JP2021120652A - 軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法、及び転がり軸受の製造方法、並びに機械、車両の製造方法 - Google Patents

軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法、及び転がり軸受の製造方法、並びに機械、車両の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】測定装置を大型化することなく、軸受用軌道輪の温度変化の影響を受けにくい溝径寸法の測定が行え、しかも円周溝の溝面の傷付きを抑制できるようにする。【解決手段】軸受用軌道輪11の溝径寸法測定方法は、軸受用軌道輪11における反円周溝側の周面の直径を測定する工程と、軸受用軌道輪11の円周溝11aの最深部から反円周溝側の周面までの肉厚を測定する工程と、測定された反円周溝側の周面の直径と肉厚の値から、軸受用軌道輪11の溝径寸法を求める工程とを有する。肉厚を測定する工程は、軸受用軌道輪11の円周溝11aに第1接触子である玉部材19A,19Bを当接させ、反円周溝側の周面に第2側接触子である円柱部材21を当接させて軸受用軌道輪11を径方向に挟み込み、第1接触子と第2側接触子との相対位置に応じて軸受用軌道輪11の肉厚を求める。【選択図】図3

Description

本発明は、軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法、及び転がり軸受の製造方法、並びに機械、車両の製造方法に関する。
転がり軸受の製造工程では、軸受用軌道輪(内輪、外輪)の溝径寸法を測定し、既定のラジアルすきまを満たす寸法の転動体を選択するマッチング工程が必要となる。そのため、軸受用軌道輪の溝径寸法を正確に測定することは非常に重要である。しかし、軸受用軌道輪によっては、研削後に歪みが発生して真円度が大きくなることや、溝径寸法を接触式で測定する際に、測定力による弾性変形が発生して正確な測定が難しくなることがある。その結果、転動体のマッチングミスが生じ、転がり軸受のラジアルすきまの不良発生に繋がる。
真円度の影響を緩和する手段として、一点測定を複数回行う多点測定や、被測定品又は測定子を回転させての全周測定で、平均値を求める手段が挙げられるが、測定時間が長くなり、且つ回転機構が必要で構造が複雑になる不都合がある。
また、従来の溝径寸法の測定方法としては、軸受用軌道輪の内周面又は外周面に形成された円周溝にそれぞれ接するように、固定側測定端子及び可動側測定端子を当接させ、可動側測定端子を軸受用軌道輪の径方向に開閉動することで円周溝の溝径寸法を測定する方法が広く採用されている。その場合、固定側測定端子及び可動側測定端子を円周溝の直径方向に対向する溝底面に接触させて溝径寸法を測定することになる(例えば、特許文献1参照)。
実開平5−79412号公報
しかしながら、上記した固定側測定端子と可動側測定端子は、軸受用軌道輪の直径方向に対向して配置されるため、大型の軸受用軌道輪の場合、測定端子同士の距離が長くなり、測定装置が大型化する。また、軸受用軌道輪の寸法に周囲環境の温度変化が及ぼす影響が大きくなり、測定誤差を増加させる要因となる。さらに、固定側測定端子と可動側測定端子は、いずれも円周溝の溝面に当接させる構成であるため、精密に仕上げた溝面を傷付けるおそれがあった。
そこで本発明は、測定装置を大型化することなく、軸受用軌道輪の温度変化の影響を受けにくい溝径寸法の測定が行え、しかも円周溝の溝面の傷付きを抑制できる軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法、及び、この溝径寸法測定方法を用いて製造する転がり軸受の製造方法、並びに機械、車両の製造方法の提供を目的とする。
本発明は下記の構成からなる。
(1) 内周又は外周のいずれかの周面に転動体が転がり接触する円周溝が形成された軸受用軌道輪の前記円周溝の最深部から前記反円周溝側の周面までの肉厚を測定する工程と、
前記軸受用軌道輪の前記反円周溝側の周面の直径を測定する工程と、
前記肉厚の測定値と前記反円周溝側の周面の直径の測定値から、前記軸受用軌道輪の溝径寸法を求める工程と、
を有し、
前記肉厚を測定する工程では、前記軸受用軌道輪の前記円周溝に少なくとも1つの第1接触子を当接させ、前記反円周溝側の周面に少なくとも1つの第2接触子を当接させて前記軸受用軌道輪を径方向に挟み込み、前記第1接触子と前記第2接触子との相対位置に応じて前記軸受用軌道輪の肉厚を求める、
軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、軸受用軌道輪を半径方向に第1接触子と第2接触子との間に挟み込むことで軸受用軌道輪の肉厚を測定し、測定した肉厚と直径から溝径寸法を求めることで、測定力による軸受用軌道輪の弾性変形や、環境温度の変化による熱膨張の影響が受け難くなる。また、軸受用軌道輪の円周溝に接触させる接触子の数を従来方法よりも低減できるため、円周溝の傷付きを抑制できる。
(2) 前記第1接触子と前記第2接触子の少なくともいずれかは、玉部材を含んで構成される(1)に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、第1接触子や第2接触子に玉部材を用いることで、接触相手と点接触状態となって寸法測定の狙い位置へ玉部材を正確に配置でき、測定精度を向上できる。
