図1から図3は、本発明に係る釣竿の第1の実施形態を示す図であり、図1(a)は複数の竿杆の収納状態を示す部分断面図、図1(b)は収納状態の斜視図、図2は、図1に示す釣竿の複数の竿杆の一部を振り出した使用状態を示す斜視図、そして、図3は、図1に示す釣竿の使用状態でのグリップ部分を示す図であり、(a)は部分断面図、(b)は斜視図である。
本発明の釣竿1は、公知のように、複数の竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6Nを順次振り出して、大径の竿杆の先端に小径の竿杆の基端を継合させる振出式に構成されており、複数の竿杆は、大径の竿杆内に順次収納され、全ての竿杆が最も大径の竿杆(元竿杆)5の内部に収納された状態となっている。本発明では、元竿杆5の内部に収納される竿杆の本数(継合本数)については任意であり、N本(竿杆6a〜竿杆6N)の竿杆が順次大径の竿杆に収納され、最も小径の竿杆6Nが穂先竿杆となっている。
なお、図1(a)及び図2では、収納される竿杆の全てを図示していない。また、図1(a)では、分かりやすくするために、収納される竿杆及び後述する挿入体60を示しているが、元竿杆5に後述するカバー部材30が装着されて元竿杆が覆われるため、露出することはない(図1(b)参照)。更に、本実施形態の釣竿は、リールシート及び釣糸ガイドを備えており、スピニングリール及び両軸受リールの両タイプのリールが使用できる構成となっている。このため、スピニングリールを使用する場合、リールシート及び釣糸ガイドが下方側に向くように使用され、両軸受リールを使用する場合、リールシート及び釣糸ガイドが上方側に向くように使用される。
本実施形態の釣竿1は、上記したように、スピニングリール、両軸受型リール等のリールを装着して使用可能な構成となっており、各竿杆の先端部分には、リールから繰り出される釣糸を挿通案内させる釣糸ガイド8,8a〜8Nが取り付けられ(取着され)ている。この場合、釣糸ガイド8Nは、いわゆる穂先ガイドとなっている。また、図1(a)では、図2において示す元竿杆5に装着される釣糸ガイド8が示されていないが、この釣糸ガイド8は、後述するように着脱式に構成されている。また、釣糸ガイドの一部には遊動ガイドが含まれていても良い。
上記した元竿杆5及び元竿杆5に収納される複数の竿杆6a〜6Nは、公知のように繊維強化樹脂製の管状体として構成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂のプリプレグシートを芯金(マンドレル)に巻回し加熱工程を経た後、脱芯するなど、定法に従って形成されている。前記穂先竿杆6Nについては、管状体以外にも、中実ソリッド、或いは、ソリッド体と管状体の組み合わせで構成されていても良い。
前記元竿杆5には、リールが装着されるリールシート7が設けられている。リールシート7は、元竿杆5の基端領域に設けられており、公知のように、リール脚が載置されるリール脚載置部7aと、その前後に配設されてリール脚を締め付けるフード部7b,7cとを備えている。本実施形態では、後方側のフード部7cが固定フードとなっており、前方側のフード部7bが軸方向に移動する移動フードとなっている(以下、移動フード7b、固定フード7cと称する)。
前記固定フード7cは、元竿杆5の基端部の外周面に固定されており、リール脚載置部7aに向けて開口する受入穴7caを備えている。また、移動フード7bは、リール脚載置部7aに向けて開口する受入穴7baを備えている(受入穴7baは360°に亘って開口していても良い)。前記移動フード7bは、元竿杆5に設けられた雄螺子部に対して螺合する雌螺子部が形成された操作部7bbを備えており、リール脚載置部7aにリール脚を載置しながら後方側を固定フード7cの受入穴7caに嵌入し、操作部7bbを回転操作することで、リール脚は、移動フード7bの受入穴7baと固定フード7cの受入穴7caとで締め付け固定される。なお、リールシートの構成、移動フードの移動機構等については公知であるため、詳細な説明については省略する。
