JP2021121648A - 水性インクジェットインク及び分散剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】機上安定性(長期放置後の吐出性)に優れる水性インクジェットインクを提供することである。【解決手段】顔料、分散剤、水溶性有機溶剤、及び水を含み、分散剤は、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及びアルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも用いて形成される分散剤を含む、水性インクジェットインクである。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インクジェットインク及び分散剤に関する。
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。
水性インクジェットインクは安全性及び乾燥性の観点から幅広い分野で利用されている。顔料を用いた水性インクジェットインクでは、安定な吐出を確保するために、インク中に顔料を微分散させて顔料分散性を高めること、長期の分散安定性を高めること等が求められる。
特許文献1には、インクジェットプリンターのヘッド部での目詰まりを防止するとともに、インクの保存安定性を改善するために、オキシアルキレン基を有する単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩、若しくは、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、又はこれらの塩とを重合して得られる共重合体を分散剤として用いる水系顔料インクが提案されている。
特許文献2には、良好な保存安定性と吐出安定性を得るために、ナフチル基又はビフェニル基を有するウレタン構造単位を側鎖に有する(メタ)アクリル酸系共重合体を分散剤として用いる水性インクが提案されている。
特開平09−183926号公報 特開2017−52902号公報
水性インクは、(1)表面張力が高く基材によっては濡れにくい傾向があり、(2)水が常温でも徐々に揮発するため機上安定性が低下する傾向がある。例えば、インクジェット記録装置の吐出ヘッドにおいて、ノズル部でインクが大気開放されている状態では、インク中の水分が蒸発して局所的に少なくなり、インクの顔料分散安定性が低下し、吐出不良が発生することがある。
また、上記(1)について水溶性の低極性溶剤をインクに添加することで改善する方法もあるが、上記(2)がさらに悪化する傾向がある。極性が高い水と低極性溶剤とでは、適正な分散形態が異なるためである。
特許文献1に開示の水性インクは、初期段階での顔料分散性が十分ではない傾向がある。また、引用文献1に開示の分散剤は、水と低極性溶剤とを用いる系では機能が十分に発揮されない場合がある。
引用文献2には、分散剤がナフチル基又はビフェニル基を有することで顔料吸着力を備えることが開示されている。しかし、引用文献2に開示の水性インクは、ヘッド放置後の吐出性に十分に対応できない場合がある。例えば、引用文献2に開示の水性インクは、吐出ヘッドのノズル部が大気開放されて、インク中の水分が蒸発した状態では、吐出性が低下することがある。
本発明の一目的としては、機上安定性(長期放置後の吐出性)に優れる水性インクジェットインクを提供することである。
本発明の一側面は、顔料、分散剤、水溶性有機溶剤、及び水を含み、前記分散剤は、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及びアルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、前記ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも用いて形成される分散剤を含む、水性インクジェットインクである。
本発明の他の側面は、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及びアルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、前記ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも用いて形成される、分散剤である。
本発明の一実施形態によれば、機上安定性(長期放置後の吐出性)に優れる水性インクジェットインクを提供することができる。
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
一実施形態による水性インクジェットインクは、顔料、分散剤、水溶性有機溶剤、及び水を含み、分散剤は、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及びアルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも用いて形成される分散剤を含むことを特徴とする。
これによれば、機上安定性(長期放置後の吐出性)に優れる水性インクジェットインクを提供することができる。また、印刷物の品質、特に耐擦過性に優れる水性インクジェットインクを提供することができる。
以下、水性インクジェットインクを単に「水性インク」又は「インク」とも記し、分散剤を形成する成分をそれぞれ成分(A)又はモノマー(A)、成分(B)、成分(C)又はモノマー(C)、成分(D)又はモノマー(D)とも記す。また、ポリオキシアルキレン鎖はアルキレンオキシドを付加重合することで形成することができ、付加モル数は、モノマー中のポリオキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキシドの繰り返し数を表すものとし、アルキレンオキシドの付加モル数を単に「AO付加モル数」とも記す。
一実施形態による分散剤は、高い分散安定性を維持することができる。この分散安定性は、インク中の水分が少ない状態、又はインク中の水分が蒸発して少なくなった状態においても、長期にわたって維持することができる。詳しくは、インク中の水分が蒸発して水溶性有機溶剤がリッチな状態になっても、分散安定性を良好に維持することができる。例えば、インクジェット印刷方法において、吐出ヘッドの放置によってインク中の水分が蒸発する現象があるが、この状態においても、一実施形態による分散剤がインク中に含まれることで、分散安定性の低下を防止することができる。例えば、この分散剤は、吐出ヘッドの機上安定性(長期放置後の吐出性)を改善することができる。
また、一実施形態による分散剤は、初期状態で高い顔料分散性を発揮することができる。初期状態で顔料分散性が高いインクを用いることで、得られる印刷物において、インク塗膜の平滑性をより高めることができ、耐擦過性、特に耐水擦過性をより高めることができる。
詳しい原理について以下に説明するが、本発明はこの理論に拘束されるものではない。
成分(A)に由来してβ−ジカルボニル基及び/又はジフェニル基が分散剤に導入されることで、水素結合、π−π相互作用等により分散剤が顔料表面に強く相互作用し、分散剤の顔料への吸着性を高めることができる。これは、インク中の水分が少ない状態においても、顔料からの分散剤の離脱を起こしにくい構造と考えられる。
成分(B)に由来してアミノ基が顔料吸着性基として分散剤に導入されることで、成分(A)に由来するβ−ジカルボニル基及び/又はジフェニル基と、成分(B)に由来する顔料吸着性基とが僅かに相互作用し、成分(A)に由来するβ−ジカルボニル基及び/又はジフェニル基同士の過度な相互作用を緩和すると考えらえる。この構造によって、インク媒体である水中に分散剤が広がりやすくなり、分散剤の顔料への吸着性をより高めることができる。また、成分(B)に由来する単位は分散剤において顔料吸着性を示すため、初期状態での顔料分散性をより高めることができる。
成分(C)に由来してノニオン性のポリオキシアルキレン鎖と、成分(D)に由来してイオン性のポリオキシアルキレン鎖とが分散剤に導入されることで、顔料に分散剤が吸着した状態で、顔料から離れた位置で立体・静電反発効果を発揮することができると考えられる。この構造によって、高い分散安定性を得ることができ、結果として吐出性を改善することができる。これは、インク中に低極性溶剤が含まれる場合において、特に有効的に発揮され得る。
インク中の水分量が少ない状態においても、成分(C)及び成分(D)に由来するポリオキシアルキレン鎖による立体反発効果によって、分散安定性の低下を抑制することができる。例えば、吐出ヘッドの放置によってインク中の水分が蒸発した状態においても、吐出部付近でのインクの顔料分散安定性の低下を抑制し、優れた吐出性を得ることができる。
成分(C)に由来するノニオン性のポリオキシアルキレン鎖のみでは反発力が不足する傾向がある。成分(D)に由来するイオン性のポリオキシアルキレン鎖のみでは分子内での反発効果が強くなり、成分(A)及び成分(B)に由来する部位の顔料への吸着性を低下させる傾向がある。
水性インクは、顔料を含むことができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
顔料の平均粒子径(体積基準)としては、吐出性と分散安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。
顔料の配合量は、適宜調節すればよいが、インク全量に対し、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
水性インクは、分散剤を含むことができる。分散剤は、インク中で顔料分散安定性を改善するために配合することができる。また、分散剤は、インク中に顔料を分散させるために分散処理する際に、顔料粒子をより微分散させるために配合することができる。
分散剤としては、少なくとも以下の成分を用いて形成される分散剤を好ましく用いることができる。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)。
アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)。
アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)。
アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)。
分散剤において、ビニル系モノマーは、エチレン性不飽和結合を含む化合物を好ましく用いることができる。
ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、塩化ビニル、アリル化合物、エチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物に、各種の官能基が導入されたものを、各成分として用いることができる。
分散剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を少なくとも含む原料を用いて形成される構造体であって、1分子中に成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)に由来する部位が含まれる高分子化合物であることが好ましい。
成分(B)がアミノ基を含むビニル系モノマーである場合は、分散剤は、1分子中に成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)に由来する単位が含まれる連鎖共重合体を形成することができる。
成分(B)がポリアルキレンイミンである場合は、分散剤は、アミノ基に成分(A)、成分(C)、及び成分(D)に由来する部位が結合した高分子化合物を形成することができる。
成分(A)は、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種である。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーに由来して、分散剤に導入されるβ−ジカルボニル基は、顔料表面の極性基と水素結合により吸着して、顔料親和性を示す。
ビフェニル基を含むビニル系モノマーに由来して、分散剤に導入されるビフェニル基は、顔料表面のπ電子と相互作用して吸着して、顔料親和性を示す。
このようにして、分散剤に顔料親和性を示す部位が導入されることで、分散剤の顔料分散性を高めることができる。特に、初期状態でインク中に顔料を微分散させることができ、印刷物にインク成分をより均一に付与することに役立てることができる。
印刷物の耐水性の観点から、ビフェニル基を含むビニル系モノマーを用いることが好ましい。分散剤にビフェニル基が導入されることで、印刷物を水分を含む状態で擦過した場合、分散剤が水に溶出しにくくなり、高い耐水擦過性を得ることができる。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーは、β−ジカルボニル基とエチレン性不飽和結合とを含む化合物を好ましく用いることができる。
β−ジカルボニル基としては、β−ジケトン基(−C(=O)−C−C(=O)−)、β−ケト酸エステル基(−C(=O)−C−C(=O)OR、Rは炭化水素基)、又はこれらの組み合わせを用いることができる。β−ジケトン基としては、アセトアセチル基、プロピオンアセチル基等が挙げられ、β−ケト酸エステル基としては、アセトアセトキシ基、プロピオンアセトキシ基等が挙げられる。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーにおいて、1分子中に1個のβ−ジカルボニル基が含まれればよく、2個以上のβ−ジカルボニル基が含まれてもよい。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アリル化合物、エチレン又はこれらの誘導体に、β−ジカルボニル基が導入された化合物を用いることができる。なかでも、β−ジカルボニル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。これによって、主鎖が(メタ)アクリル骨格となる分散剤を提供することができる。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーとしては、例えば、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノアセトアセタートモノ(メタ)アクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2,4−ヘキサジオン(メタ)アクリレート;アセト酢酸アリル、アセト酢酸ビニル;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーの市販品としては、例えば、東京化成工業株式会社製「エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート」等が挙げられる。
ビフェニル基を含むビニル系モノマーは、ビフェニル基とエチレン性不飽和結合とを含む化合物を好ましく用いることができる。
ビフェニル基としては、置換又は非置換であってもよいが、非置換が好ましい。ビフェニル基の結合部位は、o位、m位、p位のいずれであってもよいが、o位が好ましい。
ビフェニル基を含むビニル系モノマーにおいて、1分子中に1個のビフェニル基が含まれればよく、2個以上のビフェニル基が含まれてもよい。
ビフェニル基を含むビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アリル化合物、エチレン又はこれらの誘導体に、ビフェニル基が導入された化合物を用いることができる。なかでも、ビフェニル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。これによって、主鎖が(メタ)アクリル骨格となる分散剤を提供することができる。
ビフェニル基を含むビニル系モノマーとしては、例えば、ビフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビフェニル(メタ)アクリレートは、ビフェニルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって合成することができる。
エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレートは、エチレンオキシドの付加モル数が13以下のポリエチレングリコール変性したビフェニルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって合成することができる。例えば、エチレングリコールで変性したビフェニルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物であってよい。
ビフェニル基を含むビニル系モノマーの市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製「A−LEN−10」(商品名)等が挙げられる。
分散剤において、成分(A)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、分散剤において、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
より高い機上安定性を求める場合、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー、及び/又は、ビフェニル基を含むビニル系モノマーは、顔料の種類に応じて適切なものを選択することが好ましい。例えば、キナクリドン系顔料にはβ−ジカルボニル基を含むビニル系モノマーが好ましく、フタロシアニン系顔料にはβ−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーを併用することが好ましい。
成分(B)は、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種である。
アミノ基を含むビニル系モノマーを用いて分散剤を形成することで、その他のモノマー成分と共重合体を形成し、共重合体において、顔料吸着点となるアミノ基がバランスよく導入され、機上安定性をより改善することができる。アミノ基を含むビニル系モノマーを用いて形成される共重合体は、水分量に大きく影響されないため、水分の蒸発等によってインク粘度が上昇することを抑制することができる。
ポリアルキレンイミンを用いて分散剤を形成することで、ポリアルキレンイミンのアミノ基を起点として、その他のモノマーが導入される構造体を得ることができる。この構造体は、主体となるポリアルキレンイミンに、顔料吸着点となるアミノ基が局在化するため、顔料への吸着性をより高めることができ、初期の顔料分散性をより改善することができる。これは、印刷物の耐擦過性の結果から確認することができる。一方で、この構造体は、主体となるポリアルキレンイミンに顔料吸着点となるアミノ基が局在化するため、分子構造によっては、インク中の溶媒の変化、例えば水分の揮発等によって、顔料から離脱する場合がある。そのため、機上安定性がより重要視される用途では、アミノ基を含むビニル系モノマーを用いることが好ましい。
アミノ基を含むビニル系モノマーは、アミノ基とエチレン性不飽和結合とを含む化合物を好ましく用いることができる。
アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。アミノ基は、アルキル基によって置換された2級アミノ基又は3級アミノ基が好ましく、2個のアルキル基によって置換された3級アミノ基がより好ましい。置換基であるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、メチル基及びエチル基が一層好ましい。アミノ基としては、例えば、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
アミノ基として、含窒素複素環を含む官能基を用いてもよい。含窒素複素環としては、例えば、ピリジル、ピロリドン、ピリジン、モルホリン等が挙げられる。