(3) 前記第1接触子と前記第2接触子の少なくともいずれかは、円柱部材を含んで構成される(2)に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、第1接触子や第2接触子に円柱部材を用いることで、接触相手と線接触状態となる場合には、軸受用軌道輪の姿勢を安定でき、点接触状態となる場合には、寸法測定の狙い位置に正確に円柱部材を配置でき、測定精度を向上できる。
(4) 前記第1接触子と前記第2接触子は、いずれか一方が前記反円周溝側の周面に接触し、中心軸が前記軸受用軌道輪の軸方向と平行な1つの前記円柱部材であり、いずれか他方が前記円周溝の最深部に接触し、前記軸受用軌道輪の径方向中心から同じ半径距離に配置された2つの前記玉部材である(3)に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、円柱部材が軸受用軌道輪の外周面又は内周面に線接触し、玉部材が円周溝の最深部に接触する構成にできる。これにより、軸受用軌道輪を安定した状態で挟み込むことができる。
(5) 前記第2接触子は、中心軸が前記軸受用軌道輪の軸方向に直交する前記円柱部材であり、
前記第1接触子は、1つ又は2つの前記玉部材である(3)に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、円柱部材が反円周溝側の周面に接触する場合には点接触状態となり、玉部材と合わせて2点又は3点接触で軸受用軌道輪を挟み込むため、測定精度を向上できる。また、円柱部材が円周溝に接触する場合には、円周溝に円柱部材の外周面が嵌まり込み、軸受用軌道輪を安定した状態で挟み込むことができる。
(6) 前記第1接触子と前記第2接触子のいずれか一方は、1つの前記玉部材であり、いずれか他方は1つ又は2つの前記玉部材であり、前記玉部材のそれぞれは、同一平面上に配置されている(2)に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、各玉部材が軸受用軌道輪と点接触となり、寸法測定の狙い位置に正確に玉部材を配置でき、測定精度を向上できる。
(7) 前記玉部材の外表面の曲率半径は、少なくとも前記円周溝の軸方向断面形状の曲率半径よりも小さい(2)〜(6)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、玉部材が円周溝の溝底部に確実に接触でき、高精度な測定が可能となる。
(8) 前記円柱部材の軸方向断面の曲率半径は、前記円周溝の軸方向断面形状の曲率半径よりも小さい(3)〜(5)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、円柱部材が円周溝の溝底部に確実に接触でき、高精度な測定が可能となる。
(9) 前記肉厚を測定する工程では、前記第1接触子と前記第2接触子の少なくとも一方と、前記軸受用軌道輪との間に高周波振動を加える(1)〜(8)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、第1接触子又は第2接触子を軸受用軌道輪に接触させる際に、円周溝の溝底部と確実に接触させることができる。
(10)前記肉厚を測定する工程では、前記軸受用軌道輪を鉛直面上で支持する(1)〜(9)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、軸受用軌道輪の内周面を自重によってバランスよく安定した姿勢で支持できる。
(11) 前記肉厚を測定する工程では、互いに異なる複数箇所の肉厚を測定し、
前記溝径寸法を求める工程は、前記複数箇所の肉厚の平均値を前記肉厚の測定値とする(1)〜(10)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、複数箇所を測定した平均値を用いることで、より高精度に溝径寸法を求められる。
(12) 前記軸受用軌道輪の反円周溝側の周面の直径を測定する工程は、互いに異なる複数箇所の直径を測定し、
前記溝径寸法を求める工程は、前記複数箇所の直径の平均値を前記周面の直径の測定値とする(1)〜(11)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
この軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法によれば、複数箇所を測定した平均値を用いることで、より高精度に溝径寸法を求められる。
(13) (1)〜(12)のいずれか1つに記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法により測定された前記軸受用軌道輪の寸法情報に応じて、予め定めたラジアルすきまの基準範囲に適合する転動体の径寸法を求め、
前記軸受用軌道輪と、当該軸受用軌道輪と適合する径寸法を有する転動体とを組み合わせて転がり軸受を製造する転がり軸受の製造方法。
この転がり軸受の製造方法によれば、径寸法の導出精度を向上させて軸受用軌道輪を高精度に寸法毎に選別できる。また、高精度の選別された軸受用軌道輪を用いることで、ラジアルすきまの基準範囲に適合する転動体の選定精度も向上できる。よって、軸受用軌道輪と転動体とのマッチング精度が向上して、より高品質な転がり軸受を製造できる。
(14) (13)に記載の転がり軸受の製造方法を用いる機械の製造方法。
(15) (13)に記載の転がり軸受の製造方法を用いる車両の製造方法。
これらの機械、車両の製造方法によれば、従来よりも低コストで、且つ、高品質な構成にできる。
本発明によれば、測定装置を大型化することなく、軸受用軌道輪の温度変化の影響を受けにくい溝径寸法の測定が行え、しかも円周溝の溝面の傷付きを抑制できる。