元竿杆5は、前記固定フード7cの後端側が軸方向に突出しており、その突出部5aの外周に下栓(尻栓)10が取り付けられている。下栓10は、図4に示すようにキャップ状に形成されており、その後端面10aには空気孔10bが形成されている。下栓10の周壁10cの内面には、前記突出部5aに形成された雄螺子部に螺合する雌螺子部10dが設けられている。この雌螺子部10dは、周壁10cの内面に直接形成しても良いし、図4に示すように、周壁10cに圧入固定される環状体10eの内面に形成されたものであっても良い。また、周壁10cの外周面には、後述するカバー部材30の開口端部を圧入して固定し易いようにリング状の凹凸10fが複数個形成されている(圧入構造が形成されている)。すなわち、下栓10は、元竿杆5の後端の開口を閉塞すると共に、カバー部材30の後端の開口を閉塞する機能を有する。
なお、下栓10の内面は、螺合構造ではなく圧入構造であっても良いし、下栓10の外面は、圧入構造ではなく螺合構造であっても良い。
前記元竿杆5の後端開口部分には、キャップ部材12が着脱可能に固定されている。このキャップ部材12は、元竿杆5から下栓10を取り外し、これをカバー部材30に取り付けするに際して、収納された竿杆を落下させない機能を有する。このキャップ部材12の後端面には、空気抜き用の開口12aを形成しておくことが好ましい。
前記元竿杆5には、従来の振出式の釣竿における保護カバーとしての機能(元竿杆内に収納された複数の竿杆の突出を防止する機能)を果たすカバー部材30が着脱可能に装着されている。このカバー部材30は、元竿杆5から取り外すことができ、元竿杆5の後端部に装着することで、実釣時に握持、保持される、いわゆるグリップとしての機能を兼ね備えている。
以下、カバー部材30の構成について具体的に説明する。
本実施形態のカバー部材30は、前記元竿杆5に対して軸方向に沿って被せられるように(元竿杆5を覆うように)筒状体で構成されており、収納状態で棒状になるように構成されている。筒状体の断面形状については、多角形、円、楕円等、特に限定されることはないが、元竿杆5が断面円形の管状体であるため、デザイン及び外観等を考慮して、円筒形状(断面円形)に形成することが好ましい。また、材質についても特に限定されることはなく、例えば、元竿杆5、及び、これに収納される複数の竿杆6a〜6Nと同じ材料、アルミ、SUS等の各種金属、樹脂、繊維強化樹脂等で形成されていても良く、必要に応じて塗装や物理的な蒸着、化学的な蒸着などの各種表面処理を施して外観を向上させても良い。或いは、グリップとしての機能を兼ね備えることから、通常のグリップと同様、例えば、EVA、コルク等の柔軟性のある素材を被着して、握持、保持性を向上させても良い。
前記円筒形状のカバー部材30は、元竿杆5の先端側から軸方向から被せるように被着することから、カバー部材30と元竿杆5には、カバー部材30を被着した際、両者を固定する固定構造が設けられている。本実施形態のカバー部材30は、元竿杆5に設けられた前記リールシート7を露出させる位置まで被せることが可能に構成されており、固定構造は、カバー部材30を圧入して、元竿杆5との間の摩擦力で固定するよう構成されている。
具体的には、前記移動フード7bの外表面、及び、移動フードの操作部7bbの前側に装着されたリング部材の外表面に、それぞれリング状の凹凸5A,5Bを形成し(又はOリング等を設け)、その部分で、カバー部材30の開口内面、及び、先端側の内面が圧入、固定できるように構成されている。このため、カバー部材30を元竿杆5に被着して固定すると、前記リールシート7のリール脚載置部7aが露出した状態となる。
なお、カバー部材30と元竿杆5の固定構造、固定位置、固定方法については特に限定されることはなく、螺合構造で固定しても良いし、爪による係止構造等、適宜変形することが可能である。