アミノ基を含むビニル系モノマーにおいて、1分子中に1個のアミノ基が含まれればよく、2個以上のアミノ基が含まれてもよい。
アミノ基を含むビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの誘導体に、アミノ基が導入された化合物を用いることができる。これによって、主鎖が(メタ)アクリル骨格となる分散剤を提供することができる。
アミノ基を含むビニル系モノマーの具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンの重合体である。ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等を好ましく用いることができる。好ましくは、ポリエチレンイミンである。
ポリエチレンイミンは、エチレンイミンの重合体であり、エチレン鎖とアミノ基とを含む分岐構造を含む重合体であり、アミノ基に由来してカチオン性を示す。ポリエチレンイミンにおいて、アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、又はこれらの組み合わせとして導入される。
ポリエチレンイミンは、1級アミノ基、2級アミノ基が多量に存在することから、反応性に富む重合体である。そのため、成分(A)、成分(C)、成分(D)のエチレン性不飽和結合と容易に反応し、ポリエチレンイミンに成分(A)、成分(C)、成分(D)に由来する官能基が導入された構造体を提供することができる。
ポリエチレンイミンは、高い親水性を示すが、成分(A)、成分(C)、成分(D)、その他のモノマーとして疎水基をもつモノマーを用いることで、ポリエチレンイミンに疎水性部位を導入することができる。これにより、顔料や溶剤構成に応じて適切に親水度を調整することができる。
ポリエチレンイミンの数平均分子量(Mn)としては、例えば300〜100000が好ましく、500〜5000がより好ましく、1000〜2000がより一層好ましい。ポリエチレンイミンの分子量が100000以下であることで、インク中の水分が蒸発する際に、ポリアルキレンイミンが増粘することを防止し、インク全体の粘度上昇を防止することができる。
ポリエチレンイミンの分子量は、沸点上昇法によって求めた数値である。
ポリエチレンイミンの市販品としては、例えば、株式会社日本触媒製「エポミンSP−006、エポミンSP−018」(商品名)等が挙げられる。
分散剤において、成分(B)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、分散剤において、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせても用いてもよい。
例えば、成分(B)としてアミノ基を含むビニル系モノマーを用いたビニル骨格の重合体と、成分(B)としてポリアルキレンイミンを用いたポリアルキレンイミンの誘導体との混合物を分散剤として用いることも可能である。
成分(C)は、アルキレンオキシド(AO)の付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマーである。
ポリオキシアルキレン鎖において、AO付加モル数は、15以上が好ましく、18以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。これによって、水性インク中において、水を多く含む状態とともに、水分が蒸発して少なくなった状態においても、分散安定性をより良好に維持することができる。
ポリオキシアルキレン鎖において、AO付加モル数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。これによって、水性インク中において、水の配合量が少ない状態、又は水分が蒸発して少なくなった状態において、分散剤自体の増粘を防止し、インク全体の粘度上昇を防止することができる。
成分(C)において、ポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数は、15〜50が好ましく、18〜45がより好ましく、20〜40がさらに好ましい。
AO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマーは、AO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖とエチレン性不飽和結合とを含む化合物を好ましく用いることができる。
ポリオキシアルキレン鎖としては、1種又は2種以上のアルキレンオキシド基が連続して結合している結合鎖を用いることができる。
アルキレンオキシド基としては、炭素数が1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数2〜4がさらに好ましく、炭素数2又は3が一層好ましい。
アルキレンオキシド基としては、メチレンオキシド基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、又はこれらの組み合わせが好ましく、エチレンオキシド基がより好ましい。
具体的には、モノマー(C)は、AO付加モル数が15以上であるポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリエチレンプロピレングリコール鎖等を有することが好ましく、より好ましくはポリエチレングリコール鎖である。これによって、水性インク中で、分散剤の親水性をより高め、分散安定性をより改善することができる。
モノマー(C)の分子量は、800〜3000が好ましく、1000〜2000がより好ましい。
モノマー(C)は、ノニオン性であることが好ましく、具体的にはイオン性基が導入されていないことが好ましい。例えば、モノマー(C)のポリアルキレングリコール鎖の末端はヒドロキシ基であってもよく、ヒドロキシ基にノニオン性の官能基が導入されたものであってもよい。具体的には、ポリアルキレングリコール鎖の末端のヒドロキシ基に、炭化水素基が導入されていてもよい。
炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜9のアルキル基で置換されていてもよいアリール基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基である。
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4であって、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基である。
モノマー(C)において、1分子中に1個のAO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖が含まれればよく、2個以上のAO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖が含まれてもよい。
モノマー(C)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの誘導体に、AO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖が導入された化合物を用いることができる。これによって、主鎖が(メタ)アクリル骨格となる分散剤を提供することができる。
例えば、(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールとのエーテル、ポリアルキレングリコールによって変性された(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリアルキレングリコール変性(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート基等の起点となる官能基を導入した(メタ)アクリレートにポリアルキレングリコールを反応させて得ることができる。
モノマー(C)の具体例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール変性の2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−トリメチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール−アリルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−アリルエーテル、ポリプロピレングリコール−アリルエーテル、ポリエチレングリコール−ジアリルエーテル、ポリプロピレングリコール−ジアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアクリルアミド等が挙げられる。
モノマー(C)の市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製「アデカリアソープER−20」、日油株式会社製「ブレンマーPME1000」、新中村化学株式会社製のNKエステルM−230G(商品名)、日油株式会社製のブレンマーPME−4000(商品名)、共栄社化学株式会社製ライトエステル041MA(商品名)等が挙げられる。
分散剤において、モノマー(C)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(D)は、アルキレンオキシド(AO)の付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマーである。
ポリオキシアルキレン鎖において、AO付加モル数は、15以上が好ましく、18以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。これによって、水性インク中において、水を多く含む状態とともに、水分が蒸発して少なくなった状態においても、分散安定性をより良好に維持することができる。