図1は、ラジアル玉軸受の一部断面斜視図である。 図2は、本発明に係る軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法に用いる軸受用軌道輪の断面図であって、(A)は外輪の断面図、(B)は内輪の断面図である。 図3は、外輪の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置15の概略構成図であり、(A)は外輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪のIII−III線での断面を示す一部断面図である。 図4は、外輪肉厚測定装置による測定の制御ブロック図である。 図5は、内輪の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は内輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪のV−V線での断面を示す一部断面図である。 図6は、軸受用軌道輪の径寸法を測定する様子を模式的に示す図であって、(A)は外輪の外径を測定する様子を示す概略図、(B)は(A)に示す内輪の内径を測定する様子を示す概略図である。 図7は、変形例1の外輪の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は外輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪のVII−VII線での断面を示す一部断面図である。 図8は、変形例2の外輪の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は外輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪のVIII−VIII線での断面を示す一部断面図である。 図9は、変形例3の外輪の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は外輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪のIX−IX線での断面を示す一部断面図である。 図10は、変形例4の内輪の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は内輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す内輪のX−X線での断面を示す一部断面図である。 図11は、変形例5の内輪の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は内輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す内輪のXI−XI線での断面を示す一部断面図である。 図12は、変形例6の内輪の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置の概略構成図であり、(A)は内輪の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す内輪のXII−XII線での断面を示す一部断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、軸受用軌道輪としてラジアル玉軸受の外輪、内輪を例に説明するが、測定対象の軸受用軌道輪はこれに限らない。
図1は、ラジアル玉軸受100の一部断面斜視図である。図2は、本発明に係る軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法に用いる軸受用軌道輪の断面図であって、(A)は外輪の断面図、(B)は内輪の断面図である。
ラジアル玉軸受100は、外輪11と、内輪13と、外輪11と内輪13との間に配置される複数の玉12と、複数の玉12を保持する保持器14とを備える。
一般に、軸受用軌道輪の溝径寸法では、接触子を、軸受用軌道輪の直径方向に沿って、円周溝の溝底部にそれぞれ当接させて測定するが、本発明に係る溝径寸法測定方法においては、
(1)内周面に転動体が転がり接触する円周溝が形成された外輪、又は外周面に転動体が転がり接触する円周溝が形成された内輪の、円周溝の最深部から反円周溝側の周面までの肉厚を測定する工程と、
(2)外輪又は内輪の反円周溝側の周面の直径を測定する工程と、
(3)上記した肉厚の測定値と、上記した反円周溝側の周面の直径の測定値から、外輪又は内輪の溝径寸法を求める工程と、
を有する。
つまり、測定する溝径寸法は、図2の(A)に示す外輪11の場合、外輪11の外径をφDとし、内周に形成された円周溝11aの溝底から外周面11bまでの肉厚をtとした場合に、溝径φDは下記(1)式で求められる。
φD=φD−2t・・・(1)
また、図2の(B)に示す内輪13の場合、内輪13の内径をφdとし、外周に形成された円周溝13aの溝底から内周面13bまでの肉厚をtとした場合に、溝径φdは、下記(2)式で求められる。
φd=φd+2t・・・(2)
上記のように、外輪11の溝径φD1を求めるためには、外輪11の外径φDと肉厚taを測定し、内輪13の溝径φd1を求めるためには、内輪13の内径φdと肉厚tbを測定する。そして、測定した肉厚と外径又は内径の寸法を(1)式又は(2)式に代入して溝径を求める。
<軸受用軌道輪の肉厚測定>
まず、軸受用軌道輪である外輪11の肉厚の測定方法を説明する。
図3は、外輪11の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置15の概略構成図であり、(A)は外輪11の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪のIII−III線での断面を示す一部断面図である。