本実施形態のカバー部材30の先端には、上栓40が着脱可能に設けられている。上栓40は、カバー部材30の先端開口に対して圧入可能であり、本実施形態では、図5にも明確に示されるように、上栓40の本体41に雄螺子部41aを形成しておき、この部分をカバー部材30の先端に固定されている雌螺子部材32に螺合することで着脱可能に固定されるようになっている。また、上栓40の本体41には、後述するリング状の保持部材70(図8参照)に係止してセット化できるように、開口係止部41bが形成されている。この開口係止部41bは、保持部材70が挿通できるような構造であれば良く、図8に示すように、リング部材72を介して保持部材70に係止する等、適宜変形することが可能である。
なお、上栓40は、カバー部材30の先端の開口内面に圧入して固定する構造であっても良い。また、カバー部材30は、上栓40を設けることなく、複数の竿杆の突出を防止するだけの構造であっても良い。このような構成では、カバー部材30のいずれかに開口係止部を設けておけば良い。
上記したカバー部材30は、軸長方向に所定の長さL1を備えており、図2及び図3に示すように、元竿杆5の後端に取り付けることにより、釣竿として、長さL1のグリップを構成する。すなわち、従来の振出式の釣竿では、握持、保持される部分は、長さLの元竿杆5の領域となっていたが、カバー部材30を元竿杆5の後端に取り付けることで、実釣時の釣竿は、カバー部材30の長さL1分だけ伸ばすことが可能となる(操作方法については後述する)。
本実施形態の釣竿は、上記したようにリールが装着可能に構成されており、各竿杆には、リールから繰り出される釣糸を挿通させる釣糸ガイドが装着されている。この場合、被着されるカバー部材30は、装着された釣糸ガイドとの間で干渉しないように構成することが好ましい。例えば、両軸受型リールの場合、装着される釣糸ガイドの高さはそれほど高くなくても良いため、前記カバー部材30を元竿杆5に被着しても、カバー部材30と釣糸ガイドは干渉しないようにすることが可能である。或いは、カバー部材30の径を多少、大きくすることで、そのような干渉を防止することも可能である。
ただし、スピニングリールを装着する場合、図2及び図3に示すように、釣糸ガイド(特に基端側の釣糸ガイド8)の高さは高くなり、元竿杆5に被着されるカバー部材30との間で干渉する可能性が生じる。上記したように、カバー部材30の径を大径化することで干渉を防ぐことも可能であるが、干渉が生じる釣糸ガイドを竿杆に対して着脱可能に構成することで、カバー部材30を大径化する必要性がなくなる。例えば、元竿杆5の先端に装着される釣糸ガイド8の高さが高い場合、図6に示すように、元竿杆5の先端に差込開口5eを有する膨出部5dを設けておき、この部分に釣糸ガイド8の脚部8Aを圧入して着脱可能な構造とする。すなわち、本実施形態では、カバー部材30を元竿杆5に被着した際にカバー部材30と干渉する釣糸ガイド8が(それ以外の干渉する釣糸ガイドが存在する場合には、その釣糸ガイドも)竿杆(元竿杆5)に対して着脱可能に取着されている。
このような着脱式の釣糸ガイド8は、釣糸が挿通される釣糸挿通孔8Bや、場合によっては軽量化を図るための開口8Cが形成されるため、図8に示すように、この部分を利用してリング状の保持部材70に係止することが可能である(すなわち、保持部材70は、着脱自在に取着される釣糸ガイド8を保持可能である)。
また、本実施形態の釣竿は、上記したように、スピニングリール及び両軸受リールの両タイプのリールが使用可能であるため、元竿杆5に着脱可能な釣糸ガイド8は、スピニングリール用として高さが高いもの(釣糸ガイド8)、及び、両軸受リール用として高さが低いもの(図8、図10に示す釣糸ガイド18)がセット化されている。すなわち、本実施形態において、着脱可能に取着される釣糸ガイドは、竿杆に対して同じ位置に装着可能な高さが異なる複数の釣糸ガイド8,18を含み、それにより、スピニングリール、及び、両軸受リールの両タイプのリールが使用可能となっている。
