写真である。 二元共重合体(HPA/BPA=95/5)を用いたシリコン基板上の硬化膜の超音波洗浄後の様子を示す写真である。 三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)を用いたシリコン基板上の硬化膜の超音波洗浄後の様子を示す写真である。 サンプル上に接着したL929細胞数である。 試験終了時にコントロール上に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。 試験終了時に三元重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)硬化膜上に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。 試験終了時にHPA/BPA/DOPA−ボトルブラシ硬化膜上に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。 試験終了時にガラス板上に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。 付着試験9日後の各サンプルへのキプリス幼生付着数である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」はアクルアミド及びメタクリルアミドの双方、又は、いずれかを表す。また、「(メタ)アクリル」「(メタ)アクリロイル」「(メタ)アクリレート」と表記する場合も、メタクリル/アクリル、メタクリロイル/アクリロイル、及び、メタクリレート/アクリレートの双方、又は、いずれかを表しており、上記と同様である。
[組成物]
本発明の実施形態に係る組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、後述する式1で表される繰り返し単位と、後述する式2で表される繰り返し単位とを有する第1の高分子化合物と、後述する式3で表される繰り返し単位を有する第2の高分子化合物と、を有する組成物である。
なお、以下の説明において、「繰り返し単位」は、単に「単位」といい、式1で表される単位を「単位1」、式2で表される単位を「単位2」、式3で表される単位を「単位3」といい、第1の高分子化合物を「P1」、第2の高分子化合物を「P2」という。
上記組成物により得られる膜が、食塩水の暴露環境下においても長期間、優れた生物付着抑制性能を維持できる機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測している。なお、以下の機序は推測であり、以下の機序以外の機序によって本発明の課題が解決される場合であっても、本発明の範囲に含まれる。
特許文献1に記載された生体適合性材料は、優れた性能を有する一方で、食塩水の暴露環境下において、経時的に生物付着抑制性能が低下する場合があり、上記の傾向は、(メタ)アクリレート構造を有する高分子を含有する場合に顕著だった。本発明者らは、鋭意の検討の結果、上記は、食塩水の暴露環境下において、高分子が加水分解され、経時的に剥離、及び/又は、分解することが、経時的に生物付着抑制性能が低下する要因の一つであることを知見した。
本発明者らは、上記知見に基づき、食塩水の暴露環境下において優れた耐加水分解性を有する多数の高分子を探索し、結果として、(メタ)アクリルアミド構造を有する高分子を試験したところ、後述する実施例で示すように、優れた生物付着抑制性能が維持される硬化膜を形成可能な組成物の発明を完成させた。
以下では、本組成物が含有する各成分について詳述する。
〔P1〕
本組成物はP1を含有する。組成物におけるP1の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、一般に、組成物の固形分の全質量に対して、0.1〜99.9質量%が好ましい。
なお、組成物は、P1の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。組成物が、2種以上のP1を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
P1は、単位1、及び、単位2を有している。以下では、P1が有する各単位について詳述する。
<単位1>
P1における単位1の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、P1の全繰り返し単位(以下、「全単位」ともいう。)に対して、一般に、0.1モル%〜99.9モル%が好ましい。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、単位1の含有量は、P1の全単位中、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましい。
なお、P1は、単位1の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。P1が、2種以上の単位1を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
単位1は、以下の式1で表される。
Figure 2021123712
式1中、R水素原子、又は、アルキル基を表し、Zは親水性基を有する基を表す。
のアルキル基としては特に制限されないが、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
の親水性基を有する基(以下「親水性基含有基」ともいう。)が有する親水性基としては特に制限されないが、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルコキシ基、及び、双性イオン基等を有する基が挙げられる。双性イオン基としては特に制限されないが、カルボキシベタイン、スルホベタイン、及び、ホスホベタイン等が挙げられる。
親水性基含有基としては特に制限されないが、以下の式Aで表される基が好ましい。
Figure 2021123712
上記式中、Lは単結合、又は、p+q+1価の基を表し、Lは単結合、又は、2価の基を表し、Yは親水性基(ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルコキシ基、及び、双性イオン基等)を表し、pは1以上の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基を表し、qは0以上の整数を表し、*は結合位置を表す。また、Lが単結合又は2価の基の時、pは1、qは0である。
式A中、複数あるL、R、及び、Yはそれぞれ同一でも異なってもよい。
の2価の基としては特に制限されないが、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−O−、−S−、−NR2−(R2は水素原子又は1価の有機基を表す)、アルキレン基(炭素数1〜10個が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数3〜10個が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2〜10個が好ましい)、アリーレン基、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。
の3価以上の基としては特に制限されないが例えば、以下の式(3BRC)〜(6BRC)で表される基が挙げられる。
Figure 2021123712
式3BRC中、Lは3価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、3個のTは互いに同一でもよく異なってもよい。
としては、窒素原子、3価の炭化水素基(炭素数1〜10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、3価の複素環基(5員環〜7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、−O−)が含まれていてもよい。Lの具体例としては、グリセリン残基、トリメチロールプロパン残基、フロログルシノール残基、及び、シクロヘキサントリオール残基等が挙げられる。
式4BRC中、Lは4価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、4個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、Lの好適形態としては、4価の炭化水素基(炭素数1〜10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、4価の複素環基(5〜7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、−O−)が含まれていてもよい。Lの具体例としては、ペンタエリスリトール残基、及びジトリメチロールプロパン残基等が挙げられる。
式5BRC中、Lは5価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、5個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、Lの好適形態としては、5価の炭化水素基(炭素数2〜10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、5価の複素環基(5〜7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、−O−)が含まれていてもよい。Lの具体例としては、アラビニトール残基、フロログルシドール残基、及びシクロヘキサンペンタオール残基等が挙げられる。
式6BRC中、Lは6価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、6個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、Lの好適形態としては、6価の炭化水素基(炭素数2〜10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、6価の複素環基(6〜7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、−O−)が含まれていてもよい。Lの具体例としては、マンニトール残基、ソルビトール残基、ジペンタエリスリトール残基、ヘキサヒドロキシベンゼン、及び、ヘキサヒドロキシシクロヘキサン残基等が挙げられる。
式3BRC〜式6BRC中、T〜Tで表される2価の基の具体例及び好適形態は、すでに説明したLの2価の基と同様であってよい。
また、Lが7価以上の基である場合には、式3BRC〜式6BRCで表した基を組み合わせた基を用いることができる。
式A中、Lの2価の基としては特に制限されず、Lの2価の基と同様の基が挙げられる。また、Rの1価の有機基としては特に制限されず、ヘテロ原子を有していてもよい1価の炭化水素基が挙げられ、より具体的には、炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状、又は、環状のアルキル基が挙げられる。