(外輪肉厚測定装置の構成)
外輪肉厚測定装置15は、外輪11を鉛直面内で吊り下げて支持する測定部17を備える。測定部17は、第1接触子である一対の玉部材19A,19Bと、第2接触子である円柱部材21とを備える。ここでは測定部17の構造を簡略して説明するが、さらに付加的な機構が備わっていてもよく、適宜に変更が可能である。
一対の玉部材19A,19Bは、少なくとも外輪11に接触する部位が球状に形成され、外輪11の円周溝11aに当接して外輪11を支持する。玉部材19A,19Bの外表面における曲率半径は、図3の(B)に示す円周溝11aの軸方向断面形状(外輪11の軸方向垂直断面における円周溝11aの形状)の曲率半径より小さい。これにより、玉部材19A,19Bは、円周溝11aの最深部となる溝底部に接触できる。
円柱部材21は、少なくとも外輪11に接触する部位が円柱状であり、外輪11の外周面11bに線接触状態で当接する。また、円柱部材21は、一対の玉部材19A,19Bに径方向に対向して配置される。円柱部材21は、中実体に限らず筒状であってもよい。一対の玉部材19A,19Bと円柱部材21は、外輪11を径方向に挟み込んで、所定の測定圧が付加できるように配置される。
以降の説明では、図3における鉛直方向(重力方向)をZ軸方向、外輪11の軸方向Axr1をY軸方向、Y軸方向とZ軸方向に直交する方向をX軸方向ともいう。
円柱部材21は、外輪11の軸方向(Y軸方向)と中心軸Axを平行にして、外輪11の鉛直方向中心軸Axvと交差する頂上位置に配置される。一対の玉部材19A,19Bは、外輪11の中心から同じ径方向距離の位置で、円周方向に互いに離隔して配置される。つまり、一対の玉部材19A,19Bは、外輪11の鉛直方向中心軸Axを中心とする対称位置で、鉛直方向に同じ高さに配置される。
円柱部材21は、上側支持部23に支持され、一対の玉部材19A,19Bは、下側支持部25に支持される。上側支持部23と下側支持部25の少なくとも一方は、適宜な昇降機構により外輪11の径方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。例えば、上側支持部23と下側支持部25のいずれか一方は、昇降自在に支持される可動側であり、いずれか他方は、高さ位置が不動な固定側として構成される。可動側の支持部には、昇降駆動部31(図4参照)が設けられ、円柱部材21と一対の玉部材19A,19Bは、昇降駆動部31の駆動によって外輪11への押し当て、又は押し当てを解除する。
また、上側支持部23と下側支持部25の少なくとも一方には、外輪11と円柱部材21との間、及び外輪11と一対の玉部材19A,19Bとの間に微小振動を加える微小振動発生部33を備える(図4参照)。微小振動発生部33は、外輪11と、円柱部材21及び一対の玉部材19A,19Bとの間に振動を与えることで、相互間の隙間をなくして、一対の玉部材19A,19Bを円周溝11aの最深部となる溝底に移動させる。
微小振動発生部33としては、例えば、ピエゾ素子等を用いた高周波振動子を採用できる。これによれば、高周波振動を簡単に発生でき、玉部材19A,19Bの溝底への移動をより確実に行える。微小振動発生部33は、これに限らず、電磁コイルやエアバイブレータ等の他の加振デバイスであってもよい。
また、上側支持部23と下側支持部25の少なくとも一方には、位置検出センサ35(図4参照)が設けられる。例えば、下側支持部25が固定側で、上側支持部23が移動側である場合には、上側支持部23に、昇降駆動に伴う円柱部材21のZ方向位置を測定する位置検出センサ35が設けられる。また、上側支持部23が固定側で、下側支持部25が移動側である場合には、下側支持部25に位置検出センサ35が設けられる。上記した位置検出センサ35の配置は一例であって、用いる昇降駆動の機構等によって適宜変更が可能である。位置検出センサ35としては、例えば、磁気スケール式、光学スケール式、差動トランス式等の接触式のセンサを使用できる。
図4は、外輪肉厚測定装置15による測定の制御ブロック図である。
外輪肉厚測定装置15は、上記した昇降駆動部31、微小振動発生部33、位置検出センサ35に接続される制御部37を備える。制御部37にはさらに、各種の演算を行う演算部39と、測定された溝径寸法の値等が出力される出力部41とが接続される。制御部37は、予め定めた手順や入力信号に応じて各部を統括して制御する。なお、外輪肉厚測定装置15の制御は、後述する内輪13の肉厚を測定する場合の制御と同様であり、図4の外輪肉厚測定装置15の制御ブロック図は、後述する内輪肉厚測定装置16の制御ブロック図でもある。
(肉厚測定手順)
上記構成の外輪肉厚測定装置15を用いて、外輪11の肉厚を測定する手順を段階的に説明する。
まず、図3の(A),(B)に示す上側支持部23と下側支持部25との間を、昇降駆動部31の駆動により拡げ、測定対象である外輪11を、円周溝11aが一対の玉部材19A,19Bに接触するように、玉部材19A,19Bの上に配置させる。
外輪11を玉部材19A,19Bの上に配置した状態から、昇降駆動部31を駆動して、外輪11の外周面11bに円柱部材21が押し当てられるまで、上側支持部23と下側支持部25とを接近させる。
次に、一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21を、外輪11に所定の測定圧で押し当てた状態で、微小振動発生部33を駆動する。これにより発生した微小振動が、外輪11と、一対の玉部材19A,19B及び円筒部材21との間に加わることで、一対の玉部材19A,19Bは、円周溝11aの溝底に確実に当接する。この加振によって、一対の玉部材19A,19B及び円筒部材21と、外輪11との間には隙間が生じない。微小振動発生部33は、以下に説明する測定中も加振し続けていることが好ましい。