ポリオキシアルキレン鎖において、AO付加モル数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。これによって、水性インク中において、水の配合量が少ない状態、又は水分が蒸発して少なくなった状態において、分散剤自体の増粘を防止し、インク全体の粘度上昇を防止することができる。
成分(D)において、ポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数は、15〜50が好ましく、18〜45がより好ましく、20〜40がさらに好ましい。
AO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むイオン性のビニル系モノマーは、AO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖とエチレン性不飽和結合とを含む化合物を好ましく用いることができる。
ポリオキシアルキレン鎖としては、1種又は2種以上のアルキレンオキシド基が連続して結合している結合鎖を用いることができる。
アルキレンオキシド基としては、炭素数が1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数2〜4がさらに好ましく、炭素数2又は3が一層好ましい。好ましいアルキレンオキシド基及びポリエチレングリコール鎖の詳細については、上記モノマー(C)で説明した通りである。
モノマー(D)の分子量は、1000〜4000が好ましく、1200〜3000がより好ましい。
モノマー(D)は、イオン性であることが好ましく、具体的にはイオン性基が導入されていることが好ましい。ここで、イオン性基は、水中でイオン性を示す官能基である。なお、イオン性基は、塩を形成している状態を含むものである。
例えば、モノマー(D)のポリアルキレングリコール鎖のヒドロキシ基に、イオン性基が導入されたものが好ましい。より具体的には、モノマー(D)のポリアルキレングリコール鎖の末端のヒドロキシ基に、イオン性基が導入されたものが好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基及びカチオン性基のいずれであってもよい。分散剤において、カチオン性を示す成分(B)との相互作用の観点から、モノマー(D)に導入されるイオン性基はアニオン性基であることが好ましい。これによって、分散剤の顔料への親和性と、溶剤への配向性とをバランスよく維持して、分散安定性をより改善することができる。
イオン性基は、一価又は多価であってよいが、好ましくは一価である。
イオン性基としては、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、リン酸エステル基等のアニオン性基、4級アンモニウム基等のアンモニウム基等のカチオン性基等が挙げられる。
カルボキシ基等は吐出ヘッドの放置で対イオンが離脱して、顔料吸着基として作用する場合があることから、スルホ基を好ましく用いることができる。スルホ基は、NH、Na、K、Li、有機アミン等の対イオンによって塩を形成していてもよい。
モノマー(D)にイオン性基を導入する方法としては、AO付加モル数が15以上であるポリオキシアルキレン鎖を有するモノマーを化学修飾剤によって処理する方法がある。
スルホ基を導入するための化学修飾剤としては、例えば、スルファミン酸、トリクロロエチルスルフェート、フェニルスルフェート等が挙げられる。
カルボキシ基を導入するための化学修飾剤としては、例えば、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸等が挙げられる。
リン酸基を導入するための化学修飾剤としては、例えば、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩等が挙げられる。
4級アンモニウム基を導入するための化学修飾剤としては、例えば、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
モノマー(D)において、1分子中に1個のAO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖が含まれればよく、2個以上のAO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖が含まれてもよい。
モノマー(D)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの誘導体に、AO付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖が導入された化合物を用いることができる。これによって、主鎖が(メタ)アクリル骨格となる分散剤を提供することができる。
例えば、(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールとのエーテル、ポリアルキレングリコールによって変性された(メタ)アクリレート等において、ポリアルキレングリコールのヒドロキシ基にイオン性基を導入した化合物等が挙げられる。
モノマー(D)の具体例としては、ビニル基を有する脂肪族ポリエチレングリコールグリセリルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩、ビニル基を有する芳香族ポリエチレングリコールグリセリルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩、1−プロペニル基を有するポリエチレングリコール−αメチルベンジルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩、1−プロペニル基を有するポリエチレングリコール−ノニルフェニルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩、ポリエチレングリコール変性の2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのスルホン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
また、モノマー(D)の具体例としては、上記したモノマー(C)の具体例の中からポリアルキレングリコール鎖の末端がヒドロキシ基である化合物に化学修飾してイオン性基を導入したモノマーを用いることができる。
モノマー(D)の市販品としては、例えば、アデカリアソープSRシリーズ、SEシリーズ(株式会社ADEKA製)、アクアロンARシリーズ、BCシリーズ(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
分散剤において、モノマー(D)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分散剤は、上記した成分に加えて、さらにその他のモノマーを用いて形成されてもよい。以下、その他のモノマーを単にモノマー(E)とも記す。
モノマー(E)として、疎水性モノマーを用いることができる。これによって、分散剤において、親水性を示す部位と、疎水性を示す部位とがバランスよく構成され、分散安定性をより改善することができる。
疎水性モノマーとしては、(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリレートである。
また、疎水性モノマーとして、アルキル基及び/又はアリール基と、エチレン性不飽和結合とを含むビニル系モノマーを好ましく用いることができる。
モノマー(E)の好ましい例示としては、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである。これによって、主鎖が(メタ)アクリル骨格となる分散剤を提供することができる。
アルキル(メタ)アクリレートにおいて、アルキル基の炭素数は1〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、8〜18がさらに好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレートにおいて、アルキル基は直鎖又は分岐鎖であってよく、鎖式又は脂環式であってもよいが、好ましくは、鎖式の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
また、モノマー(E)として、アリール基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いてもよい。ここで、アリール基は、ビフェニル基以外であって、単環、多環、縮合環のいずれであってもよく、環上の水素原子がアルキル基によって置換されていてもよく、好ましくはフェニル基である。
アルキル(メタ)アクリレートにおいて、1分子中に1個のアルキル基又はアリール基が含まれればよく、2個以上のアルキル基及び/又はアリール基が含まれてもよい。
その他のモノマー(E)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート(例えば、n−又はイソプロピル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート(例えば、n−、イソ、sec−又はtert−ブチル(メタ)アクリレート)、ペンチル(メタ)アクリレート(例えば、n−、イソ又はネオペンチル(メタ)アクリレート)、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート(例えば、n−又はイソオクチル(メタ)アクリレート)、デシル(メタ)アクリレート(例えば、n−又はイソデシル(メタ)アクリレート)、ドデシル(メタ)アクリレート(例えば、n−又はイソドデシル(メタ)アクリレート)、ステアリル(メタ)アクリレート(例えば、n−又はイソステアリル(メタ)アクリレート)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分散剤において、モノマー(E)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分散剤において、モノマー(C)のポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数と、モノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数との比は、C:D=1:0.5〜1:2.5であることが好ましい。この範囲であることで、吐出性、特に機上安定性(長期放置後の吐出性)をより改善することができる。