単位1は、以下の式1′で表される単量体に基づく単位であることが好ましい。
Figure 2021123712
式1′中、R及びZはそれぞれ式1中の各記号と同義であり、好適形態も同様である。
なかでも、金属基板、及び、シリコン基板等へのより優れた接着性を有する塗膜が得られる観点で、P1は、単位1を2種以上含むことが好ましい。
P1が単位1を2種以上含む場合、P1は、以下の式1Aで表される単位(単位1A)及び式1Bで表される単位(単位1B)を含むことが好ましい。
Figure 2021123712
式1A、及び、式1B中、L、及び、Lは炭素数1〜6個の直鎖状、又は、分枝鎖状のアルキレン基であり、互いに同一でも異なってもよく、rは、1以上3以下の整数であり、Rは、式1中のRと同義であり、好適形態も同様である。
P1が単位1Bを含む場合、得られる硬化膜はアルミニウム、及び、チタニウム等の金属基板、及び、シリコン基板(以下「金属基板等」ともいう。)への優れた接着性を有する。
単位1中における単位1Aと単位1Bの含有量(言い換えれば、単位1の組成)としては特に制限されないが、金属基板等へのより優れた接着性を有する観点で、P1中における単位1Aの含有量に対する単位1Bの含有量の含有質量比(1B/1A)が、0.01〜0.4が好ましい。
単位1は、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、及び、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有基を有する単量体;6−アクリルアミドヘキサン酸等のカルボキシ基含有基を有する単量体;3−[(3−アクリロイルアミノプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパノアート等の双性イオン含有基を有する単量体;N−(ブトキシメチル)アクリルアミド等のアルコキシ基含有基を有する単量体;N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドを有する単量体、及び、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド等のアミノ基含有基を有する単量体;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有基を有する単量体;等を用いて合成できる。
また、単位1を得るための単量体は、アミノ基とヒドロキシ基とを有する化合物(例えば、ドーパミン)と、(メタ)アクリル酸塩化物とを塩基触媒の存在下で反応させ、アミド結合を形成する等の公知の方法によって、容易に合成できる。
<単位2>
P1は単位2を有する。単位2は光ラジカル発生基を有しており、光の照射によりラジカルを発生するため、分子内に固定された光ラジカル開始剤としての機能を有する。なお、単位2は、単位1とは異なる繰り返し単位を意味する。
P1における単位2の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、P1の全単位に対して、一般に、0.1〜10モル%が好ましい。
なお、P1は、単位2の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。P1が、2種以上の単位2を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
単位2は、以下の式2で表される。
Figure 2021123712
式2中、Rは水素原子、又は、アルキル基を表し、Zは光ラジカル発生基を表す。Rのアルキル基としては特に制限されないが、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
の光ラジカル発生基は、光(紫外線、及び、放射線等)の照射によりラジカルを発生し得る基を意味する。光ラジカル発生基は、公知の光ラジカル発生剤に由来する基を用いることもできる。
光ラジカル発生基としては、例えば、カルボニルのα位が光解裂する構造を有する基、及び、オキシムエステル構造を有する基等が挙げられる。
また、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、光ラジカル発生基としては、以下の式(g1)で表される基が好ましい。
Figure 2021123712
式g1中、Rは置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリーレン基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を表し、*は結合位置を表す。
より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、Rとしては、フェニレン基が好ましく、Rとしては、フェニル基が好ましい。すなわち、光ラジカル発生基としては、以下の式g2で表される基が好ましい。
Figure 2021123712
式g2中、*は結合位置を表す。
単位2は、以下の式2′で表される単量体に基づく単位であることが好ましい。
Figure 2021123712
式2′中、R及びZはそれぞれ式2中の各記号と同義であり、好適形態も同様である。
上記の単量体の製造方法としては特に制限されないが、例えば、アミノ基を有する光重合開始剤と、(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることで製造できる。上記の単量体としては特に制限されないが、例えばN−(4−ベンゾイルフェニル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
<P1の製造方法>
P1の製造方法としては特に制限されず、例えば、式1′及び式2′で表される単量体をそれぞれ含有する組成物を調製し、公知の方法で共重合すればよい。具体的には、下記式で表される単量体、ラジカル重合開始剤、及び、溶剤等を含有する重合性組成物を調製し、エネルギーを付与(加熱熱、及び、光照射等)することで重合すればよい。
光重合開始剤は、光照射によって活性ラジカルを発生し得る公知の化合物が使用できる。光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、及び、トリハロメチル基を有するもの等);アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物;ヘキサアリールビイミダゾール、及び、オキシム誘導体等のオキシム化合物;有機過酸化物;含硫黄化合物;ケトン化合物;芳香族オニウム塩;アミノアセトフェノン化合物;アゾ化合物;アジド化合物;等が挙げられる。
また、重合性組成物は、上記以外に、連鎖移動剤、及び、重合禁止剤を含有してもよい。
P1の分子量としては特に制限されないが、数平均分子量(Mn)として、典型的には、10,000〜1,000,000であることが好ましい。また、分子量分布(分子量分散度:PDI)としては特に制限されないが、典型的には、1.0〜3.0が好ましい。なお、数平均分子量、及び、分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて、後述する条件により測定される値を意味する。
〔P2〕
本組成物はP2を含有する。組成物におけるP2の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、一般に組成物の固形分の全質量に対して、0.1〜99.9質量%が好ましい。
なお、組成物は、P2の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。組成物が、2種以上のP2を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
P2は、単位3を有している。以下では、P2が有する各単位について詳述する。
<単位3>
P2は単位3を有する。P2における単位3の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、一般にP2の全単位に対して、50〜100モル%が好ましい。
なお、P2は、単位3の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。P2が、2種以上の単位3を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
なお、P2は単位3以外の単位を有していてもよい。
単位3は、以下の式3で表される。
Figure 2021123712
式3中、R、及び、Rはそれぞれ独立に水素原子、又は、アルキル基を表し、同一でも異なっていてもよく、Zは親水性基含有基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の置換基を表し、Lは式4a、又は、式4bで表される基を表し、Lは単結合、又は、2価の基を表し、式4a、及び、式4b中、*は結合位置を表し、nは1以上の整数を表す。
Figure 2021123712
、及び、Rのアルキル基としては特に制限されないが、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
また、Zとしては特に制限されないが、式1中のZと同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。
の1価の置換基としては特に制限されないが、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及び、アミノ基等が挙げられる。一形態としては、Rとしてはハロゲン原子が好ましい。
また、Lの2価の基としては特に制限されないが、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基が挙げられ、より具体的には、炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
(P2の構造)
P2は、単位3を有し、上記単位3は、繰り返し単位中に高分子鎖を側基として有する単位である。また、単位3は、P2の主鎖の少なくとも一部を構成するため、上記高分子鎖は、上記主鎖に結合された側鎖であり、P2はグラフト高分子である。
P2の立体構造としては特に制限されないが、より優れた生物付着抑制性能を有する点で、以下の式で表される表面占有率(σ)が0.1以上であることが好ましく、0.2以上がよりこのましく、0.3以上が更に好ましく、0.4以上が特に好ましく、0.4を超えるのが最も好ましい。
本明細書において、表面占有率(σ)が0.1以上のグラフトポリマーが有するグラフト鎖を「濃厚ポリマーブラシ」という。
ここで、「ポリマーブラシ」とは、短繊維の長軸方向に略垂直な方向に繊維の表面から伸長したポリマー鎖の集合体であり、グラフトポリマーの主鎖に結合した複数のグラフト鎖を意味する。