次に、位置検出センサ35によって一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21の相対位置を測定する。具体的には、一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21とが外輪11を挟み込むことで、玉部材19A,19Bと円筒部材21との鉛直面(ZX面)内における幾何学的な位置関係から、図2に示す外輪11の厚さtを演算により求める。
ここで、厚さtaについて、一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21とが外輪11に加える測定圧による外輪11の弾性変形分を補正してもよい。このときの補正値は、位置検出センサ35の出力値と測定圧との相関を表すテーブル情報を予め作成しておき、そのテーブル情報を参照して、外輪11に加える測定圧に応じた弾性変形量を求めてもよい。また、ロードセル等の圧力センサ(不図示)を適宜な位置に配置して、圧力センサからの出力から求めてもよい。
さらに、不図示の温度センサにより環境温度(又は外輪11の温度)を検出して、検出された温度に応じた熱膨張を補正してもよい。上記の各補正演算は、図4に示す演算部39によって行われる。
そして、制御部37は、このようにして得られた厚さtを出力部41に出力する。
以上は、外輪11の周方向1点の厚さtの測定手順であるが、厚さtの測定は、周方向の1点のみ測定する以外にも、互いに異なる複数箇所の厚さtを測定して、それらの平均値を測定値として出力してもよい。複数箇所を測定する場合、手動で測定位置を変更してもよいが、玉部材19A,19Bや円筒部材21を外輪11の周方向に回転駆動するに回転駆動機構(不図示)を設けて、回転駆動機構の駆動によって、複数箇所をステップ移動又は連続的に移動させて、測定してもよい。
得られた外輪11の厚さtの測定値は、前述した式(1)の溝径φDの算出に供される。
本構成の外輪肉厚測定装置15によれば、外輪11を鉛直面上に配置して(軸方向Axr1を水平にする)、1対の玉部材19A,19Bを外輪11の円周溝11aに係止させることで、外輪11の姿勢を安定して保持できる。また、外輪11を挟んで一対の玉部材19A,19Bに対向する外周面11bに円筒部材21を押し当てることで、一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21との間で外輪11を位置決めし、外輪11の姿勢を安定した状態に保持できる。この場合、一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21とに挟まれる外輪11の距離は、外輪11の内径や外径と比較して、格段に小さい。そのため、大型の外輪11を測定する場合であっても、一対の玉部材19A,19Bと円筒部材21との間の距離が小さくて済み、外輪肉厚測定装置15を小型化できる。また、外輪11の厚さtaの測定時に、環境温度の変化による熱膨張の影響を受けにくく、高精度な測定が可能となり、環境温度の管理を軽減できる。さらに、本構成の場合、円周溝11aとの接触点が一対の玉部材19A,19Bの2箇所だけで済み、円周溝11aの傷付きを抑制できる。
特に、外輪11が薄肉である場合には、測定時に負荷するラジアル荷重による弾性変形によって外輪11の外径が簡単に変化する。そのため、直径方向に径寸法を測定する場合、外輪11の弾性変形による測定誤差が大きくなる。しかし、上記構成の外輪肉厚測定装置15によって肉厚tを測定する方式によれば、外輪11が薄肉であっても、一対の玉部材19A,19Bと円柱部材21で肉厚tを挟んだ際の外輪11の弾性変形量は僅かであり、弾性変形による測定誤差を大きく低減できる。これにより、外輪11の径寸法の大小によらず、高精度な溝径寸法の測定が行える。
以上の説明は、外輪11の肉厚tの測定であるが、内輪13の肉厚tの測定も外輪11の場合と同様に行える。
図5は、内輪13の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置16の概略構成図であり、(A)は内輪13の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪11のV−V線での断面を示す一部断面図である。
図5の(A),(B)に示す内輪肉厚測定装置16は、図3の(A),(B)に示す外輪肉厚測定装置15の第2接触子である一対の玉部材19A,19Bが上側支持部23に設けられ、第1接触子である円柱部材21が下側支持部25に設けられた以外は、外輪肉厚測定装置15と同様の構成である。ここでは、内輪13の軸方向をAxr2で示している。以降の説明では、同一の部材、同一の部位については同一の符号を付与することで、その説明を簡単化、又は省略する。
内輪肉厚測定装置16では、内輪13の円周溝13aに一対の玉部材19A,19Bが嵌まり込み、内輪13の内周面13bに円柱部材21が接触する。そして、図4に示す制御部37が、昇降駆動部31、微小振動発生部33、位置検出センサ35を駆動して、位置検出センサ35からの出力を演算部39によって幾何学的な演算を行い、肉厚tbを求める。演算部39では、幾何学的な演算の他、測定圧による弾性変形や環境温度による熱膨張を必要に応じて補正してもよい。このようにして求めた肉厚tbが出力部41から出力される。この内輪13の測定の場合も、前述した外輪11の場合と同様の作用効果が得られる。
<軸受用軌道輪の径寸法の測定>
次に、軸受用軌道輪の径寸法の測定について説明する。