なお、着脱式に構成される釣糸ガイドは、複数であっても良い。また、干渉する釣糸ガイドを各竿杆に対して着脱する方式にするのではなく、折曲可能な構成にして、収納時にカバー部材30と釣糸ガイドとが干渉しないように構成することも可能である。折曲可能な構成としては、例えば図11に示されるように、釣糸ガイド8を元竿杆5に対して例えばヒンジ等により起伏可能に取着する構成、又は、釣糸ガイド8をその弾性変形によって起伏可能にする構成などを挙げることができる(図11中、実線が起立状態、一点鎖線が倒伏状態を示す)。また、起伏可能な釣糸ガイド8の高さが高い場合、図11に示されるように、釣糸ガイド8は、その高さ方向でスピニングリール仕様の第1のガイド孔81と該第1のガイド孔81よりも小径な両軸受リール仕様の第2のガイド孔82とが並設されていてもよい。
上記した釣竿は、釣法等に応じて各種の形態で使用することが可能であり、例えば、ベイトリールを使用するルアーフィッシング等では、リールを装着する部分に対応して指を掛けることが可能なトリガーを設けることが好ましい。本実施形態では、元竿杆5に対してトリガー50が着脱式に固定できるように構成されている(図2、図3に示す釣竿及び釣糸ガイドの向きは、スピニングリール対応となっているが、便宜上、トリガー50についても示してある)。
トリガー50は、元竿杆5のリールシート7が設けられる位置に対応して、着脱可能に配設することができ、装着されるリール(両軸受型リール)を元竿杆5と共に保持した際に、指が掛けられるように、固定フード7cの部分に装着されることが好ましい。本実施形態では、元竿杆5の後端に設けられた前記突出部5aの部分に装着可能に構成されており、図7に示すように、突出部5aが嵌合される開口51と指掛け部52を備えた構成となっている。
このようなトリガー50は、下栓10を元竿杆5から外し、開口51を突出部5aに嵌合させ、この状態でカバー部材30を突出部5aに取り付けることで、カバー部材30と元竿杆5との間に挟持、固定することが可能である。このような着脱構造では、トリガー50の指掛け部52の周方向の位置をずらして固定することができるため、釣竿の使用態様(釣竿のシェイキング等)に応じて最適な位置でトリガー50を配設することが可能となる。
また、トリガー50は、元竿杆の突出部5aに嵌合する開口51が設けられているため、上記した上栓40、釣糸ガイド7と同様、図8に示すように、この部分を利用してリング状の保持部材70に係止してセット化することが可能である。
この保持部材70は、実釣時に使用される釣竿、及び、その構成要素(釣糸ガイド、トリガー、上栓、その他の小物類など)に設けられた開口係止部に挿通して、これらを一体化するものであり、実釣時に用いられる釣竿や構成要素を紛失等させることなく、持ち運びが容易となるように用いられる部材である。保持部材70については、リング状の部材、例えば、カラビナ型のフック等で構成することが好ましく、ズボンのベルト装着部分に取り付ける等することで、運搬時及び使用時の取扱性の向上が図れる。特に、モバイル式の釣竿セット(仕舞寸法が30cm程度以下のロッド)では、全長を短くして取扱性が向上するようになる。
本実施形態では、釣竿セットの構成として、図8に示すように、保持部材70に対しては、スピニングリール用として高さが高い釣糸ガイド8、及び、両軸受リール用として高さが低い釣糸ガイド18を保持している。この釣糸ガイド18は、釣糸ガイド8と同様、保持部材70を挿通させる釣糸挿通孔18B及び元竿杆5の差込開口5eに圧入する脚部18Aを備えている。また、トリガーについても、図8に示すように、例えば、指掛け部56が多少湾曲した大きめのトリガー55のように、好みに応じてタイプの異なるものを保持しても良い。