濃厚ポリマーブラシについては、参考文献1(Tsujii Y et al., “Structure and Properties of High−Density Polymer Brushes Prepared by Surface−Initiated Living Radical Polymerization.”, Adv Polym Sci., Vol. 197, pp. 1−45, 2006.)に詳述されている。
参考文献1の図10には、グラフト密度に対するグラフト鎖の伸長度が示されており、「濃厚ポリマーブラシ」のグラフト鎖の伸長度は準希薄系と比較してより大きいことが示されている。
一般に良溶媒中の孤立高分子鎖は排除体積効果によりランダムコイル形状をとるが、固体に一端を固定された場合、マッシュルームのような形態をとることが知られている。グラフト鎖の表面密度が上昇すると、分子鎖同士が重なって密度が増大してしまうため、これを避けてマッシュルーム状の分子鎖が高さ方向に伸長することが知られている(スケーリング則)。
しかし、高表面占有率(高σ)領域において、実験的に確かめられたグラフト鎖の伸長度はこの理論的な予想を超えて大きくなる。本明細書における濃厚ポリマーブラシとは、この、グラフト鎖の伸長度が理論的な予想を超えて大きくなる領域、具体的には、表面占有率がσが0.1以上のポリマーブラシを意味し、σは0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましく、0.4を超えることが特に好ましい。
なお、表面占有率(Dimensionless graft density(σ))とは、グラフト密度をモノマー断面積で規格化した値を意味し、定義は参考文献1に準ずる。
このような伸び切り鎖に近いグラフト鎖から形成された濃厚ポリマーブラシは、柔軟な高分子鎖があたかも剛直な分子のように高度に配向した状態となっており、準希薄系と比較して、(1)伸び切り鎖長に匹敵するほど大きな膨潤膜厚(伸張配向)と高い圧縮抵抗を有し、(2)大きな浸透圧と高度に延伸された分子鎖形態に由来して、溶融状態でも溶媒中でも(一定以上の大きさの分子をブラシ層に取り込まない)明確なサイズ排除効果を有し、更に、(3)同種ブラシ間でも相互貫入が起こらず、その結果、膨潤ブラシ間の摩擦係数が極度に低くなること等の独特の性質を有することが知られている。
具体的には、表面占有率(σ)は、式:表面占有率(σ)={高分子鎖部分の繰り返し単位1個当たりの体積(nm/鎖)/高分子鎖部分の繰り返し単位の長さ(nm)}×σ(鎖/nm)で定義される。
なお、上記式中、σは有効グラフト密度(鎖/nm)である。
グラフト高分子であるP2は、主鎖と、主鎖を中心に放射状に延びる複数の高分子鎖を有し、これらが濃厚ポリマーブラシを形成している。上記の表面占有率は、P2の主鎖を中心軸とし、高分子鎖の長さを半径とする円柱面を仮想したとき、上記円柱面の面積に占める高分子鎖に由来する面積として説明されるパラメータである。
表面占有率が大きくなると、仮想の円柱面に占める高分子鎖に由来する面積の割合が大きくなることを意味する。そのため、高分子鎖の自由度が低くなり、P2の主鎖、及び、円柱面に対して高分子鎖が略垂直な状態を維持しやすいものと推測される。
一方、後述するグラフト効率がより低い場合、及び、高分子鎖がより長い(言い換えれば、高分子鎖部分の重合度がより高い)場合、仮想円柱面における高分子鎖の密度は低下する。このような場合、高分子鎖の自由度はより高くなり、高分子鎖は自由に折り畳まれ得る。
次に、上記の表面占有率(σ)の計算式における各項について、詳述する。
・有効グラフト密度(σeff
まず、有効グラフト密度(σeff)は仮想円柱面の単位面積あたりのグラフト鎖の本数を表す。
式:σeff(鎖/nm)=1/{(2π×α×グラフト鎖部分の重合度)×(α′/グラフト効率)}
なお、上記式中αはグラフト鎖部分の繰り返し単位の長さ(nm)であり、α′は主鎖の繰り返し単位の長さ(nm)である。高分子鎖部分の繰り返し単位の長さの算出方法については後述する。具体的なσeffの算出方法については、実施例に記載のとおりである。
また、P2における高分子鎖部分の重合度は、P2を合成する際、同様の条件下で、P2に結合していれば高分子鎖を構成する高分子(以下、「特定高分子」ともいう。)を調製し、その重合度を測定することで、決定することができる。
より具体的には、P2を合成する際、高分子鎖を形成するための単量体と反応し得る基(反応基)を1個有し、かつ、P2の主鎖を構成しない(重合しない)化合物(以下、「開始点化合物」ともいう。)を用いて、特定高分子を得て、その重合度を測定すればよい。
特定高分子は、P2における高分子鎖部分と重合度、数平均分子量、及び、分子量分布が等しいと考えられるため、特定高分子の重合度をP2の高分子鎖部分の重合度とする。
また、この際に、特定高分子の数平均分子量(Mn)、及び、特定高分子の分子量分布(PDI)を求めることで、P2の高分子鎖部分の数平均分子量、及び、分子量分布を求めることもできる。
ここで、Mn、及び、PDIの測定は、以下の条件1又は2により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算として求めるものとする。
・条件1(DMF系)
カラム:Shodex社LF804(300×80mm;bead size=6μm)
流速:0.8ml/min(40℃)
溶出液:10mM 塩化リチウム ジメチルホルムアミド(DMF)溶液
次に、「グラフト効率」とは、P2の全単位に対する高分子鎖を有する単位のモル比である。言い換えれば、P2の繰り返し単位1個あたりの、高分子鎖の本数である。
P2の全単位は、高分子鎖を有する単位Pmと、高分子鎖を有しない単位とに分類され、高分子鎖を有しない単位は、反応基を有しているものの、未反応だった単位Pmと、反応基を有していない単位Pmとに分類される。つまり、P2は上記Pm、Pm、及び、Pmを用いて、以下のとおり表わされる。
Figure 2021123712
上記式中、n1、n2、及び、n3は、各単位の含有モル比を表し、n1は0より大きい数を表し、n2及びn3は0以上の数を表す。
ここで、グラフト効率は、上記各記号を用いて表すと、n1/(n1+n2+n3)と表すことができる。
グラフト効率は、P2の全単位における、反応基を有する単位(Pm及びPm)の含有量に対する、高分子鎖と反応した単位(Pm)の含有量の含有モル比を示す開始効率(n1/(n1+n2))、及び、P2の全単位に対する、反応基を有する(及び、有していた)単位(Pm、Pm)の含有量の含有モル比((n1+n2)/(n1+n2+n3))から求められる。
P2の全単位に対する、反応基を有する単位の含有モル比は、高分子鎖を結合させる前の主鎖についてNMR(Nuclear Magnetic Resonance)測定すれば得られる。
開始効率は、NMR及びGPCの測定値より求められた重合率を元に算出することができる。
重合率は、NMRを用いて、高分子鎖を有する単位の含有量と、溶媒と未反応のモノマーとの比を測定することで、重合反応に用いた単量体の仕込みモル量に対する、高分子鎖に結合した単量体のモル量の比として求められる。また、重合率はGPCのピーク面積から算出することが可能である。
具体的には、GPCのピーク面積より、特定高分子の重合率を求め、開始効率を100%と仮定したときの重合率を、主鎖のポリマーと、開始点化合物との仕込み比から、GPCを用いて算出する。次に、NMRを用いて、P2中の高分子鎖を有する単位の含有量と、溶媒と未反応であったモノマーとの比を測定することで、用いた単量体のモル量に対する、高分子鎖の形成に寄与した単量体のモル量の比として、NMRによる重合率を求める。NMRによる重合率と、GPCによる重合率の概算値を比較することで、開始効率が求められる。
このように求めたP2の開始効率、重合率(NMRによる重合率)及び、グラフト鎖を構成する単量体単位の分子量より、高分子鎖部分の重合度を計算することができる。
また、高分子鎖部分の重合度は、飛行時間型質量分析計(TOF−MASS)又は多角光散乱器(MALLS)が備わったGPCによってボトルブラシポリマーの絶対分子量を決定し、単量体単位との比を算出することでも決定できる。
グラフト効率としては特に制限されないが、表面占有率がより高くなる点で、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。上限値としては特に制限されないが、一般に1以下が好ましい。
・高分子鎖部分の繰り返し単位1個当たりの体積(nm/鎖)
高分子鎖部分の繰り返し単位1個当たりの体積(v[nm/鎖])は、下記式で計算される。
={高分子鎖部分の単量体の分子量/アボガドロ定数}/(高分子鎖部分の単量体のバルク密度)
なお、上記式中、高分子鎖部分の単量体のバルク密度は、高分子鎖を形成するために使用される原料(単量体)の室温におけるバルク密度を意味する。
・高分子鎖部分の繰り返し単位の長さ(nm)
・高分子鎖部分の繰り返し単位の長さは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、標準ポリスチレン換算)で求める。
例えば、ビニル結合に基づく単位の長さは、0.25nmとなる。
表面占有率は、高分子鎖の自由度を反映するパラメータである。より表面占有率が高い場合、高分子鎖の構造上の自由度が制限され、高分子鎖が主鎖に対して、略垂直方向に延びた状態を維持しやすいと考えられる。高分子鎖が主鎖に対して、略垂直方向に延びることで、上記の仮想の円柱面においては、高分子鎖が主鎖に対して垂直に立った構造をより取りやすくなり、より優れた本発明の効果が得られるものと推測される。
より具体的には、高分子鎖がより密集した表面は、生物付着の原因となると考えられているタンパク質等が付着する「余地」がより少ないため、結果として、生物付着がより抑制されるものと推測される。
<その他の単位>
P2は、単位3以外の他の単位を有していてもよい。他の単位としては特に制限されないが、重合性基を有する単位、及び、親水性基、又は、疎水性基を有する単位等が挙げられる。P2が重合性基を有すると、製膜した際に基材への接着性がより高まる。
<P2の製造方法>
P2の製造方法としては特に制限されず、公知の製造方法が適用できる。例えば、所定の高分子鎖と、重合性基(例えばエチレン性不飽和基)と、を有するマクロモノマーを合成し、その後、上記マクロモノマーを重合させることで、グラフト化する方法、及び、後述する「グラフトフロム」法も使用できる。
P2の製造方法としては、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、原子移動ラジカル重合法(ATRP)法によるグラフト重合法を用いることが好ましい。
ATRP法とは、成長ラジカルを有する活性種(例えば、末端がラジカル化した官能基)とハロゲン原子にキャップされたドーマント種(休止種;例えば、末端がハロゲン化した官能基)とが平衡状態にあり、その平衡がドーマント種に大きく偏っているため、活性種の数が抑制されて、モノマーと反応して活性種が長大化する成長反応が促進する代わりに、停止反応が抑制されることを特徴とするラジカル重合の一種である。