この付加モル数の比「C:D」は、モノマー(D)のAO付加モル数を基準に、1:0.5以上が好ましく、1:0.8以上がより好ましく、1:1以上がさらに好ましい。
この付加モル数の比「C:D」は、モノマー(D)のAO付加モル数を基準に、1:2.5以下が好ましく、1:2以下がより好ましい。
上記した範囲によって、分散剤の初期の顔料分散性をより高めることができ、印刷物の耐擦過性をより改善することができる。
分散剤が顔料表面に吸着した状態で、分散剤の最外層が成分(D)に由来するイオン性のポリオキシアルキレン鎖となるように設計することで、イオン性基によって静電反発が起こりやすくなり好ましい。そのため、成分(D)に由来するポリオキシアルキレン鎖は、成分(C)に由来するポリオキシアルキレン鎖と同等か、長いことがより好ましい。
また、モノマー(C)のポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数及びモノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数は、それぞれ独立的に40以下が好ましい。モノマー(C)のポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数及びモノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のAO付加モル数のうち少なくとも一方が40以下である場合に、より好ましくは両方が40以下である場合に、上記した付加モル数の比「C:D」が1:0.5〜1:2.5であることが好ましい。
分散剤において、成分(A)に由来する部位と成分(B)に由来する部位とは、モル比「A:B」で、1:2〜15:1が好ましく、1:1〜10:1がより好ましく、2:1〜5:1がより一層好ましい。
成分(A)と成分(B)との関係で、(B)が上記範囲で含まれることで、成分(A)同士の相互作用を抑制して、分散剤の顔料への吸着性をより改善することができる。
成分(A)と成分(B)との関係で、(A)が上記範囲で含まれることで、分散剤の顔料への吸着性をより高めることができる。
分散剤において、成分(C)に由来する部位と成分(D)に由来する部位とは、モル比「C:D」で、1:3〜1:0.3が好ましく、1:2〜1:0.8がより好ましく、1:1.5〜1:0.9がより一層好ましい。これによって、初期状態での顔料分散性と、長期間の分散安定性、特にヘッド放置等による水分蒸発後の分散安定性をより改善することができる。
分散剤を形成する成分として、分散剤全量に対し、成分(A)は、20〜70モル%が好ましく、成分(B)は、3〜30モル%が好ましく、成分(C)は、10〜30モル%が好ましく、成分(D)は、10〜30モル%が好ましい。さらに、分散剤の形成にその他のモノマー(E)が用いられる場合は、分散剤全量に対し、モノマー(E)は、10〜30モル%が好ましい。
成分(B)として、アミノ基を含むビニル系モノマーを用いる分散剤について以下説明する。
この場合、分散剤を形成する成分として、モノマー(A)、成分(B)、モノマー(C)、モノマー(D)、選択的に配合されるモノマー(E)は、一つの共重合体を形成することができる。モノマー(E)は、疎水性を示すことが好ましく、より好ましくはアルキル基を有するモノマーである。
この共重合体は、β−ジカルボニル基及びビフェニル基からなる群から選択される1種以上を含む単位(A)、アミノ基を含む単位(B)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上であるポリオキシアルキレン鎖を含む単位(C)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上であるポリオキシアルキレン鎖と、イオン性基とを含む単位(D)、選択的に導入される単位(D)を含むことができる。
この共重合体の一例としては、主鎖が(メタ)アクリル骨格を有することが好ましい。
この共重合体に対して、各成分は以下の配合割合であることが好ましい。
モノマー(A)に由来する単位は、共重合体全量に対し、20〜70モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましく、30〜50モル%がさらに好ましい。
成分(B)に由来する単位は、共重合体全量に対し、3〜30モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましく、10〜15モル%がさらに好ましい。
モノマー(C)に由来する単位は、共重合体全量に対し、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
モノマー(D)に由来する単位は、共重合体全量に対し、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
モノマー(E)に由来する単位は、共重合体全量に対し、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
ここで、各単位の量は、合成系に投入したモノマーの合計量から求めることができる。
モノマー(A)に由来する単位及び成分(B)に由来する単位の合計量は、共重合体全量に対し、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、40〜60モル%がさらに好ましい。
モノマー(C)に由来する単位及びモノマー(D)に由来する単位の合計量は、共重合体全量に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましく、20〜40モル%がさらに好ましい。
成分(B)として、ポリアルキレンイミンを用いる分散剤について以下説明する。
この場合、分散剤を形成する成分として、モノマー(A)、モノマー(C)、モノマー(D)、選択的に配合されるモノマー(E)は、成分(B)としてのポリアルキレンイミンのアミノ基に結合し、ポリアルキレンイミン誘導体を形成することができる。
このポリアルキレンイミン誘導体は、ポリアルキレンイミンのアミノ基に、モノマー(A)、モノマー(C)、モノマー(D)、選択的に配合されるモノマー(E)のエチレン性不飽和結合が結合して導入されて形成されることができる。ポリアルキレンイミンに導入されるモノマー成分は、それ以上重合することは不要である。例えば、ポリアルキレンイミンには、1箇所のアミノ基当たり、1個のモノマーが結合して、1個のモノマーに由来する官能基が導入されることになる。
このポリアルキレンイミン誘導体に対して、各成分は以下の配合割合であることが好ましい。
モノマー(A)に由来する単位は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、20〜70モル%が好ましく、40〜70モル%がより好ましく、50〜60モル%がさらに好ましい。
成分(B)に由来する単位は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、3〜30モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましく、10〜15モル%がさらに好ましい。
モノマー(C)に由来する単位は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
モノマー(D)に由来する単位は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
モノマー(E)に由来する単位は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
ここで、各単位の量は、合成系に投入したモノマーの合計量から求めることができる。
モノマー(A)に由来する単位及び成分(B)に由来する単位の合計量は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、40〜60モル%がさらに好ましい。
モノマー(C)に由来する単位及びモノマー(D)に由来する単位の合計量は、ポリアルキレンイミン誘導体全量に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましく、20〜40モル%がさらに好ましい。
分散剤は、固形分量で、質量比で、顔料1に対し、0.1〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましく、1〜3であってもよい。
分散剤は、固形分量で、インク全量に対し、0.5〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、一実施形態による分散剤に加えて、その他の分散剤がインク中に含まれてもよい。
以下、分散剤の合成方法について説明する。なお、一実施形態による分散剤は、以下の合成方法によって合成されたものに限定されずに、上記した特徴を備える分散剤を用いることができる。
分散剤の合成方法の一例としては、β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及び
アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも含む原料を用いて合成することを含む。
これによれば、長期放置後の分散安定性に優れる分散剤を提供することができる。また、初期の顔料分散性に優れる分散剤を提供することができる。