図2に示す外輪11の外径φD(反円周溝側の周面の直径)、内輪13の内径φd(反円周溝側の周面の直径)は、例えば、電気マイクロメータ、レーザや光学、空圧式等の従来公知のいずれの方法で求めてもよい。
図6は、軸受用軌道輪の径寸法を測定する様子を模式的に示す図であって、(A)は外輪11の外径を測定する様子を示す概略図、(B)は(A)に示す内輪13の内径を測定する様子を示す概略図である。
図6の(A)に示すように外輪11の外径寸法は、複数の測定点Msに上記した測定方式による径検出用センサを配置して、それぞれの径検出用センサからの出力信号から求める。つまり、外輪11の周方向に沿って等間隔に配置した合計8箇所の径検出用センサによって、各径検出用センサから外輪11の外周面11bまでの距離を順次に又は一度に取得する。外輪11の直径は、各径検出用センサから直接的に、又は既知の寸法を有する校正用マスターゲージ(設計寸法を有する軌道輪の複製品)を併用して求める。
具体的には、外輪11の中心Oを含み、中心角を等分した合計4方向の線上で、それぞれ外周面11bの径方向外側に、一対の径検出用センサを測定方向が径方向内側に向くように配置する。つまり、外輪11の外周に径検出用センサを合計8箇所に配置する。マスターを併用する場合には、予め用意された既定の外径を有するマスターを、同一方向に配置された一対の径検出用センサによって直径を測定する。また、マスターに代えて外輪11の直径を同様に測定する。そして、マスターを測定したときの基準測定値と、外輪11を測定したときの測定値との差から外輪11の外径を求める。
本構成では、4方向で合計8箇所に径検出用センサを配置するため、外輪11の4位相を同時に測定でき、その平均値を外径寸法の測定値として出力することで、簡単かつ高速に高精度な測定が行える。
また、図6の(B)に示すように、内輪13についても同様の手順で、例えば内輪13の中心Oを含む合計4方向から、合計8箇所に配置された径検出用センサにより内径を直接的、又はマスターを併用して測定する。また、一方向にセンサを配置し、内外輪をインデックス回転させることで、径を測定してもよい。これより、高精度な測定が行える。
上記した測定により得られた外輪11の外径寸法を、前述した式(1)に代入することで、外輪11の溝径寸法が求められる。また、測定により得られた内輪13の内径寸法を、前述した式(2)に代入することで内輪13の溝径寸法が求められる。この径寸法の測定においても、不図示の温度センサにより環境温度(又は外輪11や内輪13の温度)を検出して、検出された温度に応じた熱膨張を補正してもよい。また、径検出用センサが接触式である場合には、その測定圧に応じた弾性変形分を補正してもよい。
以上より、図2に示す外輪11の肉厚tと外径φDを測定して外輪11の溝径φDを求め、内輪13の肉厚tと内径φdを測定して内輪13の溝径φdを求める。そして、得られた寸法情報に応じて、外輪11、内輪13を、予め定めた寸法範囲毎のグループに分類する。また、転動体についても、予め定めた寸法範囲毎のグループに分類しておく。
これにより、所定の工程を経て製造された外輪11、内輪13は、上記した測定方法によって溝径寸法が測定され、その寸法範囲毎に複数のグループに分類されて、グループ毎にストックされる。転動体についても、所定の寸法測定によって寸法範囲毎に複数のグループに分類され、グループ毎にストックされる。
次に、転がり軸受の組み立て工程では、製造されグループ分けされた外輪11と、内輪13と、転動体とを、適正なラジアルすきまとなる組み合わせを求める。このマッチング演算では、外輪11と内輪13の溝径寸法と、転動体の径(玉の場合は玉径)に応じて行われる。また、マッチング演算は、溝径寸法に限らず、溝径寸法の算出用として測定した各種の寸法パラメータを用いて実施してもよい。
このようにして、軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法により測定された軸受用軌道輪の寸法情報に応じて、予め定めたラジアルすきまの基準範囲に適合する転動体の径寸法を求め、その径寸法の転動体と軸受用軌道輪とを組み合わせて転がり軸受を製造する。この転がり軸受の製造方法によれば、軸受用軌道輪の寸法情報が高精度に得られるため、外輪、内輪、転動体の組み合わせを想定して演算により求めたラジアルすきまと、実際のラジアルすきまとの差が小さくなる。よって、マッチング精度が向上して、高品質の転がり軸受を安定して製造できる。
<外輪肉厚測定の変形例>
次に、外輪11の肉厚を測定する外輪肉厚測定装置の変形例を説明する。ここで、外輪11(及び内輪13)は、図1〜図3に示すものの他、薄肉形であっても同様に測定できる。そこで以降の説明では、外輪11(及び内輪13)を薄肉形のものを例示して説明するが、本軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法は、特に肉厚t,tに限定されることはない。
(変形例1)
図7は、変形例1の外輪11の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置15Aの概略構成図であり、(A)は外輪11の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪11のVII−VII線での断面を示す一部断面図である。なお、以降に説明する肉厚測定装置の概略構成図においては、上側支持部23と下側支持部25を省略している。
本構成の外輪肉厚測定装置15Aは、図3に示す外輪肉厚測定装置15の円柱部材21の中心軸Axを外輪11の軸方向Axr1に直交する水平方向(X方向)と平行にした点以外は、外輪肉厚測定装置15と同様の構成である。