通常のラジカル重合では、活性種のラジカルがモノマーと反応する成長反応以外に、ラジカル間で結合する再結合、ラジカルが分子内で結合を形成する不均化、ラジカルが溶媒等に移動する連鎖移動といった停止反応が生じ得る。このような停止反応が生じる一因として、活性種(のラジカル)の数の増大が考えられる。そして、停止反応が生じる条件下では、得られるポリマーの分子量を制御することは困難であり、その分子量の分布は広くなる傾向にある。また、得られるポリマーの末端構造は、停止反応によって異なるため、その制御も困難である。
ATRPでは、ドーマント種に大きく偏った活性種との平衡によって、停止反応が抑制されるため、分子量の分布が狭いポリマーを得ることが可能である。また、ATRPにより得られるポリマーの末端はドーマント種であるため、一度成長反応が停止したポリマーであっても、再度反応条件を満たすと、再度成長反応が進行する。この特徴から、所望の構造を有する高分子が得られやすい。
より具体的には、以下の反応スキームに示すとおり、エチレン性不飽和基と、ハロゲン化アルキル基とを有する単量体に基づく重合体(b)(以下、「マクロ開始剤」ともいう。)を得て(Scheme 1)、次に、ハロゲン原子を脱離させて生じた炭素ラジカルを活性点として、いわゆる「グラフトフロム」で高分子鎖を合成する(Scheme 2)方法である。
Figure 2021123712
Scheme 1中におけるR、L、及び、Lは、すでに説明した式3における各記号と同義であり、好適形態も同様である。また、Xはハロゲン原子を表し、塩素原子、又は、臭素原子が好ましい。
Scheme 1中、(a)で表される単量体を重合させ、(b)を得る方法としては特に制限されず、公知の重合法が適用できる。なかでも、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を用いることが好ましい。
RAFT法とは、リビングラジカル重合法のひとつで、可逆的に付加−開裂−連鎖移動反応を起こしうる化合物を連鎖移動剤(以下、RAFT剤と称する)として用いて重合する方法であり、RAFT剤としては特に限定されないが、例えば、国際公開第98/01478号、国際公開第99/31144号、及び、国際公開第00/75207号に記載の各種チオカルボニルチオ化合物を用いることができる。
Figure 2021123712
Scheme 2中における、R、R、L、L、及びZは、すでに説明した式3における各記号と同義であり、好適形態も同様である。また、Xはハロゲン原子を表し、塩素原子、又は、臭素原子が好ましい。また、Mtは金属イオンを表し、Lは配位子を表す。
金属イオン、及び、配位子は、反応開始点となるハロゲン化アルキル基からハロゲン原子を引き抜いてラジカルを発生させるとともに、ドーマント種との平衡を形成し、ラジカルの停止反応を抑制する効果を奏する。
金属イオンとしては特に制限されないが、例えば、銅、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、及び、ルテニウム等のイオンが挙げられる。なかでも、反応速度等の観点から銅イオンが好ましい。金属イオンは、一般に、金属塩の形態で、反応液を調製する際に配合される。金属塩としては特に限定されないが、例えば、金属イオンが銅イオンである場合は、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、及び、ヨウ化銅(I)等が挙げられる。
金属塩は、所定の配位子を共存することによって金属錯体を形成し、ハロゲン化アルキル基からハロゲンを引き抜き、開始ラジカルを発生させる。開始ラジカル及び成長ラジカルは活性種とドーマント種との平衡にあり、停止反応が大きく抑制される。
配位子としては、特に限定されないが、例えば、錯体形成に使用する金属イオンの種類により適宜選択すればよい。
金属イオンとして銅イオンを使用する場合は、窒素含有配位子が錯体形成に有用である。また、配位子の構造により、金属イオンとの結合定数が異なるため、開始ラジカルの発生速度、ドーマントと活性種との平衡定数が変化し、活性種とドーマント種との比率が変化することから、グラフト重合の速度が異なり得る。
配位子としては、例えば、2,2′−ジピリジル、4,4′−ジメチル−2,2’−ジピリジル、4,4′−ジターシャリーブチル−2,2′−ジピリジル、4,4’−ジノニル−2,2′−ジピリジル、N−ブチル−2−ピリジルメタンイミン、N−オクチル−2−ピリジルメタンイミン、N−ドデシル−N−(2−ピリジルメチレン)アミン、N−オクタデシル−N−(2−ピリジルメチレン)アミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ピリジルメチル)−エチレンジアミン等が挙げられる。
反応液を調製する方法は特に限定されないが、例えば、水に各原料を配合して十分に混合撹拌して、各成分を溶解させて水溶液とした後、不活性ガスのバブリングや減圧脱気などにより、水溶液中の不要な酸素の除去を行う方法が挙げられる。
〔他の成分〕
組成物は、本発明の効果を奏する範囲内において、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、銅ピリチオン、酸化亜鉛、ロジン化合物、銅化合物、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、可塑剤、たれ止め剤、沈降防止剤、脱水剤、及び、溶剤等が挙げられる。
本組成物が銅ピリチオンを含有する場合、含有量としては特に制限されないが、組成物中におけるP1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.01〜500質量部であることが好ましい。銅ピリチオンを含有する本組成物を用いて得られる膜は、より優れた生物付着抑制性能を有する。
本組成物が酸化亜鉛を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、組成物中におけるP1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.01〜1000質量部であることが好ましい。酸化亜鉛を含有する本組成物を用いて得られる膜は、より優れた強度、及び、より優れた生物付着抑制性能を有する。
本組成物がロジン化合物を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜70質量部であることが好ましい。ロジン化合物としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン、水添ロジン、及び、不均化ロジン等のロジン誘導体等が挙げられる。ロジン化合物を含有する本組成物は、より優れた生物付着抑制性能を有する。
本組成物が銅化合物を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、組成物におけるP1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.01〜2500質量部が好ましい。銅化合物としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅、及び、キュプロニッケル等が挙げられる。
銅化合物を含有する本組成物を用いて得られる膜は、より優れた強度、及び、より優れた生物付着抑制性能を有する。
本組成物が着色顔料を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.01〜100質量部が好ましい。着色顔料としては、有機顔料、及び、無機顔料等が挙げられ、具体的には、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー、ベンガラ、バライト粉、チタン白、及び、黄色酸化鉄等が挙げられる。
着色顔料を含有する本組成物を用いて得られる膜は、より優れた色調を有する。
本組成物が体質顔料を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.01〜100質量部が好ましい。体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ(珪藻土、酸性白土等)、マイカ、クレー、カリ長石、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、及び、硫化亜鉛等が挙げられる。
体質顔料を含有する本組成物を用いて得られる膜は、より優れた機械特性を有する。
本組成物が顔料分散剤を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜100質量部が好ましい。顔料分散剤としては、例えば、脂肪族アミン又は有機酸類(例えば、「デュオミンTDO」(LION(株)製)、「Disperbyk101」(BYK(株)製))が挙げられる。
本組成物が顔料分散剤を含有すると、組成物の粘度の調整がより容易となり、結果としてハンドリング性がより向上する。
本組成物が可塑剤を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜300質量部が好ましい。可塑剤としては、塩化パラフィン(塩素化パラフィン)、石油樹脂類、ケトン樹脂、TCP(トリクレジルフォスフェート)、ポリビニルエチルエーテル、及び、ジアルキルフタレート等が挙げられる。
可塑剤を含有する本組成物を用いて得られる膜は、より優れた耐クラック性を有する。
本組成物がタレ止め剤を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜100質量部が好ましい。タレ止め剤としては、例えば、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、及び、合成微粉シリカ(アエロジル(登録商標)等)等が挙げられる。
タレ止め剤を含有する本組成物は、基材に塗布する際の「タレ」の発生がより低減される。
本組成物が沈降防止剤を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜100質量部が好ましい。沈降防止剤としては、Al、Ca、又は、Znのステアレート、ポリエチレンワックス、及び、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。
沈降防止剤を含有する本組成物は、沈殿の発生がより少ない。
本組成物が脱水剤を含有する場合、含有量としては特に制限されないが、P1及びP2の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜50質量部が好ましい。脱水剤としては、合成ゼオライト、無水石膏、及び、半水石膏等の無機系脱水剤;アルコキシシラン、ポリアルコキシシラン類、及び、オルト蟻酸アルキルエステル等の有機系脱水剤が挙げられる。
脱水剤を含有する本組成物は、より優れた貯蔵安定性を有する。