具体的には、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、選択的に配合されるモノマー(E)を、一括又は分割して混合し、必要に応じて溶媒中で反応を進行させて、合成を行うことができる。合成反応は、反応を促進させるために、加熱して行うことができる。加熱温度は、例えば30〜120℃であってよい。また、加熱時間は、反応系によって適宜設定すればよいが、10分〜20時間であってよい。また、反応雰囲気は、非酸化性雰囲気が好ましく、不活性雰囲気がより好ましく、具体的には窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等が好ましい。
成分(B)として、アミノ基を含むビニル系モノマーを用いる分散剤について以下説明する。
この場合、分散剤を形成する成分として、モノマー(A)、成分(B)、モノマー(C)、モノマー(D)、選択的に配合されるモノマー(E)は、一つの共重合体を形成することができる。
この共重合体の合成方法は、モノマー(A)、成分(B)、モノマー(C)、モノマー(D)、選択的に配合されるモノマー(E)を用いて、一括又は分割して混合しラジカル重合することによって行うことができる。
共重合体を得るための原料全体に対する各モノマーの配合割合は、上記した分散剤において好ましいモル比となるように適宜調節して配合するとよい。
重合は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれであってもよい。例えば、ランダム共重合体は、各モノマー成分を一括して含む原料混合物を一括して重合することで得ることができる。また、ブロック共重合体は、先に1種類のモノマーを重合し、この重合体にさらに他のモノマーを重合する方法、先に1種類のモノマーをそれぞれ重合し、得られた複数種類の重合体をブロック重合する方法、リビング重合によって重合反応を制御する方法等によって得ることができる。グラフト共重合体は、1種類又は2種類以上のモノマーを用いて主鎖の共重合体を重合し、この共重合体に反応性基を導入させておき、この反応性基を起点に他のモノマーを重合する方法、又はこの反応性基を起点に他のモノマーを用いて重合した重合体を導入する方法等によって得ることができる。
重合は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等にしたがって行うことができ、好ましくは溶液重合法である。
溶液重合において用いる重合溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。重合溶媒は、モノマー成分を溶解可能であって、重合後に除去が可能であることが好ましいため、重合溶媒には、揮発性の高極性溶剤を用いることが好ましい。
重合に際して、ラジカル重合開始剤、重合連鎖移動剤、RAFT剤等の各種添加剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物を好ましく用いることができる。また、ラジカル重合開始剤として、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の添加量は、モノマー100質量部に対し0.1〜5質量部が好ましい。
重合連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー、9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2,5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられる。
重合条件は、用いるモノマー、ラジカル重合開始剤等の添加剤、重合溶媒等に応じて適宜調節することができる。
通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
塊状重合の場合は、溶媒なしで反応を行う以外は、溶液重合と同じような反応を行ってよい。重合条件も溶液重合と同じでよい。
分散剤の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000程度が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。分散剤の数平均分子量(Mn)は、3,000〜100,000程度が好ましく、4,000〜50,000がより好ましい。分散剤の分子量分布Mw/Mnは、1.0〜2.0が好ましい。
ここで、重量平均分子量及び数平均分子量は、いずれも、GPC法で標準ポリスチレン換算で求めた値である。
成分(B)として、ポリアルキレンイミンを用いる分散剤について以下説明する。
この場合、分散剤を形成する成分として、モノマー(A)、モノマー(C)、モノマー(D)、選択的に配合されるモノマー(E)は、成分(B)としてのポリアルキレンイミンのアミノ基に結合し、ポリアルキレンイミン誘導体を形成することができる。
ポリアルキレンイミン誘導体を得るための原料全体に対する各モノマーの配合割合は、上記した分散剤において、好ましいモル比とするように適宜調節して配合するとよい。
ポリアルキレンイミン(B)に、各モノマーを導入させる方法としては、ポリアルキレンイミンのアミノ基に各モノマーの重合性基を反応させる方法がある。具体的には、各モノマーに重合性基として(メタ)アクリロイル基が含まれる場合は、ポリアルキレンイミンのアミノ基に各モノマーをマイケル付加反応によって導入することができる。
反応は、希釈溶剤中で行うことが好ましい。
希釈溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。希釈溶剤は、ポリマー成分及びモノマー成分を溶解可能であって、反応後に除去が可能であることが好ましいため、希釈溶剤には、揮発性の高極性溶剤を用いることが好ましい。
通常、反応温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。反応時間は、好ましくは1〜20時間である。また、反応雰囲気は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
分散剤の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000程度が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。分散剤の数平均分子量(Mn)は、3,000〜100,000程度が好ましく、4,000〜50,000がより好ましい。分散剤の分子量分布Mw/Mnは、1.0〜2.0が好ましい。
ここで、重量平均分子量及び数平均分子量は、いずれも、GPC法で標準ポリスチレン換算で求めた値である。
水性インクは、水性溶媒として水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの顔料分散安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、インク全量に対して20質量%〜90質量%で含まれることが好ましく、30質量%〜80質量%で含まれることがより好ましく、40質量%〜70質量%がさらに好ましい。
水性インクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤は、水と相溶性を示すことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、濡れ性及び保湿性の観点から、室温で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点は180〜250℃が好ましい。水溶性有機溶剤の沸点が180℃以上、より好ましくは200℃以上であることで、インク中からの水溶性有機溶剤の蒸発を抑制して機上安定性をより改善することができる。水溶性有機溶剤の沸点が250℃以下であることで、印刷物の乾燥性をより高めることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。
これらは、1種単独で用いてもよく、また、単一の相を形成する限り、2種以上混合して用いてもよい。
水溶性有機溶剤として、Feders式から算出されるSP値が13(cal/cm1/2未満の溶剤を用いることが好ましい。これによって、顔料及び分散剤に対する濡れ性をより高めて、機上安定性をより改善することができる。同様の観点から、水溶性有機溶剤としてアルコール系溶剤を好ましく用いることができる。
なかでも、SP値が13(cal/cm1/2未満のアルコール系溶剤は、分散剤の構造に含まれるポリオキシアルキレン鎖と溶媒和しやすく、分散安定性を良好に維持することができる。
SP値が13(cal/cm1/2未満のアルコール系溶剤としては、例えば、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、水性インク中に1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのアルコール系溶剤とともにその他の水溶性有機溶剤を併用してもよい。
水溶性有機溶剤は、濡れ性、保湿効果、粘度調節等の観点から、インク全量に対し、1〜80質量%で含ませることができ、10〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
SP値が13(cal/cm1/2未満のアルコール系溶剤は、インク全量に対し、1〜50質量%で含ませることができ、10〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
水性インクには、上記した各成分に加え、任意的に、定着樹脂、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、防腐剤、定着剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
pH調整剤として、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;硫酸、硝酸、酢酸等の酸;トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、アミノメチルプロパノール等のアミン類等を挙げることができる。