また、本実施形態において、カバー部材30は、元竿杆5に収納された複数の竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6Nが突出しないように元竿杆5に対して被着された図1の状態でその内側に竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6Nのガタ付きを抑えるように(着脱可能に又は取り外し不能に)挿入される挿入体60を有する。カバー部材30の内部を示す図1の(a)において、挿入体60は、カバー部材30の内面と竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6N及び釣糸ガイド8a〜8Nとの間に存在してこれらの遊動を可能にする空間Sをそれ自体で全体的に占めるように一点鎖線で概略的に示されており、カバー部材30内に圧入等によって挿入される。
この場合、挿入体60を形成する材料としては、柔軟部材(例えばEVA、ゴム等の材料)、発泡材料(例えば、ポリウレタ等の材料)などの緩衝材、又は、硬質部材(例えば金属、樹脂、木等の材料)と軟質部材(例えばEVA、ゴム等の材料)との組み合わせを挙げることができる。また、挿入体60は、図14の(a)及び図15の(a)に示されるように、カバー部材30に対するその挿入を容易にするべく、竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6Nや釣糸ガイド8a〜8Nの侵入を可能にするスリット81が形成されてもよい。この場合、スリット81は、挿入体60の中心から片側で外周縁に達するように径方向に延びるとともに、挿入体60の長手軸方向の全長にわたって延びており、中心部の前端側が穂先ガイド(トップガイド)8Nを固定するための固定穴80として形成されている。
しかしながら、図14の(b)及び図15の(b)に示されるように、穂先ガイド(トップガイド)8Nを固定するための固定穴80が設けられていなくてもよく、また、図14の(c)に示されるようにスリットではなく、所定の幅を有する溝82(図示ように固定穴80を有していてもよく又は有していなくてもよい)が、挿入体60の中心から片側で外周縁に達するべく径方向に延びるように且つ挿入体60の長手軸方向の全長にわたって延びるように挿入体60に形成されてもよい。このような溝82を有する挿入体60は、図14の(d)に示されるようにカバー部材30内に圧入固定された際に、図中に矢印で示される方向の力を受けて、溝82の幅が狭められる(又は閉じる)ように溝82の両側で互いに対向して位置される挿入部60の部位60x,60y同士が接近して締まり、この溝82内に侵入して位置される竿杆及び釣糸ガイドを挟圧(締め付け)固定する。なお、図15には、挿入体60がその輪郭を破線で明確に示すためにその外面とカバー部材30の内面との間に若干の隙間を伴って描かれているが、図14の(d)にも示されるように、挿入体60は、その外面がカバー部材30の内面に圧接するようにカバー部材30内に圧入状態で挿入固定されることは言うまでもない(後述する図16も同様)。
また、以上は、カバー部材30の内面と竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6N及び釣糸ガイド8a〜8Nとの間に存在してこれらの遊動を可能にする空間Sを挿入体60がそれ自体で全体的に占める例を示しているが、図16に示されるように挿入体60が空間Sを部分的に占めるようにカバー部材30内に圧入固定されて竿杆及び釣糸ガイドと局所的に当て付くことによって竿杆及び釣糸ガイドの摺動を部分的に規制してもよい。具体的には、図16に示されるように、挿入体60は、前述したスリット81ではなく竿杆及び釣糸ガイドを収容可能な空洞部Cを内側に有するとともに、カバー部材30内に圧入された変形状態で各釣糸ガイド8a,8b,8c,8d,8Nに弾性的に当て付いて釣糸ガイド8a,8b,8c,8d,8N、したがってそれらが付設された各竿杆の摺動を規制する当接部91,92,93,94,95を竿杆及び釣糸ガイドと対向する内面部位に有する。