本組成物が溶剤を含有する場合、含有量としては特に制限されない。一実施形態としては、本組成物の固形分が5〜95質量%になるよう溶剤の含有量により調整されることが好ましい。溶剤としては、水及び有機溶剤等が挙げられ、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、及び、イソプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。
<組成物の調製方法>
本組成物の調製方法としては特に制限されず、すでに説明した各成分を混合すればよい。この際、各成分を混合する順序としては特に制限されず、任意の順序で混合すればよい。なお、本組成物がタレ止め剤を含有する場合、その他の成分を先に混合し、均一化した後、タレ止め防止剤を加えることが好ましい。
混合方法としては特に制限されず、ハイスピードディスパー、サンドグラインドミル、バスケットミル、ボールミル、三本ロール、ロスミキサー、及び、プラネタリーミキサー等が使用できる。
<本組成物の用途>
本組成物を用いて得られる硬化膜は、優れた生物付着抑制性能を有する。本組成物は、例えば、生物付着を防止すべき基材上に硬化膜を形成する、言い換えれば、基材と、基材上に形成された硬化膜を有する積層体を製造するための用途に使用することができる。特に、食塩水(海水、及び、生物の体液等)に接触して用いられる基材上に硬化膜を形成するために用いることが好ましい。
上記基材としては、例えば、発電所(火力、原子力)の給排水口、湾岸道路、海底トンネル、海洋土木工事において使用される汚泥拡散防止膜等の水中構造物、船舶外板(特に船舶の喫水部から船底部分)、及び、漁業資材(ロープ、魚網等の漁具、ブイ等)等が挙げられる。
また、上記基材としては、細胞培養容器、細胞培養シート、細胞捕捉フィルター、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、ステント、カテーテル、インプラント、コンタクトレンズ、マイクロ流路チップ、ドラッグデリバリーシステム材、人工血管、人工臓器、血液透析膜、ガードワイヤー、血液フィルター、血液保存パック、内視鏡、バイオチップ、糖鎖合成機器、成形補助材、及び、包装材等が挙げられる。
[硬化膜]
本発明の実施形態に係る硬化膜は、すでに説明した組成物を硬化して得られた膜である。
上記硬化膜の製造方法としては特に制限されないが、上記組成物を用いて、平板、又は、曲面を有する3次元形状の基材上に組成物層を形成し、上記組成物層を乾燥させて製造することができる。より優れた生物付着抑制性能を有する観点で、組成物層に光照射して硬化させることが好ましい。光照射の際の波長は特に制限されないが、300〜400nmの波長域、より好ましくは360nm付近の紫外光を照射することが好ましい。
P1は、光ラジカル発生基を有しているため、組成物層に光照射することで活性ラジカルが発生し、P1にP2が固定され、硬化膜が得られる。光ラジカル発生基が式g2で表される基(ベンゾフェノン)である場合、波長250〜365nmの紫外光の照射により活性ラジカルが発生し、これが炭化水素(例えばP2の部分構造)からの水素引き抜きによって共有結合を生じさせる。
上記のような機序により、P2はP1に固定され、硬化膜が得られる。
また、後述する基材の表面の置換基(ヒドロキシ基、及び、カルボキシ基等)と、上記活性ラジカルとが反応することで、基材と硬化膜との密着性がより向上する。
基材としては特に制限されないが、例えば、鋼、及び、アルミニウム等の金属、木材、及び、樹脂等が挙げられる。
組成物層を形成する方法としては特に制限されないが、上記組成物を基材上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。塗布方法としては、例えば、スプレー塗布、及び、ローラー塗布等が挙げられる。また、組成物に基材を含浸させる方法も使用できる。
また、組成物層を予め仮基材上に形成し、上記仮基材上に形成した組成物層を基材に貼付してもよい。
[船舶]
図1は、本発明の実施形態に係る船舶の模式的な一部断面図であり、図2は、その船底基材の模式的な断面図である。
図1において、船舶10の船底外板は、金属製の基材11と、基材11上に配置されたプライマー層12と、上記プライマー層上に配置された硬化膜13とを有する積層体である。
上記船舶は、外板上に上記硬化膜を有するため、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、及び、フサコケムシ等の水棲生物の付着を長期間に亘って抑制できる。
なお、上記船舶はプライマー層を有しているが、本発明の実施形態に係る船舶としては上記に制限されず、プライマー層を有していなくてもよい。また、基材と硬化膜との間に更に他の層を有していてもよい。
[水中構造物]
図3は、本発明の実施形態に係る水中構造物の模式図である。水中構造物20は、海面SLに配置されたフロート21と、フロート21に固定され、フロート21から海中へと垂下するカーテン22と、カーテン22の下端に固定されたウェイト23と、フロート21を海底OFに配置されたアンカー24に結びつけるアンカーロープ25と、カーテン22とアンカーロープ25との接触回避のためにアンカーロープ25の途中に配置され、海面SLに配置されたブイ26とを有する。
水中構造物20は典型的には海中に配置され、汚濁粒子の沈下を促進させ、汚濁の拡散を抑制するために用いられる汚濁防止膜である。
このうち、カーテン22は、汚濁の拡散を防止するための部位であり、ポリエステル繊維の織布を基材とし、上記基材上に上記硬化膜が配置されている。そのため、長期に亘って水中に配置される場合であっても、カーテン22への生物付着が抑制されやすい。
また、フロート21、及び、ブイ26は、中空部材であり、樹脂基材上に上記硬化膜が配置されている。上記フロート21、及び、ブイ26は、上記硬化膜を外(海)側に配置しているため、長期にわたって水中に配置される場合であっても、生物付着がより抑制されやすい。
水中構造物20においては、カーテン、フロート、及び、ブイが上記組成物を用いて形成された硬化膜を表面に有しているが、本発明の実施形態に係る水中構造物としては上記に制限されず、他の部分が上記硬化膜を有していてもよい。
また、水中構造物20は汚濁防止膜であるが、上記は本発明の水中構造物の一例であり、本発明の実施形態に係る水中構造物としては上記に制限されず、発電所(火力、原子力)の給排水口、湾岸道路、海底トンネル、及び、漁業資材(ロープ、魚網等の漁具、ブイ等)等であってもよい。
[医療デバイス]
図4は本発明の実施形態に係る医療デバイスの斜視図である。医療デバイス30は、マイクロ流路チップである。医療デバイス30は平板上の基材31と、基材31上に形成された硬化膜32と、を有する。
硬化膜32の表面には、パターン状の凹部33が形成されており、この凹部に沿って液体が流通できるよう、構成されている。
パターン状の凹部33を有する硬化膜32は、凹部33のパターンに相補的な形状の凸部を有するモールドを組成物層に押し付けて硬化させて製造できる。また、本組成物は、光照射により架橋し得るため、公知のフォトリソグラフ技術を用いてパターン形成することもできる。
基材31を構成する材料は特に制限されないが、樹脂、及び、ガラス等が挙げられる。膜の厚みとしては特に制限されないが、一般に100nm〜10mmが好ましい。
上記医療デバイスは、凹部33が硬化膜32上に形成されているため、検査対象となる溶液を凹部33に流通した場合であっても、生物関連物質が凹部33に付着しにくく、より正確な測定等が可能となる。
なお、上記は、本発明実施形態に係る医療デバイスの一例であり、上記膜を有する他の物品であってもよい。
他の物品としては、例えば、細胞培養容器、細胞培養シート、細胞捕捉フィルター、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、ステント、カテーテル、インプラント、コンタクトレンズ、マイクロ流路チップ、ドラッグデリバリーシステム材、人工血管、人工臓器、血液透析膜、ガードワイヤー、血液フィルター、血液保存パック、内視鏡、バイオチップ、糖鎖合成機器、成形補助材、及び、包装材等であってもよい。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
(PSTCl(マクロ開始剤)の合成)
4−(Chloromethyl)styrene(2.0g、13.1mmol)、4−Cyano−4−(phenylcarbonothioylthio)pentanoic acid (10.1mg、2.6×10−2mmol)、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、2.6mg、10.5×10−3mmol)をアルゴン雰囲気下で調整し、70℃のオイルバスで3時間撹拌した。反応後、DMF系GPC測定により分子量、分子量分布を決定した。PST(ポリスチレン)換算でMn=29600、PDI(Poly Dispersity Index)=1.2であった。PSTClは貧溶媒であるメタノールを用いて再沈回収により精製した。
Figure 2021123712
(P2(ボトルブラシ)の合成1)
N−(2−hydoroxyethyl acrylamide)(HPA)(0.4g、3.1mmol)、上記で合成したマクロ開始剤(PSTCl)(Mn=29600、7.6mg、5.0×−2mmol)、フリー開始剤(Banzyl chloride)(1.56mg、1.24×10−2mmol)、Tris[2−(dimethylamino)ethyl]amine(MeTREN)(28.5mg、1.24×10−1mmol)、Cu(I)Cl(6mg,6.2×10−2mmol)を含むDMF/MeOH(0.95g/0.40g)をグローブボックス内で調整し、30℃のオイルバスで1.5、又は、3時間撹拌した。重合後、分子量、分子量分布はDMF系GPCにより決定した(PST換算)。重合率はNMRにより決定した。表1は、得られたボトルブラシの数平均分子量と分子量分散度である。
Figure 2021123712
Figure 2021123712
表1中、「Free polymer」とあるのは、特定高分子を意味し、「Bottle Brush」とあるのは、「ボトルブラシ」ポリマーを意味する。
なお、表1中、Free polymerのAreaから予想される重合率とNMRにより決定される重合率から、開始効率はほぼ100%である。
例1のボトルブラシのグラフト密度は、0.28chains/nm(表面占有率にして0.24)、例2のボトルブラシのグラフト密度は0.21chains/nm(表面占有率にして0.18)であった。
(ボトルブラシの合成2)
HPA(2.0g、15.5mmol)、マクロ開始剤(PSTCl)(Mn=29600、47mg、3.1×10−1mmol)、MeTREN(14.27mg、6.2×10−1mmol)、Cu(I)Cl(31mg、3.1×10−1mmol)を含むDMF/MeOH(4.75g/1.98g)をグローブボックス内で調製し、30℃のオイルバスで3時間撹拌した。重合後、分子量、分子量分布はDMF系GPCにより決定した(PST換算)。得られたボトルブラシはアセトンを用いて再沈回収により精製した。表2は、得られたボトルブラシの数平均分子量と分子量分散度である。