pH調整剤は、インク全量に対し0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
分散体のpHが7以上を保つようにすることで、モノマー(D)のイオン性基、例えばスルホ基が中和され、電荷を持つようになり、静電反発により顔料の凝集を防ぎ安定性が確保されることになる。したがって、分散体のpHは7以上が好ましく、より好ましくは7.5以上である。
界面活性剤は、消泡剤、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)等として用いることができる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製「サーフィノール465」等を例示することができる。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製「シルフェイスSAG002」等を例示することができる。
界面活性剤は、インク全量に対し0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
水性インクの粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において1〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましい。
インクの作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、顔料、分散剤、水及び水溶性有機溶剤を含む混合物をビーズミル等の分散機を用いて分散させて顔料分散体を得て、次いで、顔料分散体に希釈用の水溶性有機溶剤及び水を添加して、インクを得ることができる。顔料分散体は、顔料の平均粒子径が10〜200nm程度になるように分散することが好ましい。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
一実施形態による水性インクジェットインクは、未処理の基材に対して印刷を施してもよく、又は、前処理剤によって処理された基材に対して印刷を施してもよい。特に、基材として低浸透性基材を用いる場合では、水性インクジェットインクが基材に浸透しにくいため、前処理剤によって基材を処理することが好ましい。
前処理剤は、例えば、水性媒体とともに、界面活性剤、凝集剤、無機粒子等、又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。より好ましくは、前処理剤は、水性媒体と、界面活性剤及び/又は凝集剤とを含む。また、前処理剤は、凝集剤を基材に定着させるためにバインダー樹脂を含んでもよい。
基材にインクを塗工した後に、基材を後処理してオーバーコート層を形成する工程をさらに設けてもよい。基材を後処理する方法としては、基材に後処理剤を付与して行うことができる。後処理剤としては、例えば、皮膜を形成可能な樹脂と、水性媒体又は油性媒体とを含む後処理液を用いることができる。
以下、印刷物の製造方法の一例について説明する。
印刷物の製造方法は、例えば、水性インクジェットインクを用いて基材に画像を形成することを含むことができる。水性インクジェットインクには、上記した水性インクジェットインクを用いることができる。
また、水性インクジェットによる画像形成の前に、前処理剤を用いて基材を処理することを含むことができる。
水性インクジェットインクを用いて基材に画像を形成する方法としては、インクジェット印刷方法を用いて行うことができる。インクジェット印刷方法は、基材に非接触で、オンデマンドで簡便かつ自在に画像形成をすることができる。
インクジェット印刷方法は、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよく、例えば、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を基材に付着させるようにすることができる。
水性インクを付与するための基材は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。
ここで、普通紙は、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
「実施例1〜8」
実施例1〜8について、用いた分散剤の処方を表1に示し、インク処方を表2に示す。
(1)モノマーの合成
(モノマー1)
20質量%のポリエチレングリコール1540をジクロロメタンに溶解し、フラスコで40℃にて攪拌した。
20質量%の2−イソシアナトエチルアクリラートをジクロロメタンに溶解し、滴下ロートで1時間かけて先のフラスコに加えた。
その後、8時間加熱攪拌し、生成物をカラムクロマトグラフィーで分離した。
得られたモノマー1は、2−イソシアナトエチルアクリラートのNCO基にポリエチレングリコール鎖が付加モル数34で導入された構造を有する。
(モノマー2)
ポリエチレングリコール1540に変えてポリエチレングリコール2000を用いた以外は上記モノマー1と同じ方法で合成した。
得られたモノマー2は、2−イソシアナトエチルアクリラートのNCO基にポリエチレングリコール鎖が付加モル数45で導入された構造を有する。
(モノマー3)
上記したモノマー1を再びN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、20質量%のモノマー1の溶液得て、800mlの溶液に200gのスルファミン酸を添加し、120℃3時間攪拌した。生成物をカラムクロマトグラフィーで分離した。
得られたモノマー3は、モノマー1の構造においてポリエチレングリコール鎖の末端にスルホ基が配向した構造を有する。
(モノマー4)
モノマー1に変えてモノマー2を用いた以外は上記モノマー3と同じ方法で合成した。
得られたモノマー4は、モノマー2の構造においてポリエチレングリコール鎖の末端にスルホ基が配向した構造を有する。
用いた成分は以下の通りである。
ポリエチレングリコール1540:EOモル数34、富士フイルム和光純薬株式会社製。
ポリエチレングリコール2000:EOモル数45、富士フイルム和光純薬株式会社製。
2−イソシアナトエチルアクリラート:昭和電工株式会社製「カレンズAOI」。
ジクロロメタン:富士フイルム和光純薬株式会社製。
N,N−ジメチルホルムアミド:富士フイルム和光純薬株式会社製。
EOは、エチレンオキシドを示す。以下同じ。
(2)分散剤の合成
表1に示すモノマー、添加剤、溶剤をフラスコに入れ、窒素でバブリング後、窒素雰囲気下で70℃6時間加熱攪拌した。次いで、エバポレータで溶剤の2−プロパノールを留去し、黄色粘調液体を得て、これを分散剤とした。
モノマーの仕込み量から、分散剤のモノマー比を求めた。(D)/(C)のEO鎖の付加モル数の比、(A)/(B)のモル比も同様に求めた。
(3)インクの作製
表2に示す(1)分散処方に示す顔料、分散剤、溶剤、水、中和剤をポリプロピレン(PP)ボトルに入れ、撹拌分散機ロッキングミルRM−05((株)セイワ技研製)で分散し、分散体を得た。ロッキングミルの条件は、φ0.5mmジルコニアビーズ、60Hz、3時間とした。
#120メッシュでビーズを濾別後、分散体に表2に示す(2)希釈処方に示す希釈用溶剤、界面活性剤、希釈用水を添加し、3μmフィルターで濾過して水性インクを得た。
「実施例9〜22」
実施例9〜22について、用いた分散剤の処方を表3及び表4に示す。
実施例1において、分散剤の処方を表3及び表4に示す処方とした以外は、上記した実施例1と同様にして分散剤を合成した。また、得られた分散剤を用いた他は、上記した実施例1と同じ処方によって水性インクを作製した。
「比較例1〜4」
比較例1〜4について、用いた分散剤の処方を表4に示す。
実施例1において、分散剤の処方を表4に示す処方とした以外は、上記した実施例1と同様にして分散剤を合成した。また、得られた分散剤を用いた他は、上記した実施例1と同じ処方によって水性インクを作製した。
各比較例では、モノマーの仕込み量から、分散剤のモノマー比を求める際に、参考成分(A’)、(B’)、(C’)、(D’)は、それぞれ成分(A)、(B)、(C)、(D)に含めて計算した。(D)/(C)のEO鎖の付加モル数の比、(A)/(B)のモル比も同様に計算した。
用いた成分は以下の通りである。
(分散剤)
ビフェニル基含有モノマー:エトキシ化フェニルフェノールアクリレート、新中村化学工業株式会社製「A−LEN−10」。
β−ジケトン基含有モノマー:東京化成工業株式会社製「エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート」。
フェニル基含有モノマー:フェノキシエチルアクリレート、共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートPO−A」。
ジメチルアミノエチルメタクリレート:東京化成工業株式会社製。
ジエチルアミノエチルメタクリレート:東京化成工業株式会社製。
ポリエチレンイミン(分子量600):株式会社日本触媒製「エポミンSP−006」。
ポリエチレンイミン(分子量1800):株式会社日本触媒製「エポミンSP−018」。
2−アクリロイロキシエチル−コハク酸:共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートHOA−MS(N)」。
PME400(n=9;ノニオン性):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、日油株式会社製「ブレンマーPME400」。
アデカリアソープER−20(脱水体、n=20;ノニオン性):株式会社ADEKA製「アデカリアソープER−20」の溶媒を減圧留去したもの、末端アルコール。
PME1000(n=23;ノニオン性):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、日油株式会社製「ブレンマーPME1000」。
モノマー1(n=34;ノニオン性):上記手順で合成したもの。