カバー部材30内に挿入される以上のような挿入体60は、竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6Nや釣糸ガイド8a〜8Nがガタ付き、異音を発生したり、竿杆6a,6b,6c,6d,6e……6Nや釣糸ガイド8a〜8Nがカバー部材30と衝突して破損するといった事態を回避できる。
また、このような挿入体60は、カバー部材30がグリップを構成するように元竿杆5の後端に対して装着される図2及び図3の状態のときにカバー部材30の内側で釣り具を受けて収容する収容体を構成することもできる。このようにガタ付き防止用の挿入体60を収容体として使用すれば、カバー部材30の内側の空間を有効活用でき、カバー部材30を釣り具収納ケースとして使用してモバイルロッドの携帯性のみならず収納容量も高めることができる。
そのような収容体を構成する挿入体60の形態の具体例が図12及び図13に例示されている。図12の(a)に示される収容体(挿入体)60Aは、柔軟部材のみによって一体形成される筒状体60aを成しており、カバー部材30内にほぼ隙間なく嵌合される。筒状体60aは、釣り具を収容する収容空間S1を内側に画定しており、釣り具の導入口として使用できる両側の前端61及び後端62が開口している。また、後端62側の筒状体60aの部位は、カバー部材30の後端(基端)に取着される下栓10の雌螺子部10dと螺合可能な雄螺子部63を有する螺合部60bを形成している。或いは、螺合部は、図12の(b)に示されるように、筒状体60aと別体を成して筒状体60aに結合される螺合部材65によって形成されてもよい。また、螺合部60b又は螺合部材65は、挿入体60Aが収容体として機能しないとき、すなわち、元竿杆5内に収納される複数の竿杆が突出しないように元竿杆5に対して被着されるカバー部材30内に挿入体60Aがガタ付き防止用として挿入されるときには、カバー部材30の先端に固定されている雌螺子部材32に螺合するようになっていてもよい。
一方、図13に示される収容体(挿入体)60Bは、断面が略半円を成して硬質材料(例えば、プラスチック)から形成される上側部材66と、同様に断面が略半円を成して軟質材料(例えば、EVA、ゴム、ポリウレタン等)から形成される下側部材67とによって構成され、カバー部材30内にほぼ隙間なく嵌合される。この場合、上側部材66は、軸方向の両端(前端66a及び後端66b)が閉じられたドーム状を成しており、その後端部に、カバー部材30の後端(基端)に取着される下栓10の雌螺子部10dと螺合可能な雄螺子部63を有する螺合部60bを形成している。一方、下側部材67は、長手軸方向に沿うその両側の端縁部67a,67bが上側部材66の下側開口部66cの端縁に圧入嵌合されることによって上側部材66に着脱自在に取着され、その取着状態で上側部材66と協働して釣り具を収容する収容空間S1を内側に画定する。そして、収容空間S1内には、下側部材67の前端開口69から、又は、上側部材66から下側部材67を取り外すことにより、又は、下側部材67に軸方向に沿って形成される図示しないスリットを通じて、釣り具を収容することができるようになっている。なお、下側部材67は、その高さHが異なるものを複数用意し、収容体60Bが装着されるべきカバー部材30の大きさに適合したものを選択して、収容体60Bをカバー部材30内に隙間なく嵌合できるようにしてもよい。また、螺合部60bは、挿入体60Bが収容体として機能しないとき、すなわち、元竿杆5内に収納される複数の竿杆が突出しないように元竿杆5に対して被着されるカバー部材30内に挿入体60Bがガタ付き防止用として挿入されるときには、カバー部材30の先端に固定されている雌螺子部材32に螺合するようになっていてもよい。
いずれの収容体60A,60Bにおいても、釣り具のガタ付きを抑制するように釣り具を受けることが好ましい。それにより、収容体60A,60B内で釣り具がガタ付き、異音を発生したり、釣り具同士が衝突し又は釣り具が収容体と衝突して破損するといった事態を回避できる。また、収容体60A,60Bは、いずれも、カバー部材30に対して着脱自在であることから、収容体60A,60Bに対する釣り具の収納が容易となる。