この外輪肉厚測定装置15Aによれば、第2接触子である円柱部材21Aの中心軸AxがX方向と平行になり、第1接触子である円柱部材21Aが外輪11の外周面11bと点接触状態になるため、外輪11が内周側で2点、外周側で1点の合計3点で支持される。よって、狙い位置の肉厚を高精度で測定できる。
(変形例2)
図8は、変形例2の外輪11の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置15Bの概略構成図であり、(A)は外輪11の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪11のVIII−VIII線での断面を示す一部断面図である。
本構成の外輪肉厚測定装置15Bは、図3に示す外輪肉厚測定装置15の円柱部材21Aの代わりに玉部材19Cを配置した点以外は、外輪肉厚測定装置15と同様の構成である。
この外輪肉厚測定装置15Bによれば、3つの玉部材19A,19B,19Cによって、外輪11が内周側で2点、外周側で1点の合計3点で支持される。玉部材19A,19B,19Cのそれぞれは、同一平面(鉛直面)上に配置される。この構成においても、狙い位置の肉厚を高精度で測定できる。
(変形例3)
図9は、変形例3の外輪11の肉厚測定の様子を模式的に示す外輪肉厚測定装置15Cの概略構成図であり、(A)は外輪11の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す外輪11のIX−IX線での断面を示す一部断面図である。
本構成の外輪肉厚測定装置15Cは、図8に示す外輪肉厚測定装置15Bの下側支持部25側の一対の玉部材19A,19Bの代わりに、1つの玉部材19Dを配置した点以外は、外輪肉厚測定装置15Bと同様の構成である。
この外輪肉厚測定装置15Cでは、上下一対の玉部材19C,19Dによって、外輪11が最小限の構成で支持される。つまり、外輪11は、径方向に沿った一直線上に配置された玉部材19Cと玉部材19Dに挟まれるため、外輪11の肉厚を幾何学的な演算を要せずに直接的に測定できる。その結果、より高精度な肉厚測定が行える。
<内輪肉厚測定の変形例>
次に、内輪13の肉厚を測定する内輪肉厚測定装置の変形例を説明する。
(変形例4)
図10は、変形例4の内輪13の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置16Aの概略構成図であり、(A)は内輪13の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す内輪13のX−X線での断面を示す一部断面図である。
本構成の内輪肉厚測定装置16Aは、図5に示す内輪肉厚測定装置16の円柱部材21の代わりに玉部材19Dを配置した点以外は、内輪肉厚測定装置16と同様の構成である。
この内輪肉厚測定装置16Aによれば、3つの玉部材19A,19B,19Dによって、内輪13が内周側で1点、外周側で2点の合計3点で支持される。玉部材19A,19B,19Dのそれぞれは、同一平面(鉛直面)上に配置される。この構成により、狙い位置の肉厚を高精度で測定できる。
(変形例5)
図11は、変形例5の内輪13の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置16Bの概略構成図であり、(A)は内輪13の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す内輪13のXI−XI線での断面を示す一部断面図である。
本構成の内輪肉厚測定装置16Bは、図10に示す内輪肉厚測定装置16Aの上側支持部23側の一対の玉部材19A,19Bの代わりに、1つの円柱部材21Aを配置した点以外は、内輪肉厚測定装置16Aと同様の構成である。
この内輪肉厚測定装置16Bでは、第2接触子である円柱部材21Aの中心軸AxがX方向と平行になり、円柱部材21Aが内輪13の円周溝13aに嵌まり込む。よって、内輪13の姿勢が安定して、狙い位置の肉厚を高精度で測定できる。
この場合の円柱部材21Aは、その軸方向断面の曲率半径が、円周溝13aの軸方向断面形状の曲率半径よりも小さい。
(変形例6)
図12は、変形例6の内輪13の肉厚測定の様子を模式的に示す内輪肉厚測定装置16Cの概略構成図であり、(A)は内輪13の軸方向から見た正面図、(B)は(A)に示す内輪13のXII−XII線での断面を示す一部断面図である。
本構成の内輪肉厚測定装置16Cは、図11に示す内輪肉厚測定装置16Bの円柱部材21Aの代わりに玉部材19Eを配置した点以外は、内輪肉厚測定装置16Bと同様の構成である。
この内輪肉厚測定装置16Cによれば、上下一対の玉部材19D,19Eによって、内輪13が最小限の構成で支持される。つまり、内輪13は、径方向に沿った一直線上に配置された玉部材19Dと玉部材19Eに挟まれるため、内輪13の肉厚を幾何学的な演算を要せずに直接的に測定できる。その結果、より高精度な肉厚測定が行える。
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、前述した外輪肉厚測定装置や内輪肉厚測定装置は、外輪、内輪を、その軸方向が水平になるように下側支持部25に支持させているが、外輪、内輪の支持形態は、これに限らず、外輪、内輪の軸方向が水平方向から傾斜させて配置してもよく、鉛直に配置してもよい。
また、上記した転がり軸受の製造方法は、転がり軸受を備える各種の機械(器械等の動力が手動のものも含む)の製造にも適用可能である。例えば、レール、スライダー等の直動案内装置、ねじ軸、ナット等のボールねじ装置やねじ装置、直動案内軸受とボールねじとを組み合わせた装置やXYテーブル等のアクチュエータ、等の直動装置への適用が可能である。