モノマー2(n=45;ノニオン性):上記手順で合成したもの。
アデカリアソープSR−10(n=10;スルホン酸イオン):株式会社ADEKA製「アデカリアソープSR−10」。
アクアロンBC−20(n=20;スルホン酸イオン):第一工業製薬株式会社製「アクアロンBC−20」。
アデカリアソープSR−20(n=20;スルホン酸イオン):株式会社ADEKA製「アデカリアソープSR−20」。
モノマー3(n=34;スルホン酸イオン):上記手順で合成したもの。
モノマー4(n=45;スルホン酸イオン):上記手順で合成したもの。
2−エチルヘキシルアクリレート:富士フイルム和光純薬株式会社製。
ラウリルアクリレート:東京化成工業株式会社製。
ステアリルメタクレート:東京化成工業株式会社製。
AIBN(2,2’−Azobis(isobutyronitrile)):東京化成工業株式会社製。
ラウリルメルカプタン:東京化成工業株式会社製。
2−プロパノール:東京化成工業株式会社製。
nは、ポリエチレングリコール鎖のエチレンオキシド(EO)の付加モル数を示す。表中も同じ。
(インク)
カーボンブラック#45:カーボンブラック顔料、三菱ケミカル株式会社製。
Heliogen Blue D7115F:銅フタロシアニン顔料、BASF社製。
FASTOGEN SUPER MAGENTA R:キナクリドン顔料、DIC株式会社製。
Inkjet Yellow 4GC:縮合ジスアゾ系顔料、クラリアント社製。
ジプロピレンリコール(SP値:13.6):富士フイルム和光純薬株式会社製。
1,2−ヘキサンジオール(SP値:11.8):東京化成工業株式会社製。
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値:10.9):東京化成工業株式会社製。
トリエタノールアミン:東京化成工業株式会社製。
シルフェイスSAG002:シリコーン系界面活性剤、日信化学工業株式会社製「シルフェイスSAG002」。
SP値の単位は「(cal/cm1/2」である。表中も同じ。
「評価方法」
(4)機上安定性評価
マスターマインド製「インクジェットプリンターMMP−8130」にインクを装填した。プリンターを2週間放置後にA3ベタ5枚を片面印刷後、ノズルチェックパターンを印刷し、ノズルチェックパターンでノズル抜け本数を確認した。95%以上のノズルが正常吐出でない場合は、1回又は2回のクリーニングを行ってから、再度ノズルチェックパターンを印刷し、ノズルチェックパターンでノズル抜け本数を確認した。以下の基準で機上安定性を評価した。
AA:クリーニングなしで、95%以上のノズルが正常吐出である。
A:1回のクリーニング後に、95%以上のノズルが正常吐出である。
B:2回のクリーニング後に、95%以上のノズルが正常吐出である。
C:2回のクリーニング後、正常吐出するノズルが95%未満である。
(5)印刷物の耐擦過性評価
マスターマインド製「インクジェットプリンターMMP−8130」にインクを装填し、キヤノン写真用紙・光沢プロ(キヤノン株式会社製)に、濃度設定4でベタ画像を片面印刷した。印刷物をドライヤーで乾燥させた。次いで、印刷面を濡れた綿棒で10回擦過し、10回擦過後の印刷面の状態を目視で確認した。以下の基準で印刷面の耐擦過性を評価した。
AA:印刷面が殆ど剥がれず、擦過跡も目立ちにくい。
A:印刷面が殆ど剥がれず、擦過跡が目立つ。
B:印刷面に部分的な剥がれが生じる。
C:印刷面がほとんど剥がれる。
Figure 2021121648
Figure 2021121648
Figure 2021121648
Figure 2021121648
各表に示す通り、各実施例のインクは、適切な分散剤が配合されていて、機上安定性及び印刷物の耐擦過性が良好であった。
実施例1〜3を通して、SP値が13未満のアルコール系溶剤がインクに配合されることで、印刷物の耐擦過性がより改善されることがわかる。また、実施例1及び2から、低極性のアルコール系溶剤を用いる場合においても、分散剤の作用が十分に得られて、機上安定性が優れることがわかる。
実施例1〜8を通して、各種溶剤及び各種顔料を用いる場合でも、良好な結果が得られることがわかる。
実施例9〜11を通して、分散剤を形成するモノマー成分の構成が異なる場合でも、良好な結果が得られることがわかる。
実施例12〜16を通して、モノマー(C)のポリオキシエチレン鎖のEO付加モル数に対するモノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のEO付加モル数の比「D/C」が0.8〜2.5の範囲で、好ましくは1.0〜2.0の範囲で機上安定性及び印刷物の耐擦過性が改善されることがわかる。
また、実施例12〜16を通して、モノマー(C)のポリオキシエチレン鎖のEO付加モル数及びモノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のEO付加モル数がそれぞれ40以下であることで、よりよい結果が得られることがわかる。
EO付加モル数の比「D/C」が2.3である実施例13では、初期の顔料分散性が低下し、塗膜の均一性が低下し、他の実施例と比べて印刷物の擦過性が若干低下した。また、実施例13では、長期保存で増粘しやすく、他の実施例と比べて機上安定性が若干低下した。
EO付加モル数の比「D/C」が0.6である実施例16では、イオン性のモノマー(D)のポリオキシエチレン鎖が短く、初期の顔料分散性が低下し、長期保存で増粘しやすく、他の実施例と比べて結果が若干よくなかった。
実施例17〜20では、分散剤を形成するモノマー成分の構成が異なる。
実施例1、17、18から、モノマー(C)とモノマー(D)は等量に近い方が好ましいことがわかる。
実施例19は、良好な結果であるが、実施例1と比べると、モノマー(A)とモノマー(B)の配合量が少なく、顔料吸着性が不十分であり、初期の顔料分散性が低下したことがわかる。
実施例20は、良好な結果であるが、実施例1と比べると、モノマー(B)の配合量が少なく、顔料吸着性が不十分であり、初期の顔料分散性が低下したことがわかる。
実施例21及び22は、成分(B)にポリエチレンイミンを用いており、良好な結果が得られた。特に、これらの実施例は、分散剤の骨格がポリエチレンになることから、初期の顔料分散性が良好であり、印刷物の耐擦過性に優れた。
比較例1では、実施例1に対して、モノマー(A)の代わりにフェニル基を有するモノマーを用いて分散剤を合成しており、分散剤の顔料吸着性が不十分であり、機上安定性が低下した。
比較例2では、実施例1に対して、モノマー(B)の代わりにカルボキシ基を有するモノマーを用いて分散剤を合成しており、分散剤の顔料吸着性が不十分であり、機上安定性が低下した。
比較例3では、実施例1に対して、モノマー(C)の代わりにポリエチレングリコール鎖の付加モル数が9であるノニオン性のモノマーを用いて分散剤を合成しており、分散剤の顔料吸着性が不十分であり、機上安定性が低下した。
比較例4では、実施例1に対して、モノマー(D)の代わりにポリエチレングリコール鎖の付加モル数が10であるイオン性のモノマーを用いて分散剤を合成しており、分散剤の顔料吸着性が不十分であり、機上安定性が低下した。
また、比較例2〜4では、顔料分散が不十分であり、得られる印刷物の耐擦過性が低下した。

Claims (6)

  1. 顔料、分散剤、水溶性有機溶剤、及び水を含み、
    前記分散剤は、
    β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、
    アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、
    アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及び
    アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、前記ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも用いて形成される分散剤を含む、水性インクジェットインク。
  2. 前記ビニル系モノマー(C)のポリオキシアルキレン鎖のアルキレンオキシドの付加モル数は40以下である、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
  3. 前記ビニル系モノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のアルキレンオキシドの付加モル数は40以下である、請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
  4. 前記ビニル系モノマー(C)のポリオキシアルキレン鎖のアルキレンオキシドの付加モル数と、前記ビニル系モノマー(D)のポリオキシアルキレン鎖のアルキレンオキシドの付加モル数との比は、(C):(D)=1:0.5〜1:2.5を満たす、請求項1から3のいずれか1項に記載の水性インクジェットインク。
  5. SP値が13(cal/cm1/2未満のアルコール系溶剤を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の水性インクジェットインク。
  6. β−ジカルボニル基を含むビニル系モノマー及びビフェニル基を含むビニル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種(A)、
    アミノ基を含むビニル系モノマー及びポリアルキレンイミンからなる群から選択される少なくとも1種(B)、
    アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖を含むノニオン性のビニル系モノマー(C)、及び
    アルキレンオキシドの付加モル数が15以上のポリオキシアルキレン鎖と、前記ポリオキシアルキレン鎖に結合するイオン性基とを含むイオン性のビニル系モノマー(D)を少なくとも用いて形成される、分散剤。
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