Figure 2021123712
例3のボトルブラシのグラフト密度は、0.13chains/nm(表面占有率にして0.11)、例4のボトルブラシのグラフト密度は0.18chains/nm(表面占有率にして0.16)であった。
なお、例3、及び、例4の「conversion」はそれぞれ0.40、及び、0.27であり、重合度は、それぞれ20、及び、14であり、σeffはそれぞれ0.13、及び、0.18である。
なお、σeffは、「有効グラフト密度(ボトルブラシ最表面のグラフト密度)」を表し、以下の式により定義される。
Figure 2021123712
なお、上記式中、DPn,graftは重合度を表し、aはモノマー断面積を表し、HPAの場合は0.86nmである。
[P1の合成]
HPA/benzophenone acrylamide(BPA)/AIBN=(200−x)/x/0.2のモル比(xについては表3に記載されている)で、アルゴン雰囲気下でDMF中70℃のオイルバスで1.5時間重合した。反応後、DMF系GPC測定により分子量、分子量分布を決定した。得られたポリマーはアセトンを用いて再沈回収により精製した。HNMRにより高分子鎖中のHPA、BPAの含有量が仕込み比とほぼ一致することを確認した。表3は、重合したポリマー(例5〜例7)の組成、略称、数平均分子量、及び、分子量分散度である。
Figure 2021123712
Figure 2021123712
[硬化膜の作成]
例5〜7のP1、及び、例3のP2(ボトルブラシ)をそれぞれ3質量%含有するエタノール溶液を準備した。これらを用いて組成物を調製し、製膜した。表4には、組成物中のP1及びP2の含有量が記載されている。例えば、例8の組成物であれば、例5のP1を用いて、ボトルブラシ、すなわち、P2のエタノール溶液は用いずに組成物を調製した(すなわち、単に、例5のP1の3mass%のエタノール溶液を用いた)ことを意味している。上記は例9及び例10について同様である。
例11は、例5のP1の3mass%の溶液に、例3のP2(ボトルブラシ)の3mass%を溶液を質量比1:1で混合した組成物を調製したことを意味している。上記は、例12〜14について同様である。
これらの組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにスピンコートした(回転数3000rpm、30秒)。スピンコート膜は紫外線の照射3分により硬化させた。硬化膜はエタノール及び水に浸漬させ、洗浄した。洗浄前後で膜厚に変化がないことを確認した。表4には、これらの硬化膜の25℃における水接触角が記載されている。
Figure 2021123712
[人工海水への浸漬実験]
海水魚飼育用の人工海水(「Instant Ocean」、Aquarium Systems Inc.製)を用い、浸漬実験を行った。
PETフィルム(直径2cm)に例8〜14の組成物をスピンコートで製膜し、紫外線照射により硬化させた。次に、エタノールで洗浄後、風乾して硬化膜を得た。次にこれらを24ウェルマルチウェルプレートの各ウェルに静置し、人工海水を1ml入れた。人工海水は2、3日に1回交換した。
(膜厚測定)
海水に浸漬後0か月「M0」、1か月「M1」、2か月「M2」、及び、3か月後「M3」の硬化膜の膜厚をエリプソメーターにより測定した。各組成物毎に5枚のサンプルを作成し、膜厚を平均した。図5〜7は試験結果である。いずれの硬化膜においても膜厚減少は見られなかった。なお、図5〜7はそれぞれの組成物を用いて作製した硬化膜の膜厚(縦軸、単位nm)の経時変化(横軸、month)を示している。
[食塩水の暴露環境下における生物付着抑制性能(1)]
マウス繊維芽細胞を用いて、食塩水暴露環境下における生物付着抑制性能の評価を行った。
硬化膜を積層したPETフィルム(2cm)をファルコン(登録商標)24ウェルマルチプレート(1well=ca 2cm)に並べ、70%エタノール水溶液で滅菌した。滅菌後、サンプルをPBS(Phosphate Buffered Saline)で5回洗浄した。次にマウス繊維芽細胞(L929)5万個/cmを播種した。24時間後、PBSでサンプルを3回洗浄し、接着細胞を4%パラホルムアルデヒトで固定した。細胞核はDAPI(4′,6−diamidino−2−phenylindole)で青色に、細胞骨格はファロイジンで赤色に蛍光染色し、蛍光顕微鏡により観察した。TCPS(Tissue−culture−treated polystyrene)上に接着した細胞数は播種数とほぼ一致していることを確認した。図8〜10は試験結果である。図8が浸漬0か月、図9が浸漬1か月後、図10が浸漬2か月後の各サンプルに対する接着細胞数である。
図中、縦軸の「Adherent L929 cells/%」とあるのは、PETフィルム上に接着した細胞数を100%としたときの接着細胞数を百分率で示したものである。
図8〜10から、本発明の組成物の硬化膜である例12、及び、例13は例8及び例9と比較して、食塩水の暴露環境下においても長期間、優れた生物付着抑制性能を維持できることがわかった。なお、「n.d.」は検出されなかったことを示している。
[食塩水の暴露環境下における生物付着抑制性能(2)]
キプロス幼生を用いて食塩水暴露環境下における生物付着抑制性能の評価を行った。PETフィルム(4×4cm)上にコートした例9及び例13に対し、キプリス幼生を100個播種し、15日後の接着形態、及び、接着数を観察した。ここでは参照サンプルとしてガラス板を用意した。図11に各表面に接着した幼フジツボを示した。図11において、例9、及び、例13のコーティングで、白い円で囲ってある部分にフジツボが付着していた。なお、図11の左のガラス基板上には多数のフジツボが付着していた。画像上、白く点のように見える部分にフジツボが付着していた。なお、ガラス基板においては、白円は記載していない。
また、図12に接着した幼フジツボの割合(播種数100個に対する)を示す。ボトルブラシ含有コーティング表面では幼フジツボの接着が抑制されることが確認できた。
[海水の暴露環境下における生物付着抑制性能]
キプロス幼生を用いて海水暴露環境下における生物付着抑制性能の評価を行った。
まず、ボトルブラシ(P2)は上記と同様の方法で準備した。表5−1は準備したボトルブラシの種類を表している。このうち、以下の実験には例17のボトルブラシを使用した。
Figure 2021123712
(サンプル準備)
例6のP1、及び、例17のP2をそれぞれ3質量%含有するエタノール溶液と、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(30×30×0.5mm透明)を準備した。
次に、表5−2に記載したとおり、各サンプルを準備した。まず、例21、及び、例22としては、上記PVCフィルムをそのまま用いた。例23及び例24は、例6のP1溶液を用いてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにスピンコート(回転数3000rpm、30秒)し、紫外線を3分照射して得られた膜である。例25及び例26は、P6のP1溶液、及び、例17のP2溶液を1:1(体積基準)で混合した組成物を用いてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにスピンコート(回転数3000rpm、30秒)し、紫外線を3分照射して得られた硬化膜である。例27と例28は、ガラス板である。
なお、硬化膜はエタノール及び水に浸漬させ、洗浄した。洗浄前後で膜厚に変化がないことを確認した。表5は、使用したサンプルをまとめたものである。
Figure 2021123712
(試験生物の準備)
内湾海域の人工構造物に大量付着するタテジマフジツボの付着期幼生(キプリス)を用いた。タテジマフジツボ成体(姫路沿岸産)は、循環式水槽(水温23±1℃)内でアルテミアを給餌することによって、維持・飼育した。成体から孵出したノープリウス幼生を回収し、ろ過海水で満たしたガラスビーカー内に移し、浮遊珪藻(Cheatoceros calcitrans)を与えて飼育することによって、人工的に付着期幼生(キプリス幼生)を得た(図13)。得られたキプリス幼生は冷暗処理によって維持した。これらの幼生を試験前に室温に戻し、活発に遊泳する個体を選別し、付着試験に用いた。
(試験方法)
ポリプロピレン容器(111×81×46mm)の底面にサンプルを静置し、海水と付着期幼生を投入した。海水は姫路市沿岸より採取した天然海水をポアサイズ0.45μm(東洋濾紙)の混合セルロースメンブレンにてろ過して用いた(塩分濃度2.86%、pH8.06)。幼生約100個体を各試験容器に投入し、室温25℃前後、昼間は明下(実験室照明)、夜間は暗下で、9日間、観察を行った。
(結果)
まず、例21、及び、例22のコントロール(未処理の塩化ビニルフィルム)について結果を説明する。
例21、及び、例22共に、試験開始後より試験幼生は活発な遊泳とサンプルへの探索行動(付着行動のひとつ)を行っていたが、サンプルへの付着は試験開始7日後に認められた。
例21では、幼フジツボ1個体が確認され、試験終了時(9日後)には幼フジツボが18個体と変態中が10個体、合計28個体(28.3%)の付着となった。
例22では、7日後に幼フジツボ3個体と変態中2個体が確認され、試験終了時(9日後)には幼フジツボが61個体と変態中が10個体、合計71個体(72.4%)となった。これらを平均した最終付着率は50.4%であった。
図14、及び、図15は、例21、及び、例22の試験終了時のサンプルの全面の画像である。図面内の、黒く見える点が、サンプル表面に付着した幼フジツボである。また、以下の表は、結果の詳細である。
Figure 2021123712
次に、例23、及び、例24の結果を説明する。
例23、及び、例24共に試験開始後より試験幼生は活発な遊泳を行っていたが、試験開始7日後までのサンプルへの探索行動はあまり見られなかった。付着は試験終了日である9日後に確認された。サンプル例23において、幼フジツボが1個体と変態中が2個体、サンプル例24においては、幼フジツボが1個体と変態中が1個体であった。これらを平均した最終付着率は2.3%であった。
図16、及び、図17は、例23、及び、例24の試験終了時のサンプル全面の画像である。また、以下の表は、結果の詳細である。
Figure 2021123712
次に、例25、及び、例26の結果を説明する。
例25、及び、例26共に試験開始後より試験幼生は活発な遊泳を行っていたが、サンプルへの探索行動や付着は見られず、最終平均付着率は0%であった。
図18、及び、図19は、例25、及び、例26の試験終了時のサンプル全面の画像である。また、以下の表は、結果の詳細である。
Figure 2021123712
次に、例27、及び、例28の結果を説明する。