また、ステアリングコラム、自在継手、中間ギア、ラックアンドピニオン、電動パワーステアリング装置、ウォーム減速機、トルクセンサ等の操舵装置への適用が可能である。
そして、上記機械、操舵装置等を含む車両、工作機械、住宅機器等、広く適用することができる。
これにより得られた機械、車両等によれば、従来よりも低コストで、且つ、高品位な構成にできる。
11 外輪(軸受用軌道輪)
11a 円周溝
11b 外周面
13 内輪(軸受用軌道輪)
13a 円周溝
13b 内周面
15,15A,15B,15C 外輪肉厚測定装置
16、16A,16B,16C 内輪肉厚測定装置
17 測定部
19A,19B,19C,19D,19E 玉部材(第1接触子、第2接触子)
21,21A 円柱部材(第1接触子、第2接触子)
23 上側支持部
25 下側支持部
31 昇降駆動部
33 微小振動発生部
35 位置検出センサ
37 制御部
39 演算部
41 出力部

Claims (15)

  1. 内周又は外周のいずれかの周面に転動体が転がり接触する円周溝が形成された軸受用軌道輪の前記円周溝の最深部から前記反円周溝側の周面までの肉厚を測定する工程と、
    前記軸受用軌道輪の前記反円周溝側の周面の直径を測定する工程と、
    前記肉厚の測定値と前記反円周溝側の周面の直径の測定値から、前記軸受用軌道輪の溝径寸法を求める工程と、
    を有し、
    前記肉厚を測定する工程では、前記軸受用軌道輪の前記円周溝に少なくとも1つの第1接触子を当接させ、前記反円周溝側の周面に少なくとも1つの第2接触子を当接させて前記軸受用軌道輪を径方向に挟み込み、前記第1接触子と前記第2接触子との相対位置に応じて前記軸受用軌道輪の肉厚を求める、
    軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  2. 前記第1接触子と前記第2接触子の少なくともいずれかは、玉部材を含んで構成される請求項1に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  3. 前記第1接触子と前記第2接触子の少なくともいずれかは、円柱部材を含んで構成される請求項2に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  4. 前記第1接触子と前記第2接触子は、いずれか一方が前記反円周溝側の周面に接触し、中心軸が前記軸受用軌道輪の軸方向と平行な1つの前記円柱部材であり、いずれか他方が前記円周溝の最深部に接触し、前記軸受用軌道輪の径方向中心から同じ半径距離に配置された2つの前記玉部材である請求項3に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  5. 前記第2接触子は、中心軸が前記軸受用軌道輪の軸方向に直交する前記円柱部材であり、
    前記第1接触子は、1つ又は2つの前記玉部材である請求項3に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  6. 前記第1接触子と前記第2接触子のいずれか一方は、1つの前記玉部材であり、いずれか他方は1つ又は2つの前記玉部材であり、前記玉部材のそれぞれは、同一平面上に配置されている請求項2に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  7. 前記玉部材の外表面の曲率半径は、少なくとも前記円周溝の軸方向断面形状の曲率半径よりも小さい請求項2〜6のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  8. 前記円柱部材の軸方向断面の曲率半径は、前記円周溝の軸方向断面形状の曲率半径よりも小さい請求項3〜5のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  9. 前記肉厚を測定する工程では、前記第1接触子と前記第2接触子の少なくとも一方と、前記軸受用軌道輪との間に高周波振動を加える請求項1〜8のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  10. 前記肉厚を測定する工程では、前記軸受用軌道輪を鉛直面上で支持する請求項1〜9のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  11. 前記肉厚を測定する工程では、互いに異なる複数箇所の肉厚を測定し、
    前記溝径寸法を求める工程は、前記複数箇所の肉厚の平均値を前記肉厚の測定値とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  12. 前記軸受用軌道輪の反円周溝側の周面の直径を測定する工程は、互いに異なる複数箇所の直径を測定し、
    前記溝径寸法を求める工程は、前記複数箇所の直径の平均値を前記周面の直径の測定値とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の軸受用軌道輪の溝径寸法測定方法により測定された前記軸受用軌道輪の寸法情報に応じて、予め定めたラジアルすきまの基準範囲に適合する転動体の径寸法を求め、
    前記軸受用軌道輪と、当該軸受用軌道輪と適合する径寸法を有する転動体とを組み合わせて転がり軸受を製造する転がり軸受の製造方法。
  14. 請求項13に記載の転がり軸受の製造方法を用いる機械の製造方法。
  15. 請求項13に記載の転がり軸受の製造方法を用いる車両の製造方法。
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