次に、上記した釣竿1の使用例について説明する。
図1(a)(b)に示すように、未使用状態では、カバー部材30は、元竿杆5に対して被着された状態(リールシート領域を除いて元竿杆の外周面を覆う固定状態)となっており、釣竿としての仕舞寸法は、カバー部材30の軸方向長さL1に加え、露出するリールシート7までの長さ(下栓10を加えた長さ)となる。
本実施形態では、リールシート7が露出した構成であることから、竿杆の収納状態となる仕舞寸法でリールを装着したまま運搬等することが可能である。この場合、図8に示すように、上栓40は、保持部材70に係止されており、また、釣糸ガイド8、トリガー50も併せて保持部材70に係止されるため、釣竿セットとしての運搬や取扱性が向上し、釣竿として必要な構成部材を紛失することが防止される。また、カバー部材30内にガタ付き防止用の挿入体60が挿入されているため、運搬時の竿杆及び釣糸ガイドのガタ付きも防止できる。
釣竿を使用する際、カバー部材30を元竿杆5から取り外して、そのまま元竿杆5の基端部に取り付ける(図2及び図3参照)。本実施形態では、カバー部材30の先端を元竿杆5の基端部に取り付ける構成であるため、前記上栓40は取り外され、カバー部材30の先端は開口状態にされる。また、元竿杆5に取り付けられている下栓10も元竿杆5の後端から取り外される。下栓10を取り外しても、元竿杆の後端にはキャップ部材12が取り付けられているため、カバー部材の取り付け作業中に収納されている竿杆が脱落することはない。
元竿杆5から取り外され、かつ、上栓40が取り外されたカバー部材30は、上記したように、先端側に上栓40と螺合する雌螺子部材32が形成されており、この部分がそのまま元竿杆の突出部5aに形成された雄螺子部に螺合するようになっている。両者が結合されることで、元竿杆5の後端側には、カバー部材30によって、長さL1のグリップが形成される(図2、図3参照)。また、元竿杆5の先端に釣糸ガイド8(スピニングリールの場合)、或いは、釣糸ガイド18(両軸受リールの場合;図8参照)が固定されると共に、必要に応じて元竿杆5とカバー部材30との間にトリガー50、或いは、トリガー55が固定され、元竿杆5から取り外された下栓10は、カバー部材30の後端開口の内周面に圧入、固定される(下栓10のリング状の凹凸10fにカバー部材の後端開口が圧入されて、開口縁が段部10f´に当て付いて固定される)。また、この使用状態では、ガタ付き防止用の挿入体60が、釣り具を収容可能な収容体として機能することもできるようになり、収容空間S1内に釣り具を収容して下栓10に収容体(例えば前述した収容体60A,60B)としての挿入体60を螺着することにより釣り具の安定した収納保持が可能となる。
カバー部材30が元竿杆5の後端に取り付けられてグリップとしての機能を果たすことで、従来の保護カバーのように、実釣時に紛失するようなことはない。また、グリップとして元竿杆5に取り付けることで、元竿杆5の長さが長くなり、振出式の釣竿として、仕舞寸法が短くコンパクトな状態にもかかわらず、実際の使用時には、元竿杆が長くなって操作性の向上が図れるようになる。更に、図1に示すように、収納状態がコンパクトになるため、嵩張ることもなく、持ち運びが容易になる。
なお、図2及び図3に示す使用状態から図1に示すように収納する場合、グリップ状態となっているカバー部材30を元竿杆5の後端から取り外すと共に、下栓10及び釣糸ガイド8を取り外し、各竿杆を元竿杆5に収納してカバー部材30を軸方向から被着すれば良い。この際、下栓10を元竿杆5の後端に固定してカバー部材30の被着操作を行なっても、上記したように、キャップ部材12の後端面には、空気抜き用の開口12aが形成されており、かつ、下栓10にも空気孔10bが形成されているため、カバー部材30の挿入時に空気が抜け、容易に被着操作を行なうことができる。また、釣糸ガイド8も元竿杆5から取り外されているため(図11の例では、釣糸ガイド8が倒伏されているため)、釣糸ガイド8とカバー部材30とが干渉することもない。また、使用時に収容体として機能していた挿入体60は、この収納状態では、再び、ガタ付き防止機能を発揮する。