本試験区は、試験幼生の形態や行動、付着・変態過程を確認するために設けられた。試験開始5日後より付着が見られ、徐々に増加して、試験終了時には106個体および102個体の幼フジツボが見られた。これらを平均した最終付着率は97.2%であった。ガラス板対照区において、特にキプリス幼生の付着・変態や行動などに異常は見られず、付着率は97.2%と高かったことから、キプリス幼生は正常に付着する能力を持つ幼生であることが確認できた。
図20、及び、図21は、例27、及び、例28の試験終了時のサンプル全面の画像である。また、以下の表は、結果の詳細である。
Figure 2021123712
図22は、各サンプルへのキプリス幼生接着数のグラフである。図22の結果から、例25、及び、例26の硬化膜は、海水環境下における優れた生物付着抑制性能を有していることが確認された。
[長期安定性]
硬化膜の長期安定性を推測するため、ポリマーブラシの加水分解耐性を調べた。食塩水の暴露環境下では、硬化膜を構成する高分子化合物の加水分解が進むことで、安定性が低下する場合がある。ここで、例えば、ポリマーブラシの加水分解耐性が高ければ、結果として硬化膜は優れた長期安定性を有すると推測できる。
(メタクリレート系マクロ開始剤(PBIME)の合成)
以下のスキームに基づき、メタクリレート系マクロ開始剤、及び、メタクリレート系ボトルブラシを合成した。
BIEM(2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチルメタクリレート、5.0g、17.9mmol)、cumyl dithiobenzoate(48.8mg、1.79×10−1mmol)、2,2′−Azobis(isobutyronitrile)(AIBN)(5.88mg、3.58×10−2mmol)を含むトルエン溶液(50mass%)をアルゴン雰囲気下で調整し、60度のオイルバスで22時間撹拌した。
反応後、DMF系GPC測定により分子量、分子量分布を決定した。PMMA換算でMn=18300,PDI=1.16であった。重合率はNMR測定により決定し、52%であった(重合度52)。PBIEMは貧溶媒であるメタノールを用いて再沈回収により生成した(収量2.61g)。
Figure 2021123712
(メタクリレート系ボトルブラシの合成)
Poly(ethylene glycol) methyl ether methacrylate(PEGMA)(15.79g、31.6mmol)、マクロ開始剤(PBIEM)(Mn=18300,0.2938g,1.05mmol(臭素末端))、dNbipy(4.4−dinonyl−2.2−dipyridyl、0.8604g,2.1mmol)、Cu(I)Br(0.1611g,1.1mmol)、Cu(II)Br(0.0502g,0.2246mmol)を含むアニソール溶液(31.58g,33mass%)をグローブボックス内で調整し、65度のオイルバスで40分撹拌した。
重合後、分子量、分子量分布はDMF系GPCにより決定した(PMMA換算)。重合率はNMRにより決定した。表10はその結果である。グラフト密度は0.318chains/nm(表面占有率にして0.92)と算出され、濃厚ポリマーブラシの密度領域であることが確認された。
重合後、ボトルブラシはヘキサン/ジエチルエーテル=70/30mass/mass%溶液で再沈回収により精製した。表10は合成の結果である。なお、表10中、重合度は開始効率100%としてconversionから計算した。
Figure 2021123712
[加水分解試験]
例15のボトルブラシと例29のボトルブラシの加水分解耐性を評価した。まず、NMR用重水を用い、1M水酸化ナトリウム、1M塩酸を作製した。表11の各溶液に下記式で表される例15と例29のボトルブラシポリマーをそれぞれ溶解(2.0mass%)した。その後、直ちにNMR測定を行い(時間0h)、NMRチューブごと80℃のウォーターバスに浸漬し、3時間後(3h)、6時間後(6h)に室温に戻して、NMR測定を行った。また、加熱6時間後の溶液を回収し、GPC測定を行った
なお、1M水酸化ナトリウム、及び、1M塩酸に溶解したサンプルは、中和処理を行ってからGPC測定に用いた。
Figure 2021123712
(NMR測定による構造変化の確認)
図23と図24は、1M水酸化ナトリウム溶液中で加熱処理をしたpolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)、polyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のNMRチャートである。polyHPAボトルブラシ(例15)ではピークのシフトがほとんどみられなかったが(図23)、polyPEGMAボトルブラシ(例29)ではピークのシフトが観察された(図24、3.35、3.1ppm付近)。
図25と図26は、1M塩酸中で加熱処理したPolyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)、PolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のNMRチャートである。polyHPAボトルブラシ(例15)では3.7ppm付近に新たなピークが現れたが、それ以外では、ほとんど変化は見られなかった(図25)。これに対し、polyPEGMAボトルブラシ(例29)では、アルカリ分解と同様にピークのシフトが観察された(図26、3.1ppm付近)。
(GPC測定による分子量変化の確認)
酸・アルカリ中で加熱処理(加水分解反応)を6時間行った後、polyHPAボトルブラシ(アクリルアミド系、例15)とpolyPEGMAボトルブラシ(メタクリレート系、例29)のGPC測定を行った。図27〜図32はGPCチャートである。
図27〜29は、polyHPAボトルブラシ(例15)の結果である。図27は、重水中で6時時間経過したもの(図中「D2O」は重水を表している)、図28は、1M水酸化ナトリウム溶液中で6時間経過したもの、図29は、1M塩酸中で6時間経過したものである。上記の結果から、酸・アルカリ処理のいずれの場合も、ピーク(トップ)はほとんどシフトしなかった。この結果はHNMRとほぼ一致した。
図30〜32は、polyPEGMAボトルブラシ(例29)の結果である。図30は、重水中で6時時間経過したもの、図31は、1M水酸化ナトリウム溶液中で6時間経過したもの、図32は、1M塩酸中で6時間経過したものである。上記の結果から、アルカリ処理の場合はピークが低分子側に大きくシフトすることがわかった。アルカリ処理ではマクロ開始剤、及び、PEGMAモノマーのカルボニル基が加水分解され、グラフトポリマー自体、又は、PEGMAの側鎖(PEG)が遊離したために分子量が小さくなったと考えられる。
以上の結果から、アクリルアミド系ポリマーが(メチル)アクリレート系ポリマーに比べ、加水分解耐性に優れていることが確認された。
[DOPAモノマーの合成]
Dopamine hydrochloride(8.0g、42.2mmol)、triethylamine(4.3g、42.5mmol)をメタノールに溶解させ、氷中で攪拌した。この溶液に、methacryloyl chloride(5.29g、50.8mmol)を含むテトラハイドロフラン溶液(4ml)、triethylamineを含むメタノール溶液を、交互に滴下した(溶液のpHが9.5以上になるように調整)。室温で18時間反応させた後、エバポレーターにより溶媒を除去した。そこへethylacetateを300ml加え、1M HCl、食塩水で各2回ずつ洗浄し、NaSOで脱水後、ethylacetateをエバポレーターにより除去した。得られた夾雑物は再結晶法により精製し、目的化合物であるN−(3,4−dihidroxyphenetyl) methacrylamide(DOPAモノマー)を得た(収量3.4g、収率26%)。
[poly(HPA−BPA−DOPA)の合成]
合成したDOPAモノマーを用いて「poly(HPA−BPA−DOPA)」を合成した。
HPA、BPA、DOPAモノマーをHPA/BPA/DOPA=85/5/10のモル比で、アルゴン雰囲気下、DMF中70℃のオイルバスで3時間重合した。反応後、DMF系GPC測定によりPMMA換算分子量、分子量分布を決定した(Mn=89000、PDI=2.2)。得られたポリマーはアセトンを用いて再沈回収により精製した。poly(HPA−BPA−DOPA)の構造は下記式のとおりであり、各単位の右の数字は、各単位のモル%を示している。
Figure 2021123712
[シリコン基板への接着性評価]
二元共重合体(HPA/BPA=95/5)(例6のポリマー)、又は、三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)を3質量%含有するエタノール溶液をシリコン基板、及び、アルミ板にスピンコートした(回転数3000rpm、30秒)。その後、紫外線照射を4分行い、架橋膜を作成した。その後、エタノールに1時間浸漬し、洗浄した。
図33は二元共重合体(HPA/BPA=95/5)、及び、図34は三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)を用いた硬化膜の洗浄前後の様子を示す写真である。いずれの硬化膜においても、洗浄前後で変化がなかった。従って、上記共重合体による塗膜は、シリコン基板への優れた接着性を有していることが分かる。
図35は二元共重合体(HPA/BPA=95/5)、及び、図36は三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)を用いてアルミ基板上に製膜し、洗浄した後の硬化膜の写真である。いずれも優れた面状の硬化膜が得られた。
以下の表11は、エリプソメーターにより測定した洗浄前後のシリコン基板上架橋膜の膜厚である。その結果、いずれの共重合体についても洗浄前後で膜厚はほとんど変化しなかった。
Figure 2021123712
なお、表11中、膜厚の単位は、nmである。
次にシリコン基板上の架橋膜をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した。超音波洗浄1分後から、二元共重合体(HPA/BPA=95/5)の架橋膜は基板から剥離し始めることが確認された(図37)。一方、三元共重合体(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)では剥離は観察されなかった(図38)。このことから、DOPAを用いた共重合体は炭化水素を有さない基板(金属基板等)の表面への塗布に対してより安定であることが確認された。
[細胞接着試験]
三元共重合体のみ、又は、三元共重合体と例17のボトルブラシを3質量%含有するエタノール溶液をアルミ板、及び、PETフィルムにスピンコートした(回転数3000rpm、30秒)。その後、紫外線照射を行い(4分)、架橋膜を作成した。
各サンプル(1×1cm)を「ファルコン」24ウェルマルチプレート(1well=ca 2cm)に並べ、70%エタノール水溶液で滅菌した。次にマウス繊維芽細胞(L929)5万個/cmをサンプルへ播種した。24時間後、PBS(phosphate−buffered saline)でサンプルを3回洗浄し、接着細胞を4%パラホルムアルデヒトで固定した。細胞核はDAPI(4′,6−Diamidino−2−phenylindole)で青色に、細胞骨格はファロイジンで赤色に蛍光染色し、蛍光顕微鏡により観察した。TCPS(Tissue−culture−treated polystyrene)上に接着した細胞数は播種数とほぼ一致していることを確認している。結果を図39はその結果である。
図39において、「TCPS」はTCPS基板上に接着した細胞数を示している。「PET」はポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に接着した細胞数を示している。「BB mix on PET」は、PETシート上に、三元共重合体と例17のボトルブラシを3質量%含有するエタノール溶液を用いて形成した硬化膜に接着した細胞数を示している。「Al」はAl基板上に接着した細胞数を示している。「Terpolymer」は、三元共重合体上に接着した細胞数を示している。「BB mix on Al Plate」は、Al基板上に、三元共重合体と例17のボトルブラシを3質量%含有するエタノール溶液を用いて形成した硬化膜に接着した細胞数を示している。ボトルブラシを含有する架橋膜は、含まないサンプルに比べて細胞接着を著しく抑制することが確認できた。
[キプリス幼生の付着試験]
ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(30×30×0.5mm、透明)に、上記と同様の手法(スピンコーティング、紫外線照射)で、各種ポリマーを塗布・固定した。架橋膜はエタノールおよび水に浸漬し、洗浄した。次に、タテジマフジツボ付着期幼生(キプリス幼生)を用い、各表面(表12)のキプリス幼生付着抑制効果について調べた。ボトルブラシは例17のものを用いた。また、各サンプルN=2で試験を実施した。
Figure 2021123712
(試験生物(タテジマフジツボ 付着期幼生))
内湾海域の人工構造物に大量付着するタテジマフジツボの付着期幼生(キプリス)を用いた。タテジマフジツボ成体(姫路沿岸産)は、循環式水槽(水温23±1℃)内でアルテミアを給餌することによって、維持・飼育した。成体から孵出したノープリウス幼生を回収し、ろ過海水で満たしたガラスビーカー内に移し、浮遊珪藻 Cheatoceros calcitrans を与えて飼育することによって、人工的に付着期幼生(キプリス幼生)を得た。得られたキプリス幼生は冷暗処理によって維持した。これらの幼生を試験前に室温に戻し、活発に遊泳する個体を選別し、付着試験に用いた。
(試験方法および試験条件)
ポリプロピレン容器(111×81×46mm)の底面にサンプルを静置し、海水と付着期幼生を投入した。海水は姫路市沿岸より採取した天然海水をポアサイズ0.45μm(東洋濾紙)の混合セルロースメンブレンにてろ過して用いた(塩分濃度2.86%、pH8.06)。幼生約100個体を各試験容器に投入し、室温25℃前後、昼間は明下(実験室照明)、夜間は暗下で、9日間、観察・付着試験を行った。
(コントロール(未処理の塩化ビニルフィルム))
例30、及び、例31、共に試験開始後より試験幼生は活発な遊泳とサンプルへの探索行動(付着行動のひとつ)を行っていた。サンプルへの付着は試験開始3または7日後に認められた。例30では、7日後に幼フジツボ5個体が確認され、試験終了時(9日後)には幼フジツボが13個体(13.0%)の付着となった。サンプル例31においては3日後に幼フジツボ1個体と変態中2個体が確認され、試験終了時(9日後)には幼フジツボが17個体と変態中が1個体、合計18個体(19.0%)となった。これらを平均した最終付着率は16.0%であった。また、胸肢突出・無反応はサンプル1−1で4個体、1−2で13個体であった。試験容器への付着は試験終了時(9日後)に確認された。表13はその結果であり、図40は、試験終了時にサンプル面に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。
Figure 2021123712
(HPA/BPA/DOPA=85/5/10)
例32、及び、例33共に試験開始後より試験幼生は活発な遊泳を行っていたが、試験開始3日後までのサンプルへの探索行動はほぼ見られなかった。付着はそれぞれ5日後、例32、及び、例33は9日後に確認された。試験終了時のサンプル例32は、幼フジツボが21個体と変態中が2個体、例33においては、幼フジツボが5個体と変態中が1個体であった。これらを平均した最終付着率は14.4%であった。また、胸肢突出・無反応はサンプルで4個体、2−2で2個体であった。試験容器への付着は試験終了時(9日後)に確認された。表14はその結果であり、図41は、試験終了時にサンプル面に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。
Figure 2021123712
(HPA/BPA/DOPA−ボトルブラシ)
例34、及び、例35共に試験開始後より試験幼生は活発な遊泳を行っていたが、サンプルへの探索行動や付着は見られず、最終平均付着率は0%であった。胸肢突出個体が5日後から生じ、試験終了時にはサンプル3−1で4個体、サンプル3−2で3個体であった。試験容器への付着は7日後より確認された。表15はその結果であり、図42は、試験終了時にサンプル面に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。
Figure 2021123712
(ガラス板対照区)
本試験区は、試験幼生の形態や行動、付着・変態過程を確認するために設けた(例36、及び、例37)。試験開始1日後より付着が見られ、徐々に増加して、試験終了時には36個体および38個体の幼フジツボが見られた。これらを平均した最終付着率は34.5%であった。また、胸肢突出・無反応は5個体および6個体となった。試験容器への付着は7日後より確認された。表16はその結果であり、図43は、試験終了時にサンプル面に付着した幼フジツボの写真(サンプル全体)である。
Figure 2021123712
図44は、付着試験9日後のキプリス幼生付着数である。例34、及び、例35の硬化膜はキプリス幼生の付着を抑制することがわかった。このことから、DOPAを含む三元共重合体を用いた場合も、ボトルブラシポリマーがキプリス幼生の付着防止に有効であることが確認できた。
10 :船舶
11 :基材
12 :プライマー層
13 :硬化膜
20 :水中構造物
21 :フロート
22 :カーテン
23 :ウェイト
24 :アンカー
25 :アンカーロープ
26 :ブイ
40 :医療デバイス
41 :基材
42 :硬化膜
43 :凹部

Claims (14)

  1. 下記式1で表される繰り返し単位と、下記式2で表される繰り返し単位と有する第1の高分子化合物と、
    下記式3で表される繰り返し単位を有する第2の高分子化合物と、を含有する組成物。
    Figure 2021123712
    Figure 2021123712
    Figure 2021123712

    (式1〜3中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、又は、アルキル基を表し、Z、及び、Zはそれぞれ独立に同一でも異なってもよい親水性基を有する基表し、Zは光ラジカル発生基を表し、Lは式4a、又は、式4bで表される基を表し、Lは単結合、又は、2価の基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の置換基を表し、nは2以上の整数を表し、式4a、及び、式4b中、*は結合位置を表す。)
  2. 前記第1の高分子化合物の全繰り返し単位に対する前記式2で表される繰り返し単位の含有量が、10mol%以下である請求項1に記載の組成物。
  3. 前記Zが以下の式Aで表される基である、請求項1又は2に記載の組成物。
    Figure 2021123712

    (式A中、Lは単結合、又は、p+q+1価の基を表し、Lは単結合、又は、2価の基を表し、Yはヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルコキシ基、及び、双性イオン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表し、pは1以上の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基を表し、qは0以上の整数を表し、*は結合位置を表し、Lが単結合又は2価の基の時、pは1、qは0である。)
  4. 前記親水性基がヒドロキシ基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記光ラジカル発生基が、以下の式g1で表される基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
    Figure 2021123712

    (式g1中、Rは置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリーレン基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を表し、*は結合位置を表す。)
  6. 前記光ラジカル発生基が以下の式g2で表される基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
    Figure 2021123712

    (式g2中、*は結合位置を表す。)
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化膜。
  8. 基材と、前記基材上に形成された請求項7に記載の硬化膜と、を有する積層体。
  9. 請求項7に記載の硬化膜を有する船舶。
  10. 請求項7に記載の硬化膜を有する水中構造物。
  11. 汚濁防止膜である、請求項10に記載の水中構造物。
  12. 請求項7に記載の硬化膜を有する医療デバイス。
  13. 細胞培養容器、細胞培養シート、細胞捕捉フィルター、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、ステント、カテーテル、インプラント、コンタクトレンズ、マイクロ流路チップ、ドラッグデリバリーシステム材、人工血管、人工臓器、血液透析膜、ガードワイヤー、血液フィルター、血液保存パック、内視鏡、バイオチップ、糖鎖合成機器、成形補助材、及び、包装材からなる群より選択される1種である、請求項12に記載の医療デバイス。
  14. 基材と、前記基材上に配置された請求項7に記載の硬化膜と、を有するマイクロ流路チップ。
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