上記したカバー部材30と元竿杆5との長さ関係については、適宜、変形することが可能である。例えば、図1に示すように、カバー部材30の寸法L1を長くして、元竿杆5の先端との間で空洞部を長くしても良い。この場合、カバー部材30の内部に柔軟性のある部材(図示せず)を取着しておき、元竿杆5の先端から収納されている竿杆が飛び出さないようにすることが好ましい。或いは、カバー部材30の内部に仕切り構造を設けておき、各種の小物(仕掛け等)を収容できるように構成しても良い。カバー部材30の軸方向の寸法L1については、元竿杆5の軸方向の寸法L以上(L1>L)にすることで、元竿杆5を短くしつつ、グリップ長さを十分確保することができ、コンパクト性と魚釣り操作性を向上することが可能となる。
図9及び図10は、本発明に係る釣竿の第2の実施形態を示す図であり、図9(a)は複数の竿杆の収納状態を示す部分断面図、図9(b)は収納状態の斜視図、図10は、図9に示す釣竿の使用状態でのグリップ部分を示す図であり、図10(a)は部分断面図、図10(b)は斜視図である。
上記した第1の実施形態では、カバー部材30は、リールシート7を露出させるように構成されていたが、本実施形態では、元竿杆5に被せた状態で、元竿杆5の基端部で固定されるようになっている。具体的には、固定フード7cの外表面に、リング状の凹凸5Cを形成しておき、その部分で、カバー部材30の開口内面が圧入、固定できるように構成されている。このため、カバー部材30を元竿杆5に被着して固定すると、前記リールシート7は露出することはなく覆われた状態となる。
このような構成では、仕舞寸法を更に短くすることができ、取扱性、運搬性の向上が図れるようになる。なお、この実施形態の釣竿は、両軸受リールが装着されるものとして、元竿杆5には、高さが低い釣糸ガイド18が装着されており、また、大きめのトリガー55が装着されている。また、前述した第1の実施形態と同様に、収容体としても機能し得る挿入体60もカバー部材30内に挿入配置されている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されることはなく、例えば、以下のように種々変形することが可能である。
上記した実施形態では、リールが装着される釣竿を例示したが、リールシート及び釣糸ガイドを備えていない通常の振出式の釣竿として構成することが可能である。釣糸ガイドを備えていない振出式の釣竿では、カバー部材内に収納した際、持ち運び等に伴ってカバー部材内で竿杆が前後に動き易い(特に釣糸ガイドが無い節の長さががカバー部材よりも短い場合)ため、その動きを規制するという点でも本発明の挿入体は有益である。また、本発明の振出式の釣竿は、スピニングリール専用の釣竿、両軸受リール専用の釣竿として構成しても良い。
前記カバー部材30については、その先端部分を元竿杆5の基端部に固定する構造としたが、カバー部材の後端部分を元竿杆5の基端部に固定する構造としても良い。
前記カバー部材30の長さについては、適宜変形することができ、例えば、元竿杆5と略同じ長さにして、全長に亘って被着する構造にすることで、釣竿としてコンパクト化(モバイル化)が図れ、かつ、使用時に長くして使用することができ、取扱性の向上が図れる。
前記カバー部材30の元竿杆5に対する固定方法については、圧入構造、螺合構造、クランプ等による構造等、適宜変形することが可能であり、その固定位置についても適宜変形することが可能である。
前記カバー部材30の形状については、元竿杆5に収納される竿杆の飛び出しを防止し、元竿杆のグリップとして機能されれば、形状、長さ等適宜変形することが可能である。